説明

PM酸化触媒及びこれを用いた排気ガス浄化触媒

【課題】低温下で、優れた酸素吸放出性を有し、かつ、この酸素吸放出機能の持続性に優れるPM酸化触媒及びこれを用いた排気ガス浄化触媒を提供する。
【解決手段】ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物であって低温での酸素吸放出性に優れる酸素低温吸放出材と、ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物であって酸素移動性に優れる酸素易移動材と、を含有するPM酸化触媒である。酸素低温吸放出材が、LaSr(1)(式中のMは、鉄、コバルト及びマンガンから成る群より選ばれた少なくとも1種の元素、xは0.2〜0.8、yは0.8〜0.2を示す)で表され、酸素易移動材が、BaMIIIII1−z(2)(式中のMIIは、ビスマス又はセリウムのいずれか1種の元素、MIIIは、イットリウム、プラセオジム、スカンジウム及びネオジムから成る群より選ばれた少なくとも1種の元素、zは0.1〜0.9を示す)で表される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック、船舶及び発電機等のディーゼルエンジンから排出される排気ガス中のパティキュレート(PM)等の固体成分を燃焼させるPM酸化触媒及びこれを用いた排気ガス浄化触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
バスやトラック等のディーゼルエンジンから排出される排気ガス中には、パティキュレート(Particulate Matter;粒子状物)や、NOx(窒素酸化物)等が含まれている。
上記のパティキュレート中には、煤(炭素;C)や軽油中の硫黄が酸化されて生成されるサルフェート(Sulfate;硫酸塩)等の不溶性有機成分(Insoluble Organic Fraction)、及び未燃HC(炭化水素)や潤滑油HC等の可溶性有機成分(SOF;Soluble Organic Fraction)等が含まれている。
【0003】
これらは、大気中に排出されると、大気汚染や人体に悪影響を与えるので好ましくない。このため、最近ではバスやトラック等のディーゼル車に対して、排気ガス中のPM等を低減・除去する装置を装着することが法令や条例等で義務付けられる方向になりつつある。
【0004】
パティキュレート(以下、「PM」とも称する。)等は、例えば、セラミックス系材料から成形されたハニカム型パティキュレートフィルタ等によって低減・除去される。
このハニカム型PMフィルタは、各セル間が薄肉の多孔性隔壁で仕切られた構造となっており、その隔壁の表面に触媒が担持され、セル内を通過する排気ガス中のPM、CO(一酸化炭素)、HC等が、隔壁に接触する間に、低減・除去される仕組みとなっている。
また、触媒反応により除去しきれないPM中の煤成分等は、PMフィルタの隔壁表面や隔壁内部の細孔に捕集される。
【0005】
PMフィルタに捕集されるPM量は決まっているため、フィルタの許容量を超える前にフィルタに捕集されたPMを除去してフィルタを再生する処理が必要になる。
フィルタを再生処理する方法として、例えば、フィルタに電力や未燃の燃料等を供給して、フィルタに捕集されたPMを燃焼させて除去する方法が挙げられる。
【0006】
上述の方法は、フィルタの再生に投入する電力や燃料等のエネルギー量が大きいことが問題である。近年においては、低温下でフィルタを再生し、電力消費の削減や燃費を向上させることが課題となっている。
この課題を解決する方法としては、例えば、PMフィルタに担持される触媒反応を活性化し、低温下で酸化燃焼反応を向上させる方法が考えられる。
【0007】
例えば、特許文献1には、NOxの還元浄化に影響せず、従来のセリウム−ジルコニウム複合酸化物と同等の酸素吸蔵能を有するセリウム−ジルコニウム複合酸化物を含む触媒の技術が記載されている。
また、特許文献2には、CexZryMzO式(式中、Mは、ランタン及びプラセオジウムを含む群から選ぶ少なくとも1種の元素、zは、0〜0.3、x/yは、1〜19、x、y、zは、x+y+z=1を示す)で表される複合酸化物を含む触媒の技術が記載されている。
これらの触媒は、酸素吸蔵能を有し、触媒から生成される酸素によって、低温下においても、PMの酸化・除去を可能としている。
【特許文献1】特許第3528839号公報
【特許文献2】特許第3657620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、かかる従来の技術において、特許文献1の触媒は、セリウム−ジルコニウム複合酸化物中のセリウム含有率を低い範囲にした場合であっても、従来の触媒と同程度の酸素吸蔵能を有するものであり、酸化燃焼反応の活性化につながる、優れた酸素吸放出性を有するものではない。また、低温下における、酸素吸放出機能の持続時間も明らかではない。
また、特許文献2の触媒も、酸素吸放出性は有するものの、この機能の持続時間は明らかではない。
【0009】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、低温下で、優れた酸素吸放出性を有し、かつ、この酸素吸放機能の持続性に優れるPM酸化触媒及びこれを用いた排気ガス浄化触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、酸素吸放出性に優れる酸素低温吸放出材と、酸素移動性に優れる酸素易移動材と、を併用することによって、低温下で、優れた酸素吸放出性と、この機能の持続性に優れるPM酸化触媒が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明のPM酸化触媒は、ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物であって低温での酸素吸放出性に優れる酸素低温吸放出材と、ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物であって酸素移動性に優れる酸素易移動材と、を含有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明のPM酸化触媒は、上記酸素低温吸放出材が、次式(1)
LaSr・・・(1)
(式中のMは、鉄、コバルト及びマンガンから成る群より選ばれた少なくとも1種の元素、xは0.2〜0.8、yは0.8〜0.2を示す)で表され、
上記酸素易移動材が、次式(2)
BaMIIIII1−z・・・(2)
(式中のMIIは、ビスマス又はセリウムのいずれか1種の元素、MIIIは、イットリウム、プラセオジム、スカンジウム及びネオジムから成る群より選ばれた少なくとも1種の元素、zは0.1〜0.9を示す)で表されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、酸素吸放出性に優れる酸素低温吸放出材と、酸素易動性に優れる酸素易移動材と、を含有することにより、低温下で、優れた酸素吸放出性を有し、かつ、酸素吸放出機能の持続性に優れるPM酸化触媒及びこれを用いた排気ガス浄化触媒を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明のPM酸化触媒につき詳細に説明する。なお、本明細書において、濃度、含有量及び配合量などのついての「%」は、特記しない限り質量百分率を表すものとする。
【0015】
上述の如く、本発明のPM酸化触媒は、ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物であって低温での酸素吸放出性に優れる酸素低温吸放出材と、ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物であって酸素移動性に優れる酸素易移動材と、を含有するものである。
【0016】
<酸素低温吸放出材>
まず、本発明のPM酸化触媒に含まれる酸素低温吸放出材について説明する。
本発明の酸素低温吸放出材は、ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物であって、低温での酸素吸放出性に優れるものである。
ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物は、ABOの組成式で表される。
本発明の酸素低温吸放出材は、ペロブスイカイト型構造を有する複合酸化物のAサイトにランタノイド元素(La等)を含み、Aサイトの一部にアルカリ土類金属元素(例えば、Sr等)を含むものであることが好ましい。
また、酸素低温吸放出材は、Bサイトに遷移元素(Fe等)から選択される少なくとも1種、好ましくは2種以上の元素を含むものであることが好ましい。
【0017】
本発明の酸素低温吸放出材は、特に、次式(1)で表されるペロブスカイト型構造を有する複合酸化物であることが好ましい。
LaSr・・・(1)
(式中のMは、鉄(Fe)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)から成る群より選ばれた少なくとも1種、好ましくは2種以上の元素、xは0.2〜0.8、yは0.8〜0.2を示す。)
なお、上記の式(1)中、Mが、2種以上の元素を含むものである場合は、上記の式(1)は、次式(1)’で表される。
LaSrIaIb1−z・・・(1)’
(式中のzは0.1〜0.9を示す。)
【0018】
上記式(1)で表されるペロブスカイト型構造を有する複合酸化物は、低温下において、優れた電子伝導性を有し、複合酸化物内の酸素(O2−)に電子を奪って、酸素を放出し、又は、複合酸化物と接触した酸素(O)から電子を供給して、酸素を吸収する。上記(1)式で表される複合酸化物は、PMの酸化燃焼反応を活性化する、優れた酸素吸放出性を有する。
【0019】
本発明の酸素低温吸放出材は、好ましくは450℃以下、より好ましくは350℃以下、更に好ましくは300℃以下で、酸素を吸収・放出する。
酸素低温吸放出材が、酸素を吸収・放出する温度は、熱重量分析(TG:Thermogravimateric analysis)及び示差熱分析(DTA:Differential thermal analysis)によって測定される。
例えば、実際の使用条件において、ディーゼルエンジンの排ガスは、200℃以下の温度になる。PMを燃焼するためには、外部エネルギーをかけるか、エンジン回転数又は燃料噴射量を変えて、200℃以上に温度を上げることによってPM燃焼を行うことが必要になる。この場合に、よりエネルギーをかけないで、即ち、200℃近い温度でPMの連続燃焼を行うことが好ましい。
従って、本明細書において、低温とは、よりエネルギーをかけずにPMの燃焼を行うことができる温度をいい、より200℃に近い温度をいう。即ち、本明細書において低温とは、PMを燃焼して除去することができるより低い温度、好ましく550℃以下、より好ましくは500℃以下、更に好ましくは450℃以下、特に好ましくは420℃以下である。
【0020】
上記の式(1)で表されるペロブスカイト型構造を有する複合酸化物は、低温下で優れた酸素吸放出性を有するものの、その機能は長時間持続するものではないことが、発明者らの実験によって明らかとなった。
酸素吸放出機能の持続性がない場合、触媒によるPM等の酸化燃焼反応の活性化が一時的なものとなり、PM等を酸化燃焼させるためのエネルギー量の低減に繋がらないおそれがある。
本発明者らが、鋭意検討したところ、同じペロブスカイト型構造を有する他の複合酸化物は、低温下での酸素吸放出性が上記の式(1)で表される複合酸化物よりも劣るものの、低温下で優れた酸素移動性を有することを見出した。
次に、ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物であって、酸素移動性に優れる酸素易移動材について説明する。
【0021】
<酸素易移動材>
本発明の酸素易移動材は、ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物であって、低温での酸素移動性に優れるものである。
本発明の酸素易移動材は、ペロブスイカイト型構造を有する複合酸化物のAサイトにアルカリ土類金属元素(例えば、Ba等)を含むものであることが好ましい。
また、酸素易移動材は、Bサイトにセリウム又はビスマスの1種類を含み、かつ、このBサイトの一部に希土類元素(イットリウム、スカンジウム、ランタノイド等)から選択される少なくとも1種の元素を含むものであることが好ましい。
【0022】
本発明の酸素易移動材は、特に、次式(2)で表されるペロブスカイト型構造を有する複合酸化物であることが好ましい。
BaMIIIII1−z・・・(2)
(式中のMIIは、セリウム(Ce)又はビスマス(Bi)のいずれか1種の元素、MIIIは、イットリウム(Y)、プラセオジム(Pr)、スカンジウム(Sc)及びネオジム(Nd)から成る群より選ばれた少なくとも1種の元素、zは0.1〜0.9を示す。)
【0023】
本発明の酸素易移動材は、低温下で、優れた酸素移動性を有し、酸素易移動材を通して、酸素低温吸放出材の酸素欠損部分に酸素イオンを供給するので、酸素低温吸放出材の優れた酸素吸放出性を持続させることができる。
【0024】
本発明の酸素易移動材は、酸素低温吸放出材が酸素を吸収・放出する温度よりも、酸素易移動材の電気伝導度の変曲点を示す温度が低いものであることが好ましい。
酸素易移動材の電気伝導度の変曲点を示す温度(酸素移動開始温度)が、酸素低温吸放出材のTG−DTAによる触媒−PM反応温度(酸素放出温度)及びTG−TDAによる酸素−触媒反応温度(酸素吸収温度)の両温度よりも低い場合は、触媒−酸素反応、酸素移動、触媒−PM反応が同時に全て進行可能となる。
一方、上記の場合と逆の場合は、酸素低温吸放出材による酸素の放出と吸収だけが進行し、酸素易移動材による酸素の移動が効果的に行われないので、PMの燃焼を持続する効果が得られ難くなる。
【0025】
更に、本発明のペロブスカイト型構造を有する複合酸化物である酸素易移動材は、イオン化エネルギーが、好ましくは40eV以上、より好ましくは50eV以上、更に好ましくは60eV以上である元素を用いて構成されていることが好ましい。
酸素易移動材を構成する元素のイオン化エネルギーが50eV以上であると、酸素移動開始温度(酸素易移動材の電気伝導度の変曲点を示す温度)が、40eVの場合よりも100℃低下した。また、60eV以上であると、酸素易移動開始温度が更に100℃(40eVの場合と比較して200℃)低下した。
イオン化エネルギーは、より高い酸化数になるために必要なエネルギーであるので、イオン化エネルギーの数値が高い程、酸化が困難なことを示すことになる。
従って、酸素易移動材を構成する元素として、イオン化エネルギーが40eV以上のものを用いると、酸素易移動材(ペロブスカイト型構造の複合酸化物)中で、比較的低温下において、酸素が容易に脱離し移動し易くなる。
【0026】
本発明の酸素易移動材は、好ましくは550℃以下、より好ましくは450℃以下、さらに好ましくは350℃以下に電気伝導度の変曲点を有し、これらの温度以下で優れた酸素移動性を有する。
【0027】
本発明の酸素易移動材は、電気伝導度測定による抵抗値(R)から算出された電気伝導度σの対数(logσ)と温度の逆数(1/T)との関係を表す曲線が、ヒステリシスループを有する(図1参照)。
図1に示すように、酸素易移動材の上記曲線がヒステリシスループを有することから、ペロブスカイト型構造の複合酸化物の内部で、酸素(具体的には、酸素イオン)が移動していることを推測することができる。
即ち、ペロブスカイト型構造の複合酸化物内部で酸素イオンが移動すると、酸素イオンに束縛されていた電子が自由となり、この束縛自由電子は、複合酸化物に元々含まれていた自由電子と共に移動する。この束縛自由電子の移動が、電気伝導度の変化となって表れ、ヒステリシスループを形成すると考えられる。なお、このヒステリシスループの形成が開始される温度を、酸素移動開始温度とする。
なお、ペロブスカイト型構造の複合酸化物中で、イオンの移動がない場合、即ち、自由電子のみが移動している場合は、電気伝導度測定による抵抗値(R)から算出された電気伝導度σの対数(logσ)と温度の逆数(1/T)との関係をアーレニウスプロットした線は、直線で近似されることが知られている(必要であれば、「化学総説No.37.1982 機能性セラミックの設計、66頁、学術出版センター」参照)。
なお、本明細書において、「酸素移動性」とは、特記しない場合であっても、酸素イオン移動性の意味も表すものとする。
【0028】
本発明のPM酸化触媒は、上記(1)式で表される酸素低温吸放出材を、好ましくは20〜99%、上記(2)式で表される酸素易移動材を、好ましくは1〜80%の割合で含むものである。
また、本発明のPM酸化触媒は、上記(1)式で表される酸素低温吸放出材を、より好ましくは40〜99%、上記(2)式で表される酸素移動材を、より好ましくは1〜60%の割合で含むものである。
酸素低温吸放出材と酸素易移動材の割合が上記範囲内であると、優れた酸素吸放出性と、この機能の持続性を示し、低温下で、長期に亘りPMの酸化燃焼反応を促進することができるため好ましい。
【0029】
また、本発明のPM酸化触媒は、積層構造を有し、いずれか一方の層に酸素低温吸放出材を含有し、他方の層に酸素易移動材を含有するものであることが好ましい。
積層構造の積層数は、特に限定されないが、例えば、酸素低温吸放出材を含有する層と、酸素易移動材を含有する層を設けた、少なくとも2層構造であることが好ましい。
また、PM酸化触媒は、優れた酸素吸放出性を発揮させる観点から、排気ガス等と接触する表層に酸素低温吸放出材を含有する層を設け、該表層よりも内部の層に酸素易移動材を含有する層を設けた積層構造であることが好ましい。
積層構造を構成する各層には、酸素低温吸放出材と酸素易移動材を、各々単独で含有させてもよく、酸素低温吸放出材と酸素易移動材の両方を含有させてもよく、各層ごとに両者の含有割合を変化させてもよい。
【0030】
更に、本発明のPM酸化触媒は、例えば、ミクロンオーダーの酸素低温吸放出材から成る粒子の周囲に、酸素易移動材をコートした2層構造の粒子形状のものであってもよい。
【0031】
本発明のPM酸化触媒は、以上に説明した酸素低温吸放出材と酸素易移動材がパティキュレートフィルターに担持されて成るものであることが好ましい。
更に、本発明のPM酸化触媒は、ディーゼルエンジン等から排出される排気ガス流路内に配置される、ハニカム状モノリス担体等の一体構造型触媒担体に担持して成るものであることが好ましい。
なお、パティキュレートフィルターとしては、一端が閉塞した複数個のセルを有し、隣接するセル間では、一つのセルの閉塞端と他のセルの開放端とが交互に配置された端面を有する、いわゆるチェッカードハニカム担体が好ましい。
【0032】
上述のように、本発明のPM酸化触媒は、低温下での酸素吸放出性と、この機能の持続性に優れるものであるため、ディーゼルエンジン等から排出される比較的低温の排気ガスを浄化するための、排気ガス浄化触媒として好適に用いることができる。
【0033】
本発明のPM酸化触媒は、酸素低温吸放出材と酸素易移動材とを必須成分とするものであるが、これ以外の成分、好ましくは、白金、パラジウム及びロジウムから成る群より選ばれた少なくとも1種の貴金属を更に含有してもよい。
これらの貴金属をPM酸化触媒中に含有させることによって、排気ガス中に含まれるNOx(窒素酸化物)やCO(一酸化炭素)、未燃HC(炭化水素)等の酸化反応等を促進し、排気ガス中のこれらの成分を低減・除去効率を向上させることができ、排気ガス浄化触媒として更に好適に用いることができる。
【0034】
本発明のPM酸化触媒を製造する方法は、特に限定されないが、例えば、次のような方法が挙げられる。
酸素低温吸放出材又は酸素易移動材となる、ペロブスカイト型構造の複合酸化物を構成する元素を有する硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸、塩酸塩等を用いて、所望の複合酸化物の組成比となるように混合し、仮焼成した後、本焼成し、粉砕することで、粉末状のペロブスカイト型構造の複合酸化物を得ることができる。組成、焼成条件等の詳細な条件は実施例のとおりである。
得られた酸素低温吸放出材を構成するペロブスカイト型構造の複合酸化物と、酸素易移動材を構成するペロブスカイト型構造の複合酸化物を所定の比率で混合し、更にアルコールを加えて混合した後、乾燥することによって、PM酸化触媒を得ることができる。
【0035】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
まず、酸素低温吸放出材と、酸素易移動材と、両者を混合したPM酸化触媒のサンプルを形成し、これらのサンプルの機能の違いを、PMの代わりにカーボンブラック(以下、「CB」と称する。)を用いたCB燃焼挙動により確認した。なお、CBは、酸素低温吸放出材、酸素易移動材及び両者の混合物の各々と乳鉢で20分間混合した後、CB燃焼挙動の実験に用いた。
CB燃焼挙動は、CB燃焼時に生成された二酸化炭素(CO)と酸素(O)のイオン強度によって表した。以下に、サンプルの製造方法と、CB燃焼時のCO及びOのイオン強度の測定方法を示す。
【0037】
<酸素低温吸放出材の製造>
La,Sr,Fe,Coの炭酸塩原料を所定量秤量し、ボールミルによりアルコール中で24時間混合し、得られたスラリーを乾燥した後、1200℃の大気中で、24時間、仮焼し、仮焼物を得た。この仮焼物をアルコール中で、平均粒径が0.8μm以下となるように粉砕、乾燥し、粉砕物を得た。その後、この粉砕物を1500〜1600℃の空気中で、24時間、本焼成して焼結体を得た。
得られた焼結体をアルコール中で、平均粒径が1.0μm以下となるように粉砕し、粉末を得た。その後、X線回折により粉末の構造を確認した。
得られた粉末の構造はペロブスカイト型構造の複合酸化物であり、La0.6Sr0.4Fe0.8Co0.2で表される低温吸放出材を得た。
【0038】
<酸素易移動材の製造>
Ba,Bi,Yの原料を所定量秤量し、ボールミルによりアルコール中で24時間混合し、得られたスラリーを乾燥した後、1200℃の大気中で、24時間、仮焼し、仮焼物を得た。この仮焼物をアルコール中で、平均粒径が0.8μm以下となるように粉砕し、乾燥して、粉砕物を得た。その後、この粉砕物を1500〜1600℃の空気中で、24時間本焼成して焼結体を得た。
得られた焼結体をアルコール中で、平均粒径が1.0μm以下となるように粉砕し、粉末を得た。その後、X線回折により粉末の構造を確認した。
得られた粉末の構造はペロブスカイト型構造の複合酸化物であり、Ba1.0Bi0.80.2で表される酸素易移動材を得た。
【0039】
<PM酸化触媒の製造>
La0.6Sr0.4Fe0.8Co0.2を0.8gと、Ba1.0Bi0.80.2を0.8gを等量混合し、この混合物にアルコールを加えてボールミルで更に混合し、乾燥することによって、酸素低温吸放出材と酸素易移動材の混合物である、合計1.6gのPM酸化触媒を得た。
本例のPM酸化触媒は、酸素低温吸放出材(La0.6Sr0.4Fe0.8Co0.2)50%と、酸素易移動材(Ba1.0Bi0.80.2)50%を含有するものである。
【0040】
<イオン強度の測定方法>
上記混合物であるサンプル1.6gに対して、CB0.8gを乳鉢に入れ、乳鉢上に回転可能に固定された乳棒で、20分間、一定回転して混合し、合計2.4gのCB燃焼用サンプルを作製した。1回の測定には、このサンプルを0.3g用いた。
なお、1回に測定するCB燃焼用サンプル中には、酸素低温吸放出材(La0.6Sr0.4Fe0.8Co0.2)が0.1gと、酸素易移動材(Ba1.0Bi0.80.2)が0.1gと、CBが0.1g含まれていることになる。
このCB燃焼用サンプルを質量分析装置のサンプル管に設置した。
次いで、室温にてサンプル管内に残存する酸素をHeにて置換し、その後電気炉でサンプル管を425℃にして、温度を安定させるために15分間放置した。
その後、サンプル管内に酸素を流入させ、サンプル管出口から大気圧のガスの一部をキャピラリーを通して、真空の質量分析装置(具体的には、アネルバ社製AGA−100)に引き込み、分子量(M/Z)が32(O)及び44(CO)のイオン強度の測定を行った。
その他、酸素低温吸放出材(La0.6Sr0.4Fe0.8Co0.2)0.2gと、CB0.1gとを混合した酸素低温吸放出材のみのCB燃焼用サンプル、酸素易移動材(Ba1.0Bi0.80.2)0.2gと、CB0.1gとを混合した酸素易移動材のみのCB燃焼用サンプルも作製し、同様にイオン強度の測定を行った。
なお、イオン強度は、酸素を流入する前から約1秒間隔で平均値データとして取り込み、酸素流入後も同間隔で、CO及びOが検出されなくなるまで測定を継続した。測定結果を図2(a)及び(b)に示す。
【0041】
図2(a)及び(b)に示す結果から次のようなことが分かった。
図2(a)に示すとおり、サンプル管に酸素を導入してからのCOの生成量を確認すると、酸素易移動材(Ba1.0Bi0.80.2)のみのサンプルはCOの生成が認められなかった。これに対して、酸素易移動材(Ba1.0Bi0.80.2)0.1gと、酸素低温吸放出材(La0.6Sr0.4Fe0.8Co0.2)が0.1gが含まれているサンプルは、酸素低温吸放出材(La0.6Sr0.4Fe0.8Co0.2)が0.2g含まれているサンプルよりもCOの生成が長く持続していた。
次に、図2(b)に示すとおり、サンプル管に酸素を導入してからのOの消費を確認すると、Oの消費はCOの生成と連動していることが確認できる。即ち、図2(b)に示すとおり、酸素易移動材(Ba1.0Bi0.80.2)0.1gと、酸素低温吸放出材(La0.6Sr0.4Fe0.8Co0.2)が0.1gが含まれているサンプルは、Oの消費が長く続いており、これは、CB+酸素(O)→COの反応が長く持続していることを反映している。
酸素低温吸放出材(La0.6Sr0.4Fe0.8Co0.2)単独では、Oを離し易く(消費し易く)、CB+酸素(O)→COの反応が長く持続しない。
また、酸素易移動材(Ba1.0Bi0.80.2)単独では、Oが消費していないことから、CB+酸素(O)→COの反応が生じていない。
これらの結果から、酸素易移動材(Ba1.0Bi0.80.2)0.1gと、酸素低温吸放出材(La0.6Sr0.4Fe0.8Co0.2)が0.1gが含まれているサンプルは、両材料が得意とする特性が作動して、CBの燃焼反応が長く持続していると考えられる。
【0042】
次に、以下に示す複数種類のペロブスカイト型構造を有する複合酸化物と、セリウム系複合酸化物について、酸素移動開始温度とイオン化エネルギーの関係を測定し、この結果から上記複合酸化物の酸素移動性を確認した
【0043】
<ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物>
BaCe0.8Mn0.2
BaCe0.80.2
BaCe0.8Sc0.2
BaBi0.80.2
【0044】
<セリウム系複合酸化物>
CeO
BaCeO
Ce0.8Pr0.2
Ce0.8Mn0.2
Ce0.80.2
【0045】
<酸素移動開始温度とイオン化エネルギーの測定>
上記の各複合酸化物の電気伝導度を測定し、該電気伝導度の変曲点を酸素移動開始温度とした。なお、電気伝導度は、サンプルを10℃/minで昇温し、サンプルに電極を設け、4端子法により、一定電圧をかけて電流を測定することによって、検出した。即ち、電圧値及び電流値から抵抗値(R)を求め(V=IRにより)、この抵抗値(R)と電極間距離(cm)から、電気伝導度(電気伝導率)σ=電極間距離(cm)/R(Ω)・S(cm)を求め、この電気伝導度σの対数(logσ)を1/Tに対してアーレニウスプロットを行った。このアーレニウスプロットがヒステリシスループを生じ始める温度を酸素移動開始温度(図1参照)とした。
また、上記の各複合酸化物について、化学便覧に記載されている置換元素に対するイオン化エネルギーの数値を用いて、このイオン化エネルギーの数値と、各複合酸化物の酸素移動開始温度との関係を図3に示した。
図3に示すとおり、イオン化エネルギーが高いほど、酸素移動開始温度が低いことが分かった。
【0046】
また、図3に示すとおり、上記のペロブスカイト型構造を有する複合酸化物は、上記のセリウム系複合酸化物よりも酸素移動開始温度が低い。この結果から、上記のペロブスカイト型構造を有する複合酸化物は、上記のセリウム系複合酸化物よりも、低温下での酸素移動性に優れることが明らかとなった。
また、上記のペロブスカイト型構造を有する複合酸化物は、各々異なる酸素移動開始温度を有し、酸素移動開始温度が250℃以下の低温下で酸素移動性に優れるものもあることが明らかとなった。
【0047】
次に、以下に示す酸素低温放出材と、酸素易移動材と、セリウム系複合酸化物について、(1)電気伝導度測定による酸素移動開始温度と、(2)TG−DTAによるPM−触媒反応の温度と、(3)TG−DTAによる酸素−触媒反応の温度を測定した。結果を表1に示す。
【0048】
<酸素易移動材>
サンプル1:Ba1.0Bi0.80.2
サンプル2:Ba1.0Ce0.80.2
【0049】
<セリウム系複合酸化物>
サンプル3:Ce0.80.2
サンプル4:Ce0.8Mn0.2
サンプル5:Ce0.8Pr0.2
サンプル6:CeO
【0050】
<酸素低温放出材>
サンプル7:La0.4Sr0.6MnO
サンプル8:La0.8Sr0.2MnO
サンプル9:La0.6Sr0.4Fe0.8Co0.2
【0051】
<(1)酸素移動開始温度の測定方法>
上記の各サンプルについて、上記の方法により、電気伝導度を測定し、この結果から酸素移動開始温度を求めた。
【0052】
<(2)TG−DTAによるPM−触媒反応の温度の測定方法>
上記の各サンプル0.100gと、PM(パティキュレートマター:ディーゼルエンジンからの実際のすす)0.100gとを乳鉢で20分間混合し、その混合物10mgをTG−DTAによりAr雰囲気の気流中で10℃/minで昇温した。TGによるサンプルの重量変化(重量減少)と、DTAによりサンプルとリファレンスとの温度差による発熱とを観測した時点で、この2つの結果により、PM−触媒と酸素との反応が生じたと判断できる。
このPM−触媒と酸素との反応が生じる温度を、PM−触媒反応の開始温度とする。この開始温度は、TG−DTAによる装置誤差を超えた時点でのDTAの電圧変化を生じ始めた温度とする。
なお、TG−DTAにより測定した理由としては、TGのみの観測では、PM−触媒と酸素が反応しない場合であっても、重量減少を観測してしまう不都合があり、DTAのみの観測では、重量減少が生じなくても、相変化による吸熱・発熱を観測してしまう不都合があるからである。
【0053】
<(3)TG−DTAによる酸素−触媒反応の温度の測定方法>
上記(2)の実験を800℃まで続け、触媒の反応可能な酸素を全てPMと反応させた。 この場合、触媒の酸素はPMに対して少ないので、TGによるサンプルの重量変化(重量減少)から判断すると、PMは90%以上残存すると考えられる。
この状態で、サンプルをAr雰囲気のまま室温まで放冷し、Airと置換した。Airとの置換が十分に完了した後、昇温速度10℃/minまで昇温した。ある温度でPMは燃焼を開始した。この燃焼反応を酸素−触媒反応とした。
PMが燃焼を介した時点では、酸素−触媒反応と上記(2)のPM−触媒反応との両者の反応を含んでいるが、必ず、上記(2)のPM−触媒反応の開始温度が低く、本測定(3)の酸素−触媒反応の開始温度が高くなることから、酸素−触媒の反応は律速になっていると考えられる。そのため、PMが燃焼を開始した時点を、酸素−触媒反応が開始した時点と判断できる。この酸素−触媒反応が開始した時点を、酸素−触媒反応の開始温度とする。この開始温度は、上記(2)のPM−触媒反応の開始温度と同様に、TG−DTAによる装置誤差を超えた時点でのDTAの電圧変化を生じ始めた温度とする。
【0054】
【表1】

【0055】
表1に示す結果から、酸素低温吸放出材(サンプル7〜9)は、低温下(330℃以下)で、優れたPM−触媒反応及び酸素−触媒反応を示すことがわかった。なお、酸素低温吸放出材(サンプル7〜9)は、酸素(酸素イオン)の移動が観測できなかった。
サンプル7〜9が酸素(酸素イオン)の移動が観測できなかったのは、格子酸素の移動能を示す自己拡散係数が極めて小さいために、本測定の精度では、酸素移動開始温度が観測されなかったと考えられる(参照文献:「ペロブスカイト関連化合物−機能の宝庫」、季刊化学総説32、日本化学会編、学会出版センター)。
【0056】
(実施例1、2及び比較例1、2)
次に、酸素低温吸放出材(La0.6Sr0.4Fe0.8Co0.2)と酸素易移動材(Ba1.0Bi0.80.2)を、表2に示す割合で混合し、PM酸化触媒を作製した。このPM酸化触媒とCBを表2に示す割合で混合し、サンプルを作製した。
【0057】
【表2】

【0058】
表2に示すサンプルを一つの測定当たり0.3gずつ用いて、上述の「イオン強度の測定方法」と同様の方法により、400℃、413℃、425℃、450℃の各温度で、各サンプルのCOのイオン強度を測定した。この測定値(イオン強度)を以下に示す方法でデータ処理し、PM酸化触媒によるCB転換量を算出した。結果を表3及び図4〜図8に示す。
なお、図4は、各測定温度における、PM酸化触媒のCB転換量(%SEC)を示すグラフである。
また、図5〜図8は、各温度(400℃、413℃、425℃、450℃)における、各PM酸化触媒中の酸素低温吸放出材(La0.6Sr0.4Fe0.8Co0.2)の含有割合とCB転換量(%SEC)の関係を示すグラフである。
【0059】
<データ処理方法>
上述のイオン強度の測定値から、予め作成したCO濃度−イオン強度の検量線に基づいて、測定データであるx軸(時間)y軸(質量数44のイオン強度)のグラフを、x軸(時間)y軸(CO濃度)のグラフに再プロットする。各時間(秒)ごとのCO濃度(%)を積算し、この数値をCB転換量(%SEC)とした。
【0060】
【表3】

【0061】
表3及び図4に示す結果から、本発明のPM酸化触媒(実施例1及び2)は、425℃以下の低温下でCB転換量が大きく、PM酸化燃焼反応を活性化する酸素吸放出性に優れていることが確認できた。
特に、酸素易移動材(50%)と酸素低温吸放出材(50%)の割合で含むPM酸化触媒(実施例2)は、413℃の低温下で、CB転換量が3420(%SEC)と大きく、酸化燃焼反応を活性化する、優れた酸素低温吸放出性を有していた。
なお、図6及び図7に示す結果から、酸素低温吸放出材と酸素易移動材の割合が一定範囲であると、413℃及び425℃の低温下において、PM酸化触媒は、酸素吸放出性の特大値を有することが確認できた。
【0062】
一方、表3及び図4に示す結果から、酸素易移動材100%のPM酸化触媒(比較例1)は、温度が425℃になるまで、CB転換量が0(%SEC)であり、低温下での酸素吸放出性が低いことが明らかとなった。
なお、比較例1は、450℃で、CB転換量が4360(%SEC)と一気に増加していることから、比較例1は、酸素(酸素イオン)の移動性に優れ、高温下で移動した酸素が一気に放出されて、酸化燃焼反応が促進されると推測できた。
また、酸素低温吸放出材100%のPM酸化触媒(比較例2)は、413℃の低温下で、CB転換量が2430(%SEC)であり、この結果から酸素吸放出性に優れることが確認できた。その一方で、比較例2は、450℃では、CB転換量がそれほど大きく増加していないことから、酸素吸放出性が持続されていないことが推測できた。
図8に示すように、450℃では、PM酸化触媒中の酸素低温吸放出材の含有割合が大きくなるほど、CB転換量が減少していることから、酸素低温吸放出材は、酸素吸放出性が持続できていないことが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】酸素易移動材の電気伝導度測定による抵抗値(R)から算出された電気伝導度(σ)の対数(logσ)と、温度の逆数(1/T)との関係を模式的に表すグラフである。
【図2】酸素低温吸放出材と、酸素易移動材と、PM酸化触媒の各サンプルのCB燃焼挙動を示し、(a)は、各サンプルの二酸化炭素(CO)のイオン強度を示すグラフであり、(b)は、各サンプルの酸素(O)のイオン強度を示すグラフである。
【図3】ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物及びセリウム系複合酸化物の酸素移動開始温度とイオン化エネルギーの関係を示すグラフである。
【図4】各温度における、PM酸化触媒のCB転換量(%SEC)を示すグラフである。
【図5】400℃における、PM酸化触媒中の酸素低温吸放出材(La0.6Sr0.4Fe0.8Co0.2)の含有割合とCB転換量(%SEC)の関係を示すグラフである。
【図6】413℃における、PM酸化触媒中の酸素低温吸放出材の含有割合とCB転換量(%SEC)の関係を示すグラフである。
【図7】425℃における、PM酸化触媒中の酸素低温吸放出材の含有割合とCB転換量(%SEC)の関係を示すグラフである。
【図8】450℃における、PM酸化触媒中の酸素低温吸放出材の含有割合とCB転換量(%SEC)の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物であって低温での酸素吸放出性に優れる酸素低温吸放出材と、ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物であって酸素移動性に優れる酸素易移動材と、を含有することを特徴とするPM酸化触媒。
【請求項2】
上記酸素低温吸放出材が、次式(1)
LaSr・・・(1)
(式中のMは、鉄、コバルト及びマンガンから成る群より選ばれた少なくとも1種の元素、xは0.2〜0.8、yは0.8〜0.2を示す)で表され、
上記酸素易移動材が、次式(2)
BaMIIIII1−z・・・(2)
(式中のMIIは、ビスマス又はセリウムのいずれか1種の元素、MIIIは、イットリウム、プラセオジム、スカンジウム及びネオジムから成る群より選ばれた少なくとも1種の元素、zは0.1〜0.9を示す)で表されることを特徴とする請求項1に記載のPM酸化触媒。
【請求項3】
上記(1)式で表される酸素低温吸放出材を20〜99%、上記(2)式で表される酸素易移動材を1〜80%の割合で含むことを特徴とする請求項2に記載のPM酸化触媒。
【請求項4】
上記酸素易移動材は、上記酸素低温吸放出材が酸素を吸収・放出する温度よりも、上記酸素易移動材の電気伝導度の変曲点を示す温度が低いものであり、上記酸素易移動材は、イオン化エネルギーが40eV以上である元素を用いて構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載のPM酸化触媒。
【請求項5】
上記酸素易移動材は、電気伝導度測定による抵抗値から算出された電気伝導度の対数と温度の逆数との関係を表す曲線が、ヒステリシスループを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載のPM酸化触媒。
【請求項6】
積層構造を有し、いずれか一方の層に上記酸素低温吸放出材を含有し、他方の層に上記酸素易移動材を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載のPM酸化触媒。
【請求項7】
パティキュレートフィルターに担持して成ることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの項に記載のPM酸化触媒。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1つの項に記載のPM酸化触媒を、一体構造型触媒担体に担持して成ることを特徴とする排気ガス浄化触媒。
【請求項9】
白金、パラジウム及びロジウムから成る群より選ばれた少なくとも1種の貴金属を更に含有することを特徴とする請求項8に記載の排気ガス浄化触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−131774(P2009−131774A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309624(P2007−309624)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】