説明

HCトラップ触媒及びHCトラップ触媒の調製方法。

【課題】HCトラップ触媒及びHCトラップ触媒の調製方法に関し、排気中のHCをより反応性の高いものへと改質し、酸化触媒上における酸化反応性を高める。
【解決手段】内燃機関から排出される排気中のHCを吸着するHC吸着材1と、該HC吸着材中に含有され、該HC吸着材に吸着された該HCの部分酸化を促進する酸化促進元素2とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出される排気中のHCを浄化するためのHCトラップ触媒及びHCトラップ触媒の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のエンジンの排気通路上には、排気中のHC(未燃燃料成分)を浄化する機能を持った触媒が設けられている。例えば、白金(Pt),パラジウム(Pd),ロジウム(Rh)等の貴金属成分を担持した活性アルミナを主成分とする三元触媒は、酸化・還元反応を利用して、排気に含まれるHC,一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)を同時に分解除去する機能を有している。
【0003】
このような触媒上における酸化・還元の反応性は、触媒自体の温度や排気温度等によって左右されるものであり、通常、低温状態においてはHCの酸化効率が低下する。そこで、反応に係る物質を一時的に吸着する機能を持った吸着材を併用することで、酸化・還元の反応性を向上させる技術が開発されている。
例えば、特許文献1には、低温状態においてHCを吸着するHCトラップ触媒を、三元触媒と共に排気通路に介装した構成が開示されている。このHCトラップ触媒は、低温状態においてHCを吸着するとともに、温度が上昇するにつれ吸着したHCを脱離するものである。このような吸着材を用いることで、エンジン始動直後のように三元触媒の温度が低く未だ活性化していない状態における、HCの外部への排出量を低減させることができるようになっている。
【0004】
なお、HCの吸着材としては、一般に、各種のゼオライトが用いられている。ゼオライトとは、多数の珪素(シリカ;Si)及びアルミニウム(Al)が酸素(O)を介して結合した三次元網状構造を有する結晶性多孔体(合成珪酸塩)の総称であり、ゼオライトの三次元構造の基本単位は、四面体構造を持つ(SiO44-及び(AlO45-である。これらの基本単位は、各頂点に酸素を配するとともにその内部に珪素やアルミニウムを配した分子構造となっており、隣接する四面体同士が各頂点の酸素を共有するように結合して、結晶構造を形成する。また、結晶構造の形状はさまざまであり、FER型,MOR型,FAU型,MFI型,β型等の類型に分類されている。
【0005】
ところで、吸着材におけるHCの吸着・放出性能に着目すると、必ずしも触媒上における酸化反応性が高い温度領域でのみHCが放出されるわけではなく、低温域においても僅かにHCの放出が観察される。
例えば図15に、HC吸着材としてのゼオライトのみを排気通路上に介装した場合において、排気通路の外部へと排出されるHC濃度の検出結果を実線で示すとともに、ゼオライトの下流側にHCの酸化触媒を介装した場合における同HC濃度の検出結果をグラフ化して破線で示す。なお、このグラフでは、横軸にゼオライトを担持する触媒の温度をとり、縦軸にHC濃度を示している。
【0006】
この図15に示すように、およそ150℃程度以上の温度領域では、酸化触媒を介装することで、HC濃度が低く抑えられている。つまり、高温状態では、酸化触媒が効果的に機能している。
しかし、およそ150℃未満の温度領域においては、ゼオライトの下流側にHCの酸化触媒を介装したとしても、HC濃度の検出結果に変化が見られない。つまり、酸化触媒における酸化活性が不足しているため、HC吸着材から放出されたHCが未酸化のまま排気通路の外部へと排出されているのである。このように、低温状態では酸化触媒の十分な機能が期待できず、外部へ排出されるHC量を低減させることができない。
【0007】
このような酸化触媒上におけるHCの反応性を高める技術として、特許文献2には、内燃機関の排ガス浄化装置において、HCの分子形状を変換する炭化水素変換触媒を備えた構成が開示されている。この技術では、セリウム(Ce)や銀(Ag)をゼオライトに担持させたものを炭化水素変換触媒として、排ガスに含まれているパラフィン系炭化水素(CnH2n+2)の一部をオレフィン系炭化水素(CnH2n)やアロマティック系炭化水素(芳香族炭化水素)に変換する構成が開示されている。このような構成により、酸化触媒上における浄化温度(すなわち、HCの酸化反応に必要な温度)を低温化することができ、低温時における排ガス中のHC浄化効果を高めることができるようになっている。
【特許文献1】特開2003−343316号公報
【特許文献2】特開2005−319368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、酸化触媒における浄化温度の低温化には自ずと限界があり、吸着材からHCが放出されうる全ての温度領域において酸化触媒の酸化活性を高めるのは、実際には困難である。
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、排気中のHCをより反応性の高いものへと改質し、酸化触媒上における酸化反応性を高めることができるようにした、HCトラップ触媒及びHCトラップ触媒の調製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、排気中に含まれるHCを部分酸化させると、その部分酸化したHCの酸化触媒上における酸化反応性が著しく向上することを見出した。
したがって、本発明のHCトラップ触媒(請求項1)は、内燃機関から排出される排気中のHCを吸着するHC吸着材と、該HC吸着材中に含有され、該HC吸着材に吸着された該HCの部分酸化を促進する酸化促進元素とを備えたことを特徴としている。
【0010】
また、本発明のHCトラップ触媒(請求項2)は、請求項1記載のHCトラップ触媒において、該HC吸着材が、三次元網状構造を有する結晶性多孔体であるゼオライトからなることを特徴としている。
また、本発明のHCトラップ触媒(請求項3)は、請求項2記載のHCトラップ触媒において、該HC吸着材が、ゼオライトベータからなることを特徴としている。なお、ゼオライトベータとは、ベータゼオライト,β型ゼオライト(BEA)ともいい、12酸素員環細孔を有するゼオライトの一種である。なお、環構造中に含まれる酸素原子の数が12個のゼオライトには、ゼオライトベータのほか、AFI,ATO,CON,FAU,GME,LTL,MOR,MTW,OFF(これらは、国際ゼオライト学会で規定された構造コードを示す)等があるが、ゼオライトベータの代わりにこれらを用いてもよい。
【0011】
また、本発明のHCトラップ触媒(請求項4)は、請求項2又は3記載のHCトラップ触媒において、該HC吸着材が、メソ細孔を有していることを特徴としている。なお、メソ細孔とは、多孔質物質における、ミクロ孔(2nm未満の孔)とマクロ孔(50nm以上の孔)との中間(メソ)の大きさである、2〜50nmの細孔のことを意味している。
また、本発明のHCトラップ触媒(請求項5)は、請求項2〜4の何れか1項に記載のHCトラップ触媒において、該酸化促進元素として、遷移金属元素を含有することを特徴としている。なお、遷移金属元素とは、元素周期表における3族〜11族に属する金属元素のことをいう。
【0012】
また、本発明のHCトラップ触媒(請求項6)は、請求項2〜5の何れか1項に記載のHCトラップ触媒において、該酸化促進元素として、鉄(Fe),マンガン(Mn),コバルト(Co)の少なくとも何れか一つの金属元素を含有することを特徴としている。
また、本発明のHCトラップ触媒(請求項7)は、請求項2〜6の何れか1項に記載のHCトラップ触媒において、該酸化促進元素が、該ゼオライトを形成する珪素(Si)又はアルミニウム(Al)と置換されて該ゼオライトの骨格内に配置されていることを特徴としている。この場合、固相法(ドライゲルコンバージョン法)を用いることにより、該酸化促進元素を該ゼオライトの骨格内に配置することが好ましい。
【0013】
また、本発明のHCトラップ触媒(請求項8)は、請求項2〜6の何れか1項に記載のHCトラップ触媒において、該酸化促進元素が、該ゼオライトの該三次元網状構造における陽イオン交換サイト内に包含されていることを特徴としている。この場合例えば、イオン交換法を用いることにより、該酸化促進元素を陽イオン交換サイト内に包含させることが好ましい。
【0014】
また、本発明のHCトラップ触媒(請求項9)は、請求項1〜8の何れか1項に記載のHCトラップ触媒において、貴金属を含有し、該酸化促進元素によって部分酸化された該HCを燃焼させる酸化触媒材をさらに備えたことを特徴としている。ここでいう貴金属としては、白金(Pt)やパラジウム(Pd)やロジウム(Rh)が好ましい。またこの場合、HC吸着材と酸化触媒材とを隣接させて配置することが好ましく、あるいは、HC吸着材を含む層と酸化触媒材を含む層とを積層化することが好ましい。
【0015】
本発明のHCトラップ触媒の調製方法(請求項10)は、内燃機関の排気通路に介装されるHCトラップ触媒の固相法を利用した調製方法であって、金属種とシリカ(Si)とのナノマトリクスをつくってメソポーラス物質を合成する第1ステップと、前記第1ステップで合成された前記メソポーラス物質を焼成して表面積大な多孔化を行う第2ステップと、前記第2ステップで得られた物質とゼオライト結晶化剤とのコンポジットを作製する第3ステップと、前記第3ステップで作製された前記コンポジットを結晶化する第4ステップとを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明のHCトラップ触媒(請求項1)によれば、排気中のHCを部分酸化させることにより、そのHCの酸化反応性を著しく向上させることが可能となる。また、酸化促進元素をHC吸着材中に含有するため、HC吸着材に吸着されたHCを直接部分酸化させることができ、効率的に部分酸化を促進することができる。
また、本発明のHCトラップ触媒(請求項2)によれば、一般的なHCの吸着材であるゼオライトに対して適用することで、容易かつ安価にHCの酸化反応性を高めることができる。
【0017】
また、本発明のHCトラップ触媒(請求項3)によれば、HCの吸着性能及び脱離性能において他のゼオライトよりも有利なゼオライトベータを用いることで、HCの酸化反応性をさらに高めることができる。
また、本発明のHCトラップ触媒(請求項4)によれば、ミクロ孔よりも大きいメソ孔を有するHC吸着材を用いることで、メソ細孔内へ吸着したHCの拡散を効果的に抑制することができる。これにより、HCの部分酸化をより生じやすくさせることができる。
【0018】
また、本発明のHCトラップ触媒(請求項5)によれば、遷移金属元素を用いることにより、HCを部分酸化させやすくすることができる。
また、本発明のHCトラップ触媒(請求項6)によれば、HCの酸化に対する活性をより高めることができるとともに、耐熱性能を高めることができる。
また、本発明のHCトラップ触媒(請求項7)によれば、酸化促進元素をゼオライトの骨格内に配置したため、耐熱性及び化学的な結合強度を確保することができる。
【0019】
また、本発明のHCトラップ触媒(請求項8)によれば、酸化促進元素をゼオライトの陽イオン交換サイト内に包含させるため、容易に形成することができる。例えば、イオン交換法を用いて酸化促進元素をゼオライトに含ませることが可能である。
また、本発明のHCトラップ触媒(請求項9)によれば、部分酸化されて酸化反応性が高められたHCを直ちに酸化(完全酸化)させることができる。また、HC吸着材の内部でのHCの部分酸化によって発生する熱を利用して、酸化触媒材を昇温させることができ、より効率的にHCの酸化反応性を向上させることができる。
【0020】
また、本発明のHCトラップ触媒の調製方法(請求項10)によれば、ミクロ孔及びメソ孔の双方を有するゼオライトベータを生成することができる。また、そのゼオライトベータの骨格内に、容易に遷移金属を含有させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面により、本発明の一実施形態について説明する。図1〜図11は、本発明の一実施形態に係るHCトラップ触媒を説明するものであり、
図1は、本HCトラップ触媒におけるゼオライトベータの骨格構造を示す模式的分子構造図、図2は、本HCトラップ触媒の模式的断面図、図3は、本HCトラップ触媒を備えた内燃機関の全体構成を示す模式図、図4は、本HCトラップ触媒における部分酸化能の確認実験で得られたクロマトグラムの一例、図5は、本HCトラップ触媒にイオン交換により含有される金属に応じたHCの吸脱着特性を示すグラフであり、(a)は各種遷移金属をゼオライトベータに含有させた場合におけるHCの吸脱着特性、(b)は(a)に示す実験で使用した各材料を水熱処理した後におけるHCの吸脱着特性を示すものであり、図6は、本HCトラップのゼオライト骨格内配置した触媒におけるゼオライトベータの調製方法を説明するためのフローチャート、図7は、本HCトラップ触媒におけるゼオライトベータの窒素吸脱着等温線を示すグラフ、図8は、本HCトラップ触媒による部分酸化能解析結果を示すグラフ、図9は、本HCトラップ触媒によって部分酸化されたHCの酸化反応性を示すグラフ、図10は、トリメチルペンタン(2.2.4-TMP)がブテンへとクラッキングされたHCの酸化反応性を示すグラフであり、(a)は白金触媒を用いた場合の酸化反応性を示し、(b)はパラジウム触媒を用いた場合の酸化反応性を示すもの、図11は、本HCトラップ触媒のゼオライトベータによるHCの脱離防止能を示すグラフである。
【0022】
[全体構成]
まず、図3は、本発明に係るHCトラップ触媒を備えた内燃機関の全体構成を示すものである。本システムは、車両に搭載した直列四気筒のエンジン9の排気マニホールドの集合部の直下に三元触媒7を配置し、排気通路8のさらに下流側にHCトラップ触媒6を配置したものである。
【0023】
三元触媒7は、酸化・還元反応を利用して、排気に含まれるHC,一酸化炭素及び窒素酸化物を同時に分解除去する触媒である。また、HCトラップ触媒6は、排気中に含まれるHCを吸着するとともに酸化除去する触媒である。
三元触媒7をエンジン9に近接した位置に配置することで、三元触媒7を早期に昇温できるようになっている。また、三元触媒7の下流側にHCトラップ触媒6を配置することで、三元触媒7が活性化するまでの間に三元触媒7の下流へ流れてくるHCをHCトラップ触媒6で吸着及び除去できるようになっている。
【0024】
[HCトラップ触媒の構成]
HCトラップ触媒6の断面形状を図2に示す。このHCトラップ触媒6は、通路断面を格子状に区分して形成された担体4の表面に、HC吸着材層3及び三元触媒層(酸化触媒材層)5を層状にコーティングされてなる触媒である。各層のコーティング量は、HC吸着材層3が50g/L〜200g/L、酸化触媒材層5が50g/L〜200g/Lとして制作されたものである。
【0025】
HC吸着材層3は、メソ細孔を有するゼオライトベータ(HC吸着材)から形成されており、その内部に鉄(Fe),マンガン(Mn),コバルト(Co)の少なくとも何れか一つの金属元素(酸化促進元素)を含有する層である。ゼオライトベータとは、ベータゼオライト,β型ゼオライトともいい、12酸素員環細孔を有するゼオライトの一種である。また、12個の酸素原子によって形成された環構造は、ミクロ孔(2nm未満の孔)を形成している。なお、一般的なゼオライトベータの製造方法については、例えば、米国特許第3308069号明細書、米国特許第4642226号明細書、特開平5−201722号公報、特開平6−91174号公報、特表平8−509452号公報等に記載されている。
【0026】
本発明に係るHC吸着材層3は、ミクロ孔だけでなく、直径がおよそ2〜50nmのメソ細孔をも有している。メソ細孔を有するゼオライトベータの調製については後述するが、本実施形態では、メソポーラスシリカの一種であるMCM-41から合成している。
また、本実施形態のHC吸着材層3は、このようなゼオライトベータの骨格構造をなす珪素又はアルミニウムを、上記の鉄,マンガン,コバルトのうちの何れかの金属元素に置換した分子構造を備えている。上記の3種類の金属元素のうち、鉄を含有した場合の分子構造を図1に模式的に例示する。
【0027】
前述の通り、ゼオライトは一般に、珪素,アルミニウム及び酸素からなる三次元の四面体構造を基本単位として生成された結晶構造を備えている。一方、本HC吸着材層3を形成するゼオライトベータ1は、図1に示すように、四面体構造の中心に配置されるべき珪素1a又はアルミニウム1bの位置に鉄2の原子が配されている。つまり、鉄2がゼオライトベータ1の骨格内にドーピングされて固定されており、珪素1aやアルミニウム1bと同様に、鉄2が酸素1cと共有結合した状態となっている。このような分子構造により、HC吸着材層3には、エンジン9から排出されたHCが吸着するとともに、吸着されたHCの部分酸化が促進されるようになっている。
【0028】
部分酸化とは、完全な酸化反応ではなく、部分的に酸化される反応のことをいい、例えば、トルエン〔ベンゼンの水素原子1個をメチル基(CH3)で置換したもの〕をベンズアルデヒド〔ベンゼンの水素原子1個をアルデヒド基(CHO)で置換したもの〕へと酸化させるような反応のことである。また、他に、オレフィン,長鎖パラフィンに起こることが期待できる。
【0029】
なお、HC吸着材層3によるHCの部分酸化能については、公知のガスクロマトグラフィ法等を用いて確認することができる。例えば、排気中におけるHC吸着材の作用前後のトルエン濃度及びベンズアルデヒド濃度を測定し、ベンズアルデヒド濃度の上昇を以て、HC吸着材層3によるHCの部分酸化能を確認すればよい。
ここでは、確認実験を行った際に得られたクロマトグラムを、図4に例示する。図4(a)は200℃の排気中におけるHC吸着材の作用後のHC濃度を計測し、HC中に含まれる物質を測定した。この図4に示すように、排気中にトルエン及びベンズアルデヒドの存在を確認することができた。
【0030】
HC吸着材層3における珪素1a及びアルミニウム1bの原子数比は、[Si]/[Al]=10〜100、好ましくは、10〜30の範囲である。また、珪素1a及び鉄2の原子数比は、[Si]/[Fe]=10〜100、好ましくは、20〜50の範囲である。
また、本HC吸着材層3においては、ゼオライトベータ1中に含まれる骨格内の鉄,アルミニウムもしくは骨格酸性質の作用により、吸着されたHCにクラッキング(接触分解)が生じることが判明している。これについても、公知のガスクロマトグラフィ法を用いて、排気中における、HC吸着材の作用前後のイソオクタン〔2.2.4-TMP,CH3C(CH3)2CH2CH(CH3)2〕濃度及びブテン(C4H8)濃度を測定し、ブテン濃度の上昇を以て、HC吸着材層3によるHCの接触分解能を確認することができる。
なお、酸化触媒材層5は、白金,パラジウム,ロジウム等の貴金属を含有してHCを酸化燃焼させうる公知の酸化触媒(例えば、Pt-Al2O3)によって形成された層である。
【0031】
[鉄,マンガン,コバルトの選定理由]
本実施形態のHC吸着材層3における鉄,マンガン,コバルトといった遷移金属の役割は、第一に、HC吸着材層3に吸着したHCや放出されるHCを部分酸化させること、第二に、HCをクラッキングさせることである。
【0032】
一般に、遷移金属はHCの酸化に対して活性を有することが知られているが、発明者らは、それらの遷移金属のうち、鉄,マンガン,ニッケル(Ni),銀(Ag)等を含んだゼオライトが、高いHCの酸化促進性を示すことを見出した。なかでも鉄は、熱劣化に対する耐久性が高く、耐熱性面で有効であることが判明した。よって、鉄と類似性質を示すマンガンやコバルトについても、耐熱性が期待できるものと推測した。
【0033】
図5(a)に、各種遷移金属をゼオライトベータに含有させた場合におけるHCの吸脱着特性の実験結果を示す。ここでは、吸着させるHCがトルエンである場合の特性が示されている。図5(a)中において、グラフ上の右側に位置するものほどトルエンの吸着量が大きく、上側に位置するものほど完全離脱温度が高くなっている。つまり、このグラフ上で右上側に位置するものほど、HCの酸化促進性が高いと判断できる。
【0034】
また、図5(b)は、図5(a)に示す実験で使用した各材料を750℃で10時間水熱処理した後に、再度確認したHCの吸脱着特性の実験結果を示す。各材料の熱劣化後の性能は、全体的に低下しており、特にトルエンの吸着量が軒並み減少しているものの、鉄を含有するゼオライトベータに関してはその減少量が小さいことがわかる。
【0035】
[HCトラップ触媒の調製]
本発明に係るHCトラップ触媒6のHC吸着材層3を形成するゼオライトベータの調製方法について詳述する。このゼオライトベータは、固相法(ドライゲルコンバージョン法)を用いて、図6に示す手順で合成される。なお、固相法とは、ゼオライト合成の原料混合物を乾燥して得られるドライゲルを、有機構造規制物質(有機テンプレート)で処理してゼオライトに結晶化させる調整法である。この調整法で用いられる有機構造規制物質としては、窒素(N)又はリン(P)を含む各種有機化合物が公知であり、例えば、揮発性有機アミンやアンモニウム化合物が挙げられる。
【0036】
ステップA10(金属種とシリカのナノマトリクスをつくってメソポーラス物質を合成するステップ)では、二酸化珪素,アルミナ,金属種(酸化金属),臭化セチルトリメチルアンモニウム(セチルトリメチルアンモニウム臭化物、あるいは、テトラメチルアンモニウム臭化物),テトラメチルアンモニウム水酸化物及び水を、以下の式1に示すような混合比として混合液を調製する。
SiO2:Al2O3:MeOx:C16TMABr:TMAOH:H2O=1:0.01:0.02:0.61:0.5:60 ・・・(式1)
【0037】
そして、室温にて2時間攪拌し,100℃にて3日間静置後にフィルターにて沈殿物を濾過して採取し、イオン交換水にて洗浄後、室温にて洗浄乾燥させる。これにより、メソポーラス物質が合成される。
ステップA20(メソポーラス物質を焼成して表面積大な多孔化を行うステップ)では、前ステップで濾過された水性ゲルを540℃で12時間加熱処理し、Me-Al-MCM-41を得る。ここで得られるMe-Al-MCM-41は、多孔化されて大きな表面積を持っている。
【0038】
ステップA30(ゼオライト結晶化剤とのコンポジットを作製するステップ)では、前ステップで得られた0.1gのMe-Al-MCM-41を0.3gのテトラエチルアンモニウム水酸化物水溶液(TEAOH;35wt%)に混合しコンポジットを作製する。これが、本発明に係るゼオライトベータの前駆体となる。
そしてステップA40(コンポジットを結晶化するステップ)では、前ステップの混合物を室温にて12時間乾燥させ、その後、150℃にて7日間静置する。発明者らは、このような手順を通して、骨格内に鉄を含有し高い結晶度を有するメソポーラス構造のゼオライトベータを得ることに成功した。
【0039】
[得られたゼオライトベータの細孔径確認]
上記の手順を経て得られたゼオライトベータの窒素吸脱着等温線を、図7に実線で示す。なお、図7中において破線で示されたものは、参照用として市販のゼオライトベータに鉄をイオン交換担持したFe/Al-beta(Si/2al=39,東ソー製)の窒素吸脱着等温線である。
【0040】
この図7に示すように、本ゼオライトベータは、相対圧の低い部分における吸着量の立ち上がり(所謂IUPAC分類におけるI型の変動形状)が見られ、ミクロ孔の存在が確認で
きる。また、相対圧の高い部分においては、Fe/Al-betaに比較して大きく吸着量が増加している(所謂IUPAC分類におけるIV型の変動形状)ことから、本ゼオライトベータにはメ
ソ細孔やマクロ孔が存在していると推測できる。一方、Fe/Al-betaでは、相対圧の高い部分における吸着量の増加が見られず、メソ細孔やマクロ孔は確認されない。
【0041】
なお、相対圧の高い部分では、吸着測定時の等温線と脱離測定時の等温線とが一致していない(すなわちヒステリシスがみられる)ことから、本ゼオライトベータにはやや分布のあるメソ細孔が存在していることがわかる。
【0042】
[効果1・部分酸化]
本HCトラップ触媒6による部分酸化能解析の詳細を図8に示す。
ここでは、キャリアガスをエンジン9から排出される排気(50ml/min)とし、本HCトラップ触媒6のHC吸着材層3を構成する触媒(Fe-BEA+5%Pt-Al2O3)0.1gをサンプルとして、水素炎イオン化検出器(FID)を用いてトルエン濃度を測定した。排気の昇温速度は20℃/minとし、測定結果を図8中に実線でグラフ化した。なお、図8中に破線で示されたグラフは、比較対象として鉄を含まないゼオライトベータ〔HSZ-940HOA(東ソー製)+5%Pt-Al2O3,1:1〕をサンプルとした場合のトルエン濃度を示すものである。
【0043】
この図8に示す通り、本HCトラップ触媒6によれば、幅広い温度範囲において大幅にトルエン濃度を低下させることが可能となっている。すなわち、図8中における実線と破線とで囲まれた領域Aは、トルエンの部分酸化が促進された結果低下したトルエン濃度を示している。
また、HCの部分酸化によってもたらされるHC分解能の解析結果を図9に示す。
【0044】
ここでは、本HCトラップ触媒6の酸化触媒材層5を構成する触媒として、白金(Pt-Al2O3)及びパラジウム(Pd-Al2O3)を用いた場合における、トルエンの分解能及びベンズアルデヒドの分解能を示している。なお、ベンズアルデヒドは、トルエンを部分酸化させて得られる物質の一例である。
この図9に示すように、ベンズアルデヒドは、トルエンと比較して、酸化触媒材層5上において極めて大きな酸化反応性を示すことがわかる。つまり、HC吸着材層3上において部分酸化されたHCは、分子構造内に酸素を含んでいるため、部分酸化される前のHCよりも酸化しやすくなり、低温で燃焼することができる。また、酸化触媒材層5の温度条件が同一であるとすれば、部分酸化されたHCは、酸化反応が促進されて、部分酸化していないHCと比較してより多く燃焼することができる。
【0045】
[効果2・クラッキング]
前述の通り、本HCトラップ触媒6では、HC吸着材層3中に含まれる遷移金属の作用により、吸着されたHCにクラッキングが生じる。クラッキングによるHCの着火温度変化の解析結果を図10(a),(b)に示す。
図10(a)では、キャリアガスをエンジン9から排出される排気(50ml/min)とし、本HCトラップ触媒6の酸化触媒材層5を構成する触媒(5%Pt-Al2O3)0.1gをサンプルとして用い、水素炎イオン化検出器(FID)を用いてブテン(C4H8)の酸化量(Conversion;元の質量に対して酸化した質量の割合)を測定した。排気の昇温速度は20℃/minとし、測定結果を図10(a)中に実線でグラフ化した。なお、図10(a)中に破線で示されたグラフは、比較対象としてのイソオクタン(2.2.4-TMP)の酸化量を示すものである。なお、ブテンは、クラッキングしたイソオクタンから得られる物質の一例である。
【0046】
この図10(a)に示す通り、ブテンはイソオクタンと比較して、酸化触媒材層5上において極めて大きな酸化反応性を示すことがわかる。つまり、HC吸着材層3上においてクラッキングしたHCは、低分子化されているため、クラッキング前のHCよりも低温で酸化しやすくなり、低温で燃焼することができる。また、酸化触媒材層5の温度条件が同一であるとすれば、クラッキングしたHCは、クラッキングしていないHCと比較してより多く燃焼することができる。
【0047】
また、図10(b)では、図10(a)に示した解析条件のうち、酸化触媒材層5を構成する触媒を白金からパラジウム(5%Pd-Al2O3)に変更したものである。この図10(b)に示す例でも、ブテンはイソオクタンと比較して、酸化触媒材層5上において極めて大きな酸化反応性を示すことがわかる。つまり、触媒の種類に関わらず、クラッキングしたHCは良好な燃焼効率に寄与するといえる。
【0048】
[効果3・吸着脱離性能]
また、前述の通り、本HCトラップ触媒6のHC吸着材層3を形成するゼオライトベータは、その分子構造にミクロ孔だけでなくメソ細孔をも有している。これにより、吸着したHCをメソ細孔内に保持して、拡散を抑えることができる。すなわち、HCトラップ触媒6単体で、吸着したHCの部分酸化のための反応時間を稼ぐことができる。
【0049】
このようなHCの脱離防止能解析の詳細を図11に示す。
ここでは、HCの一例としてのトルエンの脱離量に関して、本実施形態に係るゼオライトベータと市販のゼオライトベータ〔Beta(Si/2Al=39)〕とを比較する。この図11に示すように、市販のゼオライトベータと比較して、本実施形態に係るゼオライトベータは、トルエン脱離スペクトルがブロードであり、幅広い温度範囲においてトルエンの脱離量が低く抑えられている。このように、本実施形態に係るゼオライトベータは、メソ細孔を持たない市販のゼオライトベータよりもHCの吸着性能が高いことがわかる。なお、このようなHC吸着性能は、ゼオライトベータの持つミクロ細孔構造とメソ細孔のコンポジット構造とによってさらに助長されているものと考えられる。
【0050】
[変形例の説明]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0051】
[イオン交換法による調製]
例えば、上述の実施形態では、固相法を用いてゼオライトベータを調製したが、公知のイオン交換法を用いてゼオライトベータを調製することも考えられる。この場合、ゼオライトベータの分子構造は、図12に示すように、遷移金属(図12中では、鉄)2′がイオンの状態でゼオライトベータ1に包含された状態となる。つまり、遷移金属2′がゼオライトベータの分子構造内における陽イオン交換サイト内に包含されている。このような分子構造においても、吸着されたHCの部分酸化が促進されるとともに、吸着されたHCのクラッキングを促すことが可能である。
【0052】
なお、上述の固相法によって得られたゼオライトベータと、イオン交換法によって得られたゼオライトベータとの比較実験例を図13に示す。ここでは、各々のゼオライトベータについて、HCの一例としてのトルエンの脱離量の測定結果を示している。また、各々のゼオライトベータを800℃で5時間水熱処理(H2O/air流通)した後に、再度確認したHCの脱離特性の実験結果も併せて示している。
【0053】
この図13から、固相法によって得られたゼオライトベータは、イオン交換法によって得られたゼオライトベータよりも大きなトルエン吸着容量を有していることがわかる。また、水熱処理による挙動の変化(熱劣化)の傾向は同様であるといえる。このことから、HCの吸着性の面では、固相法によって得られたゼオライトベータが有利であるといえる。また、HCの吸着能力が許す範囲においては、イオン交換法によって得られたゼオライトベータを用いることも検討の余地があるものと考えられる。
【0054】
[ゼオライトベータ以外への調製]
また、上述の実施形態では、HC吸着材層3がゼオライトベータから形成されているが、例えば、FAU,MFI,MOR,FER等のゼオライトベータ以外のゼオライトとすることも考えられる。
なお、図14(a),(b)に各種ゼオライトのHC吸着性能及び脱離性能を示す。図14(a)においては、横軸にBET比表面積をとり縦軸をHCの吸着量として、各種ゼオライトのHC吸着性能をプロットしている。触媒性能としては、比表面積が大きくHCの吸着量も大きいものが好ましく、このグラフ上における右上側に位置する材料ほどHCトラップ触媒としては有利である。つまり、比較的FAU,ゼオライトベータ及びMFIが有利である。
【0055】
また、図14(b)においては、横軸に細孔容積をとり縦軸をHCの脱離速度として、各種ゼオライトのHC脱離性能をプロットしている。触媒性能としては、細孔容積が大きくHCの脱離速度が小さいものが好ましく、このグラフ上における右下側に位置する材料ほどHCトラップ触媒としては有利である。このような観点からは、ゼオライトベータが有利であることがわかる。
【0056】
[その他]
また、上述の実施形態では、HCトラップ触媒6においてHC吸着材層3の上層に酸化触媒材層5が設けられているが、酸化触媒材層5を本HCトラップ触媒6から分離した構成とすることも考えられる。この場合、排気通路8上におけるHCトラップ触媒6の下流側に酸化触媒を設ければよい。
【0057】
あるいは、HC吸着材層3と酸化触媒材層5とを層状に分離せずに一体形成することも考えられる。この場合、上述の実施形態に係るゼオライトベータ1や白金等の貴金属をともに担体4表面へ担持させればよい。
また、上述の実施形態では、鉄,マンガン及びコバルトを含んだゼオライトが耐熱性面で有効であることを述べたが、本発明においてゼオライトベータに含有されうる元素はこれに限定されない。すなわち、少なくともHCの酸化に対する活性を有するものであればどのような元素であっても上記のような効果を奏するものと考えられ、すなわち遷移金属であればよい。
【0058】
また、上述の実施形態では、ゼオライトベータの分子構造にミクロ孔だけでなくメソ細孔が形成されているが、本発明のHCトラップ触媒はこのような構成に限定されない。つまり、均一なメソ細孔を有するメソポーラスシリカ(MCM-41,MCM-48,SBA-3,SBA-15,SBA-16など)以外の材料を用いて、遷移金属元素を含有するゼオライトベータを生成してもよい。この場合、メソ細孔によるHCの脱離抑制効果は望めないが、ゼオライトベータであればそのベータ構造によるHC吸着性能の向上は期待できるものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態に係るHCトラップ触媒におけるゼオライトベータの骨格構造を示す模式的分子構造図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るHCトラップ触媒の模式的断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るHCトラップ触媒を備えた内燃機関の全体構成を示す模式図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るHCトラップ触媒における部分酸化能の確認実験で得られたクロマトグラムの一例である。
【図5】本発明の一実施形態に係るHCトラップ触媒に含有される金属に応じたHCの吸脱着特性を示すグラフであり、(a)は各種遷移金属をゼオライトベータに含有させた場合におけるHCの吸脱着特性、(b)は(a)に示す実験で使用した各材料を水熱処理した後におけるHCの吸脱着特性を示すものである。
【図6】本発明の一実施形態に係るHCトラップ触媒におけるゼオライトベータの調製方法を説明するためのフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態に係るHCトラップ触媒におけるゼオライトベータの窒素吸脱着等温線を示すグラフである。
【図8】本発明の一実施形態に係るHCトラップ触媒による部分酸化能解析結果を示すグラフである。
【図9】本発明の一実施形態に係るHCトラップ触媒によって部分酸化されたHCの酸化反応性を示すグラフである。
【図10】本発明の一実施形態に係るHCトラップ触媒によるクラッキングされるHCの酸化反応性を示すグラフであり、(a)は白金触媒を用いた場合の酸化反応性を示し、(b)はパラジウム触媒を用いた場合の酸化反応性を示すものである。
【図11】本発明の一実施形態に係るHCトラップ触媒のゼオライトベータによるHCの脱離防止能を示すグラフである。
【図12】本発明の変形例としてのHCトラップ触媒におけるゼオライトベータの骨格構造を示す模式的分子構造図である。
【図13】本発明の変形例としてのHCトラップ触媒のゼオライトベータにおけるトルエンの脱離量を示すものであり、固相法によって得られたゼオライトベータの場合とイオン交換法によって得られたゼオライトベータの場合とが示されている。
【図14】本発明の変形例としてのHCトラップ触媒の材料として使用される各種ゼオライトの特性を示すグラフであり、(a)はHCの吸着性能を示し、(b)はHCの脱離性能を示すものである。
【図15】従来技術に係るHC吸着材及び酸化触媒を含むHC吸着材からのHC放出量特性を説明するためのグラフであり、HC吸着材としてのゼオライトを担持された触媒の温度と該HC放出量との対応関係を示すものである。
【符号の説明】
【0060】
1 ゼオライトベータ(HC吸着材,ゼオライト)
1a 珪素
1b アルミニウム
1c 酸素
2 鉄(酸化促進元素,遷移金属元素,金属元素)
3 HC吸着材層
4 担体
5 酸化触媒材層(三元触媒層)
6 HCトラップ触媒
7 三元触媒
8 排気通路
9 エンジン(内燃機関)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排気中のHCを吸着するHC吸着材と、
該HC吸着材中に含有され、該HC吸着材に吸着された該HCの部分酸化を促進する酸化促進元素と
を備えたことを特徴とする、HCトラップ触媒。
【請求項2】
該HC吸着材が、三次元網状構造を有する結晶性多孔体であるゼオライトからなる
ことを特徴とする、請求項1記載のHCトラップ触媒。
【請求項3】
該HC吸着材が、ゼオライトベータからなる
ことを特徴とする、請求項2記載のHCトラップ触媒。
【請求項4】
該HC吸着材が、メソ細孔を有している
ことを特徴とする、請求項2又は3記載のHCトラップ触媒。
【請求項5】
該酸化促進元素として、遷移金属元素を含有する
ことを特徴とする、請求項2〜4の何れか1項に記載のHCトラップ触媒。
【請求項6】
該酸化促進元素として、Fe,Mn,Coの少なくとも何れか一つの金属元素を含有する
ことを特徴とする、請求項2〜5の何れか1項に記載のHCトラップ触媒。
【請求項7】
該酸化促進元素が、該ゼオライトを形成するSi又はAlと置換されて該ゼオライトの骨格内に配置されている
ことを特徴とする、請求項2〜6の何れか1項に記載のHCトラップ触媒。
【請求項8】
該酸化促進元素が、該ゼオライトの該三次元網状構造における陽イオン交換サイト内に包含されている
ことを特徴とする、請求項2〜6の何れか1項に記載のHCトラップ触媒。
【請求項9】
貴金属を含有し、該酸化促進元素によって部分酸化された該HCを燃焼させる酸化触媒材をさらに備えた
ことを特徴とする、請求項1〜8の何れか1項に記載のHCトラップ触媒。
【請求項10】
内燃機関の排気通路に介装されるHCトラップ触媒の固相法を利用した調製方法であって、
金属種とシリカとのナノマトリクスをつくってメソポーラス物質を合成する第1ステップと、
前記第1ステップで合成された前記メソポーラス物質を焼成して表面積大な多孔化を行う第2ステップと、
前記第2ステップで得られた物質とゼオライト結晶化剤とのコンポジットを作製する第3ステップと、
前記第3ステップで作製された前記コンポジットを結晶化する第4ステップと
を備えたことを特徴とする、HCトラップ触媒の調製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−73625(P2008−73625A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−256562(P2006−256562)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】