説明

FRP製グレーチング及びFRP製グレーチングの製造方法

【課題】 建築物の構造材に必要とされる強度等の特性を十分に有すると共に、建築物の装飾材に必要とされる意匠性及び装飾性等の特性をも併せ持ち、更に、夜間等に全体が均一に発光して特異な意匠的効果を発揮することが可能なFRP製グレーチング及びFRP製グレーチングの製造方法の提供。
【解決手段】 透光性のマトリックス樹脂10内に補強繊維を充填した複合材料を格子状に成形してなり、格子状に成形した複合材料の全体にわたって蓄光剤を混合して略均一に分散させ、格子状に成形した複合材料の全体にわたって蓄光及び発光自在とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の建築要素として好適に使用することができるFRP(繊維強化プラスチック)製グレーチング及びFRP製グレーチングの製造方法に関し、特に、夜間等に発光して特異な意匠的効果を発揮するFRP製グレーチング及びFRP製グレーチングの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、格子状の板材であるグレーチングとしては、道路の側溝の蓋等、土木構築物の構成要素として主に使用される鋼製(ステンレス製、鋳鉄製)のものの他、建築物の建築要素としても使用可能な樹脂製(FRP製)のものがある。なお、この種のFRP製グレーチングとして、例えば、特許文献1に記載の技術がある。
【特許文献1】特開2004−316413号公報
【0003】
特許文献1に記載の技術は、ルーバーとして使用するのに好適なFRP製のグレーチングを開示している。このグレーチングは、平面上において、各々繊維強化合成樹脂からなる線状縦部材と線状横部材とが、互いに交差して格子形状をなしている。前記線状縦部材及び前記線状横部材は、各々前記平面から上方に延びる側面を有している。前記線状縦部材または前記横部材の少なくとも一方の前記側面は、鉛直方向に対して傾斜している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のグレーチングを含め、従来のFRP製グレーチングは、不透明樹脂材料内にガラスロービング(ガラス繊維糸の束)を格子状に埋設して製造されるため、内部のガラスロービングが意匠として外観に表れないよう、マトリックス樹脂としては不透明樹脂が一般に使用される。そして、かかる不透明樹脂をマトリックス樹脂として使用したFRP製グレーチングは、装飾性にかけることから、主に、構造材として使用され、それ以外の目的、例えば、意匠性や装飾性が必要とされる箇所の構成要素として使用するには適していない。
【0005】
そこで、本発明は、建築物の構造材に必要とされる強度等の特性を十分に有すると共に、建築物の装飾材に必要とされる意匠性及び装飾性等の特性をも併せ持ち、更に、夜間等に全体が均一に発光して特異な意匠的効果を発揮することが可能なFRP製グレーチング及びFRP製グレーチングの製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係るFRP製グレーチングは、透光性のマトリックス樹脂内に補強繊維を充填した複合材料を格子状に成形してなり、前記格子状に成形した複合材料の全体にわたって蓄光剤を混合して略均一に分散させ、前記格子状に成形した複合材料の全体にわたって蓄光及び発光自在とした。
【0007】
請求項2に係るFRP製グレーチングは、透明な熱硬化性樹脂からなる格子状のマトリックス樹脂内に、透明なガラス繊維からなるガラスロービングを前記マトリックス樹脂の格子状に対応する格子状に敷設充填すると共に、前記ガラスロービングに前記マトリックス樹脂を含浸してなり、前記格子状のマトリックス樹脂の全体及び前記ガラスロービングに含浸した前記マトリックス樹脂の全体にわたって蓄光剤を略均一に混合分散し、前記格子状に成形したマトリックス樹脂及び前記ガラスロービングの全体にわたって蓄光及び発光自在とした。
【0008】
請求項3に係るFRP製グレーチングは、請求項1または2の構成において、前記蓄光剤が、前記マトリックス樹脂に対して約5〜10重量%の割合で混合される。
【0009】
請求項4に係るFRP製グレーチングは、請求項1または2の構成において、前記蓄光剤が、前記マトリックス樹脂に対して約10重量%の割合で混合される。
【0010】
請求項5に係るFRP製グレーチングは、請求項1乃至4のいずれかの構成において、更に、透光性のマトリックス樹脂内に補強繊維を充填した複合材料を平板状に成形してなる閉塞板を厚さ方向一端面に融着して前記厚さ方向一端面を閉塞すると共に、前記閉塞板の表面層であるゲルコート層にのみ蓄光剤を略均一に混合分散させ、前記閉塞板の表面の全面にわたって蓄光及び発光自在とした。
【0011】
請求項6に係るFRP製グレーチングは、請求項1乃至5のいずれかの構成において、前記マトリックス樹脂が、不飽和ポリエステル樹脂に硬化剤及び硬化促進剤を添加して硬化してなり、硬化時の雰囲気温度の高低に応じて、前記硬化剤の添加量を約1〜3重量%の範囲内で増減すると共に、前記硬化促進剤の添加量を約0.6〜1重量%の範囲内で増減した。
【0012】
請求項7に係るFRP製グレーチングの製造方法は、型の溝内に、補強繊維を配置すると共に、蓄光剤を混合した透光性樹脂材料を充填して固化するグレーチングの製造方法であって、前記透光性樹脂材料の充填工程として複数回の樹脂充填工程を備え、初回の樹脂充填工程より後の回の樹脂充填工程における前記透光性樹脂材料への前記蓄光剤の混合割合を徐々に高くした。
【0013】
請求項8に係るFRP製グレーチングの製造方法は、透光性樹脂材料に蓄光剤を均一に混合分散して蓄光樹脂材料を調製する調製工程と、格子状の充填溝を有する成形型の前記充填溝内に前記蓄光樹脂材料を充填する樹脂充填工程と、紐状の補強繊維に前記蓄光樹脂材料を含浸しながら、前記補強繊維を前記成形型の充填溝内に格子状に敷設する補強繊維配置工程と、前記成形型の充填溝内の前記蓄光樹脂材料を固化し、前記蓄光樹脂材料内に前記補強繊維を配置した固化物を得る固化工程と、前記固化物を脱型する脱型工程とを備える。
【0014】
請求項9に係るFRP製グレーチングの製造方法は、透光性樹脂材料に蓄光剤を第1の混合割合で混合して第1の蓄光樹脂材料を調製する第1の調製工程と、前記透光性樹脂材料に前記蓄光剤を前記第1の混合割合より高い割合である第2の混合割合で混合して第2の蓄光樹脂材料を調製する第2の調製工程と、格子状の充填溝を有する成形型の前記充填溝内に前記第1の蓄光樹脂材料を途中まで充填する第1の樹脂充填工程と、紐状の補強繊維に前記第1の蓄光樹脂材料を含浸しながら、前記補強繊維を前記成形型の充填溝内に格子状に敷設する補強繊維配置工程と、前記成形型の充填溝内に、前記第1の蓄光樹脂材料の上から前記第2の蓄光樹脂材料を充填する第2の樹脂充填工程と、前記成形型の充填溝内の前記第1及び第2の蓄光樹脂材料を固化し、前記第1及び第2の蓄光樹脂材料内に前記補強繊維を配置した固化物を得る固化工程と、前記固化物を脱型する脱型工程とを備える。
【0015】
請求項10に係るFRP製グレーチングの製造方法は、請求項9の構成において、前記第1の蓄光樹脂材料中の前記蓄光剤の混合割合を、前記第2の蓄光樹脂材料中の前記蓄光剤の混合割合の約1/2とした。
【0016】
請求項11に係るFRP製グレーチングの製造方法は、請求項9または10の構成において、前記固化工程から前記脱型工程に至る間に、前記成形型を約50〜60℃の温度に加温維持し、前記脱型工程において前記固化物を脱型する。
【0017】
請求項12に係るFRP製グレーチングの製造方法は、請求項9乃至11のいずれかの構成において、少なくとも、前記成形型の充填溝内に前記補強繊維を配置する間、前記成形型を微振動させて、前記蓄光樹脂材料中の前記蓄光剤の均一分散を維持する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係るFRP製グレーチングは、建築物の構造材に必要とされる強度等の特性を十分に有すると共に、建築物の装飾材に必要とされる意匠性及び装飾性等の特性をも併せ持ち、更に、夜間等に全体が均一に発光して特異な意匠的効果を発揮することが可能である。
【0019】
請求項2に係るFRP製グレーチングは、建築物の構造材に必要とされる強度等の特性を十分に有すると共に、建築物の装飾材に必要とされる意匠性及び装飾性等の特性をも併せ持ち、更に、夜間等に全体が均一に発光して特異な意匠的効果を発揮することが可能である。特に、マトリックス樹脂を透明としたことにより、蓄光剤からの発光効率(輝度)の低下を効果的に防止することができる。また、ガラスロービングに含浸したマトリックス樹脂の全体にわたって蓄光剤が略均一に混合分散されると共に、それらの蓄光剤はガラスロービング内に閉じ込められた状態となり、ガラスロービングを通じて独特の意匠的硬化を発揮する。
【0020】
請求項3に係るFRP製グレーチングは、請求項1または2の効果に加え、蓄光剤による発光効率(輝度)を十分に得ることができる。
【0021】
請求項4に係るFRP製グレーチングは、請求項1または2の効果に加え、蓄光剤による発光効率(輝度)を一層十分に得ることができる。
【0022】
請求項5に係るFRP製グレーチングは、請求項1乃至4のいずれかの効果に加え、閉塞板により全体の強度を増大することができると共に、閉塞板の表面層であるゲルコート層にのみ蓄光剤が略均一に混合分散され、少量の蓄光剤で閉塞板の表面の全面にわたって蓄光及び発光自在となる。
【0023】
請求項6に係るFRP製グレーチングは、請求項1乃至5のいずれかの効果に加え、硬化剤及び効果促進材の添加量を硬化時の雰囲気温度に応じて、例えば、夏季、春季、秋季、冬季等の季節に応じて調整することで、マトリックス樹脂の不飽和ポリエステル樹脂の硬化を良好に行えると共に、硬化剤及び硬化促進剤によるマトリックス樹脂の透明度の低下や変色等を確実に防止することができる。
【0024】
請求項7に係るFRP製グレーチングの製造方法は、初回の樹脂充填工程より後の回の樹脂充填工程における透光性樹脂材料への蓄光剤の混合割合が徐々に高くなるため、硬化時に蓄光剤が樹脂材料中を沈降したときに、樹脂材料中の全体にわたって蓄光剤の密度がほぼ均一となる。
【0025】
請求項8に係るFRP製グレーチングの製造方法は、透光性樹脂材料に蓄光剤を均一に混合分散した蓄光樹脂材料を、成形型の充填溝内に充填すると共に、紐状の補強繊維に含浸しながら補強繊維を成形型の充填溝内に格子状に敷設して固化することで、建築物の構造材に必要とされる強度等の特性を十分に有すると共に、建築物の装飾材に必要とされる意匠性及び装飾性等の特性をも併せ持ち、更に、夜間等に全体が均一に発光して特異な意匠的効果を発揮するFRPグレーチングを生産性良く製造することができる。
【0026】
請求項9に係るFRP製グレーチングの製造方法は、透光性樹脂材料に蓄光剤を均一に混合分散した蓄光樹脂材料を、成形型の充填溝内に充填すると共に、紐状の補強繊維に含浸しながら補強繊維を成形型の充填溝内に格子状に敷設して固化することで、建築物の構造材に必要とされる強度等の特性を十分に有すると共に、建築物の装飾材に必要とされる意匠性及び装飾性等の特性をも併せ持ち、更に、夜間等に全体が均一に発光して特異な意匠的効果を発揮するFRPグレーチングを生産性良く製造することができる。また、蓄光剤の混合割合の異なる第1及び第2の蓄光樹脂材料を使用して、第1の樹脂充填工程より第2の樹脂充填工程において蓄光樹脂材料中の蓄光剤の混合割合が徐々に高くなるようにしたため、硬化時に蓄光剤が樹脂材料中を沈降したときに、樹脂材料中の全体にわたって蓄光剤の密度がほぼ均一となる。
【0027】
請求項10に係るFRP製グレーチングの製造方法は、請求項9の効果に加え、蓄光樹脂材料の硬化時に、蓄光剤が蓄光樹脂材料中を沈降したときに、蓄光樹脂材料中の全体にわたって蓄光剤の密度がほぼ均一となる。
【0028】
請求項11に係るFRP製グレーチングの製造方法は、請求項9または10の効果に加え、脱型時に成形型が約50〜60℃の温度に加温維持されているため、固化物を円滑かつ確実に脱型することができる。
【0029】
請求項12に係るFRP製グレーチングの製造方法は、請求項9乃至11のいずれかの効果に加え、成形型の充填溝内における蓄光樹脂材料中の蓄光剤の均一分散を維持されるため、蓄光樹脂材料の硬化後においても、固化物の全体にわたって蓄光剤が均一に分散される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)を説明する。なお、各実施の形態を通じ、同一の部材、要素または部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0031】
以下、本発明の実施の形態1に係るFRP製グレーチングについて説明する。図1は本発明の実施の形態1に係るFRP製グレーチングの一部を示す斜視図である。図2は本発明の実施の形態1に係るFRP製グレーチングにおけるマトリックス樹脂と補強繊維との関係を概略的に示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【0032】
実施の形態1に係るFRP製グレーチングは、透光性のマトリックス樹脂内に補強繊維を充填した複合材料を格子状に成形してなるものである。また、FRP製グレーチングは、格子状に成形した複合材料の全体にわたって蓄光剤を混合して略均一に分散させ、格子状に成形した複合材料の全体にわたって蓄光及び発光自在となっている。詳細には、実施の形態1に係るFRP製グレーチングは、図1に示すように、透明な熱硬化性樹脂からなる枡格子状のマトリックス樹脂10を備えた長方形板状をなしている。マトリックス樹脂10は、多数の縦桟(格子子)11及び多数の横桟(格子子)12を縦横に直交して配置した枡格子状をなしている。よって、縦桟11及び横桟12間には多断面矩形状の貫通孔10aが縦横に整列して形成されている。マトリックス樹脂10内には、透明なガラス繊維からなるガラスロービング(ガラス繊維糸の束)20が、マトリックス樹脂10の枡格子状に対応する枡格子状となるよう敷設充填されている。また、ガラスロービング20にはマトリックス樹脂10が含浸されている。更に、ガラスロービング20は、連続する1本のものが、マトリックス樹脂10の最外周の縦桟11及び横桟12の交差箇所(コーナー)で直角に折り曲げられて、マトリックス樹脂10の縦桟11及び横桟12の各々の内部を直線状に延びている。これにより、ガラスロービング20は、多層状をなし、例えば、図2(a)に示すように、マトリックス樹脂10の正面または背面から見ると、7層状となり、図2(b)に示すように、マトリックス樹脂10の右側面または左側面から見ると、前記7層間にそれぞれ配置される6層状となっている。ここで、マトリックス樹脂10は、所定の熱硬化性樹脂に所定の硬化剤(硬化触媒)及び促進剤(硬化促進剤乃至重合促進剤)を添加して常温で硬化してなるものである。更に、格子状のマトリックス樹脂10の全体及びガラスロービング20に含浸したマトリックス樹脂10の全体にわたって、蓄光剤(図示略)が略均一に混合分散されている。これにより、FRP製グレーチングは、格子状に成形したマトリックス樹脂10及びガラスロービング20の全体にわたって蓄光及び発光自在となっている。なお、前記(蓄光剤を含有する)マトリックス樹脂10及びガラスロービング20により、実施の形態1のFRP製グレーチング本体が構成されている。
【0033】
マトリックス樹脂10の熱硬化性樹脂としては、グレーチングをハンドレイアップ法等により成形可能な限りにおいて、任意の樹脂を使用することができるが、そのうち、例えば、不飽和ポリエステル樹脂を使用することが好ましい。不飽和ポリエステル樹脂としては、例えば、昭和高分子株式会社製の商品名「リゴラック」(「リゴラックKG−2000シリーズ」)を好適に使用することができる。また、マトリックス樹脂10の不飽和ポリエステル樹脂の硬化剤及び促進剤としては、例えば、メチルエチケトンルパーオキサイド等及びナフテン酸コバルト等をそれぞれ使用することができる。この場合、マトリックス樹脂10は、不飽和ポリエステル樹脂に硬化剤及び硬化促進剤を添加して硬化してなる。更に、この場合、マトリックス樹脂10は、硬化時の雰囲気温度(常温)の高低に応じて、前記硬化剤の添加量を約1.0〜3.0重量%の範囲内で増減すると共に、前記硬化促進剤の添加量を約0.6〜1.0重量%の範囲内で増減することが好ましい。即ち、夏季等の雰囲気温度が高温となる環境下では、硬化剤の添加量は約1.0〜1.5重量%の範囲とすると共に、促進剤の添加量は約0.6重量%とし、冬季等の雰囲気温度が低音となる環境下では、硬化剤の添加量は約2.5〜3.0重量%の範囲とすると共に、促進剤の添加量は約0.8〜1.0重量%とし、春または秋等の雰囲気温度が中程度となる環境下では、硬化剤の添加量は約2.0〜2.5重量%の範囲とすると共に、促進剤の添加量は約0.7重量%とすることが好ましい。硬化剤及び促進材の添加量が上記各下限値未満となると、マトリックス樹脂10の熱硬化が十分に行われない可能性がある。一方、硬化剤及び促進材の添加量が上記各上限値を超えると、マトリックス樹脂10の透明度が低下したり、マトリックス樹脂10が変色(例えば、黄変)したりして、装飾性に影響を与える可能性がある。また、マトリックス樹脂10としては、完全透明(透明度100%乃至可視光線透過率100%)の樹脂以外にも、透明度100%未満乃至可視光線透過率100%未満の樹脂を使用することができ、半透明樹脂または有色透明樹脂を使用することも可能である。更に、補強繊維としては、ガラスロービング等のガラス繊維を使用することが好ましいが、本発明の課題を損なわない限りにおいて、ガラス繊維以外の補強繊維を使用することも可能である。
【0034】
蓄光剤としては、例えば、アルミン酸ストロンチウム系の蓄光剤、アルミン酸カルシウム系の蓄光剤、アルミン酸カルシウム/アルミン酸ストロンチウム系の蓄光剤等を好適に使用することができる。アルミン酸ストロンチウム系の蓄光剤としては、例えば、根本特殊化学株式会社製の商品名「ルミノーバN夜光G−300(化学組成SrAl24:Eu,Dy)」、商品名「ルミノーバN夜光GLL−300(化学組成SrAl24:Eu,Dy)」、商品名「ルミノーバN夜光BG−300(化学組成Sr4Al1425:Eu,Dy)」、商品名「ルミノーバN夜光BGL−300(化学組成Sr4Al1425:Eu,Dy)」を好適に使用することができる。アルミン酸カルシウム系の蓄光剤としては、例えば、根元特殊化学株式会社製の商品名「ルミノーバN夜光V−300(化学組成CaAl24:Eu,Nd)」を好適に使用することができる。アルミン酸カルシウム/アルミン酸ストロンチウム系の蓄光剤としては、例えば、根元特殊化学株式会社製の商品名「ルミノーバN夜光B−300(化学組成CaAl24:Eu,Nd+Sr4Al1425:Eu,Dy)」を好適に使用することができる。ただし、残光輝度の点で、アルミン酸ストロンチウム系の蓄光剤を使用することがより好ましい。ここで、蓄光剤は、好ましくは、マトリックス樹脂10に対して約5〜10重量%の割合で混合される。より好ましくは、蓄光剤は、マトリックス樹脂10に対して約7〜10重量%の割合で混合される。更に好ましくは、蓄光剤は、前記マトリックス樹脂10に対して約10重量%の割合で混合される。蓄光剤の混合割合が約5%未満となると、マトリックス樹脂10内に蓄光剤を均一に分散しても、その全面で十分な蓄光及び発光効果(残光輝度)が得られない可能性がある。一方、蓄光剤の混合割合を約10%とすると、マトリックス樹脂10内で蓄光剤を完全に均一に分散せず、若干分布が偏った場合でも、その全面において、各種使用用途に対して十分な蓄光及び発光効果(残光輝度)を得ることができるため、蓄光剤が高価であることから、蓄光剤の混合割合は約10%で十分である。なお、蓄光剤の混合割合は、通常、約7〜8%程度でも十分であり、この場合、マトリックス樹脂10内で蓄光剤を完全に均一に分散せず、若干分布が偏った場合でも、その全面で装飾効果等に必要充分な蓄光及び発光効果(残光輝度)を得ることができる
【0035】
以下、実施の形態1に係るFRP製グレーチングの製造方法について説明する。図3は本発明の実施の形態1に係るFRP製グレーチングの製造方法の補強繊維配置工程を説明するための斜視図である。
【0036】
実施の形態1に係るFRP製グレーチングの製造装置は、図3に概略を示すように、FRP製グレーチングのハンドレイアップ成形用の成形型100と、成形型50の上方に移動自在に配置される樹脂充填容器120とを備える。成形型100は、FRP製グレーチングのマトリックス樹脂10の枡格子形状に対応する枡格子形状の充填溝110を有し、充填溝110内に熱硬化性樹脂等の液状樹脂及びガラスロービング20等の補強繊維を充填自在となっている。充填溝110は、マトリックス樹脂10の縦桟11及び横桟12に対応して、縦溝111及び横溝112を縦横に直交して配置した枡格子状をなす。また、樹脂充填容器120は、上側部と円筒状とすると共に下側部を下方に向かって縮径する略円錐筒状とした筒状をなしている。樹脂充填容器120は、円筒状部分の上端を開口として、その開口から内部に液状樹脂を充填して充填自在としている。また、樹脂充填容器120は、略円錐筒状部分の下端に前記ガラスロービング20の直径に対応する直径の小孔を形成し、ガラスロービング20を円筒状部分の上端の開口から内部に順次挿入し、略円錐筒状部分の下端の小孔から外部に順次導出することで、内部に充填した液状樹脂をガラスロービング20の内部まで満遍なく順次含浸していくようになっている。なお、前記成形型100は、底部側に電気ヒータ等の加熱手段(図示略)を有し、加熱手段により所定温度に加温制御自在となっている。
【0037】
実施の形態1に係るFRP製グレーチングは、例えば、図3に示す製造装置を使用して、以下のように製造することができる。まず、第1の調製工程で、透光性樹脂材料に蓄光剤を第1の混合割合で混合して第1の蓄光樹脂材料を調製する。例えば、透光性樹脂材料としての熱硬化性樹脂である不飽和ポリエステル樹脂に、蓄光剤としてのアルミン酸ストロンチウム系の蓄光剤(粉粒状乃至パウダー状)を、第1の混合割合として約6〜7重量%の混合割合で混合して均一に分散し、第1の蓄光樹脂材料を調製する。次に、第2の調製工程で、前記透光性樹脂材料に前記蓄光剤を前記第1の混合割合より高い割合である第2の混合割合で混合して第2の蓄光樹脂材料を調製する。例えば、前記不飽和ポリエステル樹脂と同一の不飽和ポリエステル樹脂に、前記蓄光剤と同一の蓄光剤を、前記第1の混合割合(約5〜7重量%)の約2倍の混合割合(約10〜14重量%)で混合して均一に分散し、第2の蓄光樹脂材料を調製する。即ち、第1の蓄光樹脂材料中の蓄光剤の混合割合は、第2の蓄光樹脂材料中の蓄光剤の混合割合の約1/2とする。例えば、熱硬化性樹脂30kgに対して蓄光剤を3kg(10重量%)混合する場合、まず、第1の調製工程では、熱硬化性樹脂15kgに対して蓄光剤を1kg混合し、第2の調製工程では、熱硬化性樹脂15kgに対して蓄光剤を2kg混合する。この場合、第1の蓄光樹脂材料における熱硬化性樹脂に対する蓄光剤の混合割合は、約6.66重量%となり、第2の蓄光樹脂材料における熱硬化性樹脂に対する蓄光剤の混合割合は、約13.33重量%となり、第1の蓄光樹脂材料の場合の2倍となる。なお、これ以外にも、第1の蓄光樹脂材料における熱硬化性樹脂に対する蓄光剤の混合割合を、第2の蓄光樹脂材料における熱硬化性樹脂に対する蓄光剤の混合割合より小さく設定する限りにおいて、第1の蓄光樹脂材料における熱硬化性樹脂に対する蓄光剤の混合割合を、第2の蓄光樹脂材料における熱硬化性樹脂に対する蓄光剤の混合割合の1/2以外の値とすることもできる。また、前記第1の調製工程及び第2の調製工程では、それぞれ、熱硬化性樹脂に対応する硬化剤及び硬化促進剤を所定量ずつ添加しておく。例えば、上記のように、硬化時の雰囲気温度(常温)の高低に応じて、硬化剤の添加量を約1.0〜3.0重量%の範囲内で増減すると共に、硬化促進剤の添加量を約0.6〜1.0重量%の範囲内で増減して、熱硬化性樹脂に添加しておく。なお、この状態で、第1及び第2の蓄高樹脂材料は、そのポットライフに応じて粘性液状を維持している。
【0038】
次に、第1の樹脂充填工程で、前記成形型100の充填溝110内に前記第1の蓄光樹脂材料を途中(例えば、1/4〜1/3程度の深さ)まで充填して充填する。次に、補強繊維配置工程で、紐状の補強繊維としてのガラスロービング20に、前記第1の蓄光樹脂材料を含浸しながら、ガラスロービング20を成形型100の充填溝110内に格子状に敷設する。即ち、1本のガラスロービング20を前記樹脂充填容器120の上端開口から内部に通して下端の小孔から導出すると共に、樹脂充填容器120の上端開口から内部に第1の蓄光樹脂材料を充填して充填する。そして、ガラスロービング20を樹脂充填容器120の上端開口から内部に順次挿入すると共に下端の小孔から外部(下方)に順次導出することで、樹脂充填容器120の内部に充填した第1の蓄光樹脂材料をガラスロービング20の内部まで満遍なく順次含浸していく。そして、このようにして第1の蓄光樹脂材料を含浸したガラスロービング20を、成形型100の充填溝110の縦溝111及び横溝112内に順次挿入して、充填溝110の下端まで上方から工具(へら等)により押圧し、多層状に敷設していく。即ち、例えば、まず、成形型100の充填溝110の縦溝111または横溝112にガラスロービング20を挿入すると共に、所定のコーナー(縦溝111と横溝112との交差点)でガラスロービング20を直角に折り曲げて連続する横溝112または縦溝111に挿入し、同様に、所定のコーナーでガラスロービング20を直角に折り曲げて連続する縦溝111または横溝112に挿入するといった手順を繰り返し、充填溝110の全ての縦溝111及び横溝112にガラスロービング20を均等な層数となるよう積層していく。なお、ガラスロービング20が充填溝110内に密に積層されるよう、ガラスロービング20を各縦溝111及び各横溝112に挿入したら、必ず、工具(へら等)により下方へと押圧し、下層のガラスロービング20に密接して積層していく。
【0039】
このとき、成形型100の充填溝110内(底側の所定深さ)には予め第1の蓄光樹脂材料が充填されると共に、充填溝110に積層されるガラスロービング20には第1の蓄光樹脂材料が含浸されているため、充填溝110内ではそれらの第1の蓄光樹脂材料が密に充填される。よって、成形型100の充填溝110内が部分的に樹脂不足となって空洞や空隙が発生し、最終製品のFRP製グレーチングのマトリックス樹脂10に空洞、空隙、ピンホール等が発生するおそれは通常ないが、必要に応じて、ガラスロービング20を所定量(所定長さ)、成形型100の充填溝111内に充填するごと、例えば、複数層充填するごとに、第1の蓄光樹脂材料を成形型100の充填溝111内に追加して充填して充填してもよい。なお、かかる第1の蓄光樹脂材料の追加充填工程は、第1の追加充填工程となる。
【0040】
上記補強繊維配置工程により、ガラスロービング20を成形型100の充填溝110の内部に所定の層数となるよう、或いは、全層数積層したら、次に、第2の樹脂充填工程で、成形型100の充填溝110内に、第1の蓄光樹脂材料の上から前記第2の蓄光樹脂材料を充填して充填し、成形型100の充填溝110の上端まで充填する。このとき、ガラスロービング20を成形型100の充填溝110内に所定層数(例えば、1/2〜3/4程度)積層し、第1の蓄光樹脂材料が充填溝110内の所定深さ(例えば、1/2〜3/4程度)まで達したときに、第2の蓄光樹脂材料を充填溝110内に更に充填して充填し、ガラスロービング20を残りの層数積層して、全層数のガラスロービング20の積層配置を終了したときに、第2の蓄光樹脂材料を充填溝110内に更に充填して充填し、充填溝110内を第1及び第2の蓄光樹脂材料で満たす。或いは、ガラスロービング20を成形型100の充填溝110内に全層数積層し、第1の蓄光樹脂材料が充填溝110内の所定深さ(例えば、3/4以上)まで達したときに、第2の蓄光樹脂材料を充填溝110内に更に充填して充填し、充填溝110内を第1及び第2の蓄光樹脂材料で満たす。即ち、第2の蓄光樹脂材料は、ガラスロービング20の積層途中及び積層後に複数回に分けて充填して充填してもよく、或いは、ガラスロービング20の積層後に1回のみ充填して充填してもよい。更に、成形型100の充填溝110にガラスロービング20を所定層数(例えば、1/2〜3/4程度)積層したときに、樹脂充填容器120内の第1の蓄光樹脂材料がなくなった状態で、或いは、樹脂充填容器120内の第1の蓄光樹脂材料を除去した状態で、樹脂充填容器120内に第2の蓄光樹脂材料を充填充填し、ガラスロービング20に第2の蓄光樹脂材料を含浸しながら成形型100の充填溝110に挿入して積層することも可能である。
【0041】
成形型100の充填溝110内にガラスロービング20を全層数積層配置すると共に第1及び第2の蓄光樹脂材料を完全に充填したら、次に、固化工程で、成形型100の充填溝110内の第1及び第2の蓄光樹脂材料を固化し、第1及び第2の蓄光樹脂材料内にガラスロービング20を配置した固化物を得る。即ち、第1及び第2の蓄光樹脂材料の主成分(主材)としての熱硬化性樹脂(不飽和ポリエステル樹脂等)が、常温(大気温度)で、硬化促進剤の重合開始作用により重合開始すると共に、硬化剤の硬化触媒作用により硬化(重合)し、所定時間経過後に完全に固化する。このとき、熱硬化性樹脂の比重は約1.2程度であり、蓄光剤の比重は約3.2程度であるため、粘性液状の第1及び第2の蓄光樹脂材料がある程度硬化するまでは、第1及び第2の蓄光樹脂材料中で上側の蓄光剤が下側にある程度沈降する。しかし、上記のように、成形型100の充填溝110内に最初に充填される第1の蓄光樹脂材料における蓄光剤の混合割合を、後に充填される第1の蓄光樹脂材料における蓄光剤の混合割合より少なく(例えば、1/2に)している。よって、成形型100の充填溝110の約上側半分の第2の蓄光樹脂材料中の蓄光剤の分散密度は、充填溝110の約下側半分の第1の蓄光樹脂材料中の蓄光剤の分散密度の約2倍となっている。したがって、成形型100の充填溝100内で上側の蓄光剤がある程度下側に沈降しても、全体として、蓄光剤が充填溝110内の第1及び第2の蓄光樹脂材料中でほぼ均一に分散することとなり、蓄光剤が下側に偏在することが防止される。発明者等の実験によれば、第2の蓄光樹脂材料中の蓄光剤の混合割合を第1の蓄光材料中の蓄光剤の混合割合の約2倍とすると、第1及び第2の蓄光樹脂材料の硬化後において、蓄光剤が全体に満遍なく均一に散在することが確認されている。一方、硬化中、第1及び第2の蓄光樹脂材料は自己発熱により加熱され、例えば、約100〜120℃または約100〜130℃程度まで昇温する。しかし、前記蓄光剤は、同程度の温度では熱変性または劣化することがなく、第1及び第2の蓄光樹脂材料の固化後も、良好に所期の性能を発揮する。なお、第1及び第2の蓄光樹脂材料は自己発熱するまで、成形型100を加熱手段により所定温度(例えば、約40〜50℃)で所定時間(例えば、約2時間)加温し、第1及び第2の蓄光樹脂材料の硬化を促進してもよい。
【0042】
固化工程で第1及び第2の蓄光樹脂材料が完全に固化して固化物となったら、脱型工程で前記固化物を脱型する。このとき、固化工程から脱型工程に至る間の所定のタイミングで、成形型100を約50〜60℃の温度に加熱して加温維持し、脱型工程において前記固化物を脱型することが好ましい。例えば、第1及び第2の蓄光樹脂材料の硬化成形完了後、または、第1及び第2の蓄光樹脂材料の硬化反応による自己発熱が消滅し、成形型100の温度が所定温度(例えば、常温より若干高い温度)以下に低下したときに、成形型100を約50〜60℃の温度に加熱して加温維持する。こうすると、脱型時に固化物を成形型100の充填溝110から円滑に脱型することができる。発明者等の実験によれば、成形型100の充填溝110内で熱硬化性樹脂を常温硬化する場合、季節を問わず、固化工程から脱型工程に至る間の所定のタイミングで、成形型100を約50〜60℃の温度に加熱して加温維持しないと、固化物の脱型が困難になり、たとえ長期間(例えば、2日間)放置したとしても、固化物の脱型が困難になることが確認されている。こうして、図1に示すFRP製グレーチングを得ることができる。このFRP製グレーチングは、例えば、図2に示すように、マトリックス樹脂10の縦桟11及び横桟12に、ガラスロービング20が均等な層数となるよう積層して充填配置されている。
【0043】
ここで、少なくとも、成形型100の充填溝110内にガラスロービング20を配置する間で、好ましくは、固化工程において蓄光剤の沈降が停止する前まで、成形型100をコンクリート打設用バイブレータ等の微振動手段により微振動させることもできる。この場合、第1及び第2の蓄光樹脂材料中の蓄光剤の均一分散をより良好かつ確実に維持することができる。
【0044】
ところで、本発明のFRP製グレーチングの製造方法は、上記方法に限らず、成形型100の充填溝110内に、ガラスロービング20等の補強繊維を配置すると共に、蓄光剤を混合した透光性樹脂材料を充填して固化する場合において、前記透光性樹脂材料の充填工程として複数回の樹脂充填工程を備え、初回の樹脂充填工程より後の回の樹脂充填工程における前記透光性樹脂材料への前記蓄光剤の混合割合を徐々に高くしたものとして具体化することができる。即ち、本発明に係るFRP製グレーチングの製造方法は、初回の樹脂充填工程の樹脂に対する蓄光剤混合量(含有量)より、以降の回の樹脂充填工程の樹脂に対する蓄光剤混合量(含有量)を多くする限りにおいて、2回の樹脂充填工程に限らず、3回以上の樹脂充填工程を備えるものとして具体化することができる。この場合、後の回の樹脂充填工程になるにしたがって、蓄光剤の混合割合を徐々に多くする。
【0045】
或いは、本発明のFRP製グレーチングの製造方法は、透光性樹脂材料に蓄光剤を均一に混合分散して蓄光樹脂材料を調製する調製工程と、格子状の充填溝を有する成形型の前記充填溝内に前記蓄光樹脂材料を充填する樹脂充填工程と、樹脂充填工程前または樹脂充填工程中に、ガラスロービング20等の紐状の補強繊維に前記蓄光樹脂材料を含浸しながら、前記補強繊維を前記成形型の充填溝内に格子状に敷設する補強繊維配置工程と、前記成形型の充填溝内の前記蓄光樹脂材料を固化し、前記蓄光樹脂材料内に前記補強繊維を配置した固化物を得る固化工程と、前記固化物を脱型する脱型工程とを備えるものとして具体化することもできる。即ち、本発明に係るFRP製グレーチングの製造方法は、蓄光剤の混合割合を変えた複数回の樹脂充填工程を備えるものとして具体化する以外に、1回のみの樹脂充填工程を備えるものとして具体化することもできる。
【0046】
次に、本発明の実施の形態2に係るFRP製グレーチングについて説明する。図4(a)は本発明の実施の形態2に係るFRP製グレーチングを示す正面図であり、図4(b)は本発明の実施の形態2に係るFRP製グレーチングの閉塞板の製造方法を示す説明図である。
【0047】
実施の形態2に係るFRP製グレーチングは、図4(a)に示すように、実施の形態1と同様の枡格子状のFRP製グレーチング本体10の厚さ方向一端面(図4中の上端面)の全体に、対応する矩形平板状の閉塞板50を固着してなる。詳細には、FRP製グレーチング本体10は、透光性のマトリックス樹脂10内に補強繊維としてのガラスロービング(図示略)を充填した複合材料からなり、実施の形態1と同様、枡格子板状に一体形成され、厚さ方向に貫通する矩形状の貫通孔を縦横に整列して多数配置している。また、閉塞板50は、FRP製グレーチング本体10と同様の材料を使用して、FRP製グレーチング本体10の厚さ方向一端面の矩形状乃至長方形状と同一の矩形状乃至長方形状をなす平板状に一体成形されている。そして、閉塞板50は、FRP製グレーチング本体10の厚さ方向一端面の全体に融着して固着されている。具体的には、閉塞板50は、実施の形態1と同様の透明または透光性を有する熱硬化性樹脂に補強繊維の一例としてのガラス繊維を充填してなる基部51と、基部の一側面全体に微小厚み(約0.2〜0.3mm)で一体成形されたゲルコート層52とを有する。基部51内には透明なガラス繊維55が充填して配置されている。また、ゲルコート層52の内部には、実施の形態1と同様の蓄光剤が均一に分散して含有されている。なお、図4では、説明の便宜上、ゲルコート層52の厚み及び蓄光剤56の寸法を誇張して表示している。実施の形態2では、FRP製グレーチング本体10に一体的に融着した閉塞板50が、FRP製グレーチング本体10の厚さ方向一端面で全ての貫通孔を閉塞し、FRP製グレーチング本体10全体の強度を約20%以上増大する。また、表面側に位置する表面の微小厚層としてのゲルコート層52にのみ蓄光剤を含有するため、高価な蓄光剤を少量使用するだけで、FRP製グレーチングの側面や底面側のみならず、表面側でも一層大きな蓄光及び発光効果(残光輝度)を有することになる。
【0048】
実施の形態2に係るFRP製グレーチングは、例えば、図4(b)に示すように、対応する矩形平板状の成形空間151を有する成形型150により成形することができる。具体的には、まず、実施の形態1と同様の透明な熱硬化性樹脂(例えば、同様の不飽和ポリエステル樹脂)に同様の蓄光剤を所定の混合割合(例えば、実施の形態1と同様の今後割合)で混合し、均一に分散して蓄光樹脂材料を調整しておく。次に、その蓄光樹脂材料を、成形型150の成形空間151の底面に、所定の微小厚み(約0.2〜0.3mm)で塗布してゲルコート層52を形成する。次に、そのゲルコート層52上に(蓄光剤を含有しない)同様の透明な熱硬化性樹脂を充填すると共に、その内部にガラス繊維55を充填して、基部51を形成する。なお、ゲルコート層52の熱硬化性樹脂及び基部51の熱硬化性樹脂には、実施の形態1と同様の硬化剤及び効果促進剤を添加しておく。これにより、ゲルコート層52及び基部51が硬化して固化し、基部51の表面側にゲルコート層52が一体形成された閉塞板50を得ることができる。一方、FRP製グレーチング本体10に対する閉塞板50の固着は、一方または双方の樹脂が完全に固化する前で、少なくとも接合部分の樹脂が若干溶融状態乃至ゲル状であるときに、閉塞板50の厚さ方向他側面(ゲルコート層52と反対側の面)をFRP製グレーチング本体10の厚さ方向一端面に整合して押圧することにより、閉塞板50をFRP製グレーチング10に一体的に融着して固着する。
【実施例1】
【0049】
次に、本発明を具体的に実施した実施例1について説明する。図5は本発明の実施例1に係るFRP製グレーチングの製造に使用した蓄光剤の粒度分布図である。
【0050】
実施例1では、透光性のマトリックス樹脂または透明な熱硬化性樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂を使用し、具体的には、昭和高分子株式会社製の商品名「リゴラックKG−2000シリーズ)を使用した。なお、この不飽和ポリエステル樹脂の液状特性は、規格値として、色数が100ハーゼン以下、粘度が5〜10dPa・s、ゲル化時間が5〜10分、最高発熱温度が120〜170℃、スチレンモノマー含有率が30〜33wt%である。なお、硬化性(ゲル化時間・最高発熱温度)は、25℃、淡色促進剤PA−202を0.15部/55%MEK、PO1.0部での測定結果である。また、蓄光剤としては、根本特殊化学株式会社製の商品名「ルミノーバN夜光BG−300M」を使用した。この蓄光剤は、規格によれば、図5に示すような粒度分布(D50:30±5μm)を有し(島津製作所製SALD−2100使用)、最大粒径(ツブゲージ法)が100μm以下のものである。また、この蓄光剤は、365nmの光照射時の発光ピーク波長が492±2nmを有している(発光色:薄黄緑)。更に、この蓄光剤は、D65400ルクスで20分間の光照射で、標準品と比較して10分後及び60分後の残光輝度が100±10%である。一方、実際に使用した蓄光剤の実測値では、粒度分布は34.7μm、最大粒径は70μm、発光ピーク波長は491nm、残光輝度は、10分後で102%、60分後で104%であった。実施例1では、前記不飽和ポリエステル樹脂20kgに対し前記蓄光剤を2kg混合して均一に分散し、蓄光樹脂材料を調整した。そして、この蓄光樹脂材料を使用して、実施の形態1で述べたような製造方法により、試料として、図1に示すようなFRP製グレーチングを製造した。
【0051】
実施例1では、この試料(FRP製グレーチング)について、残光輝度特性試験を行った。試験条件は、下記の通りとした。
励起:D65常用光源 400lx,20分
測定:冷機停止180分後までの残光輝度(外挿法により求めた、240・300・360・420・480分の輝度)(H方向平均値)
下地色:黒色・白色
測定温度:23±2℃
使用機器:D65常用光源 F65D−A(スガ試験機製)
照度計 IM−5(TOPCON製)
色彩輝度計 BM−5A(TOPCON製)
ラジオグラフアナライザー NIM−1000(根本特殊化学製)
【0052】
残光輝度測定結果を表1に示す。
【表1】

【0053】
輝度と人間の明るさに対する感覚の目安を表2に示す。なお、表2中、DIN67510はドイツ工業規格に規定された試験方法である。
【表2】

【0054】
表1の結果より、実施例1の試料(FRP製グレーチング)は、180分経過後まで、非常に明るく、はっきり目視により確認できることが実証された。
【実施例2】
【0055】
次に、本発明を具体的に実施した実施例2について説明する。図6は本発明の実施例2に係るFRP製グレーチングの製造に使用した蓄光剤の粒度分布図である。
【0056】
実施例2では、透光性のマトリックス樹脂または透明な熱硬化性樹脂として、実施例1と同様、不飽和ポリエステル樹脂を使用し、具体的には、昭和高分子株式会社製の商品名「リゴラックKG−2000シリーズ)を使用した。また、蓄光剤としては、根本特殊化学株式会社製の商品名「ルミノーバN夜光G−300M」を使用した。この蓄光剤は、規格によれば、図6に示すような粒度分布(D50:30±5μm)を有し(島津製作所製SALD−2100使用)、最大粒径(ツブゲージ法)が100μm以下のものである。また、この蓄光剤は、365nmの光照射時の発光ピーク波長が521±2nmを有している(発光色:薄黄緑)。更に、この蓄光剤は、D65400ルクスで20分間の光照射で、標準品と比較して10分後及び60分後の残光輝度が100±10%である。一方、実際に使用した蓄光剤の実測値では、粒度分布は31.6μm、最大粒径は90μm、発光ピーク波長は523nm、残光輝度は、10分後で104%、60分後で101%であった。実施例2では、前記不飽和ポリエステル樹脂20kgに対し前記蓄光剤を2kg混合して均一に分散し、蓄光樹脂材料を調整した。そして、この蓄光樹脂材料を使用して、実施の形態1で述べたような製造方法により、試料として、図1に示すようなFRP製グレーチングを製造した。
【0057】
実施例2では、この試料(FRP製グレーチング)について、残光輝度特性試験を行った。試験条件は、実施例1と同様とした。
【0058】
残光輝度測定結果を表3に示す。
【表3】

【0059】
表3の結果より、実施例2の試料(FRP製グレーチング)は、180分経過後まで、非常に明るく、はっきり目視により確認できることが実証された。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のFRP製グレーチングは、建築物の外装材、ベランダ等の床材、壁材、廊下の階段のステップ材、パーティション材、バルコニー等のフェンス材、室内外の採光材、日除け材、ルーバー、その他各装飾材として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は本発明の実施の形態1に係るFRP製グレーチングの一部を示す斜視図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態1に係るFRP製グレーチングにおけるマトリックス樹脂と補強繊維との関係を概略的に示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図3】図3は本発明の実施の形態1に係るFRP製グレーチングの製造方法の補強繊維配置工程を説明するための斜視図である。
【図4】図4(a)は本発明の実施の形態2に係るFRP製グレーチングを示す正面図であり、図4(b)は本発明の実施の形態2に係るFRP製グレーチングの閉塞板の製造方法を示す説明図である。
【図5】図5は本発明の実施例1に係るFRP製グレーチングの製造に使用した蓄光剤の粒度分布図である。
【図6】図6は本発明の実施例2に係るFRP製グレーチングの製造に使用した蓄光剤の粒度分布図である。
【符号の説明】
【0062】
10:マトリックス樹脂、20:ガラスロービング(補強繊維)
50:閉塞板、52:ゲルコート層、55:ガラス繊維、56:蓄光剤
100:成形型、110:充填溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性のマトリックス樹脂内に補強繊維を充填した複合材料を格子状に成形してなり、前記格子状に成形した複合材料の全体にわたって蓄光剤を混合して略均一に分散させ、前記格子状に成形した複合材料の全体にわたって蓄光及び発光自在としたことを特徴とするFRP製グレーチング。
【請求項2】
透明な熱硬化性樹脂からなる格子状のマトリックス樹脂内に、透明なガラス繊維からなるガラスロービングを前記マトリックス樹脂の格子状に対応する格子状に敷設充填すると共に、前記ガラスロービングに前記マトリックス樹脂を含浸してなり、前記格子状のマトリックス樹脂の全体及び前記ガラスロービングに含浸した前記マトリックス樹脂の全体にわたって蓄光剤を略均一に混合分散し、前記格子状に成形したマトリックス樹脂及び前記ガラスロービングの全体にわたって蓄光及び発光自在としたことを特徴とするFRP製グレーチング。
【請求項3】
前記蓄光剤は、前記マトリックス樹脂に対して約5〜10重量%の割合で混合されることを特徴とする請求項1または2記載のFRP製グレーチング。
【請求項4】
前記蓄光剤は、前記マトリックス樹脂に対して約10重量%の割合で混合されることを特徴とする請求項1または2記載のFRP製グレーチング。
【請求項5】
更に、透光性のマトリックス樹脂内に補強繊維を充填した複合材料を平板状に成形してなる閉塞板を厚さ方向一端面に融着して前記厚さ方向一端面を閉塞すると共に、前記閉塞板の表面層であるゲルコート層にのみ蓄光剤を略均一に混合分散させ、前記閉塞板の表面の全面にわたって蓄光及び発光自在としたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のFRP製グレーチング。
【請求項6】
前記マトリックス樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂に硬化剤及び硬化促進剤を添加して硬化してなり、硬化時の雰囲気温度の高低に応じて、前記硬化剤の添加量を約1〜3重量%の範囲内で増減すると共に、前記硬化促進剤の添加量を約0.6〜1重量%の範囲内で増減したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のFRP製グレーチング。
【請求項7】
型の溝内に、補強繊維を配置すると共に、蓄光剤を混合した透光性樹脂材料を充填して固化するグレーチングの製造方法であって、
前記透光性樹脂材料の充填工程として複数回の樹脂充填工程を備え、
初回の樹脂充填工程より後の回の樹脂充填工程における前記透光性樹脂材料への前記蓄光剤の混合割合を徐々に高くしたことを特徴とするグレーチングの製造方法。
【請求項8】
透光性樹脂材料に蓄光剤を均一に混合分散して蓄光樹脂材料を調製する調製工程と、
格子状の充填溝を有する成形型の前記充填溝内に前記蓄光樹脂材料を充填する樹脂充填工程と、
紐状の補強繊維に前記蓄光樹脂材料を含浸しながら、前記補強繊維を前記成形型の充填溝内に格子状に敷設する補強繊維配置工程と、
前記成形型の充填溝内の前記蓄光樹脂材料を固化し、前記蓄光樹脂材料内に前記補強繊維を配置した固化物を得る固化工程と、
前記固化物を脱型する脱型工程と
を備えることを特徴とするFRP製グレーチングの製造方法。
【請求項9】
透光性樹脂材料に蓄光剤を第1の混合割合で混合して第1の蓄光樹脂材料を調製する第1の調製工程と、
前記透光性樹脂材料に前記蓄光剤を前記第1の混合割合より高い割合である第2の混合割合で混合して第2の蓄光樹脂材料を調製する第2の調製工程と、
格子状の充填溝を有する成形型の前記充填溝内に前記第1の蓄光樹脂材料を途中まで充填する第1の樹脂充填工程と、
紐状の補強繊維に前記第1の蓄光樹脂材料を含浸しながら、前記補強繊維を前記成形型の充填溝内に格子状に敷設する補強繊維配置工程と、
前記成形型の充填溝内に、前記第1の蓄光樹脂材料の上から前記第2の蓄光樹脂材料を充填する第2の樹脂充填工程と、
前記成形型の充填溝内の前記第1及び第2の蓄光樹脂材料を固化し、前記第1及び第2の蓄光樹脂材料内に前記補強繊維を配置した固化物を得る固化工程と、
前記固化物を脱型する脱型工程と
を備えることを特徴とするFRP製グレーチングの製造方法。
【請求項10】
前記第1の蓄光樹脂材料中の前記蓄光剤の混合割合を、前記第2の蓄光樹脂材料中の前記蓄光剤の混合割合の約1/2としたことを特徴とする請求項9記載のFRP製グレーチングの製造方法。
【請求項11】
前記固化工程から前記脱型工程に至る間に、前記成形型を約50〜60℃の温度に加温維持し、前記脱型工程において前記固化物を脱型することを特徴とする請求項9または10記載のFRP製グレーチングの製造方法。
【請求項12】
少なくとも、前記成形型の充填溝内に前記補強繊維を配置する間、前記成形型を微振動させて、前記蓄光樹脂材料中の前記蓄光剤の均一分散を維持することを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項記載のFRP製グレーチングの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−299752(P2006−299752A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−126989(P2005−126989)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(505155034)株式会社岐阜化成 (2)
【Fターム(参考)】