説明

N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−{(3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル}エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミド

【課題】新規な熱安定性結晶変態形のN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−
{(3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル}エチル]−2,2−ジフェニルアセ
トアミド、及びこれをこの新規な形で分離する方法を提供する。
【解決手段】この変態形の化合物を、a)1−[(1S)−3−ヒドロキシピロリジン−
1−イル]−(2S)−2−メチルアミノ−2−フェニルエタンとジフェニルアセチルク
ロリドとを低温度、特に−5℃ないし10℃において互いに反応させ、その際この反応を
b)或る溶媒の中に溶解させたジフェニルアセチルクロリドを、その同じ溶媒の中に溶解
させてその温度を保ちながら、その装置の中へ予め入れておいた1−[(1S)−3−ヒ
ドロキシピロリジン−1−イル]−(2S)−2−メチルアミノ−2−フェニルエタンに
ゆっくりと加えることにより行なわせ、そしてc)その反応に続いてその得られた粗生成
物を熱い溶媒から再結晶させることにより製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−{(3S)−3−ヒドロキ
シピロリジン−1−イル}エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドの新規な熱安定性
の型のもの、及びこの化合物をこの新規な型で製造し、分離するための方法、並びにこの
化合物及び/又はこのものの生理学的に受容できる塩の1つを含む医薬の調製のために使
用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この構造式のいくつかの化合物、及び更に、上述した化合物及びそれらの好適な製造方
法はドイツ特許公開公報DE 42 15 213 A1に記述されている。
【0003】
この特許出願DE 42 15 213 A1で既に公知の化合物N−メチル−N−[
(1S)−1−フェニル−2−{(3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル}エチ
ル]−2,2−ジフェニルアセトアミドについて、これが薬剤的に特に活性な化合物であ
って、これは種々の炎症性腸疾患の処置のための医薬として特に非常に適していることが
見出された。中でもこの化合物は、これが同時に、この疾患に伴う疼痛を緩和し、そして
腸閉塞切迫やその炎症性腸疾患によりもたらされる急性状態において腸の運動機能を再び
正常化させ、或いはこれを著しい副作用を生ずることなく再び運動させるので、この適応
症に使用可能であり、そして有効である。
【0004】
ドイツ特許公開公報DE 42 15 213 A1で公知の方法に従ってこれを調製
しようとする種々の試みは、この化合物が種々の形態で得られることを示した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明の課題は、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−{(3S)
−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル}エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドを
熱安定な形で入手できるようにすること、及びこの化合物を、貯蔵において安定でかつ調
剤の調製に適した熱安定性生成物が得られるように製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、熱的に安定で貯蔵可能なN−メチル−N−[(1S)−1−フェニ
ル−2−{(3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル}エチル]−2,2−ジフェ
ニルアセトアミド、及びこのものを炎症性腸疾患の処置のための医薬として使用する方法
、並びにこの化合物を成分の1つとして含み、従って炎症性腸疾患及びこれに伴う種々の
疾病症状の有効な処置のために、また重症疼痛、特に疼痛過敏の処置のために使用するこ
とのできる調剤に関する。
【0007】
また本発明は同様に、背部痛、火傷障害、日焼け及びリューマチ性疾病に際して生ずる
疼痛及び疼痛過敏の処置、更にはまたこれに関連して生ずる種々の炎症性反応の処置のた
めの医薬としてこの化合物を使用する方法にも関する。本発明はまた、術後疼痛、疼痛過
敏及び腹部の手術の後にしばしば起こるイレウスの処置のためにこの医薬を使用する方法
にも関する。本発明は更に、神経皮膚炎の処置のための調剤の中でその照応する化合物を
使用する方法に関する。
【0008】
本発明は更にまた、熱的に安定で貯蔵可能なN−メチル−N−[(1S)−1−フェニ
ル−2−{(3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル}エチル]−2,2−ジフェ
ニルアセトアミドを製造する方法に関する。
【0009】
本発明に従う化合物及びその生理学的に受容し得る塩類は特に良好な鎮痛作用を示す。
この関連においてそれらは特に炎症関連の痛覚過敏に拮抗するが、実際の炎症事例の制御
にも有効であり、従ってそれらは広い作用領域を有する。
【0010】
種々の実験により、本発明に従う化合物がマウスやラットにおける「苦痛挙動試験」〔
方法については Siegmund et al., Proc. Soc. Exp. Bi
ol. 95, (1957), 729−731 参照〕において活性であることが示され
ている。その鎮痛作用はそのまま更にマウスやラットでの「尾はじき試験」〔方法につい
ては d'Amour 及び Smith: J. Pharmacol. Exp. Ther
. 72, (1941), 74−79 参照〕において、及び更に「ホットプレート試験
」〔Schmauss 及び Yaksh: J. Pharmacol. Exp. The
r. 228, (1984), 1−12 及びこれに引用されている各文献参照〕におい
て示すことができる。特に強い作用がラットにおいてカラジーナンにより誘発させた痛覚
過敏モデルにおいて観測できる〔Bartoszky 及び Wild: Neurosc
ience Letters 101 (1989) 95 参照〕。これに関して、この化
合物は物理的依存性への傾向を全く、又は僅かしか示さない。
【0011】
更に、通常的な方法で行なった対応的ないくつかの実験により、著しい抗炎症性、利尿
性、抗癲癇性及び神経保護性の各作用が示された。この化合物はκ−受容体に対する結合
挙動に関して高い親和性を示す。
【0012】
類似の作用領域を有する他の種々の化合物と異なり、本発明に従う化合物は特に炎症性
腸疾患の処置のための調剤において使用するのに適しており、と言うのはこれが、鎮痛作
用及び抗炎症作用に加えて、その疾患により惹起される腸の運動機能の不調を正常化する
のに適しているからである。中でも、これは、炎症性腸疾患による腸閉塞が急迫しており
、又は既に起こっている場合に腸の運動を再び行なわせるのに適している。この作用はま
た、術後イレウス及びこれに伴う疼痛の処置のために使用することもできる。
【0013】
上に記述した薬理学的作により、本発明に従う化合物は火傷の処置、すなわち熱又は火
炎の作用による火傷及び重大な日焼けの両方の処置に特に適していることが実証されてい
る。中でも、本発明に従う活性化合物の含まれた好適な調剤を投与することにより、実際
の疼痛及び疼痛過敏に加えて、これらの症状における種々の炎症の処置に追加的に影響を
及ぼすことができる。非常に重大な火傷の場合に生ずる反射的イレウスも防止できるか、
又は処置することができる。
【0014】
この関係において、太陽光線に対するアレルギーの処置における有利な作用を示してい
る種々の徴候も見出されており、これは特に、本発明に従う化合物の影響のもとでアレル
ギー性皮膚反応が迅速に消失し、そしてそれに伴う掻痒状態が急速におさまるからである
。対応的な有効な結果が神経皮膚炎の処置においても見出された。特に、この疾患におけ
る皮膚の掻痒は上述の活性化合物の作用のもとに治まり、そしてこの疾患により生じた種
々の炎症反応に好適な影響が及ぼされる。
【0015】
更に、この活性化合物はリューマチ性の諸疾患及び背痛の処置において特に有効である
ことが実証されている。この関連において、これがそれに伴う疼痛に対して活性であり、
また種々のリューマチ性疾患において生ずる炎症性の諸症状に有効な作用を及ぼし、また
従って患者の一般的な状態の改善に貢献することが特に有利である。これに関して、胃腸
管の正常な運動機能が損なわれないことが示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
ここに記述した全ての領域において、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2
−{(3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル}エチル]−2,2−ジフェニルア
セトアミドヒドロクロリドの医薬としての使用は全ての種類の調剤型において特に有効で
あることが明らかにされた。
【0017】
この化合物の特性を明らかにするための物理的及び化学的な研究によって、これが調製
及び貯蔵に依存して種々の形態で含まれることが示されている。
【0018】
詳細には、今日までに4つの異なった形態が見出されており、これらは互いに著しく異
なっている。第1型は溶媒和物である。この型は容易にもう1つの結晶型へ転換され、こ
のものを以下において第2型と呼ぶ。第1型をゆっくりと加熱したときに溶媒の放出が起
こる。その場合にX線回折法、IR分析及び融点のデータは第2型のそれらに相当する。
【0019】
既往の特許出願DE 42 15 213 A1に記述された既知の方法によって作ら
れる化合物は第2型として得られ、そして196−200℃の融点範囲を有し〔Bioo
rganic & Medicinal ChemistryLetters 4 (5
), 679 (1994)をも参照〕、且つ融解熱100J/gを有する。
【0020】
第3型としてあげられる変態型は第2型を約73ないし95%の大気湿度において極端
な条件のもとに貯蔵したときに得られる。
【0021】
以下において第4型として特徴付けられる変態型のものは、第2型のそれと異なり、約
220−226℃の融点範囲及び約120−128J/gの融解熱を有する。
【0022】
本発明に従う化合物のこの高い融点及び高い融解熱は、熱力学的に安定な結晶変態が存
在することを示しており、得られるそれら2つの結晶変態第2型及び第4型は互いに単変
二形である。
【0023】
この事情は更にいくつかの観測によって確かめることができる。その熱力学的に不安定
な結晶変態(融点196−200℃)の210℃から−78℃までへの非常に急速な冷却
及び−78℃における5時間の貯蔵に際して、その熱安定性化合物(221−226℃)
がゆっくりと晶出する。
【0024】
これら2つの型の場合にそれらの溶融挙動が異なるばかりではなくてそれらは貯蔵安定
性においても異なる。第2型を乾燥オーブンの中で170℃において貯蔵した後で、第4
型への部分的な転化が検出された。第2型の結晶変態のもののDSC測定(DSC=示差
走査熱分析)の間に約200℃におけるその融点以上へのゆっくりとした加熱に際して約
220−226℃において溶融する第4型の結晶が晶出する。この第4型結晶も、第2型
のものの溶融物(200℃のすぐ上の)を急激に冷却して12ないし16時間にわたり室
温において貯蔵したときにも第4型の結晶が検出される。第2型は従って準安定であるこ
とが証明されているが、第4型は熱力学的に安定な変態型である。特殊な結晶化試験によ
って、第4型の種結晶の添加により第4結晶変態のみが得られることが見出された。しか
しながらこれと異なって、第2型の種結晶を加えることによって、第4結晶変態が特に得
られた。加えて、第4型結晶の水性溶液の中での溶解度は第2型のそれよりも低い。これ
は第2型のものの溶解度の約45ないし70%である。
【0025】
既往のドイツ特許出願DE 42 15 213 A1に記述された方法によって作ら
れた化合物を室温において7か月間貯蔵した後で、熱的に安定な第4変態型の結晶への転
化の開始を測定することができた。このことは言い換えれば、本発明において記述される
方法により調製される化合物が他の結晶変態型のものと異なって貯蔵に際して安定である
と言うことである。
【0026】
溶媒(例えば水)の存在においてその調製された化合物は溶媒和物を形成することがで
きる。
【0027】
本発明に従う化合物を調剤の中で第2型の変態型の結晶とともに使用した場合に比較的
長期間の貯蔵に際して結晶変態型の変化が起こり得る。
【0028】
薬剤活性についての既往の研究によれば今まではそれは結晶形には比較的に依存しない
とされているが、しかしながらこれは、ありうる生物体利用可能性(bioavaila
bility)の変化による相違を排除していない。従って固体の調剤において使用する
ためには、第4型の安定な結晶変態型のものを使用すること、或いは第2型のものを用い
る場合にはこの結晶型の長期間の安定化がもたらされるような添加物を使用することに注
意しなければならない。
【0029】
驚くべきことに、実際の反応により得られる粗生成物の後処理の態様がその結晶変態に
影響するばかりではなくて、各出発物質が互いに反応する条件さえもこれにとって重要で
あることが示された。この場合に特に、反応温度及び溶媒条件が或る役割を演じているこ
とが見出された。
【0030】
詳細には、第4型の結晶化が、出発物質1−[(1S)−3−ヒドロキシピロリジン−
1−イル]−(2S)−2−メチルアミノ−2−フェニルエタン及びジフェニルアセチル
クロリドの反応を低い温度、中でも−5ないし10℃、好ましくは0℃ないし8℃におい
て行なわせた場合に得られることが示されている。
【0031】
更にまた、この目的のためには各出発物質、すなわち1−[(1S)−3−ヒドロキシ
ピロリジン−1−イル]−(2S)−2−メチルアミノ−2−フェニルエタンとジフェニ
ルアセチルクロリドとのモル比が互いに、1:0.75ないし1:1.65、好ましくは
1:1.1ないし1:1.3であるのが有利であることが実証されている。
【0032】
それら各出発化合物1−[(1S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]−(2S
)−2−メチルアミノ−2−フェニルエタンとジフェニルアセチルクロリドとの、用いた
溶媒に対するモル比は、この場合にそれら各出発物質が溶液状態にあるけれどもその溶媒
が、もし可能であれば、ほんの僅かな過剰でのみ存在するように選ぶべきである。テトラ
ヒドロフランを溶媒として選んだ場合に、上述の各出発物質とその溶媒との相互に対する
モル比がほぼ(0.8−1.2):(0.9−1.3):(14−22)であるならば有
利であることが示されている。(0.9−1.1):(1−1.2):(16−19)の
比率が特に有効であることが実証されている。
【0033】
用いた溶媒の1部の中に溶解させたジフェニルアセチルクロリドを、特に低い温度を維
持しながら非常にゆっくりと添加するのが特に有利であることが実証されている。反応を
完結させるためにはその同じ温度において若干時間にわたり攪拌が続けられるが、但しで
きるだけ約4時間よりも長く続けない。1.5ないし2.5時間の攪拌時間が最適である
ことが実証されている。
【0034】
このようにして得られた粗生成物を精製するためにはこれを適当な溶媒から再結晶させ
る。これに関連して、溶媒の量を熱い溶媒の中でさえその生成物が結晶化するように選ぶ
のが有利である。
【0035】
エタノールを用いる場合にはこれは、75ないし125モル、特に85ないし115モ
ルの溶媒に対して約1モルの生成物のモル比において達成される。
【0036】
結晶化させるための溶媒の選択に依存して、その精製された生成物は短時間の冷却の後
でさえ第4型の変態型で結晶化した形で析出する。エタノールを用いた場合には約55な
いし45℃の温度に冷却した後がこれに該当する。この場合に、その全結晶化時間にわた
ってこの温度を維持するのが有利であることが実証されている。
【0037】
本発明に従う化合物において、これがその構造のために血液脳障壁を通過できないこと
が明らかであり、また従って依存能を有しないと言うことが特に有利であることが実証さ
れている。また、現在までいずれにしても、それらの有利な種々の作用を各特許請求した
適応症に対して利用することを制限するようないかなる副作用も見出されていない。
【0038】
従って、本発明に従う化合物及びその生理学的に受容し得る塩類はそれらを適当な投与
形にすることにより所望の場合には少なくとも1つ以上の賦形剤又は助剤とともに1つ以
上の別な活性化合物とともに調剤の調製に使用することができる。そのようにして得られ
た調剤は医術又は獣医術において医薬として使用することができる。好適な賦形剤は、腸
内的(例えば経口的又は直腸的)投与又は非経口的投与に適し、かつこの新規化合物と反
応しない有機性又は無機性の種々の物質であり、例えば、水、植物油、ベンジルアルコー
ル、ポリエチレングリコール、グリセロールトリ酢酸や他の脂肪酸グリセリド、ゼラチン
、大豆レシチン、ラクトースや澱粉のような炭水化物、ステアリン酸マグネシウム、タル
ク又はセルローズである。
【0039】
経口投与のためには特にタブレット、被覆タブレット、カプセル、シロップ、ジュース
又はドロップが用いられる。重要なものは中でも、腸液抵抗性の被覆又はカプセル外皮を
備えた被覆タブレット及びカプセル剤である。直腸投与のためには坐薬が用いられ、そし
て腸管外投与のためには溶液、好ましくは油性又は水性溶液及び懸濁液、乳液又は体内埋
植が用いられる。
【0040】
本発明に従い特許請求される活性化合物は凍結乾燥することができ、そしてその得られ
た凍結乾燥物は注射用調剤の調製に用いることができる。
【0041】
上記の各調剤は、滅菌及び/又は例えば、保存剤、安定化剤、及び/又は湿潤剤、乳化
剤、浸透圧に影響を与えるための塩類、緩衝性物質、着色剤及び/又は香料のような助剤
を含むことができる。所望の場合にはそれらは、例えば1つ以上のビタミン、利尿剤又は
抗炎症剤のような1つ以上の別な作用物質を含むこともできる。
【0042】
本発明に従う化合物は一般に特許請求の範囲にあげた種々の適応症について市販で入手
できる公知の他の調剤と同様に投与され、好ましくは1投与単位当り1mgと50mgと
の間、特に5mgと30mgとの間の投与量で投与される。日量投与量は好ましくは、体
重1kg当り約0.02mgと20mgとの間、特に0.2mgと0.4mgとの間であ
る。
【0043】
しかしながらそれぞれの患者に対する個別的な投与量は、例えば年齢、体重、一般的な
健康状態及び性別、食事、投与の時期及び経路、並びに排泄率、調剤の組み合わせ、及び
それぞれの治療を受けるべき疾病の重度のような全ての因子に依存する。経口投与が好ま
しい。
【0044】
以下に本発明の実施例をあげるが、これらは本発明の説明に用いるものであって、本発
明をそれぞれのあげられた例に縮減しようとするものではない。
【実施例】
【0045】
以下において全ての温度は℃で示してある。
【0046】
比較例N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−{(3S)−3−ヒドロキシ
ピロリジン−1−イル}エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドヒドロクロリド (
第2型)
500ml容量の装置の中に22gの1−[(1S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−
イル]−(2S)−2−メチルアミノ−2−フェニルエタンを予め入れておき、そして1
50mlのテトラヒドロフランに溶解させる。攪拌しながら150mlのテトラヒドロフ
ランと24.1gのジフェニルアセチルクロリドとよりなる溶液を10−20℃において
1時間の間に滴加し、その際最初に沈殿物が形成されるけれどもこれは反応の経過ととも
に再び溶液になる。反応の終り頃に再び沈殿物が形成される。この混合物を室温において
更に12時間にわたり攪拌する。次いでこれを約5℃に冷却し、そしてその沈殿した生成
物を吸引濾過分離する。この分離された生成物を約100mlのテトラヒドロフランで洗
浄し、そして乾燥させる。このようにして39gの粗生成物が得られる。このものを約2
50mlのエタノールと1gの活性炭とを用いて再結晶させる。
収量 :33gのN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−{(3S)−3−ヒ
ドロキシピロリジン−1−イル}エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドヒドロクロ
リド (理論値の73.2%)
融点 :196−200℃融解熱:100J/gpKa :7.420℃での水の中の溶
解度:1.16g/100ml20℃でのメタノールの中の溶解度:6.31g/100
ml
実施例1
N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−{(3S)−3−ヒドロキシピロリジ
ン−1−イル}エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドヒドロクロリド (第4型)
9gの1−[(1S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]−(2S)−2−メチ
ルアミノ−2−フェニルエタンと40mlのテトラヒドロフランとよりなる、0℃ないし
8℃に冷却された反応溶液に、10.5gのジフェニルアセチルクロリドと17mlのテ
トラヒドロフランとよりなる溶液を攪拌しながら75分間の間に反応溶液へゆっくりと滴
加する。次いでこの混合物をその同じ温度において更に120℃後攪拌する。この間に沈
殿物として析出した反応生成物は吸引濾過分離して乾燥する。このようにして17gの粗
生成物がえられるが、これを180mlのエタノールから再結晶させる。この再結晶の間
にその調製された生成物は安定な第4型結晶として50℃において析出する。
収量 :13gのN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−{(3S)−3−ヒ
ドロキシピロリジン−1−イル}エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドヒドロクロ
リド (理論値の70.6%)
融点 :220−225℃融解熱:124J/gpKa :7.420℃での水中の溶解
度:0.76g/100ml20℃でのメタノール中の溶解度:4.26g/100ml
以下の諸例は調剤に関するものである。
例A 注射用バイアル瓶式Iの活性化合物100g及び燐酸水素2ナトリウム5gの溶液
を3リットルの2回蒸留水の中で2N塩酸を用いてpH6.5に調節し、滅菌して濾過し
、注射用バイアル瓶に充填し、滅菌条件のもとに親液化して無菌的に密封する。各注射用
バイアル瓶は5mgの活性化合物を含んでいる。
例B 坐薬式Iの活性化合物20gと100gの大豆レシチン及び1400gのカカオバ
ターとの混合物を溶融し、型の中に流し込んで冷却させる。各坐薬は20mgの活性化合
物を含む。
例C 溶液940mlの2回蒸留水の中の、1gの式Iの活性化合物、9.38gのNa
2 PO4 ・ 2H2 O、28.48gのNa2 HPO4 ・12H2 O及び0.1gの塩
化ベンザルコニウムよりなる溶液を作る。この溶液をpHを6.8に調節して1リットル
まで満たし、そして照射により滅菌する。
例D 軟膏式Iの活性化合物500mgを99.5gのワセリンと無菌条件のもとに混合
する。
例E タブレット活性化合物1kg、ラクトース4kg、馬鈴薯澱粉1.2kg、タルク
0.2kg及びステアリン酸マグネシウム0.1kgの混合物を通常的な態様で圧縮して
各タブレットが10mgの活性化合物を含むようにタブレット化する。
例F 被覆タブレット例Eと同様にしてタブレットを作るが、これらを次に通常の態様で
蔗糖、馬鈴薯澱粉、タルク、トラガント及び着色剤の被覆物で被覆する。
例G カプセル活性化合物2kgを通常の態様で硬質ゼラチンカプセルの中に各カプセル
が20mgの活性化合物を含むように充填する。
例H アンプル60リットルの2回蒸留水の中の1kgの活性化合物の溶液を滅菌条件の
もとに濾過してアンプルの中に充填し、滅菌条件において凍結乾燥し、そして無菌状態で
密封する。各アンプルは10mgの活性化合物を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱安定性結晶変態形を有するN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−{(3
S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル}エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミ
ドヒドロクロリド。
【請求項2】
220−225℃の融点を有する請求項1の化合物。
【請求項3】
請求項1の化合物を含有する医薬。
【請求項4】
κ−オピエート作動薬としての薬理学的作用を有する調剤を作るために請求項3の医薬
を使用する方法。
【請求項5】
炎症性腸疾患処置用の調剤を作るために請求項3の医薬を使用する方法。
【請求項6】
背中に起こる疼痛及び疼痛過敏の処置のための調剤を作るために請求項3の医薬を使用
する方法。
【請求項7】
リウマチ性疾患、火傷、日焼け又は神経皮膚炎における疼痛、疼痛過敏及び種々の炎症
性反応の処置のための調剤を作るために請求項3の医薬を使用する方法。
【請求項8】
術後疼痛、疼痛過敏及び術後イレウスの処置のための調剤を作るために請求項3の医薬
を使用する方法。
【請求項9】
請求項3の医薬を含むことを特徴とする調剤。
【請求項10】
N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−{(3S)−3−ヒドロキシピロリ
ジン−1−イル}エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドヒドロクロリドを製造する
に当り、
a)1−[(1S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]−(2S)−2−メチルア
ミノ−2−フェニルエタンとジフェニルアセチルクロリドとを低温度、特に−5℃ないし
10℃において互いに反応させ、その際この反応を
b)溶媒に溶解させたジフェニルアセチルクロリドを、その同じ溶媒の中に溶解させてそ
の温度を保ちながら、その装置の中へ最初に導入した1−[(1S)−3−ヒドロキシピ
ロリジン−1−イル]−(2S)−2−メチルアミノ−2−フェニルエタンにゆっくりと
加えることにより行なわせ、そして
c)その反応に続いてその得られた粗生成物を熱い溶媒から再結晶させることを特徴とす
る方法。

【公開番号】特開2012−246321(P2012−246321A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−204622(P2012−204622)
【出願日】平成24年9月18日(2012.9.18)
【分割の表示】特願2008−257423(P2008−257423)の分割
【原出願日】平成8年8月22日(1996.8.22)
【出願人】(507244002)ティオガ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】