説明

MAGE遺伝子の発現もしくはその作用を阻害するガンの治療方法

本発明は、腫瘍細胞形成もしくは腫瘍細胞増殖を阻害するための方法、および、精子におけるアポトーシスを誘発するための方法、この方法は、MAGE遺伝子発現もしくはMAGEたんぱく質機能を阻害するアンタゴニストを患者に投与する方法を、好ましくは、このアンタゴニストは、抗MAGE抗体で、アンチセンス分子、および、siRNA分子、MAGEコーディングポリヌクレオチドと3重らせん核酸分子を形成する分子、もしくは、MAGE機能を低分子阻害剤をも提供する。また、本発明は、上記した物質を含む医薬組成品、および、MAGEたんぱく質機能を阻害する物質をスクリーンするための方法も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連した出願のクロスリファレンス)
本出願は、その内容が引用されることによって本出願に組み込まれる、2004年5月26日に出願された第60/574,224号米国仮出願の優先権を主張する。
(連邦政府の利益)
【0002】
本発明は、国立衛生研究所による助成金番号第NIH AR043356号に基づき、アメリカ合衆国政府の支援により成されたものである。したがって、アメリカ合衆国は本発明において特定の権利を有する。
(発明の背景)
【0003】
メラノーマ関連抗原遺伝子(MAGE)ファミリーの最初のメンバーはメラノーマから同定された(van der
Bruggenらの1991, A gene encoding an antigen recognized by
cytolytic T lymphocytes on a human melanoma. Science, 254:1643-7を参照)。その後、このファミリーの他の新メンバーが同定され、現在では、このMAGE遺伝子ファミリーには、多くのクラスターに分けられていて互いに関連する数十種類の遺伝子を含んでいる。例えば、MAGE-A、B、C、D、E、F、G、H、L、dMAGEおよびaMAGEがある(De
Plaenらの1994, Structure, chromosomal localization and
expression of twelve genes of the MAGE family. Immunogenetics, 40:360-9.
Lurquinらの1997. Two members of the human MAGEB gene
family located in Xp. 21.3 are expressed in tumors of various histological
origins. Genomics, 46: 397-408. Lucasらの1998,
Identification of a new MAGE gene with tumor-specific expression by
representational difference analysis. Cancer Res ., 58:743-52. Chomezらの2001, An overview of the MAGE gene family with the identification of
all human members of the family. Cancer Res. , 61:5544-51を参照)。
【0004】
このMAGE遺伝子は、多く異なる組織型のヒトの腫瘍において発現される一方、精巣細胞を除いて正常細胞では発現されてない(例えば、Jungbluthらの2000,Intl.J.Cancer 85:460-465、Yakirevichらの2003, Applied
Immunohistochemistry & Molecular Morpholigy 11:37-44、および、Gaskellらの2004, Biol. Reproduction
71:2012-2021を参照)。その中の一部は、神経組織もしくは胎盤においても発現されている。雄の生殖系列細胞および胎盤ではMHCクラスI分子を作り出すことはないので、抗原を細胞傷害性T細胞に提供することはできない(Haasらの1988, Distribution of human leukocyte antigen-ABC and-D/DR antigens
in the unfixed human testis. Am. J. Reprod. Immunol. Microbiol. 18: 47-51; Hunt
et al., 1992, Characterization of peptides bound to the class I MHC molecule
HLA-A2.1 by mass spectrometry. Science 255: 1261-3を参照)。
【0005】
MAGEファミリーたんぱく質は多くのメラノーマ、T細胞、B細胞リンパ腫および白血球において発現することが知られている。本発明者は、悪性肥満細胞腫においてMAGEのファミリーの発現を検出することに成功した。
【0006】
MAGEファミリーたんぱく質が多くの腫瘍におけて発現される一方、正常の細胞においてほんの僅かの量しか発現されていないので、それは、ガンの診断のための特種なマーカーとして魅力的があり、また、正常細胞を害することなく特異的に腫瘍をターゲットとする治療を可能とするので、悪性腫瘍に対する治療が可能であることを意味する。特殊な抗腫瘍効果が得られるという期待と共に、MAGEたんぱく質に対する免疫反応への刺激を含む、幾つかの方法が既に開発されている。腫瘍特異的共通抗原と定義された臨床試験はメラノーマ患者に対して既に行われ、腫瘍の緩解が少数の患者において観察されている(Marchandらの2001, Biological and clinical
developments in melanoma vaccines. Exp Opin. Biol. Ther. , 1:497-510、Jgerらの2002, Clinical cancer vaccine trials.
Curr. Opin. Immunol. , 14: 178-82、Marchandらの1999, Tumor regressions observed in patients with metastatic
melanoma treated with an antigenic peptide encoded by gene MAGE-3 and presented
by HLA-Al. Int. J Cancer, 80: 219-30、Thumerらの1999, Vaccination with MAGE-3A1 peptide-pulsed mature,
monocyte-derived dendritic cells expands specific cytotoxic T cells and induces
regression of some metastases in advanced stage IV melanoma. J Exp. Med., 190:
1669-78を参照)。しかしながら、これらの免疫治療は患者に対し無傷かつ機能する免疫システムを要求するので、限られた成功しか上げられていない。
【0007】
それは脱メチル反応をしがちで比較的に制御されにくいので、MAGE遺伝子が腫瘍細胞に頻繁に発現されるように見える(Hondaらの2004, Demethylation of MAGE promoters during gastric cancer
progression. Br. J. Cancer, 90:838-43を参照)。
【0008】
多くのMAGEファミリーメンバーの機能はまだ知られていない。そこに特定のMAGE遺伝子はアポトーシスを誘発し、もしくはアポトーシスをプログラムするいくつかの示唆がある。たとえば、MAGE-D1(NRAGEとも呼ばれる)は、アポトーシスを介していくつかの神経細胞の死を促進するのではないかと考えられる(Amirらの2000, NRAGE, a novel MAGE protein,
interacts with the p75 neurotrophin receptor and facilitates nerve growth
factor-dependent apoptosis. Neuron 27: 279-288、Salehiらの2002, NRAGE, a p75 neurotrophin receptor-interacting protein,
induces caspase activation and cell death through a JNK-dependent mitochondrial
pathway. J. Biol. Chem. , 277: 48043-50を参照)。これらの研究は、がん細胞のアポトーシスを誘発するために好ましくはMAGE遺伝子の発現を増加させることを示唆しているように考えられる。
【0009】
驚くことに、この技術分野において広く知られているこの常識と正反対に、本発明者は、MAGE遺伝子発現もしくはMAGEたんぱく質機能への阻害ががん細胞の増殖および存在を干渉することを発見した。
(図面の簡単な説明)
【0010】
図1は、STI571の投与12時間後および24時間後のHMC-1.1細胞におけるアポトーシスの誘発過程において、MAGE-Aのダウンレギュレーションを示している。
【0011】
図2aと2bは、MAGE-D1およびMAGE-A両方のsiRNAが50nMおよび100nMにおけるHMC-1.1悪性マスト細胞のサブクローンの増殖を著しく阻害したことを示している。MAGE-E1のsiRNAは、50nMでHMC-1.1細胞の増殖に対して著しい阻害を示し、MAGE-AおよびMAGE-E1は、100nMでHMC-1.2悪性マスト細胞のサブクローンの増殖を著しく阻害した。
【0012】
図2−5において、細胞数はsiRNAが形質移入されて3日目で数えられた。この細胞の数は10000/ウェルを単位とする。*で示されたのは、統計的有意性を得るため、Pが0.05以下として検討された。
【0013】
図3は、ヒトのメラノーマ株のHs-294Tが100nMのMAGE-A特異siRNAおよび150nMのMAGE-D1特異siRNAによって阻害されることを示している。
【0014】
図4は、別のヒトメラノーマ株であるA-375が100nMのMAGE-A特異siRNAおよび150nMのMAGE-E1特異siRNAによって阻害されることを示している。
【0015】
図5は、いずれのsiRNA(特異的もしくは非特異的の両方)とも、MAGEたんぱく質を発現しないヒト上皮がん細胞株であるHaCaTにおいて悪影響を示していないことを示している。この結果は、siRNA濃度下での使用で細胞を殺したのは、形質移入過程でも非特異性siRNAでもないことを示したことより、効果の特異性を確認した。
【0016】
図6は、特異性siRNA試薬が対応するMAGEたんぱく質の合成を効率的に防ぐ一方、非特異性siRNA試薬がMAGEたんぱく質合成に対して効果を示さなかったこと指摘した、siRNAで形質移入したHMC-1.1細胞のウエスタンブロットを示している。
【0017】
図7aは、非特異性siRNAで処置されたメラノーマ細胞が注射されたマウスと、処置されていない(コントロール)メラノーマ細胞が注射されたマウスとに、MAGE特異性siRNAで形質移入されたメラノーマ細胞が注射されたマウスとを比較したカプラン−マイヤプロットを示している。図7bは、マウスにおいてMAGE特異性siRNAで処置されたメラノーマ増殖とコントロールと非特異性siRNAで処置されたメラノーマとの間のログ−ランク分析による比較を描き、コントロールおよび非特異性siRNA処置との両方に比較した場合に、MAGE特異性処置でメラノーマ増殖が著しく(p < 0.01)低減されたことを示している。図7cは、毎日の腫瘍サイズのプロットで、図7dは、同じデータの線形回帰分析であり、コントロールグループでは接種後に腫瘍が毎日平均0.32mm、非特異性グループでは腫瘍が毎日平均0.38mm、MAGE特異性グループでは腫瘍は15mmしか成長しなかったことを示している。コントロールと非特異性マウスとのいずれかと比較したMAGEマウスによる相違は、p < 0.01で統計的に有意である。
【0018】
図8は、図7と同様、腫瘍接種後の腹腔内へのsiRNA注射による処置を伴うデータを示している。注意すべきなのは、MAGEのsiRNAに伴う全身療法は、非特異性siRNAを用いる処置に比べて既存の腫瘍増殖を効率的に低下させることができることである。
(発明の概要)
【0019】
本発明は、MAGE遺伝子を発現させる細胞の成長もしくは増殖を阻害し、もしくはアポトーシスを誘発するための方法を提供する。この方法には、MAGE遺伝子の発現の阻害もしくは細胞においてMAGE遺伝子によってコーディングされるポリペプチドの機能の阻害を含む。
【0020】
ある実施態様において、当該方法は、細胞においてMAGE遺伝子の発現を特異的に阻害するポリ核酸分子を細胞に投与することを含む。好ましくは、このポリ核酸分子は、短い干渉RNA分子、もしくはMAGE遺伝子に対して特異的なアンチセンス核酸分子、もしくはMAGE遺伝子と三重らせんを形成する核酸分子であり、それによって、MAGE遺伝子の発現を阻害する。
【0021】
別に実施態様において、この方法は、MAGE遺伝子によってエンコードされているたんぱく質の機能を特異的に阻害するポリペプチドを細胞に投与することを含む。好ましくは、このポリペプチドは、MAGE遺伝子もしくはMAGE遺伝子産物に対する抗体である。
【0022】
本発明に適合するMAGE遺伝子は、MAGE-A、MAGE-B、もしくはMAGE-CのようなType IのMAGE遺伝子で、特に、MAGE-A1、A3、A5、A6、A8、A9、A10、A11もしくはA12、もしくはMAGE-B1、B2、B3またはB4である。このMAGE遺伝子はさらにNecdin、MAGE-D、MAGE-E(El)、MAGE-F、MAGE-GまたはMAGE-HのようなType
IIのMAGE遺伝子でありうる。
【0023】
好ましい実施態様は、癌性細胞、悪性細胞、腫瘍細胞における遺伝子機能を阻害する方法である。特に、その癌、その腫瘍、もしくはその細胞増殖が、メラノーマ、リンパ腫、T細胞白血球、非小細胞肺癌、肝臓癌、胃癌、食道癌、結腸直腸癌、膵臓内分泌腫瘍、卵巣腫瘍、子宮頸癌、唾液腺癌、頭頸部扁平上皮癌、増殖性精巣細胞、精母細胞セミノーマ、散発性甲状腺髄様癌、骨肉種、小児期星状細胞種、膀胱癌、若年性関節リウマチ、もしくは、他の有害な炎症状態下の炎症関節からの細胞、神経膠腫、神経芽細胞腫、および、悪性肥満細胞に関連する癌からなるグループから選択されることが好ましい。
【0024】
本発明は、さらに哺乳動物に置ける細胞増殖、もしくは、MAGE遺伝子を発現させる細胞からなる癌、腫瘍を処置する方法を提供する。この方法は、MAGE遺伝子の発現への阻害、もしくは、哺乳動物の細胞のMAGE遺伝子によってコードされるポリペプチドの機能への阻害からなる。
【0025】
本発明は、さらに腫瘍細胞の形成もしくは腫瘍細胞の成長を処置する、MAGEへのアンタゴニストおよび医薬容認賦形剤からなる医薬組成物を提供する。
【0026】
本発明では、さらに(1)テストとされる候補物質を提供するステップと、(2)MAGE遺伝子もしくはMAGE遺伝子コンストラクトを発現する細胞内にその候補物質をアプライするステップと、(3)候補物質の存在下MAGE遺伝子およびMAGE遺伝子コンストラクトの発現レベルを検出するステップと、(4)候補物質が存在しない場合のMAGEの発現レベルを決定するステップとを含む、MAGE遺伝子の発現レベルを減少させる一種の物質が選択される、MAGE遺伝子の発現を阻害する物質のスクリーニング方法、あるいは、細胞内において自然に生成し、もしくは、組み換え技術によって発現される標的たんぱく質に結合するMAGE遺伝子産物の結合能力を決定する方法が開示されている。
(発明の詳細な説明)
【0027】
本発明者は、MAGE遺伝子が活発的に発現していることが悪性細胞の増殖および生存を促進することを発見した。本発明者は、アポトーシスがこれら悪性肥満細胞において引き起こされるとき、メッセンジャーRNAおよびたんぱく質の両方と同様に、MAGEファミリーメンバーが悪性肥満細胞において減少していくことを発見した。更なる調べでは、MAGE分子が抗アポトーシス機能を有することと、MAGE発言および/または機能の障害が他の腫瘍細胞において増殖を防ぎアポトーシスを引き起こすこととを発見した。MAGE特異的な小さい干渉RNA(siRNAs)を用いることで、腫瘍細胞内におけるMAGEたんぱく質の合成が防がれて減少され、また、培養された悪性細胞が殺され、および/また、はその成長が抑制された。
【0028】
したがって、本発明の一つの態様は、MAGE遺伝子の発現を阻害することによってガン治療のための方法を提供する。別の態様では、本発明は、MAGEたんぱく質の機能を阻害することによってガン治療のための方法を提供する。本発明の別の態様は、MAGE遺伝子の発現もしくはMAGE遺伝子産物を阻害する、MAGE遺伝子産物のアンタゴニストをスクリーニングするための方法を提供する。
【0029】
本発明の方法は、MAGEたんぱく質の発現に起因するものとして知られている任意のガンもしくは細胞増殖に適用することができる。それには、メラノーマ、リンパ腫、T細胞白血病、非小細胞肺癌、肝臓癌、胃癌、食道癌、結腸直腸癌、膵臓内分泌細胞腫瘍、卵巣新生物、子宮頸癌、唾液腺癌、頭頸部扁平上皮細胞癌、精母細胞セミノーマ(spermatocytic seminoma)、精原細胞、精巣細胞、散発的な甲状腺髄様癌、骨肉腫、幼児期星状細胞腫、膀胱癌、若年性関節リウマチにおける炎症関節もしくはその他の要害な炎症状態からの細胞、神経膠腫、神経芽細胞腫、悪性肥満細胞に関連する癌を含むが、これに限られるものではない。
【0030】
本発明の方法は、既知の数多くのMAGEファミリー遺伝子すべてのメンバー(遺伝子)に適用することができる。これらの遺伝子には、MAGE-A、MAGE-BおよびMAGE-Cを含むタイプIのMAGE遺伝子を含む。これらの遺伝子は、幅広い種類の組織学的にはっきりとした腫瘍において発現されている。MAGE-Aがさらに、既知のMAGE-A1、A2、A3、A4、A5、A6、A8、A9、A10、A11およびA12を、MAGE-BがさらにMAGE-B1、B2、B3およびB4を含む。MAGE-Cのメンバーには、MAGE-C1、C2およびC3を含む。タイプIIのMAGE遺伝子は、ネクデン(Necdin)ファミリー、MAGE-D(D1がNRAGEとも知られている)、D2、D3およびD4、そして、MAGE-E(E1)、MAGE-F、MAGE-G、MAGE-HおよびMAGE-Lを含む。
【0031】
上述したように、多くのMAGEメンバーの機能的役割は以前解明されていない。雄性の生殖細胞、胎盤を除く正常な大人の生体組織においてMAGE遺伝子は発現されていないので、この発現パターンは遺伝子ファミリーが胎盤および生殖細胞の発達および機能にかかることを示唆している。しかしながら、多くのタイプIのMAGE遺伝子(MAGE-A、B、C)が幅広い種類の組織学的にはっきりとした腫瘍において発現されている。下の段落ではインビトロ環境下におけるMAGE遺伝子の機能について知られていることを要約した。
【0032】
文献においてアポトーシスおよび細胞の成長におけるMAGE遺伝子の関与を確認した幾つかのレポートが存在するが、これらのレポートはMAGEが成長する細胞もしくは癌細胞において細胞の成長およびアポトーシスを刺激もしくは抑制するか否かについての見解は異なる。例えば、ネクデン(Necdin)が細胞転写因子E2F1と相互作用と報告され、また、早期の神経(細胞)において特種な細胞成長促進剤として報告された(Tanimuriらの1998, Necdin, a post mitotic
neuron-specific growth suppressor, interacts with viral transforming proteins
and cellular transcription factor E2F1, J. Biol. Chem. 273: 720-8を参照)。しかしながら、同じの作者の別の研究によれば、ネクデンとp53たんぱく質とが人工的に骨肉腫細胞において過剰発現された場合、ネクデンがp53たんぱく質と結合しうる。P53たんぱく質は、最終的に同じシステムにおいて細胞増殖およびアポトーシスの制限をもたらす多くのたんぱく質の発現に影響を与える核転写因子である。このシステムにおいて、p53の過剰発現が細胞周期停止を、最終的にアポトーシスを誘発し得、また同時にネクデンの過剰発現がp53の機能を干渉してアポトーシスを誘発する。このようにネクデンがp53と結合しうる数多くのタンパク質の一つとなり、そしてその一部もしくは全部の機能をブロックする(Taninuriらの 1999, Physical and functional interactions of
neuronal growth suppressor necdin with p53. J. Biol. Chem. 274: 16242-8を参照)。
【0033】
さらに、MAGE遺伝子がアポトーシスもしくはプログラムされたアポトーシスを誘発し得る本発明と異なることを指摘する数多くの研究が存在する。例えば、NRAGE(MAGE-D1)はアポトーシスの媒介としてのプロアポトーシスとみなされている。(Barkerらの1998, p75NTR: a study in contrasts. Cell Death
Diff. 5:346-356と、 Barrett GLらの2000,
The p75 neurotrophin receptor and neutonal apoptosis, Progr. Neurobiol. 61:
205-229と、Kapanの2000,
Neurotrophin signal transduction in the nervous system. Curr Opin Neurobiol
10:381-391と、Amirらの2000、Salehiらの2002, supraを参照)。
【0034】
MAGE-A3がマウスカスパーゼ-12を調節することが知られ、そしてMAGE-A3が筋肉細胞(RIKEN細胞株C2C12)に形質移入された場合、MAGE-A3が、持続性小胞体ストレスによる、アポトーシスに対するこれらの細胞の抵抗力に貢献するように報告されている(Morishimaらの2002, An endoplasmic reticulum
stress-specific caspase cascade in apoptosis. Cytochrome c-independent
activation of caspase-9 by caspase-12. J. Biol. Chem. 277: 34287-94を参照)。しかしながら、これらの研究では、これらの細胞においてMAGEたんぱく質への阻害がアポトーシスを自発的に引き起こすのではないことを示した。それは、通常MAGE-A3がこのマウスの筋肉細胞系において発現しないからである。さらに、これらの研究論文で、MAGE-A3の抗アポトーシス作用がカスパーゼ-12に依頼しているように見えるが、われわれの観察した悪性細胞ではカスパーゼ-12の発現はなかった。
【0035】
MAGE-A4が肝臓腫瘍性たんぱく質ガンキイン(Gankyrin)の腫瘍発生の活性を抑制するとされている(Nagaoらの2003, MAGE-A4 interacts with the liver oncoprotein gankyrin and
suppresses its tumorigenic activity. J. Biol. Chem. 278: 10668-74を参照)。この研究において、MAGE-A4がインビトロ環境での足場非依存性増殖およびガンキイン(Gankyrin)過剰発現細胞の無胸腺マウスでの腫瘍形成を部分的に抑制されたと報告された。MAGE-A4が細胞周期の進行、増殖率、その自身によるこれらの細胞におけるアポトーシスに対する作用を寄与していなかった。この研究は、本発明から得た、MAGEのAたんぱく質の阻害性が腫瘍細胞のアポトーシスを引き起こす結果とは対照てきである。
【0036】
別に研究では、MAGE遺伝子がインビトロ環境下特殊なたんぱく質との相互作用を示しているが、アポトーシスもしくは細胞増殖に対するMAGE遺伝子のとの特殊な関係を示していない。例えば、Ror2(ローファミリ(Ror family)レセプターチロシン・キナーゼ)がNRAGEを膜性のコンパートメントに隔離されることで、Msx2の転写機能に作用し、そして肢形態形成を制御しうる(Matsudaらの 2003, The receptor tyrosine kinase Ror2 associates with the
melanoma-associated antigen (MAGE) family protein Dlxin-1 and regulates its
intracellular distribution. J Biol Chem. 278: 29057-64を参照)、および、NRAGE(Dlxin-1との知られている)がPraja-1と相互作用することで、ホメオドメインタンパク質Dlx5の転写機能に作用する(Sasakiらの2002, A RING finger protein Prajal
regulates Dlx5-dependent transcription through its ubiquitin ligase activity
for the Dlx/Msx- interacting MAGE/Necdin family protein,Dlxin-l. J. Biol. Chem.
277:22541-6を参照)。
【0037】
本発明がアンタゴニスト組成物、および、癌もしくは有害な細胞増殖の処置もしくは予防のためのMAGE遺伝子発現と機能とを阻害する方法を提供する。
【0038】
雄性生殖細胞の機能もしくは発育もMAGE遺伝子産物の適切な機能に依存するので、これらの細胞内のMAGE遺伝子の阻害がその通常の発育もしくは機能を防ぐ。たとえば、Takahashiらが1995年に精原細胞の核および細胞質においてMAGE-1およびMAGE-5を同定し、MAGEたんぱく質が特に精子形成の早期段階において重要な役割を担う精巣細胞に区分された、普通の組織抗原であることと結論つけた(Cancer Res. 55: 3478-3482を参照)。Chomezらは、1995年にsMAGE遺伝子ファミリーがマウス生殖細胞の分化過程中減数分裂後の精子細胞にて発現することを示し、SMAGEたんぱく質がこれらの精子の成熟において役割を担うことを示唆した(Immunogenetics
43: 97-100を参照)。さらに最近では、Gaskelらは、2004年に胎児期精巣においてMAGEとKIT(c-KIT)とのリンクを行ったが、特に精原細胞がc-KITネガティブで、MAGEポジティブという結果を得た(Biology of reproduction
71: 2012-2021を参照)。KITへの阻害がHMC-1細胞のアポトーシスを誘発することは知られている(Maらの2002, The c-KIT mutation causing human mastocytosis is resistant to
STI571 and other KIT kinase inhibitors; kinases with enzymatic site mutations
show different inhibitor sensitivity profiles than wild-type kinases and those
with regulatory-type mutations. Blood99:1741-4を参照)。このように、たとえば、MAGEのKIT制限のような同様な機能メカニズムは、熟成中の精子細胞に存在する。われわれの発明は、もしMAGEの発現が乱され、精子細胞中のアポトーシスが誘発されれば、雄性の避妊効果をもたらすと予測する。
【0039】
したがって、本発明の一態様は、雄性哺乳動物、特に男性の避妊方法および組成物を提供する。好ましくは、この避妊方法は、以下の詳しく記述するように、一以上の低分子アンタゴニストのようなMAGE遺伝子阻害剤、siRNA、MAGE遺伝子産物に対する抗体、もしくは核酸分子のアンチセンスからなる組成物を哺乳動物に投入することからなる。
【0040】
本発明の一つの実施態様において、この組成物は、MAGE遺伝子の転写活性を制限することによってMAGE遺伝子発現を阻害する試薬もしくは因子からなる。このような組成物は、適当な場合に、MAGE翻訳後の修飾およびその分泌を阻害する試薬もしくは因子からなりうる。組成物は、MAGEと競争してMAGEパートナーたんぱく質(MAGE Partner Protein)と結合することによって、MAGE活性をブロックするMAGEアンタゴニストとして作用する試薬からなりうるので、MAGE細胞表面レセプターに限らない。あるいは、このような組成物は、その細胞上もしくは細胞内においてMAGEが一旦そのレセプターと結合することによって、伝達されたシグナルの経路を阻害する因子もしくは試薬からなりうる。
【0041】
本発明の一つの実施態様において、本発明は、MAGE生物学的活性を阻害する中和抗体を提供する。本発明の別の実施態様において、MAGE中和剤はMAGEに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。このアンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくMAGEたんぱく質の翻訳を阻害することによって、MAGE発現を阻害する。更なる別の実施態様では、中和剤は、小さい干渉RNA(siRNAがRNA干渉核酸、RNAiとして知られている)である。siRNAは、典型的には長さ21塩基を持ち、ターゲット遺伝子(例えばMAGE)と相同性をもち、そのターゲット遺伝子の活性を干渉する、ダブルスタンダードRNA分子である。
【0042】
(中和およびその他の)本発明のアンタゴニストは、好ましく癌の形成もしくは成長のための治療として用いられる。ここでの用語“中和”については、アンタゴニストがMAGEの生物的活性もしくはMAGEパートナーたんぱく質との結合を阻害もしくはブロックする能力を有することを意味する。
【0043】
本発明に適合するアンチMAGE抗体は、ポリクローン抗体であってもよいが、好ましくはモノクローナル抗体。この抗体はイソ型に特異的でありうる。
【0044】
本発明のモノクローナル抗体もしくはその結合フラグメントは、Fabフラグメント、F(ab)2フラグメント、Fab'フラグメント、F(ab')2フラグメント、Fdフラグメント、Fd'フラグメント、もしくは、Fvフラグメントでありうる。ドメイン抗体(dAbs)(Holtらの2003, Trends in Biotechnology
21:484-490を参照)も、本発明の方法に適合する。
【0045】
既知の抗原に対する抗体を生成する多様な方法は、当業者にとって自明である(例えば、Harlow and Lane, 1988, Antibodies: A Laboratory Manual. Cold Spring
Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY、または第WO01/25437号国際公開公報を参照)。特に、適切な抗体は、化学合成、細胞免疫(たとえば、細胞内抗体技術)、もしくは、好ましい組み換え発現技術によって生成される。抗体の生成方法はさらにこの分野において知られておるハイブリドーマ技術を含む。
【0046】
本発明に従えば、この抗体もしくはその結合フラグメントは、MAGEたんぱく質もしくはその抗原のフラグメントで、好ましくは、抗体がインビボで投与されるとき、抗体によって認識できるエピトープと特異的に結合しうるように特徴づけられる。抗体は、動物ホストにおいてMAGE由来免疫原性成分に伴う免疫性によって誘発され、もしくは、インビトロの免疫細胞の免疫性(免疫感作)によって形成される。抗体は、また適切な細胞株が適切な抗体コーティングDNAと共に、形質転換、形質移入、感染、もしくは、形質導入される組み換えシステムにおいて生成される。あるいは、抗体は、精製された重鎖および軽鎖の生化学的な再構成によって構築される。
【0047】
抗体はヒトもしくはヒト以外の動物から生成されうるが、好ましくは、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヤギ、羊および豚のような哺乳動物からである。好ましくは、マウスのモノクローナル抗体および抗原結合フラグメントもしくはその部分である。さらに、本発明は、キメラ抗体およびハイブリッド抗体も含む。キメラ抗体の生成のための技術は下記文献に記載されている。Morrisonらの1984, Proc. Natl. Acad. Sci.
USA,81:6851-6855、Neubergerらの1984,
Nature, 312:604- 608、および、Takedaらの1985, Nature, 314:452-454である。
【0048】
さらに、一本鎖抗体は、本発明にとって適切である(たとえばHustonの第5,476,786号、第5,132,405号米国特許、Hustonらの1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA,
85: 5879-5883、Ladnerらの第
4,946,778号特許、Birdの1988,
Science, 242: 423-426とWardらの1989,
Nature, 334: 544-546を参照)。一本鎖抗体は、アミノ酸ブリッジを経由して、重鎖をFv部分のフラグメント軽免疫グロブリン鎖とリンクさせることによって形成され、結果として一本鎖ポリペプチドになる。一価抗体も本発明に含まれる。
【0049】
抗MAGE抗体のデリバリーのためにたくさんのデリバリールートは当業者に知られている。例えば、直接注射は抗体を所望の部位にデリバリーするのに適切な手段である。また、膜状に抗体を有するリポソームを利用してこのリポソームをMAGE発現もしくはその機能が阻害されよう腫瘍部位に特異的にデリバリーすることは可能である。これらのリポソームは、モノクローナル抗体に加えて、腫瘍部位においてリリースされる、上記のように別の治療物質を含むように生成されうる(例えば、Wolffらの1984, Biochem. et Biophys. Acta,
802:259を参照)。
【0050】
本発明は、さらにMAGEアンチセンス核酸分子およびこのようなアンチセンス分子を含む組成物を提供する。細胞において、もしかして翻訳へのブロックもしくはスプライシング阻害を通じて遺伝子の発現を阻害するアンチセンスRNAの構成的発現は知られている。スプライシングへの干渉は、より特異性を得るために削除すべきイントロン配列を用いることである生物種の遺伝子産物の発現を阻害するが、他の種類に対応する同様に遺伝子産物には阻害しない。
【0051】
アンチセンスの成分は、mRNAの翻訳が阻害されるようにアンチセンスRNAとmRNAとの間の分子ハイブリダゼーションを引き起こすために、DNA配列コーティングと同様にRNA配列に対応する。この場合、特別なmRNA分子と十分に補完するためにアンチセンスRNAは特異的なものである。このようなハイブリダイゼーションはインビボ環境で起こりうる。約18から30ベース長いヌクレオチドのアンチセンス分子は、スプライシング、転写、もしくは翻訳の各レベルに関わらずにアンチセンスがMAGE遺伝子(もしくはmRNA)とハイブリダイゼーションし、そしてMAGE遺伝子発現を阻害するように、MAGE遺伝子と完全に補完しなければならない。本発明のアンチセンスは、コーディング配列、3’もしくは5’翻訳されない部位、もしくは別のイントロ配列、もしくはMAGEのmRNAを含むターゲットであるMAGEのcDNAの多くの部位のいずれかとハイブリダイゼーションすることができる。
【0052】
アンチセンスRNAは、宿主細胞においてアンチセンスRNAの発現を導くためのプロモーターを含む適切な制御配列を伴うアンチセンスRNAをコーディングするDNAが組み込まれたレトロウイルスベクタおよびプラスミドを含むベクターを経由して、形質転換もしくは形質移入によって、細胞にデリバリーされる。一つの実施態様において、MAGEのcDNAフラグメントを含むベクターの安定な形質移入および常時発現がアンチセンス配向において成功し、また、そのような発現は組織の制御もしくは開発特殊プロモーター(development-specific promoters)の制御下で行われる。デリバリーはリポソームによってもできる。
【0053】
インビボ治療のために、現在最も好ましい方法は、発現ベクターに構成されたcDNAフラグメントの安定な形質移入に代わって、アンチセンスオリゴヌクレオチドの直接デリバリーである。長さ15-30塩基を有し、コーディング配列、3’もしくは5’非翻訳領域、もしくはそれ以外のイントロ配列を含むターゲットMAGEのcDNAのいくつかの部分のいずれかに対し、もしくはMAGEのmRNAに対してハイブリダイズすることができる配列をもつ、アンチセンスオリゴヌクレオチドは好ましい。MAGEに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドのための配列は、最も強力なアンチセンス効果を有する配列として選ばれることが好ましい。アンチセンスオリゴヌクレオチド配列を決定する要因は、オリゴヌクレオチドの長さ、結合親和性およびターゲット配列への接触性を含む。インビトロにおいて、配列は、MAGEたんぱく質翻訳の阻害、および、たとえば、培地において細胞の増殖の抑制のようなMAGE関連のフェノタイプを図ることによって、そのアンチセンス活性の有効性のために、スクリーニングされうる。一般的において、RNAの多くの領域(5’および3’非翻訳領域、AUG開始部位、コーティング、スプライス部位およびイントロン)は、アンチセンスオリゴヌクレオチドのターゲットとなりうる。
【0054】
最も好ましいMAGEアンチセンスオリゴヌクレオチドは、安定で、ヌクレアーゼに高い耐性を持ち、無毒性投与量でターゲット組織側に届かせるために適切な薬物動態を有し、原形質膜を通過する能力を持つ、オリゴヌクレオチドである。
【0055】
ホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチド(Phosphorothioate antisense oligonucleotides)は用いられうる。ヘテロ環もしくは糖と同様にリン酸ジエステル結合の修飾は、効率の向上に寄与することができる。ホスホロチオエートはリン酸ジエステル結合を修飾するために用いられる。N3'-P5'ホスホラミダイト結合は、ヌクレアーゼに対してオリゴヌクレオチドを安定化し、RNAとの結合力を増すことができるもととして記載されている。ペプチド核酸(PNA)結合は、リボースおよびリン酸ジエステルバックボーンの完全な置換で、ヌクレアーゼに耐性をもち、RNAへの結合親和力を向上させ、リボヌクレアーゼHによる切断を阻害することができる。その基本構造は、アンチセンス構成成分として最適化することができるように修飾するのに適している。ヘテロ環の修飾に関して、特定のヘテロ環修飾は、リボヌクレアーゼHによる干渉されることなく、アンチセンス効果を増すことが立証されている。そのような修飾の一例は、C-5チアゾール修飾である。最後に糖の修飾も考えられる。細胞培養もしくはインビボ環境下、2'-O-プロピルおよび2'-メトキシエトキシリボース修飾は、ヌクレアーゼに対してヌクレオチドを安定化させることができる。
【0056】
デリバリールートは、上述基準に従い図った最もアンチセンス効果を提供することができるものである。インビトロ細胞培養アッセイもしくはインビボ腫瘍増殖アッセイにおいて、アンチセンスオリゴヌクレオチドの使用は、カチオン性リポソームに、レトロウイルスを介すること及び直接デリバリーが有効であることを示している。別の可能なデリバリー方法は、腫瘍細胞の細胞表面上のマーカーに対する抗体の使用である。MAGEもしくはそのレセプターに対する抗体はこの目的を達成することができる。
【0057】
あるいは、(例えばsiRNA、リボザイム、アプタマー)のような遺伝子発現を阻害もしくは干渉する核酸配列は、MAGEをコーティングするRNAもしくはDNAの活性を阻害もしくは干渉させるために用いられる。
【0058】
siRNA技術は、真核細胞で起きる、配列特異的な転写後の遺伝子発現プロセスに関連する。一般的に、このプロセスは、特定な配列のmRNAがこの配列と同様の配列を有する二本鎖RNA(dsRNA)により誘発された分解に関与する。例えば、特定な一本鎖mRNA(ss mRNA)の配列に対応する長いdsRNAの発現は、そのメッセージを不安定にすることで、その対応する遺伝子の発現を“干渉”することなる。従い、選択された任意の遺伝子は、その遺伝子のmRNAの全部もしくは一部に対応するdsRNAを導入することによって抑制される。長いdsRNAが発現されると、リボヌクレアーゼIIIによってまず長さ21から22塩基ほど短いdsRNAオリゴヌクレオチドに切断されるように見受ける。したがって、siRNAが比較的に短い相同のdsRNAsの導入もしくは発現によって生じる。特にこの比較的に短い相同dsRNAの使用は下記のような特定のアドバンテージを有する。
【0059】
哺乳動物の細胞は、二本鎖RNA(dsRNA)によって影響される少なくとも2つの経路を有する。siRNA(配列特異)経路において、上記のように、開始dsRNAはまず短い干渉(si)RNAに分解される。このsiRNAは、それぞれの3’末端に突き出た2つのヌクレオチドを加えて、およそ19ヌクレオチドのsiRNAから形成する約21ヌクレオチドのsiRNAのセンスおよびアンチセンス鎖を有する。短い干渉RNAは、特殊なメッセンジャーRNAが分解されるように配列インフォメーションを提供していると考えられる一方、非特異的経路は、それは少なくとも30塩基長さの任意の配列のdsRNAによって誘発される。
【0060】
非特異効果が生じるには、dsRNAがその活性化状態において全てのたんぱく質合成を停止させるため翻訳開始因子eIF2をリン酸化するPKRと、全てのmRNAをターゲットとする非特異的酵素であるリボヌクレアーゼLを活性化する分子を合成する2', 5'オリゴアデニル酸シンセターゼ(2', 5'-AS)という、2つの酵素を活性化したからである。非特異的経路はストレスもしくはウイルス感染に対する宿主反応を意味することができ、通常は非特異的経路の効果は最小限にすることが好ましい。重要なのは、より長いdsRNAが非特異的経路を増加させるのに要求されるので、30塩基以下のより短いdsRNAがRNAiによる遺伝子抑制をもたらすのに好ましい。(Hunterらの1975, J. Biol. Chem. 250:409-17、Mancheらの1992, Mol. Cell. Biol. 12: 5239-48、Minksらの1979, J. Biol. Chem. 254: 10180-3、および、Elbashirらの2001, Nature 411:494-8を参照)。siRNAは、ヒーラ細胞、NIH/3T3細胞、COS細胞、293細胞およびBHK-21細胞を含む多種多様な細胞タイプにおける遺伝子の発現の減少に有効な方法であることを証明し、概してアンチセンス技術の使用より遺伝子の発現を低いレベルに低減させることができ、頻繁に発現を完全に削除することができる(Bassの2001, Nature 411:428-9を参照)。哺乳動物細胞において、siRNAは一般的アンチセンス実験で用いた濃度より数桁低い濃度において効果を生じる(Elbashirらの2001, Nature 411:494-8を参照)。
【0061】
RNAiに作用するために用いられる二本鎖のオリゴヌクレオチドは、長さ30塩基以下が好ましく、特に好ましくは、25,24, 23,22, 21, 20,
19, 18もしくは17塩基のリボ核酸である。オプションとして、このdsRNAオリゴヌクレオチドは3’末端の突き出しを含むことができる。例えば、3’末端の2つヌクレオチドの突き出しは、任意のリボヌクレオチド残基、もしくは2’デオキシチミジン残基からなり、RNA合成コストを低減すると共に、細胞培地および形質移入した細胞においてsiRNAのヌクレアーゼへの耐性を増強させることができる(Elbashiらの2001, Nature 411:494-8を参照)。
【0062】
50、75、100もしくは500そしてそれ以上の塩基をもつ長いdsRNAが本発明の実施態様において利用される。例えば、RNAiに作用するためのdsRNA濃度は、約0.05nM、0.1nM、0.5nM、1.0nM、1.5nM、25nMもしくは100nMである。また、その以外の濃度の細胞処置の性質によって用いることができ、それに際して、ターゲット遺伝子およびその他の因子は当業者にとって容易に判断することができる。
【0063】
例となるdsRNAは、化学的にもしくはインビトロかインビボにおいて適切なベクター発現によって合成される。例となる合成RNAは公知の方法で化学合成された21ヌクレオチドを含む。合成オリゴヌクレオチドは公知で脱保護およびゲルによる精製されることが好ましい(例えば、Elbashirらの2001, Genes Dev. 15: 188-200を参照)。長いRNAは、この技術分野で知られているT7RNAプロモーターのようにプロモーターから転写されうる。インビトロプロモーターの両方可能な下流の方向に挿入される一本鎖RNAターゲットは、所望のターゲットdsRNAオリゴヌクレオチドを作り出すためにターゲットの両方配列を転写することができる。上記任意のRNA種は、MAGE核酸を核酸配列の一部として含むようにデザインされる。
【0064】
オリゴヌクレオチドのデザインに利用される特異的配列は、発現したターゲットの遺伝子メッセージを含んでなる任意の連続した配列でありうる。当分野において知られている、プログラムおよびアルゴリズムは、適切なターゲット配列を選ぶために用いられうる。さらに、最適な配列は、デザインされたプログラムを用いて、特異的な一本核酸配列の2次構造を推測するために、そして折畳まれたmRNAの露出した一本鎖部位にこれらの配列が現れるように選ばれる。例えば、引用してここに含まれることになる米国特許第6,251,588号のように、適当なオリゴヌクレオチドをデザインする方法および構成は見つかることでできる。
【0065】
通常、mRNAはたんぱく質を合成する情報を含んでいるリボヌクレオチド配列の線状分子だと考えられているが、多くのmRNAは2次もしくは3次構造を含んでいる。RNA内の2次構造要素の大部分は、同じRNA分子内の異なる部分間のワトソン−クリック型相互作用によって形成されている。重要な2次構造要素は、分子内の二本鎖部位、ヘアピンループ、二本鎖RNAの出っ張り、内部ループ等を含む。3次構造は、2次構造が互いに、もしくは一本鎖結合して形成したより複雑な3次元構造になる。数多くの研究者は、大量RNA二本鎖構造の結合エネルギーを測定し、また、RNAの2次構造を予想するために用いられるルールを導いた(例えば、Jaegerらの1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:
7706、および、Turnerらの1988, Annu.
Rev. Biophys. Biophys. Chem. 17: 167を参照)。そのルールは、RNA構造の同定に、特に、siRNA、リボザイムもしくはアンチセンス技術のためのターゲットに対するmRNAの好ましいセグメントを代表する一本鎖RNA部位に同定に有用である。したがって、mRNAターゲットの好ましいセグメントは、本発明に適切なリボサイムおよびハンマー型リボザイム構成のデザインのためと同じようなdsRNAオリゴヌクレオチドを介在するsiRNAのデザインのために同定される(以下参照)。
【0066】
dsRNAオリゴヌクレオチドは、たとえば、付着細胞株のために製造業者によって記載されたLipofectamine 2000 (Life Technologies)のようにこの分野では知られている、リポソームのようなキャリア組成を用いる異種のターゲット遺伝子と共に形質移入によって細胞に導入される。内在性の遺伝子をターゲットとするためのdsRNAオリゴヌクレオチドの形質移入は、Oligofectamine (Life
Technologies)を用いて達成される。形質移入の効率は、hGFP-コーディングpAD3の同時形質移入後哺乳動物細胞のための蛍光顕微鏡を用いてチェックされうる(Kehlenbackらの1998, J. Cell Biol. 141: 863-74を参照)。siRNAの有効性は、dsRNAの導入後の数多くのアッセイのいずれかによって評価される。これには、新しいたんぱく質合成が抑制された後内在性プールの代謝回転ために十分な時間経過したのち、MAGE遺伝子産物を認識する抗体を用いるウエスタンブロット分析と、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応と、MAGEターゲットmRNAの存在レベルを同定するためのノーザンブロット分析とを含む。
【0067】
2003年の初頭、脂質で仲介された体系的なsiRNAのデリバリーは、効果的かつ癌の処置に有益であることが知られた。例えば、SioudとSorensenは、(2003, Biochemical and Biophysical
Research Communications 312:1220-1225)で、治療法としてのsiRNAの使用の大きな障害が効果的インビボデリバリーに関する困難であることを発見した。フルオレセイン標識siRNAを用いて、彼らは、大人のマウスに対してカチオン脂質で仲介された静脈および腹腔内デリバリーを調べ、この簡単なアプローチがsiRNAを多種多様な細胞タイプにデリバリーできることを見出した。さらに、彼らは、マウスと対照に、siRNAがヒトから新しく分離した単核白血球の非特異性経路を活性化させることを示し、結果的にTNF-αおよびIL-6産物をもたらす。彼らのデータは、特定siRNA配列が遺伝子に反応する先天免疫を活性化することができることを示した。
【0068】
Urban-Kleinら(2005, Gene Therapy 12: 461-466. (Published online 23 December 2004))は、低分子ポリエチレンイミン(PEI)錯体形成を通じて処置用のための有用なツールとして、インビボ体系におけるsiRNAの応用ための効率的そして簡単なシステムを確立した。彼らは、PEI伴う合成siRNAの非共有結合錯体形成体がsiRNAを効果的に安定し、完全に非毒性濃度下フル生物活性を示すことができる細胞にsiRNAをデリバリーすることを示した。さらに重要なことに、皮下のマウス腫瘍モデルにおいては、裸のsiRNAではなく、錯体での全身性(腹腔内;i.p.)投与により、無傷のsiRNAが腫瘍へ届けられる。c-erbB2/new(HER-2)受容体を標的とするsiRNAのPEI錯体をi.p.投与すると、裸のsiRNAと異なり、siRNAを解したHER-2の抑制を通じて腫瘍の成長を著しく減少した。
【0069】
Yanoら(2004, Clinical Cancer Research 10: 7721-7726)は、ヒトbcl-2癌遺伝子に特異的な配列からなる合成siRNAのB717と、新規のカチオン性リポソームであるLIC-101の錯体を形成する方法を考案した。この方法は、ヒトへの利用に不向きなオリゴヌクレオチドを速やかに投与するために通常用いられる流体力学法における困難を克服するものである。彼らは、肝転移のマウスモデルを用いて、錯形成されたsiRNAの抗腫瘍活性を調べた。B717/LIC-101を、医薬上許容された頻度及び量で静脈内ボーラス注入法により投与した。また、彼らは細胞を皮下に細胞が接種されている前立腺癌を持つマウスモデルを用いて、腫瘍周辺の皮下にB717/LIC-101を投与した。その結果、B717/LIC-101錯体は、インビトロにおいて、bcl-2タンパク質の発現と腫瘍細胞株の増殖を3〜100nmol/Lの濃度範囲で配列特異的に阻害することを見出した。さらに、肝転移のマウスモデルに静脈内投与した際に、錯体は強い抗腫瘍活性を有していた。B717(siRNA)は、LIC-101と錯体を形成したときのみ、マウス肝臓における腫瘍細胞へ届けることが示された。この錯体は、前立腺癌を持つマウスモデルにおいて腫瘍細胞の増殖をも阻害した。
【0070】
Duxburyら(2004, Ann Surg. 240: 667-676, Systemic siRNA-mediated gene
silencing: a new approach to targeted therapy of cancer)は、全身に投与されたsiRNAがインビボで遺伝子発現を抑制する能力を確認し、マウスの膵臓腺癌異種移植モデルを用いて腫瘍成長に対するアプローチの効果を評価した。この論文のデータは、実験的な膵臓癌に対する治療法として、全身に投与されたsiRNAの有効性を明らかにし、全身に投与されたsiRNAが難病患者を含む多様な癌に適用しうることを示唆している。彼らは、ヒト消化管癌に広く過剰発現している癌胎児性抗原関連細胞接着分子6(CEACAM6)を使用した。CEACAM6の過剰発現は、足場非依存条件下で細胞の生存を促進し、腫瘍形成と関連する特性及び転移を促進することが知られている。彼らは、リアルタイムPCRとウェスタンブロットを用いて、CEACAM6の発現を定量した。マウス(n=10/グループ)に、2 x 106のBxPC3細胞(CEACAM6を潜在的に過剰発現する細胞)を皮下に異種移植した。全身性CEACAM6特異性siRNA、又はコントロール用の一塩基ミスマッチsiRNAを投与し、6週間経過後、異方性腫瘍移植を行い、腫瘍成長、CEACAM6発現、細胞増殖(Ki-67免疫組織化学)、アポトーシス、血管形成(CD36免疫組織化学)、及び生存について比較した。その結果、CEACAM6と特異性siRNAは、原発腫瘍の増殖がコントロール用のsiRNA(P<0.05)のそれに対して68%に抑制されており、さらに増殖細胞指数の減少、血管形成障害、異種移植腫瘍におけるアポトーシスの増殖がみられた。CEACAM6特異性siRNAは、転移を完全に阻害し(マウス60%に対して0%、P<0.05)、見かけ上毒性はなく、生存率を著しく改善させた。
【0071】
更なる構成、方法そしてsiRNA技術の応用は、引用してここの一部となる第6,278,039号、および第5,244,805号米国特許によって、提供されている。
【0072】
MAGE遺伝子発現は、遺伝子のコーディング部位もしくはその発現をコントロールする調節配列を遺伝的に変えることによって阻害もしくは撹乱される。たとえば、MAGE遺伝子のプロモーターは、相同的組み換えを用いて、ターゲットとする哺乳動物細胞のゲノムに撹乱ヌクレオチド配列を挿入することによって撹乱される。ターゲット遺伝子配列のプロモーターと相同の1つもしくは2つの部位を用いて、ヌクレオチドは、相同的組み換えを通じてプロモーター部位に取り込まれることで、プロモーターを撹乱する。イントロンおよびエクソンの両方を含むコーディング部位も同様に、相同的組み換えによって、撹乱されるターゲットとされうる。より詳しい内容は、引用してここの一部となる第5,272,071号、および第5,641,670号米国特許を参照する。
【0073】
リボザイムは、RNAの特異的な切断を触媒することができる酵素機能をもつRNA分子である(Rossiらの1994, Current Biology 4: 469-471を参照)。リボザイム反応のメカニズムは、エンドヌクレアーゼ的切断を引き起こす、相補するターゲットRNAに特異的にハイブリダイズするリボザイムの配列が関与している。リボザイム分子の構成は、好ましくMAGEのmRNAと相補的な1つもしくは1以上の配列、mRNAを切断することができる良く知られている触媒配列、もしくはそれらの機能と同等の機能を持つ配列を含む(例えば、引用してここの一部となる第5,093,246号米国特許を参照)。MAGEのmRNA転写の切断を触媒するようにデザインされるリボザイム分子は、同様にMAGEのmRNAの翻訳を防ぐことができる。
【0074】
部位特異的な認識配列においてmRNAを切断するリボザイムはターゲットmRNAを破壊することができるが、ハンマーヘッド型リボザイムの使用は好ましい。ハンマーヘッド型リボザイムは、ターゲットmRNAと相補的に塩基対を形成する側面部位によって決定された部位においてmRNAを切断する。好ましくは、ターゲットmRNAが5'-UG-3'のような塩基を有する配列をもつことである。ハンマーヘッド型リボザイムの構成および生成は当該分野において良く知られ、HaseloffとGerlachの1988,
Nature 334: 585-591、および、引用してここの一部となる第W089/05852号PCTの国際公開公報に詳しく記載されている。ハンマーヘッド型リボザイムの配列は、インビボにおいて切断効率を高めるためにトランスファーRNA(tRNA)のように安定なRNAになるように、他の塩基によって埋め込まれうる(Perrimanらの1995, Proc. Natl. Acad. Sci. USA,
92: 6175-79、de FeyterとGaudronとMethodsのMolecular Biology, Vol. 74, Chapter
43, "Expressing Ribozymes in Plants", Edited by Turner, P. C, Humana
Press Inc., Totowa, N. J.を参照)。特に、RNAポリメラーゼIII媒介されたtRNA融合リボザイムの発現は当該分野でよく知られている(Kawasakiらの1998, Nature 393:284-9、Kuwabaraらの1998, Nature Biotechnol. 16: 961-5、およびKuwabaraらの1998, Mol. Cell 2:617-27、Kosekiらの1999, J. Virol. 73: 1868-77、Kuwabaraらの1999, Proc. Natl. Acad. Sci. USA,
96:1886-91、Tanabeらの2000, Nature
406: 473-4を参照)。与えられたcDNA配列において数多くの潜在的なハンマーヘッド型リボザイム切断部位が存在する。好ましくは、リボザイムが効率を高め、非機能性mRNA転写の細胞内蓄積を最小限にするためにターゲットmRNAの5’末端の隣接部に切断認識部位がくるように生成されることである。さらに、MAGEのmRNAの異なる部分をコーディングするターゲット配列に配置される任意の切断認識部位は、1つもしくは別のMAGE遺伝子の選択的な標的化を可能にする。
【0075】
遺伝子をターゲットとするリボザイムは、2つの部位に相補的にハイブリッド形成する部位を含むことが必要である。その2つの部位のそれぞれは、少なくとも5、好ましくは6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20塩基のMAGEのmRNAにおける連続したヌクレオチドである。さらに、リボザイムは、ターゲットセンスmRNAを自己触媒的に切断する、高い特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を有する。
【0076】
本発明のリボザイムは、(IVSもしくはL-19 IVS RNAとして知られている)Tetrahymena thermophilaにおいて自然に起きる一種のRNAエンドリボヌクレアーゼ(チェック型リボザイム:Cech-type ribozymes)を含む。これに関して、Zaugらの1984, Science, 224: 574-578、Zaugらの1986, Science 231:470- 475、Zaugらの1986, Nature 324: 429-433、第W088/04300号国際特許公開公報、および、Beenらの1986, Cell 47: 207-216において広く記載されている。チェック型リボザイムは、ターゲットRNAとハイブリッドを形成した後に、ターゲットRNAを切断する、8つの塩基対からなる活性部位を有する。本発明は、ターゲット遺伝子もしくは核酸配列に存在する8つ塩基対の活性部位配列をターゲットとする、これらのチェック型リボザイムを含む。
【0077】
リボザイムは、(たとえば、より安定そしてターゲッティング能を高めるために)修飾したオリゴヌクレオチドを含み、インビボでターゲット遺伝子を発現する細胞にデリバリーされなければならない。デリバリーの好ましい方法は、強い構造をもつプロモーターのコントロール下リボザイムをコーティングするDNA構成を用いることである。よって、形質移入された細胞が、内部ターゲットメッセージを破壊および翻訳を阻害するための十分量のリボザイムを生成することができる。また、アンチセンスと異なり、リボザイムが触媒なので、低い細胞内濃度で十分である。
【0078】
ある実施態様では、リボザイムは、RNAiによって効率的にノックダウンを引き起こすための配列部位の十分な量を同定することによってデザインされうる。この同じ配列はリボザイムに含まれうる。本発明において、リボザイムもしくはsiRNAの遺伝子ターゲット部位は、実質的に少なくとも5、好ましくは6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20塩基のMAGEのmRNAにおける連続したヌクレオチドである。
【0079】
長いターゲットRNA鎖において、ターゲット部位の重要部分は、2次構造もしくは3次構造に隠れているので、リボザイムにとってアクセスしにくい(Birikhらの1997, Eur. J. Biochem. 245: 1-16を参照)。このターゲットRNAアクセス問題を解決するために、コンピュータによる予測された2次構造は、一本鎖であるかもしくは“オープン”の構造を有するターゲットに適用される(Jaegerらの1989, Methods Enzymol. 183: 281-306を参照)。別のアプローチとしては、オリゴヌクレオチド分子とハイブリッドを形成する大量の候補の評価に関連する2次的構造を予測する系統的アプローチを用いる(Milnerらの1997, Nat. Biotechnol. 15: 537-41、および、PatzelとSczakielの1998, Nat. Biotechnol. 16:64-8を参照)。さらに、引用してここの一部となる第6,251,588号米国特許は、ターゲット核酸配列へのハイブリダイゼーションの可能性を予測するために、オリゴヌクレオチドプローブを評価するための方法を記載している。本発明の方法は、一本鎖と予想されるターゲットmRNA配列の好ましいセグメントを選ぶための方法の使用、さらに、同一もしくは実質同一のターゲットmRNA配列の日和見性の利用のために提供する。本発明のsiRNAオリゴヌクレオチドおよびリボザイムの両方のデザインにおいて、ターゲットmRNAの約10から20連続的ヌクレオチドを含んでなることが好ましい。
【0080】
あるいは、MAGE遺伝子発現は、体内のターゲット細胞における遺伝子の転写を防ぐために三重らせん構造を形成するために遺伝子の調節領域(例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサー)に補完するターゲットデオキシリボヌクレオチド配列によって低減される(一般的にHelene, C.の1991, Anticancer Drug Des., 6:
569-84、Helen, C.らの1992, Ann.
N.Y Acad. Sci. , 660: 27-36、および、Maher, L. J.の1992, Bioassays 14:807-15を参照)。
【0081】
転写の阻害のために三重らせん構造に用いられる核酸分子は、一本鎖かつデオキシリボヌクレオチドからなることが好ましい。これらのオリゴヌクレオチドの塩基組成は、一般的に、二本鎖の中の一本鎖にかなり大量なプリンもしくはピリミジンのストレッチの存在が要求される、ホグスティン(Hoogsteen)塩基ペアリングルールに従って三重らせん構造を構成させる。ヌクレオチド配列は、結びついた三重らせん構造の三本鎖で結果的にTATおよびCGCを一組とするピリミジンベースであることができる。ピリミジンに富んだ分子は、二本鎖中の一本鎖のプリンに富んだ部位と補完する塩基を提供する。さらに、核酸分子は、例えば、G塩基ストレッチを含んでなるプリンに富んだ分子を選択する。これらの分子は、GCペアに富んだDNA二重らせんと三重らせんを形成させ、この場合、多くのプリン残基がターゲットの二重らせん中の一本鎖側に集中し、結果として三重らせんでCGCという組を形成される。
【0082】
あるいは、三重らせん形成のターゲットとされるMAGE配列は、“スイッチバック”と呼ばれる核酸分子の作成によって増やされる。スイッチバック分子は、二重らせんの最初の鎖を作り上げそして残りの鎖を作り上げ、プリンもしくはピリミジンが二重らせんの片側に大量存在する必要をなくした5'-3', 3'-5'交互方法によって合成された。
【0083】
更なる本発明の別の実施態様では、MAGE遺伝子を抑制するためにDNA酵素を用いるものである。DNA酵素は、アンチセンスおよびリボザイム技術の両方のメカニズム特徴の一部を有する。DNA酵素は、アンチセンスのオリゴヌクレオチドのような特別なターゲット核酸配列を認識するようにデザインされる。しかしながら、ターゲット核酸を特異的に切断する。
【0084】
2つの基本タイプのDNA酵素があって、その両方はSantoroとJoyceによって同定された(たとえば、第6,110,462号米国特許を参照)。10-23DNA酵素は2つのアームをつなぐ1つのループ構造を有する。この2つのアームは、特殊なターゲット核酸配列を認識する特異性を有する一方、ループ構造は生理学的状態下触媒作用を持つ。
【0085】
簡単に言えば、ターゲット核酸を認識し切断する理想的なDNA酵素をデザインすることは、当業者にとってまずユニークなターゲット配列を同定することになる。それは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの作成と同じようなアプローチで完成される。好ましくは、ユニークもしくは重要な配列は、およそG/Cに富んだ18から22ベースのヌクレオチドである。高いG/C含有率は、DNA酵素とターゲットとの間の相互作用を強くすることに有利である。
【0086】
DNA酵素を合成する際に、メッセージに酵素を認識させる特殊なアンチセンス認識配列は、DNA酵素の2つのアームを有することと、DNA酵素ループがその特殊なアームの間に配置することとになるように分離されている。
【0087】
DNA酵素を作成して投与する方法は、例えば第6,110,462号米国特許で見つかることができる。同様に、DNAリボザイムをインビトロもしくはインビボにデリバリーする方法は、上記したようなRNAリボザイムのデリバリー方法と同様である。あるいは、当業者が知っているように、アンチセンスオリゴヌクレオチドと同様に、DNA酵素が安定性および分解への耐性を増すように修飾されることができる。
【0088】
本発明のアンタゴニスト投与の投与量は、所望の効果を生み出すのに十分量である。またその投与量は、交差反応、アナフィラキシー反応およびその類のような副作用を引き起こすような大量投与すべきではない。一般的に、投与量は、年齢、性別および患者の病状の程度によって様々で、また当業者によって決められる。この投与は特定の医師によって調整されうる。
【0089】
本発明のアンタゴニストは、非経口的に注射もしくはゆっくりとしたかん流によって投与される。このアンタゴニストは静脈、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、経皮的投与されることができる。
【0090】
本発明の別の実施態様は、本発明に従えば、生理学的および/または薬剤的に容認されるキャリア、賦形剤、希釈剤とともに、1つもしくは1つ以上のアンタゴニストを含む医薬組成物に関するものである。生理学的に容認されるキャリア、賦形剤、希釈剤は、当業者にとって知られているものである(Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th edition, (Ed. ) A. Osol,
Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1985を参照)。容認されるキャリア、賦形剤もしくはスタビライザーは、使用される投与量および濃度が患者にとって無毒であり、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸塩、アスコルビン酸のような抗酸化物質、低分子量(約10残基以下)のポリペプチド、また、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンのようなたんぱく質、ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマーアミノ酸、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、もしくは、リジンのようなアミノ酸、単糖、二糖、また、グルコース、マンノース、デキストリンを含む別の炭水化物、EDTAのようなキレート剤、マンニトールもしくはソルビトールのような糖アルコール、ナトリウムのような塩形成対イオン、および/または、Tween、Pluronics、もしくはポリエチレン・グリコール(PEG)のような非イオン性界面活性剤のようなバッファーを含む
本発明の別の実施態様は、MAGE遺伝子の発現を阻害する物質のスクリーニング方法に関し、この方法は、(1)テストの対象とされる候補物質を提供するステップと、(2)MAGE遺伝子もしくはMAGE遺伝子コンストラクトを発現する細胞内にその候補物質をアプライするステップと、(3)候補物質の存在下MAGE遺伝子およびMAGE遺伝子コンストラクトの発現レベルを検出するステップと、(4)候補物質が存在しない場合のMAGEの発現レベルを決定するステップとを含む、MAGE遺伝子の発現レベルを減少させる一種の物質が選択される方法である。
【0091】
がん細胞その生存を促進するMAGEファミリーたんぱく質の特殊なメカニズムは、MAGEたんぱく質とパートナーたんぱく質もしくはたんぱく質との間の直接な物理的な接触に通じて成立される。そのようなファミリーたんぱく質は、餌としてMAGEたんぱくと共に質酵母もしくは哺乳動物ツーハイブリッドアッセイによって同定される。したがって、MAGE機能のアッセイの一つのタイプは、特異的なパートナーたんぱく質に結合してMAGEたんぱく質の機能を干渉する物質の能力をテストするものである。ひとつのサンプルでは、われわれは、われわれがオリジナルの酵母ツーハイブリッドスクリーンで同定したMAGEたんぱく質とパートナーとともに酵母もしくは哺乳動物細胞のツーハイブリッドを用いる。これらのツーハイブリッドアッセイは、転写活性因子が2つ機能ドメインからなることと、この2つドメインが物理的に2つ互いに結合することができる、異なるたんぱく質分離されうることとを基礎とする。ドメインの1つは、遺伝子プロモーターもしくは別のシス調節因子に特異的に結合するDNA結合ドメイン(BD)である。別のドメインは、プロモーター領域のすぐ下流にあるレポーター遺伝子を転写させるRNAポリメラーゼを活性化する活性ドメイン(AD)である。このようなシステムの例として、Clontech Laboratories, Inc社産の市販されたMammalian Mathmaker Two-Hybridアッセイキットがある。このアッセイのために、われわれは、MAGE遺伝子およびGAL-4DNA結合ドメインもしくはパートナーたんぱく質およびVP-16活性ドメインの融合であるたんぱく質を生成させる発現プラスミドにMAGEおよびパートナーたんぱく質cDNAをサブクローンする。一般的に、これら2つプラスミドがGAL4-BD結合サイトおよびVP16-AD活性サイトの下流にあるCATレポーター遺伝子コンストラクトを含むレポータープラスミドと同時に形質移入されるとき、パートナーたんぱく質へのMAGEたんぱく質の結合は、BDとADとを近づかせることによって、後にCATアッセイによって削除されるCATレポーター遺伝子を活性化させる。パートナーたんぱく質へのMAGEたんぱく質の結合を阻害する任意の物質は、CATレポーター遺伝子を遮断するので、いずれは削除されうる。別のツーハイブリッドシステムおよび別のレポーター遺伝子が用いられることができる。
【0092】
別の実施例において、パートナーたんぱく質とMAGEとの結合を検出するインビトロアッセイは、パートナーたんぱく質とMAGEとを蛍光および蛍光エンハンサーもしくは蛍光消光剤に結合する“分子指標”と呼ばれる技術を用いる。この技術では、ラベルされたMAGEもしくはパートナーたんぱく質蛍光シグナル量は、近い距離にあるパートナーたんぱく質とMAGEとに結合している蛍光エンハンサーもしくは消光剤によって、増強もしくは消光される。MAGEとパートナーたんぱくとの間の干渉は、蛍光を蛍光エンハンサーもしくは蛍光消光剤と分離させるので、蛍光の強度シグナルの変化をもたせ、対象物質の特定をもたらす。
【0093】
更なるアッセイは、転写および翻訳のレベルでMAGE遺伝子もしくはMAGE遺伝子の機能の活性を阻害するための物質の利用可能性を基礎とする。このアッセイは、特異的で機能性MAGE遺伝子mRNAの検出のための多くの通常技術の中の一つを用いることができる。一つの例として、プロモーター配列、接近している下流配列、および、MAGE遺伝子の転写開始および翻訳開始部位をコーティングする配列は、CATレポーター遺伝子コーティング部位のようなレポーター遺伝子cDNAと融合される。この構造は、MAGE発現細胞株に安定的に形質移入され、それで得られる細胞株は、レポーターたんぱく質の発現を干渉する分子のスクリーンに用いられる。適当な転写因子が知られていれば、無細胞システムも用いられる。
【0094】
別のアッセイが、MAGEたんぱく質酵素活性、もしくはパートナーたんぱく質の酵素活性を阻害する物質の使用可能性を検出するが、このような酵素活性は検出されなければならない。このタイプのアッセイは、自然発生基質もしくは合成基質に伴うクラシックもしくは新しい酵素基質アッセイ技術の用いることができる。
(実施例)
(実施例1.アレイ解析)
【0095】
ヒトのマスト細胞株HMC-1は、突然変異した常時活性型のKITたんぱく質の発現、および、HMC-1細胞のアポトーシスを誘起するドラッグによる活性KITの阻害に依存している。(Maらの2002, The c-KIT mutation causing human
mastocytosis is resistant to STI571 and other KIT kinase inhibitors、 kinases with enzymatic site mutations show different inhibitor
sensitivity profiles than wild-type kinases and those with regulatory-type
mutations. Blood 99: 1741-4)。しかしながら、これらの細胞においてKIT阻害剤がアポトーシスを誘発するメカニズムはまだ解明されていない。その産物がアポトーシスをコントロールするKIT関係シグナルを調整および変換することができる遺伝子を割り出すために、われわれが遺伝子チップアレイ解析を用いて特殊な遺伝子mRNAレベルにおけるアポトーシスの誘導後の変化を調査した。この調査が最初にHMC-1細胞MAGEファミリーたんぱく質を発現させることと、アポトーシスが誘発されるときにこれらのたんぱく質をコードする遺伝子が下方制御されることを明らかにした。これは、MAGE遺伝子の発現レベルを低下させることによればアポトーシスを誘発させることができることを示唆している。
【0096】
HMC-1.1細胞は2つのグループ分けられ、それぞれ3通りの培地に入れられた。コントロールグループがPBSで処置された一方、実施対象グループがKIT阻害剤である1μMのSTI571によって4時間処置された。四分の一の細胞はウエスタンブロット法のために用いられ、KITへの阻害性を確認した。残りは遺伝子チップ解析のためのRNA分離に用いられた。われわれはAffymetrix GenechipのヒトGenome U133Aチップを用いた。そのアレイはハイブリダイズされた後にスキャンされ、そのデータはdChipという解析ソフトウェアを用いて解析された。STIはやま571による処置とコントロールとのmRNA発現レベルにおける統計的有意性の相違は、独立3通りの培地から得たデータに基づいてt-testによって評価された。その値はMeans +/-SEMで表され、統計的有意性を得るため、Pが0.05以下として検討された。
【表1】

【0097】
図1は、ウエスタンブロットによるSTI571の投与後12および24時間後のHMC-1.1細胞に存在するMAGE-Aのたんぱく質レベルの結果を示している。
【0098】
上記結果は、STI571が細胞内のMAGEのmRNAおよびたんぱく質の減少、そして、細胞のアポトーシスを引き起こすことを示した。
(実施例2.多種多様な癌細胞の成長へのMAGE siRNAの著しい阻害)
【0099】
図2aおよび2bに示しているように、MAGE-D1およびMAGE-AのsiRNAが50nMおよび100nMの環境下HMC-1.1悪性マスト細胞のサブクローンの成長を著しく阻害した。50nMのMAGE-E1のsiRNAは、HMC-1.1細胞の成長の著しい阻害を示し、100nMのMAGE-AおよびMAGE-E1は、HMC-1.2悪性マスト細胞のサブクローンの成長を著しいく阻害した。
【0100】
これが一般的な効果であることを示すため、処置される可能性のある腫瘍タイプを広げるため、われわれは、培養されたヒトメラノーマ細胞の成長におけるMAGE特異性siRNAの効果に注目した。ヒトのメラノーマ株であるHs-294Tは、50nMのMAGE−A特異性siRNA、および、100nMのMAGE-D1特異的siRNAによって阻害された(図3を参照)。
【0101】
別のヒトのメラノーマ株であるA-375は、100nMのMAGE-A特異性siRNAによって、150nMのMAGE-E1特異性siRNAによって阻害された(図4を参照)。
【0102】
非特異性(ランダム的に合成された)siRNAが普通コントロールと同様にHMC-1細胞もしくはその2種類のヒトのメラノーマ株の成長を阻害しなかった(図2−4を参照)。
【0103】
さらに、siRNA(非特異性siRNAおよび特異性siRNA)のいずれとも、MAGEたんぱく質を発現させないHaCaというTヒトの上皮癌細胞株に対する悪影響を示さなかった(図5を参照)。この結果は、siRNA濃度下での使用で細胞を殺したのは、形質移入過程でも非特異性siRNAでもないことを示したことより、効果の特異性を確認した。
【0104】
さらに、siRNAの作用効果はMAGEたんぱく質への阻害を介して確認するために、われわれは、siRNAが形質移入されたHMC-1.1細胞に対してウエスタンブロットを行ったことで、特異性siRNA試薬が有効的にMAGEたんぱく質の生成を防ぐ一方、非特異性siRNA試薬がMAGEたんぱく質の生成を防ぐことができないことを発見した。

(実施例3.本発明の方法の効果を確認するためのインビボ実験)
【0105】
マスト細胞およびメラノーマ細胞の成長を阻害する合成siRNAの有用性は、インビボで、P815マウス悪性マスト細胞株を用いる高悪性度の肥満細胞症のマウスモデルで、および、S91 Cloudman(クロードマン)マウスメラノーマ細胞株を用いるメラノーマのマウスモデルでテストされた。いずれの細胞株がDBA/2マウスから分離したもので、遺伝的背景がDBA/2マウスと同一である。1.5x106 のS91メラノーマ細胞もしくは1.5 X 105のマスト細胞がDBA/2マウスの腹膜腔もしくは皮下に0.2mL注射される。いくつかの実験対象では、注射される前に細胞はsiRNA、阻害剤もしくは賦形剤によって処置されている。そのマウスは実験対象グループもしくはコントロールグループにランダム的に分けられる。
【0106】
腫瘍の表れを誘導した日もしくは皮下腫瘍細胞注射の日から、そのマウスに対して体重の1キログラムに対して10ミリグラムの比を上限とする、100μMの滅菌したPBSもしくは陽イオン性脂質で薄められたsiRNAが毎日腹腔内に注射される。
【0107】
コントロール組の動物の生存率が20日から25日の範囲内であるのに対して、本発明の効力は、コントロール組動物に比べて平均的に本発明の方法で処置された動物の方がより長く生き延びていることから立証される。
(実施例4.形質移入されていない腫瘍細胞もしくは非特異性siRNAで形質移入された細胞による予防接種されたマウスに比べて、MAGE特異性siRNAで形質移入された腫瘍細胞で予防接種されたマウスの腫瘍の成長はより低いことを示した)
【0108】
S91クロードマンメラノーマ細胞(S91 cloudman melanoma cell)(1x105)は、15%ウマの血清および2.5%のウシ胎仔血清からなる2mLのF-12K(ATCC)培地とともに6穴プレートに入れられ、形質移入の前処理を24時間行わせた。その培地は、血清もしくは抗体を含まない新鮮な培地に変えられ、その細胞は、リポフェクタミン2000TM(インビトロゲン社)を用いてその製品マニュアルにしたがって、最終1mLの量に対しsiRNAの最終濃度が100nMになるように、0.1nmolのコントロールsiRNAもしくはmMAGE-bのsiRNAによって形質移入された。4時間後、通常の培地条件になるように、2倍のウマおよびウシ胎仔血清が加えられた。形質移入の8時間後、その細胞は回収、洗浄そして再懸濁され、1mLに2.5x106の細胞が存在する濃度になるようにハンクス液で調整された。100マイクロリットル細胞液(2.5x105個細胞)がマウスの側腹部の皮下に接種され、そして腫瘍は一日おきに測定された。少なくとも2つの方向(xとy)について一日置きで腫瘍が測定され、そしてその腫瘍のサイズが15mmに到達したときにそのマウスは処分された。腫瘍の平均サイズは、通常腫瘍の成長の評価に用いられるルート(X*Y)の値で計算される。そして、全てのデータはルート(X*Y)の値で表示される。
【0109】
腫瘍の大きさが平均サイズの13mmに届いた時間は、細胞が植え込まれた日から腫瘍サイズが13mmまで大きくなる日、もしくはそのマウスによる実験の打ち切りが決まりそのマウスが処分される日までの間を経過時間として定義される。S-plus Software(Insightful Seattle, WA社製)を用いて、ログ−ランク(Log-Rank)解析に対応するカプラン−マイヤ(Kaplan-Meier)生存時間解析が行われた。線形回帰分析は、S-plus Software(Insightful Seattle, WA社製)を用いて得た結果を時間ファンクションとして、平均腫瘍サイズの成長率を測定するために用いられた。0.01以上のP値が統計的に有意義であると考えられている。
【0110】
36頭マウスが実験に用いられ、その中の10頭は処置されていない細胞(コントロール細胞)によって接種され、13頭は非特異性siRNAによって処置された細胞によって接種され、残りの13頭は、MAGE特異性siRNAによって処置された細胞によって接種された。51日目、処置されていなかった細胞で接種された全てのコントロールマウス、非特異性siRNAによって処置された細胞で接種された13頭マウスの内12頭、そして、MAGE特異性siRNAによって処置された細胞で接種された13頭マウスの内8頭(全部で30頭)が腫瘍平均サイズの13mmに到達した。平均サイズに到達した平均時間について、コントロールでは接種後33日、非特異性siRNAによって処置された細胞で接種されたマウスは30日、そしてMAGE特異性siRNAによって処置された細胞で接種されたマウスは45日であった。図7aでは、MAGE特異性siRNAによって処置された腫瘍、非特異性siRNAによって処置された腫瘍、および、コントロールとされた腫瘍を比べたカプラン−マイヤプロットを示した。図7bでは、ログ−ランク(Log-Rank)解析を用いて、MAGE特異的siRNAで処置された腫瘍をコントロールと非特異的siRNAで処置された腫瘍とを比べた。図7に示したように、コントロールマウスおよび非特異的siRNAで処置されたマウスに比べて、腫瘍の成長が極めてゆっくりであった。
【0111】
図7cは毎日の腫瘍サイズのデータをプロットし、図7dは同じデータの線形回帰分析である。図7dは、コントロール組に対して接種後の腫瘍が毎日平均0.32mmを成長し、非特異性siRNAによって処置されたグループでは、毎日平均0.38mmを成長し、そして特異性siRNAによって処置されたグループでは、毎日平均0.15mmしか成長していなかったことを示している。
(実施玲5.低分子MAGE阻害剤のスクリーニング方法)
【0112】
ジャクソン実験室(Bar Harbor ME にあるJackson Labs)雄のDBA/2マウス(8週才)は、通常の齧歯類用餌と水が制限なく供給されるフィルターでトップを形成しているかご内に、12時間で昼/夜交互のサイクルで飼われていた。この実験が動物実験に関する国内制限にしたがっていることついて、地方の動物ケアおよび使用委員会によって承認を受けた。皮下メラノーマ腫瘍は2.5x105のS91細胞をマウスの横腹に接種することによって誘発された。このマウスは触診によって一日おきにチェックされ、その腫瘍が0.5cm3に到達したとき、マウスはランダムに、0.6nmolのコントロールか0.6nmol MAGE-bのsiRNAかの、6のN/P(各DNAリン酸塩におけるjetPETM の窒素残基の数として定義され、Zantaらの1997, In-Vitro Gene Delivery to Hepatocytes with Galactosylated
Polyethylenimine.Bioconj. Chem. 8,839-844を参照)でin vivo
Jet-PEI(Alabaster, ALにあるAvanti
Polar Lipids, Inc.社製)を含む0.1mlのintra-tumor
(IT)もしくは intra-peritoneal (IP)注射を受けるいずれかのグループに分けられた。これらマウスは、一日おきに計十回注射された。腫瘍は毎日に測定され、そしてその腫瘍のサイズが15mmに到達したとき(もしくは全体の平均が13mmに到達したとき)に処分される。図8に示されたその結果は、非経口MAGEのsiRNA投与はコントロールもしくは非特異性siRNAに比べて著しく腫瘍の成長を低下させた。
【0113】
哺乳類のツーハイブリッドアッセイ(two-hybrid assay)において、所望のたんぱく質をコーティングするcDNAは、2つ相補的な融合たんぱく質(ハイブリッド)を作り出すために相補的な発現プラスミドにクローン化される。そのプラスミドが適切なレポート遺伝子をコーティングする第三のプラスミドとともに細胞株に形質移入されるときに、もしこれ2つの融合たんぱく質互いに結合すれば、それは検出しうるシグナルを出すことになる。形質移入された細胞は、化合物ライブラリーから選ばれる化合物存在の環境下に成長し、もしその中の1つの化合物がMAGE結合を干渉すれば、レポート遺伝子のシグナルが消えることになる。そしてその化合物は、それらのメラノーマ細胞もしくは別の細胞においてアポトーシスを誘発する能力の有無についてテストされる。
【0114】
ウィスコンシン大学マディソン総合癌センター(the UW Madison Comprehensive Cancer Center)とウィスコンシン大学化学ゲノミクスケックセンター(the UW Keck Center for Chemical Genomics)とのジョイントベンチャーである、低分子スクリーニング施設(Small Molecule Screening Facility (SMSF))で、様々な確立した哺乳動物ツーハイブリッド結合アッセイが用いられ、MAGE結合をブロックしうる化合物の検出のために低分子のライブラリーがスクリーニングされる。
【0115】
SMSFは、スクリーニングおよび液体の処理装置、データ処理および解析のための情報処理、アッセイデザインの専門家、化合物ライブラリーのセンターデータベースを含む完全なサービスを提供している。SMSFは、ロボット設備、細胞に基づいたおよび低分子阻害および特別機能の活性因子のための生化学的なアッセイを用いる自動スクリーニングのための化学ライブラリーを有する。さらに、この施設は、化学情報処理(chem-informatics)、リード拡大(lead expansion)、および、候補分子の細胞毒性の解析において研究者を補助するサービスを提供する。特に、SMSFは、NCBIによって管理され、物質、化合物、バイオ活性もしくは構造で検索することができ、また、候補分子と同じバイオ活性もしくは構造を既知の化合物のシリーズから同定することができる、PubChemのようなデータベースの取り扱いに精通している。これらのリソースは、医薬品化学の力を借りる前に候補化合物の構造と機能との間の関係に対する迅速な研究を可能にした。SMSFの毒性スクリーニング機能は、NCI癌治療および予防部門(the Cancer Treatment & Diagnosis division of the NCI)のインビトロにおける抗癌ドラッグのスクリーンシステムをベースとする。そこには、様々腫瘍タイプを代表する60種ヒト腫瘍細胞株を含む全ライブラリーを有する。SMSFは既に、多くの化合物の最初のテストのために用いられる10種の腫瘍細胞株を含む、彼ら自分のスクリーン前段階システムを開発した。
【0116】
293Tのヒト胎児腎臓細胞(HEK-293T細胞)もしくはCOS7細胞が、哺乳動物ツーハイブリッドプラスミドと共に形質移入された後に、SMFSライブラリーの段階的なスクリーニングおよびヒトマスト細胞およびメラノーマ株におけるアポトーシスを誘発することができる化合物の検証が続く。pFR-LUCは、CATレポータープラスミドの代替としてSMFSのロボットシステムに用いられる。CATレポータープラスミドのように、pFR-LUCは、CAT遺伝子というより発光酵素遺伝子cDNAをコントロールするマルチGAL4プロモーター配列を含む。
【0117】
候補化合物は、さらにインビボにおいてMAGEポジティブのヒトメラノーマ細胞株おけるアポトーシスを誘発する可能性の有無についてテストされる。結果は、大規模なリン酸カルシウム技術がHEK-293Tによる少なくとも95%の形質移入効果をもたらしたことと、SMFSにおけるスクリーニングにとって十分であることとを示した。多くの標準技術が安定した形質移入された細胞株を確立させるためにも用いられる。
【0118】
NCIライブラリー(NCI01、NCI02、および、NCI03詳細は後に記述する)が比較的に小さいライブラリーで、大きくてより複雑なライブラリーに行く前の最初にスクリーニングされる。たとえば、最初のスクリーニングは、レポーターシステムと共に検出に必要な細胞もしくはウェルの数(通常は3,000および10,000)、この施設の以前のユーザーと比較するための一般的な毒性統計、用いられる化合物の濃度のレンジ、そして、94ウェルプレートフォーマットもしくはもっと効率的な384ウェルフォーマットを用いる必要があるかいなか、のような基本パラメーターの決定を可能にする。中間程度のライブラリーである、既知バイオ活性ライブラリー(The Known Bioactive Library)は既知生物学的な活性に伴う4160分子からなる。最後に、2つ高度複雑ライブラリーである、ケンブリッジライブラリー(Chembridge
Library)およびケミダイブライブラリー(ChemDiv Library)がスクリーニングされる。
【0119】
有望な分子候補は、一般的な毒性およびSMFSで決めたLC50投与量のためにスクリーニングされる。有望な化合物は、これらのHMC1.1およびHMC1.2細胞におけるアポトーシスを誘発し、そしてHs-294TとA375ヒトメラノーマ細胞株を殺す能力の有無を検証するためにさらにスクリーニングされる。NIH3T3細胞は付加的なネガティブコントロールの役割を果たす。
【0120】
NCIライブラリーは、NCI01、NCI02およびNCI03からなる。NCI01ライブラリーは、140,000種化合物のNCIオープンコレクションから選んだ1990種化合物からなる。これらの化合物は薬としての利用可能性を基に選択された。NCI01ライブラリーに含まれているのは、通常でない細胞株の感受性および抵抗性パターンを示している、新しい構造タイプの57種化合物のチャレンジセットをさらに含む。NCI02ライブラリーは、NCI60細胞株スクリーンにおける広い範囲の構造多様性および成長阻害のパターンを有する879種化合物からなる。NCI03ライブラリーは、構造多様性および化合物の利用可能性に基づくNCIオープンデータベースから選んだ235種天然物からなる。
【0121】
既知バイオ活性ライブラリー(KBA01)は、計4160種化合物を有する3つ商用コレクションからなる。KBA01は、プレストウィックケミカル(Prestwick Chemical)から出ている、85%以上が販売されている、人間にとって既に安全そして生物学的に利用可能として知られた、880種高純度化合物からなる。プレストウィック化合物は、神経精神病、心臓病、免疫、炎症、無痛覚等の病域の治療をカバーしている。KBA01は、さらにスペクトル・ケミカル・コレクション(Spectrum
Chemical Collection)(Microsource Discovery
Systems,Inc.)からの2000種多様なFDA認可済みドラッグと天然物、および、シグマ・ロパック・コレクション(Sigma LOPAC collection)(Library of
Pharmacologically Active compounds)からの1280種化合物を含んでいる。これらの化合物は、市販されている薬、失敗した開発候補、特徴がよく付けてられた薬理的な活性を有する“よき基準”を代表している。これらの化合物は、最適化実験によって得られた結果であり、構造活性相関研究により合理的にデザインされているものである。
【0122】
ケンブリッジライブラリー:SMFSは、Chembridge DIVERSetから16,000種の化合物ライブラリーを所有している。これらは、デザインされる前の薬のような低分子の、一般的多様性を持つコレクションである。この化合物は、生物学的に関連した薬理作用多様性分野の広い部分をカバーするために、3D薬理作用解析に基づいて合理的に選択された。
【0123】
ケミダイブライブラリー:このライブラリーは、Chemical Diversity Labs社からの20,000種化合物である。これはケンブリッジライブラリーの補充として選択した。Chemical Diversity Labs社は、SMFSに現にある化合物のコレクションを調べ、全体の最大級の多様性を維持しながらSMFSの化学領域の隙間を埋めるために、ケミソフト(ChemsoftTM)のヘテロサイクリッククラスタ化(heterocyclic clustering)およびマトリックス最大化アルゴリズム(matrix
maximization algorithm)を行った。これらの全てのコレクションは、13-384ウェルプレートでのスクリーニングのためにコンバインそして再フォ−マットされ、384ウェルもしくは96ウェルプレートにおいてスクリーニングを行うことができる。
【0124】
いずれかのスクリーニングスキームにおいて、偽陽性および偽陰性は除かれなければならない。偽陽性となりうるのは、通常の細胞傷害性であったり、通常のアポトーシスの誘導因子であったり、もしくは転写抑制であったりする化合物を含む。これらの化合物は、発光酵素のシグナルを落とすことによって、われわれのアッセイにおいてポジティブとして読まれる。多くの通常細胞傷害性である化合物は既にSMFSにおいて同定し、その毒性スクリーニングにおいて確認され、もしくは、単にHEK-293T細胞もしくはNIH3T3細胞と共にその化合物をインキュベーションし、使用可能性をチェックされる。同じように、通常の転写抑制も既に同定され、マスト細胞株およびメラノーマ細胞株においてアポトーシスを誘発するのに失敗することによって、付加された同様な化合物が同定および確認されうる。通常のアポトーシスの誘導因子は、NIH3T3および別のコントロール細胞株においてアポトーシスを誘発することができる。
【0125】
前述の解説および例示は、本発明を明らかにするために説明してきただけであり、これに制限することを目的とするものではない。当技術分野の技術者ならば本発明の趣旨および本質を組み込んだ、開示の実施の形態の修正形態を思いつくかもしれないため、本発明は添付の特許請求の範囲およびその同等物の範囲に含まれる全ての変形形態を含むと広範囲に解釈されるべきである。上記および下記に、あるいは、上記または下記に記載した参考文献は全て、参照することにより明白に本文に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
図1は、STI571の投与12時間後および24時間後のHMC-1.1細胞におけるアポトーシスの誘発過程において、MAGE-Aのダウンレギュレーションを示している。
【0127】
図2aと2bは、MAGE-D1およびMAGE-A両方のsiRNAが50nMおよび100nMにおけるHMC-1.1悪性マスト細胞のサブクローンの増殖を著しく阻害したことを示している。
【0128】
図3は、ヒトのメラノーマ株のHs-294Tが100nMのMAGE-A特異siRNAおよび150nMのMAGE-D1特異siRNAによって阻害されることを示している。
【0129】
図4は、別のヒトメラノーマ株であるA-375が100nMのMAGE-A特異siRNAおよび150nMのMAGE-E1特異siRNAによって阻害されることを示している。
【0130】
図5は、いずれのsiRNA(特異的もしくは非特異的の両方)とも、MAGEたんぱく質を発現しないヒト上皮がん細胞株であるHaCaTにおいて悪影響を示していないことを示している。
【0131】
図6は、特異性siRNA試薬が対応するMAGEたんぱく質の合成を効率的に防ぐ一方、非特異性siRNA試薬がMAGEたんぱく質合成に対して効果を示さなかったこと指摘した、siRNAで形質移入したHMC-1.1細胞のウエスタンブロットを示している。
【0132】
図7aは、非特異性siRNAで処置されたメラノーマ細胞が注射されたマウスと、処置されていない(コントロール)メラノーマ細胞が注射されたマウスとに、MAGE特異性siRNAで形質移入されたメラノーマ細胞が注射されたマウスとを比較したカプラン−マイヤプロットを示している。
【0133】
図7bは、マウスにおいてMAGE特異性siRNAで処置されたメラノーマ増殖とコントロールと非特異性siRNAで処置されたメラノーマとの間のログ−ランク分析による比較を描き、コントロールおよび非特異性siRNA処置との両方に比較した場合に、MAGE特異性処置でメラノーマ増殖が著しく(p < 0.01)低減されたことを示している。
【0134】
図7cは、毎日の腫瘍サイズのプロットである。
【0135】
図7dは、同じデータの線形回帰分析である。
【0136】
図8は、図7と同様、腫瘍接種後の腹腔内へのsiRNA注射による処置を伴うデータを示している。


【図1】

【図2a】

【図2b】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7a】

【図7b】

【図7c】

【図7d】

【図8a】

【図8b】

【図8c】

【図8d】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
MAGE遺伝子の発現を阻害することもしくは細胞内そのMAGE遺伝子によってコードされるペプチドの機能を阻害することを含む、MAGE遺伝子を発現させる細胞のアポトーシスを誘発し、またその細胞の成長もしくは増殖を阻害する方法。
【請求項2】
MAGE遺伝子の発現を特異的に阻害するポリ核酸分子、もしくは、細胞内のMAGE遺伝子によってコードされるたんぱく質の機能を特異的に阻害するポリペプチドをその細胞に導入するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリ核酸分子が、短い干渉RNA分子、もしくは、MAGE遺伝子に対して特異的なアンチセンス核酸分子、もしくは、MAGE遺伝子と三重らせんを形成することができる核酸分子であり、それによってMAGE遺伝子の発現を阻害することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリペプチドが抗MAGE遺伝子抗体もしくは抗MAGE遺伝子産物の抗体であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体がモノクローナル抗体、もしくはそれの活性フラグメントであることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体がヒト化された抗体であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体がヒトの抗体であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記MAGE遺伝子がタイプIのMAGE遺伝子であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記タイプIのMAGE遺伝子がMAGE-A、MAGE-B、もしくは、MAGE-Cであることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記タイプIのMAGE遺伝子がMAGE-A1、A3、A5、A6、A8、A9、A10、A11もしくはA12、そしてMAGE-B遺伝子がMAGE-B1、B2、B3もしくはB4であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記MAGE遺伝子がタイプIIのMAGE遺伝子であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記タイプIIのMAGE遺伝子がネクデン(Necdin)、MAGE-D、MAGE-E(E1)、MAGE-F、MAGE-GもしくはMAGE-Hであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞が癌性細胞、悪性細胞、新生細胞であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記がん、腫瘍もしくは細胞増殖が、癌性細胞、悪性細胞、腫瘍細胞における遺伝子機能を阻害する方法である。特に、その癌、その腫瘍、もしくはその細胞増殖が、メラノーマ、リンパ腫、T細胞白血球、非小細胞肺癌、肝臓癌、胃癌、食道癌、結腸直腸癌、膵臓内分泌腫瘍、卵巣腫瘍、子宮頸癌、唾液腺癌、頭頸部扁平上皮癌、増殖性もしくは非増殖性精巣細胞、精母細胞セミノーマ、散発性甲状腺髄様癌、骨肉種、小児期星状細胞種、膀胱癌、若年性関節リウマチ、もしくは、他の有害な炎症状態下の炎症関節からの細胞、神経膠腫、神経芽細胞腫、および、悪性肥満細胞に関連する癌からなるグループから選択されるであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
哺乳動物の細胞におけるMAGE遺伝子の発現の阻害もしくはMAGE遺伝子によってコードされるポリペプチドの機能の阻害を含む哺乳動物における細胞増殖を、もしくは、MAGE遺伝子を発現させる細胞を含む癌または腫瘍を、治療する方法。
【請求項16】
前記方法が、MAGE遺伝子の発現に対して特異的に阻害するポリ核酸分子、もしくは細胞内においてMAGE遺伝子によってコードされるたんぱく質の機能を特異的に阻害するポリペプチドを細胞に投与するステップを含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリ核酸分子が、短い干渉RNA分子もしくはMAGE遺伝子に対して特異性を有するアンチセンス核酸分子もしくはMAGE遺伝子と三重らせんを形成することができる核酸分子であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリペプチドがMAGE遺伝子によってコードされるたんぱく質に対する抗体であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞が精巣にある細胞であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞が雄生殖細胞であることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
MAGEに対するアンタゴニストと医薬許容賦形剤とを含む、腫瘍細胞の形成、腫瘍細胞の成長、もしくは精巣細胞の治療に用いる医薬組成物。
【請求項22】
(1)テストされる候補物質を提供するステップと、(2)MAGE遺伝子もしくはMAGE遺伝子コンストラクトを発現させる細胞内にその候補物質をアプライするステップと、(3)候補物質の存在する場合のMAGE遺伝子およびMAGE遺伝子コンストラクトの発現レベルを検出するステップと、(4)前記候補物質が存在しない場合のMAGEの発現レベルを決定するステップとを含む、MAGE遺伝子の発現レベルを減少させる物質が選択される、MAGE遺伝子の発現を阻害する物質のスクリーニング方法。


【公表番号】特表2008−500362(P2008−500362A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515310(P2007−515310)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【国際出願番号】PCT/US2005/018413
【国際公開番号】WO2005/117974
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(500484146)ウィスコンシン・アラムナイ・リサーチ・ファウンデイション (10)
【氏名又は名称原語表記】WISCONSIN ALUMNI RESEARCH FOUNDATION
【Fターム(参考)】