説明

PM検出装置

【課題】簡素な構成で、正確にPMの堆積量を検出することができるPM検出装置を提供する。
【解決手段】静電容量がPMの堆積量によって変化するPMセンサ3と、可変抵抗器4と固定抵抗器5〜7が順次接続され、可変抵抗器4にPMセンサ3が並列接続され、可変抵抗器4に隣接する固定抵抗器5に、複数の固定コンデンサ41a〜41hの接続組み合わせを変えて静電容量を制御可能な可変コンデンサ8が並列接続されてなるブリッジ回路9と、電圧印加点a,b間に直流電圧を印加してブリッジ回路9が平衡するよう可変抵抗器4を調整し、その後、電圧印加点a,b間に交流電圧を印加してブリッジ回路9が平衡するよう可変コンデンサ8を調整し、可変コンデンサ8の静電容量からPMの堆積量を検出する検出部12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガス中のPMを捕集し、堆積したPMを高温の排気ガスにより燃焼除去するDPFに係り、簡素な構成で、正確にPMの堆積量を検出することができるPM検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンなどの内燃機関を搭載した車両では、内燃機関から大気までの排気ガスの排出流路にディーゼルパティキュレートフィルタ(Diesel Particulate Filter;以下、DPFという)を設置し、排気ガスに含まれる煤、すなわち粒子状物質(Particurate Matter;以下、PMという)を捕集している。DPFは、主としてセラミックからなり、ハニカム細孔(又は四角い細孔)を多数有するフィルタである。DPFでは、排気ガスの通路となるハニカム細孔の表面にPMが付着することでPMが捕集される。
【0003】
DPFに捕集されたPMが過度に多く堆積すると、内燃機関の排圧が上昇し内燃機関の特性の低下をきたす。そこで、内燃機関において主噴射後に必要に応じて追加燃料噴射を行う追加燃料噴射制御を行うことによって、排気温度を上昇させ、これによってDPFを昇温させてDPFに堆積したPMを燃焼させて除去する。この動作をDPF強制再生という。
【0004】
DPF強制再生時に、PMの堆積量が多いと、大量のPMが燃焼して温度が過度に上昇し、DPFが溶損してしまう。これを避けるためには、PMの堆積量を検出し、その検出した堆積量に基づいてDPF強制再生を開始するのが望ましい。ところが、従来は、正確に堆積量を検出できないので、安全係数を比較的多く取り、検出した堆積量があまり大きくならないうちにDPFを強制再生している。この結果、必要以上に短い間隔でDPF強制再生が実行されることになる。
【0005】
しかし、必要以上に短い間隔でDPF強制再生を実行すると燃料が余分に消費されることになり、燃費が悪化する。したがって、PMの堆積量を正確に検出し、最も適切な時期にDPF強制再生を行うようにするのが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−139294号公報
【特許文献2】特開2009−97410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
先に本発明者らは、DPFに複数の電極を設置すると、電極間の静電容量がPMの堆積量によって変化するという知見を得て、これによるPMセンサの出願を行った。しかしながら、DPFに電極を設置したPMセンサによる静電容量は非常に小さいため、従来の技術では安価な装置での測定が困難である。
【0008】
従来技術では、静電容量測定対象に対して固定コンデンサか固定抵抗器を直列に接続しておき、高周波の交流電流を流すことで静電容量測定対象の両端間に電圧を発生させ、この電圧を整流した後、ローパスフィルタに通してADコンバータに入力し、ADコンバータで読み取られた電圧から静電容量を算出する。
【0009】
ところが、PMセンサの静電容量は非常に小さく、例えば、数pFから数百pFである。印加する交流電流の周波数を数百KHz以下とすると、非常にインピーダンスが高い。したがって、検出回路も相応に高いインピーダンスを持つ必要があるが、素子、配線の分布容量などの面から、高いインピーダンスを確保することが難しく、正確な静電容量の測定ができない。
【0010】
一方、インピーダンスを下げるために、交流電流の周波数を高くすると、通信に使用されている周波数帯となり、不要輻射の問題が生じると共に、PMセンサと検出回路間の配線に発生する定在波の影響のため、配線の長さ、特性インピーダンスにより、PMセンサの特性が大きく変化してしまう。さらに、読み取られた電圧から静電容量を算出するには交流電流の電圧が正確でなければならないが、正確な振幅の交流電源を得るためには、複雑な制御回路が必要となり、動作の安定性やコストの面で不利である。
【0011】
このように、電極間の静電容量がPMの堆積量によって変化するようにしたPMセンサでは、従来技術で静電容量を正確に測定することができないため、正確にPMの堆積量を検出するのが困難である。
【0012】
ここで、本発明者らは、ブリッジ回路を用いたPMセンサの静電容量検出を検討中である。詳しくは実施形態で述べるが、PMセンサの静電容量と可変コンデンサの静電容量がつり合うように可変コンデンサの静電容量を掃引する。ブリッジ回路が平衡したとき、可変コンデンサの静電容量がPMセンサの静電容量を表すようにする。
【0013】
しかし、このような用途に対して好適な可変コンデンサが存在しない。従来の可変コンデンサとして、回転式エアバリコンをステッピングモータで回転させるもの、あるいは回転式エアバリコンをDCモータで回転させて回転角センサで回転角を検知するものは、機械的に大きい、構造が複雑、動力を必要とし消費電力が大きいなどの問題がある。また、可変容量ダイオードは、可変範囲が狭く、PMセンサの静電容量の変化に対応できない。また、可変容量ダイオードは、電圧を印加する必要があるため、ブリッジ回路への適用が困難である。したがって、本発明のために新規な可変コンデンサが望まれる。
【0014】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、簡素な構成で、正確にPMの堆積量を検出することができるPM検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために本発明は、内燃機関から大気までの排気ガスの排出流路に挿入されたディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、DPF)における粒子状物質(以下、PM)の堆積量を検出するPM検出装置であって、DPF内に配置された2つの電極間の静電容量がPMの堆積量によって変化するPMセンサと、電気的に制御される可変抵抗器と3つの固定抵抗器が順次接続され、前記可変抵抗器に前記PMセンサが並列接続され、前記可変抵抗器に隣接する固定抵抗器の1つに、電気的な制御により、静電容量の異なる複数の固定コンデンサの接続組み合わせを変えて、値の異なる複数の合成の静電容量に制御可能な可変コンデンサが並列接続されてなるブリッジ回路と、前記ブリッジ回路の4つの接続点のうち、前記可変コンデンサ及び固定抵抗器と前記可変抵抗器及びPMセンサとが接続された接続点とその対角に位置する接続点が電圧印加点となっており、前記電圧印加点間に直流電圧と交流電圧を選択的に印加するための直流電源及び交流電源と、前記電圧印加点間に直流電圧を印加して前記ブリッジ回路が平衡するよう前記可変抵抗器を調整し、その後、前記電圧印加点間に交流電圧を印加して前記ブリッジ回路が平衡するよう前記可変コンデンサを調整し、このときの前記可変コンデンサの静電容量からPMの堆積量を検出する検出部とを備えたものである。
【0016】
前記可変コンデンサは、静電容量の比が2のべき乗になる複数の固定コンデンサが各々スイッチを介して並列接続され、前記スイッチの開閉の組み合わせにより、合成の静電容量に制御されてもよい。
【0017】
前記複数の固定コンデンサは、静電容量が等しい複数の単位コンデンサの組み合わせからなり、その組み合わせは、前記単位コンデンサが1つだけのもの、前記単位コンデンサが直列に2個以上接続されたもの、前記単位コンデンサが並列に2個以上接続されたものを含んでもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0019】
(1)構成が簡素である。
【0020】
(2)正確にPMの堆積量を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態を示すPM検出装置の回路構成図である。
【図2】本発明のPM検出装置に用いるPMセンサの特性図である。
【図3】(a)〜(d)は、本発明のPM検出装置に用いるPMセンサの概略構成図である。
【図4】本発明のPM検出装置における可変コンデンサの概略の内部回路図である。
【図5】本発明のPM検出装置における可変コンデンサの概略の内部回路図である。
【図6】本発明のPM検出装置を搭載した車両の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0023】
図1に示されるように、本発明に係るPM検出装置1は、DPF2内に配置された2つの電極間の静電容量がPMの堆積量によって変化するPMセンサ3と、電気的に制御される可変抵抗器4と3つの固定抵抗器5,6,7が順次接続され、可変抵抗器4にPMセンサ3が並列接続され、可変抵抗器4に隣接する固定抵抗器5に、電気的な制御により、静電容量の異なる複数の固定コンデンサの接続組み合わせを変えて、値の異なる複数の合成の静電容量に制御可能な可変コンデンサ8が並列接続されてなるブリッジ回路9と、ブリッジ回路9の4つの接続点のうち、可変コンデンサ8及び固定抵抗器5と可変抵抗器4及びPMセンサ3とが接続された接続点aとその対角に位置する接続点bが電圧印加点a,bとなっており、電圧印加点a,b間に直流電圧と交流電圧を選択的に印加するための直流電源10及び交流電源11と、電圧印加点a,b間に直流電圧を印加してブリッジ回路9が平衡するよう可変抵抗器4を調整し、その後、電圧印加点a,b間に交流電圧を印加してブリッジ回路9が平衡するよう可変コンデンサ8を調整し、このときの可変コンデンサ8の静電容量からPMの堆積量を検出する検出部12とを備える。
【0024】
さらに、本実施形態では、PM検出装置1は、ブリッジ回路9の4つの接続点のうち、電圧印加点a,bに挟まれた2つの接続点c,dが測定点となっており、測定点c,dのそれぞれにプラス入力端子とマイナス入力端子が接続された差動増幅器13を備え、検出部12は、電圧印加点a,b間に直流電圧が印加されたときには差動増幅器13の出力が0となるように可変抵抗器4を調整し、電圧印加点a,b間に交流電圧が印加されたときには差動増幅器13の出力が0となるように可変コンデンサ8を調整するようになっている。
【0025】
DPF2は、従来公知のもので、多数のハニカム細孔を有するセラミックから構成される。
【0026】
PMセンサ3は、図2に示されるように、DPF2に捕集されたPMの堆積量が増えるとそれに比例して静電容量が増える特性を有する。
【0027】
図3(a)に示したPMセンサ3aは、円柱状のDPF2の外周の片側半分に沿わせて円筒片状の1つの電極31を設け、反対側半分に沿わせて円筒片状のもう1つの電極32を設けたものである。これにより、2つの電極31,32がDPF2を両側から挟んで互いに対向し、DPF2にPMが捕集されると、電極31,32間に存在するPMの影響で静電容量が変化する。
【0028】
図3(b)に示したPMセンサ3bは、円柱状のDPF2の外周全体を覆うように円筒状の1つの電極33を設け、DPF2の中心部に円筒状のもう1つの電極34を設けたものである。これにより、2つの電極33,34がDPF2の内外に同心状に配置され、DPF2にPMが捕集されると、電極33,34間に存在するPMの影響で静電容量が変化する。
【0029】
図3(c)に示したPMセンサ3cは、円柱状のDPF2の外周全体を覆うように円筒状の1つの電極35を設け、DPF2の中心部に線が円筒状に複数本配置されてなるもう1つの電極36を設けたものである。
【0030】
図3(d)に示したPMセンサ3dは、円柱状のDPF2の上流と下流それぞれにメッシュ状の2つの電極37,38を設けたものである。
【0031】
図1の説明に戻る。
【0032】
可変抵抗器4は、検出部12から電気的に制御されて抵抗値が変化するものである。例えは、回転式ポテンショメータをステッピングモータで回転させるもの、回転式ポテンショメータをDCモータで回転させて回転角センサで回転角を制御するもの、複数の抵抗器からなる梯子回路のタップを切り替えるものなどからなり、適宜な上限抵抗値と下限抵抗値の間で、無段階に、あるいは適宜なきざみで段階的に抵抗値が変化するようになっている。
【0033】
固定抵抗器5,6,7は、従来公知のものを用いる。固定抵抗器5,6,7の抵抗値は、互いに異なってもよく、互いに等しい抵抗値であってもよい。
【0034】
可変コンデンサ8は、図4に示されるように、静電容量の比が2のべき乗になる複数の固定コンデンサ41a〜41hが各々スイッチ42a〜42hを介して並列接続されてなる。スイッチ42a〜42hには、リレー、半導体スイッチなどがある。
【0035】
可変コンデンサ8は、スイッチ42a〜42hの開閉の組み合わせにより、合成の静電容量に制御される。すなわち、固定コンデンサ41eの静電容量をC0としたとき、固定コンデンサ41a〜41hの静電容量はC0×2n(n=−3〜+4)で表される。スイッチ42a〜42hのうちスイッチ42a〜42gを開いてスイッチ42hのみを閉じると、可変コンデンサ8の静電容量は固定コンデンサ41hと同じ1/8C0となり、スイッチ42a〜42fを開いてスイッチ42h,42gのみを閉じると、可変コンデンサ8の静電容量は固定コンデンサ41hと固定コンデンサ41gの並列による静電容量(1/8+1/4)C0となる。このようにして、可変コンデンサ8は、最小1/8C0から最大(1/8+1/4+1/2+1+2+4+8+16)C0まで、1/8C0きざみで段階的に255通りに静電容量を変化させることができる。
【0036】
さらに、複数の固定コンデンサ41a〜41hは、図5に示されるように、静電容量がC0の単位コンデンサ51の組み合わせからなる。例えば、固定コンデンサ41eは、単位コンデンサ51が1つだけで構成される。固定コンデンサ41fは、単位コンデンサ51が直列に2個接続されて構成される。固定コンデンサ41gは、単位コンデンサ51が直列に4個接続されて構成される。一方、固定コンデンサ41dは、単位コンデンサ51が並列に2個接続されて構成される。固定コンデンサ41cは、単位コンデンサ51が並列に4個接続されて構成される。このように、45個の単位コンデンサ51を用いて、2のべき乗個ずつ直列又は並列に用いることにより、静電容量の比が2のべき乗になる複数の固定コンデンサ41a〜41hが構成される。
【0037】
再び図1の説明に戻る。
【0038】
図1のブリッジ回路9は、電圧印加点a,bと測定点c,dを有するいわゆるホイートストンブリッジを構成するものであり、直流時には4つの抵抗からなる抵抗ブリッジとなり、交流時には4つの交流インピーダンスからなる交流インピーダンスブリッジとなる。
【0039】
直流電源10は、車載のバッテリ電源あるいはバッテリ電源を一次電源とする二次直流電源などが利用できる。直流電源10は、電圧印加点a,b間に直流電圧を印加するかしないかを検出部12から制御可能である。
【0040】
交流電源11は、ブリッジ回路9中のPMセンサ3と可変コンデンサ8を交流インピーダンスとして動作させるためのもので、例えば、発振器で構成される。周波数としては、不要輻射の問題が生じない低い周波数とするのが好ましく、例えば、数百KHz以下とする。交流電源11は、電圧印加点a,b間に交流電圧を印加するかしないかを検出部12から制御可能である。
【0041】
検出部12は、プログラム式のデジタル回路であり、直流電源10、交流電源11、可変抵抗器4、可変コンデンサ8を制御すると共に、差動増幅器13の出力電圧を読み取り、ブリッジ回路9の平衡点を検出することができる。検出部12は、車両の燃料噴射等を制御する電子制御装置(ECU)に組み込むのが好ましい。
【0042】
差動増幅器13は、プラス入力端子とマイナス入力端子の電圧の差を増幅して出力する演算増幅器である。
【0043】
図6に示されるように、本発明のPM検出装置1は、車両の内燃機関61から大気までの排気ガスの排出流路62に挿入されたDPF2におけるPMの堆積量を検出するものである。DPF2内にはPMセンサ3が設置される。ブリッジ回路9、直流電源10(二次直流電源の場合)、交流電源11、差動増幅器13は、回路基板63に搭載される。回路基板63と検出部12は、車室内、エンジンルーム内、車体下面など適宜な場所に設置することができる。回路基板63と検出部12は、一体化させて同一のユニットとしてもよい。
【0044】
以下、本発明のPM検出装置1の動作を説明する。
【0045】
PMセンサ3においては、2つの電極間の静電容量が捕集されたPMの堆積量に応じて図2のようにほぼ直線的に変化する。よって、PMセンサ3の静電容量に基づいてPMの堆積量を検出することができる。これは、電極間に導体であるPMが入ることで、見かけ上、電極間距離が小さくなり静電容量が大きくなる、また、電極間の媒体中にPMが増加して誘電率が大きくなり静電容量が大きくなるからと考えられる。
【0046】
本発明では、図1のブリッジ回路9において交流インピーダンスブリッジが平衡状態のとき、可変コンデンサ8の静電容量とPMセンサ3の静電容量が等しくなることから、可変コンデンサ8の静電容量に基づいてPMの堆積量を検出する。ただし、これに先立ち、ブリッジ回路9において抵抗ブリッジの平衡を得る必要がある。これは、交流インピーダンスブリッジのみで平衡をとろうとすると、平衡を与える抵抗値と静電容量の組み合わせが複数存在し、静電容量が1つに定まらないからである。
【0047】
検出部12は、直流電源10を制御して電圧印加点a,b間に直流電圧を印加する。この状態で、ブリッジ回路9が平衡するよう可変抵抗器4を調整する。具体的には、検出部12は、可変抵抗器4の上限抵抗値と下限抵抗値の間で抵抗値を掃引するように可変抵抗器4を制御しつつ、差動増幅器13の出力を読み込む。ブリッジ回路9の平衡がとれると、測定点c,d間に電圧の差が生じない状態となるので、差動増幅器13の出力が0又は微小となる。検出部12は、差動増幅器13の出力が0又は微小となる抵抗値に可変抵抗器4を固定する。
【0048】
その後、検出部12は、直流電圧の印加を停止し、交流電源11を制御して電圧印加点a,b間に交流電圧を印加する。この状態で、ブリッジ回路9が平衡するよう可変コンデンサ8を調整する。具体的には、検出部12は、可変コンデンサ8の上限静電容量と下限静電容量の間で、静電容量を掃引するように可変コンデンサ8を制御しつつ、差動増幅器13の出力を読み込む。ブリッジ回路9の平衡がとれると、測定点c,d間に電圧の差が生じない状態となるので、差動増幅器13の出力が0又は微小となる。
【0049】
このようにしてブリッジ回路9が直流と交流において平衡すると、検出部12は、可変コンデンサ8の静電容量に基づいてPMの堆積量を検出する。可変コンデンサ8の静電容量は、検出部12が制御によって与える値であるので、この値とPMの堆積量との対照表をあらかじめ検出部12に設定しておけば、検出部12は、対照表からPMの堆積量を読み出して検出結果とすることができる。
【0050】
なお、ブリッジ回路9の平衡は、直流における平衡と交流における平衡を1回ずつ行うにとどまらず、直流における平衡と交流における平衡を交互に複数回繰り返すのが望ましい。
【0051】
前述の動作中、検出部12が静電容量を掃引するように可変コンデンサ8を制御する際、検出部12は、スイッチ42a〜42hの開閉の組み合わせを、8桁の2進数における0と1の組み合わせのように切り替えることで、1/8C0きざみ(分解能)で段階的に255通りに静電容量を変化させることができる。
【0052】
以上説明したように、本発明のPM検出装置1によれば、ブリッジ回路9が平衡となる可変コンデンサ8の静電容量を探ることによってPMセンサ3の静電容量を知ることができる。可変コンデンサ8の静電容量は、検出部12が制御によって与えた値であるから、正確である。よって、検出されたPMの堆積量は正確となる。
【0053】
本発明のPM検出装置1によれば、交流電源11が印加する交流電圧の振幅値とは無関係にブリッジ回路9の平衡をとることができるので、交流電圧の振幅値が正確である必要はない。このため、交流電源11を構成する発振器回路は、簡素な構成とすることができる。これにより、交流電源11は安価でありながら、信頼性の高いものとすることができる。
【0054】
本発明のPM検出装置1によれば、可変コンデンサ8は、静電容量の比が2のべき乗になる複数の固定コンデンサ41a〜41hを任意に組み合わせて並列接続し、合成の静電容量が得られるように制御するので、回転式エアバリコンをステッピングモータやDCモータで回転させるのに比べて、機械的に小型にでき、構造も簡素となり、安価になると共に、動力をほとんど必要としないので消費電力が低減できる。
【0055】
本発明のPM検出装置1によれば、複数の固定コンデンサ41a〜41hは静電容量が等しい複数の単位コンデンサ51の組み合わせで構成される。ここで、市販の固定コンデンサは、静電容量がE12系列、E24系列と呼ばれる等比数列で設定されており、静電容量の比が2のべき乗になるものを入手するのは困難である。また、市販の固定コンデンサは、個々の静電容量のものがそれぞれ別ロットであるため、誤差のバラツキが大きい。その点、本発明では、単位コンデンサ51を1つだけ、あるいは単位コンデンサ51を直列に2の倍数個接続して、あるいは単位コンデンサ51を並列に2の倍数個接続することで、静電容量の比が2のべき乗になる複数の固定コンデンサ41a〜41hを実現することができるので、市販品に制約されることがなく、特注する必要もない。
【0056】
本発明のPM検出装置1によれば、複数の固定コンデンサ41a〜41hを静電容量が等しい複数の単位コンデンサ51の組み合わせで構成される。ここで、市販の固定コンデンサは、誤差範囲(ばらつきの範囲)が大きく、固定コンデンサ41hに相当するような小さい静電容量が固定コンデンサ41aに相当するような大きい静電容量の誤差よりはるかに小さいことになり、合成する意味がなくなってしまう。その点、本発明では、静電容量が等しい複数の単位コンデンサ51は、ばらつきの範囲が小さい同一ロットから取り出して使用することができる。取り出し方は、要求される精度に応じて無作為にしてもよく、必要があれば、同一ロットから誤差が揃ったものを選別して取り出すようにするとよい。これにより、固定コンデンサ41a〜41hの静電容量の比が精度よく2のべき乗になるように揃えることができ、可変コンデンサ8の設定値に対する連続性が確保できる。静電容量はある程度の誤差を含むが、ソフトウェアによる学習補正を行うとよい。回転式エアバリコンを機械的に可変させる場合でも同様の学習補正は有効である。
【符号の説明】
【0057】
1 PM検出装置
2 DPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)
3 PMセンサ
4 可変抵抗器
5,6,7 固定抵抗器
8 可変コンデンサ
9 ブリッジ回路
10 直流電源
11 交流電源
12 検出部
13 差動増幅器
41a〜41h 固定コンデンサ
42a〜42h スイッチ
51 単位コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から大気までの排気ガスの排出流路に挿入されたディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、DPF)における粒子状物質(以下、PM)の堆積量を検出するPM検出装置であって、
DPF内に配置された2つの電極間の静電容量がPMの堆積量によって変化するPMセンサと、
電気的に制御される可変抵抗器と3つの固定抵抗器が順次接続され、前記可変抵抗器に前記PMセンサが並列接続され、前記可変抵抗器に隣接する固定抵抗器の1つに、電気的な制御により、静電容量の異なる複数の固定コンデンサの接続組み合わせを変えて、値の異なる複数の合成の静電容量に制御可能な可変コンデンサが並列接続されてなるブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路の4つの接続点のうち、前記可変コンデンサ及び固定抵抗器と前記可変抵抗器及びPMセンサとが接続された接続点とその対角に位置する接続点が電圧印加点となっており、前記電圧印加点間に直流電圧と交流電圧を選択的に印加するための直流電源及び交流電源と、
前記電圧印加点間に直流電圧を印加して前記ブリッジ回路が平衡するよう前記可変抵抗器を調整し、その後、前記電圧印加点間に交流電圧を印加して前記ブリッジ回路が平衡するよう前記可変コンデンサを調整し、このときの前記可変コンデンサの静電容量からPMの堆積量を検出する検出部とを備えたことを特徴とするPM検出装置。
【請求項2】
前記可変コンデンサは、静電容量の比が2のべき乗になる複数の固定コンデンサが各々スイッチを介して並列接続され、前記スイッチの開閉の組み合わせにより、合成の静電容量に制御されることを特徴とする請求項1記載のPM検出装置。
【請求項3】
前記複数の固定コンデンサは、静電容量が等しい複数の単位コンデンサの組み合わせからなり、その組み合わせは、前記単位コンデンサが1つだけのもの、前記単位コンデンサが直列に2個以上接続されたもの、前記単位コンデンサが並列に2個以上接続されたものを含むことを特徴とする請求項2記載のPM検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−153582(P2011−153582A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16010(P2010−16010)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】