説明

OLEDバックライトを有する機能集積化LCDディスプレイ

本発明は、LCDディスプレイのバックライトとして働く領域的範囲に沿って領域的範囲とは独立に切り替えられうるとともに、情報の表示用として働く1つまたは複数の追加領域を有することを特徴とするOLEDバックライトを有するLCDディスプレイ、およびこのLCDディスプレイの使用法に関する。
【代表図】 図2

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OLED(有機発光ダイオード)バックライトを有する機能集積化液晶ディスプレイ(LCD)と、およびこの機能集積化液晶ディスプレイの使用法とに関する。
【背景技術】
【0002】
近年に至って、LCDディスプレイは急速な発展を遂げている。あらゆる種類の携帯電話、ラップトップコンピュータ、パームコンピュータ、ナビゲーションシステム、測定機器、およびディスプレイ装置、ノートブックコンピュータ、モニタ、ならびにテレビを問わず、液晶(LC)はほとんどすべての電子装置のディスプレイで見られる。この種の電子装置は、さらに、測定機器、通信装置、画像装置、ゲーム機、冷暖房機器、時計、家電製品、および小型電気器具を含む。さらに、液晶は、例えば、自動車、列車、航空機、船舶、および機械、ならびに建造物内外において情報の表示用ディスプレイに使用される。
【0003】
現在、LCDディスプレイは、一般に、LED(発光ダイオード)またはCCFL(冷陰極蛍光ランプ)を使って照射される。LCDディスプレイの照射では、特に平板的構造が必要な場合や望ましい場合、これらは一般に光導波路に結合される。一般に、光導波路は側面でLED/CCFLに結合される。このとき、表面から出て結合される光は、光導波路に加えられる散乱の中心を通って出る。しかし、領域ごとに切り替えられうる光の構造出口(structured exit)はこのようなわけにはいかない。
【0004】
LCDディスプレイにバックライトとしてOLEDを使用することについては、数多くの出版物および特許出願書類に記載されている。しかし、この種の製品は現在のところまだ市販されていない。
【0005】
このようなわけで、OLEDバックライトを有するLCDディスプレイは、例えば、国際出願WO第99/54780A1号、米国特許第2004/0164292A1号、および米国特許第2005/0007517A1号に記載されている。OLEDバックライトを使用すると、薄型構造を有する反射型、半透過型、および透過型LCDディスプレイが実現されうる。
【0006】
米国特許第2006/0066227A1号には、第1および第2のディスプレイを備えるディスプレイモジュールを含む2つのビューウィンドウを有する電子装置が開示されており、ここでは、第1のディスプレイ(例えば、LCD)は第1のビューウィンドウを通じて観察可能であり、第2のディスプレイ(例えば、OLED)は第2のビューウィンドウを通じて観察可能である。第2のディスプレイによって放射される光は、第1のディスプレイ用のバックライトとして働く。OLEDはLCD専用のバックライトとして働く。
【0007】
独国特許(DE)第101 39 854A1号には、LCD(液晶ディスプレイ)がポリLED(ポリマー発光電子装置)ディスプレイまたはOLED(有機発光電子装置)ディスプレイと組み合わせられることを特徴とするLCD(液晶ディスプレイ)を有するディスプレイ装置が記載されている。ただし、ポリLEDまたはOLEDは、より均一で改良された照明にもっぱら役立てられる。これは、ポリLEDディスプレイまたはOLEDディスプレイが非構造化設計(unstructured design)を有するがゆえに実現される。
【0008】
国際出願WO第2005/011293A1号には、2次元だけでなく3次元ディスプレイとしても採用されうるディスプレイが開示されている。このディスプレイは、光源(例えば、OLED)および光度を変調する変調器の配列を有する。光源としてのOLEDは、非構造化または構造化されうる。ただし、光源はバックライト専用として働く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際出願WO第99/54780A1号
【特許文献2】米国特許第2004/0164292A1号
【特許文献3】米国特許第2005/0007517A1号
【特許文献4】米国特許第2006/0066227A1号
【特許文献5】独国特許(DE)第101 39 854A1号
【特許文献6】国際出願WO第2005/011293A1号
【発明の概要】
【0010】
すべての情報はLCDディスプレイを介して以外に入手できないうえに、バックライト以外はLCDディスプレイのバックライト機能を有していないことは、LEDまたはCCFLバックライトだけでなくOLEDバックライトを有する公知のLCDディスプレイにおける欠点である。
【0011】
したがって、先行技術の前述された欠点を有することがなく、かつLCDディスプレイを介して追加情報を提供するために使用されうるOLEDバックライトを有するLCDディスプレイを提供することが本発明の目的とされる。
【0012】
この目的は、本発明にしたがって、構造化OLEDバックライト、すなわち、人間の目に見えあるいは人間の目によって見分けることができ、順次処理が可能であり、それゆえに選択的に切替え可能な1つまたは複数の領域を有するOLEDバックライトを有するLCDディスプレイによって実現される。
【0013】
それゆえ、本発明は、OLEDバックライトが、LCDディスプレイのバックライトとして働く領域的範囲のほかに、領域的範囲とは独立に切替え可能でかつ情報のディスプレイとして働く1つまたは複数の追加領域を有することを特徴とする、OLEDバックライトを有するLCDディスプレイに関する。
【0014】
これによって、LCDディスプレイのみによらずに、さらにOLEDバックライトによっても情報を提供することができる。
【0015】
LCDディスプレイの一般的構造および機能モードは、当業者には公知である。構築は当業者に公知の任意の方法で無制限に行なわれうる。これは、例えば、P.M.Knoll著「ディスプレイ(Displays)」A.フッシング出版、ハイデルベルグ(A. Huthing Verlag, Heidelberg)に記載されている。
【0016】
また、OLEDバックライトの構築は、当業者に公知である任意の方法で行なわれうる。OLEDは、一般に、例えば、インジウムスズ酸化物(「ITO」)などの透明電極で被覆されたガラス基板またはプラスチック基板を有する。この種の被覆基板は市販されている。この被覆基板は、少なくとも1層のエレクトロルミネッセンス有機物質の薄膜、および第2の電極を形成し一般に金属または合金の追加的な層で被覆される。さらに、OLEDバックライトは、例えば、正孔および/または電子輸送層などの追加的な層、および、オプションとして、例えば、電極とエレクトロルミネッセンス材料の間の電荷輸送を改善する追加的な層を有することができる。
【0017】
ここでOLEDに採用されうる発光物質は、低分子量化合物(いわゆる、「小分子」)の他に、例えば、国際出願WO第90/13148A1号および米国特許第4539507号に記載されるようなポリマーである。さらに、OLEDは、例えば、赤色、緑色、または青色の発光ポリマーの使用、ならびにカラーOLEDまたは白色OLEDおよび対応するカラーフィルタの使用によって単色設計または多色設計を有しうる。
【0018】
本発明によるOLEDバックライトは、LCDディスプレイのバックライトとして働く残りの領域的範囲とは独立に切替え可能な1つまたは複数の領域を有するという事実のみを特徴とする。
【0019】
少なくとも1つの追加領域は情報の表示用に採用されるためのものであるため、その寸法は人間の目に見えあるいは人間の目によって見分けることができなければならない。少なくとも1つの追加領域の寸法は、少なくとも4mmであることが好ましく、少なくとも25mmであることが特に好ましく、とりわけ少なくとも64mmが好ましい。
【0020】
少なくとも1つの追加領域は、輝度、色および/または形状がLCDのバックライトとして働く領域的範囲とは異なっていてもよい。
【0021】
さらに、少なくとも1つの追加領域は、バックライトとして働く領域的範囲内に任意の所望の方法で設けられうる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】自動車機器表示におけるTNセルを象徴的に示す。
【図2】OLEDバックライトがLCDディスプレイよりも大きい面積を有する、さらに好ましい実施形態を象徴的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの追加領域はLCDディスプレイの奥に位置するようにOLEDバックライトに設けられる。このような方法で、所望の情報はLCDディスプレイに直接重畳されうる。
【0024】
さらに好ましい実施形態において、OLEDバックライトは、LCDディスプレイよりも大きい面積を有する。この場合、少なくとも1つの追加領域をLCDディスプレイの側面、上方および/または下方に設けることが可能である。こうして、所望の情報は、例えば、LCDディスプレイに沿って表示されうる。
【0025】
2つの好ましい実施形態を結合することも当然可能であり、すなわち、LCDディスプレイの奥に設けられる少なくとも1つの追加領域と、LCDディスプレイの上方、下方、またはLCDディスプレイに沿って設けられる少なくとも1つの領域が存在する。
【0026】
LCDディスプレイだけでなくOLEDバックライトも、当業者には公知のすべてのプロセスによって生産されうる。
【0027】
さらに好ましい実施形態において、入射太陽光線がOLEDの金属陰極で反射されるようにOLEDはLCDの奥に設けられ、LCDは反射光を散乱するために使用されうる。OLEDまたはLCDの様々な領域は、本発明に従って、様々な反射率ひいては様々な輝度を有しうる。
【0028】
ただし、他の実施形態において、OLEDの陰極を、陰極における反射が実質的に回避されうるように設計することもできる。この場合、入射太陽光線は、反射されないか、反射されても取るに足らない程度である。
【0029】
本発明は、さらに、本発明に従ってOLEDバックライトを有するLCDディスプレイの使用法に関する。あらゆる場合において、これらは公知のLCDディスプレイの代りに採用されうる。ただし、好ましい用途は、例えば、PCモニタ、ノートブックコンピュータ、ラップトップコンピュータ、およびテレビなどのディスプレイ画面、例えば、PDA、ゲーム機、携帯電話、時計、および電卓などの移動式エンターテインメント電子装置、ならびに、例えば、自動車(例えば、車両機器表示、車両変速レバーなどにおける)、列車、船舶、および航空機などの表示要素および/または制御要素にある。このほかに、表示要素および制御要素として考えられる用途は、屋内電気器具および庭設備、測定機器および計測器、例えば、体温計、血糖測定器などの携帯式および固定式の医療技術、例えば、屋内通信システム、スイッチ、光源、標識、経路制御システムなどの屋内、ならびにホームトレーナなどのスポーツ用品およびレジャー用品に見られる。
【0030】
本発明は、好ましい実施形態を参照して以下にさらに詳しく説明されるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
図1は、自動車機器表示におけるTNセルを象徴的に示す。テキスト情報「燃料残量低下(Fuel low)」はLCDディスプレイによって表示される。対応するシンボルは、本発明によるOLEDバックライトの少なくとも1つの追加領域によって、例えば、通常のバックライトとは異なる色で追加表示される。さらに、例えば、燃料液面高さも同様にタンクシンボルの上方にOLEDバックライトに由来する小さいLCDバーによって表示されうる。
【0032】
図2は、OLEDバックライトがLCDディスプレイよりも大きい面積を有する、さらに好ましい実施形態を象徴的に示す。この場合、追加領域は、LCDディスプレイの上方だけでなくLCDディスプレイ内にも設けられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
OLEDバックライトを有するLCDディスプレイであって、前記OLEDバックライトは、LCDディスプレイのバックライトとして働く領域的範囲のほかに、前記領域的範囲とは独立に切替え可能でかつ情報のディスプレイとして働く1つまたは複数の追加領域を有することを特徴とする、OLEDバックライトを有するLCDディスプレイ。
【請求項2】
少なくとも1つの前記追加領域の寸法は少なくとも4mmであることを特徴とする、請求項1に記載のLCDディスプレイ。
【請求項3】
少なくとも1つの前記追加領域は輝度、色および/または形状がLCDのバックライトとして働く領域的範囲とは異なることを特徴とする、請求項1または2に記載のLCDディスプレイ。
【請求項4】
少なくとも1つの前記追加領域は前記LCDディスプレイの奥に位置するように前記OLEDバックライトに設けられることを特徴とする、請求項1〜3の少なくとも1項に記載のLCDディスプレイ。
【請求項5】
前記少なくとも1つの追加領域は前記LCDディスプレイの側面、上方および/または下方に設けられることを特徴とする、請求項1〜3の少なくとも1項に記載のLCDディスプレイ。
【請求項6】
前記LCDディスプレイの奥に位置し、少なくとも1つの追加領域が前記LCDディスプレイの側面、上方および/または下方に設けられように、少なくとも1つの追加領域がOLEDバックライトに設けられることを特徴とする、請求項4および5に記載のLCDディスプレイ。
【請求項7】
ディスプレイとしての前記請求項の少なくとも1項に記載のLCDディスプレイの使用法。
【請求項8】
ディスプレイ画面としての、請求項7に記載の使用法。
【請求項9】
PCモニタ、ノートブックコンピュータ、ラップトップコンピュータ、およびテレビにおけるディスプレイ画面としての、請求項8に記載の使用法。
【請求項10】
移動式エンターテインメント電子装置におけるディスプレイとしての、請求項7に記載の使用法。
【請求項11】
PDA、ゲーム機、携帯電話、時計、および電卓におけるディスプレイとしての、請求項10に記載の使用法。
【請求項12】
表示および/または制御要素におけるディスプレイとしての、請求項7に記載の使用法。
【請求項13】
自動車、列車、船舶、および航空機の表示要素ならびに制御要素におけるディスプレイとしての、請求項12に記載の使用法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−537971(P2009−537971A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510307(P2009−510307)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/003536
【国際公開番号】WO2007/134684
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】