説明

PID制御器のモード切替装置

【課題】PID制御器の動作モードを手動モード及び自動モードに切り替える場合、モードの切替によって発生する衝撃を除去し、安定してモードを切り替えることができるPID制御器のモード切替装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、手動モード切替信号及び自動モード切替信号に応じて、自動モード及び手動モードのPID演算を行って、駆動信号を発生するPID演算部、前記手動モード切替信号が発生した場合、前記PID演算部が発生する駆動信号を処理して、負荷駆動機に出力する手動モード緩衝部、及び、前記自動モード切替信号が発生した場合、前記PID演算部が発生する駆動信号を分析して、前記PID演算部に出力する速度差積分信号計算部を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比例積分微分制御器(Proportional Integral Differential controller:以下、PID制御器と略す。)のモード切替装置及び方法に関するものである。より詳しくは、PID制御器の動作モードを手動モード及び自動モードに切り替える場合、モードの切り替えによって発生する衝撃を除去し、安定してモードを切り替えることができるPID制御器のモード切替装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電動機をはじめとする様々な負荷の駆動を制御するためにPID制御器が広く用いられている。前記PID制御器が負荷を駆動させる動作モードには、自動モード及び手動モードがある。
【0003】
前記自動モードは、PID制御器が負荷の速度検出信号を入力して現在運転されている負荷の状態を判断し、判断した負荷の状態とユーザが設定した速度命令信号をPID制御して負荷を駆動する駆動信号を生成し、生成した駆動信号に応じて負荷を駆動する。
【0004】
したがって、前記自動モードは、負荷の現在の動作状態に応じて、ユーザが所望する状態で負荷を駆動することができるものであって、前記PID制御器は、絶えずに演算動作を繰り返して行い、負荷を安定して駆動することができる。
【0005】
また、前記手動モードは、システムで帰還される負荷の状態を無視して、ユーザが設定した速度命令信号に応じて前記PID制御器が駆動信号を発生し、負荷を駆動する。
【0006】
このようなPID制御器の自動モード及び手動モードは、ユーザが所望するときに切り替えることが可能である。しかし、PID制御器の出力信号に応じて負荷を駆動する状態でモードを切り替える場合、システムに過負荷が加えられることはもちろん、モードの切り替えによる衝撃が発生する。
【0007】
例えば、PID制御器が自動モードで動作している状態で手動モードに切り替える場合、PID制御器は、速度検出信号と速度命令信号との差値に応じて駆動信号を出力する状態で速度命令信号によってのみ駆動信号を出力する。
【0008】
このとき、PID制御器から出力される駆動信号の値が大きく変動する場合、負荷の駆動状態が大きく変動し、負荷の駆動状態の変動がシステムにそのまま伝えられ、システムに過負荷が発生する。
【0009】
そのため、自動モードから手動モードに切り替える場合、PID制御器から出力される駆動信号の変化量を制限してモードの切り替えによる衝撃の発生を制限し、システムの過負荷を防止している。
【0010】
しかし、モードを切り替える場合、PID制御器から出力される駆動信号の変化量を制限すると、応答速度の遅延が発生する問題点があった。
【0011】
また、PID制御器の動作モードを手動モードから自動モードに切り替える場合、前記PID制御器は、初期値からPID制御を行うため、安定した状態で負荷を駆動するためには多くの時間がかかり、これによって、負荷の駆動速度が一定に安定できず、システムが振動するようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、PID制御器の動作モードを自動モードから手動モードに切り替える場合、駆動信号の変化量を制限することなく、モードの切り替えによる衝撃を緩和できるPID制御器のモード切替装置を提供することにある。
【0013】
また、本発明は、PID制御器の動作モードを手動モードから自動モードに切り替える場合、時間遅延や振動発生などを抑制しながら、安定してモードを切り替えることができるPID制御器のモード切替装置を提供する。
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、上述した技術的課題に限定されず、また、言及されていない他の技術的課題は、以下の記載から、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者には明確に理解できるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のPID制御器のモード切替装置は、手動モード切替信号及び自動モード切替信号に応じて、自動モード及び手動モードのPID演算を行って、駆動信号を発生するPID演算部、前記手動モード切替信号が発生した場合、前記PID演算部が発生する駆動信号を処理して、負荷駆動機に出力する手動モード緩衝部、及び、前記自動モード切替信号が発生した場合、前記PID演算部が発生する駆動信号を分析して、前記PID演算部に出力する速度差積分信号計算部、を含む。
【0016】
前記手動モードの緩衝部は、前記手動モード切替信号が発生する場合に、予め設定された時間の間、スイッチング信号を発生するタイマーと、前記PID演算部が発生する駆動信号を緩衝させるフィルターと、前記スイッチング信号に応じて、前記PID演算部が発生する駆動信号を前記フィルターに入力するか、または前記フィルターに入力せずに前記負荷駆動機にバイパスさせる複数のスイッチと、を含んで構成されることを特徴とする。
【0017】
前記フィルターは、前記PID制御部が出力する駆動信号を高周波フィルターリングするラグフィルターであることを特徴とする。
【0018】
また、本発明のPID制御器のモード切替装置における、速度差積分信号計算部は、前記自動モード切替信号が発生する場合に、前記PID演算部が発生する駆動信号に含まれている速度差積分信号を計算し、また、前記PID演算部は、前記自動モード切替信号が発生する初期に、前記駆動信号に含まれている速度差積分信号を、前記速度差積分信号の計算部が計算した速度差積分信号に置換して、前記駆動信号を発生することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のPID制御器のモード切替装置は、自動モードから手動モードに切り替える場合、PID制御器から出力される駆動信号を高周波フィルターを用いてフィルターリングすることによって、モード切替時に伴う衝撃を緩和し、安定して手動モードに切り替えて、負荷を駆動することができる。
【0020】
また、手動モードから自動モードに切り替える場合、PID制御信号の成分の中から速度差積分信号を抽出して駆動信号に挿入することにより、自動モードにスムーズに切り替えることができ、急激な低負荷または急激な高負荷を予防して、負荷を安定して駆動させ、所望の速度に速やかに到達するよう誘導できるなどの効果がある。
【0021】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を限定しない実施例によって、本発明をより詳しく説明する。一部の図面において、同一の要素には同一の符号を付与する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】PID制御を用いた電動機の速度制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の速度制御装置において、モード切替時のPID制御器の出力信号の変化を示すグラフである。
【図3】図1の速度制御装置において、モード切替時のPID制御器の出力信号の変化を示すグラフである。
【図4】本発明のモード切替装置によるPID制御器の好ましい実施例の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明のモード切替装置において、モード切替時の出力信号の変化を示すグラフである。
【図6】本発明のモード切替装置において、モード切替時の出力信号の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の詳細な説明は例示的なものであって、本発明の実施例を示したものに過ぎない。また、本発明の原理と概念は有用でかつ容易な説明のために提供される。
【0024】
したがって、本発明の基本的な理解のための必要以上の詳細な構造は提供しておらず、通常の知識を有する者が本発明において実施可能な様々な形態を図面に基づいて例示する。
【0025】
図1は、PID制御を用いた電動機の速度制御装置の構成を示すブロック図である。前記制御装置は、PID制御器120、負荷駆動機130、負荷100、速度計110などを含む。負荷100は、例えば、電動機を含む。速度計110は、前記負荷100の回転速度を検出して、速度検出信号(PV)を発生する。PID制御器120は、ユーザの操作により入力される速度命令信号(SV)と電動機100の速度検出信号(PV)をPID制御して、前記負荷100を駆動させる駆動信号(MV)を生成する。負荷駆動機130は、前記PID制御器120が出力する駆動信号(MV)に応じて駆動力を発生して、負荷100を駆動する。
【0026】
このように構成された電動機の速度制御装置は、負荷100である電動機を駆動させる場合、ユーザの操作により設定された速度命令信号(SV)がPID制御器120に入力される。
【0027】
そして、負荷100の回転速度を速度計110が検出して速度検出信号(PV)を発生し、発生した速度検出信号(PV)は、前記PID制御器120に入力される。
【0028】
前記PID制御器120は、現在設定された動作モードが自動モードである場合、前記速度命令信号(SV)と前記速度検出信号(PV)との差値を判断し、判断した差値に応じて、前記負荷100を駆動させる駆動信号(MV)を発生し、発生した駆動信号(MV)は負荷駆動機130に入力される。
【0029】
これによって、前記負荷駆動機130は、前記駆動信号(MV)に相応する駆動力を発生し、発生した駆動力によって、電動機100が駆動されて回転する。
【0030】
一方、手動モードが設定されている場合、前記PID制御器120は、速度計110から帰還される速度検出信号(PV)の大きさによらず、前記速度命令信号(SV)に応じて駆動信号(MV)を発生し、発生した駆動信号(MV)は負荷駆動機130に入力される。
【0031】
これによって、前記負荷駆動機130は、前記駆動信号(MV)に相応する駆動力を発生し、発生した駆動力によって、電動機100が駆動されて回転する。
【0032】
つまり、図2及び図3に示されたように、時間t10及びt20で、PID制御器120を自動モードで動作させると、PID制御器120は、初期に駆動信号(MV)を振動発生し、時間の経過につれて前記PID制御器120が安定した状態の駆動信号(MV)を発生して、負荷駆動機130が負荷100を安定に駆動させる。
【0033】
このように、PID制御器120が自動モードで動作している状態で、時間t11及びt21で手動モードに切り替えると、前記PID制御器120が出力する駆動信号(MV)の値が、図2に示されたように急激に減少したり、または図3に示されたように急激に増加する。
【0034】
つまり、自動モードである場合、前記PID制御器120は、速度計110から帰還される速度検出信号(PV)とユーザが設定した速度命令信号(SV)との差値を計算し、計算した差値に応じて駆動信号(MV)を発生する。
【0035】
このような状態で、PID制御器120が手動モードに切り替えられると、前記PID制御器120は、前記速度検出信号(PV)によらず、ユーザが設定した速度命令信号(SV)に応じて駆動信号を発生するため、前記PID制御器120が出力する駆動信号(MV)の値が急激に減少したり、急激に増加したりすることがある。
【0036】
このように駆動信号(MV)の値が急激に減少すると、負荷駆動機130が負荷100の駆動速度を急激に減速しなければならない低負荷衝撃が発生する。また、駆動信号(MV)の値が急激に増加すると、負荷駆動機130が負荷100の駆動速度を急激に増加しなければならない高負荷衝撃が発生する。
【0037】
このような低負荷衝撃及び高負荷衝撃が発生すると、負荷100の駆動に多くの負担がかかり、長時間繰り返されると、負荷100の使用寿命を短縮させることにつながる。
【0038】
一方、PID制御器120が、手動モードで動作している状態で、時間t12及びt22で自動モードに切り替えると、前記PID制御器120は、図2及び図3に示されたように、初期値からPID制御を行って駆動信号(MV)を発生するため、負荷100を安定した速度で駆動させるまで多くの時間がかかる。また、前記負荷100を安定した速度で駆動させるまで、前記PID制御器120は、駆動信号(MV)を振動発生し、このように振動する駆動信号(MV)によって負荷駆動機130が負荷100を駆動させることで負荷100の駆動速度が振動し、かつ負荷100の駆動によって動作するシステムが振動する。
【0039】
図4は、本発明の一実施例によるPID制御器のモード切替装置の構成を示すブロック図である。PID制御器のモード切替装置は、PID演算部400、手動モード緩衝部410、ラグフィルター412、タイマー414、及び速度差積分信号計算部420を含む。
【0040】
PID演算部400は、手動モード切替信号及び自動モード切替信号に応じて、手動モード及び自動モードで動作する。また、前記PID演算部400は、自動モードである場合、速度検出信号(PV)と速度命令信号(SV)との差値に応じてPID制御を行い、駆動信号(MV1)を発生する。また、前記PID演算部400は、手動モードである場合、前記速度命令信号(SV)に応じてPID制御を行い、駆動信号(MV1)を発生する。また、前記PID演算部400は、手動モードから自動モードに切り替える初期に帰還される速度差積分信号(MVi)に応じて、駆動信号(MV1)を発生する。
【0041】
手動モード緩衝部410は、前記PID演算部400が自動モードから手動モードに切り替わる初期に、予め設定された時間の間、前記PID演算部400が出力する駆動信号(MV1)を、高周波フィルターリングで緩衝して、負荷駆動機に出力する。
【0042】
前記手動モード緩衝部410は、高周波フィルターであるラグ(LAG)フィルター412と、タイマー414と、スイッチ416、418とを含む。
【0043】
前記ラグフィルター412は、前記PID演算部400が出力する駆動信号(MV1)を高周波フィルターリングで緩衝する。
【0044】
前記タイマー414は、手動モード切替信号に応じてトリガされ、予め設定した時間の間、スイッチング信号を発生する。
【0045】
前記スイッチ416、418は、前記タイマー414が出力するスイッチング信号に応じてスイッチングされることで、前記タイマー414の設定時間の間、前記PID演算部400の出力信号が前記ラグフィルター412を介して緩衝されてから前記負荷駆動機に出力され、前記タイマー414の設定時間が経過すると、前記PID演算部400の出力信号が前記負荷駆動機に出力されるようにする。
【0046】
速度差積分信号計算部420は、手動モードから自動モードに切り替える初期に前記負荷駆動機に出力される駆動信号(MV2)と、速度検出信号(PV)と、速度命令信号(SV)とに応じて、速度差積分信号(MVi)を計算し、計算した速度差積分信号(MVi)を前記PID演算部400に帰還出力する。
【0047】
このように構成された本発明は、自動モードである場合、PID演算部400は、ユーザが設定した速度命令信号(SV)と帰還される速度検出信号(PV)に応じてPID制御を行って駆動信号(MV1)を発生し、発生した駆動信号(MV1)は、スイッチ416、418を介して負荷駆動機に出力され、負荷駆動機が駆動信号(MV1)に応じて負荷を駆動させる。
【0048】
このような状態で、手動モード切替信号が入力される場合、前記PID演算部400を手動モードで動作する。つまり、前記PID演算部400は、ユーザが設定した速度命令信号(SV)に応じてPID制御を行い、駆動信号(MV1)を発生する。
【0049】
そして、前記手動モード切替信号が手動モード緩衝部410のタイマー414に入力される。すると、前記タイマー414はトリガされ、予め設定された所定時間をカウントしながら、スイッチング信号を発生して、スイッチ416、418の可動端子が一側固定端子a1、a2にそれぞれ接続される。前記予め設定された所定時間後には、スイッチ416、418が固定端子b1、b2に接続される。
【0050】
これによって、前記PID演算部400が出力する駆動信号(MV1)は、スイッチ416を介してラグフィルター412に入力され、高周波フィルターリングされて変化量が緩衝され、変化量の緩衝された電駆動信号(MV2)がスイッチ418を介して負荷駆動機に出力され、負荷を駆動するのに用いられる。
【0051】
つまり、本発明は、図5及び図6に示されたように、時間t30、t40でPID演算部400が自動モードで動作する状態で、時間t31、t41で手動モード切替信号が入力されて前記PID演算部400が手動モードで動作し始める初期に、タイマー414が作動し、予め設定した時間の間にスイッチング信号を発生する。
【0052】
したがって、前記PID演算部400から出力される駆動信号(MV1)がラグフィルター412を介して、図5及び図6に示されたように、高周波フィルターリングされて変化量が緩衝され、変化量の緩衝された駆動信号(MV2)が負荷駆動機に出力される。
【0053】
これによって、自動モードから手動モードに切り替えられつつ前記PID演算部400から出力される駆動信号(MV1)の値が大きく変動しても、駆動信号(MV1)の値が緩衝され、負荷駆動機は負荷の駆動速度を徐々に可変させるようになり、モードの切り替えによる衝撃が発生しない。
【0054】
このように、PID演算部400が手動モードで動作する状態で、時間t32、t42で自動モード切替信号が入力されると、前記PID演算部400は自動モードで動作する。
【0055】
このような状態で、速度差積分信号計算部420は速度差積分信号(MVi)を計算し、計算された速度差積分信号(MVi)はPID演算部400に入力される。
【0056】
すると、前記PID演算部400は、自動モードで動作しながら、発生する駆動信号(MV1)の速度差積分信号を、前記速度差積分信号計算部420が出力する速度差積分信号(MVi)に置換して、駆動信号(MV)を発生する。
【0057】
したがって、手動モードから自動モードに切り替える初期に前記PID演算部400が出力する駆動信号(MV)は、図5及び図6に示されたように、手動モード時に出力した駆動信号(MV)の値から変化し始め、これにより、前記PID演算部400が出力する駆動信号(MV)の値が振動しなくなる。
【0058】
ここで、前記PID演算部400が速度差積分信号計算部420から出力される速度差積分信号(MVi)を置換して駆動信号(MV)を発生することにより、前記PID演算部400から出力される駆動信号(MV)の値が手動モード時に出力した駆動信号(MV)の値から変化し始める動作について、より詳しく説明する。
【0059】
PID演算部400がPID演算を行って出力する駆動信号(MV)には、比例演算要素、積分演算要素及び微分演算要素が含まれている。前記駆動信号(MV)に含まれている要素の中からエラーの増減が発生した場合、瞬間的に現れてから消える微分演算要素を除くと、比例演算要素と積分演算要素のみ残る。
【0060】
前記比例演算要素及び積分演算要素のみを考慮する場合、PID演算部400から出力される駆動信号(MV)を用いて、逆に比例演算要素及び積分演算要素を復元することができる。
【0061】
前記PID演算部400が出力する駆動信号(MV)の値は、下記の数式1のように定義できる。
【0062】
【数1】

【0063】
前記数式1において、MVpは、比例演算する速度差信号であり、MViは、積分演算する速度差積分信号であり、MVdは、微分演算する速度差微分信号であって、下記の数式2ないし数式4の通りである。
【0064】
【数2】

【0065】
【数3】

【0066】
【数4】

【0067】
ここで、Kp、Ti及びTdは、それぞれ、予め設定された利得値である。
【0068】
前記数式2において、利得値(Kp)、速度命令信号(SV)及び速度検出信号(PV)は既知の値として速度差信号(MVp)を計算することができる。
【0069】
また、速度差の微分信号(MVd)の値を「0」と仮定すると、前記PID演算部400から出力される駆動信号(MV)に含まれている速度差積分信号(MVi)を計算することができる。
【0070】
本発明では、速度差積分信号計算部420が、上述したように、PID演算部400が出力する駆動信号(MV)に含まれている速度差積分信号(MVi)を計算し、計算した速度差積分信号(MVi)をPID演算部400に入力して駆動信号(MV)に含ませる。
【0071】
したがって、本発明によれば、手動モードから自動モードに切り替える場合に、自動モードの開始を初期演算から行わずに、手動モードで最終に出力した駆動信号(MV)の値からPID制御を行うことができる。
【0072】
また、前記PID演算部400のPID演算は、応答遅延などの問題が発生せず、手動モードから自動モードにスムーズに接続され、前記駆動信号(MV)が振動することを抑制することができる。
【0073】
以上、代表的な実施例により本発明について詳細に説明したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、上述した実施例に対し、本発明の範疇から外れない範囲内で様々な変更が可能であることが理解できるだろう。したがって、本発明の権利範囲は、説明した実施例に限定されず、後述する特許請求の範囲及びこの特許請求の範囲と均等なものによって定められるべきである。
【符号の説明】
【0074】
400 PID演算部
410 手動モード緩衝部
412 ラグフィルター
414 タイマー
416,418 スイッチ
420 速度差積分信号計算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PID(Proportional Integral Differential)制御器のモード切替装置であって、
手動モード切替信号及び自動モード切替信号に応じて、自動モード及び手動モードのPID演算を行って、駆動信号を発生するPID演算部、
前記手動モード切替信号が発生した場合、前記PID演算部が発生する駆動信号を処理して、負荷駆動機に出力する手動モード緩衝部、及び
前記自動モード切替信号が発生した場合、前記PID演算部が発生する駆動信号を分析して、前記PID演算部に出力する速度差積分信号計算部を含むことを特徴とするPID制御器のモード切替装置。
【請求項2】
前記手動モード緩衝部は、
前記手動モード切替信号が発生する場合、予め設定された時間の間、スイッチング信号を発生するタイマー、
前記PID演算部が発生する駆動信号を緩衝させるフィルター、及び
前記スイッチング信号に応じて、前記PID演算部が発生する駆動信号を前記フィルターに入力するか、または前記負荷駆動機にバイパスさせる複数のスイッチを含むことを特徴とする請求項1に記載のPID制御器のモード切替装置。
【請求項3】
前記フィルターは、
前記PID演算部が出力する駆動信号を高周波フィルターリングするラグフィルターであることを特徴とする請求項2に記載のPID制御器のモード切替装置。
【請求項4】
前記速度差積分信号計算部は、
前記自動モード切替信号が発生する場合、前記PID演算部が発生する駆動信号に含まれている速度差積分信号を計算することを特徴とする請求項1に記載のPID制御器のモード切替装置。
【請求項5】
前記PID演算部は、
前記自動モード切替信号が発生する初期に、発生する駆動信号の速度差積分信号を、前記速度差積分信号計算部が計算した前記速度差積分信号に置換して、駆動信号を発生することを特徴とする請求項4に記載のPID制御器のモード切替装置。
【請求項6】
前記駆動信号を入力されて、これに相応する駆動力を発生する負荷駆動機をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のPID制御器のモード切替装置。
【請求項7】
PID(Proportional Integral Differential)制御器のモード切替方法であって、
手動モード切替信号及び自動モード切替信号に応じて、自動モード及び手動モードのPID演算を行って、駆動信号を発生するステップ、
前記手動モード切替信号が発生した場合、負荷駆動機で駆動信号を処理して出力するステップ、及び
前記自動モード切替信号が発生した場合、駆動信号を分析して、前記PID演算部に出力するステップを含むことを特徴とするPID制御器のモード切替方法。
【請求項8】
前記手動モード切替信号が発生した場合、前記発生する駆動信号を処理して出力するステップは、
前記手動モード切替信号に応じて、予め設定された時間の間、スイッチング信号を発生するステップ、
前記スイッチング信号に応じて、前記発生した駆動信号をフィルターリングするステップ、
前記予め設定された時間後に、前記発生した駆動信号を前記負荷駆動機にバイパスするステップを含むことを特徴とする請求項7に記載のPID制御器のモード切替方法。
【請求項9】
前記フィルターリングするステップは、
前記発生した駆動信号を高周波フィルターリングすることを特徴とする請求項8に記載のPID制御器のモード切替方法。
【請求項10】
前記自動モード切替信号が発生した場合、駆動信号を分析して、前記PID演算部に出力するステップは、
前記発生した駆動信号に含まれている速度差積分信号を計算するステップを含むことを特徴とする請求項7に記載のPID制御器のモード切替方法。
【請求項11】
前記自動モード切替信号が発生した場合、駆動信号を分析して、前記PID演算部に出力するステップは、
前記自動モード切替信号が発生する初期に、発生する駆動信号の速度差積分信号を、前記速度差積分信号を計算するステップで計算された速度差積分信号に置換して、駆動信号を発生するステップを含むことを特徴とする請求項10に記載のPID制御器のモード切替方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−222018(P2011−222018A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84660(P2011−84660)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(593121379)エルエス産電株式会社 (221)
【氏名又は名称原語表記】LSIS CO., LTD
【Fターム(参考)】