説明

JNKのピリミジニルピリドン阻害剤

本出願は、JNKを阻害する、式IおよびII(式中、RおよびRは、明細書に記載したと同義である)の新規なピリミジニルピリドン誘導体を開示している。本明細書に開示されている化合物は、JNKの活性を調節し、過剰なJNK活性に関連する疾患を処置するのに有用である。化合物は、自己免疫疾患、炎症性疾患、代謝障害、神経疾患、および癌の処置に有用である。式Iの化合物を含む組成物および治療有効量の式Iの化合物をそれを必要とする対象に投与することを含む処置方法をも開示している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、医薬品化学及び炎症性障害の処置の分野に関する。より詳細には、本発明は、JNKのピリミジニルピリドン阻害剤、JNKを阻害し、JNK介在性障害を処置する方法及び処方などに関する。
【0002】
c−Jun N−末端キナーゼ(JNK)は、p38と共に、分裂促進因子−活性化プロテインキナーゼファミリーの構成員であり、細胞外のシグナル制御キナーゼ(ERK)である。10個のスプライス変異体をコードする3個の異なる遺伝子(jnk1、jnk2およびjnk3)が同定されている。JNK1およびJNK2は、広汎な組織で発現され、一方、JNK3は主としてニューロンで、そしてさらに少ない程度で、心臓および精巣で発現される。JNKファミリーの構成員は、炎症性サイトカイン、例えば腫瘍壊死因子α(TNF−α)およびインターロイキン−1β(IL−1β)、ならびに環境ストレスにより活性化される。JNKの活性化には、Thr−183およびTyr−185の二重リン酸化を経由して、その上流のキナーゼ、MKK4およびMKK7が介在する。MKK4およびMKK7は、外部刺激および細胞状況に依存して、MEKK1およびMEKK4を含む様々な上流キナーゼで活性化することができることが示されている。JNKシグナリングの特異性は、JNK相互作用タンパク質と呼ばれている足場タンパク質を用いる多成分のキナーゼカスケードを含有するJNK特異的シグナリング複合体を形成することにより達成される。JNKは、転写因子、例えばc−Jun、活性化タンパク質−1(AP−1)ファミリーの成分、およびATF2、ならびに非転写因子、例えばIRS−1およびBcl−2を含む、特異的な基質をリン酸化することにより、炎症、T細胞機能、アポトーシスおよび細胞生存において重要な役割を果たすことが示されている。JNKの過活性化は、自己免疫疾患、炎症性疾患、代謝障害、神経疾患および癌における重要なメカニズムであると考えられている。
【0003】
関節リウマチ(RA)は、関節の慢性的な炎症を特徴とする全身性の自己免疫疾患である。炎症プロセスにより引き起こされる関節の腫脹および痛みに加えて、大部分のRA患者は、最終的には、衰弱性関節損傷および変形を発症する。細胞及び動物モデルにおける数系統の説得力ある薬理学的および遺伝学的証拠は、RAの発症における活性化JNKの関連性および重要性を強く示唆している。第一に、JNKの異常な活性化は、RA患者からのヒト関節炎の関節および関節炎の動物モデルからの齧歯類関節炎の関節の両方で検出された。加えて、選択的JNK阻害剤によるJNK活性化の阻害は、ヒト滑膜細胞、マクロファージおよびリンパ細胞での炎症性サイトカインおよびNMP産生をブロックした。重要なことには、アジュバント関節炎のラットまたはコラーゲン誘導関節炎のマウスでの選択的JNK阻害剤の投与は、サイトカインおよびコラゲナーゼの発現を阻害することにより、関節を破壊から効果的に守り、足の腫脹を有意に減少させた。
【0004】
喘息は、細胞の炎症過程の存在および気道の構造的変化を伴う気管支の反応亢進を特徴とする気道の慢性炎症性疾患である。この障害は、Tリンパ細胞、好酸球、肥満細胞、好中球および上皮細胞を含む、気道における多くの細胞型により促進されることが示されている。最近の概念実証研究に基づいて、JNKは、喘息についての有望な治療標的として現れる:JNK阻害剤は、活性化されたヒト気道平滑筋細胞におけるRANTES産生を有意にブロックすることが示された。より重要なことには、JNK阻害剤は、慢性ラットおよびマウスモデルにおいて、細胞浸潤、炎症、反応亢進、平滑筋増殖およびIgE産生を減少させるそれらの能力に対して良好な効能を示した。これらの所見は、アレルギー性炎症、反応亢進を伴う気道リモデリング過程におけるJNKの重要な役割を示唆している。したがって、JNK活性をブロックすることは、喘息の処置に有益であると期待される。
【0005】
2型糖尿病は、慢性的な低レベルの炎症および酸化性ストレスに関連する脂質代謝異常の結果としての、インスリン抵抗性およびインスリン分泌機能障害を特徴とする、最も深刻で、蔓延している代謝疾患である。JNK活性は、肥満および糖尿病状態下の種々の糖尿病の標的組織において異常に上昇することが報告されている。炎症性サイトカインおよび酸化性ストレスによるJNK経路の活性化は、Ser307でのインスリン受容体基質−1(IRS−1)のリン酸化を経てインスリンシグナル伝達をマイナスに制御し、そのため、インスリン抵抗性と耐糖能をもたらす。説得力のある遺伝的証拠は、遺伝的(ob/ob)肥満マウスまたは食餌性肥満マウスのいずれかと交配させたjnk−/−マウスを用いた的確な動物モデル研究によって得られた。JNK1(JNK1−/−)をなくし、JNK2機能(jnk2−/−)はなくしていないと、肥満マウスを体重増加から保護し、血糖の定常状態レベルを増大させ、そして血漿インスリンレベルを減少させた。これらの研究は、肥満/2型糖尿病の処置におけるJNK阻害剤の潜在的な有用性を実証した。
【0006】
神経変性性疾患、例えばアルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)および脳卒中は、シナプス損失、ニューロンの萎縮および死を特徴とするCNS疾患である。c−Jun活性化に至るJNK経路は、種々の刺激の誘導によって、初期胚ニューロンおよび多数の神経細胞系のアポトーシスに因果的役割を果たすことが示されている。JNKの過剰活性化が、AD患者からのヒト脳または神経変性性疾患の動物モデル由来の齧歯類脳切片において観察された。例えば、ホスホ−JNKの増加が、AD患者からの死後脳において検出された。β−アミロイドペプチド投与で誘導されるADの齧歯類モデルにおけるJNK阻害性ペプチド(JIP−1ペプチド)の投与は、シナプス可塑性機能障害を防いだ。PDの動物モデル(MPTPモデル)において、ホスホ−MKK4およびホスホ−JNKの上昇が、神経細胞死に付随して認められた。マウスの線条体中へのJNK阻害ペプチド(JIP−1ペプチド)のアデノウイルス遺伝子導入は、MPTP−介在JNK、c−Junおよびカスパーゼ活性化を阻害することにより行動障害を軽減し、このため、黒質におけるニューロン細胞死を妨げた。加えて、グルタミン酸興奮毒性で誘導される虚血性脳卒中の動物モデルにおいて、JNK3が欠乏し、JNK1またはJNK2が欠乏していないマウスは、カイニン酸(グルタミン酸受容体アゴニスト)介在性発作またはニューロン死に抵抗性であった。これらのデータは、JNK3が、虚血状態の重要な構成要素であるグルタミン酸興奮毒性の主要な原因であったことを示唆している。総合すれば、JNKが、神経細胞死に関連する多数のCNS疾患についての興味深い標的であることを示唆するデータが現れている。
【0007】
制御されない細胞成長、増殖及び移動は、無秩序な血管形成と共に、悪性腫瘍の形成に至る。JNKシグナル伝達経路はアポトーシスにおいて排他的に作用するのではなく、AP1の活性化に至る持続性のJNK活性化が、神経膠腫およびBCL−ABL形質転換Bリンパ芽球などの特定の癌型の細胞生存の一因となることが最近示唆されている。神経腫瘍の場合、JNK/AP1活性の向上が、原発性脳腫瘍サンプルの大部分に見られる。形質転換Bリンパ芽球については、BCL−ABLは、次に抗アポトーシスbcl−2遺伝子の発現を上方制御するJNK経路を活性化することが示された。興味深いことに、治療抵抗性のAML(急性骨髄性白血病)患者に見られる多剤耐性及び過剰増殖が、これらのAMLサンプルに存在する持続性のJNK活性と因果的に関連している。白血病細胞におけるJNKの活性化は、多剤耐性の原因であるmdr1及びMRP1などの流出ポンプの発現を誘導する結果となった。また、グルタチオン−S−トランスフェラーゼπ及びγ−グルタミルシステインシンターゼを含む、酸化性ストレスに対応する生存利益を有する遺伝子もまた、活性化されたJNK経路により上方制御された。
したがって、JNK調節薬は、種々の疾患および/または症状の処置に有用である。
【0008】
細胞増殖の制御におけるサイクリン依存性キナーゼ(”cdk”)の役割は、十分に確立されている。抗増殖性治療剤としての、Cdk4、Cdk2およびCdk1における標的を阻害する化合物の使用を有効なものとする多くの文献が存在する。例えば、J. Lukas ら、 Nature (1995) 79:573-82; J.R. Nevins, Science (1992) 258:424-29; I.K. Limら、 Mol Carcinogen (1998) 23:25-35; S.W. Tamら、Oncogene (1994) 9:2663-74; B. Driscoll ら、Am. J. Physiol. (1997) 273 (Lung Cell. Mol. Physiol.) L941-L949; およびJ. Sangら、Chin. Sci. Bull. (1999) 44:541-44を参照されたい。細胞増殖の阻害剤は、異常な細胞成長を特徴とする疾患過程、例えば癌および、例えば炎症(例えば、良性前立腺肥大、家族性腺腫、ポリポーシス、神経線維腫症、アテローム性動脈硬化症、肺線維症、関節炎、乾癬、炎症性腸疾患、移植拒絶感染症)、ウイルス感染症(ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、エプスタイン−バーウイルスを含み、これらに限定されない)、自己免疫疾患(例えば、狼瘡、関節リウマチ、乾癬、炎症性腸疾患)、神経変性性障害(アルツハイマー病を含み、これに限定されない)、および神経変性性疾患(例えば、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、網膜色素変性症、脊髄性筋萎縮症、および大脳変性)を含む他の細胞増殖性障害の処置に有用である可逆性細胞増殖抑制剤として作用する。
【0009】
本出願は、式I:
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、
は、−Y−Rであり;
Yは、低級アルキレニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、またはフェニルであり;
1’は、H、ヒドロキシ、OC(=O)R1”、NHC(=O)R1”、C(=O)OR1”、NHSO1”、またはN(R1’”であり、
1”は、H、低級アルキル、アミノ、または低級ハロアルキルであり;
各々のR1’”は、独立して、Hまたは低級アルキルであり;
は、HまたはR2’であり;
2’は、ヒドロキシ、N(R2”、NHSO2”、またはアミドであり;そして、
各々のR2”は、独立して、Hまたは低級アルキルであり;
ただし、Yがエチルまたはシクロヘキシルであり、そしてRがHであるとき、R1’は、Hではない)
の化合物を提供する。
【0012】
他の態様において、本出願は、式I:
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、
は、−Y−R1’であり;
Yは、低級アルキレニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、またはフェニルであり;
1’は、H、ヒドロキシ、OC(=O)R1”、NHC(=O)R1”、C(=O)OR1”、NHSO1”、またはN(R1’”であり、
1”は、H、低級アルキル、アミノ、または低級ハロアルキルであり;
各々のR1’”は、独立して、Hまたは低級アルキルであり;
は、HまたはR2’であり;
2’は、ヒドロキシ、N(R2”、またはアミドであり;そして、
各々のR2”は、独立して、Hまたは低級アルキルであり;
ただし、Yがエチルまたはシクロヘキシルであり、そしてRがHであるとき、R1’は、Hではない)
の化合物を提供する。
【0015】
式Iの特定の態様において、Yは低級アルキレニルである。
【0016】
式Iの特定の態様において、RはHである。
【0017】
式Iの特定の態様において、Rはヒドロキシである。
【0018】
式Iの特定の態様において、R1’はヒドロキシである。
【0019】
式Iの特定の態様において、Yはシクロアルキルであり、そしてR1’はHである。
【0020】
式Iの特定の態様において、Yはヘテロシクロアルキルであり、そしてR1’はHまたはメチルである。
【0021】
式Iの特定の態様において、Yはヘテロシクロアルキルであり、そしてR1’はHである。
【0022】
本出願は、
【0023】
【化3】

【0024】
からなる群から選択される、式Iの化合物を提供する。
【0025】
本出願は、式II:
【0026】
【化4】

【0027】
(式中、
は、−Y−R1’であり;
Yは、低級アルキレニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、またはフェニルであり;
1’は、H、ヒドロキシ、アミノ、NHSO1”、OC(=O)R1”、NHC(=O)R1”、またはC(=O)OR1”であり;
1”は、H、低級アルキル、アミノ、または低級ハロアルキルであり;
は、HまたはR2’であり;
2’は、ヒドロキシまたはアミノであり;そして、
ただし、RがHであり、そしてR1’がヘテロシクロアルキルであるとき、R1”は、Hではない)
の化合物を提供する。
【0028】
式IIの特定の態様において、Yは低級アルキレニルである。
【0029】
式IIの特定の態様において、Rはヒドロキシである。
【0030】
式IIの特定の態様において、R1’はヒドロキシである。
【0031】
本出願は、
【0032】
【化5】

【0033】
からなる群から選択される、式IIの化合物を提供する。
【0034】
一つの側面において、本出願は、JNK介在性障害を有する対象におけるJNK介在性障害の処置方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の上記の化合物のいずれかを投与することを含む方法を提供する。
【0035】
JNK介在性障害の処置方法の特定の態様において、JNK介在性障害は、細胞増殖を特徴とする。
【0036】
JNK介在性障害の処置方法の特定の態様において、JNK介在性障害は、関節炎である。
【0037】
JNK介在性障害の処置方法の特定の態様において、関節炎は、関節リウマチである。
【0038】
JNK介在性障害の処置方法の特定の態様において、JNK介在性障害は、喘息である。
【0039】
JNK介在性障害の処置方法の特定の態様において、JNK介在性障害は、糖尿病である。
【0040】
JNK介在性障害の処置方法の特定の態様において、JNK介在性障害は、アルツハイマー病である。
【0041】
JNK介在性障害の処置方法の特定の態様において、JNK介在性障害は、パーキンソン病である。
【0042】
JNK介在性障害の処置方法の特定の態様において、JNK介在性障害は、虚血性脳卒中である。
【0043】
JNK介在性障害の処置方法の特定の態様において、JNK介在性障害は、癌である。
【0044】
JNK介在性障害の処置方法の特定の態様において、JNK介在性障害は、癌であり、その癌は、脳腫瘍である。
【0045】
JNK介在性障害の処置方法の特定の態様において、JNK介在性障害は、癌であり、その癌は、白血病である。
【0046】
一つの側面において、本出願は、細胞増殖、関節炎、喘息、糖尿病、アルツハイマー病、パーキンソン病、虚血性脳卒中または癌などのJNK介在性障害を有する対象におけるJNK介在性障害の処置方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の上記の化合物のいずれかを投与することを含む方法を提供する。
【0047】
この開示で引用される全ての刊行物は、それらの全体が、参照により本明細書に組み入れられる。
【0048】
定義
特に断りのない限り、明細書および特許請求の範囲を含む本出願で使用した以下の用語は、以下に示した定義を有する。明細書および添付の特許請求の範囲で使用した単数形「a」、「an」、および「the」は、内容から明らかに違うものとして示されない限り、複数の意味をも含むことに注意されたい。そこで、本明細書中で使用される語句「a」または「an」の実体は、1種またはそれ以上の実体を指し;例えば、「a化合物」は、1種以上の化合物、または、少なくとも1種の化合物を指す。同様に、用語「a」(または「an」)、「1種以上」、および「少なくとも1種」は、本明細書において交換可能に使用することができる。
【0049】
本明細書中で使用される移行句または特許請求の範囲本体のいずれにおいても、用語「を含む(comprise(s))」および「を含む(comprising)」は、非限定的な意味を有するものとして解釈されるものである。すなわち、この用語は、語句「少なくとも有する」または「少なくとも包含する」と同義的に解釈されるものである。方法の文脈で使用される場合、用語「を含む(comprising)」は、その方法が、少なくとも記載の工程を包含するが、追加の工程を包含しうることを意味する。化合物または組成物の文脈で使用される場合、「を含む(comprising)」は、その化合物または組成物が、少なくとも記載の特徴または組成を包含するが、追加の特徴または組成をも包含しうることを意味する。
【0050】
具体的に他に示されない限り、本明細書中で使用される、語「または」は、「および/または」の「包含的な」意味で使用され、「いずれか/または」の「排他的な」意味で使用されない。
【0051】
用語「独立して」は、同一の化合物内で同じもしくは異なる定義を有する変数の存在または不存在に関わりなく、変数が任意の一つの例で適用されることを示すものとして本明細書中で使用される。したがって、R”が2回出現し、「独立して炭素または窒素」として定義される化合物において、両方のR”は炭素であるか、両方のR”は窒素であるか、または一方が炭素であり、他方が窒素であることができる。
【0052】
任意の変数(例えば、R、R)が本発明中で使用されまたはクレームされている化合物を表し、そして記載している任意の部分または式中に1回より多く出現する場合、出現ごとのその定義は、すべての他の出現でのその定義とは独立している。また、置換基および/または変数の組み合わせは、そのような化合物が安定な化合物をもたらす場合にのみ、許される。
【0053】
(明確な頂点での結合とは相反して)環系内に引かれる結合は、その結合が適切な環原子のいずれかに結合していることを示す。
【0054】
本明細書中で使用される、用語「場合による」または「場合により」は、その後に記載されている事象または状況が起こってもよいが起こる必要はなく、またこの記載には、その事象または状況が起こる場合と起こらない場合とが含むことを意味する。例えば、「場合により置換されてもよい」は、場合により置換されてもよい部分が、水素またはある置換基を組み込んでいることを意味する。
【0055】
用語「約」は、およそ、ほぼ、大体、または〜くらいを意味する。用語「約」が数値範囲と共に用いられる場合、それは、記載の数値の上下に境界を広げることによりその範囲を変更する。一般に、用語「約」は、本明細書中で、ある数値を、言及された数値の上下20%の変動で変更するために使用される。
【0056】
本発明の特定の化合物は、互変異性を示す。互変異性化合物は、2種以上の互いに変換しうる化学種として存在することができる。プロトトロピックな互変異性体は、2個の原子の間での共有結合した水素原子の移動から生じる。互変異性体は、一般に、平衡状態にあり、個々の互変異性体を単離しようとすると、その化学的および物理的性質が化合物の混合物と一致する混合物を通常与える。平衡位置は、分子内の化学的特徴に依存する。例えば、多くの脂肪族アルデヒドおよびケトン、例えばアセトアルデヒドにおいて、ケト体が優位であるが、フェノールでは、エノール体が優位である。一般的なプロトトロピックな互変異性体として、ケト/エノール(−C(=O)−CH− ⇔ −C(−OH)=CH−)、アミド/イミド酸(−C(=O)−NH− ⇔ −C(−OH)=N−)、およびアミジン(−C(=NR)−NH− ⇔ −C(−NHR)=N−)互変異性体が挙げられる。後者の2つは、ヘテロアリールおよびヘテロ環において特に一般的であり、本発明は、化合物の全ての互変異性体を包含する。
【0057】
本明細書中で使用される技術用語および科学用語は、特記しない限り、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されている意味を有する。本明細書中では、当業者に公知の種々の方法論および物質が参照される。薬理学の一般原則を記載している標準的な参考となる研究業績は、Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, 10th Ed., McGraw Hill Companies Inc., New York (2001)に包含されている。当業者に公知の任意の好適な物質および/または方法を、本発明を実施するのに利用することができる。しかしながら、好ましい物質および方法は記載している。特記しない限り、以下の記載および実施例で参照される物質、試薬などは、市販源から得ることができる。
【0058】
本明細書中に記載の定義は、付け加えられて、化学的に関連する組み合わせ、例えば「ヘテロアルキルアリール」、「ハロアルキルヘテロアリール」、「アリールアルキルヘテロシクリル」、「アルキルカルボニル」、「アルコキシアルキル」などを形成しうる。用語「アルキル」が、「フェニルアルキル」、または「ヒドロキシアルキル」中のように、別の用語の後の接尾語として使用されるとき、これは、他の具体的に名付けられた基から選択される1〜2個の置換基で置換されている、上記と同義のアルキル基を指すことを意図している。
【0059】
本明細書中で使用される、用語「アシル」は、式−C(=O)Rの基を意味し、ここで、Rは、水素または本明細書中で定義されたとおりの低級アルキルである。本明細書中で使用される、用語「アルキルカルボニル」は、式−C(=O)Rの基を意味し、ここで、Rは、本明細書中で定義されたとおりの低級アルキルである。
【0060】
本明細書中で使用される、用語「アルキル」は、1〜10個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の飽和一価炭化水素残基を意味する。用語「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の炭化水素残基を意味する。本明細書中で使用される、「C110アルキル」は、1〜10個の炭素からなるアルキルを指す。
【0061】
本明細書中で使用される、用語「アルキレン」または「アルキレニル」は、特に断りない限り、1〜10個の炭素原子の二価の飽和直鎖炭化水素基(例えば、(CH)、または2〜10個の炭素原子の分岐飽和二価炭化水素基(例えば、−CHMe−または−CHCH(i−Pr)CH−)を意味する。メチレンの場合を除いて、アルキレン基のオープンの結合価は、同じ原子に結合しない。用語「低級アルキレニル」は、特に断りない限り、1〜6個の炭素原子の二価の飽和直鎖炭化水素基(例えば、(CH)、または2〜6個の炭素原子の分岐飽和二価炭化水素基(例えば、−CHMe−または−CHCH(i−Pr)CH−)を意味する。アルキレン基の例として、メチレン、エチレン、プロピレン、2−メチルプロピレン、1,1−ジメチルエチレン、ブチレン、2−エチルブチレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
本明細書中で使用される、用語「アルコキシ」は、アルキルが上記と同義である、−O−アルキル基を意味し、例えば、異性体を含んで、メトキシ、エトキシ、n−プロピルオキシ、i−プロピルオキシ、n−ブチルオキシ、i−ブチルオキシ、t−ブチルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシである。本明細書中で使用される、「低級アルコキシ」は、先に定義した「低級アルキル」基を持つアルコキシ基を意味する。本明細書中で使用される、「C1−10アルコキシ」は、アルキルがC1−10である−O−アルキルを指す。
【0063】
本明細書中で使用される、用語「アミノ」は、式−NRを指し、ここで、各々のRは、独立して、Hまたは前記と同義の低級アルキルである。
【0064】
本明細書中で使用される、用語「アミド」は、式−NHC(=O)Rを指し、ここで、Rは、前記と同義の低級アルキルである。
【0065】
「シクロアルキル」は、単環性または二環性の環からなる一価の飽和炭素環部分を意味する。シクロアルキルは、1個以上の置換基で場合により置換されていてもよく、ここで、各々の置換基は、特記しない限り、独立して、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、またはジアルキルアミノである。シクロアルキル部分の例として、部分的に不飽和の誘導体を含む、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。好ましいシクロアルキルは、シクロペンチルである。
【0066】
本明細書中で使用される、用語「ヘテロシクリル」、「ヘテロ環」、または「ヘテロシクロアルキル」は、他に断りがなければ、環あたりの原子が3〜8個である環1個以上、好ましくは1〜2個からなり、1個以上の環ヘテロ原子(N、OまたはS(O)0−2から選択される)を組み込んでいる一価飽和環式基を意味する。ヘテロシクリル環は、本明細書中で定義されたとおりに場合により置換されていてもよい。ヘテロ環基の例としては、アゼチジニル、ピロリジニル、ヘキサヒドロアゼピニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、チオモルホリニル、キヌクリジニルおよびイミダゾリニルが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、「ヘテロシクリル」、「ヘテロ環」、または「ヘテロシクロアルキル」は、ピペリジニルである。
【0067】
本明細書中で使用される、用語「ヒドロキシアルキル」は、異なる炭素原子上の1〜3個の水素原子がヒドロキシル基で置き換えられている、本明細書中で定義されたとおりのアルキル基を意味する。
【0068】
一般に用いられる略語としては、アセチル(Ac)、アゾ−ビス−イソブチリルニトリル(AIBN)、気圧(Atm)、9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(9−BBNまたはBBN)、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、ジ−tert−ブチルピロカルボナートまたはboc無水物(BOCO)、ベンジル(Bn)、ブチル(Bu)、ケミカルアブストラクツ登録番号(CASRN)、ベンジルオキシカルボニル(CBZまたはZ)、カルボニルジイミダゾール(CDI)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、三フッ化ジエチルアミノ硫黄(DAST)、ジベンジリデンアセトン(dba)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1,2−ジクロロエタン(DCE)、ジクロロメタン(DCM)、ジエチルアゾジカルボキシラート(DEAD)、ジ−イソ−プロピルアゾジカルボキシラート(DIAD)、水素化ジ−イソ−ブチルアルミニウム(DIBALまたはDIBAL−H)、ジ−イソ−プロピルエチルアミン(DIPEA)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、4−N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,1′−ビス−(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe)、1,1′−ビス−(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(dppf)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI)、エチル(Et)、酢酸エチル(EtOAc)、エタノール(EtOH)、2−エトキシ−2H−キノリン−1−カルボン酸エチルエステル(EEDQ)、ジエチルエーテル(EtO)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート酢酸(HATU)、酢酸(HOAc)、1−N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、イソ−プロパノール(IPA)、リチウムヘキサメチルジシラザン(LiHMDS)、メタノール(MeOH)、融点(mp)、MeSO−(メシルまたはMs)、メチル(Me)、アセトニトリル(MeCN)、m−クロロ過安息香酸(MCPBA)、質量スペクトル(ms)、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)、N−ブロモコハク酸イミド(NBS)、N−カルボキシ無水物(NCA)、N−クロロコハク酸イミド(NCS)、N−メチルモルホリン(NMM)、N−メチルピロリドン(NMP)、ピリジニウムクロロクロマート(PCC)、ピリジニウムジクロマート(PDC)、フェニル(Ph)、プロピル(Pr)、イソ−プロピル(i−Pr)、ポンド/平方インチ(psi)、ピリジン(pyr)、室温(rtまたはRT)、tert−ブチルジメチルシリルまたはt−BuMeSi(TBDMS)、トリエチルアミン(TEAまたはEtN)、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル(TEMPO)、トリフラートまたはCFSO2−(Tf)、トリフルオロ酢酸(TFA)、1,1’−ビス−2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−2,6−ジオン(TMHD)、O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(TBTU)、薄膜クロマトグラフィー(TLC)、テトラヒドロフラン(THF)、トリメチルシリルまたはMeSi(TMS)、p−トルエンスルホン酸一水和物(TsOHまたはpTsOH)、4−Me−CSO−またはトシル(Ts)、N−ウレタン−N−カルボキシ無水物(UNCA)が挙げられる。接頭語:ノルマル(n)、イソ(i−)、二級(sec−)、三級(tert−)、およびネオなどの従来の命名法は、アルキル部分と共に用いられる場合、慣用的意味を有する(J. Rigaudy and D. P. Klesney, Nomenclature in Organic Chemistry, IUPAC 1979 Pergamon Press, Oxford)。
【0069】
用語「ハロ」、「ハロゲン」または「ハライド」は、本明細書中で互換的に使用され、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を指す。
【0070】
「ハロアルキル」は、1個以上の水素が、同じまたは異なるハロゲンで置き換えられている本明細書中で定義されたとおりのアルキルを意味する。本明細書中で使用される、「低級ハロアルキル」は、前記と同義の「低級アルキル」基を持つハロアルキル基を意味する。例示的なハロアルキルとして、−CHCl、−CHCF、−CHCCl、−CFCF、−CFなどが挙げられる。
【0071】
「場合により置換されてもよい」は、低級アルキル、ハロ、OH、シアノ、アミノ、ニトロ、低級アルコキシ、またはハロ−低級アルキルから選択される0〜3個の置換基で独立して置換されている置換基を意味する。
【0072】
「脱離基」は、合成有機化学で慣用的にそれに結び付けられている意味を有する基を意味し、すなわち、置換反応条件下で置換可能な原子または基を意味する。
【0073】
「場合による」または「場合により」は、その後に記載されている事象または状況が起こってもよいが起こる必要はなく、またこの記載には、その事象または状況が起こる場合と起こらない場合とが含まれることを意味する。
【0074】
「アゴニスト」は、別の化合物または受容体部位の活性を向上させる化合物を指す。
【0075】
「アンタゴニスト」は、別の化合物または受容体部位の作用を減少させるか、または阻害する化合物を意味する。
【0076】
用語「薬物候補」は、その薬物候補が任意の公知の生物活性を有するか否かにかかわらず、動物での疾患状態の処置においての可能性のある効果について試験される化合物または製剤を指す。
【0077】
本明細書中で使用される、用語「相同の」は、他の対象種において実質的に同じ機能を果たし、そもそもそれらが見出された種が異なるが、それらがこの技術分野で同じタンパク質の異なる型であると認識される程度に、実質的な配列同一性を共有するタンパク質を指す。したがって、例えば、ヒトERG、マウスERG、およびラットERGはすべて、互いに相同であると考えられる。
【0078】
「調節薬」は、標的物質と相互作用する分子を意味する。相互作用には、本明細書中で定義されたとおりの、アゴニスト、アンタゴニストなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
「疾患」および「疾患状態」は、任意の疾患、容態、症状、障害、または適応症を意味する。
【0080】
用語「株化細胞」は、不死化された哺乳類細胞のクローンを指す。「安定な」株化細胞は、時間が経っても(例えば、各々の倍増ごとに)実質的に一貫した特性を示す株化細胞である。本発明の範囲内の安定な株化細胞は、約50Mオームより大きい密封抵抗、約200pAより大きい電流振幅をもたらし、制御条件下に1時間でおよそ20%より大きくは変化しない電流振幅をもたらし得る十分な割合の細胞を提供する。
【0081】
ある化合物の「薬学的に許容される塩」は、本明細書中で定義されたとおりの、薬学的に許容される、親化合物の所望の薬理活性を有する塩を意味する。このような塩として、
(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などのような無機酸とで形成される酸付加塩;または、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシナフトエ酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、2−ナフタレンスルホン酸、プロピオン酸、サリチル酸、コハク酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリメチル酢酸などのような有機酸とで形成される酸付加塩;あるいは、
(2)親化合物に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、もしくはアルミニウムイオンにより置き換えられている場合に形成される塩;または、有機もしくは無機塩基と配位している場合に形成される塩が挙げられる。許容される有機塩基として、ジエタノールアミン、エタノールアミン、N−メチルグルカミン、トリエタノールアミン、トロメタミンなどが挙げられる。許容される無機塩基として、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムが挙げられる。
【0082】
薬学的に許容される塩への全ての参照が、同じ酸付加塩の、本明細書中で定義されたとおりの、溶媒付加形態(溶媒和物)または結晶形態(多形)を含むことを理解すべきである。
【0083】
好ましい薬学的に許容される塩は、酢酸、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、リン酸、酒石酸、クエン酸、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、およびマグネシウムから形成される塩である。
【0084】
「溶媒和物」は、化学量論的または非化学量論的量のいずれかの溶媒を含む、溶媒付加形態を意味する。いくつかの化合物は、結晶固体状態で、一定モル比の溶媒分子を捕捉する傾向があり、こうして溶媒和物を形成する。溶媒が水であれば、形成する溶媒和物は水和物であり、溶媒がアルコールであれば、形成する溶媒和物はアルコラートである。水和物は、1分子以上の水と1分子の物質との組み合わせにより形成され、ここで、水は、H2Oとしてのその分子状態を保持し、そのような組み合わせは、1種以上の水和物を形成しうる。
【0085】
「対象」は、哺乳類および鳥類を意味する。「哺乳類」は、ヒト;非ヒト霊長類、例えばチンパンジー、および他の類人猿およびサル種;家畜動物、例えばウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、およびブタ;家庭動物、例えばウサギ、イヌ、およびネコ;実験動物(齧歯類、例えばラット、マウス、モルモットを含む)などが含まれるがこれらに限定されない、哺乳類綱の任意のメンバーを意味する。用語「対象」は、特定の年齢または性別を意味しない。
【0086】
「治療有効量」は、疾患状態を処置するために対象に投与する場合に、疾患状態のためのこのような処置を行なうのに十分な化合物の量を意味する。「治療有効量」は、化合物、処置する疾患状態、重症度または処置する疾患、対象の年齢および相対的健康状態、投与経路および投与形態、担当医師または獣医の判断、ならびに他の因子に応じて変動する。
【0087】
本明細書中で使用される、「薬理効果」は、意図した治療目的を達成する対象において生じる効果を包含する。例えば、薬理効果は、処置された対象において尿失禁の予防、緩和または減少をもたらすものである。
【0088】
「疾患状態」は、任意の疾患、容態、症状、または適応症を意味する。
【0089】
疾患状態の「処置する」または「処置」には、(i)疾患状態を予防すること、すなわち、疾患状態にさらされているかまたはその素因がある可能性があるが、まだ疾患状態の症状を経験または呈していない対象において、疾患状態の臨床症状を発症させないこと;(ii)疾患状態を抑止すること、すなわち、疾患状態またはその臨床症状の発症を停止させること;(iii)疾患状態を寛解すること、すなわち、疾患状態またはその臨床症状の一時的または永久的後退を引き起こすことが含まれる。
【0090】
本明細書で同定された特許および刊行物は全て、その全体が、本明細書に参照して組み入れられる。
【0091】
化合物および調製
本発明に包含され、本発明の範囲内である代表的な化合物の例を、以下の表で提供する。これらの例および引き続く製剤は、当業者が本発明をより明確に理解し、実施することができるようにするために提供される。それらは、本発明の範囲を限定するものではなく、単にそれを例示し、代表するものであると考えるべきである。
【0092】
一般に、本出願において使用される名称は、IUPAC系統的命名(IUPAC systematic nomenclature)の作成のためのバイルスタインインスティテュート(Beilstein Institute)のコンピュータ化システム、AUTONOMv.4.0に基づく。記載された構造とその構造につけられた名前との間に不一致がある場合には、記載された構造により重きを置くべきである。さらに、構造または構造の部分の立体化学が、例えば太線または点線で示されていない場合は、その構造または構造の部分は、その全ての立体異性体を包含するものとして解釈されるべきである。
【0093】
一般的方法
本発明は、炎症性障害を処置するための化合物及び組成物、ならびにJNKが介在する障害の処置方法を提供する。
【0094】
合成反応スキームの出発物質および中間体は、所望であれば、慣用的な技術(ろ過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィーなどが挙げられるが、これらに限定されない)を使用して単離精製することができる。このような材料は、慣用的な手段(物理定数およびスペクトルデータなどが挙げられる)を使用して特徴付けることができる。
【0095】
特記しない限り、本明細書に記載された反応は、好ましくは、約−78℃〜約180℃の反応温度範囲で、最も好ましくかつ好都合には室温(または周囲温度)、例えば約20℃にて、大気圧で、不活性雰囲気下に実施される。
【0096】
【表1】









【0097】
用途
本発明の化合物は、JNK調節薬であり、そのような化合物は広範囲のJNK介在性障害の処置に有効であることが期待されている。例示的なJNK介在性障害には、自己免疫障害、炎症性障害、代謝性障害、神経性疾患、および癌が含まれるが、これらに限定されない。したがって、本発明の化合物は、1種以上のそのような障害を処置するために使用することができる。いくつかの実施態様において、本発明の化合物は、JNK介在性障害、例えば、関節リウマチ、喘息、2型糖尿病,アルツハイマー病、パーキンソン病または脳卒中を処置するために使用することができる。
【0098】
投与および医薬組成物
本発明は、少なくとも1種の本発明の化合物、または個々の異性体、異性体のラセミもしくは非ラセミ混合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、少なくとも1種の薬学的に許容される担体ならびに場合により他の治療成分および/または予防成分と一緒に含む、医薬組成物を包含する。
【0099】
一般に、本発明の化合物は、治療有効量で、類似の有用性をもたらす薬剤について許容される任意の投与形態により投与される。適切な用量範囲は、典型的には、処置する疾患の重症度、対象の年齢および相対的な健康状態、使用する化合物の効力、投与経路および投与形態、投与が目指す適応症、ならびに担当医師の好みと経験などの数多くの因子に応じて、1日あたり1〜500mg、好ましくは1日あたり1〜100mg、最も好ましくは1日あたり1〜30mgである。このような疾患を処置する当業者は、過度の実験を行なうことなく、個人の知識および本出願の開示を頼りにして、所与の疾患に対する本発明の化合物の治療有効量を確定することができる。
【0100】
本発明の化合物は、経口(口腔内および舌下を含む)、直腸、鼻腔、局所、肺内、膣内、または非経口(筋肉内、動脈内、髄腔内、皮下および静脈内を含む)投与に適したものなどの医薬処方として、あるいは、吸入または注入による投与に適した形態の医薬処方として投与してもよい。好ましい投与方法は、一般に、罹患度に応じて調整できる、簡便な1日用量計画を使用しての、経口である。
【0101】
本発明の化合物は、1種以上の慣用的な助剤、担体、または希釈剤と一緒に、医薬組成物または単位用量の形態とすることができる。医薬組成物および単位用量形態は、追加の活性化合物または活性成分を含むかまたは含まない、慣用的な比率の慣用的な成分から構成されていてもよく、単位用量形態は、採用する目的の1日用量範囲に相応する任意の適切な有効量の活性成分を含みうる。医薬組成物は、錠剤もしくは充填カプセル剤、半固体剤、散剤、持続放出処方などの固体として使用しても、または、液剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤、もしくは経口使用のための充填カプセル剤などの液体として使用してもよく;あるいは、直腸もしくは膣内投与のための坐剤の形態で使用してもよく;あるいは、非経口使用のための無菌注射溶液の形態で使用してもよい。
【0102】
錠剤1個あたり約1mgの活性成分、より広くは約0.01〜約100mgの活性成分を含む処方が、適切な代表的な単位用量形態である。
【0103】
本発明の化合物は、多種多様な経口投与用の用量形態で処方されてもよい。医薬組成物および用量形態は、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩を活性成分として含みうる。薬学的に許容される担体は、固体でも液体でもよい。固体形態の製剤として、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤、および分散性顆粒剤が挙げられる。固体担体は、希釈剤、風味剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁化剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、またはカプセル化材料としても作用しうる1種以上の物質であってもよい。散剤では、担体は、一般に、微粉砕された活性成分との混合物である微粉砕された固体である。錠剤では、活性成分は、一般に、必要な結合能を有する担体と適切な比率で混合されており、所望の形状およびサイズに圧縮されている。散剤および錠剤は、好ましくは、活性化合物を約1〜約70%含む。適切な担体として、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、乳糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ロウ、カカオ脂などが挙げられるが、これらに限定されない。用語「製剤」は、担体を有するかまたは有さない活性成分がそれと関連する担体により周囲を囲まれているカプセル剤を与える、担体としてのカプセル化材料を有する活性化合物の処方を包含することが意図されている。同様に、カシェ剤およびトローチ剤も包含される。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤、およびトローチ剤は、固形形態として経口投与に適していよう。
【0104】
経口投与に適した他の形態として、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、水性液剤、水性懸濁剤などのような液体形態製剤、または、使用直前に液体形態製剤に変換されることが意図されている固体形態の製剤などが挙げられる。乳剤は、溶液中、例えばプロピレングリコール水溶液中で調製しても、または、例えばレシチン、モノオレイン酸ソルビタンもしくはアカシアなどの乳化剤を含んでいてもよい。水性液剤は、活性成分を水に溶かし、適切な着色剤、風味剤、安定化剤および増粘剤を加えることにより調製することができる。水性懸濁剤は、微粉砕活性成分を、天然もしくは合成ガム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび他の公知の懸濁化剤などの粘性物質と一緒に水に分散させることにより調製することができる。固体形態の製剤には、液剤、懸濁剤、および乳剤が包含され、活性成分に加えて、着色剤、風味剤、安定化剤、緩衝剤、人工および天然の甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含んでいてもよい。
【0105】
本発明の化合物は、非経口投与(例えば、注射による投与、例えば、ボーラス注射または連続注入による投与)用に処方することが可能であり、アンプル、予め充填してある注射器もしくは小容量輸液中の単位投与形態で供することができるか、または、保存料を加えた反復投与用容器で供することができる。その組成物は、懸濁剤、液剤、または、油性もしくは水性ビヒクル中の乳剤のような形態、例えば、水性ポリエチレングリコール中の液剤の形態をとることができる。油性もしくは非水性の担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油)および注射可能な有機エステル類(例えば、オレイン酸エチル)などを挙げることができ、処方助剤、例えば、保存剤、湿潤剤、乳化剤もしくは懸濁化剤、安定化剤および/または分散化剤を含んでいてもよい。あるいは、活性成分は、無菌の固体を無菌的に単離することにより得られるかまたは溶液から凍結乾燥により得られる、使用する前に適切なビヒクル(例えば、無菌で、発熱性物質を含まない水)で構成するための粉末形態であってもよい。
【0106】
本発明の化合物は、表皮への局所投与用に、軟膏剤、クリーム剤もしくはローション剤または経皮貼付剤として処方してもよい。軟膏剤およびクリーム剤は、例えば、水性または油性の基剤を使用し、それに、適切な増粘剤および/またはゲル化剤を添加して処方しうる。ローション剤は、水性または油性の基剤を使用して処方可能であり、一般に、1種以上の乳化剤、安定化剤、分散化剤、懸濁化剤、増粘剤、または着色剤を含む。口内に局所投与するのに好適な処方としては、風味を付けた基剤(通常、ショ糖およびアカシアまたはトラガカント)中に活性薬物を含有するトローチ剤;ゼラチンおよびグリセリンまたはショ糖およびアカシアのような不活性基剤中に活性成分を含有するパステル剤;ならびに、適切な液体担体中に活性成分を含有する洗口液などが挙げられる。
【0107】
本発明の化合物は、坐剤として投与するために処方しうる。脂肪酸グリセリドまたはカカオ脂の混合物などの低融点ロウを最初に融解して、例えば攪拌することにより、活性成分を均一に分散させる。次いで、融解している均質な混合物を好都合な寸法の型に注ぎ入れ、冷却し、固化させる。
【0108】
本発明の化合物は、膣内投与用に処方しうる。活性成分に加えて、この技術分野において適切であることが知られている担体を含有する、ペッサリー剤、タンポン剤、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、泡剤、またはスプレー剤。
【0109】
対象化合物は、鼻腔内投与用に処方しうる。液剤または懸濁剤を、慣用的な手段により、例えば、点滴器、ピペット、またはスプレーを用いて、鼻腔に直接適用する。処方は、単回用量形態または多回用量を含む形態で供しうる。点滴器またはピペットの後者の場合、これは、適切な所定容積の液剤または懸濁剤を、患者が投与することによって達成しうる。スプレー剤の場合は、これは、例えば、計量噴霧スプレーポンプを用いて達成しうる。
【0110】
本発明の化合物は、特に気道への、エアゾール投与(鼻腔内投与を含む)用に処方することができる。この化合物は、一般に、小さな粒径、例えば、5ミクロン以下の粒径を有する。このような粒径は、この技術分野において既知の手段により、例えば、微粒化により得ることができる。活性成分は、適切な噴射剤、例えばクロロフルオロカーボン(CFC)、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、もしくはジクロロテトラフルオロエタン、または二酸化炭素、あるいは他の適切なガスを用いた加圧パックに入れて供される。エアゾールは、好都合には、レシチンのような界面活性剤をも含有しうる。薬物の用量は、計量バルブで調節しうる。あるいは、活性成分は、乾燥粉末の形態で、例えば適切な粉末基剤(例えば、乳糖、デンプン、デンプン誘導体、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドン(PVP))中のその化合物の混合粉末の形態で供することができる。粉末状担体は、鼻腔内でゲルを形成する。粉末組成物は、単位投与形態で、例えば、カプセルもしくはカートリッジ(例えば、ゼラチンの)またはブリスターパックに入れて供することができ、そこから、吸入器を用いてその粉末を投与することができる。
【0111】
望ましい場合には、処方は、活性成分の持続的放出投与または制御放出投与に適合させた腸溶性コーティングを施して調製することができる。例えば、本発明の化合物は、経皮薬物送達デバイスまたは皮下薬物送達デバイス内で処方することができる。これらの送達システムは、その化合物の持続的放出が必要な場合、および、患者による治療計画のコンプライアンスが決定的に重要である場合に有利である。経皮送達システムにおける化合物は、多くの場合、皮膚接着性固体支持体に付着させる。当該化合物は、浸透増強剤、例えばAzone(1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン)と組み合わせることもできる。持続的放出送達システムを、手術または注射により、皮下層に皮下挿入する。皮下インプラントでは、その化合物を、脂溶性膜(例えばシリコーンゴム)または生分解性ポリマー(例えばポリ乳酸)中に封入している。
【0112】
医薬製剤は、単位用量形態にあることが好ましい。そのような形態において、この製剤は、適切な量の活性成分を含有する単位用量に細分される。単位用量形態は、パッケージ製剤であることができ、そのパッケージは、パケット錠剤、カプセル剤および、バイアルまたはアンプル中の散剤のような製剤の個々の分量を含有する。また、単位用量形態は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤、もしくはトローチ剤自体であってもよく、またはこれらのいずれかが適切な数でパッケージされた形態であることも可能である。
【0113】
その他の適切な医薬的担体およびそれらの製剤は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 1995, edited by Martin, Mack Publishing Company, 19th edition, Easton, Pennsylvaniaに記載されている。本発明の化合物を含有している代表的な医薬処方を、以下に記載する。
【0114】
本発明のさらなる目的、利点、および新規な特徴は、以下の本発明の実施例(限定することを意図しない)を検討することにより、当業者に明らかとなるであろう。
【0115】
略語リスト
AcO 無水酢酸
AcOH 酢酸
DBU 1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン
DCE 1,2−ジクロロエタン
DCM ジクロロメタン/塩化メチレン
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EDCI 1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩
EtO ジエチルエーテル
EtOH エタノール/エチルアルコール
EtOAc 酢酸エチル
HOBt 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
LDA リチウムジイソプロピルアミド
LiHMDS リチウムビス(トリメチルシリル)アミド
m−CPBA 3−クロロペルオキシ安息香酸
MeOH メタノール/メチルアルコール
MW マイクロ波
NMP 1−メチル−2−ピロリジノン
PMB 4−メトキシベンジル
RT 室温
TBME tert−ブチルメチルエーテル
TFA トリフルオロ酢酸
TfO トリフルオロメタンスルホン酸無水物
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
【0116】
実施例
下記の調製例及び実施例は、当業者が本発明をより明確に理解し、実施できるために示されている。これらは、本発明の範囲を制限すると考えられるべきではなく、本発明の例示及び代表例としてのみ考えられるべきである。
【0117】
実施例1
【化6】

【0118】
ピリドン(30mg、1.3mmol)をNMPに溶解し、NaH((60%)74mg、2.5mmol)により室温で処理し、ヨウ化物(1.2g、3.9mmol)を加え、混合物を3時間撹拌した。次に、反応をHO 3mlでクエンチし、EtOAc(20ml)で抽出し、0.3重量%LiCl水溶液10mlで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、フラッシュクロマトグラフィー(10:1ヘキサン:EtOAc)により精製して、生成物5.3mgを得た。
【0119】
実施例2
【化7】


チオエーテル(300mg、0.71mmol)をNMPに溶解し、NMP中のNCS(104mg、0.78mmol)及びHO 0.3mlで処理し、80℃で15分間加熱した。次に、アミン(0.16ml、1.4mmol)を加え、溶液を80℃で更に40分間加熱し、次に室温まで放冷した。溶液をEtOAc(40ml)で抽出し、0.3重量%LiCl水溶液2×10mlで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、フラッシュクロマトグラフィー(4:1ヘキサン:EtOAc〜100%EtOAc)により精製して、生成物(融点152.0〜155.5℃、(M+H)317)を得た。
【0120】
実施例3
【化8】

【0121】
ピリドン(0.3g、1.0mmol)をNMPに溶解し、NMP中のNCS:HOを加え、70℃で加熱し、ジアミンを加え、70℃で1時間加熱して放冷した。得られた固体を濾別し、固体をEtOAcで洗浄して、粗生成物(0.24g)を得た。粗物質を、60:10:10 CHCl:MeOH:NHOHを使用する分取TLCにより精製して、生成物(0.08g)((M+H)318)を得た。
【0122】
実施例4
【化9】

【0123】
ピリドン(0.08g、0.25mmol)をDMF(5ml)に溶解し、その後ピリジン(0.020ml、0.25)を、続いてMsCl(0.19ml、0.25mmol)を加え、混合物を室温で2時間攪拌した。粗生成物を、60:10:10 CHCl:MeOH:NHOHを使用する分取TLCにより精製し、次にDCMに希釈し、MgSOで乾燥させ、濾過して濃縮した((M+H)396)。
【0124】
実施例5
【化10】

【0125】
ピリドン(0.75g、3.2mmol)をDMFに溶解し、次にKCO(0.56g、4.1mmol)を加え、室温で一晩攪拌した。次に、混合物をEtOAc及び0.3%LiCl(水溶液)で処理し、MgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して、1:2 EtOAc/ヘキサンを使用するカラム上で精製して、生成物((1.00g、74%)(M+H)423)を得た。
【0126】
実施例6
【化11】

【0127】
NMP(6ml)中のピリドン(1.0g、2.4mmol)を、NMP/HO中のNCS(0.33g、2.5mmol)で処理し、70℃で30分間加熱し、アミン(0.55g、2.5mmol)を加え、1時間攪拌した。次に、混合物にEtOAc/HOを加え、固体を濾別してEtOAc及びHOで洗浄し、減圧下で乾燥させて、生成物を得た(分取TLC 60:10:10 CHCl:MeOH:NHOHを使用して精製した有機層の処理から、さらなる生成物を得た)(総収率0.63g)((M+H)432)。
【0128】
実施例7
【化12】

【0129】
ピリドン(0.63g、1.5mmol)をMeOH 4ml及びDCM 1mlに溶解し、ヒドラジン(0.056ml、1.75mmol)を加え、混合物を室温で一晩攪拌した。得られた固体を濾別し、DCMで洗浄し、60:10:10 CHCl:MeOH:NHOHを使用する分取TLCを使用して精製して、生成物(0.34g、(M+H)302)を得た。
【0130】
実施例8
【化13】

【0131】
ピリドン(0.09g、0.3mmol)をDCMに溶解し、ピリジン(0.024ml、0.3mmol)を加え、ジメチルスルファモイルクロリド(0.032ml、0.3mmol)を加え、混合物を室温で一晩攪拌した。生成物を、60:10:10 CHCl:MeOH:NHOHを使用する分取TLCを使用して精製して、生成物((M+H)409)を得た。
【0132】
実施例9
【化14】

【0133】
I(1.50g)とII(2.99g)をN下、THF中で合わせ、加熱還流して19時間攪拌した。次に、混合物を濃縮し、生成物を、40〜50%EtOAc−ヘキサンを使用するクロマトグラフィーにより精製して、III 1.62g(83%)を得た。
【0134】
実施例10
【化15】

【0135】
I(1.52g)、DBU(9ml)、DIEA(0.98ml)を、N下で合わせ、120℃に加熱し、1時間還流し、100℃で1時間加熱し、次に室温まで放冷した。次に混合物を、EtOAc 50ml、1M HCL 60mlに注ぎ、次に有機層に加え、次にHO 2×25mlで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、II(0.9g)を得た。
【0136】
実施例11
【化16】

【0137】
NMP 1ml中のI(0.30g)を溶解し、次にNMP(0.8ml)/HO(0.8ml)中のII(0.17g)を加え、反応をN下、70℃に15分間加熱し、次にアミン(0.27g)を加え、反応を100℃に30分間加熱し、続いて室温に冷却し、次に25mlヘキサンを加え、混合物を2時間撹拌し、ヘキサンを除去した。次に残留物を、0〜20%MeOH/DCMを使用するクロマトグラフィーにより精製して、III 0.25gを得た。
【0138】
実施例12
【化17】

【0139】
ピリミジン(5.7g、24.4mmol)をTHFに溶解し、次にアミン(5.9g、29.4mmol)を加え、次にEtNで処理し、2.5時間攪拌し、固体を濾別し、濾液を濃縮して、残留THFとともに生成物(11.22g)を得た。
【0140】
実施例13
【化18】

【0141】
ピリミジン(9.8g、24.4mmol)をTHF 180mlに溶解し、−70℃に冷却し、LAH(THF中1.0M 26.8ml)を加え、反応を25分間攪拌し、次に−70℃に30分間冷却し、数時間かけてゆっくりと0℃にし、11.2ml iPrOH、次にHO 3.3mlでクエンチし、セライトを通して濾過して濃縮し、1:2 EtOAc/ヘキサン−100%EtOAcを使用するカラム上で精製して、生成物(5.0g、58%)を得た。
【0142】
実施例14
【化19】

【0143】
アルコール(5.04g、14.2mmol)をDCM 223mlに溶解し、N下でMnO(12.4g、142mmol)で処理し、室温で3時間撹拌した。混合物を、セライトを通して濾過し、DCMでフラッシュし、溶液を減圧下で濃縮して、生成物(4.73g、95%)((M+H)353)を得た。
【0144】
実施例15
【化20】

【0145】
THF 35ml中のアルデヒド(4.73g、13.4mmol)を、ホスフィン(6.1g、17.4mmol)で処理し、80℃で還流し、次に室温に冷却し、1:4 EtOAc/ヘキサンを使用するカラムのクロマトグラフィーにより精製して、生成物(5.31g、94%)を得た。
【0146】
実施例16
【化21】

【0147】
ピリミジン(1.5g)、DBU(8ml)、DIEA(9.3ml)を、N下で合わせ、120℃に加熱し、1時間還流し、100℃で1時間加熱し、次に室温まで放冷した。次に、混合物をEtOAc/HOに抽出し、有機層を単離し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、粗生成物まで濃縮した。粗物質を、60:10:10 CHCl:MeOH:NHOHを使用するクロマトグラフィーにより精製して、生成物(0.22g、17%)(M+H)377)を得た。
【0148】
実施例17
【化22】

【0149】
ピリドン(0.22g、0.58mmol)をNMP 1mlに溶解し、NMP 0.6ml及びHO 0.4ml中のNCS(0.081g)で処理し、80℃で15分間加熱した。次に、アミン(0.133ml、1.16mmol)を加え、溶液を80℃で更に30分間加熱し、次に室温まで放冷した。得られた固体を濾別し、EtOAcですすぎ、溶液をEtOAc(40ml)で抽出し、0.3重量%LiCl水溶液 2×10mlで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、60:10:10 CHCl:MeOH:NHOHを使用するTLCにより精製して、生成物を得た(50mg、融点221.1〜223.1 C、(M+H)428)。
【0150】
実施例18
【化23】

【0151】
ピリドン(100mg)をDCM 5mlに溶解し、TFA(0.5ml)を加え、室温で2.5時間攪拌し、60:10:10 CHCl:MeOH:NHOHを使用する分取TLCを介して精製して、生成物を得た(融点109.0〜112.0℃)。
【0152】
実施例19
【化24】

【0153】
NMP中のアルデヒド(2.0g、9.5mmol)及びKCO(9.5mmol)に、メチルプロピオネートを加え、120℃に加熱して一晩攪拌した。次に、メチルプロピオネート(4.6ml、47.5mmol))及びKCO(9.5mmol)を混合物に加え、130℃に4日間加熱した。次に、反応を室温に冷却し、EtOAcに注ぎ、HOを加えた。次に、有機層をLiCl(水溶液)3×0.3%で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過して濃縮し、生成物(2.0g、75%)を得た。
【0154】
実施例20
【化25】

【0155】
ピリドン(150mg、0.49mmol)を0.4ml NMPに溶解し、NCS(68mg、0.52mmol)で処理し、NMP 0.4ml及びHO 0.2mlに溶解し、70℃で1時間加熱した。混合物を室温まで放冷し、EtOAc/HO/MeOHを加え、100℃で濃縮し、粗物質を、60:10:10 CHCl:MeOH:NHOHを使用する分取TLCで精製して、生成物((M+H)333)を得た。
【0156】
実施例21
【化26】

【0157】
アルデヒド(1.6g、8.7mmol)をNMPに溶解し、エステル(4.2ml、43.7mmol)及びKCOで処理し、密閉管中で110℃で2日間加熱した。次に、混合物を室温に冷却し、EtOAc/HOに注ぎ、0.3%LiCl(水溶液)3×30mlで洗浄し、濾過して濃縮し、4:1〜1:1ヘキサン:EtOAcを使用するフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、生成物(560mg)を得た。
【0158】
実施例22
【化27】

【0159】
チオエーテル(300mg、1.3mmol)をNMPに溶解し、NMP:HO中のNCS(190mg、1.4ml)で処理し、80℃に20分間加熱し、アミン(312mg、2.7mmol)を加え、2時間攪拌し、次に室温に冷却した。次に、混合物をEtOAc 40mlに注ぎ、0.3%LiCl(水溶液)4×10mlですすぎ、MgSOで乾燥させ、濾過して濃縮し、DCMでトリチュレートして、生成物((M+H)289、融点218.7〜220.0℃)を得た。
【0160】
実施例23
【化28】

【0161】
還元を、LiAlHを使用して2gのスケールで実行し、所望のアルコールを収率98%で得た。用時調製したIBXを使用して実施し、酸化によりアルデヒドを収率68%で得た。カルベトキシメチレントリフェニルホスホランを使用した同族体化反応を、2gのスケールで実行し、1時間還流した後反応を完了して、α、β−不飽和エステルを収率46%で得た。環化反応を、DBUと、溶媒としてのHunig塩基とにより120℃で18時間実施し、酸で処理し、クロマトグラフィーにより精製して、環化誘導体を収率30%で得た。
【0162】
生物学的アッセイ
実施例24:インビトロJNKアッセイ
JNK活性は、GST−ATF2(19−96)の[γ−33P]ATPでのリン酸化により測定した。酵素反応は、25mM Hepes、pH7.5、2mM ジチオトレイトール、150mM NaCl、20mM MgCl、0.001%Tween(登録商標)20、0.1% BSAおよび10%DMSOを含有する緩衝液中で、Km濃度のATPと基質で、最終容量40μlで行った。ヒトJNK2α2アッセイは、1nM酵素、1μM ATF2、1μCi[γ−33P]ATPを含む8μM ATPを含有していた。ヒトJNK1α1アッセイは、2nM酵素、1μM ATF2、1μCi[γ−33P]ATPを含む6μM ATPを含有していた。ヒトJNK3(Upstate Biotech #14-501M)アッセイは、2nM酵素、1μM ATF2、1μCi[γ−33P]ATPを含む4μM ATPを含有していた。酵素アッセイは、数種の化合物濃度の存在下または不存在下に実施した。JNKおよび化合物は、10分間予備インキュベートした。その後、酵素反応を、ATPと基質を加えることにより開始した。反応混合物は、30℃で30分間インキュベートした。インキュベーションの最後に、反応混合物25μlを、135mM EDTAを含有する150μlの10%グルタチオンセファロース(登録商標)スラリー(Amersham #27-4574-01)に移すことにより、反応を停止した。反応生成物をアフィニティー樹脂に捕集し、濾過プレート(Millipore, MABVNOB50)上でリン酸緩衝塩水で6回洗浄して、遊離の放射性ヌクレオチドを除去した。33PのATF2への取り込みは、マイクロプレートシンチレーションカウンター(Packard Topcount)上で定量した。JNKに対する化合物の阻害能は、3−パラメーターモデル:%阻害=最大/(1+(IC50/[阻害剤])スロープ)に当てはめた10種の濃度の阻害曲線からもたらされたIC50値により測定した。データは、パラメーター推定用のマイクロソフトエクセル上で分析した。代表的な結果を以下の表Yに示す。
【0163】
【表2】

【0164】
本発明は、その特定の態様を参照して記述されているが、当業者は、本発明の真の精神と範囲から逸脱することなく、種々の変更を行うことができ、均等物に置き換えうることを理解すべきである。さらに、特定の状況、物質、組成物、製造法、製造工程を本発明の目的の精神と範囲に適合させるために、多数の改変を行うことができる。全てのこのような改変は、本明細書に添付される特許請求の範囲内にあることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化29】


(式中、
は、−Y−R1’であり;
Yは、低級アルキレニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、またはフェニルであり;
1’は、H、ヒドロキシ、OC(=O)R1”、NHC(=O)R1”、C(=O)OR1”、NHSO1”、またはN(R1’”であり、
1”は、H、低級アルキル、アミノ、または低級ハロアルキルであり;
各々のR1’”は、独立して、Hまたは低級アルキルであり;
は、HまたはR2’であり;
2’は、ヒドロキシ、N(R2”、NHSO2”、またはアミドであり;そして、
各々のR2”は、独立して、Hまたは低級アルキルであり;
ただし、Yがエチルまたはシクロヘキシルであり、そしてRがHであるとき、R1’は、Hではない)
の化合物。
【請求項2】
が、−Y−R1’であり;
Yが、低級アルキレニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、またはフェニルであり;
1’が、H、ヒドロキシ、OC(=O)R1”、NHC(=O)R1”、C(=O)OR1”、NHSO1”、またはN(R1’”であり、
1”が、H、低級アルキル、アミノ、または低級ハロアルキルであり;
各々のR1’”が、独立して、Hまたは低級アルキルであり;
が、HまたはR2’であり;
2’が、ヒドロキシ、N(R2”、またはアミドであり;そして、
各々のR2”が、独立して、Hまたは低級アルキルであり;
ただし、Yがエチルまたはシクロヘキシルであり且つRがHであるとき、R1’が、Hではない、
請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Yが低級アルキレニルである、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
Yがシクロアルキルであり、そしてR1’がHである、請求項1または2記載の化合物。
【請求項5】
Yがヘテロシクロアルキルであり、そしてR1’がHである、請求項1または2記載の化合物。
【請求項6】
がHである、請求項1〜5のいずれか一項記載の化合物。
【請求項7】
がヒドロキシである、請求項1〜5のいずれか一項記載の化合物。
【請求項8】
1’がヒドロキシである、請求項1〜3のいずれか一項記載の化合物。
【請求項9】
【化30】


からなる群から選択される、請求項1の化合物。
【請求項10】
式II:
【化31】


(式中、
は、−Y−R1’であり;
Yは、低級アルキレニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、またはフェニルであり;
1’は、H、ヒドロキシ、アミノ、NHSO1”、OC(=O)R1”、NHC(=O)R1”、またはC(=O)OR1”であり;
1”は、H、低級アルキル、アミノ、または低級ハロアルキルであり;
は、HまたはR2’であり;
2’は、ヒドロキシまたはアミノであり;そして、
ただし、RがHであり且つR1’がヘテロシクロアルキルであるとき、R1”は、Hではない)
の化合物。
【請求項11】
Yが低級アルキレニルである、請求項7記載の化合物。
【請求項12】
がヒドロキシである、請求項10または11記載の化合物。
【請求項13】
1’がヒドロキシである、請求項10〜12のいずれか一項記載の化合物。
【請求項14】
【化32】


からなる群から選択される、請求項10記載の化合物。
【請求項15】
JNK介在性障害を有する対象におけるJNK介在性障害の処置方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の請求項1〜14のいずれか一項の化合物を投与することを含む方法。
【請求項16】
少なくとも1種の薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤と混合された、請求項1〜14のいずれか一項の化合物を含む、医薬組成物。
【請求項17】
JNK介在性障害の治療および/または予防処置用の医薬を製造するための、請求項1〜14のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項18】
JNK介在性障害が、自己免疫疾患、炎症性疾患、代謝障害、神経疾患、または癌である、請求項17記載の使用。
【請求項19】
JNK介在性障害が、関節リウマチ、喘息、2型糖尿病、アルツハイマー病、パーキンソン病または脳卒中である、請求項17記載の使用。
【請求項20】
JNK介在性障害の処置に使用するための、請求項1〜14のいずれか一項記載の化合物。
【請求項21】
先に定義した、特に新規化合物、中間体、医薬、使用および方法に関連する発明。

【公表番号】特表2012−505927(P2012−505927A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532588(P2011−532588)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063327
【国際公開番号】WO2010/046273
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】