説明

HCV複製の調節

本発明は、細胞をベースとした系において、特にC型肝炎ウイルス(HCV)のウイルス複製及び/又はウイルス産生の調節剤として作用できる式(I)の化合物:1RX3RY(I)2R5


(式中、X、Y、R1、R2及びR3は本明細書で定義する。)の使用を対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞をベースとした系において、特にC型肝炎ウイルス(HCV)のウイルス複製及び/又はウイルス産生の調節剤として作用できるある種の化合物の使用を対象とする。
【0002】
世界の人口の約3%がC型肝炎ウイルス(HCV)に感染しているものと思われる(Wasley他、2000、Semin.Liver Dis.20、1〜16)。HCVに曝露すると、少数では顕性急性疾患に陥るが、ほとんどの場合、ウイルスは持続感染を確立し、慢性肝炎、肝硬変及び肝不全を引き起こす(Iwarson、1994、FEMS Microbiol.Rev.14、201〜204)。さらに、疫学的調査では、肝細胞癌の病理においてHCVが重要な役割を担うことが示された(Kew、1994、FEMS Microbiol.Rev.14、211〜220、Alter、1995.Blood 85、1681〜1695)。
【0003】
HCV複製に対する抗ウイルス化合物の効果の研究は、研究用小動物モデル並びに培養細胞において感染を再現する方法がないために困難である。HCVは、ヒト及びチンパンジーには感染するが、マウス及びラットなどの小動物には感染しない。同様に、HCVはいかなる培養細胞及び組織においても効率よく増殖しない。
【0004】
Lohmann他、Science 285、110〜113、1999は、ウイルスRNAが形質移入した細胞で効率的に自己複製するHCV細胞培養系を開示しており、バイシストロニックなHCVサブゲノムレプリコンが肝細胞腫細胞系において複製できる能力を示している。HCVレプリコンは、培養細胞において自己複製できるRNA分子であり、検出可能なレベルの1種又は複数のHCV蛋白質を産生する。
【0005】
したがって、HCVレプリコンは、検出可能なレベルのHCV RNA及びHCV蛋白質をもたらす細胞培養複製系を作製するために使用することができる。しかし、効率的に複製するためには、使用可能なレプリコンの大部分は適応変異の存在を必要とする(例えば、Lohmann他、J Virol 77、3007〜3019、2003)。
【0006】
適応変異は、HCVレプリコンが宿主細胞で維持され、発現する能力を高めるHCV RNA中の変異である。適応変異の例は、US6630343 B1;WO2002059321 A2;WO0189364 A2;Bartenschlager他、Antiviral Res.60、91〜102、2003及びその中の参考文献に見いだすことができる。
【0007】
ある種のフェニルピペラジン誘導体及びフェニルピペリジン誘導体は、当業界で開示されているが、ウイルス複製の調節剤として有用なものは開示されていない。
【0008】
国際出願公開WO98/00134号(Merck&Co.Inc.)は、フィブリノーゲン受容体アンタゴニストとして式(A)の化合物
X−Y−Z−A−B (A)
(式中、Xは、5、6又は7員芳香環若しくは非芳香環であり、Yは、
【0009】
【化7】

などの5又は6員芳香環である。)
を開示している。
【0010】
国際出願公開WO03/076422号(Janssen Pharmaceutica N.V.)は、ヒストンデアセチラーゼの阻害剤として式(B)のスルホニル誘導体
【0011】
【化8】

(式中、A、L、Q、X、Y、Z、R、R、R、R、n及びtはその中で定義されている。)
を開示している。
【0012】
国際出願公開WO99/38849号(Meiji Seika Kaisha、Ltd.)は、インテグリンανβ3アンタゴニストとして式(C)の化合物
【0013】
【化9】

(式中、A、Q、X、Z、R、R、R、R、R、R、m、n、p及びqはその中で定義されている。)
を開示している。
【0014】
国際出願公開WO97/25323号(SmithKline Beecham Corporation)は、フィブリノーゲン受容体アンタゴニストとして式(D)の化合物
【0015】
【化10】

(式中、A、A、A、D、Q、X、Z、R、R及びnはその中で定義されている。)
を開示している。
【0016】
欧州特許出願公開EP277725号(A.H.Robins Company、Incorporated)は、抗アレルギー薬として式(E)の4−アリール−N−[2−(ジアルキルアミノ及び複素環アミノ)アルキル]−1−ピペラジンカルボキシアミド
【0017】
【化11】

(式中、B、Ar及びQはその中で定義されている。)
を開示している。
【0018】
最近、驚くべきことに、前記で述べた公知の化合物のいくつかを含むある種のフェニルピペラジン誘導体及びフェニルピペリジン誘導体は、適応変異の誘導を必要とせずに細胞培養におけるHCV RNAの複製を支持するために使用できることが発見された。このような細胞培養系は、インビボにおける複製に非常によく似ており、天然のHCV配列の複製を支持するために、かつ培養細胞及び試験動物におけるHCVウイルス感染測定法の確立を助けるために有用である。 さらに、これらの化合物は適応変異のないHCV RNAの複製には刺激効果を有するが、ある濃度では、それらはまたHCV RNA、特に適応変異を含有するHCV RNAの複製を阻害することができることが発見された。したがって、このような阻害剤は、HCVに感染した個体を治療するために治療的に適用することができる。
【0019】
したがって、一態様では、本発明は、細胞、組織又は器官におけるHCV RNAの複製及び/又はHCVのウイルス産生を調節するために、式(I)の化合物、又はそれらの適切な塩の使用を提供する。
【0020】
他の態様では、本発明は、細胞、組織又は生物に式(I)の化合物又はそれらの適切な塩を投与することを含む、細胞、組織又は生物におけるHCV RNAの複製及び/又はHCVのウイルス産生を調節する方法を提供する。
【0021】
当業者であれば、HCV RNAの複製又はHCVのウイルス産生の「調節」などの本明細書での表現は、HCV RNA複製又はHCV産生の阻害及び促進を含むものとすることを理解するであろう。
【0022】
したがって、一実施形態では、細胞におけるHCV RNAの複製及び/又はHCVのウイルス産生を促進するために、式(I)の化合物、又はそれらの適切な塩の使用を提供する。
【0023】
他の実施形態では、細胞を式(I)の化合物又はそれらの適切な塩で処理することによって、この培養細胞におけるHCV RNAの複製及び/又はHCVのウイルス産生を促進する方法を提供する。
【0024】
他の態様では、本発明は、式(I)の化合物又はそれらの適切な塩で処理することによって入手可能な細胞培養物を提供する。
【0025】
当業者であれば、本明細書のHCV RNAという表現はサブゲノムレプリコン及び完全長HCV RNAを含むものとすることを理解するであろう。完全長HCV RNAは、HCV RNAの形質移入によって、又は感染した個体から得られた、若しくは細胞培養で産生されたHCVウイルスを細胞に接種することによって、細胞に導入することができる。
【0026】
本発明の化合物による細胞中のHCV RNA複製の促進は、以下の、HCV RNA複製維持の延長、HCV RNA複製速度の増加、HCV RNA発現の増加、HCV蛋白質発現の増加、ウイルス産生の増加の少なくとも1つをもたらす。
【0027】
本発明の化合物を使用した細胞培養系におけるHCV RNAの複製及び発現の増強には、HCV複製及び発現を研究するため、HCV及び宿主細胞相互作用を研究するため、HCV RNAを産生するため、HCV蛋白質を産生するため、細胞培養におけるHCVウイルス感染の確立を助けるため、並びに1種又は複数のHCV活性を調節する化合物の能力を測定する系を提供するために使用されることを含めた多種多様な用途がある。
【0028】
他の態様では、本発明は、式(I)の化合物又はそれらの適切な塩で処理されたHCV細胞培養物への化合物の投与を含む、これらの化合物をHCV複製に対する効果についてスクリーニングする方法を提供する。
【0029】
本発明で説明した化合物は、所与の細胞培養条件、細胞系又はHCVウイルス単離物に特異的な適応変異なしに検出可能なレベルのHCV RNA及びHCV蛋白質をもたらす細胞培養物を生成するために使用することができる。さらに、本発明で記載した化合物は、培養細胞において、様々な単離物及び遺伝子型を表す天然の配列を備えたHCV RNAの複製を可能にするために利用することができる。
【0030】
したがって、他の態様では、本発明は、HCV RNAの適応変異がなくても検出可能なレベルのHCV RNA及びHCV蛋白質を有する細胞培養物の生成における式(I)の化合物又はそれらの適切な塩の使用を提供する。
【0031】
他の態様では、本発明は、
a)組織培養中の細胞を、適応変異を有さないHCV RNA又はHCVウイルスと接触させることと、
b)この細胞を式(I)の化合物又はそれらの適切な塩で処理することと、
c)この処理細胞をHCV RNA複製について評価することと
によって、HCV RNA中に適応変異がなくても検出可能なレベルのHCV RNAを有する細胞培養物の生成方法を提供する。
【0032】
他の態様では、本発明は、
a)組織培養中の細胞を、適応変異を有さないHCV RNA又はHCVウイルスと接触させることと、
b)この細胞を式(I)の化合物又はそれらの適切な塩で処理することと、
c)この処理した細胞をHCV蛋白質発現について評価することと
によって、HCV RNA中に適応変異がなくても検出可能なレベルのHCV蛋白質を有する細胞培養物の生成方法を提供する。
【0033】
他の態様では、本発明は、
a)組織培養中の細胞を、適応変異を有さないHCV RNA又はHCVウイルスと接触させることと、
b)この細胞を式(I)の化合物又はそれらの適切な塩で処理することと、
c)細胞培地中に分泌されたウイルス粒子の量を評価することと
によって、適応変異がなくても検出可能なレベルのウイルスを産生する細胞培養物の生成方法を提供する。
【0034】
本発明で記載した化合物はまた、培養細胞において検出可能なHCV RNA複製及びHCV蛋白質発現の確立を助けるために、HCV変種に存在する選択された適応変異と組み合わせて使用することができる。
【0035】
したがって、他の態様では、本発明は、細胞中に選択された適応変異が存在すると検出可能なレベルのHCV RNA及びHCV蛋白質を有する細胞培養物の生成における、式(I)の化合物又はそれらの適切な塩の使用を提供する。
【0036】
他の態様では、本発明は、
a)組織培養中の細胞を、選択された適応変異を有するHCV RNA又はHCVウイルスと接触させることと、
b)この細胞を式(I)の化合物又はそれらの適切な塩で処理することと、
c)この処理細胞をHCV RNA複製について評価することと
によって、これらの細胞に選択された適応変異が存在すると検出可能なレベルのHCV RNAを有する細胞培養物の生成方法を提供する。
【0037】
他の態様では、本発明は、
a)組織培養中の細胞を、適応変異を有するHCV RNA又はHCVウイルスと接触させることと、
b)この細胞を式(I)の化合物又はそれらの適切な塩で処理することと、
c)この処理細胞をHCV蛋白質発現について評価することと
によって、これらの細胞に選択された適応変異が存在すると検出可能なレベルのHCV蛋白質を有する細胞培養物の生成方法を提供する。
【0038】
他の態様では、本発明は、
a)組織培養中の細胞を、適応変異を有するHCV RNA又はHCVウイルスと接触させることと、
b)この細胞を式(I)の化合物又はそれらの適切な塩で処理することと、
c)細胞培地中に分泌されたウイルス粒子の量を評価することと
によって、適応変異が存在すると検出可能なレベルのウイルスを産生する細胞培養物の生成方法を提供する。
【0039】
本発明における使用に適した細胞系には、限定はしないが、初代ヒト細胞、例えば、肝細胞、T細胞、B細胞及び包皮繊維芽細胞、並びに連続継代性ヒト細胞系、例えば、HuH7、HepG2、HUT78、HeLa、293、HPB−MA、MT−2、MT−2C及びその他のHTLV−1及びHTLVII感染T細胞系、Namalawa、Daudi、EBV−形質転換LCLが含まれる。さらに、その他の種類の細胞系、特にフラビウイルス又はペスチウイルスの複製を可能にする細胞系、例えば、SW−13、Vero、BHK−21、COS、PK−15、MBCK、MDCK、Hepa1−6などを使用することができる。
【0040】
好ましい細胞系は、Huh−7、Hep3B、HepG2及びHeLaなどの肝細胞腫系である。
【0041】
当業者であれば、本明細書で説明した、細胞培養においてHCV RNA複製及び/又はHCVウイルス産生を調節するための使用及び方法は、試験動物におけるHCV RNA複製、HCVウイルス感染及び/又はHCVウイルス産生の調節に適用できることを理解するであろう。
【0042】
本発明での使用に適した試験動物は、齧歯類などの哺乳類を含む。好ましい試験動物は、ラット及びマウスなどの齧歯類である。
【0043】
複製したHCV RNAの存在は、例えば、RT−PCR、定量RT−PCR、ノーザンブロットなどの従来の方法によって、又はHCV蛋白質若しくはHCV RNA中に操作されたレポーター遺伝子によってコードされた蛋白質の活性及び/又は発現を測定することによって、評価することができる。
【0044】
HCV蛋白質発現は、例えば、ELISA測定法、ウェスタンイムノブロット、又は放射活性蛋白質標識後の免疫沈降測定法などの従来方法によって評価することができる。
【0045】
細胞培地に分泌されたHCVウイルス粒子の存在は、例えば、リアルタイム逆転写PCR増幅(TaqMan)、b−DNAなどの従来方法によって、又は未処理細胞若しくは実験動物を感染させるために細胞培地を使用することによって、評価することができる。
【0046】
式(I)の化合物は、
【0047】
【化12】

(式中、X及びYは独立してCH又はHであり、但し、X及びYは両方ともCHではなく、
はC(O)OR、C(O)NR、C(O)R又はS(O)であり、
はC(O)NR10又はNRC(O)R10であり、
は存在しないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1〜6アルキル及びC1〜6アルコキシから選択され、
及びRはそれぞれ独立して水素、C1〜6アルキル又はC3〜8シクロアルキルであり、
、R、R及びRはそれぞれ独立してC1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、(CH0〜33〜8シクロアルキル、C1〜6アルコキシ、(CH0〜3アリール、(CH)アリール、(CH0〜3Oアリール、(CH0〜3ヘテロアリール及び(CH0〜3Oヘテロアリールから選択され、
場合によって、ヒドロキシ、ハロゲン、CN、CF、C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、(CH0〜3NR11C(O)OR12、(CH0〜3アリール又は(CH0〜3ヘテロアリールによって置換されており、
11及びR12はそれぞれ独立して水素又はC1〜5アルキルであり、
10は(CH0〜3アリール又は(CH0〜3ヘテロアリールであり、場合によってハロゲン、CN、CF、C1〜4アルキル、C2〜4アルケニル、OR13、C(O)R13、C(O)OR13、アリール、(CH)アリール、(CH)C(O)OR13又はNR1314によって置換されており、
13及びR14はそれぞれ独立して水素、C1〜4アルキル又は(CH0〜3アリールであり、
この任意選択の置換基は、さらにヒドロキシ又はハロゲンによって場合によって置換されており、
10はさらに5又は6員環と融合していてよく、この環は部分的に、又は完全に不飽和であってよく、かつ、この環は1個又は2個のN原子を含有していてよく、前記環は場合によってヒドロキシ、ハロゲン、C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、C(O)R15及びC(O)OR15によって置換されており、
15はC1〜4アルキル又はアリールである。)
と定義される。
【0048】
式(I)の化合物の好ましいサブクラスは、式(Ii)の化合物
【0049】
【化13】

(式中、R及びRは式(I)に関して定義した通りであり、
は存在しないか、又はヒドロキシ、C1〜6アルキル及びC1〜6アルコキシから選択される。)
と定義される。
【0050】
好ましくは、X及びYは両方ともNである。
【0051】
好ましくは、RはC(O)OR、C(O)NR又はC(O)Rであり、
、R、R及びRは既に定義した通りである。より好ましくは、RはC(O)ORである。
【0052】
好ましくは、R、R及びRはそれぞれ独立してC1〜6アルキル、アリール及びベンジルから選択され、フッ素、塩素、臭素、CN、メチル、メトキシ及びCFから選択された1個又は2個の置換基によって場合によって置換されている。
【0053】
より好ましくは、RはC1〜6アルキルであり、最も好ましくはC1〜4アルキルであり、特にエチル、s−ブチル及びt−ブチルである。
【0054】
より好ましくは、Rはベンジルであり、場合によってフッ素、塩素又はメチルによって置換されている。
【0055】
より好ましくは、Rは(CH0〜25〜6シクロアルキル、(CH0〜2アリール又は(CH)アリールであり、このアリール基は、特にフェニルのとき、場合によってCN又はCFによって置換されている。
【0056】
好ましくは、Rは水素である。
【0057】
好ましくは、RはC(O)NR10であり、R及びR10は既に定義した通りである。
【0058】
好ましくは、Rは水素又はメチルである。最も好ましくは、Rは水素である。
【0059】
好ましくは、R10は(CH0〜3フェニル又はヘテロアリールであり、ハロゲン、ヒドロキシ、CN、CF、C1〜4アルキル、C2〜4アルケニル、C(O)R13、C(O)OR13又は(CH)フェニルによって場合によって置換されており、R13は以前に定義された通りであり、この任意選択の置換基はさらにヒドロキシ又はハロゲンによって置換されている。より好ましくは、R10はフェニル、−CHCHフェニル又はベンゾチアゾリルであり、ハロゲン、ヒドロキシ、CN、CF又は
【0060】
【化14】

によって場合によって置換されており、
10はフェニル又は−CHCHフェニルであり、好ましくは、R10は置換されており、最も好ましくは1置換されており、より好ましくは4位が置換されている。
【0061】
好ましくは、Rは存在しないか、又はヒドロキシである。Rがヒドロキシのとき、好ましくはR置換基に隣接した位置で結合している。好ましくは、Rは存在しない。
【0062】
式(I)の化合物の他の好ましいサブクラスは、式(Ia)の化合物
【0063】
【化15】

(式中、Rは式(I)に関して定義した通りであり、R15は存在しなくてよく、又はハロゲン、CN、CF、C1〜4アルキル、C2〜4アルケニル、OR13、C(O)R13、C(O)OR13、アリール、(CH)アリール、(CH)C(O)OR13又はNR1314であり、場合によってハロゲン又はヒドロキシによって置換されており、
13及びR14は式(I)に関して定義した通りである。)
である。
【0064】
好ましくは、RはC1〜6アルキル、C2〜6アルケニル又は(CH0〜3アリールであり、ハロゲン、C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ及び−CHNHC(O)OC1〜4アルキルから選択された1個又は2個の置換基によって場合によって置換されている。より好ましくは、Rはエチル、ブチル、ペンチル、プロピル、フェニル、ベンジル又は(CH)ナフチルである。最も好ましくは、Rはブチル、特にt−ブチル又はベンジルである。
【0065】
がベンジルのとき、塩素、臭素、メチル、メトキシ及び−CHNHC(O)OCHから選択された1個又は2個の置換基によって場合によって置換されている。
【0066】
好ましくは、R15はハロゲン、CN、CF、C2〜4アルケニル、フェニル、ヒドロキシ、OAc、OBn、C(O)C1〜4アルキル、C(O)フェニル、C(O)OC1〜4アルキル、(CH)C(O)OC1〜4アルキル、N(C1〜4アルキル)又は
【0067】
【化16】

である。より好ましくは、R15は臭素、ヨウ素、CF、ビニル、ヒドロキシ、C(O)CH、C(O)OCH、(CH)C(O)OCH、NMe又は
【0068】
【化17】

である。最も好ましくは、R15は臭素、CF、ヒドロキシ又は
【0069】
【化18】

であり、特にヒドロキシである。
【0070】
15が存在するとき、フェニル環の3又は4位、特に4位であることが好ましい。
【0071】
式(I)又は任意の置換基に複数回変動が生じるとき、各出現の定義はその他の出現全ての定義と独立している。
【0072】
本明細書では、基又は基の1部としての「アルキル」又は「アルコキシ」という用語は、その基が直鎖又は分枝鎖であることを意味する。適切なアルキル基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル及びt−ブチルを含む。適切なアルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、s−ブトキシ及びt−ブトキシを含む。
【0073】
本明細書で言及したシクロアルキル基は、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルを表す。
【0074】
本明細書では、基又は基の1部としての「アルケニル」又は「アルキニル」という用語は、その基が直鎖又は分枝鎖であることを意味する。適切なアルケニル基は、ビニル及びアリルを含む。適切なアルキニル基は、エチニル及びプロパギルである。
【0075】
本明細書で使用するとき、用語「ハロゲン」はフッ素、塩素、臭素及びヨウ素を意味する。好ましいハロゲンは、フッ素及び塩素である。
【0076】
本明細書で使用するとき、基又は基の一部としての「アリール」という用語は、炭素環芳香族環を意味する。適切なアリール基の例は、フェニル及びナフチルを含む。
【0077】
本明細書で使用するとき、基又は基の一部としての「ヘテロアリール」という用語は、N、O及びSから選択された1から4個のヘテロ原子を含有する複素芳香族5員環から10員環を意味する。このような基の具体的な例は、ピロリル、フラニル、チエニル、ピリジル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアジニル、テトラゾリル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾチアゾリル及びキノリニルを含む。
【0078】
化合物又は基が「場合によって置換された」と記載されている場合、1個又は複数の置換基が存在していてよい。任意選択の置換基は、様々な方法で置換している化合物又は基に、直接に、又は以下の例のような連結基、アミン、アミド、エステル、エーテル、チオエーテル、スルホンアミド、スルファミド、スルホキシド、ウレア、チオウレア及びウレタンによって結合してよい。適切であれば、任意選択の置換基は他の置換基によってそれ自体置換されていてよく、後者は直接前者に連結しているか、又は前記で例示したものなどの連結基によって連結している。
【0079】
式(I)の化合物の範囲内の具体的な化合物は、実施例及び以下の表に挙げたものを含む。
【0080】
特に興味のある化合物は、tert−ブチル4−(4−{[(4−ヒドロキシフェニル)アミノ]カルボニル}フェニル)ピペラジン−1−カルボキシラート(Ib)である。
【0081】
式(I)の化合物の濃度を変化させると、HCV RNAの複製に対する効果を調節することができ、HCV RNA複製が阻害される程度も調節することができることが発見された。したがって、このような化合物は、HCV患者を治療するために治療的に適用することができる。
【0082】
したがって、他の態様では、本発明は、HCV感染を治療するための医薬品の製造における式(I)の化合物又はそれらの薬剤として許容される塩の使用を提供する。
【0083】
他の態様では、本発明は、式(I)の化合物又はそれらの薬剤として許容される塩の有効量を投与することによるHCV感染患者の治療又は予防方法を提供する。
【0084】
薬剤で使用するために、式(I)の化合物の塩は、非毒性の薬剤として許容される塩である。しかし、その他の塩が、本発明による化合物又はそれらの非毒性の薬剤として許容される塩の調製に有用であってよい。本発明の化合物の適切な薬剤として許容される塩は、例えば、本発明による化合物の溶液と塩酸、フマル酸、p−トルエンスルホン酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、カルボン酸、リン酸又は硫酸などの薬剤として許容される酸の溶液とを混合することによって形成することができる。アミン基の塩はまた、アミノ窒素原子がアルキル、アルケニル、アルキニル又はアラルキル部分などの適切な有機基を有する4級アンモニウム塩を含む。さらに、本発明の化合物が酸部分を含む場合、それらの適切な薬剤として許容される塩は、ナトリウム又はカリウム塩などのアルカリ金属塩及びカルシウム又はマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩などの金属塩を含むことができる。
【0085】
本発明の化合物の適切な塩は、前述したようなそれらの薬剤として許容される塩だけでなく、例えば、無機酸及び有機酸から形成された通常の塩又は4級アンモニウム塩を含む。適切な塩は、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸から得られた塩、及び酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、mapoic、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸から調製された塩を含む。
【0086】
この塩は、例えば、この塩が不溶性である溶媒若しくは媒体中で、又は真空中で、若しくは凍結乾燥によって除去される水などの溶媒中で、この生成物の遊離塩基形態と1価又は複数価の適切な酸とを反応させることによって、或いは既存の塩の陰イオンを適切なイオン交換樹脂上で他の陰イオンに交換することによって、従来の手段によって形成することができる。
【0087】
本発明は、範囲内に前記の式(I)の化合物のプロドラッグを含む。一般的に、このようなプロドラッグは必要な式(I)の化合物にインビボで容易に変換できる式(I)の化合物の機能的誘導体である。適切なプロドラッグ誘導体の選択及び調製のための従来の方法は、例えば、「Design of Prodrugs」、H.Bundgaard編、Elsevier、1985に記載されている。
【0088】
プロドラッグは、活性化薬剤を放出するためには体内で変換することが必要で、親薬剤分子よりも送達特性が改善されている、生物学的に活性のある物質(「親薬剤」又は「親分子」)の薬理学的に不活性な誘導体であってよい。インビトロでの変換は、例えば、カルボン酸、リン酸又は硫酸エステルの化学的又は酵素的加水分解、或いは感受性官能基の還元若しくは酸化などのある種の代謝過程の結果であってよい。
【0089】
本発明は、範囲内に前記の式(I)の化合物の溶媒化合物及びそれらの塩、例えば水和物を含む。
【0090】
本発明はまた、範囲内に式(I)の化合物の鏡像異性体、ジアステレオマー、幾何異性体及び互変異性体を含む。このような異性体全て及びそれ等の混合物は、本発明の範囲内に包含されると理解されたい。
【0091】
本発明の他の態様では、HCV RNAの複製の阻害及び/又はC型肝炎ウイルスによる疾患の治療又は予防の方法を提供し、この方法は、前述の医薬組成物又は式(I)の化合物、又は薬剤として許容されるそれらの塩の治療若しくは予防有効量をこの疾患に罹患しているヒト又は動物(好ましくは哺乳類)対象に投与することを含む。「有効量」とは、対象に利益ももたらすために、又は対象の状態に少なくとも変化をもたらすために十分な量を意味する。
【0092】
本発明の他の実施形態では、抗ウイルス剤などのウイルス感染の治療のための1種又は複数のその他の薬剤、及び/又はα−、β−又はγ−インターフェロンなどの免疫調節剤、特にα−インターフェロンと併用して、C型肝炎による感染の治療又は予防のための薬剤を製造するための、式(I)の化合物又はそれらの薬剤として許容される塩の使用を提供する。適切な抗ウイルス剤には、リバビリン及びC型肝炎ウイルス(HCV)複製酵素の阻害剤、例えば、メタロプロテアーゼ(NS2−3)、セリンプロテアーゼ(NS3)、ヘリカーゼ(NS3)及びRNA依存性RNAポリメラーゼ(NS5B)の阻害剤が含まれる。
【0093】
本発明の他の態様は、薬剤として許容される担体と関連して、式(I)の化合物又はそれらの薬剤として許容される塩を含む医薬組成物を提供する。企図する投与方法に応じて、この組成物は適切な形態であってよい。例えば、経口投与用の錠剤、カプセル又は液剤、或いは非経口投与用液体又は懸濁液の形態であってよい。
【0094】
したがって、本発明の他の態様は、式(I)の少なくとも1種の化合物又はそれらの薬剤として許容される塩と1種又は複数の薬剤として許容される補助剤、希釈剤又は担体及び/又は1種又は複数のその他の治療若しくは予防活性薬剤を混合することによる医薬組成物の調製方法を提供する。
【0095】
本発明の他の態様は、C型肝炎ウイルスによる感染の治療又は予防など、治療で使用するための式(I)の化合物又は薬剤として許容されるそれらの塩を提供する。
【0096】
本発明の他の態様は、式(I)の化合物又は薬剤として許容されるそれらの塩を提供するが、但し、式(I)の化合物は、
tert−ブチル4−(4−{[(4−ヒドロキシフェニル)アミノ]カルボニル}フェニル)ピペラジン−1−カルボキシラート、
tert−ブチル4−(4−{[(4−ブロモフェニル)アミノ]カルボニル}フェニル)ピペラジン−1−カルボキシラート、
tert−ブチル4−(4−{[(3−ブロモフェニル)アミノ]カルボニル}フェニル)ピペラジン−1−カルボキシラート、
tert−ブチル4−{4−[({3−[(1E)−3−メトキシ−3−オキソプロプ−1−エン−1−イル]フェニル}アミノ)カルボニル]フェニル}ピペラジン−1−カルボキシラート、
tert−ブチル4−{4−[(4−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]フェニル}ピペラジン−1−カルボキシラート、又は
tert−ブチル4−{4−[(4−アミノベンゾイル)アミノ]フェニル}ピペラジン−1−カルボキシラートではない。
【0097】
この化合物を投与する投与割合は、使用する特定化合物の活性、化合物の代謝安定性及び作用の長さ、患者の年齢、体重、一般的健康状態、性別、食事、投与様式及び時間、排泄速度、併用薬剤、患者の状態の重症度及び宿主が受けている治療を含む様々な要素に左右される。C型肝炎ウイルスによる感染を治療又は予防するために、適切な投薬レベルは、1日当たり0.02gから5又は10gの程度で、経口投与量は2から5倍高くてよい。例えば、体重1kg当たり化合物10から50mgで、1日当たり1回から3回の投与が適切であり得る。適切な値は通常の試験によって選択可能である。この化合物は、単独で、又はその他の治療薬と併用して同時に、又は連続して投与してよい。例えば、有効量の抗ウイルス剤、免疫調節剤、抗感染薬又は当業者に公知のワクチンと併用して投与してよい。経口、静脈内、経皮及び皮下を含む適切な経路によって投与してよい。適切な部位に直接に、又は特定の部位、例えば、ある種の細胞を標的とする方法で投与してよい。適切な標的化方法は、既に公知である。
【0098】
一般式(I)の化合物は、前述の文書に開示された方法によって、及び以下に記載したような有機合成の業界で公知の方法によって調製できる。
【0099】
したがって、本発明は、式(I)の化合物の調製方法を提供する。一般的方法(a)によると、式(I)の化合物は式(II)の化合物と式(III)の化合物
【0100】
【化19】

(式中、R、R、X、Y、R及びR10は式(I)で定義した通りである。)
との反応によって調製することができる。この反応は、NMP又はDMFなどの適切な溶媒の存在下で、Py−BOPなどの結合試薬の存在下で都合良く実施される。
【0101】
式(I)の化合物はまた、式(IV)の化合物と式(V)の化合物
【0102】
【化20】

(式中、R、R、X、Y、R及びR10は式(I)で定義した通りである。)
との反応によって調製することができる。この反応は、NMPなどの適切な溶媒の存在下で、Py−BOPなどの結合試薬の存在下で都合良く実施される。
【0103】
それらが市販されていない場合、式(II)、(III)、(IV)及び(V)の開始物質は、付随するスキーム及び実施例で説明した方法と類似の方法又は当業界で周知の標準的方法によって調製することができる。
【0104】
一般的合成スキーム
一般的に、この化合物の調製には5種の合成スキームを使用した。
【0105】
【化21】

【0106】
メチル4−アミノ安息香酸をn−ブタノール中でビス(2−クロロエチル)アミン塩酸塩と共に7日間加熱還流した。得られたアリールピペラジン産物は室温まで冷却すると沈殿し、濾過によって容易に単離することができた。BOC基で2級アミンをキャップした後、エステル官能基の塩基媒介加水分解は異なるアミンとの結合に用いられる遊離酸をもたらした。アミド結合形成は、DMF中において、有機塩基存在下でペプチド結合試薬Py−BOPによって媒介された。最終生成物は一般的に、順相カラムクロマトグラフィー又は逆相HPLCのいずれかによって単離された。
【0107】
【化22】

【0108】
重要なカルボン酸中間体のアミド結合は、対応する酸塩化物の形成:CHCl中におけるそのカルボン酸と塩化チオニル:ベンゾトリアゾールの1:1保存溶液との反応によって実施され、得られたベンゾトリアゾール塩酸塩の濾過は酸塩化物の保存溶液をもたらした。CHCl中におけるN−メチルモルホリン存在下でのアミンの反応によって、所望するアミドが生じた。最終生成物は一般的に、順相カラムクロマトグラフィー又は逆相HPLCのいずれかによって単離された。
【0109】
【化23】

【0110】
フェノール性OHを酢酸エステルとして保護し、BOC基を除去した後、有機塩基存在下での2級アミンと適切なクロロギ酸との反応によってウレタンを調製した。過剰なクロロギ酸試薬を捕捉樹脂に捕捉させて、単純濾過及び揮発物質の留去によってO−酢酸保護中間体の単離を可能にした。酸性化後、酢酸保護基を塩基媒介加水分解して標的分子を生成し、一般的に単純濾過及び洗浄又は逆相HPLCのいずれかによって十分純粋に単離することができた。
【0111】
【化24】

【0112】
アミド断片は、開始物質としてメチル4−ブロモ安息香酸を使用して調製した。まず、メチルエステルをNaOHで加水分解して、得られた遊離酸をDMF中においてN−メチルモルホリンの存在下で結合剤としてpyBOPを使用して4−アミノフェノールと結合させた。ヒドロキシル基の保護は、イミダゾールの存在下でTBDMSClで実施した。次にこの断片をアミンのパラジウム媒介N−アリール化に使用した。後処理及びクロマトグラフィーの後、別々の脱保護段階を必要とすることなく所望するO−デ−シリル化物質を直接単離した。
【0113】
【化25】

【0114】
DMF中において、4−フルオロ−ニトロベンゼンのフルオロ置換基をtert−ブチル−1−ピペラジンによって50℃で一晩求核芳香族置換することによって、tert−ブチル4−(4−ニトロフェニル)ピペラジン−1−カルボキシラートを得た。ニトロ基を還元して、対応するアニリンを得るために触媒水素添加した後、アミド結合形成は有機塩基存在下でDMF中においてPy−BOPを使用して実施した。最終生成物は、順相カラムクロマトグラフィー(石油エーテルによる60%EtOAc溶液)によって単離した。
【0115】
代表的実施例
【0116】
【化26】

【0117】
【化27】

【0118】
【化28】


【0119】
【化29】

【0120】
【化30】

【0121】
前記の方法のいずれかによって最初に得られた式(I)の化合物は、適切ならば、当業界で公知の技術によってその後式(I)の他の化合物に作り上げることができる。
【0122】
例えば、RがC(O)NHR10であり、R10が臭素で置換されたフェニルである式(I)の化合物は、アセトニトリルなどの適切な溶媒中において、P(o−トリル)などのホスフィンリガンド及びトリエチルアミンなどの有機塩基の存在下で、パラジウム媒介架橋結合法によって、RがC(O)NHR10であり、R10がアクリル酸で置換されたフェニルである式(I)の化合物に変換することができる。
【0123】
生成物の混合物が本発明による化合物の調製のための前述の方法のいずれかによって得られる場合、所望する生成物は調製用HPLCなどの従来方法によって、又は、例えば、適切な溶媒系と組み合わせてシリカ及び/又はアルミナを使用したカラムクロマトグラフィーによって適切な段階で混合物から分離することができる。
【0124】
前記合成順序のいずれかにおいて、関与する分子のいずれかの感受性基又は反応基を保護することが必要とされ、かつ/又は所望される可能性がある。これは、例えば、「Protective Groups in Organic Chemistry」J.F.W.McOmie編、Plenum Press、1973及びT.W.Greene & P.G.M.Wuts、「Protective Groups in Organic Synthesis」John Wiley & Sons、3版、1999に記載されたものなどの従来の保護基によって実施することができる。この保護基は、当業界で公知の方法を使用してその後の都合の良い段階で除去することができる。
【0125】
以下の実施例は、本発明を例示する。
【0126】
結果
式(I)の化合物のHCVレプリコンに対する阻害効果。適応HCVレプリコンに対する式Iの化合物の効果は、HCVレプリコンを一時的又は安定的に形質移入した細胞系を使用することによって評価した。HCVレプリコン及び化合物の効果は、方法の項で説明した細胞−ELISA、ベータ−ラクタマーゼ、ノーザンブロット及びin situ RNA分解酵素保護測定法を含めたいくつかの様々な方法を使用することによって測定した。式Iの化合物は、適応変異を含有するHCVレプリコンの複製に対して阻害効果を有し、IC50値は0.1μM未満から約2μMの範囲であった。一例として、HBI10Aレプリコン細胞を化合物(Ib)とインキュベートすると、HCV複製の容量依存的阻害が生じ、IC50値は0.12±0.06μMであった。標準的MTT細胞毒性測定法及び14Cチミジン取り込み実験は、化合物(Ib)に毒性があり、レプリコンに効果的な濃度よりも2桁高い濃度のときのみ細胞増殖を阻害することを示した。化合物(Ib)の阻害効果はまた、異なるレプリコンを安定的に発現するその他の細胞クローンで、並びに異なるHCV単離物から生じ、様々な適応変異を含有するレプリコンで一時的に形質転換する実験において確かめられた(表7)。興味深いことに、化合物(Ib)は適応した完全長HCVゲノムの複製もまた、比較的強力に阻害した。さらに、化合物(Ib)はまた、ヒトHeLa細胞及びマウス肝細胞腫細胞系Hepal−6のCon1単離物から得られたHCVレプリコンを比較的強力に阻害し、その効果は宿主の種類及び元の組織と独立していることが示された。
【0127】
式Iの化合物の刺激効果。式Iの化合物は複製に完全に適格なレプリコンを阻害する一方、それらは複製の効率が悪いレプリコンに対して刺激効果を示した(表8、図1)。この刺激効果は、化合物(Ib)で詳細に研究された。一時的な形質移入実験では、NS3にE1202G変異を含有するpHCVNeo17.m17レプリコンは辛うじて検出可能なレベルで複製した一方、pHCVNeo17.wtレプリコンはそれほど複製しなかった。細胞ELISA測定法によってモニターすると、これら2種のレプリコンの複製は、用量に依存して化合物(Ib)によって刺激され、ベル型の活性化曲線を生じた(図1A)。ELISAシグナルの増加は、pHCVNeo17.wtレプリコンよりもpHCVNeo17.m17レプリコンの方が高かった。しかし、いずれの場合においても、活性化のピークは約30nMから約120nMの範囲の化合物(Ib)濃度で認められ、適応性の高いレプリコンで測定されたIC50値にほぼ対応した(表7)。この活性化効果は、ノーザンブロット分析によっても確認された(図1B)。活性化は、IFN、NS3/4Aプロテアーゼ及びNS5Bポリメラーゼ阻害剤によって、又はNS5Bポリメラーゼの遺伝的不活性化によって阻害された。化合物(Ib)は、対応するレプリコンで認められたものよりも程度は少ないが、適応していない完全長Con1ゲノムの複製も刺激した。さらに、化合物(Ib)はまた、HCVのBK単離物から得られた不適応レプリコンの複製も活性化した。その他の式Iの化合物もpHCVNeo17.wtレプリコンの複製を活性化した。しかし、阻害化合物の部分集団のみが測定可能な活性化を示し、2種の活性を分離できることを示唆している(表9)。
【0128】
式Iの化合物に耐性のレプリコンの選択及び耐性変異の同定。無細胞測定法において、式Iの化合物はセリンプロテアーゼ、ATPアーゼ、ヘリカーゼ及びNS3/4A及びNS5B蛋白質に関連したポリメラーゼを阻害しなかったので、ウイルス酵素に対するこれらの効果はこれらのウイルス酵素の阻害によって生じるのではないことを示している。これらの化合物の分子標的を同定する目的で、化合物(Ib)に耐性のレプリコンは、NS3−4Aプロテアーゼ及びNS5Bポリメラーゼ阻害剤に耐性の変異体を選択するために既に使用された方法を採用することによって選択された(Trozzi他、J Virol 77、3669〜3679、2003)。耐性細胞クローンは、親細胞と表現型が類似であり、同等レベルのウイルスRNA及び蛋白質を発現し、化合物(Ib)及び式Iのその他の化合物に対する感受性は減少しており、IC50値は親細胞で測定された値よりも少なくとも10倍高かった(表10)。これらのクローンは、インターフェロンアルファによる阻害並びにNS5Bポリメラーゼ及びNS3/4Aプロテアーゼのいくつかの阻害剤による阻害にまだ感受性であり、耐性は式Iの化合物に特異的であることを示唆した(表10)。
【0129】
耐性表現型に関与するウイルスゲノム中の変異を同定するため、レプリコンcDNAはRT−PCR増幅及び配列決定によって耐性クローン10AB3及び10AB11からレスキューされた。親クローン中に存在する適応変異の他に、耐性レプリコンはNS5A中にいくつかの異なるアミノ酸置換を含有した(表11)。これらの変異の役割は、何も含有しないか、親レプリコン(E1202G及びK@2039)に存在する一方又は両方の適応変異を含有するレプリコンベクター中にそれらを分離することによって、及び一時的形質移入測定法で得られたレプリコンを試験することによって調べられた(表8)。NS5Aのアラニン92のバリンによる置換(HCVポリ蛋白質の残基2064に対応し、A92V又はA2064Vと称する)、又はNS5Aのチロシン93のヒスチジンによる置換(HCVポリ蛋白質の残基2065に対応し、Y93H又はY2065Hと称する)、又はNS5Aのアルギニン157のトリプトファンによる置換(HCVポリ蛋白質の残基2129に対応し、R2129W又はR157Wと称する)を含有する適応レプリコンは、化合物(Ib)に対して明らかに耐性であった。これらのレプリコンのIC50値は、対応する耐性クローンで観察された値と類似しており、これら3種の置換体はそれぞれ、それ自体化合物(Ib)に対する耐性をもたらすことができることを示している。その他の変異は全て、化合物(Ib)に対する阻害に対する感受性には見かけ上影響を及ぼさず、この化合物に対する耐性にはおそらく関係ないことを示唆している。予測通り、A2064V、Y2065H又はR2129Wを有する適応レプリコンはまた、式Iのその他の化合物に耐性であるが、NS5Bポリメラーゼ及びNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤を含むその他の複製阻害剤には耐性ではなかった。A2064V又はY2065Hを有する非適応レプリコンは、あまり複製せず、式Iの化合物によって活性化されず、これらの化合物による阻害及び活性化は同一経路を介して生じることが示唆される。
【0130】
NS5A蛋白質の生合成に対する化合物(Ib)の効果。NS5A蛋白質における耐性変異の局在は、この化合物の刺激活性及び阻害活性がいずれも、NS5A蛋白質の機能を直接的、又は間接的に妨害することによって生じることを示している。したがって、NS5A蛋白質の生合成に対する化合物(Ib)の効果は、パルスチェイス標識/免疫沈殿実験によって調べられた(図2)。既に報告したように、阻害剤がないと、成熟NS5A蛋白質は時間に依存した様式でポリ蛋白質から放出され、まず56kDa形態(p56)として出現し、顕著な56kDa過剰リン酸化形態(p58)を含む分子量のより大きな形態に順次変換した。化合物(Ib)の存在下で、p56からp58への変換の速度及び程度は減少し、この化合物はおそらく過剰リン酸化の程度が減少することによってNS5Aの生合成に影響を及ぼすことを示唆している。
【0131】
材料及び方法
細胞及び細胞培養。Huh−7細胞は、Ralf Bartenschlager博士(Heidelberg大学、ドイツ)から恵与された。SL1及びMH1細胞は、Christoph Seeger博士(Fox Chase Cancer Center、Philadelphia、PA;USA)から恵与された。HBI10A及びその他のレプリコンを含有する細胞系は、WO2002059321 A2;Mottola他、Virology 293、31〜43、2002及びTrozzi他、J Virol 77、3669〜3679、2003で記載されたようなHuh−7細胞から得られた。HBI10、SL1及びMH1細胞用の培地にはG418(Gibco、BRL)0.8mg/mlを補給した以外は、細胞は全て、10%FCSを補給したDulbecco改変基礎培地(DMEM、Gibco、BRL)で増殖させた。通常の実験では、細胞は1×トリプシン/EDTA(Gibco、BRL)を使用して、1週間から5週間毎に2回継代した。インターフェロン(10AIFN)処理によって内在性レプリコンを回復させた細胞の調製、インビトロ転写及びRNA形質移入並びに試験化合物に耐性のクローンの選択は、Trozzi他、J.Virol.2003、77:3669〜79)に記載されたように実施した。
【0132】
プラスミド構築。cDNA断片は、適切な制限部位を備えた合成オリゴヌクレオチドを使用して、標準的DNAプロトコール又は関心のある領域のPCR増幅によって所望する発現ベクターにクローニングした。プラスミドDNAはLuria Bertaniブロスで一晩培養して、Qiagenカラムを指示にしたがって使用して調製した。全プラスミド配列は、自動配列決定によって確認した。
【0133】
プラスミドpHCVNeo17.wt、pHCVNeo17.B(本明細書ではpHCVNeo17.m10と称する)、pBK−SI、pBK−RMSI、pFL.wt及びpFL.B(本明細書ではpFL.m10と称する)は既に、Trozzi他、J.Virol.2003、77:3669〜79、Grobler他 J.Biol.Chem.2003 278(19):16741〜46及びPacini他、Anal Biochem.2004、331:46〜59に記載されている。pHCVNeo prefixと称したその他のレプリコンは全てpHCVNeo17.wtと同一であるが、表8に示した変異を含有する。pHCVbla prefixと称したプラスミドは、WO2003089672 A1及びMurray他、J Virol 77、2928〜2935、2003に記載されたように、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo)遺伝子をβ−ラクタマーゼ(bla)遺伝子で置換することによって、対応するpHCVNeoプラスミドから得られた。
【0134】
インビトロRNA転写及びRNA形質移入は、WO2002059321 A2;Mottola他、Virology 293、31〜43、2002及びTrozzi他、J Virol 77、3669〜3679、2003に記載されたように実施した。簡単に説明すると、プラスミドをScaI及びXbaIエンドヌクレアーゼ(New England Biolabs)で消化して、T7 Megascriptキット(Ambion)でインビトロで転写した。転写混合物は、鋳型DNAを完全に除去するためにDNアーゼI(0.1U/ml)で37℃で30分間処理して、Chomczynski(Chomczynski他、1987.Anal.Biochem.162、156〜159)の方法に従って抽出して、RNアーゼを含まないリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁した。RNA形質移入は、エレクトロポレーションによって実施した。
【0135】
耐性レプリコンの配列決定。全RNAは、Qiagen RNAeasy ミニキットを使用して製造者の指示に従って選択クローンから抽出した。レプリコンRNA(全細胞RNAの2〜10μg)は、オリゴヌクレオチドHCVG34(5’−ACATGATCTGCAGAGAGGCCAGT−3’)及びSuperscriptII逆転写酵素(Gibco、BRL)を使用して、製造者の指示に従ってレトロ転写し、その後リボヌクレアーゼH(Gibco BRL)2U/mlで消化した。EMCV IRESからHCV3’末端に及ぶcDNA領域は、オリゴヌクレオチドHCVG39(5’−GACASGCTGTGATAWATGTCTCCCCC−3’)及びCITE3(5’−TGGCTCTCCTCAAGCGTATTC−3’)及びLA Taq DNAポリメラーゼ(Takara)を使用してPCRによって増幅した。増幅したcDNAは、直接配列決定するか、又は適切な制限エンドヌクレアーゼ(New England Biolabs)で消化し、プラスミドpHCVNeo17.wt、pHCVNeo17.m5又は同エンドヌクレアーゼで消化したpHCVNeo17.m10にクローニングした。所望するDNA挿入部分の存在は、制限消化によって確認し、各プラスミドのNS領域のヌクレオチド配列は自動配列決定によって決定した。ヌクレオチド配列及び推定アミノ酸配列は、ベクターNTIソフトウェアを使用して整列させた。
【0136】
代謝標識及び免疫沈降法
Huh−7及びHBI10A細胞を4x10細胞/ウェルの密度で6ウェルプレートに播種した。35Sアミノ酸で代謝標識するパルスチェイスのため、透析FCS1%を添加したメチオニン/システインを含まないDMEM中で細胞を1時間インキュベートして、200μCi/ml(35S)蛋白質標識混合物(Du−Pont NEN)を含有する同培地で30分間標識し、次に溶解するか、又は10倍過剰なメチオニン/システインを添加した完全培地中で様々な時間(1〜3〜6時間)追跡した。完全プロテアーゼ阻害剤(Boehringer)を含有するTNE溶解緩衝液(Tris−HCl 20mM、pH7.5、NaCl 150mM、EDTA 1mM、1%SDS)0.2mlで細胞を溶解した。核及び残渣を除去するために、上清及び細胞溶解物を4℃で14000rpmで15分間遠心した。免疫沈降法及びSDS−PAGEでの分析は、Trozzi他、J.Virol.2003、77:3669〜79に記載されたように実施した。Molecular Dynamicsシステムによる定量分析のためにゲルをX線フィルム又はphosphorimagingスクリーンに曝露した。
【0137】
ノーザンブロットハイブリダイゼーション。ウイルス複製に対する試験化合物の効果及び変異レプリコンの複製向上は、Trozzi他、J.Virol.2003、77:3669〜79に記載されたようにノーザンブロットハイブリダイゼーションによってHCVレプリコンRNAの発現をモニターすることによって評価した。
【0138】
細胞ELISA測定法。ウイルス複製に対する試験化合物の効果及び変異レプリコンの複製向上は、Trozzi他、J.Virol.2003、77:3669〜79に記載されたように抗NS3 mab 10E5/24による細胞ELISAによってNS3蛋白質の発現をモニターすることによって評価した。化合物を溶解し、ジメチルスルホキシド(DMSO)最終濃度が1%になるような方法でDMSOで連続的に希釈した。一時的形質移入測定法は、10AIFN細胞で実施し、Trozzi他、J.Virol.2003、77:3669〜79に記載されたように準備してエレクトロポレーションによって形質移入した。形質移入後1から4時間の間で細胞に化合物を補給した。
【0139】
ベータラクタマーゼ遺伝子レポーター測定法(BLA測定法)。ウイルス複製に対する試験化合物の効果及び変異レプリコンの複製向上は、Murray他、J.Virol 77、2928〜35、2003に従ってベータラクタマーゼ酵素の発現をモニターすることによって評価した。ベータラクタマーゼ活性は、405nmの光で刺激された細胞によって放射される緑(530nm)又は青(460nm)の蛍光量を定量する蛍光プレートリーダーで測定した。
【0140】
【表1】

【0141】
【表2】


【0142】
【表3】


【0143】
【表4】

【0144】
【表5】

【0145】
一般的方法
溶媒は全て商用の供給源(Fluka、puriss.)から購入し、さらに精製することなく使用した。通常の脱保護及び結合段階を除いて、反応は乾燥オーブン(110℃)ガラス器内において窒素雰囲気下で実施した。有機抽出物は、硫酸ナトリウム上で乾燥し、(乾燥剤を濾過した後)減圧下で操作したロータリーエバポレーターで濃縮した。フラッシュクロマトグラフィーは、公表された方法(W.C.Still他、J.Org.Chem.1978、43、2923)に従ってシリカゲルで実施するか、又は予め充填したカラムを使用した市販のフラッシュクロマトグラフィーシステム(Biotage corporation and Jones Flashmaster II)で実施した。
【0146】
試薬は通常、商用の供給業者から直接購入し(指示通り使用し)たが、社内製品の化合物は数を限って使用した。後者の場合、科学文献で報告されているか、又は当業者に公知の通常の合成段階を使用して、これらの試薬は容易に入手できる。
【0147】
H NMRスペクトルは、300と600MHの間の(報告された)周波数で操作したBruker AMシリーズ分光計で記録した。非交換性プロトン(及び視認できる場合は交換性プロトン)に対応するシグナルの化学シフト(δ)は、テトラメチルシランに対する百万分率(ppm)で記録し、参照として残存する溶媒ピークを使用して測定した。シグナルは、多重度(s、一重線、d、二重線、t、三重線、q、四重線、m、多重線、br、幅が広く重なっている、及びこれらの組み合わせ)、ヘルツ(Hz)で表した結合定数、プロトンの数の順に表にする。質量スペクトル(MS)データは、負(ES)又は正(ES)のイオン化様式で操作したPerkin Elmer API 100、又はWaters MicroMass ZQによって得られ、結果は親イオンについてのみ質量電荷比(m/z)として記録する。調製規模のHPLC分離は、Waters 486吸収検出器を装備しているか、又はGilson調製システムのWaters Delta Prep 4000分離装置で実施した。いずれの場合も、化合物はTFA0.1%を含有した、水及びアセトニトリルの直線勾配で、15mL/分と25mL/分との間の流速で溶出した。
【0148】
以下の略語は実施例、スキーム及び表で使用した。
【0149】
AcO:無水酢酸、BINAP:(+/−)−1,1’−ビ−2−ナフトール、(BOC)O:ジ−tert−ブチルジカルボナート、BuOH:n−ブタノール、CbzCl:ベンジルクロロホルマート、CDCl:クロロホルム−D、DCM:ジクロロメタン、DIEA:ジイソプロピルアミン、DME:ジメトキシエタン、DMF:ジメチルホルムアミド、DMSO:ジメチルスルホキシド、eq:当量、EtN:トリエチルアミン、EtOAc:酢酸エチル、EtO:ジエチルエーテル、EtOH:エタノール、h:時間、HATU:O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホファート(tetramethyluronium hexafluorophophate)、Me:メチル、MeCN:アセトニトリル、MeOH:メタノール、min:分、NBS:N−ブロモスクシニミド、NMM:N−メチルモルホリン、Pd(dba)3:トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、PE−石油エーテル、Ph:フェニル、PS:ポリスチレン、PyBop:(1H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)(トリピロリジン−1−イル)ホスホニウムヘキサフルオロホスファート、RP−HPLC:逆相高速液体クロマトグラフィー、RT:室温、TBDMSCI:tert−ブチルジメチルシリルクロリド、TFA:トリフルオロ酢酸、THF:テトラヒドロフラン、TLC:薄層クロマトグラフィー、TMS:トリメチルシリル、Tol:トルエン。
【0150】
tert−ブチル4−[4−(アリール/アルキルアミノカルボニル)フェニル]ピペラジン−1−カルボキシラートの調製の一般的方法
段階1:tert−ブチル4−[4−(クロロカルボニル)フェニル]ピペラジン−1−カルボキシラート
乾燥DCM(1.5M)に溶かしたSOCl−ベンゾトリアゾールの保存溶液は、乾燥DCM(1.5M)で塩化チオニル(1当量)及びベンゾトリアゾール(1当量)の大量の粘稠な透明溶液を形成することによって調製した−Synlett 1999、1763参照。この保存溶液1.25当量を、乾燥DCM(0.05M)に溶かした(国際特許出願公開WO98/00134に記載されたように調製した)4−(4−tert−ブトキシカルボニル)ピペラジン−1−イル)安息香酸(1当量)の溶液に添加した。この添加によって、塩化アシル形成の指標となる沈殿物が形成した。この反応をRTで10分間行い、その後無水硫酸ナトリウムのパッドで濾過した。
【0151】
段階2:tert−ブチル4−[4−(アリール/アルキルアミノカルボニル)フェニル]ピペラジン−1−カルボキシラート形成
乾燥DCM(0.3M)中での結合で使用するアリール又はアルキルアミンの溶液(1当量)及びN−メチルモルホリン(2.5当量)に、DCM(0.05M)に溶かした(前記の段階1からの)塩化アシル(1当量)の溶液を添加した。この反応物を撹拌しながら40℃で一晩加熱した。得られた混合物をRTまで冷却して、EtOAcで希釈して、HCl水溶液(1N)、飽和NaCO水溶液及び食塩水で洗浄した。次に有機物をNaSOで乾燥させて、濾過して真空中で濾過した。精製は、自動化RP−LCMSによって行った。条件:X−Terra(Waters)C18カラム 5μm、19×100mm;流速:20ml/min;勾配:A HO+0.1% TFA;B:MeCN+0.1% TFA。純粋な生成物を含有する画分を集め、凍結乾燥して、表題化合物を得た(20%〜68%)。
【実施例1】
【0152】
tert−ブチル4−(4−{[(4−ヒドロキシフェニル)アミノ]カルボニル}フェニル)ピペラジン−1−カルボキシラート
H NMR(400MHz、DMSO−d、300K)δ1.42(s、9H)、3.29〜3.32(m、4H)、3.45〜3.48(m、4H)、7.03(d、J8.8、2H)、7.78(d、J8.8、2H)、7.89(d、J8.8、2H)、7.98(d、J8.8、2H)、10.32(s、1H);MS(ES)m/z407(M+H)
【実施例2】
【0153】
tert−ブチル4−{4−[(1,3−ベンゾトリアゾール−2−イルアミノ)カルボニル]フェニル}ピペラジン−1−カルボキシラート
H NMR(400MHz、DMSO−d、300K)δ1.43(s、9H)、3.35〜3.37(m、4H)、3.45〜3.47(m、4H)、7.03(d、J8.8、2H)、7.31(m、1H)、7.45(m、1H)、7.75(d、J8.0、1H)、7.99(d、J8.0、1H)、8.06(d、J8.8、2H)、12.53(s、1H);MS(ES)m/z439(M+H)
【実施例3】
【0154】
イソブチル4−(4−{[(4−ヒドロキシフェニル)アミノ]カルボニル}フェニル)ピペラジン−1−カルボキシラート
段階1:tert−ブチル4−[4−(1−{[4−(アセチルオキシ)フェニル]アミノ}ビニル)フェニル]ピペラジン−1−カルボキシラート
EtN1.1当量及びAcO2当量を乾燥DCM(0.1M)(国際特許出願公開WO98/00134に記載されたように調製した)tert−ブチル4−(4−{[(4−ヒドロキシフェニル)アミノ]カルボニル}フェニル)ピペラジン−1−カルボキシラートの溶液に添加して、この溶液を窒素雰囲気下でRTで16時間撹拌した。この反応混合物をDCMで希釈して、有機層をHCl水溶液(1N)(2回)、飽和NaCO水溶液及び食塩水で洗浄した。この有機層をNaSOで乾燥させて、濾過して、溶媒を真空中で留去して、表題化合物を白色固形物として得た(90%)。MS(ES)m/z440(M+H)
【0155】
段階2:4−[4−({[4−(アセチルオキシ)フェニル]アミノ}カルボニル)フェニル]ピペラジン−1−イウムトリフルオロアセタート
DCM/TFA(2/3)の溶液に溶かしたtert−ブチル4−[4−(1−{[4−(アセチルオキシ)フェニル]アミノ}ビニル)フェニル]ピペラジン−1−カルボキシラート(0.1M)をRTで30分間撹拌した。有機溶媒を真空中で留去して、粗残渣をEtOでこすり取った。得られた白色固形沈殿物を濾過して、表題化合物(95%)を得た。MS(ES)m/z339(M+H)
【0156】
段階3:イソブチル4−(4−{[(4−ヒドロキシフェニル)アミノ]カルボニル}フェニル)ピペラジン−1−カルボキシラート
イソブチル−クロロホルマート2当量及びEtN3.5当量を乾燥THFに溶かした4−[4−({[4−(アセチルオキシ)フェニル]アミノ}カルボニル)フェニル]ピペラジン−1−イウムトリフルオロアセタートの溶液(0.05M)に添加し、この溶液をN下でRTで3時間撹拌させた。PS−トリスアミン樹脂(過剰)を添加し、この反応混合物を16時間撹拌した。樹脂及び白色の沈殿を濾過した。過剰なNaOH水溶液(1M)をこの有機溶液に添加し、この反応混合物を2時間撹拌した。有機溶媒を真空中で除去して、白色固形物が沈殿するまでHCl水溶液(1M)を添加し、濾過して、洗浄して真空中で乾燥して、表題化合物を得た(90%)。
【0157】
H NMR(300MHz、DMSO−d、300K)δ0.89(d、J6.6、6H)、1.80〜1.93(m、1H)、3.20〜3.39(m、4H、水のピークによって不明瞭である)、3.4〜3.6(m、4H)、3.81(d、J6.3、2H)、6.70(d、J9.0、2H)、7.00(d、J9.0、2H)、7.48(d、J8.7、2H)、7.84(d、J8.7、2H)、9.15(s、1H)、9.70(s、1H);MS(ES)m/z398(M+H)
【実施例4】
【0158】
tert−ブチル1−(4−{[(4−ヒドロキシフェニル)アミノ]カルボニル}フェニル)ピペリジン−4−カルボキシラート
段階1: 4−ブロモ安息香酸
NaOH水溶液(1M溶液)1.1当量をTHFに溶かしたメチル4−ブロモ安息香酸の溶液(0.5M)に添加し、この反応物をRTで一晩撹拌した。THFを真空中で除去して、HCl水溶液(6M)を添加し、この塩基性溶液に0℃で滴下して、pHをpH2に調節した。得られた水性混合物をEtOAc(3×)で抽出して、一緒にした有機層を食塩水で洗浄して、NaSOで乾燥させ、濾過して、溶媒を真空中で留去した。表題化合物は定量的な収率で得られた。MS(ES)m/z201(M+H)、m/z203(M+H)
【0159】
段階2:4−ブロモ−N−(4−ヒドロキシフェニル)ベンズアミド
DMFに溶かした4ブロモ安息香酸の溶液(0.10M)に、NMM3当量、Py−BOP1.5当量及び4−アミノフェノール1.1当量を添加し、この混合物をRTで20分間撹拌した。DMFを真空中で濃縮して、残渣をEtOAc及びHCl水溶液(1N)で希釈した。得られた沈殿物を濾過して、真空中で乾燥して、表題化合物(73%)を得た。MS(ES)m/z292(M+H)、m/z294(M+H)
【0160】
段階3:4−ブロモ−N−(4−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}フェニル)ベンズアミド
DMFに溶かした4−ブロモ−N−(4−ヒドロキシフェニル)ベンズアミドの溶液(1.3M)の溶液に、イミダゾール2.5当量及びTBDMSCl1.2当量を添加し、この溶液をRTで30分間撹拌した。得られた混合物をEtOAcで希釈した。この有機層をHCl水溶液(1N)、飽和NaCO水溶液及び食塩水で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥して、濾過して、真空中で濃縮して、表題化合物(95%)を得た。MS(ES)m/z406(M+H)、m/z408(M+H)
【0161】
段階4:1−[(ベンジルオキシ)カルボニル]ピペリジン−4−カルボン酸
O/ジオキサン1:1混合物に溶かしたピペリジン−4−カルボン酸の溶液(0.4M)に、KCO5当量を添加してからベンジルクロロホルマート1.1当量を0℃で滴下導入した。この反応物をRTで一晩撹拌した。この反応物をまずEtOで洗浄した。水層をHCl水溶液(6N)でpH2まで酸性化し、EtOAc(3×)で抽出した。一緒にした有機物を食塩水で洗浄して、NaSOで乾燥して、濾過して、真空中で濃縮して、生成物(91%)を得た。MS(ES)m/z264(M+H)
【0162】
段階5:1−ベンジル4−tert−ブチルピペリジン−1,4−ジカルボキシラート
DCMに溶かした1−[(ベンジルオキシ)カルボニル]ピペリジン−4−カルボン酸の溶液(0.2M)に、tert−ブチルN,N’−ジイソプロピルイミドカルバマート3当量を添加し、この混合物をRTで撹拌した。30分後、tert−ブチルN,N’−ジイソプロピルイミドカルバマートをさらに1.5当量添加し、この溶液をさらに1時間撹拌した。この溶液をセライトのパッドで、次にシリカゲルのパッドで濾過して、生成物を得た(83%);MS(ES)m/z320(M+H)
【0163】
段階6:tert−ブチルピペリジン−4−カルボキシラート
EtOAcに溶かした1−ベンジル4−tert−ブチルピペリジン−1,4−ジカルボキシラートの溶液(0.1M)に、触媒量のPd/C(5%)を添加し、反応容器の雰囲気はHを充填した(1気圧)。反応混合物をRTで8時間激しく撹拌した。この溶液を濾過して、濾液を真空中で濃縮して、表題化合物(76%)を得た。MS(ES)m/z186(M+H)
【0164】
段階7:tert−ブチル1−(4−{[(4−ヒドロキシフェニル)アミノ]カルボニル}フェニル)ピペリジン−4−カルボキシラート
乾燥機で乾燥させたフラスコにCsCO1.4当量を充填し、次にPd(dba)0.01当量及びBINAP0.015当量を添加して、次いで4−ブロモ−N−(4−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}フェニル)ベンズアミド1当量及びtert−ブチルピペリジン−4−カルボキシラート1.2当量を添加した。この混合物に、トルエンを添加して4−ブロモ−N−(4−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}フェニル)ベンズアミドの0.16M溶液を得た。フラスコ中の雰囲気を排出し、アルゴンを充填し直し、次いで溶液を還流しながら一晩加熱した。この反応混合物を真空中で濃縮して、粗生成物をシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc:PE=3:7)によって直接精製し、表題化合物を得た(33%)。
【0165】
H ΝMR(300MHz、DMSO−d、300K)δ1.43(s、9H)、1.60〜1.67(m、2H)、1.85〜1.93(m、2H)、2.41〜2.49(m、1H)、2.88〜3.15(m、2H)、3.75〜3.82(m、2H)、6.72(d、J9.0、2H)、6.97(d、J9.0、2H)、7.50(d、J8.6、2H)、7.84(d、J8.6、2H)、8.99(s、1H)、9.57(s、1H);MS(ES)m/z397(M+H)
【実施例5】
【0166】
tert−ブチル4−{4−[(4−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]フェニル}ピペラジン−1−カルボキシラート
段階1:tert−ブチル4−(4−ニトロフェニル)ピペラジン−1−カルボキシラート
DMFに溶かしたtert−ブチル−ピペラジン(1当量)及び4−フルオロ−ニトロベンゼン(1.1当量)の溶液(0.43M)に、KCO(1.1当量)を添加した。この混合物を撹拌しながら50℃で一晩加熱した。このとき、反応物をRTまで冷却して、EtOAc及び1N HCl水溶液の間で分画した。水性画分をEtOAcで抽出して、一緒にした有機物を食塩水で洗浄し、その後NaSoで乾燥して、濾過して、真空中で留去して、表題化合物を黄色固形物(97%)として得た。MS(ES)m/z308(M+H)
【0167】
段階2:tert−ブチル4−(4−アミノフェニル)ピペラジン−1−カルボキシラート
C上のPd10%(0.3%p/p)を、MeOH:EtOAcの混合物(1:1比)に溶かしたtert−ブチル4−(4−ニトロフェニル)ピペラジン−1−カルボキシラート(1当量)の溶液(0.03M)に添加した。反応容器中の雰囲気にHを充填し(1気圧)、この反応物を2時間激しく撹拌した。このとき、反応混合物をセライトのパッドで濾過して、真空中で濃縮して表題化合物を得た(定量的)。MS(ES)m/z278(M+H)
【0168】
段階3:tert−ブチル4−{4−[(4−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]フェニル}ピペラジン−1−カルボキシラート
乾燥DMFに溶かしたtert−ブチル4−(4−アミノフェニル)ピペラジン−1−カルボキシラート)(1当量)、4−ヒドロキシ安息香酸(1.1当量)、N−メチルモルホリン(3当量)の溶液(0.16M)に、PyBop(1.5当量)を添加した。この反応混合物を撹拌しながら60℃で60時間加熱した。このとき、反応物をRTまで冷却して、EtOAc及び1N HCl水溶液の間で分画した。水性画分をEtOAcで抽出して、一緒にした有機物を飽和NaCO水溶液、食塩水で洗浄し、その後NaSOで乾燥して、濾過して、真空中で留去した。シリカゲル(EtOAc/PE(4:6))のフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を得た(24%)。
【0169】
H NMR(300MHz、DMSO−d、300K)δ1.4(s、9H)、3.03〜3.05(m、4H)、3.40〜3.45(m、4H)、6.83(d、J8.7、2H)、6.92(d、J8.7、2H)、7.58(d、J8.7、2H)、7.81(d、J8.7、2H)、9.78(s、1H)、10.0(s、1H);MS(ES)m/z396(M−H)
【0170】
以下の表は他の実施例を示す。
【0171】
【表6】


【0172】
【表7】

【0173】
【表8】

【0174】
【表9】

【0175】
【表10】

【0176】
【表11】

【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】wt及び適応レプリコンの複製に対する化合物(Ib)の効果を示した図である。10AIFN細胞に、野生型pHCVNeo17.wtレプリコン(灰色)、E1202G及びK@2039変異を有する完全適応pHCVNeo17.m10レプリコン(白)、E1202G変異のみを有する部分適応pHCVNeo17.m17レプリコン(黒)又はE1202G、K@2039及びA2064V変異を有する化合物(Ib)耐性pHCVNeo17.m29レプリコンを形質移入した。形質移入した細胞を化合物(Ib)の非存在下で、又は化合物(Ib)の指示した濃度の存在下で培養した。HCVレプリコンは、細胞ELISA(A)又はノザンブロット(B)によって、方法の項で指示したようにモニターした。
【図2】NS5A蛋白質の生合成に対する化合物(Ib)の効果を示した図である。Huh−7(列1から4)及びHBI10A(列5から12)を、35Sアミノ酸によって37℃で20秒パルス標識し、その後それぞれの列の上に指示した時間(時間)追跡した。飢餓を指示した場合、標識及び追跡は化合物(Ib)2μMの存在下で実施した。標識した蛋白質を55IV抗NS5A抗血清で免疫沈降させて、SDS−10%PAGEによって分析した。分子量標準物、NS5A型及び非開裂前駆体の位置(キロダルトン)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
【化1】

(式中、X及びYは独立してCH又はHであり、但し、X及びYは両方ともCHではなく、
はC(O)OR、C(O)NR、C(O)R又はS(O)であり、
はC(O)NR10又はNRC(O)R10であり、
は存在しないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1〜6アルキル及びC1〜6アルコキシから選択され、
及びRはそれぞれ独立して水素、C1〜6アルキル又はC3〜8シクロアルキルであり、
、R、R及びRはそれぞれ独立してC1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、(CH0〜33〜8シクロアルキル、C1〜6アルコキシ、(CH0〜3アリール、(CH)アリール、(CH0〜3Oアリール、(CH0〜3ヘテロアリール及び(CH0〜3Oヘテロアリールから選択され、
場合によって、ヒドロキシ、ハロゲン、CN、CF、C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、(CH0〜3NR11C(O)OR12、(CH0〜3アリール又は(CH0〜3ヘテロアリールによって置換されており、
11及びR12はそれぞれ独立して水素又はC1〜5アルキルであり、
10は(CH0〜3アリール又は(CH0〜3ヘテロアリールであり、ハロゲン、CN、CF、C1〜4アルキル、C2〜4アルケニル、OR13、C(O)R13、C(O)OR13、アリール、(CH)アリール、(CH)C(O)OR13又はNR1314によって場合によって置換されており、
13及びR14はそれぞれ独立して水素、C1〜4アルキル又は(CH0〜3アリールであり、
この任意選択の置換基は、さらにヒドロキシ又はハロゲンによって場合によって置換されており、
10はさらに5又は6員環と融合していてよく、この環は部分的に、又は完全に不飽和であってよく、かつ、この環は1個又は2個のN原子を含有していてよく、前記環は場合によってヒドロキシ、ハロゲン、C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、C(O)R15及びC(O)OR15によって置換されており、
15はC1〜4アルキル又はアリールであり、
但し、式(I)の化合物は、
tert−ブチル4−(4−{[(4−ヒドロキシフェニル)アミノ]カルボニル}フェニル)ピペラジン−1−カルボキシラート、
tert−ブチル4−(4−{[(4−ブロモフェニル)アミノ]カルボニル}フェニル)ピペラジン−1−カルボキシラート、
tert−ブチル4−(4−{[(3−ブロモフェニル)アミノ]カルボニル}フェニル)ピペラジン−1−カルボキシラート、
tert−ブチル4−{4−[({3−[(1E)−3−メトキシ−3−オキソプロプ−1−エン−1−イル]フェニル}アミノ)カルボニル]フェニル}ピペラジン−1−カルボキシラート、
tert−ブチル4−{4−[(4−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]フェニル}ピペラジン−1−カルボキシラート、又は
tert−ブチル4−{4−[(4−アミノベンゾイル)アミノ]フェニル}ピペラジン−1−カルボキシラートではない。)
又は薬剤として許容されるそれらの塩。
【請求項2】
式(Ii)の請求項1に記載の化合物
【化2】

(式中、R及びRは請求項1で定義した通りであり、
は存在しないか、又はヒドロキシ、C1〜6アルキル及びC1〜6アルコキシから選択され、
但し、式(Ii)の化合物は、
tert−ブチル4−(4−{[(4−ヒドロキシフェニル)アミノ}カルボニル}フェニル)ピペラジン−1−カルボキシラート、
tert−ブチル4−(4−{[(4−ブロモフェニル)アミノ]カルボニル}フェニル)ピペラジン−1−カルボキシラート、
tert−ブチル4−(4−{[(3−ブロモフェニル)アミノ]カルボニル}フェニル)ピペラジン−1−カルボキシラート、
tert−ブチル4−{4−[({3−[(1E)−3−メトキシ−3−オキソプロプ−1−エン−1−イル]フェニル}アミノ)カルボニル]フェニル}ピペラジン−1−カルボキシラート、
tert−ブチル4−{4−[(4−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]フェニル}ピペラジン−1−カルボキシラート、又は
tert−ブチル4−{4−[(4−アミノベンゾイル)アミノ]フェニル}ピペラジン−1−カルボキシラートではない。)
又は薬剤として許容されるそれらの塩。
【請求項3】
X及びYはいずれもNである、請求項1又は請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
はC(O)OR、C(O)NR又はC(O)Rであり、R、R、R及びRは請求項1で定義した通りである、請求項1から3までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
、R及びRはそれぞれ独立してC1〜6アルキル、アリール及びベンジルから選択され、フッ素、塩素、臭素、CN、メチル、メトキシ及びCFから選択された1個又は2個の置換基によって場合によって置換されている、請求項1から4までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
は水素である、請求項1から5までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
はC(O)ONR10であり、R及びR10は請求項1で定義した通りである、請求項1から6までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
は水素又はメチルである、請求項1から7までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
10は(CH0〜3フェニル又はヘテロアリールであり、ハロゲン、ヒドロキシ、CN、CF、C1〜4アルキル、C2〜4アルケニル、C(O)R13、C(O)OR13又は(CH)フェニルによって場合によって置換されており、R13は請求項1で定義した通りであり、この任意選択の置換基はさらにヒドロキシ又はハロゲンによって場合によって置換されている、請求項1から8までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
は存在しないか又はヒドロキシである、請求項1から9までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
式(Ia)の請求項1に記載の化合物
【化3】

(式中、Rは請求項1で定義した通りであり、R15は存在しないか、又はハロゲン、CN、CF、C1〜4アルキル、C2〜4アルケニル、OR13、C(O)R13、C(O)OR13、アリール、(CH)アリール、(CH)C(O)OR13又はNR1314であり、ハロゲン又はヒドロキシによって場合によって置換され、R13及びR14は請求項1で定義した通りであり、
但し、式(Ii)の化合物は、
tert−ブチル4−(4−{[(4−ヒドロキシフェニル)アミノ}カルボニル}フェニル)ピペラジン−1−カルボキシラート、
tert−ブチル4−(4−{[(4−ブロモフェニル)アミノ]カルボニル}フェニル)ピペラジン−1−カルボキシラート、
tert−ブチル4−(4−{[(3−ブロモフェニル)アミノ]カルボニル}フェニル)ピペラジン−1−カルボキシラート、又は
tert−ブチル4−{4−[({3−[(1E)−3−メトキシ−3−オキソプロプ−1−エン−1−イル]フェニル}アミノ)カルボニル]フェニル}ピペラジン−1−カルボキシラートではない。)
又は薬剤として許容されるそれらの塩。
【請求項12】
はC1〜6アルキル、C2〜6アルケニル又は(CH0〜3アリールであり、ハロゲン、C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ及び−CHNHC(O)OC1〜4アルキルから選択された1個又は2個の置換基によって場合によって置換されている、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
15はハロゲン、CN、CF、C2〜4アルケニル、フェニル、ヒドロキシ、OAc、OBn、C(O)C1〜4アルキル、C(O)フェニル、C(O)OC1〜4アルキル、(CH)C(O)OC1〜4アルキル、N(C1〜4アルキル)又は
【化4】

である、請求項11又は請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
細胞、組織又は生物におけるHCV RNAの複製及び/又はHCVのウイルス産生を調節するための、請求項1から13までのいずれか一項に記載の化合物又はそれらの適切な塩の使用。
【請求項15】
細胞におけるHCV RNA複製及び/又はHCVのウイルス産生を促進するための、請求項1から13までのいずれか一項に記載の化合物、又はそれらの適切な塩の請求項14に記載の使用。
【請求項16】
細胞、組織又は生物に請求項1から13までのいずれか一項に記載の化合物又はそれらの適切な塩を投与することを含む、細胞、組織又は生物におけるHCV RNAの複製及び/又はHCVのウイルス産生を調節する方法。
【請求項17】
細胞を請求項1から13までのいずれか一項に記載の化合物又はそれらの適切な塩で処理することによって、培養細胞においてHCV RNAの複製及び/又はHCVのウイルス産生を促進する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物又はそれらの適切な塩で処理することによって得られる細胞培養物。
【請求項19】
請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物又はそれらの適切な塩で処理されたHCV細胞培養物への化合物の投与を含む、前記化合物のHCV複製に対する効果についてスクリーニングする方法。
【請求項20】
HCV RNAに適応変異がなくても検出可能なレベルのHCV RNA及びHCV蛋白質を有する細胞培養物の生成における、請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物又はそれらの適切な塩の使用。
【請求項21】
a)組織培養中の細胞を、適応変異を有さないHCV RNA又はHCVウイルスと接触させることと、
b)前記細胞を請求項1から13までのいずれか一項に記載の化合物又はそれらの適切な塩で処理することと、
c)前記処理細胞をHCV RNA複製について評価することと
によって、検出可能なレベルのHCV RNAに適応変異がなくてもHCV RNAを有する細胞培養物を生成する方法。
【請求項22】
a)組織培養中の細胞を、適応変異を有さないHCV RNA又はHCVウイルスと接触させることと、
b)前記細胞を請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物又はそれらの適切な塩で処理することと、
c)前記処理細胞をHCV蛋白質発現について評価することと
によって、検出可能なレベルのHCV RNAに適応変異がなくてもHCV蛋白質を有する細胞培養物を生成する方法。
【請求項23】
a)組織培養中の細胞を、適応変異を有さないHCV RNA又はHCVウイルスと接触させることと、
b)前記細胞を請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物又はそれらの適切な塩で処理することと、
c)細胞培地中に分泌されたウイルス粒子の量を評価することと
によって、適応変異がなくても検出可能なレベルのウイルス生成を有する細胞培養物を生成する方法。
【請求項24】
細胞中に選択された適応変異が存在し、検出可能なレベルのHCV RNA及びHCV蛋白質を有する細胞培養物の生成における、請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物又はそれらの適切な塩の使用。
【請求項25】
a)組織培養中の細胞を、選択された適応変異を有するHCV RNA又はHCVウイルスと接触させることと、
b)前記細胞を請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物又はそれらの適切な塩で処理することと、
c)前記処理細胞をHCV RNA複製について評価することと
によって、細胞中に選択された適応変異が存在し、検出可能なレベルのHCV RNAを有する細胞培養物を生成する方法。
【請求項26】
a)組織培養中の細胞を、適応変異を有するHCV RNA又はHCVウイルスと接触させることと、
b)前記細胞を請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物又はそれらの適切な塩で処理することと、
c)前記処理細胞をHCV蛋白質発現について評価することと
によって、細胞中に選択された適応変異が存在し、検出可能なレベルのHCV蛋白質を有する細胞培養物を生成する方法。
【請求項27】
a)組織培養中の細胞を、適応変異を有するHCV RNA又はHCVウイルスと接触させることと、
b)前記細胞を請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物又はそれらの適切な塩で処理することと、
c)細胞培地中に分泌されたウイルス粒子の量を評価することと
によって、適応変異が存在して、検出可能なレベルのウイルス生成を有する細胞培養物を生成する方法。
【請求項28】
薬剤として許容される担体と関連して、請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物、又は薬剤として許容されるそれらの塩を含む医薬組成物。
【請求項29】
請求項1から13のいずれか一項に記載の少なくとも1種の化合物又はそれらの薬剤として許容される塩と1種又は複数の薬剤として許容される補助剤、希釈剤又は担体及び/又は1種又は複数のその他の治療若しくは予防活性化合物とを混合することによる医薬組成物の調製方法。
【請求項30】
治療に使用するための、請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物又は薬剤として許容されるそれらの塩。
【請求項31】
HCV感染を治療するための医薬品の製造における、請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物又はそれらの薬剤として許容される塩の使用。
【請求項32】
抗ウイルス剤などのウイルス感染の治療のための1種又は複数のその他の薬剤及び/又はα−、β−又はγ−インターフェロンなどの免疫調節剤と組み合わせた、C型肝炎による感染の治療又は予防のための薬剤を製造するための、請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物又は薬剤として許容されるそれらの塩の使用。
【請求項33】
請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物又は薬剤として許容されるそれらの塩の有効量を投与することによる、HCV感染患者の治療又は予防方法。
【請求項34】
請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物又は薬剤として許容されるそれらの塩の前述の医薬組成物の治療若しくは予防有効量を前記疾患に罹患しているヒト又は動物対象に投与することを含む、HCV RNA複製の阻害方法及び/又はC型肝炎ウイルスによる疾患の治療又は予防方法。
【請求項35】
a)式(II)の化合物と式(III)の化合物の反応、
【化5】

(式中、R、R、X、Y、R及びR10は請求項1で定義した通りである。)
又は、
b)式(IV)の化合物と式(V)の化合物の反応、
【化6】

(式中、R、R、X、Y、R及びR10は請求項10で定義した通りである。)
のいずれかによる、請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物の調製方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−516897(P2008−516897A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534098(P2007−534098)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【国際出願番号】PCT/GB2005/050170
【国際公開番号】WO2006/038039
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(501209427)イステイチユート・デイ・リチエルケ・デイ・ビオロジア・モレコラーレ・ピ・アンジエレツテイ・エツセ・ピー・アー (90)
【Fターム(参考)】