説明

GLP−1アゴニスト及びメチオニンを含む薬学的組成物

本発明は、GLP−1アゴニスト又は/及びその薬理学的に許容される塩、及び場合により少なくとも1つの薬学的に許容される佐剤を含む液体組成物に関する。液体組成物は、メチオニンを含有すること場合によりメトホルミン及び/又は持効型インスリン/インスリン誘導体を用いるアドオン療法として、メチオニンを含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、GLP−1アゴニスト又は/及びその薬理学的に許容される塩、及び場合により少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤を含む液体組成物であって、メチオニンを含む液体組成物に関する。
【0002】
本出願は、さらに、糖尿病を治療するための本発明に従う組成物に関する。本出願は、さらに、糖尿病を治療するための医薬品の製造における本発明に従う組成物の使用に関する。本出願は、さらに、GLP−1アゴニスト又は/及びその薬理学的に許容される塩を、メチオニン、及び場合により少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤と共に製剤化する工程を含む、本発明に従う組成物を製造するための方法に関する。本出願は、さらに、患者へ組成物を投与する工程を含む、本発明に従う組成物で患者を治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
GLP−1化合物の通常の組成物は、等張化剤、pHを調整するための緩衝剤、及び保存剤を含む。
【0004】
特許文献1(Zealand Pharmaceuticals)は、Ser39−エキセンジン−4(1−39)−NH2)、リン酸二水素ナトリウム、及び保存剤の液体組成物を開示している。
【0005】
特許文献2(Zealand Pharmaceuticals)は、pH5.3の、安定化エキセンジン、50mMヒスチジン、100〜200mMスクロース、マンニトール又は他の許容される糖、20mMメチオニン、20mMアスパラギン−グルタミン又はAspを含む液体組成物を開示している。安定化は、例えば、Gln13、Met14、Trp25、又はAsn28位での、エキセンジン−4(1−39)のアミノ酸構築ブロックのある特定の修飾によってもたらされる。
【0006】
特許文献3(Novo Nordisk)は、アセチル化GLP−1、保存剤としてのフェノール、等張化剤としてのマンニトール及びグリセリン、並びに、場合により、緩衝剤を含む液体組成物を開示している。
【0007】
特許文献4(Novo Nordisk)は、リラグルチド(GLP−1化合物)、界面活性物質としてのポロキサマー188又はポロキサマー407(Pluronic F−127)、フェノール、プロピレングリコール、及びリン酸ナトリウム(pH 7.7)を含む液体組成物を開示している。ポロキサマー−188又はポロキサマー−407の添加は安定化をもたらした。
【0008】
エキセンジンは、血中グルコース濃度を低下させることができるペプチドの群である。エキセンジンは、GLP−1(7−36)の配列に対してある類似性を有する(53%、非特許文献1)。エキセンジン−3及びエキセンジン−4は、エキセンジン受容体と相互作用することによって、モルモット膵臓の腺房細胞における細胞cAMP産生の増加を刺激する(非特許文献2)。エキセンジン−3は、エキセンジン−4とは対照的に、膵臓の腺房細胞におけるアミラーゼの放出の増加をもたらす。エキセンジンはGLP−1アゴニストとして作用する。
【0009】
グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)は、グルコース又は脂肪の経口摂取後のインスリン反応を増強する内分泌ホルモンである。一般的に、GLP−1は、グルカゴン濃度を低下させ、胃排出を遅らせ、(プロ)インスリン合成を刺激し、インスリンに対する感受性を増強し、インスリン非依存性グリコーゲン合成を刺激する(非特許文献3〜5)。ヒトGLP−1は37個のアミノ酸残基を有する(非特許文献6、7)。GLP−1の活性断片としてはGLP−1(7−36)及びGLP−1(7−37)が挙げられる。
【0010】
エキセンジン−3、エキセンジン−4及びエキセンジンアゴニストは、胃運動性及び胃排出を減らすことによって、糖尿病を治療し高血糖症を予防することについて提案された(特許文献5、6)。
【0011】
エキセンジンアナログは、天然エキセンジン−4配列のアミノ酸置換及び/又はC−末端切断を特徴とし得る。このようなエキセンジンアナログは、特許文献7、8及び9に記載されている。
【0012】
AVE0010の固相合成が特許文献1に記載されている。AVE0010は配列:desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2を有する。この物質は特許文献1において配列番号93として公開されている。
H−G−E−G−T−F−T−S−D−L−S−K−Q−M−E−E−E−A−V−R−L−F−l−E−W−L−K−N−G−G−P−S−S−G−A−P−P−S−K−K−K−K−K−K−NH2 (配列番号1)
【0013】
エキセンジン−4(39 AS)は以下の配列を有する:
H−G−E−G−T−F−T−S−D−L−S−K−Q−M−E−E−E−A−V−R−L−F−I−E−W−L−K−N−G−G−P−S−S−G−A−P−P−P−S−NH2 (配列番号2)
【0014】
エキセンジン−3は以下の配列を有する(非特許文献8):
H−His−Ser−Asp−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2 (配列番号3)
【0015】
GLP−1は以下の配列を有する:
H−A−E−G−T−F−T−S−D−V−S−S−Y−L−E−G−Q−A−A−K−E−F−I−A−W−L−V−K−G−R−NH2 (配列番号4)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】WO2001/04156
【特許文献2】WO 2004/035623
【特許文献3】WO 2005/021022
【特許文献4】WO 2006/051110
【特許文献5】US 5,424,286
【特許文献6】WO98/05351
【特許文献7】WO 99/07404
【特許文献8】WO 99/25727
【特許文献9】WO 99/25728
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Goke et al. J. Biol Chem 268, 19650−55
【非特許文献2】Raufman, 1996, Reg. Peptides 61:1−18
【非特許文献3】Holst (1999), Curr. Med. Chem 6:1005
【非特許文献4】Nauck et al. (1997) Exp Clin Endocrinol Diabetes 105: 187
【非特許文献5】Lopez−Delgado et al. (1998) Endocrinology 139:2811
【非特許文献6】Heinrich et al., Endocrinol. 115:2176 (1984)
【非特許文献7】Uttenthal et al., J Clin Endocrinol Metabol (1985) 61:472
【非特許文献8】J. Bio. Chem., 267, 1992, 7402−7405
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、GLP−1アゴニストを含む液体製剤の安定性を増加させることである。特に、本発明の目的は、物理的及び化学的完全性を改善することである。本発明者らは、GLP−1アゴニストをメチオニンと共に製剤化することによってこの目的が達成されることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0019】
メチオニンが、AVE0010などのGLP−1アゴニストを含む組成物の保存安定性を増加させることができることがわかった。メチオニンはこれらの組成物の物理的完全性に影響を与えない。
【0020】
驚くべきことに、メチオニンの添加が、メチオニンの酸化生成物、高分子量のタンパク質、及び総不純物の割合を減少させることによって、本発明に従う組成物の保存安定性を改善することができることがわかった。これらのパラメータは、個々に又は一緒に、組成物の化学的完全性の指標である。
【0021】
驚くべきことに、本発明に従う組成物の生物学的活性がメチオニンの添加によって増加することがさらにわかった。
【0022】
薬学的に活性なポリペプチドの安定性は、様々な機構によって損なわれ得る。これらとしては、pH、温度、光、及びある成分の影響が挙げられる。
【0023】
GLP−1アゴニストの製剤の様々な通常の成分は、GLP−1アゴニストを含む製剤の化学的又は/及び物理的完全性並びに保存安定性にとって不利であり得る。これらは、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポロキサマー188、塩化ベンザルコニウム、及びリジンである。従って、本発明に従う組成物は、好ましくはこれらの成分を含まない。
【0024】
従って、本発明は、GLP−1アゴニスト又は/及びその薬理学的に許容される塩、及び場合により少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤を含む液体組成物であって、組成物がメチオニンを含む、液体組成物を提供する。
【0025】
本発明に従う組成物は、好ましくは、0.5mg/mL〜20mg/mLの範囲の量で、より好ましくは1mg/mL〜5mg/mLの範囲の量で、メチオニンを含む。D型のメチオニンが使用され得る。同様に、L型のメチオニンが使用され得る。同様に、任意の所望の割合のD型及びL型の混合物が使用され得る。
【0026】
特に、本発明に従う組成物は、界面活性剤、例えば、ポリオール、並びに多価アルコールの部分及び脂肪酸エステル並びにエーテル、例えば、グリセリン及びソルビトールのそれらを含まない。本発明に従う組成物は、特に、Span(登録商標)、Tween(登録商標)、Myrj(登録商標)、Brij(登録商標)、Cremophor(登録商標)からなる群より選択される、グリセリン及びソルビトールの部分及び脂肪酸エステル並びにエーテルを含まない。さらに、本発明に従う組成物は、特に、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、Pluronic、Tetronicからなる群より選択されるポリオールを含まない。特に、本発明に従う組成物は、ポリソルベート、ポリソルベート及びポロキサマーからなる群より選択される少なくとも1つの物質を含まない。
【0027】
特に、本発明に従う組成物は、ポリソルベート、例えば、ポリソルベート20を実質的に含まず、好ましくは含まない。
【0028】
特に、本発明に従う組成物は、ポリソルベート80を実質的に含まず、好ましくは含まない。
【0029】
特に、本発明に従う組成物は、ポロキサマー、例えば、ポロキサマー188を実質的に含まず、好ましくは含まない。
【0030】
特に、本発明に従う組成物は、塩化ベンザルコニウムを実質的に含まず、好ましくは含まない。
【0031】
特に、本発明に従う組成物は、ヒスチジンを実質的に含まず、好ましくは含まない。
【0032】
特に、本発明に従う組成物は、EDTA、特にEDTAナトリウムを実質的に含まず、好ましくは含まない。
【0033】
本発明に従う組成物は、pHを緩衝化するために通常使用される1つ又はそれ以上の物質(緩衝物質)を含み得る。このような緩衝物質の例は、例えば、5mg/mlまで、4mg/mlまで、3mg/mlまで、又は2mg/mlまでの量の、酢酸塩、クエン酸塩及びリン酸塩である。
【0034】
本発明に従う組成物は、同様に、緩衝物質を実質的に含まない場合がある。同様に、本発明に従う組成物は、緩衝物質を含まない場合がある。
【0035】
本発明に従う組成物は、クエン酸塩、酢酸塩、及び/又はリン酸塩を実質的に含まないか、又はクエン酸塩、酢酸塩、及び/又はリン酸塩を含まない場合がある。
【0036】
特に、本発明に従う組成物は、ヒスチジン及びEDTAナトリウムを実質的に含まず、好ましくは含まない。
【0037】
特に、本発明に従う組成物にはインスリンが存在しない。
【0038】
本発明の薬学的組成物は、酸性又は生理学的pHを有し得る。酸性pH範囲は、好ましくは、pH 1〜6.8、pH 3.5〜6.8、又はpH 3.5〜5の範囲内にある。生理学的pHは、好ましくはpH 2.5〜8.5、より好ましくはpH 4.0〜8.5、なおより好ましくはpH 4.0〜6.0の範囲内にある。特に好ましいのは、pH約4.5である。pH調整について、生理学的に安全な希酸(通常、HCl)及びアルカリ(通常、NaOH)が適切である。
【0039】
本発明に従う組成物は、適切な保存剤を含み得る。適切な保存剤は、例えば、フェノール、m−クレゾール、ベンジルアルコール、及び/又はp−ヒドロオキシ安息香酸エステルである。m−クレゾールが好ましい。
【0040】
さらに、本発明に従う組成物は、適切な等張化剤を含み得る。適切な等張化剤は、例えば、グリセリン、デキストロース、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、グルコース、NaCl、カルシウム又はマグネシウム化合物、例えばCaCl2などである。グリセリン、デキストロース、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、及びグルコースの濃度は、通常、100〜250mMの範囲内、NaClは150mMまでの濃度内である。グリセリンが好ましい。
【0041】
特に、組成物は、非経口投与用に意図される。本発明に従う組成物は、好ましくは注射用組成物、より好ましくは皮下注射用のものである。特に、本発明の組成物は、1日1回の注射に適している。
【0042】
特に、本発明に従う製剤は、+5℃又は25℃の温度での1ヶ月、2ヶ月、4ヶ月、又は6ヶ月間保存後、保存開始時の活性の少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%の活性を有する。
【0043】
本出願において、「活性」は、本発明に従う製剤において使用されるGLP−1アゴニストの活性を意味する。GLP−1アゴニストの活性を測定するための方法は、当業者に公知である。
【0044】
好ましくは、本発明に従う組成物は、25℃で6ヶ月間保存後少なくとも89%又は少なくとも90%のGLP−1アゴニストの生物学的活性を有する。本発明に従う組成物は、好ましくは、40℃で6ヶ月間保存後少なくとも45%又は少なくとも50%のGLP−1アゴニストの生物学的活性を有する。
【0045】
特に、本発明に従う製剤は、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、又は6ヶ月間保存後化学的完全性を示す。化学的完全性は、特に、+5℃、25℃、又は40℃の温度での保存の後に、製剤が、保存の開始と比較して実質的に化学的に未変化の形態の活性物質を少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%を含むことを意味する。
【0046】
化学的完全性は、GLP−1アゴニストの化学的完全性を意味し得る。GLP−1アゴニストは、メチオニン残基(例えば、AVE0010中の14位)を含み得る。GLP−1アゴニストの化学的完全性は、特に、メチオニン残基の酸化が防止されることを意味する。ここで、化学的完全性は、特に、1、2、3、4、又は6ヶ月間の保存の後のGLP−1アゴニストの全メチオニン含有量に対する酸化メチオニンの割合が、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、0.4%未満、又は0.3%未満であることを意味する。保存は、例えば、5℃、25℃、又は40℃で行われ得る。5℃で6ヶ月間の保存が好ましく、この場合、酸化メチオニンの割合は0.3%未満である。同様に、25℃で6ヶ月間の保存が好ましく、この場合、酸化メチオニンの割合は、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、0.4%未満、又は0.3%未満である。同様に、40℃で6ヶ月間の保存が好ましく、この場合、酸化メチオニンの割合は、1%未満、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、0.4%未満、又は0.3%未満である。
【0047】
化学的完全性は、本発明に従う製剤中の総不純物の非常に低い割合を意味し得る。40℃で6ヶ月間保存後製剤中に存在するGLP−1アゴニストの全質量に対する総不純物の割合は、特に50%未満、25℃での保存の後に10%未満、又は/及び5℃での保存の後に1.8%未満である。
【0048】
化学的完全性は、本発明に従う製剤中の高分子量のタンパク質の非常に低い割合を意味し得る。40℃で6ヶ月間保存後製剤中に存在するGLP−1アゴニストの全質量に対する高分子量のタンパクの割合は、特に5%未満、4%未満、3%未満、又は2%未満である。25℃での6ヶ月間保存後、製剤中に存在するGLP−1アゴニストの全質量に対する高分子量のタンパクの割合は、特に0.8%未満、0.7%未満、又は0.6%未満である。
【0049】
特に、本発明に従う製剤は、1ヶ月、2ヶ月、4ヶ月、又は6ヶ月間保存後物理的完全性を示す。物理的完全性は、特に、+5℃、25℃、又は40℃の温度での保存の後に、製剤が、保存の開始と比較して実質的に物理的に未変化の形態の活性物質を少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%を含むことを意味する。
【0050】
物理的完全性は、GLP−1アゴニストの完全性を意味し得る。物理的完全性は、特に、GLP−1アゴニストが、例えばフィブリルなどの凝集体を形成しないことを意味する。
【0051】
GLP−1アゴニストは、好ましくは、エキセンジン−3及びそのアナログ及び誘導体、エキセンジン−4及びそのアナログ及び誘導体からなる群より選択され、この場合、GLP−1アゴニストは、より好ましくは、AVE0010及びエキセンジン−4からなる群より選択される。
【0052】
エキセンジン−3、エキセンジン−3のアナログ及び誘導体、エキセンジン−4、並びにエキセンジン−4のアナログ及び誘導体は、WO 01/04156(特許文献1)、WO 98/30231、US 5,424,286(特許文献5)、EP出願99 610043.4、及びWO 2004/005342において見られ得る。これらの文献は、参照により本明細書に組み入れられる。これらの文献に記載のエキセンジン−3、エキセンジン−4、並びにそのアナログ及び誘導体は、それらに記載の方法によって合成され得、その後、修飾が場合により行われる。
【0053】
AVE0010(配列番号1)、エキセンジン−4(配列番号2)、及びエキセンジン−3(配列番号3)の配列は、高度の類似性を示す。AVE0010及びエキセンジン−4の配列は、1〜37位で同一である。エキセンジン−4の配列1〜39は、48〜86位でのエキセンジン−3配列と39個の位置のうち37個で同一である(94%)。配列を参照して、当業者は、特定の配列(例えば、AVE0010又はエキセンジン−4の配列)に関連する、本明細書において指定される位置を他の配列へ容易に変換することができる。
【0054】
エキセンジン−3又は/及びエキセンジン−4のアナログ及び誘導体は、特に、修飾アミノ酸配列を含有する。例えば、単一のアミノ酸が欠失され得る(例えば、エキセンジン−4中のdesPro36、desPro37、desAsp28、desMet(O)14、及びエキセンジン−3中の対応の位置)。同様に、単一の位置が置換され得(例えば、エキセンジン−4中のMet(O)14、Trp(O2)25、IsoAsp28、Asp28Pro38、及びエキセンジン−3中の対応の位置)、この場合、非天然アミノ酸、例えば、Met(O)(メチオニンスルホキシド又はメチオニンスルホン)、Trp(O2)(N−ホルミルキヌレニン)、又は/及びIsoAsp(β−アスパルテート又はイソアスパルテート)も使用され得る。非天然アミノ酸は、配列中へ、対応のアミノ酸構築ブロックの形態で、容易に挿入され得る。さらに、C末端又は/及びN末端は、例えば、−(Lys)−、−(Lys)2−、−(Lys)3−、−(Lys)4−、−(Lys)5−、−(Lys)6−、−Asn−(Glu)5−などの追加の配列によって修飾され得、この場合、−(Lys)4−、−(Lys)5−、−(Lys)6−、−Asn−(Glu)5−が好ましい。C末端のカルボキシル基は、好ましくはアミド基(−NH2)へ修飾される。場合によりC末端又は/及びN末端の修飾は、合成の完了後のさらなる工程として行われる。
【0055】
薬学的に許容される塩は、本発明に従う方法の合成サイクルの完了後のさらなる工程において製造され得る。ペプチドの薬学的に許容される塩の製造は当業者に公知である。好ましい薬学的に許容される塩は酢酸塩である。
【0056】
GLP−1アゴニストは、好ましくは、エキセンジン−4、エキセンジン−4のアナログ及び誘導体、並びにその薬理学的に許容される塩からなる群より選択される。
【0057】
さらなる好ましいGLP−1アゴニストは、以下からなる群より選択されるエキセンジン−4のアナログである:
H−desPro36−エキセンジン−4−Lys6−NH2,
H−des(Pro36,37)−エキセンジン−4−Lys4−NH2,
H−des(Pro36,37)−エキセンジン−4−Lys5−NH2
及びその薬理学的に許容される塩。
【0058】
さらなる好ましいGLP−1アゴニストは、以下からなる群より選択されるエキセンジン−4のアナログである:
desPro36[Asp28]エキセンジン−4 (1−39),
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4 (1−39),
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4 (1−39),
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−4 (1−39),
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−2 (1−39),
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−2 (1−39),
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4 (1−39),
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)
及びその薬理学的に許容される塩。
【0059】
さらなる好ましいGLP−1アゴニストは、ペプチド−Lys6−NH2がエキセンジン−4のアナログのC末端へ結合されている、前段落に記載される群より選択されるエキセンジン−4のアナログである。
【0060】
さらなる好ましいGLP−1アゴニストは、以下からなる群より選択されるエキセンジン−4のアナログである:
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2,
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2,
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2,
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2,
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2,
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2,
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2,
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2,
H−desAsp28 Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2,
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2,
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2,
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2,
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2,
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2,
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2,
desMet(O)14 Asp28 Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2,
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2,
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28] エキセンジン−4(1−39)−NH2,
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2,
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2,
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28] エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2,
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14, Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2,
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14, Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2,
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14, Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2,
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28] エキセンジン−4(1−39)−N
H2,
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14, Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2,
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2,
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
及びその薬理学的に許容される塩。
【0061】
同様に、GLP−1アゴニストは、GLP−1並びにGLP−1のアナログ及び誘導体からなる群より選択され得る。さらなる好ましいGLP−1アゴニストは、Arg34,Lys26(Nε(γ−グルタミル(Nα−ヘキサデカノイル)))GLP−1(7−37)[リラグルチド]及びその薬理学的に許容される塩からなる群より選択される。
【0062】
さらなる好ましいGLP−1アゴニストはAVE0010である。AVE0010は、配列desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(配列番号1)を有する。同様に、AVE0010の薬理学的に許容される塩が好ましい。GLP−1アゴニスト、例えばAVE0010は、特に、0.01mg/ml〜0.5 mg/ml又は0.05mg/ml〜1.5mg/mlの範囲の量で使用される。
【0063】
特定の実施態様において、本発明に従う製剤は、以下の成分を含む:
(a) desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(例えば、約0.1mg/mL)、
(b) 酢酸ナトリウム三水和物(約3.5mg/mL)、
(c) m−クレゾール(約2.7mg/mL)、
(d) L−メチオニン(約3mg/mL)、
(e) 85%グリセリン(約18mg/mL)、
(f) pH約4.5への調整が必要である場合、約0.1N塩酸、
(g) pH約4.5への調整が必要である場合、約0.1N NaOH溶液、及び
(h) 水。
【0064】
特に、本発明に従う製剤は、(a)〜(h)に記載の成分からなる。
【0065】
本出願において、「約」は、成分が、例えば、本発明に従う組成物中において指定された値の±10、±20、又は±30%の範囲内で存在し得ることを意味する。
【0066】
本発明に従う組成物が1を超えるGLP−1アゴニストを含む場合、これらのGLP−1アゴニストは、互いに独立して選択される。
【0067】
本発明に従う組成物についての適切なパッケージングは、例えば、適切なクロージャを有する注射器又はガラス容器であり、ここから、個々の治療有効量が必要に応じて取り出され得る。等しく適切であるのは、用量を投与するための注射ペンであり;このようなペンは、本発明に従う薬学的組成物を含有する容器(例えば、カートリッジ)を含む。
【0068】
本発明は、さらに、患者へ組成物投与する工程を含む、本発明に従う組成物で患者を治療する方法を提供する。
【0069】
本発明に従う組成物は、特に、糖尿病の治療、特にI型又はII型糖尿病の治療に意図される。さらなる可能性のある適応症は、糖尿病に関連する症状である。好ましくは、本発明に従う組成物は、空腹時、食後又は/及び吸収後の血漿グルコース濃度を制御するために、耐糖能を改善するために、低血糖症を予防するために、膵臓のβ細胞の機能低下を予防するために、体重減少をもたらすために、又は/及び体重増加を予防するために使用される。
【0070】
本発明は、さらに、本明細書に記載されるように、糖尿病、特にI型又はII型、又は/及びそれに関連する症状の治療のための医薬品の製造における本発明に従う組成物の使用を提供する。
【0071】
本発明は、さらに、GLP−1アゴニスト又は/及びその薬理学的に許容される塩を、メチオニン及び、場合により、少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤と共に製剤化する工程を含む、本発明に従う組成物を製造するための方法を提供する。
【0072】
本発明は、さらに、特にメトホルミンの投与におけるアドオン療法としての、メトホルミン、スルホニル尿素、又はグリタゾン、持効型インスリン/インスリン誘導体、及び/又はそれらの組み合わせの投与と共の本発明に従う組成物の使用を提供する。
【0073】
本発明は、さらに、血糖値がメトホルミン、スルホニル尿素、又はグリタゾン、持効型インスリン/インスリン誘導体、及び/又はそれらの組み合わせの投与によって十分には制御され得ない患者における本発明に従う組成物の使用を提供する。
【0074】
本発明は、さらに、血糖コントロールを改善するための食事へのサプリメントとしてのII型糖尿病を有する患者における本発明に従う組成物の使用を提供する。
【0075】
特に、組成物は、desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、リラグルチド及び/又は薬理学的に許容される塩を、メチオニン及び/又は薬理学的に許容される塩と共に含む。
【0076】
特に、ランタス(Lantus)(登録商標)、NεB29−テトラデカノイルdes(B30)ヒトインスリン、又はインスマン(Insuman)(登録商標)が、持効型インスリン誘導体として有用である。
【0077】
特に好ましいのは、特に50歳より若い及び/又は少なくとも30の体格指数を有する患者における、II型糖尿病及び/又は肥満を治療するためのメトホルミン及び/又は持効型インスリン/インスリン誘導体及び/又はその薬理学的に許容される塩でのアドオン療法である。
【0078】
本発明において、アドオン療法は、特に、メトホルミン及びAVE0010でのII型糖尿病の治療を含む。メトホルミン及びAVE0010は、24時間の時間間隔で投与され得る。メトホルミン及びAVE0010は、1日1回の投薬で各々投与され得る。メトホルミン及びAVE0010は、異なる投与経路によって投与され得る。メトホルミンは経口投与され得、AVE0010は皮下投与され得る。
【0079】
本発明に従うアドオン療法で治療患者は、7%〜10%の範囲内のHbA1c値を有し得る。それらは、好ましくは、18〜50歳の年齢範囲内にある。
【0080】
本発明に従うアドオン療法における使用は、特に、II型糖尿病がメトホルミン単独では十分に制御され得ない患者に適用可能である。
【0081】
特に、メトホルミンは以下のように投与される:3ヶ月間、少なくとも1.0g/日、好ましくは少なくとも1.5g/日。
【0082】
本発明を下記の実施例及び図によってさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】異なる温度での保存の後のAVE0010の全メチオニン含有量に対する酸化メチオニンMet(ox)のパーセンテージ含有量を示す。1:保存開始t0。2:1ヶ月間の保存。3:3ヶ月間の保存。3:6ヶ月間の保存。バッチ894。
【図2】異なる温度での保存の後のAVE0010の全メチオニン含有量に対する酸化メチオニンMet(ox)のパーセンテージ含有量を示す。1:保存開始t0。2:1ヶ月間の保存。3:3ヶ月間の保存。3:6ヶ月間の保存。バッチ897。
【図3】異なる温度での保存の後の(AVE0010に対する)高分子量のタンパク質不純物のパーセンテージ含有量を示す。1:保存開始t0。2:1ヶ月間の保存。3:3ヶ月間の保存。3:6ヶ月間の保存。バッチ894。。
【図4】異なる温度での保存の後の(AVE0010に対する)高分子量のタンパク質不純物のパーセンテージ含有量を示す。1:保存開始t0。2:1ヶ月間の保存。3:3ヶ月間の保存。3:6ヶ月間の保存。バッチ897。
【図5】異なる温度での保存の後の(AVE0010に対する)全ての不純物のパーセンテージ含有量を示す。1:保存開始t0。2:1ヶ月間の保存。3:3ヶ月間の保存。3:6ヶ月間の保存。バッチ894。
【図6】異なる温度での保存の後の(AVE0010に対する)全ての不純物のパーセンテージ含有量を示す。1:保存開始t0。2:1ヶ月間の保存。3:3ヶ月間の保存。3:6ヶ月間の保存。バッチ897。
【実施例】
【0084】
実施例1
AVE0010及びメチオニンを含む液体組成物
研究の目的は、製品を6ヶ月間までの長期条件及び促進条件下でカートリッジ中に保存した場合の、メチオニン有り及び無しでのAVE0010の製剤(注射用液剤、0.1mg/ml)の化学的又は/及び物理的安定性の評価であった。
【0085】
下記の組成物を試験した:
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
臨床研究並びに販売及び流通に意図される単位で、製剤を保存した。
【表3】

【0089】
保存時間、保存条件、時点を下記の表に要約する。
【表4】

【0090】
製剤を水平に保存した。RHは相対湿度を意味する。時点0は保存の開始である。時点0での測定値を、試験した全ての条件についてのリファレンスとして使用した。試験の間、サンプルを+5±3℃で保存した。
【0091】
保存した製剤の物理的及び化学的安定性を、下記の試験の助けを借りて測定した:
・説明
・溶液の透明度及びその色
・pH
・化学的安定性(HPLCによって測定される純度及び不純物、特に酸化生成物及び総不純物の割合)
・HPSECによって測定される、高分子量のタンパク質
・目に見える粒子
・製剤の生物学的活性。
【0092】
結果
下記のパラメータに関してパラレルバッチ(894及び897)について、製剤を別々に研究した:
【0093】
・AVE0010の生物学的活性。5℃及び25℃で、6ヶ月後の活性は、最初の活性の少なくとも96%であった。本発明に従う組成物の活性は、比較組成物の活性よりも大きかった。40℃で、メチオニンの非存在下での6ヶ月後の活性は、約43%であった。メチオニンの存在下で、活性は約51%であり、従って、メチオニンの非存在下におけるよりも明らかに大きかった。
【0094】
・酸化生成物。100%ピーク面積法を使用して、Water Systems製のHPLC機器(モデル:Alliance)において、測定を行った。分離のために、移動相として0.1% TFA及びアセトニトリルの勾配並びに固定相としてC18逆相カラム(Jupiter)を使用した。5℃で、メチオニンの非存在下でのAVE0010中の酸化メチオニンMet(ox)の割合は、0.3%であった。25℃で、割合は0.6〜0.8%の範囲内であり、40℃で1.3%であった。製剤がメチオニンを含んだ場合、酸化メチオニンの割合は、明確により低かった。それは、試験した全ての条件下で0.2%を超えることはなかった。25℃で、割合は、従って、メチオニンの非存在下での含有量の約1/4〜1/3だけ、40℃においてさえも約1/6だけであった(図1及び2を参照のこと)。
【0095】
・高分子量のタンパク質。5℃で、割合は0.1〜0.3%であり、全保存時間の間、実質的に未変化のままであった。25℃で、割合は、メチオニンの非存在下で、それぞれ、0.9及び1.3%へ上昇した。メチオニンの存在下で、割合は0.4〜0.5%であり、従って、半分未満の高さであった。40℃で、割合は、メチオニンの非存在下で、それぞれ、5.4%及び6.2%であり、一方、それは、メチオニンの存在下で、それぞれ、1.6及び1.7%だけであり、従って、明らかにより低かった(図3及び4を参照のこと)。
【0096】
・総不純物。5℃で、総不純物は、6ヶ月間の保存時間にわたって1.2から1.8又は1.9%へ僅かに上昇した(メチオニンの非存在)。メチオニンが存在した場合、上昇は少しより低かった。25℃で、それぞれ、10.6%及び11.8%への上昇が観察された。メチオニンの存在下で、値は10%未満であった。40℃で、割合は54%まで上昇した(メチオニン無し)。メチオニンが存在した場合、割合は約47%だけであった(図5及び6を参照のこと)。
【0097】
パーセンテージ値は、酸化生成物、総不純物、及び高分子量タンパク質(HMWP)の含有量値(不純物のパーセンテージ値)である。
【0098】
いわゆる100%法を用いてHPLCによって全ての値を測定した。ここで、特に、それは、逆相HPLC(C18カラム)を含み、ここで、勾配法を移動相について使用した:
a)0.1% TFA、15% ACN及びb)0.1% TFA、75% ACN。
215nm (UV)で検出。
【0099】
注射用インスリン調製物についての欧州薬局方6.0に記載されるHPSECによって、高分子量タンパク質(HMWP)を検出した。
【0100】
データを下記の表に要約する:
【表5】

【0101】
結論
酸化生成物、高分子量のタンパク質、及び総不純物の割合は、個々に又は一緒に、組成物の化学的完全性の指標である。実施例組成物を用いての上述の結果から、
・GLP−1アゴニスト又は/及びその薬理学的に許容される塩(特にAVE0010又は/及びその薬理学的に許容される塩)、
・場合により少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤、
・並びにメチオニン
を含む本発明に従う液体組成物は、改善された安定性又は/及び化学的完全性を有するということがわかった。酸化メチオニン、総不純物、及び高分子量のタンパク質の割合は、比較組成物におけるよりも本発明に従う組成物においてより低かった。本発明に従う組成物(バッチ894_B及び897_B)及び比較組成物(バッチ894_A及び897_A)は、メチオニンの存在/非存在の点で相違した。従って、改善された安定性又は/及び化学的完全性は、本発明に従う組成物中のメチオニン成分のためであり得る。
【0102】
実施例2
さらなる実験において、どのようにEDTAナトリウム及びヒスチジンが本発明に従う組成物において影響を有するかを研究した。
【0103】
【表6】

【0104】
【表7】

【0105】
標準実験設計において、ウサギを組成物B若しくはC又は食塩水で皮下(s.c.)又は筋肉内(i.m.)処置した。各ケースにおいて、投与の急性又は亜急性効果を組織学的に測定するために、ウサギの半分を24時間又は120時間後に犠牲にした。さらに、病変の修復/再生が生じたかどうかを測定した。
【0106】
組成物Cの皮下注射に続いて、動物は、24時間後、食塩水コントロールとは対照的に、皮下結合組織において軽度から中程度の炎症反応を示した。皮下注射後120時間より早くに、線維芽細胞反応による回復への観察された変化について、明らかな傾向が観察可能であった。従って、適合性は、それでも中程度と評価され得た(不適合性の代わりに)。
【0107】
組成物Bを用いて、動物は、皮下注射後に、食塩水コントロールに対して差異を全く示さなかったか又は最小限の差異を示した(良好な適合性)。
【0108】
組成物Cの筋肉内注射後、動物は、注射部位のみが明らかに限局性の壊死領域として目に見えた食塩水コントロールとは明らかに相違する、筋肉壊死(多病巣性又は播種性)を示した。組成物Cを用いて、壊死筋組織の鉱化作用が、120時間後に観察され、動物の検死においてさえ目に見えた。ウサギの様々な部位での小さな又は局所性の鉱化作用は稀ではないが、組成物Cの注射後の鉱化作用は、壊死領域と明らかに関連した。従って、注射によって引き起こされる病巣の可逆性は、疑わしいを超える。これらの知見に基づいて、組成物Cは、ウサギにおける筋肉内注射後、不適合性と評価された。
【0109】
組成物Bは、筋肉内注射後、良好な適合性を示した(食塩水コントロールに対して差異無し又は最小限の差異)。
【0110】
これらのデータから、組成物Bは、組成物Cと比較して、筋肉内又は皮下投与において改善された適合性を有したことがわかった。皮下注射は、本出願に記載される、GLP−1アゴニスト、特にAVE0010を含む組成物についての好ましい投与経路である。
【0111】
従って、GLP−1アゴニスト、特にAVE0010を含む、本発明に従う組成物は、EDTA又は/及びヒスチジンを含まない場合がある。同様に、本発明に従う組成物は、EDTA及びヒスチジンを実質的に含まない場合がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GLP−1アゴニスト又は/及びその薬理学的に許容される塩、及び場合により少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤を含む液体組成物であって、メチオニンを含む、該液体組成物。
【請求項2】
組成物が、薬学的に許容される保存剤、特にm−クレゾールを含む、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
組成物がグリセリンを含む、請求項1又は2に記載の液体組成物。
【請求項4】
組成物が3.5〜5の範囲内のpHを有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体組成物。
【請求項5】
組成物が、0.5mg/mL〜20mg/mLの範囲の量で、好ましくは1mg/mL〜5mg/mLの範囲の量で、メチオニンを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体組成物。
【請求項6】
組成物が、+25℃の温度で6ヶ月間保存後化学的完全性を示す、請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体組成物。
【請求項7】
組成物が、+25℃の温度で6ヶ月間保存後物理的完全性を示す、請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体組成物。
【請求項8】
GLP−1アゴニストが、GLP−1、及びそのアナログ及び誘導体、エキセンジン−3、及びそのアナログ及び誘導体、エキセンジン−4、及びそのアナログ及び誘導体からなる群より選択され、好ましくは、GLP−1アゴニストが、desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2及びエキセンジン−4からなる群より選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の液体組成物。
【請求項9】
組成物が、以下の成分:
(a) desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
(b) 酢酸ナトリウム、
(c) m−クレゾール、
(d) L−メチオニン、
(e) 85%グリセリン、
(f) pH約4.5への調整が必要である場合、約0.1N塩酸、
(g) pH約4.5への調整が必要である場合、約0.1N NaOH溶液、及び
(h) 水
を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の液体組成物。
【請求項10】
組成物が注射用組成物である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
糖尿病を治療するための、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
糖尿病、特にII型糖尿病を治療するための医薬品の製造における、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項13】
GLP−1アゴニスト又は/及びその薬理学的に許容される塩を、メチオニン、及び場合により少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤と共に製剤化する工程を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物を製造するための方法。
【請求項14】
組成物を患者に投与する工程を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物で患者を治療するための方法。
【請求項15】
メトホルミン、スルホニル尿素、グリタゾン、及び/又は長時間作用型インスリン/インスリン誘導体、及び/又はそれらの組み合わせ、及び/又は薬理学的に許容される塩の投与と併用の、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項16】
十分な血糖コントロールをメトホルミン、スルホニル尿素、グリタゾン、及び/又は長時間作用型インスリン/インスリン誘導体で達成できなかった患者におけるアドオン療法を含む、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
治療患者が、7%〜10%の範囲内のHbA1c値を有する、請求項15又は16に記載の組成物の使用。
【請求項18】
II型糖尿病及び/又は肥満を治療するための、請求項15〜17のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項19】
血糖コントロールを改善するためにII型糖尿病を有する患者に食事へのサプリメントとして投与するための請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項20】
患者に1日1回投与するための請求項1〜19のいずれか1項に記載の組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−510821(P2013−510821A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538331(P2012−538331)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067249
【国際公開番号】WO2011/058082
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(397056695)サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (456)
【Fターム(参考)】