説明

L−セリン、L−イソロイシン、葉酸及び微量元素を含む乾癬を治療するための組成物

乾癬を治療するための生物学的医学的方法が開示されている。本発明は、乾癬を治療又は予防するための医薬組成物の製造のためにL−セリン(Ser)及びL−イソロイシン(Ile)を使用することに関係する。本発明はさらに活性成分として該アミノ酸を含む医薬組成物に関係する。好ましくは、この組成物はさらにクローム(Cr)、スズ(Sn)、セレン(Se)、バナジウム(V)、タングステン(W)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択された少なくとも一つの必須微量元素、及び葉酸を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾癬を治療又は予防するための医薬組成物を製造するために天然の生体成分の使用に関する。さらに本発明は、唯一の医薬として活性な成分として天然生体成分を含む医薬組成物に関する。この組成物は皮膚疾患に対する治療効果を有する。
【背景技術】
【0002】
乾癬は多様な皮膚疾患であり、体の伸長部表面上に鱗屑性紅斑を形成することが特徴である。通常慢性的病気であり、ある遺伝的感受性に関係していると思われる。この患者の治療は通常複雑であり高価であるが、治療効果は必ずしも得られない。この疾患が進行性になった時に、この疾患は関節にも関係し、ひどい痛みと患者の行動制限を生じる可能性がある。標準的治療は最近殆ど変化がなく、通常の療法は、まだ光線療法、ある種の軟膏及びコルチゾンである。真に有効な自然療法は発見されていない。乾癬を治療するための改良された方法に対する要求は大きく、その方法は有効で、簡単、安価そして有害な副作用が無いものでなければならない。
【0003】
現代において、癌は主たる死因の一つであり、この疾患群の治療法を発見するために莫大な資源が費されてきた。通常、癌は手術、照射又は細胞分裂停止薬により治療される。その他の治療法は、例えば、bio−immunotherapyと呼ばれる生物学的及び免疫学的治療法を併用する方法である(Tallberg,Thomas.Development of a Combined Biological and Immunological Cancer Therapy Modality.A review of Bio−Immunotherapy.J.Austr.Coll.Nutr. & Env.Med.2003:22 p.3−21)。bio−immunotherapyでは、癌患者にアミノ酸と微量元素とからなり、任意に神経原性脂質及び/又はビタミンと組み合わせる天然の生体成分が投与される。これらの成分の種々の混合物が種々の形態の癌に試験された。この混合物は食品添加物として投与されることが好ましい。
【0004】
本発明は、bio−immunotherapyによる癌患者の治療の際に、たまたま乾癬にも罹患していた数人の癌患者において、彼らが受けた癌治療が皮膚疾患に対するものではなかったにもかかわらず、その皮膚障害が消失したか又は皮膚病の症状がかなり改善したことが明らかになったという、驚くべき結果に基づいている。乾癬に対するこの改善効果は悪性疾患とは関係がないと思われ、患者が罹患している癌のいずれの形態とも関連付けられなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、乾癬を治療又は予防するための医薬組成物を製造するための天然の生体成分の使用を提供する。
【0006】
本発明は、乾癬を治療又は予防するための天然生体成分を含有する安価で安全な医薬組成物をさらに提供する。
【0007】
本発明は、それを必要とする患者に天然生体成分を投与することによる乾癬の治療又は予防の代替方法も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要約
本発明は、乾癬を治療又は予防するための医薬組成物を製造するためのL−アミノ酸であるセリン(Ser)及びイソロイシン(Ile)の使用に関する。当該アミノ酸は非結合型(以前はモノアミノ酸と呼ばれた)で存在し、それはそのアミノ酸がペプチド若しくはタンパク質若しくは他の高分子又はコンジュゲートの中に取り込まれていないことを意味するが、組成物中の微量元素イオンと複合体を形成している可能性はある。
【0009】
本発明は、唯一の医薬として活性な成分として、任意にクローム(Cr)、スズ(Sn)、セレン(Se)、バナジウム(V)及びタングステン(W)からなる群から選択される少なくとも一つの微量元素及び/又は葉酸との組合わせにおいて、L−アミノ酸であるセリン(Ser)及びイソロイシン(Ile)を含む医薬組成物に関する。
【0010】
それを必要とする患者にL−アミノ酸であるセリン(Ser)及びイソロイシン(Ile)の治療有効量を投与することにより乾癬を治療又は予防する方法も開示される。
【0011】
本発明の好ましい態様は付属する請求項において記述される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明の詳細な説明
乾癬のある癌患者が摂取した天然生体成分に関する分析の結果、彼らが受けたbio−immunotherapyに使用されたある特定の必須微量元素金属イオンを伴うある種のアミノ酸は、その皮膚疾患に対する臨床的改善効果を生じることが明らかになった。乾癬の病気にも罹患したがその他の点では健康であるこれらの癌患者の近親者において、摂取された同じ天然食物成分は好ましい臨床効果を生じることができた。
【0013】
このため、癌に罹患していない乾癬患者が試験された。試験された多数の症例において、活性食物成分が描写された(delineated)。これらの患者に食品添加物の形態で処方された経口摂取は、アミノ酸であるイソロイシン(Ile)とセリン(Ser)の組み合わせを含む製剤により行われる。この二つのアミノ酸はL−アミノ酸の形態で投与される。
【0014】
Ile及びSerに加えて、組成物はクローム(Cr)、スズ(Sn)、セレン(Se)、バナジウム(V)、タングステン(W)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される少なくとも一つの必須微量元素を含んでいることが好ましい。微量元素には、任意に、例えば、マンガン(Mn)も含まれる。生物学的に活性であるために、微量元素はイオン型でなければならず、それゆえに実際上それらは塩として投与される。味の薄い(neutral taste)塩が好ましく、強い又は悪い味の塩は避けなければならない。
【0015】
乾癬を治療又は予防するための製剤は、好ましくはさらに生理的量の葉酸を含む。
【0016】
本発明にしたがって有効に利用される治療は、活性成分として、任意に必須微量元素及び葉酸と共にL−セリン及びL−イソロイシンを経口投与することに基づいている。本発明の一態様によれば、組成物は本質的にこの3群の成分、すなわちアミノ酸、微量元素及びビタミンのみからなる。これらの成分は全て天然に存在し、生物学的に活性である、すなわち、それらは代謝過程のような生物学的現象に関与している。非常に優れた結果は、唯一の医薬活性成分としてL−セリン、L−イソロイシン、Cr,Sn,Se,V及びWの塩、及び葉酸を含む組成物を使用して得られた。
【0017】
使用した組成物は、求める健康増進効果を達成するのに充分な量である生物学的に及び医薬的に活性な量の成分を含む。医師には容易に理解されるように、その量は個人及びその健康状態並びに体重、年齢、栄養、ストレス及び環境因子のようなほかの因子により変動する。適量の例は、L−セリン及びL−イソロイシンそれぞれが約2〜10、通常2〜5g/日であるが、これに限定されない。微量元素は、Cr,Sn,Se,V及びWの微量元素イオンのそれぞれについて通常0.5〜9mg/日、好ましくは1〜3mg/日の量で使用される。Znは約15mg/日の投与量で投与することができ、Mnは約50mg/日の投与量で投与することができる。葉酸は、1〜2mg/日のような、少量のよく確立された生理的量で使用される。
【0018】
患者におけるリンパ球新生及び免疫防御の改善のために、プリオンフリー神経原性脂質を、上記開示の組成物で治療している患者に投与することもできる。神経原性脂質は、例えば、健康な若いブタの脳から得ることができる。以前にプリオンフリー脂質フラクションを得るために記述したように、脳組織を煮沸し、凍結し、そして凍結乾燥し、その後脂質をエーテル‐エチルアルコールで抽出する(Tallberg T.et al.Cancer Immunity.The Effect in Cancer−immunotherapy of Polymerised Autologous Tumour Tissue and Supportive Measures.Scand.J.Lab.Invets.1979: 39 p.3−33)。神経原性脂質はNeurofood Ltd.,Finlandにより購入され、缶詰されている。神経原性脂質の推奨一日摂取量は約50〜100gの脳相当量である。
【0019】
アミノ酸、微量元素及びビタミンを含む組成物中の成分は、別々に又は種々の組み合わせで投与することができる。例えば、それらを別々の粉末の形で又は全ての成分を含む既製粉末として購入することができる。そのような粉末混合物は、予め包装されて、それ自体で、又は通常の食品に添加して、例えば患者の朝のヨーグルトに入れて使用することができる。消費者には、朝食に関連して、又は食事の間のスナックとして摂取するのが簡便である。天然の成分のみを含み、それが活性の食品添加物を構成しているので、この補助食品治療は比較的安価である。勿論、医薬組成物は、医薬として受容される担体及び賦形剤を含む顆粒、カプセル又は錠剤にも加工することができる。神経原性脂質製品を他の成分と同時に又は別の時に個別に投与することができる。好ましい方法は、神経原性脂質製品を果物の盛り合わせに混ぜて、そして冷やして摂取することである。
【0020】
本発明は、以下の実施例により説明されるが、如何なる場合も本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。当業者は、ここに記述したことと同じ有用な効果を持つ変更及び修正をすることができるであろう。
【実施例】
【0021】
癌に罹患していない乾癬患者に、その中に生物学的に活性な形態の金属イオンが存在するミリグラム量の一定の生物学的に活性な微量元素塩と共に、イソロイシン及びセリンを食品添加物の形態で経口的に投与された。数ミリグラムの葉酸もこの組成物に含まれた。この天然食品添加物は毎日患者に与えられた。乾癬に罹患した患者の治療のための食事バイオ‐モジュレーションスケジュールは下記の通りである。
【0022】
併用支持食事用法(combined supportive dietary measures):
1.食事との関連において、L−アミノ酸であるセリン(Ser)及びイソロイシン(Ile)のそれぞれを(2〜5g/日)経口投与する。
2.数ミリグラム(1〜3mg/日)の用量レベルで必須微量元素塩を生物学的に活性なイオンとして経口投与する;クローム(CrCl・6HO)6mg(=1.17mg Cr)、スズ(SnCl・5HO)4mg(=1.35mg Sn)、セレン(NaSeO・10HO)6mg(=1.28mg Se)、バナジウム(NaVO・4HO)6mg(=2.5mg V)、タングステン(NaWO・2HO)4mg(=2.3mg W)。また一部の患者はグルコン酸亜鉛を15mg Znイオンに相当する一日量で投与され、一部の患者は140mg/日(=51.0mg Mn)の量で硫酸マンガンを投与された。
3.少量の生理的量の葉酸(1〜2mg/日)。
4.一部の患者は脳約50gに相当するプリオンフリー神経原性脂質(Neurofood Ltd.Finlandで缶詰されたものを購入)をさらに含んだ食事を受けた。
5.患者は、成分1〜3の混合物を含む予め包装した粉末を受け取り、一日量を取るために粉末を朝のヨーグルトに混ぜるように勧められた。
6.観察された臨床成績及び患者の体重に基づいて投与レベルは調節された。
【0023】
試験を行った10例を超える患者において治療の効果が数ヶ月で認められた。局所的に皮膚の紅斑は刺激が少なくなり、一部の患者では完全に消失した。関節痛は治まった。この組成物を継続して投与した一部の症例ではその効果は20年まで続いた。この臨床効果は、これらの生物学的成分の量及び相対的含量、及び患者の体重に関連して若干の個人差を示した。ある症例では、Ileのみを微量元素塩と併用して一定の効果を生じることができたが、他の患者ではSerは必要な補因子であるように思われた。この変動は、乾癬に罹患する患者の遺伝的体質に関係する可能性がある。この疾患の基にある代謝の欠陥を補償することを目的とするこの食事療法は、試験したボランティアのいずれにおいて経験されたいずれの副作用にも関連しなかった。この食品添加物は、乾癬に罹患した患者に持続する緩和効果を示すことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾癬を治療又は予防するための医薬組成物を製造するための
a) L−アミノ酸セリン(Ser)及びイソロイシン(Ile)、
b) 微量元素クローム(Cr)、スズ(Sn)、セレン(Se)、バナジウム(V)及びタングステン(W)、及び
c) 葉酸
の使用。
【請求項2】
さらに亜鉛(Zn)を含む医薬組成物の製造のための請求項1に記載の使用。
【請求項3】
さらにマンガン(Mn)を含む医薬組成物の製造のための請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
a) L−セリン及びL−イソロイシンのそれぞれを2〜5gと、
b) クローム(Cr)、スズ(Sn)、セレン(Se)、バナジウム(V)及びタングステン(W)塩のそれぞれを0.5〜6mgと、
c) 葉酸を1〜2mgと
を含む医薬組成物の製造のための請求項1に記載の使用。
【請求項5】
さらに神経原性脂質を含む医薬組成物を製造するための先行請求項のいずれか一つに記載の使用。
【請求項6】
粉末状の組成物を製造するための請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
食品添加用組成物の製造のための請求項5又は6に記載の使用。
【請求項8】
唯一の医薬として活性な成分として
a) L−アミノ酸セリン(Ser)及びイソロイシン(Ile)と、
b) 微量元素クローム(Cr)、スズ(Sn)、セレン(Se)、バナジウム(V)、及びタングステン(W)、及び任意に亜鉛(Zn)と、
c) 葉酸と
を含む医薬組成物。
【請求項9】
唯一の医薬として活性な成分として
a) セリン(Ser)及びイソロイシン(Ile)と、
b) クローム(Cr)、スズ(Sn)、セレン(Se)、バナジウム(V)、タングステン(W)及び亜鉛(Zn)塩と、
c) 葉酸と
を含む請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
医薬として活性量の:
a) L−アミノ酸セリン(Ser)及びイソロイシン(Ile)と、
b) 微量元素クローム(Cr)、スズ(Sn)、セレン(Se)、バナジウム(V)、タングステン(W)、及び任意に亜鉛(Zn)と、
c) 葉酸とを、
それを必要とする患者に投与する、乾癬を治療又は予防する方法。

【公表番号】特表2007−520532(P2007−520532A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551868(P2006−551868)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【国際出願番号】PCT/FI2005/000075
【国際公開番号】WO2005/074910
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(506267547)ヘルシングフォルス インスティテューション ファル バイオイミューンテラピー エービー (1)
【Fターム(参考)】