説明

GLP−1分子と制吐剤との医薬製剤

本発明は、GLP-1分子および制吐剤を含む部品のキットに関し、該部品のキットは、対象者、好ましくはヒトに個別に、連続してまたは/および同時に投与するのに適している。GLP-1またはGLP-1アナログと1またはそれ以上の制吐剤との組み合わせ、並びに医薬の製造における該組み合わせの使用も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、より有効および/またはより良好な耐性のある治療を得るためのGLP−1と制吐剤との組み合わせた治療学的または予防的使用に関する。この出願は、2005年4月21日に出願したデンマーク特許出願第PA 2005 00583および2005年6月15日に出願したデンマーク特許出願第PA 2005 00879(参照のためその全体を本明細書に引用する)の優先権を主張する非仮出願(non-provisional)である。これら出願において、または本願において引用されたすべての特許文献および非特許文献もまた、参照のためその全体を本明細書に引用する。
【背景技術】
【0002】
GLP−1
様々な疾患の治療のためのペプチド医薬の開発は、非常な成功を収めている。ペプチド医薬は、ペプチドホルモンの天然版並びにこれらペプチドホルモンの改変版を含む。そのようなペプチドホルモンの一つがGLP-1である。
【0003】
GLP-1の組織分布が検討され、GLP-1 mRNAはラットの肺、膵小島、胃、腎臓、視床下部および心臓で検出されているが、脂肪組織、肝臓および骨格筋では検出されていない(Bullockら、“ラットグルカゴン様ペプチド-1レセプターをコードするメッセンジャーリボ核酸の組織分布”, Endocrinology. 1996 Jul;137(7):2968-78)。
【0004】
ヒトGLP-1(1-37)は、配列:His Asp Glu Phe Glu Arg His Ala Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Val Ser Ser Tyr Leu Glu Gly Gln Ala Ala Lys Glu Phe Ile Ala Trp Leu Val Lys Gly Arg Gly(配列番号1)を有する。GLP-1(1-37)は翻訳後にアミド化されてGLP-1(1-37)NH2(配列:His Asp Glu Phe Glu Arg His Ala Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Val Ser Ser Tyr Leu Glu Gly Gln Ala Ala Lys Glu Phe Ile Ala Trp Leu Val Lys Gly Arg (NH2)(配列番号12)を有する)を生成し、あるいは酵素によるプロセシングを受けてGLP-1(7-37)(配列:His Ala Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Val Ser Ser Tyr Leu Glu Gly Gln Ala Ala Lys Glu Phe Ile Ala Trp Leu Val Lys Gly Arg Gly(配列番号2))を生成する。GLP-1(7-37)もまたアミド化されて、GLP-1(7-37)アミド(このものは、GLP-1(7-37)とともにGLP-1分子の天然の形態を構成し、配列:His Ala Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Val Ser Ser Tyr Leu Glu Gly Gln Ala Ala Lys Glu Phe Ile Ala Trp Leu Val Lys Gly Arg (NH2)(配列番号13)を有する)を生成することができる。同様に、GLP-1(1-36)(NH2)はGLP-1(7-36)(NH2)にプロセシングされることができる。
【0005】
循環している生物学的に活性なGLP-1の大部分はGLP-1(7-36)アミドの形態で見出されるが、より少ない量の生物学的に活性なGLP-1(7-37)の形態もまた検出できる(Diabetes. 1994 Apr;43(4):535-9)。両ペプチドは、今日まで研究されている全ての生物学的パラダイムにおいて等しい効力を有すると思われる(Diabetes. 1993 May;42(5):658-61)。GLP-1は、栄養摂取に応答して消化管内分泌細胞から分泌され、栄養摂取後の代謝ホメオスタシスにおいて多くの役割を果たしている。
【0006】
GLP-1の生物学的活性の制御のために重要な位置は、2位アラニンにおけるジペプチジルペプチダーゼ(DPP-IV)媒体開裂による該ペプチドのN末端分解である。GLP-1のDPP-IV媒体不活化を回避すべくデザインした戦略としては、DPP-IV耐性を示すよう操作した修飾GLP-1分子の生成が挙げられる。幾つかの報告が、正常および糖尿病の両齧歯類におけるそのような分子の増大した生物学的活性を詳細に記録している。トカゲGLP-1関連ペプチドエクセンジン−4(exendin-4)は2位にグリシンを有し、該ペプチドをDPP-IV媒体分解に対して耐性にしている。このことは、同様にインビボでのエクセンジン−4の増大した効力および安定性に有意に貢献している(Diabetes. 1999 May;48(5):1026-34)。
【0007】
GLP-1の生物学的活性としては、グルコース依存性インスリン分泌およびインスリン生合成の刺激、グルカゴン分泌および胃排出能(gastric emptying)の抑制、食物摂取の抑制が挙げられる。GLP-1は、胃腸管および中枢神経系において多くの別の作用を有していると思われる(Diabetes 1998 47(2):159-69, Endocrinology. 2001 Feb;142(2):521-7, Curr Pharm Des. 2001 Sep;7(14):1399-412, Gastroenterology. 2002 Feb;122(2):531-44)。
【0008】
ラット壁細胞調製物を用いた研究において、エクセンジン−4およびGLP-1の両者はH+およびcAMP産生の観点において類似の特性を示し、これらペプチドの作用はGLP-1レセプターアンタゴニストであるエクセンジン(9-39)(exendin(9-39))により妨げられる(Eur J Pharmacol. 1994 Oct 14;269(2):183-91)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題および課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、GLP-1またはGLP-1アナログおよび制吐剤を含む製品、使用および方法に関する。それゆえ、本発明の一つの側面において、GLP-1および/またはGLP-1アナログと、本明細書において開示するいずれかの制吐剤などの制吐剤との組み合わせを提供する。
【0010】
本発明の他の側面は、処置を必要とする対象者に個別に、連続しておよび/または同時に投与するための、および/または治療に使用するための
(i)GLP-1またはGLP-1アナログおよび
(ii)制吐剤
を含む、部品(parts)のキットに関する。
【0011】
本発明のさらなる側面は、処置を必要とする対象者に個別に、連続しておよび/または同時に投与するための併用医薬(a combined medicament)および/または2つの別個の医薬において
(i)GLP-1またはGLP-1アナログおよび
(ii)制吐剤
を含む製品に関する。
【0012】
本発明の他の側面は、処置しうる疾患または障害の処置、防止または予防用医薬の製造のための、GLP-1またはGLP-1アナログおよび制吐剤を含む組成物の使用に関する。
【0013】
さらなる側面において、本発明は、処置しうる疾患または障害の処置、防止または予防を目的とした併用療法に使用する医薬の製造のための、GLP-1またはGLP-1アナログおよび/または制吐剤の使用であって、
(i)GLP-1またはGLP-1アナログおよび制吐剤の両者を含む医薬または
(ii)GLP-1またはGLP-1アナログを含む医薬および制吐剤を含む医薬または
(iii)GLP-1またはGLP-1アナログおよび制吐剤の両者を含む医薬およびGLP-1またはGLP-1アナログを含む別の医薬または
(iv)GLP-1またはGLP-1アナログおよび制吐剤の両者を含む医薬および制吐剤を含む別の医薬
を個別に、連続しておよび/または同時に投与することを含む使用に関する。
【0014】
さらなる側面において、本発明は、
(i)GLP-1またはGLP-1アナログおよび
(ii)制吐剤
を含む医薬を対象者に個別に、連続しておよび/または同時に投与することを含む、疾患または障害の処置、防止または予防方法であって、該疾患または障害が、肥満、糖尿病、高血圧、メタボリックシンドロームよりなる群から選ばれるか、または血中グルコース濃度の調節(modulation)であることを特徴とする方法に関する。
【0015】
含まれるさらなる疾患は、刺激性腸管症候群(irritable bowel syndrome)や機能性消化不良などの機能性の胃腸管障害である。
【0016】
配列表の説明
配列番号1:ヒトGLP-1(1-37)のアミノ酸配列
配列番号2:ヒトGLP-1(7-37)のアミノ酸配列
配列番号3:ヒトGLP-1(7-36)のアミノ酸配列
配列番号4:ヒトGLP-1(7-35)のアミノ酸配列
配列番号5:ヒトGLP-1(7-34)のアミノ酸配列
配列番号6:ヒトGLP-1(7-33)のアミノ酸配列
配列番号7:ヒトVal8-GLP-1(7-37)のアミノ酸配列
配列番号8:ヒトGln9-GLP-1(7-37)のアミノ酸配列
配列番号9:ヒトD-Gln9-GLP-1(7-37)のアミノ酸配列
配列番号10:ヒトLys18-GLP-1(7-37)のアミノ酸配列
配列番号11:ヒトThr16-Lys18-GLP-1(7-37)のアミノ酸配列
配列番号12:ヒトGLP-1(1-36)NH2のアミノ酸配列
配列番号13:ヒトGLP-1(7-36)アミドのアミノ酸配列
配列番号14:好ましいGLP-1アナログのアミノ酸配列
配列番号15:好ましいGLP-1アナログのアミノ酸配列
【0017】
発明の詳細な説明
定義
親和性:レセプターとそのリガンドとの間、例えば、抗体とその抗原との間の結合の強さ。
【0018】
アミノ酸残基:ポリペプチドのペプチド結合部位での化学的消化(加水分解)により生成するアミノ酸。本明細書において記載するアミノ酸残基は、好ましくは「L」異性体のものである。しかしながら、アミノ酸は、所望の機能的特性がそのポリペプチドによって保持されている限り、L-アミノ酸、D-アミノ酸、アルファ-アミノ酸、ベータ-アミノ酸、ガンマ-アミノ酸、天然アミノ酸および合成アミノ酸などのあらゆるアミノ酸を包含する。さらに包含されるのは、修飾された天然アミノ酸および合成アミノ酸である。NH2は、ポリペプチドのアミノ末端に存在する遊離のアミノ基をいう。COOHは、ポリペプチドのカルボキシ末端に存在する遊離のカルボキシ基をいう。本明細書においてアミノ酸残基の標準ポリペプチド略号が使用される。
【0019】
本明細書において式により示すアミノ酸残基の配列はすべて、左から右に向かってアミノ末端からカルボキシ末端への通常の方向であることに注意すべきである。さらに、アミノ酸残基配列の最初または終わりのダッシュは、1またはそれ以上のアミノ酸残基のさらなる配列へのペプチド結合またはアミノ末端基、例えばNH2またはアセチルまたはカルボキシ末端基、例えばCOOHへの共有結合を示す。
【0020】
濃度等価(Concentration equivalent):濃度等価は、例えば、野生型GLP-1の用量−応答曲線から評価されるものと同じ応答をインビトロおよび/またはインビボで有するGLP-1様化合物の投与量として定義される等価投与量(Equivalents dosage)である。
【0021】
解離定数、Kd:レセプターとそのリガンドとの間、例えば、GLP-1分子とGLP-1レセプターとの間の結合(または親和性または親和力)の強さを記載する測定値。Kdが小さいほど結合は強い。
【0022】
GLP-1アナログ:GLP-1アナログなる語によって意味するところは、GLP-1レセプターに結合し活性化することのできるあらゆる分子、例えば、下記「GLP-1分子」の標題にて開示するいずれかの分子である。「GLP-1分子」および「GLP-1アナログ」なる語は、好ましくは互換的に用いられる、すなわち、「GLP-1分子」とは、例えば、天然の形態のGLP-1、GLP-1アナログまたはGLP-1誘導体を意味する。
【0023】
個体:生きた動物。好ましい態様では、対象者(the subject)は、ヒトおよび非ヒト哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、ブタ、牛、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ラット、およびマウスなどを含む哺乳動物である。最も好ましい態様では、対象者はヒトである。
【0024】
単離した:その天然の環境またはその生成プロセスの成分から単離および分離および/または回収した、種々のGLP-1分子、ポリペプチドおよびヌクレオチドを記載するのに用いる。その天然の環境の混入成分は、典型的に該ポリペプチドの診断的または治療的使用を妨害し、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質を含む。好ましい態様では、該ポリペプチドは精製されるであろう。
【0025】
修飾アミノ酸:その任意の基が化学的に修飾されたアミノ酸。1、2、3またはそれ以上の修飾アミノ酸が、本明細書に開示するGLP-1分子に用いられてよい。とりわけ、アルファアミノ酸中のアルファ炭素原子で化学的に修飾されたアミノ酸が好ましい。
【0026】
ポリペプチド:ポリペプチドなる語は、アミノ酸残基を含む分子であって、隣接するアミノ酸残基間にアミド結合以外の結合を含まないものをいう。
【0027】
適応症
GLP-1またはGLP-1アナログを用いた治療学的処置は、制吐剤を同時に投与することによりGLP-1またはGLP-1アナログの望ましくない副作用が低減し、かくして処置が改善することによって大きく改善されうることが考えられる。また、これら副作用の否定的な帰結、例えば、低減した食物摂取および/または栄養利用を回避でき、それによって処置の効力に寄与できる。副作用を回避または低減することにより、GLP-1またはGLP-1アナログをより高投与量で使用でき、あるいはより長期間継続でき(それにより処置の効力を改善できる)、かくして問題としている疾患または障害の一層有効な処置を提供できることが考えられる。患者はGLP-1またはGLP-1アナログ処置の時期尚早の中止またはGLP-1またはGLP-1アナログの用量の低減を回避でき、それゆえ、正常な生活の再確立、生活の質の向上を含む一層早い回復を経験できる。患者はさらに、増大した身体的壮健や栄養状態ゆえにより早期に投薬を終えることができる。
【0028】
部品のキット(Kit of parts)
本発明の利点は、少なくともGLP-1またはGLP-1アナログおよび制吐剤の協調した(coordinated)投与によって得られ、これらを処置を必要とする対象者に個別、連続および/または同時投与として投与することができる。処置を必要とする対象者は、好ましくはGLP-1またはGLP-1アナログで処置しうる疾患または障害を患っているかまたは患うリスクがあり、それゆえ関連するGLP-1またはGLP-1アナログでの防止的、予防的または治療学的処置に供される患者であり、かかる患者はさらにペプチド医薬の処置の結果として起こる吐き気や嘔吐や同様の状態を患いまたはそのリスクがあるものである。GLP-1またはGLP-1アナログの処置の結果の副作用として経験される吐き気や嘔吐の程度は、患者によって相当変わることが理解されるであろう。それゆえ、本発明による処置は、通常、GLP-1またはGLP-1アナログ処置の最大の有効性および許容性(tolerability)を得ること、同時にペプチド医薬処置において患者が経験する吐き気や嘔吐を低減ないし排除することを目的として個々の患者に適合させることが好ましい。
【0029】
ペプチド医薬および制吐剤は別々の医薬として提供することもできるが、該医薬を単一の製品として、すなわち、部品のキットとして提供するのが有利である。
【0030】
それゆえ、一つの側面において、本発明は、処置を必要とする対象者に個別に、連続しておよび/または同時に投与するための
(i)GLP-1またはGLP-1アナログおよび
(ii)制吐剤
を含む、部品のキットに関する。
【0031】
部品のキットは、有効量のGLP-1またはGLP-1アナログおよび有効量の制吐剤を含む併用医薬を含んでいてよい。
【0032】
あるいは、部品のキットにおいて、GLP-1またはGLP-1アナログおよび制吐剤は別個の医薬として提供することができる。
【0033】
さらに、部品のキットは、処置を必要とする対象者に個別に、連続しておよび/または同時に投与するために、
(a)以下を含む併用医薬:
(i)GLP-1またはGLP-1アナログおよび制吐剤
および
(b)以下を含む1またはそれ以上の別個の医薬:
(i)GLP-1またはGLP-1アナログおよび
(ii)制吐剤
を含んでいてよい。
【0034】
2またはそれ以上の異なる医薬を一つのパッケージに組み合わせることにより、部品のキットは、投薬計画(dosage regime)が処置の間に変わってよい処置に適している(下記参照)。併用および/または別個の医薬は、それぞれの医薬について関連する体の区画に関連する時間において放出されるように(例えば、同時に、連続して、または個別に)調合した関連量の各医薬を含んでいるのが好ましい。
【0035】
好ましくは、部品のキットは、GLP-1またはGLP-1アナログおよび制吐剤のそれぞれを当該治療的処置に適しており有効である各剤型で提供する。
【0036】
剤型は、対象者に投与したときに所望の効果が得られるように十分な量の活性化合物を含む。それゆえ、医薬パッケージは、関連する投与計画に対応した幾つかの投与単位を含んでいるのが好ましい。
【0037】
さらに、部品のキットは、単回投与かまたは多回投与のいずれかで投与すべく各医薬を提供してよい。
【0038】
部品のキットは、GLP-1またはGLP-1アナログが治療学的に有効である状態または疾患の防止、予防または処置に使用すべく処方するのが好ましく、部品のキットの制吐剤は、GLP-1またはGLP-1アナログでの治療学的処置の結果起こる望ましくない副作用(吐き気や嘔吐など)を低減または排除するためのものである。
【0039】
好ましくは、キットは、所望の効果を達成するための剤型の使用および所定の期間にわたって服用すべき剤型の量を示す使用説明書を含む。従って、一つの態様において、部品のキットは医薬組成物を投与するための使用説明書を含む。
【0040】
本発明の部品のキットに含まれるGLP-1またはGLP-1アナログおよび制吐剤は、本明細書に記載するいかなるものであってもよく、例えば、それぞれ下記の「GLP-1またはGLP-1アナログ」および「制吐剤」の標題のセクションで記載するものであってよい。
【0041】
ペプチド医薬
天然に存在するペプチドとしては、真菌、植物、動物、哺乳動物、トカゲおよびヒトで見出されるペプチドが挙げられる。本発明で使用するペプチドは、例えば、ヤギ、ウマ、ウシ、ブタ、サル、ラット、マウス、ウサギおよびトリなどのいかなる種に由来するものであってよい。ホモ・サピエンスに由来するペプチドが好ましい。ペプチド医薬は、そのレセプターに結合することが知られている天然に存在するペプチドホルモンよりも該レセプターに対して実質的に同様かまたはより高い結合親和性を有する合成分子であってよい。そのような分子は、ペプチドホルモンと実質的に同じ機能を奏することができるのでアナログと呼ばれる。
【0042】
本明細書の文脈では、ペプチドホルモンの語は、天然に存在するホルモン、並びに薬理学的に関連する活性、例えば、その親ホルモンと同じ活性を有するアナログまたはホモログを示すものとして用いられる。
【0043】
アナログおよびホモログは、当業者により、例えば、当該ペプチドホルモンおよびペプチドホルモンの影響を受けるレセプターの知見に基づき、インビトロレセプター結合アッセイを用いて開発することができる。
【0044】
好ましい態様では、ホモログはペプチドホルモンと少なくとも60%同一のアミノ酸配列を有する。さらに好ましくは、ホモログはペプチドホルモンと少なくとも65%同一、例えば、少なくとも70%同一、例えば、少なくとも75%同一、例えば、少なくとも80%同一、例えば、少なくとも85%同一、例えば、少なくとも90%同一、例えば、少なくとも95%同一、例えば、少なくとも96%同一、例えば、少なくとも97%同一、例えば、少なくとも98%同一、例えば、少なくとも99%同一である。
【0045】
上記のパーセンテージは、デフォールトギャップウエイト(default gap weights)を用い、Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0中のアルゴリズムGAP、BESTFIT、またはFASTAを含む適当なアラインメントプログラムを用いて得られるような、ペプチドホルモンと比較したホモログの配列の同一性に関するものである。
【0046】
GLP-1およびアナログ
本発明は、グルカゴン様ペプチド1(Glucagon-like peptide 1 (GLP-1))およびそのアナログに関する。これにはあらゆる種からの、とりわけホモ・サピエンスからのGLP-1分子が含まれる。GLP-1は、GLP-1(1-37)(配列番号1)が腸管L細胞での翻訳後プロセシングによってN末端が切断されてGLP-1(7-37)(配列番号2)およびGLP-1(7-36)-アミドとなるように、幾つかのプロセシングされた形態で存在する。C末端のアミド化は、GLP-1の代謝にとっても、内分泌腺の膵臓に対する作用にとっても、重要ではない。GLP-1は、通常、GLP-1(7-36)(配列番号3)をいう。それゆえ、GLP-1(7-36)のアミノ末端は数字の7が当てられ、カルボキシ末端は数字の36が当てられている。ヒトGLP-1(7-36)のアミノ酸配列は配列番号3により同定されている。生物学的に活性な分子としては、ペプチドのGLP-1(7-37)、GLP-1(7-36)、GLP-1(7-35)、GLP-1(7-34)およびGLP-1(7-33)が挙げられる。
【0047】
好ましいGLP-1ペプチドはGLP7-34、GLP7-35であり、米国特許第5,118,666号に開示されたGLP7-36もまた好ましい。これら化合物は、向インスリン性の特性を有するGLP-1の生物学的にプロセシングされた形態である。天然のGLP-1(7-36)は、インビボで循環中にDPP-IVにより(N末端分解)生物学的に不活性なGLP-1(9-36)に速やかに分解される(例えば、Meierら、食物摂取および体重のレギュレーターとしてグルカゴン様ペプチド1:治療学的展望(Glucagon-like peptide 1 as a regulator of food intake and body weight: therapeutic perspectives)Eur. J. Pharmacol. 440 (2002): 269-279を参照)。
【0048】
GLP-1レセプターのアゴニスト、GLP-1シグナル伝達カスケードのアゴニスト、内生GLP-1の合成を刺激する化合物、内生GLP-1の放出を刺激する化合物、およびそれらの薬理学的に許容しうる塩を含む、GLP-1の多数のホモログ、アナログおよび誘導体が記載されている(例えば、WO03018516、WO9808871、WO9943706、米国特許第5,118,666号、米国特許第5,545,618号および米国特許出願第US20040018975号を参照)。本明細書では、そのようなホモログ、アナログおよび誘導体はGLP-1アナログと称する。
【0049】
本発明において使用するGLP-1分子は、1またはそれ以上のアミノ酸置換および/またはC末端での1またはそれ以上のアミノ酸残基の切断および/または1またはそれ以上のアミノ酸残基を含む、活性なGLP-1ペプチド;GLP-1(7-37)、GLP-1(7-36)、GLP-1(7-35)、GLP-1(7-34)およびGLP-1(7-33)のアナログであってよい。7、8、9または10位での1またはそれ以上のアミノ酸置換を含むアナログが好ましい。7および/または8位にD-アミノ酸置換および/または7位にN-アルキル化またはN-アシル化アミノ酸を有するアナログは、インビボ分解に対して特に耐性であることがわかっている。
【0050】
当該技術分野で知られたGLP-1のアナログとしては、例えば、Val8-GLP7-37(配列番号7)、Gln9-GLP7-37(配列番号8)、D-Gln9-GLP7-37(配列番号9)、Lys18-GLP7-37(配列番号10)およびThr16-Lys18-GLP7-37(配列番号11)が挙げられる。他のGLP-1アナログは、米国特許第5,545,618号、同第5,545,618号および米国特許出願第20040018975号に開示されている。
【0051】
以下のGLP-1分子は前臨床または臨床開発の段階にある:
2型糖尿病の処置のための天然GLP-1(Effect of 6-week course of glucagon-like peptide 1 on glycaemic control, insulin sensitivity, and beta-cell function in type 2 diabetes: a parallel-group study. Lancet. 2002 Mar 9;359(9309):824-30を参照);高齢の対象者の処置のための天然のGLP-1(Effects of 3 Months of Continuous Subcutaneous Administration of Glucagon-Like Peptide 1 in Elderly Patients With Type 2 Diabetes. Diabetes Care. 2003 Oct;26(10):2835-2841を参照);
【0052】
好ましい態様では、ペプチド医薬は天然のGLP-1(7-36)である。
【0053】
NN2211(リラグルチド(Liraglutide)とも称する)は、フェーズIIの臨床データが報告されているアシル化アルブミン結合ヒトGLP-1アナログである。
【0054】
CJC-1131は、GLP-1-アルブミン医薬アフィニティー複合体(albumin drug affinity complex;DAC)法に基づくものであり、アルブミンに共有結合するように操作したGLP-1アナログである。GLP-1アルブミン化合物は、GLP-1レセプターに結合して活性化する能力を保持しており、インビトロで細胞を用い、あるいはインビボで齧歯類を用いて評価したときに、天然のGLP-1と比較して極めて類似した生物学的作用を示すと思われる。CJC-1131の概説については、Development and characterization of a glucagon-like Peptide 1-albumin conjugate: the ability to activate the glucagon-like Peptide 1 receptor in vivo. Diabetes. 2003 Mar;52(3):751-9を参照のこと。
【0055】
BIM51077は、Ipsenによってフェーズ1で独自に開発されて得られ、現在はRocheにライセンスされているヒトGLP-1誘導体である。
【0056】
LY315902は、LillyのDPP-IV-耐性GLP-1アナログであり、LY307161 SRは、1日1回の投与に適したGLP-1アナログの徐放製剤である。
【0057】
LY307161の効力は、ヒトの臨床試験で調べられている。
【0058】
GTP-010は、LillyおよびGastrotechのGLP-1アナログである。
【0059】
さらなるアナログとしては、それぞれAmylinおよびConjuchemによって開発されたAC2592(GLP-1)およびDATTM:GLP-1が挙げられる。
【0060】
エクセンジン−4(Exendin-4;エクセナチド(Exenatide)とも称する)は、糖尿病の処置のための臨床開発の段階にある天然に存在するDPP-IV-耐性GLP-1アナログである。Eli Lilly/Amylinは、エクセンジン−4について米国食品医薬品局(FDA)に新規医薬申請(NDA)をした。さらに含まれるのは、Lilly/AmylinおよびAlkermesによって開発されたエクセナチドLARである。
【0061】
ZP10は、Zealand Pharmaceuticalsによって開発された糖尿病の処置のためのエクセンジン−4誘導体である。
【0062】
上記の各GLP-1分子は、本発明において使用するための候補ペプチド医薬であると考えられる。
【0063】
さらなる態様において、GLP-1アナログは、以下よりなる群から選ばれる:NN2211(リラグルチド)、CJC-1131、BIM51077、LY315902、LY307161、GTP-010、AVE-10(ZP10)、AC2592(GLP-1)、DATTM:GLP-1エクセンジン−4、エクセナチドLARおよびZP10。
【0064】
本発明において有用な一つの好ましいGLP-1アナログは、GLP-1(7-36)アミドまたはGLP-1(7-37)に対して少なくとも80%の配列同一性、例えば、GLP-1(7-36)アミドまたはGLP-1(7-37)に対して少なくとも90%の配列同一性、例えば、GLP-1(7-36)アミドまたはGLP-1(7-37)に対して少なくとも95%の配列同一性を有するホモログである。
【0065】
GLP-1分子
本発明は、GLP-1分子の使用に関する。本明細書において使用する「GLP-1分子」なる語は、GLP-1レセプターに結合し活性化することのできるあらゆる分子をいう。本発明において使用するためのGLP-1分子の機能的活性のアッセイ方法は、以下に「GLP-1分子の機能的活性」の標題のセクションで記載する。本発明において使用するためのGLP-1分子の活性は、天然のGLP-1(7-36)アミドよりも効力が小さいかまたは大きくてよいことが理解されなければならない。
【0066】
好ましくは、本発明において使用するためのGLP-1分子はポリペプチドである。この活性を有する化合物の一つの好ましいグループは、もともと天然の採取源から配列決定したGLP-1ポリペプチドである。それゆえ、本発明において使用するための好ましい分子は、以下よりなる群から選ばれてよい:GLP-1(7-36)アミドおよびGLP-1(7-37)。
【0067】
本発明はさらに、組換えによりまたは合成により生成したヒトGLP-1ポリペプチド、並びに組換えによると合成によるとに拘わらず他の種に由来するGLP-1ポリペプチドの使用を包含する。それゆえ、一つの態様において、GLP-1分子はGLP-1のホモログである。
【0068】
本発明の一つの好ましい態様において、GLP-1分子は、GLP-1(7-37)と比較して1またはそれ以上の(例えば、15またはそれより少ない、例えば、13またはそれより少ない、例えば、11またはそれより少ない、例えば、9またはそれより少ない、例えば、7またはそれより少ない、例えば、5またはそれより少ない、例えば、3またはそれより少ない、例えば、2またはそれより少ない、例えば、1またはそれより少ない)アミノ酸置換、欠失、逆位(inversions)、または付加を有するGLP-1分子であり、D-アミノ酸の形態を含んでいてよい。多数のGLP-1アナログが当該技術分野で知られており、GLP-1(7-34)、GLP-1(7-35)、GLP-1(7-36)NH2、Gln9-GLP-1(7-37)、d-Gln9-GLP1(7-37)、Thrl6-Lysl8-GLP-1(7-37)、およびLysl8-GLP-1(7-37)、Gly'-GLP-1(7-36)NH2、Gly'-GLP1(7-37)OH、Val'-GLP-1(7-37)OH、Met8-GLP-1(7-37)OH、アセチル-Lys9-GLP-1(7-37)、Thr9GLP-1(7-37)、D-Thr9-GLP-1(7-37)、Asn9-GLP-1(7-37)、D-Asn9-GLP-1(7-37)、Ser22-Arg23Arg24-Gln26-GLP-1(7-37)、Arg23-GLP-1(7-37)、Arg24-GLP-1(7-37)、a-メチル-Ala8-GLP-1(736)NH2、およびGly'-Gln2'-GLP-1(7-37)OHなどが挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0069】
本発明と一致する他のGLP-1アナログは、式:
R1-X-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser-Ser-Tyr-Leu-Y-Gly-Gln-Ala-Ala
Lys-Z-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Val-Lys-Gly-Arg-R2(配列番号14)
(式中、R1は、L-ヒスチジン、D-ヒスチジン、デスアミノヒスチジン(desaminohistidine)、2-アミノ-ヒスチジン、ベータ-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン(homohistidine)、アルファ-フルオロメチルヒスチジン、およびアルファ-メチル-ヒスチジンよりなる群から選ばれる;Xは、Ala、Gly、Val、Thr、Ile、およびアルファ-メチル-Alaよりなる群から選ばれる;Yは、Glu、Gln、Ala、Thr、Ser、およびGlyよりなる群から選ばれる;Zは、Glu、Gln、Ala、Thr、Ser、およびGlyよりなる群から選ばれる;およびR2は、NH2、およびGly-OHよりなる群から選ばれる)
によって記載される。
【0070】
GLP-1アナログはまたWO91/11457に記載されており、以下よりなる群から選ばれた少なくとも一つの修飾を有する、GLP-1(7-34)、GLP-1(7-35)、GLP-1(7-36)、またはGLP-1(7-37)、またはそれらのアミド形、および薬理学的に許容しうるその塩を含む:
(a)26位および/または34位のリシンのグリシン、セリン、システイン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、アルギニン、またはD-リシンへの置換;または36位のアルギニンのグリシン、セリン、システイン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、リシン、またはD-アルギニンへの置換;
(b)31位のトリプトファンの抗酸化アミノ酸への置換;
(c)16位のバリンのチロシンへの置換;18位のセリンのリシンへの置換;21位のグルタミン酸のアスパラギン酸への置換;22位のグリシンのセリンへの置換;23位のグルタミンのアルギニンへの置換;24位のアラニンのアルギニンへの置換;および26位のリシンのグルタミンへの置換の少なくとも1の置換、および
(d)8位のアラニンのグリシン、セリン、またはシステインへの置換;9位のグルタミン酸のアスパラギン酸、グリシン、セリン、システイン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、またはフェニルアラニンの置換;10位のグリシンのセリン、システイン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、またはフェニルアラニンへの置換;および15位のアスパラギン酸のグルタミン酸への置換の少なくとも1の置換、および
(e)7位のヒスチジンのグリシン、セリン、システイン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、またはフェニルアラニン、またはヒスチジンのD-形またはN-アシル化またはアルキル化形への置換ここで、(a)、(b)、(d)、および(e)において、置換アミノ酸は任意にD-形であってよく、7位で置換されたアミノ酸は任意にN-アシル化またはN-アルキル化された形態であってよい。
【0071】
本発明において使用する好ましいGLP-1分子はまた、もともとの配列には存在しない1またはそれ以上のアミノ酸が付加または欠失された、GLP-1(7-37)NH2およびGLP-1(7-37)のアナログ、およびそれらの誘導体をも含む。
【0072】
とりわけ、Hisおよびデスアミノ-ヒスチジンがRには好ましくは、および/またはAla、GlyおよびValが「X」位に好ましい。また、GluおよびGlnが「Y」位に好ましい。GluおよびGlnが「Z」位に好ましく、Gly-OHがR2に好ましい。
【0073】
特に好ましいGLP-1アナログはVal(8)GLP-1(V8GLP-1)として知られ、配列番号14(これまでの頁を参照)による式(式中、R1はL-ヒスチジン、XはVal、YはGlu、ZはGlu、およびR2はGly-OHである)を有する。
【0074】
本発明の他の好ましい態様において、GLP-1分子はGLP-1誘導体である。「GLP-1誘導体」は、GLP-1(7-37)またはGLP-1アナログのアミノ酸配列を有するが、そのアミノ酸側鎖基、a-炭素原子、末端アミノ基、または末端カルボン酸基の1またはそれ以上の化学的修飾をさらに含む分子として定義される。化学的修飾としては、これらに限られるものではないが、化学残基の付加、新たな結合の生成、および化学残基の除去が挙げられる。アミノ酸側鎖基の修飾としては、これらに限られるものではないが、リシンs-アミノ基のアシル化、アルギニン、ヒスチジン、またはリシンのNアルキル化、グルタミン酸またはアスパラギン酸のカルボン酸基のアルキル化、およびグルタミンまたはアスパラギンの脱アミド化が挙げられる。末端アミノの修飾としては、これらに限られるものではないが、des-アミノ、N-低級アルキル、N-ジ-低級アルキル、およびN-アシル修飾が挙げられる。末端カルボキシ基の修飾としては、これらに限られるものではないが、アミド、低級アルキルアミド、ジアルキルアミド、および低級アルキルエステル修飾が挙げられる。低級アルキルはCl-C4アルキルである。さらに、1またはそれ以上の側鎖基、または末端基が、通常の知識を有するタンパク質化学者に知られた保護基で保護されていてよい。アミノ酸のa-炭素は、モノ-またはジメチル化されていてよい。
【0075】
他のGLP-1誘導体としては、アミノ酸配列:
NH2-His'-Ala-Glu-Glyl-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser-Ser-Tyr-Leu -Glu-Gly
Gln-Ala-Ala-Lys-Glu-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Val-X(配列番号15)
(式中、Xは-LysおよびLys-Glyよりなる群から選ばれる)を有するペプチドおよびその薬理学的に許容しうる塩、および該ペプチドの誘導体(ここで、該ペプチドは、該ペプチドの薬理学的に許容しうる低級アルキルエステル、および該ペプチドの薬理学的に許容しうるアミド(アミド、低級アルキルアミド、および低級ジアルキルアミドよりなる群から選ばれる)よりなる群から選ばれる)よりなる群から選ばれた分子が挙げられる。
【0076】
本発明において使用するのに適したさらに他のGLP-1誘導体としては、米国特許第5,512,549号において特許請求され、式:
R1-Ala-Glu-Glyl-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp15-Val-Ser-Ser-Tyr-Leu20-Glu-Gly-Gln-Ala-Ala-Xaa-Glu-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Val-Lys-Gly-Arg-R3

(R2)
(式中、R1は、4-イミダプロピオニル、4-イミダゾアセチル、または4-イミダゾ-a,aジメチル-アセチルよりなる群から選ばれる;R2は、C6 Clo非分枝鎖アシルまたは不在よりなる群から選ばれる;R3は、Gly-OHまたはNH2よりなる群から選ばれる;およびXaaはLysまたはArgである)により記載される化合物が挙げられる。
【0077】
GLP-1レセプターを活性化することができ、本発明において使用するのに適したさらなる好ましいGLP-1分子としては、これらに限られるものではないが、以下の分子が挙げられ、これらは以前にGLP-1レセプターを活性化することができることが示されているものである:
GLP-1(7-36)アミド
GLP-1(7-37)
エクセンジン−4
GLP-1(7-34)
GLP-1(7-35)
GLP-1(7-36)
Gln9-GLP-1(7-37)
D-Gln9-GLP-1(7-37)
Thrl6-Lysl8-GLP-1(7-37)
Lys18-GLP-1(7-37)
GLP-1(7-34)
GLP-1(7-35)
GLP-1(7-36)
GLP-1(7-36)NH2
Gly8-GLP-1(7-36)NH2
Gln9-GLP-1(7-37)
D-Gln9-GLP-1(7-37)
アセチル-Lys9-GLP-1(7-37)
Thr9-GLP-1(7-37)
D-Thr9-GLP-1(7-37)
Asn9-GLP-1(7-37)
D-Asn9-GLP-1(7-37)
Ser22-Arg23-Arg24-Gln26-GLP-1(7-37)
Thrl6-Lysl8-GLP-l(7-37)
Lys18-GLP-l(7-37)
Arg23-GLP-1(7-37)
Arg24-GLP-1(7-37)
GLP-1(7-34)
GLP-1(7-35)
GLP-1(7-36)NH2
Gln9-GLP-1(7-37)
d-Gln9-GLP1(7-37)
Thrl6-Lysl8-GLP-1(7-37)
Lysl8-GLP-1(7-37)
Gly'-GLP-1(7-36)NH2
Gly'-GLP1(7-37)OH、Val'-GLP-1(7-37)OH、Met8-GLP-1(7-37)OH、アセチルl-Lys9-GLP-1(7-37)
Thr9GLP-1(7-37)
D-Thr9-GLP-1(7-37)
Asn9-GLP-1(7-37)
D-Asn9-GLP-1(7-37)
Ser22-Arg23Arg24-Gln26-GLP-1(7-37)
Arg23-GLP-1(7-37)
Arg24-GLP-1(7-37)
a-メチル-Ala8-GLP-1(736)NH2
Gly'-Gln2'-GLP-1(7-37)OH
LY315902(その活性は、Naslundら、“Glucagon-like peptide-1 analogue LY315902: effect on intestinal motility and release of insulin and somatostatin”, Regul Pept. 2002 Jun 15;106(1-3):89-95に記載されている)
【0078】
本発明の他の好ましい態様において、該GLP-1分子は以下の分子から選ばれ、これらは以前にGLP-1レセプターを活性化することができることが示されているものであり、Xiaoら、“Biological Activities of Glucagon-Like Peptide-1 Analogues in Vitro and in Vivo, Biochemistry, 2001, Vol. 40, No. 9, p2860-2869に記載されているものである:
アセチル-GLP-1
ヘキサン酸-GLP-1
(dAla2)GLP-1
(Gly2)GLP-1
(Ala4)GLP-1
ヘキサン酸-(dAla2)GLP-1
グルカゴン(1-5)GLP-1
グルカゴン(1-10)GLP-1
PACAP(1-5)GLP-1
PACAP(1-10)GLP-1
PHI(1-5)GLP-1
PHI(1-10)GLP-1
セクレチン(1-10)GLP-1
VIP(1-5)GLP-1
VIP(1-10)GLP-1
(Ala12/16)GLP-1
(Ala8/11/16)GLP-1
(Ala8/12/16)GLP-1
(dHis1)GLP-1
デスアミノHis1 GLP-1
N-me-His1-GLP-1
アルファ-me-His1-GLP-1
Imi-His1-Glp-1
(Ser2)GLP1
【0079】
さらなる適したGLP-1分子は、以下の特許出願(参照のため本明細書に引用する)に記載されたものである:
WO91/11457
米国特許第5,118,666号
WO2004/094461(“Human glucagons-like peptide-1 mimics and their use in the treatment of diabetes and related conditions”)
WO98/08873、“Use of Glucagon-like peptide-1 (GLP-1) or analogs to abolish catabolic changes after surgery”
米国特許第5,545,618号
米国特許第5,188,666号
米国特許第5,512,549号
WO03/018516(“Glucagon-like peptide-1 analogs”)
米国特許第5,120,712号
【0080】
GLP-1分子のホモログ
本明細書において特定する配列の1またはそれ以上のホモログは、特定した該配列と比較して1またはそれ以上のアミノ酸が異なっていてよいが、同じ機能を奏することができるものである、すなわち、ホモログは前もって決定した配列の機能的等価物として考えることができる。
【0081】
それゆえ、本発明の一つの好ましい態様において、GLP-1分子は、以下よりなる群から選ばれた分子と比較して1またはそれ以上のアミノ酸の置換、逆位、付加または欠失を含むペプチドである:
GLP-1(7-36)アミド
GLP-1(7-37)
リラグルチド
エクセナチド(Byetta)
アルブゴン(Albugon)
CJC-1131
zp-10-AVE0010
BIM51077(Ipsen)
LY315902
LY307161
S23521
【0082】
一つの態様において、置換、欠失、または付加の数は、20アミノ酸またはそれ以下、例えば、15アミノ酸またはそれ以下、例えば、10アミノ酸またはそれ以下、例えば、9アミノ酸またはそれ以下、例えば、8アミノ酸またはそれ以下、例えば、7アミノ酸またはそれ以下、例えば、6アミノ酸またはそれ以下、例えば、5アミノ酸またはそれ以下、例えば、4アミノ酸またはそれ以下、例えば、3アミノ酸またはそれ以下、例えば、2アミノ酸またはそれ以下(例えば、1)、またはこれら量の間のいずれかの数字である。本発明の一つの側面において、置換は、1またはそれ以上の保存的置換、例えば、20またはそれ以下の保存的置換、例えば、18またはそれ以下、例えば、16またはそれ以下、例えば、14またはそれ以下、例えば、12またはそれ以下、例えば、10またはそれ以下、例えば、8またはそれ以下、例えば、6またはそれ以下、例えば、4またはそれ以下、例えば、3またはそれ以下、例えば、2またはそれ以下の保存的置換を含む。「保存的」置換は、他の生物学的に活性な類似の残基によるアミノ酸残基の置換を意味する。保存的置換の例としては、疎水性残基(イソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニンなど)の他の疎水性残基による置換、または極性残基の他の極性残基による置換、例えば、アルギニンのリシンによる置換、グルタミン酸のアスパラギン酸による置換、またはグルタミンのアスパラギンによる置換などが挙げられる。下記表は、例示としてだが非限定的な保存的アミノ酸置換を列記したものである。
【0083】
【表1】

【0084】
本発明の使用および方法に適した他のGLP-1ホモログは、以下よりなる群から選ばれた分子に対して、50パーセントを超える配列同一性、好ましくは90パーセントを超える配列同一性(例えば、91%を超える配列同一性、例えば、92%を超える配列同一性、例えば、93%を超える配列同一性、例えば、94%を超える配列同一性、例えば、95%を超える配列同一性、例えば、96%を超える配列同一性、例えば、97%を超える配列同一性、例えば、98%を超える配列同一性、例えば、99%を超える配列同一性、例えば、99.5%を超える配列同一性)を有するペプチド配列である:
GLP-1(7-36)アミド
GLP-1(7-37)
リラグルチド
エクセナチド(Byetta)
アルブゴン(Albugon)
CJC-1131
zp-10-AVE0010
BIM51077(Ipsen)
LY315902
LY307161
S23521
【0085】
本明細書において、配列同一性は、当該技術分野でよく知られた標準アルゴリズムを用いて2分子間で行う比較をいう。本発明のために配列同一性を計算するのに好ましいアルゴリズムは、Smith-Watermanアルゴリズムであり、該アルゴリズムでは、参照配列を用いてポリペプチドホモログのパーセント同一性がその長さにわたって定められる。マッチ、ミスマッチ、および挿入または欠失のためのパラメーター値の選択は任意であるが、幾つかのパラメーター値は他のパラメーター値に比べて生物学的により実際的な結果を与えることがわかっている。Smith-Watermanアルゴリズムのパラメーター値の一つの好ましいセットは、「最大類似性セグメント(maximum similarity segments)」法に示されており、これはマッチングした残基に1、ミスマッチした残基に-1/3の値を用いるものである(残基は単一のヌクレオチドか単一のアミノ酸のいずれかである)(Waterman, Bull. Math. Biol. 46, 473-500 (1984))。挿入および欠失(indels)(x)は、
xk=1+k/3
(式中、kは所定の挿入または欠失における残基の数である(同上))としてウエートを与えられる(weighted)。
【0086】
例えば、18のアミノ酸置換と3アミノ酸の挿入を除いて42アミノ酸残基の配列と同一である配列は、下記式によって与えられるパーセント同一性を有するであろう:
[(1X42マッチ)-(1/3X18ミスマッチ)-(1+3/3挿入および欠失)]/42=81%同一性
【0087】
本発明の一つの好ましい態様において、分子の末端の切断は配列同一性を計算する際に考慮に入れない(すなわち、一つの分子が他の分子よりも長いなら、これら分子の重複している長さのみを配列同一性の分析に用いる);本発明の他の好ましい態様において、切断は欠失として数える。
【0088】
GLP-1ホモログはD-アミノ酸の形態を含んでいてよく、以下よりなる群から選ばれた分子と比較して、1またはそれ以上のアミノ酸の置換、欠失、逆位、または付加を有する分子であってよい:
GLP-1(7-36)アミド
GLP-1(7-37)
リラグルチド
エクセナチド(Byetta)
アルブゴン(Albugon)
CJC-1131
zp-10-AVE0010
BIM51077(Ipsen)
LY315902
LY307161
S23521
【0089】
本発明の一つの好ましい態様において、GLP-1分子は、GLP-1(7-36)アミドと比較して、1またはそれ以上のアミノ酸の置換、逆位、付加または欠失を含むペプチドである。一つの態様において、置換、欠失、または付加の数は、20アミノ酸またはそれ以下、例えば、15アミノ酸またはそれ以下、例えば、10アミノ酸またはそれ以下、例えば、9アミノ酸またはそれ以下、例えば、8アミノ酸またはそれ以下、例えば、7アミノ酸またはそれ以下、例えば、6アミノ酸またはそれ以下、例えば、5アミノ酸またはそれ以下、例えば、4アミノ酸またはそれ以下、例えば、3アミノ酸またはそれ以下、例えば、2アミノ酸またはそれ以下(例えば、1)、またはこれら量の間のいずれかの数字である。本発明の一つの側面において、置換は、1またはそれ以上の保存的置換を含む。適当な保存的置換の例は上記に記載してある。
【0090】
本発明の使用および方法に適した他のGLP-1ホモログは、(1)配列番号1、2、3、4;および/または(2)それらの切断された配列に対して、50パーセントを超える配列同一性、好ましくは90パーセントを超える配列同一性(例えば、91%を超える配列同一性、例えば、92%を超える配列同一性、例えば、93%を超える配列同一性、例えば、94%を超える配列同一性、例えば、95%を超える配列同一性、例えば、96%を超える配列同一性、例えば、97%を超える配列同一性、例えば、98%を超える配列同一性、例えば、99%を超える配列同一性、例えば、99.5%を超える配列同一性)を有するペプチド配列である。本明細書において、配列同一性は、当該技術分野でよく知られた標準アルゴリズムを用いて2分子間で行う比較をいう。本発明のために配列同一性を計算するのに好ましいアルゴリズムは、上記に記載したSmith-Watermanアルゴリズムである。
【0091】
GLP-1ホモログはまた、ヒトGLP-1(7-37)と比較して1またはそれ以上のアミノ酸の置換、欠失、逆位、または付加を有する分子であってよく、D-アミノ酸の形態を含んでいてよい。
【0092】
本発明の他の態様において、配列番号1、2、12、または13などの本明細書において前もって決定した配列の該ホモログは、以下のように定義することができる:
i)ヒトGLP-1レセプターに選択的に結合することのできるアミノ酸配列を含むホモログ、および/または
ii)ヒトGLP-1に比べてGLP-1レセプターに対して実質的に同様または一層高い結合親和性を有するホモログ。
【0093】
他の好ましい態様において、GLP-1分子は、GLP-1レセプターに対して産生した抗体である。
【0094】
化学的に誘導体化したGLP-1分子
本発明において使用するのに適したGLP-1分子は、例えば、非天然アミノ酸残基(例えば、タウリン残基、ベータ-およびガンマ-アミノ酸残基およびD-アミノ酸残基)、C末端官能基の修飾、例えば、アミド、エステル、およびC末端ケトン修飾、およびN末端官能基の修飾、例えば、アシル化アミン、シッフ塩基、または例えばアミノ酸のピログルタミン酸に認められるような環化を有する、化学的に誘導体化または変化させたペプチドであってよいことが理解される。誘導体化分子の一つの例はリラグルチドである。
【0095】
保護したGLP-1分子
さらに、酵素のジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)が投与したGLP-1で観察される速やかなインビボ不活化の原因であるので[例えば、Mentlein, R.ら、Eur. J. Biochem., 214:829-835(1993)を参照]、DPPIVの活性から保護されたGLP-1分子の投与が幾つかの態様において好ましい。それゆえ、本発明の一つの好ましい態様において、DPP-IV保護したGLP-1分子を用いることができる。「DPP-IV保護したGLPs」とは、DPP-IVの作用に対して耐性であるGLP-1アナログをいう。これらには、8位に修飾したまたはDアミノ酸を有するアナログが含まれ、8位にGly、Val、Thr、Met、Ser、Cys、またはAspを有する生合成GLP-1アナログが含まれる。他のDPP-IV保護GLPsは、デスアミノHis誘導体を含む。好ましい態様は、以下のいずれかを含む:Gly8-GLP-1(7-36)NH2、Val8-GLP-1(7-37)OH、a-メチル-Ala8-GL1(7-36)NH2、およびGly8-Gln21-GLP-1(7-37)OH、またはそれらの薬理学的に許容しうる塩。
【0096】
GLP-1分子コンジュゲート
本発明のGLP-1分子はまた、血液成分にコンジュゲートしてGLP-1分子を安定化できるGLP-1化合物を生成すべく、共有結合を形成しうる反応性の基で修飾することもできる。適当な例は、WO03/103572(「修飾グルカゴン様ペプチド-1アナログ」)および米国特許出願第2004/0138100号(長期持続合成グルカゴン様ペプチド(GLP-1))に記載されている。
【0097】
それゆえ、本発明の一つの態様において、使用するGLP-1分子は、活性化ジスルフィド結合基またはS-スルホネートで修飾したGLP-1ペプチドである。
【0098】
本発明において使用するのに適した他のGLP-1分子としては、WO00/34331(「GLP-1のアナログ」)、およびWO01/98331(「グルカゴン様ペプチド-1アナログ」)に記載されているものが挙げられる(参照のため本明細書に引用する)。
【0099】
本発明において使用するのに適したさらなるGLP-分子は、WO00/37098(「グルカゴン様ペプチド-1の貯蔵安定製剤)に記載されている(参照のため本明細書に引用する)。
【0100】
本発明において使用するのに特に好ましいGLP-1分子:
本発明において使用するのに特に好ましいGLP-1分子は、以下のいずれかから選択される:
リラグルチド
リラグルチド(Arg(34)Lys(26)-(N-イプシロン-(ガンマ-Glu(N-アルファ-ヘキサデカノイル))-GLP-1(7-37)の化学構造を有する)。好ましくは、リラグルチドは皮下投与する。リラグルチドの好ましい投与量は、0.045mg、0.225mg、0.45mg、0.60mg、または0.75mg、例えば、0.6mgである。他の好ましい態様において、200μg/kgまでの投与量を、例えば、1日に2回、例えば、1.25-20μg/kg*d投与することができる。
【0101】
エクセナチド
エクセナチド(Amylin Corporation、J Biol Chem 1990;265:20259-62を参照)。エクセナチドは天然のGLP-1と同様の特性を示し、胃排出能、インスリン分泌、食物摂取、およびグルカゴン分泌を制御する。エクセナチドは、主としてそのDPP-IV-媒体不活化に対する耐性ゆえに天然のGLP-1よりも遙かに高い効力を有する。2位にアラニンを含むGLP-1とは対照的に、エクセンジン−4は2位にグリシンを有し、それゆえ、DPIVの基質ではなく、インビボで遙かに長いt1/2(半減期)を有する。本発明の方法において、エクセナチドは5μgまたは10μgの投与量で、好ましくは毎日投与するのが好ましい。
【0102】
アルブゴンおよびCJC-1131
アルブゴン(GlaxoSmithKline/Human Genome Sciences)およびCJC-1131(Conjuchem Inc.)は、アルブミンの長い循環半減期を利用して天然GLP-1の作用の短い持続時間を伸長した、GLP-1-アルブミンタンパク質である。CJC-1131は遊離CJC-1131ペプチドの皮下注射後にインビボでヒト血清アルブミンと共有結合を形成するヒトGLP-1アナログであるが、アルブゴンは、遙かに多量の単一組換えタンパク質のインビボ投与の前にイクスビボで生成される組換えGLP-1-アルブミンタンパク質である。
【0103】
アルブゴンは、icvおよび末梢の両投与後にマウスにおいて胃排出能を抑制し、食物摂取を抑制することが示されている(Diabetes. 2004 Sep;53(9):2492-500)。本発明の一つの好ましい態様において、アルブゴンは(好ましくは毎日)150-350μg/kgの投与量で投与する。
【0104】
CJC-1131は、分子のカルボキシ末端に反応性の化学リンカー(インビボ投与後にアルブミン(Cys34残基)への共有結合を可能にする)を有する、DPP-IVに耐性となるよう修飾したヒトGLP-1アナログである。アルブミンは、インビボで長い循環半減期を示すので、アルブミン-コンジュゲート医薬は、ヒト対象者におけるアルブミンの既知の代謝回転(約15-19日のt1/2を示すと評価されている)と一致して、持続した作用、および遅延したクリアランスを示すに違いない。
【0105】
CJC-1131は、インビトロおよびインビボのいずれにおいてもGLP-1レセプターに結合、活性化する能力を有し、正常なおよび糖尿病の齧歯類での研究は、CJC-1131がGLP-1-依存性の活性を示すことを示している(Diabetes. 2003 Mar;52(3):751-9)。本発明の一つの態様において、CJC-1131は1日当たり2.1-2.6μg/kgの投与量で投与するのが好ましい。本発明の他の好ましい態様において、CJC-1131は(好ましくは毎日)150-350μg/kgの投与量で投与するのが好ましい。
【0106】
本発明において使用するのに特に好ましい他のGLP-1分子としては、これらに限られるものではないが、以下のものが挙げられる:zp-10(例えば、J Pharmacol Exp Ther. 2003 Nov;307(2):490-6を参照)、BIM51077(Ipsen)、LY315902(Regul Pept. 2002 Jun 15;106(1-3):89-95)、LY307161(Eli Lilly)、S23521(J Endocrinol. 2005 Mar;184(3):505-13)。
【0107】
GLP-1分子の機能的活性
本明細書に記載する本発明の方法および使用において有用なGLP-1分子は、GLP-1レセプターにおいて活性である。GLP-1分子は該レセプターに結合することができ、好ましくは、レセプター活性を刺激することができる。
【0108】
それゆえ、好ましくは、本発明において使用するGLP-1分子は、以下の1またはそれ以上として定義される:
a)抗体によって認識されることのできるアミノ酸配列を含み、該抗体はまたヒトGLP-1をも認識する、および/または
b)ヒトGLP-1レセプターに選択的に結合することのできるアミノ酸配列を含む、または
c)ヒトGLP-1レセプターに選択的に結合することのできる小さな分子。
【0109】
レセプター活性は、レセプターの細胞内コンホメーションにおける、G-タンパク質結合活性における、および/または細胞内メッセンジャーにおける変化を検出するなどの種々の技術を用いて測定することができる。
【0110】
GLP-1分子がGLP-1レセプターを活性化する能力の一つの簡単な測定法は、そのEC50、すなわち、化合物の最大作用の半分まで該化合物がレセプターのシグナル伝達を活性化することができる投与量を測定することである。
【0111】
レセプターは、一次細胞培養、例えば下垂体細胞上で内生的に発現することもできるし、またはGLP-1レセプターでトランスフェクションした細胞上で異種的に発現することもできる。アッセイのタイプに応じて、全細胞アッセイまたはこれら細胞型のいずれかから調製した膜を用いたアッセイを用いることができる。
【0112】
GLP-1の生物学的活性は、標準法により、一般にレセプター-結合活性スクリーニング法(その表面にGLP-1レセプターを発現する適当な細胞、例えば、RINmSF細胞やINS-1細胞などのインスリノーマ細胞株を用意することを含む)により決定することができる。例えば、Mojsov, Int J Pept Protein Res 40, 333-43 (1992)およびEPO708170A2をも参照のこと。GLP-1レセプターを発現するように操作した細胞を用いることもできる。ラジオイムノアッセイ法を用いて膜へのトレーサーの特異的結合を測定することに加えて、cAMP活性またはグルコース依存性のインスリン産生を測定することもできる。一つの方法において、GLP-1レセプターをコードするポリヌクレオチドを用いて細胞をトランスフェクションし、それによりGLP-1レセプタータンパク質を発現させる。それゆえ、例えば、これら方法は、そのような細胞をスクリーニングすべき化合物に接触させ、ついで、そのような化合物がシグナルを生成するか否か、すなわち、レセプターを活性化するか否かを決定することによって、レセプターアゴニストをスクリーニングするのに用いることができる。
【0113】
ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を利用して、本明細書に記載の方法に使用するためのGLP-1様分子を検出、精製および同定することができる。ABGA1178などの抗体は、完全なプロセシングされていないGLP-1(1-37)またはN-末端を切断されたGLP-1(7-37)または(7-36)アミドを検出する。他の抗体は、前駆体分子のC-末端の最末端(the very end)を検出し、生物学的に活性な切断されたペプチド、すなわち、GLP-1(7-37)アミドの量を引き算により計算することを可能にする手順となる(Orskovら、Diabetes, 42, 658-661 (1993); Orskovら、J. Clin. Invest. 87, 415-423 (1991))。
【0114】
他のスクリーニング法は、レセプター活性化によって引き起こされた細胞外のpHやイオンの変化を測定するシステムにおいて、GLP-1レセプターを発現する細胞、例えば、トランスフェクションしたCHO細胞の使用を含む。例えば、潜在的アゴニストをGLP-1タンパク質を発現する細胞と接触させ、第二メッセンジャー応答、例えば、シグナル伝達またはイオンもしくはpHの変化を測定して該潜在的アゴニストが有効であるか否かを決定することができる。
【0115】
一つの態様において、GLP-1レセプターへのGLP-1分子の結合を上記で記載したアッセイを使用することで測定することができる。
【0116】
本発明によるGLP-1分子は、上記で記載したアッセイを用いた決定により、ヒトGLP-1と比較して少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%機能的に活性であるか、および/または約1,000よりも大きな、約100よりも大きな、または約50よりも大きな、または約10よりも大きなEC50を有するのが好ましい。「より大きな」とは効力をさし、それゆえ、結合抑制を達成するのにより少ない量が必要とされることを示している。
【0117】
本発明の一つの態様において、化合物は500nM未満のGLP-1レセプターに対する効力(EC50)を有する。他の態様において、化合物は100nM未満、例えば、80nM未満、例えば、60nM未満、例えば、40nM未満、例えば、20nM未満、例えば、10nM未満、例えば、5nM未満、例えば、1nM未満、例えば、0.5nM未満、例えば、0.1nM未満、例えば、0.05nM未満、例えば、0.01nM未満のGLP-1レセプターに対する効力(EC50)を有する。
【0118】
さらなる態様において、化合物の解離定数(Kd)は、500nM未満である。さらに別の態様において、リガンドの解離定数(Kd)は、100nM未満、例えば、80nM未満、例えば、60nM未満、例えば、40nM未満、例えば、20nM未満、例えば、10nM未満、例えば、5nM未満、例えば、1nM未満、例えば、0.5nM未満、例えば、0.1nM未満、例えば、0.05nM未満、例えば、0.01nM未満である。
【0119】
結合アッセイは、種々の環境に存在する組換えにより製造したレセプターポリペプチドを用いて行うことができる。そのような環境は、例えば、組換え核酸または天然に存在する核酸から発現したレセプターポリペプチドを含む細胞抽出物および精製した細胞抽出物を含み、また、例えば、組換え手段によりまたは種々の環境に導入した天然に存在する核酸から製造した精製GLP-1レセプターの使用をも含む。
【0120】
組換え発現したGLP-1レセプターを使用することは、定められた細胞系で該レセプターを発現させることができることにより、該レセプターでの化合物の応答を他のレセプターでの応答から一層容易に識別できるようにすることなどの幾つかの利点を提供する。例えば、通常は該レセプターを発現することのないHEK293、COS7、およびCHOなどの細胞株で該レセプターを発現させることができ、その際、発現ベクターを有しない同細胞株は、対照として働きうる。
【0121】
薬理学的に許容しうるGLP-1塩
本明細書に記載するいずれのGLP-1分子の薬理学的に許容しうる塩の形態を、本発明の使用および方法に用いることができる。酸付加塩を形成するのに通常用いられる酸は、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸など、および有機酸、例えば、pトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、pブロモフェニルスルホン酸、カルボン酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、酢酸などである。
【0122】
そのような塩の例としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、クロライド、ブロマイド、ヨーダイド、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマール酸塩、リンゴ酸塩、ブチン-1,4-ジオン酸塩、ヘキシン-1,6-ジオン酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、ガンマ-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、マンデル酸塩などが挙げられる。好ましい酸付加塩は、無機酸、例えば、塩酸や臭化水素酸など、とりわけ塩酸で形成されるものである。
【0123】
塩基付加塩としては、無機塩基から形成されるもの、例えば、アンモニウムまたはアルカリまたはアルカリ土類金属の水素化物、炭酸塩、重炭酸塩などが挙げられる。それゆえ、本発明の塩を調製するうえで有用なそのような塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。塩の形態が特に好ましい。
【0124】
本発明において使用するのに適したGLP-1分子は、本発明において使用する前に1またはそれ以上の賦形剤とともに製剤化することができる。例えば、本発明において使用する活性化合物は、よく知られた方法により二価の金属カチオンとの錯体を形成させることができる。そのような金属カチオンとしては、例えば、Zn++、Mn++、Fe++、Co++、Cd++、Ni++などが挙げられる。
【0125】
任意に、本発明に使用する活性化合物は、薬理学的に許容しうる緩衝液と混合することができ、pHを調節して許容しうる安定性および非経口投与に許容しうるpHを提供することができる。
【0126】
任意に、1またはそれ以上の薬理学的に許容しうる抗菌剤を添加することができる。メタ-クレゾールおよびフェノールは好ましい薬理学的に許容しうる抗菌剤である。1またはそれ以上の薬理学的に許容しうる塩を添加してイオン強度または浸透圧を調節することができる。1またはそれ以上の賦形剤を添加して製剤の等張性をさらに調節することができる。グリセリンは等張調節賦形剤の一例である。
【0127】
本発明において使用するGLP-1分子の製造
本発明での使用に適したGLP-1分子は、当業者に知られたいずれの適当な方法を用いても製造することができる。例えば、ペプチドである本発明のGLP-1分子は、固相化学ペプチド合成により製造できる。そのようなペプチドはまた、例えばSambrook & Maniatisに記載されている標準法を用いた通常の組換え法によっても製造することができる。本明細書において使用する「組換え」とは、遺伝子が、本明細書に記載するGLP-1分子をコードするポリヌクレオチドを含むように遺伝的に改変した組換え(例えば、微生物または哺乳動物)発現系に由来することを意味する。GLP-1様ペプチドは、組換え細胞培養から、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含む方法(これらに限られるものではない)により回収および精製することができる。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を最終的な精製工程に用いることができる。本発明のGLP-1分子ペプチドは、天然の精製した生成物または化学合成法の生成物であってよいし、あるいは原核生物または真核生物宿主(例えば、培養またはインビボにて、細菌、酵母、高等植物、昆虫および哺乳動物細胞によって)から遺伝子組換えにより製造したものであってもよい。組換え製造法に用いた宿主に依存して、本発明のポリペプチドは一般にグリコシル化されていないが、グリコシル化されていてもよい。
【0128】
GLP-1分子の製造の他の適当な方法は、WO03/046158(「組換えヒトグルカゴン様ペプチド-1(7-37)の製造方法」)に記載された組換え法を含む(その内容を参照のため本明細書に引用する)。
【0129】
GLP-1分子はまた、例えば、WO01/55213(「グルカゴン様ペプチド1化合物の可溶化法」)に記載された方法のいずれかを用いて可溶化することもできる(その内容を参照のため本明細書に引用する)。
【0130】
吐き気および嘔吐
幾つかの医薬に共通する副作用は、吐き気および嘔吐である。症状の重篤度は、患者が耐えられる極く穏やかな吐き気から、患者において栄養不良、場合によって生命を脅かす状況に導く重篤な嘔吐にいたるまで様々である。ある状況では、中くらいの吐き気は、患者、例えば、肥満の処置を受けており、食物摂取の節制が望まれる患者にとってはむしろ有益でさえある。副作用は、患者を投薬から辞退するように仕向け、このことは、生命を脅かす疾患を罹患していないかまたは疾患の症状を毎日経験している患者、例えば、穏やかないし中くらいの肥満を罹患している患者にとって特に重要である。
【0131】
医薬が各患者に奏する作用は異なり、各個人が経験する副作用も異なる。それゆえ、個々の患者における吐き気および嘔吐のレベルを評価しなければならず、投与は、所望の処置を達成しながら、耐えられる吐き気のレベル(吐き気のないことを含む)を得ることを目指さなければならない。
【0132】
GLP-1またはGLP-1アナログといっしょに制吐剤を用いる併用処置は、理論に拘束されるものでないが、一層有効である、なぜなら、より多くの投与量のペプチド医薬に耐えられるからであり、患者が通常の食物摂取をすることができ、それにより処置に対し一層速やかに応答することができるからである。
【0133】
制吐剤
本発明の文脈において「制吐」剤は、吐き気または嘔吐を阻止(すなわち、低減または除去)するあらゆる医薬である。吐き気および嘔吐の経験には多くの原因があり、これら症状の除去または低減は種々のメカニズムによって得ることができる。吐き気および嘔吐の処置に有用な医薬の主要なグループは、神経遮断薬/抗精神病薬、抗ヒスタミン薬、抗コリン作用薬、ステロイド剤(コルチコステロイド剤)、5HT3-レセプターアンタゴニスト(セロトニンレセプターアンタゴニスト)、NK1-レセプターアンタゴニスト(ニューロキニン1サブスタンスPレセプターアンタゴニスト)、抗ドーパミン作用薬/ドーパミンレセプターアンタゴニスト、ベンゾジアゼピン、カンナビノイド(Cannabinoids)である。ここで、以下に化合物の種々のグループの成員の網羅的でないリストを挙げる。
【0134】
1.神経遮断薬/抗精神病薬
a.ジキシラジン(dixyrazine)
b.ハロペリドール(haloperidol)
c.プロクロルペラジン(Prochlorperazine)(CompazineR
【0135】
2.抗ヒスタミン薬
a.ピペラジン誘導体
i.シクリジン(cyclizine)
ii.メクリジン(meclizine)
iii.シナリジン(cinnarizine)
b.プロメタゾン(Promethazine)
c.ジメンヒドリナート(Dimenhydrinate)
d.ジフェンヒドラミン(Diphenhydramine)
e.ヒドロキシジン(Hydroxyzine)
f.ブクリジン(Buclizine)
g.塩酸メクリジン(Meclizine hydrochloride)(Bonine, Antivert)
【0136】
3.抗コリン作用薬(アセチルコリンレセプターの阻害剤)
a.スコポラミン(Scopolamine)
b.グリコピロン(Glycopyrron)
c.ヒオシン(Hyoscine)
i.アーテイン(Artane)(トリヘキシ-5トリヘキシフェニジル塩酸塩)
ii.コジェンチン(Cogentin)(ベンズトロピンメシレート)
iii.アキネトン(Akineton)(ビペリデン塩酸塩)
iv.ジシパル(Disipal)(ノルフレックスオルフェナドリンクエン酸塩(Norflex orphenadrine citrate))
v.ケマドリン(Kemadrin)(プロシクリジン塩酸塩(procyclidine hydrochloride))
【0137】
4.ステロイド剤(コルチコステロイド剤)
a.ベタメタゾン(Betamethasone)
b.デキサメタゾン(Dexamethasone)
c.メチルプレドニゾロン(Methylprednisolone)
d.プレドニゾロン(PrednisoneR
e.トリメトベンザミド(Trimethobenzamide)(Tigan)
【0138】
5.5HT3-レセプターアンタゴニスト(セロトニンレセプターアンタゴニスト)
a.グラニセトロン(Granisetron)
b.ドラセトロン(Dolasetron)
c.オンダンセトロン(Ondansetron)(塩酸塩)
d.トロピセトロン(Tropisetron)
e.ラモセトロン(Ramosetron)
f.パロノセトロン(Palonosetron)
g.アロセトロン(Alosetron)
h.ベメセトロン(Bemesetron)
i.ザチセトロン(Zatisetron)
j.バタノピルド(Batanopirde)
k.MDL-73147EF
l.メトクロプラミド(Metoclopramide)
m.N-3389(エンド-3,9-ジメチル-3,9-ジアザビシクロ[3,3,1]ノン-7-イル-1H-インダゾール-3-カルボキサミド二塩酸塩)
n.Y-25130塩酸塩
o.MDL72222
p.トロパニル-3,5-ジメチル安息香酸
q.3-(4-アリルピペラジン-1-イル)-2-キノキサリンカルボニトリルマレイン酸塩
r.ザコプリド塩酸塩(Zacopride hydrochloride)
s.ミルタゼピン(Mirtazepine(抗鬱剤))
【0139】
6. NK1-レセプターアンタゴニスト(ニューロキニン1サブスタンスPレセプターアンタゴニスト)
a.アプレピタント(Aprepitant)
b.MPC-4505
c.GW597599
d.MPC-4505
e.GR205171(選択的タキキニンNK1レセプターアンタゴニスト)
f.L-759274
g.SR 140333
h.CP-96,345
i.BIIF1149、NKP608C、NKP608A、CGP60829、SR140333(ノルピタンチウムベシレート/クロライド(Nolpitantium besilate/chloride))、LY303870(ラネピタント(Lanepitant))、MDL-105172A、MDL-103896、MEN-11149、MEN-11467、DNK333A、YM-49244、YM-44778、ZM-274773、MEN-10930、S-19752、ニューロノーム(Neuronorm)、YM-35375、DA-5018、MK-869、L-754030、CJ-11974、L-758298、DNK-33A、6b-I、CJ-11974
j.ベンゼラジド(Benserazide)およびカルビドーパ(carbidopa)
k.TAK-637[(aR,9R)-7-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジル]-8,9,10,11-テトラヒドロ-9-メチル-5-(4-メチルフェニル)-7H-[1,4]ジアゾシノ[2,1-g][1,7]ナフチリジン-6,13-ジオン]
l.PD154075([(2-ベンゾフラン)-CH2OCO]-(R)-アルファ-MeTrp-(S)-NHCH(CH3)Ph)
m.FK888、親化合物の化学的修飾、(D-Pro4, D-Trp7,9,10, Phe11)SP4-11
【0140】
7.抗ドーパミン作用薬/ドーパミンレセプターアンタゴニスト
a.ドンペリドン(Domperidone)
b.プロクロルペラジン(Prochlorperazine)
c.メトクロプラミド(Metoclopramide)
d.クロルプロマジン(Chlorpromazine)(トラジン(Thorazine))
e.ドロペリドール(Droperidol)(イナプシン(Inapsine))
f.プロメタジン(Promethazine)(フェネルガン(Phenergan))
【0141】
8.ベンゾジアゼピン(Benzodiazepines)(ValiumRその他)
9.非精神活性カンナビノイド(Non-psychoactive cannabinoids)
a.カンナビジオール(Cannabidiol)(CBD)
b.カンナビジオールジメチルヘプチル(Cannabidiol dimethylheptyl)(CBD-DMH)
c.テトラヒドロカンナビノール(Tetra-hydro-cannabinol)(THC)
d.WIN55-212(CB1およびCB2レセプターアゴニスト)などのカンナビノイドアゴニスト
e.ドロナビノール(Dronabinol)(MarinolR
【0142】
10.さらなるカンナビノイド
a.ナビロン(Nabilone)(セサメット(Cesamet))
11.c-9280(Merck)
【0143】
一つの態様において、本発明による部品のキットは、以下よりなる群から選ばれた制吐剤を含む:神経遮断薬、抗ヒスタミン薬、抗コリン作用薬、ステロイド剤、5HT-3-レセプターアンタゴニスト、NK1-レセプターアンタゴニスト、抗ドーパミン作用薬/ドーパミンレセプターアンタゴニスト、ベンゾジアゼピンおよび非精神活性カンナビノイド。
【0144】
好ましい態様において、部品のキットは、以下よりなる群から選ばれた5HT-3-レセプターアンタゴニストである制吐剤を含む:グラニセトロン、ドラセトロン、オンダンセトロン塩酸塩、トロピセトロン、ラモセトロン、パロノセトロン、アロセトロン、ベメセトロン、ザチセトロン、バタノピルド、MDL-73147EF、メトクロプラミド、N-3389、Y-25130塩酸塩、MDL72222、トロパニル-3,5-ジメチル安息香酸、3-(4-アリルピペラジン-1-イル)-2-キノキサリンカルボニトリルマレイン酸塩、ザコプリド塩酸塩およびミルタゼピン。
【0145】
さらに好ましい態様において、部品のキットは、以下よりなる群から選ばれた5HT-3-レセプターアンタゴニストである制吐剤を含む:グラニセトロン、ドラセトロン、オンダンセトロン塩酸塩、トロピセトロン、ラモセトロン、パロノセトロン、アロセトロン、ベメセトロン、およびザチセトロン。
【0146】
さらに一層好ましい態様において、部品のキットは、以下よりなる群から選ばれた5HT-3-レセプターアンタゴニストである制吐剤を含む:グラニセトロン、ドラセトロンおよびオンダンセトロン。
【0147】
制吐剤は、EMEAやFDAなどの少なくとも1の規制機関(regulatory agency)によって既に承認されており、それゆえ市場に出回っているものが好ましい。
【0148】
適応症
ペプチド医薬は、様々な疾患または障害の処置のために投与することができる。制吐剤の使用は、GLP-1またはGLP-1アナログベースの処置を改善すると思われる。
【0149】
GLP-1およびアナログは、例えば、以下の適応症の処置に用いることができる:肥満、糖尿病b(非インスリン依存性およびインスリン依存性の糖尿病)、損なわれたグルコース耐性、上昇した空腹時血中グルコース濃度、異常な血中グルコース濃度、メタボリックシンドローム(シンドロームX)、膵P-細胞衰退(deterioration)(P-細胞増殖/複製の誘発/刺激およびP-細胞への細胞の分化およびP-細胞アポトーシスの抑制を含む)、脳卒中、心筋虚血または心筋梗塞、胃腸の過剰運動性または過小運動性(gastrointestinal hypermotility or dysmotility)によって引き起こされる疾患、および機能性の胃腸障害、IBSおよび機能性消化不良。
【0150】
この目的のため、肥満の処置および予防は、食物摂取の制御(低減)、体重の低減、体重の維持(体重の低下があった後または体重の増加がある前)および体重増加の予防および低減を包含することを意味する。食欲の制御(抑制/低減)、飽満の制御(誘発または刺激)もまた含まれる。同様に、糖尿病の処置および予防は、部分的な膵切除を受けた対象者、非インスリン依存性の糖尿病を罹患した1またはそれ以上の親を有する対象者、妊娠糖尿病を有する対象者および急性または慢性の膵炎を罹患し、非インスリン依存性の糖尿病を発症するリスクのある対象者の処置を含む。それはさらに、インスリン遺伝子の転写を刺激することを含む。
【0151】
以下に列挙する疾患、障害、状態または症状の処置または予防は、例えば、以下の1またはそれ以上を含むものと解釈されなければならない:
a)疾患、障害または状態に付随する症状の改善;
b)疾患、障害または状態に付随する症状の発症の遅延;
c)疾患、障害または状態に付随する徴候および/または症状の発症の予防;
d)疾患、障害または状態の発症の予防;
e)疾患、障害または状態に付随する続発症の重篤度または頻度の低減;
f)長くなった寿命および
g)処置をしない場合に比較して一層優れた生活の質、
h)さもなければペプチド医薬による処置の副作用として経験される吐き気または嘔吐の低減または除去。
【0152】
本発明は、当該ペプチド医薬による処置の間ずっと用いることができ、あるいは副作用が観察されるかまたは該副作用を低減または除去するのが望ましい処置のステージにおいて用いることができる。そのようなステージとしては、以下のものが挙げられる:
1)初期の処置のステージ、例えば、副作用が除去されるかまたは耐えられるレベルに低減されるまでの処置の最初の頃の日または週
2)例えば、患者の一般的状態、高投与量のペプチド医薬の使用などのために副作用が一層顕著となった処置のステージ。
【0153】
ペプチド医薬による処置の対象となる疾患および障害のあるものは、栄養および無機物の不適切な摂取または吸収と関係している。これらペプチド医薬のサブグループは、肥満および糖尿病の処置と関連している;これらには、胃腸系の機能を制御する化合物並びに食欲および食物摂取を制御する医薬が含まれる。
【0154】
本発明によれば、部品のキットは1またはそれ以上の医薬を含み、該医薬は、以下よりなる群から選ばれた疾患または障害の処置のためのものである:肥満、糖尿病、高血圧およびメタボリックシンドローム。
【0155】
特定の態様において、1またはそれ以上の医薬は肥満の処置のためのものであり、さらに別の特定の態様において、1またはそれ以上の医薬は糖尿病の処置のためのものである。
【0156】
さらなる態様において、1またはそれ以上の医薬は血中グルコース濃度の調節のためのものである。
【0157】
さらなる態様において、1またはそれ以上の医薬は脳卒中および/または心筋虚血または心筋梗塞の処置のためのものである。
【0158】
他の態様において、1またはそれ以上の医薬は機能性の胃腸障害、過敏性腸管症候群(irritable bowel syndrome)および機能性消化不良の処置のためのものである。
【0159】
医薬組成物
本発明において使用するペプチド医薬および制吐剤は、1またはそれ以上の医薬組成物の形態で提供されるのが好ましい。該組成物は、当該医薬並びに意図した投与経路および治療的使用に適合するように調製されることが理解されるであろう。以下は本発明において使用するのに有用な医薬組成物の記載である。
【0160】
本発明の医薬組成物は、常法により、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 1995(E. W. Martin編、Mack Publishing Company、第19版、イーストン、ペンシルベニア)の記載にしたがって調製することができる。本明細書において「医薬」なろ語と「医薬組成物」なる語とは、互いに同義で用いられる。医薬組成物は通常の剤型、例えば、カプセル剤、錠剤、エアゾル剤、液剤、懸濁剤または局所適用剤であってよい。医薬なる語は、その通常の意味において、塩や水和物などのあらゆる適当な形態の当該活性成分を含むものとして用いられる。従って、ペプチド医薬なる語は、ペプチドそのもの並びに適当なその塩、水和物または誘導体を含むことを意図している。
【0161】
本発明は、GLP-1またはGLP-1アナログと制吐剤とを含む医薬に関する。GLP-1またはGLP-1アナログおよび/または制吐剤を未処理の化学物質として投与することも可能ではあるが、医薬組成物の形態で投与するのが好ましい。医薬は、併用医薬製剤として、または別個の医薬製剤として、製剤化することができる。本発明によれば、医薬は、GLP-1またはGLP-1アナログおよび/または制吐剤または薬理学的に許容しうるその塩、水和物または誘導体を含む。
【0162】
本発明の医薬組成物は、薬理学的に許容しうる担体、ビヒクルおよび/または賦形剤を含むのが好ましい。担体、ビヒクルおよび/または賦形剤は、それぞれペプチド医薬および制吐剤、およびその塩、水和物または誘導体と融和するものでなければならない。好ましい態様において、医薬組成物は、本発明に従って患者に投与したときに非免疫原性である。
【0163】
組成物、担体、希釈剤および試薬を言及する場合に本明細書において使用する「薬理学的に許容しうる」、「生理学的に耐えられる」なる語およびその文法的な変化物は、互いに同義で用いられ、これらの物質が、吐き気、目眩、胃の不調などの望ましくない生理的作用を呈することなくヒトに対して投与できることを示す。
【0164】
その中に活性成分を溶解または分散した医薬組成物の調製は、当該技術分野でよく理解されている。典型的にそのような組成物は液体の溶液かまたは懸濁液(水性または非水性)としての滅菌注射剤として調製されるが、使用前に液体として溶液または懸濁液にするのに適した固体形態をも調製することができる。調製物を乳化することもできる。
【0165】
適当な医薬担体は、滅菌水溶液および種々の有機溶媒および不活性な固体希釈剤または充填剤を含む。固体担体の例は、ラクトース、白土(terra alba)、スクロース、シクロデキストリン、タルク、ゼラチン、アガー、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはセルロースの低級アルキルエステルである。液体担体の例は、糖蜜、落花生油、オリーブ油、リン脂質、脂肪酸、脂肪酸アミン、ポリオキシエチレンまたは水である。適当な賦形剤は、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセリン、エタノールなどおよびその組み合わせである。
【0166】
さらに、所望であれば、組成物は、湿潤剤や乳化剤、pH緩衝剤などの補助物質(活性成分の有効性を促進する)を少量含んでいてよい。当該特定の医薬およびその投与経路に依存して、製剤は、3.5-8の範囲、例えば、4.5-7.5の範囲、例えば、5.5-7の範囲、例えば、6-7.5の範囲、例えば、約7.3のpHを有していてよい。しかしながら、当業者には理解されるように、pH範囲は、医薬および処置する個体および投与手順に従って調節することができる。例えば、ペプチド医薬のあるものは低いpHで容易に安定化することができる。従って、本発明の一つの態様において、製剤は、3.5-7の範囲、例えば、4-6の範囲、例えば、5-6の範囲、例えば、5.3-5.7の範囲、または例えば、5.5のpHを有する。
【0167】
液体組成物は、水に加えて、または水を除外して、液相をも含んでいてよい。そのようなさらなる液相の例は、グリセリン、綿実油などの植物油、オレイン酸エチルなどの有機エステル、および水−油エマルジョンである。
【0168】
本発明の医薬組成物は、ペプチド医薬または制吐剤の薬理学的に許容しうる塩を含んでいてよい。塩は治療的使用において許容しうるものであろう。それによって意味するのは、塩がペプチド医薬または制吐剤の生物学的活性を保持していること、および塩がその適用および疾患の処置において不都合なまたは有害な作用を有しないことである。
【0169】
薬理学的に許容しうる塩は標準法で調製される。ペプチド医薬または制吐剤が塩基であるなら、適当な溶媒中の過剰の有機もしくは無機酸で処理される。ペプチド医薬または制吐剤が酸であるなら、適当な溶媒中の無機もしくは有機塩基で処理される。
【0170】
薬理学的に許容しうる塩は、無機酸並びに有機酸の塩を含む酸付加塩であってよい。酸付加塩は、ペプチド医薬および/または制吐剤の遊離のアミノ基で生成される。適当な無機酸の代表例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、メタ硫酸、リン酸、硫酸および硝酸などが挙げられる。適当な有機酸の代表例としては、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、安息香酸、桂皮酸、クエン酸、フマール酸、グリコール酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、シュウ酸、ピクリン酸、ピルビン酸、サリチル酸、コハク酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、酒石酸、アスコルビン酸、パモン酸(pamoic)、ビスメチレンサリチル酸、エタンジスルホン酸、グルコン酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、p-アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸などが挙げられる。薬理学的に許容しうる無機もしくは有機酸の付加塩のさらなる例としては、J. Pharm. Sci. 1977,66,2(参照のため本明細書に引用する)に列記された薬理学的に許容しうる塩が挙げられる。金属塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩であってよい。金属塩の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウムおよびマグネシウム塩などが挙げられる。アンモニウム塩およびアルキル化アンモニウム塩の例としては、アンモニウム塩、メチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、ヒドロキシエチルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩、ブチルアンモニウム塩およびテトラメチルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0171】
遊離のカルボキシル基で生成する塩は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムまたは水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基に由来するものであってよい。
【0172】
本発明のGLP-1またはGLP-1アナログまたは制吐剤の薬理学的に許容しうる酸付加塩の範囲にさらに含まれるものは、その水和物(水和された形態)である。
【0173】
本発明の医薬組成物はさらに輸送分子を含んでいてよい。輸送分子は、主として本発明に使用する1またはそれ以上の医薬の半減期を増大させるために加える。輸送分子は、当該医薬中に導入するか当該医薬に固定させる(anchored)ことで作用する。
【0174】
当業者に知られた適当ないかなる輸送分子をも用いることができる。輸送分子の例は、共役(conjugate)セクションに記載したものである。他の好ましい例は、リポソーム、ミセル、および/またはミクロスフェアである。
【0175】
通常のリポソームは、典型的にリン脂質(中性または負に荷電)および/またはコレステロールからなる。リポソームは、水性の区画を囲む脂質二重層に基づく小胞構造である。リポソームは、サイズ、脂質組成、表面電荷およびリン脂質二重層の数および流動性などの物理化学的性質が異なっていてよい。リポソーム形成に最も頻繁に使用される脂質は以下のものである:1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DMPE)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPPE)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-リン酸(一ナトリウム塩)(DMPA)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-リン酸(一ナトリウム塩)(DPPA)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-リン酸(一ナトリウム塩)(DOPA)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-[ホスホ-rac-(1-グリセロール)](ナトリウム塩)(DMPG)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-[ホスホ-rac-(1-グリセロール)](ナトリウム塩)(DPPG)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-[ホスホ-rac-(1-グリセロール)](ナトリウム塩)(DOPG)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-[ホスホ-L-セリン](ナトリウム塩)(DMPS)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-[ホスホ-L-セリン)(ナトリウム塩)(DPPS)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-[ホスホ-L-セリン](ナトリウム塩)(DOPS)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(グルタリル)(ナトリウム塩)および1,1',2,2'-テトラミリストイルカルジオリピン(アンモニウム塩)。他の脂質と組み合わせた、例えば、コレステロールおよび/またはホスファチジルコリンと組み合わせたDPPCからなる調合物が好ましい。
【0176】
長期循環リポソームは、小胞壁の透過性が増大する体内部位で管外遊出できることを特徴とする。長期循環リポソームを生成するための最も普通の方法は、親水性ポリマーであるポリエチレングリコール(PEG)をリポソームの外表面に共有結合させることである。幾つかの好ましい脂質は、以下のものである:1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](アンモニウム塩)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-5000](アンモニウム塩)、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(塩酸塩)(DOTAP)。
【0177】
リポソームに応用可能な脂質は、Avanti, Polar lipids, Inc, Alabaster, ALによって提供される。さらに、リポソーム懸濁液は、フリーラジカルおよび貯蔵時の脂質過酸化ダメージに対して脂質を保護する脂質保護剤を含んでいてよい。親油性のフリーラジカルクエンチ剤(quenchers)、例えば、アルファ-トコフェロール、および水溶性の鉄特異的キレート化剤、例えば、フェリオキシアニン(ferrioxianine)が好ましい。
【0178】
例えば、Szokaら、Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9:467 (1980)、米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号および同第4,837,028号(これらすべてを参照のため本明細書に引用する)に記載されているように、様々な方法をリポソームの調製に利用することができる。他の方法は、不均一なサイズの多重ラメラ小胞を生成する。この方法では、小胞形成脂質を適当な有機溶媒または溶媒系に溶解し、真空下または不活性ガス下で乾燥させて薄い脂質フィルムを生成させる。所望ならフィルムを第三級ブタノールなどの適当な溶媒に再溶解し、ついで凍結乾燥してより均一な液体混合物(より容易に水和した粉末様形状である)を生成することができる。このフィルムを標的医薬(targeted drug)または標的成分(targeting component)で覆い、典型的に15-60分間攪拌して水和させる。得られる多重ラメラ小胞のサイズ分布は、脂質をより激しい攪拌条件で水和することにより、またはデオキシコール酸などの可溶化界面活性剤を添加することにより、より小さいサイズの方へシフトさせることができる。さらに、リポソームは、フリーラジカルおよび貯蔵時の脂質過酸化ダメージに対して脂質を保護する脂質保護剤を含んでいてよい。親油性のフリーラジカルクエンチ剤(quenchers)、例えば、アルファ-トコフェロール、および水溶性の鉄特異的キレート化剤、例えば、フェリオキシアニンが好ましい。
【0179】
ミセルは、水溶液中の界面活性剤(疎水性の部分および1またはそれ以上のイオン性その他の強い親水性基を含む分子)により生成される。固体界面活性剤の濃度が増大するにつれ、空気/水またはガラス/水の界面に吸着したその単層が緊密に充填されるようになるため、さらなる占拠には2つの単層中に既に存在している界面活性剤分子の過剰な圧縮が必要である。その濃度を超えた溶解界面活性剤の量のさらなる増大は、新たな分子と等価な量のミセルへの凝集を引き起こす。このプロセスは「臨界ミセル濃度」と呼ばれる特徴的な濃度で開始される。
【0180】
当業者によく知られた通常の界面活性剤を本発明のミセルに使用することができる。適当な界面活性剤としては、ラウリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オクタオキシエチレングリコールモノドデシルエーテル、オクトキシノール9およびPLURONIC F-127(Wyandotte Chemicals Corp.)が挙げられる。好ましい界面活性剤は、TWEEN-80、PLURONIC F-68、n-オクチル-ベータ-D-グルコピラノシドなどの静脈内注射に適合した非イオン性のポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレン界面活性剤である。さらに、リポソーム生成での使用に際して記載したものなどのリン脂質もミセル生成に使用することができる。
【0181】
本発明の好ましい態様において、本発明の医薬は、GLP-1またはGLP-1アナログおよび/または制吐剤またはその塩を、凍結乾燥物(lyophilisate)および溶媒として含み、該凍結乾燥物および該溶媒は、投与するまで別個の区画にあってよい。別の態様においては、組成物はペプチド医薬および/または制吐剤またはその塩の溶液である。両態様において、溶媒は本明細書に記載したものなどの適当ないずれの溶媒であってよく、好ましくは溶媒は食塩水である。
【0182】
本発明はまた、本発明による少なくとも1のペプチド医薬および/または1の制吐剤またはその塩を生理学的に許容しうる担体と混合することを含む、本発明の医薬または医薬組成物の製造方法にも関する。
【0183】
一つの態様において、本発明は、GLP-1またはGLP-1アナログおよび制吐剤、または薬理学的に許容しうるその塩を含む医薬組成物に関する。
【0184】
製剤
緩衝液および他の賦形剤
GLP-1分子は、それ自体、緩衝能を示す。しかしながら、長期にわたる組成物のpHおよび安定性を維持するには、TRISなどの緩衝液を加えるのが好ましい。一つの態様において、製剤は、約8.2〜約8.8、例えば、約8.3〜約8.6、例えば、約8.4〜約8.5のpHを有する。pHに関して本明細書で用いる際に「約」なる語は、±0.1のpH単位を意味する。それゆえ、「約8.5」のpHは、8.4〜8.6のpHを示す。使用する緩衝液は、例えば、トロメタン(tromethane)(TRIS)、およびリシンやヒドロキシリシンなどのアミノ酸ベースの緩衝液である。「TRIS」の語は、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール(当該技術分野でトロメタン、トリメチロールアミノメタンまたはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとしても知られる)、および薬理学的に許容しうるその塩をいう。遊離の塩基および塩酸塩の形態は、TRISの2つの一般的な形態である。
【0185】
本発明の製剤において使用するGLP-1分子の濃度は、一つの好ましい態様において、約0.30〜約0.65mg/mlのGLP-1分子、例えば、約0.5mg/mlのGLP-1分子である。
【0186】
GLP-1分子はまた、例えば、m-クレゾール、フェノール、ベンジルアルコール、またはメチルパラベンなどのフェノール性保存剤などの保存剤とともに製剤化することもできる。保存剤の一つの好ましい量は、約2mg/ml〜約6mg/mlである。しかしながら、当業者であれば、有効な保存に必要な保存剤の濃度が、使用した保存剤、製剤のpH、および保存剤に結合または封鎖する物質もまた存在しているか否かに依存することを知っている。好ましくは、m-クレゾールを製剤中に保存剤として用いる。
【0187】
緩衝液および保存剤が製剤中に含まれるのが最も好ましいが、浸透調節剤(tonicity modifier)および/または界面活性剤並びに注射用蒸留水などの他のさらなる賦形剤も含まれていてよい。浸透調節剤は、投与経路に依存して製剤と体液とをほぼ等張にするために含まれる。浸透調節剤の濃度は、ペプチド製剤中の浸透調節剤の既知の濃度にしたがう。本発明に使用する好ましい浸透調節剤はグリセリンである。
【0188】
投与形態
本発明の医薬は、以下の投与形態の1またはそれ以上などの適当な形態により投与することができる:経口、経鼻、非経口(皮下、静脈内および筋肉内を含む)、末梢、局所、口腔内、舌下、経皮、吸入、注射針なし(needle-free)または坐剤の形態。粘膜を通して送達する場合、これは生物学的活性物質を投与すべき個体のいずれの粘膜であってもよく、例えば、鼻、膣、目、口、生殖管、肺、胃腸管、または直腸、好ましくは鼻、口または膣の粘膜内であってよい。
【0189】
本発明の化合物は、非経口により、すなわち、静脈内、筋肉内、皮下、鼻内、直腸内、膣内または腹腔内投与により投与するのが好ましい。非経口投与の皮下および筋肉内形態が一般に最も好ましい。
【0190】
そのような投与に適した剤型は、以下に記載するように常法により調製することができる。
【0191】
一つの態様において、医薬は末梢、非経口または経口投与用である。
【0192】
非経口投与用組成物
本発明による医薬組成物は、非経口投与用、例えば、皮下、筋肉内、静脈内、鼻内、吸入、直腸内、膣内、口腔内、腹腔内、皮内および経皮経路用に製剤化するのが好ましい。
【0193】
ペプチド医薬および/または制吐剤またはその塩は、非経口投与用(例えば、注射により、例えば、ボーラス注射や連続注入)に製剤化することができ、アンプル、前もって充填した注射器、小容量浸剤中の単位投与剤型にて、または多回投与密封容器中、例えば、保存剤を添加したアンプルおよびバイアルで提供することができる。
【0194】
非経口用医薬組成物は、油性または水性ビヒクル中の滅菌水性または非水性注射液、分散液、懸濁液またはエマルジョンを含んでいてよい。
【0195】
水性溶液は必要なら適切に緩衝すべきであり、液体希釈液をまず十分な食塩水またはグルコースと等張にする。水性溶液は、とりわけ、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内投与に適している。使用する滅菌水性媒体はすべて当業者に知られた標準法により容易に利用でき、例は水性のポリエチレングリコールである。
【0196】
活性成分は、滅菌固体の無菌単離によりまたは溶液からの凍結乾燥により得られた、上記で記載した種類の滅菌粉末薬、顆粒剤、および錠剤であってよい。活性成分は、使用前に適当な注射液、分散液またはビヒクル、例えば、使用前の滅菌した発熱性物質不含の水で再構成してよい。
【0197】
ペプチド医薬/制吐剤またはその薬理学的に許容しうる塩の溶液は水または食塩水中で調製することができ、非毒性の界面活性剤と任意に混合することができる。静脈内または動脈内投与用の組成物は、滅菌水性溶液(緩衝液、リポソーム、希釈液および他の適当な添加剤をも含んでいてよい)を含んでいてよい。
【0198】
非経口使用のための油性または非水性の担体、希釈液、溶媒またはビヒクルの例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、動物、合成もしくは植物油、および注射できる有機エステルが挙げられ、保存剤、湿潤剤、乳化もしくは懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などの製剤用剤を含んでいてよい。そのような組成物に有用な油の特定の例としては、落花生油、ダイズ油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油、ワセリン油、および鉱油が挙げられる。非経口組成物に使用するのに適した脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸、およびイソステアリン酸が挙げられる。適当な有機エステルとしては、オレイン酸エチルやミリスチン酸イソプロピルなどの脂肪酸エステルが挙げられる。
【0199】
非経口組成物に使用するのに適した石鹸としては、脂肪酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、およびトリエタノールアミン塩が挙げられ、適当な界面活性剤としては、(a)陽イオン性界面活性剤、例えば、ハロゲン化ジメチルジアルキルアンモニウム、およびハロゲン化アルキルピリジニウム;(b)陰イオン性界面活性剤、例えば、アルキル、アリール、およびオレフィンスルホネート、アルキル、オレフィン、エーテル、およびモノグリセリドサルフェート、およびスルホスクシネート、(c)非イオン性界面活性剤、例えば、脂肪酸アミンオキシド、脂肪酸アルカノールアミド、およびポリオキシエチレンポリプロピレンコポリマー、(d)両親媒性界面活性剤、例えば、アルキル-ベータ-アミノプロピオネート、および2-アルキル-イミダゾリン第四級アンモニウム塩、および(e)これらの混合物が挙げられる。
【0200】
非経口組成物は、典型的に、溶液中に約0.5〜約25重量%の活性成分を含むであろう。保存剤および緩衝剤を用いてよい。注射部位での刺激を最小にしまたは除くため、そのような組成物は、約12〜約17の親水親油バランス(HLB)を有する1またはそれ以上の非イオン性界面活性剤を含んでいてよい。そのような組成物中の界面活性剤の量は、典型的に、約5〜約15重量%の範囲であろう。適当な界面活性剤としては、ポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えば、ソルビタンモノオレエートおよび疎水性塩基とのエチレンオキシドの高分子量付加物(プロピレンオキシドとプロピレングリコールとの縮合により生成)が挙げられる。
【0201】
注射または注入に適した医薬剤型としては、リポソーム中にカプセル包(encapsulation)することにより投与に適合させた活性成分を含む滅菌水性溶液または分散液を挙げることができる。すべての場合において、最終的な剤型は、製造および貯蔵の条件下で、滅菌され、液体で安定でなくてはならない。
【0202】
滅菌注射液は、濾過滅菌後、必要に応じて上記で列挙した様々な他の成分とともに、適当な溶媒中に必要量の化合物またはその薬理学的に許容しうる塩を配合することにより調製する。
【0203】
好ましい態様において、医薬はいずれも非経口投与用である。特別の態様では、医薬はいずれも皮下投与用である。
【0204】
経口投与用組成物
経口投与後も個体において生物学的に活性であることのできるペプチド医薬および制吐剤(短いペプチドおよび小分子など)は、広範囲の経口投与剤型に製剤化することができる。医薬組成物および剤型は、活性成分として、ペプチド医薬および/または制吐剤またはその薬理学的に許容しうる塩またはその結晶形の活性な成分を含む。薬理学的に許容しうる担体は、固体または液体のいずれであってもよい。固体製剤としては、粉末薬、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、トローチ、および分散性顆粒剤が挙げられる。固体担体は、希釈剤、香味剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁化剤、結合剤、保存剤、湿潤剤、錠剤崩壊剤、またはカプセル化物質としても作用する1またはそれ以上の物質であってよい。
【0205】
好ましくは、組成は、約0.5重量%〜75重量%のペプチド医薬および/または制吐剤を含み、残りが適当な医薬賦形剤であろう。経口投与のためには、そのような賦形剤としては、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、ゼラチン、ショ糖、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0206】
粉末薬では、担体は、細粒(finely divided)活性成分と混合した細粒固体である。錠剤では、活性成分を必要な結合能を有する担体と適当な比率で混合し、所望の形状およびサイズに充填する(compacted)。粉末薬および錠剤は、1-70%の活性成分を含むのが好ましい。適当な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点蝋、カカオバターなどである。「製剤」なる語は、担体としてのカプセル化物質(encapsulating material)とともに活性な化合物を含み、担体とともにまたは担体なしで活性な成分が担体(活性な成分と結合している)によって囲まれているカプセル剤を提供する組成物を包含する。同様に、カシェ剤およびトローチも含まれる。
【0207】
本発明による滴剤は、滅菌または非滅菌の水性または油性の溶液または懸濁液を含んでいてよく、確立された手順にしたがって調製することができる。滴剤はさらに、殺菌剤および/または殺真菌剤を含んでいてよい。滴剤中に含めるのに適した殺菌剤および殺真菌剤の例は、硝酸もしくは酢酸フェニル水銀(0.002%)、ベンザルコニウムクロライド(0.01%)および酢酸クロルヘキシジン(chlorhexidine acetate)(0.01%)である。油状溶液の調製に適した溶媒としては、グリセリン、希釈アルコールおよびプロピレングリコールが挙げられる。
【0208】
経口投与に適した他の形態としては、練り歯磨き(toothpaste)、ゲルデントリフリス(gel dentrifrice)またはチューインガム(chewing gum)が挙げられる。乳剤は、水性プロピレングリコール溶液中、溶液で調製でき、またはレシチン、ソルビタンモノオレエートまたはアラビアゴムなどの乳化剤を含んでいてよい。水性溶液は、活性成分を水中に溶解し、適当な着色剤、香味剤、安定化剤および粘稠化剤を添加することにより調製することができる。水性懸濁液は、粘性の物質、例えば、天然もしくは合成のゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムその他のよく知られた懸濁化剤とともに細粒活性成分を水中に分散させることにより調製することができる。固形製剤としては、液剤、懸濁液、乳剤、シロップおよびエリキシルが挙げられ、活性成分に加えて着色剤、香味剤、安定化剤、緩衝剤、人造および天然の甘味剤、分散剤、粘稠化剤、可溶化剤などを含んでいてよい。
【0209】
ある態様において、医薬のいずれかまたは両者が経口投与用である。例えば、少なくとも制吐剤が経口投与に使用できる医薬の形態である。
【0210】
局所投与用組成物
一つの態様において、医薬は局所投与に適した形態で提供されてよい。局所投与用の領域としては、皮膚表面が挙げられる。皮膚または粘膜経由の局所投与用組成物は、腫脹や発赤などの刺激の徴候を与えてはならない。
【0211】
医薬は経皮投与することができる。経皮投与は、典型的に、患者の皮膚を通した全身循環への経路のための医薬の送達を含む。皮膚の部位は、医薬を経皮的に投与するための解剖学的領域であり、前腕、腹部、胸部、背中、臀部、乳頭などを含む。
【0212】
医薬は、表皮への局所投与用に、軟膏、クリーム剤、ゲル剤またはローション剤として、または経皮貼付剤として製剤化することができる。軟膏およびクリーム剤は、例えば、水性または油性の基剤を用い、適当な粘稠化剤および/またはゲル化剤を添加して製剤化することができる。ローション剤は、水性または油性の基剤を用いて製剤化することができ、一般に、1またはそれ以上の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁化剤、粘稠化剤、または着色剤をも含んでいるであろう。口中の局所投与に適した組成物としては、香味基剤、通常はスクロースおよびアラビアゴムまたはトラガント中に活性剤を含むトローチ;ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアラビアゴムなどの不活性な基剤中に活性成分を含むパステル剤;および適当な液体担体中に活性成分を含む口内洗浄剤が挙げられる。
【0213】
エアゾル、鼻内または吸入投与用組成物
医薬はまた、吸入により、例えば、呼吸器管への鼻内および経口吸入投与により、投与することもできる。そのような投与のための適当な剤型、例えば、エアゾル剤または用量計量吸入剤(metered dose inhaler)は、常法により調製することができる。
【0214】
医薬はまた、鼻内投与用にも製剤化することができる。水剤または懸濁剤を、通常の手段、例えば、スポイト、ピペットまたは噴霧器を用いて鼻腔内に直接投与する。組成物は、単回または多回投与の形態で提供されてよい。スポイトまたはピペットでの後者の場合は、このことは患者が適当な前もって決定した容量の水剤または懸濁剤を投与することにより達成できる。噴霧器の場合、このことは、例えば、計量噴霧ポンプ(metering atomizing spray pump)により達成できる。鼻内投与のための適当な製剤は、EP1466610に記載されている。
【0215】
吸入用には、医薬は、よく知られた方法に従って、例えば、好ましくはそのような送達を意図したデバイス(例えば、Aradigm、AlkermesまたはNektarから市販のもの)中の、エアゾル剤、乾燥粉末または例えばミクロ小滴(microdroplets)での可溶化剤として製剤化することができる。
【0216】
エアゾル剤により投与する組成物は、当該技術分野で既知の方法に従って、例えば、ベンジルアルコールその他の適当な保存剤、バイオアベイラビリティーを増進するための吸収促進剤を用い、フルオロカーボンを用い、および/または他の可溶化剤または分散剤を用い、食塩水中の溶液として調製することができる。
ある態様において、医薬のいずれかは鼻内投与用である。
【0217】
坐剤として投与するための組成物
医薬はまた、坐剤として投与するためにも製剤化することができる。低融解蝋、例えば、脂肪酸グリセリドまたはカカオバターの混合物をまず融解し、活性成分を例えば攪拌により均一に分散させる。ついで、融解した均一な混合物を都合のよい大きさの型に注ぎ込み、冷却し、固化させる。
【0218】
活性な化合物は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)担体(PEG1000[96%]およびPEG4000[4%])中に配置した約0.5%〜約50%の本発明の化合物を含む坐剤に製剤化することができる。
【0219】
投与
本発明によれば、ペプチド医薬および/または制吐剤は、系の脱感作に導くことなく、それぞれのレセプターに到達しそれゆえ強壮で適当な刺激を確実にする十分なレベルの生物活性形態の医薬を可能とする投与形態により提供されてよい。
【0220】
さらに、ペプチド医薬を長期間にわたって、例えば、1週間を超えて、1ヶ月、またはそれ以上の期間にわたって投与すべき場合は、投与形態はそのような長期間にわたる処置に十分適しているのが好ましい。
【0221】
GLP-1またはGLP-1アナログと制吐剤とを含む併用製剤を用いて本発明を実施する場合は、該製剤は同じ投与経路、すなわち、両医薬に適した投与経路により投与するのが好ましいということになる。そのような投与は、例えば、非経口、例えば、皮下、または本明細書に記載した他のいずれかの非経口投与経路によってよく、あるいは経口であってよい。
【0222】
併用製剤の場合、ペプチド医薬と制吐剤とは同時に(すなわち、投与後、体内において同時に放出される)または順に(すなわち、投与後、異なる時点で放出される)投与することができる。従って、併用製剤を調製するのに用いる調合(formulation)は、必要に応じて医薬の体内での同時放出または連続的な放出を確実にするものであってよい。
【0223】
本発明をペプチド医薬と制吐剤とを別個の医薬として用いて実施する場合、剤型は異なるものであっても同じであってもよい。各医薬の剤型は、本明細書に記載するいずれのものであってもよい。一例として、ペプチド医薬を非経口的に、例えば、皮下により、または吸入または鼻内で投与し、制吐剤を経口投与することができる。
【0224】
同時または連続的な放出のためには、医薬は、体内で同時に放出されることを確実にする調合を用い、同じ投与経路により与えられるのが好ましい。
【0225】
本発明の医薬の適当な投与計画は、投与する患者のタイプ;患者の年齢、体重、性別および健康状態;投与経路;患者の腎臓および肝臓の機能;所望の効果;および特定の医薬を含む当該技術分野でよく知られた因子を考慮に入れて決定するのが好ましい。毒性なしに効力を生じる範囲内の医薬の濃度を達成するうえでの最適の正確さには、標的部位への医薬のアベイラビリティーの動力学に基づく投与計画が必要である。これには、医薬の分布、平衡、および排除の考慮が含まれる。
【0226】
医薬
本発明において用いるペプチド医薬および制吐剤は、部品のキット医薬として、または併用医薬として、例えば、患者への個別、連続的および/または同時投与のための併用医薬中におよび/または2つの別個の医薬中に以下を含む製品として提供されてよい:
(i)GLP-1またはGLP-1アナログおよび
(ii)制吐剤。
【0227】
製品は、本発明により、上記部品のキットの1またはそれ以上の特性を有していてよい。
【0228】
医薬は、適当なパッケージにパッケージングするのが好ましい。錠剤および可溶錠剤は、常法により、ねじぶた瓶、アルミ箔サシェ、プラスチックもしくは金属チューブ、またはアルミブリスターパックなどの保護容器にパッケージングされる。可溶性粉末薬または顆粒剤は、それぞれ所定の投与量の医薬製剤を含む、バッグ、サック、サシェまたは小嚢などの個別パッケージにパッケージングするのが好ましい。バッグは、アルミ箔などの耐水性または防湿性の材料でできていてよい。パッケージ中に乾燥剤を入れるのが適している。液剤、懸濁剤または乳剤は、単回または多回用途のための滅菌バイアルにパッケージングしてよい。非経口投与、とりわけ皮下投与のためには、医薬をカートリッジの形態、例えば、注射ペン(injection pen)用カートリッジの形態でパッケージングするのが好ましく、該注射ペンはインスリン処置で知られている注射ペンなどのものである。
【0229】
医薬パッケージングが1を超える投与単位を含む場合は、該医薬パッケージングは、各投与を1の投与単位にのみ適合させるメカニズムで提供するのが好ましい。
【0230】
用途
本発明によれば、化合物、ペプチド医薬および/または制吐剤は、医薬の製造のために用いることができる。
【0231】
本発明の一つの側面は、
(i)GLP-1またはGLP-1アナログおよび
(ii)制吐剤
を含む組成物の医薬の製造における使用に関する。
【0232】
本発明はさらに、併用療法に使用する医薬の製造のための、GLP-1またはGLP-1アナログおよび/または制吐剤の使用であって、
(i)GLP-1またはGLP-1アナログおよび制吐剤の両者を含む医薬または
(ii)GLP-1またはGLP-1アナログを含む医薬および制吐剤を含む医薬または
(iii)GLP-1またはGLP-1アナログおよび制吐剤の両者を含む医薬およびGLP-1またはGLP-1アナログを含む別の医薬または
(iv)GLP-1またはGLP-1アナログおよび制吐剤の両者を含む医薬および制吐剤を含む別の医薬
を個別に、連続しておよび/または同時に投与することを含む使用に関する。
【0233】
使用はさらに、本発明による医薬の製造を含む。
【0234】
併用療法
併用療法は、患者に少なくとも2の医薬を投与することを含む。これら2の医薬は別々に投与してよく、それゆえ、別個の医薬として製造されてよく、それにより、併用処置は、両医薬の所定期間内での、例えば、1週間またはそれ未満の期間内での協調した投与(coordinated administration)を含む。
【0235】
ある態様において、本発明は、個別投与を含む併用処置のための、制吐剤を含む医薬およびGLP-1またはGLP-1アナログを含む医薬に関する。
【0236】
併用療法のさらなる実施様式は、連続した投与を含み、ここで連続した投与は、第二の(およびその後の)医薬の投与の前の1の医薬の先立つ投与を処方するものである。第一の医薬の投与は、第二の(およびその後の)医薬の投与の1週間前まで、または、例えば、第二の(およびその後の)医薬の投与の24時間前まで、または、例えば、第二の(およびその後の)医薬の投与の12時間前まで、または、例えば、第二の(およびその後の)医薬の投与の6時間前まで、または、例えば、第二の(およびその後の)医薬の投与の3時間前まで、または、例えば、第二の(およびその後の)医薬の投与の1時間前まで、または、例えば、第二の(およびその後の)医薬の投与の30分前まで、例えば、第二の(およびその後の)医薬の投与の25分または20分前まで、または、例えば、第二の(およびその後の)医薬の投与の15分前まで、例えば、第二の(およびその後の)医薬の投与の10分前まで、または、例えば、第二の(およびその後の)医薬の投与の5分前までに投与してよい。
【0237】
本発明の他の態様において、ペプチド医薬および制吐剤は、互いに異なる時点および頻度で投与される。例えば、制吐剤は1日に1回投与され、ペプチド医薬は1日に1-3回投与されてよい。一例として、制吐剤は1日に1回朝に投与され、ペプチド医薬は1日に1-3回、例えば、朝、昼および夕に投与される。制吐剤とペプチド医薬との時間差は上記のとおりであってよい。
【0238】
ある態様において、本発明は、連続投与のための、制吐剤を含む医薬およびGLP-1またはGLP-1アナログを含む医薬に関する。
【0239】
併用療法の第三の様式は、これら2またはそれ以上の医薬の同時投与によって得られる。そのような処置計画は、これら2またはそれ以上の医薬を含む1の併用医薬を用いることにより行うことができる。
【0240】
ある態様において、本発明は、同時投与のための、制吐剤を含む医薬およびGLP-1またはGLP-1アナログを含む別個の医薬に関する。本発明はさらに、制吐剤とGLP-1またはGLP-1アナログとを含み、それによって併用療法に適した医薬に関する。同時投与のためには、ペプチド医薬と制吐剤とは同時投与に適した投与形態で提供されるのが望ましい。これら2の医薬は、両医薬の同時投与を提供すべく1の製剤中に一緒に製剤化してよい。それゆえ、これら2の医薬はともに、皮下注射、または他の非経口投与形態、例えば、鼻内、吸入、舌下、口内、経皮、経直腸、経膣投与に適した溶液にて製剤化することができる。さらに、併用療法の一つの態様において、医薬は、独立して、しかし医薬が患者に同時に提供されるようなしかたで調合される。このことは、該医薬の送達に適した1のデバイス中の2の別々のチャンバ、例えば、2のチャンバを有するカプセル、2のチャンバを有する注射に適したペン、2のチャンバを備えた吸入デバイス中に調合および貯蔵することによるものであってよい。
【0241】
さらに、併用療法は、個別、連続および同時投与の組み合わせを含んでいてよいことが理解される;それゆえ、医薬は、個別に、連続しておよび/または同時に患者に投与してよい。
【0242】
ペプチド医薬および制吐剤の投与は、最大の効力が得られるように協調されること、および正確な投与スキームは個々に決定しなければならないことが理解される。
【0243】
処置の方法
本明細書に記載する知見は、GLP-1またはGLP-1アナログおよび制吐剤を含む1またはそれ以上の医薬を個別に、連続しておよび/または同時に投与することにより得られる有効な処置に関する。
【0244】
それゆえ、一つの側面において、本発明は、GLP-1またはGLP-1アナログおよび制吐剤を含む1またはそれ以上の医薬を対象者に個別に、連続しておよび/または同時に投与することを含む、疾患または障害の処置または予防方法に関する。
【0245】
好ましくは、該疾患または障害は、肥満、糖尿病、高血圧、メタボリックシンドローム、便秘、骨粗鬆症、ベーチェット病、慢性関節リウマチ、癌および喘息よりなる群から選ばれる。あるいは、医薬は、血中グルコース濃度の調節のために用いられる。
【0246】
2またはそれ以上の医薬の投与を含む処置の方法は、異なる投与量の1またはそれ以上の別個の医薬を投与する期間を含んでいてよい。ある場合には、1またはそれ以上の医薬の投与量は、所定の期間後、例えば、少なくとも1日後、例えば、2日後、3日後、5日後、7日後、10日後、14日後、または例えば21日後に低減させてよい。医薬の低減は、これに限られるものではないが、満足のいく結果が所定の期間内に達成され、その後の処置は当該結果を維持するためのものである場合にも適用できる。
【0247】
増大した投与量が所定の期間必要とされる方法もまた意図され、そのような状況は、これらに限られるものではないが、一定程度の習慣性/非応答性が経験される状況、または対象者が症状の急性の悪化を自覚し、または症状の悪化を引き起こすと予期される事象に直面している状況であってよい。
【0248】
2またはそれ以上の別個の医薬の投与を含む処置の方法は、1またはそれ以上の別個の医薬の投与を中断する期間を含んでいてよい。本発明によれば、制吐剤の投与は、3-21日の期間、例えば、4-14日、例えば、7-14日、または例えば7-10日の期間後に中断してよい。
【0249】
制吐剤の投与は、本発明によれば、1日、2日、5日、7日、10日、14日、18日または21日の期間後に中断してよく、その後はペプチド医薬のみを投与する。
【0250】
それゆえ、さらなる態様は、制吐剤を含む医薬の投与が7日の期間後に中断される処置の方法に関する。
【0251】
用法
用法は、使用した特定の医薬組成物、投与経路および処置される特定の対象者により変わるであろう。理想的には、本発明の方法により処置される患者は、最大の耐性投与量にて、一般には薬剤耐性を生じる前に必要とされるより高くない投与量にて、薬理学的有効量の化合物を投与されるであろう。
【0252】
用法の実例
化合物について本明細書に開示した使用の方法については、毎日の経口での用法は、全体重当たり約0.01μg/kg〜約80mg/kgであるのが好ましいであろう。あるいは、投与量は、0.001-100ピコモル/kgであってよい。毎日の非経口での用法は、全体重当たり約0.01μg/kg〜約80mg/kgであってよい。毎日の局所投与の方法は、1日当たり1〜4回、好ましくは1日当たり2回または3回投与する、0.1mg〜150mgであるのが好ましいであろう。毎日の吸入での用法は、1日当たり約0.01mg/kg〜約1mg/kgであるのが好ましいであろう。化合物または薬理学的に許容しうるその塩の個々の投与量の最適な量および間隔が、処置すべき状態の性質および程度、投与の形態、経路および部位、および処置する特定の患者により決定されるであろうこと、およびそのような最適条件が常法により決定できることもまた、当業者により認識されるであろう。また、処置の最適な方針、すなわち、所定日数の間に1日当たりに投与される化合物または薬理学的に許容しうるその塩の投与の回数が、処置決定試験の通常の過程を用いて当業者により確認できることもまた、当業者により評価されるであろう。
【0253】
本明細書において使用する「単位剤型」なる語は、各単位が薬理学的に許容しうる希釈剤、担体、またはビヒクルとともに所望の効果を生成するのに十分な量として計算した前もって決定した量の化合物を単独でまたは他の薬剤とともに含む、ヒトおよび動物の対象者のための単位の投薬として適した物理的に区別される単位をいう。本発明の単位剤型の仕様は、使用した特定の化合物および達成すべき効果並びに宿主中での各化合物に関連する薬動力学による。投与する投与量は、「有効な量」すなわち個々の患者において「有効なレベル」を達成するのに必要な量でなければならない。
【0254】
「有効なレベル」は投与の好ましい終点として用いられるので、実際の投与量およびスケジュールは、薬力学、医薬分布、および代謝における個々の差違に依存して変わってよい。「有効なレベル」は、例えば、本発明による1またはそれ以上の化合物の濃度に対応する、患者において所望とされる血中または組織濃度として定義することができる。
【0255】
GLP-1の適当な投与量の非制限的例
本発明によれば、GLP-1またはGLP-1アナログ/ホモログは、0.01μg/kg-10mg/kg、あるいは0.001-1000ピコモル/kg、0.001-100ピコモル/kg、0.1-100ピコモル/kg、0.1-10ピコモル/kg、0.1ピコモル-5ピコモル/kg、1.0-100ピコモル/kg、1.0-50ピコモル/kgまたは10-50ピコモル/kgの投与量にて、1週間に1回ないし数回、例えば、1日1回、例えば、1日2回、例えば、1日3回投与することができる。
【0256】
単位剤型は、100ピコモル〜500ナノモル、または例えば、500ピコモル〜100ナノモル、または例えば、1ナノモル〜500ナノモル、または例えば、1ナノモル〜250ナノモル、または例えば、5ナノモル〜250ナノモル、または例えば、15ナノモル〜200ナノモル、または例えば、20ナノモル〜150ナノモル、または例えば、10ナノモル〜100ナノモル、または例えば、10ナノモル〜50ナノモル、または例えば、10ナノモル〜20ナノモル、または例えば、50〜125ナノモルのGLP-1またはGLP-1アナログ/ホモログを含んでいてよい。
【0257】
エクセンジン−4の適当な投与量の非制限的例
本発明によれば、エクセンジン−4は、1μg〜150μg、例えば、5μg〜140μg、例えば、5μg〜70μg、例えば、5μg〜20μg、例えば、5μg〜10μg、例えば、5μg、例えば、10μg、例えば、20μg、例えば、70μgまたは例えば140μgの投与量にて、1週間に1回ないし数回、例えば、1週間に1回、例えば、1週間に2回、例えば、1週間に3回、例えば、1日1回、例えば、1日2回、例えば、1日3回投与することができる。
【0258】
単位剤型は、1μg〜150μg、例えば、5μg〜140μg、例えば、5μg〜70μg、例えば、5μg〜20μg、例えば、5μg〜10μg、例えば、5μg、例えば、10μg、例えば、20μg、例えば、70μg、または例えば、140μgのエクセンジン−4を含んでいてよい。
【0259】
制吐剤の適当な投与量の非制限的例
所望の制吐効果を与えることのできるあらゆる適当な投与量の制吐剤を用いることができる。好ましくは、制吐剤の投与量を1日3回まで、例えば、1日1回または2回、投与する。制吐剤の適当な投与量の範囲の例としては、0.1〜500mg、例えば、1-125mg、例えば、1-50mgまたは50-100mgが挙げられる。
【0260】
それゆえ、単位剤型は、例えば、1mg〜150mg、例えば、5mg〜140mg、例えば、5mg〜70mg、例えば、5mg〜20mg、例えば、5mg〜10mg、例えば、5mg、例えば、10mg、例えば、20mg、例えば、70mg、または例えば、140mgの制吐剤を含んでいてよい。
【0261】
制吐剤の投薬は、選択した化合物の性質および特性による。それゆえ、本発明に関連して使用する制吐剤の投与量としては、以下のものが挙げられるが、これらに限られるものではない:
・8-16mgを1日1回または2回;好ましくは、制吐剤としてオンダセトロンを使用
・1-2mgを1日1回または2回;好ましくは、制吐剤としてグラニセトロンを使用
・2.5-5mgを1日1回;好ましくは、制吐剤としてトロピセトロンを使用
・80-125mgを1日1回;好ましくは、制吐剤としてアプレピタントを使用
【0262】
投薬の投与量および頻度は、化合物を併用して投与することができるよう、選択したGLP-1またはGLP-1アナログに適合するように選択されるのが好ましいであろう。
【0263】
実施例
実施例1
本発明に使用するためのGLP-1分子の適当な調合
3つの調合物が、以下のようにして調製される:
(A)水中のペプチド溶液の21.5mlアリコートを、21.5mlの0.63%メタクレゾール-3.2%グリセリンと混合し、最終pHを8.48に設定した。この溶液を0.2ミクロンの濾紙に通す。ついで、この溶液のアリコート(0.315%メタクレゾール-1.6%グリセリン中に0.5mg/mlのペプチドをpH8.48にて含む)を非経口バイアル中にピペットにて入れ、栓をする。
【0264】
(B)水中のペプチド溶液の21.5mlアリコートを、21.5mlの0.63%メタクレゾール-3.2%グリセリン-0.02モルL-リシンとpH8.5にて混合し、最終pHを8.48に設定する。
この溶液を0.2ミクロンの濾紙に通す。ついで、この溶液のアリコート(0.315%メタクレゾール-1.6%グリセリン-0.01モルL-リシン中に0.5mg/mlのペプチドをpH8.48にて含む)を非経口バイアル中にピペットにて入れ、栓をする。
【0265】
(C)水中のペプチド溶液の21.5mlアリコートを、21.5mlの0.63%メタクレゾール-3.2%グリセリン-0.02モルトリス緩衝液とpH8.5にて混合し、最終pHを8.50に設定する。
この溶液を0.2ミクロンの濾紙に通す。ついで、この溶液のアリコート(0.315%メタクレゾール-1.6%グリセリン-0.01モルトリス緩衝液中に0.5mg/mlのペプチドをpH8.50にて含む)を非経口バイアル中にピペットにて入れ、栓をする。
【0266】
本発明に使用するためのGLP-1化合物の固相t-Boc化学による調製
約0.5-0.6グラム(0.38-0.45ミリモル)のBoc Gly-PAM樹脂を標準60ml容反応容器に入れ、二重カップリングをApplied Biosytems ABI430Aペプチド合成機で行う。以下の側鎖保護アミノ酸(Bocアミノ酸の2ミリモルカートリッジ)がMidwest Biotech(フィッシャーズ、インディアナ)より得られ、合成に使用される:
Arg-トシル(TOS)、Asp-デルタ-シクロヘキシルエステル(CHXL)、Glu-デルタ-シクロヘキシルエステル(CHXL)、His-ベンジルオキシメチル(BOM)、Lys-2-クロロベンジルオキシカルボニル(2Cl-Z)、Met-スルホキシド(O)、Ser-O-ベンジルエーテル(OBzl)、Thr-O-ベンジルエーテル(OBzl)、Trp-ホルミル(CHO)およびTyr-2-ブロモベンジルオキシカルボニル(2Br-Z)およびBoc Gly PAM樹脂。トリフルオロ酢酸(TFA)、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、DMF中の0.5Mヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)およびジクロロメタン中の0.5Mジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)は、PE-Applied Biosystems(フォスターシティー、カリフォルニア)から購入した。ジメチルホルムアミド(DMF-Burdick and Jackson)およびジクロロメタン(DCM-Mallinkrodt)は、Mays Chemical Co.(インディアナポリス、インディアナ)から購入した。
【0267】
標準二重カップリングを、対称無水物かまたはHOBtエステル(ともにDCCを用いて生成)のいずれかを用いて行う。第二のセットの二重カップリング(TFA脱保護なしで)を、Trp31、Thr13およびThr11で行う。合成の完了した時点でN-末端Boc基を除去し、ペプチジル樹脂をDMF中の20%ピペリジンで処理してTrp側鎖を脱ホルミル化する。DCMで洗浄後、樹脂をテフロン(TEFLON)(登録商標)反応容器に移し、真空乾燥させる。
【0268】
Metを含むアナログについては、樹脂上還元はTFA/10%ジメチルスルフィド(DMS)/2%濃HClを用いて行う。開裂は、反応容器をHF(フッ化水素酸)装置(Penninsula Laboratories)に付着することにより行う。樹脂1グラム当たり1mlのm-クレゾールを加え、10mlのHF(AGA、インディアナポリス、インディアナより購入)を、前もって冷却した容器に濃縮する。樹脂1グラム当たり1mlのDMSをメチオニンが存在するときに加える。反応液を氷浴中で1時間攪拌し、HFを真空除去する。残渣をエチルエーテル中に懸濁し、固形分を濾過し、エーテルで洗浄する。各ペプチドを水性酢酸中に抽出し、凍結乾燥するかまたは逆相カラムに直接負荷する。
【0269】
精製は、緩衝液(A:水中の0.1%トリフルオロ酢酸、B:アセトニトリル中の0.1%TFA)中の2.2x25cm VYDAC C18カラムで行う。20%〜90%Bの勾配をHPLC(Waters)で10ml/分にて120分間行い、その間、UVを280nm(4.0A)にてモニターし、1分のフラクションを回収する。適当なフラクションを混合し、凍結し、凍結乾燥する。乾燥した生成物をHPLC(0.46x15cm METASIL AQ C18)およびMALDIマススペクトロメトリーにより分析する。
【0270】
固相F-Moc化学による本発明のGLP-1化合物の調製
約114mg(50ミリモル)のFMOC Gly WANG樹脂(NovaBiochem、ラジョラ、カリフォルニアより購入)を、96ウエル反応ブロックのプログラムした各ウエルに入れ、二重カップリングをAdvanced ChemTech 396ペプチド合成機で行う。C-末端アミドを有するアナログは、75mg(50μモル)のRink Amide AM樹脂(NovaBiochem、ラジョラ、カリフォルニア)を用いて調製する。
【0271】
以下のFMOCアミノ酸を、Advanced ChemTech(ルイスビル、ケンタッキー)、NovaBiochem(ラジョラ、カリフォルニア)、およびMidwest BioTech(フィッシャーズ、インディアナ):Arg-2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル(Pbf)、Asn-トリチル(Trt)、Asp-ベータ-t-ブチルエステル(tBu)、Glu-デルタ-t-ブチルエステル(tBu)、Gln-トリチル(Trt)、His-トリチル(Trt)、Lys-t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、Ser-t-ブチルエーテル(OtBu)、Thr-t-ブチルエーテル(OtBu)、Trp-t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、Tyr-t-ブチルエーテル(OtBu)。
【0272】
溶媒のジメチルホルムアミド(DMF-Burdick and Jackson)、N-メチルピロリドン(NMP-Burdick and Jackson)、ジクロロメタン(DCM-Mallinkrodt)は、Mays Chemical Co.(インディアナポリス、インディアナ)より購入する。
【0273】
ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、ジ-イソプロピルカルボジイミド(DIC)、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、およびピペリジン(Pip)は、Aldrich Chemical Co(ミルウォーキー、ウイスコンシン)より購入する。
【0274】
アミノ酸はすべてNMP中の0.45M HOBtに溶解し、50分間のDIC/HOBt活性化カップリングを20%Pip/DMFを用いた20分間の脱保護後に行う。各樹脂を脱保護およびカップリング後にDMFで洗浄する。最後のカップリングおよび脱保護後、ペプチド樹脂をDCMで洗浄し、反応ブロック中で真空乾燥する。
【0275】
反応/開裂ブロックアセンブリーの用意ができたら(in place)、2mlの試薬Kを各ウエルに加え、開裂反応液を2時間混合する[試薬K=10mlのトリフルオロ酢酸(TFA)当たり0.75gmのフェノール、0.5mlのチオアニソール、0.25mlのエタンジチオール、0.5mlの水;すべてAldrich Chemical Co.、ミルウォーキー、ウイスコンシンより購入できる]。TFA濾液を40mlの酢酸エチルに加え、沈殿を2000rpmにて2分間遠心する。上澄み液をデカントし、ペレットを40mlのエーテルに再懸濁し、再遠心し、再度デカントし、窒素下ついで真空乾燥させる。
【0276】
0.3-0.6mgの各生成物を1mlの0.1%TFA/アセトニトリル(ACN)に溶解し、20μlをHPLC[0.46x15cm METASIL AQ C18、1ml/分、45℃、214nM(0.2A)、A=0.1%TFA、B=0.1%TFA/50%ACN、勾配=50%B〜90%Bを30分かけて]で分析する。
【0277】
精製は、緩衝液(A:水中の0.1%トリフルオロ酢酸、B:アセトニトリル中の0.1%TFA)中の2.2x25cm VYDAC C18カラムで行う。20%〜90%Bの勾配をHPLC(Waters)で10ml/分にて120分間行い、その間、UVを280nm(4.0A)にてモニターし、1分のフラクションを回収する。適当なフラクションを混合し、凍結し、凍結乾燥する。乾燥した生成物をHPLC(0.46x15cm METASIL AQ C18)およびMALDIマススペクトロメトリーにより分析する。
実施例2
制吐特性を示すアッセイ
本発明に従って調製した医薬の制吐特性は、吐き気/嘔吐の動物モデルで示される。シスプラチンの腹腔内注射で処置したラットなどの動物を増大量の被験薬で処置する。制吐作用を嘔吐、カオリン摂取および食物摂取などの変数(これらはすべてシスプラチンの影響を受け、制吐剤によって正規化することができる)を用いて測定する。
【0278】
試験の概要:60匹のラットを12匹のラットずつの5グループに分け、以下のように処置する:
・グループ1:プラシーボ、すなわちプラシーボ被験薬
・グループ2:シスプラチン、すなわちプラシーボ被験薬
・グループ3:シスプラチン、すなわちX投与量での被験薬
・グループ4:シスプラチン、すなわちX*5投与量での被験薬
・グループ5:シスプラチン、すなわちX*10投与量での被験薬
【0279】
動物をシスプラチン/プラシーボで第0日目に処置し、毎日被験薬で処置する。嘔吐、カオリン摂取および食物摂取の測定を1週間毎日行う。
【0280】
実施例3
抗糖尿病特性を示すアッセイ
本発明の医薬の抗糖尿病活性は、ob/obまたはdb/dbマウス、Streptozotocin処置したラット、食餌誘発した肥満およびインスリン耐性を有するラットまたはマウスなどの糖尿病の動物モデルで示される。例えば、経口グルコース耐性試験で測定されるように、血中グルコースの低下、HbA1Cの低下、およびインスリン感受性の正常化の能力を抗糖尿病作用の読み取りとして用いる。
【0281】
試験の概要:200匹のob/obマウスを40匹のマウスずつの5グループに分け、以下のように処置する:
・グループ1:プラシーボ被験薬
・グループ2:Y投与量での被験薬
・グループ3:X投与量での被験薬
・グループ4:X*5投与量での被験薬
・グループ5:X*10投与量での被験薬
【0282】
動物を被験薬で3週間毎日処置する。経口グルコース耐性試験を、処置の開始前に10匹のマウスで、および各週の最後に10匹のマウスで行った。攻撃後、1時間の間、10分の間隔で血中グルコースを測定する。グルコース耐性試験の終了時までにマウスを屠殺する。毎日の血液グルコース試料も尾−血液を用いて採取する。
【0283】
実施例4
臨床試験プロトコール
本発明からの医薬の制吐作用は、ヒトで示される。12人の健常な有志者に、毎日、増大量の被験化合物(GLP-1化合物を制吐剤とともにか、またはGLP-1化合物単独のいずれか)を投与する。吐き気のレベルを、投与後の最初の2時間は10分おきに、その後は6時間の間、1時間おきに測定する。このレベルは標準視覚アナログスケール(standard visual analog scales)を用いて測定し、その場合、患者は吐き気をどの程度感じるかを10cmの長さのバー上で示す。投与は、耐えられない吐き気に達したときに個人個人で停止する。その後、同じ個人を本試験の最初の部分で使用したキットのGLP-1アナログ部分の増大投与量で処置する。制吐剤なしでGLP-1アナログを使用して達した投与量レベルは、制吐剤とともに達した投与量レベルよりも低いのが好ましい。
【0284】
実施例5
抗糖尿病臨床試験プロトコール
本発明によるキットの抗糖尿病作用を糖尿病患者で試験する。複数の医療機関にまたがった二重盲検、並列群、二重ダミー試験(multicentre, double-blind, parallel-group, double-dummy study)において、2型糖尿病の被験者における体重および血糖コントロールに対するキットの作用の用量−応答相関を調べる。
【0285】
方法:2型糖尿病の被験者であって、以前に経口抗糖尿病薬の単独療法を受けており、HbA(1c)<または=10%であるものが登録される。4週間のメトフォルミン導入(metformin run-in)期間の後、210人の被験者に無作為に被験薬(本明細書に記載の態様のいずれかによる投与量)を1日に1回投与するか、またはメトフォルミン1000mg b.d.を12週間続けた。HbA(1c)および空腹時血漿グルコースを毎日測定する。体重を毎週測定する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者に個別に、連続してまたは/および同時に投与するための
(i)GLP-1分子および
(ii)制吐剤
を含む、部品のキット。
【請求項2】
GLP-1分子および制吐剤が別個の医薬として提供される、請求項1に記載の部品のキット。
【請求項3】
(a)以下を含む併用医薬:
(i)GLP-1分子および制吐剤
および任意に
(b)以下を含む1またはそれ以上の別個の医薬:
(i)GLP-1分子および/または
(ii)制吐剤
を含む、請求項1に記載の部品のキット。
【請求項4】
GLP-1を含む、請求項1ないし3のいずれかに記載の部品のキット。
【請求項5】
GLP-1が、GLP-1(7-33)、GLP-1(7-34)、GLP-1(7-35)、GLP-1(7-36)、GLP-1(7-36)アミド、GLP-1(7-37)、またはその断片、アナログ、誘導体またはホモログよりなる群から選ばれる、請求項1ないし4のいずれかに記載の部品のキット。
【請求項6】
GLP-1分子が、
GLP-1(7-36)アミド、GLP-1(7-37)、エクセンジン−4、GLP-1(7-34)、GLP-1(7-35)、GLP-1(7-36)、Gln9-GLP-1(7-37)、D-Gln9-GLP-1(7-37)、Thrl6-Lysl8-GLP-1(7-37)、Lys18-GLP-1(7-37)、GLP-1(7-34)、GLP-1(7-35)、GLP-1(7-36)、GLP-1(7-36)NH2、Gly8-GLP-1(7-36)NH2、Gln9-GLP-1(7-37)、D-Gln9-GLP-1(7-37)、アセチル-Lys9-GLP-1(7-37)、Thr9-GLP-1(7-37)、D-Thr9-GLP-1(7-37)、Asn9-GLP-1(7-37)、D-Asn9-GLP-1(7-37)、Ser22-Arg23-Arg24-Gln26-GLP-1(7-37)、Thrl6-Lysl8-GLP-l(7-37)、Lys18-GLP-l(7-37)、Arg23-GLP-1(7-37)、Arg24-GLP-1(7-37)、GLP-1(7-34)、GLP-1(7-35)、GLP-1(7-36)NH2、Gln9-GLP-1(7-37)、d-Gln9-GLP1(7-37)、Thrl6-Lysl8-GLP-1(7-37)、Lysl8-GLP-1(7-37)、Gly'-GLP-1(7-36)NH2、Gly'-GLP1(7-37)OH、Val'-GLP-1(7-37)OH、Met8-GLP-1(7-37)OH、アセチル-Lys9-GLP-1(7-37)、Thr9GLP-1(7-37)、D-Thr9-GLP-1(7-37)、Asn9-GLP-1(7-37)、D-Asn9-GLP-1(7-37)、Ser22-Arg23 Arg24-Gln26-GLP-1(7-37)、Arg23-GLP-1(7-37)、Arg24-GLP-1(7-37)、a-メチル-Ala8-GLP-1(736)NH2、Gly'-Gln2'-GLP-1(7-37)OHまたはLY315902よりなる群、
またはGLP-1(7-36)アミド、GLP-1(7-37)、リラグルチド、エクサナチド、アルブゴン、CJC-1131、zp-10、BIM51077(Ipsen)、LY315902、LY307161(Eli Lilly)、S23521よりなる群
から選ばれる、請求項1ないし5のいずれかに記載の部品のキット。
【請求項7】
ペプチドが以下よりなる群から選ばれる、請求項1ないし6のいずれかに記載の部品のキット:Val8-GLP7-37(配列番号7)、Gln9-GLP7-37(配列番号8)、D-Gln9-GLP7-37(配列番号9)、Lys18-GLP7-37(配列番号10)およびThr16-Lys18-GLP7-37(配列番号11)。
【請求項8】
GLP-1分子が以下よりなる群から選ばれる、請求項1ないし7のいずれかに記載の部品のキット:NN2211(リラグルチド)、CJC-1131、BIM51077、LY315902、LY307161、GTP-010、AVE-10(ZP10)、AC2592(GLP-1)、DATTM: GLP-1、エクセンジン−4、エクセナチドおよびZP10。
【請求項9】
医薬のpHが4.0〜9.0である、請求項1ないし8のいずれかに記載の部品のキット。
【請求項10】
制吐剤が以下よりなる群から選ばれる、請求項1ないし9のいずれかに記載の部品のキット:神経遮断薬、抗ヒスタミン薬、抗コリン作用薬、ステロイド剤、5HT3-レセプターアンタゴニスト、NK1-レセプターアンタゴニスト、抗ドーパミン作用薬/ドーパミンレセプターアンタゴニスト、ベンゾジアゼピンおよび非精神活性カンナビノイド。
【請求項11】
制吐剤が、5HT3-レセプターアンタゴニストである、請求項10に記載の部品のキット。
【請求項12】
5HT3-レセプターアンタゴニストが、グラニセトロン、ドラセトロン、オンダンセトロン塩酸塩、トロピセトロン、ラモセトロン、パロノセトロン、アロセトロン、ベメセトロン、ザチセトロン、バタノピルド、MDL-73147EF、メトクロプラミド、N-3389、Y-25130塩酸塩、MDL72222、トロパニル-3,5-ジメチル安息香酸、3-(4-アリルピペラジン-1-イル)-2-キノキサリンカルボニトリルマレイン酸塩、ザコプリド塩酸塩およびミルタゼピンよりなる群から選ばれる、請求項11に記載の部品のキット。
【請求項13】
5HT3-レセプターアンタゴニストが、グラニセトロン、ドラセトロン、オンダンセトロン塩酸塩、トロピセトロン、ラモセトロン、パロノセトロン、アロセトロン、ベメセトロン、ザチセトロンよりなる群から選ばれる、請求項11に記載の部品のキット。
【請求項14】
医薬が、肥満、糖尿病、高血圧およびメタボリックシンドロームよりなる群から選ばれた疾患または障害の処置のためのものである、請求項1ないし13のいずれかに記載の部品のキット。
【請求項15】
医薬が、肥満の処置のためのものである、請求項14に記載の部品のキット。
【請求項16】
医薬が、糖尿病の処置のためのものである、請求項14に記載の部品のキット。
【請求項17】
医薬が、血中グルコース濃度の調節のためのものである、請求項1ないし16のいずれかに記載の部品のキット。
【請求項18】
医薬が、脳卒中、心筋虚血または心筋梗塞の処置のためのものである、請求項1ないし13のいずれかに記載の部品のキット。
【請求項19】
医薬が、機能性の胃腸管障害、刺激性腸管症候群または機能性消化不良の処置のためのものである、請求項1ないし13のいずれかに記載の部品のキット。
【請求項20】
医薬が、末梢投与のためのものである、請求項1ないし19のいずれかに記載の部品のキット。
【請求項21】
医薬が、非経口投与のためのものである、請求項20に記載の部品のキット。
【請求項22】
医薬が、皮下投与のためのものである、請求項21に記載の部品のキット。
【請求項23】
医薬が、経口投与のためのものである、請求項21に記載の部品のキット。
【請求項24】
少なくとも2の医薬が同じ投与法のためのものである、請求項20ないし23のいずれかに記載の部品のキット。
【請求項25】
対象者に個別に、連続してまたは/および同時に投与するための併用医薬および/または2つの別個の医薬において
(i)GLP-1またはGLP-1アナログおよび
(ii)制吐剤
を含む製品。
【請求項26】
(i)GLP-1またはGLP-1アナログおよび
(ii)制吐剤
を含む併用医薬である、請求項25に記載の製品。
【請求項27】
請求項1ないし24のいずれかに記載の部品のキットの1またはそれ以上の特徴を有する、請求項25に記載の製品。
【請求項28】
医薬の製造のためのGLP-1またはGLP-1アナログおよび制吐剤を含む組成物の使用。
【請求項29】
該医薬が、請求項1ないし24のいずれかに記載の部品のキットの1またはそれ以上の特徴を有する、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
併用療法に使用する医薬の製造のための、GLP-1またはGLP-1アナログおよび/または制吐剤の使用であって、
(i)GLP-1またはGLP-1アナログおよび制吐剤の両者を含む医薬または
(ii)GLP-1またはGLP-1アナログを含む医薬および制吐剤を含む医薬または
(iii)GLP-1またはGLP-1アナログおよび制吐剤の両者を含む医薬およびGLP-1またはGLP-1アナログを含む別の医薬または
(iv)GLP-1またはGLP-1アナログおよび制吐剤の両者を含む医薬および制吐剤を含む別の医薬
を個別に、連続してまたは/および同時に投与することを含む使用。
【請求項31】
該医薬が、請求項1ないし24のいずれかに記載の部品のキットの1またはそれ以上の特徴を有する、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
(i)GLP-1またはGLP-1アナログおよび
(ii)制吐剤
を含む1またはそれ以上の医薬を対象者に個別に、連続してまたは/および同時に投与することを含む、以下よりなる群から選ばれた疾患の処置または予防方法:肥満、糖尿病(非インスリン依存性およびインスリン依存性の糖尿病)、損なわれたグルコース耐性、上昇した空腹時血中グルコース濃度、異常な血中グルコース濃度、メタボリックシンドローム(シンドロームX)、膵P-細胞衰退(P-細胞増殖/複製の誘発/刺激およびP-細胞への細胞の分化およびP-細胞アポトーシスの抑制を含む)、脳卒中、心筋虚血または心筋梗塞、胃腸の過剰運動性または過小運動性によって引き起こされる疾患、機能性の胃腸障害、刺激性腸管症候群および機能性消化不良。
【請求項33】
処置が、肥満、糖尿病、高血圧およびメタボリックシンドロームよりなる群から選ばれた疾患、または血中グルコース濃度の調節のためである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
投与が便秘の処置のためである、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
処置が、脳卒中、心筋虚血および心筋梗塞よりなる群から選ばれた疾患のためである、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
処置が、刺激性腸管症候群および機能性消化不良よりなる群から選ばれた疾患のためである、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
制吐剤を含む医薬の投与を7日の期間の後に中断する、請求項32ないし36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
GLP-1分子を1μg/kg〜約100mg/kgの量で好ましくは毎日投与する、請求項32ないし37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
GLP-1分子を0.4〜2.4ピコモル/kg/分の投与量で投与する、請求項32ないし37のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
GLP-1分子を150〜350μg/kgの投与量で好ましくは毎日投与する、請求項32ないし37のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
GLP-1分子と制吐剤との組み合わせであって、GLP-1分子が請求項1ないし40のいずれかに記載のGLP-1分子であり、制吐剤が請求項1ないし40のいずれかに記載の制吐剤である組み合わせ。

【公表番号】特表2008−536881(P2008−536881A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506929(P2008−506929)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【国際出願番号】PCT/DK2006/000211
【国際公開番号】WO2006/111169
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(506039911)ガストロテック・ファルマ・アクティーゼルスカブ (5)
【氏名又は名称原語表記】Gastrotech Pharma A/S
【Fターム(参考)】