説明

ICモジュール、ICカード及びICカードの製造方法

【課題】低コストで効率的なICモジュール及びICカードの製造方法を提供し、さらに、ICモジュールとICモジュール用シート材との密着性が向上するICカード及びICカードの製造方法を提供する。
【解決手段】ICチップ6とアンテナ7を有するICモジュール9であり、アンテナ7は、ICモジュール用シート材8の少なくとも片面に接着剤層12を形成し、接着剤層12上に銅箔またはアルミニウム箔層を設けた後、エッチング処理により所定形状のパターンを形成したものであり、接着剤層12に使用される接着剤の硬化後の物性が、2%弾性率が0.1以上55kg/mm2以下である。ICカード1は、第1のシート材2と第2のシート材3との間に、ICモジュール9が硬化剤層4,5を介して設置されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば偽造、変造防止等の安全性(セキュリティ)が要求される個人情報等を記憶する接触式又は非接触式の電子または磁気等の個人認証を行なうICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非接触ICチップを実装した非接触ICカードが知られており、このような非接触ICカードとして、例えば第1のシート部材と第2のシート部材が接着剤を介して貼り合わされ、その接着剤中にICチップ及びアンテナを有するICモジュールを封入するものがある。
【0003】
このような非接触ICカードに利用されているアンテナとしては、例えば特開2002−74298に開示されているように、金属の細い線材を同一面上でリング状に捲回したものが主に使用されている。この場合、アンテナの内周側端部と外周側端部とを引き出し、ICチップ接続用パッドに接続している。
【0004】
しかし、線材から作製されたシート状のアンテナは、特性上又は強度上の観点から、その線径に下限があり、また、巻数が多い場合には巻線組立て後のアンテナのコイルが偏平したりするために、ICカードを十分に薄くすることができないという問題があった。
【0005】
また、ある程度の数の組立て工程数も必要となるので歩留まりを向上させることに限界があり、そのため製造コストを低減化することに制約が生じるという問題もあった。更に、信頼性の点でも問題があった。このため、非接触ICカードの薄層化とその製造コストの低下とを目的として、例えば、特開2001−209774に開示されているように、アンテナを金属線材からではなく、絶縁基板上に積層された銅箔をエッチングすることにより作製することが試みられている。しかしながら、ICモジュールのICモジュール用シート材として用いられる樹脂フィルムと、ICモジュールを封入するシート材との密着が悪く、ICカードという特性上、常に携帯しズボンのポケット等での繰り返し曲げや、耐薬品性、耐水性により、ICモジュールとICモジュール用シート材とが剥離してしまう問題が未だ十分に解決できない。これは、薬品や水が浸透し接着性を低下させると言った問題を引き起こしているものと考えられている。
【特許文献1】特開2002−74298号公報(第1頁〜第9頁、図1〜図12)
【特許文献2】特開2001−209774号公報(第1頁〜第7頁、図1〜図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明はかかる実情に鑑みてなされたもので、低コストで効率的なICモジュール及びICカードの製造方法を提供すること、さらに、ICモジュールとICモジュール用シート材との密着性が向上するICカード及びICカードの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成した。
【0008】
請求項1に記載の発明は、ICチップとアンテナを有するICモジュールであり、
前記アンテナは、ICモジュール用シート材の少なくとも片面に接着剤層を形成し、前記接着剤層上に銅箔またはアルミニウム箔層を設けた後、エッチング処理により所定形状のパターンを形成したものであり、
前記接着剤層に使用される接着剤の硬化後の物性が、2%弾性率が0.1以上55kg/mm2以下であることを特徴とするICモジュールである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記接着剤が、ウレタン系、エポキシ系の接着剤であることを特徴とする請求項1に記載のICモジュールである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記接着剤が、ホットメルト接着剤あるいは、弾性エポキシ接着剤であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のICモジュールである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記ICモジュール用シート材の厚みが、300μm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のICモジュールである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記ICチップの厚みが、50〜200μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のICモジュールである。
【0013】
請求項6に記載の発明は、前記ICチップに補強板が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のICモジュールである。
【0014】
請求項7に記載の発明は、第1のシート材と第2のシート材との間に、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のICモジュールが硬化剤層を介して設置されてなることを特徴とするICカードである。
【0015】
請求項8に記載の発明は、第1のシート材と第2のシート材との間に請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のICモジュールを設置し、
前記ICモジュールと、第1のシート材及び第2のシート材とを硬化樹脂を介して貼り合わせることを特徴とするICカードの製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、アンテナは、ICモジュール用シート材の少なくとも片面の接着剤層上に銅箔またはアルミニウム箔層を設けた後、エッチング処理により所定形状のパターンを形成し、接着剤層に使用される接着剤の硬化後の物性の規定により、繰り返し曲げによりアンテナが破断してしまったり、ICチップの耐久性が低下することがなく、かつICモジュールとICモジュール用シート材との密着性が向上する。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、接着剤が、ウレタン系、エポキシ系の接着剤であり、ICモジュールとICモジュール用シート材との密着性が向上する。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、ホットメルト接着剤あるいは、弾性エポキシ接着剤であり、ICモジュールとICモジュール用シート材との密着性が向上する。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、ICモジュール用シート材の厚みが、300μm以下が使用でき、強度、加工作業性、コスト等の点から10〜50μmがより好ましい。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、ICチップの厚みが、50〜200μmであり、強度、汎用性がある。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、ICチップに補強板が設けられ、ICチップを保護でき、耐久性が向上する。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のICモジュールが硬化剤層を介して設置され、ICモジュールとICモジュール用シート材との密着性が向上する。
【0024】
請求項8に記載の発明によれば、ICモジュールと、第1のシート材及び第2のシート材とを硬化樹脂を介して貼り合わせ、ICモジュールとICモジュール用シート材との密着性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、この発明のICモジュール、ICカード及びICカードの製造方法の実施の形態について説明するが、この発明は、この実施の形態に限定されない。また、この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。
【0026】
図1はICカードの層構成を示す図、図2はICカードの一部を破断して示す平面図である。ICカード1はISO規格で厚さが0.76mmに規定されている。ICカード1は、2枚のシート材である第1及び第2のシート材2,3と、これら第1及び第2のシート材2,3間に介在される硬化剤層4,5とからなる。これら第1及び第2のシート材2,3は、ベースフィルムが用いられ、この第1及び第2のシート材2,3の硬化剤層4,5を介しない側の表面には、受像層、固定情報の印刷層または筆記層を形成してもよい。
【0027】
受像層の一例としては、昇華染料インクがTPH(サーマルヘッド)で加熱されて熱拡散する時に、染料をトラップして定着させる素材で構成されるものが挙げられる。固定情報は、例えば資格証明カードの場合には、資格の種類、「発行日」の文字、「氏名」の文字、「生年月日」の文字、「住所」の文字等の文字情報の他、枠、図形、パターン等である。筆記層は、例えばポリエステル樹脂等にシリカ等の白色顔料を分散させたものを塗工して形成することができる。
【0028】
硬化剤層4,5内にはICチップ6、コイル状のアンテナ7及びICモジュール用シート材8を有するICモジュール9が封入されている。
【0029】
この発明のICカード1の第1及び第2のシート材2,3としては、各種カード基材として使用されているポリエステル樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ABS樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニル樹脂等の樹脂シート、熱転写紙、上質紙、アート紙、コート紙等の紙などを用いることができる。これらの中でも、環境へ与える負荷が比較的少なく、白色度、耐久性の点に優れる白色PETが特に好ましい。
【0030】
この発明では、硬化剤層を形成する硬化剤としてホットメルト型接着剤を用いるのが好ましい。このホットメルト型接着剤は、一度シート状に形成した後でも、ある温度まで加熱すれば再度接着剤としての機能を復活する。ホットメルト型接着剤としては、湿気硬化型や、光硬化型の反応型ホットメルト接着剤が挙げられるが、湿気硬化型ホットメルト接着剤がより好ましい。湿気硬化型の反応型ホットメルト接着剤としては、特開2000−036026、特開2000−219855、特開2000−211278、特開2002−175510に開示されている。
【0031】
ここで、ホットメルト接着剤を使用したICカードの作製方法の一例を挙げる。ICカード1の作製に当たっては、先ず表裏の第1及び第2のシート材2,3にアプリケーターでホットメルト接着剤を所定の厚さに塗工する。塗工方法としてはローラ方式、Tダイ方式、ダイス方式などの通常の方式が使用される。接着剤を塗工した上下の第1及び第2のシート材2,3の間にICモジュール9を装着する。装着する前に塗工した接着剤を予めヒーター等で加熱させておいてもよい。その後上下の第1及び第2のシート材2,3間にICモジュール9を装着したものを接着剤の貼り合わせ温度に加熱したプレスで所定時間プレスするか、又はプレスでの圧廷の替わりに所定温度の恒温槽中でシートを搬送しながらロールで圧廷してもよい。また、貼り合わせ時に気泡が入るのを防止するために真空プレスすることが有効である。プレス等で貼り合わせた後は所定形状に打ち抜くなり、カード状に断裁するなどしてカード化する。ここで、プレス等で貼り合わせた後に、枚葉シート状に切断してからカード化するのが好ましい。硬化剤に反応型接着剤を用いた場合は所定時間硬化反応させた後にカード状に断裁するが、枚葉シート状に切断してからカード化する場合は、接着剤が硬化する前に枚葉シート状に切断するのが好ましい。
【0032】
ICモジュール9は、少なくともICチップ6とそれに接続されたアンテナ7で構成されており、ICモジュール用シート材8上に配置されている。ICチップ上には補強板20が設けられている。この補強板20はICチップ6の外形形状より大きい外形形状を有し、これにより補強板20がICチップ6を保護し、ICチップ6の耐久性が向上する。この補強板としては、高強度の素材が好ましい。例えば金属、セラミック、カーボンファイバー、ガラス繊維、アラミド繊維、高弾性樹脂などが上げられる。これらより選択される。1種または複数からなる複合材料でもよい。特にヤング率100GPa以上の素材が主構造に使用されているのが好ましい。厚みとしては、10〜300μm、好ましくは、20〜200μm、さらに好ましくは、30〜150μmがよい。
【0033】
この発明のICモジュール用シート材8としては、PETやPET−G、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、ナイロン等の各種材料を使用することができるが、この発明においては、低収縮性PETフィルム、低収縮性PENフィルム等から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。ICモジュール用シート材8の厚みは5〜300μmが使用できるが、強度、加工作業性、コスト等の点から10〜50μmがより好ましい。
【0034】
ICモジュール9のアンテナ7は、図3に示すようにして製造される。
【0035】
(接着剤層形成工程)
先ず、ICモジュール用シート材8上に、接着剤層12を塗布する。この接着剤層12の接着剤としては、この発明の趣旨より反しない限り、一般に使用されている樹脂材を制限なく用いることができる。エポキシ系、ウレタン系、シリコン系、シアノアクリレート系、ニトリルゴム等の合成ゴム系、UV硬化型、ホットメルト、嫌気性、セルロース系接着剤、酢酸ビニル系接着剤等の接着剤、を用いることができる。これらの接着剤単独、または、複数用いることができる。好ましくは、ウレタン系、エポキシ系接着剤が用いられる。より好ましくは弾性エポキシ接着剤が用いられる。
【0036】
弾性エポキシ樹脂として、例えば、特開昭63−63716に開示されるような、エポキシ樹脂とメルカプタン系硬化剤との組み合わせからなるエポキシ樹脂組成物や、複素環状ジアミン硬化剤や芳香族ポリアミン硬化剤との組み合わせからなるエポキシ樹脂、特開平10−120764に開示されているような、ビスフェノール型エポキシ樹脂とアミン系硬化剤として(C)ポリアミドアミン、(D)芳香族変性アミン、及び(E)脂肪族変性ポリアミンとの組み合わせによりエポキシ樹脂組成物。特開2000−229927には、エポキシ樹脂とアミンイミド化合物系硬化剤との組み合わせからなる硬化速度が早いエポキシ樹脂、特開平6−87190、特開平5−295272には特殊変性シリコーンプレポリマーを硬化剤と用いた記載がされており樹脂の柔軟性を改良した材料が開示されている。
【0037】
この発明で用いることができる弾性エポキシ接着剤とは、例えば、セメダイン株式会社製、セメダインEP−001、株式会社スリーボンド社製、3950シリーズ、3950,3951,3952、コニシ株式会社製ボンドMOSシリーズ、MOS07、MOS10、東邦化成工業株式会社ウルタイト1500シリーズ、ウルタイト1540灯を用いることが作業環境特性、支持体との接着性、繰り返し曲げ等の接着安定性、耐薬品性、耐水性の観点で好ましい。また、この発明に使用する接着剤500μm硬化後の樹脂物性が2%弾性率(kgf/mm2)が0.1〜55.0(kgf/mm2)であることが、前記同様に支持体との接着性、繰り返し曲げ等の接着安定性、耐薬品性、耐水性の観点で好ましく、かつICチップへの応力集中を緩和しIC機能の耐久性的にも優れる。2%弾性率が55.0(kgf/mm2)よりも大きい場合には、繰り返し曲げによりアンテナが破断してしまったり、ICチップの耐久性が低下しまったりして問題となってしまう。接着剤層12の厚みとしては、約10μm程度である。
【0038】
(金属箔層形成工程)
次に、この接着剤層12上に金属箔層を形成する。金属箔としては、アルミニウム箔、銅箔が好ましい。経済性、汎用性、信頼性の観点から、アルミニウム箔を用いるのが最も好ましい。ここで、アルミニウム箔とは、純アルミニウム箔に限定されるものではなく、アルミニウム合金箔も含む。この金属箔層の厚みとしては、約18μm程度である。
【0039】
(エッチング処理工程)
続いて、エッチング処理により、金属箔層を所定形状のパターンに形成する。すなわち、金属箔層のうち、不要部分を化学反応で溶解除去し、この実施形態の例では、残った金属箔層から、アンテナ部13aを含む電気回路を形成する。さらには、金属箔層により、非接触ICチップ搭載部13cが形成される。ICチップの厚みは、強度、汎用性の観点から、50〜200μmであることが好ましく、より好ましくは55〜100μmである。また、ICチップの強度を向上させるために、前記した補強板を設けることが好ましい。
【0040】
[実施例]
以下、実施例を挙げて、この発明を詳細に説明するが、この発明の態様はこれに限定されない。尚、以下において「部」は「重量部」を示す。
[ICモジュールの作製]
(ICモジュール1)
厚み38μmの透明PETシートをICモジュール用シート材として使用し、このICモジュール用シート材上に接着剤を10μmで塗布し、この接着剤上に厚み18μmのアルミニウム箔層を形成し、エッチング処理によりアンテナパターンを形成した。
【0041】
次いで、ICチップ搭載部上に縦3mm、横3mm、厚さ100μmのICチップを載置、さらにICチップ上に縦4mm、横4mm、厚さ100μmのステンレス鋼からなる補強板を設けることによりICモジュールを作製した。
【0042】
接着剤は、弾性エポキシ接着剤:東邦化成工業株式会社製ウルタイト1540セット(硬化後、2%弾性率0.4kgf/mm2)を用いた主剤と硬化剤を使用した。
(ICモジュール2)
接着剤を以下に変更した以外は、ICモジュール1と同様にICモジュール2を作成した。
【0043】
・2液硬化型弾性エポキシ接着剤:東邦化成工業株式会社製
ウルタイト1540セット 90部
・シリコン樹脂粉末(トスパール150:GE東芝シリコン社製) 10部
上記成分60分間、ホモジナイザーにて攪拌し、作成した。硬化剤は使用する直前に添加した。(2%弾性率1kgf/mm2
(ICモジュール3)
接着剤を以下に変更した以外は、ICモジュール1と同様にICモジュール3を作成した。
【0044】
ウレタン系湿気硬化型ホットメルト接着剤:ヘンケルジャパン製Macroplast QR3460(湿気硬化型ホットメルト接着剤(2%弾性率21.0kgf/mm2))
(ICモジュール4)
接着剤を以下に変更した以外は、ICモジュール1と同様にICモジュール4を作成した。
【0045】
ウレタン系湿気硬化型ホットメルト接着剤:積水化学工業(株)製エスダイン2013MK(湿気硬化型ホットメルト接着剤(2%弾性率52.2kgf/mm2))
(ICモジュール5)
接着剤を以下に変更した以外は、ICモジュール1と同様にICモジュール5を作成した。スリーボンド本剤2002H/硬化剤2105F(硬化後2%弾性率0.05kgf/mm2)を用いた主剤と硬化剤を使用した。
(ICモジュール6)
厚み75μmの透明PETシートをICモジュール用シート材として使用し、このICモジュール用シート材上に接着剤を10μmで塗布し、この接着剤上に厚み18μmの銅箔層を形成し、エッチング処理によりアンテナパターンを形成した。
【0046】
次いで、ICチップ搭載部上に縦3mm、横3mm、厚さ50μmのICチップを載置、さらにICチップ上に縦4mm、横4mm、厚さ100μmのステンレス鋼からなる補強板を設けることによりICモジュール6を作製した。
【0047】
接着剤は、弾性エポキシ接着剤:東邦化成工業株式会社製ウルタイト1540セット(硬化後、2%弾性率0.4%、)を用いた主剤と硬化剤を使用した。
(ICモジュール7)
厚み38μmの透明PETシートをICモジュール用シート材として使用し、このICモジュール用シート材上に接着剤を10μmで塗布し、この接着剤上に厚み18μmの銅箔層を形成し、エッチング処理によりアンテナパターンを形成した。
【0048】
次いで、ICチップ搭載部上に縦3mm、横3mm、厚さ180μmのICチップを載置、さらにICチップ上に縦4mm、横4mm、厚さ100μmのステンレス鋼からなる補強板を設けることによりICモジュール7を作製した。接着剤は、ウレタン系湿気硬化型ホットメルト接着剤:ヘンケルジャパン製Macroplast QR3460(湿気硬化型ホットメルト接着剤(2%弾性率21.0kgf/mm2))
(ICモジュール8)
厚み75μmの透明PETシートをICモジュール用シート材として使用し、このICモジュール用シート材上に接着剤を10μmで塗布し、この接着剤上に厚み18μmの銅箔層を形成し、エッチング処理によりアンテナパターンを形成した。
【0049】
次いで、ICチップ搭載部上に縦3mm、横3mm、厚さ250μmのICチップを載置、さらにICチップ上に縦4mm、横4mm、厚さ100μmのステンレス鋼からなる補強板を設けることによりICモジュール8を作製した。接着剤は、弾性エポキシ接着剤:東邦化成工業株式会社製ウルタイト1540セット(硬化後、2%弾性率0.4%、)を用いた主剤と硬化剤を使用した。
(ICモジュール9)
接着剤を以下に変更した以外は、ICモジュール1と同様にICモジュール9を作成した。アロンアルファGEL−10(2%弾性率60kg/mm2、東亜合成株式会社製)を使用した。
(ICモジュール10)
接着剤を以下に変更した以外は、ICモジュール1と同様にICモジュール10を作成した。セミコート220H(2%弾性率300kg/mm2、信越化学社製)を使用した。
[ICカードの作成]
第1のシート材は、厚さ188μmの白色PETフィルム支持体の一面側に以下に示す昇華型熱転写用受像層を有する。昇華型熱転写用受像層は、昇華染料インクがサーマルヘッドで加熱されて熱拡散する時に、染料をトラップして定着させる素材で構成され、塩化ビニルの粉末をメチルエチルケトン溶剤に溶かし、グラビアコータで多数回塗布してから、乾燥して溶剤を揮発させて形成した。昇華型熱転写用受像層の厚さは2.5μmである。
【0050】
第2のシート材は、第1のシート材と同じ厚さ188μmの白色PETフィルム支持体の一面側に筆記層を有する。筆記層は、ポリエステルエマルジョンに炭酸カルシウム及びシリカ微粒子を拡散したものであり、第1のシート材の受像層と同様に、溶剤で溶かして、グラビアコータ等で塗布してから、乾燥して溶剤を気化させて形成した。この筆記層の厚さも、受像層とほぼ同じ程度である。
【0051】
第1のシート材の受像層を有する面とは反対の面及び、第2のシート材の、筆記層を有する面とは反対の面それぞれに、Tダイ方式のアプリケーターで湿気硬化型ホットメルト接着剤(積水化学工業株式会社製:エスダイン2013MK)を塗工し、前記ICモジュール1〜7を第1、第2のシート材間に挟み、鏡板平面熱プレスを使用し、75℃加熱、5kgf/cm2の条件で熱圧着させ、これをカード状に打抜いてICチップ、及びアンテナコイルを内包した厚さ760μmのICカードを作製した。
【0052】
[個人認証用カードへの個人情報記載方法及び表面保護方法]
前記ICカードに下記により顔画像と属性情報とフォーマット印刷を設けた個人認証カードの作成を行った。
(昇華型感熱転写記録用のインクシートの作成)
裏面に融着防止加工した厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートシートに下記組成のイエローインク層形成用塗工液、マゼンタインク層形成用塗工液、シアンインク層形成用塗工液を各々の厚みが1μmになる様に設け、イエロー、マゼンタ、シアンの3色のインクシートを得た。
〈イエローインク層形成用塗工液〉
イエロー染料(化合物Y−1) 3部
ポリビニルアセタール 5.5部
〔電気化学工業(株)製:デンカブチラールKY−24〕
ポリメチルメタアクリレート変性ポリスチレン 1部
〔東亜合成化学工業(株)製:レデダGP−200〕
ウレタン変性シリコンオイル 0.5部
〔大日精化工業(株)製:ダイアロマーSP−2105〕
メチルエチルケトン 70部
トルエン 20部
〈マゼンタインク層形成用塗工液〉
マゼンタ染料(化合物M−1) 2部
ポリビニルアセタール 5.5部
〔電気化学工業(株)製:デンカブチラールKY−24〕
ポリメチルメタアクリレート変性ポリスチレン 2部
〔東亜合成化学工業(株)製:レデダGP−200〕
ウレタン変性シリコンオイル 0.5部
〔大日精化工業(株)製:ダイアロマーSP−2105〕
メチルエチルケトン 70部
トルエン 20部
〈シアンインク層形成用塗工液〉
シアン染料(化合物C−1) 1.5部
シアン染料(化合物C−2) 1.5部
ポリビニルアセタール 5.6部
〔電気化学工業(株)製:デンカブチラールKY−24〕
ポリメチルメタアクリレート変性ポリスチレン 1部
〔東亜合成化学工業(株)製:レデダGP−200〕
ウレタン変性シリコンオイル 0.5部
〔大日精化工業(株)製:ダイアロマーSP−2105〕
メチルエチルケトン 70部
トルエン 20部
(溶融型感熱転写記録用のインクシートの作成)
裏面に融着防止加工した厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートシートに下記組成のインク層形成用塗工液を厚みが2μmになる様に塗布乾燥してインクシートを得た。
〈インク層形成用塗工液〉
カルナバワックス 1部
エチレン酢酸ビニル共重合体 1部
〔三井デュポンケミカル社製:EV40Y〕
カーボンブラック 3部
フェノール樹脂〔荒川化学工業(株)製:タマノル521〕 5部
メチルエチルケトン 90部
(顔画像の形成)
受像層と昇華型感熱転写記録用のインクシートのインク側を重ね合わせインクシート側からサーマルヘッドを用いて出力0.23W/ドット、パルス幅0.3〜4.5m秒、ドット密度16ドット/mm2の条件で加熱することにより画像に階調性のある人物画像を受像層に形成した。この画像においては上記色素と受像層のニッケルが錯体を形成している。
(文字情報の形成)
OPニス部と溶融型感熱転写記録用のインクシートのインク側を重ね合わせインクシート側からサーマルヘッドを用いて出力0.5W/ドット、パルス幅1.0m秒、ドット密度16ドット/mm2の条件で加熱することにより文字情報をOPニス上に形成した。
[表面保護方法]
[表面保護層形成方法]
[活性光線硬化型転写箔1の作成]
0.1μmのフッ素樹脂層の離型層を設けた厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムー2の離型層上に下記組成物を積層し活性光線硬化型転写箔1の作成を行った。
(活性光線硬化性化合物)
新中村化学社製 A−9300 35部
新中村化学社製 EA−1020 11.75部
反応開始剤:イルガキュア184日本チバガイギー社製 5部
添加剤不飽和基含有樹脂 48部
その他の添加剤:大日本インキ界面活性剤F−179 0.25部
〈中間層形成塗工液〉:膜厚1.0μm
ポリビニルブチラール樹脂〔積水化学(株)製:エスレックBX−1〕
3.5部
タフテックスM−1913(旭化成) 5部
硬化剤 ポリイソシアネート[コロネートHX 日本ポリウレタン製]5部
メチルエチルケトン 90部
塗布後硬化剤の硬化は、50℃、24時間で行った。
〈接着層形成塗工液〉 膜厚0.5μm
ウレタン変性エチレンエチルアクリレート共重合体
〔東邦化学工業(株)製:ハイテックS6254B〕 8部
ポリアクリル酸エステル共重合体
〔日本純薬(株)製:ジュリマーAT510〕 2部
水 45部
エタノール 45部
さらに画像、文字が記録された前記受像体上に前記構成からなる活性光線硬化型転写箔1を用いて表面温度200℃に加熱した、直径5cmゴム硬度85のヒートローラーを用いて圧力150kg/cm2で1.2秒間熱をかけて転写を行なった。
【0053】
[評価]
実施例及び比較例について、以下の繰り返し曲げ試験及び耐薬品性試験を行なった。その結果を表1に示す。
【0054】
<繰り返し曲げ試験>
JIS X6322−1;2001の基準に準じ、JIS X6305−1:2003 5.8.の試験方法に準ずる。
【0055】
カードの長辺での最大たわみをhwA、短辺をhwBとしたとき、カード両端を顎に引掛けf=0.5Hzで稼働させる。たわみ量はhwA=20mm、hwB=10mmとする。試験は長辺を表/裏で各250サイクル、短辺を表/裏で各250サイクルを同一カードで行う。
◎・・・変形・剥離なく変化なし
○・・・変形・剥離なく問題ないが痕跡が残っている
△・・・剥離破損はないが変形している
×・・・変形・剥離破損あり
<耐薬品性試験>
以下の試験用溶液にカードを24時間浸漬し、前記繰り返し曲げ試験を実施し評価する。
【0056】
a) 5%食塩水
b) 5%酢酸水
c) 5%炭酸ナトリウム水溶液
d) 60%エチルアルコール水溶液
e) 10%砂糖水
f) 50%エチレングリコール
表1

【0057】
ICモジュール1〜8の実施例については、繰り返し曲げ試験、耐薬品性試験ともに良好な結果が得られたが、ICモジュール9の比較例については、耐薬品性試験の結果で変形・剥離破損があり、ICモジュール10の比較例については、繰り返し曲げ試験及び耐薬品性試験の結果で変形・剥離破損があった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
このICモジュールは、ICチップとアンテナを有し、アンテナは、ICモジュール用シート材の少なくとも片面に接着剤層を形成し、接着剤層上に銅箔またはアルミニウム箔層を設けた後、エッチング処理により所定形状のパターンを形成したものである。接着剤層に使用される接着剤の硬化後の物性は、2%弾性率が0.1以上55kg/mm2以下であり、繰り返し曲げによりアンテナが破断してしまったり、ICチップの耐久性が低下することがなく、かつICモジュールとICモジュール用シート材との密着性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】ICカードの層構成を示す図である。
【図2】ICカードの一部を破断して示す平面図である。
【図3】ICモジュールの平面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 ICカード
2 第1のシート材
3 第2のシート材
4,5 硬化剤層
6 ICチップ
7 アンテナ
8 ICモジュール用シート材
9 ICモジュール
12 接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップとアンテナを有するICモジュールであり、
前記アンテナは、ICモジュール用シート材の少なくとも片面に接着剤層を形成し、前記接着剤層上に銅箔またはアルミニウム箔層を設けた後、エッチング処理により所定形状のパターンを形成したものであり、
前記接着剤層に使用される接着剤の硬化後の物性が、2%弾性率が0.1以上55kg/mm2以下であることを特徴とするICモジュール。
【請求項2】
前記接着剤が、ウレタン系、エポキシ系の接着剤であることを特徴とする請求項1に記載のICモジュール。
【請求項3】
前記接着剤が、ホットメルト接着剤あるいは、弾性エポキシ接着剤であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のICモジュール。
【請求項4】
前記ICモジュール用シート材の厚みが、300μm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のICモジュール。
【請求項5】
前記ICチップの厚みが、50〜200μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のICモジュール。
【請求項6】
前記ICチップに補強板が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のICモジュール。
【請求項7】
第1のシート材と第2のシート材との間に、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のICモジュールが硬化剤層を介して設置されてなることを特徴とするICカード。
【請求項8】
第1のシート材と第2のシート材との間に請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のICモジュールを設置し、
前記ICモジュールと、第1のシート材及び第2のシート材とを硬化樹脂を介して貼り合わせることを特徴とするICカードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−18364(P2006−18364A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−192717(P2004−192717)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(303050159)コニカミノルタフォトイメージング株式会社 (1,066)
【Fターム(参考)】