説明

MEMSチップ用吸着コレット

【課題】表面中心部に薄い膜の振動膜を有するチップをピックアップすることができる吸着コレットを提供する。
【解決手段】吸着コレット1は、ウェハーダイシングされたMEMSチップ10をピックアップするものであり、ピックアップ対象のMEMSチップ10の周辺を吸着固定する際にエアーが通過する吸着孔201と、ピックアップ対象のMEMSチップ10を吸着コレット1側へ突き上げる突き上げ針が通過する貫通孔202と、を備える。また、貫通孔202とMEMSチップ10の表面部における振動膜部102以外の領域とが対向している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMSチップについて、ウェハーよりチップを取り出す工法に採用される吸着用コレット、及び、ダイシングテープからチップを剥離させるピックアップの工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウェハーダイシングされたICなどの半導体デバイス(チップ)のピックアップ工法では、通常はチップ中心位置にて表面吸着や裏面突き上げが行われている。
【0003】
従来のピックアップ方法の一例として、粘着シートに、その一面を接着面として貼付けられた電子部品(チップ)を剥離するためのピックアップ方法であって、粘着シート側より接着面上の電子部品を押圧することで、この粘着シートを拡張させる第一の工程と、粘着シート側より接着面上の電子部品の端部を押圧することで、この電子部品を粘着シートより剥離する第二の工程とを備える情報が知られている。当該第二の工程においては、接着面上の電子部品の両端部を交互に押圧することで電子部品を粘着シートより剥離することや、また、接着面上の電子部品の一端を押圧して押し上げた後、そのまま他端へ水平移動させることが行われる(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−210922号公報
【特許文献2】特開2008−210923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、表面吸着によりチップをピックアップする際には、表面中心部が薄い膜の振動膜により形成されるMEMSチップでは、直接吸着できず、且つ裏面部もチップの外周部以外は中空構造により突き上げができず、独自のピックアップ工法が求められていた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、表面中心部に薄い膜の振動膜を有するチップをピックアップすることができる吸着コレット及びピックアップ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の吸着コレットは、ウェハーダイシングされたMEMSチップをピックアップする吸着コレットであって、ピックアップ対象のMEMSチップの周辺を吸着固定する際にエアーが通過する吸着孔と、前記ピックアップ対象のMEMSチップを当該吸着コレット側へ突き上げる突き上げ針が通過する貫通孔と、を備え、前記貫通孔と前記MEMSチップの表面部における振動膜部以外の領域とが対向する。
【0008】
この構成により、表面中心部に薄い膜の振動膜を有するチップをピックアップすることができる。ピックアップ時には、振動膜部に触れることないため、振動膜部が破損することを回避できる。
【0009】
また、本発明の吸着コレットは、前記貫通孔が、菱形形状の前記MEMSチップの前記振動膜部以外の領域である鋭角部と対向し、MEMSチップと対向する表面から突出した三角形状の先端部に形成される。
【0010】
この構成により、菱形形状のMEMSチップの鋭角部に形成される突き上げ針による突き上げ領域の形状と対応する形状で貫通孔が形成される。したがって、エアーが当該突き上げ領域の周辺に極力漏れないようにすることが可能である。
【0011】
また、本発明のピックアップ方法は、ウェハーダイシングされた菱形構造のMEMSチップをピックアップするピックアップ方法であって、吸着コレットにより、ピックアップ対象の前記MEMSチップの周辺を吸着固定する吸着工程と、突き上げ針により、前記ピックアップ対象のMEMSチップの表面部における振動膜部以外の領域を突き上げる突き上げ工程と、を有する。
【0012】
この方法により、表面中心部に薄い膜の振動膜を有するチップをピックアップすることができる。ピックアップ時には、振動膜部に触れることがないため、振動膜部が破損することを回避できる。
【0013】
また、本発明のピックアップ方法は、前記吸着工程と前記突き上げ工程とを同期させる。
【0014】
この方法により、吸着コレットによる吸着動作と突き上げ針による突き上げ動作とを同時に行うことができ、効率よくダイシングテープより剥離させることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明により、ウェハーマウントされたダイシングテープからの菱形MEMSチップのピックアップが可能になる。更に、量産への連続稼動に向けた設備パラメータの検討構築により、MEMSチップのピックアップによってプリント基板へダイレクトにボンディングすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態における菱型MEMSチップ用コレットの示す外観図
【図2】本発明の実施形態1における菱型MEMSチップのコレット接触部を示す図
【図3】本発明の実施形態における菱型MEMSチップ用コレットの先端部を示す図
【図4】本発明の実施形態における菱型MEMSチップ用コレットの先端部の拡大図
【図5】本発明の実施形態における吸着筒の外観図
【図6】本発明の実施形態における菱型MEMSチップの裏面突き上げ箇所を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
本発明の実施形態では、MEMSチップの一例として、マイクロホン用のMEMSチップを想定している。マイクロホン用のMEMSチップは振動膜を有しており、この振動膜は、非常に脆く、吸着はおろか触れることも一切できないことから、その部位を避けた菱形形状のコーナー2箇所に吸着エリアのポイントを設定し、吸着面積と吸着流量からコレット形状を決定する。裏面の台座についても菱形形状のコーナー部の2箇所を使い、その中心位置に突き上げポイントを決定した。なお、菱形形状とすることは一例であり、この形状に限られない。
【0019】
図1は菱形MEMSチップを吸着するための吸着コレットの全体構造図である。図1に示す吸着コレット1は、吸着動作を行う吸着筒2、吸着筒2、着脱可能なボールプランジャ3、吸着筒2及びボールプランジャ3を支持するフランジ3、を有して構成される。吸着コレット1の材質としては、ピックアップ下降衝撃並びに繰り返し耐久性が要求されることから、超鋼材が選定される。吸着コレット1の吸着筒2は、先端部101を有しており、先端部101は、図2に示すMEMSチップ10の振動膜部102と対向する領域を避けて形成されている。
【0020】
吸着コレット1は、図1及び図5に示すように、ピックアップ対象のMEMSチップ10の周辺を吸着固定する際にエアーが通過する吸着孔201と、ピックアップ対象のMEMSチップ10を吸着コレット1側へ突き上げる突き上げ針20が通過する貫通孔202と、を備え、貫通孔202とMEMSチップ10の表面部における振動膜部102以外の領域とが対向することを特徴としている。
【0021】
図2にMEMSチップ10は、エレクトレット化された薄い膜の振動板(振動膜部)102とベースのシリコンの構造体である。菱形MEMSチップ10により構成されるMEMSマイク表面部は、振動膜部102が大半の面積を占め、その薄膜構造から外部衝撃や応力に対して極めて弱い構造であり、且つシリコンの台座部分については一般的な正方形とは異なり、構造上2角は鋭角な構造になることから、UVシートとの密着面積が正方形チップよりも大きく、従来の方法ではUVシートとの剥離条件が悪い構造となっている。
【0022】
図3は吸着コレット1の先端部101を図1のα方向から見た拡大図であり、菱形MEMSチップ10のコーナー2箇所の鋭角に対応する△(三角)形状で、MEMSチップ10の吸着スペース部103に合わせた形状となっている。
【0023】
図4は吸着コレット1の吸着先端部101の拡大図である。符号105は、吸着コレット1の先端吸着部101の中心に設けられたチップ吸着孔であり、孔径はチップ重量に対するエアーの必要吸着流量との計算結果に基づき、決定される。
【0024】
次に、菱形MEMSチップ10上面からのコレット吸着動作、及び、当該吸着動作に連動するMEMSチップ10裏面側におけるダイシングテープからの突き上げ工法について説明する。図5は吸着コレット1の吸着筒2(菱型MEMSチップウェハー用の吸着筒)を図1のα方向から見た外観図である。
【0025】
ウェハーダイシングされたMEMSチップ10のピックアップ時には、ピックアップの目標対象物となるMEMSチップ10以外の周囲の他のMEMSチップにおいてピックアップの連続動作時に浮きが発生してしまう為、ダイシングテープ裏面部(図6参照)より吸着筒2にてピックアップの目標対象物となるMEMSチップ10を含む周囲をエアーにて吸着固定させる。そのために、図1のα方向から見た場合の吸着筒2の表面には、無数の吸着孔201が形成されている。
【0026】
なお、吸着孔は、φ0.5mm程度である。また、吸着筒2はφ22mm程度である。また、図5における隣合う吸着孔201同士のピッチは1.0mm程度である。
【0027】
また、ピックアップの目標対象物となるMEMSチップ10のみダイシングテープより剥離させるために突き上げ針20が吸着コレット1とは別途必要となる。そして、この吸着孔201の中には、突き上げ針20が上下運動することが可能な2箇所の貫通孔202が形成されている。この貫通孔202は、菱形形状の前記MEMSチップの前記振動膜部以外の領域である鋭角部と対向しており、MEMSチップ10と対向する表面から突出した△形状の先端部101(図3参照)に形成される。なお、2つの貫通孔202のピッチは2.89mm程度である。
【0028】
貫通孔202は、図6のMEMSチップ10の目標突き上げ位置である符号203の位置と対向するように合わせている。これらの仕様により、ピックアップの目標対象物となるMEMSチップ10の周辺のMEMSチップをエアーで吸着固定しつつ、目標対象物となるMEMSチップ10のみ針によって突き上げることができ、ダイシングテープより剥離させることができる。
【0029】
以上、コレット吸着動作及び突き上げ工法によって、吸着コレット1による吸着動作とダイシングテープからの剥離の動作が同期することで、吸着コレット1とMEMSチップ10表面の振動膜部102とが接触することなく、MEMSチップ10をピックアップすることが可能となる。なお、同期することには、吸着動作を先に開始し、吸着動作しながら突き上げを行うことを含む。したがって、異形の形状である菱形MEMSチップ10について、チップにダメージを与えずにピックアップすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、異形形状や一部に脆弱部の構造をもつウェハーチップについて、チップ表面吸着と裏面突き上げに活用できるスペースを見い出し、専用コレットの設計開発と台座の形状から最良の突き上げ方式の双方を両立化することで、ピックアップ工法の応用が図れると期待できる。
【符号の説明】
【0031】
1 吸着コレット
2 吸着筒
3 ボールプランジャ
4 フランジ
10 MEMSチップ
20 突き上げ針
101 菱形MEMSコレットの先端部
102 ダイシングされた菱形MEMSチップと振動膜構造
103 菱形MEMSチップのピックアップ吸着面積部
104 菱形MEMSコレットの先端吸着部の拡大部
105 菱形MEMSコレットの先端部吸着孔
201 菱形MEMSチップウェハー吸着筒の吸着孔
202 菱形MEMSチップ突き上げ針の貫通孔
203 菱形MEMS裏面部チップ突き上げ針当て位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハーダイシングされたMEMSチップをピックアップする吸着コレットであって、
ピックアップ対象のMEMSチップの周辺を吸着固定する際にエアーが通過する吸着孔と、
前記ピックアップ対象のMEMSチップを当該吸着コレット側へ突き上げる突き上げ針が通過する貫通孔と、
を備え、
前記貫通孔と前記MEMSチップの表面部における振動膜部以外の領域とが対向する
吸着コレット。
【請求項2】
請求項1に記載の吸着コレットであって、
前記貫通孔は、菱形形状の前記MEMSチップの前記振動膜部以外の領域である鋭角部と対向し、前記菱形形状のMEMSチップと対向する表面から突出した三角形状の先端部に形成される
吸着コレット。
【請求項3】
ウェハーダイシングされた菱形構造のMEMSチップをピックアップするピックアップ方法であって、
吸着コレットにより、ピックアップ対象の前記MEMSチップの周辺を吸着固定する吸着工程と、
突き上げ針により、前記ピックアップ対象のMEMSチップの表面部における振動膜部以外の領域を突き上げる突き上げ工程と、
を有するピックアップ方法。
【請求項4】
請求項3に記載のピックアップ方法であって、
前記吸着工程と前記突き上げ工程とを同期させる
ピックアップ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−258027(P2010−258027A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102990(P2009−102990)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】