説明

PI3Kインヒビターでの肝障害の処置

本発明は、PI3Kアイソフォーム、特にδアイソフォームを阻害する化合物を投与することによって、特定の肝障害を処置する方法を提供する。本発明は、これらの方法および手法がこれらの処置を受けるのに特に適している被験体を同定するのに有用である具体的な化合物をさらに提供する。本発明は、肝障害、特にPtenが低発現または変異したものの処置に有用な化合物を提供する。本発明に従って予防および/または処置され得る状態としては、例えば、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝脂肪症、硬変症、肝炎、肝臓腺腫、インスリン過敏症、およびヘパトームのような肝臓がん、肝臓細胞腺腫および肝細胞癌が挙げられる。本発明は、これらの処置におそらく応答する患者を同定する方法をさらに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2009年7月21日に出願された米国仮特許出願第61/227,343号に対する優先権を主張する。その仮特許出願の内容は、本明細書中で参考として援用される。
【0002】
技術分野
本発明は、インビボでホスファチジルイノシトール−3,4,5−三リン酸キナーゼ(PI3K)酵素を阻害する化合物を用いて、特定の肝障害を処置する方法に関する。それは、主として肝臓に影響を及ぼす多様な障害を処置するのに有用である化合物、組成物、および組み合わせを提供する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
ホスファチジルイノシトールの様々なリン酸化した形態は、多くの細胞機能(一次代謝、細胞の成長および増殖、分化、細胞移動、免疫応答、およびアポトーシスが挙げられる)の重要な調節因子である。それらは、細胞調節の多くの局面において関与するので、薬物候補がホスファチジルイノシトールの様々なリン酸化した形態間での変換を阻害するときに、上記薬物候補が、どのような作用を有し得るかを常に予測できるわけではない。例えば、図1は、ホスファチジルイノシトール−4,5−二リン酸(PI−4,5−P2、本明細書中でPIP2とも称される)およびホスファチジルイノシトール−3,4,5−三リン酸(PI−3,4,5−P3、本明細書中でPIP3とも称される)によって行われる公知の役割のいくつかを例示する。PIP3は、多数のレセプターを活性化し、そのうちのいくつかは、細胞の成長、複製および死(アポトーシス)に関与する。
【0004】
腫瘍抑制因子Ptenが多くのヒトのがんにおいて変異し、その発現はヘパトーム患者のほぼ半数において、低減されるか、または欠如することが最近報告されている。Ptenの主要な基質はPIP3であり、これは脱リン酸化してPIP2を形成する。特に肝臓がんとのその強い関連性は、Ptenが肝臓においてホメオスタシスを維持し、腫瘍形成を防ぐために特に重要であることを示唆する。肝細胞特異的Pten欠損が脂肪性肝炎および肝癌をもたらすことも示されている。非特許文献1。Horieは、PI3K経路の制御された阻止は、NASH、肝硬変(liver cirrhosis)、または肝癌に罹患し易い患者の処置のために有益であり得ると結論づけている。反応性の酸素種を生む状態への肝細胞の曝露によって誘導される脂肪症(脂肪の蓄積)が、PIP2をリン酸化してPIP3を形成するキナーゼのインヒビターであるLY294002によって阻害され得ることもまた最近報告されている。非特許文献2。Kohliは、食餌がp85発現および脂肪症を誘導したモデル系において、LY294002が脂肪症の発達を阻止することを実証し、PI3Kのインヒビターが脂肪症の発達を防ぎ得ることを実証した。
【0005】
肝障害は、先進世界における高カロリーの食事および高肥満率に起因してますます一般的である。これらは硬変症(cirrhosis)に進行し得る脂肪肝状態に対する危険因子である。NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)は、1つのこのような状態である:1980年に初めて同定されたが、今では、何百万人ものアメリカ人に影響を及ぼしている広く認識された状態である。非特許文献2。3000万人ものアメリカ人が非アルコール性脂肪肝疾患(FALD)を有すると考えられており、その約30%がNASHを有すると考えられている。従って、過剰な脂肪質の蓄積物に関連する肝障害を処置する方法が必要とされる。本発明は、このような状態を予防および/または処置する化合物および方法を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Y.Horie,et al.,J.Clin.Investigation,113(12),1774−83(2004)
【非特許文献2】R.Kohli,et al.,J.Biol.Chem.282,21327−36(July 2007)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の開示
本発明は、肝障害、特にPtenが低発現(underexpress)または変異したものの処置に有用な化合物を提供する。本発明に従って予防および/または処置され得る状態としては、例えば、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝脂肪症、硬変症、肝炎、肝臓腺腫、インスリン過敏症、およびヘパトームのような肝臓がん、肝臓細胞腺腫および肝細胞癌が挙げられる。本発明は、これらの処置におそらく応答する患者を同定する方法をさらに提供する。
【0008】
1つの局面において、本発明は、肝障害を有している被験体を処置する方法を提供し、それは上記被験体にPI3Kを阻害する有効な量の化合物を投与する工程を含む。これらの方法において使用に適した化合物は、本明細書中に記載される。
【0009】
PI3Kは、p110ユニットとp85ユニットとが組み合わさった、ヘテロ二量体として存在し、異なるp110および/またはp85サブユニットを含む、PI3Kの数個のアイソフォームが存在する。特に、公知である4つのp110サブユニットがあり、p110α、p110β、p110γ、およびp110δと称される。これらの組織分布は、さまざまであり、p110αは広く存在し;p110βは、脳や肝臓のような特定の組織において優位を占め;そしてp110δは、脾臓および造血組織において優位を占める。
【0010】
1つより多くのアイソフォームが存在する組織において、所望する治療効果を達成するために1つの特定のアイソフォームを選択的に阻害することが望ましいことがあり得るか、またはこれらのアイソフォームのうちの2つ、もしくはそれらのアイソフォームの全てを阻害することが望ましいことがあり得る。全てのアイソフォームを阻害する化合物は公知であり、pan−PI3Kインヒビターと称され;1つまたは2つのアイソフォームを選択的に阻害する化合物は、特定の障害において特に有用であり、標的とされるもの以外の組織における望まない副作用の可能性の低減を提供する。本明細書中に記載される方法は、従って、好ましくは、選択的なPI3Kインヒビター(例えば、他のものよりもPI3KβもしくはPI3Kδ、またはこれらのアイソフォームの両方に対してより活性のあるインヒビター)を使用する。
【0011】
1つの局面において、PI3Kのインヒビターは、PI3Kの別のアイソフォームよりもPI3Kの1つのアイソフォームをより有効に阻害する選択的なものである。肝障害の処置のために、本発明のいくつかの実施形態は、少なくともPI3Kβに対して有効であるPI3Kインヒビターを利用し;いくつかの実施形態において、上記インヒビターは、PI3Kγおよび/またはPI3Kαと比較してPI3Kβの阻害に対して選択的である。特定の実施形態において、上記インヒビターは、PI3Kβに対して、約100nMよりも低い、および好ましくは約60nMよりも低いIC−50を有する。
【0012】
本明細書中に記載される方法および化合物は、PIP3およびPIP2の正常な「バランス」を修復することによって、不十分なPten活性の作用に立ち向かう(combat)ために使用され得る。1つの実施形態において、本発明の方法は、被験体におけるPIP2のレベルを評価することによってか、またはPIP2対PIP3の比を評価し、本発明の化合物の投与量を調整して、同様の被験体に対して正常範囲内に比をもたらすことによって、モニターされ得る。
【0013】
1つの局面において、PI3Kインヒビターは、置換されたピリミジンであり:適切な化合物は、国際公開第2007/12175号;国際公開第2007/042810号;国際公開第2007/132171号;国際公開第2007/129161号;国際公開第2006/046031号;および国際公開第2009/070524号に記載される。好ましくは、上記ピリミジン化合物は、PI3Kβに対して、約100nMよりも低い、および好ましくは約60nMよりも低いIC−50を示す。
【0014】
別の局面において、PI3Kインヒビターは、米国特許第6,518,277号または同第6,667,300号に開示されるもののようなキナゾリノン化合物であり、米国特許第6,518,277号または同第6,667,300号は、それらの、具体的なキナゾリノン化合物およびこのような化合物を作る方法の開示について本明細書中で参考として援用される。好ましくは、キナゾリノン化合物は、PI3Kβに対して、約100nMよりも低い、および好ましくは約60nMよりも低いIC−50を示す。
【0015】
1つの局面において、PI3Kインヒビターは、式(1):
【0016】
【化1】

の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であり、
ここで:
Wは、H、Me、Cl、およびFからなる群から選択され;
Xは、H、Me、Cl、およびFからなる群から選択され;
Yは、H、Me、およびEtからなる群から選択され;
Zは、NHまたは結合であり;そして
AはNHであるか、またはAは存在せず、プリン環へのZの結合点を示し;
Aが存在しないときにQはHであるか、またはAがNHであるときに、Qは存在せず、プリン環へのZの結合点を示し;
ただし、W、X、およびYのうちの2つ以下は、Hを表す。
【0017】
本方法において特に有用である、式(1)の化合物の選択された実施形態としては、式(2a)および(2b):
【0018】
【化2】

の化合物が挙げられ、
ここでW、XおよびYは、式(1)について定義される通りであり、ここでW、X、およびYのうちの2つ以下は、Hを表す。特定の実施形態において、Yは、MeまたはEtである。
【0019】
別の局面において、本発明の方法は、PI3Kインヒビターとして、式(3):
【0020】
【化3】

の化合物またはその薬学的に受容可能な塩を利用し得、
ここで:
、QおよびQのうちの1つはSであり、Q、QおよびQのうちの他の2つは、−CR−であり;
ここで、各Rは、独立して、H、ハロ、OR、NR、NROR、NRNR、SR、SOR、SOR、SONR、NRSOR、NRCONR、NRCOOR、NRCOR、CF、CN、COOR、CONR、OOCR、COR、もしくはNOであるか、
またはRは、C1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8ヘテロアルケニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C8ヘテロアルキニル、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C12ヘテロアリール、C7〜C12アリールアルキル、およびC6〜C12ヘテロアリールアルキル基からなる群から選択される、必要に応じて置換されたメンバーであり得、
ここで各Rは、独立して、H、またはC1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8ヘテロアルケニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C8ヘテロアルキニル、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリール、C7〜C12アリールアルキル、またはC6〜C12ヘテロアリールアルキルであり、
そしてここで、同じ原子上または隣接する原子上の2つのRは、環員として1つまたは2つのN、OまたはSを必要に応じて含む3〜8員環を形成するように連結し得;
そしてここで、H以外の各R基、および2つのR基を一緒に連結することにより形成される各環は、必要に応じて置換され;
Zは結合であるか、またはO、NR、C1〜C6アルキレンもしくはC1〜C6ヘテロアルキレンであり、そのそれぞれは、2つまでのC1〜C6アルキル基もしくはC2〜C6ヘテロアルキル基で必要に応じて置換され、ここで上記アルキル基もしくはヘテロアルキル基のうちの2つは、環員としてO、NおよびSから選択される2つまでのヘテロ原子を含む3〜7員環を形成するように、必要に応じて環化し得;
は、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、もしくはヘテロシクロアルキルであり、そのそれぞれは、3つまでのRで必要に応じて置換されるか、
またはRは、Zが結合でない場合にHであり得;
Lは、−C(R−、−C(R−C(R−、−C(R−NR−、および−C(R−S(O)−からなる群から選択され、
ここで各Rは、独立して、H、またはC1〜C6アルキル、C2〜C6ヘテロアルキル、C2〜C6アルケニル、およびC2〜C6アルキニルから選択される、必要に応じて置換されたメンバーであり、そしてnは0〜2であり;
そして2つのRは、L上に存在する場合に、環員としてN、OおよびSから選択される2つまでのヘテロ原子を含み得る、3〜7員環を形成するように環化し得;
Hetは単環式環系または二環式環系であり、ここで少なくとも2つの環原子はNであり、ここで少なくとも1つの環は芳香族であり、そしてHetは、R、N(R、S(O)、OR、ハロ、CF、CN、NROR、NRN(R、SR、SOR、SO、SON(R、NRSO、NRCON(R、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、CON(R、OOCR、COR、またはNOから選択される3つまでの置換基で必要に応じて置換され、
ここで各Rは、独立して、H、またはC1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8ヘテロアルケニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C8ヘテロアルキニル、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリール、C7〜C12アリールアルキル、およびC6〜C12ヘテロアリールアルキルからなる群から選択される、必要に応じて置換されたメンバーであり、
そしてここで、同じ原子上または隣接する原子上の2つのRは、N、OおよびSから選択される1つまたは2つのヘテロ原子を必要に応じて含む3〜8員環を形成するように連結され得;
ここで、各必要に応じて置換された、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、ヘテロアルキニル、アシル、ヘテロアシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、およびヘテロアリールアルキル上の必要に応じた置換基は、C1〜C4アルキル、ハロ、CF、CN、=O、=N−CN、=N−OR’、=NR’、OR’、NR’、SR’、SOR’、SONR’、NR’SOR’、NR’CONR’、NR’COOR’、NR’COR’、CN、COOR’、CONR’、OOCR’、COR’、およびNOから選択され、
ここで各R’は、独立して、H、C1〜C6アルキル、C2〜C6ヘテロアルキル、C1〜C6アシル、C2〜C6ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリール、C7〜12アリールアルキル、またはC6〜12ヘテロアリールアルキルであり、そのそれぞれは、ハロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ヘテロアルキル、C1〜C6アシル、C1〜C6ヘテロアシル、ヒドロキシ、アミノ、および=Oから選択される1つまたはそれより多くの基で必要に応じて置換され;
そしてここで、同じ原子上または隣接する原子上の2つのR’は、N、OおよびSから選択される3つまでのヘテロ原子を必要に応じて含む、3〜7員環を形成するように連結され得;そして
pは0〜2である。このような化合物の具体的な実施形態は、下にさらに記載される。
【0021】
いくつかの実施形態において、選択的なインヒビターは、PI3Kγの阻害と比較して、PI3Kδを選択的に阻害する化合物である。いくつかの実施形態において、選択的なインヒビターは、PI3Kβの阻害と比較して、PI3Kδを選択的に阻害する化合物である。いくつかの実施形態において、選択的なインヒビターは、PI3Kαの阻害と比較して、PI3Kδを選択的に阻害する化合物である。いくつかの実施形態において、選択的なインヒビターは、PI3Kγの阻害と比較して、PI3Kβを選択的に阻害する化合物である。いくつかの実施形態において、選択的なインヒビターは、PI3Kαの阻害と比較して、PI3Kβを選択的に阻害する化合物である。いくつかの実施形態において、選択的なインヒビターは、PI3KαまたはPI3Kγのいずれかの阻害と比較して、PI3KβおよびPI3Kδを選択的に阻害する化合物である。
【0022】
いくつかの実施形態において、化合物は、PI3KγおよびPI3Kαの両方と比較して、PI3Kδについて選択的である。他の実施形態において、化合物は、PI3KαおよびPI3Kγの両方と比較して、PI3Kβについて選択的である。いくつかの実施形態において、化合物は、PI3KαおよびPI3Kγの両方と比較して、PI3KδおよびPI3Kβについて選択的である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、ホスファチジルイノシトールホスフェート種が関与することが知られる細胞経路のいくつかを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を実施する様式
本明細書中でそうでないと定義されない限り、本明細書中で使用される用語は、当該分野における通常の意味を取る。
【0025】
本明細書中で用いられる場合、用語「アルキル」は、アルキル基が基礎となる分子へと結合される、示された数の炭素原子および1つの開放原子価(an open valence)を含む直鎖および/または分枝の炭化水素基と定義され;代表的な例としては、メチル基、エチル基、ならびに直鎖および分枝のプロピル基およびブチル基が挙げられる。炭化水素基は、そうでないと明記されない限り、16個までの炭素原子を含み得、しばしば1個〜8個の炭素原子を含み得る。用語「アルキル」は、シクロアルキルおよび「橋かけアルキル」、すなわちC6〜C16二環式または多環式の炭化水素基、例えば、ノルボルニル、アダマンチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、またはデカヒドロナフチルを包含する。用語「シクロアルキル」は、環式C3〜C8炭化水素基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロヘキシル、およびシクロペンチルと定義される。
【0026】
用語「アルケニル」は、アルケニル基が少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含み、結果として、アルケニル基の最小サイズがC2であることを除いて、「アルキル」と同じように定義される。「アルキニル」は、アルキニル基が少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含むことを除いて、同様に定義される。
【0027】
「シクロアルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合が環に存在することを除いて、シクロアルキルと同様に定義される。
【0028】
用語「アルキレン」は、別の基が結合する第二の開放原子価を有するアルキル基と定義され、すなわち、アルキレンは、2つの他の基礎構造(substructure)を繋がなければならない。例えば、用語「アリール−C1−C3−アルキレン」は、1個〜3個の炭素原子を含み、かつ1つの原子価においてアリール基で置換されたアルキレン基を指し、それは、基礎となる分子に繋がれる点として基のアルキレン部分の1つ残っている原子価を残す。
【0029】
本明細書中で用いられる場合、用語「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルケニル」、「ヘテロアルキニル」、および「ヘテロアルキレン」は、‘ヘテロ’形態が、対応しているアルキル、アルケニル、アルキニルまたはアルキレン部分の炭素のうちの1つについての置き換えとしてN、OおよびSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むことを除いて、用語アルキル、アルケニル、アルキニル、およびアルキレンと同様に定義される。これらのヘテロ形態において、Sは、S=Oまたは−SO−へとさらに酸化され得、すなわち、それは、1つまたはそれより多くの=O置換基を有し得る。これらの基は、少なくとも1つの炭素原子を含み、代表的に、ヘテロ原子によってよりも炭素を介して基礎となる分子へと連結される。ヘテロアルキルの例としては、例えば、メトキシメチルおよびジメチルアミノエチルが挙げられ、−CH−SO−CH−は、ヘテロアルキレンの例である。
【0030】
用語「ハロ」または「ハロゲン」は、フッ素、臭素、塩素、およびヨウ素を含むように本明細書中で定義される。頻繁に、フッ素またはクロロは、式(1)および(2)の化合物において好ましい。
【0031】
用語「アリール」は、単独または組み合わせて、本明細書中で単環式または多環式の芳香族基、例えば、フェニルまたはナフチルと定義される。そうでないと示されない限り、「アリール」基は、非置換であり得るか、または例えば、1つもしくはそれより多くの、および特に1個〜3個の置換基で置換され得る。本発明のアリール基についての好ましい置換基としては、ハロ、アルキル、フェニル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ハロアルキル、ニトロ、およびアミノが挙げられる。例示的なアリール基としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、テトラヒドロナフチル、クロロフェニル、フルオロフェニル、アミノフェニル、メチルフェニル、メトキシフェニル、トリフルオロメチルフェニル、ニトロフェニル、およびカルボキシフェニルなどが挙げられる。フルオロ、クロロ、CF、CN、メチル、メトキシ、ジメチルアミノ、アミノ、ならびにアミン置換されたアルキルおよびヘテロアルキル基は、単一の環であろうと、別のアリール、非アリール(nonaryl)、またはヘテロアリール環と縮合されていようと、アリール環についての置換基として適している代表的な例である。
【0032】
用語「ヘテロアリール」は、本明細書中で、1つまたは2つの芳香族環を含み、芳香族環の環員として少なくとも1つの窒素、酸素、または硫黄原子を含む単環式または二環式の環系と定義され、それは非置換であり得るか、または例えば、1つもしくはそれより多くの、および特に1個〜3個の、ハロ、アルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ハロアルキル、ニトロ、およびアミノのような置換基で置換され得る。F、Cl、NH、MeNH(メチルアミン)、OMe、Me、およびCF、ならびにアミン置換されたアルキルまたはヘテロアルキル基は、しばしば、本発明のヘテロアリール基についての好ましい置換基である。ヘテロアリール基の例としては、チエニル、フリル、ピリジル、オキサゾリル、キノリル、イソキノリル、インドリル、トリアゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、イミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、チアゾリル、およびチアジアゾリルが挙げられる。
【0033】
本明細書中で用いられる場合、用語「有効である量」または「有効な量」は、所望する効果、または決まった効果をもたらすのに十分な投与量を意味する。
【0034】
本明細書中で用いられる場合、「処置する」は、障害に罹患し易いことがあり得るが、それを有しているとまだ診断されていない動物において、上記障害が生じることから予防すること;上記障害を阻害すること、すなわち、その発達を止めること;上記障害を軽減すること、すなわち、その後退をもたらすこと;または上記障害を回復させること、すなわち、上記障害に関連する症状の重症度を低減することを指す。
【0035】
「障害」は、限定することなく、医学的障害、疾患、状態、および症候群などを包含することが意図される。
【0036】
1つの局面において、PI3Kインヒビターは、式(1a)または(1b):
【0037】
【化4】

の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であり、
ここで:
Wは、H、Me、Cl、およびFからなる群から選択され;
XおよびX’は、独立して、H、Me、Cl、およびFからなる群から選択され;
Yは、H、Me、およびEtからなる群から選択され;
Zは、NHまたは結合であり;そして
AはNHであるか、またはAは存在せず、プリン環へのZの結合点を示し;
Aが存在しないときにQはHであるか、またはAがNHであるときに、Qは存在せず、プリン環へのZの結合点を示し;
ただし、W、X、およびYのうちの2つ以下は、Hを表す。
【0038】
式(1a)の化合物のいくつかの実施形態において、W、X、およびYのうちの1つ以下は、Hを表す。
【0039】
式(1a)および(1b)のいくつかの実施形態において、Aは存在せず、式(1a)または(1b)のプリン環における、Aが繋がれていると思われる原子が、実際にはZに繋がれている。これらの実施形態において、QはHを表し、ZはしばしばNHである。
【0040】
いくつかの実施形態において、Qは存在せず、式(1)のプリン環における、Qが繋がれていると思われる原子が、実際にはZに繋がれている。これらの実施形態において、AはHを表し、Zはしばしば結合であり、すなわち、式(1)において、窒素原子であって、Qがその上に示される窒素原子は、Yが結合される炭素原子に直接結合されている。
【0041】
上に記載される化合物のいくつかの実施形態において、W、X、およびYのうちの少なくとも1つはメチル(Me)である。いくつかの実施形態において、WはMeである。いくつかの実施形態において、XはMeである。いくつかの実施形態において、YはMeである。
【0042】
上に記載される化合物のいくつかの実施形態において、XはH、MeまたはFである。
【0043】
上に記載される化合物のいくつかの実施形態において、ZはNHである。
【0044】
上に記載される化合物のいくつかの実施形態において、Zは結合である。
【0045】
上に記載される化合物のいくつかの実施形態において、YはHである。
【0046】
上に記載される化合物のいくつかの実施形態において、YはMeである。
【0047】
上に記載される化合物のいくつかの実施形態において、YはEtである。
【0048】
式(1b)のいくつかの実施形態において、XおよびX’は同じである。いくつかのこのような実施形態において、それらは、それぞれH以外の基を表す。このような化合物の具体的な例において、XおよびX’は、それぞれFを表す。
【0049】
本方法において特に有用である式(1)の化合物の選択された実施形態としては、式(2a)および(2b):
【0050】
【化5】

の化合物が挙げられ、
ここでW、X、およびYは、式(1)について定義される通りであり、ここでW、X、およびYのうちの2つ以下は、Hを表す。
【0051】
式(2a)および(2b)の化合物のいくつかの実施形態において、YはH、MeまたはEtである。好ましくは、YはMeまたはEtである。
【0052】
式(2a)および(2b)の化合物のこれらの実施形態のいくつかにおいて、WはH、Me、ClまたはFであり:式(2a)においては、Wは、時にはFまたはMeであり、式(2b)においては、Wは、時にはMeまたはFである。
【0053】
式(2a)および(2b)の化合物のこれらの実施形態のいくつかにおいて、XはH、Me、ClまたはFであり:式(2a)においては、Xは、時にはFまたはHであり、式(2b)においては、Xは、時にはMeまたはHである。
【0054】
式(1a)および(1b)の特定の化合物は、PI3KδもしくはPI3Kβまたは両方について選択的である。
【0055】
本明細書中に記載される方法において、特に有用であるこのタイプのいくつかの具体的な化合物としては、
【0056】
【化6】

が挙げられ:
その分離可能なアトロプ異性体(2c’)および(2c’’):
【0057】
【化7】

を含み;
2つの二環式基間にキラル中心を有するR異性体およびS異性体、特にS異性体を含み;
【0058】
【化8】

2つの二環式基間にキラル中心を有するR異性体およびS異性体、特にS異性体を含む。
【0059】
別の局面において、本発明の方法は、PI3Kインヒビターとして、式(3):
【0060】
【化9】

の化合物またはその薬学的に受容可能な塩を利用し得、
ここで:
、QおよびQのうちの1つはSであり、Q、QおよびQのうちの他の2つは、−CR−であり;
ここで、各Rは、独立して、H、ハロ、OR、NR、NROR、NRNR、SR、SOR、SOR、SONR、NRSOR、NRCONR、NRCOOR、NRCOR、CF、CN、COOR、CONR、OOCR、COR、もしくはNOであるか、
またはRは、C1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8ヘテロアルケニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C8ヘテロアルキニル、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C12ヘテロアリール、C7〜C12アリールアルキル、およびC6〜C12ヘテロアリールアルキル基からなる群から選択される、必要に応じて置換されたメンバーであり得、
ここで各Rは、独立して、H、またはC1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8ヘテロアルケニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C8ヘテロアルキニル、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリール、C7〜C12アリールアルキル、またはC6〜C12ヘテロアリールアルキルであり、
そしてここで、同じ原子上または隣接する原子上の2つのRは、環員として1つまたは2つのN、OまたはSを必要に応じて含む3〜8員環を形成するように連結し得;
そしてここで、H以外の各R基、および2つのR基を一緒に連結することにより形成される各環は、必要に応じて置換され;
Zは結合であるか、またはO、NR、C1〜C6アルキレンもしくはC1〜C6ヘテロアルキレンであり、そのそれぞれは、2つまでのC1〜C6アルキル基もしくはC2〜C6ヘテロアルキル基で必要に応じて置換され、ここで上記アルキル基もしくはヘテロアルキル基のうちの2つは、環員としてO、NおよびSから選択される2つまでのヘテロ原子を含む3〜7員環を形成するように、必要に応じて環化し得;
は、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、もしくはヘテロシクロアルキルであり、そのそれぞれは、3つまでのRで必要に応じて置換されるか、
またはRは、Zが結合でない場合にHであり得;
Lは、−C(R−、−C(R−C(R−、−C(R−NR−、および−C(R−S(O)−からなる群から選択され、
ここで各Rは、独立して、H、またはC1〜C6アルキル、C2〜C6ヘテロアルキル、C2〜C6アルケニル、およびC2〜C6アルキニルから選択される、必要に応じて置換されたメンバーであり、そしてnは0〜2であり;
そして2つのRは、L上に存在する場合に、環員としてN、OおよびSから選択される2つまでのヘテロ原子を含み得る、3〜7員環を形成するように環化し得;
Hetは単環式環系または二環式環系であり、ここで少なくとも2つの環原子はNであり、ここで少なくとも1つの環は芳香族であり、そしてHetは、R、N(R、S(O)、OR、ハロ、CF、CN、NROR、NRN(R、SR、SOR、SO、SON(R、NRSO、NRCON(R、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、CON(R、OOCR、COR、またはNOから選択される3つまでの置換基で必要に応じて置換され、
ここで各Rは、独立して、H、またはC1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8ヘテロアルケニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C8ヘテロアルキニル、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリール、C7〜C12アリールアルキル、およびC6〜C12ヘテロアリールアルキルからなる群から選択される、必要に応じて置換されたメンバーであり、
そしてここで、同じ原子上または隣接する原子上の2つのRは、N、OおよびSから選択される1つまたは2つのヘテロ原子を必要に応じて含む3〜8員環を形成するように連結され得;
ここで、各必要に応じて置換された、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、ヘテロアルキニル、アシル、ヘテロアシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、およびヘテロアリールアルキル上の必要に応じた置換基は、C1〜C4アルキル、ハロ、CF、CN、=O、=N−CN、=N−OR’、=NR’、OR’、NR’、SR’、SOR’、SONR’、NR’SOR’、NR’CONR’、NR’COOR’、NR’COR’、CN、COOR’、CONR’、OOCR’、COR’、およびNOから選択され、
ここで各R’は、独立して、H、C1〜C6アルキル、C2〜C6ヘテロアルキル、C1〜C6アシル、C2〜C6ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリール、C7〜12アリールアルキル、またはC6〜12ヘテロアリールアルキルであり、そのそれぞれは、ハロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ヘテロアルキル、C1〜C6アシル、C1〜C6ヘテロアシル、ヒドロキシ、アミノ、および=Oから選択される1つまたはそれより多くの基で必要に応じて置換され;
そしてここで、同じ原子上または隣接する原子上の2つのR’は、N、OおよびSから選択される3つまでのヘテロ原子を必要に応じて含む、3〜7員環を形成するように連結され得;そして
pは0〜2である。
【0061】
式(3)の化合物の特定の実施形態において、QはSであり、QおよびQは、それぞれCRを表す。式(3)の化合物の他の実施形態において、QはSであり、QおよびQは、それぞれCRを表す。さらに他の実施形態において、QはSであり、QおよびQは、それぞれCRを表す。Q、QおよびQのうちの少なくとも1つは、しばしばCHであり、これらの実施形態のいくつかにおいて、それらのうちの2つはCHである。Q、QまたはQにおけるRが、H以外である場合、Rは、頻繁に、C1〜C4アルキル、CF、CN、もしくはハロであるか、またはRは、下に記載されるようなアミン置換されたアルキルもしくはヘテロアルキル基であり得る。
【0062】
式(3)の化合物のいくつかの実施形態において、チオフェン環上のRは、アミン置換されたアルキルまたはヘテロアルキル基(例えば、−(CH−NR’または−O−(CH−NR’または−NR’−(CH−N(R’))を表し、ここでpは、1〜4であり、各R’は、HまたはC1〜C4アルキルであり、ここで、1つのN上に存在する2つのR’は、3〜8員環を形成するように環化し得、それは、N、OおよびSから選択される追加のヘテロ原子を必要に応じて含み得る。これらのアミン置換されたアルキルまたはヘテロアルキル基の具体的な例としては、限定することなく、
【0063】
【化10】

が挙げられる。
【0064】
式(3)の化合物のいくつかの実施形態において、Zは結合を表し;他の実施形態において、Zは(CH1〜4を表す。Zが結合の場合、Rは、しばしばアリールまたはヘテロアリール環を表し;これらの実施形態のいくつかにおいて、Rは、必要に応じて置換されたフェニルまたはピリジル環である。これらの実施形態において、Rは、少なくとも1つの置換基でしばしば置換され、それは、Zへのアリール環の結合点に対して、頻繁に、オルトまたはメタである。これらの実施形態のいくつかにおいて、Rは、1個〜3個の置換基(例えば、ハロ、CN、メチル、CF、またはRについて上に記載されたようなアミン置換されたアルキルもしくはヘテロアルキル)で置換される。Zが結合の場合、Rは、頻繁に、フェニル、ハロ置換されたフェニル、ジハロフェニル、またはシアノフェニルである。他の実施形態において、Zは結合または(CH1〜2であり、Rは、置換され得るシクロアルキル基を表す。
【0065】
式(3)の化合物のいくつかの好ましい実施形態において、Lは、C(RまたはC(RNHまたはC(RSであり、ここで、各Rは、独立して、H、またはC1〜C4アルキル、C2〜C4アルケニル、またはC2〜C4アルキニルである。特定の実施形態において、Lは、CH(R)またはCH(R)NHまたはCH(R)Sであり、ここで、Rは、メチルもしくはエチルもしくは任意の必要に応じて置換されたC1〜C6アルキル基を表すか、またはRは、Rについて上に記載されたようなアミン置換されたアルキル基であり得る。Lの1つの末端がヘテロ原子である場合、Lは、このヘテロ原子を介してHetにしばしば連結され;そして、Lのヘテロ原子は、代表的にHetの炭素原子に結合される。
【0066】
式(3)の化合物の多くの実施形態において、リンカー「L」の中心CH(R)は、キラルであり、頻繁に、この立体中心のSエナンチオマーは好ましい。他の実施形態において、この立体中心は、Rエナンチオマーである。代表的に、LがCH(R)NHまたはCH(R)Sである場合、NまたはSは、Hetに連結され、CH(R)は、ピリミジノン環へと直接結合される。さらに他の実施形態において、Lは、−CH(R)−NR−であり、ここで、2つのR基は、環を形成するように連結され、それは、しばしば5個〜6個の原子環(atom ring)である。これらの環状リンカーにおいて、キラル中心はまた、CH(R)に存在し、その中心は、R配置またはS配置のいずれかにあり得;Sエナンチオマーは、しばしば好ましい。このような環状リンカーについての例示的な環は、ピロリジンである。
【0067】
Hetは、必要に応じて置換された単環式環または二環式環であり、Hetの少なくとも1つの環は、代表的に、環員として少なくとも2つの窒素原子を含むヘテロアリール環であり;多くの実施形態において、Hetは二環式芳香族複素環である。式(3)の化合物の特定の実施形態において、Hetは、C1〜C4アルキル基、C6〜C10アリール基、C5〜C10ヘテロアリール基、ハロ、アミン、アルキルアミン、ジアルキルアミン、またはRについて上に記載されたようなアミン置換されたアルキル基もしくはヘテロアルキル基で置換され得る、プリン環を表す。他の実施形態において、Hetは、ピラゾロピリミジンまたはピロロピリミジン環を表し、そのそれぞれは、同様に置換され得る。さらに他の実施形態において、Hetは、ピリミジンまたはトリアジン環を表し、それはまた同様に置換され得る。
【0068】
Hetが、二環式基を表す場合、それは、Hetの任意の利用可能な環の位置でLに結合され得る。多くの実施形態において、Lは、二環式基の両方の環によって共有される原子に隣接する、炭素または窒素原子に結合される。多くの実施形態において、Hetは、6,5−二環式へテロ芳香族基を表し、Lは、5員環または6員環のいずれかに結合され得る。いくつかの実施形態において、Hetはプリン環であり、そのために以下の原子ナンバリングの取り決めが使用される:
【0069】
【化11】

Hetのいくつかの具体的な例としては、その範囲を限定することなく、以下が挙げられ、ここで[L]は、Hetがリンカー「L」に結合される点を示し、−Xは、1つが存在するときに置換基についての結合の好ましい点を表す。いくつかの実施形態において、H以外の置換基は存在せず(各XはHを表す);1つより多くのXが示される他のものにおいて、少なくとも1つのXはHである。多くの実施形態において、Hではない各Xは、アミンもしくは置換されたアミン、アルキルもしくはアリール基、またはハロゲンを表す。Xについてのいくつかの好ましい基としては、NH、F、Cl、Me、CF、およびフェニルが挙げられる。
【0070】
式(3)の化合物中のLが、下に示される複素環のように、プリンまたはプリン類似体のN−9(その環がプリン類似体であるときでさえ簡単にするためにプリンのナンバリングスキームを用いて)で結合される場合に、LはCHまたはCH(R)を表す。Lが、ここに示される複素環のように、プリンまたはプリン類似体のC−6に結合される場合に、Lは頻繁にCH(R)−NH、CH(R)−SまたはCH(R)−N(R)であり、Hetによって表される複素環は、これらの実施形態において、代表的に、Lのヘテロ原子に連結される。これらの実施形態の多くにおいて、上記リンカーLの炭素原子上のRは、メチルまたはエチルであり、Rが上記リンカーの窒素原子上にあるとき、それはしばしばHである。
【0071】
【化12】

式(3)の化合物のいくつかの好ましい実施形態において、Rは、必要に応じて置換されたフェニルを表し、Zは結合である。特に好ましいフェニル基としては、非置換のフェニル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、2−フルオロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、2,3−ジフルオロフェニル、2,5−ジフルオロフェニル、2,4−ジフルオロフェニル、3,4−ジフルオロフェニル、3,5−ジフルオロフェニル、および2,6−ジフルオロフェニルが挙げられる。
【0072】
式(3)の化合物のいくつかの好ましい実施形態において、−L−Hetは、−CH−Het、−CH−NH−Het、−CH−S−Het、−CHMe−Het、−CHMe−S−Het、−CHMe−NH−Het、−CHEt−Het、−CHEt−S−Het、または−CHEt−NH−Hetを表す。
【0073】
式(3)の化合物のいくつかの好ましい実施形態において、Hetは、6位でLに連結されるプリンを表す。他の好ましい実施形態において、−L−Hetが−CH−Het、−CHMe−Het、または−CHEt−Hetであるとき、Hetは、プリンの9位でLに連結されるプリンである。Hetがプリン環であるとき、それは、時には、アミノ、フルオロ、メチル、またはCFによって置換され;そして、時には、それは非置換である。他の好ましい実施形態において、ピラゾロピリミジンおよびプリンのピリミジン環が、環の位置をラベルする目的で重ね合わされるとき、Hetはピラゾロピリミジンであり、プリン環の6位または9位に対応する位置でLに連結される。
【0074】
上に記載される好ましい特徴の任意の組み合わせを有する式(3)の化合物は、時には、特に好ましい。
【0075】
具体的な実施形態において、PI3Kインヒビターは、式(3a)もしくは(3b)もしくは(3c)、またはそれらの薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物を有する化合物であり得:
【0076】
【化13】

ここで:
各Jおよび各Yは、独立して、F、Cl、Br、CN、Me、CF、OMe、CONR、COOR、NMe、NH、NHMe、−Q−(CH−OR、および−Q−(CH−N(Rからなる群から選択され、ここでqは0〜4であり、Qは存在しないか、またはO、SおよびNRから選択され;
mは、0〜2であり、kは0〜3であり;
Lは、−C(R−、−C(R−NR−、および−C(R−S−から選択され、
各Rは、独立して、H、または必要に応じて置換されたC1〜C4アルキル、C2〜C4アルケニル、またはC2〜C4アルキニル、または必要に応じて置換されたC2〜C4ヘテロアルキルであり;
そして、単一の原子上または隣接する原子上に存在する場合、2つのRは、必要に応じて置換され、ならびに環員としてN、OおよびSから選択される2つまでのヘテロ原子を含み得る3〜7員環を形成するように環化し得;
Hetは
【0077】
【化14】

からなる群から選択され:
ここで、[L]は、Lが結合されるHetの原子を示し;そして
各Xは、独立して、H、F、Cl、Br、Me、CF、OH、OMe、NH、NHAc、またはNHMeであり;
そして、各必要に応じて置換されたアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、ヘテロアルキニル、アシル、ヘテロアシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、およびヘテロアリールアルキル上の必要に応じた置換基は、C1〜C4アルキル、ハロ、=O、=N−CN、=N−OR’、=NR’、OR’、NR’、SR’、SOR’、SONR’、NR’SOR’、NR’CONR’、NR’COOR’、NR’COR’、CN、COOR’、CONR’、OOCR’、COR’、およびNOから選択され、
ここで各R’は、独立して、H、C1〜C6アルキル、C2〜C6ヘテロアルキル、C1〜C6アシル、C2〜C6ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリール、C7〜12アリールアルキル、またはC6〜12ヘテロアリールアルキルであり、そのそれぞれは、ハロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ヘテロアルキル、C1〜C6アシル、C1〜C6ヘテロアシル、ヒドロキシ、アミノ、および=Oから選択される1つまたはそれより多くの基で必要に応じて置換され;
そしてここで、同じ原子上または隣接する原子上の2つのRは、N、OおよびSから選択される3つまでのヘテロ原子を必要に応じて含む、3〜7員環を形成するように連結され得;
そしてpは0〜2であり;
またはその薬学的に受容可能な塩である。
【0078】
式(3a)および式(3b)および式(3c)が挙げられる式(3)の化合物は、本発明の範囲内の好ましい化合物である。特に好ましいのは、PI3Kβおよび/またはPI3Kδの選択的なインヒビターである、これらの式の任意の1つの化合物である。これらの化合物において、mは頻繁に0または1であり、Jは、存在する場合、頻繁にF、ClまたはCFである。各Yは、独立して選択され、少なくとも1つのYは、しばしばMe、OMe、CN、CF、またはハロを表す。特定の実施形態において、Yは、F、Me、またはCNである。式(3)中のHet基についての各Xは、独立して選択され、頻繁に各Xは、H、F、Cl、Me、CF、フェニル、またはNHである。
【0079】
式(3)の化合物のいくつかの好ましい実施形態において、示されるフェニル環は、非置換のフェニル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、2−フルオロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、2,3−ジフルオロフェニル、2,5−ジフルオロフェニル、2,4−ジフルオロフェニル、3,4−ジフルオロフェニル、3,5−ジフルオロフェニル、および2,6−ジフルオロフェニルから選択されたものである。
【0080】
式(3)の化合物のいくつかの好ましい実施形態において、−L−Hetは、−CH−Het、−CH−NH−Het、−CH−S−Het、−CHMe−Het、−CHMe−S−Het、−CHMe−NH−Het、−CHEt−Het、−CHEt−S−Het、または−CHEt−NH−Hetを表す。
【0081】
式(3)の化合物のいくつかの好ましい実施形態において、Hetは、6位でLに連結されるプリンを表す。他の好ましい実施形態において、−L−Hetが−CH−Het、−CHMe−Het、または−CHEt−Hetであるとき、Hetは、プリンの9位でLに連結されるプリンである。Hetがプリン環であるとき、それは時には非置換であり、それは時には、アミノ、フルオロ、アリール、メチル、またはCFによって置換され;そして、時には、それは非置換である。他の好ましい実施形態において、ピラゾロピリミジンおよびプリンのピリミジン環が、環の位置をラベルする目的で重ね合わされるとき、Hetはピラゾロピリミジンであり、プリン環の6位または9位に対応する位置でLに連結される。
【0082】
特定の実施形態において、上記化合物および方法は、例えば、塩の形成に備えることによって、可溶性の特性を改善するアミン置換されたアルキルまたはヘテロアルキル基を含む、式(3)の、PI3KβまたはPI3Kδの選択的なインヒビターを含む。このアミン置換されたアルキルまたはヘテロアルキル基は、これらの化合物のいずれかの部分に結合され得る(式(3)中のHetまたはリンカー「L」が挙げられる)か、またはそれは式(3)中のZ上またはR上にあり得る。アミン置換された基は、これらの化合物についての改善された可溶性の特徴を提供し、従って、PI3Kのδアイソフォームについてのそれらの選択性に不利に影響することなく、それらの薬物動態学的特性を改善する。本発明の化合物上の置換基として存在し得る適切なアミン置換された基としては、−(CH−NR’、および−O−(CH−NR’が挙げられ、ここで、pは1〜4であり、各R’はHまたはC1〜C4アルキル(頻繁にMe)であり、ここで1つのN上に存在する2つのR’は、3〜8員環を形成するように環化し得、これは追加のヘテロ原子(例えば、N、O、またはS)を必要に応じて含み得る。
【0083】
式(3)の化合物は、当該分野において公知である方法を用いて、入手可能な出発物質から容易に調製される。式(1)および(2)の化合物のチエノピリミジノン部分を構築する方法の例は、例えば、公開されたPCT出願WO 03/050064において提供される。その出願におけるスキームAは、式(2a)の化合物のチエノピリミジノン部分が調製され得るルートを提供し、スキームB〜Gは、式(2b)の化合物のチエノピリミジノン部分が調製され得るルートを提供する。式(2c)の化合物は、化合物B1の適切なチオフェン異性体に対応する入手可能な出発物質から同様に調製され得る。これらのチエノピリミジノン中間体のピリミジノン環の2位に結合される保護されたアミンを転換させる方法は、当該分野において公知であり、例えば、米国特許第6,518,277号;同第6,667,300号;同第6,949,535号;および同第6,800,620号、ならびに公開された米国特許出願第2006/0106038号およびPCT出願WO 2005/113554において見出され得る。式(3)の化合物の合成についての追加の方法は、2006年11月13日に出願された、非公開の米国特許出願第60/858,850号において開示される。これらの参照はまた、PI3Kδのインヒビターとしてのこれらの化合物の活性を決定する方法を提供し;従って、それらの方法は、当該分野において公知である。
【0084】
これらの化合物の特定のものは、以下の表に例示されるように、他のPI3Kアイソフォームにおけるそれらの活性と比較してPI3Kδの阻害について高度に活性であり、また高度に選択的であり、ここで、式(3)の2つの化合物が、同様のプリンおよび連結構成要素を有する他のPI3Kインヒビターと比較される(参照化合物4aおよび4b)。
【0085】
表1.選択されたPI3Kインヒビターの活性および選択性
【0086】
【表1】

本発明の化合物は、種々の互変異性体で示され得、いくつかの場合、複数の異性体を含み得る。本発明は、当業者によって安定であると一般に考えられる各互変異性体を含む。特に、本発明の化合物のプリン環は、異なる互変異性体において存在し得、便宜上、時々1つのみが示されるが、それぞれが含まれる。それは、他の異性体を除外する手法で特定の異性体が示される場合を除いて、各化合物の個々の異性体それぞれを含む。例えば、単一の異性体として化合物(2d)が示される場合、主としてその異性体からなり、およびほんの少量(例えば、20%未満、または10%未満)の反対のエナンチオマーを含む物質を記載することが意図され;好ましくは、具体的に示される異性体は5%未満のエナンチオ異性体を含む。
【0087】
本発明の化合物のいくつかは、分離可能な回転異性体、またはアトロプ異性体として存在し得、本発明は、これらの異性体のそれぞれの使用を含む。しかし、いくつかの例において、アトロプ異性体のうちの1つが好ましく、またはこのような異性体の混合物よりも単一のアトロプ異性体が好ましい。例えば、単一の異性体として化合物(2c’)が示される場合、主としてその異性体からなり、およびほんの少量(例えば、20%未満、または10%未満)の反対のエナンチオマーを含む物質を記載することが意図され;好ましくは、具体的に示されるアトロプ異性体は5%未満のエナンチオアトロプ異性体を含む。このタイプの化合物におけるアトロプ異性体は、薬物動態学的挙動において驚くべき違いを示すことが見出され、実質的に異なる生物学的活性(例えば、示差吸収速度(differential absorption rate))、および異なる代謝速度をもたらしてきた。従って、2つのアトロプ異性体が、細胞アッセイにおいて、経路に及ぼす同様の直接作用を提供するときでさえ、それらは、異なるAUCおよびt1/2値によって実証されるような非常に異なるPKプロフィールを提供し得る。
【0088】
本発明は、異性体の混合物(ラセミ混合物および任意の特定の異性体について富化された混合物が挙げられる)をさらに含む。いくつかの実施形態において、本明細書中に示されるように、1つの異性体が好ましい;しかし、周知の通り、本発明の範囲から外れることなく、他の1つの異性体が、好ましい異性体の他に存在し得る。キナゾリノン環とプリン複素環との間で連結している基は、キラル炭素を含み、そのキラル中心のS異性体が、時には好ましい。
【0089】
本発明の化合物は、塩としてしばしば得られ、使用され得る。いくつかの実施形態において、本発明の化合物の塩は、肝障害を処置する方法において使用され;このような実施形態において、上記塩は、しばしば薬学的に受容可能な塩である。「薬学的に受容可能な」塩は、当該分野において周知であり、本発明の化合物と一緒に、処置を必要としている被験体へと投与されるときに顕著に有害ではない対イオンを含む酸付加塩および塩基付加塩を含む。
【0090】
「薬学的に受容可能な塩」は、処方物の他の成分と適合性があり、その受容者に対して有害ではないとき、その限りにおいて生理学的に受容可能である任意の塩を指す。いくつかの具体的な好ましい例は:酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、塩酸塩、メタンスルホン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩、マレイン酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、グリコール酸塩、およびシュウ酸塩であり、それらは、化合物が塩基性の(プロトン化可能な)特色を含むときに形成され得る。同様に、上記薬学的に受容可能な塩は、本発明の化合物が酸性の(脱プロトン化可能な)特色を含むときに、塩基付加生成物を含む。本発明の脱プロトン化化合物に対する対イオンの非限定的な例としては、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム、カリウム、リチウム、亜鉛、および同様のカチオンが挙げられる。
【0091】
前に記載されるように、用語「PI3Kδの選択的なインヒビター」または「PI3Kβの選択的なインヒビター」は、一般に、PI3Kファミリーの他のイソ酵素よりも効果的にPI3Kδまたはβイソ酵素の活性を阻害する化合物を指す。酵素活性(または他の生物学的活性)のインヒビターとしての化合物の相対効果は、各化合物が、あらかじめ定義された程度までの活性を阻害する濃度を決定し、次にその結果を比較することによって、確立され得る。代表的に、好ましい測定法は、生化学的アッセイにおいて活性の50%を阻害する濃度、すなわち、50%阻害濃度、または「IC50」である。IC50測定法は、当該分野において公知である従来の技術を用いて達成され得る。一般に、IC50は、研究されているインヒビターの濃度の範囲が存在する状態において、所定の酵素の活性を測定することにより決定され得る。酵素活性の実験的に得られた値は、次に、使用されたインヒビター濃度に対してプロットされる。50%の酵素活性(あらゆるインヒビターが欠如しているときの活性と比較して)を示すインヒビターの濃度が、IC50値として取得される。類似して、他の阻害濃度は、活性の適切な測定法を介して定義され得る。例えば、いくつかの設定において、90%阻害濃度、すなわちIC90などを確立することは、望ましいことがある。
【0092】
従って、PI3Kδの選択的なインヒビターは、他のクラスIのPI3Kファミリーメンバーのいずれかまたは全てに関するIC50値よりも少なくとも10倍、別の局面において、少なくとも20倍、そして別の局面において、少なくとも30倍低いPI3Kδに関して、50%阻害濃度(IC50)を示す化合物を指すことが代替的に理解され得る。本発明の代替的な実施形態において、用語 PI3Kδの選択的なインヒビターは、他のPI3KクラスIファミリーメンバーのいずれかまたは全てに関するIC50値よりも少なくとも50倍、別の局面において、少なくとも100倍、追加の局面において、少なくとも200倍、そしてさらに別の局面において、少なくとも500倍低いPI3Kδに関して、IC50を示す化合物を指すことが理解され得る。PI3Kδの選択的なインヒビターは、上に記載されるように、それが、インビボでのPI3Kδの活性を選択的に阻害するような量で代表的に投与される。
【0093】
PI3Kβの選択的なインヒビターは、上の記載がPI3Kδの代わりにPI3Kβに関する場合に、同様に定義される。
【0094】
PI3Kγの選択的なインヒビターは、上の記載がPI3Kδの代わりにPI3Kγに関する場合に、同様に定義される。
【0095】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、本発明の1つより多くの化合物を用いて、PI3Kのアイソフォームの中で、標的レベルの選択性を達成する。従って、本発明は、本明細書中に開示される化合物から選択される2つの化合物を用いて、肝障害を処置する方法を含む。上記2つの化合物は、代表的に、PI3Kの異なるアイソフォームについて選択性であり、個々の組成物として、または単一の組成物中に組み合わせて、一緒に投与され得るか;または、それらは、別個に投与され得る(異なるスケジュールでの投与、および/または投与の異なる経路による投与が挙げられる)。
【0096】
いくつかの実施形態において、上記化合物は、上の表1における化合物から選択される。
【0097】
いくつかの実施形態において、上記方法は、以下の群から選択される化合物を利用する:
【0098】
【化15】

【0099】
【化16】

本明細書中に開示される処置のための被験体は、肝障害(例えば、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、硬変症、肝炎、肝臓腺腫、インスリン過敏症、または肝細胞癌のような肝臓がん)に苦しむ、哺乳動物(例えば、ヒト)である。いくつかの実施形態において、上記被験体は、NAFLDまたはNASHと診断される被験体であるか、またはアルコール消費に関連しない硬変症と診断される被験体である。あるいは、上記被験体は、NAFLDまたはNASHのリスクにあり得、本発明の方法は、NAFLDまたはNASHの発達を防ぐ、または遅らせるために使用され得る。
【0100】
いくつかの実施形態において、上記被験体のPtenレベルは決定され、そして、年齢および性別を考慮して、上記被験体のPtenレベルが上記被験体の集団について正常よりも低い場合に、上記被験体は、本方法による処置に適した被験体として同定される。1つの実施形態において、上記被験体は、上記被験体のPtenレベルが、上記被験体の性別および年齢に基づき、上記被験体に関して正常であるレベルの約半分、または半分未満である場合に、本方法による処置に適している。
【0101】
いくつかの実施形態において、被験体の脂質レベルは、上記被験体が、本発明の化合物での処置について特に良好な候補であるかどうかを決定するために決定される。1つの実施形態において、上記被験体の肝臓トリグリセリドレベル(mg/g)は、上記被験体の血清トリグリセリドレベル(mg/dl)と比較され、上記被験体の肝臓トリグリセリドレベルが上記被験体の血清トリグリセリドレベルよりも高い場合に、上記被験体は、PI3Kインヒビターでの処置に特に適していると考えられる。
【0102】
本発明の化合物は、当該分野において公知である方法を用いて、入手可能な出発物質から容易に調製される。本発明の方法において有用である上記化合物を合成する方法の例は、米国特許第6,518,277号;同第6,667,300号;同第6,949,535号;および同第6,800,620号、ならびに公開された米国特許出願第2006/0106038号およびPCT出願WO 2005/113554において提供される。これらの参照はまた、PI3KδまたはPI3Kβなどの選択的なインヒビターとして、これらの化合物の活性を決定する方法を提供する。従って、本明細書中に記載される方法における使用のために、選択的なインヒビターを作る方法および選択する方法は公知である。
【0103】
本発明のインヒビターは、キャリア分子と共有的または非共有的に結合し得、このキャリア分子としては、直鎖ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、ポリリジン、デキストランなど)、分枝鎖ポリマー(米国特許第4,289,872号および同第5,229,490号;PCT公開番号WO 93/21259を参照のこと)、脂質、コレステロール群(例えば、ステロイド)、または炭水化物またはオリゴ糖類が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の薬学的組成物中での使用のためのキャリアの具体的な例としては、炭水化物ベースのポリマー(例えば、トレハロース、マンニトール、キシリトール、スクロース、ラクトース、ソルビトール、デキストラン(例えば、シクロデキストラン)、セルロース、およびセルロース誘導体)が挙げられる。また、リポソーム、マイクロカプセルもしくはマイクロスフィア、包接複合体、または他のタイプのキャリアの使用が企図される。
【0104】
他のキャリアとしては、1つまたはそれより多くの水溶性ポリマー付着物(例えば、ポリオキシエチレングリコール、またはポリプロピレングリコール(米国特許第4,640,835号、同第4,496,689号、同第4,301,144号、同第4,670,417号、同第4,791,192号、および同第4,179,337号に記載される))が挙げられる。当該分野において公知である、さらに他の有用なキャリアポリマーとしては、モノメトキシポリエチレングリコール、ポリ−(N−ビニルピロリドン)−ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチレン化ポリオール(例えば、グリセロール)およびポリビニルアルコール、ならびにこれらのポリマーの混合物が挙げられる。
【0105】
方法は、そのままで、または本明細書中に記載されるような組み合わせで、必要とする個体へのインヒビターの投与を含み、それぞれの場合、1つまたはそれより多くの適切な希釈剤、充填剤、塩、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、滑剤、湿潤剤、制御放出マトリックス、着色料/香味剤、キャリア、賦形剤、バッファー、安定剤、可溶化剤、当該分野において周知である他の物質、およびそれらの組み合わせを必要に応じて含む。
【0106】
薬学的なビヒクル、賦形剤、または媒体として働く、任意の薬学的に受容可能な(すなわち、滅菌および非毒性の)液体、半固体、または固体の希釈剤が使用され得る。例示的な希釈剤としては、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ステアリン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、鉱油、カカオバター(cocoa butter)、およびカカオ脂(oil of theobroma)、メチルヒドロキシベンゾエートおよびプロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、アルギネート、炭水化物、特にマンニトール、α−ラクトース、無水ラクトース、セルロース、スクロース、デキストロース、ソルビトール、改変デキストラン、アラビアゴム、およびデンプンが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの市販されている希釈剤は、Fast−Flo(登録商標)、Emdex(登録商標)、STA−Rx 1500(登録商標)、Emcompress(登録商標)、およびAvicel(登録商標)である。このような組成物は、PI3Kδインヒビター化合物の、物理的状態、安定性、インビボ放出の速度、およびインビボクリアランスの速度に影響を及ぼし得る(例えば、本明細書中で参考として援用されるRemington’s Pharmaceutical Sciences 18th Ed.pp.1435−1712(1990)を参照のこと)。
【0107】
薬学的に受容可能な充填剤としては、例えば、ラクトース、微結晶性セルロース、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、硫酸カルシウム、デキストロース、マンニトール、および/またはスクロースが挙げられ得る。
【0108】
無機塩(三リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、および塩化ナトリウムが挙げられる)はまた、上記薬学的組成物において、充填剤として使用され得る。アミノ酸は、上記薬学的組成物のバッファー処方物においての使用として使用され得る。
【0109】
崩壊剤は、インヒビターの固体投薬処方物において、含まれ得る。崩壊剤として使用される物質としては、デンプン(デンプンに基づいた市販の崩壊剤であるExplotab(登録商標)が挙げられる)が挙げられるが、これに限定されない。デンプングリコール酸ナトリウム、Amberlite(登録商標)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ウルトラミロペクチン(ultramylopectin)、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、オレンジピール、酸性カルボキシメチルセルロース、天然の海綿およびベントナイトは、上記薬学的組成物における崩壊剤として、全て使用され得る。他の崩壊剤としては、不溶性のカチオン交換樹脂が挙げられる。粉状のゴム(寒天、カラヤ、またはトラガカントのような粉状のゴムが挙げられる)は、崩壊剤として、および結合剤として使用され得る。アルギン酸およびそのナトリウム塩もまた、崩壊剤として有用である。
【0110】
結合剤は、治療剤を一緒に保持して、硬い錠剤を形成するために使用され得、天然産物(例えば、アラビアゴム、トラガカント、デンプン、およびゼラチン)由来の物質を含む。他のものとしては、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、およびカルボキシメチルセルロース(CMC)が挙げられる。ポリビニルピロリドン(PVP)、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は、治療成分の顆粒化を容易にするために、アルコール溶液中で両方とも使用され得る。
【0111】
減摩剤は、治療成分の処方物中に含まれ得、処方プロセスの間にくっつくことを防ぐ。滑沢剤は、治療成分とダイ壁(die wall)との間の層として使用され得、これらのものとしては;ステアリン酸(そのマグネシウム塩およびカルシウム塩が挙げられる)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、流動パラフィン、植物油、および蝋が挙げられ得るが、これらに限定されない。可溶性滑沢剤もまた使用され得る(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、種々の分子量のポリエチレングリコール、Carbowax(登録商標)4000および6000)。
【0112】
処方の間に治療成分の流動特性を改善し得、圧縮の間の再配列を助けるための滑剤が添加され得る。適切な滑剤としては、デンプン、滑石、発熱性シリカ、および水和シリコアルミネートが挙げられる。
【0113】
水性の環境への治療物質の溶解を助けるために、界面活性剤が、湿潤剤として添加され得る。天然または合成の界面活性剤が使用され得る。界面活性剤としては、アニオン洗剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(dioctyl sodium sulfosuccinate)、およびスルホン酸ジオクチルナトリウム(dioctyl sodium sulfonate))挙げられ得る。カチオン洗剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、および塩化ベンゼトニウム)が使用され得る。薬学的処方物において使用され得る非イオン性洗剤としては、ラウロマクロゴール 400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油10、50、および60、モノステアリン酸グリセロール、ポリソルベート40、60、65、および80、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロース、ならびにカルボキシメチルセルロースが挙げられる。これらの界面活性剤は、本発明の薬学的組成物中に、単独または異なる比での混合物としてのいずれかで存在し得る。
【0114】
制御放出処方物は好ましいことがある。本発明のインヒビターは、拡散または浸出機構のいずれかによって、放出を可能にする不活性マトリックスへと組み込まれ得る(例えば、ゴム)。ゆっくりと変性するマトリックスはまた、上記薬学的処方物中に組み込まれ得る(例えば、アルギネート、多糖類)。制御放出の別の形態は、Oros(登録商標)治療システム(Alza Corp.)に基づく方法であり、すなわち、薬物は、浸透作用に起因して、単一の小さい開口部を介して、水が入って、上記インヒビター化合物を押し出すことを可能にする半透膜に囲まれる。いくつかの腸溶性コーティングはまた、遅延放出作用を有する。
【0115】
着色料および香味剤もまた、上記薬学的組成物中に含まれ得る。例えば、本発明のインヒビターは、(例えば、リポソーム、またはマイクロスフィア被包によって)処方され得、次に、食用品内(例えば、着色料および香味剤を含む飲料)にさらに含まれ得る。
【0116】
上記治療剤はまた、フィルムコートされた錠剤において与えられ得る。上記薬学的組成物のコーティングにおける使用のための非腸溶性物質としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシ−エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピル−メチルセルロース、カルボキシ−メチルセルロースナトリウム、ポビドン、およびポリエチレングリコールが挙げられる。上記薬学的組成物のコーティングにおける使用のための腸溶性物質としては、フタル酸のエステルが挙げられる。物質の混合物は、最適なフィルムコーティングを提供するために使用され得る。フィルムコーティングの製造は、パンコーターにおいて、流動床において、または圧縮コーティングによって、実施され得る。
【0117】
上記組成物は、固体、半固体、液体、または気体の形態で投与され得るか、または乾燥粉末、例えば、凍結乾燥された形態であり得る。上記薬学的組成物は、送達に便利な形態でパッケージされ得る(例えば、カプセル剤、サシェ、カシェ剤、ゼラチン剤、紙、錠剤、カプセル剤、坐剤、ペレット剤、丸剤、トローチ剤、舐剤、または当該分野において公知である他の形態が挙げられる)。パッケージのタイプは、一般に、所望される投与の経路に依存する。経皮処方物が企図されるのと同様に、移植可能な徐放性処方物もまた、企図される。
【0118】
本発明に従う方法において、上記インヒビター化合物は、種々の経路によって投与され得る。例えば、薬学的組成物は、注射のため、または経口、鼻、経皮、もしくは投与の他の形態(例えば、静脈内、皮内、筋肉内、乳房内、腹腔内、髄腔内、眼内、球後、肺内(例えば、エアゾール化薬物)、または皮下の注射(長期間の放出のためのデポ投与(例えば、脾膜(splenic capsule)下、脳、または角膜内に埋め込まれる)が挙げられる)による投与;舌下、肛門、膣によるか、または外科移植(例えば、脾膜下、脳、または角膜内に埋め込まれる)による投与が挙げられる)のためにあり得る。処置は、単一用量またはある期間にわたる複数の用量からなり得る。一般に、本発明の方法は、上に記載されるように、有効な量の本発明のインヒビターを薬学的に受容可能な希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバントおよび/またはキャリアと一緒に投与することを伴う。
【0119】
1つの局面において、本発明は、本発明の薬学的組成物の経口投与のための方法を提供する。経口の固体剤形は、一般に、上記のRemington’s Pharmaceutical Sciences、chapter 89において記載される。固体剤形としては、錠剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤、または舐剤、およびカシェ剤またはペレット剤が挙げられる。また、リポソーム被包またはプロテイノイド被包は、(例えば、米国特許第4,925,673号において報告されるプロテイノイドマイクロスフィアとして)上記組成物を処方するために使用され得る。リポソーム被包は、種々のポリマーで誘導体化されるリポソームを含み得る(例えば、米国特許第5,013,556号)。一般に、上記処方物は、本発明の化合物、ならびに胃における分解に対して保護し、かつ、腸において生物学的に活性のある物質の放出を可能にする不活性成分を含む。
【0120】
上記インヒビターは、粒径約1mmの顆粒剤またはペレット剤の形態で、微細な複数粒子(multiparticulate)として上記処方物中に含まれ得る。カプセル剤投与のための上記物質の処方物はまた、散剤、軽く圧縮された栓のようであり得るか、または錠剤のようでさえあり得る。上記カプセル剤は、圧縮によって調製され得る。
【0121】
また、本発明に従うPI3Kインヒビターの肺送達が、本明細書中で企図される。本発明のこの局面に従って、上記インヒビターは、適切な組成物の吸入によって哺乳動物の肺まで送達され、そして上記PI3Kインヒビターは、肺上皮内層(lung epithelial lining)を横切って血流まで通り抜ける。
【0122】
治療生成物の肺送達のために設計される多種多様な機械デバイスが、本発明の実施における使用のために企図され、この機械デバイスとしては、噴霧器、定量吸入器、および粉末吸入器が挙げられるが、これらに限定されず、これらの全ては、当業者によく知られている。本発明の実施に適した市販のデバイスのいくつかの具体的な例は、Mallinckrodt,Inc.、St.Louis、Mo.によって製造されるUltraVentTM噴霧器;Marquest Medical Products、Englewood、Coloradoによって製造されるAcorn II(登録商標)噴霧器;Glaxo Inc.、Research Triangle Park、North Carolinaによって製造されるVentolin(登録商標)定量吸入器;およびFisons Corp.、Bedford、Massによって製造されるSpinhaler(登録商標)粉末吸入器である。
【0123】
全てのこのようなデバイスは、本発明の化合物の分配に適した処方物の使用を必要とする。代表的に、各処方物は、用いられるデバイスのタイプに特異的であり、治療において有用である希釈剤、アジュバントおよび/またはキャリアの他に、適切な噴射剤物質の使用を伴い得る。
【0124】
本発明の方法の実施において、上記薬学的組成物は、一般に、1pgの化合物/体重1kg〜1000mgの化合物/体重1kg、0.01mgの化合物/体重1kg〜100mgの化合物/体重1kg、0.1mgの化合物/体重1kg〜20mgの化合物/体重1kgの用量で提供され、1日に1回の用量、またはより長いかもしくはより短い間隔(例えば、1日おき、1週間に2回、1週間に1回、または1日に2回もしくは3回)で等しい用量で与えられる。上記インヒビター組成物は、初回のボーラス、その後の薬物生成物の治療循環レベルを維持するための連続的な注入によって投与され得る。良好な医学的実施および処置されるべき個体の臨床状態により決定されるような、有効な投薬量および投与計画を、当業者は容易に最適化する。投薬の頻度は、薬剤の薬物動態学的パラメーターおよび投与の経路に依存する。
【0125】
最適な薬学的処方物は、投与の経路および所望される投薬量に依存して当業者によって決定される(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、最新版を参照;この開示は、本明細書により参考として援用される)。このような処方物は、投与される薬剤の、物理的状態、安定性、インビボ放出の速度、およびインビボクリアランスの速度に影響を及ぼし得る。投与の形態に依存して、適切な用量が、体重、身体の表面積および臓器の大きさに従って計算され得る。上に言及される処方物のそれぞれを伴う、処置のための適切な投薬量を決定するために必要な計算のさらなる細分は、特に本明細書中に開示される投薬量の情報およびアッセイ、ならびにヒト臨床試験において観測される薬物動態学的データを考慮して、過度の実験なしで当業者によって規定通りになされる。適切な投薬量は、薬物の働きを改変する種々の要因(例えば、薬物の特定の活性、適応症の重症度、および個体の応答性、個体の、年齢、状態、体重、性別および食事、投与の時間、および他の臨床要因)を考慮して、適切な医師と共同して、血中濃度投薬量(blood level dosage)を決定するために確立されたアッセイを用いることによって確かめられ得る。研究が行われるに従って、さらなる情報が、造血細胞の異常増殖を伴う種々の適応症についての適切な投薬量レベルおよび処置の持続期間に関して現れる。
【0126】
以下に列挙される項目は、本発明の追加の実施形態である。
【0127】
1.1つの実施形態において、本発明は、肝障害を処置する方法であって、この方法は、有効な量の、PI3Kキナーゼの少なくとも1つのアイソフォームの選択的なインヒビターを、それを必要としている被験体へ投与する工程を含む、方法を提供する。
【0128】
2.上記インヒビターが、他のクラスI PI3Kアイソフォームの阻害と比較して、PI3KδもしくはPI3Kβまたは両方の阻害に対して選択的である、実施形態1の方法。
【0129】
3.上記障害が、非アルコール性脂肪性肝炎である、実施形態1または2の方法。
【0130】
4.上記肝障害が、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、肝脂肪症、硬変症、肝炎、肝臓腺腫、インスリン過敏症、または肝臓がんである、実施形態1または2の方法。
【0131】
5.上記インヒビターが式(1a)または式(1b):
【0132】
【化17】

の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であり、
ここで:
Wは、H、Me、Cl、およびFからなる群から選択され;
XおよびX’は、独立して、H、Me、Cl、およびFからなる群から選択され;
Yは、H、Me、およびEtからなる群から選択され;
Zは、NHまたは結合であり;そして
AはNHであるか、またはAは存在せず、プリン環へのZの結合点を示し;
Aが存在しないときにQはHであるか、またはAがNHであるときに、Qは存在せず、プリン環へのZの結合点を示し;
ただし、W、X、およびYのうちの2つ以下は、Hを表す、
実施形態1〜4のいずれかの方法。
【0133】
6.W、X、およびYのうちの1つ以下が、Hを表す、実施形態5の方法。
【0134】
7.WがMeである、実施形態5〜6のいずれかの方法。
【0135】
8.XがH、MeまたはFである、実施形態5〜7のいずれかの方法。
【0136】
9.ZがNHである、実施形態5〜8のいずれかの方法。
【0137】
10.Zが結合である、実施形態5〜8のいずれかの方法。
【0138】
11.Aが存在せず、QがHである、実施形態9または10の方法。
【0139】
12.AがNHであり、Qがプリン環へのZの結合点を示す、実施形態9または10の方法。
【0140】
13.W、XおよびYのうちの少なくとも1つがMeである、実施形態5〜12のいずれかの方法。
【0141】
14.YがHである、実施形態5〜13のいずれかの方法。
【0142】
15.YがMeである、実施形態5〜13のいずれかの方法。
【0143】
16.YがEtである、実施形態5〜13のいずれかの方法。
【0144】
17.上記化合物が式(1b)の化合物であり、ここでXおよびX’は異なる、実施形態5〜16のうちのいずれか1つの方法。
【0145】
18.X’がHであり、XがClおよびMeから選択される、実施形態17の方法。
【0146】
19.上記インヒビターが式(3):
【0147】
【化18】

の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であり、
ここで:
、QおよびQのうちの1つはSであり、Q、QおよびQのうちの他の2つは、−CR−であり;
ここで、各Rは、独立して、H、ハロ、OR、NR、NROR、NRNR、SR、SOR、SOR、SONR、NRSOR、NRCONR、NRCOOR、NRCOR、CF、CN、COOR、CONR、OOCR、COR、もしくはNOであるか、
またはRは、C1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8ヘテロアルケニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C8ヘテロアルキニル、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C12ヘテロアリール、C7〜C12アリールアルキル、およびC6〜C12ヘテロアリールアルキル基からなる群から選択される、必要に応じて置換されたメンバーであり得、
ここで各Rは、独立して、H、またはC1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8ヘテロアルケニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C8ヘテロアルキニル、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリール、C7〜C12アリールアルキル、またはC6〜C12ヘテロアリールアルキルであり、
そしてここで、同じ原子上または隣接する原子上の2つのRは、環員として1つまたは2つのN、OまたはSを必要に応じて含む3〜8員環を形成するように連結し得;
そしてここで、H以外の各R基、および2つのR基を一緒に連結することにより形成される各環は、必要に応じて置換され;
Zは結合であるか、またはO、NR、C1〜C6アルキレンもしくはC1〜C6ヘテロアルキレンであり、そのそれぞれは、2つまでのC1〜C6アルキル基もしくはC2〜C6ヘテロアルキル基で必要に応じて置換され、ここで上記アルキル基もしくはヘテロアルキル基のうちの2つは、環員としてO、NおよびSから選択される2つまでのヘテロ原子を含む3〜7員環を形成するように、必要に応じて環化し得;
は、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、もしくはヘテロシクロアルキルであり、そのそれぞれは、3つまでのRで必要に応じて置換されるか、
またはRは、Zが結合でない場合にHであり得;
Lは、−C(R−、−C(R−C(R−、−C(R−NR−、および−C(R−S(O)−からなる群から選択され、
ここで各Rは、独立して、H、またはC1〜C6アルキル、C2〜C6ヘテロアルキル、C2〜C6アルケニル、およびC2〜C6アルキニルから選択される、必要に応じて置換されたメンバーであり、そしてnは0〜2であり;
そして2つのRは、L上に存在する場合に、環員としてN、OおよびSから選択される2つまでのヘテロ原子を含み得る、3〜7員環を形成するように環化し得;
Hetは単環式環系または二環式環系であり、ここで少なくとも2つの環原子はNであり、ここで少なくとも1つの環は芳香族であり、そしてHetは、R、N(R、S(O)、OR、ハロ、CF、CN、NROR、NRN(R、SR、SOR、SO、SON(R、NRSO、NRCON(R、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、CON(R、OOCR、COR、またはNOから選択される3つまでの置換基で必要に応じて置換され、
ここで各Rは、独立して、H、またはC1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8ヘテロアルケニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C8ヘテロアルキニル、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリール、C7〜C12アリールアルキル、およびC6〜C12ヘテロアリールアルキルからなる群から選択される、必要に応じて置換されたメンバーであり、
そしてここで、同じ原子上または隣接する原子上の2つのRは、N、OおよびSから選択される1つまたは2つのヘテロ原子を必要に応じて含む3〜8員環を形成するように連結され得;
ここで、各必要に応じて置換された、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、ヘテロアルキニル、アシル、ヘテロアシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、およびヘテロアリールアルキル上の必要に応じた置換基は、C1〜C4アルキル、ハロ、CF、CN、=O、=N−CN、=N−OR’、=NR’、OR’、NR’、SR’、SOR’、SONR’、NR’SOR’、NR’CONR’、NR’COOR’、NR’COR’、CN、COOR’、CONR’、OOCR’、COR’、およびNOから選択され、
ここで各R’は、独立して、H、C1〜C6アルキル、C2〜C6ヘテロアルキル、C1〜C6アシル、C2〜C6ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリール、C7〜12アリールアルキル、またはC6〜12ヘテロアリールアルキルであり、そのそれぞれは、ハロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ヘテロアルキル、C1〜C6アシル、C1〜C6ヘテロアシル、ヒドロキシ、アミノ、および=Oから選択される1つまたはそれより多くの基で必要に応じて置換され;
そしてここで、同じ原子上または隣接する原子上の2つのR’は、N、OおよびSから選択される3つまでのヘテロ原子を必要に応じて含む、3〜7員環を形成するように連結され得;そして
pは0〜2である、実施形態1〜4のうちのいずれか1つの方法。
【0148】
20.上記インヒビターが式(3a)、(3b)、または(3c):
【0149】
【化19】

の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であり、
ここで:
各Jおよび各Yは、独立して、F、Cl、Br、CN、Me、CF、OMe、CONR、COOR、NMe、NH、NHMe、−Q−(CH−OR、および−Q−(CH−N(Rからなる群から選択され、ここでqは0〜4であり、Qは存在しないか、またはO、SおよびNRから選択され;
mは、0〜2であり、kは0〜3であり;
Lは、−C(R−、−C(R−NR−、および−C(R−S−から選択され、
各Rは、独立して、H、または必要に応じて置換されたC1〜C4アルキル、C2〜C4アルケニル、またはC2〜C4アルキニル、または必要に応じて置換されたC2〜C4ヘテロアルキルであり;
そして、単一の原子上または隣接する原子上に存在する場合、2つのRは、必要に応じて置換され、ならびに環員としてN、OおよびSから選択される2つまでのヘテロ原子を含み得る3〜7員環を形成するように環化し得;
Hetは
【0150】
【化20】

からなる群から選択され:
ここで、[L]は、Lが結合されるHetの原子を示し;そして
各Xは、独立して、H、F、Cl、Br、Me、CF、OH、OMe、NH、NHAc、またはNHMeであり;
そして、各必要に応じて置換されたアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、ヘテロアルキニル、アシル、ヘテロアシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、およびヘテロアリールアルキル上の必要に応じた置換基は、C1〜C4アルキル、ハロ、=O、=N−CN、=N−OR’、=NR’、OR’、NR’、SR’、SOR’、SONR’、NR’SOR’、NR’CONR’、NR’COOR’、NR’COR’、CN、COOR’、CONR’、OOCR’、COR’、およびNOから選択され、
ここで各R’は、独立して、H、C1〜C6アルキル、C2〜C6ヘテロアルキル、C1〜C6アシル、C2〜C6ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリール、C7〜12アリールアルキル、またはC6〜12ヘテロアリールアルキルであり、そのそれぞれは、ハロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ヘテロアルキル、C1〜C6アシル、C1〜C6ヘテロアシル、ヒドロキシ、アミノ、および=Oから選択される1つまたはそれより多くの基で必要に応じて置換され;
そしてここで、同じ原子上または隣接する原子上の2つのR’は、N、OおよびSから選択される3つまでのヘテロ原子を必要に応じて含む、3〜7員環を形成するように連結され得;
そしてpは0〜2である、実施形態19の方法。
【0151】
21.上記化合物が
【0152】
【化21】

【0153】
【化22】

およびそれらの薬学的に受容可能な塩からなる群から選択される、実施形態4の方法。
【0154】
22.上記被験体が、肝臓のPten活性の低減されたレベルを有する被験体である、前述の実施形態のいずれかの方法。
【0155】
23.上記被験体がPten変異を有する、実施形態22の方法。
【実施例】
【0156】
以下の実施例は、例示するために提供されるが、本発明を限定するものではない。
【0157】
実施例1
2−((6−アミノ−9H−プリン−9−イル)メチル)−5−メチル−3−o−トリルキナゾリン−4(3H)−オンの調製
2−アミノ−6−メチル安息香酸を、2−クロロアセチルクロリドと反応させて、2−(−2−クロロアセトアミド)−6−メチル安息香酸を生成する。o−トルイジンおよび三塩化ホスホリルとの反応は、環化した中間体を生じる。ジBOC−保護されたアデニンとのさらなる反応は、BOC保護された生成物を生み出し、それは脱保護されて、2−((6−アミノ−9H−プリン−9−イル)メチル)−5−メチル−3−o−トリルキナゾリン−4(3H)−オン(2c)をもたらす。
【0158】
化合物(2c)のアトロプ異性体を、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分割し得る。
【0159】
実施例2
アトロプ異性体の分取(preparatory)HPLC分離
本実施例は、HPLCを用いて、化合物(2c)の2つのアトロプ異性体の分離を実証する。
【0160】
エナンチオ混合物の少量のサンプルを、1.45mg/mLの濃度でイソプロパノールに溶解させ、以下の条件を用いて、正常相のカラムに5μL注入した:CHIRALPAK(登録商標)IA、4.6mm ID×250mmL、40/60/0.1 ヘキサン/IPA/DEA、0.8mL/分、30℃。2つのピークを8.7分および13.0分で分割する。これらの分析条件およびHPLC痕跡を、分離された生成物の組成物を同定するために使用した。
【0161】
2.80gの化合物(2c)を、CHIRALPAK(登録商標)IA分取カラムにおいて、室温で40/60/0.1 ヘキサン/IPA/DEA 移動相を用いて、そして275nmの検出波長を用いて、分離した。2つのエナンチオマー、(2c’)および(2c”)を単離し、互いからきれいに分離した。どのピークがどのアトロプ異性体に対応するかを、すぐに決定しなかった。
【0162】
1.24gの第一の溶出されたエナンチオマーであるアトロプ異性体を単離し、上に記載される分析方法下で分析した(0.8mL IPA中に0.96mg)。HPLC痕跡は、8.7分に主要なピークを有し、99.0% e.e.を示す。
【0163】
1.38gの第二の溶出されたエナンチオマーであるアトロプ異性体を単離し、上に記載される同じ分析方法下で分析した(1mL IPA中に1.72mg)。HPLC痕跡は、13.0分に主要なピークを有し、98.8% e.e.を示す。
【0164】
考察の目的で、本実施例において記載されるような、正常相クロマトグラフィー分離によって単離され、8.7分および13.0分の時間に溶出された化合物(2c)の分割されたアトロプ異性体を、アトロプ異性体(2c’)および(2c”)と称する。
【0165】
実施例3
PtenノックアウトマウスにおけるNASHの処置
Satoらは、特定のNASH患者集団についての適したモデルであるPten KOマウスの生産を記載し、約10週齢目までに始まるNASHの全てのステージ(炎症;線維症および発癌)を示す。本発明の化合物は、従って、このようなPten KOマウスにおける総合的症状の進行を遅延させることに関するそれらの効力によって、NASHを処置することについて有効であることを示し得る。
【0166】
Satoら(Hepatology Res.、vol34、256〜65(2006))によって記載されるようなPten KOマウスを記載される通りに作製し、本明細書中に記載される化合物で、6週齢目に開始して処置する。上記化合物を、100mg/kg/日の初回投薬量で経口投与または注射によって投与し得る。NASHの進行を、Satoにおいて記載されるように測定し、処置されていない(対照)Pten KOマウスにおける進行と比較する。上記初回投薬量の有効性に依存して、処置されたマウスにおいて、10週齢目に投薬量を上または下に調整し得る。上記マウスを35週齢目まで1週間に1回評価し;対照と比較して、処置されたマウスの肝臓の生検分析に基づき、投薬量を必要とされるように調整する。これらのマウスにおけるNASHの進行の統計的に著しい低減は、NASHを処置することについての有用性を実証する。
【0167】
実施例4
化合物の細胞培養試験
Satoら(同上)はまた、Pten KOマウス由来の肝細胞の単離を記載する。本発明の化合物を、培養肝細胞において試験して、NASHに関連する細胞異常の進行を遅らせることについてのそれらの有効性を実証し得る。
【0168】
実施例5
NASH処置のためのインビボモデル
Horieら(J.Clinical Investigation、vol.112(12)、1774〜1783(2004))は、肝腫大および脂肪性肝炎に高度になり易いことが示されたAlbCrePtenflox/floxマウスの作製を記載する。これらのマウスは、これらのNASH様状態を処置するための本発明の化合物の有効性を実証するために使用され得る。
【0169】
Horieらによって記載される上記AlbCrePtenflox/floxマウスを、本明細書中に記載される化合物で、6週齢目に開始して処置する。上記化合物を、100mg/kg/日の初回投薬量で経口投与または注射によって投与し得る。NASH様症状の進行を測定し、処置されていない(対照)マウスにおける進行と比較する。上記初回投薬量の有効性に依存して、処置されたマウスにおいて、10週齢目に投薬量を上または下に調整し得る。上記マウスを35週齢目まで1週間に1回評価し;対照と比較して、処置されたマウスの肝臓の生検分析に基づき、投薬量を必要とされるように調整する。これらのマウスにおける肝腫大および/または脂肪性肝炎の進行の統計的に著しい低減は、NASHを処置することについての有用性を実証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝障害を処置する方法であって、該方法は、有効な量の、PI3Kキナーゼの少なくとも1つのアイソフォームの選択的なインヒビターを、それを必要としている被験体へ投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記インヒビターが、他のクラスI PI3Kアイソフォームの阻害と比較して、PI3KδもしくはPI3Kβまたは両方の阻害に対して選択的である、請求項1に記載される方法。
【請求項3】
前記障害が、非アルコール性脂肪性肝炎である、請求項2に記載される方法。
【請求項4】
前記肝障害が、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、肝脂肪症、硬変症、肝炎、肝臓腺腫、インスリン過敏症、または肝臓がんである、請求項2に記載される方法。
【請求項5】
前記インヒビターが式(1a)または式(1b):
【化23】

【化24】

の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であり、
ここで:
Wは、H、Me、Cl、およびFからなる群から選択され;
XおよびX’は、独立して、H、Me、Cl、およびFからなる群から選択され;
Yは、H、Me、およびEtからなる群から選択され;
Zは、NHまたは結合であり;そして
AはNHであるか、またはAは存在せず、プリン環へのZの結合点を示し;
Aが存在しないときにQはHであるか、またはAがNHであるときに、Qは存在せず、プリン環へのZの結合点を示し;
ただし、W、X、およびYのうちの2つ以下は、Hを表す、
請求項1に記載される方法。
【請求項6】
W、X、およびYのうちの1つ以下が、Hを表す、請求項5に記載される方法。
【請求項7】
WがMeであり、そして/またはXがH、MeもしくはFである、請求項5に記載される方法。
【請求項8】
ZがNHである、請求項6または7に記載される方法。
【請求項9】
Zが結合である、請求項6または7に記載される方法。
【請求項10】
Aが存在せず、QがHである、請求項8に記載される方法。
【請求項11】
AがNHであり、Qがプリン環へのZの結合点を示す、請求項9に記載される方法。
【請求項12】
W、XおよびYのうちの少なくとも1つがMeである、請求項10に記載される方法。
【請求項13】
W、XおよびYのうちの少なくとも1つがMeである、請求項11に記載される方法。
【請求項14】
YがMeまたはEtである、請求項10に記載される方法。
【請求項15】
YがHである、請求項11に記載される方法。
【請求項16】
前記化合物が式(1b)の化合物であり、ここでXおよびX’は異なる、請求項5のうちのいずれか1つに記載される方法。
【請求項17】
X’がHであり、XがClおよびMeから選択される、請求項15に記載される方法。
【請求項18】
前記インヒビターが式(3):
【化25】

の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であり、
ここで:
、QおよびQのうちの1つはSであり、Q、QおよびQのうちの他の2つは、−CR−であり;
ここで、各Rは、独立して、H、ハロ、OR、NR、NROR、NRNR、SR、SOR、SOR、SONR、NRSOR、NRCONR、NRCOOR、NRCOR、CF、CN、COOR、CONR、OOCR、COR、もしくはNOであるか、
またはRは、C1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8ヘテロアルケニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C8ヘテロアルキニル、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C12ヘテロアリール、C7〜C12アリールアルキル、およびC6〜C12ヘテロアリールアルキル基からなる群から選択される、必要に応じて置換されたメンバーであり得、
ここで各Rは、独立して、H、またはC1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8ヘテロアルケニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C8ヘテロアルキニル、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリール、C7〜C12アリールアルキル、またはC6〜C12ヘテロアリールアルキルであり、
そしてここで、同じ原子上または隣接する原子上の2つのRは、環員として1つまたは2つのN、OまたはSを必要に応じて含む3〜8員環を形成するように連結し得;
そしてここで、H以外の各R基、および2つのR基を一緒に連結することにより形成される各環は、必要に応じて置換され;
Zは結合であるか、またはO、NR、C1〜C6アルキレンもしくはC1〜C6ヘテロアルキレンであり、そのそれぞれは、2つまでのC1〜C6アルキル基もしくはC2〜C6ヘテロアルキル基で必要に応じて置換され、ここで該アルキル基もしくはヘテロアルキル基のうちの2つは、環員としてO、NおよびSから選択される2つまでのヘテロ原子を含む3〜7員環を形成するように、必要に応じて環化し得;
は、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、もしくはヘテロシクロアルキルであり、そのそれぞれは、3つまでのRで必要に応じて置換されるか、
またはRは、Zが結合でない場合にHであり得;
Lは、−C(R−、−C(R−C(R−、−C(R−NR−、および−C(R−S(O)−からなる群から選択され、
ここで各Rは、独立して、H、またはC1〜C6アルキル、C2〜C6ヘテロアルキル、C2〜C6アルケニル、およびC2〜C6アルキニルから選択される、必要に応じて置換されたメンバーであり、そしてnは0〜2であり;
そして2つのRは、L上に存在する場合に、環員としてN、OおよびSから選択される2つまでのヘテロ原子を含み得る、3〜7員環を形成するように環化し得;
Hetは単環式環系または二環式環系であり、ここで少なくとも2つの環原子はNであり、ここで少なくとも1つの環は芳香族であり、そしてHetは、R、N(R、S(O)、OR、ハロ、CF、CN、NROR、NRN(R、SR、SOR、SO、SON(R、NRSO、NRCON(R、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、CON(R、OOCR、COR、またはNOから選択される3つまでの置換基で必要に応じて置換され、
ここで各Rは、独立して、H、またはC1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8ヘテロアルケニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C8ヘテロアルキニル、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリール、C7〜C12アリールアルキル、およびC6〜C12ヘテロアリールアルキルからなる群から選択される、必要に応じて置換されたメンバーであり、
そしてここで、同じ原子上または隣接する原子上の2つのRは、N、OおよびSから選択される1つまたは2つのヘテロ原子を必要に応じて含む3〜8員環を形成するように連結され得;
ここで、各必要に応じて置換された、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、ヘテロアルキニル、アシル、ヘテロアシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、およびヘテロアリールアルキル上の必要に応じた置換基は、C1〜C4アルキル、ハロ、CF、CN、=O、=N−CN、=N−OR’、=NR’、OR’、NR’、SR’、SOR’、SONR’、NR’SOR’、NR’CONR’、NR’COOR’、NR’COR’、CN、COOR’、CONR’、OOCR’、COR’、およびNOから選択され、
ここで各R’は、独立して、H、C1〜C6アルキル、C2〜C6ヘテロアルキル、C1〜C6アシル、C2〜C6ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリール、C7〜12アリールアルキル、またはC6〜12ヘテロアリールアルキルであり、そのそれぞれは、ハロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ヘテロアルキル、C1〜C6アシル、C1〜C6ヘテロアシル、ヒドロキシ、アミノ、および=Oから選択される1つまたはそれより多くの基で必要に応じて置換され;
そしてここで、同じ原子上または隣接する原子上の2つのR’は、N、OおよびSから選択される3つまでのヘテロ原子を必要に応じて含む、3〜7員環を形成するように連結され得;そして
pは0〜2である、請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載される方法。
【請求項19】
前記インヒビターが式(3a)、(3b)、または(3c):
【化26】

の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であり、
ここで:
各Jおよび各Yは、独立して、F、Cl、Br、CN、Me、CF、OMe、CONR、COOR、NMe、NH、NHMe、−Q−(CH−OR、および−Q−(CH−N(Rからなる群から選択され、ここでqは0〜4であり、Qは存在しないか、またはO、SおよびNRから選択され;
mは、0〜2であり、kは0〜3であり;
Lは、−C(R−、−C(R−NR−、および−C(R−S−から選択され、
各Rは、独立して、H、または必要に応じて置換されたC1〜C4アルキル、C2〜C4アルケニル、またはC2〜C4アルキニル、または必要に応じて置換されたC2〜C4ヘテロアルキルであり;
そして、単一の原子上または隣接する原子上に存在する場合、2つのRは、必要に応じて置換され、ならびに環員としてN、OおよびSから選択される2つまでのヘテロ原子を含み得る3〜7員環を形成するように環化し得;
Hetは
【化27】

からなる群から選択され:
ここで、[L]は、Lが結合されるHetの原子を示し;そして
各Xは、独立して、H、F、Cl、Br、Me、CF、OH、OMe、NH、NHAc、またはNHMeであり;
そして、各必要に応じて置換されたアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、ヘテロアルキニル、アシル、ヘテロアシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、およびヘテロアリールアルキル上の必要に応じた置換基は、C1〜C4アルキル、ハロ、=O、=N−CN、=N−OR’、=NR’、OR’、NR’、SR’、SOR’、SONR’、NR’SOR’、NR’CONR’、NR’COOR’、NR’COR’、CN、COOR’、CONR’、OOCR’、COR’、およびNOから選択され、
ここで各R’は、独立して、H、C1〜C6アルキル、C2〜C6ヘテロアルキル、C1〜C6アシル、C2〜C6ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリール、C7〜12アリールアルキル、またはC6〜12ヘテロアリールアルキルであり、そのそれぞれは、ハロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ヘテロアルキル、C1〜C6アシル、C1〜C6ヘテロアシル、ヒドロキシ、アミノ、および=Oから選択される1つまたはそれより多くの基で必要に応じて置換され;
そしてここで、同じ原子上または隣接する原子上の2つのR’は、N、OおよびSから選択される3つまでのヘテロ原子を必要に応じて含む、3〜7員環を形成するように連結され得;
そしてpは0〜2である、請求項18に記載される方法。
【請求項20】
前記化合物が
【化28】

【化29】

およびそれらの薬学的に受容可能な塩からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれかに記載される方法。
【請求項21】
前記被験体が、肝臓のPten活性の低減されたレベルを有する被験体である、請求項1〜4のいずれかに記載される方法。
【請求項22】
前記被験体がPten変異を有する、請求項21に記載される方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−500257(P2013−500257A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521763(P2012−521763)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/042801
【国際公開番号】WO2011/011550
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(511116409)ギリアード カリストガ エルエルシー (3)
【Fターム(参考)】