LED素子、LED素子アレイおよびその駆動方法
【課題】LEDのサイズを変えることなく発光サイズを小さくすることができ、また発光サイズを任意に切り替えることが可能となるLED素子を提供する。
【解決手段】LED素子であって、
基板上に、キャリヤ制御層、下部電流閉じ込め層、活性層、上部電流閉じ込め層がこの順で積層された積層構造を備え、
p型電極が前記上部電流閉じ込め層上に設けられ、
前記基板の面内方向において、2つのn型電極が前記p型電極を挟むようにして前記キャリヤ制御層に配設され、
前記p型電極と前記2つのn型電極のいずれか一方のn型電極間に通電することにより、LED発光面の通電したn型電極側を発光させる一方、
前記p型電極と前記2つのn型電極間に同時に通電することにより、LED発光面の全面を発光させるように構成されている。
【解決手段】LED素子であって、
基板上に、キャリヤ制御層、下部電流閉じ込め層、活性層、上部電流閉じ込め層がこの順で積層された積層構造を備え、
p型電極が前記上部電流閉じ込め層上に設けられ、
前記基板の面内方向において、2つのn型電極が前記p型電極を挟むようにして前記キャリヤ制御層に配設され、
前記p型電極と前記2つのn型電極のいずれか一方のn型電極間に通電することにより、LED発光面の通電したn型電極側を発光させる一方、
前記p型電極と前記2つのn型電極間に同時に通電することにより、LED発光面の全面を発光させるように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED素子、LED素子アレイおよびその駆動方法に関し、特に、LED発光部の発光強度を部分的に制御可能に構成し、EP露光用光源として使用するLEDスキャナー、EP露光装置に適したLED素子、LED素子アレイに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今では結像スポットピッチ600dpi、1200dpiのLEDアレイを光源とするプリンタが商品化されている。
1200dpiのLED素子アレイは、半導体上で発光点が一列に配列しており、そのピッチは21.2μm、発光点サイズ10μm程度で、微小スポットによる高精彩プリントを実現している。
このようなLED素子アレイとして、特許文献1(特開2005−064104)におけるLEDアレイを図10に示す。
図10において、LEDは1200dpiピッチで配置されており、4個のLEDが1ブロックを構成している。
そして、各発光部の上面の一部に形成された第1の電極7cは、それぞれ引き出し配線によって4本の配線4と個別に接続され、第2の電極3は4個のLEDで共有されている。また、第1の電極が接続される4本の配線は、4つのブロックの相当するLEDの第1電極と接続しており、各ブロックは、第2の電極3に接続しているボンディングパッドと4本の配線のどれかに接続するボンディングパッド6cを有している。
スイッチ的に機能させる4本の配線のどれかを選択することにより、任意のLEDを発光させることができる。
このような構成により、ボンディングパッド数が削減でき、高密度のLEDアレイの駆動が可能とされている。
【0003】
一方、更なる高密度を実現するLED素子アレイとして、発光点ピッチを小さくすることができ、かつ、発光サイズを小さくすることができる構造のものが、特許文献2(特開2007−207977)に提案されており、そのLED素子アレイを図13に示す。
図13において、第1面にp型電極、活性層を挟んで反対側の第2面にn型電極を配置し、両電極は、投影が重ならないように形成されている。
第1面のp型電極と第2面の最近接の2つのn型電極の一方の間に通電することにより、両電極の中間部にあたる活性層を発光させて、発光点ピッチを小さく、かつ、発光サイズを小さくするように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−064104号公報
【特許文献2】特開2007−207977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例のLED素子、LED素子アレイにおいては、つぎのような課題を有している。
例えば、LED素子アレイを光源に用いるLEDスキャナーでは、一個のLED素子が感光ドラム上で一個の結像スポットを形成するため、主走査方向の画素密度はLEDの密度によって決まることになる。
画素密度を更に高密度にするためには、LED素子を高密度にすることで実現できるが、LED素子の電極幅の縮小や発光面積の減少による非発光割合の増大、LED素子数の増大、等に伴う駆動回路の増加によるコストアップが生じる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、LEDのサイズを変えることなく発光サイズを小さくすることができ、また発光サイズを任意に切り替えることが可能となるLED素子、LED素子アレイおよびその駆動方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のLED素子は、基板上に、キャリヤ制御層、下部電流閉じ込め層、活性層、上部電流閉じ込め層がこの順で積層された積層構造を備え、
p型電極が前記上部電流閉じ込め層上に設けられ、
前記基板の面内方向において、2つのn型電極が前記p型電極を挟むようにして前記キャリヤ制御層に配設され、
前記p型電極と前記2つのn型電極のいずれか一方のn型電極間に通電することにより、LED発光面の通電したn型電極側を発光させる一方、
前記p型電極と前記2つのn型電極間に同時に通電することにより、LED発光面の全面を発光させるように構成されていることを特徴とする。
また、本発明のLED素子アレイは、上記したLED素子を複数備え、該複数のLED素子をアレイ状に配列して構成されているLED素子アレイであって、
前記複数のLED素子におけるn型電極が、アレイ状に配列された隣接するLED素子間で共有されていることを特徴とする。
また、本発明のLED素子アレイは、上記したLED素子を複数備え、該複数のLED素子をアレイ状に配列して構成されているLED素子アレイであって、
前記2つのn型電極を接続する前記異なる配線として、第1の配線と第2の配線とを備え、
前記アレイ状に配列された隣接するLED素子間で、前記2つのn型電極の一方が前記第1の配線と、前記n型電極の他方が前記第2の配線と、交互に接続されていることを特徴とする。
また、本発明のLED素子アレイは、上記したLED素子を複数備え、該複数のLED素子をアレイ状に配列して構成されているLED素子アレイであって、
前記アレイ状に配列されたLED素子におけるそれぞれのn型電極は、スイッチング素子を介して同一配線に接続されていることを特徴とする。
また、本発明のLED素子アレイの駆動方法は、
前記上部電流閉じ込め層上に設けられたp型電極と、前記キャリヤ制御層に配設された2つのn型電極のいずれか一方のn型電極間に通電することにより、通電したn型電極側の発光面を発光させることを特徴とする。
また、本発明のLED素子アレイの駆動方法は、
前記上部電流閉じ込め層上に設けられたp型電極と、前記キャリヤ制御層に配設された2つのn型電極間に同時に通電することにより、LED発光面の全面を発光させることを特徴とする。
また、本発明のEP露光用としたLED素子アレイは、上記のLED素子アレイにおいて、
LED素子の2つのn型電極に接続する2本のn型配線を共有する複数のLED素子がセルを構成し、
前記複数のLED素子のp型電極のそれぞれに接続する複数のp型配線を共有する複数セルがブロックを構成し、セル間は素子分離されている構成とし、
隣接するセル間では、LED素子の発光部は副走査方向にずれており、
セル端に位置するn電極の副走査方向への投影が重なるように配置してEP露光用としたことを特徴とする。
また、本発明のEP露光用としたLED素子アレイの駆動方法は、上記のEP露光用としたLED素子アレイにおいて、各ブロックは、独立・並列に駆動し、各セル内はシリアルに駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、LEDのサイズを変えることなく発光サイズを小さくすることができ、また発光サイズを任意に切り替えることが可能となるLED素子、LED素子アレイおよびその駆動方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態1及び実施例1におけるLED素子の構成例について説明する図である。
【図2】本発明の実施形態2におけるLED素子が複数近接配置されたLED素子アレイの構成例について説明する図である。
【図3】本発明の実施形態2における感光ドラム上に形成される結像スポットを模式的に重ね合わせて表現したLEDアレイの平面模式図。
【図4】本発明の実施形態2におけるLEDの発光面を部分発光させて感光ドラム上に形成される結像パターンを楕円で表した模式図である。
【図5】本発明の実施例2における共通電極を交互に第1配線と第2配線に接続する構成例について説明する図である。
【図6】本発明の実施例3における全ての共通電極をスイッチング素子を介して一本の配線に接続する構成例について説明する図である。
【図7】本発明の実施形態1におけるLED素子の基板における発光面と反対側の面に第2のn型電極を形成した別の実施形態を示す図である。
【図8】本発明の実施例4を説明する概念図である。
【図9】本発明の実施例4を説明する概念図である。
【図10】従来技術である特許文献1の構成を説明する図である。
【図11】従来技術である特許文献1などで使用される代表的なLED構造を示す図である。
【図12】先行技術の代表的なLED構造を比較例として示した図である。
【図13】従来技術である特許文献2におけるLED素子アレイの構成を説明する図である。
【図14】従来技術である特許文献2における発光パターンを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のLED素子は、上部電流閉じ込め層上に設けられたp型電極を基板の面内方向に挟むようにして、キャリヤ制御層上に2つのn型電極が設けられて構成されている。
本発明は、キャリヤ制御層にn型電極を設けた構成により、n型キャリヤの拡散を抑制する。キャリヤ制御層内において、2つのn電極のどちらかに通電した際に、通電したn側電極側にキャリヤが多い分布状態を形成することで、p電極とn電極の間で部分的に強い発光が得られるように構成されている。
これにより、LED発光面の発光強度を部分的に制御することを可能としたものである。本発明のLED素子は、以上のような構成によりLEDのサイズを変えることなく、発光サイズをLED発光面全面とその半分程度の発光サイズに、任意に選択することが可能となる。
また、本発明のLED素子を用いたLEDスキャナーでは、高解像度が必要な部分のみを小さな結像スポットに切り替えることで、部分的な高精細化が可能となる。
更に、隣接するLEDの間に対応する感光ドラム上の位置に結像スポットを形成することや、感光ドラム上で重ね露光によって結像スポットの光強度重心の制御が可能となる。
従来のLEDスキャナーでは、LED発光サイズ・位置と感光ドラム上の主走査方向における結像スポットサイズ・位置は1対1で対応しており、結像位置の補正や結像スポットサイズの変更は不可能であった。
更に高解像度を実現するためには、小さな発光面を有するLEDを高密度に配列したLEDスキャナーが必要であり、スキャン時間の増加やLED数の増大に伴う駆動ドライバーの増加が必要であった。
これに対して、本発明のLED素子を用いたLEDスキャナーでは、LEDの全面発光と半面発光を任意に切り替えることが可能になる。
これにより、高解像度が必要な部分のみを小さな発光サイズにすることで、小さな結像スポットによる高精細化が可能になり、プリント速度低下を最小限に抑えて高精細の画像が得られる。
また、LED全面発光のピッチに対して半ピッチ位置ずれした発光が実現できるので、半ピッチの結像位置の補正を行うことが可能になる。
更に、駆動ドライバーの増加を必要としない上に、全面発光モードでは、従来のLEDより外部取り出し効率を増大させることができる。
また、本発明のLED素子を光源として用いたEP露光用のLEDスキャナーでは、感光ドラム上の結像スポットをLEDの密度より高密度に実現できる。
これにより、発光面積の小さいLEDを高密度にする構成した場合に生じるLEDの光出力低下や、LED数増大に伴う駆動回路の増加によるコストの大幅な増大なしに高密度結像スポットの画質が得られる。
また、必要な位置のみに補正スポットを形成することが可能になり、プリント速度を落とすことなく、高精細の画像を得ることができる。
以下に、本発明におけるLED素子、LED素子アレイおよびその駆動方法の実施形態について説明する。
【0011】
(実施形態1)
本発明の実施形態1として、本発明のLED素子の構成例について図1を用いて説明する。
本実施形態のLED素子は、基板上に、キャリヤ制御層、下部電流閉じ込め層、活性層、上部電流閉じ込め層が積層された積層構造を備える。
そして、上記積層構造に構成されたp型電極とn型電極間に通電することにより上記活性層を発光させるように構成されている。
図1(a)に示すように、p型電極10が上部電流閉じ込め層上に設けられると共に、基板の面内方向において、2つのn型電極11、12それぞれがp型電極を挟むようにしてキャリヤ制御層に配設されている。
具体的には、本実施形態のLED素子は、n型バッファー層を備えた基板106上に、キャリヤ制御層1042、n側クラッド層(下部電流閉じ込め層)1041が積層されている。
更に、n側クラッド層1041上に、発光層(活性層)103、p側クラッド層(上部電流閉じ込め層)102、電流拡散層10102、10101、p型コンタクト層101、p型電極10が、この順に積層されている。
また、ここでは積層構造の両外側部において、p型コンタクト層101からn側クラッド層(下部電流閉じ込め層)1041までの発光層(活性層)103を含む領域が除去されており、2つのn型電極11、12がキャリヤ制御層1042上に形成されている。
また、これらの2つのn型電極は、異なる配線に接続されている。
2つのn型電極11、12がp型電極を挟むようにして積層構造の両外側部のキャリヤ制御層1042上に設けるようにした構成によって、n型キャリヤの拡散を抑制することができる。これにより、2つのn電極のどちらかに通電した際に、キャリヤ制御層内において、通電したn側電極側にキャリヤが多い分布状態を形成し、p電極とn電極の間で部分的に強い発光が可能となる。
以上の本実施形態のLED素子の構成によれば、p型電極10とn型電極11間に通電すれば光1011を発生させることができ、p型電極10とn型電極12間に通電すれば、光1012を発光させることができる。
2つのn型電極11、12を同電位として、p型電極10との間で同時に通電すると、本来のLED素子における発光面の全面から、光1011と光1012が発光する。
したがって、一つのLEDで、本来のLED発光面に対応した発光サイズとその半分程度の小さな発光サイズを、2つのn型電極への通電を選択することで選択することが可能になる。
【0012】
これに対して、上記従来例の特許文献1等で使用されるLED構造(図11)では、一つのn型電極を、n型クラッド層の下に配置される低抵抗層、または、GaAs基板に形成することで、n側キャリヤの拡散を十分に行い、片側のn型電極でLEDの発光層全面を発光させている。
なお、図11に示す従来のLEDでは、発光部中央に配置されるp型電極の真下にあたる活性層の光強度1031が最大となるが、p型電極で遮蔽されるため、外部に放射される光は、p電極の外側に該当する強度が減少した光となるため、光の取り出し効率が低下してしまう。
一方、本実施形態のLED素子では、2つのn型電極を同電位にして、p型電極との間で通電を行ってLED発光層全面を発光させる駆動では、p型電極の真下にあたる活性層のキャリヤ密度は低く、発光強度も低い。一方、p電極の外側のキャリヤ密度は高いので、発光は強く、外部への光の取り出し効率を増大させることができる。
ここで、キャリヤ制御層は、n型クラッド層へのキャリヤ注入を制御し、p電極とn電極の間に位置する活性層での発光強度を増大する機能を有するため、n型クラッド層の組成、キャリヤ濃度によって最適な組成、キャリヤ濃度が選択される。例えば、キャリア制御層としては、従来のLEDのn電極が形成される層よりもキャリヤ拡散が遅い特性を有する部材が好ましい。なお、キャリア制御層は、Alを含む3−5族化合物半導体で構成されていればよい。
【0013】
また、上記従来例の特許文献2では、図14に示すように、n型電極の真上にある活性層からの発光10121が生じてしまうため、発光サイズが大きくなってしまう。しかし、本実施形態のLED素子ではn型電極が活性層を除去した領域に形成されるので、このn型電極近傍での発光は生じない。これによって、発光サイズをLED発光面の半分程度まで小さくすることができる。
なお、図1(a)に示す本実施形態の構成では、p型コンタクト層101とp側クラッド層102の間に、電流拡散層10101、10102を配置して、p型キャリヤの面内方向の拡散を増大させることで、通電した電極側への発光の偏りを大きくしている。
しかし、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、電流拡散層10101,10102がないLEDであっても、通電した電極側への発光の偏りを生じさせることができる。
図7は、本発明の実施形態の変形例であり、図1(a)の2つのn電極(第1のn電極)の他にLED素子の発光面と反対側の面に第2のn型電極107を有しており、この第2のn型電極とp型電極間に通電することによって、LEDの発光層全面を発光させることが可能となる。
【0014】
(実施形態2)
実施形態2として、本発明のLED素子を複数備え、該複数のLED素子をアレイ状に配列して構成されているLED素子アレイの構成例について、図2を用いて説明する。
図2(a)に示すように、LED100、200、300が近接して配置されており、各LED間に配置されるn型電極12、23は、両側のLED間で共有されている。
この構成において、LED100のp型電極10とLED100、200間に配置されたn型電極12間で通電を行うと、LED発光面の通電したn型電極12側から光1012が放射される。
一方、図2(b)に示すように、LED100のp型電極10と2つのn型電極11、12間に通電するとLED発光面のそれぞれのn型電極11、12側から光1011、1012が放射されるので、本来のLED発光面全面が発光する。図2(a)、(b)で放射された光は、レンズ光学系により感光ドラム上に結像スポットを形成する。
【0015】
図3(a)は、感光ドラム上に形成される結像スポットを模式的に重ね合わせて表現したLEDアレイの平面模式図である。
結像スポット5110は、LED100によって感光ドラム上に形成される結像スポットを模式的に円で表している。
図4において、LED100のp型電極10とLED100、200間に配置されたn型電極12間の通電による光1012(図2(a))が、感光ドラム上に結像スポット6120を形成する。
LED100のp型電極10とn型電極11間に通電すれば、感光ドラム上に結像スポット6110が得られる。また、LED100のp型電極10と2つのn型電極11、12間に通電すると放射光6110、6120が得られ、重ね合わされた結果、感光ドラム上に図3(a)の結像スポット5110が得られる。
すなわち、n型電極を選択して通電することにより、感光ドラム上にLED本来の発光面に対応した結像スポットも得られるし、半分の結像スポットも形成することができる。
これによって、高精細が必要な領域にのみ小さな結像スポットで潜像形成ができるので、小結像スポットによるプリント速度の低下または、スキャン速度の高速化を抑えることができる。
【0016】
また、図3(b)では、LED10のp型電極10とn型電極12間、および、LED200のp型電極20とn型電極12間に通電することにより、形成される結像スポット5115を表示している。
LED100、200の全発光面で形成される結像スポット5110、5120(図3(a))の中間に結像スポット5115(図3(b))が形成される。このため、LEDピッチの半ピッチずらした結像スポットが得られ、LED密度の2倍の高密度結像スポットも得られる。
これらの結像スポットは、通電のタイムミングをずらした結像スポットを重ね合わせることでも可能である。
具体的な発光シーケンスとしては、
まず、n型電極11、12、23を同電位として、LED100のp型電極10と、LED200のp型電極20に通電して、LED100、LED200を発光させて結像スポット5110、5120を形成する(図3(a))。
次に、n電極11、23をオフにして、LED100とLED200で共有するn型電極12に通電することにより、LED100とLED200の結像スポット5110、5120に重ねて、半ピッチずれた結像スポット5115を感光ドラム上に形成する(図3(b))。
なお、感光ドラム上で、図3(a)の結像スポット5110を形成した後に、通電のタイミングをずらして図4の半分の結像スポット6110または6120を重複して形成することによって、結像スポット内の光量重心を制御することができる。
【実施例】
【0017】
以下に、本発明の実施例について説明する。
[実施例1]
実施例1として、本発明を適用したLED素子の構成例について、図1を用いて説明する。
本実施例のLED素子は、発光面の中央部のp型電極10は、Ti/Pt/Auを積層して形成される。
また、積層構造の両外側部において、p型コンタクト層101からn側クラッド層1041まで発光層103を含む領域が除去される。キャリヤ制御層1042上の2つのn型電極11、12は、AuGe/Ni/Auを積層して形成される。
p型コンタクト層101は、Al0.15Ga0.85As:〜1018/cm3で構成され、電流拡散層10101、10102は、Al0.35Ga0.65As:〜1018/cm3、Al0.15Ga0.85As:〜1018/cm3で構成される。以上の各層は、LEDの発光波長に対する吸収を考慮して決定される。
p側クラッド層102は、Al0.35Ga0.65As:〜1017/cm3で構成され、発光層103はAl0.12Ga0.88As:アンドープで構成される。n側クラッド層1041は、Al0.35Ga0.65As:〜1017/cm3、キャリヤ制御層1042は、Al0.35Ga0.65As:〜1018/cm3で構成され、n型バッファー層と基板106はGaAs:〜1018/cm3で構成される。
【0018】
発光部の両外側の2つのn型電極11、12は、n側クラッド層1041を除去した領域のキャリヤ制御層1042に形成される。
このn型電極をキャリヤ制御層1042のAl0.35Ga0.65As:〜1018/cm3で形成することで、n側クラッド層1041へのキャリヤ注入が制御され、n側クラッド層内にキャリヤ濃度分布が生じ、発光層103へのキャリヤ注入に分布が生じる。上記LEDにおいて、p型電極10と一方のn型電極12間に通電すると、発光層103において通電したn型電極側でキャリヤ濃度が高くなり、強く発光する。
その状態の活性層103におけるキャリヤ再結合割合の分布を図1(b)に示す。LED外に放射される光は、キャリヤ再結合割合の高い電極10の外側部分から放射される。
なお、図1(a)の2つのn型電極11、12を同電位にして、p型電極10との間で通電すると、LED発光面の全面から光1011、1012が発光する。つまり、一つのLEDで、LED発光面に対応した発光サイズとその半分程度の小さな発光サイズが得られるので、2つのn型電極への通電を選択することで、発光サイズを選択することができる。
本実施例では、n側クラッド層1041とキャリヤ制御層1042は同じAl組成のAlGaAsで構成したが、例えば、n側クラッド層1041がAl0.7Ga0.3Asである場合は、キャリヤ制御層1042をAl0.5Ga0.5Asで構成することで、n側クラッド層1041へのキャリヤ注入を制御して、n側クラッド層内のキャリヤ分布を最適化する。
キャリヤ制御層は、従来のLEDにおいてn電極が形成される層よりもキャリヤ拡散が遅い特性を有する。
また、n型バッファー層と基板106はn型GaAs:〜1018/cm3 で構成しているが、n側クラッド層内のキャリヤ分布を最適化できれば、高抵抗のGaAsで構成することも可能である。
更に、n型電極とキャリヤ制御層のコンタクト抵抗を低減するために、キャリヤ制御層を部分的に高濃度にドーピングすることや、コンタクト抵抗が低抵抗となる層を挿入することも可能である。
【0019】
一方、従来のLED構造を図10(a)に示すが、n型GaAs層105(または、移動度の高い電流拡散層)にn型電極が形成されており、n型GaAs層内ではキャリヤ拡散が速いので、片側に形成された一つのn型電極のみでn型GaAs層105内でキャリヤが均一の分布となる。したがって、図10(b)に示されるように、pキャリヤの濃度が最も高いp型電極の下に位置する活性層部分で、再結合が最大となり、発光強度も最大となる。ただし、p型電極で遮蔽されるため、p型電極の外側に位置する強度の低下した光がp型電極の両外側から放射される。
【0020】
[実施例2]
実施例2として、本発明のLED素子をEP露光光源として用いたLED素子アレイの構成例について、図5を用いて説明する。同じ機能の部分には他の図と同じ符号を付与している。
本実施例のLED素子アレイは、8個のLEDアレイ100、200、……、800の各LEDは、発光部に設けられたp型電極10、20、……、80、を有している。
また、各LED間には、隣接するLED素子間で共有するn型電極11、12、23、……、89を有し、共有電極は、交互に異なる第1の配線1200、第2の配線1300に接続されている。すなわち、交互に、一方のn型電極が第1の配線に接続されており、他方のn型電極が第2の配線に接続されている。
上記LED素子アレイは、1200dpi相当の密度で配置されており、各LEDはピッチ約21.2μmで一列に配列している。
各LEDのn型電極11、12、23、……、89は電極幅およそ2μmで形成されており、n型電極12、34、56、78は第2配線1300に接続され、n型電極23、45、67、89は、第1配線1200に接続されている。
n型電極を交互に異なる第1配線、第2配線に接続することにより、LED発光部の通電したn電極側の発光を可能にするとともに、同時に隣接していないLEDの通電・発光を可能にするものである。
LED発光部の主走査方向のサイズは、結像光学系に依存するが、LEDスキャナーで一般的な等倍結像系を使用しており、本実施例のLED発光部は約12μmで、その中心に幅2μmの個別電極が形成されている。第1配線、第2配線、個別電極は駆動回路に接続される。
【0021】
図4において、LED100のp型電極10とLED100、200間に配置されたn型電極12間の通電によって、感光ドラム上に結像スポット6120を形成する。
LED100のp型電極10とn型電極11間に通電すれば、感光ドラム上に結像スポット6110が得られる。
また、LED100のp型電極10と2つのn型電極11、12間に通電すると放射光6110、6120が同時に得られ、感光ドラム上に重ねあわされた結像スポット5110(図3(a))が得られる。
すなわち、n型電極を選択して通電することにより、感光ドラム上にLED本来の発光面に対応した結像スポットに加えて、半分の結像スポットを形成することができる。
【0022】
これによって、高精細が必要な領域にのみ小さな結像スポットで潜像形成ができるので、
小結像スポットによるプリント速度の低下や、スキャン速度の高速化を抑えることができる。
また、図3(b)では、LED100のp型電極10とn型電極12間、および、LED200のp型電極20とn型電極12間に通電することにより、形成される結像スポット5115を表示している。
これにより、LED100、200の全発光面で形成される結像スポット5110、5120(図3(a))の中間に結像スポットが形成される。つまり、LEDピッチの半ピッチずらした結像スポットが得られることから、LED密度の2倍の密度の結像スポットも得られる。
【0023】
[実施例3]
実施例3として、実施例1と異なる形態のLED素子アレイの構成例について、図6を用いて説明する。同じ機能の部分には他の図と同じ符号を付与している。実施例2との違いは、全てのn型電極11、12、23、34、45、56、67、78、89がスイッチング素子9000を介して、1本の配線(同一配線)に接続されている点である。
スイッチング素子により、最近接の共有電極への同時通電を回避することで、LED発光部の所望の側を発光させるものである。
本実施例の構成は、スイッチング素子をシリコンドライバー回路に組み込み、そのシリコンドライバーの表面にLEDアレイを貼り付ける構成であれば、LEDアレイとスイッチング素子の接続を半導体プロセスで行うことが可能である。また、製造コストを抑えることができる。
他の構成や駆動方法は実施例1と同じであり、重複する点の説明は省略する。
【0024】
[実施例4]
図8は、第4の実施例であるEP露光用のLEDスキャナーを説明するためのLEDアレイの部分図である。図8において、100、200、300、……、800は近接して配置されたLED発光部であり、各LED発光部の中央にはp電極10、20、……、80が形成されており、LED発光部を挟んで両側にn型電極11、12、23……、88が形成されており、隣接するLED発光部間に配置しているn電極は、両側のLED発光部で共有している。
点線で囲まれた連続する8個のLEDは、n側電極配線1200、又は、1300を共有しており、一つのセルを構成している。
一方、p側電極配線2100、2200、……2800は、連続する8個のセルで共有しており、この8個の連続セルは一つのブロックを構成する。
なお、セル間は、LED素子構造の電流制御層の基板側に配置された高抵抗層に達する溝によって素子間分離されている。
【0025】
図8に示すように、セル端に位置するLED発光部100、800は、セル端に配置するn電極を占有できるように、隣接するセル間でLEDアレイが副走査方向にずらして配置される。副走査方向に1スキャン分ずらして配置し、発光タイミングを1スキャン分調整することで、感光ドラム上には1ラインの露光パターが形成される。
駆動回路に接続するためのボンディングパッドは、各セル内に、2本のn電極配線1200、1300に接続する2つのパッドとブロック内で共有するp側電極配線8本2100、2200、……、2800の1本に重複せずに接続されるパッドの3個設けられる。
これにより、各ブロックを独立駆動、各セル内ではシリアル駆動を行うことにより、並列駆動による高速スキャンが可能になる。
EP露光用LEDスキャナーに使用されるLED素子アレイは、複数のブロックから成るLEDアレイチップを図9に示すように、千鳥に配列して構成する。各チップの端部に位置するn側電極が副走査方向の投影が重なるように配置される。また、各チップの発光部が近接するようにチップの向きが決められる。
【符号の説明】
【0026】
10:p型電極
11、12:n型電極
101:p側コンタクト層
102:P側クラッド層(上部電流閉じ込め層)
103:発光層(活性層)
106:基板
10101、10102:電流拡散層
1041:n側クラッド層(下部電流閉じ込め層)
1042:キャリヤ制御層
2100〜2800:p型電極共通配線
7010〜7030:ボンディングパッド
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED素子、LED素子アレイおよびその駆動方法に関し、特に、LED発光部の発光強度を部分的に制御可能に構成し、EP露光用光源として使用するLEDスキャナー、EP露光装置に適したLED素子、LED素子アレイに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今では結像スポットピッチ600dpi、1200dpiのLEDアレイを光源とするプリンタが商品化されている。
1200dpiのLED素子アレイは、半導体上で発光点が一列に配列しており、そのピッチは21.2μm、発光点サイズ10μm程度で、微小スポットによる高精彩プリントを実現している。
このようなLED素子アレイとして、特許文献1(特開2005−064104)におけるLEDアレイを図10に示す。
図10において、LEDは1200dpiピッチで配置されており、4個のLEDが1ブロックを構成している。
そして、各発光部の上面の一部に形成された第1の電極7cは、それぞれ引き出し配線によって4本の配線4と個別に接続され、第2の電極3は4個のLEDで共有されている。また、第1の電極が接続される4本の配線は、4つのブロックの相当するLEDの第1電極と接続しており、各ブロックは、第2の電極3に接続しているボンディングパッドと4本の配線のどれかに接続するボンディングパッド6cを有している。
スイッチ的に機能させる4本の配線のどれかを選択することにより、任意のLEDを発光させることができる。
このような構成により、ボンディングパッド数が削減でき、高密度のLEDアレイの駆動が可能とされている。
【0003】
一方、更なる高密度を実現するLED素子アレイとして、発光点ピッチを小さくすることができ、かつ、発光サイズを小さくすることができる構造のものが、特許文献2(特開2007−207977)に提案されており、そのLED素子アレイを図13に示す。
図13において、第1面にp型電極、活性層を挟んで反対側の第2面にn型電極を配置し、両電極は、投影が重ならないように形成されている。
第1面のp型電極と第2面の最近接の2つのn型電極の一方の間に通電することにより、両電極の中間部にあたる活性層を発光させて、発光点ピッチを小さく、かつ、発光サイズを小さくするように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−064104号公報
【特許文献2】特開2007−207977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例のLED素子、LED素子アレイにおいては、つぎのような課題を有している。
例えば、LED素子アレイを光源に用いるLEDスキャナーでは、一個のLED素子が感光ドラム上で一個の結像スポットを形成するため、主走査方向の画素密度はLEDの密度によって決まることになる。
画素密度を更に高密度にするためには、LED素子を高密度にすることで実現できるが、LED素子の電極幅の縮小や発光面積の減少による非発光割合の増大、LED素子数の増大、等に伴う駆動回路の増加によるコストアップが生じる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、LEDのサイズを変えることなく発光サイズを小さくすることができ、また発光サイズを任意に切り替えることが可能となるLED素子、LED素子アレイおよびその駆動方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のLED素子は、基板上に、キャリヤ制御層、下部電流閉じ込め層、活性層、上部電流閉じ込め層がこの順で積層された積層構造を備え、
p型電極が前記上部電流閉じ込め層上に設けられ、
前記基板の面内方向において、2つのn型電極が前記p型電極を挟むようにして前記キャリヤ制御層に配設され、
前記p型電極と前記2つのn型電極のいずれか一方のn型電極間に通電することにより、LED発光面の通電したn型電極側を発光させる一方、
前記p型電極と前記2つのn型電極間に同時に通電することにより、LED発光面の全面を発光させるように構成されていることを特徴とする。
また、本発明のLED素子アレイは、上記したLED素子を複数備え、該複数のLED素子をアレイ状に配列して構成されているLED素子アレイであって、
前記複数のLED素子におけるn型電極が、アレイ状に配列された隣接するLED素子間で共有されていることを特徴とする。
また、本発明のLED素子アレイは、上記したLED素子を複数備え、該複数のLED素子をアレイ状に配列して構成されているLED素子アレイであって、
前記2つのn型電極を接続する前記異なる配線として、第1の配線と第2の配線とを備え、
前記アレイ状に配列された隣接するLED素子間で、前記2つのn型電極の一方が前記第1の配線と、前記n型電極の他方が前記第2の配線と、交互に接続されていることを特徴とする。
また、本発明のLED素子アレイは、上記したLED素子を複数備え、該複数のLED素子をアレイ状に配列して構成されているLED素子アレイであって、
前記アレイ状に配列されたLED素子におけるそれぞれのn型電極は、スイッチング素子を介して同一配線に接続されていることを特徴とする。
また、本発明のLED素子アレイの駆動方法は、
前記上部電流閉じ込め層上に設けられたp型電極と、前記キャリヤ制御層に配設された2つのn型電極のいずれか一方のn型電極間に通電することにより、通電したn型電極側の発光面を発光させることを特徴とする。
また、本発明のLED素子アレイの駆動方法は、
前記上部電流閉じ込め層上に設けられたp型電極と、前記キャリヤ制御層に配設された2つのn型電極間に同時に通電することにより、LED発光面の全面を発光させることを特徴とする。
また、本発明のEP露光用としたLED素子アレイは、上記のLED素子アレイにおいて、
LED素子の2つのn型電極に接続する2本のn型配線を共有する複数のLED素子がセルを構成し、
前記複数のLED素子のp型電極のそれぞれに接続する複数のp型配線を共有する複数セルがブロックを構成し、セル間は素子分離されている構成とし、
隣接するセル間では、LED素子の発光部は副走査方向にずれており、
セル端に位置するn電極の副走査方向への投影が重なるように配置してEP露光用としたことを特徴とする。
また、本発明のEP露光用としたLED素子アレイの駆動方法は、上記のEP露光用としたLED素子アレイにおいて、各ブロックは、独立・並列に駆動し、各セル内はシリアルに駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、LEDのサイズを変えることなく発光サイズを小さくすることができ、また発光サイズを任意に切り替えることが可能となるLED素子、LED素子アレイおよびその駆動方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態1及び実施例1におけるLED素子の構成例について説明する図である。
【図2】本発明の実施形態2におけるLED素子が複数近接配置されたLED素子アレイの構成例について説明する図である。
【図3】本発明の実施形態2における感光ドラム上に形成される結像スポットを模式的に重ね合わせて表現したLEDアレイの平面模式図。
【図4】本発明の実施形態2におけるLEDの発光面を部分発光させて感光ドラム上に形成される結像パターンを楕円で表した模式図である。
【図5】本発明の実施例2における共通電極を交互に第1配線と第2配線に接続する構成例について説明する図である。
【図6】本発明の実施例3における全ての共通電極をスイッチング素子を介して一本の配線に接続する構成例について説明する図である。
【図7】本発明の実施形態1におけるLED素子の基板における発光面と反対側の面に第2のn型電極を形成した別の実施形態を示す図である。
【図8】本発明の実施例4を説明する概念図である。
【図9】本発明の実施例4を説明する概念図である。
【図10】従来技術である特許文献1の構成を説明する図である。
【図11】従来技術である特許文献1などで使用される代表的なLED構造を示す図である。
【図12】先行技術の代表的なLED構造を比較例として示した図である。
【図13】従来技術である特許文献2におけるLED素子アレイの構成を説明する図である。
【図14】従来技術である特許文献2における発光パターンを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のLED素子は、上部電流閉じ込め層上に設けられたp型電極を基板の面内方向に挟むようにして、キャリヤ制御層上に2つのn型電極が設けられて構成されている。
本発明は、キャリヤ制御層にn型電極を設けた構成により、n型キャリヤの拡散を抑制する。キャリヤ制御層内において、2つのn電極のどちらかに通電した際に、通電したn側電極側にキャリヤが多い分布状態を形成することで、p電極とn電極の間で部分的に強い発光が得られるように構成されている。
これにより、LED発光面の発光強度を部分的に制御することを可能としたものである。本発明のLED素子は、以上のような構成によりLEDのサイズを変えることなく、発光サイズをLED発光面全面とその半分程度の発光サイズに、任意に選択することが可能となる。
また、本発明のLED素子を用いたLEDスキャナーでは、高解像度が必要な部分のみを小さな結像スポットに切り替えることで、部分的な高精細化が可能となる。
更に、隣接するLEDの間に対応する感光ドラム上の位置に結像スポットを形成することや、感光ドラム上で重ね露光によって結像スポットの光強度重心の制御が可能となる。
従来のLEDスキャナーでは、LED発光サイズ・位置と感光ドラム上の主走査方向における結像スポットサイズ・位置は1対1で対応しており、結像位置の補正や結像スポットサイズの変更は不可能であった。
更に高解像度を実現するためには、小さな発光面を有するLEDを高密度に配列したLEDスキャナーが必要であり、スキャン時間の増加やLED数の増大に伴う駆動ドライバーの増加が必要であった。
これに対して、本発明のLED素子を用いたLEDスキャナーでは、LEDの全面発光と半面発光を任意に切り替えることが可能になる。
これにより、高解像度が必要な部分のみを小さな発光サイズにすることで、小さな結像スポットによる高精細化が可能になり、プリント速度低下を最小限に抑えて高精細の画像が得られる。
また、LED全面発光のピッチに対して半ピッチ位置ずれした発光が実現できるので、半ピッチの結像位置の補正を行うことが可能になる。
更に、駆動ドライバーの増加を必要としない上に、全面発光モードでは、従来のLEDより外部取り出し効率を増大させることができる。
また、本発明のLED素子を光源として用いたEP露光用のLEDスキャナーでは、感光ドラム上の結像スポットをLEDの密度より高密度に実現できる。
これにより、発光面積の小さいLEDを高密度にする構成した場合に生じるLEDの光出力低下や、LED数増大に伴う駆動回路の増加によるコストの大幅な増大なしに高密度結像スポットの画質が得られる。
また、必要な位置のみに補正スポットを形成することが可能になり、プリント速度を落とすことなく、高精細の画像を得ることができる。
以下に、本発明におけるLED素子、LED素子アレイおよびその駆動方法の実施形態について説明する。
【0011】
(実施形態1)
本発明の実施形態1として、本発明のLED素子の構成例について図1を用いて説明する。
本実施形態のLED素子は、基板上に、キャリヤ制御層、下部電流閉じ込め層、活性層、上部電流閉じ込め層が積層された積層構造を備える。
そして、上記積層構造に構成されたp型電極とn型電極間に通電することにより上記活性層を発光させるように構成されている。
図1(a)に示すように、p型電極10が上部電流閉じ込め層上に設けられると共に、基板の面内方向において、2つのn型電極11、12それぞれがp型電極を挟むようにしてキャリヤ制御層に配設されている。
具体的には、本実施形態のLED素子は、n型バッファー層を備えた基板106上に、キャリヤ制御層1042、n側クラッド層(下部電流閉じ込め層)1041が積層されている。
更に、n側クラッド層1041上に、発光層(活性層)103、p側クラッド層(上部電流閉じ込め層)102、電流拡散層10102、10101、p型コンタクト層101、p型電極10が、この順に積層されている。
また、ここでは積層構造の両外側部において、p型コンタクト層101からn側クラッド層(下部電流閉じ込め層)1041までの発光層(活性層)103を含む領域が除去されており、2つのn型電極11、12がキャリヤ制御層1042上に形成されている。
また、これらの2つのn型電極は、異なる配線に接続されている。
2つのn型電極11、12がp型電極を挟むようにして積層構造の両外側部のキャリヤ制御層1042上に設けるようにした構成によって、n型キャリヤの拡散を抑制することができる。これにより、2つのn電極のどちらかに通電した際に、キャリヤ制御層内において、通電したn側電極側にキャリヤが多い分布状態を形成し、p電極とn電極の間で部分的に強い発光が可能となる。
以上の本実施形態のLED素子の構成によれば、p型電極10とn型電極11間に通電すれば光1011を発生させることができ、p型電極10とn型電極12間に通電すれば、光1012を発光させることができる。
2つのn型電極11、12を同電位として、p型電極10との間で同時に通電すると、本来のLED素子における発光面の全面から、光1011と光1012が発光する。
したがって、一つのLEDで、本来のLED発光面に対応した発光サイズとその半分程度の小さな発光サイズを、2つのn型電極への通電を選択することで選択することが可能になる。
【0012】
これに対して、上記従来例の特許文献1等で使用されるLED構造(図11)では、一つのn型電極を、n型クラッド層の下に配置される低抵抗層、または、GaAs基板に形成することで、n側キャリヤの拡散を十分に行い、片側のn型電極でLEDの発光層全面を発光させている。
なお、図11に示す従来のLEDでは、発光部中央に配置されるp型電極の真下にあたる活性層の光強度1031が最大となるが、p型電極で遮蔽されるため、外部に放射される光は、p電極の外側に該当する強度が減少した光となるため、光の取り出し効率が低下してしまう。
一方、本実施形態のLED素子では、2つのn型電極を同電位にして、p型電極との間で通電を行ってLED発光層全面を発光させる駆動では、p型電極の真下にあたる活性層のキャリヤ密度は低く、発光強度も低い。一方、p電極の外側のキャリヤ密度は高いので、発光は強く、外部への光の取り出し効率を増大させることができる。
ここで、キャリヤ制御層は、n型クラッド層へのキャリヤ注入を制御し、p電極とn電極の間に位置する活性層での発光強度を増大する機能を有するため、n型クラッド層の組成、キャリヤ濃度によって最適な組成、キャリヤ濃度が選択される。例えば、キャリア制御層としては、従来のLEDのn電極が形成される層よりもキャリヤ拡散が遅い特性を有する部材が好ましい。なお、キャリア制御層は、Alを含む3−5族化合物半導体で構成されていればよい。
【0013】
また、上記従来例の特許文献2では、図14に示すように、n型電極の真上にある活性層からの発光10121が生じてしまうため、発光サイズが大きくなってしまう。しかし、本実施形態のLED素子ではn型電極が活性層を除去した領域に形成されるので、このn型電極近傍での発光は生じない。これによって、発光サイズをLED発光面の半分程度まで小さくすることができる。
なお、図1(a)に示す本実施形態の構成では、p型コンタクト層101とp側クラッド層102の間に、電流拡散層10101、10102を配置して、p型キャリヤの面内方向の拡散を増大させることで、通電した電極側への発光の偏りを大きくしている。
しかし、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、電流拡散層10101,10102がないLEDであっても、通電した電極側への発光の偏りを生じさせることができる。
図7は、本発明の実施形態の変形例であり、図1(a)の2つのn電極(第1のn電極)の他にLED素子の発光面と反対側の面に第2のn型電極107を有しており、この第2のn型電極とp型電極間に通電することによって、LEDの発光層全面を発光させることが可能となる。
【0014】
(実施形態2)
実施形態2として、本発明のLED素子を複数備え、該複数のLED素子をアレイ状に配列して構成されているLED素子アレイの構成例について、図2を用いて説明する。
図2(a)に示すように、LED100、200、300が近接して配置されており、各LED間に配置されるn型電極12、23は、両側のLED間で共有されている。
この構成において、LED100のp型電極10とLED100、200間に配置されたn型電極12間で通電を行うと、LED発光面の通電したn型電極12側から光1012が放射される。
一方、図2(b)に示すように、LED100のp型電極10と2つのn型電極11、12間に通電するとLED発光面のそれぞれのn型電極11、12側から光1011、1012が放射されるので、本来のLED発光面全面が発光する。図2(a)、(b)で放射された光は、レンズ光学系により感光ドラム上に結像スポットを形成する。
【0015】
図3(a)は、感光ドラム上に形成される結像スポットを模式的に重ね合わせて表現したLEDアレイの平面模式図である。
結像スポット5110は、LED100によって感光ドラム上に形成される結像スポットを模式的に円で表している。
図4において、LED100のp型電極10とLED100、200間に配置されたn型電極12間の通電による光1012(図2(a))が、感光ドラム上に結像スポット6120を形成する。
LED100のp型電極10とn型電極11間に通電すれば、感光ドラム上に結像スポット6110が得られる。また、LED100のp型電極10と2つのn型電極11、12間に通電すると放射光6110、6120が得られ、重ね合わされた結果、感光ドラム上に図3(a)の結像スポット5110が得られる。
すなわち、n型電極を選択して通電することにより、感光ドラム上にLED本来の発光面に対応した結像スポットも得られるし、半分の結像スポットも形成することができる。
これによって、高精細が必要な領域にのみ小さな結像スポットで潜像形成ができるので、小結像スポットによるプリント速度の低下または、スキャン速度の高速化を抑えることができる。
【0016】
また、図3(b)では、LED10のp型電極10とn型電極12間、および、LED200のp型電極20とn型電極12間に通電することにより、形成される結像スポット5115を表示している。
LED100、200の全発光面で形成される結像スポット5110、5120(図3(a))の中間に結像スポット5115(図3(b))が形成される。このため、LEDピッチの半ピッチずらした結像スポットが得られ、LED密度の2倍の高密度結像スポットも得られる。
これらの結像スポットは、通電のタイムミングをずらした結像スポットを重ね合わせることでも可能である。
具体的な発光シーケンスとしては、
まず、n型電極11、12、23を同電位として、LED100のp型電極10と、LED200のp型電極20に通電して、LED100、LED200を発光させて結像スポット5110、5120を形成する(図3(a))。
次に、n電極11、23をオフにして、LED100とLED200で共有するn型電極12に通電することにより、LED100とLED200の結像スポット5110、5120に重ねて、半ピッチずれた結像スポット5115を感光ドラム上に形成する(図3(b))。
なお、感光ドラム上で、図3(a)の結像スポット5110を形成した後に、通電のタイミングをずらして図4の半分の結像スポット6110または6120を重複して形成することによって、結像スポット内の光量重心を制御することができる。
【実施例】
【0017】
以下に、本発明の実施例について説明する。
[実施例1]
実施例1として、本発明を適用したLED素子の構成例について、図1を用いて説明する。
本実施例のLED素子は、発光面の中央部のp型電極10は、Ti/Pt/Auを積層して形成される。
また、積層構造の両外側部において、p型コンタクト層101からn側クラッド層1041まで発光層103を含む領域が除去される。キャリヤ制御層1042上の2つのn型電極11、12は、AuGe/Ni/Auを積層して形成される。
p型コンタクト層101は、Al0.15Ga0.85As:〜1018/cm3で構成され、電流拡散層10101、10102は、Al0.35Ga0.65As:〜1018/cm3、Al0.15Ga0.85As:〜1018/cm3で構成される。以上の各層は、LEDの発光波長に対する吸収を考慮して決定される。
p側クラッド層102は、Al0.35Ga0.65As:〜1017/cm3で構成され、発光層103はAl0.12Ga0.88As:アンドープで構成される。n側クラッド層1041は、Al0.35Ga0.65As:〜1017/cm3、キャリヤ制御層1042は、Al0.35Ga0.65As:〜1018/cm3で構成され、n型バッファー層と基板106はGaAs:〜1018/cm3で構成される。
【0018】
発光部の両外側の2つのn型電極11、12は、n側クラッド層1041を除去した領域のキャリヤ制御層1042に形成される。
このn型電極をキャリヤ制御層1042のAl0.35Ga0.65As:〜1018/cm3で形成することで、n側クラッド層1041へのキャリヤ注入が制御され、n側クラッド層内にキャリヤ濃度分布が生じ、発光層103へのキャリヤ注入に分布が生じる。上記LEDにおいて、p型電極10と一方のn型電極12間に通電すると、発光層103において通電したn型電極側でキャリヤ濃度が高くなり、強く発光する。
その状態の活性層103におけるキャリヤ再結合割合の分布を図1(b)に示す。LED外に放射される光は、キャリヤ再結合割合の高い電極10の外側部分から放射される。
なお、図1(a)の2つのn型電極11、12を同電位にして、p型電極10との間で通電すると、LED発光面の全面から光1011、1012が発光する。つまり、一つのLEDで、LED発光面に対応した発光サイズとその半分程度の小さな発光サイズが得られるので、2つのn型電極への通電を選択することで、発光サイズを選択することができる。
本実施例では、n側クラッド層1041とキャリヤ制御層1042は同じAl組成のAlGaAsで構成したが、例えば、n側クラッド層1041がAl0.7Ga0.3Asである場合は、キャリヤ制御層1042をAl0.5Ga0.5Asで構成することで、n側クラッド層1041へのキャリヤ注入を制御して、n側クラッド層内のキャリヤ分布を最適化する。
キャリヤ制御層は、従来のLEDにおいてn電極が形成される層よりもキャリヤ拡散が遅い特性を有する。
また、n型バッファー層と基板106はn型GaAs:〜1018/cm3 で構成しているが、n側クラッド層内のキャリヤ分布を最適化できれば、高抵抗のGaAsで構成することも可能である。
更に、n型電極とキャリヤ制御層のコンタクト抵抗を低減するために、キャリヤ制御層を部分的に高濃度にドーピングすることや、コンタクト抵抗が低抵抗となる層を挿入することも可能である。
【0019】
一方、従来のLED構造を図10(a)に示すが、n型GaAs層105(または、移動度の高い電流拡散層)にn型電極が形成されており、n型GaAs層内ではキャリヤ拡散が速いので、片側に形成された一つのn型電極のみでn型GaAs層105内でキャリヤが均一の分布となる。したがって、図10(b)に示されるように、pキャリヤの濃度が最も高いp型電極の下に位置する活性層部分で、再結合が最大となり、発光強度も最大となる。ただし、p型電極で遮蔽されるため、p型電極の外側に位置する強度の低下した光がp型電極の両外側から放射される。
【0020】
[実施例2]
実施例2として、本発明のLED素子をEP露光光源として用いたLED素子アレイの構成例について、図5を用いて説明する。同じ機能の部分には他の図と同じ符号を付与している。
本実施例のLED素子アレイは、8個のLEDアレイ100、200、……、800の各LEDは、発光部に設けられたp型電極10、20、……、80、を有している。
また、各LED間には、隣接するLED素子間で共有するn型電極11、12、23、……、89を有し、共有電極は、交互に異なる第1の配線1200、第2の配線1300に接続されている。すなわち、交互に、一方のn型電極が第1の配線に接続されており、他方のn型電極が第2の配線に接続されている。
上記LED素子アレイは、1200dpi相当の密度で配置されており、各LEDはピッチ約21.2μmで一列に配列している。
各LEDのn型電極11、12、23、……、89は電極幅およそ2μmで形成されており、n型電極12、34、56、78は第2配線1300に接続され、n型電極23、45、67、89は、第1配線1200に接続されている。
n型電極を交互に異なる第1配線、第2配線に接続することにより、LED発光部の通電したn電極側の発光を可能にするとともに、同時に隣接していないLEDの通電・発光を可能にするものである。
LED発光部の主走査方向のサイズは、結像光学系に依存するが、LEDスキャナーで一般的な等倍結像系を使用しており、本実施例のLED発光部は約12μmで、その中心に幅2μmの個別電極が形成されている。第1配線、第2配線、個別電極は駆動回路に接続される。
【0021】
図4において、LED100のp型電極10とLED100、200間に配置されたn型電極12間の通電によって、感光ドラム上に結像スポット6120を形成する。
LED100のp型電極10とn型電極11間に通電すれば、感光ドラム上に結像スポット6110が得られる。
また、LED100のp型電極10と2つのn型電極11、12間に通電すると放射光6110、6120が同時に得られ、感光ドラム上に重ねあわされた結像スポット5110(図3(a))が得られる。
すなわち、n型電極を選択して通電することにより、感光ドラム上にLED本来の発光面に対応した結像スポットに加えて、半分の結像スポットを形成することができる。
【0022】
これによって、高精細が必要な領域にのみ小さな結像スポットで潜像形成ができるので、
小結像スポットによるプリント速度の低下や、スキャン速度の高速化を抑えることができる。
また、図3(b)では、LED100のp型電極10とn型電極12間、および、LED200のp型電極20とn型電極12間に通電することにより、形成される結像スポット5115を表示している。
これにより、LED100、200の全発光面で形成される結像スポット5110、5120(図3(a))の中間に結像スポットが形成される。つまり、LEDピッチの半ピッチずらした結像スポットが得られることから、LED密度の2倍の密度の結像スポットも得られる。
【0023】
[実施例3]
実施例3として、実施例1と異なる形態のLED素子アレイの構成例について、図6を用いて説明する。同じ機能の部分には他の図と同じ符号を付与している。実施例2との違いは、全てのn型電極11、12、23、34、45、56、67、78、89がスイッチング素子9000を介して、1本の配線(同一配線)に接続されている点である。
スイッチング素子により、最近接の共有電極への同時通電を回避することで、LED発光部の所望の側を発光させるものである。
本実施例の構成は、スイッチング素子をシリコンドライバー回路に組み込み、そのシリコンドライバーの表面にLEDアレイを貼り付ける構成であれば、LEDアレイとスイッチング素子の接続を半導体プロセスで行うことが可能である。また、製造コストを抑えることができる。
他の構成や駆動方法は実施例1と同じであり、重複する点の説明は省略する。
【0024】
[実施例4]
図8は、第4の実施例であるEP露光用のLEDスキャナーを説明するためのLEDアレイの部分図である。図8において、100、200、300、……、800は近接して配置されたLED発光部であり、各LED発光部の中央にはp電極10、20、……、80が形成されており、LED発光部を挟んで両側にn型電極11、12、23……、88が形成されており、隣接するLED発光部間に配置しているn電極は、両側のLED発光部で共有している。
点線で囲まれた連続する8個のLEDは、n側電極配線1200、又は、1300を共有しており、一つのセルを構成している。
一方、p側電極配線2100、2200、……2800は、連続する8個のセルで共有しており、この8個の連続セルは一つのブロックを構成する。
なお、セル間は、LED素子構造の電流制御層の基板側に配置された高抵抗層に達する溝によって素子間分離されている。
【0025】
図8に示すように、セル端に位置するLED発光部100、800は、セル端に配置するn電極を占有できるように、隣接するセル間でLEDアレイが副走査方向にずらして配置される。副走査方向に1スキャン分ずらして配置し、発光タイミングを1スキャン分調整することで、感光ドラム上には1ラインの露光パターが形成される。
駆動回路に接続するためのボンディングパッドは、各セル内に、2本のn電極配線1200、1300に接続する2つのパッドとブロック内で共有するp側電極配線8本2100、2200、……、2800の1本に重複せずに接続されるパッドの3個設けられる。
これにより、各ブロックを独立駆動、各セル内ではシリアル駆動を行うことにより、並列駆動による高速スキャンが可能になる。
EP露光用LEDスキャナーに使用されるLED素子アレイは、複数のブロックから成るLEDアレイチップを図9に示すように、千鳥に配列して構成する。各チップの端部に位置するn側電極が副走査方向の投影が重なるように配置される。また、各チップの発光部が近接するようにチップの向きが決められる。
【符号の説明】
【0026】
10:p型電極
11、12:n型電極
101:p側コンタクト層
102:P側クラッド層(上部電流閉じ込め層)
103:発光層(活性層)
106:基板
10101、10102:電流拡散層
1041:n側クラッド層(下部電流閉じ込め層)
1042:キャリヤ制御層
2100〜2800:p型電極共通配線
7010〜7030:ボンディングパッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED素子であって、
基板上に、キャリヤ制御層、下部電流閉じ込め層、活性層、上部電流閉じ込め層がこの順で積層された積層構造を備え、
p型電極が前記上部電流閉じ込め層上に設けられ、
前記基板の面内方向において、2つのn型電極が前記p型電極を挟むようにして前記キャリヤ制御層に配設され、
前記p型電極と前記2つのn型電極のいずれか一方のn型電極間に通電することにより、LED発光面の通電したn型電極側を発光させる一方、
前記p型電極と前記2つのn型電極間に同時に通電することにより、LED発光面の全面を発光させるように構成されていることを特徴とするLED素子。
【請求項2】
前記キャリヤ制御層は、Alを含む3−5族化合物半導体で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のLED素子。
【請求項3】
前記p型電極と上部電流閉じ込め層の間に、p型キャリヤの前記基板の面内方向の拡散を増大させる電流拡散層が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のLED素子。
【請求項4】
前記LED素子における発光面と反対側の面に、前記2つのn型電極とは別のn型電極が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のLED素子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のLED素子を複数備え、該複数のLED素子をアレイ状に配列して構成されているLED素子アレイであって、
前記複数のLED素子におけるn型電極が、アレイ状に配列された隣接するLED素子間で共有されていることを特徴とするLED素子アレイ。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載のLED素子を複数備え、該複数のLED素子をアレイ状に配列して構成されているLED素子アレイであって、
前記2つのn型電極を接続する前記異なる配線として、第1の配線と第2の配線とを備え、
前記アレイ状に配列された隣接するLED素子間で、前記2つのn型電極の一方が前記第1の配線と、前記n型電極の他方が前記第2の配線と、交互に接続されていることを特徴とするLED素子アレイ。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載のLED素子を複数備え、該複数のLED素子をアレイ状に配列して構成されているLED素子アレイであって、
前記アレイ状に配列されたLED素子におけるそれぞれのn型電極は、スイッチング素子を介して同一配線に接続されていることを特徴とするLED素子アレイ。
【請求項8】
前記LED素子アレイにおける発光面と反対側の面に、前記2つのn型電極とは別のn型電極が形成されていることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載のLED素子アレイ。
【請求項9】
請求項5から8のいずれか1項に記載のLED素子アレイの駆動方法であって、
前記上部電流閉じ込め層上に設けられたp型電極と、前記キャリヤ制御層に配設された2つのn型電極のいずれか一方のn型電極間に通電することにより、通電したn型電極側の発光面を発光させることを特徴とするLED素子アレイの駆動方法。
【請求項10】
請求項5から8のいずれか1項に記載のLED素子アレイの駆動方法であって、
前記上部電流閉じ込め層上に設けられたp型電極と、前記キャリヤ制御層に配設された2つのn型電極間に同時に通電することにより、LED発光面の全面を発光させることを特徴とするLED素子アレイの駆動方法。
【請求項11】
請求項6に記載のLED素子アレイにおいて、
LED素子の2つのn型電極に接続する2本のn型配線を共有する複数のLED素子がセルを構成し、前記複数のLED素子のp型電極のそれぞれに接続する複数のp型配線を共有する複数セルがブロックを構成し、セル間は素子分離されている構成とし、
隣接するセル間では、LED素子の発光部は副走査方向にずれており、
セル端に位置するn電極の副走査方向への投影が重なるように配置してEP露光用とされていることを特徴とするLED素子アレイ。
【請求項12】
請求項11に記載のLED素子アレイにおいて、
各セル内には、2つのn型配線に接続する2つのボンディングパッドとブロックで共有する複数のp型配線の一つに、ブロック間で重複することなく接続する1つのボンディングパッドを有する構成としてEP露光用とされていることを特徴とするLED素子アレイ。
【請求項13】
請求項11に記載の複数のブロックで構成されるLEDアレイチップが千鳥状に配列されて構成されるLEDスキャナーを構成するLED素子アレイにおいて、
隣接するLEDアレイチップは副走査方向にずらして配置されており、
チップ端にあるLED素子のn電極の副走査方向への投影が重なるように配置してEP露光用とされていることを特徴とするLED素子アレイ。
【請求項14】
請求項11〜13に記載のEP露光用とされているLED素子アレイにおいて、各ブロックは、独立・並列に駆動し、各セル内はシリアルに駆動することを特徴とするLED素子アレイの駆動方法。
【請求項1】
LED素子であって、
基板上に、キャリヤ制御層、下部電流閉じ込め層、活性層、上部電流閉じ込め層がこの順で積層された積層構造を備え、
p型電極が前記上部電流閉じ込め層上に設けられ、
前記基板の面内方向において、2つのn型電極が前記p型電極を挟むようにして前記キャリヤ制御層に配設され、
前記p型電極と前記2つのn型電極のいずれか一方のn型電極間に通電することにより、LED発光面の通電したn型電極側を発光させる一方、
前記p型電極と前記2つのn型電極間に同時に通電することにより、LED発光面の全面を発光させるように構成されていることを特徴とするLED素子。
【請求項2】
前記キャリヤ制御層は、Alを含む3−5族化合物半導体で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のLED素子。
【請求項3】
前記p型電極と上部電流閉じ込め層の間に、p型キャリヤの前記基板の面内方向の拡散を増大させる電流拡散層が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のLED素子。
【請求項4】
前記LED素子における発光面と反対側の面に、前記2つのn型電極とは別のn型電極が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のLED素子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のLED素子を複数備え、該複数のLED素子をアレイ状に配列して構成されているLED素子アレイであって、
前記複数のLED素子におけるn型電極が、アレイ状に配列された隣接するLED素子間で共有されていることを特徴とするLED素子アレイ。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載のLED素子を複数備え、該複数のLED素子をアレイ状に配列して構成されているLED素子アレイであって、
前記2つのn型電極を接続する前記異なる配線として、第1の配線と第2の配線とを備え、
前記アレイ状に配列された隣接するLED素子間で、前記2つのn型電極の一方が前記第1の配線と、前記n型電極の他方が前記第2の配線と、交互に接続されていることを特徴とするLED素子アレイ。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載のLED素子を複数備え、該複数のLED素子をアレイ状に配列して構成されているLED素子アレイであって、
前記アレイ状に配列されたLED素子におけるそれぞれのn型電極は、スイッチング素子を介して同一配線に接続されていることを特徴とするLED素子アレイ。
【請求項8】
前記LED素子アレイにおける発光面と反対側の面に、前記2つのn型電極とは別のn型電極が形成されていることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載のLED素子アレイ。
【請求項9】
請求項5から8のいずれか1項に記載のLED素子アレイの駆動方法であって、
前記上部電流閉じ込め層上に設けられたp型電極と、前記キャリヤ制御層に配設された2つのn型電極のいずれか一方のn型電極間に通電することにより、通電したn型電極側の発光面を発光させることを特徴とするLED素子アレイの駆動方法。
【請求項10】
請求項5から8のいずれか1項に記載のLED素子アレイの駆動方法であって、
前記上部電流閉じ込め層上に設けられたp型電極と、前記キャリヤ制御層に配設された2つのn型電極間に同時に通電することにより、LED発光面の全面を発光させることを特徴とするLED素子アレイの駆動方法。
【請求項11】
請求項6に記載のLED素子アレイにおいて、
LED素子の2つのn型電極に接続する2本のn型配線を共有する複数のLED素子がセルを構成し、前記複数のLED素子のp型電極のそれぞれに接続する複数のp型配線を共有する複数セルがブロックを構成し、セル間は素子分離されている構成とし、
隣接するセル間では、LED素子の発光部は副走査方向にずれており、
セル端に位置するn電極の副走査方向への投影が重なるように配置してEP露光用とされていることを特徴とするLED素子アレイ。
【請求項12】
請求項11に記載のLED素子アレイにおいて、
各セル内には、2つのn型配線に接続する2つのボンディングパッドとブロックで共有する複数のp型配線の一つに、ブロック間で重複することなく接続する1つのボンディングパッドを有する構成としてEP露光用とされていることを特徴とするLED素子アレイ。
【請求項13】
請求項11に記載の複数のブロックで構成されるLEDアレイチップが千鳥状に配列されて構成されるLEDスキャナーを構成するLED素子アレイにおいて、
隣接するLEDアレイチップは副走査方向にずらして配置されており、
チップ端にあるLED素子のn電極の副走査方向への投影が重なるように配置してEP露光用とされていることを特徴とするLED素子アレイ。
【請求項14】
請求項11〜13に記載のEP露光用とされているLED素子アレイにおいて、各ブロックは、独立・並列に駆動し、各セル内はシリアルに駆動することを特徴とするLED素子アレイの駆動方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−38381(P2013−38381A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−46711(P2012−46711)
【出願日】平成24年3月2日(2012.3.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月2日(2012.3.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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