説明

MBMSのためのNSAPIの割り当て

【課題】移動局が従来の無線ネットワークによって提供される件数より多い件数のマルチキャストサービスに加入することを可能にする。
【解決手段】ネットワークはマルチキャスト通信セッションを確立し、データ転送段階の間に、NSAPIを通信セッションに割り当てる。引き続き、ネットワークは、確立された通信セッションの間、マルチキャストデータを送信する。別の典型的な実施形態によると、ネットワークは2つの重複しない数値スペースを含んでおり、その場合、数値スペースのうちの1つはマルチキャストNSAPI用に確保される。この実施形態においてネットワークは、参加段階の間に移動局によってこの数値スペースから選択されたNSAPIを受信する。データ送信段階の間、ネットワークは、選択されたNSAPIに基づいてマルチキャスト通信セッションを確立し、通信セッションの間に、対応するマルチキャストデータを送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、無線ネットワークに関するものであり、詳細には、無線ネットワークにおけるマルチメディア・ブロードキャストおよびマルチキャスト・サービス(MBMS: Multi-media Broudcast and Munti-cast Service)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
第3世代パートナーシップ・プロジェクト(3GPP: Third Generation Partnership Project)は、GSM(グローバル・システム・フォー・モバイル・コミュニケーションズ: Global System for Mobile communications)とUMTS(ユニバーサル・モバイル・テレコミュニケーション・システム: Universal Mobile Telecommunication Syastem)とに基づいて、世界的に適用可能な無線システム仕様を提供している。3GPPは、広範囲の無線機能に取り組むのに加えて、MBMSにも取り組んでいる。
【0003】
MBMSは、一方向のポイント・ツー・マルチポイントおよびポイント・ツー・ポイントのブロードキャスト、およびマルチキャストによるデータ送信を可能にする。ブロードキャストサービスとして動作する場合、MBMSは、単一のソース・エンティティからあるサービスエリアの中のすべての移動局に対してデータ送信を可能にする。マルチキャストサービスとして動作する場合、MBMSは、単一のソース・エンティティから加入している移動局だけに対してデータ送信を可能にする。
【0004】
現在、マルチキャストサービスに加入または参加するには、移動局は、参加メッセージを生成してネットワークに対してそれを送信する。この参加メッセージは、ネットワークと移動局との両方の中にMBMSコンテクストを作成するため、ある手順をトリガーするであろう。この手順の間に移動局は、特定のマルチキャストサービスに関する移動局の固有情報、例えば、IPマルチキャストアドレス、アクセスポイント名(APN: Access Point Name)、移動局が選択したネットワーク層のサービスアクセスポイントID(NSAPI: Network layer Service Access Point indentifier)等を含んだ要求メッセージを送信する。3GPPによって指定されているとおり、NSAPIは、ネットワーク層のルーティングに使用される。元々、NSAPIは、パケットデータプロトコル(PDP: Packet Data Protocol)のコンテクストをインデックスするためだけに用いられていた。しかし、3GPPの最近のレリースによって、NSAPIは、MBMSのコンテクストをインデックスするのにも使用できるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
NSAPIの数値スペースは、PDPとMBMSとの両方で共有されるNSAPI値を11個しか確保していないため、移動局は、11件を超えるマルチキャストサービスに加入することを妨げられている。移動局が11件を超えるマルチキャストサービスに同時に加入できるようにするメカニズムを提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、移動局が利用可能なマルチキャストサービスの件数を増加させるための方法および装置を含む。マルチキャストサービスに関連するマルチキャストデータを受信するため、移動局は、まずマルチキャストサービスに参加または加入する。参加段階の間に、ネットワークと移動局とが、IPマルチキャストアドレスによって識別される特定のマルチキャストサービスに移動局を参加させるための情報を交換する。参加段階が完了すると、ネットワークはデータ転送段階に入る。データ転送段階の間に、ネットワークは加入する移動局のためのマルチキャスト通信セッションを確立し、マルチキャストデータを加入する移動局に送信する。
【0007】
典型的な実施形態の一例では、移動局は、参加段階の間にマルチキャストサービスID、例えばNSAPIをマルチキャストサービスに割り当てることなくマルチキャストサービスに参加する。代わりに、ネットワークは、データ転送段階の間に、加入する移動局のためのマルチキャスト通信セッションを確立し、マルチキャスト通信セッションにマルチキャストサービスIDを割り当てる。マルチキャスト通信セッションの間に、ネットワークは識別されたIPマルチキャストアドレスに関連するマルチキャストデータを送信する。マルチキャスト通信セッションが終了すると、ネットワークは、新規に確立されたマルチキャスト通信セッションによって後に利用されるよう、マルチキャストサービスIDを解放する。この実施形態において、移動局は件数を限定されることなくマルチキャストサービスに加入できる。その理由は、データが転送される準備ができるまではマルチキャストサービスIDは割当てられず、データ転送が完了するとすぐにマルチキャストサービスIDが解放されるからである。
【0008】
別の典型的な実施形態によると、ネットワークは2つの重複しないサービスIDの数値スペースを含む。その場合、第1の数値スペースはパケットサービスID、例えばPDP_NSAPI用として確保され、第2の数値スペースはマルチキャストサービスID、例えばマルチキャストNSAPI用として確保される。参加段階の間に、ネットワークは移動局からマルチキャストサービスIDを受信する。その場合、移動局はマルチキャストサービスIDを第2の数値スペースから選択して、その選択されたマルチキャストIDをマルチキャストサービスに割り当てる。データ送信段階の間、ネットワークは、選択されたマルチキャストサービスIDに基づいてマルチキャスト通信セッションを確立し、確立された通信セッションの間に、対応するマルチキャストデータを加入する移動局に送信する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】典型的な移動通信ネットワークを示す図である。
【図2】従来のMBMSの参加段階およびデータ転送段階についての典型的な信号フローを示す図である。
【図3】従来のNSAPI−IEを示す図である。
【図4】本発明によるluモードのためのポイント・ツー・ポイントのMBMSの参加段階およびデータ転送段階についての典型的な信号フローを示す図である。
【図5】本発明の典型的な一実施形態による典型的なNSAPI−IEを示す図である。
【図6】本発明の別の実施形態による高度化されたNSAPI−IEを示す図である。
【図7】本発明によるluモードのためのポイント・ツー・ポイントのMBMSの参加段階およびデータ転送段階についての典型的な信号フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明がその中で実施されてよい典型的な無線通信ネットワーク10を示す図である。
【0011】
典型的なネットワーク10は、第3世代パートナシッププロジェクト(3GPP)によって規定されるような広帯域符号分割多元接続(WCDMA: Wideband Code Division multiple Access)システムを含む。しかし、当業者には理解されるはずだが、本発明は、例えば3GPP2によって規定されるcdma2000(TIA−2000)のような、他の標準に基づく移動通信ネットワークにおいて使用されてもよい。
【0012】
無線通信ネットワーク10は、少なくとも1つのGPRSサービスのサポートノード(SGSN: Serving GPRS Support Node)20と、1つ以上の移動局100とインタフェースをとるための少なくとも1つの無線アクセスネットワーク(RAN: Radio Access Network)30とを含む。SGSN20は、ブロードキャスト/マルチキャストサービスセンタ(BM−SC: Broadcast/Multi-cast Service Center)を介して1つ以上の外部ネットワーク、例えば、パケットデータネットワーク(PDN: Packet Data Network)に接続するコアネットワークの構成要素である。一般に、SGSN20は、移動局100と外部ネットワークとの間の呼の交換および転送に責任を持つ。
【0013】
RAN30は、移動局100にSGSN20へのアクセスを提供するため、動作可能なようにSGSN20に接続している。RAN30は、GSM_EDGE無線アクセスネットワーク(GERAN: GSM EDGE Radio Access Network)か、UMTS地上無線アクセスネットワーク(UTRAN: UMTS Terrestrial Radio Access Network)か、いずれかを含んでもよい。RAN30は、少なくとも1つの基地局制御装置(BSC: Base Station Controller)34と複数の基地局(BS: Base Statation)36とを含む。BSC34は、RAN30をSGSN20に接続し、RAN30の大半の機能を制御する。RAN30とSGSN20との間のインタフェースは、GERANではGbインタフェース、UTRANではluインタフェースとして知られる。BS36は、エアインタフェースで移動局100と通信するための無線装置を含む。UTRANでは、BS36はノードBと呼ばれ、BSC34は、無線ネットワーク制御装置(RNC: radio network controller)と呼ばれる。本願では、標準特有の用語であるノードBとRNCとの代わりに、一般的な用語であるBSとBSCとを用いる。
【0014】
マルチメディア・ブロードキャストおよびマルチキャスト・サービス(MBMS: Multi-media Broudcast and Munti-cast Service)は、無線通信ネットワーク10が移動局100に提供する1つの機能である。MBMSの主な目的は、無線通信ネットワーク10において、1つ以上の移動局100に対して効率よくブロードキャストおよびマルチキャストのデータを送信することである。MBMSブロードキャストデータは、単一のソースから特定のエリア内におけるすべての移動局100に対して送信されるデータとして定義される。MBMSマルチキャストデータは、インターネットプロトコル(IP: Internet Protocol)のマルチキャストアドレスによって参照される単一のソースから1つ以上の加入する移動局100に対して送信されるデータとして定義される。
【0015】
MBMSは、本明細書内では参加段階とも呼ばれる加入段階と、データ転送段階とを必要とする。参加段階の間に、移動局100は特定のIPマルチキャストアドレスによって識別されるマルチキャストサービスに加入する。データ転送段階の間に、ネットワーク10は加入する移動局100とのマルチキャストセッションを確立し、マルチキャストサービスのデータを加入する移動局100に送信する。本明細書に記述されている本発明をよりよく理解するため、下記で、まず、無線通信ネットワーク10によって従来のように実施された状態について、参加段階とデータ転送段階との詳細を説明する。
【0016】
図2は、従来型の参加段階とデータ転送段階についての信号フローを示す図である。
【0017】
図2の信号図は、一般に、luインタフェースで実施されるポイント・ツー・ポイントのマルチキャストサービスに適用される。理解されるはずだが、多少の軽微な調整によって、同じ一般的手順はGbインタフェースでのポイント・ツー・マルチポイントのマルチキャストサービスにも適用される。
【0018】
参加段階の間に、移動局100は、マルチキャストサービスへの参加の要求をSGSN20に送信する(ステップ200)。それに応じて、SGSN20は、移動局100に対して、MBMSコンテクスト起動要求(AMCR: Activate MBMS Context Request)を送信する(ステップ205)。移動局100は、その後、ネットワーク・サービス・アクセス・ポイントID(NSAPI: Network Service Access Point Identifier)として標準に示されているマルチキャストサービスIDを選択する(ステップ210)。NSAPIを選択した後、移動局100は、AMCRを生成する(ステップ215)。その場合、生成された要求は選択されたNSAPIを含んでおり、かつ、所望のマルチキャストサービスに対応するIPマルチキャストアドレスを識別している。移動局100は、生成されたAMCRをSGSN20に送信する(ステップ220)。それに応じて、SGSN20は、要求を承認するかあるいは拒否する。SGSN20が要求を拒否すると、通信は終了する。移動局100がやはりマルチキャストサービスに参加することを望む場合、ステップ200乃至220の処理が繰り返されなければならない。しかし、SGSN20が要求を承認する(ステップ225)と、SGSN20は、AMCR承認メッセージを移動局100に送信する(ステップ230)。AMCRの承認によって参加段階は終了し、移動局は、次にはマルチキャストサービスに加入して、マルチキャストサービスを受信することができる。
【0019】
加入している間、MBMSは、定期的にマルチキャストデータを加入する移動局100に提供する。マルチキャストデータを移動局100に送信するために、ネットワーク10は、まず、移動局100とのマルチキャストセッションを確立する。マルチキャストセッションを確立するプロセスと移動局100に対するデータ転送とは、データ転送段階で発生する。
【0020】
データ転送段階の間に、SGSN20は、加入する移動局100によって前に選択されたNSAPIを無線アクセスベアラID(RAB−ID: Radio Access Bearer ID)にマップし(ステップ235)、加入する移動局100とのマルチキャストセッションを確立する(ステップ240〜255)。マルチキャストセッションの間、SGSN20は、マルチキャストデータをRAN30に送信し、RAN30は、マルチキャストデータを加入する移動局100に転送する(ステップ260)。
【0021】
図3は、先行技術に従って移動局100によってAMCRの中に含まれる、典型的なNSAPI情報要素(IE: information element)を示す図である。
【0022】
NSAPI−IEは、2オクテットの長さを持つタイプ3の情報要素である。NSAPI−IEI(NSAPI情報要素ID: NSAPI Information Element Identifier)は、第1のオクテットを占有する。ステップ210で移動局10によって選択されたNSAPIは、第2のオクテットの1〜4ビットを占有する。従来のNSAPIの数値スペースの5〜8ビットは、未使用の予備ビットである。NSAPIは長さが4ビットしかないため、先行技術では16の一意なNSAPIしか可能でない。これらの16個の可能な値のうち5個は確保されているので、移動局100には11個しかNSAPIの可能な選択肢はない。表1は、1〜ビットまでについての従来の割当てについて説明する。
【0023】
【表1】

【0024】
ユーザは、複数のマルチキャストサービスに加入することを望む可能性がある。PDPとMBMSコンテクストとの両方を識別するために利用可能なNSAPIはわずか11個しかないため、従来のプロトコルでは、ユーザが11件以上のマルチキャストサービスに加入することを妨げ、実質的に11件未満のマルチキャストサービスにユーザを制限する。本発明は、ユーザが同時に加入してよいマルチキャストサービスの件数を拡大する方法を提供する。
【0025】
本発明の典型的な実施形態の一例は、本明細書では拡張された(extended)実施形態と呼ばれているが、NSAPI選択プロセスを移動局100から除去することによってこの問題に取り組む。この実施形態によれば、移動局100は、参加段階の間にNSAPIを選択することなく、ユーザが選択したマルチキャストサービスに参加する。代わりに、ネットワーク10は、データ送信段階の間にNSAPIを選択し、選択されたNSAPIを用いてマルチキャスト通信セッションを確立する。従って、この典型的な実施形態によれば、各マルチキャストサービスについて異なるNSAPIを移動局100に割り当てる代わりに、ネットワーク10が、進行中の各マルチキャストサービスに対して異なるNSAPIを割り当てる。この実施形態において、マルチキャストセッションが終了して、次のマルチキャストセッション用に再利用できるようになった時、NSAPIは解放される。さらに、この実施形態は、最大16件まで同時のマルチキャストセッションを可能にする拡張NSAPI(extended NSAPI)を採用する。しかし、移動局100は、件数を限定されることなくマルチキャストサービスに加入してもよい。
【0026】
図4は、拡張された実施形態によるIuインタフェースで提供される、ポイント・ツー・ポイントのマルチキャストサービスについての信号フローを示す図である。
【0027】
ステップ300および305は、図2のステップ200および205に対応する。移動局100が、SGSN20からAMCR要求を受信する(ステップ305)と、移動局100は、NSAPIを選択することなくAMCRを生成する(ステップ310)。結果として、生成されたAMCRは、IPマルチキャストアドレス、アクセスポイント名(APN)、MBMSプロトコル構成オプション等のような情報を含む一方で、SGSN20に送信されたAMCR(ステップ320)は、NSAPIを含まない。SGSN20は、AMCRを承認すると、参加段階を完了させるため、承認メッセージを移動局100に対して送信する(ステップ330)。
【0028】
データ転送段階の間に、SGSN20は、移動局100とのマルチキャストセッションを開始する。SGSN20は、マルチキャストセッション用の無線アクセスベアラ(RAB)を設定するため、RAN30に要求を送信する。RAN30は、図5に図示された拡張NSAPIの数値スペースからNSAPIを選択し、選択されたNSAPIをRAB−ID(無線アクセスベアラID: Radio Access Bearer IDentity)にマップする(ステップ345)。RAN30は、チャネル設定手順の一部としてRAB−IDを移動局100に提供する(ステップ350)。チャネル設定手順とRAB設定手順とを完了させることによって(ステップ355,360)、ネットワーク10は、移動局100を加入させるためのマルチキャスト通信セッションを確立する。マルチキャスト通信セッションの間、SGSN20は、BM−SCによって提供されたIPマルチキャストアドレスに関連するマルチキャストデータを、加入する移動局100に対して送信する(ステップ365)。データ送信が完了すると、マルチキャストセッションは終了し、割当てられたNSAPIが解放される。
【0029】
上述のとおり、RAN30は、図5に示すNSAPI−IEによって定義された拡張NSAPIの数値スペースからNSAPIを選択する。拡張された実施形態によると、NSAPI−IEの第2オクテットのうち、下位の4ビットである1〜4ビットは、上記の表1で定義されたように割り当てられ、この場合、値5〜15は、今度はPDPのみについて定義される。しかし、上位の4ビットである5〜8ビットは、拡張NSAPIの数値スペースとして定義され、MBMSのみについてNSAPIを定義する。表2は、拡張NSAPIの数値スペースの5〜8ビットの割り当てについて説明する。
【0030】
【表2】

【0031】
ネットワーク10がIuインタフェースでポイント・ツー・ポイント・サービス用にマルチキャスト通信セッションを設定する時、RAN30は下位ビットである1〜4ビットを0001に設定し、拡張NSAPIの数値スペースから4ビットのNSAPIを選択して、完全な8ビットのNSAPIを生成する。従って、拡張された実施形態による8ビットのNSAPIは、固定部分(1〜4ビット)と可変部分(5〜8ビット)とを含む。この実装により、拡張された実施形態は、1〜4ビットによってPDP専用に割当てられた元々の11個のNSAPIを維持する一方で、16個のNSAPIを16件の同時マルチキャストセッション専用に提供する。
【0032】
同様の手順が、Gbインタフェースで送信される、ポイント・ツー・マルチポイントのマルチキャストサービス用にも適用される。この場合、ポイント・ツー・マルチポイントのマルチキャストサービスについての参加段階は、図4に示すポイント・ツー・ポイントのマルチキャストサービスとまったく同じである。しかし、データ転送段階の間、SGSN20は、表1に示すように、従来のNSAPIを、Gbモード用のマルチキャストサービスを識別する1に設定する。
【0033】
拡張された実施形態には、従来のMBMSによって提供されるマルチキャストサービスに較べていくつか利点がある。まず、参加段階の間に移動局100が特定のNSAPIを特定のマルチキャストサービスに割当てないことから、移動局100は、件数を限定されることなくマルチキャストサービスに加入できる。さらに、ネットワーク10は、特定のNSAPIを、特定のマルチキャストサービスに割り当てる代わりに特定のマルチキャストセッションに割り当てることから、マルチキャスト通信セッションの終了時に各NSAPIが解放される。従って、拡張された実施形態によって、ネットワーク10は、時間的に重複しない別のマルチキャストセッション用にNSAPIを再利用することが可能になる。さらに、NSAPIの数値スペースの5〜8ビットによって定義される値0〜15はMBMS用に確保されており、また、1〜4ビットによって定義される値5〜15はPDP用に確保されていることから、拡張された実施形態は(RAN30によって割当てられる)MBMSサービス用と(移動局100によって割当てられる)PDPサービス用とのNSAPI割り当て間のいかなる衝突をも排除する。これによって、複数のMBMSおよびPDPサービス用のRABの確立と解放とを並行してサポートする移動局の実装が単純になる。
【0034】
本明細書の中で高度化された(enhanced)実施形態として言及される別の典型的な実施形態によると、移動局100は、参加段階の一部としてマルチキャストサービス用に高度化NSAPIを選択する。下記でさらに詳述するように、移動局100は、従来のNSAPI−IEとは別の高度化NSAPI−IEから、この高度化NSAPIを選択する。選択された高度化NSAPIに基づいてマルチキャスト通信セッションを確立した後、高度化された通信セッションの間に、ネットワーク10はマルチキャストデータを移動局100に送信する。
【0035】
図6は、高度化されたNSAPI−IEについて示す図である。
【0036】
高度化NSAPI−IEは、第1のオクテットの中に高度化NSAPI−IEIを含み、第2のオクテットの中に8ビットの高度化NSAPIの数値スペースを含む。表3に示すように、高度化NSAPIは、NSAPI−IEの第2のオクテットの中の8ビットをすべて使用し、この場合、値0〜127は確保されており、値128〜255は、Iuインタフェースでのポイント・ツー・ポイントのマルチキャストサービス用のMBMSコンテクストを識別するのに使用される。従って、高度化NSAPI−IEは、移動局100が最大で128件の異なるマルチキャストサービスに参加できるようにするため、最大128個の異なるNSAPIを提供する。
【0037】
【表3】

【0038】
本ネットワークは、従来のNSAPI−IEとは別の高度化NSAPI−IEを含み、かつ、PDP_NSAPIは従来のNSAPI−IEによって提供される数値スペースから選択されることから、高度化された実施形態は、重複しないMBMSおよびPDP_NSAPIの数値スペースを提供することになり、それは、MBMSサービスおよびPDPサービスがNSAPIを共有しなければならない状況を未然に防止する。さらに、MBMSとPDPとのNSAPIの数値スペースが重複しないため、移動局100が同じNSAPI値をPDPコンテクストとMBMSコンテクストとに割り当てるリスクが存在しない。
【0039】
加えて、MBMSの数値スペースはPDPの数値スペースより大きいため、移動局100は、より多数のマルチキャストサービスに加入することができる。典型的な実施形態において、高度化NSAPIの数値スペースは、マルチキャストサービス用に128個の異なるNSAPIを割り当てる。結果として、移動局100は、最大128件の異なるマルチキャストサービスに同時に加入してよいことになり、それは従来のシステムによって可能な11件からは大幅な向上である。しかし、当業者であれば、MBMSに割当てられるNSAPI値がPDPに割当てられるNSAPI値と重複しない限り、高度化NSAPIの数値スペースによって、表3に現在は確保として示されている値16〜127のいずれか、あるいはそのすべてのような追加のNSAPIをMBMSに割り当ててもよいことは理解できるであろう。
【0040】
図7は、高度化された実施形態のための典型的な信号フローを示す図である。図7において、図4で用いたステップ番号によって特定されるステップは、図4のステップと同一である。
【0041】
移動局100が、SGSN20からAMCR要求を受信する(ステップ305)と、移動局100は、MBMS高度化NSAPIの数値スペースから高度化NSAPIを選択し(ステップ312)、AMCRを生成する(ステップ317)。高度化NSAPIを選択することによって、移動局100は、移動局100がマルチキャストサービスへの加入を継続する限り、選択されたNSAPIを特定のマルチキャストサービスに割り当てる。選択された高度化NSAPIを含むAMCRを生成した後、移動局100は、AMCRをSGSN20に送信する(ステップ322)。SGSN20は、要求を承認すると(ステップ325)、参加段階を完了させるため承認メッセージを移動局100に対して送信する(ステップ330)。
【0042】
データ転送段階の間、SGSN20は、移動局100とのマルチキャストセッションを確立する。SGSN20は、高度化NSAPIをRAB−IDにマップし(ステップ337)、移動局100とのマルチキャスト通信セッションを確立する(ステップ340乃至360)。マルチキャスト通信セッションの間、SGSN20は、IPマルチキャストアドレスに関連するマルチキャストデータを移動局100に対して送信する(ステップ365)。
【0043】
高度化された実施形態には、従来のMBMSに較べていくつか利点がある。まず、高度化された実施形態は、MBMSによって定義されたマルチキャストサービス用にn個の異なるNSAPI、すなわち128個の異なるNSAPIを提供する。さらに、n個の異なるNSAPIによって、移動局100は、最大n個の異なるマルチキャストサービスに加入できる。さらにまた、MBMS_NSAPIはそれ以上PDP_NSAPIと交差または重複しないことから、高度化された実施形態はMBMSサービス用とPDPサービス用とのNSAPI割り当て間のいかなる衝突をも排除する。
【0044】
上記は、MBMS、NSAPI、RAB−ID等のような、3GPPに固有の用語を用いて本発明について説明している。しかし、理解されるはずだが、本発明はマルチキャストサービスに加入するかまたはマルチキャストサービスからデータを受信するプロセスの一部として、マルチキャストID、すなわちNSAPI,および/または接続ID、すなわちRAB−IDを用いる無線通信システムであればいかなるものについても適用される。
【0045】
本発明は、もちろん本発明の本質的な特徴から逸脱することなく本明細書内で具体的に述べたもの以外の方法で実行されてもよい。本発明のいくつかの実施形態は、あらゆる点で限定するものではなく例示するものであると考えるべきであり、付記した特許請求の範囲の意味およびその同等物の範囲内に入るあらゆる変更は、本発明に包含されることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線ネットワークから前記無線ネットワーク内の加入する移動局へ、マルチキャストサービスに関連するマルチキャストデータを送信する方法であって、
マルチキャストサービスIDに基づいて、前記加入する移動局とのマルチキャスト通信セッションを確立する工程と、
データ送信段階の間に、前記マルチキャストIDを前記マルチキャスト通信セッションに割り当てる工程と、
前記マルチキャスト通信セッションの間に、前記マルチキャストデータを前記無線ネットワークから前記加入する移動局へ送信する工程と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、さらに、前記マルチキャスト通信セッションが終了した時に前記マルチキャストIDを解放する工程を備えることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、さらに、前記解放されたマルチキャストIDに基づいて、前記加入する移動局との新たなマルチキャスト通信セッションを確立する工程を備えることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記マルチキャストIDが固定値部分と可変値部分とを備え、前記マルチキャストサービスIDを割り当てる工程は、前記データ送信段階の間に前記可変値部分を割り当てる工程を備えることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、前記マルチキャストIDがnビット値を備え、前記固定値部分が下位のn/2ビットを含み、前記可変値部分が上位のn/2ビットを含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記マルチキャストIDがネットワーク層のサービスアクセスポイントID(NSAPI)を備えることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、さらに、前記マルチキャスト通信セッションを確立するために、前記データ送信段階の間に前記マルチキャストIDを接続IDにマップする工程を備えることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、さらに、参加段階の間に前記移動局を前記マルチキャストサービスに加入させる工程を備えることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記マルチキャスト通信セッションがポイント・ツー・マルチポイントのマルチキャスト通信セッションを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、前記マルチキャスト通信セッションがポイント・ツー・ポイントのマルチキャスト通信セッションを含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
マルチキャストサービスに関連するマルチキャストデータを、加入する移動局へ送信するように構成された無線ネットワークであって、
マルチキャストサービスIDに基づいて、前記加入する移動局のためのマルチキャスト通信セッションを確立し、前記マルチキャスト通信セッションの間に、前記マルチキャストデータを前記加入する移動局へ送信するように構成されたコアネットワークと、
前記コアネットワークと動作可能に接続された無線アクセスネットワークであって、データ送信段階の間に、前記マルチキャストサービスIDを前記マルチキャスト通信セッションに割り当てるように構成されている無線アクセスネットワークと、
を備えることを特徴とする無線ネットワーク。
【請求項12】
請求項11に記載の無線ネットワークであって、前記無線アクセスネットワークが、前記マルチキャスト通信セッションが終了した時に前記マルチキャストIDを解放するようにさらに構成されていることを特徴とする無線ネットワーク。
【請求項13】
請求項12に記載の無線ネットワークであって、前記無線アクセスネットワークが、前記データ送信段階の間に前記解放されたマルチキャストIDを新規のマルチキャストセッションに割り当てるようにさらに構成されていることを特徴とする無線ネットワーク。
【請求項14】
無線ネットワークから前記無線ネットワーク内の移動局へ、マルチキャストサービスに関連するマルチキャストデータを送信する方法であって、
第1の数値スペースをパケットサービスID用に確保し、第2の重複しない数値スペースをマルチキャストサービスID用に確保する工程と、
マルチキャストサービスIDを前記移動局から受信する工程であって、参加段階の間に、前記受信されたマルチキャストサービスIDが移動局によって前記第2の数値スペースから前記マルチキャストサービス用に選択される工程と、
データ送信段階の間に、前記選択されたマルチキャストサービスIDに基づいて前記移動局のためにマルチキャスト通信セッションを確立する工程と、
前記確立されたマルチキャスト通信セッションの間に、前記マルチキャストデータを前記無線ネットワークから前記移動局へ送信する工程と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記第1の数値スペースが第1の値の範囲を有し、前記第2の数値スペースが前記第1の値の範囲とは異なる第2の値の範囲を有することを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記第1の値の範囲が5から15までの範囲の値を有し、前記第2の値の範囲が128から255までの範囲の値を有することを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項14に記載の方法であって、さらに、前記マルチキャスト通信セッションを終了する工程と、前記割り当てられたマルチキャストIDを同一のマルチキャストサービスに関連する後のマルチキャスト通信セッション用に確保する工程とを備えることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項14に記載の方法であって、前記マルチキャストIDがネットワーク層のサービスアクセスポイントID(NSAPI)を備えることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項14に記載の方法であって、さらに、前記データ送信段階の間に、前記マルチキャストサービスIDを接続IDにマップする工程を備えることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項14に記載の方法であって、前記マルチキャスト通信セッションがポイント・ツー・ポイントのマルチキャスト通信セッションを含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
マルチキャストサービスに関連するマルチキャストデータを移動局へ送信するように構成された無線ネットワークであって、
無線インタフェースで前記移動局と通信するように構成された無線アクセスネットワークと、
前記無線アクセスネットワークと動作可能に接続されたコアネットワークとを備え、
前記コアネットワークが、
パケットサービスID用の第1の数値スペースとマルチキャストサービスID用の第2の重複しない数値スペースとを確保し、
参加段階の間に、前記第2の数値スペースから前記移動局によって選択されたマルチキャストサービスIDを前記マルチキャストサービス用に受信し、
データ送信段階の間に、前記選択されたマルチキャストサービスIDに基づいて前記移動局のためにマルチキャスト通信セッションを確立し、
前記確立されたマルチキャスト通信セッションの間に、前記マルチキャストデータを前記移動局へ送信することを特徴とする無線ネットワーク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−155649(P2011−155649A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−19056(P2011−19056)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【分割の表示】特願2007−539540(P2007−539540)の分割
【原出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】