説明

GPS浮子による河川流況のモニタリングシステム

【課題】河川水流の平均流速を高精度に測定できるだけでなく、安全性を確保し、省力化が期待できるGPS浮子による河川流況のモニタリングシステムを提供する。
【解決手段】河川の水深に応じた最適な長さの吃水レベルを有し、GPS衛星からの緯度・経度・標高などのGPS情報の信号を受信する受信手段と、該GPS情報およびそのサンプリング時間などの観測データーを送信する送信手段および/または該観測データーを記録するデーターロガー等のデーター記録手段を納めた棒浮子と;上記観測データーを処理して、上記棒浮子の軌跡や河川水の流量・流向などの流況を計測する処理装置と;から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPS浮子により河川水の流量・流向などの河川流況をモニタリンするグシステム、すなわち、GPS浮子による河川流況のモニタリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、GPSによる流動体移動の計測システムとして、GPS衛星からのデーターを受信する受信機と、該受信データーに基づくデーターを無線で送信する送信機とを内収し、水流の変動とともに一体移動する浮体を水面上に配し、浮体からの受信データーに基づいて浮体の位置座標又は変位を測定システムにより検出することにより、治水計画や河道計画に対してより正確で安価なデーターの計測装置を提供する技術があった。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
しかし、上記GPSによる流動体移動の計測システムは、水流の変動とともに一体移動する浮体が、河川水流の平均流速より遅い水面上を浮遊する中空の球体であるため、正確な流速を計測できないという問題点があった。
【特許文献1】特開2001−4649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、河川水流の平均流速を高精度に測定できるだけでなく、安全性を確保し、省力化が期待できるGPS浮子による河川流況のモニタリングシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のGPS浮子による河川流況のモニタリングシステムは、河川の水深に応じた最適な長さの吃水レベルを有し、GPS衛星からの緯度・経度・標高などのGPS情報の信号を受信する受信手段と、該GPS情報およびそのサンプリング時間などの観測データーを送信する送信手段および/または該観測データーを記録するデーターロガー等のデーター記録手段を納めた棒浮子と;上記観測データーを処理して、上記棒浮子の軌跡や河川水の流量・流向などの流況を計測する処理装置と;から成ることを特徴とする。また、上記棒浮子が、その下部にバッテリーを備えていることを特徴とする。さらに、上記棒浮子が、上端部に吊フックを備えていることを特徴とする。更に又、上記棒浮子の送信手段から受信した観測データーを処理する処理装置が、サーバー、制御部およびパソコン等のデーター処理機を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のGPS浮子による河川流況のモニタリングシステムは、棒浮子の位置情報をGPSにより高精度に把握することができるため、河川の平均水流を正確に測定することができ、しかも、人手を必要としないため、省力化となるだけでなく、特に洪水時には極めて安全に測定することができるという利点がある。また、棒浮子の下部に重いバッテリーを内蔵しているので、浮子が安定して流れる。さらに、棒浮子の上端部に吊フックを設けたので、浮子の回収が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、本発明システムの一実施例を示すものであって、1は棒浮子、2は観測装置、3はGPS衛星である。
【0008】
上記棒浮子1は、吃水レベルを持った筒状のポールであって、水深に応じて最適な吃水長さのものを選択して使用できるように、例えば、吃水レベル0.5m、1m、2m、4mなど、各種のレベルのものが用意されている。
【0009】
上記棒浮子1内には、図2に示すように、受信アンテナ1a、GPS受信機1b、送信機1c、出力制御部1d、データーロガー1e、バッテリー1fが納められている。1gは吊フック、1hは着脱部である。
【0010】
上記受信アンテナ1aは、上記GPS衛星3から緯度・経度・標高などのGPS情報の信号をキャッチする。上記GPS受信機1bは受信アンテナ1aによりキャッチされたGPS情報を受信する。上記送信機1cは、GPS受信機1bにより受信されたGPS情報やそのサンプリング時間を、外部の上記観測装置2に無線で送る。また、上記データーロガー1eは、上記GPS受信機1bのGPS情報やサンプリング時間を内部で記録する。上記出力制御部1dは、上記送信機1cおよびデーターロガー1eへのGPS情報の無線送信あるいは内部記録の操作をコントロールする。上記バッテリー1fは、上記各機器を動作させるための電力を供給する。上記吊フック1gは、例えば、棒浮子1を運搬したり水面に降ろしたり回収する際に使用される。上記着脱部1hにおいて、内部に収納される各機器を出し入れする際に、開閉する。
【0011】
図1に示すように、上記観測装置2は、受信機2a、パソコン等のデーター処理機2bおよびバッテリー2cを備えている。上記受信機2aは、インターネットなどの適当な通信網を通じ得られた上記GPS情報やサンプリング時間を上記データー処理機2bに提供する。
上記データー処理機2bは、上記GPS情報やサンプリング時間に基づいて得られた棒浮子1の軌跡から、任意の区間の流向や流速などの流況を計測して、例えば水面勾配の把握、湾曲箇所の特徴、橋脚箇所の特徴、支川合流箇所の特徴、堤防補強箇所の状況などの河道特性を得る。
【0012】
次に、上記実施例のシステムによる河川流況のモニタリングについて説明する。
まず、図3に示すような浮子表を使用して、観測測線における水位に最適な吃水レベルの棒浮子1を選定し、観測区間の上流に投下する。
【0013】
投下された棒浮子1は、GPS衛星3からの緯度・経度・標高などのGPS情報の信号を受信アンテナ1aによりキャッチして、そのGPS情報およびそのサンプリング時間を直ちに送信機1cから観測装置2の受信機2aに送ると共に、内部のデーターロガー1eに記録する。このGPS情報のサンプリングは、流速等の流況に応じて適当な間隔(例えば、1秒間に3回)を選定する。
【0014】
上記GPS情報やサンプリング時間に基づいて得られた棒浮子1の軌跡から、任意の区間の流向や流速などの流況を計測して、例えば、河道特性、湾曲箇所の特徴、橋脚箇所の特徴、支川合流箇所の特徴、堤防補強箇所の状況などの河道特性を得る。なお、上記データーロガー1eに記録された観測データーも同様に処理される。
【0015】
上記実施例の棒浮子1は、GPS情報やサンプリング時間等のデーターを外部の観測装置2に無線で送信するための送信機1cを備えているが、これを省略して、データーロガー1eなどの内部記録手段に記録したデーターを取り出して、これをデーター処理装置により流況を計測処理させるだけでもよい。または、上記データーロガー1eの方を省略してもよい。
【0016】
さらに、上記観測装置2は上記実施例に限定するものではなく、受信アンテナ、省電力受信機、GPS受信機、パソコン等のデーター処理機などから構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本システムを使用して、短時間のうちに水位が変化する洪水時などにおいて、1日に何度でも安全かつ迅速に、しかも高精度に観測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明システムの一実施例を示す説明図である。
【図2】図1の棒浮子の構造を示す説明図である。
【図3】浮子表の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0019】
1 棒浮子
1a 受信アンテナ
1b GPS受信機
1c 送信機
1d 出力制御部
1e データーロガー
1f バッテリー
1g 吊フック
1h 着脱部
2 観測装置
2a 受信機
2b データー処理機
2c バッテリー
3 GPS衛星

【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川の水深に応じた最適な長さの吃水レベルを有し、GPS衛星からの緯度・経度・標高などのGPS情報の信号を受信する受信手段と、該GPS情報およびそのサンプリング時間などの観測データーを送信する送信手段および/または該観測データーを記録するデーターロガー等のデーター記録手段を納めた棒浮子と;上記観測データーを処理して、上記棒浮子の軌跡や河川水の流量・流向などの流況を計測する処理装置と;から成ることを特徴とするGPS浮子による河川流況のモニタリングシステム。
【請求項2】
上記棒浮子が、その下部にバッテリーを備えていることを特徴とする請求項1に記載のGPS浮子による河川流況のモニタリングシステム。
【請求項3】
上記棒浮子が、上端部に吊フックを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のGPS浮子による河川流況のモニタリングシステム。
【請求項4】
上記棒浮子の送信手段から受信した観測データーを処理する処理装置が、サーバー、制御部およびパソコン等のデーター処理機を備えていることを特徴とする請求項1、2または3に記載のGPS浮子による河川流況のモニタリングシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−10394(P2007−10394A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−189347(P2005−189347)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(501447018)株式会社総合防災システム研究所 (4)
【Fターム(参考)】