説明

LEDランプ

【課題】LEDチップの半導体層のエッジ部分と搭載基板の配線パターンとの間に、導電粒子の介在によるリーク電流が発生するのを防止可能なLEDランプを提供する。
【解決手段】同一面側にカソード側電極24およびアノード側電極25が形成されたLEDチップ20と、アノード側配線パターン12およびカソード側配線パターン13が形成された搭載基板11と、球状体である導電粒子31を接着剤樹脂33に分散混合した異方性導電接着剤30とを備え、各電極24,25と各配線パターン12,13とを異方性導電接着剤30によって直接接合させることにより、LEDチップ20を搭載基板11に搭載したLEDランプ10であって、各電極24,25の厚みt1,t2が導電粒子31の直径φよりも大きく形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はLEDランプに係り、詳しくは、異方性導電接着剤を用いたLEDランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、導電粒子を接着剤に分散混合した異方性導電接着剤(異方導電性接着剤)が知られている(特許文献1参照)。
そして、異方性導電接着剤を用いてLEDチップを搭載基板にフリップチップボンディングして搭載したLEDランプが開発されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−24301号公報
【特許文献2】特開2004−39983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
異方性導電接着剤を用いてLEDチップを搭載基板にフリップチップボンディングするには、LEDチップの電極上にバンプを形成した上で、バンプと搭載基板の配線パターンとを異方性導電接着剤を用いて接合させる方法がとられていた。
しかし、この方法では、バンプを形成する工程が必要となるため製造コストが高くなることに加え、バンプによるボンディング部分の機械的強度が弱く信頼性に乏しいという欠点があった。
【0005】
そこで、バンプを形成せずに、LEDチップの電極と搭載基板の配線パターンとを異方性導電接着剤を用いて直接接合させる方法が考えられる(特許文献2参照)。
しかし、この方法では、異方性導電接着剤に分散混合された導電粒子が、LEDチップの半導体層のエッジ部分と搭載基板の配線パターンとの間に挟み込まれると、その導電粒子によって半導体層のエッジ部分と配線パターンとが電気的に接続されて短絡し、その短絡部分にリーク電流が発生するという問題がある。
【0006】
本発明は前記問題を解決するためになされたものであって、その目的は、LEDチップの半導体層のエッジ部分と搭載基板の配線パターンとの間に、導電粒子の介在によるリーク電流が発生するのを防止可能なLEDランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、下記のように本発明の各局面に想到した。
【0008】
<第1の局面>
第1の局面は、同一面側にカソード側電極およびアノード側電極が形成されたLEDチップと、アノード側配線パターンおよびカソード側配線パターンが形成された搭載基板と、球状体である導電粒子を接着剤樹脂に分散混合した異方性導電接着剤とを備え、前記各電極と前記各配線パターンとを前記異方性導電接着剤によって直接接合させることにより、前記LEDチップを前記搭載基板に搭載したLEDランプであって、前記各電極の厚みが前記導電粒子の最大径よりも大きく形成されている。
【0009】
第1の局面によれば、LEDチップの各半導体層のエッジ部分と各配線パターンとの間に導電粒子が挟み込まれることがなく、導電粒子によってLEDチップのN型半導体層およびP型半導体層のエッジ部分と各配線パターンとが電気的に接続されて短絡するおそれがないため、各半導体層のエッジ部分と各配線パターンとの間にリーク電流が発生するのを確実に防止できる。
【0010】
<第2の局面>
第2の局面は、第1の局面において、前記各電極の硬さが前記導電粒子よりも柔らかい。
その結果、各電極と各配線パターンとの間で導電粒子が押圧されて扁平状に変形した際に、各電極に対して導電粒子が食い込むような状態で各電極と導電粒子とが結合するため、各電極と導電粒子との間の電気抵抗が小さくなって良好な導通が得られる。
【0011】
<第3の局面>
第3の局面は、第1または第2の局面において、前記各電極はPVD法を用いて形成されている。
PVD法を用いて形成され電極は、従来の方法(LEDチップの電極上にバンプを形成した上で、バンプと搭載基板の配線パターンとを異方性導電接着剤を用いて接合させる方法)で用いられるバンプとは明確に判別できる。
【0012】
<第4の局面>
第4の局面は、第1〜3の局面において、前記異方性導電接着剤は、前記導電粒子に加えて、高熱伝導性のセラミック粒子から成るフィラーが前記接着剤樹脂に分散混合してあるLEDランプである。
高熱伝導性のセラミック粒子から成るフィラーは、LEDチップが発生する熱を搭載基板へ効率的に伝達するため、LEDチップが過剰に高温になるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を具体化した一実施形態のLEDランプ10の要部構成を示す概略縦断面図。
【図2】実施形態の作用・効果を説明するためのLEDランプ100の概略縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示すように、一実施形態のLEDランプ10は、搭載基板11、カソード側配線パターン12、アノード側配線パターン13、LEDチップ20、成長基板21、N型半導体層22、P型半導体層23、カソード側電極24、アノード側電極25、保護膜26、異方性導電接着剤30、導電粒子(導電性球状体)31、フィラー32、接着剤樹脂(バインダー)33などから構成されている。
尚、図1においては、LEDランプ10の各部の構成を明確にするために実寸と異なるサイズで各部を図示してある。
【0015】
搭載基板11はセラミックの板材から成り、搭載基板11の表面上にはカソード側配線パターン12およびアノード側配線パターン13が形成されている。
各配線パターン12,13は、導電性の高い金属の多層膜(例えば、銅、ニッケル、金を下層からこの順番で積層した多層膜など)から成る。
ここで、例えば、搭載基板11の厚みは400μm、各配線パターン12,13の銅層の厚みは20μm、同ニッケル層の厚みは4μm、同金層の厚みは1μmに設定されている。
【0016】
LEDチップ20は、成長基板21、N型半導体層22、P型半導体層23、カソード側電極24、アノード側電極25、保護膜26などから構成されている。
成長基板21はサファイア(酸化アルミニウム)の板材から成り、成長基板21の表面上には、III族窒化物系半導体をエピタキシャル成長させることにより、N型半導体層22とP型半導体層23とが下層からこの順番で積層して形成されている。
【0017】
N型半導体層22の表面上にはカソード側電極24が形成され、P型半導体層23の表面上にはアノード側電極25が形成され、LEDチップ20の同一面側に各電極24,25が形成されている。
各電極24,25はスズと金の合金(AuSn)から成り、蒸着法を含むPVD(Physical Vapor Deposition)法を用いて形成されている。
【0018】
各半導体層22,23の外周端面と、各半導体層22,23において各電極24,25から露出した表面とは、保護膜26によって覆われている。
保護膜26は、酸化シリコンまたは窒化シリコンなどから成り、異方性導電接着剤30によって各半導体層22,23が電気的に接続されて短絡し、各半導体層22,23間にリーク電流が発生するのを防止する。
【0019】
異方性導電接着剤30は、球状体の導電粒子31と微粒子のフィラー32とを接着剤樹脂33に分散混合して形成されている。
異方性導電接着剤30を用いてLEDチップ20を搭載基板11にフリップチップボンディングして搭載・実装したLEDランプ10を製造するには、まず、搭載基板11の各配線パターン12,13上に異方性導電接着剤30のペーストを塗布するか又は異方性導電接着剤30のシート材を載置しておき、次に、異方性導電接着剤30を介在させてLEDチップ20を搭載基板11上に載置し、続いて、所定圧力でLEDチップ20を搭載基板11の方向に押圧する。
【0020】
すると、LEDチップ20の下面側の各電極24,25と各配線パターン12,13との間に最大圧力が加わるため、その間に存在する異方性導電接着剤30中の導電粒子31が押圧されて厚みが数分の一の扁平状に変形し、導電粒子31と各電極24,25および各配線パターン12,13との接触面積が増大し、各電極24,25と各配線パターン12,13とがそれぞれ導電粒子31を介して直接接合され、両者が電気的に接続されて良好な導通が確保される。
【0021】
このとき、各電極24,25間には十分な距離(例えば、68μm)が設定されているため、各電極24,25間に挟み込まれた導電粒子31同士が接触することはなく、導電粒子31を介して各電極24,25が電気的に接続されて短絡するおそれもないため、各電極24,25間の絶縁状態は維持される。
その後、接着剤樹脂33を硬化させることにより、導電粒子31およびフィラー32の位置を固定すると共に、接着剤樹脂33によってLEDチップ20を搭載基板11に取付固定する。
【0022】
[実施形態の作用・効果]
本実施形態のLEDランプ10によれば、以下の作用・効果を得ることができる。
【0023】
[1]カソード側電極24およびアノード側電極25の厚み(電極厚)t1,t2は、球状体である導電粒子31の直径φよりも大きく形成されている。
導電粒子31の直径φは通常1〜10μmであり、例えば、導電粒子31の直径φが5μmの場合には、各電極24,25の厚みt1,t2が5μmを超える大きさに設定しておく。
【0024】
このようにすれば、LEDチップ20の各半導体層22,23のエッジ部分Eと各配線パターン12,13との間に導電粒子31が挟み込まれることがなく、導電粒子31によって各半導体層22,23のエッジ部分Eと各配線パターン12,13とが電気的に接続されて短絡するおそれがないため、各半導体層22,23のエッジ部分Eと各配線パターン12,13との間にリーク電流が発生するのを確実に防止できる。
尚、導電粒子31が完全な球状でない場合には、各電極24,25の厚みt1,t2を導電粒子31の最大径よりも大きく形成すればよい。
【0025】
図2は、各電極24,25の厚みt1,t2が導電粒子31の直径φ以下に形成されているLEDランプ100の概略縦断面図である。
図2に示すように、各半導体層22,23のエッジ部分Eと各配線パターン12,13との間に導電粒子31が挟み込まれると、その導電粒子31によって各半導体層22,23のエッジ部分Eと各配線パターン12,13とが電気的に接続されて短絡し、その短絡部分にリーク電流が発生するおそれがある。
【0026】
[2]LEDチップ20のカソード側電極24およびアノード側電極25の硬さが導電粒子31よりも柔らかくなるように、各電極24,25および導電粒子31の材質が決められていることが好ましい。
各電極24,25の材質として、スズと金の合金(AuSn)以外には、例えば、その他の共晶合金などがあげられる。
その結果、各電極24,25と各配線パターン12,13との間で導電粒子31が押圧されて扁平状に変形した際に、各電極24,25に対して導電粒子31が食い込むような状態で各電極24,25と導電粒子31とが結合するため、各電極24,25と導電粒子31との間の電気抵抗が小さくなって良好な導通が得られる。
尚、各電極24,25の硬さは、導電粒子31よりも必ずしも柔らかくなくてもよい。
【0027】
例えば、導電粒子31には、各種金属(例えば、金、銀、ニッケル、ハンダなど)の球状粒子、合成樹脂から成る球状粒子の外周面全体に各種メッキ(例えば、ニッケルメッキ、金メッキなど)を施した金属メッキ被覆樹脂粒子などを用いればよい。
また、接着剤樹脂33には、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などを用いればよく、この中では強度や耐熱性などの観点からエポキシ樹脂が好適である。
尚、接着剤樹脂33中への導電粒子31の分散混合量は1〜20重量%程度が好適である。
【0028】
そして、異方性導電接着剤30は、ペースト状であってもよいし、シート状であってもよい。
ペースト状の異方性導電接着剤30には、搭載基板11への塗布量に誤差が生じ易いため最適量を塗布するのが難しいという欠点がある。
シート状の異方性導電接着剤30には、異方性導電接着剤30と搭載基板11との間に挟み込まれた空気が気泡を発生し易いという欠点がある。また、各電極24,25の平面寸法形状に合わせた小さなシート状の異方性導電接着剤30を搭載基板11上の所定箇所に精度良く配置するのは困難なため、通常は搭載基板11の略全面を覆う大きさのものが用いられるが、LEDチップ20から出射された光がシート状の異方性導電接着剤30に吸収されて光取り出し効率が悪くなるという欠点もある。
【0029】
[3]各電極24,25はPVD法を用いて形成されているため、従来の方法(LEDチップの電極上にバンプを形成した上で、バンプと搭載基板の配線パターンとを異方性導電接着剤を用いて接合させる方法)で用いられるバンプと各電極24,25とは明確に判別できる。
【0030】
[4]異方性導電接着剤30に含まれるフィラー32には、高熱伝導性のセラミック粒子(例えば、窒化アルミニウム、窒化シリコンなど)を用いることが好ましい。
高熱伝導性のセラミック粒子から成るフィラー32は、LEDチップ20が発生する熱を搭載基板11へ効率的に伝達するため、LEDチップ20が過剰に高温になるのを防止できる。
【0031】
本発明は、前記各局面および前記各実施形態の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様も本発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
【符号の説明】
【0032】
10…LEDランプ
11…搭載基板
12…カソード側配線パターン
13…アノード側配線パターン
20…LED
21…成長基板
22…N型半導体層
23…P型半導体層
24…カソード側電極
25…アノード側電極
26…保護膜
30…異方性導電接着剤
31…導電粒子
32…フィラー
33…接着剤樹脂
t1…カソード側電極の厚み
t2…アノード側電極の厚み
φ…導電粒子31の直径(最大径)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一面側にカソード側電極およびアノード側電極が形成されたLEDチップと、
アノード側配線パターンおよびカソード側配線パターンが形成された搭載基板と、
球状体である導電粒子を接着剤樹脂に分散混合した異方性導電接着剤とを備え、
前記各電極と前記各配線パターンとを前記異方性導電接着剤によって直接接合させることにより、前記LEDチップを前記搭載基板に搭載したLEDランプであって、
前記各電極の厚みが前記導電粒子の最大径よりも大きく形成されているLEDランプ。
【請求項2】
請求項1に記載のLEDランプにおいて、
前記各電極の硬さが前記導電粒子よりも柔らかいLEDランプ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のLEDランプにおいて、
前記各電極はPVD(Physical Vapor Deposition)法を用いて形成されているLEDランプ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のLEDランプにおいて、
前記異方性導電接着剤は、前記導電粒子に加えて、高熱伝導性のセラミック粒子から成るフィラーが前記接着剤樹脂に分散混合してあるLEDランプ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−178400(P2012−178400A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39617(P2011−39617)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】