説明

HCl、H2O及びシロキサンを含有する混合物の加工方法

【課題】より耐久性である充填物の存在でHCl、H2O及びシロキサンを含有する混合物を加工する方法。
【解決手段】フッ素化ビニルポリマーからなる充填物の存在で、HCl、H2O及びシロキサンを含有する混合物を加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素化ビニルポリマーからなる充填物の存在でのHCl、H2O及びシロキサンを含有する混合物の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン油又はポリオルガノシロキサンの製造は、ジオルガノジクロロシランの加水分解及び重縮合により製造される環状又は線状のポリジオルガノシロキサン−中間生成物の重合により行われる。加水分解に必要とされる反応水の源としてしばしば塩酸が利用される。加水分解の際に生じる塩化水素はメタノールと反応してクロロメタンに変換され、かつ直接合成方法によるジメチルジクロロシランの合成の際に再び使用される。
【0003】
その際にHCl、H2O及びシロキサンを含有する混合物が生じる。例えば米国特許(US-A)第3493595号明細書及び米国特許(US-A)第5476916号明細書には塩素を含有する環状及び線状のポリジオルガノシロキサンからなる粗水解物を経るα,ω−ジヒドロキシポリジオルガノシロキサンの製造が記載されている。塩素含量を減少させるため及び環状化合物を分離するために、粗水解物は向流で水蒸気で処理される。これは、好都合には充填物で充填された塔中で行われる。この際にセラミック充填物で充填された塔が使用される。前記セラミックはTi、Fe、K、Na、Ca及びMgから選択される金属の随伴酸化物を有するアルミノケイ酸塩からなる。例えばセラミックからなるサドル、ベルル−サドル、ポールリング又は特殊形が使用可能である。
【0004】
前記セラミックが支配的なプロセス条件下に化学的に攻撃されることが判明している。表面近くで前記複合体からとりわけAl及びFeが溶出する。その結果は、アルミノケイ酸塩構造中の材料欠陥及び空洞、割れ及び裂けの形成である。表面特性は変化する。充填物の機械的安定性は低下する。充填物は容易に粉々になる。塔の缶出液と共に、高められた量の分離し難い充填物摩耗物が排出される。塔の分離能力は低下し続ける。充填物は、2〜3年の周期で完全に交換されなければならない。このことは、停止時間及び充填物の新規調達及び廃棄のためのコストを生じさせる。
【0005】
形成されたAl−及びFe−化合物、例えば塩化物、酸塩化物又はヒドロキシクロリドは、溶解された又は懸濁された形でα,ω−ジヒドロキシポリジオルガノシロキサン中に残留する。これらの化合物は縮合触媒として機能し、かつα,ω−ジヒドロキシポリジオルガノシロキサンの望ましくない後縮合を引き起こす。粘度は制御されずに上昇する。分離された水は生成物を混濁させ、かつそれらの貯蔵安定性を妨害する。ポリマーへのさらなる加工は、変動する品質、変動する含水量及び含まれているAl−及びFe−化合物により困難になる。
【特許文献1】米国特許(US-A)第3493595号明細書
【特許文献2】米国特許(US-A)第5476916号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開(DE-A)第19909547号明細書
【特許文献4】米国特許(US-A)第6069220号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
HCl、H2O及びシロキサンを含有する混合物を加工する方法であって、前記充填物がより耐久性である方法を提供するという課題が本発明の基礎となっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の対象は、フッ素化ビニルポリマーからなる充填物の存在でのHCl、H2O及びシロキサンを含有する混合物の加工方法である。
【0008】
フッ素化ビニルポリマーからなる充填物は、HCl、H2O及びシロキサンを含有する混合物の加工の際に支配的である条件下に、化学的、機械的及び熱的に安定である。
【0009】
フッ素化ビニルポリマーは、部分的に又は完全にフッ素化されていてよい。一般式1
−(CR2−CF2n− (1)
[式中、Rは水素又はフルオロを表す]で示される構造単位から構成されているフッ素化ビニルポリマーが好ましい。好ましくはnは少なくとも100、特に少なくとも500の値を有する。ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が特に好ましい。
【0010】
前記充填物の形は任意であってよく、例えば、好ましくは表面積を増大させるために穴のあいている(durchbrochene)内壁及び/又は交差補強材(Querverstrebungen)を有する、リング、スパイラル及びサドルが適している。ポールリングが好ましい。
【0011】
加工される混合物は、HCl、H2O及びシロキサンに加えて別の攻撃的な成分、例えばアルカノール、クロロシラン類及びクロロ炭化水素を含有していてよい。アルカノールとしてメタノール及びエタノールが、クロロ炭化水素としてクロロメタンが、しばしば混合物中に存在している。HCl及びH2Oは、例えば希塩酸として、飽和した塩酸として又は少量のH2Oの存在でのHCl−ガスとして存在していてよい。シロキサンは例えば、反応性基、例えば−OH及びハロゲンを有していてよい線状又は環状のシロキサンとして存在していてよい。好ましくは線状のシロキサンは、部分的にさらにハロゲンを有するα,ω−ジヒドロキシポリジオルガノシロキサンとして存在する。
【0012】
本方法の際に支配的な圧力は、好ましくは0.1〜100barである。本方法は、好ましくは70〜200℃で、特に80〜150℃で運転される。
【0013】
HCl、H2O及びシロキサンを含有する混合物の加工は好ましくは塔中で行われる。加工は好ましくは精製工程、例えば脱酸、シロキサンからのハロゲン化物の除去であるか又は蒸留工程である。
【0014】
好ましい方法は、ポリジメチルシロキサンの製造方法の部分工程であり、前記部分工程の際に、ジメチルジクロロシランを塩酸中に存在している水と反応させて、塩素を含有している環状及び線状のポリジメチルシロキサンとガス状塩化水素とからなる粗水解物へ変換される。
【0015】
特に好ましくは本発明による方法は、
第一工程においてジメチルジクロロシランを塩酸中に存在している水と反応させて、塩素を含有している環状及び線状のポリジメチルシロキサンとガス状塩化水素とからなる粗水解物へ変換し、かつ
第二工程において粗水解物を、塩素含量の低下のために塩酸の形成下に水蒸気で処理し、
その際に第二工程において形成された塩酸を第一工程において使用する
ことによる、ポリジメチルシロキサンのそのような製造方法において使用される。この方法はそれ自体として米国特許(US-A)第5476916号明細書から公知である。第二工程においてフッ素化ビニルポリマーからなる充填物で充填されている塔が使用されることができる。
【0016】
同様に特に好ましくは、本発明による方法は、
第一工程においてジオルガノジクロロシランを塩酸中に存在している水と反応させて、塩素を含有している環状及び線状のポリジオルガノシロキサンとガス状塩化水素とからなる粗水解物に変換し、
第二工程において粗水解物を、塩素含量の低下のために塩酸の形成下に水蒸気で処理し、その際に第二工程において形成された塩酸を第一工程において使用し、
第三工程において低下した塩素含量を有する粗水解物を、塩素含量のさらなる低下のために塩酸及びポリジオルガノシロキサンを含有している酸性水の形成下に水蒸気で処理し、
その際に酸性水を酸不含及び酸含有の水へ分離し、酸含有の水を蒸発させ、かつ得られた酸含有の水蒸気を第二工程において使用する
ことによる、ポリジメチルシロキサンのそのような製造方法において使用される。この方法はそれ自体として独国特許出願公開(DE-A)第19909547号明細書から公知である。第二及び第三工程においてフッ素化ビニルポリマーからなる充填物で充填されている塔が使用されることができる。
【0017】
好ましい別の方法は、シロキサンを含有するHCl−酸性水−アルコール−混合物からのアルコールの回収方法である。ここでは好ましくは、フッ素化ビニルポリマーからなる充填物が使用されることによる蒸留方法である。
【0018】
メタノール及びHClからのクロロメタンの製造の際に生じるHCl−酸性水−アルコール−混合物からメタノールを回収するそのような方法が特に好ましい。
【0019】
アルコキシシランが塩酸で加水分解されることによるプロセスから、アルコール、特にメタノール及びエタノールを回収するそのような方法が同様に特に好ましい。この方法はそれ自体として米国特許(US-A)第6069220号明細書から公知である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化ビニルポリマーからなる充填物の存在で、HCl、H2O及びシロキサンを含有する混合物を加工する方法。
【請求項2】
ビニルポリマーが、一般式1
−(CR2−CF2n− (1)
[式中、Rが水素又はフルオロを表し、かつnは少なくとも100の値を表す]で示される構造単位から構成されている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ビニルポリマーをポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から選択する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
70〜200℃で運転する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
加工が脱酸、シロキサンからのハロゲン化物の除去から選択される精製工程及び蒸留工程である、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。

【公開番号】特開2007−23281(P2007−23281A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−192843(P2006−192843)
【出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】