説明

Qエンハンスメント回路および方法

Qエンハンスメント回路および方法である。ほとんどの一般的な実施形態において、本発明の回路は寄生抵抗Rを有するコンポーネントにより使用されるように構成され、第1の抵抗R1がこのコンポーネントと直列に配置され、この構成により抵抗R1は負性抵抗になる。示されている実施形態において、第1および第2のインダクタは、Qエンハンスメントが行われるコンポーネントを構成する。抵抗R1は第1のインダクタと直列に配置され、その寄生抵抗RL1と等しい。同様に、第2の抵抗R2は第2のインダクタと直列に配置され、その寄生抵抗RL2と等しい。Qエンハンスメント回路はさらに第1のトランジスタQ1および第2のトランジスタQ2を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、電気および電子回路およびシステムに関する。とくに、本発明は、電気および電子回路およびシステムにおける受動誘導性容量性共振器に対するQエンハンスメントのためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機械的または電気的共振回路あるいはキャパシタに関して、Qは“品質ファクタ”である。共振システムの場合、Qはそのシステムの周波数応答特性における共振ピークの鋭さの尺度であり、そのシステムにおける制動に反比例する:Q=Hz帯域幅で除算された中心周波数である。共振回路を備えた等化器はそれらのQ値によって評価される:Qが高くなると、それだけ一層応答特性におけるピークが明確なものになる。フィルタにおいては、その帯域幅に対するバンドパスまたは帯域除去フィルタの中心周波数の比がQを規定する。したがって、一定の中心周波数を仮定すると、Qは帯域幅に反比例する。すなわち、高いQは狭い帯域幅を示す。(http://www.dilettantesdictionary.com/pdf/q.pdf.を参照)。
【0003】
したがって、アナログデジタル変換、無線通信回路、狭帯域増幅器、マイクロ波回路等のような種々の適用に対して、Qエンハンスメントのためのシステムまたは方法を提供することは有用である。
【0004】
アナログ信号処理および通信システムにおいては、Qエンハンスメント回路は典型的に負性抵抗回路を使用して、受動インダクタ・キャパシタ(LC)共振器中のインダクタ(L)に関連した寄生直列抵抗を打消す。全差動モードで実施されるとき、これらの回路は通常共振器のキャパシタと並列に接続され、典型的にキャパシタは2つのインダクタの端子間に接続される。一般に、負性抵抗回路はインダクタの寄生抵抗を適切に消去することができない。この理想的でない消去のために別の2次的な影響が発生し、その回路は別の周波数で共振する可能性がある。
【0005】
さらに、負性抵抗の使用には、電圧電流変換装置が消去のために負性電流を発生することが要求される。これによって、負性抵抗回路は非線形歪および回路遅延の影響をさらに受け易くなり、LC共振器の性能を劣化させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、回路のQを増強させるシステムまたは方法が技術的に必要とされている。とくに、アナログ信号処理および通信システムにおいてその線形性および分解能を改善するために使用されるLC共振器のQを増強させるシステムまたは方法が技術的に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この技術的な必要性は、本発明のQエンハンスメント回路および方法によって満足される。最も一般的な実施形態において、本発明の回路は寄生抵抗RL1を有するコンポーネントと、このコンポーネントと直列に配置された第1の抵抗R1と、抵抗R1を負性抵抗にする構成とにより使用されるように構成される。
【0008】
示されている実施形態において、第1および第2のインダクタは、Qエンハンスメントが行われるコンポーネントを構成する。抵抗R1は第1のインダクタと直列に配置され、その寄生抵抗RL1と等しい。同様に、第2の抵抗R2は第2のインダクタと直列に配置され、その寄生抵抗RL2と等しい。この実施形態において、Qエンハンスメント回路は第1のトランジスタQ1および第2のトランジスタQ2を備えている。これらのトランジスタは、BJT(バイポーラ接合トランジスタ)、MOSFET(金属・酸化物半導体電界効果トランジスタ)またはその他のタイプのトランジスタであることができる。
【0009】
BJT構造において、各コレクタ端子は第1の抵抗R1または第2の抵抗R2のそれぞれ1つに接続され、各エミッタはインダクタのそれぞれ1つに接続されている。この場合、Qエンハンスメント回路は、第1のトランジスタのコレクタ端子と第2のトランジスタのベース端子との間に接続された第1の利得が1の増幅器(エミッタホロワ/電圧ホロワ)と、第2のトランジスタのコレクタ端子と第1のトランジスタのベース端子との間に接続された第2の利得が1の増幅器とを備えている。
【0010】
別のMOSFET構造においては、各トランジスタはソース端子と、ゲート端子と、ドレイン端子とを有している。この場合、各ドレイン端子は第1の抵抗R1または第2の抵抗R2のそれぞれ1つに接続され、ソース端子はインダクタのそれぞれ1つに接続されている。第1の利得が1の増幅器(ソースホロワ)は第1のトランジスタのドレイン端子と第2のトランジスタのゲート端子との間に接続され、第2の利得が1の増幅器は第2のトランジスタのドレイン端子と第1のトランジスタのゲート端子との間に接続されている。
【0011】
最良のモードにおいて、各利得が1の増幅器は、最適の回路の簡単さおよび最大の動作帯域幅を達成するエミッタホロワまたはソースホロワである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の有効な教示を開示するために添付図面を参照して示されている実施形態および例示的な適用を説明する。
本発明はここにおいて特定の適用に対して示されている実施形態を参照して説明されているが、本発明はそれに限定されないことを認識しなければならない。当業者は、本発明の技術的範囲内における付加的な修正、適用および実施形態ならびに本発明が非常に有用なものとなる付加的な分野を認識するであろう。
【0013】
図1は、通常の技術によるアナログ信号処理に対して広く使用される差動LC共振器を示す概略図である。図2は、そのインダクタの寄生抵抗を示す図1の共振器の概略回路図である。図1および2に示されているように、共振器10’ は、一方の端部が接地接続点に並列に接続され、その他方の端部の間にキャパシタCが接続された第1および第2のインダクタL1およびL2を備えている。第1および第2のインダクタL1およびL2は、図2に示されているように固有の寄生抵抗をそれぞれ有している。
【0014】
技術的によく知られているように、インダクタと関連した寄生直列抵抗RL1およびRL2によって、LC共振器のQは制限される。Qを増加させるために一般的に使用される1つの技術は、キャパシタと並列の負性抵抗を使用することである。これは図3に示されている。
【0015】
図3は、通常の技術による図2の共振器のQエンハンスメントの方法を示している。この共振器20において、負性抵抗RはキャパシタCと並列に接続されている。この方法は共振器のQを増加させることができるが、それは、Qに対する寄生直列抵抗RL1およびRL2の影響の消去において適切ではないことがわかっている。さらに、負性抵抗Rは共振器をさらに複雑な回路にし、別の望ましくない周波数で共振を発生させる可能性がある。したがって、回路のQを増強させるシステムまたは方法が技術的に必要とされている。
【0016】
図4は、本発明の教示による例示的な実施形態にしたがって構成されたQエンハンスメントを有する共振器の概略図である。この共振器40は、第1および第2の負性抵抗R1およびR2が第1および第2のインダクタL1およびL2とそれぞれ直列に配置されていることを除いて、図2に示されている回路と同じである。
【0017】
図5は、その負性抵抗の例示的な構成を有する図4の共振器の概略図である。図5において、抵抗R1およびR2は第1および第2のインダクタと直列に配置されている。抵抗R1およびR2は寄生直列抵抗RL1およびRL2に等しくなければならない。第1および第2のトランジスタQ1およびQ2は、抵抗R1およびR2と示されている適用では第1および第2のインダクタL1およびL2である関連したコンポーネントとの間にそれぞれ接続されている。Q1のコレクタはノードAにおいてR1に接続され、Q2のコレクタはノードBにおいてR2に接続される。本発明の教示によると、第1の電圧ホロワ(利得1の増幅器)42は、ノードAとQ2のベースとの間に接続されている。第2の電圧ホロワ44はノードBとQ1のベースとの間に接続されている。第1および第2の電圧ホロワ42および44は、以下の図6に示されているエミッタホロワ、図7に示されているソースホロワ、または当業者によって認識されるその他の適当な回路構成によって構成されることができる。
【0018】
図6は、その電圧ホロワとしてバイポーラエミッタホロワ構成を有する図5の共振器の概略図である。この実施形態においては、第1のホロワ42は、そのベースがノードAに接続され、そのコレクタが接地点に接続され、そのエミッタが第1の電流源46に接続された第3のバイポーラトランジスタQ3により構成されている。第2のホロワ44は、そのベースがノードBに接続され、そのコレクタが接地点に接続され、そのエミッタが第2の電流源48に接続された第4のバイポーラトランジスタQ4により構成されている。NPN構造が示されているが、当業者はPNP構造もまた同様に使用可能であることを認識するであろう。
【0019】
図7は、その電圧ホロワとしてMOSFETソースホロワ構成を有する図5の共振器の概略図である。この実施形態においては、図6の第1および第2のトランジスタQ1およびQ2の代りに、30’’のnチャンネル型MOSFET M1およびM2が使用されている。さらに、第1のホロワ42は、そのゲートがノードAに接続され、そのドレインが接地点に接続され、そのソースが第1の電流源46に接続されている第3のMOSFETトランジスタM3により構成されている。第2のホロワ44は、そのゲートがノードBに接続され、そのドレインが接地点に接続され、そのソースが第2の電流源48に接続されている第4のMOSFETトランジスタM4により構成されている。nチャンネル型の構成が示されているが、当業者はpチャンネル型の構成も同様に使用されることができることを認識するであろう。
【0020】
本発明の増強回路40は、固有の寄生抵抗の影響を消去すると共にそれが使用されるコンポーネントのQファクタを改善しなければならない。
【0021】
以上、本発明はここにおいて特定の適用に対する特定の実施形態を参照として説明されてきた。当業者は、本発明の技術的範囲内における付加的な修正、適用および実施形態を認識するであろう。
【0022】
したがって、添付されている特許請求の範囲は、本発明の技術的範囲内の任意または全てのこのような適用、修正および実施形態をカバーしようとするものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】通常の技術によるアナログ信号処理において広く使用されている差動LC共振器を示す概略図。
【図2】そのインダクタの寄生抵抗を示す図1の共振器の概略図。
【図3】通常の技術による図2の共振器のQエンハンスメントの方法を示す概略図。
【図4】本発明の教示として示された実施形態にしたがってQエンハンスメントが実施される共振器の概略図。
【図5】その負性抵抗の例示的な構成を有する図4の共振器の概略図。
【図6】その電圧ホロワとしてバイポーラエミッタホロワ構成を有する図5の共振器の概略図。
【図7】その電圧ホロワとしてMOSFETソースホロワ構成を有する図5の共振器の概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
寄生抵抗RL1を有するコンポーネントに対するQエンハンスメント回路(40)において、
前記コンポーネントと直列に配置された第1の抵抗R1と、
前記コンポーネントと直列に配置された前記抵抗を負性抵抗にする第1の回路(Q1、Q2、42および44)とを具備していることを特徴とするQエンハンスメント回路。
【請求項2】
前記コンポーネントはインダクタL1である請求項1記載のQエンハンスメント回路。
【請求項3】
前記コンポーネントと直列に配置された前記抵抗R1は前記寄生抵抗RL1に等しい請求項1記載のQエンハンスメント回路。
【請求項4】
前記抵抗を負性抵抗にする前記第1の手段は、第1のトランジスタQ1を備えている請求項1記載のQエンハンスメント回路。
【請求項5】
さらに、寄生抵抗RL2を有する第2のコンポーネントL2を備えている請求項4記載のQエンハンスメント回路。
【請求項6】
前記第2のコンポーネントL2と直列に配置された第2の抵抗R2と、前記抵抗R2を負性抵抗にする第2の手段とを備えている請求項5記載のQエンハンスメント回路。
【請求項7】
前記抵抗を負性抵抗にする前記第2の手段は第2のトランジスタQ2を備えている請求項6記載のQエンハンスメント回路。
【請求項8】
前記トランジスタはそれぞれ、コレクタ端子と、ベース端子と、エミッタ端子を備えている請求項7記載のQエンハンスメント回路。
【請求項9】
前記コレクタ端子は、前記第1の抵抗R1または前記第2の抵抗R2のそれぞれ1つに接続され、前記エミッタ端子は前記コンポーネントのそれぞれ1つに接続されている請求項8記載のQエンハンスメント回路。
【請求項10】
第1のトランジスタのコレクタ端子と第2のトランジスタのベース端子との間に接続された第1の増幅器(42)と、前記第2のトランジスタのコレクタ端子と前記第1のトランジスタの前記ベース端子との間に接続された第2の増幅器(44)とを備えている請求項9記載のQエンハンスメント回路。
【請求項11】
前記増幅器はそれぞれ利得が1の増幅器である請求項10記載のQエンハンスメント回路。
【請求項12】
前記増幅器はそれぞれエミッタホロワである請求項11記載のQエンハンスメント回路。
【請求項13】
前記トランジスタはそれぞれソース端子と、ゲート端子と、ドレイン端子を有している請求項7記載のQエンハンスメント回路。
【請求項14】
前記各ドレイン端子は前記第1の抵抗R1または第2の抵抗R2のそれぞれ1つに接続され、前記ソース端子は前記コンポーネントのそれぞれ1つに接続されている請求項13記載のQエンハンスメント回路。
【請求項15】
第1のトランジスタのドレイン端子と第2のトランジスタのゲート端子との間に接続された第1の増幅器(42)と、前記第2のトランジスタのドレイン端子と前記第1のトランジスタの前記ゲート端子との間に接続された第2の増幅器(44)とを備えている請求項14記載のQエンハンスメント回路。
【請求項16】
前記増幅器はそれぞれ利得が1の増幅器である請求項15記載のQエンハンスメント回路。
【請求項17】
前記各増幅器はそれぞれソースホロワである請求項16記載のQエンハンスメント回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2008−503178(P2008−503178A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527230(P2007−527230)
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/012300
【国際公開番号】WO2006/001878
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(390039147)レイセオン・カンパニー (149)
【氏名又は名称原語表記】Raytheon Company
【Fターム(参考)】