説明

HIV阻害性5,6−置換ピリミジン

【化1】


が水素;アリール;ホルミル;C1−6アルキルカルボニル;C1−6アルキル;C1−6アルキルオキシカルボニルであり;R、R、R及びRが水素;ヒドロキシ;ハロ;C3−7シクロアルキル;C1−6アルキルオキシ;カルボキシル;C1−6アルキルオキシカルボニル;シアノ;ニトロ;アミノ;モノ−もしくはジ(C1−6アルキル)アミノ;ポリハロC1−6アルキル;ポリハロC1−6アルキルオキシ;−C(=O)R10;場合によりハロ、シアノ又は−C(=O)R10で置換されていることができるC1−6アルキル;場合により置換されていることができるC1−6アルキル、C2−6アルケニル又はC2−6アルキニルであり;R及びRがヒドロキシ;ハロ;C3−7シクロアルキル;C1−6アルキルオキシ;カルボキシル;C1−6アルキルオキシカルボニル;ホルミル;シアノ;ニトロ;アミノ;モノ−もしくはジ(C1−6アルキル)アミノ;ポリハロC1−6アルキル;ポリハロC1−6アルキルオキシ;−C(=O)R10;シアノ;−S(=O)10;−NH−S(=O)10;−NHC(=O)H;−C(=O)NHNH;−NHC(=O)R10;Het;−Y−Het;場合により置換されていることができるC1−6アルキル、C2−6アルケニル又はC2−6アルキニルであり;Rが、両方ともシアノ、アミノカルボニル、モノ−及びジ(C1−6アルキル)アミノカルボニル、アリール、ピリジル、チエニル、フラニル又は1もしくは2個のC1−6アルキルオキシ基で置換されたC2−6アルケニル又はC2−6アルキニル;Het;−C(=O)NR5a5b、−CH(OR5c)R5dであり;Xが−NR−、−O−、−CH−又は−S−である式(I)の化合物;これらの化合物を活性成分として含有する製薬学的組成物ならびに該化合物及び組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)複製阻害性を有する5,6−置換ピリミジン誘導体、その製造及びこれらの化合物を含んでなる製薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
最初、HIV感染の処置はヌクレオシド誘導体を用いるモノテラピーから成り、ウイルス複製の抑制に成功したが、薬剤−耐性株の出現の故に、これらの薬剤は急速にそれらの有効性を失った。速い複製と組み合わされた高い突然変異率が、HIVを抗ウイルス治療に関する特に挑戦的な標的としたことが明らかになった。2種もしくはそれより多い抗−HIV薬の組み合わせ治療の導入は、治療結果を向上させた。HAART(高度に活性な抗−レトロウイルス治療(Highly Active Anti−Retroviral Therapy))の導入により有意な進歩が成され、それは強力且つ持続するウイルス抑制を生じた。HAARTは、典型的にはヌクレオシドもしくはヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(それぞれNRTIs又はNtRTIs)と非−ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTIs)又はプロテアーゼ阻害剤(PI)の組み合わせを含む。抗レトロウイルス治療のための現在の指針は、初期の処置のためにさえ、そのような三重組み合わせ治療管理を薦めた。しかしながら、これらの多剤治療はHIVを完全には除去せず、且つ長期間の処置は通常、多剤耐性を生ずる。耐性ウイルスが新しく感染する個人に持ち越され、これらの薬剤にナイーブな(drug−naive)患者にとって非常に制限された治療の選択肢を生ずることも示された。
【0003】
従って、HIVに対して有効な新しい薬剤の組み合わせに対する継続する必要性がある。化学構造及び活性側面において異なる新しい型の抗−HIV的に有効な活性成分は、新しい型の組み合わせ治療において用途を見出すことができる。従って、そのような活性成分の発見は、達成するのが非常に望ましい目的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、HIV複製阻害性を有する特定の新規な系列のピリミジン誘導体を提供することを目的とする。国際公開第99/50250号パンフレット、国際公開第00/27825号パンフレット、国際公開第01/85700号パンフレット及び国際公開第06/035067号パンフレットは、HIV複製阻害性を有するある種の置換アミノピリミジンを開示している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の化合物は、構造、薬理学的活性及び/又は薬理学的力価において先行技術の化合物と異なる。特定的に置換されたピリミジンの5−位及び6−位におけるある種の置換基の導入は、それらのヒト免疫不全ウイルス(HIV)の複製を阻害する能力により好ましく作用するのみでなく、突然変異株の、特に薬剤−もしくは多剤−耐性HIV株と呼ばれる1種もしくはそれより多い既知のNNRTI薬に耐性になった株の複製を阻害する向上した能力によっても、好ましく作用する化合物を生ずることが見出された。
【0006】
かくして1つの側面ににおいて、本発明は式
【0007】
【化1】

【0008】
[式中:
各Rは独立して水素;アリール;ホルミル;C1−6アルキルカルボニル;C1−6アルキル;C1−6アルキルオキシカルボニルであり;
、R、R及びRは独立して水素;ヒドロキシ;ハロ;C3−7シクロアルキル;C1−6アルキルオキシ;カルボキシル;C1−6アルキルオキシカルボニル;シアノ;ニトロ;アミノ;モノ−もしくはジ(C1−6アルキル)アミノ;ポリハロC1−6アルキル;ポリハロC1−6アルキルオキシ;−C(=O)R10;場合によりハロ、シアノ又は−C(=O)R10で置換されていることができるC1−6アルキル;場合によりハロ、シアノ又は−C(=O)R10で置換されていることができるC2−6アルケニル;場合によりハロ、シアノ又は−C(=O)R10で置換されていることができるC2−6アルキニルであり;
及びRは独立してヒドロキシ;ハロ;C3−7シクロアルキル;C1−6アルキルオキシ;カルボキシル;C1−6アルキルオキシカルボニル;ホルミル;シアノ;ニトロ;アミノ;モノ−もしくはジ(C1−6アルキル)アミノ;ポリハロC1−6アルキル;ポリハロC1−6アルキルオキシ;−C(=O)R10;シアノ;−S(=O)10;−NH−S(=O)10;−NHC(=O)H;−C(=O)NHNH;−NHC(=O)R10;Het;−Y−Het;場合によりハロ、シアノ、アミノ、モノ−もしくはジ(C1−6アルキル)アミノ、−C(=O)−R10、Het又はC1−6アルキルオキシで置換されていることができるC1−6アルキル;場合によりハロ、シアノ、アミノ、モノ−もしくはジ(C1−6アルキル)アミノ、−C(=O)−R10、Het又はC1−6アルキルオキシで置換されていることができるC2−6アルケニル;場合によりハロ、シアノ、アミノ、モノ−もしくはジ(C1−6アルキル)アミノ、−C(=O)−R10、Het又はC1−6アルキルオキシで置換されていることができるC2−6アルキニルであり;
は、両方ともシアノ、アミノカルボニル、モノ−もしくはジ(C1−6アルキル)アミノカルボニル、アリール、ピリジル、チエニル、フラニル又は1もしくは2個のC1−6アルキルオキシ基で置換されたC2−6アルケニル又はC2−6アルキニルであるか;あるいはRはHet;−C(=O)NR5a5b又は−CH(OR5c)R5dであり;ここで
5aはC1−6アルキルオキシ;C2−6アルケニル;C3−7シクロアルキル;又はヒドロキシ、アミノ、モノ−もしくはジ(C1−6アルキル)アミノ、C1−6アルキルカルボニルアミノ、ハロ、シアノ、アリール、ピリジル、チエニル、フラニル、テトラヒドロフラニル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、場合によりC1−6アルキル、C1−6アルキルカルボニル又はヒドロキシC1−6アルキルで置換されていることができるピペラジニルで置換されたC1−6アルキルであるか;あるいはR5aは1もしくは2個のC1−6アルキルオキシで置換されたC1−6アルキルであり;
5bは水素又はC1−6アルキルであるか;あるいは
5a及びR5bは、それらが置換する窒素原子と一緒になって、ピロリジニル;場合
によりアミノカルボニル、ヒドロキシ又はC1−6アルキルオキシで置換されていることができるピペリジニル;モルホリニル;ピペラジニル;場合によりC1−6アルキル、C1−6アルキルカルボニル又はヒドロキシC1−6アルキルで置換されていることができるピペラジニルを形成し;
5cは水素、C1−6アルキル、Hetであり;
5dはC1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、アリール又はHetであり;
はC1−6アルキルオキシC1−6アルキルであり;
各R10は独立してC1−6アルキル、アミノ、モノ−もしくはジ(C1−6アルキル)アミノ又はポリハロC1−6アルキルであり;
Xは−NR−、−O−、−CH−又は−S−であり;
各rは独立して1又は2であり;
各Hetは独立して、ピリジル、チエニル、フラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、キノリニル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニルであり;これらはそれぞれ場合によりC1−6アルキル、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1−6アルキルオキシならびにハロ、ヒドロキシ又はシアノで置換されたC2−6アルケニルからそれぞれ独立して選ばれる1もしくは2個の置換基で置換されていることができ;
各アリールは独立してフェニルあるいはハロ、ヒドロキシ、メルカプト、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、ヒドロキシC1−6アルキル、アミノC1−6アルキル、モノもしくはジ(C1−6アルキル)アミノC1−6アルキル、C1−6アルキルカルボニル、C3−7シクロアルキル、C1−6アルキルオキシ、フェニルC1−6アルキルオキシ、C1−6アルキルオキシカルボニル、アミノスルホニル、C1−6アルキルチオ、C1−6アルキルスルホニル、シアノ、ニトロ、ポリハロC1−6アルキル、ポリハロC1−6アルキルオキシ、アミノカルボニル、フェニル、Het又は−Y−Hetからそれぞれ独立して選ばれる1、2、3、4又は5個の置換基で置換されたフェニルである]
の化合物、その製薬学的に許容され得る付加塩、製薬学的に許容され得る溶媒和物及び立体化学的異性体に関する。
【0009】
前記又は下記で用いられる場合、基として又は基の一部としてのC1−4アルキルは、1〜4個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、2−メチル−プロピル、t.ブチルを定義し;基として又は基の一部としてのC1−6アルキルは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基、例えばC1−4アルキルに関して定義された基及び1−ペンチル、2−ペンチル、1−ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、2−メチルブチル、3−メチルペンチルなどを定義し;C1−2アルキルはメチル又はエチルを定義し;C3−7シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルの総称である。C1−6アルキルの中で好ましいのはC1−4アルキル又はC1−2アルキルである。C3−7シクロアルキルの中で好ましいのはシクロペンチル又はシクロヘキシルである。
【0010】
基として又は基の一部としての「C2−6アルケニル」という用語は、飽和炭素−炭素結合及び少なくとも1個の二重結合を有し、且つ2〜6個の炭素原子を有する直鎖状及び分枝鎖状炭化水素基、例えばエテニル(又はビニル)、1−プロペニル、2−プロペニル(又はアリル)、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−メチル−2−プロペニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、2−メチル−1−ブテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、2−メチル−2−ペンテニル、1,2−ジメチル−1−ブテニルなどを定義する。好ましいのは、1個の二重結合を有するC2−6アルケニルである。C2−6アルケニル基の中で興味深いのは、
2−4アルケニル基である。「C3−6アルケニル」という用語はC2−6アルケニルと同様であるが、3〜6個の炭素原子を有する不飽和炭化水素基に限られる。C3−6アルケニルがヘテロ原子に結合する場合、へテロ原子に結合する炭素原子は好ましくは(by preference)飽和している。これは例えばヒドロキシで置換されたC3−6アルケニルに関する場合であり、この場合ヒドロキシは、好ましくは二重結合している炭素原子上にない。
【0011】
基として又は基の一部としての「C2−6アルキニル」という用語は、飽和炭素−炭素結合及び少なくとも1個の三重結合を有し、且つ2〜6個の炭素原子を有する直鎖状及び分枝鎖状炭化水素基、例えばエチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、2−メチル−2−プロピニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、2−メチル−2−ブチニル、2−メチル−2−ペンチニルなどを定義する。好ましいのは、1個の三重結合を有するC2−6アルキニルである。C2−6アルキニル基の中で興味深いのは、C2−4アルキニル基である。「C3−6アルキニル」という用語はC2−6アルキニルと同様であるが、3〜6個の炭素原子を有する少なくとも1個の三重結合を持つ不飽和炭化水素基に限られる。C3−6アルキニルがヘテロ原子に結合する場合、へテロ原子に結合する炭素原子は好ましくは飽和している。これは例えばヒドロキシで置換されたC3−6アルキニルに関する場合であり、この場合ヒドロキシは、好ましくは三重結合している炭素原子上にない。
【0012】
本明細書前記で用いられた(=O)という用語は、炭素原子に結合する場合にはカルボニル部分、硫黄原子に結合する場合にはスルホキシド部分及び2個の該用語が硫黄原子に結合する場合にはスルホニル部分を指す。
【0013】
カルボキシル、カルボキシ又はヒドロキシカルボニルという用語は、基−COOHを指す。
【0014】
「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードの総称である。
【0015】
基又は基の一部としての、例えばポリハロC1−6アルコキシにおける「ポリハロC1−6アルキル」という用語は、モノ−もしくはポリハロ置換されたC1−6アルキル、特に最高で1、2、3、4、5、6又はそれより多くのハロ原子で置換されたC1−6アルキル、例えば1個もしくはそれより多いフルオロ原子を有するメチル又はエチル、例えばジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロ−エチルとして定義される。好ましいのはトリフルオロメチルである。ペルフルオロC1−6アルキル基も含まれ、それはすべての水素原子がフルオロ原子により置き換えられたC1−6アルキル基、例えばペンタフルオロエチルである。ポリハロC1−6アルキルの定義内で、1個より多いハロゲン原子がアルキル基に結合している場合、ハロゲン原子は同じか又は異なることができる。
【0016】
Hetの定義内で挙げられる複素環のいずれも、異性体を含むものとし、例えばオキサジアゾールは1,2,4−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール又は1,2,3−オキサジアゾールであることができ;チアジアゾールの場合も同様であり、それは1,2,4−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール又は1,2,3−チアジアゾールであることができ;類似して、ピロールは1H−ピロール又は2H−ピロールであることができる。基Hetはオキサゾリル又はチアゾリルであることができ、それは、好ましくはそれぞれ1,3−オキサゾリル又は1,3−チアゾリルである。
【0017】
いずれのピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、ピペラジニルも、特にピペラジニルは、その窒素原子を介して分子の残りの部分を置換している。例えばC1−6アルキ
ル、C1−6アルキルカルボニル又はヒドロキシC1−6アルキルで置換されたいずれのピペラジニルも、好ましくは、それを介してピペラジンが分子の残りの部分に連結しているのではない窒素において置換されている(多くの場合に4−窒素)。
【0018】
1つの態様において、各Hetは独立してピリジル、チエニル、フラニル、オキサゾリル又はチアゾリルである。
【0019】
式(I)の化合物の定義において、又は本明細書で規定されるサブグループのいずれかにおいて、基が存在する場合は常に、該基は独立して式(I)の化合物の定義において上記に、あるいは下記に規定されるさらに制限された定義において規定される通りである。
【0020】
定義内で用いられるいずれの分子部分の上の基の位置も、そのような部分が化学的に安定である限り、その上のいずれであることもできることにも注目しなければならない。例えばピリジンは2−ピリジン、3−ピリジン及び4−ピリジンを含み;ペンチルは1−ペンチル、2−ペンチル及び3−ペンチルを含む。
【0021】
いずれかの可変項(例えばハロゲン、C1−4アルキル、アリール、Hetなど)がいずれかの部分中に1回より多く存在する場合、それぞれの定義は独立している。本明細書で規定される基の制限された定義は、式(I)の化合物の基ならびに本明細書で定義されるか又は言及されるいずれかのサブグループに適用可能であるものとする。置換基から環系内に引かれる線は、結合が適した環原子のいずれに連結していても良いことを示す。
【0022】
本発明の化合物が形成することができる製薬学的に許容され得る付加塩の形態は、適した酸、例えば無機酸、例えばハロゲン化水素酸、例えば塩酸もしくは臭化水素酸、硫酸、ヘミ硫酸、硝酸、リン酸などの酸;あるいは有機酸、例えば酢酸、アスパラギン酸、ドデシル−硫酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ニコチン酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクラミン酸、サリチル酸、p−アミノ−サリチル酸、パモ酸などの酸を用いて簡単に製造され得る。逆に、適した塩基を用いる処理により、該酸付加塩の形態を遊離の塩基の形態に転換することができる。
【0023】
酸性プロトンを含有する式(I)の化合物を、適した有機及び無機塩基を用いる処理により、それらの製薬学的に許容され得る金属もしくはアミン付加塩の形態に転換することができる。適した塩基塩の形態は、例えばアンモニウム塩、アルカリ及びアルカリ土類金属塩、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム塩など、有機塩基、例えば第1級、第2級及び第3級脂肪族及び芳香族アミン、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、4つのブチルアミン異性体、ジメチル−アミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、キヌクリジン、ピリジン、キノリン及びイソキノリン、ベンザチン、N−メチル−D−グルカミン、2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオールとの塩、ヒドラバミン塩、ならびに例えばアルギニン、リシンなどのようなアミノ酸との塩を含む。逆に、酸を用いる処理により、塩の形態を遊離の酸の形態に転換することができる。
【0024】
「製薬学的に許容され得る溶媒和物」という用語は、その立体異性体を含む式(I)の化合物が形成することができる水和物及び溶媒付加形態を含むものとする。そのような溶媒和物の例は、例えば水和物、アルコラート、例えばメタノラート、エタノラート、i.プロパノラート、n.プロパノラートなどである。
【0025】
式(I)の化合物は、1個もしくはそれより多いキラリティーの中心を含有し得、立体化学的異性体として存在し得る。特に興味深いのは、立体化学的に純粋な式(I)の化合物である。本明細書で用いられる「立体化学的異性体」という用語は、式(I)の化合物、その製薬学的に許容され得る付加塩及びその製薬学的に許容され得る溶媒和物のすべての可能な立体異性体を定義する。他にことわるか又は指示しなければ、化合物の化学的名称は、基本的分子構造のすべてのジアステレオマー及び/又はエナンチオマーを含有するすべての可能な立体化学的異性体の混合物ならびに実質的に他方の異性体を含まない、すなわち10%未満、好ましくは5%未満、特に2%未満、そして最も好ましくは1%未満の他方の異性体を伴う式(I)の個々の異性体のそれぞれ、その製薬学的に許容され得る付加塩及びその製薬学的に許容され得る溶媒和物を示す。かくして式(I)の化合物が例えば(E)と規定される場合、これは化合物が実質的に(Z)異性体を含まないことを意味する。特に、ステレオジェン中心はR−又はS−立体配置を有することができ;2価環状(部分的)飽和基上の置換基は、シス−又はトランス−立体配置を有することができる。
【0026】
二重結合を有する化合物は、該二重結合においてE(反対側)又はZ(同じ側)−立体化学を有することができる。シス、トランス、R、S、E及びZという用語は、当該技術分野における熟練者に周知である。
【0027】
式(I)の化合物のいくつかは、それらの互変異性体において存在することもできる。そのような形態は、上記の式において明らかに示されてはいないが、本発明の範囲内に含まれることが意図されている。
【0028】
本発明は、本発明の化合物中に存在する原子のいずれの同位体も含むことが意図されている。例えば水素の同位体にはトリチウム及びジューテリウムが含まれ、炭素の同位体にはC−13及びC−14が含まれる。
【0029】
上記又は下記で用いられる場合は常に、「式(I)の化合物」、「本化合物」、「本発明の化合物」という用語又はいずれかの同等の用語ならびに類似して「式(I)の化合物のサブグループ」、「本化合物のサブグループ」、「本発明の化合物のサブグループ」という用語又はいずれかの同等の用語は、一般式(I)の化合物又は式(I)の化合物のサブグループならびにそれらの塩、溶媒和物及び立体異性体を含むものとする。
【0030】
上記又は下記で、例えばR及びR5dの場合のように、置換基を定義のリストからそれぞれ独立して選ぶことができると言及される場合は常に、化学的に可能であるか又は標準的な製薬学的方法でそれらを処理することができるような化学的安定性の分子に導くいずれの可能な組み合わせも含まれることが意図されている。
【0031】
本発明の1つの態様は、式
【0032】
【化2】

【0033】
[式中、X、R、R、R、R、R、R及びRは上記で定義された通りである]
の化合物、その製薬学的に許容され得る付加塩、製薬学的に許容され得る溶媒和物及び立体化学的異性体に関する。
【0034】
1つの態様において、式(I)又は(I−a)の化合物中のRは、それぞれシアノで置換されたC1−6アルキル、C2−6アルケニル又はC1−6アルキニルである。他の態様において、式(I)又は(I−a)の化合物中のRは、それぞれシアノで置換されたCアルキル、Cアルケニル又はCアルキニルであり;ここでシアノは特にフェニル基に連結していない炭素原子において置換している。後者の場合、Rを基−A−CNにより示すことができ、ここでAは−CH−CH−、−CH=CH−又は−C≡C−である。
【0035】
式(I)又は(I−a)の化合物の特定のサブグループは、
(a)Rが−CH−CH−CN又は−CH=CH−CNであるか;あるいは(b)Rが−CH=CH−CNである
本明細書で規定される式(I)又は(I−a)の化合物のいずれかのサブグループである。
【0036】
特に興味深いのは、Rが、Rの定義に関連して上記で規定されたC2−6アルケニル置換基のいずれかで置換された−CH=CH−であるか、あるいはRが特に−CH=CH−CNであり、且つ−CH=CH−部分上の置換基がE−立体配置にある(すなわちいわゆる‘E’−異性体)本明細書で定義される式(I)の、あるいはそのサブグループのいずれかの化合物である。特別に興味深いのは、Rが(E)−CH=CH−CNである本明細書で定義される式(I)の、あるいはそのサブグループのいずれかの化合物である。
【0037】
本発明の態様は、Rが水素である式(I)の化合物又は式(I)の化合物のサブグループのいずれかである。
【0038】
本発明のさらに別の態様は、
(a)R、R、R及びRが独立して水素;ヒドロキシ;ハロ;C1−6アルキル;C3−7シクロアルキル;C1−6アルキルオキシ;カルボキシル;C1−6アルキルオキシカルボニル;シアノ;ニトロ;アミノ;モノ−もしくはジ(C1−6アルキル)アミノ;ポリハロC1−6アルキル;ポリハロC1−6アルキルオキシ;−C(=O)R10であるか;
(b)R、R、R及びRが独立して水素;ヒドロキシ;ハロ;C1−6アルキル;C1−6アルキルオキシ;カルボキシル;C1−6アルキルオキシカルボニル;シアノ
;ニトロ;アミノ;モノ−もしくはジ(C1−6アルキル)アミノ;ポリハロC1−6アルキル;−C(=O)R10であるか;
(c)R、R、R及びRが独立して水素;ヒドロキシ;ハロ;C1−6アルキル;C1−6アルキルオキシ;シアノ;アミノ;モノ−もしくはジ(C1−6アルキル)アミノ;ポリハロC1−6アルキルであるか;
(d)R、R、R及びRが独立して水素;ハロ;C1−6アルキル;シアノであるか;
(e)R及びRが水素であり、そしてR及びRが独立して水素;ハロ;シアノである
式(I)の化合物又は式(I)の化合物のサブグループのいずれかである。
【0039】
本発明の態様は、
(a)R及びRが独立してハロ;カルボキシル;C1−6アルキルオキシカルボニル;シアノ;−C(=O)R10;Het;−Y−Het;場合によりシアノ、−C(=O)−R10、Hetで置換されていることができるC1−6アルキル;場合によりシアノ、−C(=O)−R10、Hetで置換されていることができるC2−6アルケニルであり;且つここで各Hetが特に、場合によりハロ、C1−6アルキル、シアノで置換されていることができるチエニル、フラニル、オキサゾリル、チアゾリルから独立して選ばれるか;あるいは
(b)R及びRが独立してシアノ;−C(=O)R10;Het;場合によりシアノ、−C(=O)−R10、Hetで置換されていることができるC1−6アルキル;場合によりシアノ、−C(=O)−R10、Hetで置換されていることができるC2−6アルケニルであり;且つここで各Hetが特に独立して、それぞれ場合によりシアノ、−C(=O)−R10で置換されていることができるチエニル又はフラニルであるか;あるいは
(c)R及びRが独立してシアノ;シアノで置換されたC1−6アルキル;シアノで置換されたC2−6アルケニルであるか;あるいは
(d)Rがシアノであり;Rがシアノで置換されたC2−6アルケニルである
式(I)の化合物又は式(I)の化合物のサブグループのいずれかである。
【0040】
本発明の態様は、
(a)Rが、両方ともシアノ、アミノカルボニル、モノ−及びジ(C1−6アルキル)アミノカルボニル、アリール、ピリジル又は1もしくは2個のC1−6アルキルオキシ基で置換されたC2−6アルケニル又はC2−6アルキニル;Het;−C(=O)NR5a5b;−CH(OR5c)R5dであり;ここで
5aはC1−6アルキルオキシ;C2−6アルケニル;C3−7シクロアルキル;又はモノ−及びジ(C1−6アルキル)アミノ、C1−6アルキルカルボニルアミノ、シアノ、アリール、ピリジル、チエニル、テトラヒドロフラニル、モルホリニル、ピペラジニル、場合によりC1−6アルキル又はヒドロキシC1−6アルキルで置換されていることができるピペラジニルで置換されたC1−6アルキルであるか;あるいはR5aは1もしくは2個のC1−6アルキルオキシで置換されたC1−6アルキルであり;
5bは水素又はC1−6アルキルであるか;あるいは
5a及びR5bは、それらが置換する窒素原子と一緒になって、場合によりアミノカルボニル又はヒドロキシで置換されていることができるピペリジニル;場合によりC1−6アルキル又はヒドロキシC1−6アルキルで置換されていることができるピペラジニルを形成し;
5cは水素であり;
5dはC1−6アルキル、C2−6アルケニル、アリール、ピリジル又はチアゾリルであるか;あるいは
(b)Rが、シアノ、アミノカルボニル、モノ−及びジ(C1−6アルキル)アミノカ
ルボニル、アリール又は1もしくは2個のC1−6アルキルオキシ基で置換されたC2−6アルケニル;又はピリジル又は1もしくは2個のC1−6アルキルオキシ基で置換されたC2−6アルキニルであるか;あるいはRが−C(=O)NR5a5b;−CH(OR5c)R5dであり;ここで
5aはC1−6アルキルオキシ;C2−6アルケニル;C3−7シクロアルキル;又はモノ−及びジ(C1−6アルキル)アミノ、C1−6アルキルカルボニルアミノ、シアノ、アリール、ピリジル、チエニル、テトラヒドロフラニル、モルホリニル、ピペラジニル、場合によりC1−6アルキル又はヒドロキシC1−6アルキルで置換されていることができるピペラジニルで置換されたC1−6アルキルであるか;あるいはR5aは1もしくは2個のC1−6アルキルオキシで置換されたC1−6アルキルであり;
5bは水素又はC1−6アルキルであるか;あるいは
5a及びR5bは、それらが置換する窒素原子と一緒になって、場合によりアミノカルボニル又はヒドロキシで置換されていることができるピペリジニル;4−C1−6アルキル−ピペラジニル;又は4−(ヒドロキシC1−6アルキル)−ピペラジニルを形成し;
5cは水素であり;
5dはC1−6アルキル、C2−6アルケニル又はチアゾリルである
式(I)の化合物又は式(I)の化合物のサブグループのいずれかである。
【0041】
本発明の態様は、Rがメトキシメチルである式(I)の化合物又は式(I)の化合物のサブグループのいずれかである。
【0042】
本発明の態様は、各R10が独立してC1−6アルキル、アミノ、モノ−もしくはジ(C1−6アルキル)アミノである式(I)の化合物又は式(I)の化合物のサブグループのいずれかである。
【0043】
本発明の態様は、
(a)Xが−NR−、−O−であるか;あるいは
(b)Xが−NR−であるか;あるいは
(c)Xが−N(C1−6アルキル)−であるか;あるいは
(d)Xが−NH−であるか;あるいは
(e)Xが−NH−又は−O−である
式(I)の化合物又は式(I)の化合物のサブグループのいずれかである。
【0044】
本発明の態様は、各rが2である式(I)の化合物又は式(I)の化合物のサブグループのいずれかである。
【0045】
本発明の態様は、
(a)各Hetが独立して、ピリジル、チエニル、フラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、キノリニル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニルであり;それらはそれぞれ場合によりC1−6アルキル、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1−6アルキルオキシならびにハロ、ヒドロキシ又はシアノで置換されたC2−6アルケニルからそれぞれ独立して選ばれる1もしくは2個の置換基で置換されていることができるか;
(b)各Hetが独立して、ピリジル、チエニル、フラニル、オキサゾリル、チアゾリルであり;それらはそれぞれ場合によりC1−6アルキル、ハロで置換されていることができるか;
(c)各Hetが独立して、ピリジル、チエニル、フラニル、オキサゾリル、チアゾリルであるか;あるいは
(d)各Hetが独立して、ピリジル、チエニル、フラニルである
式(I)の化合物又は式(I)の化合物のサブグループのいずれかである。
【0046】
本発明の態様は、各アリールが独立してフェニルあるいは上記で挙げた置換基から、又は特に:
(a)ハロ、ヒドロキシ、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、ヒドロキシC1−6アルキル、アミノC1−6アルキル、モノもしくはジ(C1−6アルキル)アミノC1−6アルキル、C1−6アルキルカルボニル、C3−7シクロアルキル、C1−6アルキルオキシ、フェニルC1−6アルキルオキシ、C1−6アルキルオキシカルボニル、アミノスルホニル、C1−6アルキルスルホニル、シアノ、ニトロ、ポリハロC1−6アルキル、ポリハロC1−6アルキルオキシ、アミノカルボニル、フェニル、Het又は−Y−Het;あるいは
(b)ハロ、ヒドロキシ、C1−6アルキル、ヒドロキシC1−6アルキル、アミノC1−6アルキル、モノもしくはジ(C1−6アルキル)アミノC1−6アルキル、C1−6アルキルオキシ、フェニルC1−6アルキルオキシ、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキルスルホニル、シアノ、ポリハロC1−6アルキル、アミノカルボニル;
(c)ハロ、ヒドロキシ、C1−6アルキル、ヒドロキシC1−6アルキル、アミノC1−6アルキル、C1−6アルキルオキシ、C1−6アルキルスルホニル、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル;
(d)ハロ、ヒドロキシ、C1−6アルキル、C1−6アルキルオキシ、C1−6アルキルスルホニル、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル
からそれぞれ独立して選ばれる1、2又は3個の置換基で置換されたフェニルである
式(I)の化合物又は式(I)の化合物のサブグループのいずれかである。
【0047】
式(I)又は(I−a)の化合物の特定のサブグループは、以下の制限の1つ、いくつか又はすべてが当てはまるものである:
(a)Rは水素である;
(b−1)R、R、R及びRは独立して水素;ハロ;C1−6アルキル;シアノであるか;あるいは
(b−2)R及びRは水素であり、R及びRは独立して水素;ハロ;シアノである;
(c−1)R及びRは独立してシアノ;シアノで置換されたC1−6アルキル;シアノで置換されたC2−6アルケニルであるか;あるいは
(c−2)Rはシアノであり;Rはシアノで置換されたC2−6アルケニルである。(d−1)Xは−NR−、−O−であるか;あるいは(d−2)Xは−NH−である;(e−1)Rは、両方ともシアノ、アミノカルボニル、モノ−及びジ(C1−6アルキル)アミノカルボニル、アリール、ピリジル又は1もしくは2個のC1−6アルキルオキシ基で置換されたC2−6アルケニル又はC2−6アルキニル;Het;−C(=O)NR5a5b;−CH(OR5c)R5dであり;ここで
5aはC1−6アルキルオキシ;C2−6アルケニル;C3−7シクロアルキル;又はモノ−及びジ(C1−6アルキル)アミノ、C1−6アルキルカルボニルアミノ、シアノ、アリール、ピリジル、チエニル、テトラヒドロフラニル、モルホリニル、ピペラジニル、場合によりC1−6アルキル又はヒドロキシC1−6アルキルで置換されていることができるピペラジニルで置換されたC1−6アルキルであるか;あるいはR5aは1もしくは2個のC1−6アルキルオキシで置換されたC1−6アルキルであり;
5bは水素又はC1−6アルキルであるか;あるいは
5a及びR5bは、それらが置換する窒素原子と一緒になって、場合によりアミノカルボニル又はヒドロキシで置換されていることができるピペリジニル;場合によりC1−6アルキル又はヒドロキシC1−6アルキルで置換されていることができるピペラジニルを形成し;
5cは水素であり;
5dはC1−6アルキル、C2−6アルケニル、アリール、ピリジル又はチアゾリルである;
(e−2)Rは、シアノ、アミノカルボニル、モノ−及びジ(C1−6アルキル)アミノカルボニル、アリール又は1もしくは2個のC1−6アルキルオキシ基で置換されたC2−6アルケニル;又はピリジル又は1もしくは2個のC1−6アルキルオキシ基で置換されたC2−6アルキニルであるか;あるいはRは−C(=O)NR5a5b;−CH(OR5c)R5dであり;ここで
5aはC1−6アルキルオキシ;C2−6アルケニル;C3−7シクロアルキル;又はモノ−及びジ(C1−6アルキル)アミノ、C1−6アルキルカルボニルアミノ、シアノ、アリール、ピリジル、チエニル、テトラヒドロフラニル、モルホリニル、ピペラジニル、場合によりC1−6アルキル又はヒドロキシC1−6アルキルで置換されていることができるピペラジニルで置換されたC1−6アルキルであるか;あるいはR5aは1もしくは2個のC1−6アルキルオキシで置換されたC1−6アルキルであり;
5bは水素又はC1−6アルキルであるか;あるいは
5a及びR5bは、それらが置換する窒素原子と一緒になって、場合によりアミノカルボニル又はヒドロキシで置換されていることができるピペリジニル;4−C1−6アルキル−ピペラジニル;又は4−(ヒドロキシC1−6アルキル)−ピペラジニルを形成し;
5cは水素であり;
5dはC1−6アルキル、C2−6アルケニル又はチアゾリルである;
(f)各アリールは独立してフェニル又は
(f−1)ハロ、ヒドロキシ、C1−6アルキル、ヒドロキシC1−6アルキル、アミノC1−6アルキル、モノもしくはジ(C1−6アルキル)アミノC1−6アルキル、C1−6アルキルカルボニル、C3−7シクロアルキル、C1−6アルキルオキシ、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキルスルホニル、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、アミノカルボニル;
(f−2)ハロ、ヒドロキシ、C1−6アルキル、ヒドロキシC1−6アルキル、アミノC1−6アルキル、モノもしくはジ(C1−6アルキル)−アミノC1−6アルキル、C1−6アルキルオキシ、フェニルC1−6アルキルオキシ、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキルスルホニル、シアノ、ポリハロC1−6アルキル、アミノカルボニル;
(f−3)ハロ、ヒドロキシ、C1−6アルキル、ヒドロキシC1−6アルキル、アミノC1−6アルキル、C1−6アルキルオキシ、C1−6アルキルスルホニル、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル;
(f−4)ハロ、ヒドロキシ、C1−6アルキル、C1−6アルキルオキシ、C1−6アルキルスルホニル、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル
からそれぞれ独立して選ばれる1、2又は3個の置換基で置換されたフェニルである。
【0048】
Wが適した離脱基、例えばハロゲン、例えばクロロ、ブロモ又はトシル、メシルなどの基を示す式(II)の中間体を、式(III)の中間体と反応させることにより、式(I)の化合物を製造することができる。
【0049】
【化3】

【0050】
(II)と(III)の反応は通常、適した溶媒の存在下で行なわれる。適した溶媒は、例えばアルコール、例えばエタノール、2−プロパノール;双極性非プロトン性溶媒、例えばアセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチル−アセトアミド、1−メチル−2−ピロリジノン;エーテル、例えばテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルである。ある量の(amounts
of)例えばショウノウスルホン酸のような適した酸を加えることにより、又は酸性溶媒、例えば1−もしくは2−プロパノールのようなアルカノール中に溶解された塩酸を用いることにより得られる酸性条件下で、反応を行なうことができる。
【0051】
以下のスキームにおいて概述される通り、(IV−a)を(V−a)と、あるいは(IV−b)を(V−b)と反応させることにより、X結合を形成することによっても式(I)の化合物を製造することができる。
【0052】
【化4】

【0053】
この反応スキームにおいて、Wは適した離脱基を示し、それは特に上記で規定された通りである。(V−a)中の離脱基Wをその場で、例えば対応するヒドロキシ官能基を例えばPOClにより離脱基に転換することによって、導入することもできる。Xは−NR−、−O−、−S−を示す。XがNRである場合、上記の反応は、好ましくは第3級アミン塩基、例えばトリエチルアミンの存在下で行なわれる。XがO又はSを示す
場合、上記の反応は、例えばKCO又はカリウムt−ブトキシド(KOt−Bu)のような塩基の存在下で行なわれる。
【0054】
が基Hetである式(I)の化合物は式(I−b)により示され、Suzuki反応により、すなわちパラジウム触媒、特にPd(PPhの存在下で6−ハロピリミジン誘導体(VI)をヘテロシクリルホウ酸Het−B(OH)又はヘテロシクリルホウ酸エステル(特にメチルもしくはエチルエステルのようなアルキルエステル)と反応させることにより製造され得る。
【0055】
【化5】

【0056】
はハロ(例えばI、Br又はCl)又は擬ハロ基(例えばトリフレート)である。
【0057】
が基−C(=O)NR5a5bである式(I)の化合物は式(I−c)により示され、アミド結合形成反応においてカルボン酸又はその活性形態(VII)をアミン(VIII)と反応させることにより、製造され得る。
【0058】
【化6】

【0059】
アミド結合形成反応は、カップリング剤の存在下で出発材料を反応させることにより、あるいは(VII)中のカルボキシル基を活性化形態、例えばカルボン酸ハライド、例えば酸クロリド又はブロミド、カルボン酸アジド、混合炭酸−カルボン酸無水物(例えばクロロギ酸イソブチルとの反応により)、活性エステル(p−ニトロフェニルエステル、ペンタクロロフェニルエステル、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)に転換することにより、行なうことができる。アミン(VIII)をカルボン酸低級アルキルエステル、特にメチル又はエチルエステルと反応させることもできる。カップリング剤の例にはカルボジイミド(ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド又は水溶性カルボジイミド、例えばN−エチル−N’−[(3−ジメチルアミノ)プロピル]カルボジイミド)又はカルボニルジイミダゾールが含まれる。適した触媒の添加により、例え
ばカルボジイミド法において1−ヒドロキシベンゾトリアゾール又は4−ジメチルアミノピリジン(4−DMAP)の添加により、これらの方法のいくつかを強化することができる。
【0060】
アミド結合形成反応は、好ましくは不活性溶媒中で、例えばハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン、クロロホルム、双極性非プロトン性溶媒、例えばアセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、エーテル、例えばテトラヒドロフラン中で行なわれる。多くの場合カップリング反応は、第3級アミン、例えばトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、N−メチルモルホリン、N−メチルピロリジン又は4−DMAPのような適した塩基の存在下で行なわれる。
【0061】
が−CH−NR5e5fである式(I)の化合物は式(I−d)により示され、アルデヒド(IX)とアミン(XI)から出発する還元的アミノ化反応により製造され得る。還元的アミノ化は、Pt又はPdのような貴金属触媒の存在下で水素を用いて、あるいはシアノボロハイドライドを用いて行なうことができる。これらの化合物を、Wが上記で規定された通りであり、特にクロロ又はブロモである中間体(X)とアミン(XI)から出発するN−アルキル化反応により製造することもできる。
【0062】
【化7】

【0063】
が−CH(OR5c)R5dである式(I)の化合物である式(I−f)の化合物は、式(XII)のピリミジンアルデヒドを有機−金属化合物(M−R5d)と反応させることにより、製造することができる。かくして得られる式(I−e)の化合物を、R5cが水素以外である対応する化合物である対応する式(I−f)の化合物に転換することができる。試薬W−R5cを用いるO−アルキル化反応のようなエーテル形成反応により、基R5cを導入することができ、ここでWはハロ、特にクロロ、ブロモ又はヨードあるいはサルフェート又はアジド基のような離脱基である。M−R5d中のMは、アルカリ金属のような金属、特にLi、Na又はKあるいはグリニヤル型の試薬のようなマグネシウム誘導体(M−Rはハロ−Mg−Rである)である。これらの反応は、典型的に
はエーテル(テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン)又はハロゲン化炭化水素(CHCl、CHCl)のような反応に不活性な溶媒中で行なわれる。
【0064】
【化8】

【0065】
がR5eであり、R5eは置換されたC2−6アルケニル又はC2−6アルキニルである式(I)の化合物である式(I−g)の化合物は、上記で規定された通りである中間体(VI)を有機金属又は有機ホウ酸アルケン又はアルキン(organoboric
alkene or alkyne)誘導体R5e−Mと反応させることにより、製造することができる。Mがボロン酸又はボロン酸エステルを示す場合、この反応はSuzuki型の反応である。Mがトリアルキルスタンナン、特にトリブチルスタンナンである場合、この反応はStille反応である。用いられ得る他の型の反応はHeck反応であり、その反応ではアルケンをパラジウム触媒の存在下で(VI)と反応させる。用いられ得る他のヘテロアリールハライドのPd−触媒交差カップリングは、Kumadaカップリング、Hiyamaカップリング及びSonogashiraカップリングである。
【0066】
【化9】

【0067】
中間体及び出発材料のいくつかは既知の化合物であり、商業的に入手可能であるか、又は当該技術分野において既知の方法に従って製造され得る。
【0068】
式(II)の中間体は、各Wが上記で定義された通りである式(XIII)の中間体を、例えばテトラヒドロフランのような適した溶媒中で、通常例えばNaCOのような適した塩基の存在下に、式(XIV)の中間体と反応させることにより、製造することができる。以下のスキーム中のXは、−NR−、−O−又は−S−を示す。
【0069】
【化10】

【0070】
中間体(V−a)及び(V−b)は、以下の通りに製造することができる:
【0071】
【化11】

【0072】
ピリミジン誘導体(XV)、例えば2,4−ジクロロピリミジンをアニリン誘導体(XVI)と反応させて(V−a)を与えるか、あるいは類似してピリミジン誘導体(XVII)を(XVI)と反応させて(V−b)を与える。好ましくは、(XVI)中のX基は、例えばXがアミンである場合にはアセチル、ブチルオキシカルボニル又はベンジル基により、あるいはXがOである場合にはメチル、ベンジル又はt.Bu基により、保護される。(XVI)との反応の後、保護基は除去され、(V−b)が得られる。(XV)又は(XVII)と(XVI)との反応は反応に不活性な溶媒中で、通常塩基の存在下において行なわれる。
【0073】
下記で(VI−a)により示されるXがNHである式(VI)の中間体は、以下のスキ
ームにおける通りに製造することができる:
【0074】
【化12】

【0075】
第1段階に、アリールグアニジン(XVIII)をアセト酢酸(XIX)と、例えば4−メトキシアセト酢酸と縮合させる。かくして得られるヒドロキシピリミジン(XX)を、POClのようなハロゲン化剤を用いて対応するハロピリミジン(XXI)に転換する。ハロ基をアニリン誘導体(XXII)により置き換え、ピリミジン誘導体(XXIII)とする。後者をハロゲン化して中間体(VI)を与える。(XXIII)のハロゲン化を、塩化ヨウ素(ICl)を用いて行なうことができ、その場合、(VI−a)中のWはヨードである。XがNH以外のNRである式(VI)の中間体は、(VI−a)又はその前駆体の1つのアルキル化又はアシル化を介して得ることができる。(XXI)とアニリン(XXII)のフェノール又はメルカプト類似体の反応は、XがO又はSである中間体(VI−a)の類似体を与える。
【0076】
中間体(VI−a)を、塩基の存在下におけるアルコール中で、Pd触媒、例えばPdCl(PPh(すなわちビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド)のような触媒の存在下に、一酸化炭素を用いて、対応するカルボン酸エステル(XXIV)に転換することができる。(XXIV)の塩基性加水分解は、酸(VII−a)を与える。
【0077】
【化13】

【0078】
、R、R又はRが水素である式(I)の化合物を、適した溶媒、例えば酢酸の存在下における適したハロ−導入剤、例えばN−クロロスクシンイミド又はN−ブロモスクシンイミドとの反応により、R、R、R又はRがハロである式(I)の化合物に転換することができる。RがC1−6アルキルオキシカルボニルを示す式(I)の化合物を、例えばナトリウムヒドロキシド又はメトキシドのような適した塩基との反応により、Rが水素を示す式(I)の化合物に転換することができる。Rがt.ブチルオキシカルボニルである場合、トリフルオロ酢酸を用いる処理により、Rが水素である対応する化合物を製造することができる。
【0079】
式(I)の化合物のいくつか及び本発明中の中間体のいくつかは、不斉炭素原子を含有し得る。該化合物及び該中間体の純粋な立体化学的異性体は、当該技術分野において既知の方法の適用により得ることができる。例えば選択的結晶化又はクロマトグラフィー法、例えば向流分配、液体クロマトグラフィーなどの方法のような物理的方法により、ジアステレオ異性体を分離することができる。エナンチオマーをラセミ混合物から、最初に適した分割剤、例えばキラル酸を用いて該ラセミ混合物をジアステレオマー塩もしくは化合物の混合物に転換し;次いで該ジアステレオマー塩もしくは化合物の混合物を、例えば選択的結晶化又はクロマトグラフィー法、例えば液体クロマトグラフィーなどの方法により物理的に分離し;そして最後に該分離されたジアステレオマー塩もしくは化合物を対応するエナンチオマーに転換することにより、得ることができる。適した中間体及び出発材料の純粋な立体化学的異性体から、純粋な立体化学的異性体を得ることもでき、但し、介在する反応は立体特異的に起こる。式(I)の化合物及び中間体のエナンチオマーを分離する別の方法は、液体クロマトグラフィー、特にキラル固定相を用いる液体クロマトグラフィーを含む。
【0080】
中間体及び出発材料のいくつかは既知の化合物であり、商業的に入手可能であるか、又は当該技術分野において既知の方法に従って製造され得る。
【0081】
式(I)の化合物は、特にヒトにおける後天性免疫不全症候群(AIDS)の病因学的因子(aetiological agent)であるHIVに対して、抗レトロウイルス性(逆転写酵素阻害性)を示す。HIVウイルスはヒトT−4細胞に選択的に感染し、
それらを破壊するか又はそれらの正常な機能、特に免疫系の協調(coordination)を変化させる。結果として、感染した患者ではT−4細胞の数が常に減少し、さらにT−4細胞は異常に行動する。従って、免疫学的防御システムは感染及び新生物を防除することができず、HIV感染患者は通常肺炎のような日和見感染又はガンにより死亡する。HIV感染と関連する他の状態には血小板減少症、カポージ肉腫ならびに進行性脱髄を特徴とし、痴呆及び進行性構語障害、運動失調及び失見当識のような症状を生ずる中枢神経系の感染が含まれる。HIV感染はさらに末梢神経障害、進行性全身性リンパ節症(PGL)及びAIDS−関連症候群(ARC)とも関連してきた。
【0082】
本化合物は、薬剤−及び多剤−耐性HIV株、特に多剤耐性HIV株に対しても活性を示し、さらに特定的に、本化合物は、1種もしくはそれより多い当該技術分野において既知の非−ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、特に治療用に承認されたもの、例えばエファビレンツ(efavirenz)、デラビルジン(delavirdine)及びネビラピン(nevirapine)に対して耐性を取得したHIV株に対して活性を示す。
【0083】
式(I)の化合物、その製薬学的に許容され得る付加塩及び立体異性体は、それらの抗レトロウイルス性、特にそれらの抗−HIV性の故に、HIVに感染した患者の処置においてならびにこれらの感染の予防のために有用である。本発明の化合物は、存在が酵素、逆転写酵素により媒介されるか又はそれに依存するウイルスに感染した温血動物の処置において用途を見出すこともできる。本発明の化合物を用いて予防もしくは処置することができる状態、特にHIV及び他の病原性レトロウイルスと関連する状態には、AIDS、AIDS−関連症候群(ARC)、進行性全身性リンパ節症(PGL)ならびにレトロウイルスにより引き起こされる慢性中枢神経系疾患、例えばHIV媒介痴呆及び多発性硬化症が含まれる。
【0084】
従って、本発明の化合物又はそのいずれかのサブグループを上記で挙げた状態に対する薬剤として使用することができる。該薬剤としての使用又は処置方法は、HIV及び他の病原性レトロウイルス、特にHIV−1と関連する状態を防除するのに有効な量をHIV−感染患者に投与することを含む。特に、式(I)の化合物をHIV感染の処置又は予防用の薬剤の製造において用いることができる。
【0085】
さらに別の側面において本発明は、ウイルス感染、特にHIV感染に苦しむ人間を含む温血動物の処置方法あるいは人間を含む温血動物がウイルス感染、特にHIV感染に苦しむのを予防する方法を提供する。該方法は、人間を含む温血動物に式(I)の化合物、その製薬学的に許容され得る付加塩、製薬学的に許容され得る溶媒和物又はその可能な立体異性体の有効量を投与する、好ましくは経口的に投与することを含む。
【0086】
本発明は、式(I)の化合物の治療的に有効な量及び製薬学的に許容され得る担体もしくは希釈剤を含んでなる、ウイルス感染の処置用の組成物も提供する。
【0087】
本発明の化合物又はそのいずれかのサブグループを、投与目的のために種々の製薬学的形態に調製することができる。適した組成物として、薬剤を全身的に投与するために通常用いられるすべての組成物を挙げることができる。本発明の製薬学的組成物の調製のために、場合により塩の形態にあることができる特定の化合物の活性成分として有効な量を、製薬学的に許容され得る担体と緊密な混合物において合わせ、その担体は、投与のために望ましい調製物の形態に依存して多様な形態をとることができる。望ましくはこれらの製薬学的組成物は、特に経口的、直腸的、経皮的又は非経口的注入による投与に適した単位投薬形態にある。例えば経口的投薬形態における組成物の調製において、通常の製薬学的媒体のいずれか、例えば懸濁剤、シロップ、エリキシル剤、乳剤及び溶液のような経口用液体調製物の場合、水、グリコール、油、アルコールなど;あるいは粉剤、丸薬、カプセ
ル及び錠剤の場合、澱粉、糖類、カオリン、希釈剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などのような固体担体を用いることができる。それらの投与の容易さのために、錠剤及びカプセルは最も有利な経口的投薬単位形態物を与え、その場合には固体の製薬学的担体が用いられるのは明らかである。非経口用組成物の場合、担体は通常少なくとも大部分において無菌水を含むであろうが、例えば溶解性を助けるための他の成分が含まれることができる。例えば担体が食塩水、グルコース溶液又は食塩水とグルコース溶液の混合物を含む注入可能な溶液を調製することができる。注入可能な懸濁剤も調製することができ、その場合には適した液体担体、懸濁化剤などを用いることができる。使用の直前に液体形態の調製物に転換され得る固体形態の調製物も含まれる。経皮的投与に適した組成物において、担体は場合により浸透増強剤及び/又は適した湿潤剤を、場合により小さい割合の適したいずれかの性質の添加剤と組み合わせて含むことができ、その添加剤は皮膚に有意な悪影響をもたらさない。該添加剤は皮膚への投与を促進することができ、及び/又は所望の組成物の調製の助けとなることができる。これらの組成物を種々の方法で、例えば経皮パッチとして、スポット−オンとして、軟膏として投与することができる。
【0088】
吸入又は吹入を介する投与のために当該技術分野において用いられる方法及び調剤を用いて、本発明の化合物を吸入又は吹入を介して投与することもできる。かくして一般に本発明の化合物を溶液、懸濁剤又は乾燥粉末の形態で肺に投与することができる。経口的又は鼻的吸入又は吹入を介する溶液、懸濁剤又は乾燥粉末の送達のために開発されたいずれのシステムも、本化合物の投与に適している。
【0089】
投与の容易さ及び投薬量の均一性のために、前記の製薬学的組成物を単位投薬形態物において調製するのが特に有利である。本明細書で用いられる単位投薬形態物は、1回の投薬量として適した物理的に分離された単位を指し、各単位は所望の治療効果を生むために計算されたあらかじめ決定された量の活性成分を、必要な製薬学的担体と一緒に含有する。そのような単位投薬形態物の例は錠剤(刻み付き又はコーティング錠を含む)、カプセル、丸薬、粉剤小包、ウェハース、座薬、注入可能な溶液もしくは懸濁剤など、ならびに分離されたそれらの複数である。
【0090】
HIV−感染の処置における熟練者は、本明細書に示される試験結果から、有効な1日の量を決定することができるはずである。一般に有効な1日の量は、体重のkg当たり0.01mg〜50mg、より好ましくは体重のkg当たり0.1mg〜10mgであろうことが意図されている。必要な投薬量を、1日を通じて適した間隔における2、3、4回もしくはそれより多い細分−投薬量として投与するのが適しているかも知れない。該細分−投薬量を、例えば単位投薬形態物当たり1〜1000mg、そして特に5〜200mgの活性成分を含有する単位投薬形態物として調製することができる。
【0091】
正確な投薬量及び投与の頻度は、当該技術分野における熟練者に周知の通り、用いられる特定の式(I)の化合物、処置されている特定の状態、処置されている状態の重度、特定の患者の年令、体重及び一般的身体条件ならびに患者が摂取してい得る他の投薬に依存する。さらに、処置される患者の反応に依存して、及び/又は本発明の化合物を処方する医師の評価に依存して、該有効な1日の量を減少させるか又は増加させることができることは明らかである。従って上記で挙げた有効な1日の量の範囲は単に指針であり、本発明の範囲又は使用をいずれの程度にも制限することは意図されていない。
【0092】
本式(I)の化合物を単独で、あるいは他の治療薬、例えば抗−ウイルス薬、抗生物質、イムノモジュレーター又はウイルス感染の処置のためのワクチンと組み合わせて用いることができる。それらをウイルス感染の予防のために単独で、あるいは他の予防薬と組み合わせて用いることもできる。本化合物を、長期間に及んで患者をウイルス感染に対して保護するためのワクチン及び方法において用いることができる。そのようなワクチンにお
いて、化合物を単独で、又は本発明の他の化合物と一緒に、又は他の抗−ウイルス薬と一緒に、ワクチン中での逆転写酵素阻害剤の通常の使用と一致する方法で用いることができる。かくして本化合物を、ワクチン中で通常用いられる製薬学的に許容され得る添加剤と組み合わせ、長期間に及んで患者をHIV感染に対して保護するために予防的に有効な量で投与することができる。
【0093】
また、1種もしくはそれより多い追加の抗レトロウイルス性化合物と式(I)の化合物の組み合わせを薬剤として用いることができる。かくして本発明は、抗−HIV処置における同時、個別もしくは逐次的使用のための組み合わせ調製物として(a)式(I)の化合物及び(b)1種もしくはそれより多い追加の抗レトロウイルス性化合物を含有する製品にも関する。製薬学的に許容され得る担体と一緒に、種々の薬剤を単独の調製物において組み合わせることができる。該他の抗レトロウイルス性化合物は、スラミン(suramine)、ペンタミジン(pentamidine)、チモペンチン(thymopentin)、カスタノスペルミン(castanospermine)、デキストラン(デキストランサルフェート)、フォスカルネト−ナトリウム(トリナトリウムホスホノホルメート);ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTIs)、例えばジドブジン(zidovudine)(AZT)、ジダノシン(didanosine)(ddI)、ザルシタビン(zalcitabine)(ddC)、ラミブジン(lamivudine)(3TC)、スタブジン(stavudine)(d4T)、エムトリシタビン(emtricitabine)(FTC)、アバカビル(abacavir)(ABC)、アムドキソビル(amdoxovir)(DAPD)、エルブシタビン(elvucitabine)(ACH−126,443)、AVX 754((−)−dOTC)、フォジブジン チドキシル(fozivudine tidoxil)(FZT)、ホスファジド(phosphazide)、HDP−990003、KP−1461、MIV−210、ラシビル(racivir)(PSI−5004)、UC−781など;非−ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTIs)、例えばデラビルジン(delavirdine)(DLV)、エファビレンツ(efavirenz)(EFV)、ネビラピン(nevirapine)(NVP)、ダピビリン(dapivirine)(TMC120)、エトラビリン(etravirine)(TMC125)、リルピビリン(rilpivirine)(TMC278)、DPC−082、(+)−カラノリド A、BILR−355など;ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(NtRTIs)、例えばテノフォビル(tenofovir)((R)−PMPA)及びテノフォビルジソプロキシルフマレート(tenofovir disoproxil fumarate)(TDF)など;ヌクレオチド−競合性逆転写酵素阻害剤(NcRTIs)、例えばNcRTI−1など;トランス−活性化タンパク質の阻害剤、例えばTAT−阻害剤、例えばRO−5−3335、BI−201など;REV阻害剤;プロテアーゼ阻害剤、例えばリトナビル(ritonavir)(RTV)、サクイナビル(saquinavir)(SQV)、ロピナビル(lopinavir)(ABT−378又はLPV)、インジナビル(indinavir)(IDV)、アムプレナビル(amprenavir)(VX−478)、TMC126、ネルフィナビル(nelfinavir)(AG−1343)、アタザナビル(atazanavir)(BMS 232,632)、ダルナビル(darunavir)(TMC−114)、フォサムプレナビル(fosamprenavir)(GW433908又はVX−175)、ブレカナビル(brecanavir)(GW−640385、VX−385)、P−1946、PL−337、PL−100、チプラナビル(tipranavir)(PNU−140690)、AG−1859、AG−1776、Ro−0334649など;融合阻害剤(例えばエンフビルチド(enfuvirtide)(T−20))、付着阻害剤(attachment inhibitors)及び共−受容体阻害剤を含むエントリー阻害剤(entry inhibitors),後者はCCR5アンタゴニスト(例えばアンクリビロク(ancriviroc)、CCR5mAb004、マラビロク(maraviroc)(UK−427,857)、PRO−14
0、TAK−220、TAK−652、ビクリビロク(vicriviroc)(SCH−D、SCH−417,690))及びCXR4アンタゴニスト(例えばAMD−070、KRH−27315)を含み、エントリー阻害剤の例はPRO−542、TNX−355、BMS−488,043、BlockAide/CRTM、FP 21399、hNM01、ノナカイン(nonakine)、VGV−1である;成熟阻害剤は例えばPA−457である;ウイルスインテグラーゼの阻害剤、例えばラルテグラビル(raltegravir)(MK−0518)、エルビテグラビル(elvitegravir)(JTK−303,GS−9137)、BMS−538,158;リボザイム;イムノモジュレーター;モノクローナル抗体;遺伝子治療;ワクチン;siRNAs;アンチセンスRNAs;殺微生物剤;亜鉛−フィンガー阻害剤のようないずれの既知の抗レトロウイルス性化合物であることもできる。
【0094】
組み合わせは相乗効果を与えることができ、それによりウイルス感染能及び関連するその症状を予防するか、実質的に低下させるか、又は完全に除去することができる。
【0095】
本発明の化合物をイムノモジュレーター(例えばブロピリミン(bropirimine)、抗−ヒトアルファインターフェロン抗体、IL−2、メチオニン エンケファリン、インターフェロン アルファ及びナルトレキソン(naltrexone))、抗生物質(例えばペンタミジン イソチオレート)、サイトカイン(例えばTh2)、サイトカインのモジュレーター、ケモカイン又はケモカインのモジュレーター、ケモカイン受容体(例えばCCR5、CXCR4)、ケモカイン受容体のモジュレーターあるいはホルモン(例えば成長ホルモン)と組み合わせて投与し、HIV感染及びその症状を改善するか、防除するか、もしくは除去することもできる。異なる調剤中におけるそのような組み合わせ治療を同時に、逐次的に、又は互いに独立して施すことができる。あるいはまた、そのような組み合わせを、活性成分が調剤から同時に又は個別に放出される単一の調剤として投与することができる。
【0096】
本発明の化合物を、患者への薬剤の適用に続く代謝のモジュレーターと組み合わせて投与することもできる。これらのモジュレーターには、シトクロム P450のようなシトクロムにおける代謝を妨げる化合物が含まれる。シトクロム P450のいくつかのイソ酵素が存在することが既知であり、その1つはシトクロム P450 3A4である。リトナビルは、シトクロム P450を介する代謝のモジュレーターの例である。異なる調剤中におけるそのような組み合わせ治療を同時に、逐次的に、又は互いに独立して施すことができる。あるいはまた、そのような組み合わせを、活性成分が調剤から同時に又は個別に放出される単一の調剤として投与することができる。そのようなモジュレーターを本発明の化合物と同じか又は異なる比率で投与することができる。好ましくは、そのようなモジュレーター対本発明の化合物の重量比(モジュレーター:本発明の化合物)は1:1又はそれより低く、より好ましくは、比は1:3又はそれより低く、適切には、比は1:10又はそれより低く、より適切には、比は1:30又はそれより低い。
【0097】
本発明は、HIV感染の予防又は処置のための本化合物の使用に焦点を当ててきたが、増殖のために逆転写酵素に依存する他のウイルスのための阻害性薬剤として、本化合物を用いることもできる。
【0098】
以下の実施例は本発明を例示することを意図しており、その範囲を実施例に制限することを意図していない。
【実施例1】
【0099】
【化14】

【0100】
2−メトキシエチルエーテル(250ml)中の4−シアノアニリン(0.420モル)の混合物を、100℃で30分間攪拌した。次いで水(30ml)中のシアナミド(0.630モル)の混合物を45分間で分けて加えた。100℃で24時間攪拌した後、シアナミド(0.210モル)を再び加えた。次いで混合物を100℃でさらに48時間攪拌し、続いて蒸発乾固した。残留物をアセトンから結晶化させ、70.5gのAを与えた(収率85%,融点:225℃)。
【0101】
【化15】

【0102】
エタノール(25ml)中の実施例1における通りに製造された中間体A(0.0102モル)の溶液に、ナトリウムエトキシド(21%)(0.0153モル,1.5当量)を加え、続いて4−メトキシアセト酢酸メチル(0.0102モル,1当量)を加えた。得られる混合物を還流において6時間攪拌し、次いで室温に冷ました。水を加え、酢酸を用いて混合物を酸性化した(pH=6まで)。得られる沈殿を濾過し、1.5gの中間体Bを与えた(収率57%)。
【0103】
B(0.0056モル)及びオキシ塩化リン(10ml)の混合物を還流において30分間攪拌した。冷却後、オキシ塩化リンを蒸発させた。水及びKCO10%を加え、混合物をCHClで抽出した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、溶媒
を蒸発させて、1.51gのCを与えた(収率97%)。
【0104】
中間体C(0.00182モル)及び3−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)−アクリロニトリル(0.00182モル)の混合物を、融解温度で5分間加熱し、次いで水とKCO 10%の混合物中に注いだ。得られる混合物をCHClで抽出した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させた。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(35−70μm;溶離剤:CHCl/メタノール 97:3)により精製した。純粋な画分を集め、溶媒を蒸発させ、0.34gの中間体Dを与えた(収率46%,融点:115℃)。
【0105】
【化16】

【0106】
メタノール(500ml)及び水(75ml)中の中間体D(15.3g,37.2ミリモル)の溶液に、CaCO(44.7ミリモル,1.2当量)を加え、続いて塩化ヨウ素を滴下した(74.5ミリモル,2当量)。得られる混合物を室温で72時間攪拌した。Naの飽和水溶液を加え、混合物を30分間攪拌した。メタノールを蒸発させ、得られる混合物を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層をMgSO上で乾燥し、濾過した。溶媒を蒸発させ、得られる混合物Eを精製せずに次の反応において用いた(20.6g,収率100%)。
【0107】
【化17】

【0108】
1,2−ジメトキシエタン/メタノールの5:1混合物(18ml)中の中間体E(0.25g,0.47ミリモル)の溶液に、4−メトキシ−3−ピリジニルボロン酸(1.4ミリモル,3当量)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd
(PPh)(0.094ミリモル,0.2当量)及び2N KCO溶液(2.4ミリモル,5当量)を連続して加えた。得られる混合物を還流において終夜攪拌した。10% KCO溶液を加え、混合物をセライトパッド上で濾過し、CHClで洗浄した。残留物をCHCl/テトラヒドロフランで抽出した。合わせた有機層をMgSO上で乾燥し、濾過した。溶媒を蒸発させ、得られる混合物をカラムクロマトグラフィー(5μm,溶離剤:CHCl/メタノール/NHOH 99:1:0.1から95:5:0.5)により精製し、0.151gの化合物1を与えた(収率62%,融点120℃)。
【0109】
この表及び続く表において、
【0110】
【化18】

【0111】
と記される結合は、基を分子の残りの部分に連結する結合を示す。Me及びEtは、それぞれメチル及びエチルを指す。
【0112】
【表1】

【実施例2】
【0113】
【化19】

【0114】
エタノール(100ml)中の中間体E(14g,0.026モル)の溶液に、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(PdCl(PPh)(0.00522モル,0.2当量)及びトリエチルアミン(0.0112モル,4.3当量)を加えた。混合物全体を、一酸化炭素の25バールの圧力下に、110℃において48時間加熱した。得られる混合物を、続いてセライトパッド上で濾過し、テトラヒドロフランで濯いだ。溶媒を蒸発させた後、得られる混合物をカラムクロマトグラフィー(20−45μm,溶離剤:CHCl/メタノール 99:1)により精製し、10.65gの中間体Fを与えた(収率85%,融点:156℃)。
【0115】
テトラヒドロフラン/HO(50ml/15ml)の混合物中のF(5.4g,0.0112モル)の溶液に、LiOH一水和物(0.0559モル,5当量)を加えた。得られる混合物を室温で終夜攪拌した。次いでテトラヒドロフランを蒸発させ、水を加え、3N HCl溶液を用いて混合物をpH1に酸性化した。次いで沈殿を濾過し、真空下で乾燥して4.55gの中間体Gを与え(収率89%,融点:220℃)、さらなる精製なしで次の段階において用いた。
【0116】
テトラヒドロフラン/CHClの1:1混合物(5ml)中の中間体G(0.15g,0.33ミリモル)の溶液に、2−(アミノメチル)ピリジン(0.5ミリモル,1.5当量)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.5ミリモル,1.5当量)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミドヒドロクロリド(EDCI)(0.5ミリモル,1.5当量)及びトリエチルアミン(0.5ミリモル,1.5当量)を連続して加えた。得られる混合物を室温で終夜攪拌した。10% KCO溶液を混合物に加え、残留物をCHClで抽出した。合わせた有機層をMgSO上で乾燥し、濾過した。溶媒を蒸発させ、得られる混合物(0.345g)をイソ−プロパノールから結晶化させ、0.087gの化合物20を与えた(収率48%)。
【0117】
【表2】

【0118】
【表3】

【0119】
【表4】

【0120】
実施例1に記載したと同じ方法に従って中間体H及びIを製造した。実施例2に記載した方法に従って、化合物31及び32を製造した:
【0121】
【化20】

【0122】
【表5】

【0123】
同じ方法に従い、しかし
【0124】
【化21】

【0125】
から出発して、表4の化合物を製造した。上記の式Jの出発材料は、実施例1に記載した方法に類似の方法に従って、しかしCからDへの転換におけるアニリン誘導体を対応するフェノールにより置き換えて、製造された。
【0126】
【表6】

【実施例3】
【0127】
【化22】

【0128】
50mlのジメチルホルムアミド中の中間体E(0.00372モル)、酢酸パラジウム(0.000746モル,0.2当量)、ギ酸ナトリウム(0.0111モル,3当量)及びいくらかのMgSOの混合物を、一酸化炭素の30バールの圧力下に、100℃において終夜攪拌した。混合物を水中に注いだ。沈殿を濾過し、乾燥した。粗生成物をシ
リカゲル上のクロマトグラフィー(溶離剤:CHCl/メタノール/NHOH:99/1/0.1;15−40μM)により精製した。純粋な画分を集め、溶媒を蒸発させた。収量:0.410g(25%)の中間体L。
【0129】
方法A
15mlのテトラヒドロフラン中の中間体L(0.0008モル)の混合物に、窒素雰囲気下に−78℃においてメチルマグネシウムクロリド(0.00279モル,3.5当量)を加えた。混合物を−78℃において2時間、次いで室温で終夜攪拌した。反応混合物をNHCl 10%中に注ぎ、次いでCHClで抽出した。有機層をMgSO上で乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させた。粗生成物をシリカゲル上のクロマトグラフィー(溶離剤:CHCl/メタノール/NHOH:99:1:0.1から95:5:0.5)により精製した。純粋な画分を集め、溶媒を蒸発させた。収量:0.045g(12%,213℃)の化合物37。
【0130】
方法B
−78℃において、窒素雰囲気下に、10mlのテトラヒドロフラン中のチアゾール(0.00159モル,3.5当量)の溶液にn−ブチルリチウム(1.14ml,3.5当量)を滴下した。この混合物を−78℃において1時間攪拌した。次に、5mlのテトラヒドロフラン中の中間体Lの溶液を滴下し、混合物を−78℃で2時間及び次いで室温で終夜攪拌した。反応混合物をNHCl 10%中に注ぎ、CHCl/テトラヒドロフラン/メタノールの混合物で抽出した。有機層をMgSO上で乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させた。粗生成物をシリカゲル上のクロマトグラフィー(溶離剤:CHCl/メタノール/NHOH:98:2:0.2から92:8:0.8)により精製した。純粋な画分を集め、溶媒を蒸発させた。収量:0.073g(30%,134℃)の化合物38。
【0131】
【表7】

【実施例4】
【0132】
方法A:
【化23】

【0133】
ジメチルホルムアミド(6ml)中の実施例1に記載した通りに製造されるE(0.5g,0.93ミリモル)の溶液に、トリブチル−(1−エトキシビニル)−スタンナン(1.86ミリモル,2当量)及びPdCl(PPh(0.19ミリモル,0.2当量)を連続して加えた。得られる混合物を110℃で終夜攪拌した。KFの水溶液を加え、混合物を15分間攪拌し、次いでセライトパッド上で濾過し、CHClで洗浄した。残留物をCHClで抽出した。合わせた有機層を水で洗浄し、次いでMgSO
上で乾燥し、濾過した。溶媒を蒸発させ、得られる混合物をカラムクロマトグラフィー(Kromasil 5μm 250x30μm,溶離剤:CHCl/メタノール 98:2)により精製し、0.089gの純粋な生成物46を与えた(収率20%,融点:102℃)。
【0134】
方法B:
【化24】

【0135】
ジメチルエーテル/メタノールの5:1混合物(19ml)中のE(0.27g,0.52ミリモル)の溶液に、(E)−3−メトキシプロペンボロン酸(1.5ミリモル,3当量)、Pd(PPh(0.11ミリモル,0.2当量)及び2N KCO(2.5ミリモル,5当量)を連続して加えた。得られる混合物を還流において終夜攪拌した。10% KCO溶液を加え、混合物をセライトパッド上で濾過し、CHClで洗浄した。残留物をCHCl/テトラヒドロフランで抽出した。合わせた有機層をMgSO上で乾燥し、濾過した。溶媒を蒸発させ、得られる混合物をカラムクロマトグラフィー(10μm,溶離剤:CHCl/メタノール 99:1)により精製し、0.079gの純粋な生成物39を与えた(収率33%)。
【0136】
方法C:
【化25】

【0137】
ジメチルホルムアミド(30ml)中のE(1g,1.9ミリモル)の溶液に、3−エチニルピリジン(5.7ミリモル,3当量)、PdCl(PPh(0.19ミリ
モル,0.1当量)、CuI(3.8ミリモル,2当量)及びトリエチルアミン(5.7ミリモル,3当量)を連続して加えた。得られる混合物を還流において終夜攪拌した。10% KCO溶液を加え、混合物をセライトパッド上で濾過し、CHClで洗浄した。残留物をCHCl/テトラヒドロフランで抽出した。合わせた有機層をMgSO上で乾燥し、濾過した。溶媒を蒸発させ、得られる混合物をカラムクロマトグラフィー(10μm,溶離剤:CHCl/メタノール/NHOH 98:2:0.2)により精製し、0.29gの純粋な生成物48を与えた(収率30%,融点:210℃)。
【0138】
方法D:
【化26】

【0139】
アセトニトリル(5ml)中のE(0.25g,0.47ミリモル)の溶液に、N,N−ジメチルアクリルアミド(4.7ミリモル,10当量)、Pd(OAc)(0.05ミリモル,0.1当量)、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン(P(oTol))(0.24ミリモル,0.5当量)及びトリエチルアミン(2.8ミリモル,6当量)を連続して加えた。得られる混合物を115℃で終夜攪拌し、次いでセライトパッド上で濾過し、水で濯いだ。残留物をCHClで抽出した。合わせた有機層をMgSO上で乾燥し、濾過した。溶媒を蒸発させ、得られる混合物をカラムクロマトグラフィー(3.5μm,溶離剤:CHCl/メタノール/NHOH 99:1:0.1から93/7/0.7)により精製し、0.098gの純粋な生成物40を与えた(収率41%)。
【0140】
方法E:
【化27】

【0141】
ジメチルホルムアミド(5ml)中のE(0.8g,1.5ミリモル)の溶液に、ビス(ピナコラト)ジボロン(1.8ミリモル,1.2当量)、PdCldppf(PdCl1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)(0.075ミリモル,0.05当量)及び酢酸カリウム(4.5ミリモル,3当量)を連続して加えた。得られる混合物を85℃で終夜攪拌した。ジメチルホルムアミド(5ml)中の3−ブロモ−2−メチルアクリロニトリル(3.0ミリモル,2当量)、PdCldppf(0.075ミリモル,0.05当量)及びKCO(7.5ミリモル,3当量)の溶液を次いで加え、混合物全体を115℃で24時間攪拌した。冷却した後、得られる混合物をセライトパッド上で濾過し、水で濯いだ。残留物をCHClで抽出した。合わせた有機層をMgSO上で乾燥し、濾過した。溶媒を蒸発させ、得られる混合物をカラムクロマトグラフィー(3.5μm,溶離剤:CHCl/メタノール 100:0から98:2;次いで5μm,溶離剤:CHCl/メタノール/NHOH 99:1:0.1から95:5:0.5)により精製し、0.028gの純粋な生成物42を与えた(収率4%)。
【0142】
【表8】

【0143】
【表9】

【0144】
抗ウイルス範囲:
本発明の化合物を、野生型ウイルス及び逆転写酵素阻害剤に対する耐性と関連する1つもしくはそれより多い突然変異を宿している臨床的に単離されたHIV株に対するそれらの力価に関して調べた。以下の方法に従って行なわれる細胞アッセイを用い、抗ウイルス活性を評価した。
【0145】
Green Fluorescent Protein(GFP)及びHIV−特異的プロモーター、HIV−1長末端反復(LTR)を用いてヒトT−細胞系MT4を操作した(engineered)。この細胞系はMT4 LTR−EGFPと称され、研究化合物の抗−HIV活性の試験管内評価に用いられ得る。HIV−1感染細胞においてTatタンパク質が生産され、それはLTRプロモーターを上方調節し(upregulates)、最後にGFPリポーター生産の刺激に導き、進行するHIV−感染を蛍光測定により測定することを可能にする。
【0146】
類似して、GFP及び構成的サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを用いてMT4細胞を操作した。この細胞系はMT4 CMV−EGFPと称され、研究化合物の細胞毒性の試験管内評価に用いられ得る。この細胞系において、GFPレベルは、感染したMT4 LTR−EGFP細胞のものと同等である。細胞毒性の研究化合物は、擬似−感染MT4 CMV−EGFP細胞のGFPレベルを低下させる。
【0147】
50%有効濃度(EC50)のような有効濃度値を決定することができ、それは通常μMにおいて表される。EC50値は、HIV−感染細胞の蛍光を50%低下させる試験化合物の濃度として定義される。50%細胞毒性濃度(μMにおけるCC50)は、擬似−感染細胞の蛍光を50%低下させる試験化合物の濃度として定義される。CC50対EC50の比は、選択指数(SI)として定義され、阻害剤の抗−HIV活性の選択性の指標である。HIV−感染及び細胞毒性の究極的な監視は、走査型顕微鏡を用いて行なわれた。画像分析は、ウイルス感染の非常に感度の良い検出を可能にした。測定は、通常感染から約5日後に起こる細胞壊死の前に行なわれ、特に測定は感染から3日後に行なわれた。
【0148】
表中の欄IIIB、L100Iなどは、ウイルス株IIIB、L100Iなどに対するpEC50(−logEC50)値を挙げている;pSIは−logSI値を挙げている。
株IIIBは野生型HIV株である。
「MDR」は、HIV逆転写酵素中に突然変異L100I、K103N、Y181C、E
138G、V179I、L2214F、V278V/I及びA327A/Vを含有する株を指す。
【0149】
【表10】

【0150】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

[式中:
各Rは独立して水素;アリール;ホルミル;C1−6アルキルカルボニル;C1−6アルキル;C1−6アルキルオキシカルボニルであり;
、R、R及びRは独立して水素;ヒドロキシ;ハロ;C3−7シクロアルキル;C1−6アルキルオキシ;カルボキシル;C1−6アルキルオキシカルボニル;シアノ;ニトロ;アミノ;モノ−もしくはジ(C1−6アルキル)アミノ;ポリハロC1−6アルキル;ポリハロC1−6アルキルオキシ;−C(=O)R10;場合によりハロ、シアノ又は−C(=O)R10で置換されていることができるC1−6アルキル;場合によりハロ、シアノ又は−C(=O)R10で置換されていることができるC2−6アルケニル;場合によりハロ、シアノ又は−C(=O)R10で置換されていることができるC2−6アルキニルであり;
及びRは独立してヒドロキシ;ハロ;C3−7シクロアルキル;C1−6アルキルオキシ;カルボキシル;C1−6アルキルオキシカルボニル;ホルミル;シアノ;ニトロ;アミノ;モノ−もしくはジ(C1−6アルキル)アミノ;ポリハロC1−6アルキル;ポリハロC1−6アルキルオキシ;−C(=O)R10;シアノ;−S(=O)10;−NH−S(=O)10;−NHC(=O)H;−C(=O)NHNH;−NHC(=O)R10;Het;−Y−Het;場合によりハロ、シアノ、アミノ、モノ−もしくはジ(C1−6アルキル)アミノ、−C(=O)−R10、Het又はC1−6アルキルオキシで置換されていることができるC1−6アルキル;場合によりハロ、シアノ、アミノ、モノ−もしくはジ(C1−6アルキル)アミノ、−C(=O)−R10、Het又はC1−6アルキルオキシで置換されていることができるC2−6アルケニル;場合によりハロ、シアノ、アミノ、モノ−もしくはジ(C1−6アルキル)アミノ、−C(=O)−R10、Het又はC1−6アルキルオキシで置換されていることができるC2−6アルキニルであり;
は、両方ともシアノ、アミノカルボニル、モノ−もしくはジ(C1−6アルキル)アミノカルボニル、アリール、ピリジル、チエニル、フラニル又は1もしくは2個のC1−6アルキルオキシ基で置換されたC2−6アルケニル又はC2−6アルキニルであるか;あるいはRはHet;−C(=O)NR5a5b又は−CH(OR5c)R5dであり;ここで
5aはC1−6アルキルオキシ;C2−6アルケニル;C3−7シクロアルキル;又はヒドロキシ、アミノ、モノ−もしくはジ(C1−6アルキル)アミノ、C1−6アルキルカルボニルアミノ、ハロ、シアノ、アリール、ピリジル、チエニル、フラニル、テトラヒドロフラニル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、場合によりC1−6アルキル、C1−6アルキルカルボニル又はヒドロキシC1−6アルキルで置換されていることができるピペラジニルで置換されたC1−6アルキルであるか;あるいはR5aは1もしくは2個のC1−6アルキルオキシで置換されたC1−6アルキルであり;
5bは水素又はC1−6アルキルであるか;あるいは
5a及びR5bは、それらが置換する窒素原子と一緒になって、ピロリジニル;場合によりアミノカルボニル、ヒドロキシ又はC1−6アルキルオキシで置換されていることができるピペリジニル;モルホリニル;ピペラジニル;場合によりC1−6アルキル、C1−6アルキルカルボニル又はヒドロキシC1−6アルキルで置換されていることができるピペラジニルを形成し;
5cは水素、C1−6アルキル、Hetであり;
5dはC1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、アリール又はHetであり;
はC1−6アルキルオキシC1−6アルキルであり;
各R10は独立してC1−6アルキル、アミノ、モノ−もしくはジ(C1−6アルキル)アミノ又はポリハロC1−6アルキルであり;
Xは−NR−、−O−、−CH−又は−S−であり;
各rは独立して1又は2であり;
各Hetは独立して、ピリジル、チエニル、フラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、キノリニル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニルであり;これらはそれぞれ場合によりC1−6アルキル、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1−6アルキルオキシならびにハロ、ヒドロキシ又はシアノで置換されたC2−6アルケニルからそれぞれ独立して選ばれる1もしくは2個の置換基で置換されていることができ;
各アリールは独立してフェニルあるいはハロ、ヒドロキシ、メルカプト、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、ヒドロキシC1−6アルキル、アミノC1−6アルキル、モノもしくはジ(C1−6アルキル)アミノC1−6アルキル、C1−6アルキルカルボニル、C3−7シクロアルキル、C1−6アルキルオキシ、フェニルC1−6アルキルオキシ、C1−6アルキルオキシカルボニル、アミノスルホニル、C1−6アルキルチオ、C1−6アルキルスルホニル、シアノ、ニトロ、ポリハロC1−6アルキル、ポリハロC1−6アルキルオキシ、アミノカルボニル、フェニル、Het又は−Y−Hetからそれぞれ独立して選ばれる1、2、3、4又は5個の置換基で置換されたフェニルである]
の化合物、その製薬学的に許容され得る付加塩、製薬学的に許容され得る溶媒和物又は立体化学的異性体。
【請求項2】
式(I)の化合物が以下の構造
【化2】

を有する請求項1の化合物。
【請求項3】
及びRが独立してシアノ;シアノで置換されたC1−6アルキル;シアノで置換されたC2−6アルケニルである請求項1又は2のいずれかの化合物。
【請求項4】
、R、R及びRが独立して水素;ハロ;C1−6アルキル;シアノである請求項1〜3のいずれかの化合物。
【請求項5】
が基−CH−CH−CN、−CH=CH−CN又は−C≡C−CNである請求項1〜4のいずれかの化合物。
【請求項6】
が基(E)−CH=CH−CNである請求項5の化合物。
【請求項7】
がシアノである請求項1〜6のいずれかの化合物。
【請求項8】
が水素である請求項1〜7のいずれかの化合物。
【請求項9】
(a)Rが、両方ともシアノ、アミノカルボニル、モノ−及びジ(C1−6アルキル)アミノカルボニル、アリール、ピリジル又は1もしくは2個のC1−6アルキルオキシ基で置換されたC2−6アルケニル又はC2−6アルキニル;Het;−C(=O)NR5a5b;−CH(OR5c)R5dであり;ここで
5aはC1−6アルキルオキシ;C2−6アルケニル;C3−7シクロアルキル;又はモノ−及びジ(C1−6アルキル)アミノ、C1−6アルキルカルボニルアミノ、シアノ、アリール、ピリジル、チエニル、テトラヒドロフラニル、モルホリニル、ピペラジニル、場合によりC1−6アルキル又はヒドロキシC1−6アルキルで置換されていることができるピペラジニルで置換されたC1−6アルキルであるか;あるいはR5aは1もしくは2個のC1−6アルキルオキシで置換されたC1−6アルキルであり;
5bは水素又はC1−6アルキルであるか;あるいは
5a及びR5bは、それらが置換する窒素原子と一緒になって、場合によりアミノカルボニル又はヒドロキシで置換されていることができるピペリジニル;場合によりC1−6アルキル又はヒドロキシC1−6アルキルで置換されていることができるピペラジニルを形成し;
5cは水素であり;
5dはC1−6アルキル、C2−6アルケニル、アリール、ピリジル又はチアゾリルである
請求項1〜8のいずれかの化合物。
【請求項10】
Xが−NH−である請求項1〜9のいずれかの化合物。
【請求項11】
各Hetが独立してピリジル、チエニル、フラニル、オキサゾリル、チアゾリルである請求項1〜10のいずれかの化合物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかで定義された式(I)の化合物の有効量及び担体を含んでなる製薬学的組成物。

【公表番号】特表2010−514736(P2010−514736A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543477(P2009−543477)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【国際出願番号】PCT/EP2007/064606
【国際公開番号】WO2008/080965
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(504347371)テイボテク・フアーマシユーチカルズ・リミテツド (94)
【Fターム(参考)】