説明

MIMO無線通信システム、MIMO無線通信装置、および、無線通信方法

【課題】 アクセスポイント(AP)と複数のユーザ端末(STA)を有するMIMO無線通信システムで空間分割多元接続を行う場合に、AP側でのMIMO処理に起因する通信不能、あるいは、通信劣化を防止する。
【解決手段】 複数のSTAが、1台のAPに同時に信号を送信する場合に、それぞれ自局以外に同時に送信するSTA数以上の数のアンテナを有するAPに対して、そのAPのあるアンテナには1台のSTAからの信号のみが受信されるように、STA側の送信信号を制御する。これにより、複数のSTAのキャリア周波数誤差や送信タイミング誤差が存在する場合においても、APは、MIMO処理をおこなうことなくそれぞれのSTAからの信号を受信、復調することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MIMO無線通信システムに係り、特に、ユーザ端末とアクセスポイントを空間分割多元接続により接続して通信する場合に、AP側でのMIMO処理に起因する通信不能、あるいは、通信劣化を防止するのに用いて好適なMIMO無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、空間分割多元接続(SDMA:Spatial Division Multiple Access)に関する技術が開示されている。
【0003】
非特許文献2には、空間多重(SDM:Spatial Division Multiplexing)に関する技術が開示されている。
【0004】
非特許文献3には、MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)−SDMAに関する技術が開示されている。
【0005】
特許文献1には、アレイアンテナを用いたMIMO−SDMAに関する通信システムで、各アンテナの送信信号にウェイトを与えて、空間多重通信を行う技術が開示されている。
【0006】
【非特許文献1】T.Ohgane , "A Study on a channel allocation scheme with an adaptive array in SDMA" IEEE 47th VTC, Vol.2, 1997, p.725-729
【非特許文献2】G.J.Foschini, "Layered space-time architecture for wireless communication in fading environment when using multi-element antennas", Bell Labs Tech. J, Autumn 1996, p.41-59
【非特許文献3】Andre Bourdoux, Nadia Khaled, "Joint Tx-Rx Optimisation for MIMO-SDMA Based on a Null-space Constraint", IEEE2002. P.171-172
【特許文献1】特開2005−102136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
無線周波数の利用効率や伝送速度を格段に向上できるアンテナ・信号処理技術が注目を集めている。その一つがアダプティブアレイアンテナ(AAA:Adaptive Array Antenna)と呼ばれる技術である。AAA技術では、重み付け係数(ウエイト)を用いて複数のアンテナでそれぞれ送受信される信号の振幅と位相を調整する。これにより信号対雑音比が向上し、システムの通信容量を増大させることができる。AAA技術を利用して、データの伝送速度を高速化するための技術にMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)と呼ばれる技術がある。MIMOを用いたシステムでは、送信機と受信機との間に、アンテナ数までのチャネルを設定して、通信容量を増大させることができる。
【0008】
さらに、これらの技術を異なる観点でとらえると、以下のように分類できる。
(1)異なる端末に対して伝送する空間分割多元接続(SDMA:Spatial Division Multiple Access)
(2)同一の端末に対して伝送する空間多重(SDM:Spatial Division Multiplexing)
(1)のSDMA技術は、重み付け係数(ウエイト)を用いて複数のアンテナでそれぞれ送受信される信号の振幅と位相を調整し、伝搬路における空間的な直交性を利用することにより同一周波数で同一時刻に異なるデータ系列を複数の端末に伝送する技術である。一方、(2)のSDM技術は、重み付け係数(ウエイト)を用いて複数のアンテナでそれぞれ送受信される信号の振幅と位相を調整し、伝搬路における空間的な直交性を利用することにより同一周波数で同一時刻に異なるデータ系列を同一の端末に伝送する技術である。
【0009】
さらに、これらのSDMA技術とSDM技術を複合させた技術として、MIMO−SDMA技術がある。この技術は異なる端末に対しては空間多元接続を行い、同一の端末に対しては空間多重を行う。
【0010】
また、これらを応用した無線LANにおいて、1台のAPが複数のSTAに対してそれぞれ異なるデータを送信した場合に各STAが送信する応答パケット(ACK:Acknowledgment Packet)を同時にAPに対して送信する方法が知られている。
【0011】
ところで、従来、1台のアクセスポイント(AP)と複数のユーザ端末(STA)で空間分割多元接続を行う無線通信システムのアップリンク時に、AP側で複数のSTAの受信信号をMIMO処理してそれぞれのSTAからの信号に分離する必要がある。しかしながら、複数のSTAのそれぞれのキャリア周波数や送信タイミングには誤差が存在するため、APでのMIMO処理による信号の分離ができない、あるいは、分離しきれずに非常に劣化した信号しか分離できないという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のMIMO無線通信システムでは、複数のアンテナを備え、複数のアンテナから信号を送信する少なくとも1台の第1のMIMO(Multiple Input Multiple Output)無線通信装置と、複数のアンテナを備え、複数のアンテナにより前記第1の無線通信装置の信号を受信する第2のMIMO無線通信装置とからなるようにし、第1のMIMO無線通信装置が、第1のMIMO無線通信装置と第2のMIMO無線通信装置との間のチャネル情報(CSI:Channel State Information)に基づき、第2のMIMO無線通信装置が有する複数のアンテナの少なくとも一つのアンテナに対する受信信号強度が0、または、所定のレベル以下になるように、複数のアンテナからの送信する信号を制御するようにする。
【0013】
そして、第2のMIMO無線通信装置が有するアンテナでは、前記第1のMIMO無線通信装置の一台のみ信号を受信するようにして、そのアンテナからの受信信号は、MIMO処理による信号分離を行わなくてよいようにする。
【0014】
ここで、発明のMIMO無線通信システムでは、同時に信号を伝送する前記第1のMIMO無線通信装置の台数が、第2のMIMO無線通信装置のアンテナ数より小さく、同時に信号を伝送する第1のMIMO無線通信装置の台数が、第1のMIMO通信装置の中で最も少ないアンテナ数より小さくすれば、第2のMIMO無線通信装置が有する複数のアンテナのあるアンテナに対する受信信号強度が0、または、所定のレベル以下になるように、第1のMIMO無線通信装置複数のアンテナからの送信する信号を制御することが可能になる。
【0015】
チャネル情報の取得方法として、第1のMIMO無線通信装置が、第2のMIMO無線通信装置の送信信号に基づき、チャネル情報を推定することにより、チャネル情報を取得する。
【0016】
他のチャネル情報取得方法として、第2のMIMO無線通信装置は、第1のMIMO無線通信装置の送信信号に基づいて、チャネル情報を推定し、そのチャネル情報をデータとして第1のMIMO無線通信装置に送信し、第1のMIMO無線通信装置は、第2のMIMO無線通信装置の送信信号を復調し、その信号中にデータとして格納されているチャネル情報を取得する。
【0017】
また、本発明のMIMO無線通信システムでは、さまざまなアンテナ数を持つMIMO無線通信装置を許容するために、第2のMIMO無線通信装置からの問い合わせによって、第1のMIMO通信装置のアンテナ数を第2のMIMO無線通信装置に通知する。
【0018】
また、第2のMIMO無線通信装置は、第1のMIMO通信装置のアンテナ数を取得した後、第1のMIMO無線通信装置とデータの通信を開始する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、アクセスポイントと複数のユーザ端末を有するMIMO無線通信システムで空間分割多元接続を行う場合に、AP側でのMIMO処理に起因する通信不能、あるいは、通信劣化を防止することができるMIMO無線通信システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る各実施形態を、図1ないし図9を用いて説明する。
【実施例1】
【0021】
以下、本発明に係る第一の実施形態を図1ないし図8を用いて説明する。
【0022】
先ず、図1ないし図4を用いて本発明の第一の実施形態に係るMIMO無線通信システムの構成を説明する。
図1は、本発明のMIMO無線通信システムの通信概念を説明するための図である。
図2は、本発明の第一の実施形態に係るMIMO無線通信システムの全体構成図である。
【0023】
本実施形態に係るMIMO無線通信システムは、図2に示されるように、少なくとも1台のアクセスポイント(AP:Access Point)2と複数のユーザ端末(STA:Station)3から構成される。
【0024】
AP2は、複数のアンテナを備え、STA3は、少なくとも2台以上のそれぞれ複数のアンテナを備え、AP2とSTA3の間でMIMO伝送を行う。AP2は有線ネットワーク4と接続され、このネットワーク4を介して、例えば、インターネット5に接続される。
【0025】
以下、本実施形態では、図1に示される1台のAP2と2台のSTA3から構成されるMIMO無線通信システムが通信を行う場合を例に採って説明する。また、図1のMIMO無線通信システムでは、AP2は4本のアンテナを有し、STA3(各々のSTAを表すときには、STA3a、STA3bと表記する)は、それぞれ2本のアンテナを有するものとする。
【0026】
STA3aは、送信信号を制御してAP2のアンテナ41−1に対して「ヌルを向ける」。また、同時にSTA3bは、送信信号を制御してAP2のアンテナ42−2に対して「ヌルを向ける」。ここで、「ヌルを向ける」とは、後述する方法によって取得したSTA3からUT2へのチャネル情報に基づいて、STA3が複数のアンテナから送信する信号が打ち消しあって、UT2の特定のアンテナでは電力が0、あるいは、非常に小さくなるようSTA3が送信信号の振幅と位相を制御することである。
【0027】
このように各々のSTA3a、STA3bの送信信号を制御することにより、アンテナ41−1には、STA3aからの信号は受信されずに、STA3bからの信号のみが受信され、また、アンテナ41−2には、STA3bからの信号は受信されずに、STA3aからの信号のみが受信されるようになる。
【0028】
このようにすることにより、アンテナ41−1とアンテナ41−2で受信されたそれぞれの信号は、MIMO処理を行うことなく復調することができ、STA3aとSTA3bのキャリア周波数誤差やタイミング誤差の影響をなくすことが可能となる。
【0029】
なお、本実施形態では、1台のAPに対して、2台のSTAが通信する場合を示したが、1台のAPに対して、より多くのSTAが通信する場合でも、APのアンテナに対して「ヌルを向ける」ことが可能である。例えば、1台のAPに対して、3台のSTAが通信する場合には、APの一つのアンテナに対して、2台のSTAが「ヌルを向け」、他の1台のSTAの信号のみ受信するようにシステムを制御する。1台のAPに対して、複数台のSTAが通信する場合の一般的な条件は、APのアンテナ数、STAのアンテナ数と、APに対して同時に通信するSTAの端末数に関連する。詳しくは、後述する。
【0030】
次に、図3および図4を用いて各部の構成の概要について説明する。
図3は、アクセスポイントのブロック構成図である。
図4は、ユーザ端末のブロック構成図である。
【0031】
AP2は、図3に示されるように、無線部9aと、イーサネット物理層/MAC層インタフェース50a(イーサネットは、登録商標)、バス60、メモリ70a、制御部80aとから構成される。
【0032】
無線部9aは、STA3との無線通信を行うために、データを変調して送信したり、受信信号を復調して受信データとして受け取る機能を有する。
【0033】
イーサネット物理層/MAC層インタフェース50aは、有線ネットワークとAP2を接続するためのインタフェースである。STA3が有線ネットワーク4を経由した他の装置にデータを伝送する場合や、他の装置が有線ネットワーク4を経由してSTA3にデータを送信する場合、メモリ70aに、いったんデータを格納した上で制御部80aの指示により、MAC10aやイーサネット物理層/MAC層インタフェース50aにバス60を介して出力する。
【0034】
無線部9aは、メディアアクセス制御部(MAC:Media Access Control)10a、ベースバンド(BB:Baseband)部20、高周波(RF:Radio Frequency)部30、アンテナ部40で構成される。
【0035】
MAC部10aは、データのやりとりを制御する部分である。AP2のMAC部10aはアクセス制御を行い、複数のSTA3とのデータの授受を空間分割多元接続で行う。データの送受信手順に関しての詳細は後述する。
【0036】
ベースバンド20は、MAC部10aからの制御により、送信するデータの符号化、変調、MIMO処理等を行い、送信ベースバンド信号をRF部30に出力する機能と、RF部30から入力される受信ベースバンド信号をMIMO処理、復調、誤り訂正処理を行い、受信データとしてMAC部10aに出力する機能とを有する。
【0037】
RF部30は、ベースバンド部20から入力された送信ベースバンド信号をキャリア周波数までアップコンバートしてアンテナ40に出力する機能と、アンテナ40で受信した高周波信号をダウンコンバートし、受信ベースバンド信号としてベースバンド部20に出力する機能とを有する。
【0038】
アンテナ40は、RF30から入力される高周波信号を空間に放射する機能と、空間を伝搬してきた信号を受信し、RF部30に出力する機能とを有する。
【0039】
一方、STA3は、図4に示されるように、無線部9b、インタフェース50b、バス60、メモリ70、制御部80b、コンピュータ90とから構成される。また、無線部9は、MAC部10b、BB部20、RF部30、アンテナ40とから構成される。ここでベースバンド20、RF部30、アンテナ40、バス60、メモリ70は、AP2で説明したものと同様の機能を有する。
【0040】
MAC部10bは、AP2からの制御パケットに従い、データの授受を行う。受信データはメモリ70に格納され制御部80bの制御によりI/F50bを介してコンピュータ90に出力される。
【0041】
次に、図5ないし図8を用いてSTA3とAP2の通信動作について説明する。
図5は、無線部9のブロック構成の詳細を示した図である。
図6は、MIMO受信処理部の構成の詳細を示した図である。
図7は、パケットフォーマットを示した図である。
図8は、本発明の第一の実施形態に係るチャネル情報取得からデータパケット送信までの処理手順を示したタイミングチャートである。
【0042】
本実施形態では、AP2から複数のSTA3に同時にデータを送信する場合に、各STA3からAP2へのチャネル情報を同時に送信する。チャネル情報とは送信アンテナから受信アンテナまでの間の信号の利得と位相量によって表される値であり、例えば、M個の送信アンテナのそれぞれから信号s,s,…,sを送信したときにN個の受信アンテナで受信した信号をそれぞれr,r,…,rとすると、チャネル情報Hは、以下の(式1)のように表される。
【0043】
【数1】

【0044】
ここで、各STA3からAP2にデータと同時にチャネル情報を送信することにより、そのチャネル情報を用いてSTA3がAP2に返信するACKパケットに信号処理を行い返信する場合の動作について説明する。
【0045】
図5は、MIMO−OFDM(Orthgonal Frequency Division Multiplexing)方式を用いた無線部9のブロック構成の詳細を示している。ここで、無線部9とは、図3に示したAP2の無線部9aと図4に示したSTA3の無線部9bを共に含むものである。以下では最初にAP2とSTA3の共通の動作を示し、その後にAP2とSTA3での動作が異なる部分について説明する。
【0046】
無線部9は、MAC部10、BB部20、RF部30、アンテナ部40から構成される。MAC部10は主に他の無線機との送受信パケットのやりとりを制御する。MAC部10は、送信バッファ101、FCS(Frame Check Sequence)付加部102、MAC制御部103、チャネル情報格納部104、FCS検査部105、受信バッファ106から構成される。MAC制御部103は、送信タイミングの制御と、BB部を制御して送信時の変調多値数や誤り訂正符号の符号化率や複数のアンテナから送信する信号の振幅、位相の制御とを行う。
【0047】
BB部20は、MAC部10からの制御に従いデータを変調し、送信する機能と受信信号を復調する機能を有する。BB部20は、誤り訂正符号化部201、パンクチャード部202、パーサー部203、インタリーブ部204、変調部205、MIMO送信処理部206、逆FFT部207、ガードインターバル付加部208、並直列変換部209、直並列変換部210、ガードインターバル除去部211、FFT部212、MIMO受信処理部213、復調部214、デインタリーブ部215、並直列変換部216、誤り訂正復号部217とから構成される。
【0048】
送信データが送信バッファ101に入力されると、MAC制御部103の制御に基づき送信が開始される。送信データはまず送信バッファ101からFCS付加部102に出力される。FCS付加部102では巡回符号を用いたFCSを送信データの最後に付加する。FCSを付加したデータは、誤り訂正符号化部201で誤り訂正符号化処理が行なわれる。符号化の例として、例えば、畳み込み符号、ターボ符号化が挙げられる。符号化された信号は、パンクチャード部202でMAC制御部103の制御に従い、所定の手順でデータを間引きする。パーサー部ではデータを複数のストリームに分解する。ストリームのそれぞれはインタリーブ204でデータの順序を入れ換えられ、変調部でMAC制御部の制御に従い変調される。変調方式としては、例えば、BPSK、QPSK、16QAM、64QAMがある。変調された信号は、MAC制御部103の指示に基づきサブキャリアごとに送信MIMO処理で他のストリーム信号と合成される。合成された信号はOFDM変調される。具体的には、逆FFT部207でIFFT変換され、ガードインターバル付加部208でシンボル毎にガードインターバルを付加される。並直列変換部209で信号をシリアル化し、RF部30に出力する。
【0049】
RF部30は、BB部20から入力された送信信号をキャリア周波数にアップコンバートし、アンテナ部40に出力する機能と、アンテナ部で受信したRF信号を入力し、ダウンコンバート後、BB部20に出力する機能を有する。
【0050】
アンテナ部40はRF部30から出力された送信信号を空間に効率良く放射する機能と、空間から効率良く信号を取り込む機能を有する。MIMO伝送を行うため、複数のアンテナから構成される。
【0051】
受信時には、RF部から出力される受信信号が直並列変換部210に入力され、パラレル化される。ガードインターバル除去部211によりガードインターバルが取り除かれた後に、FFT部212でFFT変換される。MIMO受信処理部213では、受信信号からチャネルを推定しチャネル情報を取得し、各アンテナ端で混ざり合った受信信号をチャネル情報に基づき復調する。ここでチャネル推定の処理方法については後述する。また、チャネル情報に基づき復調する方法としてZF(Zero Force)法やMMSE(Minimum Mean Square Error)法が知られている。次に、MIMO受信処理部213出力を復調部214で復調し、デインタリーブ部215でデータの順序を元に戻し、並直列変換部216で各ストリームの信号を一つにまとめる。一つになったデータ系列を誤り訂正復号部217でデータの誤りを訂正した後、MAC部10に出力する。MAC部10では、FCS検査部105でパケット内にデータの誤りの有無を検査する。検査と同時に受信データを受信バッファ106に保存する。
【0052】
検査の結果、誤りがなく正しくデータが受信されたと判断した場合には、MAC制御部103はACKパケットを生成して、前述した方法により送信する。また、同時に受信バッファ106内のデータを上位レイヤに出力する。
【0053】
検査の結果、誤りが存在すると判断した場合には、MAC制御部103はNACKパケットを生成して、前述した方法により送信する。また、同時に受信バッファ106内のデータを破棄する。
【0054】
図6は、MIMO受信処理部213の構成の詳細であり、ここではアンテナ数を4とした場合の構成を示している。各アンテナから受信した信号は、逆行列演算部300と乗算部301に入力される。逆行列演算部300に入力された信号Hは、以下の(式2)に示される演算処理によりウェイトベクトルWを得ることができる。
【0055】
【数2】

【0056】
そして、乗算部301で、(式2)により得られたウェイトベクトルWを受信信号に乗じることにより信号を復調することができる。
【0057】
ここで、逆行列演算部300に入力するHを求める手順を示す。図7は、パケットの構成を示している。無線部9では、受信時にパケットの各部の特性を用いて受信データを復調する。STF501は、AGC(Automatic Gain Control)制御や送受信機間の周波数オフセットの補正やシンボルタイミングの同期を行うために用いられる。LTF502は、周波数のオフセットを正確に補正するために用いられる。SIG1(503)には、送信に用いたアンテナ数が示してあり、その後に続くLTF−HT1〜LTF−HTxの数を示している。ここでは、例として、x=4の場合、すなわち、送信アンテナ数として4本を用いた場合を示している。LTF−HTiは、例えば、各アンテナから同時には、同じサブキャリアから信号を送信しないように信号を配置し、さらに各アンテナは必ずすべてのサブキャリアから所定の信号が送信されるようにすることにより、送信側のアンテナから受信側のアンテナへのすべてのチャネル情報を得ることができ、これをHで表す。ここで得られたHを用いて前述したようにウェイトベクトルWを求め、このWを受信信号SIG2(505)とData506の受信時に受信信号に乗じる。
【0058】
以下、図8により、STA3がAP2から送信されてくるチャネル情報に基づく、 AP2の所定のアンテナに「ヌルを向ける」処理について説明する。
【0059】
すなわち、AP2がSTA3からチャネル情報を取得し、SDMAを用いてデータを送信すると同時に、そのデータ中にSTA3からAP2へのチャネル情報を含めて送信する。そして、STA3は、AP2からのデータとSTA3からAP2へのチャネル情報を取得し、ACKパケットもしくはNACKパケットを送信する際に、そのチャネル情報に基づきAP2の所定のアンテナにおいてSTA3の送信信号が打ち消しあうよう送信信号を制御する場合についての処理である。
【0060】
図8は、実際にAP2がSTA3にデータを送信するまでに手順1(700)および手順2(701)を行い、その上でデータパケットを送信する手順3(702)を示している。手順1では、STA3が通信を開始するにあたり、AP2に対して接続要求パケット600(図8では、STA3−aに関するパケットは、600aとし、STA3−bに関するパケットは、600bとしている。以下のパケットも同じ)を送信する。それに対してAP2がSTA3の情報を送るよう要求する情報要求パケット601を送信し、STA3がそれに対するSTA3の情報を含めた情報パケット602を送信することを示している。ここでSTA3の情報とは、STA3が備えるアンテナの数や、端末における「ヌルを向ける」仕組の有無である。なお、AP2において、システムを構成するすべての端末局STA3のアンテナ数が分かっている場合には、上記の手順1(700)中のAP2がSTA3の情報を送るよう要求する情報要求パケット601とSTA3が情報要求パケット601に対するSTA3の情報を含めた情報パケット602の送信を省略してもよい。
【0061】
本実施形態では、STA3は2台あり、それぞれがAP2に対して接続開始を行っている場合を説明している。AP2が接続しているSTA3の情報を取得した後、AP2がSTA3にデータを送信する場合、まずAP2からSTA3へのチャネル情報を取得する手順2(701)を行う。AP2はデータを送信したいSTA3に対してチャネル情報取得要求パケット603を送信する。このときSTA3の無線部9bでは、チャネル情報取得要求パケット603時のチャネル情報をMIMO受信処理部213で取得し、チャネル情報格納部104に格納する。取得したチャネル情報は、チャネル情報パケット604内に格納されたデータとして、AP2に送信する。このとき、STA3の無線部9bでは、チャネル情報格納部104のチャネル情報をパケットのデータ部分に含めて送信を行う。
【0062】
AP2ではSTA3からのチャネル情報パケット604受信時に、STA3と同様に受信信号のチャネル情報を取得し、チャネル情報格納部104に格納する。このとき、チャネル情報格納部にはSTA3−aとSTA3−bの2つのチャネル情報が格納されることとなる。AP2は、STA3−aとSTA3−bのチャネル情報に基づきにSDMAを行う(手順3(702))。このとき、AP2からSTA3への送信データと共に、チャネル情報パケット604の受信時に取得してチャネル情報格納部105に格納されたチャネル情報を含めて、データ+チャネル情報パケット605として送信する。
【0063】
そして、STA3では受信したデータを上位に出力すると共に、同時に送られてきたSTA3からAP2へのチャネル情報情報を用いて、AP2の所定のアンテナに対して「ヌルを向ける」よう送信信号を制御して、応答フレーム606を送信する。
【0064】
ここで、STA3においてSTA3からAP2へのチャネル情報に基づいて「ヌルを向ける」ための処理について詳細に説明する。
【0065】
図1の構成を例として、STA3が2台それぞれアンテナを2本持つ場合について説明する。STA−a(3a)とSTA−b(3b)のそれぞれが持つAP2へのチャネル情報をそれぞれHa,Hとする。それぞれのSTA3からの送信データをTa、T、それぞれのSTA3のウェイトベクトルをWa,Wとする。
【0066】
【数3】

【0067】
ここでSTA−a(3a)の送信信号Taは、AP2のアンテナ41−1で受信できないようにウェイトベクトルWa.を決定するものとする。すなわち、AP2のアンテナ1での受信信号が0になるようにすればよく、AP2でのSTA−a(3a)からの受信信号をアンテナ毎にそれぞれra1,ra2,ra3,ra4とすると、以下の(式4)のようにra1を0とすればよい。なお、この値は、理想的には、0になることが望ましいが現実的には、信号のレベルを一定以下に抑えるようにすればよい。
【0068】
【数4】

【0069】
他の受信信号ra2,ra3,ra4は任意の値でよいので、以下の(式5)で表される式にのみ注目すればよい。
【0070】
【数5】

【0071】
よって、任意の送信信号Taに対して(式5)が成立すればよいので、以下の(式6)が満たされればよい。
【0072】
【数6】

【0073】
そして、(式6)を解くことにより、以下の(式7)で表されるようウェイトベクトルが決定される。このウェイトベクトルを用いることによりSTA−a(3a)の送信信号は、AP2のアンテナ41−1では、ちょうど打ち消しあい、受信されることがなくなる。
【0074】
【数7】

【0075】
同様にSTA−b(3b)は、AP2のアンテナ41−2に対して「ヌルを向ける」ようウェイトベクトルを決定し、以下の(式8)で表される値とする。
【0076】
【数8】

【0077】
これによりSTA−b(3b)の送信信号はアンテナ41−2で打ち消しあい、受信されなくなる。
【0078】
本実施形態では、APのアンテナ数が4であり、1台のAPと通信する端末数が2台であり、各々のSTAのアンテナ数が2である場合を例に採って説明したが、APおよびSTAのアンテナ数、1台のAPと通信する端末数は、これに限られるものではない。このとき、以上のようにAP2の各アンテナで「ヌルを向ける」ことができるようにするためには、線形代数の初等的理論により、APのアンテナ数とSTAの端末数については、以下の(式9)が成立することが必要であり、STAのアンテナ数とSTAの端末数については、以下の(式10)が成立することが必要である。
【0079】
(AP)≧T … (式9)
Min(A(STA))≧T … (式10)
ここで、A(AP)は、APのアンテナ数、A(STA)は、i番目のSTAのアンテナ数、Tは、同時に送信するSTAの端末数であり、(式10)の左辺は、送信するSTA中で、最も少ないアンテナ数を意味している。
【0080】
以上に示した構成および機能を持つことにより、複数のSTA3が同時にACKパケットを送信した場合に、AP2が持つ複数のアンテナのいずれか一つには一つのSTA3からのACKパケットのみが受信されるよう動作することができる。これによりAP2ではMIMO処理を行うことなくSTA3からのACKパケットを受信することができ、各STA3のキャリア周波数誤差や送信タイミング誤差の影響を受けることなく復調することが可能となる。
【0081】
また、本実施形態では、データの通信に先立ちアンテナ数を通信相手に通知する例を示したが、APとSTAを固定的に設置して運用するシステムや、STAの種類が1種類と決まっているシステムのようにアンテナ数が既知である場合は、アンテナ数の通知を省略してよい。
【0082】
以上のように、本実施形態によれば、複数の第1のMIMO無線通信装置のキャリア周波数誤差や送信タイミング誤差が存在する場合においても、受信側の第2のMIMO無線通信装置はそれぞれの第1の無線通信装置からの信号を受信、復調することが可能となる。
【0083】
また、本実施形態によれば、通信に先立ちMIMO無線通信装置の備えるアンテナ数を通知することで、例えばアンテナ数が1の端末が存在する場合においても、MIMO無線通信システムが問題なく動作させることが可能となる。
【0084】
さらに、本実施形態によれば、通信に先立ちMIMO無線通信装置の備えるアンテナ数を他のMIMO無線通信端末に通知する手順を省くことが可能となる。
【0085】
また、本実施形態によれば、受信信号からチャネル情報の推定し、取得することでチャネル情報のやりとりに必要なオーバーヘッドを省略することが可能となる。
【0086】
さらに、本実施形態によれば、キャリア周波数誤差や送信タイミング誤差が存在する複数のユーザ端末から同時にアクセスポイントに信号を送信しても、アクセスポイント側で復調することが可能となる。
【実施例2】
【0087】
以下、本発明に係る第二の実施形態を図5および図9を用いて説明する。
図9は、本発明の第二の実施形態に係るチャネル情報取得からデータパケット送信までの処理手順を示したタイミングチャートである。
【0088】
本実施形態は、AP2から複数のSTA3に同時にデータを送信する場合に、各STA3は、AP2からのデータパケットから取得したチャネル情報を用いて、STA3がAP2に返信するACKパケットに信号処理を行い、返信する場合の動作を示すものである。
【0089】
手順1(700)および手順2(701)は、第一の実施形態と同様の動作を行う。手順2のチャネル情報パケット604を受信する際にAP2では、復調は行うがチャネル情報の取得は行わない。すなわち、手順3(703)において、AP2からSTA3へのデータパケットはデータのみを格納し、第一の実施形態のようにチャネル情報を含めることは行わない。これは通信路の対象性を用いてSTA3からAP2へのチャネル情報はAP2からSTA3へのデータパケット受信時にMIMO受信処理部213で取得したチャネル情報を用いて、応答パケット606を送信する。
【0090】
以上に示した構成および機能を持つことにより、第一の実施形態と同様に、複数のSTA3が同時にACKパケットを送信した場合に、AP2の各々のアンテナでMIMO処理を行うことなく、復調することが可能となる。
【0091】
さらに、本実施形態では、STA3が送信する際に用いるチャネル情報は、通信路の対象性を利用してSTA3側で取得するためAP2の送信データ中にSTA3からAP2へのチャネル情報を付加する必要がなくなる。これにより、パケット長が短くなるため、スループットを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明のMIMO無線通信システムの通信概念を説明するための図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係るMIMO無線通信システムの全体構成図である。
【図3】アクセスポイントのブロック構成図である。
【図4】ユーザ端末のブロック構成図である。
【図5】無線部9のブロック構成の詳細を示した図である。
【図6】MIMO受信処理部の構成の詳細を示した図である。
【図7】パケットフォーマットを示した図である。
【図8】本発明の第一の実施形態に係るチャネル情報取得からデータパケット送信までの処理手順を示したタイミングチャートである。
【図9】本発明の第二の実施形態に係るチャネル情報取得からデータパケット送信までの処理手順を示したタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0093】
1…MIMO無線通信システム、2…アクセスポイント(AP)、3…ユーザ端末(STA)、4…有線ネットワーク、5…インターネット、9…無線部、10、…メディアアクセスコントロール(MAC)部、20…ベースバンド(BB)部、30…RF部、40…アンテナ部、50…インタフェース、60…バス、70…メモリ、80…制御部、90…コンピュータ。
【0094】
101…送信バッファ、102…FCS付加部、103…MAC制御部、104…チャネル情報格納部、105…FCS検査部、106…受信バッファ。
【0095】
201…誤り訂正符号化部、202…パンクチャード部、203…パーサー部、204…インタリーブ部、205…変調部、206…MIMO送信処理部、207…逆FFT部、208…ガードインターバル付加部、209…並直列変換部、210…直並列変換部、211…ガードインターバル除去部、212…FFT部、213…MIMO受信処理部、214…復調部、215…デインタリーブ部、216…並直列変換部、217…誤り訂正復号部。
300…逆行列演算部、301…乗算部。
500〜506…パケット構成。
600〜616…パケット種類。
700〜703…送受信状態。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナを備え、前記複数のアンテナから信号を送信する少なくとも1台の第1のMIMO(Multiple Input Multiple Output)無線通信装置と、複数のアンテナを備え、前記複数のアンテナにより前記第1の無線通信装置の信号を受信する第2のMIMO無線通信装置とからなるMIMO無線通信システムであって、
前記第1のMIMO無線通信装置が、前記第1のMIMO無線通信装置と前記第2のMIMO無線通信装置との間のチャネル情報に基づき、前記第2のMIMO無線通信装置が有する複数のアンテナの少なくとも一つのアンテナに対する受信信号強度が0、または、所定のレベル以下になるように、前記複数のアンテナからの送信する信号を制御することを特徴とするMIMO無線通信システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2のMIMO無線通信装置が有する複数のアンテナの少なくとも一つのアンテナに対する受信信号が、一つの前記第1のMIMO無線通信装置からのみ送信された信号であるようにすることを特徴とするMIMO無線通信システム。
【請求項3】
請求項1において、
同時に信号を伝送する前記第1のMIMO無線通信装置の台数が、前記第2のMIMO無線通信装置のアンテナ数より小さく、
同時に信号を伝送する前記第1のMIMO無線通信装置の台数が、前記第1のMIMO通信装置の中で最も少ないアンテナ数より小さいことを特徴とするMIMO無線通信システム。
【請求項4】
請求項1において、
前記第1のMIMO無線通信装置が、前記第2のMIMO無線通信装置から送信される信号に基づきチャネル情報を推定することにより、該チャネル情報を取得することを特徴とするMIMO無線通信システム。
【請求項5】
請求項4において、
前記第2のMIMO無線通信装置が、複数の第1のMIMO無線通信装置にデータパケットを送信し、前記複数の第1のMIMO無線通信装置は、前記第2のMIMO無線通信装置のデータパケットからチャネル情報を推定し、該チャネル情報を用いて受信したデータパケットに対するデータの誤りの有無を通知する応答パケットを送信することを特徴とするMIMO無線通信システム。
【請求項6】
請求項1において、
前記第2のMIMO無線通信装置は、前記第1のMIMO無線通信装置から送信される信号に基づきチャネル情報を推定し、該チャネル情報をデータとして前記第1のMIMO無線通信装置に送信し、
前記第1のMIMO無線通信装置は、前記第2のMIMO無線通信装置から送信される信号を復調し、該信号中にデータとして格納されているチャネル情報を取得することを特徴とするMIMO無線通信システム。
【請求項7】
請求項6において、
前記第2のMIMO無線通信装置が複数の第1のMIMO無線通信装置にデータパケットを送信に先立ち、前記複数の第1のMIMO無線通信装置にパケット送信要求のパケットを送信し、
前記複数の第1のMIMO無線通信装置は、前記第2のMIMO無線通信装置のパケット送信要求に応じて、パケットを送信し、
前記第2のMIMO無線通信装置は、前記複数の第1のMIMO無線通信装置の信号からチャネル情報を推定し、該チャネル情報をデータパケット内に含めて、前記複数の第1のMIMO無線通信装置に送信し、
前記第1のMIMO無線通信装置は、データパケット内のデータと共にチャネル情報を取得し、該取得したチャネル情報を用いて、受信したデータパケットに対するデータの誤りの有無を通知する応答パケットを送信することを特徴とするMIMO無線通信システム。
【請求項8】
請求項1において、
前記第2のMIMO無線通信装置からの問い合わせによって、前記第1のMIMO通信装置が、自局のアンテナ数を前記第2のMIMO無線通信装置に通知することを特徴とするMIMO無線通信システム。
【請求項9】
請求項1において、
前記第2のMIMO無線通信装置は、前記第1のMIMO通信装置のアンテナ数を取得した後、前記第1のMIMO無線通信装置とデータの通信を開始することを特徴とするMIMO無線通信システム。
【請求項10】
請求項1において、
前記第2のMIMO無線通信装置で、該第2のMIMO無線通信装置と通信する第1のMIMO通信装置の台数、および、全ての第1のMIMO通信装置のアンテナ数が判明していることを特徴とするMIMO無線通信システム。
【請求項11】
複数のアンテナを用い信号を他のMIMO(Multiple Input Multiple Output)無線通信装置に送信するMIMO無線通信装置であって、
前記MIMO無線通信装置は、前記他のMIMO無線通信装置との間のチャネル情報を記憶するチャネル格納部と、
前記チャネル格納部に記憶されているチャネル情報に基づき前記他のMIMO無線通信装置が備える複数のアンテナの少なくとも一つのアンテナでの受信信号レベルが0または所定のレベル以下となるよう送信信号を制御する送信信号制御部とを具備して成ることを特徴とするMIMO無線通信装置。
【請求項12】
請求項11において、
他のMIMO無線通信装置から送信される信号からチャネル情報を推定するチャネル推定部を、さらに具備して成ることを特徴とするMIMO無線通信装置。
【請求項13】
請求項12において、
前記他のMIMO無線通信装置から送信される信号がデータパケットであることを特徴とするMIMO無線通信装置。
【請求項14】
請求項11において、
前記MIMO無線通信装置は、前記他のMIMO無線通信装置から送信される信号を復調し、該信号中に含まれるチャネル情報を取得するMAC処理部を、さらに具備して成ることを特徴とするMIMO無線通信装置。
【請求項15】
請求項14において、
前記他のMIMO無線通信装置から送信される信号がデータパケットであることを特徴とするMIMO無線通信装置。
【請求項16】
複数のアンテナを備え、前記複数のアンテナから信号を送信する少なくとも1台の第1のMIMO(Multiple Input Multiple Output)無線通信装置と、複数のアンテナを備え、前記複数のアンテナにより前記第1の無線通信装置の信号を受信する第2のMIMO無線通信装置とからなるMIMO無線通信システムにおける無線通信方法であって、
前記第1のMIMO無線通信装置が、前記第2のMIMO無線通信装置から送信される信号に基づき、前記第1のMIMO無線通信装置と前記第2のMIMO無線通信装置との間のチャネル情報を推定することにより、該チャネル情報を取得するステップと、
前記第1のMIMO無線通信装置が、前記チャネル情報に基づき、前記第2のMIMO無線通信装置が有する複数のアンテナの少なくとも一つのアンテナに対する受信信号強度が0、または、所定のレベル以下になるように、前記複数のアンテナからの信号を送信するステップと、
前記第2のMIMO無線通信装置は、複数のアンテナの少なくとも一つで前記第1のMIMO無線通信装置から受信した信号をMIMO処理により信号分離することなく受信するステップとを、具備して成ることを特徴とする無線通信方法。
【請求項17】
請求項16において、
前記第1のMIMO無線通信装置が、前記第2のMIMO無線通信装置から送信される信号に基づき、前記第1のMIMO無線通信装置と前記第2のMIMO無線通信装置との間のチャネル情報を推定することにより、該チャネル情報を取得するステップは、前記第2のMIMO無線通信装置が、複数の第1のMIMO無線通信装置にデータパケットを送信し、前記複数の第1のMIMO無線通信装置は、前記第2のMIMO無線通信装置のデータパケットからチャネル情報を推定し、該チャネル情報を用いて受信したデータパケットに対するデータの誤りの有無を通知する応答パケットを送信するステップであることを特徴とする無線通信方法。
【請求項18】
請求項16において、
前記MIMO無線通信システムにおける同時に信号を伝送する前記第1のMIMO無線通信装置の台数が、前記第2のMIMO無線通信装置のアンテナ数より小さく、
前記MIMO無線通信システムにおける同時に信号を伝送する前記第1のMIMO無線通信装置の台数が、前記第1のMIMO通信装置の中で最も少ないアンテナ数より小さいことを特徴とするMIMO無線通信方法。
【請求項19】
請求項16において、
前記第2のMIMO無線通信装置からの問い合わせによって、前記第1のMIMO通信装置が、自局のアンテナ数を前記第2のMIMO無線通信装置に通知するステップを、さらに具備してなることを特徴とする無線通信方法。
【請求項20】
請求項15において、
前記第2のMIMO無線通信装置は、前記第1のMIMO通信装置のアンテナ数を取得した後、前記第1のMIMO無線通信装置とデータの通信を開始するステップを、さらに具備してなることを特徴とする無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−278205(P2008−278205A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−119447(P2007−119447)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】