説明

NcSAG4のネオスポラ病の診断および予防のための使用ならびに発症機序の解析用マーカーとしての使用

本発明は、ネオスポラ病(Neosporosis)の予防のための診断およびワクチン接種を目的とした、遺伝子NcSAG4、その遺伝子のRNAメッセンジャー、そのヌクレオチド配列またはその断片のいずれかに基づいて設計されたオリゴヌクレオチド、ならびにそれによってコードされるタンパク質NcSAG4またはその組換え型のいずれか、発現ベクターとそれを含む宿主細胞に関する。本発明はまた、発症機序または中間宿主における慢性感染症の確立に対するワクチンの有効性の解析のための、ネオスポラ原虫(Neospora caninum)ブラディゾイト期の特異的マーカーとしてのその使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の目的
本発明は、動物の健康の分野で確立され、この記述的報告の表題で表すように、寄生原虫、ネオスポラ原虫(Neospora caninum)によって起こる疾病の診断、発症機序の解析および予防に関する。本発明は、より詳細には、ネオスポラ原虫の遺伝子NcSAG4に相当するポリヌクレオチド分子、そのRNAメッセンジャーと、それによってコードされる抗原、ブラディゾイト期の特異的タンパク質であるNcSAG4およびオリゴヌクレオチド、組換えベクター、形質転換宿主細胞、ならびに組換えにより発現されるタンパク質、ワクチンを生み出すその有用性に加え、疾病の診断用試薬としてのその使用、疾病の発症機序の研究を可能にする分子技術の開発へのその適用に関する。
【0002】
背景技術
ネオスポラ病(Neosporosis)
ネオスポラ原虫は、アピコンプレックス門(phylum Apicomplexa)に属する寄生原虫であり、このアピコンプレックス門にはネオスポラ原虫と密接な関係があるトキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)などの他の重要な寄生性病原体が含まれる。ネオスポラ原虫は、広範囲にわたる哺乳動物種に感染し得るが(Buxton et al. 2002, Trends Parasitol. 18, 546-552)、1989年以降、畜牛における流産および新生児死亡の原因となる作用因子であるといわれている(Thilsted and Dubey. 1989. J. Vet. Diagn. Invest. 1, 205-209)。
【0003】
ウシネオスポラ病(Bovine neosporosis)は、世界中に分布する寄生虫性疾患であり、それを調査したスペイン(Gonzalez et al. 1999. Vet. Rec. 144, 145-150; Pereira Bueno et al. 2003. Vet. Parasitol. 111, 143-152)をはじめとする様々な国では繁殖失敗の最も一般的な原因の1つであると考えられている(Trees et al. 1999. Int. J. Parasitol. 29, 1195-1200; Anderson et al. 2000, Anim. Reprod. Sci. 60-61, 417 431)。妊娠中の雌における最も重要な感染の臨床症状が流産であり、一般的には妊娠3ヶ月から9ヶ月の間、最も一般的には約5〜6ヶ月に起こる。生きて生まれる子ウシ(最大2週間遅れる可能性がある)は神経筋に問題を示す可能性があり、出産後4〜5日目に最初の臨床的症状が現れる。しかしながら、最も一般的には、慢性的に感染している場合でも健康な子ウシは生まれる(Dubey and Lindsay, 1999. Vet. Parasitol. 67, 1-59)。さらに、ネオスポラ病はイヌ、それらの固有宿主にも影響を与え、多発性筋炎、脳炎、麻痺を引き起こし、死をもたらし得る(Lindsay and Dubey, 1989. J. Parasitol. 75, 163-165; Buxton et al. 2002. Trends Parasitol. 18, 546-552)。
【0004】
ネオスポラ原虫の生活環は、トキソプラズマ原虫と同様に3つの期を包含する。固有宿主によって排泄されたオーシストの摂取により中間宿主に感染する、スポロゾイト(sporozoites)。他方、感染の急性期に関与する急増虫体であり、宿主組織を通じて播種する役割を有する、タキゾイト(tachyzoites)。このプロセスは、宿主が免疫性を発現し、その後慢性期が確立されたときに終わり、寄生生物の増殖は緩慢となり、ブラディゾイト(bradyzoites)内部で組織内シストが形成される。これについては自然および実験感染している数種の神経組織(Dubey et al., 1988, J. Am. Vet. Med. Assoc. 193, 1259-1263; Dubey et al. 1990. J. Am. Vet. Med. Assoc. 197: 1043-1044; Barr et al. 1992. J. Vet Diagn. Invest. 4, 365-367; Kobayashi et al. 2001. J. Parasitol. 87: 434-436)および自然感染したイヌおよび雌ウシの骨格筋組織(Peters et al. 2001. Int. J. Parasitol. 31, 1144-1148)の両方で観察されている。これらのブラディゾイトは再活性化まで組織のシスト内に潜伏している(Antony and Williamson. 2001. New Zeal. Vet. J. 49, 42-47; Buxton et al. 2002. Trends Parasitol. 18, 546-552)。アピコンプレックス(Apicomplexa)群(トキソプラズマ原虫またはネオスポラ原虫など)の寄生生物におけるタキゾイトからブラディゾイトへの転換(またその逆の場合)の基礎となる機構は今日まで分かっていないが、免疫応答が慢性感染症を有する動物における感染の潜伏期および再活性化に影響を及ぼしている可能性があることは示唆されている(Lyons, et al., 2002, Trends Parasitol. 18, 198-201)。
【0005】
疾病の感染に関しては、最新の研究によって出生後感染の重大性が比較的低いことが示唆され、先天性感染が一生持続することが言及されている(Davison et al. 1999. Int. J. Parasitol. 29, 1683-1689; Hietala and Thurmond. 1999. Int. J. Parasitol. 29. 1669-1676)。先天的伝播は、50〜95%にわたる割合で主要な役割を果たし(Wouda et al. 1998. Theriogenology 49, 1311-1316; Pereira-Bueno et al. 2000. in: Hemphill and Gottstein (Eds.) Int. J. Parasitol. 30, 906-909)疾病の播種および維持において極めて重要な役割を果たすものと思われる(Bjorkman et al. 1996. J. Am. Vet. Med. Assoc. 208, 1441-1444; Pare et al. 1996 Can. J. Vet. Res. 60, 133-139; Anderson et al. 1997. J. Am. Vet. Med. Assoc. 210, 5 1169-1172; Schares et al. 1998. Vet. Parasitol. 80, 87-98)。
【0006】
ネオスポラ原虫抗原(N. caninum anitigens)
ネオスポラ原虫のタキゾイトとブラディゾイトの抗原組成の比較に関しては、1つの研究が行われたが、トキソプラズマ原虫で行った研究(この研究ではいくつかの特定の期の抗原が同定され、特徴付けられる)とは対照的に、タキゾイトまたは両方の期で共有される特異性抗原が同定された(Fuchs et al. 1998. J. Parasitol. 84, 753-758)にすぎず、今日まで、極めて限られた情報しか得られていない。ネオスポラ原虫抗原には2つの表面タンパク質、タキゾイト特有のNcSAG1(Howe et al.によってそれらの遺伝子がクローニングされた(1998. Infect. Immun, 66, 5322-5328))(Hemphill et al. 1997, Parasitology, 115, 371-380)およびタキゾイトおよびブラディゾイトの両方で発現されるNcSRS2(Hemphill et al. 1996, Parasitol. Res. 82, 497-504)が含まれる。最近になって、ネオスポラ原虫の両表面タンパク質のサブユニットワクチンとしての検証がネズミモデルにおいて行われた(Cannas et al. 2003a. Parasitology 126 (Pt. 4), 303-312)。また、最近寄生生物の両方の期で発現される2つのミクロネームタンパク質、NcMIC3(Sonda et al. 2000. Mol. Biochem. Parasitol 108, 39-51)およびNcMIC1(Keller et al. 2002. Infect. Immun. 70, 3187-3198)が同定された。さらに、NcMIC10およびNcMIC11と呼ばれるネオスポラ(Neospora)の2つの配列が遺伝子バンクに登録された。これらの配列はトキソプラズマ原虫のタンパク質TgMIC10およびTgMIC11それぞれをコードする配列と極めて類似しているため、それらの配列がミクロネームの2つのタンパク質をコードする可能性が考えられる。クローニングされた他の遺伝子がNcGRA6およびNcGRA7である。これらの遺伝子はネオスポラ原虫タキゾイトの稠密顆粒のタンパク質をコードする遺伝子であり、これらに基づき、疾病診断のためのELISAが開発された(Lally et al. 1996. Clin. Diagn. Lab. Immunol. 3, 275-279)。これらのタンパク質の他、NcNTPase−I(Asai et al. 1998 Exp. Parasitol. 90, 277-285)およびNcGRA2(Ellis et al. 2000. Parasitology 120 (Pt 4), 383-390)と呼ばれる、それぞれ29kDaおよび67kDaの稠密顆粒由来の他のものが同定され、特徴付けられた。もう一方で、細胞内タキゾイトのミクロネームに存在するタンパク質NcMIC3(Naguleswaran et al. 2001. Infect. Immun. 69, 6483-6494)の遺伝子をクローニングし、それをワクチン接種目的で使用する組換えタンパク質として発現させた(Cannas et al. 2003b. J. Parasitol. 89 (pt. 1) 44-50)。
【0007】
最後に、NcSUB1は唯一クローニングされたネオスポラ原虫の遺伝子であり、酵素を発現する遺伝子である。NcSUB1はタキゾイトのミクロネームに存在する65kDaのセリンプロテアーゼ(Louie and Conrad. 1999. Mol. Biochem. Parasitol. 103, 211-223; Louie et al. 2002. J. Parasitol. 88, 1113-1119)であり、TgSUB1と呼ばれるトキソプラズマ原虫タンパク質と高いアミノ酸同一性を示す。
【0008】
ネオスポラブラディゾイトの特異性抗原に関しては、in vitroにおいてもin vivoにおいてもブラディゾイトのシストを得ることが難しいことからこれまでに同定されたものはない。しかしながら、トキソプラズマ原虫では、18kDaのタンパク質に対して向けられたモノクローナル抗体(T83B1)によって認識される表面抗原(SAG4/p18)をはじめとし、特異的ブラディゾイト抗原が記載されている(Tomavo et al. 1991. Infect. Immun. 59, 3750-3753)。トキソプラズマ原虫のこのタンパク質をコードする遺伝子TgSAG4をOdberg-Ferragut et al.(1996, Mol. Biochem. Parasitol. 83, 237-244)によりクローニングし、特徴付けた。
【0009】
トキソプラズマ原虫の抗原TgSAG4はホスファチジルイノシトールグリカン(PI−G)によって結合される膜タンパク質である。トキソプラズマ原虫による慢性感染症に関連する緩増期のこの特異的抗原の検出は、最近になってCultrera et al.(2002, Mol. Cell. Probes 16, 31-39)により示されたように重要な診断価値がある。これらの著者は、トキソプラズマ原虫(T. gondi)感染検出のための、AIDS患者の脳脊髄液(トキソプラズマ原虫が致死性脳症を引き起こす可能性がある)における遺伝子TgSAG4のmRNAの検出に基づくRT−PCRを開発した。
【0010】
ネオスポラ病の診断および予防
従って、疾病の垂直感染が、疾病を持続的に搾取作用により定着させる最大の方法と考えられ、またネオスポラ病が畜牛における流産および新生児死亡の主な原因の1つであるため、付随する経済的損失より、制御は、主として、飼育場内での感染の有病率を下げ、処分と補充のための選択的な手段を確立して感染動物数を減らすことを目的としなければならない。
【0011】
畜牛における流産の病因診断は複雑で、困難である。病因診断がなされた場合には、90%を上回るものでは感染性および寄生性因子が該当する(一般に、ネオスポラ原虫が主要な役割を果たす)。ネオスポラ原虫による感染の診断に関しては、検査室診断を実施して流産の病因を確認することが不可欠である(この診断では、血清学的診断技術が主要な役割を果たし、問題の重大性についての初期情報を与える)。成体では、特異的血清抗体の検出により検査室診断が行われる。この種の研究により飼育場内での感染の分布および頻度(群血清陽性率)ならびに感染した群内でのネオスポラ病による流産の危険性(群内血清陽性率)についての非常に有益な情報が提供されるため、これは感染の制御に効果的な手段を確立するのに非常に有用である(Thurmond and Hietala. 1995. Parasitol. 81, 364-367; Pare et al. 1996. Can. J. Vet. Res. 60, 10 133-139)。
【0012】
従って、動物の健康状態を正確に確認するためには診断の改善が極めて重要である。これに関連して、現在用いられている血清学的技術を検証し、動物の年齢および用いる技術に基づくカットオフポイントの選択などのいくつかの論争中の問題を解明することを目的として数多くの研究が行われてきた(Alvarez-Garcia et al. 2003. Vet. Res. 34, 341-352)。
【0013】
ネオスポラ原虫に対しては現在いくつかの診断技術が用いられている(Ferre et al. 2003. Res. Adv. Microbiol. 3, 157-167)が、最近の感染症と慢性感染症とを区別することが可能な診断技術はなく、特異的タキゾイトおよびブラディゾイト抗原それぞれを同定することにより、流産という点からより多くの飼育場の未来に関する情報を提供し、疾病の制御を改善する診断技術の開発が可能になる。これらの抗原を組換えタンパク質として発現させ、ネオスポラ病に対する血清学的診断にそれらを使用することにより、非常に有益な新規ツールが提供される。これに関連して、様々な種類の異種発現系で産生された数種類のネオスポラ原虫タンパク質に基づき、ELISAなどの診断法が開発された(Lally et al. 1996. Clin. Diagn. Lab. Immunol. 3, 275-279; Louis et al. 1997. Clin. Diagn. Lab. Immunol. 4(6), 692-699)が、特異的ブラディゾイト抗原に基づいたものはこれまでなかった。さらに、期特異的抗原に対するモノクローナル抗体および単一特異性ポリクローナル血清の開発は、ネオスポラ原虫タキゾイトの65kDaのタンパク質に対して行われるような競合ELISAの開発により診断の代替法となる(Baszler et al. 1996. J. Clin. Microbiol. 34(6), 1423-1428)。
【0014】
他方、畜牛におけるネオスポラ病の薬理学的制御は現在実現不可能であり、ウシ疾病の薬物治療の経験はなく、利用可能なデータは信頼できるものではない。しかしながら、可能な治療の高コスト、起こり得る耐性の発現、食用肉または乳汁への残留物により、制御手段としての化学療法は制限される。従って、群管理のための手段には免疫学的予防を加えるべきである。
【0015】
これに関連して、ネオスポラ原虫に対するワクチンの調製のために最近行われた調査に死菌ワクチンの評価があり、その結果はさまざまであり、ネズミモデルでは垂直感染からのある種の防御が見られた(Liddell et al., 1999, J. Parasitol. 85: 1072-1075)が、ウシモデルでは見られなかった(Andrianarivo et al. 1999, Int. J. Parasitol. 30: 985-990)。また、ネオスポラ原虫による致死性感染症からの防御免疫応答を刺激することを目的としたマウスにおけるワクチン接種試験では、弱毒分離株に基づく生ワクチンによる免疫処置も利用し(Atkinson et al. 1999. Parasitology 118: 363-370)、また温度感受性突然変異体も利用した(Lindsay et al. 1999. J. Parasitol. 85: 64-67)ところ、決定的でないが信頼できる結果が得られたが、持続感染を受けた動物が発生するという問題を伴った。他方で、サブユニットのワクチンは伝統的なワクチンに優る数多くの利点を示す(Jenkins, 2001. Vet. Parasitol. 101, 291-310)。これらの利点には、生存寄生生物と比較した、組換えタンパク質の安全性および相対的安定性、防御免疫応答を誘導する抗原のみ含むという柔軟性、ならびに大規模生産を確立する能力が含まれる。感染症、流産または感染症の垂直感染の予防のためのネオスポラ原虫抗原に基づくサブユニットワクチンの開発によりその制御のための新しいツールが提供される。差し当たっては、その件についてほとんど研究が行われなかった。タキゾイト特有の抗原または両方の期で共有される抗原(例えば、発現され、原核生物系から精製された、ネズミモデルにおいて脳のネオスポラ病に対する感染防御免疫を誘導するNcMIC3(Cannas et al. 2003. J. Parasitol. 89(1), 44-50)、ならびにタキゾイトの2つの表面タンパク質であるNcSAG1およびNcSRS2をはじめとする組換えタンパク質)を使用し、それらを同じモデルに接種し、組換え抗原およびDNAワクチンとして組み合わせて(Cannas et al. 2003. Parasi
tology 126, 303-312)、良好な結果を得ている。最近になって、ネズミモデルにおいてNcGRA7タンパク質またはNcsHSP33タンパク質を発現するプラスミドがDNAワクチンとして使用され、感染の先天的伝播からの部分的防御が得られている(Liddell et al. 2003. J. Parasitol. 89(3), 496-500)。しかしながら、ネオスポラ原虫において記載された最初のものは、この報告の本発明の説明において示されるように、遺伝子NcSAG4によって生み出されるものであるために、これまでこれらのワクチンの開発はブラディゾイト期の特異的抗原に基づいたものではなかった。
【0016】
背景において記載したように、各期において特異的に発現される遺伝子を単離することが、この疾病および慢性感染症の確立を決定する分子機構、ならびに感染の再活性化の研究に非常に適しており、疾病の理解および制御が向上する。これに関連して、ネオスポラ原虫におけるNcSAG4遺伝子(トキソプラズマ原虫ブラディゾイト期の特異的タンパク質をコードするTgSAG4遺伝子に相同)を単離し、それをクローニングし、期特異的抗原NcSAG4の組換えタンパク質として発現させることにより、これに関して本発明の説明において記載されるように、ネオスポラ病の診断に、および疾病の発症機序の解析に非常に有益な解決策が提供され、それをワクチンとして使用することがその制御の代替法となる。
【発明の具体的説明】
【0017】
遺伝子NcSAG4のネオスポラ病の診断および予防のための使用ならびに発症機序の解析用マーカーとしての使用
本発明の目的は、ネオスポラ原虫に対する診断およびワクチン接種目的において有用な試薬を提供することである。さらに、本発明は、ネオスポラ病の発症機序の解析を目的とする、主として感染の慢性期の確立研究を目的とする、その再活性化に関するマーカーを提供する。よって、ネオスポラ原虫の遺伝子NcSAG4(この寄生生物において記載されたブラディゾイト期の最初の特異的遺伝子である)の同定、単離および特性化を可能にした分子テクノロジーを記載している。これに関し、遺伝子NcSAG4のいくつかのDNA断片を、トキソプラズマ原虫のタンパク質TgSAG4のアミノ酸の配列に基づいて設計された4つの変性オリゴヌクレオチド(それらのオリゴヌクレオチドの1つ(配列番号1)がOdberg-Ferragut et al.により記載されている(1996, Mol. Biochem. Parasitol. 82, 237-244))の組合せを用いてPCRにより増幅する。設計されたそれ以外の3つのオリゴヌクレオチドはSAG4−2、SAG4−3およびSAG4−4と呼ばれ、配列表において、それぞれ、配列番号2、配列番号3および配列番号4として確認される。得られた配列から別の4つのオリゴヌクレオチドを設計してゲノムウォーキング技術により遺伝子の配列を完成させる。よって、オリゴヌクレオチド1R5SAG4(配列番号5)および2R5SAG4(配列番号6)を使用して5’センスの遺伝子を完成させた。オリゴヌクレオチド1F3SAG4(配列番号7)および2F3SAG4(配列番号8)を使用して3’センスの遺伝子を完成させた。
【0018】
本発明は、クローニングと制限酵素によるその後の消化のために特別に設計されたオリゴヌクレオチドを用いた、PCR増幅によるNcSAG4遺伝子のクローニング法を記載する。このクローニングは、それぞれ、原核生物および真核生物系発現用の2種類のプラスミド、pRSETおよびpcDNA3.1/His(いずれもInvitrogen社製)において行う。タンパク質のアミノ末端のシグナルペプチドの領域を排除した成熟タンパク質NcSAG4の配列およびそのカルボキシ末端の可能性あるシグナルペプチドの領域を排除した成熟タンパク質NcSAG4の配列に相当するアミノ酸29〜148(両方とも含まれる)をコードするNcSAG4遺伝子の一部をプラスミドpRSETに挿入する。これに関し、遺伝子NcSAG4の相当する領域を、ネオスポラ原虫のゲノムDNAから、F85NcSAG4(配列番号13)およびRe444NcSAG4(配列番号14)と呼ばれる、そのために設計されたオリゴヌクレオチドを用いてPCRによって増幅する。この系では、組換えタンパク質pRNcSAG4をファージT7のRNAポリメラーゼプロモーターの制御下で融合タンパク質として発現させる(組換えタンパク質pRNcSAG4のアミノ末端にはアフィニティークロマトグラフィーによる精製を可能にするヒスチジンタグを付ける)。組換えタンパク質pRNcSAG4の生産には、培養培地へのIPTG添加によりファージT7のRNAポリメラーゼによる誘導で発現し、組換えタンパク質の発現を可能にする大腸菌(E. coli)由来のrosetta(DE3)pLysS細胞株(Novagen)を使用する。ネオスポラ病の血清学的診断にこの組換えタンパク質を使用することによって、これらのポリペプチドの抗原性に基づく、ELISA、放射性免疫測定法(RIA)または他の任意の方法による、本発明の開発において示すように、記載されているウエスタンブロット技術による、感染の異なる期(急性期および慢性期)の鑑別診断に非常に有益な新規ツールが提供される。よって、ネオスポラ原虫による先天性感染を受けた胎児および子ウシ由来の血清において、タンパク質pRNcSAG4に対する抗体(15%アクリルアミド−DATDゲル中、変性条件下で電気泳動により分離される)が検出される。このことから、ネオスポラ原虫による急性および慢性感染症の鑑別診断の観点からも、さらにワクチンとしてのそれを使用した予防の観点からもこのタンパク質の価値が示される。
【0019】
組換えタンパク質pRNcSAG4に対するモノクローナル抗体およびポリクローナル単一特異性血清の開発と同様に、そのタンパク質は、それらに基づく競合ELISAの開発により診断の代替法となる。さらに、本明細書において記載するポリペプチドに対するこれらのモノクローナル抗体または特異的ポリクローナル血清が、前記血清による寄生生物の検出に基づく、免疫組織化学、免疫蛍光測定法または他の任意の方法により動物組織におけるネオスポラ原虫による慢性感染症の診断に使用される。
【0020】
本発明の一つの目的は、ネオスポラ病、垂直感染および慢性感染症の確立に対するワクチンを提供することである。原核生物における異種遺伝子の発現系は、組換え抗原の大規模生産という利点を提供し、その組換え抗原がサブユニットのワクチンとして使用される。これらのワクチンにはもう1つの利点、すなわち、それらが標識ワクチンとして使用されるという利点があり、それらが生み出す免疫応答は感染した動物において寄生生物によって生じるものとの区別が容易であり、疾病根絶計画において極めて重要である。さらに、これらのワクチンは安全であり、組換えベクター(例えば、ウイルスベクター)に基づくワクチンに優る利点を提供する。しかしながら、後者のワクチンは低用量での免疫感作を可能にする複製という利点を提供する。
【0021】
それでもなお、サブユニットワクチンとして使用されるこのような種類の組換えタンパク質により、免疫応答、主として体液性免疫応答を誘導する。従って、免疫応答を細胞に基づく応答にも向けるために、この応答に向けられたアジュバントも使用する。もう一方で、細胞に基づく応答を導き、適切なタンパク質フォールディング(protein folding)を確実にするために、DNAワクチンを使用する。
【0022】
本発明は、NcSAG4タンパク質に基づくDNAワクチン(上述の原核生物系で生産される組換えタンパク質pRNcSAG4と組み合わせて、または組み合わせずに使用される)について記載する。これに関し、遺伝子NcSAG4の完全コード化領域を、その目的で設計されたFNcSAG4(配列番号11)およびReNcSAG4(配列番号12)と呼ばれるオリゴヌクレオチドを用いてPCRによって増幅し、それを哺乳動物細胞用発現ベクター、プラスミドpcDNA3.1/His内、制限部位Bam HIおよびEco RIに挿入し、pCDA10と呼ばれる組換えプラスミドを得、このプラスミドをDNAワクチンとして使用する。
【0023】
もう一方で、本発明は、慢性感染症に関連するネオスポラ原虫ブラディゾイト期のマーカーとしての遺伝子NcSAG4の使用について記載する。この遺伝子は、感染動物の組織または体液由来の寄生生物の核酸に基づく、DNAプローブを用いたPCRまたはRT−PCR、in situ ハイブリダイゼーションまたは他の任意の検出法による、ネオスポラ原虫による慢性感染症の診断に本明細書において記載するヌクレオチド分子を使用することによってマーカーとして使用される。
【0024】
1F3SAG4(配列番号7)および1R5SAG4(配列番号5)と呼ばれる遺伝子の単離のために設計されたオリゴヌクレオチドに基づく、RT−PCRによる、寄生生物における遺伝子NcSAG4の発現の検出法を詳述する。このRT−PCRは、中間宿主におけるネオスポラ原虫の期転換マーカーとしてのNcSAG4遺伝子の使用を可能にし、持続感染を受けた動物において慢性感染症の確立を決定する機構および感染の再活性化に関与する機構、ならびにこれらの条件に影響を及ぼす因子の解析に、そして慢性感染症の確立および再活性化からの防御の観点からネオスポラ原虫に対するワクチン製品の有効性を確立するために必要なツールである。さらに、上記プロモーターを用いて作製した遺伝子構築物によってトランスフェクトしたネオスポラ原虫細胞において異種遺伝子を発現させるために遺伝子NcSAG4のプロモーターを使用することによって、細胞培養物または実験動物において、in vitroおよびin vivo発現系でのタキゾイト期からブラディゾイト期への転換(またその逆の場合)を決定する分子機構の解析が可能になる。
【0025】
図面の説明
説明を補足し、本発明の特徴をより理解するために、一連の図面を例示的かつ非限定的なものとして後述の記述的報告に添付する。
【実施例】
【0026】
本発明の方法
次の実施例によりさらに本発明を例示するが、実施例はその範囲を限定するものではなく、本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0027】
実施例1:遺伝子NcSAG4の単離と特徴づけ
ネオスポラ原虫の遺伝子NcSAG4を単離するため、既知DNA領域にフランキングしているが未知配列のDNA断片のPCRによる増幅を可能にするゲノムウォーキングと呼ばれる方法を使用した。
【0028】
既知配列を増幅するために、4つの変性オリゴヌクレオチドを使用して、記載されているものをトキソプラズマ原虫の遺伝子TgSAG4をクローニングするように改善した(Odberg-Ferragut et al., Mol. Biochem. Parasitol. 82 (1996) 237-244)。使用したフォワードオリゴヌクレオチドの1つがこれらの著者が記載しているオリゴ1a(配列番号1)であり、それ以外の3つのものは、以下の株:RH(AF340224.1)、PLK(Z69373.1)、Prugniaud(AF340225.1)およびCEP(AF340226.1)のデータベースに存在するトキソプラズマ原虫の遺伝子TgSAG4によってコードされるアミノ酸配列に基づいて設計した。従って、1つのフォワードオリゴヌクレオチドを設計し、それをSAG4−2(配列番号2)と呼称し、2つのリバースオリゴヌクレオチドをSAG−3(配列番号3)およびSAG4−4(配列番号4)と呼称した。
【0029】
PCRを行うために、ネオスポラ原虫タキゾイトから単離したゲノムDNA0.4μgを使用した。ゲノムDNAを単離するために、市販のキットを使用説明書に従って使用した(GenomicPrep Cells and Tissue DNA Isolation kit, Amersham Biosciences)。使用した陽性対照はその方法により単離されたトキソプラズマ原虫のゲノムDNAであった。使用したDNAポリメラーゼは、ClMg(4mM)、dNTPs(200μM)および各変性オリゴヌクレオチド40pmolの存在下、相当するバッファー中、1反応あたり2.5Uの酵素EcoTaq(Ecogen)であった。PCR条件は、変性94℃にて5分、続いて94℃にて1分、アニーリング1分(この際、温度勾配43℃〜56℃をかけた)(図1,レーン4〜9)、72℃にて1分を40サイクル、サイクルごとに伸長を1秒延長、最後に伸長72℃にて10分とした。使用した陰性対照はDNAを含まない反応の混合物(図1,レーン1)または非感染MARC−145細胞由来のゲノムDNA(図1,レーン2および3)であった。
【0030】
PCRを受けて、融解温度56℃を使用した際にいくつかの断片が増幅され、それらを1×TBEの2%アガロースゲルでの電気泳動によりネオスポラ原虫(図1,レーン9)およびトキソプラズマ原虫(図1,レーン12)のゲノムDNAから分離した(図1)。これらの断片の2つのものが175pbのオリゴヌクレオチド1aとSAG4−3の組合せ(Nc175)および312pbの1aとSAG4−4の組合せ(Nc312)の予測サイズに一致している。市販のキット(GenomeGENECLEAN(商標)Turbo nucleic acid purification kit, Q-BIOgene)を製造業者の指示に従って使用して、1×TBEバッファーの2%アガロースゲルからこれらのDNA断片を精製し、オリゴヌクレオチド1aについて配列決定した(Sequencing Service of the Institute of Biomedical Research “Alberto Sols", CSIC-UAM)。得られたヌクレオチド配列を、データベースに存在する、64pbの断片においてトキソプラズマ原虫の3つの株の遺伝子TgSAG4の配列と類似性82%を有するものと比較した(BLASTN-nr, www.ncbi.nlm.nih.gob/blast)。さらに、配列Nc175を異なるオープンリーディングフレームに翻訳し、それをトキソプラズマ原虫のデータベース(TgGI: TIGR Toxoplasma gondii gene index, www.tigr.org/tdb/tgi/tggi)と比較した際に、表面タンパク質として記載されている配列群(TC2754)と類似性68%であることが分かった。これは上述の株(RH、PKL、PrugniaudおよびCEP)の遺伝子TgSAG4の配列によってコードされるタンパク質と一致し、株ME49のブラディゾイトの遺伝子ライブラリーにある、記載されているEST(Toxoplasma gondii v3, Parasite Consensus EST Data bases)とも一致している。最後に、配列Nc175をネオスポラ原虫のデータベース(NcGI: TIGR Nespora caninum gene index, www.tigr.org/tdb/tgi)と比較したところ、これまでに記載されている配列との類似性はなかった。
【0031】
一度配列Nc175が単離されると、ネオスポラ原虫のゲノムDNAから、市販のキット(Universal Genome Walker(商標)kit, BD Biosciences Clontech)を使用して、配列Nc175の5’および3’センスにおいてゲノムウォーキング法を用いることにより遺伝子NcSAG4が同定された。この方法を行うための第1段階が、製造業者の教示に従っての、平滑末端を生じる4つの異なる制限酵素:EcoRB(1)、Dral(2)、PvuII(3)およびStuI(4)でのゲノムDNAの消化(図2,段階1)とその後のアダプターとの結合(図2,段階2)である。次いで、このようにして得た各遺伝子ライブラリーに関しては、アダプター(AP1およびAP2)と結合しているオリゴヌクレオチドと既知ゲノム配列に基づいて設計された遺伝子の特異的オリゴヌクレオチドを使用してダブルPCRを行う(図2,段階3)。5’センスにおいてゲノムウォーキングを行うために配列Nc175から設計されたオリゴヌクレオチドを1R5SAG4(配列番号5)および2R5SAG4(配列番号6)と呼称し、3’センスにおいてゲノムウォーキングを行うために設計されたオリゴヌクレオチドを1F3SAG3(配列番号7)および2F3SAG4(配列番号8)と呼称した。各ゲノムDNA遺伝子ライブラリーに対して、長距離熱安定性DNAポリメラーゼ(Advantage(商標) Genomic PCR kit, BD Biosciences Clontech)を製造業者の教示に従って使用して、5’または3’センスそれぞれにおいてゲノムウォーキングを行うためのオリゴヌクレオチドAP1および1R5SAG4または1F3SAG4を用いて、第1のPCRを行った。PCR条件は、94℃にて25秒および68℃にて3分を7サイクル、続いて94℃にて25秒および64℃にて3分を32サイクル、さらに最終伸長64℃にて7分間とした。第2のPCRは、第1PCRの産物の1:50希釈物から行い、オリゴヌクレオチドAP2と5’または3’センスそれぞれにおいてゲノムウォーキングを行うための2R5SAG4または2F3SAG4を用いて行った。第2のPCRの条件は、94℃にて25秒および68℃にて6分を5サイクル、続いて94℃にて25秒および64℃にて6分を20サイクル、さらに最終伸長64℃にて10分間とした。ゲノムウォーキングによって得たDNA断片は上記のように精製し、配列決定した(図2,段階4)。
【0032】
従って、異なる増幅断片の配列を比較することによって、601個のヌクレオチドからなる配列(配列番号9)を構築することができた。この配列は、ブラディゾイト期の特異的タンパク質をコードするトキソプラズマ原虫の遺伝子TgSAG4の配列とのその相同性にちなんでNcSAG4と呼ばれた。さらに、522pbのオープンリーディングフレーム(ORF)の存在が確認され、そのORFはトキソプラズマ原虫におけるその相同配列と類似したサイズを有し、173個のアミノ酸からなるタンパク質をコードするもの(配列番号10)であった。このORFをコードするアミノ酸の配列をデータベースに存在する配列(BLASTx, www.ncbi.nlm.nih.gov/blast)と比較したところ、異なるトキソプラズマ原虫株のタンパク質TgSAG4のものとの類似性が69%であることが分かった。
【0033】
実施例2:抗原NcSAG4の組換えタンパク質としての発現
一度遺伝子NcSAG4が同定されたら、異種系において、コード領域領域を発現ベクターに挿入して、抗原NcSAG4を組換えタンパク質として作製した。真核生物系では発現プラスミドpcDNA3.1/His(商標)−C(Invitrogen)を選択し(図3,パネルA)、原核生物系では発現プラスミドpRSET−C(Invitrogen)を選択した(図3,パネルB)。プラスミドpcDNA3.1/His(商標)−Cでは、遺伝子NcSAG4の完全コード化領域を部位BamHIおよびEcoRIに挿入した。これに関し、ネオスポラ原虫のゲノムDNAから、そのために設計されたオリゴヌクレオチド(OligoANALYZER 1.0.2.)を用いてPCRを行った。フォワードオリゴヌクレオチド(その5’末端にBamHIの特異的認識部位、続いてNcoI部位、その後遺伝子NcSAG4のORFの5’末端と同一の配列を含む)をFNcSAG4(配列番号11)と呼称した。リバースオリゴヌクレオチド(その5’末端にEcoRIの特異的認識部位、続いて遺伝子NcSAG4のORFの3’末端に相補的な逆配列を含む)をReNcSAG4(配列番号12)と呼称した。
【0034】
原核生物における発現では、末端切断型タンパク質、アミノ酸29〜148(両方とも含まれる)をコードする遺伝子NcSAG4の一部をプラスミドpRSET−Cの部位BamHIおよびEcoRIに挿入した。これに関して、2つのオリゴヌクレオチドをソフトウェア(OligoANALYZER 1.0.2.)を使用して設計した。フォワードオリゴヌクレオチド(その5’末端にBamHIの特異的認識部位、続いて遺伝子NcSAG4のORF、ヌクレオチド83〜100と同一の配列を含む)をF85NcSAG4(配列番号13)と呼称した。リバースヌクレオチド(その5’末端にEcoRIの特異的認識部位、続いて終止コドン(TAA)、その後遺伝子NcSAG4のORF、ヌクレオチド328〜444の相補的逆配列を挿入している)をRe444NcSAG4(配列番号14)と呼称した。
【0035】
いずれの場合においてもPCRを行うために、ネオスポラ原虫タキゾイトから単離したゲノムDNA0.1μgを反応に使用した。使用したDNAポリメラーゼは、2.5mMのClMg、dNTPs(200μM)および各オリゴヌクレオチド40pmolの存在下、相当するバッファー中最終量25ul、1反応あたり1.25UのEcoStart(Ecogen)であった。PCR条件は、変性95℃にて7分、続いて95℃にて30秒、53℃にて1分、72℃にて4分を40サイクル、サイクルごとに伸長を1秒延長、最後に伸長72℃にて10分(1回)とした。PCR産物を1×TAEバッファーの1.5%アガロースゲルに流し、臭化エチジウム(BrEt)で染色し、遺伝子NcSAG4のORFについて予測されるサイズに相当する542pb、そして末端切断遺伝子については385pbのサイズを観察した。次いで、これらのDNA断片を精製し、好適なバッファー(バッファーB, Roche)中、最終量50μLの制限酵素BamHI(5U)およびEcoRI(6U)により水浴中37℃にて4時間消化した。同時に、同じ条件下で、各プラスミドベクターを消化した。これらのプラスミドは、37℃での同じ消化反応においてエビアルカリ性ホスファターゼ(SAP)酵素2Uによる30分間の消化終了時に処理した。その後、SAP酵素をEDTA 10mMの存在下で65℃にて20分間不活性化した。一度消化が完了したら、プラスミドDNAとPCR産物の両方を1×TAEバッファーの1.5%の低融点アガロースゲルに流し、BrEtで染色した後、それを精製した。
【0036】
プラスミドの操作では、Sambrook et al.(1989)によって記載された方法に基本的には従った。一度、消化された各DNA断片を精製したら、それを好適なバッファー中、最終量15μLの1Uの酵素T4DNAリガーゼ存在下、ベクター−挿入物1:3比で、50ngの対応するベクター(遺伝子NcSAG4の完全ORFの場合にはpCDNA3.1/His(c)−C(Invitrogen)および末端切断遺伝子の場合にはプラスミドpRSET−C)と連結した。連結はサーモサイクラーで0.5ml試験管中(Multi(商標), Sorenson Bioscience)12℃にて18時間を行い、その後、使用するまで−20℃にて保存した。
【0037】
一度連結を行えば、それを用いてエレクトロポレーションにより大腸菌DH5α株の冷凍コンピテント細胞を形質転換した。エレクトロポレーションによる細菌の形質転換では、エレクトロポレーターの製造業者(GenePulser(商標), Bio-rad)の教示に基本的には従った。予め氷冷しておいた2mmのエレクトロポレーショントレー(Equibio)を使用した。コンピテント菌は5μLの連結物を添加するまで冷凍しないで氷中に保った。氷中で1分後、それらに25μFDおよび200Ohmにて、4〜5秒間、2.5kVのパルスをかけた。形質転換された菌を直ちに500μLのSOC培地(MgSO 10mM、MgCl 10mMおよびグルコース20mMをSOB培地に添加したもの、SOB培地:バクトトリプトン2%、酵母抽出物0.5%、NaCl 10mMおよびKCl 2.5mM)に再懸濁し、37℃にて1時間増殖させ、その後200μLの細胞懸濁液を100μg/mLのアンピシリン(使用したプラスミドが耐性を有する抗生物質)の存在下でLB−寒天培地(1.5%ノーブル寒天(noble gar))に播種した。好適な培地で37℃にて18時間プラークを増殖させた後、プラスミドにより形質転換された菌を選択した。その後のプラスミドDNAの単離のために、各々10クローンを選択し、100μg/のアンピシリンを含有する液体LB培地3mL中で37℃にて一晩増殖させた。このDNAをアルカリ溶菌法により得、予測サイズのプラスミドに関するクローンを選択するために、続いてそれを1×TAEバッファーの0.8%アガロースゲルに流した。遺伝子NcSAG4の完全ORFをプラスミドpcDNA3.1/His/(c)−Cに挿入することによって構築された、予測サイズ6,028pbのプラスミドに関連したプラスミドをpCDA(クローンのとおり1〜10の番号が付けられている)と呼称した。末端切断型遺伝子NcSAG4、ヌクレオチド83〜444をpRSET−C(3,235pb)に挿入することによって得られたプラスミドをpRC(クローンのとおり1〜10)と呼称した。制限酵素による特徴づけのため、観察されたサイズに基づき、各々から4クローンを選択した(図4)。従って、得られたプラスミドを好適なバッファー(バッファーB,Roche)中、最終量20μLの制限酵素BamHI(5U)およびEcoRI(6U)により水浴中37℃にて2時間消化した。消化されたプラスミドDNAを0.5%TBEバッファーの0.8%アガロースゲルで分離したところ、各構築プラスミドにおいて適切なサイズの断片の放出が観察された。その結果、プラスミドpCDA5、pCDA6、pCDA9およびpCDA10は528pbの断片を放出し(図4,パネルA,それぞれレーン1〜4)、プラスミドpRC6、pRC7、pRC9およびpRC10は371pbの断片を放出した(図4,パネルB,それぞれレーン3〜6)。さらに、ベクターpcDNA3.1/His(c)−C(図4,パネルA,レーン5および6)およびPRSET−C(図4,パネルB,レーン1)を切断し、消化の対照として使用した。また、非消化プラスミドpRSET−C(図4,パネルB,レーン2)もアガロースゲルに流した。市販のオリゴヌクレオチドT7を用いてプラスミドpCDA10およびpRC10を配列決定し、断片が発現ベクターに適切に挿入されているかを確認した。
【0038】
組換えタンパク質pRNcSAG4(配列番号15)は、遺伝子NcSAG4のORFによってコードされ、本明細書において記載されている、アミノ末端のシグナルペプチドとカルボキシ末端の可能性あるシグナルペプチドのない成熟タンパク質NcSAG4のアミノ酸配列に相当するアミノ酸29〜148を包含し、Gerber et al.(1992. JBC 267. 12168-12173)によって見直された判定基準に従って、アミノ末端に、アフィニティークロマトグラフィーによる精製を可能にする6個のヒスチジン、ペプチドT7−タグおよびエンテロキナーゼ認識領域をはじめとするアミノ酸のタグが付けられる。図3、パネルCでは、組換えタンパク質pRNcSAG4のチャートを示す。
【0039】
組換えタンパク質を原核生物系において発現させるために、大腸菌のRosetta(DE3)pLysS細胞株(Novagen)をプラスミドpRC10で製造業者の指示に従って形質転換した。プラスミドpRC10で形質転換された細胞をアンピシリン(100μg/mL)およびクロラムフェニコール(34μg/mL)を含有するLB−寒天培地に播種し、37℃にて一晩増殖させた。その翌日、プラークから6コロニーを選択し、同じ選択液体培地3ml中で37℃にて一晩増殖させた。その翌日、培養物を同じ増殖培地で1:10希釈し、A600が0.9ODに達するまで同じ条件下に保った。その後、組換えタンパク質の発現を1mM IPTGの存在下、250rpmおよび37℃にて攪拌しながら4時間誘導した。最後に、細胞を3,500×gにて15分間の遠心分離により集めた。一度上清を除去したら、使用するまで沈殿物を−80℃にて保存した。
【0040】
組換えタンパク質の発現について特徴づけするため、前もって集めておいた細胞沈殿物を、Tris 20mM pH7.98中1×のBugBuster(Novagen)と呼ばれる市販の溶菌液、濃度5mL/細胞沈殿物1gで溶解した。それらを、酵素ベンゾナーゼ(Novagen, lU/mLの1xBugbuster)の存在下、ゆっくりと攪拌しながらおよび室温で40分間インキュベートした。次いで、関連タンパク質が存在する場所を証明するために、沈殿物から封入体が存在する可溶性画分を20,000×gにて15分間の遠心分離により分離した。封入体はさらに、製造業者の指示に従って洗浄した。最後に、50μL/最初の培養物1mLの割合のローディングバッファーLaemmli 1×(Laemmli 1970. Nature 227, 680-685)に溶かしたタンパク質を、15%アクリルアミド/DADTゲル中、変性条件下での電気泳動により分離した(図5)。タンパク質は、誘導前(図5,レーン1)および誘導後(図5,レーン2)に集めた菌の全抽出物両方と前もって集めておいた上清(図5,レーン3)および沈殿物(図5,レーン4)、さらに洗浄後の封入体(図5,レーン5)より分離した。その結果、大腸菌のRosetta(DE3)pLysS(Novagen)において推定される見かけの分子量が17.2kDaであり、封入体中に存在する組換えタンパク質pRNcSAG4の発現が確認された。
【0041】
実施例3:タンパク質pRNcSAG4の免疫原性の判定
組換えタンパク質pRNcSAG4の免疫原性をウエスタンブロットによりネオスポラ原虫に自然感染した動物ウシ由来の血清を用いて判定した(図6)。これらの血清の感染はこれまでELISA法や直接免疫蛍光測定法(IFAT)により特異的抗体の高力価によって診断されてきた。タンパク質pRNcSAG4が存在する封入体に対し、0.1×BugBuster溶液を用いて製造業者の教示のとおり、3回洗浄を行った。次いで、タンパク質を変性条件下での電気泳動により15%アクリルアミド−DATDゲルで分離し、最後に、予冷転写バッファー(Tris 25mM、グリシン 192mM pH8.5および20%メタノール)に浸漬した0.2μmニトロセルロース膜(Bio.rad)への電気転写を400mAにて1時間行った。使用したウシ血清は異なる起源のものとした。その意味で、血清は慢性感染症が確立している可能性が高い動物由来のものであり、その血清にはブラディゾイトが出現しており(例えば、先天性感染を受けて生まれた動物由来のものまたは妊娠末期に流産した胎児の体液)、初乳前血清反応陽性を示す。もう一方で、流産しかけている雌ウシ由来の血清を使用して、流産に至らしめるネオスポラ原虫感染の再活性化の可能性を示した。さらに、3頭の子ウシの初乳前血清(IFATではネオスポラ原虫に対して高力価を有する)を使用した(図6,パネルAおよびB,レーン1、2および3)。さらに、腹水(IFATではネオスポラ原虫に対して抗体高力価を有する)、妊娠の第2(図6,パネルAおよびB,レーン4)および第3四半期(図6,パネルAおよびB,レーン5および6)に流産した胎児由来のもの、ネオスポラ原虫に対して血清反応陽性の流産した雌ウシ由来のもの(図6,パネルAおよびB,レーン7および8)を使用した。最後に、流産した他の2頭の雌ウシ由来の血清(IFATではネオスポラ原虫に対して血清反応陽性であり、抗体高力価を有する)を使用した(図6,パネルAおよびB,レーン9および10)。
【0042】
技術の対照として、ウエスタンブロットを、同じ血清を用い、in vitroで得られたネオスポラ原虫タキゾイト由来の可溶性抽出物を転写した膜で同じ血清と並行して行った。可溶性抽出物を得るため、またウエスタンブロットを実施するため、上述のプロトコールに基本的には従った(Alvarez et al. 2002. Vet. Parasitol. 107, 17-27)。膜を0.05%Tween−20含有TBS(TBS−T)中3%BSAでブロックし、室温にて1時間攪拌した。次いで、その膜を37℃で攪拌しながら、ウシ由来の血清(0.3%BSA含有TBS−Tにより1:20希釈)とともに2時間インキュベートした。TBS−Tで3回迅速に洗浄した(15分を1回と5分を2回)後、膜を37℃で攪拌しながら、ペルオキシダーゼ結合抗ウシIgGのマウスモノクローナル抗体(Hipra)(0.3%BSA含有TBS−Tにより希釈1:200)とともに1時間インキュベートした。上記条件下でさらに一連の洗浄を行った後、使用直前に調製した基質溶液(20mlのメタノール、100mlのTBSおよび0.060mlの過酸化水素に溶かした60mgの4−クロロ−1−ナフトール(4-chloro-1-naphtol))により、暗所でおよび攪拌下、室温にて15分間発色させた。
【0043】
ウエスタンブロットによりネオスポラ原虫による先天性感染を受けた(infected congenially)子ウシ由来の初乳前血清(図6,パネルA,レーン1、2および3)において、また妊娠の最後の3分の1で流産した胎児の腹水(図6,パネルA,レーン6)において組換えタンパク質に対する明瞭な応答が検出された。これらの動物では、流産した胎児のもの2つを除き(図6,パネルB,レーン4および5)、タキゾイト期の免疫優勢抗原に対しての明瞭な応答が認められた(図6,パネルB,レーン1〜3および6)。しかしながら、流産した雌ウシでは、明瞭な応答が検出されなかった(図6,パネルA,レーン7〜10)が、タキゾイト期の免疫優勢抗原に対する明瞭な応答があった(図6,パネルB,レーン7〜10)。
【0044】
これらの結果から、自然感染した動物ではタンパク質NcSAG4に対する応答が存在することが確認されるため、慢性型の感染が確立されているかもしれない場合、すなわち、タキゾイトからブラディゾイトへの転換が起こる場合には、トキソプラズマ原虫におけるその相同物(TgSAG4)と同様に、寄生生物のこの緩増期のタンパク質NcSAG4の特異性も確認される。タキゾイト期が特徴である急性感染症の動物ではpRNcSAG4に対する応答はないが、タキゾイト抽出物に対する明瞭な応答を示すことから、ブラディゾイト期のタンパク質NcSAG4の特異性も確認される。
【0045】
実施例4:RT−PCRによるネオスポラ原虫ブラディゾイト期におけるNcSAG4遺伝子の転写の判定
ネオスポラ原虫のNcSAG4遺伝子の転写の期特異性を証明するため、in vitroで培養したブラディゾイトから抽出される全RNAから行うRT−PCRを開発した。細胞培養物においてブラディゾイトを生産するため、Risco-Castillo et al. (2003) J. Parasitol, 刊行物に掲載)により記載された方法に従った。これに関し、ネオスポラ原虫のタキゾイトを宿主−寄生生物比2:1で使用して(Barber et al. 1995. Parasitol. 111, 563-568)、MARC−145細胞の単層を感染させた(Kim et al. 1993. Arch. Virol. 133, 477-483)。感染した細胞の培養物をHepes(pH7.2)15mM、グルタミン(2mM)、ペニシリン(10U/mL)、ストレプトマイシン(10μg/mL)、ファンギゾン(25ng/mL)の存在下、10%ウシ胎児血清を補給したDMEM中で維持し、37℃および5%COにてインキュベートした。
【0046】
期転換を誘導するため、感染後、感染した培養物を濃度、培養培地中70μMのナトリウムニトロプルシエート(sodium nitroprusiate)(SNP)で7日間処理し、2日おきに補充した。陰性対照として、タキゾイトの生産のためSNPでは処理しない感染培養物を維持した。タキゾイトとブラディゾイトの混合物は、感染細胞の単層をかき取って集め、SNPで処理し、4℃にて15分間、1350×gにて遠心分離した。SNPでは処理していない感染培養物で生産されたタキゾイトを同じ手順で集めた。同じ条件下、PBSで2回洗浄した後、25Gニードルを用いてゾイトを再懸濁し、細胞屑を除去するためにセファデックス(商標)カラム(PD-10, Amersham Biosciences)を用いて精製した。これに関し、5mlのPBSでカラムを平衡化した後、ゾイトの懸濁液を5mlのPBSにより重力によって流した。同量のPBSで2回洗浄した後、ゾイトを4℃にて15分間、1350×gにて遠心分離することにより集めた。集めたゾイトは使用するまで−80℃にて冷凍保存した。
【0047】
全RNAの抽出では、上述のように生成した10タキゾイトの沈殿物またはタキゾイトとブラディゾイトの混合物を使用した。これに関し、市販のキットNucleoSpin RNA II(BD Biosciences Clontech)を製造業者の教示に従って使用した。得られた全RNAを、その特性を調べるため1×TAEバッファーの0.8%アガロースゲルでの電気泳動により分離した。
【0048】
1つの試験管でRT−PCRを行うため、各起源、タキゾイトまたはブラディゾイトの全RNA 100ngを使用し、“Quiagen(商標)One-step RT-PCR kit”(Qiagen)と呼ばれる市販のキットを製造業者の指示に従って使用した(図7)。これに関し、IR5SAG4(配列番号5)および1F3SAG4(配列番号7)と呼ばれるオリゴヌクレオチドを使用した。RTは50℃にて30分間行った。PCR条件は、変性95℃にて15分、続いて94℃にて30秒、61℃にて1分、72℃にて1分を40サイクル、最後に伸長72℃にて10分とした。PCR産物を0.5×TBEバッファーの3%高分解能アガロースゲルに流し、臭化エチジウム(BrEt)で染色した。RT−PCRの結果として、タキゾイトではNcSAG4のRNAメッセンジャー(mRNA)の転写はなく(図7,レーン2)、ブラディゾイトでは上記mRNAが存在している(図7,レーン3)ことが確認された。PCRの陽性対照として、ネオスポラ原虫タキゾイトから得られたゲノムDNA 100ngを使用し(図7,レーン4)、PCRの陰性対照として、サンプルの代わりに超純水を使用した(図7,レーン1)。このことから、トキソプラズマ原虫のその相同なTgSAG4と同様に、ネオスポラ原虫ブラディゾイト期のNcSAG4遺伝子の転写の特異性が確認される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】この報告の実施例1において説明される、ネオスポラ原虫ゲノムの配列Nc175およびNc312の増幅を示す。
【図2】この報告の実施例1において説明される、ゲノムウォーキングのスキームを示す。
【図3】この報告の実施例2において説明される、発現プラスミド、パネルA.PcDNA3.1/His.パネルB:pRSETへの遺伝子NcSAG4の挿入と、この報告の実施例2において説明される、組換えタンパク質、pRNcSAG4のスキーム(パネルC)を示す。
【図4】この報告の実施例2において説明される、制限酵素での消化による組換えプラスミドの選択を示す。 ここで、WMは「分子量標準、low range(Bio Rad)」である。
【図5】この報告の実施例2において説明される、大腸菌における組換えタンパク質pRNcSAG4の発現である。
【図6】この報告の実施例3において説明される、組換えタンパク質pRNcSAG4の免疫原性の特徴づけである。
【図7】この報告の実施例4において説明される、RT−PCRによるネオスポラ原虫ブラディゾイト期の遺伝子NcSAG4の転写の検出である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネオスポラ原虫(Neospora caninum)から単離され、かつ、NcSAG4遺伝子に相当する、配列番号9によって示される601個のヌクレオチドからなる、ポリヌクレオチド分子であって、
173個のアミノ酸からなる抗原タンパク質NcSAG4をコードし、かつ、配列番号10によって示される、522個のヌクレオチドからなるORFを含んでなる、ポリヌクレオチド分子。
【請求項2】
請求項1に記載のNcSAG4遺伝子のORFの配列を含んでなる、ポリヌクレオチド分子であって、
配列番号11および配列番号12よってそれぞれ示されるオリゴヌクレオチドFNcSAG4およびReNcSAG4を用いたPCRによって増幅され、その増幅物の挿入によって発現ベクター、好ましくはプラスミドpcDNA3.1−His−C(Invitrogen)、に含まれてなる、ポリヌクレオチド分子。
【請求項3】
請求項1に記載の遺伝子NcSAG4のORFのヌクレオチド83〜444を含む配列を含んでなる、ポリヌクレオチド分子であって、
配列番号13および配列番号14よってそれぞれ示されるオリゴヌクレオチドF85NcSAG4およびRe444NcSAG4を用いたPCRによって増幅され、その増幅物の挿入によって発現ベクター、好ましくはプラスミドpRSET−C、に含まれてなる、ポリヌクレオチド分子。
【請求項4】
請求項1に記載の遺伝子の任意の断片を含む配列、またはこの配列を変化させる化学的、物理的、酵素もしくは他の任意の修飾によって生じる配列を含んでなる、ポリヌクレオチド分子であって、
任意の組換えベクターに含まれてなる、ポリヌクレオチド分子。
【請求項5】
PCRもしくはRT−PCRによるネオスポラ原虫の検出にDNAプローブとして使用するための、または請求項1に記載の配列の任意の断片のPCRによる増幅のための、配列番号2、3、4、5、6、7、8、11、12、13および14によって示されるオリゴヌクレオチドである、SAG4−2、SAG4−3、SAG4−4、1R5SAG4、2R5SAG4、1F3SAG4および2F3SAG4、FNcSAG4、ReNcSAG4、F85NcSAG4、Re444NcSAG4の使用。
【請求項6】
請求項1〜4に記載の配列番号9のヌクレオチド配列を含んでなる、組換えベクター。
【請求項7】
請求項6に記載の組換えベクターを用いてトランスフェクトされた、宿主真核生物細胞。
【請求項8】
請求項6に記載の組換えベクターで形質転換された、宿主原核生物細胞。
【請求項9】
(a)請求項1に記載の、配列番号10によって示されるネオスポラ原虫の抗原タンパク質NcSAG4;
(b)その化学的または酵素的変化物;
(c)ネオスポラ原虫のタンパク質NcSAG4の大部分からなるポリペプチドまたは化学的もしくは酵素的に修飾されたそのポリペプチド;
(d)(a)、(b)もしくは(c)のタンパク質またはポリペプチドを含む組換えタンパク質
から選択される、実質的に精製または単離されたポリペプチド。
【請求項10】
遺伝子NcSAG4のプロモーターの使用であって、前記プロモーターを用いて調製した遺伝子構築物によってトランスフェクトされたネオスポラ原虫(Neospora caninum)の細胞において異種遺伝子を発現させるための、遺伝子NcSAG4のプロモーターの使用。
【請求項11】
寄生生物の核酸に基づく、DNAプローブを用いたPCRまたはRT−PCR、in situ ハイブリダイゼーションまたは他の任意の検出法による、感染動物の組織または体液由来のネオスポラ原虫による慢性感染症の診断のための、請求項1〜5に記載のポリヌクレオチド分子の使用。
【請求項12】
該ポリペプチドの抗原性に基づく、酵素免疫測定法(ELISA)、放射性免疫測定法(RIA)、免疫ブロット法または他の任意の方法による、ネオスポラ原虫による慢性感染症の血清学的診断のための、請求項9に記載のポリペプチドの使用。
【請求項13】
競合ELISAによる、ネオスポラ原虫による慢性感染症の診断のための、請求項9に記載のポリペプチドに対するモノクローナル抗体または特異的ポリクローナル血清の使用。
【請求項14】
請求項9に記載のポリペプチドに対するモノクローナル抗体または特異的ポリクローナル血清の使用であって、
該血清による寄生生物の検出に基づく、免疫組織化学、免疫蛍光測定法または他の任意の方法による、動物の組織におけるネオスポラ原虫による慢性感染症の診断のための、使用。
【請求項15】
ネオスポラ病に対するワクチンとして製剤された、
(a)請求項9に記載のポリペプチド;
(b)請求項1〜4に記載のポリヌクレオチド分子;
(c)請求項6に記載の組換えベクター;
(d)請求項7に記載のトランスフェクトされた宿主細胞;または
(e)請求項8に記載の形質転換された宿主細胞
を含んでなる、免疫原性組成物。
【請求項16】
アジュバントまたは1種もしくは数種のサイトカインを含んでなる、請求項15に記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
ネオスポラ病に対するワクチンとして製剤された、
(a)請求項9に記載のポリペプチド;
(b)請求項9に記載のポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチド分子;
(c)請求項6に記載の組換えベクター;
(d)請求項7に記載のトランスフェクトされた宿主細胞;
(e)請求項8に記載の形質転換された宿主細胞
を組合せることを含んでなる、免疫原性組成物の調製法。
【請求項18】
請求項15、16および17に記載のワクチンとして製剤された免疫原性組成物の入った容器を含んでなる、哺乳動物用ネオスポラ病ワクチン接種キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−516705(P2007−516705A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541962(P2006−541962)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【国際出願番号】PCT/ES2004/000529
【国際公開番号】WO2005/053505
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(500464713)ウニベルシダッド・コンプルテンセ・デ・マドリッド (5)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSIDAD COMPLUTENSE DE MADRID
【Fターム(参考)】