説明

GaN系LEDの製造方法

【課題】n側電極にAl単体またはAl合金からなるn側第1金属層を含み、p側電極にAlよりも酸化還元電位の貴な金属の酸化物を含む導電性酸化物膜を含む、GaN系LEDの製造工程において、該導電性酸化物膜が腐食することを防止する。
【解決手段】第1のマスクパターンを形成する工程に含まれるフォトレジスト現像工程では、該第1のマスクパターンによって導電性酸化物膜の表面を保護し、第2のマスクパターンを形成する工程に含まれるフォトレジスト現像工程では、該第2のマスクパターンによってn側第1金属層の表面を保護することによって、n側第1金属層および導電性酸化物膜を同時にアルカリ現像液に接触させないようにする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GaN系LEDを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GaN系半導体は、一般式AlInGa1−a−bN(0≦a≦1、0≦b≦1、0≦a+b≦1)で表される化合物半導体であり、3族窒化物半導体、窒化物系半導体などとも呼ばれる。n型層とp型層とこれらの層の間に挟まれた発光層とからなるダブルヘテロpn接合型の発光構造を、GaN系半導体を用いて形成してなるGaN系LEDが、近紫外〜緑の波長域の光を発生させるデバイスとして実用化されている。また、GaN系LEDを蛍光体と組み合わせることによって白色光源を得ることができる。かかる白色光源は、液晶ディスプレイのバックライトユニット用光源や室内照明用光源として使用されている。
【0003】
n側電極の材料にAl(アルミニウム)を用い、p側電極の材料にITO(インジウム錫酸化物)を用いた、GaN系LEDが公知である(特許文献1)。Alは近紫外〜可視波長域における反射率の高い金属であることから、これを電極の材料に用いることによって、GaN系LEDの発光効率を改善することができる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−12921号公報
【特許文献2】米国特許第6573537号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図12は、n側電極の材料にAlを用い、p側電極の材料にITOを用いた、GaN系LEDの構造例を示す断面図である。GaN系LED1000は、サファイア基板1100上に、下層側から上層側に向かって、それぞれがGaN系半導体からなるn型層1210、活性層1220、p型層1230をこの順に含む、半導体積層体1230を有している。半導体積層体1230からp型層1230と活性層1220がエッチング除去された部分に露出したn型層1210の表面には、n側電極1300が形成されている。このn側電極1300は、Al層1310と、その上に積層されたn側電極パッド1320とを備えている。Al層1310はn型層1210とオーミック接触している。n側電極パッド1320は積層構造(図示せず)を有しており、Al層1310に接する部分にTiW層を、また、最上層としてAu層を含んでいる。p型層1230の上面にはp側電極1400が形成されている。このp側電極1400は、ITO膜1410と、その一部上に形成されたp側電極パッド1420とから構成されている。ITO膜1410はp型層1230とオーミック接触している。p側電極パッド1420はn側電極パッド1320と同じ積層構造を有しており、ITO膜1410に接する部分にTiW層を、また、最上層としてAu層を含んでいる。
【0006】
本発明者等が下記の手順に従ってGaN系LED1000を作製したところ、ITO膜1410の腐食がしばしば発生するという問題があることが判明した。
(s1)サファイア基板1100上に半導体積層体1200をエピタキシャル成長させることにより製造されたエピウェハを準備した(図13)。
(s2)半導体積層体1200の表面(p型層1230の上面)に、ITO膜1410を蒸着により形成し、そのITO膜を、フォトリソグラフィ技法を用いて所定の形状にパ
ターニングした(図14)。
【0007】
(s3)ドライエッチング技法を用いて半導体積層体1200の所定部位からp型層1230と活性層1220を除去し、n型層1210を露出させた(図15)。
(s4)ステップ(s3)で露出させたn型層1210の表面に、リフトオフ法を用いて、Al層1310を所定形状に形成した(図16)。
(s5)Al層1310上とITO膜1410上に所定形状の開口部を有するリフトオフ用のマスクパターンmを、ポジ型フォトレジストを用いて形成した(図17)。
【0008】
(s6)ステップ(s5)で形成したマスクパターンmを用いたリフトオフ法により、n側電極パッド層1320とp側電極パッド1420とを同時に、所定形状に形成した(図18)。
ITO膜の腐食が生じたGaN系LEDを顕微鏡観察したところ、p側電極パッド1420が形成された部位で、最も激しい腐食が起こっていた。腐食は、該部位から周囲に向かって広がっている場合もあった。
【0009】
このようなITO膜の腐食は、Al層1310を形成するステップ(s4)をスキップしてステップ(s5)に進んだ場合、すわなち、ステップ(s5)においてn側電極パッド1320をn型層1210の表面に直接形成した場合には、発生しなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の顕微鏡観察結果から、本発明者等は、上記ステップ(s5)において、露光後のポジ型フォトレジストをアルカリ現像液で現像した際に、ITO膜の腐食が発生した可能性が高いと考えた。そして、Al層が存在しない場合にはITO膜が腐食しなかった事実から、観察されたITOの腐食は、ガルバニック反応による還元腐食である可能性が高いと考えた。つまり、現像によってフォトレジスト膜に形成される開口部を通してAl層とITO膜が同時にアルカリ現像液に接した結果、アルカリ現像液が電解液として作用し、カソード反応としてAlの酸化、アノード反応として酸化インジウムの還元を含む、ガルバニック腐食が生じたという推定である。相互に接触していないAl層1310とITO膜1410との間での電子の授受は、半導体積層体1230を経由して起こったものと考えられる。
【0011】
上記考察に基づき、本発明者等は、ITOとAlが同時にアルカリ現像液に接触することがないよう、n側電極パッドを形成する工程と、p側電極パッドを形成する工程とを分離した。その結果、ITOの腐食は全く発生しなくなった。
本発明は、上述の問題解決プロセスを通して完成されたものであり、その要旨は以下に記す通りである:
下記(A)のGaN系LEDを製造する方法であって、
下記n側第2金属層を形成する工程では、アルカリ現像液で現像可能な第1のフォトレジストからなる第1のマスクパターンを用いたリフトオフ法によって、下記n側第2金属層を所定形状に形成し、
下記p側金属層を形成する工程では、アルカリ現像液で現像可能な第2のフォトレジストからなる第2のマスクパターンを用いたリフトオフ法によって、下記p側金属層を所定形状に形成し、
該第1のマスクパターンを形成する工程に含まれるフォトレジスト現像工程では、該第1のマスクパターンによって下記導電性酸化物膜の表面を保護するとともに、該第2のマスクパターンを形成する工程に含まれるフォトレジスト現像工程では、該第2のマスクパターンによって下記n側第1金属層の表面を保護することによって、下記n側第1金属層および下記導電性酸化物膜を同時にアルカリ現像液に接触させないようにする、GaN系LEDの製造方法:
(A)n型層とp型層とこれらの層の間に挟まれた発光層とを含む複数のGaN系半導体層からなる半導体積層体と、該n型層と電気的に接続されたn側第1金属層と、該p型層と電気的に接続された導電性酸化物膜と、該n側第1金属層の表面に接するn側第2金属層と、該導電性酸化物膜の表面に接するp側金属層とを有し、該n側第1金属層と該導電性酸化物膜とは該半導体積層体の同一面側に設けられており、該n側第1金属層はAl単体またはAl合金からなり、該導電性酸化物膜はAlよりも酸化還元電位の貴な金属の酸化物を含む、GaN系LED。
【0012】
上記製造方法において、第1のフォトレジストおよび第2のフォトレジストは、好ましくはポジ型フォトレジストである。
上記(A)のGaN系LEDが備える半導体積層体は、通常、サファイア、SiC、Si、GaNなどからなる単結晶基板の上に複数のGaN系半導体層を順次エピタキシャル成長させることにより形成される。上記(A)のGaN系LEDは、このときに使用された単結晶基板を構造中に含むことができるが、必須ではない。
【0013】
上記(A)のGaN系LEDは、Al単体またはAl合金からなるn側第1金属層を備えている。ここでいうAl合金とは、耐熱性その他の性質を改善するために、Alに他の元素が添加された、Alを主成分とする合金である。耐熱性を改善するためにAlに添加される元素としては、Ti(チタン)、Nd(ネオジム)、Si(ケイ素)、Cu(銅)、Mg(マグネシウム)、Mn(マンガン)、Cr(クロム)などが例示される。n側第1金属層に含まれるAl以外の元素の濃度が低いほど、この層の反射率は高くなる傾向がある。
【0014】
上記(A)のGaN系LEDが備える導電性酸化物膜の材料は、ITOやIZO(インジウム亜鉛酸化物)のような、酸化インジウムベースの導電性酸化物、AZO(アルミニウム亜鉛酸化物)やGZO(ガリウム亜鉛酸化物)のような酸化亜鉛ベースの導電性酸化物、FTO(フッ素ドープ酸化錫)のような酸化錫ベースの導電性酸化物などであり得る。とりわけ、ITOは導電性および透明性に特に優れることから、極めて好ましい材料である。
【0015】
上記(A)のGaN系LEDが備えるn側第2金属層およびp側金属層には、それぞれ、LEDの実装に使用される電気接続材料を接合するためのパッド部が設けられる。電気接続材料としては、Auワイヤのようなボンディングワイヤ、Auバンプのようなメタルバンプ、AuSnハンダのようなハンダが例示される。n側第2金属層およびp側金属層のいずれかまたは両方は、パッド部に加えて、パッド部と一体的に形成された、電流を水平方向(半導体積層体の積層方向と直交する方向)に拡げるための延伸部を有していてもよい。この延伸部は、好ましくは、幅10μm以下のストライプ状部分を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明の実施形態に係る上記の製造方法によれば、上記(A)のGaN系LEDを歩留まりよく製造することができる。それには次の2つの理由がある。
第一の理由は、n側第2金属層とp側金属層の両方を、アルカリ現像液で現像可能なフォトレジストからなるマスクパターンを用いたリフトオフ法によって、所定形状に形成するからである。アディティブなパターニング法であるリフトオフ法によれば、目的とする金属層を、その金属層よりも先に形成された他の構造物(例えば、金属、導電性酸化物などからなる電極)の溶解や損傷を引き起こすことなく、容易にパターニングすることができる。更に、アルカリ現像液で現像できるフォトレジストの使用により、そのマスクパターンを精度よく形成することができる。なぜなら、フォトレジストの材料は有機樹脂であるのに対し、アルカリ現像液は水性溶液であることから、現像工程で現像液によるレジスト膜の膨潤が起こらないからである。このことは、n側第2金属層またはp側金属層に幅
10μm以下のストライプ状部分を設ける場合に、特に有利である。
【0017】
第二の理由は、マスクパターンを形成する工程に含まれるフォトレジスト現像工程において、Alからなるn側第1金属層と導電性酸化物膜とが同時にアルカリ現像液に接触することを防止しているからである。Alと導電性酸化物膜が同時にアルカリ現像液に接触しなければ、アルカリ現像液が電解液として作用しないので、導電性酸化物膜がAlよりも酸化還元電位の貴な金属の酸化物を含んでいても、導電性酸化物膜のガルバニック腐食は生じない。
【0018】
なお、アルカリ現像液で現像が可能なフォトレジストは、通常、ポジ型フォトレジストである。ネガ型フォトレジストの多くでは有機溶剤を現像液に用いるので、現像工程で現像液によるレジスト膜の膨潤が起こる。膨潤によってレジスト膜は変形するので、ネガ型フォトレジストを用いて高精度のマスクパターンを形成することは難しい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る製造方法を用いて製造することができるGaN系LEDの構造例を示すものであり、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のX−X線の位置における断面図である。
【図2】図2(a)は、図1に示すGaN系LEDが備えるn側第2金属層だけを抜き出して示す平面図であり、図2(b)は、図1に示すGaN系LEDが備えるp側金属層だけを抜き出して示す平面図であり
【図3】本発明に係る製造方法を説明するための工程断面図である。
【図4】本発明に係る製造方法を説明するための工程断面図である。
【図5】本発明に係る製造方法を説明するための工程断面図である。
【図6】本発明に係る製造方法を説明するための工程断面図である。
【図7】本発明に係る製造方法を説明するための工程断面図である。。
【図8】本発明に係る製造方法を説明するための工程断面図である。
【図9】本発明に係る製造方法を説明するための工程断面図である。
【図10】本発明に係る製造方法を説明するための工程断面図である。
【図11】本発明に係る製造方法を説明するための工程断面図である。
【図12】GaN系LEDの構造例を示す断面図である。
【図13】GaN系LEDの製造方法を説明するための工程断面図である。
【図14】GaN系LEDの製造方法を説明するための工程断面図である。
【図15】GaN系LEDの製造方法を説明するための工程断面図である。
【図16】GaN系LEDの製造方法を説明するための工程断面図である。
【図17】GaN系LEDの製造方法を説明するための工程断面図である。
【図18】GaN系LEDの製造方法を説明するための工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係る製造方法を、図1に示すGaN系LED100の製造方法を例に用いて説明する。図1(a)は平面図であり、図1(b)は図1(a)のX−X線の位置における断面図である。
GaN系LED100は、単結晶基板110上にバッファ層(図示せず)を介して形成された半導体積層体120を有している。単結晶基板110は、サファイア基板、SiC基板、GaN基板、Si基板などであり得る。半導体積層体120は、下層側から上層側に向かって、Siドープされたn型GaN層121、活性層122、Mgドープされたp型GaN層123を、この順に含んでいる。n型GaN層121はクラッド層とコンタクト層を兼用している。p型GaN層123も同様である。活性層122はMQW構造を有しており、アンドープのInxGa1−xN井戸層とSiドープされたInyGa1−yN(x>y≧0)障壁層とを交互に積層することにより形成されている。p型GaN層1
23の上面はテクスチャ化されていてもよい。単結晶基板110とn型GaN層121との間、n型GaN層121と活性層122との間、活性層122とp型GaN層123の間には、様々な機能を有するGaN系半導体層(積層体でもよい)が挿入され得る。ここでいう様々な機能には、例えば、転位密度を低減させる機能や、歪緩和機能が含まれる。更に、n型GaN層121と活性層122との間、および、活性層122とp型GaN層123との間には、キャリアの活性層122への閉じ込めを促進する機能を有するGaN系半導体層が挿入され得る。
【0021】
GaN系LED100は、部分的に露出したn型GaN層121の表面に、n側電極130を有している。このn側電極130は、AlまたはAl合金からなるn側第1金属層131と、その上に積層されたn側第2電極層132とから構成されている。n側第1金属層131はn型GaN層121とオーミック接触している。n側第2金属層132は、好ましくは、最上部にAu層を含む。その場合、n側第2金属層132は、n側第1金属層131と接する部分に、Auよりも高融点の金属を含むバリア層を含むことが好ましい。バリア層に好ましく使用し得る金属として、Pt(白金)、Cr(クロム)、Ti(チタン)、Ni(ニッケル)などが例示される。
【0022】
GaN系LED100は、p型GaN層123の上面にp側電極140を有している。このp側電極140は、導電性酸化物膜141と、その一部上に形成されたp側金属層142とから構成されている。導電性酸化物膜141の材料は、ITOやIZO(インジウム亜鉛酸化物)のような酸化インジウムベースの導電性酸化物、AZO(アルミニウム亜鉛酸化物)やGZO(ガリウム亜鉛酸化物)のような酸化亜鉛ベースの導電性酸化物、FTO(フッ素ドープ酸化錫)のような酸化錫ベースの導電性酸化物などで有り得る。導電性酸化物膜141はp型層123とオーミック接触している。p側金属層142は、好ましくは、最上部にAu層を含む。p側金属層142は、また、導電性酸化物膜141と接する部分に、金属酸化物との密着性に優れる金属からなる層を含むことが好ましい。そのような金属として、Cr(クロム)、Ti(チタン)、Ni(ニッケル)、Pt(白金)、Rh(ロジウム)などが例示される。
【0023】
図2(a)に示すように、n側第2金属層132は、電気接続材料が接合される部分であるパッド部132aと、該パッド部と一体的に形成された、ストライプ状の延伸部132bとを有している。p側金属層142も同様で、図2(b)に示すように、パッド部142aと、ストライプ状の延伸部142bとを有している。各延伸部の幅は、好ましくは1〜10μm、より好ましくは4〜8μmである。これらの延伸部の幅が大き過ぎる場合には、光取出し効率が低下し、小さ過ぎる場合には、電流を水平方向に拡げる機能が低下する。
【0024】
図示を省略しているが、GaN系LED100の、半導体積層体120が形成された側の面(ただし、n側第2金属層132の表面およびp側金属層142の表面を除く)は、SiO2のような絶縁性の金属酸化物からなるパッシベーション膜で被覆されている。
GaN系LED100は次の手順に従って製造することができる。
(S1)MOVPE法を用いて単結晶基板110上にn型GaN層121、活性層122、p型GaN層123を順次成長させて、半導体積層体120を形成する(図3)。
【0025】
(S2)半導体積層体120の表面(p型GaN層123の上面)に、蒸着、スパッタなどの方法を用いて、導電性酸化物膜141を100〜300nmの厚さに形成し、更に、フォトリソグラフィ技法を用いて所定の形状にパターニングする(図4)。パターニング後、必要に応じて、導電性酸化物膜141とp型GaN層123との間の接触抵抗を低下させるために熱処理を行う。
【0026】
(S3)ドライエッチング技法を用いて半導体積層体120の所定部位からp型GaN層123と活性層122を除去し、n型GaN層121を露出させる(図5)。
(S4)上記ステップ(S3)で露出させたn型GaN層121の表面に、リフトオフ法を用いて、n側第1金属層131を所定形状に形成する(図6)。n側第1金属層の厚さは、0.05〜0.5μmとすることができる。形成したn側第1金属層131に対しては、n型GaN層121との間の接触抵抗を低下させるための熱処理を行う。
【0027】
(S5)n側第1金属層131上のみに所定形状の開口部を有するリフトオフ用のマスクパターンM1を、ポジ型フォトレジストを用いて形成する(図7)。ここで、露光後のポジ型フォトレジストの現像にはアルカリ現像液を用いる。
(S6)ステップ(S5)で形成したマスクパターンM1を用いたリフトオフ法により、n側第1金属層131上にn側第2金属層132を形成する(図8)。n側第2金属層132の厚さは0.3〜2μmとすることができる。n側第2金属層132は、Au層を含むことが好ましく、そのAu層の厚さは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上である。
【0028】
(S7)導電性酸化物膜141上のみに所定形状の開口部を有するリフトオフ用のマスクパターンM2を、ポジ型フォトレジストを用いて形成する(図9)。ここで、露光後のポジ型フォトレジストの現像にはアルカリ現像液を用いる。
(S8)ステップ(S7)で形成したマスクパターンM2を用いたリフトオフ法により、導電性酸化物膜141上にp側金属層142を形成する(図10)。p側金属層142の厚さは0.5〜2μmとすることができる。p側金属層142は、Au層を含むことが好ましく、そのAu層の厚さは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上である。
【0029】
(S9)半導体積層体120が形成された側のウェハ表面(ただし、n側第2金属層132の表面とp側金属層142の表面を除く)に、SiO2からなるパッシベーション膜を形成する。
(S10)必要に応じて公知のグラインディング法、ラッピング法、ポリッシング法などを用いて単結晶基板110の厚さを減じた後、公知のダイシング法を用いてウェハからチップ状のGaN系LED100を切り出す(図11)。
【0030】
上記の手順において、ステップ(S2)とステップ(S3)の順番は入れ替えることができる。また、ステップ(S5)および(S6)を行う前に、ステップ(S7)および(S8)を行うこともできる。ステップ(S7)および(S8)は、ステップ(S4)の前に行うことも可能である。ステップ(S2)を、ステップ(S6)と(S7)の間に行うことも、また、可能である。
上記の手順では、該n側第1金属層131上にn側第2金属層132を積層する前に、n側第1金属層131の熱処理を行っている。その理由は、n側第2金属層に含まれる金属が、n側第1金属層に拡散して、n側第1金属層の反射率を低下させることを防止するためである。同じ理由から、n側第2金属層の熱処理は行わないことが望ましい。また、導電性酸化物膜141またはp側金属層142の熱処理が必要な場合には、n側第1金属層上にn側第2金属層を積層する前に行うことが望ましい。
【0031】
本発明は、明細書および図面に明示的に記載された実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0032】
100 GaN系LED
110 単結晶基板
120 半導体積層体
121 n型GaN層
122 活性層
123 p型GaN層
130 n側電極
131 n側第1金属層
132 n側第2金属層
132a パッド部
132b 延伸部
140 p側電極
141 導電性酸化物膜
142 p側金属層
142a パッド部
142b 延伸部
M1、M2 マスクパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)のGaN系LEDを製造する方法であって、
下記n側第2金属層を形成する工程では、アルカリ現像液で現像可能な第1のフォトレジストからなる第1のマスクパターンを用いたリフトオフ法によって、下記n側第2金属層を所定形状に形成し、
下記p側金属層を形成する工程では、アルカリ現像液で現像可能な第2のフォトレジストからなる第2のマスクパターンを用いたリフトオフ法によって、下記p側金属層を所定形状に形成し、
該第1のマスクパターンを形成する工程に含まれるフォトレジスト現像工程では、該第1のマスクパターンによって下記導電性酸化物膜の表面を保護するとともに、該第2のマスクパターンを形成する工程に含まれるフォトレジスト現像工程では、該第2のマスクパターンによって下記n側第1金属層の表面を保護することによって、下記n側第1金属層および下記導電性酸化物膜を同時にアルカリ現像液に接触させないようにする、GaN系LEDの製造方法:
(A)n型層とp型層とこれらの層の間に挟まれた発光層とを含む複数のGaN系半導体層からなる半導体積層体と、該n型層と電気的に接続されたn側第1金属層と、該p型層と電気的に接続された導電性酸化物膜と、該n側第1金属層の表面に接するn側第2金属層と、該導電性酸化物膜の表面に接するp側金属層とを有し、該n側第1金属層と該導電性酸化物膜とは該半導体積層体の同一面側に設けられており、該n側第1金属層はAl単体またはAl合金からなり、該導電性酸化物膜はAlよりも酸化還元電位の貴な金属の酸化物を含む、GaN系LED。
【請求項2】
上記n側第2金属層が、パッド部と、該パッド部と一体的に形成された延伸部を有し、該延伸部が幅10μm以下のストライプ状部分を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記p側金属層が、パッド部と、該パッド部と一体的に形成された延伸部を有し、該延伸部が幅10μm以下のストライプ状部分を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
上記n側第1金属層の熱処理を行った後、上記n側第2金属層を形成し、かつ、該n側第2金属層の熱処理を行わない、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
上記n側第2金属層を形成する前に、上記導電性酸化物膜の熱処理を行う、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
上記p側金属層の熱処理を行わないか、または、上記n側第2金属層を形成する前に、上記p側金属層の熱処理を行う、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
上記n側第1金属層をAl単体で形成する、請求項4〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
上記導電性酸化物膜がITO膜である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
上記第1のフォトレジストおよび第2のフォトレジストの少なくとも一方がポジ型フォトレジストである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
下記(A)のGaN系LEDを製造する方法であって、
下記n側第2金属層を形成する工程では、アルカリ現像液で現像可能な第1のフォトレジストからなる第1のマスクパターンを用いたリフトオフ法によって、下記n側第2金属
層を所定形状に形成し、
下記p側金属層を形成する工程では、アルカリ現像液で現像可能な第2のフォトレジストからなる第2のマスクパターンを用いたリフトオフ法によって、下記p側金属層を所定形状に形成し、
該第1のマスクパターンを形成する工程に含まれるフォトレジスト現像工程では、該第1のマスクパターンによって下記導電性酸化物膜の表面を保護するとともに、
第2のマスクパターンを形成する工程に含まれるフォトレジスト現像工程を、下記n側第1金属層を形成する工程よりも前に行うことによって、下記n側第1金属層および下記導電性酸化物膜を同時にアルカリ現像液に接触させないようにする、GaN系LEDの製造方法:
(A)n型層とp型層とこれらの層の間に挟まれた発光層とを含む複数のGaN系半導体層からなる半導体積層体と、該n型層と電気的に接続されたn側第1金属層と、該p型層と電気的に接続された導電性酸化物膜と、該n側第1金属層の表面に接するn側第2金属層と、該導電性酸化物膜の表面に接するp側金属層とを有し、該n側第1金属層と該導電性酸化物膜とは該半導体積層体の同一面側に設けられており、該n側第1金属層はAl単体またはAl合金からなり、該導電性酸化物膜はAlよりも酸化還元電位の貴な金属の酸化物を含む、GaN系LED。
【請求項11】
下記(A)のGaN系LEDを製造する方法であって、
下記n側第2金属層を形成する工程では、アルカリ現像液で現像可能な第1のフォトレジストからなる第1のマスクパターンを用いたリフトオフ法によって、下記n側第2金属層を所定形状に形成し、
下記p側金属層を形成する工程では、アルカリ現像液で現像可能な第2のフォトレジストからなる第2のマスクパターンを用いたリフトオフ法によって、下記p側金属層を所定形状に形成し、
該第1のマスクパターンを形成する工程に含まれるフォトレジスト現像工程を、下記導電性酸化物膜を形成する工程よりも前に行うとともに、該第2のマスクパターンを形成する工程に含まれるフォトレジスト現像工程では、該第2のマスクパターンによって下記n側第1金属層の表面を保護することによって、下記n側第1金属層および下記導電性酸化物膜を同時にアルカリ現像液に接触させないようにする、GaN系LEDの製造方法:
(A)n型層とp型層とこれらの層の間に挟まれた発光層とを含む複数のGaN系半導体層からなる半導体積層体と、該n型層と電気的に接続されたn側第1金属層と、該p型層と電気的に接続された導電性酸化物膜と、該n側第1金属層の表面に接するn側第2金属層と、該導電性酸化物膜の表面に接するp側金属層とを有し、該n側第1金属層と該導電性酸化物膜とは該半導体積層体の同一面側に設けられており、該n側第1金属層はAl単体またはAl合金からなり、該導電性酸化物膜はAlよりも酸化還元電位の貴な金属の酸化物を含む、GaN系LED。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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