説明

O/W/O型乳化化粧料

【課題】難溶性の所定の紫外線吸収剤を含有する、使用感に優れたO/W/O型乳化化粧料の提供。
【解決手段】(a)油剤、(b)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル及び/又はビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、(c)リン脂質、並びに(d)水を含有するO/W型乳化組成物が、(e)シリコーン系界面活性剤、及び(f)油剤を含有する外油相に、分散してなるO/W/O型乳化化粧料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型(以下O/W型と称する)乳化組成物を油相中に分散してなる油中水中油型(以下O/W/O型と称する)乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル及びビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンは、日焼けを防止する有効な紫外線吸収剤として知られている(例えば特許文献1、2)。しかしながら、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル及びビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンは難溶性の物質であることが知られており、特にシリコーン油と共存した状態で安定に配合することが難しい。この問題を解決するために有機変性粘土鉱物を含んだシリコーン系油分含有複合エマルジョン(例えば特許文献3)、や難溶性物質溶解性を満足させるエステル油剤(例えば特許文献4)、や難溶性紫外線吸収剤を球状ポリマー粒子に内包させた紫外線吸収粉体(例えば特許文献5)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−319628号公報
【特許文献2】特開平9−188666号公報
【特許文献3】特開平10−28858号公報
【特許文献4】特開2005−206573号公報
【特許文献5】特開2009−91307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、有機変性粘土鉱物を用いる技術は、伸びの改善を目的として乳液状とした場合、製剤としての保存安定性が不十分である場合があった。また、難溶性物質溶解性を満足させるエステル油剤を用いる技術は、溶解性を満足させない他の油剤を配合することが難しく、伸び広がりやべたつきの無さ等の使用感において十分満足できない場合があった。更に、難溶性紫外線吸収剤を球状ポリマー粒子に内包させた紫外線吸収粉体を用いる技術は、伸び広がりや粉っぽさを感じる等の使用感において十分満足できない場合があった。このため、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル及びビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを安定に配合でき、伸び広がりやべたつきの無さ等の使用感に優れた化粧料の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討の結果、リン脂質で乳化したO/W型乳化組成物の内油相中にジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル及び/又はビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを配合し、且つ、外油相中にシリコーン系界面活性剤を配合した、O/W/O型乳化化粧料が、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル及びビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを安定に配合できるとともに、伸び広がりやべたつきの無さ等の使用感に優れることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、上記課題を解決するため、
(a)油剤、(b)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル及び/又はビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、(c)リン脂質、並びに(d)水を含有するO/W型乳化組成物を、
(e)シリコーン系界面活性剤、及び(f)油剤を含有する外油相に、
分散してなるO/W/O型乳化化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル及びビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを安定に配合でき、伸び広がりやべたつきの無さ等の使用感に優れたO/W/O型乳化化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明は、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル及び/又はビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンという、難溶性の紫外線吸収剤を、安定的に乳化化粧料に配合する技術に関する。ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル及び/又はビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンは、難溶性であるとともに、分子内に複数の二重結合を有する化合物であり、極性が高いという特徴がある。よって、使用感に優れるシリコーン油等の無極性又は低極性の油剤中に配合するのは困難であり、経時で析出が生じてしまうという問題があった。本発明では、リン脂質を乳化剤として含有するO/W型乳化組成物の内油相にジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル及び/又はビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを配合し、さらに当該O/W型乳化組成物を、シリコーン系界面活性剤を含有する外油相中に分散させることで、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル及び/又はビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを内油相中に安定的に配合し、しかも経時安定性のみならず、伸び広がり及びべたつきの無さといった使用感にも優れる乳化化粧料を提供している。
以下、本発明のO/W/O型乳化化粧料の製造に用いられる各成分及びその製造方法について詳細に説明する。
【0008】
(1) O/W型乳化組成物
本発明のO/W/O型乳化化粧料は、(a)油剤、(b)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル及び/又はビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、(c)リン脂質、並びに(d)水を含有するO/W型乳化組成物を、外油相中に分散することで得られる。
【0009】
(a) 内油相の油剤
前記O/W型乳化組成物の内油相中の油剤は、極性が高く、成分(b)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル及び/又はビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを溶解可能な極性油であるのが好ましい。極性の高い油剤としては、エステル油が挙げられる。エステル油としては、モノエステル体、ジエステル体、及びトリエステル体等、いずれを用いることもできる。中でも、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルは極性の高い油剤であるとともに、それ自体もUV−B吸収能があるので、紫外線吸収能改善の観点でも好ましい。その他、トリエチルヘキサノイン、サリチル酸オクチル、コハク酸ジオクチル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−へプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2−へプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、クエン酸トリエチル、オクチルシンナメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート、メチル−2,5−ジイソプロピルシンナメート、エチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、メチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、プロピル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、オクチル−p−メトキシシンナメート(2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート)、2−エトキシエチル−p−メトキシシンナメート、シクロヘキシル−p−メトキシシンナメート、エチル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、2−エチルヘキシル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、グリセリルモノ−2−エチルヘキサノイル−ジパラメトキシシンナメート等の合成エステル油や、例えばメドゥーフォーム油、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等を用いることもできる。内油相の油剤として、必要に応じて2種以上を組合せて用いることもできる。
【0010】
(b) 所定の紫外線吸収剤
前記O/W型乳化組成物の内油相は、紫外線吸収剤である、成分(b)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル及び/又はビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを含有する。これらの紫外線吸収剤は、前記成分(a)の配合量と同程度であってもよいが、溶解性の観点では、前記成分(a)の配合量より低い配合量とするのが好ましい。
【0011】
(c)リン脂質
前記O/W型乳化組成物は、リン脂質を、前記内油相を水相中に分散可能とする分散剤及び/又は乳化剤として含有する。リン脂質を用いることで、前記内油相を水相中に安定的に分散することができる。リン脂質の代わりに、リン脂質以外の分散剤(例えば、ノニオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、及び、アニオン性界面活性剤であるN−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム等)を水相に添加して、前記O/W/O型乳化化粧料を調製しても、時間の経過とともにO/W/O型を維持できなくなり、前記所定の紫外線吸収剤が、水相中で又は外油相中で結晶として析出してしまう。本発明ではリン脂質を分散剤として用いることで、O/W/O型乳化化粧料の経時安定性を改善している。
【0012】
前記リン質は、天然の大豆や卵黄から抽出した大豆レシチン、卵黄レシチン及び/又はこれらを水素添加した水素添加レシチン、水素添加大豆レシチン、水素添加卵黄レシチンや合成リン脂質など、一般にリン脂質として知られるものが使用できる。リン脂質の種類としては例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタオールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、及びホスファチジルイノシトールなどが好ましく用いられる。リン脂質を構成する脂肪酸としては、炭素数7〜22の飽和及び不飽和カルボン酸が挙げられる。市販品としては、レシノールS−10EZ(日光ケミカルズ株式会社)、HSL−70(株式会社ワイエムシィ)、ベイシスLS−60HR及びベイシスLP−20(株式会社日清オイリオグループ社)等が挙げられる。
【0013】
前記O/W型乳化組成物には、水相への分散性の改善に寄与する剤として、リン脂質以外に、コレステロール/及び又はフィトステロールを含有させてもよい。これらの剤は、分散性の改善に寄与するとともに、保湿効果やハリ感効果にも寄与する。また、本発明では、成分(c)リン脂質として、あらかじめコレステロール等が混合された市販品を用いることもできる。リン脂質・コレステロール混合物の市販品としては、EXTRASOME MMC(日油株式会社)、PRESOME CS2−101(日本精化株式会社)、ベイシスCL−20(株式会社日清オイリオグループ社);リン脂質・フィトステロール混合物の市販品としては、PHYTOPRESOME(日本精化株式会社)、PYTOCOMPO−PP(日本精化株式会社)が挙げられる。
【0014】
前記O/W型乳化組成物の水相中には、水溶性の薬効剤を添加してもよい。また、分散安定性に寄与するアニオン性又はカチオン性界面活性剤等を添加してもよい。
【0015】
前記O/W型乳化組成物の調製方法については特に制限はない。一例は、以下の通りである。
まず、前記成分(a)〜(c)を混合し、必要であれば加熱して、成分(b)を成分(a)に溶解する。得られた油性組成物を、水中に添加し、攪拌して、O/W型乳化組成物を得る。さらに、高圧下で攪拌し、微粒子化するのが好ましい。微粒子化すると、前記O/W型乳化組成物の、外油相中への分散安定性を改善できるので好ましい。微粒子化にはマイクロフルイダイザー等の高圧攪拌装置を利用することができる。高圧攪拌処理することにより、前記O/W型乳化組成物の平均粒径を、500nm以下にするのが好ましく、300nm以下にするのがより好ましい。なお、平均粒径は小さいほど好ましいが、高圧攪拌処理による微粒子化では、平均粒径の下限値は50nmになるであろう。平均粒径の測定にはベックマン・コールター社製コールターカウンターを用いて測定した。
【0016】
(2)外油相
本発明のO/W/O型乳化化粧料は、前記O/W型乳化組成物を、シリコーン系界面活性剤を含有する外油相に分散することで得られる。本発明では、外油相中のシリコーン系界面活性剤は、前記O/W型乳化組成物の外油相中における分散安定性に寄与するとともに、使用感の改善にも寄与する。シリコーン系界面活性剤に代えて、例えば、セスキオレイン酸ソルビタン等の非シリコーン系界面活性剤を外油相に添加しても、本発明の安定性改善効果及び使用感改善効果は得られない。
【0017】
(e)シリコーン系界面活性剤
本発明に使用可能なシリコーン系界面活性剤については、油中水型化粧料の乳化剤として含有されるものであれば特に制限はない。具体的には、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、メチルポリシロキサン・セチルメチルポリシロキサン・ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体、PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ポリオキシエチレンメチルシロキサン・ポリオキシプロピレンオレイルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、ポリグリセリン変性オルガノポリシロキサンなどが例示できる。一例は、下記式(1)で表される化合物である。
【0018】
【化1】

【0019】
式中、lは1≦l≦100の整数、mは1≦m≦15の整数、nは1≦n≦15の整数、R1は水素原子若しくは炭素数1〜30の炭化水素基、aは0≦a≦15の整数、bは2≦b≦200の整数、cは0≦c≦200の整数、かつb+cが3〜200の整数である。
また、R2は下記一般式(2)
【化2】

で表されるオルガノシロキサンであって、gは1≦g≦5、hは0≦h≦100の整数であり、R3は水素原子若しくは炭素数1〜30の炭化水素基である。
【0020】
またこれらの市販品としては、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体は、KF−6015、KF−6016、KF−6017(信越化学工業社製)、メチルポリシロキサン・セチルメチルポリシロキサン・ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体は、ABIL−EM90(ゴールドシュミット社製)、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体は、ABIL−EM97(ゴールドシュミット社製)、PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンは、KF−6028(信越化学工業社製)、ポリオキシエチレンメチルシロキサン・ポリオキシプロピレンオレイルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体は、KF−6026(信越化学工業社製)、ポリグリセリン変性オルガノポリシロキサンは、KF−6105(信越化学工業社製)などがそれぞれ例示できる。これらの中でも、経時安定性及び使用感向上効果の観点から、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンがより好ましい。シリコーン系界面活性剤は、必要に応じて二種以上を組合せて用いることができる。
【0021】
(f)外油相の油剤
本発明に用いる外油相の油剤についても特に制限はなく、化粧料等の皮膚外用剤に従来使用されている種々の油剤から選択することができる。外油相は、皮膚に塗布した際の使用感に大きく影響するので、使用感に優れる油剤を用いることが好ましく、その観点では、べたつきがない、シリコーン油が好ましい。シリコーン油としては、直鎖型ジメチルポリシロキサン、分岐型ジメチルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン等のいずれを用いてもよい。これらのシリコーン油は必要に応じて二種以上を組み合わせて用いることができる。また、シリコーン油のみならず、低分子量の炭化水素油や液状のエステル油等の油剤も、使用感に優れるので、本発明の外油相に用いる油剤として好ましい。また、シリコーン油とともに用いてもよい。
【0022】
前記外油相には、感触調整剤や経時安定性(乳化安定性)を向上させるものとして、オイルゲル化剤等を添加してもよい。例えば、ジステアリルジアンモニウムヘクトライト、デキストリン脂肪酸エステル、イヌリン脂肪酸エステル、加水分解イヌリン脂肪酸エステル等を添加することができる。
【0023】
前記外油相中への、前記O/W型乳化組成物の分散は、通常の方法に従って行うことができる。一例は、以下の通りである。
前記成分(e)と成分(f)を混合し、成分(e)を成分(f)中に分散及び/又は溶解した油状組成物を調製する。該油状組成物中に、前記O/W型乳化組成物を、徐々に添加し、攪拌することで前記油状組成物中に前記O/W型乳化組成物を分散させ、O/W/O型乳化化粧料が得られる。
【0024】
本発明のO/W/O型乳化化粧料における前記成分(a)〜(f)の含有量は、系の安定性に応じて調整される。好ましくは、
成分(a)が0.1〜10%、
成分(b)が0.1〜10%、
成分(c)が0.1〜5%、
成分(d)が1〜60%、
成分(e)が0.1〜10%、及び
成分(f)が5〜99%であり;
より好ましくは、
成分(a)が3〜7%、
成分(b)が2〜7%、
成分(c)が0.5〜3%、
成分(d)が20〜50%、
成分(e)が1〜6%、及び
成分(f)が10〜50%である。
【0025】
本発明のO/W/O型乳化化粧料は、上記(a)〜(f)以外に、他の成分を含有していてもよい。例えば、前記成分(b)の所定の紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤を含有していてもよく、他の紫外線吸収剤を含有することで、さらに紫外線吸収能が改善するので好ましい。中でも、ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤は、本発明のO/W/O型乳化化粧料に安定的に配合可能である。ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤の一例としては、下記式(3)で表される化合物が含まれる。
【0026】
【化3】

【0027】
式中、R4及びR5はそれぞれ、同一でも異なってもよく、炭素原子数が1〜4のアルキル基、炭素原子数が5〜12のシクロアルキル基、及びアリール基よりなる群から選ばれる1又は2以上の基で置換されていてもよい、炭素原子数が1〜18のアルキル基を表す。
これらの中でも、R4とR5が、同一であり、かつ、これらの基が、共に、メチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、または、tert−ブチル基であることが好適であり、R4とR5が、共に、1,1,3,3−テトラメチルブチル基であることが、極めて好適である。この極めて好適な、ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤、すなわち、2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール〕は、BASF社から、チノソーブ(TINOSORB)Mとして50質量%の水系分散物の形態で市販されており、本発明においても、この市販品を用いることができる。
なお、前記式(1)の化合物は、本発明のO/W/O型乳化化粧料の水相中に含有される。
【0028】
本発明のO/W/O型乳化化粧料は、上記成分の他に、さらに任意成分として一般に化粧料に使用される成分、例えば水溶性成分、保湿剤、油剤、界面活性剤、増粘剤、粉体、色素、皮膜系製剤、pH調整剤、退色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、香料等、通常の化粧料に用いられる成分を本発明の効果を損なわない量的質的範囲において適宜配合することができる。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
下記表に示す組成のO/W/O型乳化化粧料をそれぞれ調製した。
【0030】
【表1】

【0031】
(製法)
A.成分1〜12を、温度80℃で均一に混合溶解する。
B.成分13〜17を、温度70℃で均一に混合する。
C.AにBを添加し乳化する(O/W型乳化組成物を得る)。
D.Cを室温まで冷却する。
E.マイクロフルイダイザー(みづほ工業製)を用いて高圧攪拌処理を行いDの粒径を小さくする。
F.成分18〜23を温度35℃以下で均一に混合する。
G.FにEを分散し、O/W/O型乳化化粧料を得た。
【0032】
(評価方法:経時安定性(結晶析出))
実施例及び比較例のO/W/O型乳化化粧料を5℃の恒温槽に2ヶ月保管し、結晶析出の有無を観察し以下の(イ)4段階判定基準を用いて判定した。
(イ)4段階判定基準
(評点の平均値) :(判 定)
2ヶ月で結晶が認められない : ◎
1ヶ月で結晶が認められない : ○
2週間で結晶が認められる : △
1週間で結晶が認められる : ×
【0033】
(評価方法:使用感(伸びのよさ))
化粧品評価専門パネル10名により、各試料について、伸びのよさを、下記(ロ)評価基準にて5段階評価し、更に各試料の評点の平均値を(ハ)4段階判定基準を用いて判定した。
(ロ)5段階評価基準
(評点): (評価)
4 : 非常に良い
3 : 良い
2 : どちらでもない
1 : やや悪い
0 : 悪い
(ハ)4段階判定基準
(評点の平均値) :(判 定)
3.5以上 : ◎
2.5以上、3.5未満 : ○
1.5以上、2.5未満 : △
1.5未満 : ×
【0034】
(評価方法:使用感(べたつきの無さ))
化粧品評価専門パネル10名により、各試料について、べたつきの無さを、下記(ニ)評価基準にて4段階評価し、更に各試料の評点の平均値を(ホ)4段階判定基準を用いて判定した。
(ニ)4段階評価基準
(評 点): (評 価)
3 : まったくべたつきが無い
2 : べたつきが無い
1 : ややべたつく
0 : べたつく
(ホ)4段階判定基準
(評点の平均値) :(判 定)
2.5以上 : ◎
1.5以上、2.5未満 : ○
0.5以上、1.5未満 : △
0.5未満 : ×
【0035】
また、実施例1〜6の各試料について、上記製法のE工程を行わずに、即ち、平均粒径が1μm程度のO/W型乳化組成物を、Fに分散して、O/W/O乳化化粧料をそれぞれ調製し、上記と同様の評価を行った。
その結果、いずれの試料も使用感について上記表1の結果と同等であったが、実施例1及び2の試料については、「安定性(結晶析出)」評価が、「◎」から「○」に変化した。この結果から、O/W型乳化組成物を高圧下の攪拌処理により、平均粒径を500nm以下としてから、外油相中に分散したほうが、得られるO/W/O型乳化化粧料の安定性がより改善されることが理解できる。
【0036】
[実施例7:クリーム]
(成分) (%)
1.水添レシチン *3 3.0
2.グリセリン 15.0
3.1,3−ブチレングリコール 15.0
4.エチルパラベン 0.1
5.フィトステロール 0.9
6.ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 1.0
7.ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 3.0
8.メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 4.0
9.トリエチルヘキサノイン 1.0
10.精製水 残量
11.メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール 2.0
12.デシルグルコシド 0.3
13.キサンタンガム 0.008
14.プロピレングリコール 0.016
15.PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 2.0
16.ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 1.0
17.デカメチルシクロペンタシロキサン 10.0
18.ジメチルポリシロキサン 5.0
19.ジカプリン酸プロピレングリコール 5.0
20.ジステアルジモニウムヘクトライト 1.0
21.香料 適量
*3:商品名:PHYTOCOMPO−PP(ただし、フィトステロールも含む)
【0037】
(製法)
A.成分1〜9を、温度80℃で均一に混合溶解する。
B.成分10〜14を、温度70℃で均一に混合する。
C.AにBを添加し乳化する(O/W型乳化組成物を得る)。
D.Cを室温まで冷却する。
E.マイクロフルイダイザー(みづほ工業製)を用いて高圧攪拌処理を行いDの粒径を小さくする。
F.成分15〜21を温度35℃以下で均一に混合する。
G.FにEを分散し、クリームを得た。
【0038】
実施例7のクリームは、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル及びビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを安定に配合でき、伸び広がりやべたつきの無さ等の使用感に優れたO/W/O型乳化化粧料であった。
【0039】
[実施例8:下地化粧料]
(成分) (%)
1.水添レシチン *3 1.0
2.グリセリン 8.0
3.1,3−ブチレングリコール 8.0
4.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
5.フィトステロール 0.2
6.ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 2.0
7.ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 2.0
8.メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 4.0
9.トリエチルヘキサノイン 1.0
10.精製水 残量
11.乳酸ナトリウム 2.0
12.メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール 2.0
13.デシルグルコシド 0.3
14.キサンタンガム 0.008
15.プロピレングリコール 0.016
16.PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 2.0
17.セチルジメチコンコポリオール 1.0
18.デカメチルシクロペンタシロキサン 15.0
19.ジメチルポリシロキサン 5.0
20.イソノナン酸イソトリデシル 2.0
21.パルミチン酸デキストリン 0.5
22.ステアリン酸イヌリン 0.5
23.ジステアルジモニウムヘクトライト 1.0
24.シリコーン処理酸化チタン 1.2
25.シリコーン処理ベンガラ 0.03
26.シリコーン処理黄酸化鉄 0.15
27.シリコーン処理黒酸化鉄 0.005
28.シリコーン処理微粒子酸化チタン 0.3
29.ナイロン末 1.0
30.香料 適量
【0040】
(製法)
A.成分1〜9を、温度80℃で均一に混合溶解する。
B.成分10〜15を、温度70℃で均一に混合する。
C.AにBを添加し乳化する(O/W型乳化組成物を得る)。
D.Cを室温まで冷却する。
E.マイクロフルイダイザー(みづほ工業製)を用いて高圧攪拌処理を行いDの粒径を小さくする。
F.成分16〜30をロールミルで均一に混合分散する。
G.FにEを分散し、下地化粧料を得た。
【0041】
実施例8の下地化粧料は、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル及びビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを安定に配合でき、伸び広がりやべたつきの無さ等の使用感に優れたO/W/O型乳化化粧料であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)油剤、(b)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル及び/又はビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、(c)リン脂質、並びに(d)水を含有するO/W型乳化組成物が、
(e)シリコーン系界面活性剤、及び(f)油剤を含有する外油相に、
分散してなるO/W/O型乳化化粧料。
【請求項2】
前記O/W型乳化組成物中の(a)油剤が、極性油であることを特徴とする請求項1に記載のO/W/O型乳化化粧料。
【請求項3】
前記O/W型乳化組成物中の(a)油剤が、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルであることを特徴とする請求項1又は2に記載のO/W/O型乳化化粧料。
【請求項4】
前記O/W型乳化組成物の平均粒径が、500nm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のO/W/O型乳化化粧料。
【請求項5】
前記外油相中の(f)油剤として、シリコーン油を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のO/W/O型乳化化粧料。
【請求項6】
前記外油相中の(e)シリコーン系界面活性剤が、下記一般式(1)で表されるシリコーン化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のO/W/O型乳化化粧料。
【化1】

[式中、lは1≦l≦100の整数、mは1≦m≦15の整数、nは1≦n≦15の整数、R1は水素原子若しくは炭素数1〜30の炭化水素基、aは0≦a≦15の整数、bは2≦b≦200の整数、cは0≦c≦200の整数、かつb+cが3〜200の整数である。
また、R2は下記一般式(2)
【化2】

で表されるオルガノシロキサンであって、gは1≦g≦5、hは0≦h≦100の整数であり、R3は水素原子若しくは炭素数1〜30の炭化水素基である。]
【請求項7】
成分(g)として、下記一般式(3)で表されるベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤をさらに含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載のO/W/O型乳化化粧料。
【化3】

[式中、R4及びR5はそれぞれ、同一でも異なってもよく、炭素原子数が1〜4のアルキル基、炭素原子数が5〜12のシクロアルキル基、及びアリール基よりなる群から選ばれる1又は2以上の基で置換されていてもよい、炭素原子数が1〜18のアルキル基を表す。]

【公開番号】特開2011−207789(P2011−207789A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75406(P2010−75406)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】