説明

PLL回路

【課題】 VCOを構成する電流制御発振回路を制御する電流を生成する電圧−電流変換の動作を高速化して、従来に比較して周波数制御の応答特性を向上させるPLL回路を提供する。
【解決手段】 本発明のPLL回路は、電圧−電流変換回路と電流加算器と電流制御発振回路とから構成され、制御電圧及び制御電流に対応した周波数のパルスを出力する電圧制御発振回路と、パルスと、電圧制御発振回路が生成すべき周波数の基準パルスとの位相差により、第1の制御信号及び第2の制御信号を出力する位相検出器と、第1の制御信号により、第1の充電電流または第1の放電電流を出力する第1のチャージポンプ回路と、第1の充電電流または第1の放電電流により制御電圧を生成し、電圧制御発振回路に出力するループフィルタと、第2の制御信号により、第2の充電電流または第2の放電電流である制御電流を生成し、制御電圧発振回路に出力する第2のチャージポンプ回路とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PLL回路に関し、特に、特性のバラツキの発生を低減したPLL回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から半導体集積回路内に設けられ、特に無線通信分野である携帯電話や無線LAN(local area network)等におけるパルス発生回路として多用されている。
上記PLL回路は、図6に示すように、位相比較器100、チャージポンプ101、ループフィルタ102、VCO(電圧制御発振回路)103とから構成されている。
位相比較器100は、PLL回路が出力する出力パルスと、入力される入力パルスとの位相比較を行い、チャージポンプ回路101に対し、出力パルスが入力パルスに比較して位相が遅れている場合、チャージアップ電流IUPを流す制御信号UPを出力し、出力パルスが入力パルスに比較して位相が早い場合、チャージダウン電流IDNを流す制御信号DNを出力する。
【0003】
チャージポンプ回路101は、制御信号UPが入力されると、チャージアップ電流IUPをループフィルタ102へ出力し、一方、制御信号DNが入力されると、チャージダウン電流IDNをループフィルタ102へ出力する。
ループフィルタ102は、チャージポンプ回路101から入力される直流信号を平均化し、交流成分の少ない直流信号に変換するローパスフィルタであり、時定数により後段のVCO103の周波数変化の速度を設定する。すなわち、VCO103の発振周波数の変化は、時定数が長ければ徐々に変化し、時定数が短ければ素早く、入力パルスに追従する。
【0004】
VCO103は、ループフィルタ102から入力される直流信号の電圧レベルにより、出力パルスの発振周波数を制御する。
また、VCO103は、直流の電圧信号を電流信号に変換する電圧/電流変換部103Aと、電圧/電流変換部103が出力する電流により発振周波数が決定される電流制御発振部103Bとから構成されている。
上記ループフィルタ102としては、図7に示されるような完全積分型フィルタ回路が用いられている(例えば、非特許文献1参照)。
ここで、スイッチ回路101’は、図6のチャージポンプ101に代える構成であり、完全積分型フィルタ回路(ループフィルタ102)に対して、電圧を印加する。
【0005】
また、図8に示すように、ループフィルタ102として、電流入力−電圧出力型を用いたものであり、コンデンサC2と抵抗R2とを直列に接続したものであり、コンデンサC2に蓄積される電圧と、このコンデンサCへの充電電流によって抵抗R2端子間に発生する電圧とを加算し、加算結果をVCO103内の電圧/電流変換回路103Aに対して出力している(例えば、特許文献1参照)。
これにより、コンデンサCが蓄積される電圧に加えて、抵抗R2に発生する電圧が後段のVCO103へ出力されるため、図9に示すように、抵抗R2の電圧分だけ電圧特性の応答特性を高速にすることができる。
ここで、r2は抵抗R2の抵抗値、IF1はチャージポンプ回路101が出力するチャージアップ電流IUP及びチャージダウン電流IDNの電流値、c2はコンデンサC2の容量値である。
【非特許文献1】’PLL−ICの使い方’、畑 雅恭、古川 計介著、秋葉出版、〔新装版〕版、 1987年6月
【特許文献1】特開2005−260446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1及び特許文献1で用いられている完全積分型フィルタ回路のループフィルタ102は、図9に示すように、急峻な電圧出力信号を出力する応答特性を有している。
しかしながら、VCO103内の電圧−電流変換部103Aが、入力される急峻な電圧出力信号を、電圧−電流変換する際、この急峻な変化に十分に対応する応答特性を持たせることはCMOSプロセスでは困難であり、実際には図10に示すように、電圧−電流変換後の電流出力信号の波形はなまったものとなってしまう。
【0007】
この結果、ループフィルタ102における応答特性を良くしたとしても、VCO103内の電圧−電流変換部103Aの応答特性のなまりによる低さから、素子特性から理論的な設計ができない。
また、製造バラツキに起因して、電圧−電流変換の速度がバラツクことにより、PLL回路の応答特性もバラツクこととなり、量産した際にスペック内に入らない製品が多くなる問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、VCOを構成する電流制御発振回路を制御する電流を生成する電圧−電流変換の動作を高速化することにより、従来に比較して周波数制御の応答特性を向上させるPLL回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のPLL回路は、電圧−電流変換回路と電流加算器と電流制御発振回路とから構成され、制御電圧及び制御電流に対応した周波数のパルスを出力する電圧制御発振回路と、前記パルスと、前記電圧制御発振回路が生成すべき周波数の基準パルスとの位相差により、第1の制御信号及び第2の制御信号を出力する位相検出器と、前記第1の制御信号により、第1の充電電流または第1の放電電流を出力する第1のチャージポンプ回路と、前記第1の充電電流または前記第1の放電電流により前記制御電圧を生成し、前記電圧制御発振回路に出力するループフィルタと、前記第2の制御信号により、第2の充電電流または第2の放電電流である前記制御電流を生成し、前記制御電圧発振回路に出力する第2のチャージポンプ回路とを有する。
【0010】
本発明のPLL回路は、前記電圧−電流変換回路が前記制御電圧を電流に変換し、前記電流加算器が、前記変換した電流と、前記制御電流とを加算し、この加算された電流を前記電流制御発振回路に対して周波数制御電流として供給することを特徴とする。
【0011】
本発明のPLL回路は、前記ループフィルタが第1のチャージポンプの出力と接地点との間に介挿されたコンデンサから構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、第1のチャージポンプの出力する第1の充電電流及び第1の放電電流によりループフィルタにて生成される制御電圧を、電圧−電流変換回路にて変換した電流と、第2のチャージポンプ回路で生成した制御電流とを、電流加算回路により加算して、この加算された電流により電流制御発振回路を駆動するため、急峻な電圧変化を制御電流にて電流制御発振回路に伝達することが可能となり、電流制御発振回路において前記制御電流により急峻な応答特性を有する周波数変化を実現することができる。
【0013】
すなわち、本発明によれば、実質的に従来のループフィルタの機能がコンデンサ(ループフィルタ)と、第2のチャージポンプ回路と、電流加算回路とのそれぞれから形成されているので、抵抗及びコンデンサのみ形成された従来例における抵抗値と容量値とのバラツキによるフィルタの応答特性に対する影響を抑制することができ、従来例に比較してバラツキの少ないフィルタ特性を実現している。
この結果、本発明によれば、電流加算回路を設けることにより、ループフィルタが抵抗と容量とで構成された従来に比較し、電流制御発振回路から見た場合、理想的な完全積分型フィルタを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態によるPLL回路を図面を参照して説明する。図1は同実施形態のPLL回路の構成例を示すブロック図である。
この図において、本実施形態のPLL回路は、位相比較回路1、チャージポンプ2、チャージポンプ3、ループフィルタ4、VCO5及び分周器6を有している。また、VCO5は、電圧−電流変換回路51、電流加算回路52及び電流制御発振回路53から構成されている。
分周器6は、VCO5が出力するパルス信号Foutの周波数foutを1/N分周し、周波数fout/Nの周波数の分周パルス信号を出力する。これにより、パルス信号Foutの周波数foutは、基準パルス信号Finの周波数finのN倍の周波数となる。
【0015】
位相比較回路1は、上記分周パルス信号と、VCO5が生成すべき周波数の1/Nの周波数の基準パルス信号Finとの位相差を検出し、この位相差に応じて第1の充電電流あるいは第1の放電電流のいずれかを電流信号IF1として流すかを制御する制御信号UP1及び制御信号DN1を、予め設定された周期毎に、予め設定された制御期間にて上記比較を行いチャージポンプ2に出力する。
また、位相比較回路1は、上記位相差に応じて第2の充電電流あるいは第2の放電電流のいずれかを電流信号IF2として流すかを制御する制御信号UP2及び制御信号DN2をチャージポンプ3に出力する。
【0016】
ここで、位相比較回路1は、上記基準パルス信号Finに比較して分周パルス信号の位相が遅い場合、チャージポンプ2が第1の充電電流を電流信号IF1として流すよう制御する制御信号UP1を出力し、一方、上記基準パルス信号Finに比較して分周パルス信号の位相が早い場合、チャージポンプ2が第1の放電電流を電流信号IF1として流すよう制御する制御信号DN1を出力する。
また、位相比較回路1は、上記基準パルス信号Finに比較して分周パルス信号の位相が遅い場合、チャージポンプ3が第2の充電電流を電流信号IF2として流すよう制御する制御信号UP2を出力し、一方、上記基準パルス信号Finに比較して分周パルス信号の位相が早い場合、チャージポンプ3が第2の放電電流を電流信号IF2として流すよう制御する制御信号DN2を出力する。
【0017】
チャージポンプ2は、電源電圧線と接地線との間に、定電流源CR1U、スイッチSW1U、スイッチSW1D、定電流源CR1Dが順番に直列に接続され、スイッチSW1U及びスイッチSW1Dの接続点が出力端子となり、上記電流信号IF1をループフィルタ4に対して出力する。
また、チャージポンプ2は、上記制御信号UP1が入力されると、スイッチSW1Uをオン状態とし、第1の充電電流を電流信号IF1として出力端子から出力し、一方、制御信号DN1が入力されると、スイッチSW1Dをオン状態とし、第1の放電電流を電流信号IF1として出力端子から出力する。
【0018】
チャージポンプ3は、電源電圧線と接地線との間に、定電流源CR2U、スイッチSW2U、スイッチSW2D、定電流源CR2Dが順番に直列に接続され、スイッチSW2U及びスイッチSW2Dの接続点が出力端子となり、上記電流信号IF2をVCO5に対して出力する。
また、チャージポンプ3は、上記制御信号UP2が入力されると、スイッチSW2Uをオン状態とし、第2の充電電流を電流信号IF2として出力端子から出力し、一方、制御信号DN2が入力されると、スイッチSW2Dをオン状態とし、第2の放電電流を電流信号IF2として出力端子から出力する。
【0019】
ループフィルタ4は、コンデンサC2から構成されており、リップルを含んだチャージポンプ2からの直流信号IF1をコンデンサC2において充放電することによって積分動作を行い制御電圧V1として、VCO5へ出力する。
電圧−電流変換回路51は、入力される制御電圧V1を、電圧値に対応した電流値の電流IF3へ変換し、この変換結果の電流IF3を電流加算回路52に対して出力する。
電流加算回路52は、上記電流IF3と、電流信号IF2とを加算して、加算結果の電流IF4を電流制御発振回路53に対して出力する。
電流制御発振回路53は、電流加算回路52から入力される電流IF4の電流値に対応した周波数foutのパルス信号Foutを出力する。
【0020】
次に、本実施形態によるPLL回路の動作を図1、図2及び図3を用いて説明する。図2及び3は図1の各回路における動作例を説明する波形図である。
・基準パルス信号Finに比較して分周パルス信号の位相が遅い場合(図2)
時刻t1において、位相比較回路1は、上記制御期間となると、位相差を検出することにより、制御信号UP1及びUP2を出力する。
そして、チャージポンプ2は、スイッチSWIUをオン状態として、電流信号IF1として、定電流源CR1Uの定電流である第1の充電電流をループフィルタ4に対して流し出す。
【0021】
これにより、ループフィルタ4は、上記電流信号IF1によりコンデンサCが充電されることにより、この充電された充電電圧を制御電圧V1として、電圧−電流変換回路51へ出力する。
そして、電圧−電流変換回路51は、入力される制御電圧V1を電流IF3へ変換し、この電流IF2を電流加算回路52へ出力する。
【0022】
また、このとき、チャージポンプ3は、スイッチSW2Uをオン状態として、電流信号IF2として、定電流源CR2Uの定電流である第2の充電電流を電流加算回路52に対して流し出す。
電流加算回路52は、上記電流信号IF3及びIF2を加算し、電流信号IF4として電流制御発振回路53に対して出力する。
この結果、電流制御発振回路53は、増加した電流値に対応して出力するパルス信号Foutの周波数foutを高く調整する。
【0023】
次に、時刻t2において、位相比較回路1は、制御期間が経過したことを検知した時点にて、制御信号UP1及びUP2の出力を停止する。
制御信号UP1が入力されなくなることにより、チャージポンプ2は、スイッチSW1Uをオフ状態とし、第1の充電電流である電流信号IF1の流し出しを停止する。
これにより、ループフィルタ4は、充電電流が流れ込まなくなるため、現在の充電電圧を保持し、この充電電圧を制御電圧V1として電圧−電流変換回路51に対して出力する。
そして、電圧−電流変換回路51は、入力される制御電圧V1を電流IF3へ変換し、この電流IF2を電流加算回路52へ出力する。
また、制御信号UP2が入力されなくなることにより、チャージアンプ3も、チャージアンプ2と同様に、スイッチSW2Uをオフ状態とし、第2の充電電流である電流信号IF2の流し出しを停止する。
【0024】
したがって、電流加算回路52は、電流信号IF2が入力されず、電流信号IF3のみが入力されるため、電流信号IF3をそのまま電流信号IF4として出力する。
これにより、この結果、電流制御発振回路53は、電流信号IF2の電流値に対応した周波数であるパルス信号Foutにより周波数foutを発生する。
【0025】
・基準パルス信号Finに比較して分周パルス信号の位相が早い場合(図3)
時刻t1において、位相比較回路1は、上記制御期間となると、位相差を検出することにより、制御信号DN1及びDN2を出力する。
そして、チャージポンプ2は、スイッチSWIDをオン状態として、電流信号IF1として、定電流源CR1Dの定電流である第1の放電電流をループフィルタ4より流し込む。
【0026】
これにより、ループフィルタ4は、上記電流信号IF1によりコンデンサCが放電されることにより、この放電後の充電電圧を制御電圧V1として、電圧−電流変換回路51へ出力する。
そして、電圧−電流変換回路51は、入力される制御電圧V1を電流IF3へ変換し、この電流IF2を電流加算回路52へ出力する。
【0027】
また、このとき、チャージポンプ3は、スイッチSW2Dをオン状態として、電流信号IF2として、定電流源CR2Dの定電流である第2の放電電流を電流加算回路52から流し込む。
電流加算回路52は、上記電流信号IF3及びIF2を加算し、電流信号IF4として電流制御発振回路53に対して出力する。
この結果、電流制御発振回路53は、減少した電流値に対応して出力するパルス信号Foutの周波数foutを低く調整する。
【0028】
次に、時刻t2において、位相比較回路1は、制御期間が経過したことを検知した時点にて、制御信号DN1及びDN2の出力を停止する。
制御信号DN1が入力されなくなることにより、チャージアンプ2は、スイッチSW1Dをオフ状態とし、第1の放電電流である電流信号IF1の流し込みを停止する。
これにより、ループフィルタ4は、放電電流が流し出されなくなるため、現在の充電電圧を保持し、この充電電圧を制御電圧V1として電圧−電流変換回路51に対して出力する。
そして、電圧−電流変換回路51は、入力される制御電圧V1を電流IF3へ変換し、この電流IF2を電流加算回路52へ出力する。
また、制御信号NU2が入力されなくなることにより、チャージアンプ3も、チャージアンプ2と同様に、スイッチSW2Dをオフ状態とし、第2の放電電流である電流信号IF2の流し込みを停止する。
【0029】
したがって、電流加算回路52は、電流信号IF2が流し出されず、電流信号IF3のみが入力されるため、電流信号IF3をそのまま電流信号IF4として出力する。
上述した処理により、電流制御発振回路53は、電流信号IF2の電流値に対応した周波数であるパルス信号Foutにより周波数foutを発生する。
【0030】
次に、図4により、図1における電圧−電流変換回路51及び電流加算回路52の構成例を説明する。
図1と同様な構成については、同一の符号を付し、その構成の説明を省略する。
電圧−電流変換回路51は、Pチャネル型のMOSトランジスタMP1と、Nチャネル型のMOSトランジスタMN1と、抵抗R3とから構成されている。
【0031】
上記MOSトランジスタMP1は、ソースが電源電圧に接続され、ゲートがドレインと接続されてダイオード接続されている。
上記MOSトランジスタMN1は、ドレインが上記MOSトランジスタMP1のドレインと接続され、ソースと自身が形成されているウェルとが接続され、抵抗R3を介して接地されている。
上述した構成により、電圧−電流変換回路51は、電流加算回路52とで構成するカレントミラー回路におけるバイアス生成回路となり、制御電圧V1に対応した電流信号IF3(図2及び図3におけるV1/r3、r3は抵抗R3の抵抗値)の複製を電流加算回路52にて流すためのバイアス電圧を、電流加算回路52に対して出力する。
【0032】
また、電流加算回路52は、Pチャネル型のMOSトランジスタMP2と、Nチャネル型のMOSトランジスタMN2とから構成されている。
MOSトランジスタMP2は、ソースが電源電圧に接続され、ゲートに上記電圧−電流変換回路52が出力するバイアス電圧が印加されている。
MOSトランジスタMN2は、ドレインが上記MOSトランジスタMP2のドレインと接続され、ゲートがドレインに接続され(ダイオード接続)、ソースが接地されている。また、MOSトランジスタMN2のドレインは、チャージポンプ3の出力端子が接続されており、電流信号IF2が流し込まれ、または流し出される。
この構成により、電流加算回路52は、カレントミラー構成の電圧−電流変換回路51に流れる電流信号IF3に対応した電流と、上記電流信号IF2とのそれぞれの電流値を加算した結果として、電流信号IF4を電流制御発振回路53に出力する。
【0033】
次に、図1及び図2における電流制御発振回路53について説明する。図5は、図1及び図2における電流制御発振回路53の構成例を説明する概念的な回路図である。
電流制御発振回路53は、Pチャネル型のMOSトランジスタMP3及びMP4と、Nチャネル型MOSトランジスタMN3、MN4及びMN5と、コンデンサC3とから構成されている。
MOSトランジスタMP3は、ソースが電源電圧に接続され、ゲートがMOSトランジスタMP4のドレインに接続されている。
MOSトランジスタMN3は、ドレインが上記MOSトランジスタMP3のドレインに接続され、ゲートがMOSトランジスタMP3のゲートに接続され、ソースがMOSトランジスタMN5のドレインに接続されている。
【0034】
MOSトランジスタMP4は、ソースが電源電圧に接続され、ゲートがMOSトランジスタMP3のドレインに接続されている。
MOSトランジスタMN4は、ドレインがMOSトランジスタMP4のドレインに接続され、ゲートがMOSトランジスタMP4のゲートに接続され、ソースがMOSトランジスタMN5のドレインに接続されている。
コンデンサC2は、MOSトランジスタMN3のドレインと、MOSトランジスタMN4のドレインとの間に介挿されている。
MOSトランジスタMN5は、ソースが接地され、電流加算回路52から電流信号IF4に対応する電流を流すバイアス電圧がゲートに印加されている。
上述した構成により、MOSトランジスタMN5は、電流加算回路52の出力する加算された電流(IF4)に基づいてカレントミラー動作する。したがって、電流(IF4)が小さくなることで、コンデンサC3の充放電の周期が長くなって発振周波数foutが低くなり、電流(IF4)が大きくなることで、コンデンサC3の充放電の周期が短くなって発振周波数foutが高くなる。
【0035】
また、電流加算回路52から出力される信号電流IF4の電流値は、以下の(1)式(時間により変動する関数)により求めることができる。
IF4=IF3±IF2=(V1/r3)±IF2 …(1)
本実施形態にて述べた電圧−電流変換回路51、電流加算回路52及び電流制御発振回路53の構成に限らず、同様の動作を行うものであれば、どのような構成でもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態によるPLL回路の構成例を示すブロック図である。
【図2】図1のPLL回路の動作例を示す波形図である。
【図3】図1のPLL回路の動作例を示す波形図である。
【図4】図1における電圧−電流変換回路51、電流加算回路52の回路例を示す 概念図である。
【図5】図1の電流制御型発振回路53の構成例を示す概念的な回路図である。
【図6】PLL回路の一般的な構成を示すブロック図である。
【図7】従来例におけるPLL回路の構成を示すブロック図である。
【図8】他の従来例におけるPLL回路の構成を示すブロック図である。
【図9】図2のPLL回路の動作を説明する波形図である。
【図10】図2のPLL回路の動作を説明する波形図である。
【符号の説明】
【0037】
1…位相比較回路
2,3…チャージポンプ
4…ループフィルタ
5…VCO
6…分周器
51…電圧−電流変換回路
52…電流加算回路
53…電流制御発振回路
C2,C3…コンデンサ
CR1D,CR1U,CR2D,CR2U…定電流回路
MP1,MP2,MP3,MP4…MOSトランジスタ(Pチャネル型)
MN1,MN2,MN3,MN4,MN5…MOSトランジスタ(Nチャネル型)
R3…抵抗
SW1D,SW1U,SW2D,SW2U…スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧−電流変換回路と電流加算器と電流制御発振回路とから構成され、制御電圧及び制御電流に対応した周波数のパルスを出力する電圧制御発振回路と、
前記パルスと、前記電圧制御発振回路が生成すべき周波数の基準パルスとの位相差により、第1の制御信号及び第2の制御信号を出力する位相検出器と、
前記第1の制御信号により、第1の充電電流または第1の放電電流を出力する第1のチャージポンプ回路と、
前記第1の充電電流または前記第1の放電電流により前記制御電圧を生成し、前記電圧制御発振回路に出力するループフィルタと、
前記第2の制御信号により、第2の充電電流または第2の放電電流である前記制御電流を生成し、前記制御電圧発振回路に出力する第2のチャージポンプ回路と
を有することを特徴とするPLL回路。
【請求項2】
前記電圧−電流変換回路が前記制御電圧を電流に変換し、
前記電流加算器が、前記変換した電流と、前記制御電流とを加算し、この加算された電流を前記電流制御発振回路に対して周波数制御電流として供給する
ことを特徴とする請求項1に記載のPLL回路。
【請求項3】
前記ループフィルタが第1のチャージポンプの出力と接地点との間に介挿されたコンデンサから構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のPLL回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−152734(P2009−152734A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327295(P2007−327295)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】