説明

DPF装着車両の排気装置

【課題】DPFの排ガス系路下流側に配設される排気管に分岐部を設け、該分岐部にて排気管の排ガス排出口を車幅方向中央部と、車両側面部に位置させ、車両の走行状態により、分岐部に配設した開閉弁により排ガス排出口を切換えるようにして、車両装置部品に対する熱害を防止すると共に、車両走行時のエンジン出力向上による燃料消費量を低減させることを目的とする。
【解決手段】エンジン9からの排ガスを浄化するDPFと、該DPFの下流側に位置し、排ガス温度を検知する温度検知器と、DPFの下流側に接続され、車体3下部で車幅方向中間部に第1排出口111を有する第1排気管11と、第1排出口111とDPFとの間から排ガスを分岐する分岐部Zと、一端が分岐部Zに接続し、他端が車体3の側面部に第2排出口121を有した第2排気管と、分岐部Z近傍に配設され、排ガスの流れを切替える開閉弁16とを備え、DPFの再生時は排ガス温度が所定値を超えた場合に排ガスを第2排気管に導くようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれる公害物質を捕捉して、その公害物質を燃焼させるDPF装着車両の排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン(以後「エンジン」と称す)の排気系には、エンジンから排出される排ガスに含まれ、有害物質とされるディーゼル排気微粒子〔以後「PM(Particulate Matter)」と称す〕及びNOx(窒素酸化物)が含まれており、PMはディーゼルパティキュレートフィルタ〔以後「DPF(Diesel Particulate Filter)」と称す〕にて補足される。DPFで浄化された排ガスは、DPF及び酸化触媒等を配設した排ガス浄化装置に接続された排気管の排出口から外部に排出される。
DPFに捕捉されたPMは、DPFに堆積して、堆積量が多くなると排ガスの流通抵抗が大きくなり、それに伴い、排気マニホールド内での内圧が高くなり、エンジンのポンピングロスが高くなり、エンジン出力に影響が生じる。
堆積したPMを焼却してDPFの流通抵抗を元に戻す、DPF強制再生が実施されることがある。
【0003】
ところが、DPF強制再生は停車時又は、車両走行中に実施する場合とがあり、強制再生時、DPFからはPM等が燃焼した高温の排ガスが排気管から排出される。
強制再生を行うと、DPFに堆積したPMと、該PMを燃焼させるためのHC添加により、排ガス処理装置8から排出される排ガス温度は約600〜850℃になる。(排ガス処理装置の出口温度)
また、図8(A)に示すとおり、排気管の長さを短くして排ガス排出口を車体の下に開口した場合、排気管の長さが短く排ガスの流通抵抗が小さいので、エンジンのポンピングロスが小さくして、エンジンの出力効果の向上を期待したものがある。
また、図8(B)に示すとおり、車体の側部に排気管の排ガス排出口を開口した場合、法規制により排ガス出口角度の制限により排気管の平面形状をS字形状にして、排ガス排出口を車両前方側に移動させて、排ガスが車両後輪に直接かからないようにようにしている。
【0004】
先行技術として、実開平5−12624号公報(特許文献1)が開示されている。
この特許文献1の技術によると、本願添付の図9に示すとおり、消音マフラ020の下流側にその一端を接続され、他端の開口014を大気に開放された平面形状が略S字形状をなすテールパイプ(排気管)012が形成されている。該テールパイプ012の開口014に隣接する湾曲部018に半径方向内側の内周壁に、パイプ軸線M−Mに対し角度をなして傾斜した内向きに隆起した条状の突起016が形成されている。
突起016によって排出される排ガスを旋回させることにより、テールパイプ012の開口014から排出される排ガスは円錐状に拡散され、拡散角度はθ1→θ2に広がり、周囲の外気との混合を促進させて、排ガス温度を下げ、後輪タイヤ、種々の車体部品の熱害を防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−12624号公報(特許文献1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、DPF強制再生は停車時又は、車両走行中に実施する場合とがあり、強制再生時、DPFからはPM等が燃焼した高温の排ガスが排気管を介して排出される。
また、図8(A)に示すとおり、排気管の長さを短くして排ガス排出口を車体の下に開口した場合、排気管の長さが短く排ガスの流通抵抗が小さいので、エンジンのポンピングロスが小さくなるが、車体の下部に排出された排ガスは、車両走行中は走行風によって車体下部から排出されるが、停車中は車体下部に滞留し、車両装置部品に対し熱害を起す。
また、図8(B)に示すとおり、車体の側部に排気管の排ガス排出口を開口した場合、法規制により排ガス出口角度の制限があり、排気管を平面形状がS字上に屈曲させるために全体を延長しなければならず、車両装置部品に対する熱害は発生しないが、排気管が長くなった分排ガス流通抵抗が増大し、エンジンのポンピングロスが大きくなり、エンジン出力に影響を与える不具合を有している。
【0007】
そこで、本発明はこのような不具合に鑑み成されたもので、DPFの排ガス系路下流側に配設される排気管に分岐部を設け、該分岐部からの排気管の排ガス排出口を車幅方向中央部と、車両側面部に位置させ、車両の走行状態により、分岐部に配設した開閉弁によって排ガス排出口を切換えるようにして、車両装置部品に対する熱害を防止すると共に、車両走行時のエンジン出力向上による燃料消費量を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる目的を達成するもので、車両に搭載されたディーゼルエンジンから排出される排ガス中の粒子状物質を浄化するDPFと、該DPFの排ガス系路下流側に位置し、排ガスの温度を検知する温度検知手段と、前記DPFの下流側に接続され、排ガスの排出口が車体下部に開口した第1排出口を有する第1排気管と、前記第1排出口と前記DPFとの間から排ガスの通路を分岐する分岐部と、一端が前記分岐部に接続し、他端が車体側面部に開口した第2排出口を有した第2排気管と、前記分岐部近傍に配設され、排ガスの流れを前記第1排気管と第2排気管とに切替える開閉弁と、前記DPFの再生時、排ガス温度が所定値を超えた場合には排ガスを前記第2排気管に導くようにした制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
かかる発明において、排ガス後処理装置の再生時は高温になった排ガスを車体側面部から車体外方に放出するようにしたので、車体下部に装着されている車両走行用装置部品に対する熱害防止となる効果を有する。
【0010】
また、本願発明において好ましくは、前記第1排気管は略直線状で、前記第2排気管は略S字状に形成されるとよい。
【0011】
このような構成にすることにより、前記第1排気管は直線状に形成されているので、排ガスの流通抵抗が小さくなり、エンジンの排気マニホールド部における排ガスの排圧が低くなり、エンジンのポンピングロスが減少する。
また、第2排気管はS字状に形成することにより、第2排出口と後輪タイヤとの間隔を大きくとることができ、タイヤ(ゴム)への熱害を防止する。
【0012】
また、本願発明において好ましくは、前記開閉弁は前記第1排気管の前記分岐部の下流側に配設された第1開閉弁と、前記第2排気管に配設された第2開閉弁とを備え、
前記制御装置は、排ガス温度が所定値以上で、車速が所定値以下の場合には、前記第1開閉弁を閉じ、前記第2開閉弁を開とし、排ガス温度が所定値以下で、車速が所定値以上の場合には、前記第1開閉弁を開とし、前記第2開閉弁を閉するようにするとよい。
【0013】
このような構成にすることにより、排ガス温度が所定値以上で、且つ停車状態の場合は排ガスを車体側面部から車体外方に放出することにより、車体下側に装着されている車両走行用装置部品に対する熱害防止となる効果を有する。
更に、排ガス温度が所定値以下で、且つ走行状態の場合は、車体下部に走行風の流れが生じ、排気熱がこもらないと共に、略直線状の第1排気管に排ガスを流すことで排気管内での排気抵抗が減少し、エンジンの排気マニホールド部における排ガスの排圧が低くなり、エンジンのポンピングロスが減少する。
また、排気ターボチャージャ搭載エンジンの場合には、排気ターボチャージャ入口と排出口との圧力差が大きくなり、過給効率が向上し、エンジン出力向上に伴う燃料消費量低減が可能となり、車両稼働経費の節減が可能となる。
【0014】
また、本願発明において好ましくは、前記開閉弁は前記分岐部に配設され、開閉弁が前記第1排気管側と前記第2排気管側とを移動して、常にいずれか一方を閉塞すると共に、前記制御装置は排ガス温度が所定値以上で、車速が所定値以下の場合、前記開閉弁は前記第1排気管側を閉とするとよい。
【0015】
このような構成にすることにより、上述の効果に加え、開閉弁が1個ですみコスト低減が可能となる。
【0016】
また、本願発明において好ましくは、前記開閉弁は前記第1排気管の前記分岐部の下流側に第1開閉弁を配設し、前記制御装置は排ガス温度が所定値以上で車速が所定値以下の場合は、前記第1開閉弁を閉とするとよい。
【0017】
このような構成にすることにより、開閉弁が第1排気管の分岐部の下流側に1個配設した構造なので、排ガス温度が所定値以上で車両が停止状態時の場合は、車両下部の装着部品の熱害を防止すると共に、排ガス温度が所定値以下で、且つ走行状態の場合、排ガスは第1排気管と第2排気管両方にながれるため、排気管内での排気抵抗がさらに減少し、エンジンの排気マニホールド部における排ガスの排圧が低くなり、エンジンのポンピングロスが減少する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、DPFの排ガス系路下流側に配設される排気管に分岐部を設け、該分岐部からの排気管の排ガス排出口を車幅方向中央部と、車両側面部に位置させ、車両の走行状態により、分岐部に配設した開閉弁により排ガス排出口を切換えるようにしたので、車両停車時のDPF強制再生時に、車両装置部品に対する熱害を防止すると共に、車両走行時のエンジン出力向上による燃料消費量を低減させる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】は本発明を実施する一形態の車両外観図を示す。
【図2】は本発明の第1実施形態にかかる排気装置の構成概略で、車体を除いた平面図を示す。
【図3】は本発明の第1実施形態にかかる排気管分岐部の開閉弁作動状態図を示す。
【図4】は本発明の第2実施形態にかかる排気管分岐部の開閉弁作動状態図を示す。
【図5】は本発明の第3実施形態にかかる排気管分岐部の開閉弁作動状態図を示す。
【図6】(A)は車両速度に対し、排ガス温度と熱害評価対象部品温度との関係を示し、(B)は車速に対し、排ガス排出口位置と燃料消費量との関係の概略説明図を示す。
【図7】は本発明の第1実施形態にかかる開閉弁作動フロー図を示す。
【図8】(A)は従来技術で、排気口が車両中央に位置し、(B)は排気口が車両側面部に位置した排気装置の平面図を示す。
【図9】は従来技術の他の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。
但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
(第1実施形態)
【0021】
(第1実施形態)
図1は本発明が採用される車両の一例としてのキャブオーバ型トラック(以後「車両」と略称する)外観図を示し、車両1は前側にエンジン9の上部に運転台2が配置され、運転台2の後方に荷物を収納するバン型ボデー3(以後「車体3」と略称する)が搭載されている。31は前輪、32は後輪である。排ガスはエンジン9の排気マニホールド91から後方に向け排出され、前輪31と後輪32との間に配置されている排ガス処理装置8に導かれる。排ガス処理装置8の後端に排気管が接続されている。
排ガス処理装置8にはDPFが内蔵されており、DPFの排気系下流側出口には排ガスの温度を検知する温度検出手段である温度検知器10が配設されている。
51は制御装置で、ECU5(エンジンコントロールユニット)内に配設され、ECU5からのDPFの上流側と下流側の圧力情報と、DPFの排出側で排ガスの温度を検知する温度検出器10及び、車速検出器4の検出結果に基づいて、後述する第1開閉弁16及び第2開閉弁17を開閉制御する。
尚、図2では便宜上、ECU5をシャシフレームLH7の外側面に取付けてあるが、例えば、運転台2又は、断熱箱の中に収納されている。
【0022】
車体3を取除いた状態の本実施形態にかかる排気装置の平面図を図2に示すように、排ガス処理装置8は車両1の前後方向に沿って後方へ延設され、車幅方向に間隔を有したシャシフレームRH6とシャシフレームLH7との間に配設されている。
排ガス処理装置8の後端には第1排気管11が接続され、第1排気管11は、第1排出口111を後方に向けて配設され、第1排出口111が排ガス処理装置8と後輪車軸33との間に開口した全長が短い略直線状に形成されている。
第1排出口111は、図2に示すように後輪車軸33から前方に十分に離れた位置に開口している。(十分に離れた位置とは、排ガスが第1排出口111から排出された後、周囲の空気と混合するために必要な間隔)
第1排気管11の排ガス処理装置8取付け部と第1排出口111との中間部には第1排気管11内を流れる排ガスの分岐部Zを設けてある。
一端が分岐部Zに接続され、他端である第2排出口121が車体3の外側面近傍で、後輪タイヤ32から間隔を置くように前輪31と後輪32との間に位置するように平面視がS字状に形成された第2排気管12が配設されている。
第2排出口121は車体3の外方向で、後方に向けて排ガスを排出するように規制が課されている。
さらに、第2排出口121を後輪タイヤ32から間隔を有することにより、排ガスが後輪タイヤ32に直接かかるのを防止する。
【0023】
図3の(A)及び、(B)に示すように、第1排気管11分岐部Zの下流側には、第1排気管11の排ガス流路を閉塞して、第1排気管内の排ガスの流通を止める第1開閉弁16が配設されている。
また、第2排気管12側の分岐部Z下流側には、第2排気管12の流路を閉塞して、第2排気管12内の排ガスの流通を止める第2開閉弁17が配設されている。
13は排ガス処理装置8の上流側の排ガス圧力を検知する第1圧力センサ、14は排ガス処理装置8の下流側の排ガス圧力を検知する第2圧力センサである。
第1圧力センサ13と第2圧力センサ14とによって検知された情報はECU5に入力され、排ガス処理装置8の上流側の圧力と、下流側の圧力との差(Pa)に基づいてDPF強制再生実施の判断がされる。
制御装置5にはECU5からのDPFの上流側と下流側の圧力情報と、車速検出器4からの車速情報と、DPFの下流側の排ガス温度を検知する温度検出器10から排ガス温度情報が入力される。車速情報及び、排ガス温度の検出結果に基づいて制御装置5は第1開閉弁16と第2開閉弁17を開閉制御する。
尚、車速検出器4はタイヤの回転又は変速機等から検出する公知の技術である。
そして、図3(A)に示すように、車両1の通常走行時で、非DPF強制再生時においては、第1開閉弁16を開に、開閉弁17を閉にすることにより、排ガスは車体下部のシャシフレームRH6とシャシフレームLH7との間に排出される。
DPF強制再生が行われていないので、DPFから排出される排ガスは比較的に低いと共に、車両1が通常走行なので、排ガスは走行風によって、車体後方へ流されるので、車体下部に配設されている走行用部品への熱害が防止される。
また、第1排気管は短く、直線状に形成されているので、排ガスの流通抵抗が小さくなり、エンジンの排気マニホールド部における排ガスの排圧が低くなり、エンジンのポンピングロスが減少する。
【0024】
一方、図3(B)に示すように、停車時にDPF強制再生を行う場合には、第1排気管11の開閉弁16を閉にして、第2排気管12の開閉弁17を開にすることで、DPF強制再生に伴って排出される高温の排ガスは車体3の側面から車両外方へ排出されるので、車体下部に装着されている走行用部品への排ガスによる熱害のおそれはなくなる。
【0025】
上述のように排ガスの排出口を車両の走行状況によって切替えることにより、図6(A)の車両速度に対する排ガス温度と熱害評価対象部品温度との関係図、図6(B)の車速に対する排ガス排出口位置と燃料消費量との関係の概略説明図に基づいて、その効果を説明する。
図6(A)は、横軸に車速km/h、縦軸に熱害評価対象部品温度℃(熱害を受ける対象部品の許容される耐熱温度)を基軸としたもので、特性曲線(a及びb)は、車体下部排出a(DPF強制再生時 DPF排出口の排ガス温度が一例として600℃)、及び車体外側排出bで表され、その値は車両下部に配設されている部品に与える熱害温度を実車試験にて測定したものである。
図6(B)は横軸に車両走行速度km/h、燃料消費量Mを縦軸にして排ガス排出口位置が車体下部排出f(第1排出口111)の場合の燃料消費量と、車体側面部排出e(第2排出口121)の場合の燃料消費量Mとの違いを比較したものである。
【0026】
図6(A)において、例えば、車体下部に配設されている走行用部品の耐熱温度がTとする。
DPF排出口の排ガス温度が一例として600℃(DPF強制再生時)として、車速が0〜Skm/h(低速)の間は車体下部における走行風による冷却効果が得られないので、車体下部に装着されている部品に対する熱害が発生する可能性が高い。
従って、排ガスの排出位置は車体外側排出bに基づいて車体外側位置の第2排出口121に切換えることにより、車体下部に装着されている部品の熱害発生防止が可能となる。
車両速度がSkm/hを越える(中高速)と、車体下部の走行風による冷却効果が大きくなり、車体下部に装着されている部品は排ガスによる熱害発生の可能性が少なくなる。
従って、車速がSkm/h以上の場合、排ガスの排出位置は車体下部排出aに基づいて車体下部の第1排出口111に切換えることにより、後述する燃料消費量削減効果を得る。
排ガスの排出口が第2排出口121から第1排出口111に切替えられると、図6(B)に示すように、燃料消費量Mは、車速Skm/h時に、車体外側排出eのM2位置から、車体下部排出fのM1位置に減少して省エネルギーになる。
尚、車両が低速から中高速になる場合を説明したが、中高速から低速なる場合は上述に対し逆になる。
【0027】
図7は第1実施形態にかかる開閉弁作動フロー図を示し、ステップS1からスタートし、ステップS2において、ECU(エンジンコントロールユニット:図示省略)でDPFの入口と出口との差圧(Pa)大きくなりDPF強制再生が必要となり、DPF強制再生フラグ=1がたちDPF強制再生の条件が整ったと判断する。ステップS3において、DPF入口と出口との差圧(Pa)が所定値以上あるか否かを比較する。差圧(Pa)が所定値以下の場合には、DPFにおけるPMの体積量は少ないと判断して、DPFの強制再生は行われないので、NOを選択してステップS8に進み、ステップS8において、第1開閉弁16が開、第2開閉弁17が閉となり車体下部に排ガスを排出して燃料消費量の低減を目指す。
一方、差圧(Pa)が所定値以上ある場合は、DPFにおけるPM堆積量が多いと判断し、YESを選択し、ステップS4に進む。ステップS4においてDPFの強制再生を実施する。
【0028】
ステップS5において、DPF出口の排ガス温度が所定値を超えているか否かを判断する。DPF出口の排ガス温度が所定値を超えていない場合には、熱害が発生しないと判断し、NOを選択してステップS8に進む。
ところが、DPF出口の排ガス温度が所定値を超えている場合には、YESを選択してステップS6に進む。ステップS6においては、車速(km/h)が所定値を越えているか否かを判断する。車速が所定値を越えている場合、排ガスは車両1の走行風によって車体外へ流されるため熱害は発生しないので、NOを選択してステップS8に進む。
車速(km/h)が所定値を越えていない場合には、車体下部に排ガスが滞留する可能性が高いため、YESを選択してステップS7に進み、ステップS7にて第1開閉弁16が閉、第2開閉弁17を開にして、排ガスを車体側面部外方に排出して、車体下部に装着されている走行用部品の排ガスによる熱害を防止するようになっている。ステップS9にてリターンする。
【0029】
本実施形態によると、排ガス後処理装置の再生時は高温になった排ガスを車体側面部から車体外方に放出するようにしたので、車体下部に装着されている車両走行用装置部品に対する熱害防止となる効果を有する。
また、排ガスの排出口を第2排出口121から第1排出口111に切替えることによって、排ガスは、直線状に形成された第1排気管11を流通するので、排ガスの流通抵抗が小さくなり、エンジン9の排気マニホールド91における排ガスの排圧が低くなり、エンジンのポンピングロスが減少することにより出力が向上し、車両走行時の燃料消費量を減少でき省エネルギー効果を有する。
また、第2排気管12はS字状に形成することにより、第2排出口121と後輪32との間隔を大きくとることができ、タイヤ(ゴム)への熱害を防止する。
【0030】
(第2実施形態)
第1実施形態と同じものは同じ符号を付して内容の説明を省略する。
排気管の車両への取付位置、排気管形状は第1実施形態と同じなので説明を省略する。図4に第2実施形態である分岐部Zの概略構造を示し、図4(A)は車両が通常走行、非DPF強制再生時における排ガス流路を切替える開閉弁C18の開閉状態図である。
開閉弁C18は分岐部の第1排気管11と第2排気管12との接続部に配設されている。
【0031】
車両1が通常走行時、非DPF強制再生時の場合、開閉弁C18は第2排気管12側に移動して、第2排気管12の排気通路を閉塞し、第1排気管11の排気通路を開状態に維持した状態になり、排ガスは車体下部に排出される。
図4(B)は車両1が停車、DPF強制再生時における排ガス流路を切替える開閉弁C18の開閉状態図を示し、開閉弁C18が第1排気管11側に移動して、第1排気管11の排ガス流路を閉塞し、第2排気管12の排気通路を開状態に維持した状態になり、排ガスは車体外側に排出される。
開閉弁C18の作動制御は第1実施形態と同じなので、説明は省略する。
【0032】
本第2実施形態によると、第1実施形態に記載の効果に加え、開閉弁C18の使用が1個ですみコスト低減が可能となる。
【0033】
(第3実施形態)
第1実施形態と同じものは同じ符号を付して内容の説明を省略する。
排気管の車両への取付位置、排気管形状は第1実施形態と同じなので説明を省略する。図5に第3実施形態である分岐部Zの概略構造を示し、図5(A)は車両が通常走行、非DPF強制再生時における排ガス流路を切替える第1開閉弁16の開閉状態図である。第1開閉弁16は分岐部の第1排気管11と第2排気管12との接続部下流の第1排気管11に配設されている。
【0034】
車両1が通常走行時、非DPF強制再生時の場合、第1開閉弁16は開状態で、第1排気管11及び第2排気管共に排ガス流路は開いた状態になる。
一方、図5(b)は車両停車、DPF強制再生時に排ガス流路の切替を実施する開閉弁A11の作動状態を示し、第1排気管11に配設された第1開閉弁16で第1排気管11の排ガス流路を閉塞する。
従って、排ガスは第2排気管12側に流れ、第2排出口121から車体側面部の外方へ排出され、車体下部に配設された走行用部品への排ガスによる熱害が防止される。
尚、本実施形態における、開閉弁16の制御は基本的に同じで、図7において、ステップS7の「車体下部に排出」を「車体下部及び、車体側部外方に排出」に変わる以外同じなので、説明は省略する。
【0035】
本第3実施形態によると、車体下部に装着されている車両走行用装置部品に対する熱害防止効果、第1開閉弁16の使用が1個ですみコスト低減が可能となると共に、第1排気管11に配設された第1開閉弁16を開状態にした時、排ガスは第1排気管11及び第2排気管の排ガス流通路を通過できるので、排気管内での排気抵抗が減少し、エンジンの排気マニホールド部における排ガスの排圧が低くなり、エンジンのポンピングロスが減少する。
また、排気ターボチャージャ搭載エンジンの場合には、排気ターボチャージャ入口と排出口との圧力差が大きくなり、過給効率が向上し、エンジン出力向上に伴う燃料消費量低減が可能となり、車両稼働経費の節減が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
DPFを備えた排ガス処理装置を搭載した車両の排気装置とその方法に適用すると有効に利用できる。
【符号の説明】
【0037】
1 車両
2 運転台
3 車体
4 車速検出器
5 制御装置
6 シャシフレームRH
7 シャシフレームLH
8 排ガス処理装置
9 エンジン
10 温度検出器(温度検知手段)
11 第1排気管
12 第2排気管
16 第1開閉弁
17 第2開閉弁
18 第3開閉弁
31 前輪
32 後輪
33 後輪車軸
111 第1排出口
121 第2排出口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたディーゼルエンジンから排出される排ガス中の粒子状物質を浄化するDPFと、該DPFの排ガス系路下流側に位置し、排ガスの温度を検知する温度検知手段と、
前記DPFの下流側に接続され、排ガスの排出口が車体下部に開口した第1排出口を有する第1排気管と、
前記第1排出口と前記DPFとの間から排ガスの通路を分岐する分岐部と、
一端が前記分岐部に接続し、他端が車体側面部に開口した第2排出口を有した第2排気管と、
前記分岐部近傍に配設され、排ガスの流れを前記第1排気管と第2排気管とに切替える開閉弁と、
前記DPFの再生時、排ガス温度が所定値を超えた場合には、排ガスを前記第2排気管に導くようにした制御装置とを備えたことを特徴とするDPF装着車両の排気装置。
【請求項2】
前記第1排気管は略直線状で、前記第2排気管は略S字状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のDPF装着車両の排気装置。
【請求項3】
前記開閉弁は前記第1排気管の前記分岐部の下流側に配設された第1開閉弁と、前記第2排気管に配設された第2開閉弁とを備え、
前記制御装置は、排ガス温度が所定値以上で、前記車両が停止状態時の場合には、前記第1開閉弁を閉じ、前記第2開閉弁を開とし、排ガス温度が所定値以下で、車速が所定値以上の場合には、前記第1開閉弁を開とし、前記第2開閉弁を閉じるようにしたことを特徴とする請求項1又は、2記載のDPF装着車両の排気装置。
【請求項4】
前記分岐部に配設され、開閉弁が前記第1排気管側と前記第2排気管側とを移動して、常にいずれか一方を閉塞する第3開閉弁を備え、前記制御装置は排ガス温度が所定値以上で、車速が所定値以下の場合には、前記第3開閉弁は前記第1排気管側を閉とするようにしたことを特徴とする請求項1又は、2記載のDPF装着車両の排気装置。
【請求項5】
前記開閉弁は前記第1排気管の前記分岐部の下流側に第1開閉弁を配設し、前記制御装置は排ガス温度が所定値以上で車速が所定値以下の場合は、前記第1開閉弁を閉とするようにしたことを特徴とする請求項1又は、2記載のDPF装着車両の排気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−225173(P2012−225173A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90893(P2011−90893)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】