説明

HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物を含む安定固形医薬組成物

【課題】HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する有効成分やその薬学的に許容される塩を有効成分とする、安定化されてなる固形医薬組成物の提供。
【解決手段】アトルバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン等の、特に酸性環境下で不安定で不純物を生じやすいHMG−CoAレダクターゼインヒビターを安定化するための方法として、含水二酸化ケイ酸を配合した組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高コレステロール血症及び高脂血症の処置に有効なHMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物(以下、これを「HMG−CoAレダクターゼインヒビター」という)を有効成分とする安定化された固形医薬組成物及びその調製方法に関する。また本発明は、固形医薬組成物中における当該HMG−CoAレダクターゼインヒビターの安定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アトルバスタチン(atorvastatin)、プラバスタチン(pravastatin)、フルバスタチン(fluvastatin)、ピタバスタチン(pitavastatin)及びこれらの薬学的に許容される塩は、下記一般式(1):
【0003】
【化1】

【0004】
(式中、Rは水素原子、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはアミン:Rは上記各化合物に応じた有機残基:mは1または2の整数を意味する。)
で示される構造を有するヒドロキシ酸またはその塩であり、コレステロール合成の律速酵素であるHMG−CoA還元酵素を特異的に阻害する作用を有することから、HMG−CoA還元酵素阻害剤の有効成分として高脂血症や高コレステロール血症の治療に広く使用されている。
【0005】
しかし、一般にヒドロキシ酸は特に酸性環境下でラクトンを生成しやすい。上記式(1)で示されるHMG−CoAレダクターゼインヒビター及びその水和物(以下、総称して「HMG−CoAレダクターゼインヒビター」という)も、特に酸性環境下で不安定で、長期保存によりラクトンを含む不純物が生成することが知られている。かかる不純物は、HMG−CoAレダクターゼインヒビターの活性を低下させ、また副作用を引き起こし得る。
【0006】
このため、HMG−CoAレダクターゼインヒビターのラクトン生成を抑制して貯蔵安定性を向上させるために、従来より種々の方法が提案されている。例えば、一定の塩基性添加剤を用いることでその水性分散液をpH9以上にする方法(特許文献1参照)、アルカリ土類金属塩などの特定の金属塩添加剤を配合する方法(特許文献2参照)、特定の塩基性添加物を使用し、直接打錠法で製造する方法(特許文献3参照)、安定剤として塩基性アミノ酸を配合する方法(特許文献4参照)、等が挙げられる。
【0007】
しかし、製剤のpHを強アルカリ側に調整することは、特に低胃酸の患者に経口投与することにより胃での消化機能に障害をきたす恐れがある。また経口投与でないにしても、アルカリによる細胞障害性の危険性があり、いずれの投与経路においても望ましくない。また、塩基性添加物のうち水酸化アルカリ金属類は、潮解性があるため製剤化の工程で取り扱いにくいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2935220号公報
【特許文献2】特表平8−505640号公報
【特許文献3】特開2000−229855号公報
【特許文献4】特開2003−55217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑み、特に酸性環境下で不安定で不純物を生じやすいHMG−CoAレダクターゼインヒビターを安定化するための方法を提供することを目的とする。そして本発明は、かかる方法によりHMG−CoAレダクターゼインヒビターを安定的に含有する固形医薬組成物及びその調製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねていたところ、ラクトンを生成しえるヒドロキシ酸またはその薬学的に許容される塩であるHMG−CoAレダクターゼインヒビターを含水二酸化ケイ素との共存下におくことで、ヒドロキシ酸からラクトンへの生成が抑制され、HMG−CoAレダクターゼインヒビターへの不純物の混入が回避低減できることを見出した。
【0011】
本発明はかかる知見に基づいて完成したものであって、下記の実施態様を包含するものである:
(I)固形医薬組成物
(I−1)HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する有効成分として、ラクトンを生成し得るヒドロキシ酸、その薬学的に許容される塩またはそれらの水和物(以下、「HMG−CoAレダクターゼインヒビター」という)に加えて、含水二酸化ケイ素を含有することを特徴とする、不純物の生成または増加が抑制されてなる固形医薬組成物。
【0012】
(I−2)含水二酸化ケイ素が、それを5質量%濃度の懸濁水溶液に調製した場合にpH8〜12を示すものである(I−1)に記載する固形医薬組成物。
【0013】
(I−3)ラクトンを生成し得るヒドロキシ酸、その薬学的に許容される塩またはそれらの水和物を総量で1〜50質量%の割合で含有することを特徴とする、(I−1)または(I−2)に記載する固形医薬組成物。
【0014】
(I−4)ラクトンを生成し得るヒドロキシ酸、その薬学的に許容される塩またはその水和物(HMG−CoAレダクターゼインヒビター)の総量1重量部に対して含水二酸化ケイ素を1〜10重量部の割合で含有することを特徴とする、(I−1)乃至(I−3)のいずれかに記載する固形医薬組成物。
【0015】
(I−5)HMG−CoAレダクターゼインヒビターが、アトルバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン、それらの薬学的に許容される塩及びそれらの水和物からなる群から選択される少なくとも1種である、(I−1)乃至(I−4)のいずれかに記載する固形医薬組成物。
【0016】
(I−6)HMG−CoAレダクターゼインヒビターがアトルバスタチンカルシウム水和物である(I−1)乃至(I−4)のいずれかに記載する固形医薬組成物。
【0017】
(I−7)高脂血症または高コレステロール血症の治療または改善薬である(I−1)乃至(I−6)のいずれかに記載する固形医薬組成物。
【0018】
(II)固形医薬組成物の調製方法
(II−1)HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する有効成分として、ラクトンを生成し得るヒドロキシ酸、その薬学的に許容される塩またはそれらの水和物(HMG−CoAレダクターゼインヒビター);含水二酸化ケイ素;及び薬学的に許容される担体または添加剤を混合し、湿式造粒する工程、及び
当該顆粒に滑沢剤を配合混合して、得られた混合物を錠剤に成型するか、またはカプセルに充填する工程
を有する、不純物の生成または増加が抑制されてなる固形医薬組成物の調製方法。
【0019】
(II−2)含水二酸化ケイ素が、それを5質量%濃度の懸濁水溶液に調製した場合にpH8〜12を示すものである(II−1)に記載する調製方法。
【0020】
(II−3)ラクトンを生成し得るヒドロキシ酸、その薬学的に許容される塩またはそれらの水和物を総量で1〜50質量%の割合で配合することを特徴とする、(II−1)または(II−2)に記載する調製方法。
【0021】
(II−4)HMG−CoAレダクターゼインヒビターの総量1重量部に対して含水二酸化ケイ素を1〜10重量部の割合で配合することを特徴とする、(II−1)乃至(II−3)のいずれかに記載する調製方法。
【0022】
(II−5)HMG−CoAレダクターゼインヒビターが、アトルバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン、それらのその薬学的に許容される塩、及びそれらの水和物からなる群から選択される少なくとも1種である、(II−1)乃至(II−4)のいずれかに記載する調製方法。
【0023】
(II−6)HMG−CoAレダクターゼインヒビターがアトルバスタチンカルシウム水和物である(II−1)乃至(II−4)のいずれかに記載する調製方法。
【0024】
(II−7)固形医薬組成物が高脂血症または高コレステロール血症の治療または改善薬である(II−1)乃至(II−6)のいずれかに記載する調製方法。
【0025】
(III)固形医薬組成物の安定化方法
(III−1)HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する、ラクトンを生成し得るヒドロキシ酸、その薬学的に許容される塩またはそれらの水和物(HMG−CoAレダクターゼインヒビター)を有効成分とする固形医薬組成物の調製において、添加剤として含水二酸化ケイ素を配合することを特徴とする、当該固形医薬組成物における不純物の生成または増加を抑制する方法。
【0026】
(III−2)含水二酸化ケイ素が、それを5質量%濃度の懸濁水溶液に調製した場合にpH8〜12を示すものである(III−1)に記載する方法。
【0027】
(III−3)ラクトンを生成し得るヒドロキシ酸、その薬学的に許容される塩またはそれらの水和物を総量で1〜50質量%の割合で配合することを特徴とする、(III−1)または(III−2)に記載する方法。
【0028】
(III−4)上記HMG−CoAレダクターゼインヒビターの総量1重量部に対して含水二酸化ケイ素を1〜10重量部の割合で配合することを特徴とする、(III−1)乃至(III−3)のいずれかに記載する方法。
【0029】
(III−5)HMG−CoAレダクターゼインヒビターが、アトルバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン、それらの薬学的に許容される塩及びそれらの水和物からなる群から選択される少なくとも1種である、(III−1)乃至(III−4)のいずれかに記載する方法。
【0030】
(III−6)HMG−CoAレダクターゼインヒビターがアトルバスタチンカルシウム水和物である(III−1)乃至(III−4)のいずれかに記載する方法。
【0031】
(III−7)固形医薬組成物が高脂血症または高コレステロール血症の治療または改善薬てある(III−1)乃至(III−6)のいずれかに記載する方法。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する、ラクトンを生成し得るヒドロキシ酸、その薬学的に許容される塩またはそれらの水和物(HMG−CoAレダクターゼインヒビター)を有効成分とする固形の医薬組成物において、添加剤として含水二酸化ケイ素を配合することで、従来の方法〔一定の塩基性添加剤を用いることでその水性分散液をpH9以上にする方法(特許文献1参照)、アルカリ土類金属塩などの特定の金属塩添加剤を配合する方法(特許文献2参照)、特定の塩基性添加物を使用し、直接打錠法で製造する方法(特許文献3参照)、安定剤として塩基性アミノ酸を配合する方法(特許文献4参照)〕を特段使用しなくても、保存中における不純物の生成または増加を抑制することができ、その結果、不純物に起因する副作用の発生や有効成分(HMG−CoAレダクターゼインヒビター)の含量低下といった問題を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(I)固形医薬組成物及びその調製方法
本願発明の固形医薬組成物は、HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する、ラクトンを生成し得るヒドロキシ酸、その薬学的に許容される塩またはそれらの水和物(HMG−CoAレダクターゼインヒビター)に加えて、含水二酸化ケイ素を含有することを特徴とする。
【0034】
(1)有効成分
本願発明が対象とする、HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する、ラクトンを生成し得るヒドロキシ酸またはその薬学的に許容される塩とは
下記一般式(1):
【0035】
【化2】

【0036】
(式中、Rは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアミン:Rは任意の有機残基:mは1または2の整数を意味する。)
で示される構造を有する化合物である。当該化合物は、コレステロール合成の律速酵素であるHMG−CoA還元酵素を特異的に阻害する作用を有することから、HMG−CoAレダクターゼインヒビターとして高脂血症や高コレステロール血症の治療に広く使用されている。
【0037】
かかるヒドロキシ酸(Rが水素原子)としては、具体的には
下式(2)に示されるアトルバスタチン(atorvastatin)((3R,5R)−7−[2−(4−フルオロフェニル)−5−イソプロピル−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−イル]−3,5−ジヒドロキシヘプタン酸):
【0038】
【化3】

【0039】
下式(3)に示されるプラバスタチン(pravastatin)((1S,βR,δR,8aβ)−1,2,6,7,8,8a−ヘキサヒドロ−β,δ,6β−トリヒドロキシ−2β−メチル−8α−[(S)−2−メチル−1−オキソブトキシ]−1β−ナフタレンヘプタン酸):
【0040】
【化4】

【0041】
下式(4)に示されるフルバスタチン(fluvastatin)((3R,5S,6E)−3,5−ジヒドロキシ−7−[1−イソプロピル−3−(4−フルオロフェニル)−1H−インドール−2−イル]−6−ヘプテン酸):
【0042】
【化5】

【0043】
下式(5)に示されるピタバスタチン(pitavastatin)((3R,5S,6E)−3,5−ジヒドロキシ−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−6−ヘプテン酸):
【0044】
【化6】

【0045】
を挙げることができる。好ましくはアトルバスタチンである。
【0046】
これらのヒドロキシ酸は、薬学的に許容される塩(一般式(1)中のRがアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはアミン)の形態を有することもできる。かかる薬学的に許容される塩としては、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属塩、カルシウムやマグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、及びN,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、及びプロカインなどのアミンを挙げることができる。好ましくはアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩である。
【0047】
例えば、アトルバスタチンはカルシウム塩の形態(ビス[(3R,5R)−7−[2−(4−フルオロフェニル)−5−イソプロピル−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−イル]−3,5−ジヒドロキシヘプタン酸]カルシウム)で用いることが好ましく、またその水和物(ビス[(3R,5R)−7−[2−(4−フルオロフェニル)−5−イソプロピル−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−イル]−3,5−ジヒドロキシヘプタン酸]カルシウム・3水和物)として用いることがより好ましい。
【0048】
また、プラバスタチンはナトリウム塩の形態((1S,βR,δR,8aβ)−1,2,6,7,8,8a−ヘキサヒドロ−β,δ,6β−トリヒドロキシ−2β−メチル−8α−[(S)−2−メチル−1−オキソブトキシ]−1β−ナフタレンヘプタン酸ナトリウム)で用いることが好ましい。さらにフルバスタチンもナトリウム塩の形態((3R,5S,6E)−3,5−ジヒドロキシ−7−[1−イソプロピル−3−(4−フルオロフェニル)−1H−インドール−2−イル]−6−ヘプテン酸ナトリウム)で用いることが好ましく、またピタバスタチンはカルシウム塩の形態(ビス「(3R,5S,6E)−3,5−ジヒドロキシ−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−6−ヘプテン酸]モノカルシウム)で用いることが好ましい。
【0049】
これらのヒドロキシ酸やその塩は、非溶媒物形態で用いることもできるし、また水和物形態を含む溶媒和形態として用いることもできる。前述するようにアトルバスタチンまたはその塩は水和物形態で用いることが好ましい。
【0050】
これらのヒドロキシ酸、その薬学的に許容される塩またはその水和物はいずれも公知の化合物であり、公知方法に従って製造することができる。
【0051】
上記化合物を有効成分とする医薬組成物は、少なくとも後述する含水二酸化ケイ素とともに、固形状の製剤形態を有するように調製される。
【0052】
ここで固形状の形態を有する製剤としては、粉末剤(散剤)、細粒剤、顆粒剤、錠剤、丸剤、バッカル錠、トローチ剤、ドアイシロップ、粉末または顆粒を内部に充填したカプセル剤などの経口投与製剤を挙げることができる。好ましくは、錠剤である。なお、錠剤は、糖衣錠、ゼラチン被包錠、フィルムコーティング錠、腸溶性コーティング錠、有核錠(圧縮被包錠)、多層錠(二層又は三層)等の形態を有するものであってもよい。
【0053】
かかる最終形態の製剤100質量%に含まれる上記有効成分の割合としては、特に制限されないが、通常0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜40質量%、より好ましくは1〜30質量%、特に3〜25質量%程度を挙げることができる。
【0054】
(2)含水二酸化ケイ素
本発明において、含水二酸化ケイ素は、上記HMG−CoAレダクターゼインヒビターと共存させることにより、これを安定化し、ラクトン等を含む不純分の生成または増加を抑制することができる。
【0055】
含水二酸化ケイ素としては、アルカリ性を呈するものであればよいが、なかでもシリカゲルやホワイトカーボン等の含水無晶形二酸化ケイ素が望ましい。含水無晶形二酸化ケイ素は、天然の物でも珪酸ナトリウムと硫酸を反応させて得られる合成物でもあってもよい。
【0056】
なお、含水二酸化ケイ素がアルカリ性であるか否かは、含水二酸化ケイ素の5質量%懸濁水溶液がpH8〜12の範囲にあるか否かで判断することができる。好ましくは当該懸濁水溶液のpHが9〜12の範囲になるような含水二酸化ケイ素を用いることが好ましい。
【0057】
含水二酸化ケイ素とは、一般に乾燥減量値が7質量%よりも大きく15質量%以下の二酸化ケイ素を意味し、この点で乾燥減量値が7.0%以下の二酸化ケイ素(軽質無水ケイ酸)と、明確に区別することができる(薬添規、日局規格)。好ましくは、乾燥減量値が7.1〜15質量%の二酸化ケイ素である。
【0058】
なお、乾燥減量値は、対象とする含水二酸化ケイ素(約1g)の質量を精密に量り(A)、乾燥器に入れて105℃で3時間乾燥した後の質量(B)から、下式に従って算出することができる。
【0059】
【数1】

【0060】
本発明の固形医薬組成物に配合する含水二酸化ケイ素の割合としては、特に制限されないが、最終形態の製剤100重量%中の配合割合として、通常1〜50重量%、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%を挙げることができる。また、本発明の固形医薬組成物に含まれるHMG−CoAレダクターゼインヒビター(ヒドロキシ酸、その塩またはその水和物)の総量1質量部に対する割合として、通常0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上を挙げることができる。その上限は特に制限されないものの、10質量部を挙げることができる。好ましくは8質量部、より好ましくは6質量部である。
【0061】
(3)製剤化およびそれに使用される担体または添加剤
本発明の固形医薬組成物の調製には、その製剤形態(粉末剤(散剤)、顆粒剤、錠剤、丸剤、バッカル錠剤、トローチ剤、ドライシロップ、粉末または顆粒を内部に充填したカプセル剤)に応じて、当業界で通常使用される担体や添加剤が用いられる。
【0062】
但し、含水二酸化ケイ素を配合することによってHMG−CoAレダクターゼインヒビターの安定性を高め、不純物の生成または増加を抑制するという本発明の目的を損なわないために、本発明の固形医薬組成物はpHが8以上になるように調整されることが好ましい。好ましいpHとしては8〜12、より好ましくは9〜12である。なお、本発明の固形医薬組成物の当該pHは、その5質量%の懸濁水溶液のpHを測定することによって評価することができる。
【0063】
(3−1)賦形剤
賦形剤としては、制限されないが、例えば、糖類やデンプン類、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどが例示できる。
【0064】
糖類としては、例えば、単糖類(アラビノース、キシロース、ブドウ糖、果糖、ガラクトース、マンノース、ソルボースなど)、オリゴ糖類[ショ糖(例えば、白糖や精製白糖、粉糖、グラニュー糖など)、乳糖、麦芽糖、還元麦芽糖、イソマルトースなど]、糖アルコール(キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マンニトールなど)などが挙げられる。これらの糖類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの糖類のうち、通常、ブドウ糖や果糖などの単糖類、白糖、乳糖、還元麦芽糖などのオリゴ糖類、マンニトールやソルビトールなどの糖アルコールが使用される。
【0065】
デンプン類としては、例えば、デンプン(トウモロコシデンプン、小麦デンプン、馬鈴薯デンプン、米デンプン、甘藷デンプンなど)などが挙げられる。これらのデンプン類のうち、通常、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、馬鈴薯デンプンなどのデンプンが使用される。
【0066】
本発明の固形医薬組成物に配合する賦形剤の割合としては、特に制限されないが、最終形態の製剤100重量%中の配合割合として、通常5〜95重量%、好ましくは10〜85重量%、より好ましくは30〜70重量%を挙げることができる。また、本発明の固形医薬組成物に含まれるHMG−CoAレダクターゼインヒビター(ヒドロキシ酸、その塩またはその水和物)の総量100重量部に対する割合として、制限されないものの、通常50〜1900重量部、好ましくは100〜1700重量部、より好ましくは300〜1400重量部の割合を挙げることができる。
【0067】
(3−2)結合剤
結合剤としては、慣用の結合剤が使用でき、例えば、タンパク質類(ゼラチンなど)、多糖類(アラビアゴム、プルラン、デキストリン、トラガント、アルギン酸ナトリウムなど)、加工デンプン(α化デンプン、部分α化デンプン、加水分解デキストリン、エステル化デンプン、エーテル化デンプンなど)、セルロース誘導体(メチルセルロース、エチルセルロースなどのC1−4アルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロースなどのヒドロキシC1−4アルキルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシC1−4アルキルセルロースなど)、ビニル系重合体(ポリピニルピロリドン、ポリビニルアルコールなど)などが挙げられる。これらの結合剤のうち、非イオン性結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロースのヒドロキシC1−4アルキルセルロースや、部分α化デンプンなどの加工デンプンなど)が好ましい。これらの結合剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0068】
本発明の固形医薬組成物に配合する結合剤の割合としては、特に制限されないが、最終形態の製剤100重量%中の配合割合として、通常0.5〜10重量%、好ましくは0.5〜7重量%、より好ましくは1〜5重量%を挙げることができる。また、本発明の固形医薬組成物に含まれるHMG−CoAレダクターゼインヒビター(ヒドロキシ酸、その塩またはその水和物)の総量100重量部に対する割合として、制限されないものの、通常5〜200重量部、好ましくは5〜140重量部、より好ましくは10〜100重量部の割合を挙げることができる。
【0069】
(3−3)崩壊剤
崩壊剤としては、固形製剤分野で慣用されている崩壊剤を広く用いることができる。好ましくはセルロース、セルロース誘導体、クロスポピドン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチ、またはこれらの塩を挙げることができる。ここで塩には、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属塩、マグネシウムやカルシウム等のアルカリ金属土類塩が含まれる。
【0070】
またセルロース誘導体またはその塩としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルセルロース(カルメロース、クロスカルメロースを含む)およびそのナトリウム塩またはカルシウム塩、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロース、および結晶セルロース・カルメロースナトリウムを挙げることができる。好ましくは低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース(カルメロース、クロスカルメロースを含む)またはそのナトリウム塩またはカルシウム塩、および結晶セルロースである。
【0071】
これらの崩壊剤は単独で使用することもできるが、二種以上併用することもできる。
【0072】
ここでクロスポビドンは、1−エテニルピロリジン−2−オンの架橋ホモポリマーであり、医薬品添加剤(崩壊剤など)として広く使用されている成分である。本発明においても医薬品添加物規格で規定されるクロスポビドンを広く使用することができる。かかるクロスポビドンは、商業的に入手することができ、例えばコリドンCL(BASF社製)、ポリプラスドンXL、ポリプラスドンXL−10、およびポリプラスドンINF−10(以上、ISP社製)などを挙げることができる。
【0073】
低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとして、例えばヒドロキシプロピルセルロースにおけるヒドロキシプロポキシル基含量(以下、HPC基含量と略記することもある)が、約7〜13重量%である低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを挙げることができる。中でも、崩壊性改善作用から、HPC基含量が約7〜9.9重量%である低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。これらの低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、商業的に入手することができ、例えば信越化学工業(株)から、LH−11、LH−21、B1およびLH−31(以上、HPC基含量:10−12.9%)、並びにLH−22およびLH−32(以上、HPC基含量:7.0−9.9%)として販売されている。
【0074】
カルメロースは、セルロースの多価カルボキシメチルエーテルであり、別名カルボキシメチルセルロース、CMC、または繊維素グリコール酸とも称され、医薬品添加剤(崩壊剤など)として広く使用されている成分である。本発明においても日本薬局方で規定されるカルメロースを広く使用することができる。かかるカルメロース及びそのカルシウム塩はいずれも商業的に入手することができ、例えばカルメロースとしてはNS−300(五徳薬品(株))、そのカルシウム塩としてはE.C.G−505(五徳薬品(株))などを挙げることができる。
【0075】
また、クロスカルメ口ースは、セルロースの多価カルボキシメチルエーテル架橋物であり、別名内部架橋カルボキシメチルセルロースとも称される。クロスカルメロースのナトリウム塩として、本発明においても日本薬局方で規定されるクロスカルメロースナトリウムを広く使用することができる。かかるクロスカルメロースナトリウムは、商業的に入手することができ、例えばアクジゾル(大日本住友製薬(株))などを挙げることができる。
【0076】
なお、使用する崩壊剤の形態は粉末状または顆粒状である。制限はされないが、最終錠剤の均一性を担保するためには、1〜300μm程度、好ましくは1〜200μm程度の平均粒子径を有する粉末状または顆粒状の崩壊剤を用いることが好ましい。
【0077】
本発明の固形医薬組成物に配合する崩壊剤の割合としては、特に制限されないが、最終形態の製剤100重量%中の配合割合として、通常0.5〜10重量%、好ましくは0.5〜7重量%、より好ましくは1〜5重量%を挙げることができる。また、本発明の固形医薬組成物に含まれるHMG−CoAレダクターゼインヒビター(ヒドロキシ酸、その塩またはその水和物)の総量100重量部に対する割合として、制限されないものの、通常5〜200重量部、好ましくは5〜140重量部、より好ましくは10〜100重量部の割合を挙げることができる。
【0078】
(3−4)滑沢剤
また滑沢剤としては、従来から錠剤の製造において、粉体の流動性をよくし圧縮形成を容易にするために用いられる医薬品添加剤を同様に使用することができる。かかる滑沢剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、タルク、水素添加植物油、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、フマル酸ステアリルナトリウムを挙げることができる。好ましくはステアリン酸マグネシウム、およびフマル酸ステアリルナトリウムである。
【0079】
本発明の固形医薬組成物に配合する滑沢剤の割合としては、特に制限されないが、最終形態の製剤100重量%中の配合割合として、通常0.1〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%、より好ましくは0.1〜2重量%を挙げることができる。また、本発明の固形医薬組成物に含まれるHMG−CoAレダクターゼインヒビター(ヒドロキシ酸、その塩またはその水和物)の総量100重量部に対する割合として、制限されないものの、通常1〜100重量部、好ましくは1〜60重量部、より好ましくは1〜40重量部の割合を挙げることができる。
【0080】
(3−5)その他の成分
本発明の医薬組成物は、本発明の効果を損なわない限り、上記以外の添加物であって、製剤化に一般的に使用される添加物を配合することもできる。かかる添加物としては、例えば、流動化剤(例えば、軽質無水ケイ酸等)、抗酸化剤、矯味剤(甘味料を含む)、酸味料、香料、着色剤、溶解補助剤またはpH調整剤を例示することができる。
【0081】
抗酸化剤としては、慣用の抗酸化剤が使用でき、例えば、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、トコフェロール、没食子酸プロピル、グアヤク脂、ノルジヒドログアヤレチック酸、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ロンガリットなどが挙げられる。好ましくは、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、アスコルビン酸であり、特に好ましくはブチルヒドロキシアニソールである。これらの抗酸化剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。抗酸化剤は、最終の医薬組成物中の割合が、通常10〜5000ppm、好ましくは20〜1000ppm、さらに好ましくは30〜500ppm程度になるように調整することが好ましい。
【0082】
矯味剤(甘味料を含む)としては、砂糖、澱粉糖、乳糖、蜂蜜、糖アルコール、および高甘味度甘味料等を用いることができる。砂糖としては、例えば白糖、カップリング糖、フラクトオリゴ糖、パラチノース等;澱粉糖としては、例えばブドウ糖、麦芽糖、粉飴、水飴、異性化糖(果糖)等;乳糖としては、例えば乳糖、異性化乳糖(ラクチュロース)、還元乳糖(ラクチトール)等;糖アルコールとしては、例えばソルビトール、エリスリトール、マンニトール、還元麦芽糖水飴(マルチトール)、還元澱粉糖化物、キシリトール、還元パラチノース等;をそれぞれ用いることができる。また高甘味度甘味料としては、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、スクラロース、ステビア、グリチルリチン三カリウム、カンゾウ、アセスルファム等を挙げることができる。
【0083】
酸味料としては、例えばクエン酸、酒石酸、リンゴ酸等;香料としてはメントール、ハッカ油、レモン油、オレンジ油、グレープフルーツ油等;着色剤としては、例えば食用黄色5号、食用赤2号、食用青色2号などの食用色素、食用レーキ色素、ベンガラ等の酸化鉄を、それぞれ用いることができる。
【0084】
本発明の固形医薬組成物は、最終形態に応じて、前述する各種の成分を製剤分野における慣用の方法を用いて混合し、所望の固形投与形態に成形することによって製造することができる。
【0085】
例えば造粒には、慣用の造粒法、具体的には、押出造粒法、転動造粒法、流動層造粒法、混合・攪拌造粒法、噴霧乾燥造粒法、振動造粒法などの湿式造粒法や、圧縮成形造粒法などの乾式造粒法が採用できる。これらの造粒法のうち、通常、押出造粒法、転動造粒法、流動層造粒法、混合・攪拌造粒法などの湿式造粒法を好ましく利用できる。例えば、最終形態が錠剤である場合、例えば、有効成分であるHMG−CoAレダクターゼインヒビターと、含水二酸化ケイ素及び賦形剤と、必要により抗酸化剤や安定化剤、結合剤などとを湿式造粒し、乾燥させた後、必要により滑沢剤や流動化剤などの添加剤を加えて打錠して得ることができる。湿式造粒における溶媒は、特に制限されないが、水及び低級アルコール(例えば、エタノールなど)から選択された少なくとも一種の溶液、安全性の面から、特に水やエタノール溶液が好ましく使用できる。
【0086】
具体的には、例えば、錠剤を調製する場合、まずHMG−CoAレダクターゼインヒビターと含水二酸化ケイ素、及びその他の添加剤を前述の方法で混合し、造粒し整粒する。ここで混合は、例えば、V型混合機(徳寿工作所製等)、ツインブレード型混合機、撹拌混合機((株)ダルトン製など)等の機械を用いて行うことができる。かかる混合工程によって得られた混合物に、次いで滑沢剤を配合し、混合して、圧縮成形して錠剤形態に調製する。圧縮成形は、油圧式ハンドプレス機、単発錠剤機、またはロータリー式打錠機等の当該分野において通常使用される打錠機を用い、通常0.3〜3ton/cm、好ましくは0.3〜2ton/cmの圧力で打錠することにより行われる。
【0087】
本発明では、従来HMG−CoAレダクターゼインヒビターの安定化剤として公知の、ケイ酸アルミニウム、リン酸水素カルシウム、乳酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、塩基性アミノ酸(リシン、アルギニン、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、トリプトファン、プロリン、オキシプロリン)を実質的に用いることなく、含水二酸化ケイ素を用いて固形製剤を調製することにより、ラクトンを生成しえるヒドロキシ酸、その塩またはその水和物であるHMG−CoAレダクターゼインヒビターの安定性を向上することができる。
【0088】
このようにして得られた本発明の固形医薬組成物は、抗コレステロール療法が必要とされる高コレステロール血症または高脂血症を有する患者に経口的に投与される。その投与量は、有効成分の種類に応じて所定量とすることができ、例えば0.5〜120mgA(mgAは、その遊離酸に基づく有効成分のミリグラムを意味する)、好ましくは5〜80mgAを例示することができる。なお、有効成分がアトルバスタチンカルシウム水和物である場合、高コレステロール血症の患者(成人)には1日1回10〜20mgの範囲で投与することができ、また家族性高コレステロール血症の患者(成人)には1日1回10〜40mgの範囲で投与することができる。
【0089】
(III)固形医薬組成物の安定化方法
また本発明は、HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する、ラクトンを生成し得るヒドロキシ酸、その薬学的に許容される塩またはそれらの水和物(HMG−CoAレダクターゼインヒビター)を有効成分とする固形医薬組成物を対象として、当該固形医薬組成物におけるラクトンを含む不純物の生成または増加を抑制する方法を提供する。当該方法は、固形医薬組成物(固形製剤)の製造にあたり、有効成分であるHMG−CoAレダクターゼインヒビターに加えて、添加剤として含水二酸化ケイ素を配合することによって実施することができる。
【0090】
ここで使用する、HMG−CoAレダクターゼインヒビター及び含水二酸化ケイ素の種類およびその配合割合、その他の任意成分の種類やその配合割合、並びに固形医薬組成物の形態及び調製方法は、(I)で説明した通りである。
【0091】
本発明の方法によれば、従来HMG−CoAレダクターゼインヒビターの安定化剤として公知の、ケイ酸アルミニウム、リン酸水素カルシウム、乳酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、塩基性アミノ酸(リシン、アルギニン、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、トリプトファン、プロリン、オキシプロリン)を実質的に用いることなく、含水二酸化ケイ素を用いて固形製剤を調製することにより、ラクトンを生成しえるヒドロキシ酸、その塩またはその水和物であるHMG−CoAレダクターゼインヒビターの安定性を向上することができる。
【0092】
なお、HMG−CoAレダクターゼインヒビターの安定性は、不純物の生成または増加の程度によって評価することができる。ここで不純物とは、HMG−CoAレダクターゼインヒビター中に生じるHMG−CoAレダクターゼインヒビター以外の成分を意味する。HMG−CoAレダクターゼインヒビター中における不純物の生成または増加が抑制されていれば、HMG−CoAレダクターゼインヒビターの安定性が向上していると判断することができる。本発明において、不純物の生成または増加が抑制されているか否かは、具体的には含水二酸化ケイ素を配合して調製した固形医薬組成物(被験組成物)と含水二酸化ケイ素を配合しないで調製した固形医薬組成物(比較組成物)とを、それぞれ少なくとも60℃の恒温条件下に7日間放置した場合における不純物の生成または増加量によって判断することでき、比較組成物に比して被験組成物中の不純物の生成または増加量が少ない場合は、不純物の生成または増加が抑制されていると判断することができる。
【0093】
かかる不純物の検出は、実施例で説明するように、HPLC法(グラジエント法)にて、ODSカラムを用いて測定することによって実施することができる。
【実施例】
【0094】
以下、本発明の内容を以下の実験例を用いて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実験例に何ら制限されるものではない。なお、下記の実験例において、特に言及しない限り、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ意味するものとする。
【0095】
実験例1
主薬アトルバスタチンカルシウムを、表1に示す添加剤と重量比3:1の割合で均一になるように混合し医薬組成物を調製した。得られた医薬組成物を、オープンシャーレ上に置き、60℃で7日間保存した(湿度は未調整)。保存後、医薬組成物に含まれる不純物の含有量(%)を、液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てんしたカラムを用いた逆相高速液体クロマトグラフィーにより求めた。検出は、紫外吸光光度計を用いて波長246nmにおける各々のピーク面積を測定することで行った。医薬組成物中に含まれるアトルバスタチンに対する不純物の割合(%)は、具体的には下記の式から算出した。
【0096】
【数2】

【0097】
また、各添加剤による分解抑制率(%)を下式に従って算出した。
【0098】
【数3】

【0099】
結果を表1に併せて示す。
【0100】
【表1】

【0101】
この結果から、主薬アトルバスタチンカルシウムに含水二酸化ケイ素を配合することで、不純物の生成または増加が有意に抑制できることが確認できた。
【0102】
表2に、有効成分としてアトルバスタチンカルシウム等のHMG−CoAレダクターゼインヒビター、及び含水二酸化ケイ素を含有する固形の医薬組成物(固形製剤)の処方を記載する。
【0103】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する有効成分として、ラクトンを生成し得るヒドロキシ酸、その薬学的に許容される塩またはそれらの水和物に加えて、含水二酸化ケイ素を含有することを特徴とする、不純物の生成または増加が抑制されてなる固形医薬組成物。
【請求項2】
ラクトンを生成し得るヒドロキシ酸、その薬学的に許容される塩またはそれらの水和物を総量で1〜50質量%の割合で含有することを特徴とする、請求項1に記載する固形医薬組成物。
【請求項3】
上記有効成分が、アトルバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン、それらの薬学的に許容される塩、及びそれらの水和物からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載する固形医薬組成物。
【請求項4】
上記有効成分がアトルバスタチンカルシウム水和物である請求項1または2に記載する固形医薬組成物。
【請求項5】
HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する有効成分として、ラクトンを生成し得るヒドロキシ酸、その薬学的に許容される塩またはそれらの水和物;含水二酸化ケイ素;及び薬学的に許容される担体または添加剤を混合し、湿式造粒する工程、及び
当該顆粒に滑沢剤を配合混合して、得られた混合物を錠剤に成型するか、またはカプセルに充填する工程
を有する請求項1乃至4のいずれかに記載する、ラクトンを含む不純物の生成または増加が抑制されてなる固形医薬組成物の調製方法。
【請求項6】
HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する、ラクトンを生成し得るヒドロキシ酸、その薬学的に許容される塩またはそれらの水和物を有効成分とする固形医薬組成物の調製において、添加剤として含水二酸化ケイ素を配合することを特徴とする、当該固形医薬組成物におけるラクトンを含む不純物の生成または増加を抑制する方法。

【公開番号】特開2012−36163(P2012−36163A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183447(P2010−183447)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(508179903)マイラン製薬株式会社 (4)
【Fターム(参考)】