説明

PI3キナーゼ阻害剤としてのピリドピリミジン誘導体

本発明は、ピリドピリミジン誘導体を用いてPBキナーゼの活性/機能を阻害する方法である。また、本発明は、ピリドピリミジン誘導体の投与による自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、喘息、膵炎、多臓器機能不全、腎疾患、血小板凝集、癌、精子運動能、移植拒絶反応、移植片拒絶反応および肺損傷から選択される1つ以上の病態の治療方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスホイノシチド3'OHキナーゼファミリー(以後、PI3キナーゼという)、適当には、PI3Kα、PI3Kδ、PI3Kβおよび/またはPI3Kγの調節、特に、活性または機能の阻害のためのピリドピリミジン誘導体の使用に関する。好適には、本発明は、自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、喘息、膵炎、多臓器機能不全、腎疾患、血小板凝集、癌、精子運動能、移植拒絶反応、移植片拒絶反応および肺損傷から選択される1以上の病態の治療における、ピリドピリミジン類の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞膜には、様々なシグナル変換経路に関与することのできる大量のセカンドメッセンジャーが含まれる。リン脂質シグナル伝達経路におけるエフェクター酵素の機能および調節に関し、これらの酵素は、膜リン脂質プールからセカンドメッセンジャーを生じる(クラスI PI3キナーゼ(例えば、PI3Kα)は、それらが脂質キナーゼ活性(ホスホイノシチドのリン酸化)および分子内調節機構としての自己リン酸化を包含する基質としてのタンパク質のリン酸化が可能であることが示されるプロテインキナーゼ活性の両方を示すことを意味する二重特異性キナーゼ酵素である)。リン脂質シグナル伝達のこれらの酵素は、例えば、下記のスキームIに示されるように、種々の細胞外シグナル、例えば、成長因子、マイトジェン、インテグリン(細胞間相互作用)ホルモン、サイトカイン、ウイルスおよび神経伝達物質に応答して、そして、他のシグナル伝達分子(クロストーク、ここに、原シグナルが第2段階で細胞内シグナル事象によってシグナルをPI3Kに伝達するいくつかの平行した経路を活性化することができる)、例えば、小型GTPアーゼ、キナーゼまたはホスファターゼによる細胞内調節によっても活性化される。細胞内調節は、また、細胞性オンコジーンまたは腫瘍抑制因子の異常発現または発現欠如の結果として起こることもできる。イノシトールリン脂質(ホスホイノシチド)細胞内シグナル伝達経路は、シグナル伝達分子(細胞外リガンド、刺激、受容体二量体化、異種受容体によるトランス活性化(例えば、受容体型チロシンキナーゼ))および原形質膜中に一体化されたG−タンパク質結合膜貫通受容体の関与を包含するPI3Kの動員および活性化で開始する。
【0003】
PI3Kは、膜リン脂質PI(4,5)P2をセカンドメッセンジャーとして機能するPI(3,4,5)P3に変換する。PIおよびPI(4)Pは、また、PI3Kの基質でもあり、それぞれリン酸化されてPI3PおよびPI(3,4)P2に変換され得る。さらに、これらのホスホイノシチドは、5'−特異的および3'−特異的ホスファターゼによって他のホスホイノシチドに変換され得、かくして、PI3K酵素的活性は、直接または間接的に、細胞内シグナル伝達経路においてセカンドメッセンジャーとして機能する2つの3'−ホスホイノシチドサブタイプの生成をもたらす(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3および非特許文献4)。触媒サブユニット、対応する調節サブユニットによるその調節、発現パターンおよびシグナル伝達特異的機能によって類別された複数のPI3Kアイソフォーム(p110α、β、δおよびγ)がこの酵素反応を行う(非特許文献5および上記非特許文献3)。
【0004】
密接に関連のあるアイソフォームp110αおよびβは遍在的に発現するが、δおよびγは造血細胞系、平滑筋細胞、筋細胞および内皮細胞においてより特異的に発現する(非特許文献1)。それらの発現は、また、細胞型、組織型および刺激ならびに疾患状況に依存して誘導可能な方法で調節されるかもしれない。タンパク質発現の誘導可能性としては、タンパク質の合成、ならびに調節サブユニットとの結合によって一部調節されるタンパク質安定化が挙げられる。
【0005】
現在までに、8種類の哺乳動物PI3Kが同定されており、配列ホモロジー、構造、結合パートナー、活性化の様式および基質選択性に基づいて3つの主要クラス(I、IIおよびIII)に分けられている。イン・ビトロで、クラスI PI3Kは、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルイノシトール−4−ホスフェート(PI4P)およびホスファチジルイノシトール−4,5−ビスホスフェート(PI(4,5)P2)をリン酸化して、それぞれホスファチジルイノシトール−3−ホスフェート(PI3P)、ホスファチジルイノシトール−3,4−ビスホスフェート(PI(3,4)P2)およびホスファチジルイノシトール−3,4,5−トリスホスフェート(PI(3,4,5)P3)を生産することができる。クラスII PI3KはPIおよびホスファチジルイノシトール−4−ホスフェートをリン酸化する。クラスIII PI3KはPIをリン酸化することができるだけである(上記非特許文献1;上記非特許文献5および上記非特許文献2)。
【0006】
【化1】

【0007】
上記のスキームIに示されるように、ホスホイノシチジド3−キナーゼ(PI3K)は、イノシトール環の3番目の炭素のヒドロキシルをリン酸化する。PtdInsを生じるホスホイノシチジドの、3,4,5−トリスホスフェート(PtdIns(3,4,5)P3)、PtdIns(3,4)P2およびPtdIns(3)Pへのリン酸化は、細胞増殖、細胞分化、細胞成長、細胞サイズ、細胞生存、アポトーシス、接着、細胞運動性、細胞移動、走化性、浸潤、細胞骨格再構成、細胞形状変化、小胞輸送および代謝経路に必須のものを包含する種々のシグナル変換経路のためのセカンドメッセンジャーを産生する(上記非特許文献3および非特許文献6)。G−タンパク質結合受容体は、GβγおよびRasのような小型GTPアーゼによるホスホイノシチド3'OH−キナーゼ活性化を媒介し、結果として、PI3Kシグナル伝達は、細胞極性の確立および調整ならびに細胞骨格の動的組織化(これらは、一緒になって、細胞を動かす駆動力を提供する)において中心的役割を果たす。走化性、すなわち、化学誘引物質(ケモカインともいう)の濃度勾配に対する細胞の定方向移動は、炎症/自己免疫性、神経変性、血管形成、浸潤/転移および創傷治癒のような多くの重要な疾患に関与する(非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9および非特許文献10)。
【0008】
遺伝子的アプローチおよび薬理学的ツールを用いる進歩は、化学誘引物質によって活性化されたG−タンパク質結合受容体に応答して走化性を媒介するシグナル伝達および分子経路についての洞察を提供している。これらのリン酸化したシグナル伝達産物を生じる原因となるPI3−キナーゼは、もともと、ウイルス性癌タンパク質、およびホスファチジルイノシトール(PI)をリン酸化する成長因子受容体チロシンキナーゼおよびそのイノシトール環の3'−ヒドロキシルにおけるリン酸化誘導体と関連した活性として同定された(非特許文献11)。しかしながら、さらに最近の生化学的研究により、クラスI PI3 キナーゼ(例えば、クラスIBアイソフォームPI3Kγ)が二重特異的キナーゼ酵素(それらが脂質キナーゼ活性ならびに基質としての他のタンパク質のリン酸化および分子内調節機構としての自己リン酸化が可能であることが示されるプロテインキナーゼ活性の両方を示すことを意味する)であることが明らかにされた。
【0009】
したがって、PI3−キナーゼ活性化は、細胞成長、分化およびアポトーシスを包含する様々な細胞応答に関与すると考えられる(非特許文献12;非特許文献13)。PI3−キナーゼは、白血球活性化のいくつかの態様に関与するようである。p85結合PI3−キナーゼ活性は、抗原に応答してT細胞が活性化するために重要な共刺激分子であるCD28の細胞質ドメインと物理的に結合することが示された(非特許文献14;非特許文献15)。CD28によるT細胞の活性化は抗原による活性化の閾値を下げ、増殖応答の規模および持続期間を増加させる。これらの効果は、重要なT細胞成長因子であるインターロイキン−2(IL2)を包含する多くの遺伝子の転写の増加と関連する(非特許文献16)。もはやPI3−キナーゼと相互作用できないようなCD28の変異の結果としてIL2産生が開始できなくなり、そのことはT細胞活性化におけるPI3−キナーゼの決定的な役割を示唆する。PI3Kγは、JNK活性のGベータ−ガンマ−依存性調節のメディエーターとして同定されとおり、Gベータ−ガンマは、ヘテロ三量体Gタンパク質のサブユニットである(非特許文献17)。PI3Kが必須の役割を果たす細胞プロセスとしては、アポトーシスの抑制、アクチン骨格の再組織化、心筋細胞成長、インスリンによるグリコーゲンシンターゼ刺激、TNFα媒介性好中球プライミングおよびスーパーオキシド発生、ならびに内皮細胞への白血球移動および接着が挙げられる。
【0010】
最近では(非特許文献18)、PI3Kγが種々のG(i)結合受容体およびその中心を介して炎症性シグナルをマスト細胞機能(白血球に関しては刺激)へ伝達すること、そして、免疫学が、例えば、サイトカイン、ケモカイン、アデノシン、抗体、インテグリン、凝集因子、成長因子、ウイルスまたはホルモンを包含することが記載されている(非特許文献19;上記非特許文献18、および非特許文献20)。
【0011】
酵素ファミリーの個々のメンバーに対する特異的阻害剤は、各酵素の機能を解読するための非常に貴重なツールを提供する。2つの化合物、LY294002およびワートマニン(wortmannin)(下記参照)は、PI3−キナーゼ阻害剤として幅広く使用されている。これらの化合物は、クラスI PI3−キナーゼの4つのメンバーを区別しないので、非特異的PI3K阻害剤である。例えば、種々のクラスI PI3−キナーゼの各々に対するワートマニンのIC50値は、1〜10nMの範囲である。同様に、これらのPI3−キナーゼの各々に対するLY294002のIC50値は約15〜20μMであり(非特許文献21)、また、CK2プロテインキナーゼに対しては5〜10μMであり、ホスホリパーゼに対してはある程度の阻害活性を有する。ワートマニンは真菌代謝産物であり、PI3Kの触媒ドメインと共有結合することによってPI3K活性を不可逆的に阻害する。ワートマニンによるPI3K活性の阻害は細胞外因子に対するその後の細胞応答を排除する。例えば、好中球は、PI3Kを刺激してPtdIns(3,4,5)P3を合成することによってケモカインfMet−Leu−Phe(fMLP)に応答する。該合成は、侵入微生物の好中球破壊に関与する呼吸バーストの活性化と相関する。ワートマニンでの好中球の処理はfMLP誘発性呼吸バースト反応を防止する(非特許文献22)。実際、ワートマニンを用いたこれらの実験、および他の実験的証拠は、造血系の細胞、特に、好中球、単球、および他の型の白血球におけるPI3K活性が、急性および慢性炎症に関連する非記憶免疫応答の多くに関与することを示す。
【0012】
【化2】

【0013】
ワートマニンを用いる研究に基づいて、PI3−キナーゼ機能がG−タンパク質結合受容体を介する白血球シグナル伝達のいくつかの態様にも必要とされるという証拠がある(上記非特許文献22)。さらに、ワートマニンおよびLY294002は、好中球移動をよびスーパーオキシド放出を遮断することが示された。非特許文献23にはシクロオキシゲナーゼ阻害性ベンゾフラン誘導体が開示されている。
【0014】
現在、オンコジーンおよび腫瘍抑制因子の調節解除が、例えば細胞成長および増殖の増加または細胞生存の増加によって、悪性腫瘍の形成に寄与することはよく理解されている。また、現在、PI3Kファミリーによって媒介されるシグナル伝達経路が増殖および生存を包含する多くの細胞プロセスにおいて中心的役割を有し、これらの経路の調節解除が広範囲のヒトの癌および他の疾患の病因因子であることが知られている(非特許文献24、非特許文献25)。
【0015】
クラスI PI3Kはp110触媒サブユニットおよび調節サブユニットからなるヘテロ二量体であり、該ファミリーは、さらに、調節パートナーおよび調節メカニズムに基づいて、クラスIa酵素およびクラスIb酵素に分けられる。クラスIa酵素は、5つの別個の調節サブユニット(p85α、p55α、p50α、p85βおよびp55γ)と二量体化する3つの別個の触媒サブユニット(p110α、p110βおよびp110δ)からなり、全ての触媒サブユニットは、全ての調節サブユニットと相互作用して種々のヘテロ二量体を形成することができる。クラスIa PI3Kは、一般に、活性化された受容体またはアダプタータンパク質(例えばIRS−1)の特異的ホスホチロシン残基と調節サブユニットSH2ドメインとの相互作用を介して、受容体チロシンキナーゼの成長因子による刺激に応答して活性化される。小型GTPアーゼ(一例として、ras)は、また、受容体チロシンキナーゼ活性化と併せてPI3Kの活性化に関与する。p110αおよびp110βはどちらも全ての細胞型において構成的に発現されるが、一方、p110δ発現はさらに白血球集団およびいくつかの上皮細胞に限定される。対照的に、単一のクラスIb酵素は、p101調節サブユニットと相互作用するp110γ触媒サブユニットからなる。さらにまた、クラスIb酵素はGタンパク質結合受容体(GPCR)系に応答して活性化され、その発現は白血球に限定されるようである。
【0016】
現在、クラスIa PI3K酵素が様々なヒトの癌における腫瘍形成に直接的または間接的に寄与することを示す相当な証拠がある(非特許文献26)。例えば、p110αサブユニットは、卵巣の腫瘍(非特許文献27)および子宮頚部の腫瘍(非特許文献28)のようないくつかの腫瘍において増幅する。さらに最近では、p110α(PIK3CA遺伝子)内の活性化変異は、結腸の腫瘍ならびに乳房および肺の腫瘍のような種々の他の腫瘍に関連していた(非特許文献29)。p85αにおける腫瘍関連変異は、また、卵巣および結腸の癌のような癌において同定された(非特許文献30)。直接的な影響に加えて、クラスIa PI3Kの活性化は、例えば、受容体チロシンキナーゼ、GPCR系またはインテグリンのリガンド依存性またはリガンド非依存性活性化によって、シグナル伝達経路の上流で起こる腫瘍形成事象に寄与すると考えられる(非特許文献31)。かかる上流シグナル伝達経路の例としては、PI3K媒介経路の活性化を導く種々の腫瘍における受容体チロシンキナーゼErb2の過剰発現(非特許文献32)およびオンコジーンRasの過剰発現(非特許文献33)が挙げられる。さらに、クラスIa PI3Kは、種々の下流シグナル伝達事象によって引き起こされる腫瘍形成に間接的に寄与しうる。例えば、PI(3,4,5)P3のPI(4,5)P2への逆変換を触媒するPTEN腫瘍抑制因子ホスファターゼの機能の喪失は、PI(3,4,5)P3のPI3K媒介産生の調節解除を介して、非常に幅広い腫瘍に関連する(非特許文献34)。さらにまた、他のPI3K媒介シグナル伝達事象の効果の増大は、例えばAKTの活性化によって、種々の癌に寄与すると考えられる(非特許文献35)。
【0017】
腫瘍細胞における増殖および生存シグナル伝達の媒介における役割に加えて、クラスIa PI3K酵素が腫瘍関連間質細胞におけるその機能を介して腫瘍形成にも寄与するという十分な証拠もある。例えば、PI3Kシグナル伝達は、VEGFのような血管新生促進因子に応答した内皮細胞における血管新生事象の媒介において重要な役割を果たすことが知られている(非特許文献36)。クラスI PI3K酵素は、また、運動性および移動に関与するので(非特許文献37)、PI3K阻害剤は、腫瘍細胞浸潤および転移の阻害を介して治療効果があると予想される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Trends Biochem. Sci. 22(7) p.267-72 (1997) by Vanhaesebroeck et al.
【非特許文献2】Chem. Rev. 101(8) p.2365-80 (2001) by Leslie et al (2001)
【非特許文献3】Annu. Rev. Cell.Dev. Biol. 17p, 615-75 (2001) by Katso et al.
【非特許文献4】Cell. Mol. Life Sci. 59(5) p.761-79 (2002) by Toker et al.
【非特許文献5】Exp. Cell. Res. 25 (1) p. 239-54 (1999) by Vanhaesebroeck
【非特許文献6】Mol. Med. Today 6(9) p. 347-57 (2000) by Stein
【非特許文献7】Immunol. Today 21(6) p. 260-4 (2000) by Wyman et al.
【非特許文献8】Science 287(5455) p. 1049-53 (2000) by Hirsch et al.
【非特許文献9】FASEB J. 15(11) p. 2019-21 (2001) by Hirsch et al.
【非特許文献10】Nat. Immunol. 2(2) p. 108-15 (2001) by Gerard et al.
【非特許文献11】Panayotou et al., Trends Cell Biol. 2 p. 358-60 (1992)
【非特許文献12】Parker et al., Current Biology, 5 p. 577-99 (1995)
【非特許文献13】Yao et al., Science, 267 p. 2003-05 (1995)
【非特許文献14】Pages et al., Nature, 369 p. 327-29 (1994)
【非特許文献15】Rudd, Immunity 4 p. 527-34 (1996)
【非特許文献16】Fraser et al., Science 251 p. 313-16 (1991)
【非特許文献17】Lopez-Ilasaca et al., J. Biol. Chem. 273(5) p. 2505-8 (1998)
【非特許文献18】Laffargue et al., Immunity 16(3) p. 441-51 (2002)
【非特許文献19】J. Cell. Sci. 114(Pt 16) p. 2903-10 (2001) by Lawlor et al.
【非特許文献20】Curr. Opinion Cell Biol. 14(2) p. 203-13 (2002) by Stephens et al.
【非特許文献21】Fruman et al., Ann. Rev. Biochem., 67, p. 481-507 (1998)
【非特許文献22】Thelen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91, p. 4960-64 (1994)
【非特許文献23】John M. Janusz et al., in J. Med. Chem. 1998; Vol. 41, No. 18
【非特許文献24】Katso et al., Annual Rev. Cell Dev. Biol., 2001, 17: 615-617
【非特許文献25】Foster et al., J. Cell Science, 2003, 116: 3037-3040
【非特許文献26】Vivanco and Sawyers, Nature Reviews Cancer, 2002, 2, 489-501
【非特許文献27】Shayesteh, et al., Nature Genetics, 1999, 21: 99-102
【非特許文献28】Ma et al., Oncogene, 2000, 19: 2739-2744
【非特許文献29】Samuels, et al., Science, 2004, 304, 554
【非特許文献30】Philp et al., Cancer Research, 2001, 61, 7426-7429
【非特許文献31】Vara et al., Cancer Treatment Reviews, 2004, 30, 193-204
【非特許文献32】Harari et al., Oncogene, 2000, 19, 6102-6114
【非特許文献33】Kauffmann-Zeh et al., Nature, 1997, 385, 544-548
【非特許文献34】Simpson and Parsons, Exp. Cell Res., 2001, 264, 29-41
【非特許文献35】Nicholson and Andeson, Cellular Signaling, 2002, 14, 381-395
【非特許文献36】abid et al., Arterioscler, Thromb. Vasc. Biol., 2004, 24, 294-300
【非特許文献37】Sawyer, Expert Opinion investing. Drugs, 2004, 13, 1-19
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
(発明の概要)
本発明は、式(I):
【化3】

[式中、
R1およびR2は、独立して、水素、ハロゲン、アシル、アミノ、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アルキルカルボキシ、アリールアミノ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アリールシクロアルキル、置換アリールシクロアルキル、ヘテロアリールアルキル、置換ヘテロアリールアルキル、シアノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ニトロ、アシルオキシおよびアリールオキシからなる群から選択され;
R3は、アルキル、置換アルキル、アミノ、置換アミノ、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールからなる群から選択され;
R4およびR5は、独立して、水素、ハロゲン、アシル、アミノ、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アルコキシおよびアリールアミノからなる群から選択され;
R6は、水素、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキルおよび置換C3−7シクロアルキルからなる群から選択される;
ただし、R2およびR5は、窒素原子に結合している場合には、C1−6アルキルまたはヒドロキシルであり得るだけである;
nは0〜2であり、mは0〜3である]
で示される新規化合物および/またはその医薬上許容される塩に関する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
本発明は、式(I)(A):
【化4】

[式中、
R1およびR2は、独立して、水素、ハロゲン、アシル、アミノ、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アルキルカルボキシ、アリールアミノ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アリールシクロアルキル、置換アリールシクロアルキル、ヘテロアリールアルキル、置換ヘテロアリールアルキル、シアノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ニトロ、アシルオキシおよびアリールオキシからなる群から選択され;
R3は、アルキル、置換アルキル、アミノ、置換アミノ、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールからなる群から選択され;
R4は、水素、ハロゲン、アシル、アミノ、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アルコキシおよびアリールアミノからなる群から選択され;
R5は、水素、C1−6アルキルおよびハロゲンからなる群から選択され;
R6は、水素またはC1−6アルキルであり;
nは0または1であり、mは0または1である;
ただし、R2およびR5は、窒素原子に結合している場合には、C1−6アルキルまたはヒドロキシルであり得るだけである]
で示される新規化合物および/またはその医薬上許容される塩に関する。
【0021】
本発明はまた、式(I)(B):
【化5】

[式中、
R1は、アシルアミノ、ヘテロシクロアルキルアミノ、アミノアルキル、水素、ハロゲン、アシル、アミノ、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アルキルカルボキシ、アリールアミノ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アリールシクロアルキル、置換アリールシクロアルキル、ヘテロアリールアルキル、置換ヘテロアリールアルキル、シアノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ニトロ、アシルオキシおよびアリールオキシからなる群から選択され;
R3は、アルキル、置換アルキル、アミノ、置換アミノ、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールからなる群から選択され;
R2、R4およびR5は、各々独立して、アルキルカルボキシ、アミノアルキル、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、アシルオキシ、水素、ハロゲン、アシル、アミノカルボニル、アミノ、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アルコキシおよびアリールアミノからなる群から選択され;
R6は、ヒドロキシル、水素、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキルおよび置換C3−7シクロアルキルである;
ただし、R2およびR5は、窒素原子に結合している場合には、C1−6アルキルまたはヒドロキシルであり得るだけである;
nは0〜2であり、mは0〜3である]
で示される新規化合物および/またはその医薬上許容される塩に関する。
【0022】
本発明はまた、式(I)(C):
【化6】

[式中、
R1は、アシルアミノ、ヘテロシクロアルキルアミノ、アミノアルキル、水素、ハロゲン、アシル、アミノ、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アルキルカルボキシ、アリールアミノ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アリールシクロアルキル、置換アリールシクロアルキル、ヘテロアリールアルキル、置換ヘテロアリールアルキル、シアノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ニトロ、アシルオキシおよびアリールオキシからなる群から選択され;
R3は、アルキル、置換アルキル、アミノ、置換アミノ、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールからなる群から選択され;
R2は、アルキルカルボキシ、アミノアルキル、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、アシルオキシ、水素、ハロゲン、アシル、アミノカルボニル、アミノ、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アルコキシおよびアリールアミノからなる群から選択され;
R4およびR5は、各々独立して、アミノカルボニル、アミノ、置換アミノ、ヒドロキシル、ハロゲン、C1−6アルキル、置換C1−6アルキルおよびアルコキシからなる群から選択され;
R6は、水素、ヒドロキシル、シクロプロピルまたはC1−6アルキルであり;
nは0または1であり、mは0または1である;
ただし、R2およびR5は、窒素原子に結合している場合には、C1−6アルキルまたはヒドロキシルであり得るだけである]
で示される新規化合物および/またはその医薬上許容される塩に関する。
【0023】
本発明はまた、式(I)(D):
【化7】

[式中、
R1は、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アシルアミノ、ヘテロシクロアルキルアミノ、アミノアルキル、水素、ハロゲン、アシル、アミノ、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキルおよび置換C3−7ヘテロシクロアルキルからなる群から選択され;
R3は、アルキル、置換アルキル、アミノ、置換アミノ、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールからなる群から選択され;
R2は、アシル、アミノカルボニル、水素、シアノ、アルコキシ、ヒドロキシル、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、アミノおよび置換アミノから選択され;
R4およびR5は、各々独立して、アミノカルボニル、アミノ、置換アミノ、ヒドロキシル、ハロゲン、C1−6アルキル、置換C1−6アルキルおよびアルコキシからなる群から選択され;
R6は、水素、ヒドロキシル、シクロプロピルまたはC1−6アルキルであり;
nは0または1であり、mは0または1である;
ただし、R2およびR5は、窒素原子に結合している場合には、C1−6アルキルまたはヒドロキシルであり得るだけである]
で示される新規化合物および/またはその医薬上許容される塩に関する。
【0024】
本発明はまた、式(I)(E):
【化8】

[式中、
R1は、アシルアミノ、ヘテロシクロアルキルアミノ、アミノアルキル、水素、ハロゲン、アシル、アミノ、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキルおよび置換C3−7ヘテロシクロアルキルからなる群から選択され;
R3は、アルキル、置換アルキル、アミノ、置換アミノ、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アリールおよび置換アリールからなる群から選択され;
R2、R4およびR5は、各々独立して、アミノカルボニル、アミノ、置換アミノ、ヒドロキシル、ハロゲン、C1−6アルキル、置換C1−6アルキルおよびアルコキシからなる群から選択され;
R6は、水素、ヒドロキシル、シクロプロピルまたはC1−6アルキルであり;
nは0または1であり、mは0または1である;
ただし、R2およびR5は、窒素原子に結合している場合には、C1−6アルキルまたはヒドロキシルであり得るだけである]
で示される新規化合物および/またはその医薬上許容される塩に関する。
【0025】
本発明はまた、以下の化合物またはそれらの医薬上許容される塩に関する:
N−{5−[4−(ジメチルアミノ)ピリド[3,2−d]ピリミジン−6−イル]−3−ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド;
N−{5−[4−(4−モルホリニル)ピリド[3,2−d]ピリミジン−6−イル]−3−ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド;
N−{2−クロロ−5−[4−(4−モルホリニル)ピリド[3,2−d]ピリミジン−6−イル]−3−ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド;
N−{2−(メチルオキシ)−5−[4−(4−モルホリニル)ピリド[3,2−d]ピリミジン−6−イル]−3−ピリジニル}シクロプロパンスルホンアミド;
2,4−ジフルオロ−N−{2−(メチルオキシ)−5−[4−(4−モルホリニル)ピリド[3,2−d]ピリミジン−6−イル]−3−ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド;
N−{2−クロロ−5−[4−(4−モルホリニル)ピリド[3,2−d]ピリミジン−6−イル]−3−ピリジニル}−2,4−ジフルオロベンゼンスルホンアミド;および
2,4−ジフルオロ−N−{5−[4−(4−モルホリニル)ピリド[3,2−d]ピリミジン−6−イル]−3−ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド。
【0026】
本発明はまた、癌の治療方法であって、該治療を必要とする対象体に式(I)で示される化合物の有効量を投与することを含む方法に関する。
【0027】
本発明はまた、自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、喘息、膵炎、多臓器機能不全、腎疾患、血小板凝集、癌、精子運動能、移植拒絶反応、移植片拒絶反応および肺損傷から選択される1以上の病態の治療方法であって、該治療を必要とする対象体に式(I)で示される化合物の有効量を投与することを含む方法に関する。
【0028】
本発明は、本発明のPI3キナーゼ阻害化合物をさらなる活性成分と共投与する方法を包含する。
【0029】
本発明はまた、癌の治療方法であって、該治療を必要とする対象体に式(I)で示される化合物および/またはその医薬上許容される塩の有効量、ならびに微小管阻害薬、白金配位錯体、アルキル化剤、抗生物質、トポイソメラーゼII阻害物質、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼI阻害物質、ホルモンおよびホルモンアナログ、シグナル伝達経路阻害物質、非受容体チロシンキナーゼ血管新生抑制剤、免疫療法薬、アポトーシス促進剤および細胞周期シグナル阻害物質からなる群から選択される抗腫瘍薬のような少なくとも1つの抗腫瘍薬を共投与することを含む方法に関する。
【0030】
本発明はまた、癌の治療方法であって、該治療を必要とする対象体に式(I)で示される化合物および/またはその医薬上許容される塩の有効量、ならびに受容体チロシンキナーゼ阻害物質、非受容体チロシンキナーゼ阻害物質、SH2/SH3ドメイン遮断薬、セリン/スレオニンキナーゼ阻害物質、ホスホチジルイノシトール−3キナーゼ阻害物質、ミオイノシトールシグナル伝達阻害物質およびRasオンコジーン阻害物質からなる群から選択されるシグナル伝達経路阻害物質のような少なくとも1つのシグナル伝達経路阻害物質を共投与することを含む方法に関する。
【0031】
本明細書で用いる場合、「有効量」なる用語は、例えば研究者または臨床医が求めている組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的反応を誘発する薬物または医薬品の量を意味する。さらにまた、「治療上有効量」なる用語は、このような量を投与されなかった対応する対象体と比べて、疾患、障害もしくは副作用の治療、治癒、予防または寛解の改善、または疾患もしくは障害の進行速度の低下をもたらす量を意味する。該用語はまた、その範囲内に正常な生理学的機能を増強するのに有効な量を含む。
【0032】
式(I)で示される化合物は、本発明の医薬組成物に含まれる。
【0033】
定義
本明細書で用いる場合、「置換アミノ」なる用語は、R30およびR40が各々、水素、C1〜6アルキル、アシル、C3〜C7シクロアルキルを含む群から独立して選択される(ここで、R30およびR40のうち少なくとも1つは水素ではない)−NR30R40を意味する。
【0034】
本明細書で用いる場合、「アシル」なる用語は、特に定義しない限り、−C(O)(アルキル)、−C(O)(シクロアルキル)を意味する。
【0035】
本明細書で用いる場合、「アミノカルボニル」なる用語は、−C(O)(アミノ)または−C(O)(置換アミノ)を意味する。
【0036】
本明細書で用いる場合、「アリール」なる用語は、特に定義しない限り、芳香族炭化水素環系を意味する。該環系は、単環であっても縮合多環(例えば、二環、三環等)であってもよい。種々の実施態様では、単環式アリール環は、C5〜C10またはC5〜C7またはC5〜C6である(ここで、これらの炭素数は、該環系を形成する炭素原子の数をいう)。C6環系、すなわちフェニル環は、好適なアリール基である。種々の実施態様では、多環式環は、二環式アリール基である(ここで、好適な二環式アリール基はC8〜C12またはC9〜C10である。炭素原子10個を有するナフチル環は好適な多環式アリール基である。
【0037】
本明細書で用いる場合、「ヘテロアリール」なる用語は、特に定義しない限り、炭素および少なくとも1個のヘテロ原子を含有する芳香環系を意味する。ヘテロアリールは、単環であっても多環であってもよい。単環式ヘテロアリール基は、環中に1〜4個のヘテロ原子を含有することができるが、一方、多環式ヘテロアリールは、1〜10個のヘテロ原子を含有することができる。多環式ヘテロアリール環は、縮合型、スピロ型または架橋型の環接合を含むことができ、例えば、二環式ヘテロアリールは多環式ヘテロアリールである。二環式ヘテロアリール環は、8〜12個の環構成原子を含有することができる。単環式ヘテロアリール環は、5〜8個の環構成原子(炭素およびヘテロ原子)を含有することができる。ヘテロアリール基の例としては、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、フラン、イミダゾール、インドール、イソチアゾール、オキサゾール、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、キノリン、キナゾリン、キノキサリン、チアゾールおよびチオフェンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
本明細書で用いる場合、「単環式ヘテロアリール」なる用語は、特に定義しない限り、炭素原子1〜5個およびヘテロ原子1〜4個を含有する単環式ヘテロアリール環を意味する。
【0039】
本明細書で用いる場合、「アルキルカルボキシ」なる用語は、特に定義しない限り、−(CH2)nCOOR80(ここで、R80は水素またはC1〜C6アルキルであり、nは0〜6である)を意味する。
【0040】
本明細書で用いる場合、「アルコキシ」なる用語は、−OCH3、−OCH2CH3および−OC(CH3)3を含む−O(アルキル)を意味し、ここで、アルキルは、ハロゲン、アルキルカルボキシ、アミノ、置換アミノ、シアノおよびヒドロキシルから選択される1〜3個の基で置換されていてもよい。
【0041】
本明細書で用いる場合、「アルキルチオ」なる用語は、−SCH3、−SCH2CH3を含む−S(アルキル)を意味し、ここで、アルキルは、ハロゲン、アルキルカルボキシ、アミノ、置換アミノ、シアノおよびヒドロキシルから選択される1〜3個の基で置換されていてもよい。
【0042】
本明細書で用いる場合、「シクロアルキル」なる用語は、特に定義しない限り、非芳香族の不飽和または飽和の単環式または多環式C3〜C12を意味する。
【0043】
本明細書で用いる場合、シクロアルキルおよび置換シクロアルキル置換基の例としては、シクロヘキシル、アミノシクロヘキシル、シクロブチル、アミノシクロブチル、4−ヒドロキシ−シクロヘキシル、2−エチルシクロヘキシル、プロピル4−メトキシシクロヘキシル、4−メトキシシクロヘキシル、4−カルボキシシクロヘキシル、シクロプロピル、アミノシクロペンチルおよびシクロペンチルが挙げられる。
【0044】
本明細書で用いる場合、「ヘテロシクロアルキル」なる用語は、少なくとも1個の炭素および少なくとも1個のヘテロ原子を含有する非芳香族の不飽和または飽和の単環式または多環式複素環を意味する。単環式複素環の例としては、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジンおよびモルホリンが挙げられる。多環式複素環の例としては、キヌクリジンが挙げられる。
【0045】
本明細書で用いる場合、「置換されている」なる用語は、特に定義しない限り、対象となる化学基が、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキル、アミノ、尿素、トリフルオロメチル、−(CH2)nCOOH、C3〜C7シクロアルキル、置換アミノ、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールシクロアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクロアルキル、シアノ、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルチオ、アリールオキシ、アシルオキシ、アシル、アシルアミノ、アリールアミノ、ニトロ、オキソ、−CO250、−SO270、−NR50SO270、−NR50C(O)R75および−CONR5560からなる群から選択される1〜5個の置換基、好適には1〜3個の置換基を有することを意味しており、ここで、R50およびR55は、各々独立して、水素、アルキルおよびC3〜C7シクロアルキルから選択され;R55およびR60は、ヘテロシクロアルキル環を形成していてもよく;nは、0〜6であり;R75は、C1〜C6アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アミノ、置換アミノ、アリールアミノ、C1〜C6ヘテロシクロアルキル、置換C1〜C6ヘテロシクロアルキルからなる群から選択され;R60およびR70は、各々独立して、C1〜C6アルキル、C3〜C7シクロアルキル、置換C1〜C6ヘテロシクロアルキル、C1〜C6ヘテロシクロアルキル、ハロゲン、アミノ、置換アミノ、アリールアミノ、トリフルオロメチル、シアノ、ヒドロキシル、アルコキシ、オキソ、−(CH2)nCOOH、5員環と縮合していてもよいかまたはC1〜C6アルキル、C3〜C7シクロアルキル、ハロゲン、アミノ、置換アミノ、トリフルオロメチル、シアノ、ヒドロキシル、アルコキシ、オキソもしくは−(CH2)nCOOHからなる群から選択される1〜5個の基で置換されていてもよいアリール、または5員環と縮合していてもよいかまたはC1〜C6アルキル、C3〜C7シクロアルキル、ハロゲン、アミノ、トリフルオロメチル、シアノ、ヒドロキシル、アルコキシ、オキソもしくは−(CH2)nCOOHからなる群から選択される1〜5個の基で置換されていてもよいヘテロアリールからなる群から選択される。
【0046】
本明細書で用いる場合、R60、R70、R75の定義、「アリールアミノ」および「アリールオキシ」において言及する場合の「置換されている」なる用語は、対象となる化学基が、水素、C1〜C6アルキル、ハロゲン、トリフルオロメチル、−(CH2)nCOOH、アミノ、置換アミノ、シアノ、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルチオ、アリールオキシ、アシルオキシ、アシル、アシルアミノおよびニトロからなる群から選択される1〜5個置換基、好適には1〜3個の置換基を有することを意味しており、ここで、nは0〜6である。
【0047】
本明細書で用いる場合、「アシルオキシ」なる用語は、−OC(O)アルキルを意味し、ここで、アルキルは本明細書で記載するとおりである。本明細書で用いる場合、アシルオキシ置換基の例としては、−OC(O)CH3、−OC(O)CH(CH3)2および−OC(O)(CH2)3CH3が挙げられる。
【0048】
本明細書で用いる場合、「アシルアミノ」なる用語は、−N(H)C(O)アルキル、−N(H)C(O)(シクロアルキル)を意味し、ここで、アルキルおよびシクロアルキルは本明細書で記載するとおりである。本明細書で用いる場合、アシルアミノ置換基の例としては、−N(H)C(O)CH3、−N(H)C(O)CH(CH3)2および−N(H)C(O)(CH2)3CH3が挙げられる。
【0049】
本明細書で用いる場合、「アリールオキシ」なる用語は、−O(アリール)、−O(置換アリール)、−O(ヘテロアリール)または−O(置換ヘテロアリール)を意味する。
【0050】
本明細書で用いる場合、「アリールアミノ」なる用語は、−NR80(アリール)、−NR80(置換アリール)、−NR80(ヘテロアリール)または−NR80(置換ヘテロアリール)を意味し、ここで、R80はH、C1〜6アルキルまたはC3〜C7シクロアルキルである。
【0051】
本明細書で用いる場合、「ヘテロ原子」なる用語は、酸素、窒素または硫黄を意味する。
【0052】
本明細書で用いる場合、「ハロゲン」なる用語は、ブロミド、ヨージド、クロリドおよびフルオリドから選択される置換基を意味する。
【0053】
本明細書で用いる場合、「−(CH2)n」、「−(CH2)m」なる用語および同類の用語によって定義されるアルキル鎖を含む「アルキル」なる用語およびその派生語ならびに全ての炭素鎖は、直鎖または分枝鎖状の飽和または不飽和炭化水素鎖を意味し、特に定義しない限り、該炭素鎖は、炭素原子1〜12個を含有し、nは、通常、0〜6である。
【0054】
本明細書で用いる場合、「置換アルキル」なる用語は、ハロゲン、トリフルオロメチル、アルキルカルボキシ、アミノ、置換アミノ、シアノ、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルチオ、アリールオキシ、アシルオキシ、アシル、アシルアミノ、尿素、スルホンアミド、カルバマートおよびニトロからなる群から選択される1〜6個の置換基で置換されているアルキル基を意味する。
【0055】
本明細書で用いる場合、アルキルおよび置換アルキル置換基の例としては、−CH3、−CH2−CH3、−CH2−CH2−CH3、−CH(CH3)2、−CH2−CH2−C(CH3)3、−CH2−CF3、−C≡C−C(CH3)3、−C≡C−CH2−OH、シクロプロピルメチル、−CH2−C(CH3)2−CH2−NH2、−C≡C−C65、−C≡C−C(CH3)2−OH、−CH2−CH(OH)−CH(OH)−CH(OH)−CH(OH)−CH2−OH、ピペリジニルメチル、メトキシフェニルエチル、−C(CH3)3、−(CH2)3−CH3、−CH2−CH(CH3)2、−CH(CH3)−CH2−CH3、−CH=CH2および−C≡C−CH3が挙げられる。
【0056】
本明細書で用いる場合、「治療」なる用語およびその派生語は、予防的治療および治療的治療を意味する。予防的治療とは、ヒトを暴露されたかまたは暴露され得る疾患から保護するための対策の導入を意味する。
【0057】
本明細書で用いる場合、「共投与」なる用語およびその派生語は、本明細書に記載するPI3キナーゼ阻害化合物、およびさらなる活性成分の同時投与または別々の連続投与を意味する。本明細書で用いる場合、さらなる活性成分なる用語は、治療を必要とする患者に投与した場合に有利な特性を示すことが知られているかまたは該特性を示す化合物または治療剤を含む。好適には、投与が同時ではない場合には、該化合物は、お互いに近接した時間で投与される。さらにまた、化合物が同一剤形で投与されるかどうかは問題ではなく、例えば、1つの化合物が局所投与され、別の化合物が経口投与されてもよい。
【0058】
本明細書で用いる場合、「化合物」なる用語は、該化合物の全ての異性体を包含する。かかる異性体の例としては、エナンチオマー、互変異性体、回転異性体が挙げられる。
【0059】
二原子間に「点線」の結合が引かれている場合、かかる結合は、単結合である場合も二重結合である場合もあり得ることを意味する。かかる結合を含有する環系は芳香族である場合も非芳香族である場合もあり得る。
【0060】
本明細書中に記載のある種の化合物は、1以上のキラル原子を含有していてもよく、あるいは、2個のエナンチオマーとして存在することができ、または2以上のジアステレオ異性体として存在することができる。したがって、本発明の化合物は、エナンチオマー/ジアステレオ異性体の混合物、および精製したエナンチオマー/ジアステレオ異性体、またはエナンチオマー的/ジアステレオ異性体的に豊富な混合物を包含する。また、本発明の範囲内には、上記の式IまたはIIによって示される化合物の個々の異性体、およびそのいずれもの全体的または部分的に平衡化した混合物が包含される。本発明は、また、上記の式で示される化合物の個々の異性体を、1以上のキラル中心が逆転したその異性体との混合物として包含する。さらに、起こり得る互変異性体の例は、ヒドロキシ置換基の代わりにオキソ置換基である。また、上記のように、全ての互変異性体および互変異性体混合物は、式IまたはIIで示される化合物の範囲内に包含されると理解される。
【0061】
式(I)で示される化合物は、本発明の医薬組成物に含まれる。−COOHまたは−OH基が存在する場合、医薬上許容されるエステルを用いることができ、例えば、−COOHの場合にはメチル、エチル、ピバロイルオキシメチルおよび同類のもの、−OHの場合にはアセテートマレエートおよび同類のもの、そして、徐放性製剤またはプロドラッグ製剤として用いる場合には溶解特性または加水分解特性を変更するための当該技術分野で知られているこれらのエステルを用いることができる。
【0062】
このたび、本発明の化合物がホスファトイノシチド(phosphatoinositides)3−キナーゼ(PI3K)の阻害物質であることが見出された。ホスファトイノシチド3−キナーゼ(PI3K)酵素が本発明の化合物によって阻害されると、PI3Kは、その酵素的、生物学的および/または薬理学的効果を発揮することができない。したがって、本発明の化合物は、自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、喘息、膵炎、多臓器機能不全、腎疾患、血小板凝集、癌、精子運動性、移植拒絶反応、移植片拒絶反応および肺損傷の治療に有用である。
【0063】
式(I)で示される化合物は、特に、自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、喘息、膵炎、多臓器機能不全、腎疾患、血小板凝集、癌、精子運動性、移植拒絶反応、移植片拒絶反応および肺損傷の治療における薬剤として有用である。本発明の一の実施態様によると、式(I)で示される化合物は、1つ以上のホスファトイノシチド3−キナーゼ(PI3K)、好適には、ホスファトイノシチド3−キナーゼγ(PI3Kγ)、ホスファトイノシチド3−キナーゼγ(PI3Kα)、ホスファトイノシチド3−キナーゼγ(PI3Kβ)および/またはホスファトイノシチド3−キナーゼγ(PI3Kδ)の阻害剤である。
【0064】
式(I)で示される化合物は、ホスファトイノシチド3−キナーゼ(PI3K)、好適にはホスファトイノシチド3−キナーゼ(PI3Kα)の活性の調節、特に阻害に適している。したがって、本発明の化合物はまた、PI3Kによって媒介される障害の治療に有用である。該治療には、ホスファトイノシチド3−キナーゼの調節、特に阻害またはダウンレギュレーションが含まれる。
【0065】
好適には、本発明の化合物は、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、肺炎症、血栓症、または髄膜炎もしくは脳炎のような脳感染/炎症、アルツハイマー病、ハンチントン病、CNS外傷、脳卒中もしくは虚血性疾患、アテローム性動脈硬化症、心肥大、心筋細胞機能不全、血圧上昇もしくは血管収縮のような心血管疾患から選択される障害の治療のための薬剤の製造のために使用される。
【0066】
好適には、式(I)で示される化合物は、自己免疫疾患または炎症性疾患、例えば、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、肺炎症、血栓症、または髄膜炎もしくは脳炎のような脳感染/炎症の治療に有用である。
【0067】
好適には、式(I)で示される化合物は、多発性硬化症、アルツハイマー病、ハンチントン病、CNS外傷、脳卒中または虚血性疾患を包含する神経変性疾患の治療に有用である。
【0068】
好適には、式(I)で示される化合物は、アテローム性動脈硬化症、心肥大、心筋細胞機能不全、血圧上昇または血管収縮のような心血管疾患の治療に有用である。
【0069】
好適には、式(I)で示される化合物は、慢性閉塞性肺疾患、アナフィラキシーショック線維症、乾癬、アレルギー性疾患、喘息、脳卒中、虚血性疾患、虚血再灌流、血小板凝集/活性化、骨格筋萎縮/肥大、癌組織における白血球動員、血管新生、浸潤転移、特に黒色腫、カポジ肉腫、急性および慢性細菌およびウイルス感染症、敗血症、移植拒絶反応、移植片拒絶反応、糸球体硬化症、糸球体腎炎、進行性腎線維症、肺の内皮および上皮傷害、ならびに肺気道炎症の治療に有用である。
【0070】
本発明の医薬活性化合物は、PI3キナーゼ阻害物質として、特にPI3Kαを選択的にまたはPI3Kδ、PI3Kβおよび/またはPI3Kγのうち1つ以上と共に阻害する化合物として活性があるので、それらは、癌の治療において治療的有用性を示す。
【0071】
好適には、本発明は、ヒトを含む哺乳動物における癌の治療方法であって、癌が、脳腫瘍(神経膠腫)、神経膠芽腫、白血病、バンナヤン−ゾナナ症候群、カウデン病、レルミット−デュクロ病、乳癌、炎症性乳癌、ウィルムス腫瘍、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫、上衣腫、骨芽細胞腫、結腸癌、頭頚部癌、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、肉腫、骨肉腫、骨巨細胞腫および甲状腺癌から選択される、治療方法に関する。
【0072】
好適には、本発明は、ヒトを含む哺乳動物における癌の治療方法であって、癌が、リンパ芽球性T細胞白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、ヘアリーセル白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性好中球性白血病、急性リンパ芽球性T細胞白血病、プラズマ細胞腫、免疫芽球性大細胞型白血病、マントル細胞白血病、多発性骨髄腫、巨核芽球性白血病、多発性骨髄腫、急性巨核球性白血病、前骨髄球性白血病および赤白血病から選択される、治療方法に関する。
【0073】
好適には、本発明は、ヒトを含む哺乳動物における癌の治療方法であって、癌が、悪性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、リンパ芽球性T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫および濾胞性リンパ腫から選択される、治療方法に関する。
【0074】
好適には、本発明は、ヒトを含む哺乳動物における癌の治療方法であって、癌が、神経芽細胞腫、膀胱癌、尿路上皮癌、肺癌、外陰癌、子宮頚癌、子宮内膜癌、腎臓癌、中皮腫、食道癌、唾液腺癌、肝細胞癌、胃癌、上咽頭癌、口腔癌、口の癌、GIST(胃腸間質性腫瘍)および精巣癌から選択される、治療方法に関する。
【0075】
式(I)で示される化合物が癌の治療のために投与される場合、本明細書で用いる場合、「共投与」およびその派生語は、本明細書に記載のようなPI3キナーゼ阻害化合物、ならびに化学療法および放射線療法を包含する癌の治療に有用であることが知られているさらなる活性成分の同時投与または別々の連続投与を意味する。本明細書で用いる場合、さらなる活性成分なる用語は、癌の治療を必要とする患者に投与した場合に有利な特性を示すことが知られているかまたは該特性を示す化合物または治療剤を包含する。好ましくは、投与が同時ではない場合、該化合物はお互いに近接した時間で投与される。さらにまた、化合物が同一剤形で投与されるかどうかは問題ではなく、例えば、1つの化合物が局所投与され、別の化合物が経口投与されてもよい。
【0076】
典型的には、本発明の癌の治療において、治療される感受性腫瘍に対する活性を有する抗腫瘍剤を共投与することができる。かかる薬剤の例は、Cancer Principles and Practice f Oncology by V.T. Devita and S. Hellman (editors), 6th edition (February 15, 2001), Lippincott Williams & Wilkins Publishersに見ることができる。当業者は、薬剤および関係する癌の個々の特徴に基づいて薬剤のどの組合せが有用であるか識別することができる。本発明に有用な典型的な抗腫瘍薬としては、ジテルペノイドおよびビンカアルカロイドのような微小管阻害薬;白金配位錯体;ナイトロジェンマスタード、オキサザホスホリン、アルキルスルホネート、ニトロソ尿素およびトリアゼンのようなアルキル化剤;アントラサイクリン、アクチノマイシンおよびブレオマイシンのような抗生物質;エピポドフィロトキシンのようなトポイソメラーゼII阻害物質;プリンおよびピリミジンアナログならびに葉酸代謝拮抗化合物のような代謝拮抗薬;カンプトテシンのようなトポイソメラーゼI阻害物質;ホルモンおよびホルモンアナログ;シグナル伝達経路阻害物質;非受容体チロシンキナーゼ血管新生抑制剤;免疫療法薬;アポトーシス促進剤;ならびに細胞周期シグナル阻害物質が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
本発明のPI3キナーゼ阻害化合物と組み合わせて使用するためまたは共投与するためのさらなる活性成分の例は化学療法剤である。
【0078】
微小管阻害薬または有糸分裂阻害薬は、細胞周期のM期または有糸分裂期の間、腫瘍細胞の微小管に対して活性をもつ期特異的薬剤である。微小管阻害薬の例としては、ジテルペノイドおよびビンカアルカロイドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
天然原料由来のジテルペノイドは細胞周期のG2/M期で効果をもたらす期特異的抗癌剤である。ジテルペノイドは、微小管のβ−チューブリンサブユニットを、このタンパク質と結合することによって安定化させると思われる。該タンパク質の分解が阻害され、有糸分裂が停止し、続いて細胞死が起こると考えられる。ジテルペノイドの例としては、パクリタキセルおよびそのアナログ、ドセタキセルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0080】
パクリタキセル、5β,20−エポキシ−1,2α,4,7β,10β,13α−ヘキサ−ヒドロキシタクス−11−エン−9−オン4,10−ジ酢酸エステル2−安息香酸エステルの(2R,3S)−N−ベンゾイル−3−フェニルイソセリンとの13−エステルは、タイヘイヨウイチイTaxus brevifoliaから単離された天然ジテルペン生成物であり、注射液TAXOL(登録商標)として商業的に入手可能である。それは、テルペンのタキサンファミリーの一員である。それは、まず、1971年に、化学的およびX線結晶学的方法によってその構造を特徴付けたWaniらによって単離された(J. Am. Chem, Soc., 93:2325. 1971)。その活性についての一のメカニズムは、パクリタキセルのチューブリン結合能に関連しており、それにより、癌細胞増殖を阻害する。Schiff et al., Proc. Natl, Acad, Sci. USA, 77:1561-1565(1980);Schiff et al., Nature, 277:665-667(1979);Kumar, J. Biol, Chem, 256: 10435-10441(1981)。いくつかのパクリタキセル誘導体の合成および抗癌活性の概説については以下の文献を参照:D. G. I. Kingston et al., Studies in Organic Chemistry vol. 26, entitled “New trends in Natural Products Chemistry 1986”, Attaur-Rahman, P.W. Le Quesne, Eds. (Elsevier, Amsterdam, 1986) pp 219-235。
【0081】
パクリタキセルは、米国では難治性卵巣癌の治療(Markman et al., Yale Journal of Biology and Medicine, 64:583, 1991;McGuire et al., Ann. lntem, Med., 111:273, 1989)および乳癌の治療(Holmes et al., J. Nat. Cancer Inst., 83:1797,1991.)において臨床用に承認されている。それは、皮膚における新生物(Einzig et. al., Proc. Am. Soc. Clin. Oncol., 20:46)および頭頚部癌(Forastire et. al., Sem. Oncol., 20:56, 1990)の治療のための有望な候補である。該化合物はまた、多発性嚢胞腎疾患(Woo et. al., Nature, 368:750. 1994)、肺癌およびマラリアの治療の可能性を示している。パクリタキセルによる患者の治療は、閾値濃度(50nM)以上を投与する期間と関連して(Kearns, C.M. et. al., Seminars in Oncology, 3(6) p.16-23, 1995)、骨髄抑制をもたらす(複数の細胞系譜、Ignoff, R.J. et. al, Cancer Chemotherapy Pocket Guide, 1998)。
【0082】
ドセタキセル、(2R,3S)−N−カルボキシ−3−フェニルイソセリン,N−tert−ブチルエステルの5β−20−エポキシ−1,2α,4,7β,10β,13α−ヘキサヒドロキシタクス−11−エン−9−オン4−酢酸エステル2−安息香酸エステルとの13−エステルの三水和物は、注射液としてTAXOTERE(登録商標)として商業的に入手可能である。ドセタキセルは、乳癌の治療に適応される。ドセタキセルは、ヨーロッパイチイの針葉から抽出した天然の前駆物質、10−デアセチル−バッカチンIIIを使用して調製された任意量のパクリタキセルの半合成誘導体である。ドセタキセルの用量規制毒性は好中球減少である。
【0083】
ビンカアルカロイドは、ニチニチソウ由来の期特異的抗腫瘍剤である。ビンカアルカロイドは、チューブリンと特異的に結合することによって細胞周期のM期(有糸分裂)にて作用する。その結果、結合したチューブリン分子は、微小管へと重合することはできない。有糸分裂が分裂中期に停止され、続いて細胞死が起こると考えられる。ビンカアルカロイドの例としては、ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビノレルビンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
ビンブラスチン、硫酸ビンカロイコブラスチンは、注射液としてVELBAN(登録商標)として商業的に入手可能である。それは、様々な固形腫瘍の第二次治療として可能な適応を有するが、主に、精巣癌、ならびにホジキン病、リンパ球性および組織球性リンパ腫を含む様々なリンパ腫の治療に適応とされる。骨髄抑制がビンブラスチンの用量規制副作用である。
【0085】
ビンクリスチン、ビンカロイコブラスチン、22−オキソ−、硫酸エステル、は、注射液としてONCOVIN(登録商標)として商業的に入手可能である。ビンクリスチンは、急性白血病の治療に適応とされ、また、ホジキンおよび非ホジキン悪性リンパ腫の治療計画における使用を見出した。脱毛症および神経学的作用がビンクリスチンの最も一般的な副作用であり、それほどではないにせよ骨髄抑制および胃腸粘膜炎作用が生じる。
【0086】
酒石酸ビノレルビンの注射液(NAVELBINE(登録商標))として商業的に入手可能なビノレルビン、3',4'−ジデヒドロ−4'−デオキシ−C'−ノルビンカロイコブラスチン[R−(R*,R*)−2,3−ジヒドロキシブタン二酸エステル(1:2)(塩)]は、半合成ビンカアルカロイドである。ビノレルビンは、単剤としてまたはシスプラチンのような他の化学療法剤と組み合わせて、様々な固形腫瘍、特に、非小細胞肺癌、進行性乳癌およびホルモン難治性前立腺癌の治療に適応とされる。骨髄抑制がビノレルビンの最も一般的な用量規制副作用である。
【0087】
白金配位錯体は、DNAと相互作用する期非特異的抗癌剤である。該白金錯体は、腫瘍細胞に侵入し、アクア化を受け、DNAとストランド内およびストランド間架橋を形成して、腫瘍に対して有害な生物学的影響を及ぼす。白金配位錯体の例としては、シスプラチンおよびカルボプラチンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
シスプラチン、シスジアンミンジクロロ白金は、注射液としてPLATINOL(登録商標)として商業的に入手可能である。シスプラチンは、主に、転移性の精巣癌および卵巣癌ならびに進行性膀胱癌の治療に適応とされる。シスプラチンの主要な用量規制副作用は、水分補給および利尿によって制御することができる腎毒性、ならびに聴器毒性である。
【0089】
カルボプラチン、白金、ジアンミン[1,1−シクロブタン−ジカルボキシレート(2−)−O,O']は、注射液としてPARAPLATIN(登録商標)として商業的に入手可能である。カルボプラチンは、主に、進行性卵巣癌の第一次および第二次治療に適応とされる。骨髄抑制がカルボプラチンの用量規制毒性である。
【0090】
アルキル化剤は、期非特異的抗癌剤であり、かつ、強い求電子試薬である。典型的には、アルキル化剤は、アルキル化によりホスフェート、アミノ、スルフヒドリル、ヒドロキシル、カルボキシルおよびイミダゾール基のようなDNA分子の求核部分を介してDNAとの共有結合を形成する。かかるアルキル化は核酸機能を破壊して細胞死へと導く。アルキル化剤の例としては、シクロホスファミド、メルファランおよびクロラムブシルのようなナイトロジェンマスタード;ブスルファンのようなアルキルスルフォナート;カルムスチンのようなニトロソ尿素;ならびにダカルバジンのようなトリアゼンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
シクロホスファミド、2−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]テトラヒドロ−2H−1,3,2−オキサザホスホリン2−オキシド・一水和物は、注射液または錠剤としてCYTOXAN(登録商標)として商業的に入手可能である。シクロホスファミドは、単剤としてまたは他の化学療法剤と組み合わせて、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫および白血病の治療に適応とされる。脱毛症、悪心、嘔吐および白血球減少がシクロホスファミドの最も一般的な用量規制副作用である。
【0092】
メルファラン、4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−L−フェニルアラニンは、注射液または錠剤としてALKERAN(登録商標)として商業的に入手可能である。メルファランは、多発性骨髄腫および卵巣の切除不可能な上皮癌の対症療法に適応とされる。骨髄抑制がメルファランの最も一般的な用量規制副作用である。
【0093】
クロラムブシル、4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ベンゼンブタン酸は、LEUKERAN(登録商標)錠剤として商業的に入手可能である。クロラムブシルは、慢性リンパ性白血病、ならびにリンパ肉腫、巨大濾胞性リンパ腫およびホジキン病のような悪性リンパ腫の対症療法に適応とされる。骨髄抑制がクロラムブシルの最も一般的な用量規制副作用である。
【0094】
ブスルファン、ジメタンスルホン酸1,4−ブタンジオールは、MYLERAN(登録商標)錠剤として商業的に入手可能である。ブスルファンは、慢性骨髄性白血病の対症療法に適応とされる。骨髄抑制がブスルファンの最も一般的な用量規制副作用である。
【0095】
カルムスチン、1,3−[ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソ尿素は、BiCNU(登録商標)として凍結乾燥製剤の単剤バイアルとして商業的に入手可能である。カルムスチンは、単剤としてまたは脳腫瘍、多発性骨髄腫、ホジキン病および非ホジキンリンパ腫のためには他の薬剤と組み合わせて、対症療法に適応とされる。遅発性骨髄抑制がカルムスチンの最も一般的な用量規制副作用である。
【0096】
ダカルバジン、5−(3,3−ジメチル−1−トリアゼノ)−イミダゾール−4−カルボキサミドは、DTIC−Dome(登録商標)として単剤バイアルとして商業的に入手可能である。ダカルバジンは、転移性悪性黒色腫の治療に適応とされ、ホジキン病の第二次治療のためには他の薬剤と組み合わせて適応とされる。悪心、嘔吐および食欲不振がダカルバジンの最も一般的な用量規制副作用である。
【0097】
抗生物抗腫瘍剤は、DNAと結合するかまたはインターカレートする期非特異的薬剤である。典型的には、かかる作用により安定なDNA複合体またはストランド切断が生じ、通常の核酸の機能を破壊して細胞死へと導く。抗生物抗腫瘍剤の例としては、ダクチノマイシンのようなアクチノマイシン、ダウノルビシンおよびドキソルビシンのようなアントラサイクリン;ならびにブレオマイシンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0098】
Actinomycin Dとしても知られているダクチノマイシンは、注射液形のCOSMEGEN(登録商標)として商業的に入手可能である。ダクチノマイシンは、ウィルムス腫瘍および横紋筋肉腫の治療に適応とされる。悪心、嘔吐および食欲不振がダクチノマイシンの最も一般的な用量規制副作用である。
【0099】
ダウノルビシン、(8S−cis−)−8−アセチル−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−リキソ−ヘキソピラノシル)オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−1−メトキシ−5,12−ナフタセンジオン・塩酸塩は、リポソーム注射液形としてDAUNOXOME(登録商標)として、または注射液としてCERUBIDINE(登録商標)として商業的に入手可能である。ダウノルビシンは、急性非リンパ球性白血病および進行性HIV関連カポジ肉腫の治療における寛解導入に適応とされる。骨髄抑制がダウノルビシンの最も一般的な用量規制副作用である。
【0100】
ドキソルビシン、(8S,10S)−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−リキソ−ヘキソピラノシル)オキシ]−8−グリコロイル,7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−1−メトキシ−5,12−ナフタセンジオン・塩酸塩は、注射液形としてRUBEX(登録商標)またはADRIAMYCIN RDF(登録商標)として商業的に入手可能である。ドキソルビシンは、主に、急性リンパ芽球性白血病および急性骨髄芽球性白血病の治療に適応とされるが、いくつかの固形腫瘍およびリンパ腫の治療において有用な成分でもある。骨髄抑制がドキソルビシンの最も一般的な用量規制副作用である。
【0101】
ブレオマイシン、ストレプトマイセス・ヴェルチシルス(Streptomyces verticillus)の株から単離された細胞障害性グリコペプチド系抗生物質の混合物は、BLENOXANE(登録商標)として商業的に入手可能である。ブレオマイシンは、単剤としてまたは他の薬剤と組み合わせて、扁平上皮癌、リンパ腫および精巣癌の対症療法として適応とされる。肺毒性および皮膚毒性がブレオマイシンの最も一般的な用量規制副作用である。
【0102】
トポイソメラーゼII阻害物質としては、エピポドフィロトキシンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0103】
エピポドフィロトキシンは、マンドレイク由来の期特異的抗腫瘍剤である。エピポドフィロトキシンは、典型的には、トポイソメラーゼIIおよびDNAとの三元複合体を形成してDNAストランド切断を引き起こすことによって、細胞周期のS期およびG2期において細胞に影響を及ぼす。このストランド切断は蓄積し、次いで細胞死が起こる。エピポドフィロトキシンの例としては、エトポシドおよびテニポシドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0104】
エトポシド、4'−デメチル−エピポドフィロトキシン9[4,6−0−(R)−エチリデン−β−D−グルコピラノシド]は、注射液またはカプセル剤としてVePESID(登録商標)として商業的に入手可能であり、一般にVP−16として知られている。エトポシドは、単剤としてまたは他の化学療法剤と組み合わせて、精巣癌および非小細胞肺癌の治療に適応とされる。骨髄抑制がエトポシドの最も一般的な副作用である。白血球減少症の発生は、血小板減少症よりも重篤である傾向にある。
【0105】
テニポシド、4'−デメチル−エピポドフィロトキシン9[4,6−0−(R)−テニリデン−β−D−グルコピラノシド]は、注射液としてVUMON(登録商標)として商業的に入手可能であり、一般にVM−26として知られている。テニポシドは、単剤としてまたは他の化学療法剤と組み合わせて、小児における急性白血病の治療に適応とされる。骨髄抑制がテニポシドの最も一般的な用量規制副作用である。テニポシドは、白血球減少症および血小板減少症の両方を誘発する可能性がある。
【0106】
代謝拮抗性抗腫瘍剤は、DNA合成を阻害することによってまたはプリンもしくはピリミジン塩基合成を阻害してDNA合成を制限することによって細胞周期のS期(DNA合成)で作用する期特異的抗腫瘍剤である。その結果、S期は進行せず、次いで細胞死が起こる。代謝拮抗性抗腫瘍剤の例としては、フルオロウラシル、メトトレキサート、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニンおよびゲムシタビンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0107】
5−フルオロウラシル、5−フルオロ−2,4−(1H,3H)ピリミジンジオンは、フルオロウラシルとして商業的に入手可能である。5−フルオロウラシルの投与は、チミジル酸合成の阻害をもたらし、RNAおよびDNAの両方に取り込まれる。結果は、典型的には、細胞死である。5−フルオロウラシルは、単剤としてまたは他の化学療法剤と組み合わせて、乳癌、結腸癌、直腸癌、胃癌および膵臓癌の治療に適応とされる。骨髄抑制および粘膜炎が5−フルオロウラシルの用量規制副作用である。他のフルオロピリミジンアナログとしては、5−フルオロデオキシウリジン(フロクスウリジン)および5−フルオロデオキシウリジン一リン酸が挙げられる。
【0108】
シタラビン、4−アミノ−1−β−D−アラビノフラノシル−2(1H)−ピリミジノンは、CYTOSAR−U(登録商標)として商業的に入手可能であり、一般的にAra−Cとして知られている。シタラビンは成長しているDNA鎖へシタラビンを末端取り込みすることによりDNA鎖伸長を阻害することによってS期で細胞期特異性を示すと考えられる。シタラビンは、単剤としてまたは他の化学療法剤と組み合わせて、急性白血病の治療に適応とされる。他のシチジンアナログとしては、5−アザシチジンおよび2',2'−ジフルオロデオキシシチジン(ゲムシタビン)が挙げられる。シタラビンは、白血球減少症、血小板減少症および粘膜炎を誘発する。
【0109】
メルカプトプリン、1,7−ジヒドロ−6H−プリン−6−チオン・一水和物は、PURINETHOL(登録商標)として商業的に入手可能である。メルカプトプリンは、現時点で詳細不明のメカニズムによりDNA合成を阻害することによってS期にて細胞期特異性を示す。メルカプトプリンは、単剤としてまたは他の化学療法剤と組み合わせて、急性白血病の治療に適応とされる。骨髄抑制および胃腸粘膜炎が高用量のメルカプトプリンの副作用と思われる。有用なメルカプトプリンアナログはアザチオプリンである。
【0110】
チオグアニン、2−アミノ−1,7−ジヒドロ−6H−プリン−6−チオンは、TABLOID(登録商標)として商業的に入手可能である。チオグアニンは、現時点で詳細不明のメカニズムによりDNA合成を阻害することによってS期にて細胞期特異性を示す。チオグアニンは、単剤としてまたは他の化学療法剤と組み合わせて、急性白血病の治療に適応とされる。白血球減少症、血小板減少症および貧血症を含む骨髄抑制がチオグアニン投与の最も一般的な用量規制副作用である。しかしながら、胃腸管副作用が生じ、用量規制となる可能性がある。他のプリンアナログとしては、ペントスタチン、エリスロヒドロキシノニルアデニン、リン酸フルダラビンおよびクラドリビンが挙げられる。
【0111】
ゲムシタビン、2'−デオキシ−2',2'−ジフルオロシチジン・一塩酸塩(β−異性体)は、GEMZAR(登録商標)として商業的に入手可能である。ゲムシタビンは、S期にて、そしてG1/S境界を介して細胞の進行を遮断することによって、細胞期特異性を示す。ゲムシタビンは、シスプラチンと組み合わせて局所進行性非小細胞肺癌の治療に適応とされ、単独で局所進行性膵臓癌の治療に適応とされる。白血球減少症、血小板減少症および貧血症を含む骨髄抑制がゲムシタビン投与の最も一般的な用量規制副作用である。
【0112】
メトトレキサート、N−[4[[(2,4−ジアミノ−6−プテリジニル)メチル]メチルアミノ]ベンゾイル]−L−グルタミン酸は、メトトレキサートナトリウムとして商業的に入手可能である。メトトレキサートは、プリンヌクレオチドおよびチミジル酸エステルの合成に必要とされるジヒドロ葉酸レダクターゼの阻害を介してDNA合成、修復および/または複製を阻害することによってSにて細胞期特異性を示す。メトトレキサートは、単剤としてまたは他の化学療法剤と組み合わせて、絨毛癌、髄膜白血病、非ホジキンリンパ腫ならびに乳癌、頭頚部癌、卵巣癌および膀胱癌の治療に適応とされる。骨髄抑制(白血球減少症、血小板減少症および貧血症)ならびに粘膜炎がメトトレキサート投与の副作用と考えられる。
【0113】
カンプトテシンおよびカンプトテシン誘導体を含むカンプトテシンは、トポイソメラーゼI阻害物質として入手可能であるか、または開発中である。カンプトテシン細胞障害活性は、そのトポイソメラーゼI阻害活性に関連していると考えられる。カンプトテシンの例としては、イリノテカン、トポテカン、ならびに下記7−(4−メチルピペラジノ−メチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20−カンプトテシンの様々な光学形態が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0114】
イリノテカンHCl、(4S)−4,11−ジエチル−4−ヒドロキシ−9−[(4−ピペリジノピペリジノ)カルボニルオキシ]−1H−ピラノ[3',4',6,7]インドリジノ[1,2−b]キノリン−3,14(4H,12H)−ジオン・塩酸塩は、注射液CAMPTOSAR(登録商標)として商業的に入手可能である。
【0115】
イリノテカンは、その活性代謝産物SN−38と一緒に、トポイソメラーゼI−DNA複合体と結合しているカンプトテシンの誘導体である。トポイソメラーゼI:DNA:イリノテカンまたはSN−38三元複合体と複製酵素との相互作用により引き起こされる回復不能な二本鎖切断の結果として細胞障害性が生じると考えられる。イリノテカンは、結腸または直腸の転移性癌の治療に適応とされる。イリノテカン・HClの用量規制副作用は、好中球減少を含む骨髄抑制、および下痢を含むGI作用である。
【0116】
トポテカン・HCl、(S)−10−[(ジメチルアミノ)メチル]−4−エチル−4,9−ジヒドロキシ−1H−ピラノ[3',4',6,7]インドリジノ[1,2−b]キノリン−3,14−(4H,12H)−ジオン・一塩酸塩は、注射液HYCAMTIN(登録商標)として商業的に入手可能である。トポテカンは、トポイソメラーゼI−DNA複合体と結合しているカンプトテシンの誘導体であり、DNA分子のねじれ歪みに応答してトポイソメラーゼIにより引き起こされる一本鎖切断の再連結を防止する。トポテカンは、転移性の卵巣癌および小細胞肺癌の第二次治療に適応とされる。トポテカン・HClの用量規制副作用は骨髄抑制、主に好中球減少である。
【0117】
現在開発中の、化学名「7−(4−メチルピペラジノ−メチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(R,S)−カンプトテシン」(ラセミ混合物)または「7−(4−メチルピペラジノ−メチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(R)−カンプトテシン」(Rエナンチオマー)または「7−(4−メチルピペラジノ−メチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(S)−カンプトテシン」(Sエナンチオマー)によって知られている、下記式Aで示されるカンプトテシン誘導体(ラセミ混合物(R,S)形ならびにRエナンチオマーおよびSエナンチオマーを含む)もまた興味深いものである:
【0118】
【化9】

かかる化合物および関連化合物(製造方法を含む)は、米国特許第6,063,923号;第5,342,947号;第5,559,235号;第5,491,237号、および1997年11月24日に出願された出願係属中の米国特許出願第08/977,217号に記載されている。
【0119】
ホルモンおよびホルモンアナログは、ホルモンと癌の増殖および/または増殖欠如との間に関係がある癌の治療に有用な化合物である。癌治療に有用なホルモンおよびホルモンアナログの例としては、小児における悪性リンパ腫および急性白血病の治療に有用な、プレドニゾンおよびプレドニゾロンのようなアドレノコルチコステロイド;副腎皮質癌およびエストロゲン受容体を含有するホルモン依存性乳癌の治療に有用な、アミノグルテチミド、およびアナストロゾール、レトラゾール、ボラゾールおよびエキセメスタンのような他のアロマターゼ阻害物質;ホルモン依存性乳癌および子宮内膜癌の治療に有用な、酢酸メゲストロールのようなプロゲストリン;前立腺癌および良性前立腺肥大症の治療に有用な、エストロゲン、アンドロゲン、およびフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、酢酸シプロテロンのような抗アンドロゲン、およびフィナステリドおよびデュタステリドのような5α−レダクターゼ;ホルモン依存性乳癌および他の感受性癌の治療に有用な、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、ヨードキシフェンのような抗エストロゲン、ならびに米国特許第5,681,835号、第5,877,219号および第6,207,716号に記載されているもののような選択的エストロゲン受容体調節因子(SERMS);ならびに前立腺癌の治療のための、黄体ホルモン(LH)および/または濾胞刺激ホルモン(FSH)の放出を刺激するゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)およびそのアナログ、例えば、酢酸ゴセレリンおよびロイプロリドのようなLHRHアゴニストおよびアンタゴニストが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0120】
シグナル伝達経路阻害物質は、細胞内変化を引き起こす化学プロセスを遮断または阻害する阻害物質である。本明細書で用いられる場合、この変化は、細胞増殖または細胞分化である。本発明において有用なシグナル伝達阻害物質としては、受容体型チロシンキナーゼ、非受容体型チロシンキナーゼ、SH2/SH3ドメイン遮断薬、セリン/スレオニンキナーゼ、ホスファチジルイノシトール−3キナーゼ、ミオイノシトールシグナル伝達およびRasオンコジーンの阻害物質が挙げられる。
【0121】
いくつかのプロテインチロシンキナーゼは、細胞増殖の調節に関与している様々なタンパク質における特定のチロシル残基のリン酸化を触媒する。かかるプロテインチロシンキナーゼは受容体型または非受容体型キナーゼとして大きく分類することができる。
【0122】
受容体型チロシンキナーゼは、細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメインおよびチロシンキナーゼドメインを有する膜貫通タンパク質である。受容体型チロシンキナーゼは、細胞増殖の調節に関与しており、一般に、増殖因子受容体と称される。例えば過剰発現または変異による、これらのキナーゼの多くの不適当な活性化または非制御の活性化、すなわち、異常なキナーゼ増殖因子受容体活性が非制御の細胞増殖を引き起こすことが示されている。したがって、かかるキナーゼの異常な活性は悪性の組織増殖と関連している。その結果、かかるキナーゼの阻害物質は癌治療方法をもたらすことができる。増殖因子受容体としては、例えば、上皮増殖因子受容体(EGFr)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFr)、erbB2、erbB4、血管内皮増殖因子受容体(VEGFr)、イムノグロブリン様および上皮増殖因子ホモロジードメイン(TIE−2)を有するチロシンキナーゼ、インスリン増殖因子−I(IGFI)受容体、マクロファージコロニー刺激因子(cfms)、BTK、ckit、cmet、線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体、Trk受容体(TrkA、TrkBおよびTrkC)、エフリン(eph)受容体ならびにRETプロトオンコジーンが挙げられる。増殖受容体のいくつかの阻害物質は開発中であり、リガンドアンタゴニスト、抗生物質、チロシンキナーゼ阻害物質およびアンチセンスオリゴヌクレオチドが挙げられる。増殖因子受容体、および増殖因子受容体機能を阻害する薬剤は、例えば、Kath, John C., Exp. Opin. Ther. Patents(2000) 10(6):803-818;Shawver et al DDT Vol 2, No. 2 February 1997;およびLofts, F. J. et al, “Growth factor receptors as targets”, New Molecular Targets for Cancer Chemotherapy, ed. Workman, Paul and Kerr, David, CRC press 1994, Londonに記載されている。
【0123】
増殖因子受容体キナーゼではないチロシンキナーゼは非受容体型チロシンキナーゼと称される。抗癌剤の標的または標的候補である本発明に用いるための非受容体型チロシンキナーゼとしては、cSrc、Lck、Fyn、Yes、Jak、cAbl、FAK(接着斑キナーゼ)、BrutonsチロシンキナーゼおよびBcr−Ablが挙げられる。かかる非受容体型キナーゼ、および非受容体型チロシンキナーゼ機能を阻害する薬剤は、Sinh, S. and Corey, S.J., (1999) Journal of Hematotherapy and Stem Cell Research 8(5): 465-80;およびBolen, J.B., Brugge, J.S., (1997) Annual review of Immunology. 15: 371-404に記載されている。
【0124】
SH2/SH3ドメイン遮断薬は、PI3−K p85サブユニット、Srcファミリーキナーゼ、アダプター分子(Shc、Crk、Nck、Grb2)およびRas−GAPを包含する様々な酵素またはアダプタータンパク質におけるSH2またはSH3ドメイン結合を破壊する薬剤である。抗癌剤の標的としてのSH2/SH3ドメインは、Smithgall, T.E. (1995), Journal of Pharmacological and Toxicological Methods. 34(3)125-32に記載されている。
【0125】
セリン/トレオニンキナーゼの阻害物質としては、Rafキナーゼ(rafk)、マイトジェンまたは細胞外調節キナーゼ(MEK)および細胞外調節キナーゼ(ERK)の遮断薬を含むMAPキナーゼカスケード遮断薬;ならびにPKC(α、β、γ、ε、μ、λ、ι、ζ)、IkBキナーゼファミリー(IKKa、IKKb)、PKBファミリーキナーゼ、AKTキナーゼファミリーメンバー、およびTGFβ受容体キナーゼの遮断薬を含むプロテインキナーゼCファミリーメンバー遮断薬が挙げられる。かかるセリン/トレオニンキナーゼおよびその阻害物質は、Yamamoto, T., Taya, S., Kaibuchi, K., (1999), Journal of Biochemistry. 126(5) 799-803;Brodt, P, Samani, A., and Navab, R. (2000), Biochemical Pharmacology, 60. 1101-1107;Massague, J., Weis-Garcia, F. (1996) Cancer Surveys. 27:41-64;Philip, P.A., and Harris, A.L. (1995), Cancer Treatment and Research. 78: 3-27;Lackey, K. et al Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters, (10), 2000, 223-226;米国特許第6,268,391号;およびMartinez-Iacaci, L., et al, Int. J. Cancer (2000), 88(1), 44-52に記載されている。
【0126】
PI3−キナーゼ、ATM、DNA−PKおよびKuの遮断薬を包含するホスファチジルイノシトール−3キナーゼファミリーメンバーの阻害物質もまた本発明において有用であり得る。かかるキナーゼは、Abraham, R.T. (1996), Current Opinion in Immunology. 8(3) 412-8;Canman, C.E., Lim, D.S. (1998), Oncogene 17(25) 3301-3308;Jackson, S.P. (1997), International Journal of Biochemistry and Cell Biology. 29(7):935-8;およびZhong, H. et al, Cancer res, (2000) 60(6), 1541-1545に記載されている。
【0127】
ホスホリパーゼC遮断薬およびミオイノシトールアナログのようなミオイノシトールシグナル伝達阻害物質もまた本発明に有用である。かかるシグナル阻害物質は、Powis, G., and Kozikowski A., (1994) New Molecular Targets for Cancer Chemotherapy ed., Paul Workman and David Kerr, CRC press 1994, Londonに記載されている。
【0128】
別のグループのシグナル伝達経路阻害物質は、Rasオンコジーンの阻害物質である。かかる阻害物質としては、ファルネシルトランスフェラーゼ、ゲラニル−ゲラニルトランスフェラーゼおよびCAAXプロテアーゼの阻害物質、ならびにアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイムおよび免疫療法が挙げられる。かかる阻害物質は、野生型変異体rasを含有する細胞においてras活性化を遮断することにより抗増殖剤として作用することが示された。Rasオンコジーン阻害は、Scharovsky, O.G., Rozados, V.R., Gervasoni, S.I. Matar, P. (2000), Journal of Biomedical Science. 7(4)292-8;Ashby, M.N. (1998), Current Opinion in Lipidology. 9(2)99-102;およびBioChim. Biophys. Acta, (19899) 1423(3):19-30に記載されている。
【0129】
上記のように、受容体キナーゼリガンド結合に対する抗体アンタゴニストはまた、シグナル伝達阻害物質としての機能を果たすこともできる。このグループのシグナル伝達経路阻害物質は、受容体型チロシンキナーゼの細胞外リガンド結合ドメインに対するヒト化抗生物質の使用を含む。例えば、Imclone C225 EGFR特異的抗体(Green, M.C. et al, Monoclonal Antibody Therapy for Solid Tumors, Cancer Treat. Rev., (2000), 26(4), 269-286を参照);Herceptin(登録商標)erbB2抗体(Tyrosine Kinase Signalling in Breast cancer:erbB Family Receptor Tyrosine Kniases, Breast cancer Res., 2000, 2(3), 176-183を参照);および2CB VEGFR2特異的抗体(Brekken, R.A. et al, Selective Inhibition of VEGFR2 Activity by a monoclonal Anti-VEGF antibody blocks tumor growth in mice, Cancer Res. (2000) 60, 5117-5124を参照)。
【0130】
非受容体型キナーゼ血管新生阻害物質もまた本発明において有用であり得る。血管新生関連VEGFRおよびTIE2の阻害物質はシグナル伝達阻害物質に関して上記にて記載されている(両者の受容体は受容体型チロシンキナーゼである)。erbB2およびEGFRの阻害物質が血管新生、主に、VEGF発現を阻害することが示されているので、血管新生は一般にerbB2/EGFRシグナル伝達に関連している。かくして、erbB2/EGFR阻害物質と血管新生阻害物質との組み合わせは意義がある。したがって、非受容体型チロシンキナーゼ阻害物質を本発明のEGFR/erbB2阻害物質と組み合わせて用いてもよい。例えば、VEGFR(受容体型チロシンキナーゼ)を認識しないがリガンドと結合する抗VEGF抗生物質;血管新生を阻害するインテグリン(αvβ3)の小分子阻害物質;エンドスタチンおよびアンジオスタチン(非RTK)もまた本明細書に記載したerbファミリー阻害物質と組み合わせて有用であることを立証することができる。(Bruns CJ et al (2000), Cancer Res., 60: 2926-2935;Schreiber AB, Winkler ME, and Derynck R.(1986), Science, 232: 1250-1253;Yen L et al.(2000), Oncogene 19: 3460-3469を参照)。
【0131】
免疫療法計画で用いられる薬剤もまた式(I)で示される化合物と組み合わせて有用であり得る。erbB2またはEGFRに対する免疫応答を生じさせるための多くの免疫学的ストラテジーがある。これらのストラテジーは一般に腫瘍ワクチン投与の分野におけるものである。免疫学的アプローチの効力は、小分子阻害物質を用いてerbB2/EGFRシグナル伝達経路の複合阻害により非常に増強することができる。erbB2/EGFRに対する免疫学的/腫瘍ワクチンアプローチの考察は、Reilly RT et al. (2000), Cancer Res. 60: 3569-3576;およびChen Y, Hu D, Eling DJ, Robbins J, and Kipps TJ. (1998), Cancer Res. 58: 1965-1971に見られる。
【0132】
アポトーシス促進計画で用いられる薬剤(例えば、bcl−2アンチセンスオリゴヌクレオチド)もまた本発明の組合せにおいて用いることができる。タンパク質のbcl−2ファミリーのメンバーはアポトーシスを遮断する。したがって、bcl−2のアップレギュレーションは化学療法剤耐性と関連している。上皮増殖因子(EGF)がbcl−2ファミリー(すなわち、mcl−1)の抗アポトーシスメンバーを刺激することを示している研究がある。したがって、腫瘍におけるbcl−2の発現をダウンレギュレートするように設計されたストラテジーは、臨床的有用性を立証しており、現在、第II/III相試験中であり、すなわち、Genta社のG3139 bcl−2アンチセンスオリゴヌクレオチドである。bcl−2に対してアンチセンスオリゴヌクレオチドストラテジーを使用するかかるアポトーシス促進性ストラテジーは、Water JS et al. (2000), J. Clin. Oncol. 18: 1812-1823;およびKitada S et al.(1994), Antisense Res. Dev. 4: 71-79に記載されている。
【0133】
細胞周期シグナル伝達阻害物質は細胞周期の制御に関与する分子を阻害する。サイクリン依存性キナーゼ(CDK)と称されるプロテインキナーゼのファミリー、およびサイクリンと称されるタンパク質のファミリーとそれらとの相互作用は真核生物細胞周期の進行を制御する。細胞周期の正常な進行には様々なサイクリン/CDK複合体の協調的な活性化および不活性化が必要である。細胞周期シグナル伝達のいくつかの阻害物質は開発中である。例えば、CDK2、CDK4およびCDK6を包含するサイクリン依存性キナーゼならびにそれらの阻害物質の例は、例えば、Rosania et al, Exp. Opin. Ther. Patents (2000) 10(2):215-230に記載されている。
【0134】
一の実施態様では、本発明の癌治療方法は、式Iで示される化合物および/またはその医薬上許容される塩、水和物、溶媒和物またはプロドラッグ、および少なくとも1種類の抗腫瘍剤(例えば、微小管阻害薬、白金配位錯体、アルキル化剤、抗生物質、トポイソメラーゼII阻害物質、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼI阻害物質、ホルモンおよびホルモンアナログ、シグナル伝達経路阻害物質、非受容体チロシンキナーゼ血管新生抑制剤、免疫療法薬、アポトーシス促進剤、ならびに細胞周期シグナル阻害物質からなる群から選択されるもの)の共投与を含む。
【0135】
本発明の医薬活性化合物は、PI3キナーゼ阻害物質、特にPI3Kαを選択的にまたはPI3Kδ、PI3Kβおよび/またはPI3Kγのうち1つ以上と共に調節/阻害する化合物として活性があるので、それらは、自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、癌、喘息、膵炎、多臓器機能不全、腎疾患、血小板凝集、精子運動性、移植拒絶反応、移植片拒絶反応および肺損傷から選択される病態の治療において治療的有用性を示す。
【0136】
式(I)で示される化合物が自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、癌、アレルギー、癌、喘息、膵炎、多臓器機能不全、腎疾患、血小板凝集、精子運動性、移植拒絶反応、移植片拒絶反応または肺損傷から選択される病態の治療のために投与される場合、本明細書で用いる場合、「共投与」なる用語またはその派生語は、本明細書に記載のPI3キナーゼ阻害化合物、および自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、癌、神経変性疾患、アレルギー、癌、喘息、膵炎、多臓器機能不全、腎疾患、血小板凝集、精子運動性、移植拒絶反応、移植片拒絶反応および/または肺損傷の治療に有用であることが知られているさらなる活性成分の同時投与または別々の連続投与を意味する。
【0137】
生物学的アッセイ
本発明の化合物は、下記のアッセイに従って試験され、PI3キナーゼ、特に、PI3Kαの阻害物質として見出された。例示した化合物を試験し、PI3Kαに対して活性があることを見出した。該IC50は、約1nM〜10μMの範囲にあった。該化合物の大部分は500nM以下であった;ほとんどの活性化合物は10nM以下であり、最も活性のある化合物は10nM以下であることが分かった。
【0138】
実施例1の化合物を一般に本明細書に記載のアッセイに従って試験し、少なくとも1つの実験においてPI3Kαに対して2nMと等しいIC50値を示した。
【0139】
実施例2の化合物を一般に本明細書に記載のアッセイに従って試験し、少なくとも1つの実験においてPI3Kαに対して0.7nMと等しいIC50値を示した。
【0140】
実施例5の化合物を一般に本明細書に記載のアッセイに従って試験し、少なくとも1つの実験においてPI3Kαに対して0.5nMと等しいIC50値を示した。
【0141】
実施例7の化合物を一般に本明細書に記載のアッセイに従って試験し、少なくとも1つの実験においてPI3Kαに対して0.02nMと等しいIC50値を示した。
【0142】
PI3KαTR−FRETアッセイ
アッセイの原理
Upstat(Millipore)によって生成されたキットを用いてPI3−Kinaseアッセイが開発され、最適化された。簡単に説明すると、このキットは、ユーロピウム標識項GSTモノクローナル抗体、GST標識プレクストリンホモロジー(PH)ドメインおよびストレプトアビジン−アロフィコシアニン(APC)と混合した場合にHTRF(ホモジニアス時間分解型蛍光エネルギー移動)複合体を形成するビオチン化PIP3を含有する。
【0143】
PI3−Kinase活性によって生成された非標識PIP3は、該複合体からビオチン−PIP3を離し、エネルギー移動の損失を引き起こし、かくして、シグナルの減少を引き起こす。
Millipore、PI3−Kinase(human)HTRFTM Assay、カタログ#33−017に関連する技術文書。
【0144】
アッセイプロトコール
該化合物を、ポリプロピレン120μLマザープレートのカラム1からカラム12まで、およびカラム13からカラム24まで段階希釈し(100%DMSOで3倍)、カラム6および18はDMSOのみを含有するままにしておき、11種類の濃度の各試験化合物を得る。滴定が行われるとすぐに、0.1μLをアッセイプレート(Greiner 784075)に移す。このアッセイプレートは3つの対照を含む:DMSOを入れたカラム6、ならびに20μMワートマニンおよび40μM PIP3を交互に入れたカラム18。ワートマニン対照は、ウェル18A、C、E、G、I、K、M、Oにおいて、ハミングバートまたは類似の装置によって、11mMワートマニンを>20μL含有するGreinerポリプロピレン120μLマザープレートからアッセイプレートへ分注される(100%DMSO中1mMワートマニン0.1μL)。PIP3対照は、マトリックスピペットによって手動でプレートに分注される(ウェル18B、D、F、H、J、L、N、Pに1X Reactionバッファー中200μM PIP3 1μL)。
【0145】
PI3−Kinaseアッセイは、Upstat(Millipore)によって生成されたキットを用いて開発され、最適化された。アッセイキット(cat:33−017)は、7つの試薬を含有する:1)4X Reaction Buffer、2)PIP2(1mM)、3)Stop A、4)Stop B、5)Detecton Mix A、6)Detection Mix B、7)Detection Mix C。さらに、以下のアイタムが得られるか、または購入される:PI3Kinase(自社製)、4X PI3K Detection Buffer(Millipore)、ジチオスレイトール(Sigma、D−5545)、Adenosine−5’−triphosphate(ATP、Sigma、A−6419)、PIP3(1,2−ジオクタノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホイノシチル−3,4,5−トリホスフェート]テトラアンモニウム塩)(Avanti polar lipids、850186P)、DMSO(Sigma、472301)、ワートマニン(Sigma、W−1628)。
【0146】
貯蔵液を脱イオン水で1:4に希釈することによって1X PI3Kinase Reaction Bufferを調製し、使用日に、新しく調製したDTTを最終濃度5mMで添加する。Multidrop Combiを使用して、全ウェルに、2.5μLの2X酵素溶液、1X反応バッファー中PI3Kαを添加することによって酵素添加および化合物プレインキュベーションを始める。プレートを室温で15分間インキュベートする。基質添加および反応開始は、Multidrop Combiを使用して、全ウェルに、2.5μLの2X基質溶液、1X反応バッファー中PIP2およびATPを添加することによって行われる。プレートを室温で1時間インキュベートする。Multidrop Combiを使用して、全ウェルに、停止溶液(5:1の比率でStop AおよびStop Bを混合する、すなわち:合計容量6000μLの場合、Stop A 5000μLおよびStop B 1000μLを混合する)を添加することによって、反応をクエンチする。次いで、Multidrop Combiを使用して、全ウェルに、Detection Reagents Solution(Detection mix C、Detection mix A、およびDetection mix Bを18:1:1の比率で一緒に混合する、すなわち:合計容量6000μLの場合、Detection mix C 5400μL、Detection mix A 300μL、およびDetection mix B 300μLを混合する、注:この溶液は使用の2時間前に調製すべきである)を添加し、プレートにカバーをかけて、光への暴露を避ける。1時間インキュベートし、EnvisionプレートリーダーでHTRFシグナルを評価する。
【0147】
データ解析
ビオチニル化PIP3置換を引き起こすプロダクトフォーメーションに起因するPI3−キナーゼシグナルの喪失は、生成物の増加および時間の経過の両方に関して非線形である。この非線形検出は、IC50算出の正確さに影響を及ぼす;したがって、より正確なIC50を得るために補正ファクターまたは逆算が必要である。補正は、各アッセイプレート中にて形成された生成物のアッセイプレート(カラム6および18)の標準ウェルによって異なる。全データを、最初に、ドナー蛍光に対するアクセプターの比を算出することによって正規化し、各化合物濃度についての阻害%を以下のとおり算出した:阻害%=100*(シグナル−CtrlB)/(CtrlA−CtrlB)[ここで、CtrlA=PI3Kinaseα+10μMワートマニン、CtrlB=PI3Kinaseα+DMSO]。次いで、IC50を算出して、阻害%データを次式に当て嵌めた:阻害%=min+(max−min)/(1+([阻害物質]/IC50)^n)[ここで、minは、阻害物質を用いない(典型的には0%)阻害%であり、maxは、飽和の阻害物質(典型的には100%)を用いる阻害%であり、nは、Hill勾配(典型的には1)である]。最後に、IC50をpIC50に変換し(pIC50=−log(IC50))、プレート対照および下記式を用いることによってpIC50値を補正した:pIC50(補正)=pIC50(測定値)+log10((CtrlA−CtrlB)/(CtrlB−CtrlC))[ここで、CtrlおよびCtrlは上記定義と同じであり、CtrlC=10μM PI(3,4,5)P3、ビオチン化PI(3,4,5)P3の100%置換]。
【0148】
PI3Kα Leadseeker SPAアッセイ
アッセイ原理
SPAイメージングビーズは、シンチラント(scintillant)を含有するミクロスフェアであり、可視スペクトルの赤領域において発光する。結果として、これらのビーズは、理論的にはViewluxのようなCCD画像装置での使用に適する。この系に用いられるLeadseekerビーズは、ポリエチレンイミンと結合したポリスチレンビーズである。アッセイ混合物に加えられた場合、該ビーズは基質(PIP2)および生産物(PIP3)の両方を吸収する。吸着したP33−PIP3は、シグナル増加を引き起こし、ADU(アナログ−デジタル変換単位)として測定される。このプロトコールは、His−p110/p85 PI3Kαを用いるアッセイのためのPEI−PS Leadseekerビーズの使用を詳述する。
【0149】
アッセイプロトコール
固体化合物を典型的には、384ウェル平底低容量プレート(Greiner 784075)の全てのウェル(カラム6および18を除く)中に100%DMSOの0.1μlと共に入れる。該化合物を、プレートのカラム1からカラム12まで、およびカラム13からカラム24まで段階希釈し(100%DMSOで3倍)、カラム6および18はDMSOのみを含有するままにしておき、11種類の濃度の各試験化合物を得る。
【0150】
アッセイバッファーは、MOPS(pH6.5)、CHAPSおよびDTTを含有する。PI3KαおよびPIP2(L−α−D−myo−ホスファチジルイノシトール4,5−ビスホスフェート[PI(4,5)P2]3−O−ホスホ結合型D(+)−sn−1,2−ジ−O−オクタノイルグリセリル,CellSignals #901)を混合し、化合物と一緒にプレート中にて30分間インキュベートした後、P33−ATPおよびMgCl2を添加して(試薬はZoomを用いて加える)反応を開始する。酵素不含ウェル(カラム18)は、典型的には、低対照を決定するために用いる。PBS/EDTA/CHAPS中におけるPEI−PS Leadseekerビーズを加えて(Multidropによる)、反応をクエンチし、プレートを少なくとも1時間(典型的には一夜)インキュベートした後、遠心分離する。Viewlux検出器を用いてシグナルを決定し、次いで、濃度応答曲線の作成のために、曲線適合ソフトウェア(Activity Base)中にインポートする。高対照(C1,カラム6中のDMSO 0.1μl、列A−P)および低対照(C2,カラム18中のバッファー中40uM PIP2 5μl,列A−P)に相対的な活性阻害パーセントを、100*(1−(U1−C2)/(C1−C2))を用いて算出した。50%阻害を生じる試験化合物の濃度を式:
y=((Vmax*x)/(K+x))+Y2
(式中、「K」はIC50に等しい)
を用いて決定した。IC50値をpIC50値、すなわち、モル濃度における−logIC50に変換した。
【0151】
細胞アッセイ
1日目
●昼前に細胞を蒔く。
・透明平底96ウェルプレート(f.v.105μl)中、10K細胞/ウェル。
・最後のカラムの最後の4つのウェルに培地だけを入れる。
・37℃インキュベーター中に一夜置く。
●化合物プレート
・ポリプロピレン丸底96ウェルプレート中、1プレートにつき8化合物、各11点滴定(3倍段階希釈)、最後のカラムにDMSO(細胞上0.15%f.c.)を調製する。
・最初のウェル中に15μl、残りにDMSO 10μl;最初のウェルから5μlを取り、次のウェルに混合し、プレート全体にわたって続ける(最後のカラムを除く);ホイル蓋で閉じ、4℃で置く。
【0152】
2日目
●溶解バッファー阻害物質(4℃/−20℃)および化合物プレート(4℃)を取り出し、ベンチ上で解凍し;1x Tris洗浄バッファー(WB)を調製して、プレートウォッシャーのリサーバーを満たし、ベンチサプライを充電し(MiliQを用いる)、遠心機の電源を入れて冷やす。
●MSDプレートをブロックする。
・20mlの3%ブロッキング溶液/プレート(WB 20ml中におけるブロッカーA 600mg)を作成し、150μl/ウェルを加え、RTで少なくとも1時間インキュベートする。
●化合物を加える(ブロッキングしながら)。
・各化合物プレートに、1ウェルにつき300μlの生育培地(RPMI w/Q,10%FBS)を加える(化合物の682倍希釈)。
・化合物希釈液5μlを二連プレート上の各ウェル(f.v.110μl)に加える。
・37℃インキュベーター中、30分間置く。
●ライゼートを調製する。
・MSD溶解バッファーを調製し;10mlにつき、プロテアーゼ阻害剤溶液200μl、ホスファターゼ阻害物質I&IIの各100μlを加える(使用するまで氷上で維持する)。
・インキュベーション後、プレートを取り出し、プレートウォッシャーで培地を吸引し、冷PBSで1回洗浄し、1ウェルにつき80μlのMSD溶解バッファーを加え;振盪器上、4℃で30分間以上インキュベートする。
・冷却下、2500rpmで10分間スピンし;使用するまで、プレートを4℃の遠心機中に放置する。
●AKT二連アッセイ
・プレートを洗浄し(プレートウォッシャー中、200μl/ウェルのWBで4回);ペーパータオル上でプレートを軽くたたいて吸水させる。
・1ウェルにつき60μlのライゼートを加え、振盪器上、RTで1時間インキュベートする。
・インキュベーションの間、検出Ab(3ml/プレート;2ml WBおよび1mlブロッキング溶液w/Ab 10nMにて)を調製し;上記の洗浄工程を繰り返す。
・1ウェルにつき25μlのAbを加え、振盪器上、RTで1時間インキュベートし;上記の洗浄工程を繰り返す。
・1ウェルにつき150μlの1xリードバッファー(貯蔵液をddH2O中で4倍希釈する,20ml/プレート)を加え、すぐに読み取る。
●分析
・各化合物濃度にて、データポイントの全てを観察する。
・最も高い阻害剤濃度由来のデータポイントは、DMSO対照の70%以上でなければならない。
・二連で実施したIC50は、お互いに2倍以内でなければならない(略式テンプレートにおいて警告が与えられない)。
・Y minは、ゼロより大きくなければならない。両方のminが警告を受けた場合(>35)、化合物を不活性と記載する(IC50=>最大用量)。1つのminのみが警告を受けた場合、まだ50以下であるが、IC50と記載する。
・曲線から30%以上離れたいずれのデータポイントも考慮しない。
【0153】
細胞成長/死アッセイ:
BT474、HCC1954およびT−47D(ヒト胸部)を5%CO2インキュベーター中37℃で、10%胎仔ウシ血清を含有するRPMI−1640中にて培養した。アッセイの2〜3日前に細胞をT75フラスコ(Falcon #353136)に分け、アッセイのために採取する時に約70〜80%のコンフルエンスになる密度で設定した。細胞を、0.25%トリプシン−EDTA(Sigma #4049)を用いて採取した。細胞のカウントは、Trypan Blue排除染色を用いて細胞懸濁液で行った。次いで、細胞を384ウェル黒色平底ポリスチレン(Greiner #781086)中、1ウェルにつき48μlの培養培地中、1,000細胞/ウェルにて蒔いた。全プレートを5%CO2にて37℃で一夜置き、翌日に試験化合物を加えた。0日(t=0)測定のために、1つのプレートをCellTiter−Glo(Promega #G7573)で処理し、下記のように読み取った。試験化合物を透明底ポリプロピレン384ウェルプレート(Greiner#781280)中、連続2倍希釈を用いて調製した。これらの希釈液4μlを培養培地105μlに加え、溶液を混合した後、これらの希釈液2μlを細胞プレートの各ウェルに加えた。全ウェル中におけるDMSO最終濃度は0.15%であった。細胞を37℃、5%CO2にて72時間インキュベートした。化合物と共に72時間インキュベートした後、各プレートを展開し、読み取った。CellTiter−Glo試薬をアッセイプレートに、ウェル中の細胞培養容量と等量を用いて加えた。プレートを約2分間振盪し、室温で約30分間インキュベートし、化学発光シグナルをAnalyst GT(Molecular Devices)リーダーで読み取った。結果は、t=0のパーセントで表し、化合物濃度に対してプロットした。細胞成長阻害は、各化合物について、XLfitソフトウェアを用いる4または6パラメーター曲線適合で用量応答をフィッティングし、t=0としてY minおよびDMSO対照としてY maxを用いて、細胞成長の50%を阻害した濃度(gIC50)を決定することによって決定された。バックグラウンド補正のために、細胞不含ウェル由来の値を全ての試料から差し引いた。
【0154】
付加的な参考文献:
本発明の化合物はまた、PI3Kα、PI3Kδ、PI3KβおよびPI3Kγにおけるそれらの阻害活性を決定するために、下記の参考文献に従って試験することができる:
【0155】
全PI3Kイソ型について:
1. ヒトクラスIaホスホイノシチド3−キナーゼイソ型のクローニング、発現、精製および特徴付け:Meier, T.I.; Cook, J.A.; Thomas, J.E.; Radding, J.A.; Horn, C.; Lingaraj, T.; Smith, M.C. Protein Expr. Purif., 2004, 35(2), 218.
2. ホスホイノシチドキナーゼおよびホスファターゼ活性の検出のための競合的蛍光偏光アッセイ:Drees, B.E.; Weipert, A.; Hudson, H.; Ferguson, C.G.; Chakravarty, L.; Prestwich, G.D. Comb. Chem. High Throughput. Screen., 2003, 6(4), 321.
【0156】
PI3Kγについて:WO 2005/011686 A1
【0157】
本発明の範囲内の医薬活性化合物は、PI3キナーゼ阻害を必要とする哺乳動物(特に、ヒト)においてPI3キナーゼ阻害剤として有用である。
【0158】
したがって、本発明は、PI3キナーゼ阻害に関連する疾患、特に、自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、喘息、膵炎、多臓器機能不全、腎疾患、血小板凝集、癌、精子運動性、移植拒絶反応、移植片拒絶反応および肺損傷、ならびにPI3キナーゼ調節/阻害を要する他の疾患の治療方法であって、式(I)で示される有効化合物またはその医薬上許容される塩、水和物、溶媒和物またはプロドラッグを投与することを含む方法を提供する。式(I)で示される化合物はまた、PI3阻害物質として作用するそれらの能力のために上記適応病態の治療方法を提供する。該薬物は、静脈内投与、筋肉内投与、経口投与、皮下投与、皮内投与および非経口投与を包含するがこれらに限定されるものではない慣用的な投与経路で患者に投与することができる。
【0159】
本発明の医薬活性化合物は、カプセル剤、錠剤または注射製剤のような好都合な投与剤形に取り込まれる。固体または液体の医薬担体が用いられる。固体担体としては、デンプン、ラクトース、硫酸カルシウム・二水和物、白土、シュークロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸が挙げられる。液体担体としては、シロップ、落花生油、オリーブ油、生理食塩水および水が挙げられる。同様に、該担体または希釈剤は、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルのような持続放出物質を単独でまたはワックスと共に含むことができる。固体担体の量は大きく異なるが、好ましくは、一投与単位あたり約25mg〜約1gである。液体担体を用いる場合、製剤は、シロップ剤、エリキシル剤、乳剤、ソフトゼラチンカプセル剤、アンプルのような滅菌注射液、または水性もしくは非水性液体懸濁液剤の剤形である。
【0160】
該医薬製剤は、所望の経口または非経口製剤を得るために、成分の混合、造粒、および錠剤形態について必要な場合には圧縮、または適当な場合には混合、充填および溶解を含む薬剤師の慣用的な技術に従って調製される。
【0161】
上記した医薬投与単位での本発明の医薬活性化合物の用量は、好ましくは活性化合物0.001〜100mg/kg、好ましくは、0.001〜50mg/kgの範囲から選択される有効な無毒性量である。PI3K阻害物質を必要とするヒト患者を治療する場合、選択された用量は、好ましくは1日1〜6回、経口または非経口投与される。非経口投与の好ましい形態としては、局所投与、直腸投与、経皮投与、注射による投与、および輸液による連続投与が挙げられる。ヒト投与のための経口投与単位は、好ましくは、活性化合物0.05〜3500mgを含有する。低投与量を使用する経口投与が好ましい。しかしながら、高投与量での非経口投与もまた、患者にとって安全かつ好都合である場合には使用することができる。
【0162】
投与されるべき最適な用量は、当業者が容易に決定することができ、使用される個々のPI3キナーゼ阻害物質、製剤の強度、投与方法、および病態の進行によって異なる。患者の年齢、体重、食事および投与の時を含む治療される個々の患者に依存するさらなる因子によって用量を調節する必要が生じる。
【0163】
ヒトを含む哺乳動物におけるPI3キナーゼ阻害活性を誘発する本発明の方法は、かかる活性を必要とする対象体に本発明の医薬活性化合物の有効なPI3キナーゼ調節/阻害量を投与することを含む。
【0164】
本発明はまた、PI3キナーゼ阻害物質として用いるための薬剤の製造における式(I)で示される化合物の使用を提供する。
【0165】
本発明はまた、治療に用いる薬剤の製造における式(I)で示される化合物の使用を提供する。
【0166】
本発明はまた、自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、喘息、膵炎、多臓器機能不全、腎疾患、血小板凝集、癌、精子運動性、移植拒絶反応、移植片拒絶反応および肺損傷の治療に用いるための薬剤の製造における式(I)で示される化合物の使用を提供する。
【0167】
本発明はまた、式(I)で示される化合物および医薬上許容される担体を含む、PI3阻害物質として用いるための医薬組成物を提供する。
【0168】
本発明はまた、式(I)で示される化合物および医薬上許容される担体を含む、自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、喘息、膵炎、多臓器機能不全、腎疾患、血小板凝集、癌、精子運動性、移植拒絶反応、移植片拒絶反応および肺損傷の治療に用いるための医薬組成物を提供する。
【0169】
本発明の化合物を本発明に従って投与した場合、許容されない毒物学的効果は考えられない。
【0170】
加えて、本発明の医薬活性化合物は、PI3キナーゼ阻害物質と組み合わせて使用した場合に有用性を有することが知られている化合物を含むさらなる活性成分と共投与することができる。
【0171】
当業者は、さらに詳述しなくとも上記説明を用いて本発明を最大限に利用することができると考えられる。したがって、以下の実施例は、単なる説明と解釈され、如何なる場合も本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0172】
実験的詳細
本発明の化合物は、下記の一般的な方法によって製造することができる。
【0173】
【化10】

条件:a)アミン(RH)、DBU、BOP試薬、CH3CN;b)R'B(OH)2、PdCl2dppf、NaHCO3飽和水溶液、ジオキサン、マイクロ波、120℃。
【0174】
【化11】

条件:a)DIEA、POCl3、110℃;b)アミン(RH)、CH2Cl2;c)R'B(OR)2、PdCl2dppf、NaHCO3飽和水溶液、ジオキサン、110℃。
【0175】
実施例1
N−{5−[4−(ジメチルアミノ)ピリド[3,2−d]ピリミジン−6−イル]−3−ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド
【化12】

【0176】
実施例2
N−{5−[4−(4−モルホリニル)ピリド[3,2−d]ピリミジン−6−イル]−3−ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド
【化13】

【0177】
実施例1および2は、以下の方法で製造した。
【0178】
a)N−(5−ブロモ−3−ピリジニル)ベンゼンスルホンアミド
室温で窒素下にて3−アミノ−5−ブロモピリジン(130ミリモル)のピリジン(50mL)中溶液に塩化ベンゼンスルホニル(130ミリモル)を添加した。フラスコが活発になった。反応物を室温で15分間撹拌した。反応混合物をジクロロメタン(300mL)で希釈し、重炭酸ナトリウム飽和水溶液(200mL)を徐々に添加してクエンチした;ガスの発生が観察された。白色沈殿物が生じ、これを濾過により回収し、真空オーブン(80℃)中にて一夜乾燥させて、標記化合物を白色固体として得た(62%)。有機層を水性層と分離し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空濃縮して、橙−ピンク色の固体を得た。該固体をジクロロメタン(40mL)と一緒にトリチュレートして、さらに標記化合物をピンク色の固体として得た(33%)。MS(ES)+ m/e 312.9, 314.8[M+H]+
【0179】
b)N−[5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−3−ピリジニル]ベンゼンスルホンアミド
オーブン乾燥した密閉加圧管中にて、N−(5−ブロモ−3−ピリジニル)ベンゼンスルホンアミド(31.9ミリモル)、ビス(ピナコラト)ジボラン(35.1ミリモル)、酢酸カリウム(96ミリモル)
およびジクロロ[1,1'−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)−ジクロロメタン付加物(1.6ミリモル)の1,4−ジオキサン(75mL)中混合物を100℃で3時間撹拌した。該反応混合物を室温に冷却し、Celiteで濾過した。Celiteのパッドを酢酸エチル(200mL)で洗浄し、濾液を真空濃縮して、茶色の固体を得た。この茶色の固体をジクロロメタン(100mL)と一緒にトリチュレートし、次いで、真空オーブン中で乾燥させて、標記化合物の酢酸塩を白色固体として得た(60%)。濾液を真空濃縮し、再度、該固体をジクロロメタンと一緒にトリチュレートして、標記化合物をオフホワイト色の固体として得た(24%)。MS(ES)+ m/e 278.9(ボロン酸[M+H]+)。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δppm 1.29(s,12H), 7.58(d,J=7.83Hz,2H), 7.63(d,J=7.33Hz,1H), 7.69(dd,J=2.65,1.39Hz,1H), 7.72-7.79(m,2H), 8.40(d,J=2.78Hz,1H), 8.43(d,J=1.26Hz,1H), 10.58(s,1H).
【0180】
c)N−{5−[4−(ジメチルアミノ)ピリド[3,2−d]ピリミジン−6−イル]−3−ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド、5−{5−[4−(4−モルホリニル)ピリド[3,2−d]ピリミジ−6−イル]−3−ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド
6−クロロピリド[3,2−d]ピリミジン−4(1H)−オン(1.10ミリモル、WO2006/135993を参照)およびベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム・ヘキサフルオロホスフェート(1.43ミリモル)のアセトニトリル(6.0mL)中混合物に1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(1.65ミリモル)を添加した。室温で15分間後、モルホリン(1.65ミリモル)を滴下し、反応混合物を室温で18時間撹拌し、60℃で4時間撹拌した。反応物を水(60mL)およびブライン(10mL)中に注ぎ、有機物質を酢酸エチル(3×55mL)で抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(20〜50%酢酸エチル/ヘキサン)によって精製して、6−クロロ−N,N−ジメチルピリド[3,2−d]ピリミジン−4−アミンおよび6−クロロ−4−(4−モルホリニル)ピリド[3,2−d]ピリミジンの2:1混合物(118mg)を得た。ピリドピリミジン(118mg)、N−[5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−3−ピリジニル]ベンゼンスルホンアミド(0.678ミリモル)およびジクロロ[1,1'−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロロメタン付加物(0.017ミリモル)の重炭酸ナトリウム飽和水溶液(0.5mL)および1,4−ジオキサン(2.5mL)中混合物にマイクロ波を120℃で30分間照射した。該反応混合物を水(70mL)およびブライン(10mL)中に注ぎ、有機物質を酢酸エチル(3×60mL)で抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜10%メタノール/酢酸エチル)により精製して、合わせた生成物混合物を得た。次いで、この生成物混合物を、70:30:0.1のヘプタン:エタノール:イソプロピルアミンの溶離液を用いてprepHPLC(Chiral OJ0H 21x250mmカラム)によって分離して、N−{5−[4−(ジメチルアミノ)ピリド[3,2−d]ピリミジン−6−イル]−3−ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド(70mg;MS(ES)+ m/e 407[M+H]+)およびN−{5−[4−(4−モルホリニル)ピリド[3,2−d]ピリミジン−6−イル]−3−ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド(33mg;MS(ES)+ m/e 449[M+H]+)を得た。
【0181】
実施例3
N−{2−クロロ−5−[4−(4−モルホリニル)ピリド[3,2−d]ピリミジン−6−イル]−3−ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド
【化14】

【0182】
a)4,6−ジクロロピリド[3,2−d]ピリミジン
6−クロロピリド[3,2−d]ピリミジン−4(1H)−オン(12.9ミリモル)のPOCl3(267ミリモル)中溶液にジイソプロピルアミン(18.9ミリモル)を5分間にわたって滴下した。該反応混合物を加熱還流し(110℃)、6時間撹拌した。室温に冷却した後、反応混合物を真空濃縮した。得られた固体をジクロロメタンで希釈し、pHが7〜9になるまで、0.5N重炭酸ナトリウム水溶液でゆっくりと処理した。該混合物を濾過して不溶物を除去し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。黒ずんだ溶液をシリカゲルのパッドで濾過し、10%酢酸エチル/ジクロロメタンで洗浄した。濾液を真空濃縮し、残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(0〜5%酢酸エチル/ジクロロメタン)によって精製した。純粋な生成物フラクションを回収し、真空濃縮し、ヘキサンと一緒にトリチュレートし、濾過し、真空乾燥して、生成物をオフホワイト色の固体として得た(収率78%)。MS(ES)+ m/e 199.9[M+H]+
【0183】
b)6−クロロ−4−(4−モルホリニル)ピリド[3,2−d]ピリミジン
4,6−ジクロロピリド[3,2−d]ピリミジン(7.5ミリモル)の0℃のジクロロメタン(45mL)中溶液にモルホリン(16.0ミリモル)を滴下した。添加後、急速に懸濁液が生じた。該反応混合物を室温に加温し、2時間撹拌し、塩化アンモニウム水溶液で洗浄した。次いで、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空蒸発させた。残留物をヘキサンと一緒にトリチュレートし、濾過し、真空乾燥させて、生成物を白色固体として得た(収率92%)。MS(ES)+ m/e 250.9[M+H]+
【0184】
c)N−(5−ブロモ−2−クロロ−3−ピリジニル)ベンゼンスルホンアミド
3−アミノ−5−ブロモ−2−クロロピリジン(24ミリモル)のジクロロメタン(50mL)中撹拌溶液にピリジン(37ミリモル)を添加し、塩化ベンゼンスルホニル(35ミリモル)を5分間にわたって滴下した。反応混合物を室温で18時間撹拌し、真空下にて蒸発乾固させた。残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(15%ヘキサン/ジクロロメタン、次いで、15%ヘキサン/ジクロロメタン中0〜5%酢酸エチル)によって精製した。溶媒を蒸発させている間に、生成物が沈殿した。得られたスラリーをヘキサンで希釈し、濾過し、真空乾燥させて、標記化合物を白色固体として得た(2.89g、34%)。MS(ES)m/e 346.7(M+H)+。
【0185】
d)N−[2−クロロ−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−3−ピリジニル]ベンゼンスルホンアミド
ガラス加圧容器にN−(5−ブロモ−2−クロロ−3−ピリジニル)ベンゼンスルホンアミド(11.5ミリモル)、ビス(ピナコラト)ジボロン(12.21ミリモル)、酢酸カリウム(34.6ミリモル)、ジクロロ[1,1'−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)−ジクロロメタン付加物(0.367ミリモル)およびジオキサン(75mL)を加えた。反応混合物を窒素でパージし、密閉し、110℃で4時間撹拌した。室温に冷却した後、反応混合物を蒸発乾固し、酢酸エチルに溶解し、シリカゲルのパッドで濾過し、酢酸エチルですすいで不溶物およびほとんどの着色不純物を除去した。薄茶色の濾液を真空濃縮し、次いで、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(5〜100%酢酸エチル/ジクロロメタン)によって精製した。純粋な生成物フラクションを回収し、真空蒸発させた。残留物をヘキサンと一緒にトリチュレートし、濾過し、真空濃縮して、標記化合物をオフホワイト色の固体として得た(5.85ミリモル、収率51%)。MS(ES)+ m/e 313.0[M+H]+(ボロン酸)。
【0186】
e)N−{2−クロロ−5−[4−(モルホリニル)ピリド[3,2−d]ピリミジン−6−イル]−3−ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド
ガラス加圧容器に6−クロロ−4−(4−モルホリニル)ピリド[3,2−d]ピリミジン(2.393ミリモル)、N−[2−クロロ−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−3−ピリジニル]ベンゼンスルホンアミド(2.53ミリモル)、ジクロロ[1,1'−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)−ジクロロメタン付加物(0.122ミリモル)、ジオキサン(15mL)および重炭酸ナトリウム飽和水溶液(3mL)を入れた。該反応混合物を窒素でパージし、密閉し、110℃で18時間撹拌した。室温に冷却した後、反応混合物を真空下にて蒸発乾固させ、残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(48%メタノール/酢酸エチル)によって精製した。純粋な生成物フラクションを合わせ、真空濃縮した。生成物が酢酸エチルから沈殿し始めた。少量のヘキサン(約20%)を添加し、沈殿物を濾過し、真空乾燥させて、標記生成物を薄黄色固体として得た(1.570ミリモル、収率66%)。MS(ES)+ m/e 483.1[M+H]+
【0187】
実施例4
2,4−ジフルオロ−N−{5−[4−{4−モルホリニル)ピリド[3,2−d]ピリミジン−6−イル]−3−ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド
【化15】

【0188】
a)N−(5−ブロモ−3−ピリジニル),4−ジフルオロベンゼンスルホンアミド
5−ブロモ−3−ピリジンアミン(104ミリモル)のジクロロメタン(55mL)中溶液をトリエチルアミン(230ミリモル)および塩化2,4−ジフルオロベンゼンスルホニル(235ミリモル)のジクロロメタン(300mL)中撹拌溶液に約60分間にわたって滴下した。1.5時間後、さらなる塩化2,4−ジフルオロベンゼンスルホニル(53.4ミリモル)を添加し、2日後、さらに塩化2,4−ジフルオロベンゼンスルホニル(47.0ミリモル)およびトリエチルアミン(108ミリモル)を添加した。1時間後、得られたモノおよびビス−スルホニル化生成物の混合物を真空濃縮し、残留物をメタノール(500mL)に懸濁し、次いで、濾過して、N−(5−ブロモ−3−ピリジニル)−N−[(2,4−ジフルオロフェニル)スルホニル]−2,4−ジフルオロベンゼンスルホンアミドを白色固体として得た(54.4ミリモル、52%)。
ビス−スルホニル化中間体(54.4ミリモル)の1,4−ジオキサン(300mL)中溶液を80℃に加熱した。水酸化カリウム(322ミリモル)の水(133mL)中溶液を添加し、得られた反応混合物を還流させながら0.5時間加熱した。ジオキサンを真空除去し、得られたオフホワイト色の懸濁液を濃塩酸で酸性化して固体を溶解させ、次いで、新しいアイボリー色の固体を生じさせた。懸濁液を30分間撹拌し、次いで、濾過し、水ですすいだ。固体を真空乾燥させ、次いで、P25で乾燥させて、標記化合物をアイボリー色の固体として得た(定量的収率)。ESMS m/e 347, 349[M+H]+
【0189】
b)2,4−ジフルオロ−N−{5−[4−(4−モルホリニル)ピリド[3,2−d]ピリミジン−6−イル]−3−ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド
ガラス加圧容器にN−(5−ブロモ−3−ピリジニル)−2,4−ジフルオロベンゼンスルホンアミド(2.005ミリモル)、ビス(ピナコラト)ジボロン(2.363ミリモル)、酢酸カリウム(6.11ミリモル)、ジクロロ[1,1'−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)−ジクロロメタン付加物(0.061ミリモル)およびジオキサン(20mL)を入れた。該反応混合物を窒素でパージし、密閉し、110℃で18時間撹拌した。次いで、該反応混合物に6−クロロ−4−(4−モルホリニル)ピリド[3,2−d]ピリミジン(1.995ミリモル)、ジクロロ[1,1'−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)−ジクロロメタン付加物(0.061ミリモル)および重炭酸ナトリウム飽和水溶液(4mL)を添加した。該反応混合物を密閉し、110℃で4時間撹拌した。室温に冷却した後、混合物を真空下にて蒸発乾固させ、次いで、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(5〜10%メタノール/酢酸エチル)によって精製した。純粋な生成物フラクションを合わせ、蒸発乾固させた。残留物を少量の酢酸エチル/ヘキサンと一緒にトリチュレートし、濾過し、真空乾燥させて、標記生成物を淡い褐色の固体として得た(1.480ミリモル、収率74%)。MS(ES)+ m/e 485.1[M+H]+
【0190】
実施例5
N−{2−(メチルオキシ)−5−[4−(4−モルホリニル)ピリド[3,2−d]ピリミジン−6−イル]−3−ピリジニル}シクロプロパンスルホンアミド
【化16】

【0191】
a)5−ブロモ−2−(メチルオキシ)−3−ニトロピリジン
5−ブロモ−2−クロロ−3−ニトロピリジン(86ミリモル)の0℃のメタノール(75mL)中撹拌溶液にメタノール中25%w/wメトキシド(20mL、87ミリモル)およびメタノール(20mL)の溶液を10分間にわたって滴下した。0℃で1時間撹拌した後、反応物を室温に加温し、18時間撹拌した。反応物を真空濃縮して容量を半分にし、次いで、氷水(約500mL)中に注いだ。生じた沈殿物を濾過し、冷水で洗浄し、真空乾燥させて、標記生成物を薄黄色固体として得た(98%)。MS(ES)+ m/e 233.2[M+H]+。
【0192】
b)5−ブロモ−2−(メチルオキシ)−3−ピリジンアミン
5−ブロモ−2−(メチルオキシ)−3−ニトロピリジン(82ミリモル)の酢酸エチル(300mL)中溶液に塩化スズ(II)・二水和物(328ミリモル)を添加した。該反応混合物を還流させながら3時間撹拌した。(注意:約10分後におさまった初期発熱の間、加熱浴を一時的に外した。)室温に冷却した後、該混合物を真空濃縮して薄黄色のスラリーを得た。該スラリーを6N水酸化ナトリウム水溶液(300mL)、氷水(300mL)およびジクロロメタン(300mL)中に注ぎ、ほとんど溶解するまで、2時間撹拌した。少量の不溶物を濾去し、有機相を分取し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させた。得られた茶色の油状物をヘキサンと一緒にトリチュレートして固体を得、これを濾過し、真空乾燥させて、標記生成物を薄い緑色の固体として得た(81%)。MS(ES)+ m/e 202.8[M+H]+。
【0193】
c)N−[5−ブロモ−2−(メチルオキシ)−3−ピリジニル]シクロプロパンスルホンアミド
5−ブロモ−2−(メチルオキシ)−3−ピリジンアミン(8.13ミリモル)の無水ピリジン(20mL)中溶液を塩化シクロプロパンスルホニル(9.75ミリモル)で滴下処理し、次いで、室温で20時間撹拌した。得られたスラリーを真空濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(30%ヘキサン/ジクロロメタン)によって精製した。合わせた生成物フラクションを真空濃縮して、標記化合物をアイボリー色の固体として得た(60%)。MS(ES)+ m/e 306.9, 309.0[M+H]+
【0194】
d)N−{2−(メチルオキシ)−5−[4−(4−モルホリニル)ピリド[3,2−d]ピリミジン−6−イル]−3−ピリジニル}シクロプロパンスルホンアミド
20mL加圧管に1,4−ジオキサン(8mL)中のN−[5−ブロモ−2−(メチルオキシ)−3−ピリジニル]シクロプロパンスルホンアミド(0.977ミリモル)、ビス(ピナコラト)ジボロン(1.074ミリモル)、ジクロロ[1,1'−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)−ジクロロメタン付加物(0.04ミリモル)および酢酸カリウム(2.54ミリモル)を添加して、褐色の懸濁液を得た。反応混合物を100℃で1時間撹拌した。該混合物を室温に冷却し、6−クロロ−4−(4−モルホリニル)ピリド[3,2−d]ピリミジン(0.977ミリモル)および1N重炭酸ナトリウム水溶液(2.54ミリモル)を添加した。該反応混合物を100℃で加熱し、さらに8時間撹拌した。該混合物を室温に冷却し、Celiteおよび硫酸ナトリウムで濾過し、シリカゲルカラムに負荷した。フラッシュクロマトグラフィー(10〜100%酢酸エチル/ヘキサン)によって精製して、標記生成物を黄色の固体として得た。この固体を酢酸エチル/ジエチルエーテルから沈殿させ、濾過し、真空乾燥させて、オフホワイト色の固体を得た(200mg)。MS(ES)+ m/e 443[M+H]+
【0195】
実施例6
2,4−ジフルオロ−N−{2−(メチルオキシ)−5−[4−(4−モルホリニル)ピリド[3,2−d]ピリミジン−6−イル]−3−ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド
【化17】

【0196】
a)N−[5−ブロモ−2−(メチルオキシ)−3−ピリジニル]−2,4−ジフルオロベンゼンスルホンアミド
5−フセロモ−2−(メチルオキシ)−3−ピリジンアミン(100ミリモル)のピリジン(200mL)中冷溶液(0℃)に塩化2,4−ジフルオロベンゼンスルホニル(100mL)を15分間にわたって除去に添加した(反応は不均一になった)。氷浴を外し、該混合物を周囲温度で16時間撹拌し、反応物を水(500mL)で希釈し、固体を濾去し、多量の水で洗浄した。沈殿物を真空オーブン中で50℃で乾燥させて、標記生成物をアイボリー色の固体として得た(収率32%)。MS(ES) m/e 380.9, 379.0(M+H)+
【0197】
b),4−ジフルオロ−N−{2−(メチルオキシ)−5−[4−(4−モルホリニル)ピリド[3,2−d]ピリミジン−6−イル]−3−ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド
20mL加圧管に1,4−ジオキサン(8mL)中のN−[5−ブロモ−2−(メチルオキシ)−3−ピリジニル]−2,4−ジフルオロベンゼンスルホンアミド(0.923ミリモル)、ビス(ピナコラト)ジボロン(1.015ミリモル)、ジクロロ[1,1'−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン](II)−ジクロロメタン付加物(0.04ミリモル)および酢酸カリウム(2.400ミリモル)を入れた。該混合物を室温に冷却し、6−クロロ−4−(4−モルホリニル)ピリド[3,2−d]ピリミジン(1.015ミリモル)および1N重炭酸ナトリウム水溶液(2.400ミリモル)を添加した。反応混合物を100℃に加熱し、さらに2時間撹拌した。該混合物を室温に冷却し、Celiteおよび硫酸ナトリウムで濾過し、シリカゲルカラムに負荷した。フラッシュクロマトグラフィー(10〜90%酢酸エチル/ヘキサン)によって精製して、標記生成物を黄色固体として得た。固体を酢酸エチル/ジエチルエーテルと一緒にトリチュレートし、濾過し、ヘキサンで洗浄し、真空乾燥させて一定の重量にして、薄黄色の固体150mgを得た。MS(ES)+ m/e 515[M+H]+
【0198】
実施例7
N−{2−クロロ−5−[4−(4−モルホリニル)ソピリド[3,2−d]ピリミジン−6−イル]−3−ピリジニル}−2,4−ジフルオロベンゼンスルホンアミド
【化18】

【0199】
a)N−(5−ブロモ−2−クロロ−3−ピリジニル)−2,4−ジフルオロベンゼンスルホンアミド
塩化2,4−ジフルオロベンゼンスルホニルを使用して実施例3cの方法に従って標記生成物を得た。MS(ES) m/e 382.9, 384.8(M+H)+
【0200】
b)N−{2−クロロ−5−[4−(4−モルホリニル)ピリド[3,2−d]ピリミジン−6−イル]−3−ピリジニル}−2,4−ジフルオロベンゼンスルホンアミド
20mL加圧管に1,4−ジオキサン(8mL)中の6−クロロ−4−(4−モルホリニル)ピリド[3,2−d]ピリミジン(0.798ミリモル)、ビス(ピナコラト)ジボロン(0.878ミリモル)、ジクロロ[1,1'−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)−ジクロロメタン付加物(0.04ミリモル)および酢酸カリウム(1.995ミリモル)を入れて懸濁液を得た。反応混合物を100℃で1時間撹拌した。該混合物を室温に冷却し、N−(5−ブロモ−2−クロロ−3−ピリジニル)−2,4−ジフルオロベンゼンスルホンアミド(0.798ミリモル)および1N重炭酸ナトリウム水溶液(1.995ミリモル)を添加した。反応混合物を100℃に加熱し、さらに8時間撹拌した。該混合物を室温に冷却し、濾過し、Celiteおよび硫酸ナトリウムで濾過し、シリカゲルカラムに負荷シタ。フラッシュクロマトグラフィー(10〜90%酢酸エチル/ヘキサン)によって精製して、標記生成物を薄野卯食の固体として得た。固体を酢酸エチル/ジエチルエーテルと一緒にトリチュレートし、濾過し、ヘキサンで洗浄して、わずかに不純物をふくむアイボリー色の固体69mgを得た。該物質を熱メタノールに懸濁し、5分間超音波処理し、濾過して、純粋なアイボリー色の固体を得た(60mg)。MS(ES)+ m/e 519[M+H]+
【0201】
例示的なカプセル組成物
本発明を投与するための経口投与剤形は、標準的な2ピースハードゼラチンカプセルに下記の表IIに示される割合の成分を充填することによって製造される。
【表1】

【0202】
例示的な注射用非経口組成物
本発明を投与するための注射用剤形は、1.5重量%の実施例1の化合物を水中における10容量%のプロピレングリコール中で撹拌することによって製造される。
【0203】
例示的な錠剤組成物
下記の表IIIに示されるようなシュークロース、硫酸カルシウム・二水和物およびPI3K阻害物質を示される割合で、10%ゼラチン溶液と共に、混合および造粒する。湿顆粒をスクリーンし、乾燥させ、デンプン、タルクおよびステアリン酸と混合し、スクリーンし、打錠する。
【表2】

【0204】
本発明の好ましい具体例が上記に例示されているが、本発明は、本明細書中に開示される正確な指示に限定されることなく、特許請求の範囲の範囲内となる全ての変更に対する権利が保障されると理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)(B):
【化1】

[式中、
R1は、アシルアミノ、ヘテロシクロアルキルアミノ、アミノアルキル、水素、ハロゲン、アシル、アミノ、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アルキルカルボキシ、アリールアミノ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アリールシクロアルキル、置換アリールシクロアルキル、ヘテロアリールアルキル、置換ヘテロアリールアルキル、シアノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ニトロ、アシルオキシおよびアリールオキシからなる群から選択され;
R3は、アルキル、置換アルキル、アミノ、置換アミノ、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールからなる群から選択され;
R2、R4およびR5は、各々独立して、アルキルカルボキシ、アミノアルキル、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、アシルオキシ、水素、ハロゲン、アシル、アミノカルボニル、アミノ、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アルコキシおよびアリールアミノからなる群から選択され;
R6は、ヒドロキシル、水素、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキルおよび置換C3−7シクロアルキルである;
ただし、R2およびR5は、窒素原子に結合している場合には、C1−6アルキルまたはヒドロキシルであり得るだけである;
nは0〜2であり、mは0〜3である]
で示される化合物および/またはその医薬上許容される塩。
【請求項2】
式(I)(C):
【化2】

[式中、
R1は、アシルアミノ、ヘテロシクロアルキルアミノ、アミノアルキル、水素、ハロゲン、アシル、アミノ、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アルキルカルボキシ、アリールアミノ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アリールシクロアルキル、置換アリールシクロアルキル、ヘテロアリールアルキル、置換ヘテロアリールアルキル、シアノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ニトロ、アシルオキシおよびアリールオキシからなる群から選択され;
R3は、アルキル、置換アルキル、アミノ、置換アミノ、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールからなる群から選択され;
R2は、アルキルカルボキシ、アミノアルキル、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、アシルオキシ、水素、ハロゲン、アシル、アミノカルボニル、アミノ、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アルコキシおよびアリールアミノからなる群から選択され;
R4およびR5は、各々独立して、アミノカルボニル、アミノ、置換アミノ、ヒドロキシル、ハロゲン、C1−6アルキル、置換C1−6アルキルおよびアルコキシからなる群から選択され;
R6は、水素、ヒドロキシル、シクロプロピルまたはC1−6アルキルであり;
nは0または1であり、mは0または1である;
ただし、R2およびR5は、窒素原子に結合している場合には、C1−6アルキルまたはヒドロキシルであり得るだけである]
で示される請求項1記載の化合物および/またはその医薬上許容される塩
【請求項3】
式(I)(D):
【化3】

[式中、
R1は、アリール、置換アリール、アシルアミノ、ヘテロシクロアルキルアミノ、アミノアルキル、水素、ハロゲン、アシル、アミノ、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキルおよび置換C3−7ヘテロシクロアルキルからなる群から選択され;
R3は、アルキル、置換アルキル、アミノ、置換アミノ、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールからなる群から選択され;
R2は、水素、シアノ、アルコキシ、ヒドロキシル、ハロゲン、アルキル、アシル、アミノカルボニル、置換アルキル、アミノおよび置換アミノから選択され;
R4およびR5は、各々独立して、アミノカルボニル、アミノ、置換アミノ、ヒドロキシル、ハロゲン、C1−6アルキル、置換C1−6アルキルおよびアルコキシからなる群から選択され;
R6は、水素、ヒドロキシル、シクロプロピルまたはC1−6アルキルであり;
nは0または1であり、mは0または1である;
ただし、R2およびR5は、窒素原子に結合している場合には、C1−6アルキルまたはヒドロキシルであり得るだけである]
で示される請求項1記載の化合物および/またはその医薬上許容される塩。
【請求項4】
R4が水素である、請求項1〜3いずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
nが0である、請求項1〜4いずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
R6が水素である、請求項1〜5いずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
R3が、ハロゲン、C−6アルキル、置換C1−6アルキルおよびアルコキシから選択される1〜3個の基で置換されていてもよいアリールである、請求項1〜6いずれか1項記載の化合物。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか1項記載の化合物および医薬上許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項9】
ヒトにおける1つ以上のホスファトイノシチド3−キナーゼ(PI3K)を阻害する方法であって、該ヒトに請求項1記載の式(I)(B)で示される化合物またはその医薬上許容される塩の治療上有効量を投与することを含む方法。
【請求項10】
ヒトにおける自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、喘息、膵炎、多臓器機能不全、腎疾患、血小板凝集、癌、精子運動能、移植拒絶反応、移植片拒絶反応および肺損傷からなる群から選択される1以上の病態の治療方法であって、かかるヒトに請求項3記載の化合物の治療上有効量を投与することを含む方法。
【請求項11】
癌の治療方法であって、請求項1記載の化合物またはその医薬上許容される塩、水和物、溶媒和物もしくはプロドラッグの有効量、ならびに微小管阻害薬、白金配位錯体、アルキル化剤、抗生物質、トポイソメラーゼII阻害物質、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼI阻害物質、ホルモンおよびホルモンアナログ、シグナル伝達経路阻害物質、非受容体チロシンキナーゼ血管新生抑制剤、免疫療法薬、アポトーシス促進剤および細胞周期シグナル阻害物質からなる群から選択される抗腫瘍薬のような少なくとも1つの抗腫瘍薬を共投与することを含む方法。
【請求項12】
疾患が癌である、請求項10記載の方法。
【請求項13】
癌が、脳腫瘍(神経膠腫)、神経膠芽腫、白血病、バンナヤン−ゾナナ症候群、カウデン病、レルミット−デュクロ病、乳癌、炎症性乳癌、ウィルムス腫瘍、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫、上衣腫、骨芽細胞腫、結腸癌、頭頚部癌、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、黒色腫、腎癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、肉腫、骨肉腫、骨巨細胞腫および甲状腺癌から選択されるものである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
疾患が、卵巣癌、膵臓癌、乳癌、前立腺癌、腎癌および白血病からなる群から選択されるものである、請求項12記載の方法。
【請求項15】
PI3キナーゼがPI3αである、請求項9記載の方法。
【請求項16】
PI3キナーゼがPI3γである、請求項9記載の方法。
【請求項17】
化合物が請求項3記載のものである、請求項10〜14いずれか1項記載の方法。
【請求項18】
請求項1記載の化合物またはその医薬上許容される塩、水和物、溶媒和物またはプロドラッグが医薬組成物中にて投与される、請求項10記載の方法。

【公表番号】特表2010−539239(P2010−539239A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525911(P2010−525911)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/076608
【国際公開番号】WO2009/039140
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(591002957)グラクソスミスクライン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (341)
【氏名又は名称原語表記】GlaxoSmithKline LLC
【Fターム(参考)】