説明

O−デスメチルベンラファキシンの調製方法

本発明によって、ベンラファキシンまたはその塩をチオウレアまたはチオウレアの混合物と反応させることを含む、O−デスメチルベンラファキシン(ODV)またはその塩の簡便で効率的な調製方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明によって、ベンラファキシンまたはその塩をチオウレアまたはチオウレアの混合物と反応させることを含む、O−デスメチルベンラファキシン(ODV)またはその塩の簡便で効率的な調製方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
O−デスメチルベンラファキシン(ODV,II)は、1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(ジメチルアミノ)エチル]シクロヘキサノールと化学的に命名され、ベンラファキシンの主代謝物である。ODVは、ノルエピネフリンおよびセロトニンの取込みを阻害し、坑うつ作用を有することが知られている。さらに、ODVコハク酸塩の経口投与、特にODVコハク酸塩の徐放性経口投与は、ベンラファキシンの経口投与に比べて、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、頭痛、血管迷走神経性倦怠感および/または開口障害の発生率が低下することが報告されている。ODVは、うつ、不安およびパニック障害を患う患者の治療に有効であることが知られている。
【0003】
種々の先行文献である特許および特許出願には、ODV遊離塩基の調製方法が記載されており、そのODV遊離塩基は所望の薬学上許容される塩に変換できる。そのような先行技術のODVの取得方法は、文献US4535186、US6673838、US4761501、WO03/48104、WO00/59851、WO00/32556、WO00/76955、WO00/32555、WO02/64543、WO2007/071404およびUS4761501に記載されている。
【0004】
US4535186に記載されているODVの調製方法は、ベンジル保護基を用いているために、収率および処理能力が相対的に低い。
【0005】
上述の他の先行文献である特許には、保護基の使用を避けて、代わりにベンラファキシンの脱メチル化(スキーム1)を用いるODVの生産方法が記載されている。しかし、一般に、ベンラファキシンの置換フェノキシ基は非常に安定な部分であり、従って、脱メチル化反応には特別な試薬および過激な条件が典型的には必要である。さらには、ベンラファキシンのシクロヘキサン環の3級ヒドロキシ基を攻撃しないような試薬を、注意深く選択しなければならない。出発原料であるベンラファキシンまたはその塩は、US4535186等の先行技術で知られた手順に従って調製することができる。
【0006】
【化1】

【0007】
WO00/59851、WO00/32556およびWO00/32555には、リチウムジフェニルホスファイド(ジフェニルホスフィンおよびn−ブチルリチウムから系中で調製)を脱メチル化剤として、テトラヒドロフランを溶媒としてベンラファキシンから出発してODVを調製する方法が記載されている。しかし、この方法の不利な点は、溶媒中の原料の濃度が非常に低いこと、およびテトラヒドロフラン溶媒中で生成する、ほとんど不溶であるベンラファキシンのリチウム塩の存在である。
【0008】
WO02/64543には、L−セレクトライド等の試薬を用いるベラファキシンの脱メチル化によるODVの調製方法が記載されている。しかし、この方法は、試薬の価格のために相対的に高価である。
【0009】
三臭化ホウ素を試薬として用いる脱メチル化を記述する方法も記載されている。しかし、この方法には、低い温度が必要であること、および三臭化ホウ素の使用に伴う危険性という主たる不利な点が存在する。従って、この方法は大量スケールには受け入れられない。
【0010】
WO02/64543およびWO03/48104には、ポリエチレングリコール400中、190〜200℃でドデカンチオールのナトリウム塩を用いる脱メチル化方法が記載されている。この方法には、そのような高い温度でのODVの分解を避けることができないとの不利な点が存在する。加えて、2つの溶媒を使用することが必要である。すなわち、ナトリウムメトキシドの懸濁液調製のためのメタノールおよびその後の高い温度で反応するためのポリエチレングリコール400である。これによって、高い反応温度を達成し、反応を完結させるために、メタノールを除去することが必要とされる。
【0011】
WO00/76955には、エタンチオールのナトリウム塩を用いる脱メチル化方法が記載されているが、この方法には、収率が非常に高いということはなく、低い純度の製品しか得られないとの不利な点が存在する。低い沸点(b.p.35℃)のエタンチオールを用いるために、工業スケールでの試薬の取扱いおよび保存が簡単ではなく、安全性の問題もある。加えて、エタンチオールは毒性が非常にあり、工業的製造に適さない非常に有毒な臭いを有している。加えて、エタンチオールのナトリウム塩を生成させるための水素化ナトリウムの使用もまた、工業スケールでは簡便ではない。
【0012】
WO2007/071404には、ベンラファキシンの脱メチル化剤として硫化ナトリウムの使用が記載されている。しかし、この方法には、約30時間の簡便ではなく長い反応時間という不利な点が存在する。
【0013】
従って、先行技術に開示された方法には、中から低の収率;不純なODV(II)の取得;非常に高い温度;長い工程;および/または工業スケールでの使用が勧められない高価で、毒性があっておよび/もしくは危険な試薬(L−セレクトライド、エタンチオール、三臭化ホウ素およびn−ブチルリチウム等)という不利な点が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、ODVを得るためのベンラファキシンの脱メチル化のための、効率的で危険性がなく経済的で代替的な改良方法の開発が求められている。
【0015】
本発明の目的は、脱メチル化によってベンラファキシンをODVに変換する、新規で効率的で危険性がなく経済的な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
定義
本発明の目的のために、“アルキル”基は、直鎖もしくは分岐鎖であってもよく、または環状基であるか、環状基を含んでいてもよい、一価の飽和炭化水素を意味する。アルキル基は、必要に応じて置換されていてもよく、また必要に応じて炭素骨格中に1またはそれ以上のヘテロ原子であるN、OもしくはSを含んでいてもよい。好ましくは、アルキル基は直鎖または分岐鎖である。好ましくは、アルキル基は置換されていない。好ましくは、アルキル基はその炭素骨格中にヘテロ原子を含んではいない。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル基である。好ましくは、アルキル基は1〜12の炭素原子を有するアルキル基を意味するC1−12アルキル基である。より好ましくは、アルキル基はC1−6アルキル基である。好ましくは、環状アルキル基はC3−12環状アルキル基であり、好ましくはC5−7環状アルキル基である。“アルキレン”基は、同様に2価のアルキル基を意味する。
【0017】
本明細書で用いられる用語“アルコキシド”は、アルキル−Oを意味する。
“アルケニル”基は、直鎖もしくは分岐鎖であってもよく、または環状基であるか、環状基を含んでいてもよい、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する一価の炭化水素を意味する。アルケニル基は、必要に応じて置換されていてもよく、また必要に応じて炭素骨格中に1またはそれ以上のヘテロ原子であるN、OもしくはSを含んでいてもよい。好ましくは、アルケニル基は直鎖または分岐鎖である。好ましくは、アルケニル基は置換されていない。好ましくは、アルケニル基はその炭素骨格中にヘテロ原子を含んではいない。アルケニル基の例としては、ビニル、アリル、1−ブテニル、2−ブテニル、シクロヘキセニルおよびシクロヘプテニル基である。好ましくは、アルケニル基はC2−12アルケニル基であり、より好ましくはC2−6アルケニル基である。好ましくは、環状アルケニル基はC3−12環状アルケニル基であり、好ましくはC5−7環状アルケニル基である。“アルケニレン”基は、同様に2価のアルケニル基を意味する。
【0018】
“アルキニル”基は、直鎖もしくは分岐鎖であってもよく、または環状基であるか、環状基を含んでいてもよい、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する一価の炭化水素を意味する。アルキニル基は、必要に応じて置換されていてもよく、また必要に応じて炭素骨格中に1またはそれ以上のヘテロ原子であるN、OもしくはSを含んでいてもよい。好ましくは、アルキニル基は直鎖または分岐鎖である。好ましくは、アルキニル基は置換されていない。好ましくは、アルキニル基はその炭素骨格中にヘテロ原子を含んではいない。アルキニル基の例としては、エチニル、プロパルギル、1−ブチニルおよび2−ブチニル基である。好ましくは、アルキニル基はC2−12アルキニル基であり、より好ましくはC2−6アルキニル基である。好ましくは、環状アルキニル基はC3−12環状アルキニル基であり、好ましくはC5−7環状アルキニル基である。“アルキニレン”基は、同様に2価のアルキニル基を意味する。
【0019】
“アリール”基は、一価の芳香族炭化水素を意味する。アリール基は、必要に応じて置換されていてもよく、また必要に応じて炭素骨格中に1またはそれ以上のヘテロ原子であるN、OもしくはSを含んでいてもよい。好ましくは、アリール基は無置換または一置換である。好ましくは、アリール基はその炭素骨格中にヘテロ原子を含んではいない。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、アントラセニルおよびフェナントレニル基である。好ましくは、アリール基はC4−14アリール基であり、より好ましくはC6−10アリール基である。“アリーレン”基は、同様に2価のアリール基を意味する。
【0020】
本発明の目的のため、たとえばアリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリールまたはアルキニルアリールのように、複数の基の組合せが1つの部分として言及される場合、最後に記載される基は、その部分が分子の残りに結合される原子を含む。アリールアルキル基の典型的な例はベンジルである。
【0021】
本発明の目的のため、置換されていてもよい炭化水素またはアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリールまたはアルキニルアリール基は、−F、−Cl、−Br、−I、−CF、−CCl、−CBr、−CI、−OH、−SH、−NH、−CN、−NO、−COOH、−Rα−O−Rβ、−Rα−S−Rβ、−Rα−SO−Rβ、−Rα−SO−Rβ、−Rα−SO−ORβ、−RαO−SO−Rβ、−Rα−SO−N(Rβ、−Rα−NRβ−SO−Rβ、−RαO−SO−ORβ、−RαO−SO−N(Rβ、−Rα−NRβ−SO−ORβ、−Rα−NRβ−SO−N(Rβ、−Rα−N(Rβ、−Rα−N(Rβ、−Rα−P(Rβ、−Rα−Si(Rβ、−Rα−CO−Rβ、−Rα−CO−ORβ、−RαO−CO−Rβ、−Rα−CO−N(Rβ、−Rα−NRβ−CO−Rβ、−RαO−CO−ORβ、−RαO−CO−N(Rβ、−Rα−NRβ−CO−ORβ、−Rα−NRβ−CO−N(Rβ、−Rα−CS−Rβ、−Rα−CS−ORβ、−RαO−CS−Rβ、−Rα−CS−N(Rβ、−Rα−NRβ−CS−Rβ、−RαO−CS−ORβ、−RαO−CS−N(Rβ、−Rα−NRβ−CS−ORβ、−Rα−NRβ−CS−N(Rβ、−Rβや、−O−、−S−、−NRβ−もしくは−Rα−等の架橋性置換基、または=O、=Sもしくは=NRβ等のπ−結合置換基の1またはそれ以上で置換されてもよい。これに関連して、−Rα−は独立して化学結合、またはC−C10アルキレン、C−C10アルケニレンまたはC−C10アルキニレン基である。−Rβは独立して水素、または無置換のC−Cアルキルまたは無置換のC−C10アリールである。オプションとしての置換基は、好ましくはオプションとしての置換基で置換された親基における炭素原子の総個数を計算する場合に考慮される。好ましくは、置換されていてもよい炭化水素またはアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリールまたはアルキニルアリール基は、架橋性置換基では置換されていない。好ましくは、置換されていてもよい炭化水素またはアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリールまたはアルキニルアリール基は、π−結合置換基では置換されていない。好ましくは、置換された基は1個、2個または3個の置換基、より好ましくは1個または2個の置換基、さらにより好ましくは1個の置換基を含む。
【0022】
オプションとしての置換基は保護されてもよい。オプションとしての置換基を保護する保護基は、例えば、"Protective Groups in Organic Synthesis",T.W. GreeneおよびP.G.M. Wuts著(Wiley-Interscience刊,第4版,2006年)で、本技術分野に知られている。
【0023】
適切な場合、本発明の化合物は、その遊離塩基の形態でも、その酸付加塩の形態でも用いることができる。本発明の目的のために、本発明の化合物の“塩”には、酸付加塩が含まれる。酸付加塩は、好ましくは薬学上許容され、非毒性の適切な酸との酸付加塩である。その酸には、ハロゲン化水素酸(例えば、フッ化水素酸、塩化水素酸、臭化水素酸またはヨウ化水素酸)または他の無機酸(例えば、硝酸、過塩素酸、硫酸またはリン酸)等の無機酸;または有機カルボン酸(例えば、プロピオン酸、ブタン酸、グリコール酸、乳酸、マンデル酸、クエン酸、酢酸、安息香酸、サリチル酸、コハク酸、リンゴ酸もしくは水酸化コハク酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、水酸化マレイン酸、ムチン酸もしくはガラクタル酸、グルコン酸、パントテン酸またはパモ酸)、有機スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸またはカンファースルホン酸)またはアミノ酸(例えば、オルニチン、グルタミン酸またはアスパラギン酸)等の有機酸が含まれるが、それらに限定されない。酸付加塩は一酸付加塩または二酸付加塩であってよく、好ましくは一酸付加塩である。好ましい塩は、ハロゲン化水素酸、硫酸、リン酸または有機酸の付加塩である。より好ましい塩は、コハク酸、フマル酸および塩酸の付加塩である。
【0024】
薬学上許容される酸付加塩に加えて、他の酸付加塩も、例えば、他の薬学上許容される酸付加塩の精製または調製における中間体として使う可能性があり、または遊離塩基の同定、特性確認もしくは精製に有用であるため、本発明に含まれる。
【0025】
適切な場合、本発明の化合物は、その遊離酸の形態でも、その塩の形態でも用いることができる。本発明の目的のために、本発明の化合物の“塩”には、チオウレアアニオン等の本発明の化合物と適切なカチオンとの間で生成される塩も含まれる。そのカチオンには、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムおよびアンモニウムが含まれるが、それらに限定されない。塩は、一塩、二塩または三塩であってよい。好ましくは、塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムまたはアンモニウムの一塩もしくは二塩である。より好ましくは、塩は一ナトリウム塩である。好ましくは、塩は薬学上許容される塩である
本発明には、本発明の化合物の薬学上許容される塩、誘導体、溶媒和物、クラスレートおよび/または水和物(無水物も含まれる)が含まれる。
【0026】
発明の概要
本発明の第一の側面によって、ベンラファキシンまたはその塩をチオウレアまたはチオウレアの混合物と反応させることを含む、O−デスメチルベンラファキシン(ODV,II)またはその薬学上許容される塩等の塩の調製方法が提供される。
【0027】
本明細書および請求の範囲で通して用いられる用語“チオウレア”には、その塩も含まれ、チオウレア(III)または置換チオウレア(IV)を意味することができる。
【0028】
【化2】

【0029】
[ここで、R、R、RおよびRは、独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリールまたはアルキニルアリールであることができる。]
最も好ましくは、試薬は、容易に入手可能な低分子量化合物であるチオウレア(III)である。
【0030】
チオウレアが置換チオウレア(IV)である場合、好ましくは、R、R、RまたはRの少なくとも1つは水素である。R、R、RまたはRがアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリールまたはアルキニルアリール基である場合、好ましくは、その基がチオウレアの残りの窒素原子に結合する原子は、π−結合置換基で置換されておらず、および/またはヘテロ原子N、OもしくはSではない。
【0031】
好ましくは、本発明の第一の側面の方法は、反応溶媒の中で実施する。反応溶媒は好ましくはアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールのエーテルまたはこれらの混合物から選択され、例えば、ポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール400)、セロソルブまたは1−ブタノールである。
【0032】
好ましくは、反応溶媒は単一溶媒である。好ましくは、反応溶媒は少なくとも100℃、より好ましくは少なくとも120℃、より好ましくは少なくとも140℃、最も好ましくは少なくとも160℃の沸点を有する。適した溶媒には、例えばトルエン、クロロベンゼン、1−ブタノール、エチレングリコール、ジn−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン、セロソルブ等のエチレングリコールのモノもしくはジエーテル、ポリエチレングリコール400等のポリエチレングリコール、γ−ブチロラクトン、炭酸プロピレン、アニリン、ベンゾニトリル、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピレンウレア、ニトロベンゼン、ヘキサメチルホスホラミド、テトラメチルウレア、ジメチルスルホキシドおよびスルホランが含まれる。好ましい溶媒には、エチレングリコール、ポリエチレングリコール400等のポリエチレングリコール、γ−ブチロラクトン、炭酸プロピレン、アニリン、ベンゾニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピレンウレア、ニトロベンゼン、ヘキサメチルホスホラミド、テトラメチルウレア、ジメチルスルホキシドおよびスルホランが含まれる。最も好ましくは、溶媒はエチレングリコールまたはポリエチレングリコール400等のポリエチレングリコールから選択される。
【0033】
好ましくは、塩基を用いてチオウレア試薬のアニオンを生成させ、本発明の第一の側面の方法における反応を促進させる。塩基は、好ましくは一価もしくは二価の金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩またはアルコキシドである。代替的に、アルキルアミンまたはアリールアミン(例えば、ピペリジンまたはピリジン)等の有機塩基も使用できる。塩基がアニリンまたはピリジン等の有機塩基である場合、その塩基が反応溶媒としての役も行る。好ましくは、塩基は金属水酸化物または金属アルコキシドである。最も好ましくは、塩基は水酸化カリウムまたはナトリウムメトキシドである。チオウレアアニオンは好ましくは反応に用いられる同じ溶媒の中で系中で調製する。
【0034】
好ましくは、本発明の第一の側面の方法は、100〜220℃の範囲内、より好ましくは130〜180℃の範囲内、最も好ましくは160〜180℃の範囲内の温度で、実施する。
【0035】
ベンラファキシンもしくはその塩のチオウレアまたはチオウレアの混合物との反応は、10〜24時間、好ましくは16〜20時間、実施する。
【0036】
好ましくは、本発明の第一の側面の反応のワークアップ手続きの間に、方法における不純物を除去するために、1気圧下、20℃で水と混和しない溶媒で、反応混合物を洗浄する。適した溶媒には、例えばヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレンもしくはこれらの混合物等の炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルもしくはこれらの混合物等のエーテル、酢酸エチル等のエステル、またはジクロロメタン、エチレンジクロリドもしくはこれらの混合物等のハロゲン化炭化水素溶媒が含まれる。
【0037】
本発明の第一の側面の方法で生成される製品は、高純度の製品を生成させるために、アルコールでの結晶化によって精製する。好ましくは、アルコールはヒドロキシを1つ有する。好ましくは、アルコールはC〜Cアルコールであり、より好ましくはメタノール、エタノール、イソプロパノールまたはこれらの混合物から選択されるもの等のC〜Cアルコールであり、より好ましくは、アルコールはメタノールである。
【0038】
代替的にまたは付加的に、本発明の第一の側面の方法で生成される製品は、好ましくは高純度のODV塩基を生成させるために、メタノール、エタノールもしくはイソプロパノールまたはこれらの混合物等のアルコールと混合して、懸濁液を生成させ、その後、酸を加えて、塩基を加えることによって精製する。最も好ましくは、アルコールはメタノールである。好ましくは、用いられる酸は塩酸または硫酸等の無機酸である。好ましくは、用いられる塩基はトリエチルアミンまたはトリメチルアミン等の有機塩基である。代替的に、用いられる塩基は、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムまたは水酸化ナトリウム等の無機塩基とすることもできる。
【0039】
好ましくは、本発明の第一の側面の方法は工業的スケールで実施され、好ましくは100g、500g、1kg、5kg、10kg、50kg、100kgまたはそれ以上の処理単位のODVもしくはその薬学上許容される塩等の塩を得る。
【0040】
好ましくは、本発明の第一の側面の方法で調製されるODV塩基は、少なくとも95%の純度、少なくとも98%の純度、少なくとも99%の純度、少なくとも99.5%の純度または少なくとも99.9%の純度である。好ましくは、純度はHPLCで分析する。
【0041】
好ましくは、本発明の第一の側面の方法で調製されるODV塩基は、25%以上、好ましくは30%以上、好ましくは50%以上、好ましくは60%以上、好ましくは70%以上、好ましくは80%以上、好ましくは85%以上の収率で得られる。
【0042】
好ましくは、本発明の第一の側面の方法で調製されるODVの薬学上許容される塩は、コハク酸塩またはフマル酸塩から選択される。好ましくは、本発明の第一の側面の方法で使用されるベンラファキシンの塩は、塩酸塩である。
【0043】
本発明の第二の側面によって、本発明の第一の側面の方法で調製されるODVまたはその薬学上許容される塩等の塩が提供される。本発明の第二の側面の好ましい塩はコハク酸塩またはフマル酸塩である。好ましくは、本発明の第二の側面のODVまたはその塩は、医薬として使用するのに適しており、好ましくはうつ、不安、パニック障害、全般性不安障害、外傷後ストレス障害、月経前不快気分障害、線維筋痛症、広場恐怖症、注意欠陥障害、社会不安障害、自閉症、統合失調症、肥満、神経性食欲不振症、神経性過食症、血管運動潮紅、コカインもしくはアルコールの中毒、性機能不全、境界型人格障害、慢性疲労症候群、尿失禁またはパーキンソン病の治療もしくは予防に適している。
【0044】
本発明の第三の側面によって、本発明の第一の側面の方法で調製されるODVまたはその薬学上許容される塩を含有する医薬組成物が提供される。好ましくは、本発明の第三の側面の医薬組成物は、ODVコハク酸塩またはODVフマル酸塩を含有する。好ましくは、医薬組成物は、1またはそれ以上の通常の薬学上許容される賦形剤を含有する。好ましくは、本発明の第三の側面の医薬組成物は、うつ、不安、パニック障害、全般性不安障害、外傷後ストレス障害、月経前不快気分障害、線維筋痛症、広場恐怖症、注意欠陥障害、社会不安障害、自閉症、統合失調症、肥満、神経性食欲不振症、神経性過食症、血管運動潮紅、コカインもしくはアルコールの中毒、性機能不全、境界型人格障害、慢性疲労症候群、尿失禁またはパーキンソン病の治療もしくは予防に適している。
【0045】
本発明の第四の側面によって、うつ、不安、パニック障害、全般性不安障害、外傷後ストレス障害、月経前不快気分障害、線維筋痛症、広場恐怖症、注意欠陥障害、社会不安障害、自閉症、統合失調症、肥満、神経性食欲不振症、神経性過食症、血管運動潮紅、コカインもしくはアルコールの中毒、性機能不全、境界型人格障害、慢性疲労症候群、尿失禁またはパーキンソン病の治療もしくは予防のための医薬の製造のための、本発明の第二の側面のODVもしくはその薬学上許容される塩の使用、または本発明の第三の側面の医薬組成物の使用が提供される。
【0046】
本発明の第五の側面によって、本発明の第二の側面のODVもしくはその薬学上許容される塩を治療上もしくは予防上有効な量、または本発明の第三の側面の医薬組成物を治療上もしくは予防上有効な量、それを必要とする患者に投与することを含む、うつ、不安、パニック障害、全般性不安障害、外傷後ストレス障害、月経前不快気分障害、線維筋痛症、広場恐怖症、注意欠陥障害、社会不安障害、自閉症、統合失調症、肥満、神経性食欲不振症、神経性過食症、血管運動潮紅、コカインもしくはアルコールの中毒、性機能不全、境界型人格障害、慢性疲労症候群、尿失禁またはパーキンソン病を治療もしくは予防する方法が提供される。好ましくは、その患者は哺乳動物であり、好ましくはヒトである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
発明の詳細な説明
ODV塩基およびその塩は鏡像異性体として存在する。本発明には、同化合物の立体異性体的に純粋な形態のみならず、ラセミ混合物も含まれる。本明細書で用いられる用語“ODV”は、他に記述がない限り、ODVのラセミ混合物および立体異性体的に純粋な形態をさす。用語“立体異性体的に純粋”は、所望の異性体がその鏡像異性体に対してより大きい割合で含まれている化合物をさす。立体異性体的に純粋な化合物は、一般に、化合物の全体の100%重量を基にして、所望の異性体が少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%で構成されている。
【0048】
本発明の1つの有利な点は、商業スケールでの取扱いにおいて安全であり、簡便である、チオウレア(III)等の商業的に入手可能なチオウレアの使用である。この種の脱メチル化試薬の使用によって、商業的サイズの処理単位のODVを提供するための方法のスケールアップの観点で著しい利益が得られる。加えて、先行技術の方法に対して、収率と純度がさらに改善される。原料および反応混合物は、取扱いが容易であり、反応容器とも非常に適合する。
【0049】
本発明のほかの有利な点は、脱メチル化反応を促進するための経済的で商業的に入手可能な塩基の使用である。比較的安全であり通常の塩基である、水酸化カリウムまたはナトリウムメトキシド等の適した塩基を用いて、本反応を容易に実施することができる。
【0050】
上述の通り、本発明によって、高い純度のODV遊離塩基の新規な調製方法が提供される。本方法は、製品の品質および収率における高い一貫性を持って、生産が商業的に実行可能である。本発明の方法で調製されるODV塩基は、続いて、最終の投与形態の製剤に向けて、コハク酸塩またはフマル酸塩等の薬学上許容される塩に変換することができる。
【0051】
本発明のさらなる有利な点は、脱メチル化で用いられる同じ反応溶媒の中で、チオウレアのアニオンを調製することを含む、改良方法である。これによって、一連の反応すべてで1つの溶媒を用いるやり方によって著しい利益が得られる。逆に、US6689912に記載された、ベンラファキシンの脱メチル化方法では、ドデカンチオールのナトリウム塩をメタノール中で調製し、その後、ポリエチレングリコール400中でベンラファキシンをさらに処理している。反応を完結させるためには、メタノールを留去する必要がある。本発明では、この厄介な手順が避けられる。
【0052】
さらに、本発明によって、反応を160℃〜180℃の間の温度で実施できる、ODV塩基の調製方法が提供される。約190℃以上の温度が必要であった先行文献で報告された他の方法と比較して、本方法は商業的スケールで実施でき、最終の製品の不純物がより少ない。
【0053】
本発明の好ましい側面のさらに他の有利な点は、高い収率、約70〜80%モル収率で、不純物プロファイルのICHガイドラインに適合する高い純度で、ODV塩基を調製、単離および精製するための改良方法である。本発明の方法は、調製のスケールと無関係に、ODV塩基を一定の化学純度で提供することができる。
【0054】
加えて、本発明によって、改良された収率、および方法における不純物の混入を最低限にする改良された品質を有する、簡単なワークアップ手順が提供される。従って、本発明の方法は、反応条件を容易に制御できる、大量スケールでの製造に受け入れられる。加えて、本明細書に開示した方法に従って得られる製品は、容易にろ取され、容易に乾燥される。
【0055】
本発明によってさらに、先行文献で報告された同様の反応に比べて相対的低い温度で、適した溶媒中、チオウレアのアニオンをベンラファキシン塩基またはベンラファキシンの塩と反応させることによる、ODV塩基の調製方法が提供される。
【0056】
本発明のさらなる有利な点は、脱メチル化反応をベンラファキシン遊離塩基のみならずベンラファキシン塩酸塩でも実施できることである。
【0057】
好ましくは、本発明の方法は、プロトン性溶媒または非プロトン性溶媒の存在下、実施され、必要に応じて、チオウレアのアニオンを生成させるために、水酸化物、炭酸塩またはアルコキシド等の塩基を用いる。水酸化物は、好ましくは水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムおよび水酸化マグネシウム等の一価もしくは二価の金属の水酸化物で構成される。代替的に、炭酸金属または炭酸水素金属を用いることができる。金属アルコキシドは、好ましくは直鎖もしくは分岐鎖の1〜6の炭素原子のアルキル基で構成され、最も好ましくはナトリウムメトキシドである。芳香族アミンおよび脂肪族アミン等の有機塩基またはアンモニアもしくはアルキルアンモニアの塩も用いることができる。チオウレアのアニオンは、好ましくは反応を行うために用いられる同じ溶媒の中で系中で調製する。
【0058】
チオウレア(IV)は好ましくは低分子量の誘導体である。
反応混合物に用いられる溶媒は、好ましくはアルコール溶媒またはエーテル溶媒、より好ましくは1−ブタノール等のアルコールである。他の好ましい溶媒は、メチルセロソルブ、エチルセロソルブまたはポリエチレングリコールである。好ましくは、溶媒は不活性で極性で高沸点の溶媒、最も好ましくはポリエチレングリコール400である。
【0059】
好ましくは、本発明の第一の側面の方法で生成されるクルードなODV塩基は、メタノール、エタノールもしくはイソプロパノールまたはこれらの混合物等のアルコールで混合して、懸濁液を生成させ、その後、酸を加えて、塩基を加えて高純度のODV塩基を生成させることによって精製する。最も好ましくは、アルコールはメタノールである。好ましくは、用いられる酸は塩酸または硫酸等の無機酸である。好ましくは、用いられる塩基はトリエチルアミンまたはトリメチルアミン等の有機塩基である。代替的に、用いられる塩基は、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムまたは水酸化ナトリウム等の無機塩基とすることもできる。
【0060】
代替的にまたは付加的に、クルードのODV塩基の精製は、好ましくはクルードのODVの直鎖もしくは分岐鎖の1〜4の炭素原子を有するアルコール、好ましくはメタノールまたはイソプロパノール中の溶液を、過熱還流して生成させて、その後、溶液を好ましくは約10℃〜15℃に冷却して、純粋な再結晶したODVを得ることで実施される。製品はその後、容易にろ取して、ICHガイドラインに適合する高純度のODV塩基を得る。
【0061】
本発明の好ましい態様において、以下の工程を含む、ODV塩基またはその薬学上許容される塩等の塩の調製方法が提供される:
(a)ポリエチレングリコール400中、チオウレアを好適な塩基と反応させて、アニオンを生成させる工程;
(b)ポリエチレングリコール400中、170〜180℃の範囲の温度で、アニオンをベンラファキシン遊離塩基と反応させる工程;
(c)反応混合物を酸性化して、酸性化した反応混合物をジクロロメタンで洗浄して、不純物を除去する工程;
(d)pH>9.5でクルードのODV塩基を単離する工程;および
(e)クルードのODV塩基のメタノール中の懸濁液を生成させ、塩酸を加え、アンモニア水を加えることによるか、または純粋なODV塩基を得るためにクルードのODV塩基をメタノールもしくはイソプロパノール中で結晶化させることによって、クルードのODV塩基を精製する工程。
【0062】
上記の好ましい態様で用いられる脱メチル化試薬は、最も好ましくはチオウレアであり、塩基は好ましくは水酸化カリウムまたはナトリウムメトキシドである。この試薬の組合せは商業スケールで非常に安全であり、効率的である。チオウレアは、1,2−エタンジチオール等の他の硫黄試薬よりも毒性が非常に低い固体化合物である。驚くべきことに、この試薬の組合せによって、相乗的に非常に純粋な製品が高い収率で得られる。
【0063】
本発明の代替的な好ましい態様において、以下の工程を含む、ODV塩基またはその薬学上許容される塩等の塩の調製方法が提供される:
(a)ポリエチレングリコール400中、チオウレアを好適な塩基(水酸化物またはアルコキシド等)と反応させて、アニオンを生成させる工程;
(b)ポリエチレングリコール400中、170〜180℃の範囲の温度で、アニオンをベンラファキシン遊離塩基と反応させる工程;
(c)反応混合物を希釈させて、反応混合物を塩酸でpH<4.0に酸性化して、酸性化した反応混合物をジクロロメタンで洗浄して、不純物を除去する工程;
(d)反応混合物をアンモニア溶液で塩基性化することで、pH>9.5でクルードのODV塩基を単離する工程;および
(e)クルードのODV塩基をメタノール中で結晶化させる工程。
【0064】
本発明によって、さらに本発明の第一の側面の方法で調製されるODVまたはその薬学上許容される塩を含有する医薬組成物が提供される。本発明はまた、うつ、不安、パニック障害、全般性不安障害、外傷後ストレス障害、月経前不快気分障害、線維筋痛症、広場恐怖症、注意欠陥障害、社会不安障害、自閉症、統合失調症、肥満、神経性食欲不振症、神経性過食症、血管運動潮紅、コカインもしくはアルコールの中毒、性機能不全、境界型人格障害、慢性疲労症候群、尿失禁またはパーキンソン病の治療のための医薬の調製のための、前記医薬組成物の使用が提供される。
【0065】
投与形態は溶液または懸濁液の形態とすることができるが、好ましくは固体であり、1またはそれ以上の通常の薬学上許容される賦形剤を含有する。本発明の好ましい投与形態には、錠剤、カプセル等が含まれる。錠剤は、直接圧縮、湿式造粒および乾式造粒等の従来の技術に従って、製造することができる。カプセルは、一般にゼラチン材料から作られ、本発明に従って、賦形剤および本発明のODVまたはその薬学上許容される塩の通常の方法で調製された顆粒を含有することができる。
【0066】
疑念を取り除くために、それが実用的である限り、本発明の与えられた側面の態様はいずれも、本発明の同じ側面の他の態様と組み合わせてもよい。加えて、それが実用的である限り、本発明のいかなる側面の好ましいまたはオプションの態様はいずれも、本発明の他のいかなる側面の好ましいまたはオプションの態様としてもみなされるべきであることが、理解されなければならない。
【0067】
本発明の詳細、目的および利点を、さらに詳細に、限定しない実施例によって以下に説明する。
【実施例】
【0068】
実施例1:チオウレアを用いたベンラファキシン塩基からODV塩基の調製
チオウレア(13.7g,0.18mol)を、水酸化カリウム(20.2g,0.36mol)のポリエチレングリコール400(50mL)中の懸濁液に25〜30℃で加えた。この攪拌された懸濁液に、ベンラファキシン塩基(10g,0.04mol)を加え、反応混合物を170〜180℃に加熱した。反応の終了(16〜20時間)後、反応混合物を60〜70℃まで放冷して、水(40mL)を加え、35%塩酸(15〜20mL)を加えた。溶液をジクロロメタン(2×50mL)で洗浄した。水性溶液に、25%アンモニア水を加えて、溶液のpHを>9.5に調整した。固体が沈殿し、ろ取することで、クルードのODV塩基を得た。クルードのODV塩基をさらにメタノール(250mL)に加えて、1時間還流し、その後、10〜15℃に冷却した。結晶化した純粋なODV塩基をろ取し、50〜55℃で乾燥した。このメタノール中の結晶化の代わりに、クルードのODV塩基を、塩酸を加えてメタノール性の懸濁液にして、アンモニア水を加えて再結晶化するという、メタノール中での酸/塩基精製で精製することもできた。製品はH−NMRに基づいてODV塩基であることを確認した。
製品の重量:7.6g
モル収率:80%
化学純度:>99.9%(HPLCで測定)。
【0069】
実施例2:チオウレアを用いたベンラファキシン塩酸塩からODV塩基の調製
チオウレア(12.1g,0.16mol)を、水酸化カリウム(17.8g,0.32mol)のポリエチレングリコール400(50mL)中の懸濁液に25〜30℃で加えた。この攪拌された懸濁液に、ベンラファキシン塩酸塩(10.0g,0.03mol)を加え、反応混合物を170〜180℃に加熱した。反応の終了(16〜20時間)後、反応混合物を60〜70℃まで放冷して、水(40mL)を加え、35%塩酸(15〜20mL)を加えた。溶液をジクロロメタン(2×50mL)で洗浄した。水性溶液に、25%アンモニア水を加えて、溶液のpHを>9.5に調整した。固体が沈殿し、ろ取することで、クルードのODV塩基を得た。クルードのODV塩基をメタノールで結晶化させて、乾燥して、純粋なODV塩基を灰白色固体として得た。このメタノール中の結晶化の代わりに、クルードのODV塩基を、塩酸を加えてメタノール性の懸濁液にして、アンモニア水を加えて再結晶化するという、メタノール中での酸/塩基精製で精製することもできた。製品はH−NMRに基づいてODV塩基であることを確認した。
製品の重量:5.9g
モル収率:70%
化学純度:>99.9%(HPLCで測定)。
【0070】
実施例1または2で調製されたODV塩基は、当業者によく知られた常法によって、容易にコハク酸塩、フマル酸塩または塩酸塩等の塩に変換することができた。
【0071】
本発明について上述したものが単なる例証のためであったことは、理解されるであろう。その実施例には、何ら発明を制限する意図はない。本発明の範囲と魂からかけ離れずに、種々の改変および態様を成すことができる。その発明は、続く請求の範囲によってのみ規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンラファキシンまたはその塩をチオウレアまたはチオウレアの混合物と反応させることを含む、O−デスメチルベンラファキシン(ODV,II)またはその薬学上許容される塩等の塩の調製方法。
【請求項2】
チオウレアがチオウレア(III)
【化1】

である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
チオウレアが置換チオウレア(IV)
【化2】

[式中、R、R、RおよびRは、独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリールまたはアルキニルアリールである。]
である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
、R、RまたはRの少なくとも1つは水素である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
反応溶媒が用いられる、先行する請求項のいずれか記載の方法。
【請求項6】
反応溶媒が、アルコール、エチレングリコール、エチレングリコールのエーテルまたはこれらの混合物から選択される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
反応溶媒が、ポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール400)、セロソルブまたは1−ブタノールから選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
チオウレアを塩基で処理することで、チオウレアのアニオンを生成させる、先行する請求項のいずれか記載の方法。
【請求項9】
塩基が、一価もしくは二価の金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩またはアルコキシドである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
塩基が金属水酸化物または金属アルコキシドである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
塩基が水酸化カリウムまたはナトリウムメトキシドである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
塩基が有機塩基である、請求項8記載の方法。
【請求項13】
塩基がアルキルアミンまたはアリールアミンである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
塩基がアニリンまたはピリジン等の有機塩基である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
反応が100〜220℃の範囲内の温度で実施される、先行する請求項のずれか記載の方法。
【請求項16】
温度が160〜190℃の範囲内である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
温度が160〜180℃の範囲内である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
ワークアップ手続きの間に、方法における不純物を除去するために、1気圧下、20℃で水と混和しない溶媒で、反応混合物を洗浄する、先行する請求項のいずれか記載の方法。
【請求項19】
ワークアップ手続きの間に、方法における不純物を除去するために、炭化水素溶媒またはハロゲン化炭化水素溶媒で、反応混合物を洗浄する、先行する請求項のいずれか記載の方法。
【請求項20】
炭化水素溶媒が、シクロヘキサン、トルエン、キシレンまたはこれらの混合物から選択される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
ハロゲン化炭化水素溶媒が、ジクロロメタン、エチレンジクロリドまたはこれらの混合物から選択される、請求項19記載の方法。
【請求項22】
高純度のODV塩基を生成させるために、クルードのODV塩基をアルコールで結晶化させることで精製する、先行する請求項のいずれか記載の方法。
【請求項23】
アルコールがメタノール、エタノール、イソプロパノールまたはこれらの混合物から選択される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
アルコールがメタノールである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
高純度のODV塩基を生成させるために、生成したクルードのODV塩基をアルコールと混合して、懸濁液を生成させ、その後、酸を加えて、塩基を加えることによって精製する、先行する請求項のいずれか記載の方法。
【請求項26】
アルコールがメタノール、エタノール、イソプロパノールまたはこれらの混合物から選択される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
アルコールがメタノールである、請求項26記載の方法。
【請求項28】
用いられる酸が塩酸または硫酸等の無機酸である、請求項25〜27のいずれか記載の方法。
【請求項29】
用いられる塩基が、トリエチルアミンもしくはトリメチルアミン等の有機塩基、またはアンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムもしくは水酸化ナトリウム等の無機塩基である、請求項25〜28のいすれか記載の方法。
【請求項30】
調製されるODVの薬学上許容される塩が、コハク酸塩またはフマル酸塩から選択される、先行する請求項のいすれか記載の方法。
【請求項31】
用いられるベンラファキシンの塩が塩酸塩である、先行する請求項のいずれか記載の方法。
【請求項32】
請求項1〜31のいずれか記載の方法で調製される、ODVまたはその薬学上許容される塩等の塩。
【請求項33】
請求項1〜31のいずれか記載の方法で調製される、ODVコハク酸塩。
【請求項34】
請求項1〜31のいずれか記載の方法で調製される、ODVフマル酸塩。
【請求項35】
うつ、不安、パニック障害、全般性不安障害、外傷後ストレス障害、月経前不快気分障害、線維筋痛症、広場恐怖症、注意欠陥障害、社会不安障害、自閉症、統合失調症、肥満、神経性食欲不振症、神経性過食症、血管運動潮紅、コカインもしくはアルコールの中毒、性機能不全、境界型人格障害、慢性疲労症候群、尿失禁またはパーキンソン病の治療もしくは予防のための、請求項32〜34のいずれか記載のODVまたはその塩。
【請求項36】
請求項1〜31のいずれか記載の方法で調製される、ODVまたはその薬学上許容される塩等の塩を含有する医薬組成物。
【請求項37】
ODVコハク酸塩を含有する、請求項36記載の医薬組成物。
【請求項38】
ODVフマル酸塩を含有する、請求項36記載の医薬組成物。
【請求項39】
うつ、不安、パニック障害、全般性不安障害、外傷後ストレス障害、月経前不快気分障害、線維筋痛症、広場恐怖症、注意欠陥障害、社会不安障害、自閉症、統合失調症、肥満、神経性食欲不振症、神経性過食症、血管運動潮紅、コカインもしくはアルコールの中毒、性機能不全、境界型人格障害、慢性疲労症候群、尿失禁またはパーキンソン病の治療もしくは予防のための、請求項36〜38のいずれか記載の医薬組成物。
【請求項40】
うつ、不安、パニック障害、全般性不安障害、外傷後ストレス障害、月経前不快気分障害、線維筋痛症、広場恐怖症、注意欠陥障害、社会不安障害、自閉症、統合失調症、肥満、神経性食欲不振症、神経性過食症、血管運動潮紅、コカインもしくはアルコールの中毒、性機能不全、境界型人格障害、慢性疲労症候群、尿失禁またはパーキンソン病の治療もしくは予防のための医薬の調製のための、請求項32〜35のいずれか記載のODVもしくはその薬学上許容される塩の使用、または請求項36〜39のいずれか記載の医薬組成物の使用。
【請求項41】
請求項32〜35のいずれか記載のODVもしくはその薬学上許容される塩を治療上もしくは予防上有効な量、または請求項36〜39のいずれか記載の医薬組成物を治療上もしくは予防上有効な量、それを必要とする患者に投与することを含む、うつ、不安、パニック障害、全般性不安障害、外傷後ストレス障害、月経前不快気分障害、線維筋痛症、広場恐怖症、注意欠陥障害、社会不安障害、自閉症、統合失調症、肥満、神経性食欲不振症、神経性過食症、血管運動潮紅、コカインもしくはアルコールの中毒、性機能不全、境界型人格障害、慢性疲労症候群、尿失禁またはパーキンソン病を治療もしくは予防する方法。
【請求項42】
患者が哺乳動物である、請求項41記載の方法。
【請求項43】
患者がヒトである、請求項42記載の方法。

【公表番号】特表2011−529481(P2011−529481A)
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520600(P2011−520600)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050943
【国際公開番号】WO2010/013050
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(508116469)ジェネリクス・(ユーケー)・リミテッド (34)
【Fターム(参考)】