HTC樹枝状充填剤の形成
一つの実施態様においては、本発明は、HTCシード42をホスト樹脂マトリックスに添加することを含んでなる、ホスト樹脂マトリックスの内部でHTC樹枝状充填剤40を形成させる方法を提供する。HTCシードは表面官能化されてはいるが、相互間では実質的に反応していない。次いで、シードは、HTCの構成ブロック42を集積する。HTCの構成ブロックは既に表面官能化されているが、相互間では実質的に反応していない。次いで、HTCシードを有するHTCの構成ブロックが集まって、ホスト樹脂マトリックスの内部にHTC樹枝状充填剤40が生成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、樹脂マトリックス中における樹枝状構造体の形成に関する。
【0002】
本出願は、スミス等による米国特許出願第11/152,983号「樹脂に導入されたHTC材料(HTC Materials Incorporated into Resins)」の一部継続出願である(この出願を参考として本明細書に組み入れる)。
【背景技術】
【0003】
どのような形態の電気製品であれ、その使用には、導体を電気的に絶縁することが必要である。絶え間なく小型化が求められ、全ての電気及び電子システムの簡素化が要望されているので、それに対応する、より良好でコンパクトな絶縁材と絶縁系が必要とされている。
【0004】
表面へ容易に接着させることが可能な強靱で可撓性のある電気絶縁材料であるという実用的な利点を有しているので、各種のエポキシ樹脂材料が、電気絶縁系において広く使用されてきた。従来から使用されてきた、マイカフレーク及びガラス繊維等の、電気絶縁材料を表面被覆してそれらのエポキシ樹脂を用いて接着させると、機械的強度、耐薬品性及び電気絶縁性の向上した複合体を製造することができる。多くの場合、エポキシ樹脂が従来から使用されてきたワニスに取って代わってきたが、それでもワニスは、ある種の高電圧電気装置においては使用され続けている。
【0005】
良好な電気絶縁材は、それらの本来的な性質から、良好な断熱材ともなる傾向があるが、これは望ましいことではない。断熱挙動は、特に空冷式の電気装置及び構成部品の場合には、その構成部品、更には、その装置全体の効率及び耐久性を低下させる。最大の電気絶縁性と最小の断熱特性とを有する電気絶縁系を製造することができれば望ましい。
【0006】
電気絶縁材料はテープの形態で見られることが多いが、それら自体、種々の層を有している。これらのタイプのテープに共通しているのは、繊維層との界面に接着された紙層であり、これら2つの層は、樹脂を用いて含浸されていることが多い。一つの好ましい絶縁材料は、マイカ−テープである。マイカテープにおける改良としては、米国特許第6,103,882号明細書に教示されているような触媒化マイカテープが挙げられる。マイカ−テープは導体の周りに巻き付けることが可能で、極めて良好な電気絶縁性を与えることができる。その一例を図1に示す。ここに図示されているのは、導体14の複数の巻線を含むコイル13であり、それらは、ここで示した例においては、組み立てられてベークライト処理された(bakelized)コイルとなっている。巻線絶縁材15は、繊維質材料、例えばガラス、又はガラスと熱処理をしたダクロン(Dacron)とから調製される。ベークライト処理されたコイル14の周りに複合体マイカテープ16の1層又は複数層を巻き付けることによって、コイルの基礎絶縁(ground insulation)が得られる。このような複合体テープは、例えば、ガラス繊維布又はポリエチレンテレフタレートマット若しくはフィルム等の、柔軟な裏打シート18と組み合わせた、紙又は小さいマイカフレークのフェルトであってよく、マイカ20の層は、液状樹脂バインダーによってそれに接着されている。一般的には、電圧の要求に合わせて、複合体テープ16の複数の層をコイルの周りに巻き付ける。強靱な繊維質材料、例えばガラス繊維、の外側テープ21を、コイルの周りに巻き付けてもよい。
【0007】
一般的には、マイカテープ16の多数の層をコイルのまわりに巻き付けるが、高電圧コイルの場合には、一般的に、16層以上が使用される。次いで、樹脂をテープ層の中に含浸させる。樹脂は、絶縁テープからは独立して、絶縁材として使用することもできる。残念ながら、断熱材の量をこのようにすると、熱の放散が複雑化するという問題が更に加わるだけのことである。必要とされていることは、従来の方法による電気絶縁よりも熱の伝導性が高い電気絶縁であって、しかし、電気絶縁性並びに機械的及び熱的な性能を始めとするその他の性能因子について妥協することのない電気絶縁である。
【0008】
従来技術に伴うその他の問題点も存在するが、それらについては本明細書を更に読めば明らかになるであろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
高熱伝導性(HTC)有機−無機ハイブリッド材料は、分離されている(discrete)2相有機−無機複合体から、分子アロイに基づく有機−無機連続相材料から、及びデンドリマーコア−シェル構造の内部で有機−無機界面が分離されていない(non−discrete)、分離されている有機−デンドリマー複合体から、形成させることができる。連続相材料構造体は、その構造要素の長さ方向のスケールを、熱輸送を担っているフォノンの分布よりも、短く又は同程度にすることによって、フォノン輸送が促進され、且つ、フォノン散乱が抑制されるように形成させてもよいし、及び/又は例えば、マトリックスの総体的な構造の次数を高めるか、及び/又は複合体の内部における界面のフォノン散乱を効果的に除去するか又は減少させることによって、フォノンの散乱中心の数が減少されるように形成させてもよい。
【0010】
連続の有機−無機ハイブリッドは、直鎖状又は架橋されたポリマー(熱可塑性プラスチックを含む)及び熱硬化性樹脂の中に、無機、有機又は有機−無機ハイブリッドナノ粒子を組み入れることにより形成させることができるが、そこではナノ粒子の寸法が、ポリマー又はネットワークのセグメントの長さ(典型的には1〜50nm又はそれ以上)のオーダー又はそれ以下である。これら種々のタイプのナノ粒子は、緊密な共有結合的に結合されたハイブリッド有機−無機均質材料を形成させるための反応性の表面を有するであろう。同様な要請は無機−有機デンドリマーの場合にも存在して、それらを、相互に反応するか、又はマトリックスポリマー若しくは反応性樹脂と反応して、連続材料を形成することができる。分離及び非分離の有機−無機ハイブリッドの場合には、いずれも、ゾルーゲル化学反応を使用して、連続的分子アロイを形成させることができる。このようにして得られる材料は、従来からの電気絶縁材料よりも高い熱伝導性を示し、従来からのマイカ−ガラステープ構成物の中の接着樹脂として使用してもよく、未反応の真空圧含浸樹脂として、或いは単独の材料として使用したときに、回転式及び静電式発電プラントにおいて、そして高電圧(約5kV)及び低電圧(約5kV以下)両方の電気装置、構成部品及び製品においても、電気絶縁的応用を満足させる。
【0011】
上述の物理的特性及び性能特性を有し、有機ホスト材料の存在下にナノ〜マイクロサイズの無機充填剤を使用することに基づいて、品質設計された電気絶縁材料を形成させるためには、有機ホストと親密な界面を形成することができる粒子表面の生成が必要である。このことは、充填剤の表面の上に化学基をグラフトさせて、その表面をホストマトリックスに対して化学的及び物理的に親和性にすることによって達成させてもよいし、或いは、粒子表面が有機ホストと反応する化学的反応性の官能基を含んでいて、粒子とホストとの間に共有結合が形成されてもよい。有機ホスト材料の存在下にナノ〜マイクロサイズの無機充填剤を使用するためには、バルク誘電特性及び電気特性並びに熱伝導性に加えて、所定の表面化学的性質を有する粒子の製造が必要である。ほとんどの無機材料では、形状及びサイズのような構造的特性と、様々の電気絶縁用途に適合させたり又は特性と性能との適切なバランスを有する複合体を得たりするための特性とを、独立して選択することは不可能である。このため、適切なバルク特性と形状及びサイズの特性とを有する粒子を選択し、次いで、その表面及び界面特性並びにその他の特性を変性して、電気絶縁用途において必要とされる複合体としての特性及び性能を更に制御できるようにする。また、粒子の適切な表面被覆をしてもよく、この表面被覆は、金属系及び非金属系の無機酸化物、窒化物、炭化物及び混合系、並びに電気絶縁系においてホスト材料として機能する適切な有機マトリックスと反応することが可能な反応性表面基を有する有機被覆であってもよい。そうして得られる、未反応の又は部分的に反応した形態のハイブリッド材料及び複合体は、マイカ−ガラステープ構造体における接着樹脂として、従来からのマイカテープ構造体のための未反応の真空圧含浸樹脂として、その他のガラス繊維、炭素繊維並びに積層タイプ複合体及び織物複合体において、並びに回転式及び静電式発電プラントにおいて、そして高電圧と低電圧との両方の電気装置、構成部品及び製品において、電気絶縁的用途を満足させるための単独の材料として使用することができる。
【0012】
高熱伝導性(HTC)含浸媒体を通してのフォノンの輸送を改良するためには、HTC材料間の平均距離をフォノンの平均経路長よりも短くするか、又はフォノンの平均自由行程が大きい媒体を使用することが必要である。これによってフォノン散乱が抑制され、熱源からのフォノンの正味流れ又は流束をより大きくすることができる。樹脂材料の粘度が低い場合には、それを多層絶縁テープのようなホストマトリックス媒体に染み込ませてもよい。
【0013】
HTC樹枝状構造体は、近接及び隣接しているHTC粒子が本来的に密集していて、それらが総合的に高い秩序度を有しているので、熱良導体となる。これらの構造体は、数百、数千の粒子の長さを持っていて、分岐されていてもよく、同一の樹脂の内部で他の樹枝状構造体との間で多くの相互接続を有していて、それらが一緒になって浸透(percolation)ネットワークを形成する。樹枝状充填剤を形成するためには、表面官能化HTC材料が相互に反応するか、又は充填剤が粒子間力の結果として自己集合する。樹枝状構造体の分岐が多いほど、それが充填された樹脂中の粒子相の相互接続性が良好となる。従って、多くの結合粒子構造体と粒子−粒子相互作用とがあると、より高い熱伝導性を有する充填された樹脂が得られる。
【0014】
樹枝状構造体は、HTCの構成ブロック(building block)を取り込むHTCシードによって樹脂の中に形成される。既に取り込まれた構成ブロックに更にシードが結合して、これにより、樹枝状構造が成長する。このHTCシード及び構成ブロックが本明細書に記載されているHTC材料であり、これらが、物理的に、そして、表面官能化基の存在によって互いに結合されている。後に説明するように、これら二つを、樹脂の用途に従って、種々の方法によって組み合わせることができる。
【0015】
本発明の、これらの及びその他の目的、特徴並びに利点は、ホスト樹脂マトリックスにHTCシードを添加することからなる、ホスト樹脂マトリックス内部にHTC樹枝状充填剤を形成する方法による具体的な実施例によって示される。HTCシードは表面官能化されてはいるが、それらは相互の間では実質的に反応していない。次いでそれらのシードがHTCの構成ブロックを集積するが、それらのHTCの構成ブロックは既に表面官能化されているものの、相互の間では実質的に反応していない。次いで、HTCの構成ブロックをHTCシードと組み立てて、ホスト樹脂マトリックスの内部にHTC樹枝状充填剤が得られる。
【0016】
具体的な実施態様においては、HTCの構成ブロックがHTCシードと反応するが、これは、これら二つの化学種の間で表面官能化基が相互に反応するということを意味している。他の実施態様においては、HTCの構成ブロックがHTCシードと相互作用するが、これは物理的な粒子−粒子相互作用が存在するということを意味している。
【0017】
他の実施態様においては、添加されたHTCシードを有するホスト樹脂を多孔質媒体の中に染み込ませることによって、HTCの構成ブロックが集積され、多孔質媒体にHTCの構成ブロックが含有される。多孔質媒体は、複合体テープであってもよいし、天然の有機若しくは無機ポリマー繊維マトリックス又は織物であってもよい。
【0018】
更に他の実施態様においては、HTCの構成ブロックは、ホスト樹脂マトリックスの中にHTCの構成ブロックを混合することによって集積される。関連する実施態様においては、集積させた後に、HTCの構成ブロックのHTCシードとの反応を遅い化学反応として進行させる。更には、ナフテン酸亜鉛、クロムアセチルアセトナート、塩化トリベンジルスズ、酢酸トリベンジルスズ、及び/又はチタン酸テトラブチルのような、促進剤を添加した後に、HTCの構成ブロックのHTCシードとの反応を進行させる。
【0019】
更に他の関連する実施態様においては、HTCシードを表面官能化させて、平均して1を超える表面官能基を持たせる。別な方法として、HTCの構成ブロックを表面官能化させて、平均して1を超える表面官能基を持たせる。HTCシードは、酸化ケイ素、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム及び窒化ケイ素からなる群より選択することができ、HTCの構成ブロックは、窒化ホウ素、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素からなる群より選択することができる。
【0020】
その他の関連する実施態様においては、一定割合のHTCシードがホスト樹脂マトリックスにグラフトされるが、HTCシードは、HTCの構成ブロックを集積するより前に、ホスト樹脂マトリックスにグラフトされてもよい。HTC樹枝状充填剤は、ホスト樹脂マトリックスの5〜40体積%であり、HTC樹枝状充填剤からなるHTCの構成ブロックに対するHTCシードの比率は、体積で、約(2:1)から(1:4)までの範囲である。
【0021】
また別な実施態様においては、本発明は、ホスト樹脂を得る工程及びそのホスト樹脂にHTCシードを添加する工程からなる、樹脂含浸された多孔質媒体の内部にHTC樹枝状構造体を形成させるための、方法を提供する。HTCシードは、実質的に相互には反応せず、一定割合のHTCシードがホスト樹脂にグラフトされる。この割合は変更可能であるが、少なくとも5%である。次いで、HTCの構成ブロックを多孔質媒体に挿入するが、HTCの構成ブロックは、実質的に相互には反応しない。この方法には、更に、多孔質媒体の中にホスト樹脂を染み込ませて、ホスト樹脂がホスト媒体からHTCの構成ブロックを取り込む工程、及びHTCの構成ブロックをHTCシードと反応及び相互作用させて、ホスト樹脂マトリックスの内部にHTC樹枝状充填剤を得る工程、も含まれる。次いで、そのホスト樹脂を硬化させる工程がある。
【0022】
関連する実施態様においては、実質的に全部のHTCシードをHTCの構成ブロックと反応させる。その方法には更に、補足的な構成ブロックをホスト樹脂の中に直接混合する工程が含まれていてもよい。その他の具体的な実施態様においては、実質的に全部のHTCシードをホスト樹脂にグラフトさせ、多孔質媒体として複合体テープを使用する。
【0023】
本発明のその他の実施態様も存在するが、それらは、詳細な説明を更に読めば明らかになるであろう。
図面を参照して、例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
高熱伝導性(HTC)複合体は、充填剤と組み合わされた樹脂系ホストネットワークからなる、2相の有機−無機ハイブリッド材料である。有機−無機ハイブリッド材料は、2相の有機−無機複合体から、分子アロイに基づく有機−無機連続相材料から、及び、その中の有機−無機界面がデンドリマーのコア−シェル構造とは非分離であるような、分離した有機−デンドリマー複合体から、形成されている。構造要素の長さ方向のスケールが、熱輸送を担っているフォノンの分布よりも短いか又は同程度になるようにすることによって、フォノン輸送が促進され、フォノン散乱が抑制される。
【0025】
2相の有機−無機ハイブリッドは、無機のマイクロ、メソ又はナノ−粒子を、直鎖状又は架橋されたポリマー(熱可塑性プラスチック)及び熱硬化性樹脂に導入することによって形成してもよい。ホストネットワークには、ポリマー及び他のタイプの樹脂が含まれるが、これらの定義については後述する。一般的には、ホストネットワークとして機能する樹脂は、粒子と親和性があり、必要に応じて、その充填剤の表面に導入された基と反応することが可能なものであれば、どのような樹脂であってもよい。ナノ粒子の寸法は、典型的には、ポリマーネットワークのセグメントの長さのオーダー又はそれ以下である。例えば1〜30nmである。無機粒子には反応性表面が含まれていて、共有結合的に結合されたハイブリッド有機−無機均質材料を形成する。これらの粒子は、酸化物、窒化物、炭化物、並びに、酸化物、窒化物及び炭化物の化学量論的及び非化学量論的ハイブリッド混合物であってよいが、その更なる例は後ほど挙げる。
【0026】
無機粒子に表面処理をして、ホストネットワークとの反応に関与できる各種の表面官能基を導入する。そのような表面官能基としては、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシド、シラン及びビニルの各基が挙げられるが、これらに限定されない。これらの基は、湿式化学法、非平衡プラズマ法、化学的及び物理的蒸着法、スパッターイオンプレーティング法並びに電子及びイオンビーム蒸発法を使用して適用すればよい。
【0027】
分離した有機−デンドリマー複合体は、互いに反応させてもよいし、樹脂マトリックスと反応させて単一の材料を形成させてもよい。デンドリマーの表面には、先に述べたのと同様の反応性基を含ませることが可能で、これによって、デンドリマー−デンドリマー又はデンドリマー−有機マトリックスの反応が起きるであろう。デンドリマーは、無機コアと、対象としている反応性基を含む有機シェルとを有するであろう。無機シェルを含む有機コアを得ることも可能であり、このものも、また、一般的なゾルーゲル化学反応に関連するものと同様な無機反応に関与することが可能な、ヒドロキシル又はシラン基等の反応性基を含む。
【0028】
非分離の有機−無機ハイブリッドの使用に関しては、ゾル−ゲル化学反応を使用して、連続な分子アロイを形成させることができる。水性及び非水性反応に関連するゲル−ゾル化学反応を使用することができる。有機−無機ハイブリッドを形成させるためのその他の化合物には、ポリヘドラルオリゴマー性シルセスキオキサン(POSS)、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、及びテトラブチルオルトチタネート(TBOT)、並びに関連するモノマー性及びオリゴマー性ハイブリッド化合物が挙げられるが、これらは有機官能化無機化合物である。POSSの例においては、R−SiO1.5の構成ブロックの回りに分子が集合させられる。ここで、基Rは、他の有機化合物及びホストネットワークと親和性があるか、及び/又は反応するように選択される。ベース化合物を組み合わせて、ポリマーセグメント及びコイル構造体のサイズと同程度のより大きな分子を得てもよい。POSSを使用して、有機−無機ハイブリッドを創り出してもよいし、既存のポリマー及びネットワークにグラフトさせて、熱伝導性を始めとする特性を制御してもよい。これらの材料は、アルドリッチ ケミカル カンパニー(Aldrich Chemical Co.)(商標)、ハイブリッド プラスチックス Inc(Hybrid Plastics Inc)(商標)、及びゲレスト Inc.(Gelest Inc.)(商標)等の供給業者から得ることができる。
【0029】
先にも述べたように、フォノン散乱を抑制するためには、材料の構造的形態を制御することが重要である。このことは更に、マトリックスが、高熱伝導性を示すこと、この効果を維持するに十分な粒子のサイズ及び樹脂との界面特性を有すること、並びにフォノン散乱を抑制するために必要とされる長さ方向のスケールを満足することが知られているナノ粒子を使用することによって更に促進される。長短両周期を有する反応デンドリマー格子並びに液晶エポキシ及びポリブタジエンのようなホスト樹脂から形成されるはしご構造又は秩序のあるネットワーク構造を始めとする、より秩序の高い構造体を選択すれば、それもまた、このことに対して有利に働くであろう。
【0030】
充填樹脂は、回路基板及び絶縁テープのような各種の産業において接着樹脂として使用することができる。一つの具体的な絶縁テープの種類は、発電機の分野で使用されるマイカ−ガラステープである。これらのタイプのテープにおいて、樹脂は、当技術分野において知られているように、接着樹脂として又は含浸樹脂として使用される。充填樹脂は更に、テープを用いない発電機分野において、回転及び静止電気装置構成部品における電気絶縁としての適用を満たすために使用してもよい。
【0031】
テープは、電気的な対象物に適用する前又は後に、樹脂で含浸してよい。樹脂含浸法としては、VPI法及びGVPI法が挙げられるが、それらについては、以下に説明する。VPI法においては、テープを一旦重ね合わせて含浸し、それを圧縮する。位置を合わせてから、圧縮されたテープの中の樹脂を硬化させると、HTC材料の位置が効果的に固定される。いくつかの実施態様においては、当業者には自明のことであるが、樹脂を2段法で硬化させる。しかしながら、充填されたHTC材料を最適に圧縮するには、その圧縮工程中、完全に未硬化の樹脂であるのが好ましい。
【0032】
図2に、本発明の一つの実施態様を示す。ここに示されているのは、樹脂マトリックス32の中に充填されたHTC材料30である。マトリックスを通って移動するフォノン34は平均経路長nを有しているが、これが、そのフォノンの平均自由行程である。この経路長は、まさに樹脂マトリックスの組成に従って変化し得るが、エポキシ樹脂のような樹脂の場合には、一般的には2〜100nm、より典型的には5〜50nmである。従って、充填されたHTC材料間の平均距離は、平均してこの距離よりも短いのがよい。HTC材料間の距離は、テープの厚み方向と横方向とで変化し得るが、一般的には、厚み方向の間隔を最適化することが必要である、ということに留意されたい。
【0033】
フォノン34が樹脂32の中を移動する際には、それらが、埋め込まれたHTC材料30に沿って移動する傾向がある。これによって、局所的なフォノン流束が増加することになるが、それは、原料のHTC材料が10〜1,000W/mKの熱伝導性を有するのに対して、樹脂のそれが約0.1〜0.5W/mKであるからである。充填されたHTC材料に沿ってフォノンが移動する際に、材料間の距離がnよりも短ければ、フォノン36は次のHTC材料に移るので、その結果、HTC材料が相互接続ネットワークを形成する。図2は、理想的な経路を示している。実際には、樹脂とHTC材料との間をフォノンが通過する際にフォノン散乱が存在するであろうが、材料間の距離が短い程、そしてHTC材料と樹脂との間でのフォノンの伝播特性のマッチングが良好である程、散乱は少なくなる。
【0034】
樹脂中に充填されるHTC材料の量は、実際には、図2に見られるように極めて少なく、例えば約10%である。従って、充填されたHTC材料の間の平均距離、即ち、長さ方向のスケールは、nよりも僅かに大きくてもよいが、但し、それでも大部分はnより小さく、そのために、本発明の実施態様の範囲内に入るであろう。具体的な実施態様においては、次のHTC材料からの距離がnよりも小さい材料の割合は、50%を超え、特別な実施態様では75%を超える。具体的な実施態様においては、HTC材料の平均長さがnよりも大きく、そのことがフォノン輸送に更に役立つ。
【0035】
nが小さい程、充填されたHTC材料の濃度が高くなり、それとは逆に、粒径が大きい程、必要なHTC材料が少なくなる。具体的な実施態様では、樹脂及び充填剤の合計体積に基づいて5〜60%の、充填されたHTC材料を使用し、より具体的な実施態様では25〜40%で使用する。樹脂をテープに含浸させる場合、それが、テープ繊維と基材との間の空間に充填されるであろう。しかしながら、この時点では、テープ内部のHTC分布は、多くの場合、最適化されておらず、HTC材料の間の平均距離がnを超えることさえあり得る。本発明の実施では、樹脂含浸されたテープを圧縮して、充填されたHTC材料の間の距離を短縮させる。
【0036】
充填された樹脂をテープの中に含浸させる場合、特に樹脂が30%以上の充填剤を有すると、そのテープの繊維又は粒子が、HTC材料の幾分かをブロックするように働く。しかしながら、テープを圧縮することによって、その逆の現象が起こり、全体構造の内の可動性でない部分にHTC材料そのものが付着するために、より多くの充填剤がテープの内部に捕捉される。HTC充填剤が相互にピン留めされた状態にさえなる。記載してきた実施態様においては、充填剤が樹脂マトリックスとは反応しないものとしてきたが、いくつかの実施態様においては、充填剤が樹脂と共有結合を形成し、より均質なマトリックスを形成する。均質なマトリックスにおいては、充填剤に結合された樹脂分子は、結合されていない樹脂分子よりは、圧縮中に、より良好に保持されるであろう。
【0037】
樹脂は複数の産業で使用され、多数の用途を有している。樹脂の性質が異なれば、それらの用途だけではなく、それらを用いた製品の品質及び効率にも影響する。例えば、樹脂を電気絶縁用途に使用する場合、絶縁耐力及び電圧耐久性の特性が高いことが必要とされ、それと同様に、熱安定性及び熱耐久性も要求される。しかしながら、樹脂は、多くの場合、それらの目標とは対照的に、通常低い熱伝導性を有している。本発明では、樹脂の各種の物理的特性と樹脂が導入された絶縁系とのバランスをとって、十分な絶縁耐力、電圧耐久性、熱安定性及び熱耐久性、機械的強度、粘弾性応答等の重要な物理的特性を十分に維持し、更には、増強しながら、従来からの電気絶縁材料よりも高い熱伝導性を有する系を、創り出す。熱的及び機械的サイクル効果によって引き起こされる応力によって生じる剥離及びミクロボイド形成は、抑制又は回避される。本明細書で使用するとき、「樹脂」という用語は、全ての樹脂及びエポキシ樹脂を指していて、変性エポキシ、ポリエステル、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエステルイミド、ポリエーテルイミド、ビスマレイミド、シリコーン、ポリシロキサン、ポリブタジエン、シアネートエステル、炭化水素等、並びにこれらの樹脂の均質なブレンド物を含む。この樹脂の定義には、添加剤例えば、架橋剤、促進剤並びにその他の触媒及び加工助剤が含まれる。液晶熱硬化性樹脂(LCT)及び1,2−ビニルポリブタジエンのような、ある種の樹脂は、低分子量特性と良好な架橋性を合わせ持っている。樹脂は、ヘテロ原子を有し又は有しない炭化水素のような有機マトリックス、シリケート及び/又はアルミノシリケート成分を含む無機マトリックス、又は有機と無機のマトリックスの混合物であってもよい。有機マトリックスの例としては、ポリマー又は反応性熱硬化性樹脂が挙げられるが、それらは必要に応じて、無機粒子の表面上に導入された反応性基と反応してもよい。架橋剤をそれらの樹脂に添加することによって、最終的に架橋されたネットワークの構造とセグメントの長さ分布を制御することも可能で、それによって熱伝導性に関してプラスの効果を与えることができる。熱伝導性の向上は、触媒、促進剤及びその他の加工助剤のような他の樹脂添加剤による変性によっても得ることができる。液晶熱硬化性樹脂(LCT)及び1,2−ビニルポリブタジエンのような、ある種の樹脂は、低分子量的特性と良好な架橋性を合わせ持っている。このタイプの樹脂は、熱をよりよく伝導する傾向があるが、それは、樹脂の下部構造のミクロ及びマクロな秩序が向上されていて、それによってフォノンの輸送が改良された結果として熱の伝導が向上するからである。フォノン輸送が良好である程、熱伝達も良好となる。
【0038】
本発明の高熱伝導性充填剤を樹脂と混合すると、これらは連続生成物を形成し、そこには樹脂と充填剤との間の界面が存在しない。ある場合には、充填剤と樹脂との間に共有結合が形成される。しかしながら、連続というのは、幾分かは主観的なものであって、観察者が使用する物差しに依存する。マクロスケールでは、その生成物は連続であるが、ナノスケールでは、充填剤と樹脂ネットワークとの間には明瞭な相が依然として存在しうる。従って、樹脂と混合している高熱伝導性充填剤に言及する場合、マクロスケールではそれらが連続の有機−無機複合体を形成しているが、その一方、マイクロスケールでは、その同一の混合物をハイブリッドと呼ぶことができる。
【0039】
先にも述べたように、充填樹脂は、テープを用いない発電機分野において、回転及び静止電気装置構成部品における電気絶縁としての適用を満たすために使用してもよい。発電機において高熱伝導性材料は、各種の使用がなされる。ステーターコイルの中には、設計を最適化させるためには、高熱伝導性でなければならない接地壁(groundwall)以外の構成部品材料が存在する。同様に、コイルに関わるその他の構成部品も最大限の熱除去をしなければならない。ステーターの設計の改良には、ローターの設計にも改良を加えることが必要とされ、それによって、発電機の効率を最大化させることが可能となる。
【0040】
本明細書に記載の高熱伝導性技術をステーターに適用することが可能な構成成分及び材料の例としては、ストランド間絶縁、内部コロナ保護(ICP)系、外部コロナ保護(OCP)系、パッキング及びプレストレスト−ドライビングストリップ(PSDS−トップリップルスプリング)を始めとする、ボトム、センター及びトップ充填剤;サイド充填剤、積層材、及びサイドPSDS、コイルセンターセパレーター又はスウォード、コイルトランスポーテーション充填剤、ステーターウェッジ、コア絶縁材、ダイヤモンドスペーサー、ブレース若しくはブラケット、巻き端接着樹脂及び圧縮可能なギャップ充填剤、コネクター絶縁材、パラレルリング絶縁材、パラレルリング支持構造等が挙げられる。ローターにおいては、セルライナー若しくはスロットライナー、インターターン絶縁、ターン、グラウンド絶縁等が例示されるが、一体型の場合には、エンドキャップ絶縁材、ブロッキング、ラジアルピン及びリード、並びにスロットトップパッカー又は“U”等が挙げられる。
【0041】
明確にする目的で、ステーターコイル中の熱の流れ11の横断面図を示している、図3を参照する。この図によって示されたステーターコイルには、特に、銅ストランド5、転位ストランド6、ボトム、センター及びトップ充填剤4、接地壁絶縁材7、並びにセンターセパレーター8が含まれる。
【0042】
上述の構成部品又は材料は、積層法、押出し法、モールド法及びその他の方法を始めとする各種の手段によって、製造できるが、それらの方法は、当業者には馴染み深いものである。ステーターコイルにおいて使用される構成材料は、銅及び絶縁体である。銅はストランドの形態となっていて、一般的には、絶縁され、組み立てられ、2次加工されてベークライト処理したコイル又はスタックとなっている。設置壁絶縁を用いてそのベークライト処理したコイルを絶縁するが、それに伴う電気応力制御層が存在する。ステーターコイルの熱伝導性に影響する主な構成成分は、設置壁絶縁であるが、その他の構成成分も、また、同様な改良によってメリットを受ける。例えば、ステーターコイルを構築する際に採用される、応力制御及びその他の系は、典型的には、銅からステーターコアまでの絶縁厚みの10〜20%である。場合によっては、それらの材料に構造的な変化を導入することによって、その熱的及び電気的伝導性を所望の値に微制御することが提案される。
【0043】
更なる例としては、内部応力制御層が低導電層からなっていてもよく、それは直接若しくは抵抗を介して銅に接続されてもよいし、又はそれから絶縁されていてもよい。その様な場合においては、低導電層を適用する前に、絶縁層をベークライト処理したコイル表面に適用してもよい。絶縁テープ又はシートは、結合の目的で又はボイド領域を充填して表面を平滑化させる目的で、ベークライト処理されたコイルに適用してもよい。次いで、その低導電層の後に、所望の性質を有する材料の追加の1層又は複数層を適用してもよい。これは、応力制御又は絶縁のような電気的な目的のためであってよい。
【0044】
設置壁を適用した後で、1層又は複数層の低導電層をコイルの表面に適用して、コアへの良好な接続を確保し、部分放電とバーバウンス効果(bar bounce effect)を防止し、しかも、コア積層の短絡を防止する。この低導電層がその上に適用された絶縁層を有するような適用例もまた、特許文献に記載されている。従って、外部コロナ保護系には、低導電層、絶縁層及び部分絶縁層が含まれていてよい。
【0045】
ステーター末端領域における電気応力を制御するために、応力制御層をコイルの直線部分の末端、及び巻き端(endwindings)又は渦巻き(involute)領域の中に適用する。このものは、通常、炭化ケイ素担持テープ又は塗料からなり、1層又は複数層、場合によっては階段状の層に適用される。絶縁層と組み合わせたり、1層又は複数層の比較的高抵抗率層と組み合わせたりしてもよい。この用途においては、高熱伝導性材料が、その系の熱伝導性を顕著に高めるであろう。いつ高熱伝導性材料を使用するかの選択は、その機械の設計と通常の絶縁材料及び設置壁の熱伝導性とに依存するであろう。
【0046】
末端領域においては、ガラステープ及び収縮性材料が、圧密化のような各種の因子のために及び機械的な支えを強化するために、ある種のデザインで、使用される。それに加えて、巻き端領域の機械的な支えには、樹脂、ダイヤモンドスペーサー、フェルト又はクロスのような柔軟な含浸可能材料、並びにバッグ、小袋(bladder)又はホースのようにその中に樹脂を充填させることが可能な材料の使用が必要となる。それらの構成成分及び材料の内で、高熱伝導性材料を使用すると、その系の熱伝導性を顕著に高めることになるであろう。どこでいつ高熱伝導性材料を使用するかの選択は、その機械の設計と通常の絶縁材料の熱伝導性とに依存するであろう。
【0047】
直接冷却式のローターにおいては、その冷却ガス又は媒体が、銅と直接接触する。直接冷却のための主な設計法には、半径方向冷却と軸方向冷却との2種がある。巻き端領域には、異なる冷却方法があってよい。半径方向冷却の設計においては、ガスはサブスロット又は各スロットの底部の中空ターン(hollow turn)に沿って流れる。次いで、それは、中実の銅ターンの中の冷却スロットを放射状に通過し、スロットの頂部で排出される。軸方向冷却の設計においては、ターンは中空であり、通常、正方形又は長方形の横断面を有している。ガスは中空の導体の側壁にある孔を通って各末端に入り、銅管の内側を流れ、ローター中心の銅にある孔を通って放射状に排出される。
【0048】
これらローターのいずれの設計においても、設計に対する高熱伝導性材料の使用の効果は、顕著なものがある。事実、間接冷却の機器では、それがより顕著となる。ローターコイルは、典型的には、スロットセル又はアングル材のいずれかの形態の、成形されたエポキシガラス積層体によって、大地からは絶縁されている。インターターン絶縁材は、積層材であっても、アングル材であってもよい。本明細書に記載された方法を使用することによって、そのような構成成分を高熱伝導性とすることが可能であるということは評価できる。
【0049】
本発明の一つの実施態様は、高熱伝導性(HTC)材料を樹脂に添加して、樹脂の熱伝導性を改良する。いくつかの実施態様においては、熱伝導性を高くしたことの代償として、樹脂のその他の物理的特性が低下するが、他のいくつかの実施態様においては、他のいくつかの物理的特性が顕著に影響を受けることはなく、いくつかの特定の実施態様においては、これら他の特性が改良されることもあるであろう。具体的な実施態様においては、HTC材料を、LCTエポキシのような秩序のある下部構造を有する樹脂に、添加する。これらのタイプの樹脂に添加する場合、使用されるHTC材料の量は、秩序のある下部構造体を持たない樹脂の場合よりも、少なくすることができる。
【0050】
樹脂の中に充填されるHTC材料は、各種の物質からなっていて、それらを添加することによって、樹脂と物理的及び/又は化学的に相互作用するか反応して、熱伝導性を改良することができる。一つの実施態様においては、HTC材料がデンドリマーであり、また別な実施態様においては、それらは、3〜100又はそれ以上の、より好ましくは10〜50の範囲の、アスペクト比(平均縦寸法に対する平均横寸法の比率)を有する高アスペクト比の粒子を始めとする、所定のサイズと形状とを有するナノ又はマイクロ無機充填剤である。
【0051】
一つの関連する実施態様においては、HTC材料が決められたサイズと形状分布を有していてもよい。いずれの場合においても、充填剤粒子の濃度及び相対濃度を選択して、達成されるべきバルク結合(bulk connecting)(又はいわゆる浸透)構造が達成されるようにするが、その構造は、高い熱伝導性を有する構造的に安定な分離した2相複合体を達成するための体積充填の有無にかかわらず、高熱伝導性を与える。また別な関連する実施態様においては、HTC材料を配向させることによって熱伝導性が向上する。更にまた別な実施態様においては、HTC材料を表面被覆することによって、フォノンの輸送が促進される。これらの実施態様は、他の実施態様とは独立して実施してもよいし、或いは関連づけて一体としてもよい。例えば、デンドリマーを、熱硬化性及び熱可塑性材料等の、他のタイプの高度構造化材料と組み合わせる。これを樹脂マトリックス中に均一に分散させて、HTC材料がフォノンの分散を抑制し、フォノンのためのマイクロスケールの架橋を形成して、HTC材料の間での良好な伝熱性界面が形成されるようにする。高度構造化材料が整列させられ、それによって、熱伝導性が単一の方向又は複数の方向に沿って増加し、局在化した又はバルク異方性のいずれかの、電気絶縁材料が得られる。また別な実施態様においては、HTCは、熱伝導性が低い充填剤を、高熱伝導性を有する金属酸化物、炭化物又は窒化物及び混合系で、表面被覆することによって達成されるが、それらの高熱伝導性物質は、所定のバルク特性を有する充填剤に物理的又は化学的に付着させられ、そのような付着は、化学的蒸着及び物理的蒸着のようなプロセスによって、また、プラズマ処理によって達成される。
【0052】
関連する実施態様においては、HTC材料が、実質的に均質な、つまり、望ましくない微視的な界面、粒子の濡れの変動及びマイクロボイドの形成が実質的にない、樹脂との混合物を形成する。この均質な材料が、従来からの電気絶縁材料におけるフォノンの波長又はフォノンの平均自由行程のいずれよりも短い長さ方向のスケールで、非分離である連続相材料を形成する。いくつかの実施態様においては、誘電破壊を制御するために、樹脂構造の中に意図的に界面を設ける。絶縁材料においては、正常な条件を与えれば、誘電破壊が起きるであろう。2相系における界面の性質と空間的な分布とを制御することによって、誘電破壊強度及び長期電気的耐久性を向上させることができる。絶縁耐力の向上は、部分的には、高密度化、マイクロボイドの除去及びより高い内部的な機械的圧縮強度によって起こすことができるであろう。
【0053】
本発明の樹脂は、マイカテープ並びにガラス及びポリエステルテープ等のその他の複合体構成物に含浸するために使用してもよい。電気絶縁のために典型的に使用されている標準的なマイカ(白雲母、金雲母)に加えて、黒雲母、更にはいくつかのその他の、カオリナイト、ハロイサイト、モンモリロナイト、クロライト等の、マイカ様アルミノシリケート物質もある。モンモリロナイトは、その構造の中に、ポリマー樹脂、金属カチオン及びナノ粒子を容易に挿入できる格子を有していて、高絶縁耐力の複合体を与えることができる。
【0054】
その他の実施態様においては、本発明は、絶縁が望ましい表面の上の連続被覆として使用される。ここで「連続被覆」というのは、マクロスケールの適用の記述であるということに注目されたい。連続被覆においては、テープ又はその他の基材を必要とすることなく、樹脂が材料の上に被覆を形成する。基材と共に用いた場合、HTC材料は、広範な種々の方法によって樹脂と組み合わせることができる。例えば、HTC材料は、樹脂を基材に加えるより前に添加することもできるし、或いは樹脂を基材に含浸させるより前に基材に加えることもできるし、或いは、樹脂を最初に添加し、それに続けてHTC材料を添加し、次いで樹脂を更に含浸させることできる。当業者には、その他の二次加工方法及び一次加工方法は明らかであろう。
【0055】
一つの実施態様においては、本発明は、高い熱伝導性を与え、しかもその他の重要な特性及び性能特性を維持し又は向上させる、新規な有機−無機材料を使用する。そのような材料は、その他の高電圧及び低電圧電気絶縁状況における用途を有しており、このような用途では、高熱伝導性によって、電力定格の向上、絶縁厚みの減少、よりコンパクトな電気設計及び高度の熱伝達等の点において、利点が得られる。本発明は、アルミナ、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛及びダイヤモンド、更にはその他の、ナノ、メソ及びマイクロ無機HTC−材料を添加して、より高い熱伝導性を得ている。これらの材料は、種々の結晶学的及び形態学的な形状を有することができ、それらは、直接的に又はキャリヤー液体として作用する溶媒を介して、マトリックス材料と共に加工することができる。HTC−材料をマイカ−テープのような各種の基材に混合してマトリックスとするのに、溶媒混合物を使用してもよい。それとは対照的に、本発明のまた別な実施態様を構成する分子ハイブリッド材料は、分離した界面を含まず、有機相中の無機相によって得られる利点を与える。これらの材料は更に、熱安定性、引張強度、曲げ強さ、及び衝撃強度、可変周波数及び温度依存性機械的モジュラス、損失、並びに一般的な粘弾性応答等のその他の物理的特性を向上させることにも寄与しうる。
【0056】
また別な実施態様においては、本発明は、有機−無機界面がデンドリマーのコア−シェル構造とは非分離である、分離の有機−デンドリマー複合体を含む。デンドリマーは、中心のコアの上に形成された、三次元のナノスケールのコア−シェル構造体群である。コアは、有機材料で構成されていてもよく無機材料で構成されていてもよい。中心のコアの上に形成させることによって、デンドリマーは、同心的シェルを順次加えていくことにより形成される。シェルは、分岐された分子群からなり、分岐されたシェルが世代と呼ばれる。典型的には、使用される世代の数は1〜10であり、世代が進むにつれて、より外側のシェル中の分子群の数は指数的に増加する。その分子群の組成は、精密に合成することが可能であって、外側の群は、反応性官能基であってよい。デンドリマーは、樹脂マトリックスと、また、相互の間でも、結合することができる。従って、デンドリマーは、HTC材料として樹脂に添加してもよいし、他の実施態様においては、従来から使用されてきた樹脂に添加することなく、それら自体でマトリックスを形成してもよい。
【0057】
分子群相互間の又は樹脂との反応の能力に応じて、分子群を選択することができる。しかしながら、その他の実施態様においては、それ自体の熱伝導性向上能力に応じて、デンドリマーのコア構造、例えば、以下に説明する金属酸化物が選択される。
【0058】
一般的には、デンドリマーが大きい程、フォノン輸送要素として機能する能力が高くなる。しかしながら、それが材料に浸透する性能及びその浸透潜在能力は、そのサイズが大きくなると低下する可能性があり、そのため、構造と要求される性能とのバランスを得るための最適なサイズが探索される。他のHTC材料と同様に、デンドリマーには溶媒を添加して、マイカやガラステープ等の基材へのそれらの浸透を助けることができる。多くの実施態様においては、デンドリマーは、種々の異なった分子群を有する種々の世代を有するものが使用されるであろう。
【0059】
市販されている有機デンドリマーポリマーとしては、ポリアミド−アミンデンドリマー(PAMAM)、ポリプロピレン−イミンデンドリマー(PPI)、PAMAMの内部構造と有機−ケイ素の外部構造とを有するデンドリマーであるPAMAM−OS等が挙げられる。前の二つは、アルドリッチ ケミカル(Aldrich Chemical)(商標)から、最後の一つはダウ−コーニング(Dow−Corning)(商標)から入手可能である。
【0060】
同様の要求は、相互に又はマトリックスポリマー若しくは反応性樹脂と反応して単一の材料を形成する、無機−有機デンドリマーの場合にも存在する。この場合、デンドリマーの表面には、先に特定されたものと同様の反応性基を含み、それによって、デンドリマー−デンドリマー、デンドリマー−有機、デンドリマー−ハイブリッド、及びデンドリマー−HTCマトリックスの反応のいずれかを起こさせることが可能となるであろう。このケースにおいては、デンドリマーは無機コアと有機シェルとを有するか、又はその逆であって、目的とする有機若しくは無機反応性基又は配位子のいずれかを含む。従って、無機シェルを有する有機コアを有していることもまた可能であって、更に、一般的なゾル−ゲル化学反応に含まれるものと類似の無機反応に関与することが可能な、ヒドロキシル、シラノール、ビニル−シラン、エポキシ−シラン及びその他の基等の反応性基が含まれる。
【0061】
全ての場合において、構造要素の長さ方向のスケールを、熱輸送を担っているフォノン分布よりも短いか又は同程度になるようにすることによって、フォノン輸送が促進され、フォノン散乱が抑制される。HTC粒子状物質が大きい程、それら自体の本質として、フォノン輸送を実際に増大させることができるものの、HTC材料が小さい程、樹脂マトリックスの性質を変更させて、それにより、フォノン散乱の変化に影響を与えることができる。このことは、ナノ粒子を使用することによって更に促進させることができる。ナノ粒子のマトリックスは、高熱伝導性を示すこと、及び、その粒径がこの効果を維持するに十分であって、更には、フォノン散乱を抑制させるのに必要とされる長さ要件を満たしていることが知られている。長短両範囲の周期を有する反応デンドリマー格子、及び、液晶エポキシ樹脂やポリブタジエンのようなマトリックスから生成させることが可能な梯子構造又は秩序のあるネットワーク構造を始めとする、より高い秩序を有する構造を選択することも考えておく必要がある。従来技術の樹脂マトリックスは、最大で約0.15W/mKの熱伝導性を有するであろう。本発明は、0.5〜5W/mK、更にはそれよりも高い熱伝導性を有する樹脂を提供する。
【0062】
連続の有機−無機ハイブリッドは、直鎖状又は架橋されたポリマー及び熱硬化性樹脂の中に、ポリマー又はネットワークのセグメントの長さ(典型的には、1〜50nm)のオーダーであるか又はそれよりも小さい寸法の無機ナノ粒子を組み入れることによって形成させてもよい。このことが起こりうるようにするには、以下の3種の経路又は機構が含まれる(これらに限定される訳ではない):(i)側鎖のグラフト化、(ii)例えば、2本のポリマー鎖の末端間での包括的グラフト化、(iii)少なくとも2個、典型的には数個のポリマー分子を巻き込んだ架橋グラフト化。これらの無機ナノ粒子には、密接した共有結合的に結合されたハイブリッド有機−無機均質材料を形成させるための反応性の表面を含むであろう。これらのナノ粒子は、金属酸化物、金属窒化物及び金属炭化物、更にはいくつかの非金属酸化物、窒化物及び炭化物であってよい。例えば、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛及びその他の金属酸化物、窒化ホウ素、窒化アルミニウム及びその他の金属窒化物、炭化ケイ素及びその他の炭化物、天然由来又は合成由来のダイヤモンド、並びに、これらの及びその他の金属炭化物の各種の物理的形態のいずれか、並びに、酸化物、窒化物、及び炭化物の化学量論的及び非化学量論的ハイブリッド混合物である。それらのより具体的な例としては、Al2O3、AlN、MgO、ZnO、BeO、BN、Si3N4、SiC、及びSiO2、並びに化学量論的組成及び非化学量論的組成の混合が挙げられる。更に、それらのナノ粒子を表面処理して、ホスト有機ポリマー又はネットワークとの反応に関与することが可能な、種々の表面官能基を導入してもよい。シリカやその他のバルク充填剤のような非HTC材料を、HTC材料で、被覆することもまた可能である。このことは、より高価なHTC材料を使用する場合の、一つの選択肢としてあり得る。
【0063】
樹脂中におけるHTC材料の体積百分率は、約60体積%まで又はそれ以上、より好ましくは約35体積%までとしてよい。体積充填量が高い程、マトリックスの構造安定性がより高くなる傾向がある。しかしながら、サイズ及び形状の分布、粒子の会合及び配列の程度を制御することによって、HTC材料が1体積%以下しか占めないようにすることもできる。しかしながら、構造的な安定性の理由からは、浸透を起こさせるのに必要な最小の量よりは多い量で添加するのが有用であろう。従って、浸透構造やHTC特性を損なうことなく、樹脂は物理的な歪みや変形に耐えることができるであろう。
【0064】
表面官能基の添加には、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシド、シラン又はビニルの各基が含まれていてよく、これらはホスト有機ポリマー又はネットワーク形成樹脂系との化学反応に化学反応に役立つ。これらの官能基は、無機充填剤の表面の上に元々存在していてもよいし、或いは、湿式化学法、プラズマ重合法を始めとする非平衡プラズマ蒸着法、化学的蒸着法及び物理的蒸着法、スパッターイオンプレーティング法、並びに電子及びイオンビーム蒸発法を用いて適用してもよい。マトリックスポリマー又は反応性樹脂は、ナノ粒子と親和性があり、必要に応じて、ナノ粒子表面に導入された反応性基と反応することができるものであれば、どのような系であってもよい。これらは、エポキシ、ポリイミドエポキシ、液晶エポキシ、シアネート−エステル、並びに各種の架橋剤を含むその他の低分子量ポリマー及び樹脂であってよい。
【0065】
非分離の有機−無機ハイブリッドの場合には、ゾル−ゲル化学反応を使用して、連続な分子アロイを形成させることができる。この場合、水性及び非水性反応が関与するゾル−ゲル化学反応が考慮される。
【0066】
本発明の製品は、従来からの電気絶縁材料よりも高い熱伝導性を示し、マイカ−ガラステープ構造体における接着樹脂として、従来からのマイカテープ構造体のための未反応の真空圧含浸樹脂として、並びに回転式及び静電式発電プラントにおいて、そして高電圧及び低電圧両方の電気及び電子装置、構成部品、及び製品において、電気絶縁的用途を満足させるための単独の材料として使用することができる。本発明の製品は、相互に組み合わせてもよいし、更には従来技術のHTC−材料及び他の材料と組み合わせてもよい。
【0067】
マイクロ及びナノHTC粒子は、自己凝集して所望の構造の、フィラメント及び分岐デンドライトとなれる能力を基準にして、選択すればよい。粒子は、本来的な自己集合性能能力から選択すればよいが、そのプロセスは、電荷分布を始めとする粒子の粒子表面電荷状態に変化を与えるような、電場、磁場、音波、超音波、pH制御、界面活性剤の使用及びその他の方法のような外部の力によって、更に変化させることもできる。一つの具体的な実施態様においては、例えば窒化ホウ素、窒化アルミニウム、ダイヤモンド等の粒子を自己集合させて所望の形状とする。この方法においては、所望の凝集構造体は、最初に高熱伝導性材料から作るか、又はホストマトリックスの中への組み込みの際に集合させることができる。
【0068】
多くの実施態様においては、同一の用途においても、HTC−材料のサイズと形状とを変化させる。同一の製品の中で、幅のあるサイズと形状とを使用する。種々の長短可変なアスペクト比を有するHTC−材料があることによって、樹脂マトリックスの熱伝導性が向上するとともに、向上した物理的特性及び性能が潜在的に与えられる。しかしながら、観察されるべき一つの側面は、粒子の長さは、基材/絶縁体の層の間で架橋が起きるほど長いものであってはならないということである。更に、種々の形状と長さとがあることによって、より均質な容量充填と充填密度とが得られて、その結果、より均質なマトリックスが生じるので、HTC−材料の浸透安定性が改良されるであろう。一つの実施態様においては、サイズ及び形状を混合させた場合、より長い粒子がより棒状の形状であるのに対して、より小さな粒子は、より球状、平板状、又は円板状、更には直方体状である。例えば、HTC−材料を含む樹脂には、約55〜65体積%の直径10〜50nmの球状物及び約15〜25体積%の長さ10〜50μmの棒状物を、10〜30体積%の樹脂と共に含んでいてもよい。
【0069】
また別な実施態様においては、本発明は、有機−無機複合体に基づく新規な電気絶縁材料を提供する。熱伝導性は、誘電性(誘電率及び誘電損失)等の他の絶縁特性、導電性、絶縁耐力及び電圧耐久性、熱安定性、引張モジュラス、曲げモジュラス、衝撃強度並びに熱耐久性、更にはその他の因子、例えば、粘弾性及び熱膨張率、並びに総括絶縁性に悪影響を与えることなく、最適化される。有機相及び無機相は、特性と性能との適切なバランスが達成されるように、構築され、選択される。
【0070】
一つの実施態様においては、所望の形状と粒径分布とを有するナノ、メソ及びマイクロ無機充填剤の表面被覆と、選択された表面特性及びバルク充填性とは、相互に補完的である。これによって、必要とされるバルク特性を維持しながら、有機ホスト中の充填剤相の浸透構造と相互関連性とを独立して制御することが可能となる。更に、単一又は二次的な被覆としての、有機及び無機被覆を使用して、有機マトリックスに対する粒子表面の親和性を確保し、ホスト有機マトリックスとの化学反応が起きることを可能としてもよい。
【0071】
形状に関しては、本発明では、浸透を促進させるために、自然に棒状物及び平板状物となる傾向を有する個別の粒子形状を使用するが、天然に産出されるものに加えて合成的に製造された物質も含めて、棒状物が最も好ましい実施態様である。棒状物とは、平均アスペクト比が約5以上、好ましい実施態様では10以上、であるが、より好ましい実施態様では100以下の粒子と定義される。一つの実施態様においては、その棒状物の軸の長さは、およそ10nm〜100ミクロンの範囲である。棒状物が小さい程、より良好に樹脂マトリックスに浸透し、樹脂の粘度への悪影響も少ない。
【0072】
多くのマイクロ及びナノ粒子は、球状及び円盤状の形状をとるが、それらのものは、ある条件下では均等に分布する能力が低く、そのために凝集されたフィラメント状構造を取りやすく、そのことが、浸透が起きる濃度を低下させる。浸透を向上させることによって、樹脂の熱的特性を向上させたり、或いはそれとは別に、樹脂に添加すべきHTC材料の量を減少させたりすることができる。更に、浸透を促進させることによって、避けるべき凝集が起きるのではなく、むしろ、樹脂の内部におけるHTC材料のより均一な分布が得られることとなり、それによって、望ましくない界面、不完全な粒子の濡れ及びマイクロボイドの形成等を有する可能性がより低い、より均質の製品が得られる。同様にして、凝集されたフィラメント状又は樹枝状構造は、より高いアスペクト比粒子から形成された球状の(密度の高い)凝集物又は集塊物よりも、高い熱伝導性を与える。
【0073】
更に、流体の流れの場、電場及び磁場をHTC材料に印加して、それらをエポキシ樹脂の内部に分散させ、構造的に組織化することもできる。交流電場又は静電場を使用することによって、棒及び平板形状の物を、マイクロスケールで整列させることができる。このことによって、異なる方向には異なる熱的性質を有する材料が創り出される。電場を作ることは、絶縁された電気導体を横切って電極を取り付ける方法、材料又は絶縁系の中心に導体を使用する方法等の、当技術分野で公知の種々の方法によって達成できる。
【0074】
選択された粒径及び形状分布と組み合わせたときに、粒子誘電率を系の誘電率を制御するように選択しながら、絶縁系全体の熱伝導性及び導電性を制御した所定の浸透構造を与える、金属−酸化物、−窒化物、−炭化物及び混合系のような有機表面被覆及び無機表面被覆を生成させることができる。また別なタイプの被覆は、天然由来又は合成由来のマイクロ粒子及びナノ粒子のダイヤモンド被覆である。多結晶及び単結晶ナノ粒子の形態においては、粒子は、シリカ等の担体粒子の表面と会合していてもよい。シリカそのものは、先にも述べたように、強い伝熱性を有する材料ではないが、表面被覆を加えることによって、熱伝導性がより高い材料となる。しかしながら、シリカ及び他のそのような材料は、棒形状の粒子に容易に形成できるという有利な性質を有している。このような方法で、種々のHTC特性を一つの製品の中に組み込むことができる。それらの被覆は更に、樹脂含浸の存在下又は非存在下に、マイカ及びガラスの両方の成分を含むマイカテープ構造体への用途もまた有している。
【0075】
反応性表面官能基は、無機被覆に固有な表面基から形成させてもよいし、或いは更なる有機被覆物を塗布することによって得てもよい。被覆物のいずれも、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシド、シラン、ビニル及びその他の基を含んでいてよく、それらはホスト有機マトリックスとの化学反応に用いることができる。これらの単一又は多重の表面被覆及びそれらの表面官能基は、湿式化学法、プラズマ重合を始めとする非平衡プラズマ法、化学的蒸着法及び物理的蒸着法、スパッターイオンプレーティング法、並びに電子及びイオンビーム蒸発法を用いて付加することができる。
【0076】
また別な実施態様においては、本発明は、有機−無機複合体に基づく新規な電気絶縁系を提供する。種々の無機及び有機構成成分の間の界面を化学的及び物理的に親密にして、異種の相の間に高度に物理的な連続性を確保し、機械的に強く、高電圧及び低電圧用途のいずれで使用したときでも、電気絶縁系が作動中に故障を起こしにくい界面を得る。そのような材料は、界面の一体性を高めることが、電力定格の上昇、絶縁系の電圧応力(voltage stressing)の上昇、絶縁厚みの低下といった利点を与え、高い熱伝達を達成する、高電圧及び低電圧の電気絶縁状況における用途を有している。
【0077】
具体的な実施態様においては、ナノ、メソ、及びマイクロ無機充填剤への種々の表面処理を使用して、無機表面に有機マトリックスに対する親和性を与えることができる種々の表面官能基を導入したり、ホスト有機マトリックスとの間で化学反応を起こさせたりする。表面官能基としては、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシド、シラン又はビニルの各基が挙げられ、これらはホストの有機マトリックスとの化学反応に利用できる。これらの官能基は、湿式化学法、非平衡プラズマ法、化学的蒸着法及び物理的蒸着法、レーザービーム法、スパッターイオンプレーティング法並びに電子及びイオンビーム蒸発法を使用して適用すればよい。
【0078】
多くの実施態様においては、表面処理された材料は、マイカ−ガラステープ構造体における接着樹脂において、従来からのマイカテープ構造体のための未反応の真空圧含浸(GVPI及びVPI)樹脂において、並びに回転式及び静電式発電プラントにおける電気絶縁又は導電的用途のいずれかを満足させるための単独の電気絶縁被覆又はバルク材料において、並びに高電圧及び低電圧両方の電気装置、構成部品及び製品において、使用することができる。更に、全ての化学反応は、揮発性の副生物を避けるために、縮合反応ではなく付加反応の結果として得られるものであるべきである。
【0079】
最近、液晶ポリマーを使用することによって、エポキシ樹脂の改良が進んでいる。エポキシ樹脂を液晶モノマーと混合するか、又は液晶性メソゲンを例えばDGEBAのようなエポキシ樹脂分子の中に組み入れることによって、架橋によって顕著に改良された機械的特性を有する秩序のあるネットワークを形成することが可能なポリマー又はモノマーを含有する液晶性熱硬化性(LCT)エポキシ樹脂が、製造される。米国特許第5,904,984号明細書を参照されたい(この特許を、参考として引用し本明細書に組み入れる)。LCTの更に有利な点は、標準的なエポキシ樹脂よりも改良された熱伝導性と共に低い熱膨張率(CTE)値をも有していることである。
【0080】
LCTエポキシ樹脂を更に魅力あるものとしているのは、それらが、標準的なエポキシ樹脂よりも、熱をより良く伝導することができることである。米国特許第6,261,481号明細書(本明細書を参考として引用し本明細書に組み入れる)の教示によれば、従来からのエポキシ樹脂の熱伝導性よりも高い熱伝導性を有するLCTエポキシ樹脂を製造することが可能である。例えば、標準的なビスフェノールAエポキシは、横(面)方向と厚み方向との両方において、0.18〜0.24ワット/メートル・ケルビン度(W/mK)の熱伝導性値を有していることが示されている。それとは対照的に、LCTエポキシ樹脂は、実際に使用した場合、横方向では0.4W/mK以下、厚み方向では0.9W/mK以下の熱伝導性値を有していることが示されている。
【0081】
紙に適用されるHTC材料に関連して使用する場合、「基材」という用語は、絶縁紙がそれから形成されるホスト材料を指しており、その一方で、「紙マトリックス」という用語は、その基材から製造された、より完全な紙構成成分を指している。本発明のこの実施態様を説明する際に、これら二つの用語が、幾分互換的に使用されることもある。基材の、誘電正接等の電気的性質や引張強度及び凝集性等の物理的特性を著しく損なうことなく、熱伝導性の向上が達成されなければならない。表面被覆を用いるようないくつかの実施態様においては、その物理的特性を改良することさえ可能である。更に、いくつかの実施態様においては、HTC材料の添加によって、ホスト紙マトリックスの電気抵抗率が向上することもあり得る。
【0082】
電気絶縁のために典型的に使用されている標準的なマイカ(白雲母、金雲母)に加えて、黒雲母、更にはいくつかのその他の、カオリナイト、ハロイサイト、モンモリロナイト、クロライト等の、マイカ様アルミノシリケート物質もある。モンモリロナイトはその構造の中に、金属カチオン、有機化合物並びにモノマー及びポリマー等のHTC材料を容易に挿入できる格子を有していて、高絶縁耐力の複合体を与えることができる。
【0083】
絶縁紙は、本発明の樹脂を含浸させることができる多孔質媒体のほんの一つのタイプである。多くの産業において(それらのいくつかは以下において説明する)、その他の多くの材料及びそれから製造される構成成分は、種々のタイプの多孔質媒体を使用して、その中に樹脂を含浸させることができる。例を挙げれば、ガラス繊維のマトリックス又は織物、及びポリマーのマトリックス又は織物が存在するが、ここで、織物は、典型的にはクロス、マット又はフェルトであり得る。面積層体を有するガラス織物積層体である回路基板は、本発明の樹脂を使用することによってメリットが得られる一つの製品であろう。
【0084】
ステーターコイルと共に使用される樹脂含浸のタイプは、VPI及びGVPIとして知られている。テープをコイルの周りに巻き付けてから、真空圧含浸(VPI)法によって、低粘度の液状絶縁樹脂で含浸する。そのプロセスは、マイカテープの中に捕捉されている空気と湿分とを除去する目的で、コイルが入っているチャンバーを真空引きする工程、次いで、絶縁樹脂を加圧下に導入して、マイカテープを樹脂で完全に含浸させて、それによってボイドを除去する工程、及びマイカホスト中で樹脂絶縁材を製造する工程からなる。いくつかの実施態様においては、約20%の圧縮をすることが、VPIプロセスに特定のものである。これが完了した後に、コイルを加熱して樹脂を硬化させる。樹脂が促進剤を含んでいてもよいし、或いはテープが促進剤を有していてもよい。この一つの変法である、包括的なVPI(GVPI)は、乾燥した絶縁化コイルを巻き付けてから、個々のコイルではなく、ステーター全体を真空圧含浸させるプロセスを含む。GVPIプロセスにおいては、乾燥したコイルをその最終的な位置に挿入してから含浸させるので、樹脂の含浸に先立ってコイルを圧縮する。これまで、種々の圧縮方法を説明してきたが、本発明の実際の圧縮工程のために、VPI/GVPI含浸プロセスを使用することも可能である。
【0085】
一つの実施態様においては、本発明は、ホスト樹脂マトリックスと高熱伝導性充填剤とを含有してなる高熱伝導性樹脂を提供する。高熱伝導性充填剤は、ホスト樹脂マトリックスと共に、連続の有機−無機複合体を形成するが、高熱伝導性充填剤は、長さが1〜1,000nmであり、3〜100の間のアスペクト比、より好ましくは10〜50のアスペクト比、を有している。
【0086】
一つの関連する実施態様においては、高熱伝導性充填剤は、2相の有機−無機複合体から形成されているが、それには、ポリヘドラルオリゴマー性シルセスキオキサン、テトラエチルオルトシリケート、及びテトラブチルオルトチタネートが含まれていてよい。反応性表面基が熱伝導性充填剤の上に存在している。また別な実施態様においては、高熱伝導性充填剤が有機−無機連続相材料から形成されている。更にまた別な実施態様においては、それが、分離の有機−デンドリマー複合体から、又は分離の有機−無機デンドリマー複合体から形成されている。
【0087】
また別な実施態様においては、本発明は、ホスト樹脂ネットワークと、ホスト樹脂ネットワークの中に均質に分散されていてホスト樹脂ネットワークと実質的に完全に共反応している無機高熱伝導性充填剤と、を含んでなる、連続の有機−無機樹脂を提供する。高熱伝導性充填剤は、1〜1,000nmの長さと10〜50のアスペクト比とを有している。高熱伝導性充填剤は、酸化物、窒化物及び炭化物の内の少なくとも一つから選択され、予め表面処理されて、ホスト樹脂ネットワークとの実質的に完全な共反応性を可能とする表面官能基が導入されている。表面官能基は、表面湿式又は反応性化学グラフト化のような方法で適用することができる。その他の反応性化学グラフト化法としては、非平衡プラズマ法、化学的蒸着法及び物理的蒸着法、スパッターイオンプレーティング法、レーザービーム法、並びに電子及びイオンビーム蒸発法が挙げられる。連続有機−無機樹脂には、体積で、最大で60%、より好ましい実施態様では少なくとも35%、の高熱伝導性充填剤が含まれ、また架橋剤が含まれていてもよい。
【0088】
一つの関連する実施態様においては、酸化物、窒化物及び炭化物は、Al2O3、AlN、MgO、ZnO、BeO、BN、Si3N4、SiC及びSiO2、並びに化学量論的及び非化学量論的結合の混合物を含む。更に、官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシド、シラン及びビニルの各基の内の少なくとも1個を含む。一方、ホスト樹脂ネットワークは、エポキシ、ポリイミドエポキシ、液晶エポキシ、及びシアネート−エステルを含む。
【0089】
更にまた別な実施態様においては、本発明は、多孔質媒体と高熱伝導性材料を充填した樹脂とを含んでなる、高熱伝導性樹脂含浸多孔質媒体を提供する。高熱伝導性材料は、樹脂の5〜60体積%を占め、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛及びダイヤモンドの内の少なくとも1つ並びにデンドリマーであり、全て約1〜1,000nmのサイズと10〜50のアスペクト比とを有している。
【0090】
一つの関連する実施態様においては、高熱伝導性材料は5〜40体積%の樹脂を含んでなる。多孔質マトリックスは、マイカ−ガラス絶縁紙等の紙であっても、回路基板において使用されているようなその他の材料であってもよい。また別な関連する実施態様においては、その多孔質媒体は、マトリックス又は織物の形態にある、天然又は合成の、有機又は無機ポリマー繊維である。マクロスケールでは、その多孔質媒体は、例えば布マット又はフェルトであってもよい。
【0091】
HTC樹枝状構造体は、近接及び隣接しているHTC粒子が本来的に密であるので、良好な熱良導体となる。図4には、多くのHTC粒子42を含んでなる樹枝状構造40の一例を示す。本明細書で使用するとき、デンドリマーは樹枝状構造から明白に区別されていることに注目されたい。樹枝状充填剤は、実質的には、凝集塊というよりは、むしろ、分岐された構造体を形成する粒子の凝集体である。個々には、それらの構造体は、数百、数千の、多くの長鎖又は伸長された分岐鎖を形成する粒子からなり、同一樹脂の内部において他の樹枝状構造体との間で多くの相互接続を有している。
【0092】
樹脂の中で直接樹枝状構造体を形成させることに伴う一つの不利な点は、樹枝状構造のサイズと共にその充填剤入り樹脂の所望の物理的特性が向上するが、それと同時に関連する望ましくない性質、例えば粘度、も向上することである。粘度が上がると、接着性もまた低下する可能性がある。大きな樹枝状構造体を含むホスト樹脂は、含浸させるには非実用的となり、樹枝状構造体それ自体も、含浸される多孔質媒体のボイド又は孔径によっては、樹脂から濾過除去されることさえ起こりうる。本発明を使用することによって、粘度がより低い樹脂を使用することが可能となり、系の中で樹枝状構造体を形成させることも可能である。
【0093】
樹枝状充填剤を形成させるためには、表面官能化されるか又は官能化されていないHTC材料に、それ自体と又は相互間で相互作用を持たせる。表面官能化材料は、HTC−材料の上に少なくとも1個の官能化有機基をグラフト化させることを含む、当技術分野で公知のプロセスによって実施することができる。官能化基は、OH、NH又はその他のカルボキシル基を始めとする種々の反応性基であってよいが、これらに限定される訳ではない。官能化の例としては、シラングラフト化又はフリーラジカルグラフト化が挙げられる。より具体的な実施態様においては、シラングラフト化には、4−トリメトキシシリルテトラヒドロフタル酸無水物(TSPA)及び3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MOTPS)から選択される反応剤が使用される。また別な具体的な実施態様においては、フリーラジカルグラフト化には、反応物として、硝酸セリウムアンモニウムが使用される。
【0094】
樹枝状構造の分岐が多い程、粒子の結合性に依存する充填剤入り樹脂の物理的特性が良好となる。従って、粒子−粒子相互作用及びHTC粒子あたりの官能化基が複数あることによって、より高い熱伝導性を有する充填剤入り樹脂が得られる。粒子−粒子相互作用には、シードの形状が含まれていてよく、それにより、その中に構成ブロックを物理的に閉じ込めることができる。
【0095】
樹枝状構造体は、HTCの構成ブロックを取り込むHTCシードによって樹脂の中に形成される。既に取り込まれた構成ブロックに更にシードが結合して、その結果、樹枝状構造が成長する。HTCシード及び構成ブロックが本明細書に記載されているHTC材料であるが、これらは、物理的に及び表面官能化基によって相互に分離されている。後に説明するように、これら二つを、樹脂の適用に合わせて、種々の方法によって組み合わせることができる。
【0096】
構成成分を分離されたままに維持するためには、付着させる官能基を選択して、シードと構成ブロックとで反応性が異なるようにする。この方法によって、シードを、一方では互いに非反応性とし、他方では構成ブロックとは反応性とするが、その理由は、シードと構成ブロックは、同じサイズであるが官能基が異なっている同一の材料とすることができるからである。
【0097】
HTCシードとHTCの構成ブロックとがそれらの間では最小限の共反応性を有するように、HTC樹枝状充填剤成分を選択する。この最小限の共反応性は、充填剤成分が、成分として所望のサイズ及び/又は形状を獲得するより前に、それら自体で共反応しないということを、必ずしも意味している訳ではない。従って、それらの成分、特に構成ブロックは、いくつかの実施態様においては、個々の粒子の小さなクラスターであってもよい。このことは、それに見合うような小さい数の内部反応性官能化基を有するようにすることにより、制御することができる。例えば、ネックレス構造を有するナノシリカクラスターである。
【0098】
充填剤成分は、各種の方法で組み合わせることができる。シードは、樹脂を使用するより前に、ホスト樹脂と組み合わせる。使用例としては、連続押出し法及び含浸法が挙げられる。連続押出し法では、構成ブロックを使用前の樹脂と組み合わせる。含浸法では、構成ブロックを樹脂に添加し、樹脂を添加するより前に多孔質媒体の中に含ませ、これら二つのものを組み合わせる。構成ブロックを使用前の樹脂に添加する場合には、それらの成分を互いに結合させる反応は、遅い化学反応とするべきであるが、その意味するところは、反応には数分〜数時間かけるべきであるということである。構成ブロックは、溶媒、樹脂等の、キャリヤー液状媒体による樹脂含浸に先立って、真空圧含浸法によるか、押出し法、カプセル化法又は引抜き成形法等の加熱積層法によって、多孔質媒体中に挿入することができる。多孔質媒体の中に構成ブロックを挿入させる他の方法は、当業者には明らかであろう。
【0099】
シード化された樹脂を含浸に使用し、含浸の前に構成ブロックが多孔質媒体に添加される場合には、樹脂の中のシードが構成ブロックを取り込み、それらの成分が混合され、反応する。この方法には、樹脂を使用するまでは成分の反応が開始されず、更には含浸の場合に低粘度が維持されるという二重の利点がある。シードが構成ブロックを集めるにつれて、それが更なるシードを引きつけて、クラスターが形成される。次いで、これらのクラスターが相互に結合して、樹枝状タイプのネットワークを形成することができる。
【0100】
いくつかの実施態様においては、HTCシード粒子を構成ブロック材料よりも小さいものとすることによって、粘度が低いために樹脂の含浸が容易となるであろう。そのような実施態様においては、HTCシード粒子のサイズの範囲は、1〜100nmの範囲とすることができる。含浸の前に構成ブロック材料が樹脂に添加されるような実施態様においては、それらは相応のサイズがよいであろう。しかしながら、含浸の間に構成ブロックが取り込まれるような実施態様においては、それらがシード粒子よりは実質的に大きく、50〜400nmの平均サイズ範囲とすることができる。
【0101】
構成ブロックに対するシードの(全体積による)比率は、所望の結果に合わせて変化させることができる。樹枝状構造の形成を最大にするためには、構成ブロックに対するシードの(体積による)比率を少し高くして、構成ブロックとの反応及び相互の間の反応がより進むようにするべきである。明らかに、シード粒子が構成ブロックよりも小さければ、そのことによって、シード粒子の総数が多くなるが、更に、シード粒子と構成ブロックが同様の密度とすれば、体積としてもシード粒子が多くなるであろう。
【0102】
具体的な実施態様においては、樹枝状構造の生成を最大限とするのが望ましい。それによって、ホスト樹脂マトリックス中での熱伝導性が最大限となる。ナフテン酸亜鉛、クロムアセチルアセトナート、ベンジルジメチルアミン、塩化トリベンジルスズ、酢酸トリベンジルスズ、チタン酸テトラブチル等の促進剤を使用することにより、反応速度を上げ、成分間の反応の数を増やすことができる。
【0103】
一つの実施態様においては、本発明は、ホスト樹脂マトリックスにHTCシードを添加することからなる、ホスト樹脂マトリックスの内部でHTC樹枝状充填剤を形成させる方法を提供する。HTCシードは表面官能化されてはいるが、それらは相互の間では実質的に反応していない。次いでこれらのシードがHTCの構成ブロックを集積する。これらのHTCの構成ブロックも既に表面官能化されているが、相互の間では実質的に反応していない。次いで、それらのHTCシードを有するHTCの構成ブロックを集めることによって、ホスト樹脂マトリックスの内部にHTC樹枝状充填剤が生成される。
【0104】
具体的な実施態様においては、HTC構成ブロックがHTCシードと反応するが、それは、二つの化学種間の表面官能化基が相互に反応するということを意味している。他の実施態様においては、HTC構成ブロックがHTCシードと相互作用するが、それは物理的な粒子−粒子相互作用が存在するということを意味している。
【0105】
他の実施態様においては、添加されたHTCシードを有するホスト樹脂を多孔質媒体の中に含浸させることによって、HTCの構成ブロックが集積されるが、多孔質媒体にはHTCの構成ブロックが含まれている。多孔質媒体は、複合体テープであってもよいし、多孔質媒体が天然の有機若しくは無機ポリマー繊維マトリックス、又は織物であってもよい。
【0106】
更に他の実施態様においては、HTCの構成ブロックをホスト樹脂マトリックスの中に混合することによってHTCの構成ブロックが集積される。関連する実施態様においては、集積の後に、HTCの構成ブロックとHTCシードとの反応が遅い化学反応として進行する。更には、ナフテン酸亜鉛、クロムアセチルアセトナート、塩化トリベンジルスズ、酢酸トリベンジルスズ、及び/又はチタン酸テトラブチル等の促進剤を添加した後に、HTCの構成ブロックのHTCシードとの反応が進行する。
【0107】
更に他の関連する実施態様においては、HTCシードを表面官能化させて、平均して1個を超える表面官能基を持たせる。別な方法として、HTCの構成ブロックを表面官能化させて、平均して1個を超える表面官能基を持たせる。HTCシードは、ケイ素酸化物、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム及び窒化ケイ素からなる群より選択することができ、HTCの構成ブロックは、窒化ホウ素、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素からなる群より選択することができる。
【0108】
その他の関連する実施態様においては、一定割合のHTCシードがホスト樹脂マトリックスにグラフトされるが、HTCシードは、HTCの構成ブロックの集積より前にホスト樹脂マトリックスにグラフトされてもよい。HTC樹枝状充填剤は、ホスト樹脂マトリックスの5〜40体積%であり、HTCシードのHTC樹枝状充填剤を含んでなるHTCの構成ブロックに対する比率は、体積で、約(2:1)から(1:4)までの範囲である。
【0109】
また別な実施態様においては、本発明は、ホスト樹脂を得る工程及びそのホスト樹脂にHTCシードを添加する工程を含んでなる、樹脂含浸された多孔質媒体の内部にHTC樹枝状構造体を形成させるための方法を提供する。HTCシードは、相互には実質的に反応せず、一定割合のHTCシードがホスト樹脂にグラフトされる。この割合は変更可能であるが、少なくとも5%とするべきである。次いで、HTCの構成ブロックを多孔質媒体に挿入するが、HTCの構成ブロックは、相互には実質的に反応しない。この方法は、更に、多孔質媒体の中にホスト樹脂を含浸させて、ホスト樹脂がホスト媒体からHTCの構成ブロックを取り込む工程、及びHTCの構成ブロックをHTCシードと反応及び相互作用させて、ホスト樹脂マトリックスの内部にHTC樹枝状充填剤を得る工程、を含んでなる。次いで、そのホスト樹脂を硬化させる。
【0110】
関連する実施態様においては、実質的に全部のHTCシードをHTCの構成ブロックと反応させる。この方法は、更に、付加的な構成ブロックをホスト樹脂の中に混合する工程を含んでいてもよい。その他の具体的な実施態様においては、実質的に全部のHTCシードがホスト樹脂にグラフトされ、多孔質媒体が複合体テープである。
【0111】
本発明の特定の実施態様について詳細に説明してきたが、本開示の教示全体を考慮すれば、それらの詳細に対して各種の修正又は代替えが開発できるであろうということは、当業者のよく認識するところであろう。従って、開示されている具体的な組合せは、単に説明のためだけのものであって、添付された特許請求項の全体並びにそれらの全ての等価物で与えられる本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】ステーターコイルの周りに重ね合わせられた絶縁テープの使用を示す図である。
【図2】本発明の充填された樹脂の中を移動するフォノンを示す図である。
【図3】ステーターコイルを通過する熱の流れを示す図である。
【図4】樹枝状構造の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0113】
4 トップ充填剤
5 銅ストランド
6 転位ストランド
7 設置壁絶縁材
8 センターセパレーター
11 熱の流れ
13 コイル
14 導体
15 巻線絶縁材
16 複合体テープ
18 裏打シート
20 マイカ
21 外側テープ
30 HTC材料
32 樹脂
34,36 フォノン
40 樹枝状構造
42 HTC粒子
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、樹脂マトリックス中における樹枝状構造体の形成に関する。
【0002】
本出願は、スミス等による米国特許出願第11/152,983号「樹脂に導入されたHTC材料(HTC Materials Incorporated into Resins)」の一部継続出願である(この出願を参考として本明細書に組み入れる)。
【背景技術】
【0003】
どのような形態の電気製品であれ、その使用には、導体を電気的に絶縁することが必要である。絶え間なく小型化が求められ、全ての電気及び電子システムの簡素化が要望されているので、それに対応する、より良好でコンパクトな絶縁材と絶縁系が必要とされている。
【0004】
表面へ容易に接着させることが可能な強靱で可撓性のある電気絶縁材料であるという実用的な利点を有しているので、各種のエポキシ樹脂材料が、電気絶縁系において広く使用されてきた。従来から使用されてきた、マイカフレーク及びガラス繊維等の、電気絶縁材料を表面被覆してそれらのエポキシ樹脂を用いて接着させると、機械的強度、耐薬品性及び電気絶縁性の向上した複合体を製造することができる。多くの場合、エポキシ樹脂が従来から使用されてきたワニスに取って代わってきたが、それでもワニスは、ある種の高電圧電気装置においては使用され続けている。
【0005】
良好な電気絶縁材は、それらの本来的な性質から、良好な断熱材ともなる傾向があるが、これは望ましいことではない。断熱挙動は、特に空冷式の電気装置及び構成部品の場合には、その構成部品、更には、その装置全体の効率及び耐久性を低下させる。最大の電気絶縁性と最小の断熱特性とを有する電気絶縁系を製造することができれば望ましい。
【0006】
電気絶縁材料はテープの形態で見られることが多いが、それら自体、種々の層を有している。これらのタイプのテープに共通しているのは、繊維層との界面に接着された紙層であり、これら2つの層は、樹脂を用いて含浸されていることが多い。一つの好ましい絶縁材料は、マイカ−テープである。マイカテープにおける改良としては、米国特許第6,103,882号明細書に教示されているような触媒化マイカテープが挙げられる。マイカ−テープは導体の周りに巻き付けることが可能で、極めて良好な電気絶縁性を与えることができる。その一例を図1に示す。ここに図示されているのは、導体14の複数の巻線を含むコイル13であり、それらは、ここで示した例においては、組み立てられてベークライト処理された(bakelized)コイルとなっている。巻線絶縁材15は、繊維質材料、例えばガラス、又はガラスと熱処理をしたダクロン(Dacron)とから調製される。ベークライト処理されたコイル14の周りに複合体マイカテープ16の1層又は複数層を巻き付けることによって、コイルの基礎絶縁(ground insulation)が得られる。このような複合体テープは、例えば、ガラス繊維布又はポリエチレンテレフタレートマット若しくはフィルム等の、柔軟な裏打シート18と組み合わせた、紙又は小さいマイカフレークのフェルトであってよく、マイカ20の層は、液状樹脂バインダーによってそれに接着されている。一般的には、電圧の要求に合わせて、複合体テープ16の複数の層をコイルの周りに巻き付ける。強靱な繊維質材料、例えばガラス繊維、の外側テープ21を、コイルの周りに巻き付けてもよい。
【0007】
一般的には、マイカテープ16の多数の層をコイルのまわりに巻き付けるが、高電圧コイルの場合には、一般的に、16層以上が使用される。次いで、樹脂をテープ層の中に含浸させる。樹脂は、絶縁テープからは独立して、絶縁材として使用することもできる。残念ながら、断熱材の量をこのようにすると、熱の放散が複雑化するという問題が更に加わるだけのことである。必要とされていることは、従来の方法による電気絶縁よりも熱の伝導性が高い電気絶縁であって、しかし、電気絶縁性並びに機械的及び熱的な性能を始めとするその他の性能因子について妥協することのない電気絶縁である。
【0008】
従来技術に伴うその他の問題点も存在するが、それらについては本明細書を更に読めば明らかになるであろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
高熱伝導性(HTC)有機−無機ハイブリッド材料は、分離されている(discrete)2相有機−無機複合体から、分子アロイに基づく有機−無機連続相材料から、及びデンドリマーコア−シェル構造の内部で有機−無機界面が分離されていない(non−discrete)、分離されている有機−デンドリマー複合体から、形成させることができる。連続相材料構造体は、その構造要素の長さ方向のスケールを、熱輸送を担っているフォノンの分布よりも、短く又は同程度にすることによって、フォノン輸送が促進され、且つ、フォノン散乱が抑制されるように形成させてもよいし、及び/又は例えば、マトリックスの総体的な構造の次数を高めるか、及び/又は複合体の内部における界面のフォノン散乱を効果的に除去するか又は減少させることによって、フォノンの散乱中心の数が減少されるように形成させてもよい。
【0010】
連続の有機−無機ハイブリッドは、直鎖状又は架橋されたポリマー(熱可塑性プラスチックを含む)及び熱硬化性樹脂の中に、無機、有機又は有機−無機ハイブリッドナノ粒子を組み入れることにより形成させることができるが、そこではナノ粒子の寸法が、ポリマー又はネットワークのセグメントの長さ(典型的には1〜50nm又はそれ以上)のオーダー又はそれ以下である。これら種々のタイプのナノ粒子は、緊密な共有結合的に結合されたハイブリッド有機−無機均質材料を形成させるための反応性の表面を有するであろう。同様な要請は無機−有機デンドリマーの場合にも存在して、それらを、相互に反応するか、又はマトリックスポリマー若しくは反応性樹脂と反応して、連続材料を形成することができる。分離及び非分離の有機−無機ハイブリッドの場合には、いずれも、ゾルーゲル化学反応を使用して、連続的分子アロイを形成させることができる。このようにして得られる材料は、従来からの電気絶縁材料よりも高い熱伝導性を示し、従来からのマイカ−ガラステープ構成物の中の接着樹脂として使用してもよく、未反応の真空圧含浸樹脂として、或いは単独の材料として使用したときに、回転式及び静電式発電プラントにおいて、そして高電圧(約5kV)及び低電圧(約5kV以下)両方の電気装置、構成部品及び製品においても、電気絶縁的応用を満足させる。
【0011】
上述の物理的特性及び性能特性を有し、有機ホスト材料の存在下にナノ〜マイクロサイズの無機充填剤を使用することに基づいて、品質設計された電気絶縁材料を形成させるためには、有機ホストと親密な界面を形成することができる粒子表面の生成が必要である。このことは、充填剤の表面の上に化学基をグラフトさせて、その表面をホストマトリックスに対して化学的及び物理的に親和性にすることによって達成させてもよいし、或いは、粒子表面が有機ホストと反応する化学的反応性の官能基を含んでいて、粒子とホストとの間に共有結合が形成されてもよい。有機ホスト材料の存在下にナノ〜マイクロサイズの無機充填剤を使用するためには、バルク誘電特性及び電気特性並びに熱伝導性に加えて、所定の表面化学的性質を有する粒子の製造が必要である。ほとんどの無機材料では、形状及びサイズのような構造的特性と、様々の電気絶縁用途に適合させたり又は特性と性能との適切なバランスを有する複合体を得たりするための特性とを、独立して選択することは不可能である。このため、適切なバルク特性と形状及びサイズの特性とを有する粒子を選択し、次いで、その表面及び界面特性並びにその他の特性を変性して、電気絶縁用途において必要とされる複合体としての特性及び性能を更に制御できるようにする。また、粒子の適切な表面被覆をしてもよく、この表面被覆は、金属系及び非金属系の無機酸化物、窒化物、炭化物及び混合系、並びに電気絶縁系においてホスト材料として機能する適切な有機マトリックスと反応することが可能な反応性表面基を有する有機被覆であってもよい。そうして得られる、未反応の又は部分的に反応した形態のハイブリッド材料及び複合体は、マイカ−ガラステープ構造体における接着樹脂として、従来からのマイカテープ構造体のための未反応の真空圧含浸樹脂として、その他のガラス繊維、炭素繊維並びに積層タイプ複合体及び織物複合体において、並びに回転式及び静電式発電プラントにおいて、そして高電圧と低電圧との両方の電気装置、構成部品及び製品において、電気絶縁的用途を満足させるための単独の材料として使用することができる。
【0012】
高熱伝導性(HTC)含浸媒体を通してのフォノンの輸送を改良するためには、HTC材料間の平均距離をフォノンの平均経路長よりも短くするか、又はフォノンの平均自由行程が大きい媒体を使用することが必要である。これによってフォノン散乱が抑制され、熱源からのフォノンの正味流れ又は流束をより大きくすることができる。樹脂材料の粘度が低い場合には、それを多層絶縁テープのようなホストマトリックス媒体に染み込ませてもよい。
【0013】
HTC樹枝状構造体は、近接及び隣接しているHTC粒子が本来的に密集していて、それらが総合的に高い秩序度を有しているので、熱良導体となる。これらの構造体は、数百、数千の粒子の長さを持っていて、分岐されていてもよく、同一の樹脂の内部で他の樹枝状構造体との間で多くの相互接続を有していて、それらが一緒になって浸透(percolation)ネットワークを形成する。樹枝状充填剤を形成するためには、表面官能化HTC材料が相互に反応するか、又は充填剤が粒子間力の結果として自己集合する。樹枝状構造体の分岐が多いほど、それが充填された樹脂中の粒子相の相互接続性が良好となる。従って、多くの結合粒子構造体と粒子−粒子相互作用とがあると、より高い熱伝導性を有する充填された樹脂が得られる。
【0014】
樹枝状構造体は、HTCの構成ブロック(building block)を取り込むHTCシードによって樹脂の中に形成される。既に取り込まれた構成ブロックに更にシードが結合して、これにより、樹枝状構造が成長する。このHTCシード及び構成ブロックが本明細書に記載されているHTC材料であり、これらが、物理的に、そして、表面官能化基の存在によって互いに結合されている。後に説明するように、これら二つを、樹脂の用途に従って、種々の方法によって組み合わせることができる。
【0015】
本発明の、これらの及びその他の目的、特徴並びに利点は、ホスト樹脂マトリックスにHTCシードを添加することからなる、ホスト樹脂マトリックス内部にHTC樹枝状充填剤を形成する方法による具体的な実施例によって示される。HTCシードは表面官能化されてはいるが、それらは相互の間では実質的に反応していない。次いでそれらのシードがHTCの構成ブロックを集積するが、それらのHTCの構成ブロックは既に表面官能化されているものの、相互の間では実質的に反応していない。次いで、HTCの構成ブロックをHTCシードと組み立てて、ホスト樹脂マトリックスの内部にHTC樹枝状充填剤が得られる。
【0016】
具体的な実施態様においては、HTCの構成ブロックがHTCシードと反応するが、これは、これら二つの化学種の間で表面官能化基が相互に反応するということを意味している。他の実施態様においては、HTCの構成ブロックがHTCシードと相互作用するが、これは物理的な粒子−粒子相互作用が存在するということを意味している。
【0017】
他の実施態様においては、添加されたHTCシードを有するホスト樹脂を多孔質媒体の中に染み込ませることによって、HTCの構成ブロックが集積され、多孔質媒体にHTCの構成ブロックが含有される。多孔質媒体は、複合体テープであってもよいし、天然の有機若しくは無機ポリマー繊維マトリックス又は織物であってもよい。
【0018】
更に他の実施態様においては、HTCの構成ブロックは、ホスト樹脂マトリックスの中にHTCの構成ブロックを混合することによって集積される。関連する実施態様においては、集積させた後に、HTCの構成ブロックのHTCシードとの反応を遅い化学反応として進行させる。更には、ナフテン酸亜鉛、クロムアセチルアセトナート、塩化トリベンジルスズ、酢酸トリベンジルスズ、及び/又はチタン酸テトラブチルのような、促進剤を添加した後に、HTCの構成ブロックのHTCシードとの反応を進行させる。
【0019】
更に他の関連する実施態様においては、HTCシードを表面官能化させて、平均して1を超える表面官能基を持たせる。別な方法として、HTCの構成ブロックを表面官能化させて、平均して1を超える表面官能基を持たせる。HTCシードは、酸化ケイ素、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム及び窒化ケイ素からなる群より選択することができ、HTCの構成ブロックは、窒化ホウ素、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素からなる群より選択することができる。
【0020】
その他の関連する実施態様においては、一定割合のHTCシードがホスト樹脂マトリックスにグラフトされるが、HTCシードは、HTCの構成ブロックを集積するより前に、ホスト樹脂マトリックスにグラフトされてもよい。HTC樹枝状充填剤は、ホスト樹脂マトリックスの5〜40体積%であり、HTC樹枝状充填剤からなるHTCの構成ブロックに対するHTCシードの比率は、体積で、約(2:1)から(1:4)までの範囲である。
【0021】
また別な実施態様においては、本発明は、ホスト樹脂を得る工程及びそのホスト樹脂にHTCシードを添加する工程からなる、樹脂含浸された多孔質媒体の内部にHTC樹枝状構造体を形成させるための、方法を提供する。HTCシードは、実質的に相互には反応せず、一定割合のHTCシードがホスト樹脂にグラフトされる。この割合は変更可能であるが、少なくとも5%である。次いで、HTCの構成ブロックを多孔質媒体に挿入するが、HTCの構成ブロックは、実質的に相互には反応しない。この方法には、更に、多孔質媒体の中にホスト樹脂を染み込ませて、ホスト樹脂がホスト媒体からHTCの構成ブロックを取り込む工程、及びHTCの構成ブロックをHTCシードと反応及び相互作用させて、ホスト樹脂マトリックスの内部にHTC樹枝状充填剤を得る工程、も含まれる。次いで、そのホスト樹脂を硬化させる工程がある。
【0022】
関連する実施態様においては、実質的に全部のHTCシードをHTCの構成ブロックと反応させる。その方法には更に、補足的な構成ブロックをホスト樹脂の中に直接混合する工程が含まれていてもよい。その他の具体的な実施態様においては、実質的に全部のHTCシードをホスト樹脂にグラフトさせ、多孔質媒体として複合体テープを使用する。
【0023】
本発明のその他の実施態様も存在するが、それらは、詳細な説明を更に読めば明らかになるであろう。
図面を参照して、例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
高熱伝導性(HTC)複合体は、充填剤と組み合わされた樹脂系ホストネットワークからなる、2相の有機−無機ハイブリッド材料である。有機−無機ハイブリッド材料は、2相の有機−無機複合体から、分子アロイに基づく有機−無機連続相材料から、及び、その中の有機−無機界面がデンドリマーのコア−シェル構造とは非分離であるような、分離した有機−デンドリマー複合体から、形成されている。構造要素の長さ方向のスケールが、熱輸送を担っているフォノンの分布よりも短いか又は同程度になるようにすることによって、フォノン輸送が促進され、フォノン散乱が抑制される。
【0025】
2相の有機−無機ハイブリッドは、無機のマイクロ、メソ又はナノ−粒子を、直鎖状又は架橋されたポリマー(熱可塑性プラスチック)及び熱硬化性樹脂に導入することによって形成してもよい。ホストネットワークには、ポリマー及び他のタイプの樹脂が含まれるが、これらの定義については後述する。一般的には、ホストネットワークとして機能する樹脂は、粒子と親和性があり、必要に応じて、その充填剤の表面に導入された基と反応することが可能なものであれば、どのような樹脂であってもよい。ナノ粒子の寸法は、典型的には、ポリマーネットワークのセグメントの長さのオーダー又はそれ以下である。例えば1〜30nmである。無機粒子には反応性表面が含まれていて、共有結合的に結合されたハイブリッド有機−無機均質材料を形成する。これらの粒子は、酸化物、窒化物、炭化物、並びに、酸化物、窒化物及び炭化物の化学量論的及び非化学量論的ハイブリッド混合物であってよいが、その更なる例は後ほど挙げる。
【0026】
無機粒子に表面処理をして、ホストネットワークとの反応に関与できる各種の表面官能基を導入する。そのような表面官能基としては、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシド、シラン及びビニルの各基が挙げられるが、これらに限定されない。これらの基は、湿式化学法、非平衡プラズマ法、化学的及び物理的蒸着法、スパッターイオンプレーティング法並びに電子及びイオンビーム蒸発法を使用して適用すればよい。
【0027】
分離した有機−デンドリマー複合体は、互いに反応させてもよいし、樹脂マトリックスと反応させて単一の材料を形成させてもよい。デンドリマーの表面には、先に述べたのと同様の反応性基を含ませることが可能で、これによって、デンドリマー−デンドリマー又はデンドリマー−有機マトリックスの反応が起きるであろう。デンドリマーは、無機コアと、対象としている反応性基を含む有機シェルとを有するであろう。無機シェルを含む有機コアを得ることも可能であり、このものも、また、一般的なゾルーゲル化学反応に関連するものと同様な無機反応に関与することが可能な、ヒドロキシル又はシラン基等の反応性基を含む。
【0028】
非分離の有機−無機ハイブリッドの使用に関しては、ゾル−ゲル化学反応を使用して、連続な分子アロイを形成させることができる。水性及び非水性反応に関連するゲル−ゾル化学反応を使用することができる。有機−無機ハイブリッドを形成させるためのその他の化合物には、ポリヘドラルオリゴマー性シルセスキオキサン(POSS)、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、及びテトラブチルオルトチタネート(TBOT)、並びに関連するモノマー性及びオリゴマー性ハイブリッド化合物が挙げられるが、これらは有機官能化無機化合物である。POSSの例においては、R−SiO1.5の構成ブロックの回りに分子が集合させられる。ここで、基Rは、他の有機化合物及びホストネットワークと親和性があるか、及び/又は反応するように選択される。ベース化合物を組み合わせて、ポリマーセグメント及びコイル構造体のサイズと同程度のより大きな分子を得てもよい。POSSを使用して、有機−無機ハイブリッドを創り出してもよいし、既存のポリマー及びネットワークにグラフトさせて、熱伝導性を始めとする特性を制御してもよい。これらの材料は、アルドリッチ ケミカル カンパニー(Aldrich Chemical Co.)(商標)、ハイブリッド プラスチックス Inc(Hybrid Plastics Inc)(商標)、及びゲレスト Inc.(Gelest Inc.)(商標)等の供給業者から得ることができる。
【0029】
先にも述べたように、フォノン散乱を抑制するためには、材料の構造的形態を制御することが重要である。このことは更に、マトリックスが、高熱伝導性を示すこと、この効果を維持するに十分な粒子のサイズ及び樹脂との界面特性を有すること、並びにフォノン散乱を抑制するために必要とされる長さ方向のスケールを満足することが知られているナノ粒子を使用することによって更に促進される。長短両周期を有する反応デンドリマー格子並びに液晶エポキシ及びポリブタジエンのようなホスト樹脂から形成されるはしご構造又は秩序のあるネットワーク構造を始めとする、より秩序の高い構造体を選択すれば、それもまた、このことに対して有利に働くであろう。
【0030】
充填樹脂は、回路基板及び絶縁テープのような各種の産業において接着樹脂として使用することができる。一つの具体的な絶縁テープの種類は、発電機の分野で使用されるマイカ−ガラステープである。これらのタイプのテープにおいて、樹脂は、当技術分野において知られているように、接着樹脂として又は含浸樹脂として使用される。充填樹脂は更に、テープを用いない発電機分野において、回転及び静止電気装置構成部品における電気絶縁としての適用を満たすために使用してもよい。
【0031】
テープは、電気的な対象物に適用する前又は後に、樹脂で含浸してよい。樹脂含浸法としては、VPI法及びGVPI法が挙げられるが、それらについては、以下に説明する。VPI法においては、テープを一旦重ね合わせて含浸し、それを圧縮する。位置を合わせてから、圧縮されたテープの中の樹脂を硬化させると、HTC材料の位置が効果的に固定される。いくつかの実施態様においては、当業者には自明のことであるが、樹脂を2段法で硬化させる。しかしながら、充填されたHTC材料を最適に圧縮するには、その圧縮工程中、完全に未硬化の樹脂であるのが好ましい。
【0032】
図2に、本発明の一つの実施態様を示す。ここに示されているのは、樹脂マトリックス32の中に充填されたHTC材料30である。マトリックスを通って移動するフォノン34は平均経路長nを有しているが、これが、そのフォノンの平均自由行程である。この経路長は、まさに樹脂マトリックスの組成に従って変化し得るが、エポキシ樹脂のような樹脂の場合には、一般的には2〜100nm、より典型的には5〜50nmである。従って、充填されたHTC材料間の平均距離は、平均してこの距離よりも短いのがよい。HTC材料間の距離は、テープの厚み方向と横方向とで変化し得るが、一般的には、厚み方向の間隔を最適化することが必要である、ということに留意されたい。
【0033】
フォノン34が樹脂32の中を移動する際には、それらが、埋め込まれたHTC材料30に沿って移動する傾向がある。これによって、局所的なフォノン流束が増加することになるが、それは、原料のHTC材料が10〜1,000W/mKの熱伝導性を有するのに対して、樹脂のそれが約0.1〜0.5W/mKであるからである。充填されたHTC材料に沿ってフォノンが移動する際に、材料間の距離がnよりも短ければ、フォノン36は次のHTC材料に移るので、その結果、HTC材料が相互接続ネットワークを形成する。図2は、理想的な経路を示している。実際には、樹脂とHTC材料との間をフォノンが通過する際にフォノン散乱が存在するであろうが、材料間の距離が短い程、そしてHTC材料と樹脂との間でのフォノンの伝播特性のマッチングが良好である程、散乱は少なくなる。
【0034】
樹脂中に充填されるHTC材料の量は、実際には、図2に見られるように極めて少なく、例えば約10%である。従って、充填されたHTC材料の間の平均距離、即ち、長さ方向のスケールは、nよりも僅かに大きくてもよいが、但し、それでも大部分はnより小さく、そのために、本発明の実施態様の範囲内に入るであろう。具体的な実施態様においては、次のHTC材料からの距離がnよりも小さい材料の割合は、50%を超え、特別な実施態様では75%を超える。具体的な実施態様においては、HTC材料の平均長さがnよりも大きく、そのことがフォノン輸送に更に役立つ。
【0035】
nが小さい程、充填されたHTC材料の濃度が高くなり、それとは逆に、粒径が大きい程、必要なHTC材料が少なくなる。具体的な実施態様では、樹脂及び充填剤の合計体積に基づいて5〜60%の、充填されたHTC材料を使用し、より具体的な実施態様では25〜40%で使用する。樹脂をテープに含浸させる場合、それが、テープ繊維と基材との間の空間に充填されるであろう。しかしながら、この時点では、テープ内部のHTC分布は、多くの場合、最適化されておらず、HTC材料の間の平均距離がnを超えることさえあり得る。本発明の実施では、樹脂含浸されたテープを圧縮して、充填されたHTC材料の間の距離を短縮させる。
【0036】
充填された樹脂をテープの中に含浸させる場合、特に樹脂が30%以上の充填剤を有すると、そのテープの繊維又は粒子が、HTC材料の幾分かをブロックするように働く。しかしながら、テープを圧縮することによって、その逆の現象が起こり、全体構造の内の可動性でない部分にHTC材料そのものが付着するために、より多くの充填剤がテープの内部に捕捉される。HTC充填剤が相互にピン留めされた状態にさえなる。記載してきた実施態様においては、充填剤が樹脂マトリックスとは反応しないものとしてきたが、いくつかの実施態様においては、充填剤が樹脂と共有結合を形成し、より均質なマトリックスを形成する。均質なマトリックスにおいては、充填剤に結合された樹脂分子は、結合されていない樹脂分子よりは、圧縮中に、より良好に保持されるであろう。
【0037】
樹脂は複数の産業で使用され、多数の用途を有している。樹脂の性質が異なれば、それらの用途だけではなく、それらを用いた製品の品質及び効率にも影響する。例えば、樹脂を電気絶縁用途に使用する場合、絶縁耐力及び電圧耐久性の特性が高いことが必要とされ、それと同様に、熱安定性及び熱耐久性も要求される。しかしながら、樹脂は、多くの場合、それらの目標とは対照的に、通常低い熱伝導性を有している。本発明では、樹脂の各種の物理的特性と樹脂が導入された絶縁系とのバランスをとって、十分な絶縁耐力、電圧耐久性、熱安定性及び熱耐久性、機械的強度、粘弾性応答等の重要な物理的特性を十分に維持し、更には、増強しながら、従来からの電気絶縁材料よりも高い熱伝導性を有する系を、創り出す。熱的及び機械的サイクル効果によって引き起こされる応力によって生じる剥離及びミクロボイド形成は、抑制又は回避される。本明細書で使用するとき、「樹脂」という用語は、全ての樹脂及びエポキシ樹脂を指していて、変性エポキシ、ポリエステル、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエステルイミド、ポリエーテルイミド、ビスマレイミド、シリコーン、ポリシロキサン、ポリブタジエン、シアネートエステル、炭化水素等、並びにこれらの樹脂の均質なブレンド物を含む。この樹脂の定義には、添加剤例えば、架橋剤、促進剤並びにその他の触媒及び加工助剤が含まれる。液晶熱硬化性樹脂(LCT)及び1,2−ビニルポリブタジエンのような、ある種の樹脂は、低分子量特性と良好な架橋性を合わせ持っている。樹脂は、ヘテロ原子を有し又は有しない炭化水素のような有機マトリックス、シリケート及び/又はアルミノシリケート成分を含む無機マトリックス、又は有機と無機のマトリックスの混合物であってもよい。有機マトリックスの例としては、ポリマー又は反応性熱硬化性樹脂が挙げられるが、それらは必要に応じて、無機粒子の表面上に導入された反応性基と反応してもよい。架橋剤をそれらの樹脂に添加することによって、最終的に架橋されたネットワークの構造とセグメントの長さ分布を制御することも可能で、それによって熱伝導性に関してプラスの効果を与えることができる。熱伝導性の向上は、触媒、促進剤及びその他の加工助剤のような他の樹脂添加剤による変性によっても得ることができる。液晶熱硬化性樹脂(LCT)及び1,2−ビニルポリブタジエンのような、ある種の樹脂は、低分子量的特性と良好な架橋性を合わせ持っている。このタイプの樹脂は、熱をよりよく伝導する傾向があるが、それは、樹脂の下部構造のミクロ及びマクロな秩序が向上されていて、それによってフォノンの輸送が改良された結果として熱の伝導が向上するからである。フォノン輸送が良好である程、熱伝達も良好となる。
【0038】
本発明の高熱伝導性充填剤を樹脂と混合すると、これらは連続生成物を形成し、そこには樹脂と充填剤との間の界面が存在しない。ある場合には、充填剤と樹脂との間に共有結合が形成される。しかしながら、連続というのは、幾分かは主観的なものであって、観察者が使用する物差しに依存する。マクロスケールでは、その生成物は連続であるが、ナノスケールでは、充填剤と樹脂ネットワークとの間には明瞭な相が依然として存在しうる。従って、樹脂と混合している高熱伝導性充填剤に言及する場合、マクロスケールではそれらが連続の有機−無機複合体を形成しているが、その一方、マイクロスケールでは、その同一の混合物をハイブリッドと呼ぶことができる。
【0039】
先にも述べたように、充填樹脂は、テープを用いない発電機分野において、回転及び静止電気装置構成部品における電気絶縁としての適用を満たすために使用してもよい。発電機において高熱伝導性材料は、各種の使用がなされる。ステーターコイルの中には、設計を最適化させるためには、高熱伝導性でなければならない接地壁(groundwall)以外の構成部品材料が存在する。同様に、コイルに関わるその他の構成部品も最大限の熱除去をしなければならない。ステーターの設計の改良には、ローターの設計にも改良を加えることが必要とされ、それによって、発電機の効率を最大化させることが可能となる。
【0040】
本明細書に記載の高熱伝導性技術をステーターに適用することが可能な構成成分及び材料の例としては、ストランド間絶縁、内部コロナ保護(ICP)系、外部コロナ保護(OCP)系、パッキング及びプレストレスト−ドライビングストリップ(PSDS−トップリップルスプリング)を始めとする、ボトム、センター及びトップ充填剤;サイド充填剤、積層材、及びサイドPSDS、コイルセンターセパレーター又はスウォード、コイルトランスポーテーション充填剤、ステーターウェッジ、コア絶縁材、ダイヤモンドスペーサー、ブレース若しくはブラケット、巻き端接着樹脂及び圧縮可能なギャップ充填剤、コネクター絶縁材、パラレルリング絶縁材、パラレルリング支持構造等が挙げられる。ローターにおいては、セルライナー若しくはスロットライナー、インターターン絶縁、ターン、グラウンド絶縁等が例示されるが、一体型の場合には、エンドキャップ絶縁材、ブロッキング、ラジアルピン及びリード、並びにスロットトップパッカー又は“U”等が挙げられる。
【0041】
明確にする目的で、ステーターコイル中の熱の流れ11の横断面図を示している、図3を参照する。この図によって示されたステーターコイルには、特に、銅ストランド5、転位ストランド6、ボトム、センター及びトップ充填剤4、接地壁絶縁材7、並びにセンターセパレーター8が含まれる。
【0042】
上述の構成部品又は材料は、積層法、押出し法、モールド法及びその他の方法を始めとする各種の手段によって、製造できるが、それらの方法は、当業者には馴染み深いものである。ステーターコイルにおいて使用される構成材料は、銅及び絶縁体である。銅はストランドの形態となっていて、一般的には、絶縁され、組み立てられ、2次加工されてベークライト処理したコイル又はスタックとなっている。設置壁絶縁を用いてそのベークライト処理したコイルを絶縁するが、それに伴う電気応力制御層が存在する。ステーターコイルの熱伝導性に影響する主な構成成分は、設置壁絶縁であるが、その他の構成成分も、また、同様な改良によってメリットを受ける。例えば、ステーターコイルを構築する際に採用される、応力制御及びその他の系は、典型的には、銅からステーターコアまでの絶縁厚みの10〜20%である。場合によっては、それらの材料に構造的な変化を導入することによって、その熱的及び電気的伝導性を所望の値に微制御することが提案される。
【0043】
更なる例としては、内部応力制御層が低導電層からなっていてもよく、それは直接若しくは抵抗を介して銅に接続されてもよいし、又はそれから絶縁されていてもよい。その様な場合においては、低導電層を適用する前に、絶縁層をベークライト処理したコイル表面に適用してもよい。絶縁テープ又はシートは、結合の目的で又はボイド領域を充填して表面を平滑化させる目的で、ベークライト処理されたコイルに適用してもよい。次いで、その低導電層の後に、所望の性質を有する材料の追加の1層又は複数層を適用してもよい。これは、応力制御又は絶縁のような電気的な目的のためであってよい。
【0044】
設置壁を適用した後で、1層又は複数層の低導電層をコイルの表面に適用して、コアへの良好な接続を確保し、部分放電とバーバウンス効果(bar bounce effect)を防止し、しかも、コア積層の短絡を防止する。この低導電層がその上に適用された絶縁層を有するような適用例もまた、特許文献に記載されている。従って、外部コロナ保護系には、低導電層、絶縁層及び部分絶縁層が含まれていてよい。
【0045】
ステーター末端領域における電気応力を制御するために、応力制御層をコイルの直線部分の末端、及び巻き端(endwindings)又は渦巻き(involute)領域の中に適用する。このものは、通常、炭化ケイ素担持テープ又は塗料からなり、1層又は複数層、場合によっては階段状の層に適用される。絶縁層と組み合わせたり、1層又は複数層の比較的高抵抗率層と組み合わせたりしてもよい。この用途においては、高熱伝導性材料が、その系の熱伝導性を顕著に高めるであろう。いつ高熱伝導性材料を使用するかの選択は、その機械の設計と通常の絶縁材料及び設置壁の熱伝導性とに依存するであろう。
【0046】
末端領域においては、ガラステープ及び収縮性材料が、圧密化のような各種の因子のために及び機械的な支えを強化するために、ある種のデザインで、使用される。それに加えて、巻き端領域の機械的な支えには、樹脂、ダイヤモンドスペーサー、フェルト又はクロスのような柔軟な含浸可能材料、並びにバッグ、小袋(bladder)又はホースのようにその中に樹脂を充填させることが可能な材料の使用が必要となる。それらの構成成分及び材料の内で、高熱伝導性材料を使用すると、その系の熱伝導性を顕著に高めることになるであろう。どこでいつ高熱伝導性材料を使用するかの選択は、その機械の設計と通常の絶縁材料の熱伝導性とに依存するであろう。
【0047】
直接冷却式のローターにおいては、その冷却ガス又は媒体が、銅と直接接触する。直接冷却のための主な設計法には、半径方向冷却と軸方向冷却との2種がある。巻き端領域には、異なる冷却方法があってよい。半径方向冷却の設計においては、ガスはサブスロット又は各スロットの底部の中空ターン(hollow turn)に沿って流れる。次いで、それは、中実の銅ターンの中の冷却スロットを放射状に通過し、スロットの頂部で排出される。軸方向冷却の設計においては、ターンは中空であり、通常、正方形又は長方形の横断面を有している。ガスは中空の導体の側壁にある孔を通って各末端に入り、銅管の内側を流れ、ローター中心の銅にある孔を通って放射状に排出される。
【0048】
これらローターのいずれの設計においても、設計に対する高熱伝導性材料の使用の効果は、顕著なものがある。事実、間接冷却の機器では、それがより顕著となる。ローターコイルは、典型的には、スロットセル又はアングル材のいずれかの形態の、成形されたエポキシガラス積層体によって、大地からは絶縁されている。インターターン絶縁材は、積層材であっても、アングル材であってもよい。本明細書に記載された方法を使用することによって、そのような構成成分を高熱伝導性とすることが可能であるということは評価できる。
【0049】
本発明の一つの実施態様は、高熱伝導性(HTC)材料を樹脂に添加して、樹脂の熱伝導性を改良する。いくつかの実施態様においては、熱伝導性を高くしたことの代償として、樹脂のその他の物理的特性が低下するが、他のいくつかの実施態様においては、他のいくつかの物理的特性が顕著に影響を受けることはなく、いくつかの特定の実施態様においては、これら他の特性が改良されることもあるであろう。具体的な実施態様においては、HTC材料を、LCTエポキシのような秩序のある下部構造を有する樹脂に、添加する。これらのタイプの樹脂に添加する場合、使用されるHTC材料の量は、秩序のある下部構造体を持たない樹脂の場合よりも、少なくすることができる。
【0050】
樹脂の中に充填されるHTC材料は、各種の物質からなっていて、それらを添加することによって、樹脂と物理的及び/又は化学的に相互作用するか反応して、熱伝導性を改良することができる。一つの実施態様においては、HTC材料がデンドリマーであり、また別な実施態様においては、それらは、3〜100又はそれ以上の、より好ましくは10〜50の範囲の、アスペクト比(平均縦寸法に対する平均横寸法の比率)を有する高アスペクト比の粒子を始めとする、所定のサイズと形状とを有するナノ又はマイクロ無機充填剤である。
【0051】
一つの関連する実施態様においては、HTC材料が決められたサイズと形状分布を有していてもよい。いずれの場合においても、充填剤粒子の濃度及び相対濃度を選択して、達成されるべきバルク結合(bulk connecting)(又はいわゆる浸透)構造が達成されるようにするが、その構造は、高い熱伝導性を有する構造的に安定な分離した2相複合体を達成するための体積充填の有無にかかわらず、高熱伝導性を与える。また別な関連する実施態様においては、HTC材料を配向させることによって熱伝導性が向上する。更にまた別な実施態様においては、HTC材料を表面被覆することによって、フォノンの輸送が促進される。これらの実施態様は、他の実施態様とは独立して実施してもよいし、或いは関連づけて一体としてもよい。例えば、デンドリマーを、熱硬化性及び熱可塑性材料等の、他のタイプの高度構造化材料と組み合わせる。これを樹脂マトリックス中に均一に分散させて、HTC材料がフォノンの分散を抑制し、フォノンのためのマイクロスケールの架橋を形成して、HTC材料の間での良好な伝熱性界面が形成されるようにする。高度構造化材料が整列させられ、それによって、熱伝導性が単一の方向又は複数の方向に沿って増加し、局在化した又はバルク異方性のいずれかの、電気絶縁材料が得られる。また別な実施態様においては、HTCは、熱伝導性が低い充填剤を、高熱伝導性を有する金属酸化物、炭化物又は窒化物及び混合系で、表面被覆することによって達成されるが、それらの高熱伝導性物質は、所定のバルク特性を有する充填剤に物理的又は化学的に付着させられ、そのような付着は、化学的蒸着及び物理的蒸着のようなプロセスによって、また、プラズマ処理によって達成される。
【0052】
関連する実施態様においては、HTC材料が、実質的に均質な、つまり、望ましくない微視的な界面、粒子の濡れの変動及びマイクロボイドの形成が実質的にない、樹脂との混合物を形成する。この均質な材料が、従来からの電気絶縁材料におけるフォノンの波長又はフォノンの平均自由行程のいずれよりも短い長さ方向のスケールで、非分離である連続相材料を形成する。いくつかの実施態様においては、誘電破壊を制御するために、樹脂構造の中に意図的に界面を設ける。絶縁材料においては、正常な条件を与えれば、誘電破壊が起きるであろう。2相系における界面の性質と空間的な分布とを制御することによって、誘電破壊強度及び長期電気的耐久性を向上させることができる。絶縁耐力の向上は、部分的には、高密度化、マイクロボイドの除去及びより高い内部的な機械的圧縮強度によって起こすことができるであろう。
【0053】
本発明の樹脂は、マイカテープ並びにガラス及びポリエステルテープ等のその他の複合体構成物に含浸するために使用してもよい。電気絶縁のために典型的に使用されている標準的なマイカ(白雲母、金雲母)に加えて、黒雲母、更にはいくつかのその他の、カオリナイト、ハロイサイト、モンモリロナイト、クロライト等の、マイカ様アルミノシリケート物質もある。モンモリロナイトは、その構造の中に、ポリマー樹脂、金属カチオン及びナノ粒子を容易に挿入できる格子を有していて、高絶縁耐力の複合体を与えることができる。
【0054】
その他の実施態様においては、本発明は、絶縁が望ましい表面の上の連続被覆として使用される。ここで「連続被覆」というのは、マクロスケールの適用の記述であるということに注目されたい。連続被覆においては、テープ又はその他の基材を必要とすることなく、樹脂が材料の上に被覆を形成する。基材と共に用いた場合、HTC材料は、広範な種々の方法によって樹脂と組み合わせることができる。例えば、HTC材料は、樹脂を基材に加えるより前に添加することもできるし、或いは樹脂を基材に含浸させるより前に基材に加えることもできるし、或いは、樹脂を最初に添加し、それに続けてHTC材料を添加し、次いで樹脂を更に含浸させることできる。当業者には、その他の二次加工方法及び一次加工方法は明らかであろう。
【0055】
一つの実施態様においては、本発明は、高い熱伝導性を与え、しかもその他の重要な特性及び性能特性を維持し又は向上させる、新規な有機−無機材料を使用する。そのような材料は、その他の高電圧及び低電圧電気絶縁状況における用途を有しており、このような用途では、高熱伝導性によって、電力定格の向上、絶縁厚みの減少、よりコンパクトな電気設計及び高度の熱伝達等の点において、利点が得られる。本発明は、アルミナ、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛及びダイヤモンド、更にはその他の、ナノ、メソ及びマイクロ無機HTC−材料を添加して、より高い熱伝導性を得ている。これらの材料は、種々の結晶学的及び形態学的な形状を有することができ、それらは、直接的に又はキャリヤー液体として作用する溶媒を介して、マトリックス材料と共に加工することができる。HTC−材料をマイカ−テープのような各種の基材に混合してマトリックスとするのに、溶媒混合物を使用してもよい。それとは対照的に、本発明のまた別な実施態様を構成する分子ハイブリッド材料は、分離した界面を含まず、有機相中の無機相によって得られる利点を与える。これらの材料は更に、熱安定性、引張強度、曲げ強さ、及び衝撃強度、可変周波数及び温度依存性機械的モジュラス、損失、並びに一般的な粘弾性応答等のその他の物理的特性を向上させることにも寄与しうる。
【0056】
また別な実施態様においては、本発明は、有機−無機界面がデンドリマーのコア−シェル構造とは非分離である、分離の有機−デンドリマー複合体を含む。デンドリマーは、中心のコアの上に形成された、三次元のナノスケールのコア−シェル構造体群である。コアは、有機材料で構成されていてもよく無機材料で構成されていてもよい。中心のコアの上に形成させることによって、デンドリマーは、同心的シェルを順次加えていくことにより形成される。シェルは、分岐された分子群からなり、分岐されたシェルが世代と呼ばれる。典型的には、使用される世代の数は1〜10であり、世代が進むにつれて、より外側のシェル中の分子群の数は指数的に増加する。その分子群の組成は、精密に合成することが可能であって、外側の群は、反応性官能基であってよい。デンドリマーは、樹脂マトリックスと、また、相互の間でも、結合することができる。従って、デンドリマーは、HTC材料として樹脂に添加してもよいし、他の実施態様においては、従来から使用されてきた樹脂に添加することなく、それら自体でマトリックスを形成してもよい。
【0057】
分子群相互間の又は樹脂との反応の能力に応じて、分子群を選択することができる。しかしながら、その他の実施態様においては、それ自体の熱伝導性向上能力に応じて、デンドリマーのコア構造、例えば、以下に説明する金属酸化物が選択される。
【0058】
一般的には、デンドリマーが大きい程、フォノン輸送要素として機能する能力が高くなる。しかしながら、それが材料に浸透する性能及びその浸透潜在能力は、そのサイズが大きくなると低下する可能性があり、そのため、構造と要求される性能とのバランスを得るための最適なサイズが探索される。他のHTC材料と同様に、デンドリマーには溶媒を添加して、マイカやガラステープ等の基材へのそれらの浸透を助けることができる。多くの実施態様においては、デンドリマーは、種々の異なった分子群を有する種々の世代を有するものが使用されるであろう。
【0059】
市販されている有機デンドリマーポリマーとしては、ポリアミド−アミンデンドリマー(PAMAM)、ポリプロピレン−イミンデンドリマー(PPI)、PAMAMの内部構造と有機−ケイ素の外部構造とを有するデンドリマーであるPAMAM−OS等が挙げられる。前の二つは、アルドリッチ ケミカル(Aldrich Chemical)(商標)から、最後の一つはダウ−コーニング(Dow−Corning)(商標)から入手可能である。
【0060】
同様の要求は、相互に又はマトリックスポリマー若しくは反応性樹脂と反応して単一の材料を形成する、無機−有機デンドリマーの場合にも存在する。この場合、デンドリマーの表面には、先に特定されたものと同様の反応性基を含み、それによって、デンドリマー−デンドリマー、デンドリマー−有機、デンドリマー−ハイブリッド、及びデンドリマー−HTCマトリックスの反応のいずれかを起こさせることが可能となるであろう。このケースにおいては、デンドリマーは無機コアと有機シェルとを有するか、又はその逆であって、目的とする有機若しくは無機反応性基又は配位子のいずれかを含む。従って、無機シェルを有する有機コアを有していることもまた可能であって、更に、一般的なゾル−ゲル化学反応に含まれるものと類似の無機反応に関与することが可能な、ヒドロキシル、シラノール、ビニル−シラン、エポキシ−シラン及びその他の基等の反応性基が含まれる。
【0061】
全ての場合において、構造要素の長さ方向のスケールを、熱輸送を担っているフォノン分布よりも短いか又は同程度になるようにすることによって、フォノン輸送が促進され、フォノン散乱が抑制される。HTC粒子状物質が大きい程、それら自体の本質として、フォノン輸送を実際に増大させることができるものの、HTC材料が小さい程、樹脂マトリックスの性質を変更させて、それにより、フォノン散乱の変化に影響を与えることができる。このことは、ナノ粒子を使用することによって更に促進させることができる。ナノ粒子のマトリックスは、高熱伝導性を示すこと、及び、その粒径がこの効果を維持するに十分であって、更には、フォノン散乱を抑制させるのに必要とされる長さ要件を満たしていることが知られている。長短両範囲の周期を有する反応デンドリマー格子、及び、液晶エポキシ樹脂やポリブタジエンのようなマトリックスから生成させることが可能な梯子構造又は秩序のあるネットワーク構造を始めとする、より高い秩序を有する構造を選択することも考えておく必要がある。従来技術の樹脂マトリックスは、最大で約0.15W/mKの熱伝導性を有するであろう。本発明は、0.5〜5W/mK、更にはそれよりも高い熱伝導性を有する樹脂を提供する。
【0062】
連続の有機−無機ハイブリッドは、直鎖状又は架橋されたポリマー及び熱硬化性樹脂の中に、ポリマー又はネットワークのセグメントの長さ(典型的には、1〜50nm)のオーダーであるか又はそれよりも小さい寸法の無機ナノ粒子を組み入れることによって形成させてもよい。このことが起こりうるようにするには、以下の3種の経路又は機構が含まれる(これらに限定される訳ではない):(i)側鎖のグラフト化、(ii)例えば、2本のポリマー鎖の末端間での包括的グラフト化、(iii)少なくとも2個、典型的には数個のポリマー分子を巻き込んだ架橋グラフト化。これらの無機ナノ粒子には、密接した共有結合的に結合されたハイブリッド有機−無機均質材料を形成させるための反応性の表面を含むであろう。これらのナノ粒子は、金属酸化物、金属窒化物及び金属炭化物、更にはいくつかの非金属酸化物、窒化物及び炭化物であってよい。例えば、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛及びその他の金属酸化物、窒化ホウ素、窒化アルミニウム及びその他の金属窒化物、炭化ケイ素及びその他の炭化物、天然由来又は合成由来のダイヤモンド、並びに、これらの及びその他の金属炭化物の各種の物理的形態のいずれか、並びに、酸化物、窒化物、及び炭化物の化学量論的及び非化学量論的ハイブリッド混合物である。それらのより具体的な例としては、Al2O3、AlN、MgO、ZnO、BeO、BN、Si3N4、SiC、及びSiO2、並びに化学量論的組成及び非化学量論的組成の混合が挙げられる。更に、それらのナノ粒子を表面処理して、ホスト有機ポリマー又はネットワークとの反応に関与することが可能な、種々の表面官能基を導入してもよい。シリカやその他のバルク充填剤のような非HTC材料を、HTC材料で、被覆することもまた可能である。このことは、より高価なHTC材料を使用する場合の、一つの選択肢としてあり得る。
【0063】
樹脂中におけるHTC材料の体積百分率は、約60体積%まで又はそれ以上、より好ましくは約35体積%までとしてよい。体積充填量が高い程、マトリックスの構造安定性がより高くなる傾向がある。しかしながら、サイズ及び形状の分布、粒子の会合及び配列の程度を制御することによって、HTC材料が1体積%以下しか占めないようにすることもできる。しかしながら、構造的な安定性の理由からは、浸透を起こさせるのに必要な最小の量よりは多い量で添加するのが有用であろう。従って、浸透構造やHTC特性を損なうことなく、樹脂は物理的な歪みや変形に耐えることができるであろう。
【0064】
表面官能基の添加には、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシド、シラン又はビニルの各基が含まれていてよく、これらはホスト有機ポリマー又はネットワーク形成樹脂系との化学反応に化学反応に役立つ。これらの官能基は、無機充填剤の表面の上に元々存在していてもよいし、或いは、湿式化学法、プラズマ重合法を始めとする非平衡プラズマ蒸着法、化学的蒸着法及び物理的蒸着法、スパッターイオンプレーティング法、並びに電子及びイオンビーム蒸発法を用いて適用してもよい。マトリックスポリマー又は反応性樹脂は、ナノ粒子と親和性があり、必要に応じて、ナノ粒子表面に導入された反応性基と反応することができるものであれば、どのような系であってもよい。これらは、エポキシ、ポリイミドエポキシ、液晶エポキシ、シアネート−エステル、並びに各種の架橋剤を含むその他の低分子量ポリマー及び樹脂であってよい。
【0065】
非分離の有機−無機ハイブリッドの場合には、ゾル−ゲル化学反応を使用して、連続な分子アロイを形成させることができる。この場合、水性及び非水性反応が関与するゾル−ゲル化学反応が考慮される。
【0066】
本発明の製品は、従来からの電気絶縁材料よりも高い熱伝導性を示し、マイカ−ガラステープ構造体における接着樹脂として、従来からのマイカテープ構造体のための未反応の真空圧含浸樹脂として、並びに回転式及び静電式発電プラントにおいて、そして高電圧及び低電圧両方の電気及び電子装置、構成部品、及び製品において、電気絶縁的用途を満足させるための単独の材料として使用することができる。本発明の製品は、相互に組み合わせてもよいし、更には従来技術のHTC−材料及び他の材料と組み合わせてもよい。
【0067】
マイクロ及びナノHTC粒子は、自己凝集して所望の構造の、フィラメント及び分岐デンドライトとなれる能力を基準にして、選択すればよい。粒子は、本来的な自己集合性能能力から選択すればよいが、そのプロセスは、電荷分布を始めとする粒子の粒子表面電荷状態に変化を与えるような、電場、磁場、音波、超音波、pH制御、界面活性剤の使用及びその他の方法のような外部の力によって、更に変化させることもできる。一つの具体的な実施態様においては、例えば窒化ホウ素、窒化アルミニウム、ダイヤモンド等の粒子を自己集合させて所望の形状とする。この方法においては、所望の凝集構造体は、最初に高熱伝導性材料から作るか、又はホストマトリックスの中への組み込みの際に集合させることができる。
【0068】
多くの実施態様においては、同一の用途においても、HTC−材料のサイズと形状とを変化させる。同一の製品の中で、幅のあるサイズと形状とを使用する。種々の長短可変なアスペクト比を有するHTC−材料があることによって、樹脂マトリックスの熱伝導性が向上するとともに、向上した物理的特性及び性能が潜在的に与えられる。しかしながら、観察されるべき一つの側面は、粒子の長さは、基材/絶縁体の層の間で架橋が起きるほど長いものであってはならないということである。更に、種々の形状と長さとがあることによって、より均質な容量充填と充填密度とが得られて、その結果、より均質なマトリックスが生じるので、HTC−材料の浸透安定性が改良されるであろう。一つの実施態様においては、サイズ及び形状を混合させた場合、より長い粒子がより棒状の形状であるのに対して、より小さな粒子は、より球状、平板状、又は円板状、更には直方体状である。例えば、HTC−材料を含む樹脂には、約55〜65体積%の直径10〜50nmの球状物及び約15〜25体積%の長さ10〜50μmの棒状物を、10〜30体積%の樹脂と共に含んでいてもよい。
【0069】
また別な実施態様においては、本発明は、有機−無機複合体に基づく新規な電気絶縁材料を提供する。熱伝導性は、誘電性(誘電率及び誘電損失)等の他の絶縁特性、導電性、絶縁耐力及び電圧耐久性、熱安定性、引張モジュラス、曲げモジュラス、衝撃強度並びに熱耐久性、更にはその他の因子、例えば、粘弾性及び熱膨張率、並びに総括絶縁性に悪影響を与えることなく、最適化される。有機相及び無機相は、特性と性能との適切なバランスが達成されるように、構築され、選択される。
【0070】
一つの実施態様においては、所望の形状と粒径分布とを有するナノ、メソ及びマイクロ無機充填剤の表面被覆と、選択された表面特性及びバルク充填性とは、相互に補完的である。これによって、必要とされるバルク特性を維持しながら、有機ホスト中の充填剤相の浸透構造と相互関連性とを独立して制御することが可能となる。更に、単一又は二次的な被覆としての、有機及び無機被覆を使用して、有機マトリックスに対する粒子表面の親和性を確保し、ホスト有機マトリックスとの化学反応が起きることを可能としてもよい。
【0071】
形状に関しては、本発明では、浸透を促進させるために、自然に棒状物及び平板状物となる傾向を有する個別の粒子形状を使用するが、天然に産出されるものに加えて合成的に製造された物質も含めて、棒状物が最も好ましい実施態様である。棒状物とは、平均アスペクト比が約5以上、好ましい実施態様では10以上、であるが、より好ましい実施態様では100以下の粒子と定義される。一つの実施態様においては、その棒状物の軸の長さは、およそ10nm〜100ミクロンの範囲である。棒状物が小さい程、より良好に樹脂マトリックスに浸透し、樹脂の粘度への悪影響も少ない。
【0072】
多くのマイクロ及びナノ粒子は、球状及び円盤状の形状をとるが、それらのものは、ある条件下では均等に分布する能力が低く、そのために凝集されたフィラメント状構造を取りやすく、そのことが、浸透が起きる濃度を低下させる。浸透を向上させることによって、樹脂の熱的特性を向上させたり、或いはそれとは別に、樹脂に添加すべきHTC材料の量を減少させたりすることができる。更に、浸透を促進させることによって、避けるべき凝集が起きるのではなく、むしろ、樹脂の内部におけるHTC材料のより均一な分布が得られることとなり、それによって、望ましくない界面、不完全な粒子の濡れ及びマイクロボイドの形成等を有する可能性がより低い、より均質の製品が得られる。同様にして、凝集されたフィラメント状又は樹枝状構造は、より高いアスペクト比粒子から形成された球状の(密度の高い)凝集物又は集塊物よりも、高い熱伝導性を与える。
【0073】
更に、流体の流れの場、電場及び磁場をHTC材料に印加して、それらをエポキシ樹脂の内部に分散させ、構造的に組織化することもできる。交流電場又は静電場を使用することによって、棒及び平板形状の物を、マイクロスケールで整列させることができる。このことによって、異なる方向には異なる熱的性質を有する材料が創り出される。電場を作ることは、絶縁された電気導体を横切って電極を取り付ける方法、材料又は絶縁系の中心に導体を使用する方法等の、当技術分野で公知の種々の方法によって達成できる。
【0074】
選択された粒径及び形状分布と組み合わせたときに、粒子誘電率を系の誘電率を制御するように選択しながら、絶縁系全体の熱伝導性及び導電性を制御した所定の浸透構造を与える、金属−酸化物、−窒化物、−炭化物及び混合系のような有機表面被覆及び無機表面被覆を生成させることができる。また別なタイプの被覆は、天然由来又は合成由来のマイクロ粒子及びナノ粒子のダイヤモンド被覆である。多結晶及び単結晶ナノ粒子の形態においては、粒子は、シリカ等の担体粒子の表面と会合していてもよい。シリカそのものは、先にも述べたように、強い伝熱性を有する材料ではないが、表面被覆を加えることによって、熱伝導性がより高い材料となる。しかしながら、シリカ及び他のそのような材料は、棒形状の粒子に容易に形成できるという有利な性質を有している。このような方法で、種々のHTC特性を一つの製品の中に組み込むことができる。それらの被覆は更に、樹脂含浸の存在下又は非存在下に、マイカ及びガラスの両方の成分を含むマイカテープ構造体への用途もまた有している。
【0075】
反応性表面官能基は、無機被覆に固有な表面基から形成させてもよいし、或いは更なる有機被覆物を塗布することによって得てもよい。被覆物のいずれも、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシド、シラン、ビニル及びその他の基を含んでいてよく、それらはホスト有機マトリックスとの化学反応に用いることができる。これらの単一又は多重の表面被覆及びそれらの表面官能基は、湿式化学法、プラズマ重合を始めとする非平衡プラズマ法、化学的蒸着法及び物理的蒸着法、スパッターイオンプレーティング法、並びに電子及びイオンビーム蒸発法を用いて付加することができる。
【0076】
また別な実施態様においては、本発明は、有機−無機複合体に基づく新規な電気絶縁系を提供する。種々の無機及び有機構成成分の間の界面を化学的及び物理的に親密にして、異種の相の間に高度に物理的な連続性を確保し、機械的に強く、高電圧及び低電圧用途のいずれで使用したときでも、電気絶縁系が作動中に故障を起こしにくい界面を得る。そのような材料は、界面の一体性を高めることが、電力定格の上昇、絶縁系の電圧応力(voltage stressing)の上昇、絶縁厚みの低下といった利点を与え、高い熱伝達を達成する、高電圧及び低電圧の電気絶縁状況における用途を有している。
【0077】
具体的な実施態様においては、ナノ、メソ、及びマイクロ無機充填剤への種々の表面処理を使用して、無機表面に有機マトリックスに対する親和性を与えることができる種々の表面官能基を導入したり、ホスト有機マトリックスとの間で化学反応を起こさせたりする。表面官能基としては、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシド、シラン又はビニルの各基が挙げられ、これらはホストの有機マトリックスとの化学反応に利用できる。これらの官能基は、湿式化学法、非平衡プラズマ法、化学的蒸着法及び物理的蒸着法、レーザービーム法、スパッターイオンプレーティング法並びに電子及びイオンビーム蒸発法を使用して適用すればよい。
【0078】
多くの実施態様においては、表面処理された材料は、マイカ−ガラステープ構造体における接着樹脂において、従来からのマイカテープ構造体のための未反応の真空圧含浸(GVPI及びVPI)樹脂において、並びに回転式及び静電式発電プラントにおける電気絶縁又は導電的用途のいずれかを満足させるための単独の電気絶縁被覆又はバルク材料において、並びに高電圧及び低電圧両方の電気装置、構成部品及び製品において、使用することができる。更に、全ての化学反応は、揮発性の副生物を避けるために、縮合反応ではなく付加反応の結果として得られるものであるべきである。
【0079】
最近、液晶ポリマーを使用することによって、エポキシ樹脂の改良が進んでいる。エポキシ樹脂を液晶モノマーと混合するか、又は液晶性メソゲンを例えばDGEBAのようなエポキシ樹脂分子の中に組み入れることによって、架橋によって顕著に改良された機械的特性を有する秩序のあるネットワークを形成することが可能なポリマー又はモノマーを含有する液晶性熱硬化性(LCT)エポキシ樹脂が、製造される。米国特許第5,904,984号明細書を参照されたい(この特許を、参考として引用し本明細書に組み入れる)。LCTの更に有利な点は、標準的なエポキシ樹脂よりも改良された熱伝導性と共に低い熱膨張率(CTE)値をも有していることである。
【0080】
LCTエポキシ樹脂を更に魅力あるものとしているのは、それらが、標準的なエポキシ樹脂よりも、熱をより良く伝導することができることである。米国特許第6,261,481号明細書(本明細書を参考として引用し本明細書に組み入れる)の教示によれば、従来からのエポキシ樹脂の熱伝導性よりも高い熱伝導性を有するLCTエポキシ樹脂を製造することが可能である。例えば、標準的なビスフェノールAエポキシは、横(面)方向と厚み方向との両方において、0.18〜0.24ワット/メートル・ケルビン度(W/mK)の熱伝導性値を有していることが示されている。それとは対照的に、LCTエポキシ樹脂は、実際に使用した場合、横方向では0.4W/mK以下、厚み方向では0.9W/mK以下の熱伝導性値を有していることが示されている。
【0081】
紙に適用されるHTC材料に関連して使用する場合、「基材」という用語は、絶縁紙がそれから形成されるホスト材料を指しており、その一方で、「紙マトリックス」という用語は、その基材から製造された、より完全な紙構成成分を指している。本発明のこの実施態様を説明する際に、これら二つの用語が、幾分互換的に使用されることもある。基材の、誘電正接等の電気的性質や引張強度及び凝集性等の物理的特性を著しく損なうことなく、熱伝導性の向上が達成されなければならない。表面被覆を用いるようないくつかの実施態様においては、その物理的特性を改良することさえ可能である。更に、いくつかの実施態様においては、HTC材料の添加によって、ホスト紙マトリックスの電気抵抗率が向上することもあり得る。
【0082】
電気絶縁のために典型的に使用されている標準的なマイカ(白雲母、金雲母)に加えて、黒雲母、更にはいくつかのその他の、カオリナイト、ハロイサイト、モンモリロナイト、クロライト等の、マイカ様アルミノシリケート物質もある。モンモリロナイトはその構造の中に、金属カチオン、有機化合物並びにモノマー及びポリマー等のHTC材料を容易に挿入できる格子を有していて、高絶縁耐力の複合体を与えることができる。
【0083】
絶縁紙は、本発明の樹脂を含浸させることができる多孔質媒体のほんの一つのタイプである。多くの産業において(それらのいくつかは以下において説明する)、その他の多くの材料及びそれから製造される構成成分は、種々のタイプの多孔質媒体を使用して、その中に樹脂を含浸させることができる。例を挙げれば、ガラス繊維のマトリックス又は織物、及びポリマーのマトリックス又は織物が存在するが、ここで、織物は、典型的にはクロス、マット又はフェルトであり得る。面積層体を有するガラス織物積層体である回路基板は、本発明の樹脂を使用することによってメリットが得られる一つの製品であろう。
【0084】
ステーターコイルと共に使用される樹脂含浸のタイプは、VPI及びGVPIとして知られている。テープをコイルの周りに巻き付けてから、真空圧含浸(VPI)法によって、低粘度の液状絶縁樹脂で含浸する。そのプロセスは、マイカテープの中に捕捉されている空気と湿分とを除去する目的で、コイルが入っているチャンバーを真空引きする工程、次いで、絶縁樹脂を加圧下に導入して、マイカテープを樹脂で完全に含浸させて、それによってボイドを除去する工程、及びマイカホスト中で樹脂絶縁材を製造する工程からなる。いくつかの実施態様においては、約20%の圧縮をすることが、VPIプロセスに特定のものである。これが完了した後に、コイルを加熱して樹脂を硬化させる。樹脂が促進剤を含んでいてもよいし、或いはテープが促進剤を有していてもよい。この一つの変法である、包括的なVPI(GVPI)は、乾燥した絶縁化コイルを巻き付けてから、個々のコイルではなく、ステーター全体を真空圧含浸させるプロセスを含む。GVPIプロセスにおいては、乾燥したコイルをその最終的な位置に挿入してから含浸させるので、樹脂の含浸に先立ってコイルを圧縮する。これまで、種々の圧縮方法を説明してきたが、本発明の実際の圧縮工程のために、VPI/GVPI含浸プロセスを使用することも可能である。
【0085】
一つの実施態様においては、本発明は、ホスト樹脂マトリックスと高熱伝導性充填剤とを含有してなる高熱伝導性樹脂を提供する。高熱伝導性充填剤は、ホスト樹脂マトリックスと共に、連続の有機−無機複合体を形成するが、高熱伝導性充填剤は、長さが1〜1,000nmであり、3〜100の間のアスペクト比、より好ましくは10〜50のアスペクト比、を有している。
【0086】
一つの関連する実施態様においては、高熱伝導性充填剤は、2相の有機−無機複合体から形成されているが、それには、ポリヘドラルオリゴマー性シルセスキオキサン、テトラエチルオルトシリケート、及びテトラブチルオルトチタネートが含まれていてよい。反応性表面基が熱伝導性充填剤の上に存在している。また別な実施態様においては、高熱伝導性充填剤が有機−無機連続相材料から形成されている。更にまた別な実施態様においては、それが、分離の有機−デンドリマー複合体から、又は分離の有機−無機デンドリマー複合体から形成されている。
【0087】
また別な実施態様においては、本発明は、ホスト樹脂ネットワークと、ホスト樹脂ネットワークの中に均質に分散されていてホスト樹脂ネットワークと実質的に完全に共反応している無機高熱伝導性充填剤と、を含んでなる、連続の有機−無機樹脂を提供する。高熱伝導性充填剤は、1〜1,000nmの長さと10〜50のアスペクト比とを有している。高熱伝導性充填剤は、酸化物、窒化物及び炭化物の内の少なくとも一つから選択され、予め表面処理されて、ホスト樹脂ネットワークとの実質的に完全な共反応性を可能とする表面官能基が導入されている。表面官能基は、表面湿式又は反応性化学グラフト化のような方法で適用することができる。その他の反応性化学グラフト化法としては、非平衡プラズマ法、化学的蒸着法及び物理的蒸着法、スパッターイオンプレーティング法、レーザービーム法、並びに電子及びイオンビーム蒸発法が挙げられる。連続有機−無機樹脂には、体積で、最大で60%、より好ましい実施態様では少なくとも35%、の高熱伝導性充填剤が含まれ、また架橋剤が含まれていてもよい。
【0088】
一つの関連する実施態様においては、酸化物、窒化物及び炭化物は、Al2O3、AlN、MgO、ZnO、BeO、BN、Si3N4、SiC及びSiO2、並びに化学量論的及び非化学量論的結合の混合物を含む。更に、官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシド、シラン及びビニルの各基の内の少なくとも1個を含む。一方、ホスト樹脂ネットワークは、エポキシ、ポリイミドエポキシ、液晶エポキシ、及びシアネート−エステルを含む。
【0089】
更にまた別な実施態様においては、本発明は、多孔質媒体と高熱伝導性材料を充填した樹脂とを含んでなる、高熱伝導性樹脂含浸多孔質媒体を提供する。高熱伝導性材料は、樹脂の5〜60体積%を占め、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛及びダイヤモンドの内の少なくとも1つ並びにデンドリマーであり、全て約1〜1,000nmのサイズと10〜50のアスペクト比とを有している。
【0090】
一つの関連する実施態様においては、高熱伝導性材料は5〜40体積%の樹脂を含んでなる。多孔質マトリックスは、マイカ−ガラス絶縁紙等の紙であっても、回路基板において使用されているようなその他の材料であってもよい。また別な関連する実施態様においては、その多孔質媒体は、マトリックス又は織物の形態にある、天然又は合成の、有機又は無機ポリマー繊維である。マクロスケールでは、その多孔質媒体は、例えば布マット又はフェルトであってもよい。
【0091】
HTC樹枝状構造体は、近接及び隣接しているHTC粒子が本来的に密であるので、良好な熱良導体となる。図4には、多くのHTC粒子42を含んでなる樹枝状構造40の一例を示す。本明細書で使用するとき、デンドリマーは樹枝状構造から明白に区別されていることに注目されたい。樹枝状充填剤は、実質的には、凝集塊というよりは、むしろ、分岐された構造体を形成する粒子の凝集体である。個々には、それらの構造体は、数百、数千の、多くの長鎖又は伸長された分岐鎖を形成する粒子からなり、同一樹脂の内部において他の樹枝状構造体との間で多くの相互接続を有している。
【0092】
樹脂の中で直接樹枝状構造体を形成させることに伴う一つの不利な点は、樹枝状構造のサイズと共にその充填剤入り樹脂の所望の物理的特性が向上するが、それと同時に関連する望ましくない性質、例えば粘度、も向上することである。粘度が上がると、接着性もまた低下する可能性がある。大きな樹枝状構造体を含むホスト樹脂は、含浸させるには非実用的となり、樹枝状構造体それ自体も、含浸される多孔質媒体のボイド又は孔径によっては、樹脂から濾過除去されることさえ起こりうる。本発明を使用することによって、粘度がより低い樹脂を使用することが可能となり、系の中で樹枝状構造体を形成させることも可能である。
【0093】
樹枝状充填剤を形成させるためには、表面官能化されるか又は官能化されていないHTC材料に、それ自体と又は相互間で相互作用を持たせる。表面官能化材料は、HTC−材料の上に少なくとも1個の官能化有機基をグラフト化させることを含む、当技術分野で公知のプロセスによって実施することができる。官能化基は、OH、NH又はその他のカルボキシル基を始めとする種々の反応性基であってよいが、これらに限定される訳ではない。官能化の例としては、シラングラフト化又はフリーラジカルグラフト化が挙げられる。より具体的な実施態様においては、シラングラフト化には、4−トリメトキシシリルテトラヒドロフタル酸無水物(TSPA)及び3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MOTPS)から選択される反応剤が使用される。また別な具体的な実施態様においては、フリーラジカルグラフト化には、反応物として、硝酸セリウムアンモニウムが使用される。
【0094】
樹枝状構造の分岐が多い程、粒子の結合性に依存する充填剤入り樹脂の物理的特性が良好となる。従って、粒子−粒子相互作用及びHTC粒子あたりの官能化基が複数あることによって、より高い熱伝導性を有する充填剤入り樹脂が得られる。粒子−粒子相互作用には、シードの形状が含まれていてよく、それにより、その中に構成ブロックを物理的に閉じ込めることができる。
【0095】
樹枝状構造体は、HTCの構成ブロックを取り込むHTCシードによって樹脂の中に形成される。既に取り込まれた構成ブロックに更にシードが結合して、その結果、樹枝状構造が成長する。HTCシード及び構成ブロックが本明細書に記載されているHTC材料であるが、これらは、物理的に及び表面官能化基によって相互に分離されている。後に説明するように、これら二つを、樹脂の適用に合わせて、種々の方法によって組み合わせることができる。
【0096】
構成成分を分離されたままに維持するためには、付着させる官能基を選択して、シードと構成ブロックとで反応性が異なるようにする。この方法によって、シードを、一方では互いに非反応性とし、他方では構成ブロックとは反応性とするが、その理由は、シードと構成ブロックは、同じサイズであるが官能基が異なっている同一の材料とすることができるからである。
【0097】
HTCシードとHTCの構成ブロックとがそれらの間では最小限の共反応性を有するように、HTC樹枝状充填剤成分を選択する。この最小限の共反応性は、充填剤成分が、成分として所望のサイズ及び/又は形状を獲得するより前に、それら自体で共反応しないということを、必ずしも意味している訳ではない。従って、それらの成分、特に構成ブロックは、いくつかの実施態様においては、個々の粒子の小さなクラスターであってもよい。このことは、それに見合うような小さい数の内部反応性官能化基を有するようにすることにより、制御することができる。例えば、ネックレス構造を有するナノシリカクラスターである。
【0098】
充填剤成分は、各種の方法で組み合わせることができる。シードは、樹脂を使用するより前に、ホスト樹脂と組み合わせる。使用例としては、連続押出し法及び含浸法が挙げられる。連続押出し法では、構成ブロックを使用前の樹脂と組み合わせる。含浸法では、構成ブロックを樹脂に添加し、樹脂を添加するより前に多孔質媒体の中に含ませ、これら二つのものを組み合わせる。構成ブロックを使用前の樹脂に添加する場合には、それらの成分を互いに結合させる反応は、遅い化学反応とするべきであるが、その意味するところは、反応には数分〜数時間かけるべきであるということである。構成ブロックは、溶媒、樹脂等の、キャリヤー液状媒体による樹脂含浸に先立って、真空圧含浸法によるか、押出し法、カプセル化法又は引抜き成形法等の加熱積層法によって、多孔質媒体中に挿入することができる。多孔質媒体の中に構成ブロックを挿入させる他の方法は、当業者には明らかであろう。
【0099】
シード化された樹脂を含浸に使用し、含浸の前に構成ブロックが多孔質媒体に添加される場合には、樹脂の中のシードが構成ブロックを取り込み、それらの成分が混合され、反応する。この方法には、樹脂を使用するまでは成分の反応が開始されず、更には含浸の場合に低粘度が維持されるという二重の利点がある。シードが構成ブロックを集めるにつれて、それが更なるシードを引きつけて、クラスターが形成される。次いで、これらのクラスターが相互に結合して、樹枝状タイプのネットワークを形成することができる。
【0100】
いくつかの実施態様においては、HTCシード粒子を構成ブロック材料よりも小さいものとすることによって、粘度が低いために樹脂の含浸が容易となるであろう。そのような実施態様においては、HTCシード粒子のサイズの範囲は、1〜100nmの範囲とすることができる。含浸の前に構成ブロック材料が樹脂に添加されるような実施態様においては、それらは相応のサイズがよいであろう。しかしながら、含浸の間に構成ブロックが取り込まれるような実施態様においては、それらがシード粒子よりは実質的に大きく、50〜400nmの平均サイズ範囲とすることができる。
【0101】
構成ブロックに対するシードの(全体積による)比率は、所望の結果に合わせて変化させることができる。樹枝状構造の形成を最大にするためには、構成ブロックに対するシードの(体積による)比率を少し高くして、構成ブロックとの反応及び相互の間の反応がより進むようにするべきである。明らかに、シード粒子が構成ブロックよりも小さければ、そのことによって、シード粒子の総数が多くなるが、更に、シード粒子と構成ブロックが同様の密度とすれば、体積としてもシード粒子が多くなるであろう。
【0102】
具体的な実施態様においては、樹枝状構造の生成を最大限とするのが望ましい。それによって、ホスト樹脂マトリックス中での熱伝導性が最大限となる。ナフテン酸亜鉛、クロムアセチルアセトナート、ベンジルジメチルアミン、塩化トリベンジルスズ、酢酸トリベンジルスズ、チタン酸テトラブチル等の促進剤を使用することにより、反応速度を上げ、成分間の反応の数を増やすことができる。
【0103】
一つの実施態様においては、本発明は、ホスト樹脂マトリックスにHTCシードを添加することからなる、ホスト樹脂マトリックスの内部でHTC樹枝状充填剤を形成させる方法を提供する。HTCシードは表面官能化されてはいるが、それらは相互の間では実質的に反応していない。次いでこれらのシードがHTCの構成ブロックを集積する。これらのHTCの構成ブロックも既に表面官能化されているが、相互の間では実質的に反応していない。次いで、それらのHTCシードを有するHTCの構成ブロックを集めることによって、ホスト樹脂マトリックスの内部にHTC樹枝状充填剤が生成される。
【0104】
具体的な実施態様においては、HTC構成ブロックがHTCシードと反応するが、それは、二つの化学種間の表面官能化基が相互に反応するということを意味している。他の実施態様においては、HTC構成ブロックがHTCシードと相互作用するが、それは物理的な粒子−粒子相互作用が存在するということを意味している。
【0105】
他の実施態様においては、添加されたHTCシードを有するホスト樹脂を多孔質媒体の中に含浸させることによって、HTCの構成ブロックが集積されるが、多孔質媒体にはHTCの構成ブロックが含まれている。多孔質媒体は、複合体テープであってもよいし、多孔質媒体が天然の有機若しくは無機ポリマー繊維マトリックス、又は織物であってもよい。
【0106】
更に他の実施態様においては、HTCの構成ブロックをホスト樹脂マトリックスの中に混合することによってHTCの構成ブロックが集積される。関連する実施態様においては、集積の後に、HTCの構成ブロックとHTCシードとの反応が遅い化学反応として進行する。更には、ナフテン酸亜鉛、クロムアセチルアセトナート、塩化トリベンジルスズ、酢酸トリベンジルスズ、及び/又はチタン酸テトラブチル等の促進剤を添加した後に、HTCの構成ブロックのHTCシードとの反応が進行する。
【0107】
更に他の関連する実施態様においては、HTCシードを表面官能化させて、平均して1個を超える表面官能基を持たせる。別な方法として、HTCの構成ブロックを表面官能化させて、平均して1個を超える表面官能基を持たせる。HTCシードは、ケイ素酸化物、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム及び窒化ケイ素からなる群より選択することができ、HTCの構成ブロックは、窒化ホウ素、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素からなる群より選択することができる。
【0108】
その他の関連する実施態様においては、一定割合のHTCシードがホスト樹脂マトリックスにグラフトされるが、HTCシードは、HTCの構成ブロックの集積より前にホスト樹脂マトリックスにグラフトされてもよい。HTC樹枝状充填剤は、ホスト樹脂マトリックスの5〜40体積%であり、HTCシードのHTC樹枝状充填剤を含んでなるHTCの構成ブロックに対する比率は、体積で、約(2:1)から(1:4)までの範囲である。
【0109】
また別な実施態様においては、本発明は、ホスト樹脂を得る工程及びそのホスト樹脂にHTCシードを添加する工程を含んでなる、樹脂含浸された多孔質媒体の内部にHTC樹枝状構造体を形成させるための方法を提供する。HTCシードは、相互には実質的に反応せず、一定割合のHTCシードがホスト樹脂にグラフトされる。この割合は変更可能であるが、少なくとも5%とするべきである。次いで、HTCの構成ブロックを多孔質媒体に挿入するが、HTCの構成ブロックは、相互には実質的に反応しない。この方法は、更に、多孔質媒体の中にホスト樹脂を含浸させて、ホスト樹脂がホスト媒体からHTCの構成ブロックを取り込む工程、及びHTCの構成ブロックをHTCシードと反応及び相互作用させて、ホスト樹脂マトリックスの内部にHTC樹枝状充填剤を得る工程、を含んでなる。次いで、そのホスト樹脂を硬化させる。
【0110】
関連する実施態様においては、実質的に全部のHTCシードをHTCの構成ブロックと反応させる。この方法は、更に、付加的な構成ブロックをホスト樹脂の中に混合する工程を含んでいてもよい。その他の具体的な実施態様においては、実質的に全部のHTCシードがホスト樹脂にグラフトされ、多孔質媒体が複合体テープである。
【0111】
本発明の特定の実施態様について詳細に説明してきたが、本開示の教示全体を考慮すれば、それらの詳細に対して各種の修正又は代替えが開発できるであろうということは、当業者のよく認識するところであろう。従って、開示されている具体的な組合せは、単に説明のためだけのものであって、添付された特許請求項の全体並びにそれらの全ての等価物で与えられる本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】ステーターコイルの周りに重ね合わせられた絶縁テープの使用を示す図である。
【図2】本発明の充填された樹脂の中を移動するフォノンを示す図である。
【図3】ステーターコイルを通過する熱の流れを示す図である。
【図4】樹枝状構造の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0113】
4 トップ充填剤
5 銅ストランド
6 転位ストランド
7 設置壁絶縁材
8 センターセパレーター
11 熱の流れ
13 コイル
14 導体
15 巻線絶縁材
16 複合体テープ
18 裏打シート
20 マイカ
21 外側テープ
30 HTC材料
32 樹脂
34,36 フォノン
40 樹枝状構造
42 HTC粒子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト樹脂マトリックスの内部にHTC樹枝状充填剤を形成させる方法であって:
相互には実質的に反応しないように予め表面官能化されているHTCシードを前記ホスト樹脂マトリックスに添加する工程工程;
相互には実質的に反応しないように予め表面官能化されているHTCの構成ブロックを集積する工程;
HTCシードとHTCの構成ブロックとを組み立てて、前記ホスト樹脂マトリックスの内部にHTC樹枝状充填剤を得る工程、
を含んでなる方法。
【請求項2】
HTCの構成ブロックがHTCシードと反応する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
HTCの構成ブロックがHTCシードと相互作用する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
添加されたHTCシードを含むホスト樹脂を多孔質媒体に染み込ませることによってHTCの構成ブロックが集積され、且つ、多孔質媒体がHTCの構成ブロックを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
多孔質媒体が複合体テープである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
多孔質媒体が、天然の有機及び無機ポリマー繊維マトリックス並びに織物の内の少なくとも一つである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
HTCの構成ブロックをホスト樹脂マトリックスの中に混合させることによって、HTCの構成ブロックが集積される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
HTCの構成ブロックをHTCシードと反応させることが、集積の後に遅い化学反応として進行する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
HTCシードをHTCの構成ブロックと反応させることが促進剤を添加した後に起きる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
HTCシードが、平均して1個を超える表面官能基を有するように、表面官能化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
HTCの構成ブロックが、平均して1個を超える表面官能基を有するように、表面官能化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
HTCシードが、酸化ケイ素、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム及び窒化ケイ素からなる群より、選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
HTCの構成ブロックが、窒化ホウ素、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素からなる群より、選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
一定割合のHTCシードが、ホスト樹脂マトリックスに、グラフトされている、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
HTCの構成ブロックの集積に先立って、HTCシードがホスト樹脂マトリックスにグラフトされる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
HTC樹枝状充填剤がホスト樹脂マトリックスの5〜40体積%である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
HTC樹枝状充填剤を含むHTCの構成ブロックに対するHTCシードの比率が、体積で、約(2:1)から(1:4)までである請求項1に記載の方法。
【請求項18】
樹脂含浸された多孔質媒体の内部でHTC樹枝状構造体を形成させる方法であって:
ホスト樹脂を得る工程;
相互に実質的に反応せず、且つ、一定割合がホスト樹脂にグラフトされているHTCシードをホスト樹脂に添加する工程;
相互には実質的に反応しないHTCの構成ブロックを多孔質媒体に挿入する工程;
ホスト樹脂を多孔質媒体の中に染み込ませる工程であって、ホスト樹脂が、ホスト媒体からHTCの構成ブロックを取り込む工程;
HTCの構成ブロックをHTCシードと反応及び相互作用させて、ホスト樹脂マトリックスの内部にHTC樹枝状充填剤を生成させる工程;及び
ホスト樹脂を硬化させる工程、
を含んでなる方法。
【請求項19】
実質的に全部のHTCシードをHTCの構成ブロックと反応させる請求項18に記載の方法。
【請求項20】
付加的な構成ブロックを、直接、ホスト樹脂の中に混合する工程を更に含んでなる請求項18に記載の方法。
【請求項21】
HTCシードの実質的に全部がホスト樹脂にグラフトされている請求項18に記載の方法。
【請求項22】
多孔質媒体が複合体テープである請求項18に記載の方法。
【請求項23】
多孔質媒体が、天然の有機及び無機ポリマー繊維マトリックス及び織物の内の少なくとも一つである、請求項18に記載の方法。
【請求項1】
ホスト樹脂マトリックスの内部にHTC樹枝状充填剤を形成させる方法であって:
相互には実質的に反応しないように予め表面官能化されているHTCシードを前記ホスト樹脂マトリックスに添加する工程工程;
相互には実質的に反応しないように予め表面官能化されているHTCの構成ブロックを集積する工程;
HTCシードとHTCの構成ブロックとを組み立てて、前記ホスト樹脂マトリックスの内部にHTC樹枝状充填剤を得る工程、
を含んでなる方法。
【請求項2】
HTCの構成ブロックがHTCシードと反応する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
HTCの構成ブロックがHTCシードと相互作用する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
添加されたHTCシードを含むホスト樹脂を多孔質媒体に染み込ませることによってHTCの構成ブロックが集積され、且つ、多孔質媒体がHTCの構成ブロックを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
多孔質媒体が複合体テープである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
多孔質媒体が、天然の有機及び無機ポリマー繊維マトリックス並びに織物の内の少なくとも一つである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
HTCの構成ブロックをホスト樹脂マトリックスの中に混合させることによって、HTCの構成ブロックが集積される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
HTCの構成ブロックをHTCシードと反応させることが、集積の後に遅い化学反応として進行する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
HTCシードをHTCの構成ブロックと反応させることが促進剤を添加した後に起きる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
HTCシードが、平均して1個を超える表面官能基を有するように、表面官能化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
HTCの構成ブロックが、平均して1個を超える表面官能基を有するように、表面官能化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
HTCシードが、酸化ケイ素、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム及び窒化ケイ素からなる群より、選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
HTCの構成ブロックが、窒化ホウ素、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素からなる群より、選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
一定割合のHTCシードが、ホスト樹脂マトリックスに、グラフトされている、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
HTCの構成ブロックの集積に先立って、HTCシードがホスト樹脂マトリックスにグラフトされる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
HTC樹枝状充填剤がホスト樹脂マトリックスの5〜40体積%である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
HTC樹枝状充填剤を含むHTCの構成ブロックに対するHTCシードの比率が、体積で、約(2:1)から(1:4)までである請求項1に記載の方法。
【請求項18】
樹脂含浸された多孔質媒体の内部でHTC樹枝状構造体を形成させる方法であって:
ホスト樹脂を得る工程;
相互に実質的に反応せず、且つ、一定割合がホスト樹脂にグラフトされているHTCシードをホスト樹脂に添加する工程;
相互には実質的に反応しないHTCの構成ブロックを多孔質媒体に挿入する工程;
ホスト樹脂を多孔質媒体の中に染み込ませる工程であって、ホスト樹脂が、ホスト媒体からHTCの構成ブロックを取り込む工程;
HTCの構成ブロックをHTCシードと反応及び相互作用させて、ホスト樹脂マトリックスの内部にHTC樹枝状充填剤を生成させる工程;及び
ホスト樹脂を硬化させる工程、
を含んでなる方法。
【請求項19】
実質的に全部のHTCシードをHTCの構成ブロックと反応させる請求項18に記載の方法。
【請求項20】
付加的な構成ブロックを、直接、ホスト樹脂の中に混合する工程を更に含んでなる請求項18に記載の方法。
【請求項21】
HTCシードの実質的に全部がホスト樹脂にグラフトされている請求項18に記載の方法。
【請求項22】
多孔質媒体が複合体テープである請求項18に記載の方法。
【請求項23】
多孔質媒体が、天然の有機及び無機ポリマー繊維マトリックス及び織物の内の少なくとも一つである、請求項18に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公表番号】特表2009−532558(P2009−532558A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504181(P2009−504181)
【出願日】平成19年1月3日(2007.1.3)
【国際出願番号】PCT/US2007/000087
【国際公開番号】WO2007/114874
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(599078705)シーメンス エナジー インコーポレイテッド (57)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月3日(2007.1.3)
【国際出願番号】PCT/US2007/000087
【国際公開番号】WO2007/114874
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(599078705)シーメンス エナジー インコーポレイテッド (57)
【Fターム(参考)】
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