説明

Nrf2活性化物質を有効成分として含む角結膜障害の予防または治療剤

【課題】新たな角結膜障害の予防または治療剤の提供。
【解決手段】Nrf2(NF−E2 related factor 2)は、親電子性物質を直接解毒する異物代謝系第2相酵素およびヘムオキシゲナーゼといった抗酸化酵素等の遺伝子発現を誘導制御している転写因子であり、該Nrf2の活性化物質を有効成分とする角結膜障害の予防または治療剤。該Nrf2活性化物質としては、マイケル反応アクセプター、t−ブチルハイドロキノン、クルクミンまたは下式で示される化合物が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Nrf2活性化物質を有効成分として含むドライアイ、点状表層角膜症、角膜上皮欠損、角膜びらん、角膜潰瘍、結膜上皮欠損、乾性角結膜炎、上輪部角結膜炎、糸状角結膜炎、感染性角膜炎、非感染性角膜炎、感染性結膜炎、非感染性結膜炎などの角結膜障害の予防または治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
生体は、酸化−抗酸化のバランスを調節し、細胞内酸化還元状態を一定に維持して機能している。この酸化−抗酸化のバランスが酸化方向に傾いた状態を酸化ストレスという。酸化ストレスは、脂質、DNA、タンパク質などの生体高分子に修飾や障害を与え、細胞機能障害や細胞死を引き起こし、発癌、高血圧、動脈硬化、脳神経変性疾患、炎症、喘息、皮膚疾患、加齢黄斑変性、白内障といった加齢に伴う慢性疾患の発症や進行に深く関与していることが知られている。そのため、酸化−抗酸化のバランスを一定に維持する防御機構は生体にとって必須の生体防御システムであり、酸化ストレスからの防御能を高めることは、これらの疾患の予防や治療に有用であると考えられている(非特許文献1)。
【0003】
近年、Keap1−Nrf2システムが、哺乳類の酸化ストレス防御機構において中心的な役割を果たすことが明らかになってきた。Nrf2(NF−E2 related factor 2)は、親電子性物質を直接解毒するグルタチオン−S−トランスフェラーゼ、キノンオキシドレダクターゼといった異物代謝系第2相酵素およびヘムオキシゲナーゼ、ペルオキシレドキシンといった抗酸化酵素等の遺伝子発現を誘導制御している転写因子である。Nrf2は、定常状態(未刺激の状態)では、細胞質中でKeap1(Kelch−like ECH associated protein 1)と複合体を形成し不活性状態にあるが、親電子性物質や活性酸素種といった酸化ストレスに暴露されると、Keap1との相互作用が減弱し(解離が促進されて)核へ移行する。核に移行したNrf2は、小Maf(Musculoaponeurotic Fibrosarcoma)群因子とヘテロニ量体を形成し、標的配列である抗酸化剤応答配列(ARE:antioxidant responsive element)と呼ばれるプロモーター配列に結合して、上述した酵素群の遺伝子発現を誘導する。このように、Nrf2は、生体の酸化ストレスからの防御や生体異物の解毒排泄を統一的に制御していることが知られている(非特許文献2)。
【0004】
また、Keap1−Nrf2システムが破綻したマウス(Nrf2遺伝子欠損マウス)では、細胞内の酸化−抗酸化のバランスが崩れて、易発ガン性(ベンツピレンによる前胃部発ガン、ニトロサミンによる膀胱発ガン等)、外来異物/酸化ストレスに対する感受性亢進(アセトアミノフェンによる肝障害、高酸素暴露による肺障害等)、炎症・免疫系の異常(糸球体腎炎、全身性自己免疫疾患、タバコ誘導性肺気腫等)を示すことが報告されている。このように、Nrf2の機能欠損は酸化ストレスを引き起こし、癌、高血圧、脳神経変性疾患、炎症といった疾患を誘発することが示唆されている(非特許文献3)。
【0005】
このような知見から、Nrf2の活性化は、酸化ストレスが関連する疾患の予防、改善に非常に有効であると考えられている。たとえば、Nrf2を活性化する物質として知られるオルチプラズやスルフォラファンがベンツピレンによる前胃部発ガンを抑制すること、Nrf2を活性化する物質であるオルチプラズがニトロサミンによる膀胱発ガンを抑制することが報告されている(非特許文献3)。
【0006】
また、酸化ストレスが関連する眼科疾患である加齢黄斑変性や白内障に対するNrf2活性化物質の有用性を示した報告として、非特許文献4〜5および特許文献1〜3がある。加齢黄斑変性は、黄斑の加齢変化に伴う変性症で、紫外線暴露により蓄積されるレチンアルデヒド(all−trans−retinaldehyde)といった酸化ストレスが網膜色素細胞を障害することが知られているが、非特許文献4および特許文献1には、Nrf2活性化物質であるスルフォラファンやビス−2−ヒドロキシベンジリデンアセトンがこの細胞障害を抑制することが報告されている。非特許文献5には、Nrf2活性化物質であるクルクミンがガラクトース誘発白内障を抑制することが報告されている。特許文献2および3には、Nrf2活性化物質を用いた加齢黄斑変性のドルーセン形成、糖尿病性網膜症および緑内障に伴う網膜症・視神経症の治療方法が記載されている。
【0007】
しかしながら、Nrf2活性化物質について、ドライアイ、角膜潰瘍、角膜炎、結膜炎等といった角結膜障害に対する薬理作用を検討する報告はない。特に、Nrf2活性化物質のドライアイに対する予防、改善効果について検討する報告はない。
【特許文献1】国際公開03/51313号パンフレット
【特許文献2】国際公開2005/063249号パンフレット
【特許文献3】国際公開2005/063295号パンフレット
【非特許文献1】Biomed. Pharmacother. 57, 251-60(2003)
【非特許文献2】J. Biol. Chem., 278, 14, 12029-38(2003)
【非特許文献3】別冊「医学のあゆみ」レドックス−ストレス防御の医学, 46-9(2005)
【非特許文献4】Proc. Natl. Acad. Sci., 101, 10446-51(2004)
【非特許文献5】Mol. Vis., 9, 223-30(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、Nrf2活性化物質に関して、新たな医薬用途を探索することは興味深い課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、Nrf2活性化物質の新たな医薬用途を探索すべく鋭意研究を行ったところ、Nrf2活性化能を有することが報告されている化合物等が、ヒト角膜上皮細胞においても異物代謝系第2相酵素および抗酸化酵素の遺伝子発現を誘導制御することを見出した。さらに、Nrf2活性化物質が、角膜障害モデルを用いた角膜障害治癒効力試験において、角膜障害に対して優れた予防および改善効果を発揮することを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、Nrf2活性化物質を有効成分とするドライアイ、点状表層角膜症、角膜上皮欠損、角膜びらん、角膜潰瘍、結膜上皮欠損、乾性角結膜炎、上輪部角結膜炎、糸状角結膜炎、感染性角膜炎、非感染性角膜炎、感染性結膜炎、非感染性結膜炎などの角結膜障害の予防または治療剤である。
【0011】
本発明のNrf2活性化物質とは、転写因子であるNrf2を活性化させる作用を有する化合物をいい、Nrf2の活性化とは、Nrf2と複合体を形成することで細胞質にトラップしているKeap1から解離させることをいう。また、この解離の結果、Nrf2は核へ移行して、異物代謝系第2相酵素や抗酸化酵素等の遺伝子発現を誘導するので、Nrf2活性化物質はNrf2の核への移行を促進する作用も有する。
【0012】
本発明のNrf2活性化物質は、例えば、(1)マイケル反応アクセプター、(2)ジフェノール類、キノン類、ブチル化ヒドロキシアニソール類、ブチル化ヒドロキシトルエン類、(3)イソチオシアネート類、(4)ヒドロペルオキシド、(5)メルカプタン類、特に、2つのチオール基が隣接しているビシナルジチオール類、(6)1,2−ジチオール−チオン類、(7)チオカーバメート類、(8)ヒ素化合物、(9)重金属、(10)ジアリールスルフィド、インドール−3−カルビノール、エピガロカテキンガレート、エラグ酸、エトキシキン、カロテノイド類、共役系ポリエン類、4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2H−1,2−ベンゾセレナジン、イソフムロン酸、異性化ホップエキス(WO2006/043671)、これらの塩等が挙げられる(生化学,76(4),P.339−48(2004)、PNAS 98, 6, 3404-9(2001)、蛋白質 核酸 酵素,44(15),P.2390−5(1999)、WO2005/063249、WO2005/063295)。
【0013】
マイケル反応アクセプターの例として、カルボニル基、二トリル基、ニトロ基などの電子求引基と結合した炭素−炭素二重結合をもつ化合物(α、β−不飽和カルボニル化合物等)が挙げられ、具体的には、マレイン酸誘導体(マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル等)、フマル酸誘導体、1−ニトロ−1−シクロヘキセン、2−メチレン−4−ブチロールアセトン、15−デオキシ−△12,14−プロスタグランジンJ、7(E)−[6−(4−メチルフェニル)ヘキシル]−5−オキソー3−シクロペンテン−1−イリデン]ヘプタン酸メチル(PNAS 103, 3, 768-73(2006))、クマリン類(3−ヒドロキシクマリン等)、クルクミン、ビス(2−ヒドロキシベンジリデン)アセトン、下記一般式(I)で表される化合物(Cancer Res. 65, 11, 4789-98(2005))等が挙げられる。
【化1】

【0014】
[式中、
1、2、3、4、5、およびRは同一かまたは異なって水素原子またはアルキル基を示し、
Xは水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基またはカルボキシル基を示し、
Yはシアノ基または−CO−Zを示し、
Zは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基またはイミダゾール環、トリアゾール環およびベンゾイミダゾール環からなる群より選択される芳香族複素環を示す。
【0015】
上記で規定した芳香族複素環はハロゲン原子、アルキル基またはフェニル基で置換されていてもよい。]
ジフェノール類、キノン類、ブチル化ヒドロキシアニソール類およびブチル化ヒドロキシトルエン類の例として、カテコール、クエルセチン、カルノソール、ロスマノール、エピロスマノール、カルノジン酸等の1,4−または1,2−の位置に水酸基が入った構造をもち、酸化されてキノンになりうるジフェノール類、レスベラトロール、ヒドロキノン、tert−ブチルヒドロキノン、2−tert−ブチルヒドロキシアニソール、3−tert−ブチルヒドロキシアニソール、3,5−ジ−tert−ブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。イソチオシアネート類は、イソチオシアネート(S=C=N−)基を含有する化合物をいい、植物とその種子に広く存在している。イソチオシアネート類の例として、1−イソチオシアネート−4−(メチルスルフィニル)ブタン(以下、「スルフォラファン」ともいう)、6−(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート、フェネチルイソチオシアネート等が挙げられ、また、イソチオシアネート類の前駆体であるグルコシノレート、グルコラファニン(スルフォラファンの前駆体)等もこれに含まれる。ヒドロペルオキシドの例として、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド等が挙げられる。メルカプタン類の例として、2,3−ジメルカプトプロパノール、1,2−エタンジチオール等といった2つのチオール基が隣接しているビシナルジチオール類等が挙げられる。1,2−ジチオール−チオン類の例として、4−メチル−5−ピラジニル−3H−1,2−ジチオール−3−チオン(以下、「オルチプラズ」ともいう)、1,2−ジチオール−チオン、アネトールトリチオン等が挙げられる。チオカーバメート類の例として、ピロリジンジチオカーバメート等が挙げられる。ヒ素化合物の例として、亜ヒ酸(NaAsO)など3価のヒ素化合物で近接した2個のチオール基に結合する性質をもつ化合物が挙げられる。重金属の例として、HgCl(Hg2+)、CdCl(Cd2+)、ZnCl(Zn2+)などでチオール基と反応する重金属が挙げられる。
【0016】
好ましくは、tert‐ブチルヒドロキノン、オルチプラズ、4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2H−1,2−ベンゾセレナジン、スルフォラファン、カルノジン酸、カルノソール、クルクミン、下記一般式[I]で表される化合物が挙げられる。
【0017】
一般式[I]で表される化合物の好ましい例としては、下記式[II]で示される2−シアノ−3,12−ジオキソオレアナ−1,9(11)−ジエン−28−オイック酸(以下。「CDDO」ともいう)、下記式[III]で示される2−シアノ−3,12−ジオキソオレアナ−1,9(11)−ジエン−28−オイック酸メチルエステル(以下、「CDDO−Me」ともいう)、または、下記式[IV]で示される1−[2−シアノ−3,12−ジオキソオレアナ−1,9(11)−ジエン−28−オイル]イミダゾール(以下、「CDDO−Im」ともいう)が挙げられる。
【化2】

【化3】

【化4】

【0018】

上述のように、本発明のNrf2活性化物質は、多様な化学構造のものが挙げられ、化学構造には共通点は見出せない。しかし、その一方で、これらの構造の異なる多様な物質にほぼ共通している性質として、SH(チオール)基に反応性があることが挙げられる。この事実は、Nrf2の活性化が、化学物質の三次元立体構造を認識しているのではなく、その反応性(親電子性)を認識していることを示唆している。
【0019】
実際に、Nrf2活性化の分子メカニズムとして以下のような仮説が立てられている。Nrf2は、定常状態においてはKeap1のKelchドメインと相互作用することで細胞質にトラップされ不活性な状態にある。Keap1はIVRと呼ばれる領域を有しており、この領域に親電子性物質が作用することでKelchドメインのコンフォメーション変化を促し、Nrf2との相互作用を減弱させることで、Nrf2は解離されると考えられている。より具体的には、IVRは反応性の高いシステイン残基が存在しており、このシステイン残基と親電子性物質が共有結合することによりKelchドメインのコンフォメーション変化を促していると考えられている(生化学,76(4),P.339−48(2004))。
【0020】
すなわち、本発明のNrf2活性化物質は、広義には、SH基と反応性を有する親電子性の化合物をいう。
【0021】
なお、Nrf2活性化物質であるか否かは、後述の試験方法(実施例1)のように、核のNrf2量を指標に調べることもできる。
【0022】
一般式[I]で表される化合物は、有機合成化学の分野における通常の方法に従って製造でき、特表2002−530272およびWO2004/064723に記載された方法に基づいても製造することができる。
【0023】
ここで、本明細書中で規定した各基および文言について以下に示す。「アルキル」とは炭素原子数1〜8個の直鎖または分枝のアルキルを示し、好ましくは炭素原子数1〜6個の直鎖または分枝のアルキルを示す。具体例としてメチル、エチル、n‐プロピル、n‐ブチル、n‐ペンチル、n‐ヘキシル、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、イソヘキシル、sec‐ブチル、t‐ブチル等が挙げられる。「アルコキシ」とは炭素数1〜8個の直鎖または分枝のアルコキシを示し、好ましくは炭素原子数1〜6個の直鎖または分枝のアルコキシを示す。具体例としてメトキシ、エトキシ、n‐プロポキシ、n‐ブトキシ、n‐ペントキシ、n‐ヘキシルオキシ、イソプロポキシ、イソブトキシ、イソペントキシ、イソヘキシルオキシ、sec‐ブトキシ、t‐ブトキシ等が挙げられる。ハロゲン原子とはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を示す。
【0024】
本化合物の塩類は、医薬として許容される塩類であれば特に制限されず、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、鉄塩、マンガン塩をはじめ、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸との塩、酢酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸等の有機酸との塩などが挙げられ、第四級アンモニウム塩も本発明における塩類に包含される。本化合物は、水和物および溶媒和物の形態をとっていてもよい。また、本化合物の光学異性体、幾何異性体、互変異性体、多形体など本発明の範囲に含まれる。
【0025】
本発明において、角結膜障害とは、涙液異常、代謝異常、外的傷害等といった種々の要因により角膜や結膜が障害を受けた状態にあるものをいい、例えばドライアイ、点状表層角膜症、角膜上皮欠損、角膜びらん、角膜潰瘍、結膜上皮欠損、乾性角結膜炎、上輪部角結膜炎、糸状角結膜炎、感染性角膜炎、非感染性角膜炎、感染性結膜炎、非感染性結膜炎などが挙げられる。また、本発明において、ドライアイとは、涙液減少症、眼乾燥症、乏涙症、シェーグレン症候群、乾性角結膜炎、スティーブンス・ジョンソン症候群、涙腺機能不全、マイボーム腺機能不全、眼瞼炎、VDT(Visual Display Terminal)作業、手術、薬剤、外傷、コンタクトレンズ装用等に伴う角結膜障害、または当該角結膜障害を伴う症状をいう。
【0026】
本発明の角結膜障害の予防または治療剤は、経口でも、非経口(点眼、経皮等)でも投与することができる。投与剤型としては、点眼剤、眼軟膏、ゲル、皮膚軟膏、注射剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤等が挙げられる。これらは汎用されている技術を用いて製剤化することができる。例えば、点眼剤であれば、塩化ナトリウム、濃グリセリン等の等張化剤、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等の緩衝化剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレ−ト、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の界面活性剤、クエン酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム等の安定化剤、塩化ベンザルコニウム、パラベン等の防腐剤等を必要に応じて用い製剤化することができる。pHは眼科製剤に許容される範囲内にあればよいが、4〜8の範囲が好ましい。
【0027】
眼軟膏であれば、白色ワセリン、流動パラフィン等の汎用される基剤を用いて調製することができる。また、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤等の経口剤であれば、乳糖、結晶セルロ−ス、デンプン、植物油等の増量剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ヒドロキシプロピルセルロ−ス、ポリビニルピロリドン等の結合剤、カルボキシメチルセルロ−ス カルシウム、低置換ヒドロキシプロピルメチルセルロ−ス等の崩壊剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロ−ス、マクロゴ−ル、シリコン樹脂等のコ−ティング剤、ゼラチン皮膜等の皮膜剤などを必要に応じて加えればよい。
【0028】
本発明のNrf2活性化物質の投与量は、剤型、投与すべき患者の症状の軽重、年令、体重、医師の判断等に応じて適宜変えることができるが、経口剤の場合、一般には、成人に対し1日あたり0.01〜5000mg、好ましくは0.1〜2500mg、より好ましくは0.5〜1000mgを1回又は数回に分けて投与することができる。また、点眼剤又は挿入剤の場合には、0.000001〜10%(w/v)、好ましくは0.00001〜1%(w/v)、より好ましくは0.0001〜0.1%(w/v)の有効成分濃度のものを1日1回又は数回投与することができる。
【発明の効果】
【0029】
後述の試験を実施したところ、Nrf2活性化能を有することが報告されているtert‐ブチルヒドロキノン、オルチプラズ、スルフォラファン、カルノジン酸、カルノソール、クルクミン、CDDO、CDDO−MeおよびCDDO−Imが、ヒト角膜上皮細胞において、Nrf2によって発現制御されている標的遺伝子グルタミン酸システインリガーゼ調節サブユニット(Glutamate-cysteine ligase, modifier subunit:以下、「GCLM」ともいう)、チオレドキシンレダクターゼ(Thioredoxin Reductase:以下、「TRxR」ともいう)、ヘムオキシゲナーゼ1(Heme oxigenase 1:以下、「HO1」ともいう)およびNAD(P)Hキノン酸化還元酵素(NAD(P)H quinone oxidoreductase 1:以下、「NQO1」ともいう)の発現量を増加させることを示した。すなわち、Nrf2活性化物質は、ヒト角膜上皮細胞においても異物代謝系第2相酵素(例えば、NQO1)および抗酸化酵素(例えば、HO1)の遺伝子発現を誘導制御する。同様に、4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2H−1,2−ベンゾセレナジンが、ヒト角膜上皮細胞において、Nrf2によって発現制御されている標的遺伝子GCLM、TRxR、HO1およびNQO1の発現量を増加させることを示した。すなわち、4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2H−1,2−ベンゾセレナジンはNrf2活性化能を有し、ヒト角膜上皮細胞において異物代謝系第2相酵素および抗酸化酵素の遺伝子発現を誘導制御する。
【0030】
また、下記の薬理試験を実施したところ、Nrf2活性化物質であるtert−ブチルヒドロキノン、オルチプラズ、スルフォラファン、カルノソール、クルクミン、4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2H−1,2−ベンゾセレナジン、CDDO、CDDO−MeおよびCDDO−Imが、角膜障害モデルにおいて優れた改善効果を示した。すなわち、Nrf2活性化物質は、ドライアイ、点状表層角膜症、角膜上皮欠損、角膜びらん、角膜潰瘍、結膜上皮欠損、乾性角結膜炎、上輪部角結膜炎、糸状角結膜炎、感染性角膜炎、非感染性角膜炎、感染性結膜炎、非感染性結膜炎などの角結膜障害の予防または治療剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に、実施例および製剤例の結果を示すが、これらの例は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0032】
[実施例1]
Nrf2活性化物質の検査方法
核のNrf2量を指標にしてNrf2活性化能を有するか否かを調べることができる。
【0033】
肝癌細胞(例えば、HepG2)を用いて、ある化合物がNrf2の活性化能を有しているか否か評価できる。例えば、単層HepG2細胞を、10%ウシ胎児血清を含むアルファMEM培地中で培養し、サブコンフルエントに達した時点で被験化合物を含有する培地に交換する。24時間培養後、Abhinav K. Jainらの方法(J. Biol. Chem., 280, 32, 29158-29168(2005))に記載されるように核抽出物を採取し、イムノブロッティングにてNrf2の量を定量する。被験化合物なしの対照細胞と比較して、被験化合物を処置した細胞の核抽出物中のNrf2量が増加すれば、当該化合物はNrf2活性化能を有していると判断できる。
【0034】
[実施例2]
Nrf2活性化能を有することが報告されている化合物および4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2H−1,2−ベンゾセレナジンのヒト角膜上皮細胞における異物代謝系第2相酵素および抗酸化酵素の遺伝子発現誘導能を調べた。
【0035】
Nrf2により発現制御される遺伝子の発現解析
ヒト角膜上皮細胞を用い、Nrf2の活性化によって発現増加することが知られている標的遺伝子の発現への影響を調べた。
【0036】
(実験方法)
細胞は理化学研究所・バイオリソースセンターより入手したSV40不死化ヒト角膜上皮細胞(HCE−T)を用いた。6ウェルプレートに1×10個のHCE−Tを播種して、37℃、5%CO条件下、3日間培養した。培養液は15%牛胎児血清(ICN)と40μg/mLゲンタマイシン(Gibco)を含有するDMEM/Ham’s F12(ナカライテスク)を用いた。培養液を除去し、tert−ブチルヒドロキノン(100μM)、オルチプラズ(100μM)、4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2H−1,2−ベンゾセレナジン(15μM)、スルフォラファン(15μM)、カルノジン酸(15μM)、カルノソール(15μM)、クルクミン(15μM)、CDDO(100nM)、CDDO−Me(100nM)またはCDDO−Im(10nM)を含有する培養液に交換し、37℃、5%CO条件下、12時間培養した。各化合物はDMSOに溶解し、培養液で1000倍希釈することにより上記濃度に調整した。また、DMSOのみを含有する培養液を基剤培養液とした。
【0037】
培養12時間後、RNeasy Mini Kit(Qiagen社製)を用いて細胞よりtotal RNAを抽出し、Oligo(dT)プライマー(Invitrogen社製)およびM−MLV Reverse Transcriptase(Invitrogen社製)にてcDNAを合成した。合成したcDNAを鋳型とし、下記配列のプライマーおよびQuantiTect(商標) SYBR Green PCR Kit(Qiagen社製)を用い、ABI Prism(商標) 7000 Sequence Detection System(アプライドバイオシステムズ社製)にて各種遺伝子発現量を測定した。ハウスキーピング遺伝子のグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase:以下、「GAPDH」という)を内部標準として用い、遺伝子発現量を補正した。
【0038】
tert−ブチルヒドロキノン(以下、「tBHQ」ともいう)およびオルチプラズの遺伝子発現解析においては、表1に示すDNAプライマーを使用した。
【表1】

【0039】
4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2H−1,2−ベンゾセレナジン(以下、「BXT−51072」ともいう)、スルフォラファン、カルノジン酸、カルノソール、クルクミン、CDDO、CDDO−MeおよびCDDO−Imの遺伝子発現解析においては、表2に示すDNAプライマーを使用した。
【表2】

【0040】
(結果)
基剤培養液の発現量を1として、各7化合物の遺伝子発現量(例数3の平均)を表3に示す。
【表3】

【0041】
(考察)
表3から明らかなように、本試験で用いた全ての化合物において、Nrf2によって誘導制御されている標的遺伝子GCLM、TRxR、NQO1およびHO1の発現量の増加が認められた。tBHQ、オルチプラズ、スルフォラファン、カルノジン酸、カルノソール、クルクミン、CDDO、CDDO−MeおよびCDDO−Imといった化合物は、種々の細胞において、Nrf2を活性化することが報告されているが、これらのNrf2活性化物質が、ヒト角膜上皮細胞においても、異物代謝系第2相酵素および抗酸化酵素の遺伝子発現を誘導制御することが示された。また、上記のNrf2活性化物質と同様に、ヒト角膜上皮細胞において、BXT−51072が異物代謝系第2相酵素および抗酸化酵素の遺伝子発現を誘導制御することが示された。従って、BXT−51072がNrf2活性化能を有することが示唆された。以上の結果から、クルクミン、CDDO、CDDO−MeおよびCDDO−Imに代表されるマイケル反応アクセプター、カルノジン酸およびカルノソールに代表されるジフェノール類、tBHQに代表されるキノン類、スルフォラファンに代表されるイソチオシアネート類、オルチプラズに代表される1,2−ジチオール−チオン類およびBXT−51072といったNrf2活性化物質が、ヒト角膜上皮細胞においても、異物代謝系第2相酵素および抗酸化酵素の遺伝子発現を誘導制御することが示された。
【0042】
[実施例3]
角膜障害モデルを用いて、Nrf2活性化物質の角膜障害の改善効果を調べた。
【0043】
角膜障害の治癒効力試験
雄性SDラットを用い、Fujiharaらの方法(Invest. Ophthalmol. Vis. Sci 42(1) 96-100 (2001))に準じ、角膜障害モデルを作製した。角膜障害モデル作成後、宮田らの方法(眼科臨床医報, 48(2), 183-188 (1994))に修飾を加えた手法(あたらしい眼科, 21(1), 87-90 (2004))で、角膜障害の改善率を求めた。
【0044】
(実験方法)
雄SDラットを用い、ネンブタ−ルを投与して全身麻酔を施した後、眼窩外涙腺を摘出し、2ヶ月かけて角膜障害を誘発させた。
【0045】
つぎに、Nrf2活性化物質であるtBHQ、オルチプラズ、BXT−51072、スルフォラファン、カルノソールおよびクルクミンを以下のように投与した。
【0046】
tBHQ点眼群:
tBHQ(625μM)を含む生理食塩水溶液を両眼に1日6回、14日間点眼した(一群4匹8眼)。
【0047】
オルチプラズ点眼群:
オルチプラズ(500μM)を含む生理食塩水溶液を両眼に1日6回、14日間点眼した(一群4匹8眼)。
【0048】
BXT−51072点眼群:
BXT−51072(25μM)を含む生理食塩水溶液を両眼に1日6回、14日間点眼した(一群4匹8眼)。
【0049】
スルフォラファン点眼群:
スルフォラファン(25μM)を含む生理食塩水溶液を両眼に1日6回、14日間点眼した(一群4匹8眼)。
【0050】
カルノソール点眼群:
カルノソール(25μM)を含む生理食塩水溶液を両眼に1日6回、14日間点眼した(一群4匹8眼)。
【0051】
クルクミン点眼群:
クルクミン(25μM)を含む生理食塩水溶液を両眼に1日6回、14日間点眼した(一群4匹8眼)。
【0052】
CDDO点眼群:
CDDO(1μM)を含む生理食塩水溶液を両眼に1日6回、7日間点眼した(一群4匹8眼)。
【0053】
CDDO−Me点眼群:
CDDO−Me(0.1μM)を含む生理食塩水溶液を両眼に1日6回、7日間点眼した(一群4匹8眼)。
【0054】
CDDO−Im点眼群:
CDDO−Me(0.1μM)を含む生理食塩水溶液を両眼に1日6回、7日間点眼した(一群4匹8眼)。
【0055】
なお、コントロール群として、生理食塩水を両眼に1日6回、7日間(CDDO、CDDO−MeおよびCDDO−Imの対照)あるいは14日間(tBHQ、オルチプラズ、、BXT−51072、スルフォラファン、カルノソールおよびクルクミンの対照)点眼した(一群4匹8眼)。
【0056】
点眼開始7日後あるいは14日後、角膜の障害部分をフルオレセインにて染色した。角膜の上部、中間部および下部のそれぞれについて、フルオレセインによる染色の程度を下記の基準に従ってスコア判定し、上記各部におけるスコアの合計の平均値から角膜障害の改善率を算出した。正常眼についても上記各部におけるスコアの合計の平均値を求めた。
【0057】
(判定基準)
0:染色されていない。
【0058】
1:染色が疎であり、各点状の染色部分は離れている。
【0059】
2:染色が中程度であり、点状の染色部分の一部が隣接している。
【0060】
3:染色が密であり、各点状の染色部分は隣接している。
【0061】
(結果)
コントロ−ル群(生理食塩水)のスコア平均値を基準(改善率:0%)にして下記計算式より算出した、tBHQ、オルチプラズ、BXT−51072、スルフォラファン、カルノソール、クルクミン、CDDO、CDDO−MeおよびCDDO−Imの各改善率を表4に示す。なお、スコアの平均値は各8例の平均である。
【0062】
改善率(%)={(コントロ−ル)−(被験化合物)}/ 障害度×100
障害度={(コントロ−ル)−(正常眼)}
【表4】

【0063】
(考察)
上記のラットを用いた角膜障害の治癒効力試験の結果から明らかなように、tBHQ、オルチプラズ、BXT−51072、スルフォラファン、カルノソール、クルクミン、CDDO、CDDO−MeおよびCDDO−Imは角膜障害を顕著に改善した。すなわち、クルクミン、CDDO、CDDO−MeおよびCDDO−Imに代表されるマイケル反応アクセプター、カルノソールに代表されるジフェノール類、tBHQに代表されるキノン類、スルフォラファンに代表されるイソチオシアネート類、オルチプラズに代表される1,2−ジチオール−チオン類およびBXT−51072といったNrf2活性化物質が、角膜障害に対して改善効果を有することが示された。
【0064】
[製剤例]
製剤例を挙げて本発明の薬剤をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの製剤例にのみ限定されるものではない。
【0065】
処方例1 点眼剤
100ml中
カルノソール 10mg
塩化ナトリウム 900mg
滅菌精製水 適量
カルノソールの添加量を変えることにより、濃度が0.001%(w/v)、0.03%(w/v)、0.1%(w/v)、0.3%(w/v)、1%(w/v)の点眼剤を調製できる。
【0066】
処方例2 点眼剤
100ml中
オルチプラズ 100mg
塩化ナトリウム 800mg
リン酸水素二ナトリウム 100mg
リン酸二水素ナトリウム 適量
滅菌精製水 適量
オルチプラズの添加量を変えることにより、濃度が0.05%(w/v)、0.3%(w/v)、0.5%(w/v)、1%(w/v)の点眼剤を調製できる。
【0067】
処方例3 眼軟膏
100g中
スルフォラファン 0.3g
流動パラフィン 10.0g
白色ワセリン 適量
スルフォラファンの添加量を変えることにより、濃度が0.05%(w/v)、0.1%(w/v)、0.5%(w/v)、1%(w/w)の眼軟膏を調製できる。
【0068】
処方例4 錠剤
100mg中
クルクミン 1mg
乳糖 66.4mg
トウモロコシデンプン 20mg
カルボキシメチルセルロースカルシウム 6mg
ヒドロキシプロピルセルロース 6mg
ステアリン酸マグネシウム 0.6mg
クルクミン、乳糖を混合機中で混合し、その混合物にカルボキシメチルセルロースカルシウム及びヒドロキシプロピルセルロースを加えて造粒し、得られた顆粒を乾燥後整粒し、その整粒顆粒にステアリン酸マグネシウムを加えて混合し、打錠機で打錠する。また、クルクミンの添加量を変えることにより、100mg中の含有量が0.1mg、10mg、50mgの錠剤を調製できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Nrf2活性化物質を有効成分として含む角結膜障害の予防または治療剤。
【請求項2】
Nrf2活性化物質が、マイケル反応アクセプター、ジフェノール類、キノン類、ブチル化ヒドロキシアニソール類、ブチル化ヒドロキシトルエン類、イソチオシアネート類、ヒドロペルオキシド、メルカプタン類、1,2−ジチオール−チオン類、チオカーバメート類、ヒ素化合物、重金属、ジアリールスルフィド、インドール−3−カルビノール、エピガロカテキンガレート、エラグ酸、エトキシキン、カロテノイド類、共役系ポリエン類、4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2H−1,2−ベンゾセレナジン、イソフムロン酸および異性化ホップエキスからなる群より選択される請求項1記載の予防または治療剤。
【請求項3】
マイケル反応アクセプターが、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、1−ニトロ−1−シクロヘキセン、2−メチレン−4−ブチロールアセトン、15−デオキシ−△12,14−プロスタグランジンJ、7(E)−[6−(4−メチルフェニル)ヘキシル]−5−オキソー3−シクロペンテン−1−イリデン]ヘプタン酸メチル、3−ヒドロキシクマリン、クルクミン、ビス(2−ヒドロキシベンジリデン)アセトンおよび下記一般式(I)で表される化合物からなる群より選択され、および/または、
ジフェノール類が、カテコール、クエルセチン、カルノソール、ロスマノール、エピロスマノール、カルノジン酸およびレスベラトロールからなる群より選択され、および/または、
キノン類がヒドロキノンおよびtert−ブチルヒドロキノンからなる群より選択され、および/または、
イソチオシアネート類が、1−イソチオシアネート−4−(メチルスルフィニル)ブタン、6−(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート、フェネチルイソチオシアネート、グルコシノレートおよびグルコラファニンからなる群より選択され、および/または、
1,2−ジチオール−チオン類が、4−メチル−5−ピラジニル−3H−1,2−ジチオール−3−チオンおよび1,2−ジチオール−チオン、アネトールトリチオンからなる群より選択される請求項2記載の予防または治療剤。
【化1】

[式中、
1、2、3、4、5、およびRは同一かまたは異なって水素原子またはアルキル基を示し、
Xは水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基またはカルボキシル基を示し、
Yはシアノ基または−CO−Zを示し、
Zは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基またはイミダゾール環、トリアゾール環およびベンゾイミダゾール環からなる群より選択される芳香族複素環を示す。
上記で規定した芳香族複素環はハロゲン原子、アルキル基またはフェニル基で置換されていてもよい。]
【請求項4】
Nrf2活性化物質が、tert‐ブチルヒドロキノン、4−メチル−5−ピラジニル−3H−1,2−ジチオール−3−チオン、4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2H−1,2−ベンゾセレナジン、1−イソチオシアネート−4−(メチルスルフィニル)ブタン、カルノジン酸、カルノソール、クルクミンおよび一般式[I]で表される化合物ならびにこれらの塩類からなる群より選択される請求項3記載の予防または治療剤。
【請求項5】
一般式[I]で表される化合物が2−シアノ−3,12−ジオキソオレアナ−1,9(11)−ジエン−28−オイック酸、2−シアノ−3,12−ジオキソオレアナ−1,9(11)−ジエン−28−オイック酸メチルエステルまたは1−[2−シアノ−3,12−ジオキソオレアナ−1,9(11)−ジエン−28−オイル]イミダゾールである請求項4記載の予防または治療剤。
【請求項6】
角結膜障害がドライアイである請求項4記載の予防または治療剤。
【請求項7】
角結膜障害が、点状表層角膜症、角膜上皮欠損、角膜びらん、角膜潰瘍、結膜上皮欠損、乾性角結膜炎、上輪部角結膜炎、糸状角結膜炎、感染性角膜炎、非感染性角膜炎、感染性結膜炎または非感染性結膜炎である請求項4記載の予防または治療剤。
【請求項8】
投与形態が点眼投与または経口投与である請求項4記載の予防または治療剤。
【請求項9】
剤型が、点眼剤、眼軟膏、錠剤、細粒剤またはカプセル剤である請求項4記載の予防または治療剤。

【公開番号】特開2008−110962(P2008−110962A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201408(P2007−201408)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000177634)参天製薬株式会社 (177)
【Fターム(参考)】