説明

ICカード

【課題】小型、薄型であり、携帯性に優れ、ICカードの過度な曲げに対しての機械的強度が良好で内蔵されたICチップが破損することがなく、かつ表面の平滑性が良好である。
【解決手段】ICチップ6を少なくとも有するICモジュール9がシート状部材2,3に挾持されたICカード1であり、ICチップ6の面積が8.5mm2以下である。ICモジュール9は、ICチップ6、補強板10、アンテナ7を有し、ICモジュール9の最大厚みが300μm以下である。補強板10は、ICチップ6に接着層11を介して具備されており、補強板10をICチップ6に重ね合わせた状態でICチップ6の外周形状より補強板10の外周形状が大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば偽造、変造防止等の安全性(セキュリティ)が要求される個人情報等を記憶する接触式又は非接触式の電子または磁気等の個人認証を行なうICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のICカードとして、例えばICチップがシート状部材に挾持されたカードがあり、このようなICカードは、小型、薄型で、携帯性に優れているため、銀行カード、クレジットカード、通勤、通学定期カード等、広く利用されている。
【0003】
ところで、ICカードは、携帯性などにおいて利便であるが故に、衣服、特に、ズボン、スカート等のポケットに入れられることがある。このような携帯時に、ICカードが湾曲したり、折り曲げられたり、あるいはコイン等の圧力でICチップが破損するおそれがある。これは、ICカードの主材料が合成樹脂材料であり、可撓性があるのに対して、ICチップはその主材料がシリコンであり、曲げ剛さ(曲げ荷重に対する変形抵抗)が大きいため、ICカードが湾曲してもICチップが湾曲することができず、破損されてしまっていたからである。
【0004】
そのため、ICカードは強い耐久性が要求される。たとえば、半導体チップに対して、金属或いは樹脂からなる補強板を積層することが知られている(特開平9−156265号公報、特開平9−263082号公報等参照)。しかしながら、一定の耐久性の向上は見られるが、さまざまな状況に対して十分な耐久性が得られてなく、例えば急激な応力がかかる衝撃への耐久性、繰返しに応力がかかる繰返し曲げ耐久性、繰返し局所荷重等に対して、ICチップが壊れる問題や、電気動作が不可能になるなどの問題が発生していた。一方、ICカードは、ICチップが搭載された部分とそれが無い部分とで、硬さの違い、熱伝導性の違い、熱プレス後の熱収縮率の違い等により表面に凹凸が発生しやすく、カードに個人情報等を記載する場合には、昇華印画、溶融印字等で濃度変動なくカスレのないようにするような平滑なカード表面性が求められている。例えば特開2003−141490号公報や特開2003−223627号公報では平滑で上記のような耐性に優れるカードが提案されているが未だ十分ではない。
【特許文献1】特開平9−156265号公報(第1頁〜第4頁、図1〜図5)
【特許文献2】特開平9−263082号公報(第1頁〜第7頁、図1〜図12)
【特許文献3】特開2003−141490号公報(第1頁〜第20頁、図1〜図17)
【特許文献4】特開2003−223627号公報(第1頁〜第17頁、図1〜図15)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、小型、薄型であり、携帯性に優れ、ICカードの過度な曲げに対しての機械的強度が良好で内蔵されたICチップが破損することがなく、かつ表面の平滑性が良好なICカードを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成した。
【0007】
請求項1に記載の発明は、ICチップを少なくとも有するICモジュールがシート状部材に挾持されたICカードであり、
前記ICチップの面積が8.5mm2以下であることを特徴とするICカードである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記ICモジュールは、ICチップ、補強板、アンテナを有し、
前記ICモジュールの最大厚みが300μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のICカードである。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記補強板は、前記ICチップに接着層を介して具備されており、かつ前記補強板を前記ICチップに重ね合わせた状態で前記ICチップの外周形状より補強板の外周形状が大きいことを特徴とする請求項2に記載のICカードである。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記接着層が、2%弾性率が0.1以上55kg/mm2以下の接着剤により固定されていることを特徴とする請求項3に記載のICカードである。
【0011】
請求項5に記載の発明は、前記ICチップの厚みが50μm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のICカードである。
【0012】
請求項6に記載の発明は、少なくともシート状部材の外表面には、氏名、顔画像からなる個人識別情報が設けられ、他方は筆記可能な筆記層を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のICカードである。
【発明の効果】
【0013】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、ICチップを少なくとも有するICモジュールがシート状部材に挾持され、ICチップの面積が8.5mm2以下であることで、小型、薄型であり、携帯性に優れ、ICカードの過度な曲げに対しての機械的強度が良好で内蔵されたICチップが破損することがなく、かつ表面の平滑性が良好である。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、ICモジュールの最大厚みが300μm以下であり、さらに薄型であり、携帯性に優れている。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、補強板をICチップに重ね合わせた状態でICチップの外周形状より補強板の外周形状が大きいことで、ICチップが保護されてICカードの過度な曲げに対しての機械的強度が良好で内蔵されたICチップが破損することがなく、かつ表面の平滑性が良好である。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、補強板が、2%弾性率が0.1以上55kg/mm2以下の接着層を介し固定され、規定範囲以下では、ICチップへの応力集中を緩和できず、規定範囲以上では、繰り返し曲げによりアンテナが破断してしまったり、ICチップの耐久性が低下する等の問題があるが、規定範囲ではこのような問題はない。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、ICチップの厚みが50μm以下であり、さらに薄型であり、携帯性に優れている。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、少なくともシート状部材の外表面には、氏名、顔画像からなる個人識別情報が設けられ、他方は筆記可能な筆記層を有し、銀行カード、クレジットカード、通勤、通学定期カード等、広く利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明のICカードの実施の形態について説明するが、この発明は、この実施の形態に限定されない。また、この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。
【0021】
図1はICカード1を示すものである。ICカード1はISO規格で厚さが0.76mmに規定されている。ICカード1は、2枚のシート材である第1及び第2のシート状部材2,3と、これら第1及び第2のシート状部材2,3間に介在される接着層4,5とを有する。
【0022】
これら第1及び第2のシート状部材2,3としてベースフィルムが用いられ、第1及び第2のシート状部材2,3の接着層4,5を有しない側の表面には、受像層、固定情報の印刷層または筆記層を形成してもよい。受像層の一例としては、昇華染料インクがTPH(サーマルヘッド)で加熱されて熱拡散する時に、染料をトラップして定着させる素材で構成されるものが挙げられる。固定情報は、例えば資格証明カードの場合には、資格の種類、「発行日」の文字、「氏名」の文字、「生年月日」の文字、「住所」の文字等の文字情報の他、枠、図形、パターン等である。筆記層は、例えばポリエステル樹脂等にシリカ等の白色顔料を分散させたものを塗工して形成することができる。
【0023】
接着層4,5内にはICチップ6、アンテナ7及びモジュール基材8を有するICモジュール9が封入されている。
【0024】
この発明のモジュール基材8としては、各種カード基材として使用されているポリエステル樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ABS樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニル樹脂等の樹脂シート、熱転写紙、上質紙、アート紙、コート紙等の紙、などを用いることができる。これらの中でも、環境へ与える負荷が比較的少なく、白色度、耐久性の点に優れる白色PETが特に好ましい。
【0025】
この発明では、接着層4,5を形成する接着剤としてホットメルト型接着剤を用いるのが好ましい。このホットメルト型接着剤は、一度シート状に形成した後でも、ある温度まで加熱すれば再度接着剤としての機能を復活する。ホットメルト型接着剤としては、湿気硬化型や、光硬化型の反応型ホットメルト接着剤が挙げられるが、湿気硬化型ホットメルト接着剤がより好ましい。湿気硬化型の反応型ホットメルト接着剤としては、特開2000−036026、特開2000−219855、特開2000−211278、特開2002−175510に開示されている。
【0026】
ここで、ホットメルト接着剤を使用したICカードの作製方法の一例を挙げる。ICカードの作製に当たっては、先ず表裏のシートにアプリケーターでホットメルト接着剤を所定の厚さに塗工する。塗工方法としては、ローラー方式、Tダイ方式、ダイス方式などの通常の方式が使用される。接着剤を塗工した上下のシートの間にICモジュールを装着する。装着する前に塗工した接着剤を予めヒーター等で加熱させておいてもよい。その後上下シート間にICモジュールを装着したものを接着剤の貼り合わせ温度に加熱したプレスで所定時間プレスするか、又はプレスでの圧廷の替わりに所定温度の恒温槽中でシートを搬送しながらロールで圧廷してもよい。また、貼り合わせ時に気泡が入るのを防止するために真空プレスすることが有効である。プレス等で貼り合わせた後は所定形状に打ち抜くなり、カード状に断裁するなどしてカード化する。ここで、プレス等で貼り合わせた後に、枚葉シート状に切断してからカード化するのが好ましい。接着剤に反応型接着剤を用いた場合は所定時間硬化反応させた後にカード状に断裁するが、枚葉シート状に切断してからカード化する場合は、接着剤が硬化する前に枚葉シート状に切断するのが好ましい。ICモジュール9は、少なくともICチップ6とそれに導電性接着剤90を介して接続されたアンテナ7で構成されており、モジュール基材8上に配置されている。
【0027】
図2はICモジュールの断面図である。この発明のICモジュール9のモジュール基材8としては、PETやPET−G、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、ナイロン等の各種材料を使用することができるが、この発明においては、低収縮性PETフィルム、低収縮性PENフィルム等から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。モジュール基材8の厚みD1は5〜300μmが使用できるが、強度、加工作業性、コスト等の点から10〜50μmがより好ましい。また、モジュール基材8は、多孔質樹脂フィルム、網状不織布、網状布等に加工したフィルムや、孔や切り込みを設けたものが好適に使用できる。
【0028】
ICモジュール9のアンテナ7は、コイル状であり、モジュール基材8上に金属箔を回路パターン形状に転写することにより設けることができる。金属箔としては、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、錫箔等から選ばれる少なくとも1種を使用することができる。これらの中でも、経済性、汎用性、信頼性の観点から、アルミニウム箔を用いるのが最も好ましい。ここで、アルミニウム箔とは、純アルミニウム箔に限定されるものではなく、アルミニウム合金箔も含む。また、支持体上に、離型層、アンテナを有する樹脂層、接着層からなる転写箔を基材上に転写することもできる。このような転写箔は、特開2003−157419に詳細が開示されている。
【0029】
この発明のICモジュール9は最大厚みD2が300μm以下であることが、カードの平滑性の観点で好ましい。より好ましくは200μm以下であることが昇華や溶融熱転写記録適性の観点でこの好ましい。
【0030】
ICチップ6の面積は、強度、カードの平滑性、コスト観点から、8.5mm2以下であることが好ましい、更に加工性の観点で2.5mm2〜8.5mm2の範囲がより好ましい。ICチップ6の厚みD3は、強度、汎用性の観点から、50μm以下であることが好ましく、20〜50μmの範囲が強度や加工性、コストの観点でより好ましい。50μmより厚いと強度が劣る。また、ICチップ6の強度を向上させるために、ICチップ6にステンレス鋼等からなる補強板10を設けるのが好ましい。
【0031】
この補強板10は、ICチップに接着層11を介して具備されており、この接着層11の接着剤としては、この発明の趣旨より反しない限り、一般に使用されている樹脂材を使用することができる。エポキシ系、ウレタン系、シリコン系、シアノアクリレート系、ニトリルゴム等の合成ゴム系、UV硬化型、ホットメルト、嫌気性、セルロース系接着剤、酢酸ビニル系接着剤等の接着剤、を用いることができる。これらの接着剤単独、または、複数用いることができる。好ましくは、ウレタン系、エポキシ系接着剤が用いられる。より好ましくは弾性エポキシ接着剤が用いられる。
【0032】
弾性エポキシ樹脂として、例えば、特開昭63−63716に開示されるような、エポキシ樹脂とメルカプタン系硬化剤との組み合わせからなるエポキシ樹脂組成物や、複素環状ジアミン硬化剤や芳香族ポリアミン硬化剤との組み合わせからなるエポキシ樹脂、
特開平10−120764に開示されているような、ビスフェノール型エポキシ樹脂とアミン系硬化剤として(C)ポリアミドアミン、(D)芳香族変性アミン、及び(E)脂肪族変性ポリアミンとの組み合わせによりエポキシ樹脂組成物、
特開2000−229927には、エポキシ樹脂とアミンイミド化合物系硬化剤との組み合わせからなる硬化速度が早いエポキシ樹脂、
特開平6−87190、特開平5−295272には特殊変性シリコーンプレポリマーを硬化剤と用いた記載がされており樹脂の柔軟性を改良した材料が開示されている。
【0033】
この発明で用いることができる弾性エポキシ接着剤とは、例えば、セメダイン株式会社製、セメダインEP−001、株式会社スリーボンド社製、3950シリーズ、3950,3951,3952、コニシ株式会社製ボンドMOSシリーズ、MOS07、MOS10、東邦化成工業株式会社ウルタイト1500シリーズ、ウルタイト1540灯を用いることが作業環境特性、支持体との接着性、繰返し曲げ等の接着安定性、耐薬品性、耐水性の観点で好ましい。
【0034】
また、この発明に使用する接着剤は、硬化後の樹脂物性が2%弾性率(kgf/mm2)が0.1〜55.0(kgf/mm2)であることが、前記同様に支持体との接着性、繰返し曲げ等の接着安定性、耐薬品性、耐水性の観点で好ましく、かつICチップへの応力集中を緩和しIC機能の耐久性的にも優れる。2%弾性率が55.0(kgf/mm2)よりも大きい場合には、繰り返し曲げによりアンテナが破断してしまったり、ICチップの耐久性が低下しまったりして問題となってしまう。接着層11の厚みD4としては、約10μm程度である。
【0035】
図3に示すように、この発明においては、補強板10をICチップ6に重ね合わせた状態でICチップ6の外周形状より補強板10の外周形状が大きいことが好ましい。補強板10の外周形状がICチップ6の外周形状より小さい場合には、ICチップ6の耐久性が低下する。
【0036】
また、このように構成であるICモジュール9の厚み方向において、ICモジュール9の最大厚みが300μm以下であることが平滑性の観点で好ましい。
[実施例]
(実施例1)
厚み38μmの透明PETシートをICモジュール用シート材として使用し、厚み18μmのアルミニウムアンテナパターンを形成した。次いで、ICチップ搭載部上に面積が8.41mm2(縦2.9mm、横2.9mm)、厚さ45μmのICチップを載置、さらに接着層を介してICチップ上に、ICチップの外周形状より大きい縦4mm、横4mm、厚さ175μmの外周形状を有するステンレス鋼からなる補強板を設けることにより最大厚みが285μmのICモジュールを作製した。
【0037】
接着層は湿気硬化型ホットメルト接着剤:積水化学工業(株)製エスダイン2013MK(湿気硬化型ホットメルト接着剤(2%弾性率52.2kgf/mm2)を使用した。
【0038】
「ICカードの作成」
第1のシート状部材は、厚さ188μmの白色PETフィルム支持体の一面側に以下に示す昇華型熱転写用受像層を有する。昇華型熱転写用受像層は、昇華染料インクがサーマルヘッドで加熱されて熱拡散する時に、染料をトラップして定着させる素材で構成され、塩化ビニルの粉末をメチルエチルケトン溶剤に溶かし、グラビアコータで多数回塗布してから、乾燥して溶剤を揮発させて形成した。昇華型熱転写用受像層の厚さは2.5μmである。第2のシート状部材は、第1のシート状部材と同じ厚さ188μmの白色PETフィルム支持体の一面側に筆記層を有する。
【0039】
筆記層は、ポリエステルエマルジョンに炭酸カルシウム及びシリカ微粒子を拡散したものであり、第1のシート状部材の受像層と同様に、溶剤で溶かして、グラビアコータ等で塗布してから、乾燥して溶剤を気化させて形成した。この筆記層の厚さも、受像層とほぼ同じ程度である。第1のシート状部材の受像層を有する面とは反対の面および、第2のシート状部材の、筆記層を有する面とは反対の面それぞれに、Tダイ方式のアプリケーターで湿気硬化型ホットメルト接着剤(積水化学工業(株)製:エスダイン2013MK)を塗工し、前記ICモジュールを第1、第2シート状部材間に挟み、鏡板平面熱プレスを使用し、75℃加熱、5kgf/cm2の条件で熱圧着させ、これをカード状に打抜いてICチップ、及びアンテナを内包した厚さ760μmのICカードを作製した。
【0040】
「個人認証用カードへの個人情報記載方法及び表面保護方法」
ICカードに下記により氏名、顔画像からなる個人識別情報を設けたICカードの作成を行った。
【0041】
「顔画像の形成」
受像層と下記昇華型感熱転写記録用のインクシートのインク側を重ね合わせインクシート側からサーマルヘッドを用いて出力0.23W/ドット、パルス幅0.3〜4.5m秒、ドット密度16ドット/mm2の条件で加熱することにより画像に階調性のある人物画像を受像層側に形成した。この画像においては上記色素と受像層のニッケルが錯体を形成している。
【0042】
「文字情報の形成」
受像層と下記溶融型感熱転写記録用のインクシートのインク側を重ね合わせインクシート側からサーマルヘッドを用いて出力0.5W/ドット、パルス幅1.0m秒、ドット密度16ドット/mm2の条件で加熱することにより文字情報をOPニス上に形成した。
【0043】
「表面保護方法」
さらに画像、文字が記録されたICカード上に下記構成からなる活性光線硬化型転写箔1を用いて表面温度200℃に加熱した、直径5cmゴム硬度85のヒートローラーを用いて圧力150kg/cm2で1.2秒間熱をかけて転写を行ない保護層を設けた。
【0044】
「昇華型感熱転写記録用のインクシートの作成」
裏面に融着防止加工した厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートシートに下記組成のイエローインク層形成用塗工液、マゼンタインク層形成用塗工液、シアンインク層形成用塗工液を各々の厚みが1μmになる様に設け、イエロー、マゼンタ、シアンの3色のインクシートを得た。
〈イエローインク層形成用塗工液〉
イエロー染料(化合物Y−1) 3部
ポリビニルアセタール 5.5部
〔電気化学工業(株)製:デンカブチラールKY−24〕 ポリメチルメタアクリレート変性ポリスチレン 1部
〔東亜合成化学工業(株)製:レデダGP−200〕 ウレタン変性シリコンオイル 0.5部
〔大日精化工業(株)製:ダイアロマーSP−2105〕
メチルエチルケトン 70部
トルエン 20部
〈マゼンタインク層形成用塗工液〉
マゼンタ染料(化合物M−1) 2部
ポリビニルアセタール 5.5部
〔電気化学工業(株)製:デンカブチラールKY−24〕
ポリメチルメタアクリレート変性ポリスチレン 2部
〔東亜合成化学工業(株)製:レデダGP−200〕
ウレタン変性シリコンオイル 0.5部
〔大日精化工業(株)製:ダイアロマーSP−2105〕
メチルエチルケトン 70部
トルエン 20部
〈シアンインク層形成用塗工液〉
シアン染料(化合物C−1) 1.5部
シアン染料(化合物C−2) 1.5部
ポリビニルアセタール 5.6部
〔電気化学工業(株)製:デンカブチラールKY−24〕
ポリメチルメタアクリレート変性ポリスチレン 1部
〔東亜合成化学工業(株)製:レデダGP−200〕
ウレタン変性シリコンオイル 0.5部
〔大日精化工業(株)製:ダイアロマーSP−2105〕
メチルエチルケトン 70部
トルエン 20部
「溶融型感熱転写記録用のインクシートの作成」
裏面に融着防止加工した厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートシートに下記組成のインク層形成用塗工液を厚みが2μmになる様に塗布乾燥してインクシートを得た。
〈インク層形成用塗工液〉
カルナバワックス 1部
エチレン酢酸ビニル共重合体 1部
〔三井デュポンケミカル社製:EV40Y〕
カーボンブラック 3部
フェノール樹脂〔荒川化学工業(株)製:タマノル521〕 5部
メチルエチルケトン 90部
「活性光線硬化型転写箔1の作成」
0.1μmのフッ素樹脂層の離型層を設けた厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムー2の離型層上に下記組成物を積層し活性光線硬化型転写箔1の作成を行った。
(活性光線硬化性化合物)
新中村化学社製 A−9300 35部
新中村化学社製 EA−1020 11.75部
反応開始剤:イルガキュア184日本チバガイギー社製 5部
添加剤不飽和基含有樹脂 48部
その他の添加剤:大日本インキ界面活性剤F−179 0.25部
〈中間層形成塗工液〉:膜厚1.0μm
ポリビニルブチラール樹脂〔積水化学(株)製:エスレックBX−1〕
3.5部
タフテックスM−1913(旭化成) 5部
硬化剤 ポリイソシアネート[コロネートHX 日本ポリウレタン製]5部
メチルエチルケトン 90部
塗布後硬化剤の硬化は、50℃、24時間で行った。
〈接着層形成塗工液〉膜厚0.5μm
ウレタン変性エチレンエチルアクリレート共重合体
〔東邦化学工業(株)製:ハイテックS6254B〕 8部
ポリアクリル酸エステル共重合体
〔日本純薬(株)製:ジュリマーAT510〕 2部
水 45部
エタノール 45部
(実施例2)
以下以外は、実施例1と同様にICカードを作成した。
【0045】
ICチップの面積が0.25mm2(縦0.5mm、横0.5mm)、厚さ30μmのICチップを載置、さらに接着層を介してICチップ上に、ICチップの外周形状より大きい縦1mm、横1mm、厚さ100μmの外周形状を有するステンレス鋼からなる補強板を設けることにより最大厚みが220μmのICモジュールを作製した。接着層は、弾性エポキシ接着剤:東邦化成工業株式会社製ウルタイト1540セット(硬化後、2%弾性率0.4kgf/mm2)を用いた主剤と硬化剤を使用した。
【0046】
(実施例3)
以下以外は、実施例1と同様にICカードを作成した。ICチップの面積が8.41mm2(縦2.9mm、横2.9mm)、厚さ20μmのICチップを載置、さらに接着層を介してICチップ上に、ICチップの外周形状より大きい縦3mm、横3mm、厚さ100μmの外周形状を有するステンレス鋼からなる補強板を設けることにより最大厚みが285μmのICモジュールを作製した。接着層は、弾性エポキシ接着剤:東邦化成工業株式会社製ウルタイト1540セット(硬化後、2%弾性率0.4kgf/mm2)を用いた主剤と硬化剤を使用した。
【0047】
(実施例4)
以下以外は、実施例1と同様にICカードを作成した。ICチップの面積が5.00mm2(縦2.0mm、横2.5mm)、厚さ50μmのICチップを載置、さらに接着層を介してICチップ上に、ICチップの外周形状より大きい縦3mm、横3mm、厚さ100μmの外周形状を有するステンレス鋼からなる補強板を設けることにより最大厚みが240μmのICモジュールを作製した。接着層は、ヘンケルジャパン製Macroplast QR3460(湿気硬化型ホットメルト接着剤(2%弾性率21.0kgf/mm2)を使用した。
【0048】
(実施例5)
以下以外は、実施例1と同様にICカードを作成した。ICチップの面積が4.00mm2(縦2.0mm、横2.0mm)、厚さ45μmのICチップを載置、さらに接着層を介してICチップ上に、ICチップの外周形状より大きい直径3mmの円形で、厚さ100μmの外周形状を有するステンレス鋼からなる補強板を設けることにより最大厚みが198μmのICモジュールを作製した。
【0049】
接着層は、弾性エポキシ接着剤:東邦化成工業株式会社製ウルタイト1540セット(硬化後、2%弾性率0.4kgf/mm2)を用いた主剤と硬化剤を使用した。
【0050】
(比較例1)
以下以外は、実施例1と同様にICカードを作成した。ICチップの面積が9.00mm2(縦3.0mm、横3.0mm)、厚さ120μmのICチップを載置、さらに接着層を介してICチップ上に、ICチップの外周形状より大きい縦4.0mm、横4.0mm、厚さ100μの外周形状を有するステンレス鋼からなる補強板を設けることにより最大厚みが320μmのICモジュールを作製した。接着層は、弾性エポキシ接着剤:東邦化成工業株式会社製ウルタイト1540セット(硬化後、2%弾性率0.4kgf/mm2)を用いた主剤と硬化剤を使用した。
【0051】
(比較例2)
以下以外は、実施例1と同様にICカードを作成した。ICチップの面積が9.00mm2(縦3.0mm、横3.0mm)、厚さ120μmのICチップを載置、さらに接着層を介してICチップ上に、ICチップの外周形状より小さい直径2.0mm、厚さ175μmの外周形状を有するステンレス鋼からなる補強板を設けることにより最大厚みが320μmのICモジュールを作製した。接着層は、アロンアルファGEL−10(2%弾性率60kg/mm2、東亜合成株式会社製)を使用した。
【0052】
(比較例3)
以下以外は、実施例1と同様にICカードを作成した。ICチップの面積が9.00mm2(縦3.0mm、横3.0mm)、厚さ60μmのICチップを載置、さらに接着層を介してICチップ上に、ICチップの外周形状より大きい縦4.0mm、横4.0mm、厚さ175μmの外周形状を有するステンレス鋼からなる補強板を設けることにより最大厚みが300μmのICモジュールを作製した。接着層は、弾性エポキシ接着剤:東邦化成工業株式会社製ウルタイト1540セット(硬化後、2%弾性率0.4kgf/mm2)を用いた主剤と硬化剤を使用した。このようにして得られたICカードについて以下の試験を行なった。結果を表1に示す。
【0053】
<繰り返し曲げ試験>
JIS X6322−1;2001の基準に準じ、JIS X6305−1:2003 5.8.の試験方法に準ずる。カードの長辺での最大たわみをhwA、短辺をhwBとしたとき、カード両端を顎に引掛けf=0.5Hzで稼働させる。たわみ量はhwA=20mm、hwB=10mmとする。試験は長辺を表/裏で各250サイクル、短辺を表/裏で各250サイクルを同一カードで行う。
○・・・ICカード機能/動作に問題なし
△・・・ICカード機能/動作が不安定である
×・・・ICカード機能/動作しない
<点圧強度試験>
先端直径1mmの鋼球で1kg荷重をICチップの回路面、非回路面それぞれ硬度50のゴムシート上で200回かけた。試験後動作および変形、破損を確認した。
○・・・ICカード機能/動作に問題なし
△・・・ICカード機能/動作が不安定である
×・・・ICカード機能/動作しない
<衝撃試験>
JIS K5600‐5−3の落体式衝撃試験機を用い、内径27mmの穴の空いた受け台にICチップが中心にくるようにカードを上下より挟んで強固に固定し、先端直径20mm、重さ100g重の重り(S45C鋼)を10cmの高さより受け台中心のICチップ上に自由落下させた。試験後動作および変形、破損を確認した。
○・・・ICカード機能/動作に問題なし
△・・・ICカード機能/動作が不安定である
×・・・ICカード機能/動作しない
<凹凸性>
作成したカードに昇華画像を印画し、かすれ具合を評価した。
◎・・・問題なく印画できる
○・・・一部濃度が低下する部分があるが判別できるレベルである
△・・・一部濃度が低下し判別できないレベルである
×・・・完全に色抜けする部分がある
表1

【0054】
この発明の実施例1〜5では、繰り返し曲げ試験、点圧強度試験、衝撃試験及び凹凸性共に、好ましい評価を得たが、比較例1では、繰り返し曲げ試験、比較例2では、繰り返し曲げ試験、点圧強度試験、衝撃試験及び凹凸性、比較例3では、繰り返し曲げ試験で、好ましい評価を得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
このICカードは、ICチップを少なくとも有するICモジュールがシート状部材に挾持され、ICチップの面積が8.5mm2以下で、小型、薄型であり、携帯性に優れ、ICカードの過度な曲げに対しての機械的強度が良好で内蔵されたICチップが破損することがなく、かつ表面の平滑性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】ICカードを示す分解斜視図である。
【図2】ICモジュールの断面図である。
【図3】補強板を設けたICチップの平面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 ICカード
2 第1のシート状部材
3 第2のシート状部材
4,5 接着層
6 ICチップ
7 アンテナ
8 モジュール基材
9 ICモジュール
10 補強板
11 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップを少なくとも有するICモジュールがシート状部材に挾持されたICカードであり、
前記ICチップの面積が8.5mm2以下であることを特徴とするICカード。
【請求項2】
前記ICモジュールは、ICチップ、補強板、アンテナを有し、
前記ICモジュールの最大厚みが300μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のICカード。
【請求項3】
前記補強板は、前記ICチップに接着層を介して具備されており、かつ前記補強板を前記ICチップに重ね合わせた状態で前記ICチップの外周形状より補強板の外周形状が大きいことを特徴とする請求項2に記載のICカード。
【請求項4】
前記接着層が、2%弾性率が0.1以上55kg/mm2以下の接着剤により固定されていることを特徴とする請求項3に記載のICカード。
【請求項5】
前記ICチップの厚みが50μm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のICカード。
【請求項6】
少なくともシート状部材の外表面には、氏名、顔画像からなる個人識別情報が設けられ、他方は筆記可能な筆記層を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のICカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−18362(P2006−18362A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−192714(P2004−192714)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(303050159)コニカミノルタフォトイメージング株式会社 (1,066)
【Fターム(参考)】