説明

RFIDタグを用いた溶接作業管理・記録システム

【課題】溶接業者が溶接作業を開始する前に、当該溶接部の溶接条件を確認しやすく、また、溶接記録を溶接作業現場で入力でき、溶接作業のヒューマンエラーを低減または防止できるRFIDタグを用いた溶接作業管理・記録システムを提供する。
【解決手段】溶接作業において、RFIDタグ11(11A、11B)、12、13を用いて溶接条件情報21Bや溶接士情報22B(溶接士の資格、資格有効期限等)、溶接棒情報23Bを、データベース2の対応する溶接条件情報21A、溶接士情報22A、溶接棒情報23Aと関係付けて保持し、溶接時にPDA5にて各種RFIDタグ11、12、13を読み込むことで、溶接前に溶接条件の確認、溶接士の資格有無、有効期限切れ等を管理する。また溶接記録情報をPDA5に入力し、溶接後にデータベース2にLAN4を介して一括転送することで、溶接記録情報31Aの管理を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグを用いた溶接作業管理・記録システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶接構造物において、溶接部の品質はその構造物の健全性に大きく作用することから、構造物の重要度に応じた溶接品質が要求される。そのため、溶接構造物製造業者、溶接施工業者等は要求される溶接品質を満足するために溶接条件をあらかじめ規定し、溶接作業者にこれらの規定に正しく従ってもらうことが求められる。その溶接条件には、例えば、アーク溶接でも各種のアーク溶接方法[例えば、被覆アーク溶接、サブマージアーク溶接、イナートガス溶接(TIG溶接、MIG溶接)等]があり、溶接方法、被溶接部材等に合わせて溶接棒材質も異なる組合せとなる。さらに、溶接条件には、溶接電流、入熱量、予熱温度、溶接資格等多くの項目があり、これらに一つでも違背しないよう溶接前に条件を確認している。
また、溶接後は、適切な溶接条件で溶接が行われたか否かを確認できるように、溶接記録を残している。
【0003】
溶接資格については、溶接士が溶接可能な材料、形状、溶接方法、溶接向き(例えば、横向突合せ溶接、下向、立向突合せ溶接等)等が細かく規定されており、またその有効期限についても国から定められた期限の他、発注元からも定められた期限がある場合もあり、その管理は溶接構造物製造業者、溶接施工業者等が独自で管理している。
【0004】
このような製造工程における製造履歴を管理するために特許文献1に記載されているようなRFID(Radio Frequency Identification)タグを用いた製造履歴管理システムが知られている。この製造履歴管理システムでは、製品の材料、加工、処理および部品組み立ての情報を、RFIDタグに記録し、製品が完成して出荷され、販売されてユーザに手渡された後も、その製品に取り付けられたRFIDタグから当該製品の製造履歴を読み取ることができるものである。
【特許文献1】特開2005−149004号公報(図2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記製造履歴管理システムでは、製造履歴情報をRFIDタグに記録して、製品が出荷された後のトレーサビリティに役立てているだけであり、以下のような溶接作業そのものの管理上の煩雑さの問題、溶接作業記録の管理上の煩雑さの問題を解決できない。
各溶接部について各々要求される溶接条件が異なる場合があり、溶接作業者がその溶接条件で正しく溶接をしたか、確認項目が多く、確認や管理が複雑である。また、溶接記録は溶接作業者が溶接後手書きにより残している場合が多く、リアルタイムの情報ではなく、また、誤記や記録漏れ等のヒューマンエラーの発生の可能性もある。加えて、従来、溶接記録は書類にて管理されていたため、例えば、品質検査担当者が溶接検査記録を調製する場合に、溶接記録の書類の検索等に大きな時間を費やし、煩雑であった。
【0006】
また、溶接資格については、これから作業を始める溶接部に対して、作業指示を出そうと予定している溶接作業者が、溶接資格において当該溶接部の溶接条件の項目等について満足しているか1つ1つ確認する必要があり、その確認のために多くの作業を費やしている。例えば、当該溶接部に対して溶接士の特定溶接資格の有効期限内であるかを確認することは、溶接作業者の数が多くなればなるほど、その管理も複雑かつ時間を要している。
さらに、原子力プラントの溶接資格有効期限においては、その溶接作業者が最後に溶接した溶接部の耐圧試験合格日から2年と設定されており、その管理はどの溶接作業者がどの溶接部をいつ溶接し、当該部の耐圧試験はいつ実施され、いつ合格したかという非常に管理が複雑となっている。
本発明は、前記課題を解決するためのもので、その目的は溶接作業者が自分に割り当てられた溶接作業を開始する前に、当該溶接部の溶接条件を確認しやすく、また、溶接記録を溶接作業現場で入力でき、溶接作業のヒューマンエラーを低減または防止できるRFIDタグを用いた溶接作業管理・記録システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第1の発明は、当該溶接部の溶接作業を始める前に、情報端末で、データベースの特定の溶接番号を含む第1の溶接条件情報と関係付けられた溶接部用RFIDタグから読み出した情報により溶接条件データを取得して、表示部に表示し、溶接作業者に当該溶接部に対する溶接条件データを確認させることを可能とし、また、溶接作業者によって情報端末の入力操作部から入力された溶接条件データに関する記録を、ネットワークを介して前記データベースに溶接記録情報として記憶させることを特徴とする。
【0008】
本願の第2の発明は、前記第1の発明の構成に加えて、情報端末で、データベースの特定の溶接作業者の氏名に関する情報を含む第1の溶接士情報と関係付けられた溶接士用RFIDタグから読み出した情報により溶接士情報を取得し、取得された溶接士情報と前記溶接条件情報とにもとづいて、溶接作業者が当該溶接部の溶接作業に対して溶接資格を有しているか否かをチェックし、溶接資格を有していない場合、表示部に警報表示し、溶接資格を有している場合は、ネットワークを介してデータベースに、当該の溶接作業者の溶接士情報を、溶接記録情報の一部として記憶させることを特徴とする。
【0009】
本願の第3の発明は、前記第1または前記第2の発明の構成に加えて、情報端末で、データベースの特定の溶接棒コードを含む第1の溶接棒情報と関係付けられた溶接棒用RFIDタグから読み出した情報により溶接棒情報を取得し、取得された溶接棒情報と前記溶接条件情報とにもとづいて、選択された溶接棒が当該溶接部の溶接作業に対して適しているか否かをチェックし、適していない場合、表示部に警報表示をし、適している場合は、ネットワークを介してデータベースに、選択された溶接棒に対応する溶接棒情報を、溶接記録情報の一部として記憶させることを特徴とする。
本願の発明は、RFIDタグを用いた溶接作業管理と溶接作業記録の方法を含む。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明によれば、当該溶接部の溶接条件を確認しやすく、また、溶接記録を溶接作業現場で入力でき、溶接作業のヒューマンエラーを低減または防止できるRFIDタグを用いた溶接作業管理・記録システムを提供することができる。
【0011】
第2の発明によれば、当該溶接作業者が当該溶接部の溶接作業に対する溶接資格を有しているか否かを事前に確実にチェックでき、確認された溶接士情報をそのまま溶接記録情報に加えることができるRFIDタグを用いた溶接作業管理・記録システムを提供することができる。
【0012】
第3の発明によれば、当該溶接棒が当該溶接部の溶接作業に適したものであるかどうかが確実にチェックでき、確認された溶接棒情報をそのまま溶接記録情報に加えることができるRFIDタグを用いた溶接作業管理・記録システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態に係る溶接作業管理・記録システムついて図1および図2を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態の溶接作業管理・記録システムの構成図であり、図2は溶接作業管理・記録システムに用いられる各種のRFIDタグおよびデータベースに記憶させる情報内容を説明する図である。
溶接作業管理・記録システム50は、パーソナルコンピュータ(以下、PCと称する)1、データベース2、RFIDタグプリンタ3、ローカル・エリア・ネットワーク(以下、LANと称する)4、携帯情報端末(以下、PDA:Personal Digital Assistantと称する)5、溶接部用RFIDタグ11(図中、11A、11Bと表示)、溶接士用RFIDタグ12、溶接棒用RFIDタグ13を含んで構成されている。
本実施の形態におけるローカル・エリア・ネットワーク4は、本発明のネットワークを、携帯情報端末5は情報端末を構成する。
【0014】
(ネットワークの構成)
図1に示すようにPC1はLAN4を介して、ワークステーション等で構成されたデータベース2、およびRFIDタグプリンタ3と接続している。
また、LAN4は、溶接作業現場の近くに無線LANターミナル4aが複数配置され、PDA5と、例えば、所定の周波数の電波で通信可能になっている。
【0015】
以下に、溶接作業管理・記録システム50の各構成の詳細を説明する。
(各種RFIDタグとRFIDタグプリンタ)
溶接部用RFIDタグ11、溶接士用RFIDタグ12、溶接棒用RFIDタグ13は、共に、データの書き込みが可能な、記憶機能を持ったICチップと小型アンテナを備えたインレットからなり、非接触で外部との情報の受け渡しが可能なものである。
【0016】
また、RFIDタグプリンタ3は、例えば、RFIDリーダ・ライタを備えた図示しない送受信部と、生RFIDタグ(識別用のRFID ID No以外の他のデータが記憶されていない状態の、製品として出荷された状態のもの)の表面に目視可能に印字する図示しない印字部と、台紙テープ上に貼りつけられた生RFIDタグを、順にRFIDタグプリンタ3の送受信部に送り込む図示しないフィーダを備えている。
生RFIDタグは台紙テープ上に貼りつけられたまま連続的にフィーダから前記送受信部に送り込まれ、送受信部との間でデータの通信を行ない、続いて印字部に送られ、生RFIDタグの表面に所定の印字が行なわれ、印字部の出口から排出される。この段階で、RFIDタグは、ICチップに所定の情報が書き込まれ、表面に目視可能な所定の情報が印字されており、前記した溶接部用RFIDタグ11、溶接士用RFIDタグ12、溶接棒用RFIDタグ13と用途分けされる。
【0017】
溶接部用RFIDタグ11は、溶接対象物6の溶接部7ごとに対応した後記する溶接条件情報(第2の溶接条件情報)21Bを、あらかじめRFIDタグプリンタ3で記憶させられ、溶接部7近くの溶接対象物6上に貼付される(図1では、その場合を溶接部用RFIDタグ11Aと表示)か、溶接作業指示書8の所定の箇所に貼付される(図1では、その場合を溶接部用RFIDタグ11Bと表示)。
溶接士用RFIDタグ12は、溶接作業者9ごとに対応した後記する溶接士情報(第2の溶接士情報)22Bを、あらかじめRFIDタグプリンタ3で記憶させられ、溶接作業者9の身に着けた、例えば、IDカードの所定の箇所に貼付される。
溶接棒用RFIDタグ13は、溶接棒の種類(材質)および棒径サイズごとに区分けした各溶接棒ケース10内の溶接棒に対する後記する溶接棒情報(第2の溶接棒情報)23Bを、あらかじめRFIDタグプリンタ3で記憶させられ、溶接棒ケース10上に貼付される。
【0018】
(PC)
PC1には、データベース2にアクセスして、後記する溶接条件情報(第1の溶接条件情報)21A、溶接士情報(第1の溶接士情報)22A、溶接棒情報(第1の溶接棒情報)23Aを生成、変更する情報登録プログラム、既にデータベース2上に生成済みの溶接条件情報21A、溶接士情報22A、溶接棒情報23Aにアクセスして、RFIDタグプリンタ3を介して前記各種のRFIDタグ11、12、13に後記する溶接条件情報21B、溶接士情報22B、溶接棒情報23Bを記憶させるRFIDタグ登録プログラム(RFIDタグ登録手段)1aが搭載されている。
【0019】
(PDA)
PDA5は、液晶画面等の表示部5a、キーボードの入力操作部5bを有し、さらに、前記所定の周波数で無線LANターミナル4aと通信可能な、例えば、無線LANカードを内蔵している。PDA5は、さらに、前記各種のRFIDタグ11、12、13と通信可能な、例えば、スロットに差し込んで使用するアンテナ一体型のRFIDリーダ・ライタ(図1中、RFID R/Wと表示)5cを有している。PDA5には、後記する溶接作業チェック・記録プログラム5dが搭載されている。
【0020】
(データベースと各種情報の説明)
データベース2は、PC1等から入力された以下の各種情報、例えば、各溶接部7に対する後記する溶接条件情報21A、各溶接作業者9に対する後記する溶接士情報22A、溶接棒の種類(材質)および棒径サイズごとに区分けした各溶接棒ケース10に格納された溶接棒に対する後記する溶接棒情報23Aを記憶して、一括管理している。
また、データベース2は、溶接作業者9が携帯情報端末5を用いて溶接作業現場から入力する後記する溶接記録情報31Aを記憶して、一括管理する。
【0021】
次に、図2を参照しながら前記した各種RFIDタグ11、12、13およびデータベース2が記憶する各種情報について説明する。
ここで、溶接条件情報21A、溶接士情報22A、溶接棒情報23Aは、データベース2上に記憶され、溶接条件情報21B、溶接士情報22B、溶接棒情報23Bは、対応する各種RFIDタグ11、12、13に記憶される(図1参照)。
図2において、最左欄は、各種情報をどのRFIDタグが記憶しているか、または記憶するかを示す区分であり、個々のRFIDタグには識別のためのRFIDタグ識別情報であるRFID ID No11a、12a、13aが記録され、RFIDタグ11、12、13の表面には、少なくともそれぞれに溶接番号11b、溶接士コード12b、溶接棒コード13bを目視可能にRFIDタグプリンタ3で印字表示して用いられる。
左から3列目、4列目の欄は、各種情報の内容を説明するための、データの名称と項目番号である。以下、順を追って個別に説明する。
【0022】
溶接部用RFIDタグ11は、各溶接部7に対応して用意され、溶接部用RFIDタグ11自身の識別用のRFID ID No11aとともに、溶接部7ごとに付番された溶接番号11b、項目番号(1)〜(13)の溶接条件データを記憶する。また、データベース2は、RFID ID No11a、溶接番号11b、項目番号(1)〜(13)の溶接条件データを記憶する。ここで、RFID ID No11a、溶接番号11b、および項目番号(1)〜(13)の溶接条件データが、溶接条件情報21A、溶接条件情報21Bをそれぞれ構成する。
溶接番号11bは、製造図面、仕様書、溶接作業指示書と照らし合わせ可能に付番され、かつ、プロジェクト番号、顧客番号、注文番号、系統番号等が組み合わせられ、工場内で同一期間に作業される他のプロジェクト等の溶接部7と識別可能に付番される。
溶接条件データには、(1)被溶接材の材質、(2)被溶接材の肉厚、(3)溶接方法[例えば、被覆アーク溶接、サブマージアーク溶接、イナートガス溶接(TIG溶接、MIG溶接)等]、(4)溶接棒の種類(材質)、(5)溶接棒の棒径、(6)溶接時の電流、(7)予熱温度、(8)シールドガスの種類、(9)シールドガスの流量、(10)溶接後熱処理の保持温度、(11)溶接後熱処理の温度保持時間、(12)溶接後熱処理の加熱・冷却速度、(13)要求される溶接資格ごと対応して設定された溶接資格コード、等が含まれる。
ちなみに、(13)の溶接資格コードは、普通複数の資格コードが記載され、それらは、その溶接部7の溶接対象物6の材料、形状、および要求される溶接方法、溶接向き(例えば、横向突合せ溶接、下向、立向突合せ溶接等)等に応じて、所定の溶接資格コードを組合せ記憶させたものである。
なお、溶接資格コードについては、溶接士情報22Aの説明のところで後記する。
【0023】
ちなみに、一つの溶接部7に対し、複数の溶接方法が認められている場合は、項目番号(3)の溶接方法のデータが複数記憶され、各溶接方法に対応付けられて項目番号(4)〜(13)のデータがそれぞれ記憶される。また、項目番号(8)のシールドガスの種類が、さらに複数認められている場合は、項目番号(8)のシールドガスの種類のデータが複数記憶され、各シールドガスの種類に対応付けられて項目番号(9)のシールドガスの流量のデータがそれぞれ記憶される。
【0024】
データベース2および溶接部用RFIDタグ11は、RFID ID No11a、溶接番号11b、および項目番号(14)〜(25)の溶接記録データを、溶接記録情報31A、溶接記録情報31Bとして記憶する。この項目番号(14)〜(23)の溶接記録データは、項目番号(3)〜(12)の溶接条件データに対応し、溶接作業ごとに溶接作業者9がPDA5で入力して記録するものである。その他に、(24)溶接実施日、(25)溶接作業者氏名がPDA5から入力されて溶接記録情報31A、溶接記録情報31Bの一部としてデータベース2および溶接部用RFIDタグ11に記憶される。
【0025】
溶接士用RFIDタグ12は、各溶接作業者9に対応して用意され、溶接士用RFIDタグ12自身の識別用のRFID ID No12aとともに、溶接作業者9ごとに付番された溶接士コード12b、項目番号(26)〜(28)の溶接士データを記憶する。また、データベース2は、RFID ID No12a、溶接士コード12b、項目番号(26)〜(28)の溶接士データを記憶する。ここで、RFID ID No12a、溶接士コード12b、および項目番号(26)〜(28)の溶接士データが、溶接士情報22A、溶接士情報22Bをそれぞれ構成する。
溶接士コード12bは、例えば、従業員番号等、個々の溶接作業者9と対応させたもので、同姓同名が万一存在しても判別できるようにしたものである。その意味で、一意な溶接士コード12bがあれば、別個用意して溶接士コード12bと対応させた氏名データから溶接作業者9の氏名が判別できるので、前記の項目番号(25)を溶接士コードとしても良い。
項目番号(27)の溶接資格コードは、溶接作業者9が溶接可能な材料、形状、溶接方法、溶接向き(例えば、横向突合せ溶接、下向、立向突合せ溶接等)等の細かく規定された溶接資格をコード化したものであり、資格に有効期限があるものについては、対応する溶接資格コードに続けて(28)資格有効期限が付加される。
【0026】
溶接棒用RFIDタグ13は、各溶接棒ケース10に対応して用意され、溶接棒用RFIDタグ13自身の識別用のRFID ID No13aとともに、溶接棒の区分けごとに付番された溶接棒コード13b、項目番号(29)、(30)の溶接棒データを記憶する。また、データベース2は、RFID ID No13a、溶接棒コード13b、項目番号(29)、(30)の溶接棒データを記憶する。ここで、RFID ID No13a、溶接棒コード13b、および項目番号(29)、(30)の溶接棒データが、溶接棒情報23A、溶接棒情報23Bをそれぞれ構成する。
ここで、溶接棒コード13bは、例えば、溶接棒の種類(材質)と棒径による区分けに対応させたもので、メーカの異なる同一種類の溶接棒が存在しても、判別できるようにしたものである。その意味で、一意な溶接棒コード13bがあれば、別個用意して溶接棒コード13bと対応させた溶接棒の種類を示すデータから溶接棒の種類、棒径が判別できるので、前記の項目番号(4)、(15)を溶接棒コードとしても良い。
【0027】
(データベースへの各種情報の入力)
次に、データベース2に前記各種情報21A、22A、23Aを記憶させる手順を説明する。
溶接作業の工程を計画管理する担当者は、先ず、製造図面や仕様書等の上流図書を見て、PC1に搭載された情報登録プログラムを用いてデータベース2に、溶接対象物6の各溶接部7に対応した溶接番号11bを入力し、それに対応する図2の項目番号(1)〜(13)の溶接条件データを入力して、溶接部7ごとに対応した溶接条件情報21Aを記憶させる。
なお、溶接条件情報21Aは、CAD/CAMシステムを用いた場合は、自動的に上流データからコンピュータシステムで生成される場合もある。
【0028】
溶接作業の工程を計画管理する担当者は、PC1に搭載された前記情報登録プログラムを用いてデータベース2にアクセスし、日常的に必要に応じて、溶接作業者9に対して溶接作業者9を識別する溶接士コード12bを与え、溶接士コード12bに対する図2の項目番号(26)〜(28)の溶接士データ(溶接作業者氏名、溶接資格コード、資格有効期限)を入力し、溶接士情報22Aを作成、更新、管理する。また、同様に、使用する溶接棒に対して、必要に応じて溶接棒コード13bを与え、溶接棒コード13bに対する図2の項目番号(29)、(30)の溶接棒データ(溶接棒の種類(材質)、溶接棒の棒径)を入力し、溶接棒情報23Aを作成、更新、管理する。
【0029】
(各種RFIDタグの登録)
次に、前記各種のRFIDタグ11、12、13にそれぞれ溶接条件情報21B、溶接士情報22B、溶接棒情報23Bを記憶させ、また、データベース2の溶接条件情報21A、溶接士情報22A、溶接棒情報23Aと関係付けるRFIDタグ登録の手順を、図1、図2を参照しながら説明する。
PC1には、あらかじめRFIDタグプリンタ3を介して、データベース2の溶接条件情報21Aを読み出して溶接部用RFIDタグ11に溶接条件情報21Bとして記憶させ、また、その溶接部用RFIDタグ11のRFID ID No11aとデータベース2の溶接条件情報21Aを関係付けるための溶接部用RFIDタグ登録プログラム(RFIDタグ登録手段)が搭載されている。
同様に、あらかじめRFIDタグプリンタ3を介して、データベース2の溶接士情報22Aを読み出して溶接士用RFIDタグ12に溶接士情報22Bとして記憶させ、また、その溶接士用RFIDタグ12のRFID ID No12aとデータベース2の溶接士情報22Aを関係付けるための溶接士用RFIDタグ登録プログラム(RFIDタグ登録手段)、およびデータベース2の溶接棒情報23Aを読み出して溶接棒用RFIDタグ13に溶接棒情報23Bとして記憶させ、また、その溶接棒用RFIDタグ13のRFID ID No13aとデータベース2の溶接棒情報23Aを関係付けるための溶接棒用RFIDタグ登録プログラム(RFIDタグ登録手段)が搭載されている。
【0030】
溶接作業の工程を計画管理する担当者は、溶接作業者9に溶接作業指示を出す前に、PC1にて溶接部用RFIDタグ登録プログラムを起動し、溶接番号11bを指定してそれに対応する溶接条件情報21Aをデータベース2から読み出して、RFIDタグプリンタ3に対して、各溶接部用RFIDタグ11に溶接条件情報21Bとして記憶させる出力指示を出す。その出力指示を受けたRFIDタグプリンタ3は、溶接部用RFIDタグ11にデータ書き込みをする。このとき、通常、データ書き込み可能なRFIDタグでも識別用のRFID ID No11aを既に記録済みであるので、RFID ID No11aをRFIDタグプリンタ3が読み取り、それをPC1に送信する。そして、PC1は受信した溶接部用RFIDタグ11のRFID ID No11aを、データベース2の指示された溶接番号11bに対応する溶接条件情報21Aの一部として記憶させる。これによって、データベース2上の溶接条件情報21Aは、溶接部用RFIDタグ11に記憶された溶接条件情報21Bと関係付けられたことになる。
【0031】
この溶接部用RFIDタグ11への溶接条件情報21Bの書き込みは、複数の溶接部用RFIDタグ11に対して連続して行なうことができ、先ず生RFIDタグは前記したフィーダから送受信部に送られ情報の通信を行い、その後、印字部に移動されて、溶接部用RFIDタグ11の表面に所定のデータが印字される。例えば、RFID ID No11a、溶接番号11b、前記項目番号(3)の溶接方法が印字される。
そして、溶接作業の工程を計画管理する担当者は、各溶接部7近傍の溶接対象物6の表面または該当する溶接作業指示書8の所定の位置に、印字された溶接番号11bを参照して、溶接部用RFIDタグ11を貼付する。
【0032】
このように、溶接部用RFIDタグ11への溶接条件情報21Bの書き込みと、データベース2の溶接条件情報21Aへの関係付けとして、RFID ID No11aを溶接条件情報21Aに書き加えるので、1つの溶接番号11bに対して複数の溶接部用RFIDタグ11を作成するエラーを防止できる。また、RFID ID No11aの書き込まれていない溶接条件情報21Aを検索することで、容易に溶接部用RFIDタグ11を準備し忘れた溶接番号11bを検索することができる。
【0033】
同様に、溶接作業者9の溶接資格が追加等の変更があった場合は、または新規に溶接作業者9を登録した場合は、溶接作業の工程を計画管理する担当者は、溶接作業者9に溶接作業指示を出す前に、新たな溶接士用RFIDタグ12を発行する。PC1にて溶接士用RFIDタグ登録プログラムを起動し、溶接士コード12bを指定してそれに対応する溶接士情報22Aをデータベース2から読み出して、RFIDタグプリンタ3に対して、溶接士用RFIDタグ12に溶接士情報22Bとして記憶させる出力指示を出す。その出力指示を受けたRFIDタグプリンタ3は、溶接士用RFIDタグ12にデータ書き込みをする。このとき、通常データ書き込み可能なRFIDタグでも識別用のRFID ID No12aを既に記録済みであるので、RFID ID No12aをRFIDタグプリンタ3が読み取り、それをPC1に送信する。そして、PC1は受信した溶接士用RFIDタグ12のRFID ID No12aを、データベース2の指示された溶接士コード12bに対応する溶接士情報22Aの一部として記憶させる。これによって、データベース2上の溶接士情報22Aは、溶接士用RFIDタグ12に記憶された溶接士情報22Bと関係付けられたことになる。
【0034】
その後、溶接士用RFIDタグ12は、印字部に移動されて、溶接士用RFIDタグ12の表面に所定のデータが印字される。例えば、RFID ID No12a、溶接士コード12b、溶接作業者氏名が印字される。
このとき、既にベースデータ2上の対応する溶接士コード11bを含む溶接士情報22AにRFID ID No12aが記憶されている場合は、今回の新たなRFID ID No12aに書き換え、以前の溶接士用RFIDタグ12は、無効とする。そして、溶接作業の工程を計画管理する担当者は、溶接士用RFIDタグ12を該当する溶接作業者9に手交する。以前の溶接士用RFIDタグ12を所持している場合は、それを回収して破棄する。
【0035】
もし、新たな溶接士用RFIDタグ12を溶接作業者9に手交して更新するのを忘れた場合は、後記する様に、溶接作業現場にてPDA5が溶接作業者9の溶接士用RFIDタグ12から読み込んだ溶接士情報22Bが、データベース2に送信されたときに、データベース2側で、その溶接士情報22Bが該当する溶接士情報22Aと矛盾することとなり、容易に以前の溶接士用RFIDタグ12を用いていることが検出できる。
【0036】
同様に、新規に溶接棒を登録した場合は、溶接作業の工程を計画管理する担当者は新たな溶接棒用RFIDタグ13を発行する。PC1にて溶接棒用RFIDタグ登録プログラムを起動し、溶接棒コード13bを指定してそれに対応する溶接棒情報23Aをデータベース2から読み出して、RFIDタグプリンタ3に対して、溶接棒用RFIDタグ13に溶接棒情報23Bとして記憶させる出力指示を出す。その出力指示を受けたRFIDタグプリンタ3は、溶接棒用RFIDタグ13にデータ書き込む。このとき、通常、データ書き込み可能なRFIDタグでも識別用のRFID ID No13aを既に記録済みであるので、RFID ID No13aをRFIDタグプリンタ3が読み取り、それをPC1に送信する。そして、PC1は受信した溶接棒用RFIDタグ13のRFID ID No13aを、データベース2の指示された溶接棒コード13bに対応する溶接棒情報23Aの一部として記憶させる。これによって、データベース2上の溶接棒情報23Aは、溶接棒用RFIDタグ13に記憶された溶接棒情報23Bと関係付けられたことになる。
【0037】
その後、溶接棒用RFIDタグ13は、印字部に移動されて、表面に所定のデータが印字される。例えば、RFID ID No13a、溶接棒コード13b、図2の項目番号(29)、(30)の溶接棒の種類(材質)、棒径が印字される。そして、溶接作業の工程を計画管理する担当者は、印字された溶接棒用RFIDタグ13を、該当する同種、同径の溶接棒が入れられた溶接棒ケース10に貼付する。
【0038】
なお、前記説明では、説明を分かりやすくするために溶接部用RFIDタグ11、溶接士用RFIDタグ12、溶接棒用RFIDタグ13と名称および符号を区別して、データが書き込まれる前から名称、符号を分けて用いて説明したが、RFIDタグプリンタ3でデータが書き込まれる前の生のRFIDタグ段階では、区別のない同じでものであり、RFIDタグプリンタ3にてデータが書き込まれた段階で、初めて各種のRFIDタグ11、12、13と区別されるものである。
また、前記したように溶接部用RFIDタグ登録プログラム、溶接士用RFIDタグ登録プログラム、および溶接棒用RFIDタグ登録プログラムと、3つのプログラムを個別のプログラムのように分けて説明したが、処理するデータが異なるだけで基本的に同じ機能であり、一つのRFIDタグ登録プログラム(RFIDタグ登録手段)1aとし、プログラム起動後にデータ書き込みの種類を選択して、それぞれの前記した機能を行なわせるようにしても良い(図1参照)。
【0039】
(溶接作業管理および溶接記録の方法)
次に、図3から図7を参照しながら、溶接作業チェック・記録プログラム5dを搭載したPDA5による溶接作業管理および溶接記録の方法を説明する。
図3から図7は、PDAにおける溶接作業管理および溶接記録の制御の流れを示すフローチャートである。
先ず、溶接作業者9は、当日の溶接作業に係る溶接作業指示書8とPDA5を持ち、当該溶接作業場所に行き、PDA5の溶接作業チェック・記録プログラム5dを起動する。
するとPDA5の表示部5aに溶接士情報23Bの読み込みを促すメッセージが表示される。それに従って、溶接作業者9は、例えば、自分の胸に付けたIDカードに貼付された溶接士用RFIDタグ12にPDA5のRFID R/W5cを近づけて、溶接士用RFIDタグ12から溶接士情報22Bを読み込む(ステップS101)。
次いで、表示部5aに溶接条件情報21Bの読み込みを促すメッセージが表示される。それに従って、溶接作業者9は、例えば、溶接対象物6の溶接部7の近傍に貼付された溶接部用RFIDタグ11にPDA5のRFID R/W5cを近づけて、溶接部用RFIRFIDタグ11から溶接条件情報21Bを読み込む(ステップS102)。そして、RFID ID No11aおよび溶接番号11bを表示部5aに表示する。
【0040】
ステップS103では、ステップS102において読み込んだ溶接条件情報21Bの溶接方法として複数許可されているか否かをチェックする。複数許可されていない場合(No)は、ステップS104へ進み、RFID ID No11a、溶接番号11bに加えて溶接方法の詳細データを表示する。つまり、RFID ID No11a、溶接番号11bに加えて、図2に示した項目番号の(1)〜(3)のみならず、項目番号(4)〜(13)の溶接条件データを表示部5aに表示する。その後、ステップS107へ進む。
複数許可されている場合(Yes)は、ステップS105へ進み、選択肢の溶接方法を表示部5aに表示する。このとき、表示画面にカーソルで択肢の溶接方法を選択可能に表示する。溶接作業者9が入力操作部5bを操作して溶接方法を選択したのを受けて、ステップS106では、RFID ID No11a、溶接番号11bに加えて選択された溶接方法の前記詳細データを表示部5aに表示して、ステップS107へ進む。
【0041】
ステップS107では、ステップS104またはステップS106で表示された溶接条件データの溶接資格に対して、溶接作業者9の溶接資格が適合しているか否かをチェックする。溶接資格が適合しているとは、溶接条件情報21Bの図2に示した項目番号(13)で要求される溶接資格のいずれかを溶接作業者9が持っていること、かつ、その要求されている資格に対して有効期限がある場合は、持っている資格が有効期限内である場合に、適合していると判定する。いずれかのそれらの条件を満たしていない場合は、不適合と判定する。
溶接作業者9の溶接資格が適合している場合(Yes)は、ステップS111へ進み、
適合していない場合(No)は、ステップS108へ進む。
【0042】
ステップS108では、表示部5aに「溶接資格不適合」のメッセージを出力し、さらに、ステップS109へ進み、溶接方法の変更か否かをチェックする。このとき、溶接方法の変更とは、ステップS103において溶接方法として複数許可されていて、かつ、表示部5aに表示された溶接変更するか否かの2つのアイコンボタンのうちの溶接変更するアイコンボタンを溶接作業者9が選択操作した場合である。溶接方法の変更否とは前記したアイコンボタン表示のときに、溶接作業者9が溶接方法変更否のアイコンボタンを選択操作した場合、または、ステップS103において溶接方法として複数許可されておらず、ステップS104を経由してきた場合である。
溶接方法変更の場合(Yes)は、ステップS105に戻り、別の溶接方法を選択する。溶接変更否の場合(No)は、ステップS110へ進み、表示部5aに「溶接作業者の変更必要」のメッセージを出力する。これで、この溶接部7に対する溶接作業は中止となる。
【0043】
ステップS111では、溶接方法を溶接記録情報として一時記憶する。
なお、ステップS104またはステップS106以降のステップでは、表示部5aはステップS104またはステップS106で表示させたRFID ID No11a、溶接番号11b、ならびに、項目番号の(1)〜(13)の溶接条件データを表示部5aに表示し続け、メッセージ出力や、選択操作用のアイコンボタン等は、その上に小画面を一時的に開いて表示するものである。従って、溶接作業者9が選択操作をするなり、自動的に所定の時間後にメッセージ出力の小画面が閉じられると、前記RFID ID No11a、溶接番号11b、ならびに、項目番号の(1)〜(13)の溶接条件データの表示状態に戻る。
【0044】
次いで、ステップS112では、表示部5aに「溶接棒を選択してください」とのメッセージを出力する。このとき、表示部5aの表示は、溶接棒の種類と棒径を小画面に拡大表示させるか、溶接条件データの溶接棒の種類と棒径の部分が画面中央に位置するようにして、かつ、カーソルをその位置に表示して点滅させると、溶接作業者9が見やすい表示となる。
溶接作業者9は、表示部5aに表示されている溶接棒の種類(材質)と棒径に従がって、使おうとする溶接棒が入れられている溶接棒ケース10に貼付されている溶接棒用RFIDタグ13にPDA5のRFID R/W5cを近づける。
ステップS113では、PDA5は溶接棒用RFIDタグ13から溶接棒情報23Bを、つまり、溶接棒の種類(材質)、棒径を読み込む。
ステップS114では、ステップS113で読み込んだ溶接棒の種類(材質)、棒径が、現在表示されている溶接条件データのものと一致しているか否かをチェックする。一致していない場合(No)はステップS115へ進み、表示部5aにエラー表示「溶接棒誤選択」を表示し、ステップS113へ戻り、溶接作業者9が、再度別の溶接棒用RFIDタグ13にPDA5のRFID R/W5cを近づけて通信できたのを受けて、溶接棒用RFIDタグ13から溶接棒情報23Bを読み込む。
一致している場合(Yes)はステップS116へ進み、溶接棒の種類(材質)、棒径を溶接記録情報として一時記憶する。
【0045】
ステップS117では、表示部5aに「シールドガスを確定してください」とのメッセージを出力する。次いで、ステップS118では、現在表示中の溶接条件データがシールドガスとして複数許可しているか否かをチェックする。複数許可している場合(Yes)は、ステップS119へ進み、小画面に選択肢のシールドガスの種類を表示する。このとき、前記したようにマーカーで選択可能なアイコンボタンを同時に表示し、溶接作業者9が入力操作部5bを操作して表示されたアイコンボタンを選択操作可能とする。その後ステップS120へ進む。
ステップS118で複数許可していない場合(No)は、ステップS120へ進む。
【0046】
シールドガスが複数許可されていてステップS119を経由した場合は、選択されたガスの種類と流量を小画面に大きく表示し、シールドガスが複数許可されていない場合はステップS117の後、現在表示されている溶接条件データのシールドガスの種類と流量を小画面に大きく表示する。または、前記したように表示部5aの中央に溶接条件データのシールドガスの種類と流量を表示し、カーソルをその部分に表示して点滅させる。
そして、その画面表示に次のステップに進むアイコンボタンを表示させる。溶接作業者9は、シールドガスを選択してそのボンベからシールドガス供給をさせるように溶接装置のバルブ操作をし、また、流量設定を行なう。そして、PDA5にシールドガスの種類の確定と流量を入力するために、前記した次のステップへのアイコンボタンを、入力操作部5bを用いて操作し、ステップS120へ進む。
ステップS120では、溶接作業者9のシールドガスの流量の入力を受けて、シールドガスの種類、入力された流量を溶接記録情報として一時記憶する。
【0047】
ステップS121では、予熱の要否を表示部5aに表示中の溶接条件データでチェックする。予熱が必要な場合(要)は、ステップS122へ進み、予熱が必要でない場合(否)は、ステップS126へ進む。ステップS122では、表示部5aに「予熱が必要です」、「予熱温度はxx℃」、「予熱終了後の温度を入力してください」とのメッセージを出力する。このとき、次のステップに進むアイコンボタンも表示する。
そして、溶接作業者9は、溶接対象物6に図示しないヒータとヒータの出力を調整する温度センサを取り付け、温度センサが接続されたヒータの電源調整装置の温度設定ダイヤルを表示された予熱温度に設定する。なお、ヒータの電源調整装置には、温度センサの出力を記録する温度記録計が設置されている。溶接作業者9は、所定の予熱作業をし、予熱中の温度を前記した温度記録計で測定する。
ステップS123では、溶接作業者9が行なった次のステップに進むアイコンボタンの操作を受けて、入力操作部5bからの予熱温度の入力を受け付ける。そして、入力された予熱温度が溶接条件データのそれに適合しているか否かをチェックする。不適合の場合はステップS124へ進み、適合している場合はステップS125へ進む。
なお、適合、不適合の判定は、溶接条件データの予熱温度に対して所定の範囲に入っていれば適合と判定し、その所定の範囲を超えている場合は不適合と判定する。
ステップS124では、表示部5aにエラー表示をし、溶接作業者9に適切な温度の予熱作業を促し、ステップS123に戻る。このとき、次のステップに進むアイコンボタンも表示する。
ステップS125では、入力された予熱温度を溶接記録情報として一時記憶する。
【0048】
ステップS126では、表示部5aに「溶接電流をyyAに設定して下さい。設定した溶接電流を入力して下さい。」とメッセージ出力する。このとき、次のステップに進むアイコンボタンも表示する。溶接作業者9が溶接装置の溶接電流設定ダイヤルを表示された溶接条件の溶接電流値に設定して、表示部5aに表示された前記アイコンボタンを操作して、入力操作部5bを用いて溶接電流を入力する。PDA5は、溶接電流の入力を受け付け、ステップS127では、入力された溶接電流が溶接条件のそれに適合しているか否かをチェックする。不適合の場合はステップS128へ進み、適合している場合はステップS129へ進む。
なお、適合、不適合の判定は、溶接条件データの溶接電流に対して所定の範囲に入っていれば適合と判定し、その所定の範囲を超えている場合は不適合と判定する。
ステップS128では、表示部5aにエラー表示「入力された溶接電流が溶接条件に不適合です。確認して下さい。」を表示する。そして、同時に、次のステップへ進むアイコンボタンを表示してステップS127へ戻る。
【0049】
ステップS129では、入力された溶接電流を溶接記録情報として一時記憶する。その後、溶接作業者9は、溶接作業に入り、設定した溶接電流が確保されているか、確認しながら溶接作業を進める。
PDA5は、表示部5aに「溶接作業が終了後、再度溶接士用RFIDタグを読み込んで下さい」とのメッセージを出力して、同時に、次のステップへのアイコンボタンを表示して、溶接作業者9のアイコンボタン操作を待つ(ステップS130)。
【0050】
溶接作業が完了すると、溶接作業者9は、アイコンボタンを操作して、次のステップへ進ませ、溶接士用RFIDタグ12を読み込み可能な状態とし、自分のIDカードの溶接士用RFIDタグ12を読み込ませる。
この溶接士用RFIDタグ12の読み込みは、確認のためのもので、ステップS101からの流れの中で、途中で溶接作業者9が交代していないかどうかをチェックするものである。本実施の形態の重要ポイントではないので、このチェックに対する制御の流れは省略し、同一溶接作業者9の溶接士用RFIDタグ12が読み込まれたとして、説明を続ける。
【0051】
ステップS131では、読み込んだ溶接士用RFIDタグ12の溶接士情報22Bの中から取得した溶接士コードに対応する溶接作業者9を、この溶接部7の溶接作業を担当した溶接作業者として、年月日時刻データとともに溶接記録情報として一時記憶する。
なお、PDA5はプログラムとして時計機能を有しており、その時計機能の年月日時刻データを前記溶接記録情報として一時記憶する。
【0052】
ステップS132では、溶接後の熱処理の要否を表示部5aに表示中の溶接条件データでチェックする。溶接後の熱処理が必要な場合(要)は、ステップS133へ進み、必要でない場合(否)は、ステップS137へ進む。ステップS133では、表示部5aに「溶接後の熱処理が必要です。」とのメッセージ出力とともに、溶接後の熱処理条件、つまり図2に示した項目番号(10)〜(12)の溶接条件データを表示する。そして、「設定した溶接後の熱処理条件を入力してください」とのメッセージを出力する。このとき、次のステップに進むアイコンボタンも表示する。
そして、溶接作業者9は、溶接対象物6に図示しないヒータとヒータの出力を調整するための温度センサを取り付け、温度センサが接続されたヒータの電源調整装置の温度設定ダイヤルを表示された保持温度に設定する。また、表示された温度保持時間をヒータの電源調整装置の温度保持タイマのダイヤルで設定し、表示された加熱・冷却速度をヒータの電源調整装置の昇温速度ダイヤルと降温速度ダイヤルとで設定する。なお、ヒータの電源調整装置には、温度センサの出力を記録する温度記録計が設置されている。溶接作業者9は、所定の熱処理作業をし、熱処理中の温度を前記した温度記録計で測定する。
【0053】
ステップS134では、溶接作業者9の次のステップに進むアイコンボタンの操作を受けて、入力操作部5bからの熱処理条件の各数値の入力を受け付ける。次いで、入力された溶接後の熱処理条件の数値が溶接条件データのそれに適合しているか否かをチェックする。不適合の場合はステップS135へ進み、適合している場合はステップS136へ進む。
なお、適合、不適合の判定は、熱処理条件の数値に対してそれぞれ定められた所定の範囲に入っていれば適合と判定し、その所定の範囲をいずれか一つでも超えている場合は不適合と判定する。
ステップS135では、表示部5aにエラー表示「溶接後の熱処理条件が不適合です」をし、溶接作業者9に適切な熱処理作業を促し、ステップS134に戻る。このとき、次のステップに進むアイコンボタン、不適合の熱処理条件の数値をも表示し、不適合な数値だけ再入力できるようにする。
【0054】
ステップS136では、入力された溶接後の熱処理条件を溶接記録情報として一時記憶する。このとき、一時記憶が終了した後、画面に「溶接番号○○○の溶接は終了しましたか?」のメッセージとともに、次のステップに進むための溶接終了のアイコンボタンを表示し、溶接終了のアイコンボタンが操作されたかどうか、つまり、溶接終了か否かをチェックする(ステップS137)。その後、溶接作業者9は、溶接後の熱処理が必要な場合は熱処理の作業を続け、熱処理を終了したところで、溶接終了のアイコンボタンを操作する。溶接後の熱処理が不要な場合は、その時点で溶接作業者9は、溶接終了のアイコンボタンを操作する。溶接終了でない場合(No)は、ステップS137を繰り返し、溶接終了の場合(Yes)はステップS138へ進む。
【0055】
その後PDA5は、表示部5aに「付加する指示有り」と、「付加する指示無し」のアイコンボタンを表示して、付加する指示があるか否かを、チェックする。「付加する指示有り」のアイコンボタンが操作された場合(Yes)は、ステップS139へ進み、「付加する指示無し」のアイコンボタンが操作された場合(No)は、ステップS141へ進む。
ステップS139では、付加指示入力終了のアイコンボタンを表示するとともに、溶接作業者9が入力操作部5bを操作して入力した付加指示を一時記憶する。ステップS140では、前記した付加指示入力終了が操作されたか否かをチェックする、つまり、付加指示の入力が終了したか否かをチェックする。付加指示入力が終了した場合(Yes)はステップS141へ進み、そうでない場合(No)は、ステップS139に戻り、入力された付加指示を一時記憶する。
【0056】
ステップS141では、PDA5に一時記憶されたステップS111、S116、S120、S125、S129、S131、S136における溶接記録情報をデータベース2へ一括して転送する。このとき、ステップS104またはステップS106で表示された詳細な溶接条件データや、ステップS139における付加指示も転送される。データベース2では、これを受けて、該当する溶接番号11bに対応する溶接記録情報31Aとして記録する。
なおステップS104またはステップS106で表示された詳細な溶接条件データは、ステップS116、S120、S125、S129、S131、S136における溶接記録情報と重複する部分もあるが、参照データとして( )書きのデータとしてデータベース2の溶接記録情報31Aの一部として記憶される。
このように記憶することにより、溶接条件情報21Aとの照らし合わせが不要となる。
ステップS142では、表示部5aに「溶接部用RFIDタグに溶接記録情報を書き込みますか」のメッセージ出力と、「Yes」のアイコンボタンと「No」のアイコンボタンを表示し、いずれのアイコンボタンが操作されたかをチェックする。「Yes」のアイコンボタンを操作された場合(Yes)はステップS143へ進み、溶接部用RFIDタグへ、一時記憶された溶接記録情報を溶接記録情報31Bとして一括書き込みする。この場合も、前記したデータベース2上の溶接記録情報31Aと同じ記憶方法である。
ステップS142で、「No」のアイコンボタンを操作された場合(No)、およびステップS143が終了した場合、一連の一つの溶接部7に対する溶接作業のチェックおよび溶接記録作成が終了する。
【0057】
本実施の形態によれば、電子データとしてデータベースに第1の溶接条件情報21Aを、溶接部用RFIDタグ11に第2の溶接条件情報21Bを記憶させて管理し、PDA5は、当該溶接部7近傍または当該前記溶接部7の溶接作業指示書8に貼付された溶接部用RFIDタグ11から読み出した第2の溶接条件情報21Bにもとづいて当該溶接部7に対する溶接条件データを読み出し、表示部5aに表示するので、溶接作業管理がしやすい。
また、PDA5は、無線LANターミナル4aからLAN4を介して電子データとしてリアルタイムでデータベース2に溶接記録情報31Aを一括して記憶させるので、従来の手記による溶接記録の作成に比較して発生しうる誤記等のヒューマンエラーが低減でき、記録作成における信頼性が向上する。加えて、従来の書類にて管理されていた溶接記録情報が電子データとして管理されるため、溶接記録情報の検索に要する時間が短縮し、効率化が図られる。
【0058】
また、PDA5は、溶接部用RFIDタグ11から読み出した溶接条件情報21Bと溶接士用RFIDタグ12から読み出した溶接士情報22Bとにもとづいて、当該溶接作業者9が当該溶接部7の溶接作業に対する溶接資格を有しているか否かを事前にチェックして、溶接資格を有していない場合、表示部5aに警報表示をするので、溶接資格の有効期間を過ぎているのを溶接作業者9が忘れて、うっかりそのまま溶接作業を行なってしまうヒューマンエラーを防止できる。
溶接士情報22Bをそのまま溶接記録情報31A、31Bに加えることができ、従来の溶接記録の検査時に、溶接作業者9の氏名から、溶接士情報を別個調べて、溶接資格の点検を行なうという煩雑な作業が不要になる。
【0059】
また、PDA5は、溶接部用RFIDタグ11から読み出した溶接条件情報21Bと、溶接作業者9が選択して溶接棒用RFIDタグ13から読み出した溶接棒情報23Bとにもとづいて、当該溶接棒が当該溶接部7の溶接条件に適合したものであるか否かを事前にチェックして、適合していない場合、表示部5aに警報表示をするので、間違った溶接棒を用いるようなヒューマンエラーを防止できる。
溶接棒情報23Bをそのまま溶接記録情報31A、31Bに加えることができ、従来の溶接記録の検査時に、溶接棒コード13bから、溶接棒情報を別個調べて、適合した溶接棒の種類(材質)、棒径であったか否かの点検を行なうという煩雑な作業が不要になる。
【0060】
また、溶接部7ごとに溶接部用RFIDタグ11と溶接士用RFIDタグ12をPDA5で読み込むので、複数の溶接作業者9が、複数の溶接部7に対して、グループで入れ替わって溶接作業をしているケースでも、従来の手書きで記憶にもとづいて複数の溶接部7の溶接記録をまとめて作成するときに、錯誤して複数の溶接作業者9を入れ違って記入してしまうような誤記を防止できる。
また、データベース2上で、溶接条件情報21A、溶接士情報22A、溶接棒情報23A、溶接記録情報31Aを集中管理し、溶接部用RFIDタグ11の溶接条件情報21Bは溶接条件情報21Aをコピーしたものであり、溶接士用RFIDタグ12の溶接士情報22Bは溶接士情報22Aをコピーしたものであり、溶接棒用RFIDタグ13の溶接棒情報23Bは溶接棒情報23Aをコピーしたものであり、溶接作業現場で使用している各種情報とデータベース2上の対応する情報間の矛盾が防止できるので、情報の一括管理ができる。
【0061】
さらに、溶接作業のように、広い空間を使用して作業を行なう場合に、固定情報端末の場合のように、入力作業のために一々そこまで移動して入力操作を行なうのではなく、溶接作業者9の手元近くに置いたPDA5を用いて、溶接作業管理および溶接記録を行なうので、便利である。
【0062】
なお、PDA5は、既存のPDA5をそのまま用いると入力操作部5bのキーボードが小さいので、溶接作業者9が、作業手袋をしたまま入力操作をすることができず、一々作業手袋を外さないといけないので、特別にキーの大きいキーボードの入力操作部5bを外付けすることが好ましい。また、PDA5はキーボードタイプの他、タッチパネル式のものを用いても良い。その他、作業環境が厳しいので、防塵構造であることが好ましい。
【0063】
また、溶接作業管理および溶接記録の制御のフローチャートにおけるステップS120のシールドガスの流量の入力、ステップS123における余熱温度の入力、ステップS127における溶接電流の入力、ステップS134における溶接後の熱処理条件の入力は、溶接作業者9がPDA5の入力操作部5bから入力するとしたが、それに限定されるものではない。
例えば、ステップS120では、溶接装置のガス流量計がデータ通信機能を有しており、ガス流量の測定値をPDA5に無線LANターミナル4a経由で通信する構成としても良い。同様にステップS123では、前記した予熱用のヒータの電源調整装置の温度記録計がデータ通信機能を有しており、予熱温度の測定値をPDA5に無線LANターミナル4a経由で通信する構成としても良い。
また、ステップS127では、溶接装置の溶接電流センサがデータ通信機能を有しており、溶接電流の測定値をPDA5に無線LANターミナル4a経由で通信する構成としても良い。また、ステップS134では、前記した溶接後の熱処理用のヒータの電源調整装置の温度記録計がデータ通信機能を有しており、溶接後の熱処理の温度測定値をPDA5に無線LANターミナル4a経由で通信する構成としても良い。
【0064】
(変形例)
次に、本実施の形態の変形例を説明する。
前記実施の形態では、溶接部用RFIDタグ11、溶接士用RFIDタグ12および溶接棒用RFIDタグ13は、データ書き込み可能なRFIDタグとしたが、本変形例では全てRFID ID Noが既に記録された読み出し専用RFIDタグである。そして、PDA5はRFID リーダをそのスロットに挿入されている。これらの違いにより、RFIDタグ登録プログラム1aによる登録操作と、PDA5による溶接条件情報、溶接士情報、溶接棒情報の取得の仕方が異なるだけで、他は同じである。
前記実施の形態と重複する内容の説明を省略し、本変形例において変わる部分のみを説明する。
【0065】
まず、本変形例における前記各種のRFIDタグ11、12、13と、データベース2の溶接条件情報21A、溶接士情報22A、溶接棒情報23Aと関係付ける手順を説明する。
PC1には、あらかじめRFIDタグプリンタ3を介して、データベース2の溶接条件情報21A、溶接士情報22A、溶接棒情報23Aを読み出して各種RFIDタグ11、12、13のRFID ID Noとデータベース2の前記各種情報21A、22A、23Aと関係付けるためのRFIDタグ登録プログラム(RFIDタグ登録手段)が搭載されている。
【0066】
溶接作業の工程を計画管理する担当者は、溶接作業者9に溶接作業指示を出す前に、PC1にてRFIDタグ登録プログラムを起動し、溶接番号11bを指定してそれに対応する溶接条件情報21Aをデータベース2から読み出して、RFIDタグプリンタ3に対して、各溶接部用RFIDタグ11に目視可能に印字させる出力指示を出す。その出力指示を受けたRFIDタグプリンタ3は、読み出し専用RFIDタグの記録済みの識別用のRFID ID No11aをRFIDタグプリンタ3が読み取り、それをPC1に送信する。そして、PC1は受信した溶接部用RFIDタグ11のRFID ID No11aを、データベース2の指示された溶接番号11bに対応する溶接条件情報21Aの一部として記憶させる。これによって、データベース2上の溶接条件情報21Aは、溶接部用RFIDタグ11のRFID ID No11aと関係付けられたことになる。
【0067】
この溶接部用RFIDタグ11の登録は、複数の溶接部用RFIDタグ11に対して連続して行なうことができる。例えば、RFIDタグプリンタ3は、RFIDリーダ・ライタで構成された送受信部と、台紙テープ上に貼りつけられた溶接部用RFIDタグ11を、順にRFIDタグプリンタ3の送受信部に送り込むフィーダと、送受信部に続く印字部とを有している。そのフィーダに用途別を指定してない生RFIDタグを装填し、先ず生RFIDタグは送受信部に送られ情報の通信を行い、その後、印字部に移動されて、溶接部用RFIDタグ11の表面に目視可能に所定の印字を行なう。例えば、RFID ID No11a、溶接番号11b、図2の項目番号(3)の溶接方法を印字する。
そして、溶接作業の工程を計画管理する担当者は、各溶接部7近傍の溶接対象物の表面または該当する溶接作業指示書の所定の位置に、印字された溶接番号11bを参照して、溶接部用RFIDタグ11を貼付する。
【0068】
同様に、溶接作業者9の溶接資格が変わった場合、または新規に溶接作業者9を登録した場合は、溶接作業の工程を計画管理する担当者は、溶接作業者9に溶接作業指示を出す前に、PC1を用いて、データベース2上の溶接士情報22Aを作成、更新する。新規に溶接士情報22Aを登録した場合は、新たな溶接士用RFIDタグ12のRFID ID No12aをRFIDタグプリンタ3から読み込み、読み出されたRFID ID No12aを、データベース2上の当該の溶接士情報22AのRFID ID No12aとして記憶させ、溶接士用RFIDタグ12と溶接士情報22Aを関係付ける。このとき、溶接士用RFIDタグ12の表面に所定の印字を行なう。例えば、RFID ID No12a、溶接士コード12b、溶接作業者氏名を印字する。そして、新たな溶接士用RFIDタグ12を、当該の溶接作業者9にIDカードの所定の位置に貼り付けるように支持して渡す。
溶接士情報22Aの溶接資格や有効期限の更新の場合は、既に溶接作業者9に交付されている溶接士用RFIDタグのRFID ID No12aが記憶されているので、新たに関係付ける必要はない。
【0069】
同様に、新規に溶接棒を登録した場合は、PC1を用いて、データベース2上の溶接棒情報23Aを作成する。そして、新たな溶接棒用RFIDタグ13を発行する。新規に溶接棒情報23Aを登録した場合は、新たな溶接棒用RFIDタグ13のRFID ID No13aをRFIDタグプリンタ3から読み込み、読み出されたRFID ID No13aを、データベース2上の当該の溶接棒情報23AのRFID ID No13aとして記憶させ、溶接棒用RFIDタグ13と溶接棒情報23Aを関係付ける。このとき、溶接棒用RFIDタグ13の表面に所定の印字を行なう。例えば、例えば、RFID ID No13a、溶接棒コード13b、図2の項目番号(29)、(30)の溶接棒の種類(材質)、棒径(図2参照)を印字する。そして、溶接作業の工程を計画管理する担当者は、印字された溶接棒用RFIDタグ13を、該当する同種、同径の溶接棒が入れられた溶接棒ケース10に貼付する。
【0070】
次に、図3から図7の溶接作業管理および溶接記録の制御のフローチャートにおいて、本変形例で変わる部分は、ステップS101、S102、S113、であり、ステップS142、S143は削除される。
ステップS101では、PDA5の表示部5aに溶接士情報23Bの読み込みを促すメッセージが表示され、それに従って、溶接作業者9は、例えば、自分の胸に付けたIDカードに貼付された溶接士用RFIDタグ12にPDA5のRFIDリーダを近づけて、溶接士用RFIDタグ12から溶接士情報22B(実際の内容は、RFID ID No12aである)を読み込む。その後、PDA5は、無線LANターミナル4aおよびLAN4を介して、データベース2にアクセスし、RFID ID No12aを含む溶接士情報22Aを検索して、その情報をダウンロードする。
【0071】
ステップS102では、表示部5aに溶接条件情報21Bの読み込みを促すメッセージが表示され、それに従って、溶接作業者9は、例えば、溶接対象物6の溶接部7の近傍に貼付された溶接部用RFIDタグ11にPDA5のRFIDリーダを近づけて、溶接部用RFIDタグ11から溶接条件情報21B(実際の内容は、RFID ID No11aである)を読み込む。その後、PDA5は、無線LANターミナル4aおよびLAN4を介して、データベース2にアクセスし、RFID ID No11aを含む溶接条件情報21Aを検索して、その情報をダウンロードする。そして、RFID ID No11aおよび溶接番号11bを表示部5aに表示する。
【0072】
ステップS113では、PDA5は溶接棒用RFIDタグ13から溶接棒情報23B(実際の内容は、RFID ID No13aである)を、読み込む。その後、PDA5は、無線LANターミナル4aおよびLAN4を介して、データベース2にアクセスし、RFID ID No13aを含む溶接棒情報23Aを検索して、その情報をダウンロードする。
このように各種RFIDタグ11、12、13が読み出し専用RFIDである場合も、必要な情報、溶接条件情報21A、溶接士情報22A、溶接棒情報23Aをデータベース2からPDA5にダウンロードして用いることで、実施の形態と同様に溶接作業の管理、溶接記録ができる。
【0073】
以上、データの書き込み可能なRFIDタグを利用した実施の形態と、データの書き込みが出来ない読み出し専用RFIDタグを利用した場合の実施の形態の変形例について、分けて説明したが、それに限定されるものではない。PDA5に搭載した溶接作業チェック・記録プログラム5dにおいて、各種RFIDタグ11、12、13を読み込んだ時に、取得されたデータが1つだけ、つまりRFID ID No11a、RFID ID No12a、またはRFID ID No13aだけで、他に、所定の書式のデータが取得されなかった場合は、データベース2上のRFID ID No11a、RFID ID No12a、またはRFID ID No13aを含む対応する溶接条件情報21A、溶接士情報22A、溶接棒情報23Aをデータベース2からダウンロードするようにすれば、読み出し専用RFIDタグとデータの書き込み可能なRFIDタグを混在させて用いる場合にも対応できる。このとき、RFID ID Noと他のデータとは区別しやすいように、他のデータには、例えば、頭に特定の第1の識別子符号を付加して区別しやすいようにすると良い。また、データの種類の判別用に前記した第1の識別子符号に続いて第2の識別子符号を続けて付加し、その後にデータを続けると、データ判別がしやすく便利である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、例えば、各種発電プラントの配管や容器の溶接部等の溶接および溶接記録の管理に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係る実施の形態の溶接作業管理・記録システムの構成図である。
【図2】溶接作業管理・記録システムに用いられる各種のRFIDタグおよびデータベースに記憶させる情報内容を説明する図である。
【図3】溶接作業管理および溶接記録の制御のフローチャートである。
【図4】溶接作業管理および溶接記録の制御のフローチャートである。
【図5】溶接作業管理および溶接記録の制御のフローチャートである。
【図6】溶接作業管理および溶接記録の制御のフローチャートである。
【図7】溶接作業管理および溶接記録の制御のフローチャートである。
【符号の説明】
【0076】
1 パーソナルコンピュータ
1a RFID登録プログラム(RFIDタグ登録手段)
2 データベース
3 RFIDタグプリンタ
4 ローカル・エリア・ネットワーク(ネットワーク)
4a 無線LANターミナル
5 携帯情報端末(情報端末)
5a 表示部
5b 入力操作部
5c RFIDリーダ・ライタ
5d 溶接作業チェック・記録プログラム
6 溶接対象物
7 溶接部
8 溶接作業指示書
9 溶接作業者
10 溶接棒ケース
11A、11B 溶接部用RFIDタグ
11a、12a、13a RFID ID No(RFIDタグ識別情報)
11b 溶接番号
12 溶接士用RFIDタグ
12b 溶接士コード
13 溶接棒用RFIDタグ
13b 溶接棒コード
21A 溶接条件情報(第1の溶接条件情報)
21B 溶接条件情報(第2の溶接条件情報)
22A 溶接士情報(第1の溶接士情報)
22B 溶接士情報(第2の溶接士情報)
23A 溶接棒情報(第1の溶接棒情報)
23B 溶接棒情報(第2の溶接棒情報)
31A 溶接記録情報
31B 溶接記録情報
50 溶接作業管理・記録システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接部の溶接番号と、溶接方法に関する情報を含む溶接条件データを含む第1の溶接条件情報を記憶するデータベースと、
溶接部用RFIDタグを識別するRFIDタグ識別情報を少なくとも含む第2の溶接条件情報を溶接前にあらかじめ溶接部用RFIDタグに記憶させ、かつ、前記第2の溶接条件情報を前記データベースの特定の前記溶接番号を含む第1の溶接条件情報と関係付けるRFIDタグ登録手段と、
溶接対象物の当該前記溶接部近傍または当該前記溶接部の溶接作業指示書に貼付された前記溶接部用RFIDタグから前記第2の溶接条件情報を読み出し、読み出された前記第2の溶接条件情報にもとづいてその表示部に前記溶接条件データを表示する情報端末と、
前記情報端末と前記データベースとを接続可能に結ぶネットワークを備え、
前記情報端末は、当該前記溶接部の溶接作業を始める前に、溶接作業者に対して、当該前記溶接部に対する前記溶接条件データを確認させることを可能とし、
また、前記溶接作業者によって前記情報端末の入力操作部から入力された前記溶接条件データに関する記録を、前記ネットワークを介して前記データベースに溶接記録情報として記憶させることを特徴とするRFIDタグを用いた溶接作業管理・記録システム。
【請求項2】
前記データベースは、さらに、あらかじめ前記溶接作業者の氏名に関する情報、溶接資格に関する情報、資格有効期限に関する情報を含む第1の溶接士情報を記憶し、
前記溶接条件データは、さらに、要求される前記溶接資格に関する情報を含み、
前記RFIDタグ登録手段は、溶接士用RFIDタグを識別するRFIDタグ識別情報を少なくとも含む第2の溶接士情報をあらかじめ溶接士用RFIDタグに記憶させ、かつ、前記第2の溶接士情報を前記データベースの特定の前記溶接作業者の氏名に関する情報を含む第1の溶接士情報と関係付け、
前記情報端末は、当該前記溶接部の溶接作業を始める前に、前記溶接作業者の所持している前記溶接士用RFIDタグから読み出した前記第2の溶接士情報と、前記溶接部用RFIDタグから読み出した前記第2の溶接条件情報とにもとづいて、前記溶接作業者が当該前記溶接部の溶接作業に対して溶接資格を有しているか否かをチェックし、溶接資格を有していない場合、前記表示部に警報表示し、溶接資格を有している場合は、前記ネットワークを介して前記データベースに、当該の溶接作業者の前記第2の溶接士情報を、前記溶接記録情報の一部として記憶させることを特徴とする請求項1に記載のRFIDタグを用いた溶接作業管理・記録システム。
【請求項3】
前記データベースは、さらに、あらかじめ溶接棒コード、溶接棒種類、棒径を含む第1の溶接棒情報を記憶し、
前記溶接条件データは、さらに、溶接棒の材質を特定する溶接棒種類、棒径を含み、
前記RFIDタグ登録手段は、溶接棒用RFIDタグを識別するRFIDタグ識別情報を少なくとも含む第2の溶接棒情報をあらかじめ溶接棒用RFIDタグに記憶させ、かつ、前記第2の溶接棒情報を前記データベースの特定の前記溶接棒コードの第1の溶接棒情報と関係付け、
前記情報端末は、当該前記溶接部の溶接作業を始める前に、前記溶接作業者が、前記溶接棒種類、棒径に応じて区分けして、前記溶接棒用RFIDタグで表示してある溶接棒を選択するときに、前記溶接棒用RFIDタグから読み出した前記第2の溶接棒情報と、前記溶接部用RFIDタグから読み出した前記第2の溶接条件情報にもとづいて、前記選択された溶接棒が当該前記溶接部の溶接作業に対して適しているか否かをチェックし、適していない場合、前記表示部に警報表示をし、適している場合は、前記ネットワークを介して前記データベースに、選択された溶接棒に対応する前記第2の溶接棒情報を、前記溶接記録情報の一部として記憶させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のRFIDタグを用いた溶接作業管理・記録システム。
【請求項4】
溶接部の溶接番号と、溶接方法に関する情報を含む溶接条件データを含む第1の溶接条件情報を記憶するデータベースと、
RFIDタグ識別情報が記録済みの読み込み専用のRFIDタグを、前記RFIDタグ識別情報を用いて前記データベースの特定の前記溶接番号を含む第1の溶接条件情報と関係付けて、溶接部用RFIDタグとして登録するRFIDタグ登録手段と、
溶接対象物の当該前記溶接部近傍または当該前記溶接部の溶接作業指示書に貼付された前記溶接部用RFIDタグから前記RFID識別情報を読み出し、読み出された前記RFID識別情報にもとづいて、前記データベースから対応する前記第1の溶接条件情報をダウンロードし、その表示部に前記溶接条件データを表示する情報端末と、
前記情報端末と前記データベースとを接続可能に結ぶネットワークを備え、
前記情報端末は、当該前記溶接部の溶接作業を始める前に、前記溶接作業者に対して、当該前記溶接部に対する前記溶接条件データを確認させることを可能とし、
また、前記溶接作業者によって前記情報端末の入力操作部から入力された前記溶接条件データに関する記録を、前記ネットワークを介して前記データベースに溶接記録情報として記憶させることを特徴とするRFIDタグを用いた溶接作業管理・記録システム。
【請求項5】
前記データベースは、さらに、あらかじめ前記溶接作業者の氏名に関する情報、溶接資格に関する情報、資格有効期限に関する情報を含む第1の溶接士情報を記憶し、
前記溶接条件データは、さらに、要求される前記溶接資格に関する情報を含み、
前記RFIDタグ登録手段は、RFIDタグ識別情報が記録済みの読み込み専用のRFIDタグを、前記RFIDタグ識別情報を用いて前記データベースの特定の前記溶接作業者の氏名に関する情報を含む第1の溶接士情報と関係付けて、溶接士用RFIDタグとして登録し、
前記情報端末は、当該前記溶接部の溶接作業を始める前に、前記溶接作業者の所持している前記溶接士用RFIDタグから読み出した前記RFID識別情報にもとづいて、前記データベースから対応する前記第1の溶接士情報をダウンロードし、該第1の溶接士情報と前記ダウンロードした第1の溶接条件情報とにもとづいて、前記溶接作業者が当該前記溶接部の溶接作業に対して溶接資格を有しているか否かをチェックし、溶接資格を有していない場合、前記表示部に警報表示し、溶接資格を有している場合は、前記ネットワークを介して前記データベースに、当該の溶接作業者の前記第1の溶接士情報を、前記溶接記録情報の一部として記憶させることを特徴とする請求項4に記載のRFIDタグを用いた溶接作業管理・記録システム。
【請求項6】
前記データベースは、さらに、あらかじめ溶接棒コード、溶接棒種類、棒径を含む第1の溶接棒情報を記憶し、
前記溶接条件データは、さらに、溶接棒の材質を特定する溶接棒種類、棒径を含み、
前記RFIDタグ登録手段は、RFIDタグ識別情報が記録済みの読み込み専用のRFIDタグを、前記RFIDタグ識別情報を用いて前記データベースの特定の前記溶接棒コードを含む第1の溶接棒情報と関係付けて、溶接棒用RFIDタグとして登録し、
前記情報端末は、当該前記溶接部の溶接作業を始める前に、前記溶接作業者が、前記溶接棒種類、棒径に応じて区分けして、前記溶接棒用RFIDタグで表示してある溶接棒を選択するときに、前記溶接棒用RFIDタグから読み出した前記RFID識別情報にもとづいて、前記データベースから対応する前記第1の溶接棒情報をダウンロードし、該第1の溶接棒情報と前記ダウンロードした第1の溶接条件情報とにもとづいて、前記選択された溶接棒が当該前記溶接部の溶接作業に対して適しているか否かをチェックし、適していない場合、前記表示部に警報表示をし、適している場合は、前記ネットワークを介して前記データベースに、選択された溶接棒に対応する前記第1の溶接棒情報を、前記溶接記録情報の一部として記憶させることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のRFIDタグを用いた溶接作業管理・記録システム。
【請求項7】
前記情報端末は、前記溶接部に対する前記溶接条件データが選択肢を有する場合は、選択された前記選択肢の溶接条件データを、溶接記録情報として前記データベースに記憶させることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のRFIDタグを用いた溶接作業管理・記録システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−59116(P2008−59116A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233241(P2006−233241)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【Fターム(参考)】