RFIDタグ位置検出装置およびRFIDタグの位置検出方法
【課題】迅速にRFIDタグの位置を検出する。
【解決手段】RFIDタグ位置検出装置1は、RFIDタグ2a〜2cへ信号を送信する送信アンテナ11と、RFIDタグ2a〜2cからの応答信号を受信する4つの受信アンテナ12a〜12dと、各受信アンテナ12a〜12dが受信した応答信号に応じて出力する信号の時間差を計測し、計測した各時間差に基づいてRFIDタグ2a〜2cの相対座標を演算する計測部とを備えている。
【解決手段】RFIDタグ位置検出装置1は、RFIDタグ2a〜2cへ信号を送信する送信アンテナ11と、RFIDタグ2a〜2cからの応答信号を受信する4つの受信アンテナ12a〜12dと、各受信アンテナ12a〜12dが受信した応答信号に応じて出力する信号の時間差を計測し、計測した各時間差に基づいてRFIDタグ2a〜2cの相対座標を演算する計測部とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、RFID(Radio Frequency Identification)タグと無線通信を行いRFIDタグの位置を検出する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RFIDタグ(無線タグや応答器等とも称される)は、アンテナと無線通信部と記憶部を備えており、それぞれのRFIDタグにおける記憶部には各タグで重複しない識別情報が記憶されている。質問器(リーダライタとも称される)がRFIDタグに問合わせ信号を送信すると、RFIDタグは当該問合わせ信号に応じた処理を行う。例えば、RFIDタグが記憶している識別情報と、リーダライタからの問合わせ信号に含まれる識別情報とが一致した場合にだけ応答を返すRFIDタグが知られている。
【0003】
このような機能を有するRFIDタグは、物流業における物品管理を始めとし、様々な分野で使用されている。近年では、各種商品を販売する店舗において、RFIDタグを用いて商品の販売や在庫管理を行うシステムを導入した例もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−114003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大量の物品を扱う業種においては、物品の種類や個数の管理だけでなく、各物品がどの位置に所在するのかを容易に認識できるようにしたいとの要望がある。RFIDタグの位置を検出するには、リーダライタがRFIDタグと通信を行った絶対位置とそのときのRFIDタグの位置までの距離を取得する動作を少なくとも3箇所で行い、RFIDタグの絶対位置を算出する方法を採用し得る。
【0006】
しかしながら、上記の方法を採用した場合、リーダライタは少なくとも3箇所でリーダライタ自身の位置とRFIDタグまでの距離とを取得する必要があるため、RFIDタグの位置を求めるまでに比較的長い時間が必要となる。また、リーダライタが同じRFIDタグと少なくとも3回の通信を行う必要があるため、電波使用効率も悪くなる。
【0007】
このような事情から、迅速にRFIDタグの位置を検出するための手段を講じる必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態におけるRFIDタグ位置検出装置は、RFIDタグへ信号を送信する送信アンテナと、RFIDタグからの応答信号を受信する4つ以上の受信アンテナと、前記各受信アンテナが受信した応答信号に応じて出力する信号の時間差を計測し、計測した各時間差に基づいてRFIDタグが応答信号を送信した相対座標を演算する計測部とを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態におけるRFIDタグ位置検出装置とRFIDタグを説明するための概略斜視図。
【図2】同実施形態におけるRFIDタグ位置検出装置の概略ブロック図。
【図3】同実施形態における計測部の概略ブロック図。
【図4】同実施形態におけるTDCの動作を説明するための信号波形図。
【図5】同実施形態におけるRFIDタグの座標演算を説明するための図。
【図6】同実施形態におけるRFIDタグ位置検出装置とRFIDタグとの通信を説明するための図。
【図7】同実施形態におけるプリアンブルの波形を示す図。
【図8】同実施形態における表示部に表示される画像を説明するための模式図。
【図9】同実施形態における情報表示に関する各部の動作を示すフローチャート。
【図10】同実施形態における表示座標への座標変換を説明するための図。
【図11】同実施形態においてレーザ光が照射される様子を示す模式図。
【図12】同実施形態におけるレーザ光の照射に関する各部の動作を示すフローチャート。
【図13】同実施形態における照射部の概略構造を示す模式図。
【図14】同実施形態における座標変換とミラー角度の関係を説明するための図。
【図15】同実施形態におけるタグ不在の報知機能を説明するための模式図。
【図16】同実施形態におけるタグ不在の報知に関する各部の動作を示すフローチャート。
【図17】第4の実施形態における計測部の概略ブロック図。
【図18】同実施形態におけるTDCの動作を説明するための信号波形図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(第1の実施の形態)
[要部構成]
先ず、本実施形態におけるRFIDタグ位置検出装置1の要部構成について説明する。
図1は、RFIDタグ位置検出装置1とRFIDタグ2を説明するための概略斜視図であり、図2は、RFIDタグ位置検出装置1の概略ブロック図である。
【0011】
RFIDタグ位置検出装置1は、例えば図1に示したように直方体形状の筐体を有しており、その一面には、カメラ部13のレンズと照射部14の照射孔とが設けられている。このレンズおよび照射孔が設けられた面から電波が放射され、RFIDタグ2(2a,2b,2c・・・)との無線通信が行われる。
【0012】
RFIDタグ位置検出装置1の内部には、図2に示したように、送信アンテナ11、4つの受信アンテナ12(12a,12b,12c,12d)、カメラ部13、照射部14、表示部15、制御部16、発振部17、変調部18、電力増幅部19、復調部20(20a,20b,20c,20d)、増幅部21(21a,21b,21c,21d)、および計測部22が配置されている。
【0013】
制御部16は、図示しないCPU(Central Processing Unit)や記憶部を備えており、この記憶部に記憶されたプログラムに従って動作し、各部の制御を行う。すなわち制御部16は、カメラ部13、照射部14、表示部15、および計測部22の制御や、送信処理、受信処理およびパソコン等の上位機器との通信を行う。
【0014】
発振部17は、高周波信号を発生し、これを変調部18や各復調部20a〜20dに出力する。発振部17の発振周波数は、RFIDタグ2へ送信する搬送波の周波数と同値である。この発信周波数は、制御部16からの信号に応じて変更することができる。
【0015】
変調部18は、制御部16から出力された送信情報を発振部17の出力と合成して高周波信号を生成し、これを電力増幅部19に出力する。変調部18は、送信情報が無い場合には搬送波のみを出力することもある。
【0016】
電力増幅部19は、変調部18から入力された高周波信号を増幅して送信アンテナ11に出力する。
【0017】
送信アンテナ11は、電力増幅部19から出力された高周波信号を電波として空間に放射する。送信アンテナ11は、電波を特定の方向へ強く放射する特性を備えた指向性アンテナであり、例えば平面パッチアンテナを使用すればよい。
【0018】
各受信アンテナ12a〜12dは、受信した電波を高周波信号に変換し、それぞれ復調部20a〜20dに出力する。各受信アンテナ12a〜12dは、位置検出の精度の観点からは、点であることが理想であるが、現実的には受信電波の波長に依存する大きさが必要である。なお、利得の高い指向性アンテナを使用する必要は無い。そのため、誘電率の高い材質を用いて波長短縮し、小型化したアンテナを使用することが好ましい。
【0019】
また、各受信アンテナ12a〜12dは、送信アンテナ11の放射利得の低い方向に配置することが好ましい。RFIDタグ2は、空間から届く搬送波を電力として使用し、バックスキャッタ変調をして応答を返す。そのため、RFIDタグ位置検出装置1は、搬送波を送信しながらバックスキャッタ信号を受信する動作を行うことになる。送信アンテナ11から空間を経て各受信アンテナ12a〜12dへ回り込む電波の電力を抑えることにより、受信回路における送信回り込みをキャンセルする処理の負担を軽減することができる。
【0020】
RFIDタグ2から放射された電波は、空間を通過して各受信アンテナ12a〜12dに到達する。このとき、RFIDタグ2と各受信アンテナ12a〜12dとの距離が異なるため、各受信アンテナ12a〜12dへの到達時間差が発生する。自由空間中を伝播する電波の速度は、約3×108m/sある。例えば、RFIDタグ2および受信アンテナ12a間の距離と、RFIDタグ2および受信アンテナ12b間の距離との差が1mのときは、約3.3nsの到達時間差が生じ、同距離の差が10cmの場合は約330psの到達時間差が生じる。
【0021】
各受信アンテナ12a〜12dを同一平面上に配置する場合は、各受信アンテナ12a〜12dを頂点とする四角形としたときに、向かい合った角の和が180度にならないで、かつ、2つの対角線の中心が同じ点とならないように、各受信アンテナ12a〜12dを配置する。
【0022】
各受信アンテナ12a〜12dを同一平面状に配置しない場合は、各受信アンテナ12a〜12dを頂点が正四面体の頂点とならないように配置する。
【0023】
復調部20aは、受信アンテナ12aから出力される高周波信号と発振部17の出力を合成してベースバンド信号に変換し、これを増幅部21aに出力する。出力された信号は、一般的にはRSSI(Received Signal Strength Indication)と呼ばれる受信信号強度を測定するための振幅情報を含んでいる。各復調部20b〜20dも同様に、それぞれ受信アンテナ12b〜12dから出力される高周波信号と発振部17の出力を合成してベースバンド信号に変換し、これをそれぞれ増幅部21b〜21dに出力する。
【0024】
増幅部21aは、復調部20aから出力される信号を増幅して飽和させ、“H(High)”または“L(Low)”で表される2値情報として出力する。RFIDタグ2が返すバックスキャッタ信号は2値情報であるため、このようにしてもRFIDタグ2が返す応答情報を再生することができる。各増幅部21b〜21dも同様に、それぞれ復調部20b〜20dから出力されるベースバンド信号を増幅して出力する。なお、各増幅部21a〜21dに代えてコンパレータを用いてもよい。
【0025】
増幅部21aから出力された信号は、制御部16と計測部22に入力される。制御部16は、増幅部21aから出力された信号を受信データ(応答信号)に再生して、そのデータに応じた処理を行う。各増幅部21b〜21dから出力された信号も同様に、計測部22に入力されるが、制御部16には入力されない。なお、増幅部21aの出力のみ制御部16へ入力するとしたが、増幅部21b〜21dから出力された信号を制御部16に入力する構成としてもよい。
【0026】
各増幅部21a〜21dの出力が“L”から“H”に変化するタイミングは、RFIDタグ2からの電波が各受信アンテナ12a〜12dに到達した時間によって決まる。計測部22は、各増幅部21a〜21dから入力された信号の時間差を検出し、それぞれの時間差と受信アンテナ12a〜12dの座標とに基づいてバックスキャッタ信号を返したRFIDタグ2の座標を算出する。ここで算出される座標は、RFIDタグ位置検出装置1を基準とした相対的な座標である。計測部22は、算出した相対座標値を制御部16へ出力する。
【0027】
[時間計測]
図3に計測部22の概略ブロック図を示している。計測部22は、4つのTDC(Time to Digital Converter)23(23a,23b,23c,23d)および演算部24を備えている。
【0028】
各TDC23a〜23dは、Start入力用の端子と、Stop入力用の端子と、出力端子とを有している。各TDC23a〜23dは、Start入力が“L”から“H”に変化した後に、Stop入力が“L”から“H”に変化するまでの時間に応じたデジタル値を出力する。近年は、180nmプロセスのCMOS(Complementary Metal Oxide semiconductor)技術を使用して、10ps程度の測定分解能が得られている。製造プロセスが微細化すれば、さらに短い時間を測定する分解能を得ることができる。
【0029】
各TDC23a〜23dのStart入力用の端子は、制御部16と接続されている。TDC23aのStop入力用の端子は、増幅部21aと接続されている。TDC23b〜23dのStop入力用の端子も同様に、それぞれ増幅部21b〜21dと接続されている。各TDC23a〜23dの出力端子は、演算部24に接続されている。
【0030】
各TDC23a〜23dの動作を図4に示す信号波形を参照して説明する。
【0031】
先ず、各TDC23a〜23dへのStart入力およびStop入力は、全て“L”になっている。制御部16からのStart入力が“H”になると、各TDC23a〜23dがそれぞれ時間測定を開始する。TDC23aへのStop入力が“H”になると、TDC23aは、計測時間としてtaを出力する。次に、TDC23cへのStop入力が“H”になると、TDC23cは、計測時間としてtcを出力する。TDC23dへのStop入力が“H”になると、TDC23dは、計測時間としてtdを出力する。TDC23bへのStop入力が“H”になると、TDC23bは、計測時間としてtbを出力する。
【0032】
演算部24は、図示しない記憶部を備えており、この記憶部に記憶されたプログラムに従って動作し、入力された各計測時間ta,tb,tc,tdから、各信号の到達時間差を算出する。受信アンテナ12aと受信アンテナ12bの到達時間差tbaは、tb−taから求まり、受信アンテナ12aと受信アンテナ12cの到達時間差tcaは、tc−taから求まり、受信アンテナ12aと受信アンテナ12dの到達時間差tdaは、td−taから求まる。
【0033】
このように各到達時間差tba,tca,tdaを求めた後、受信アンテナ12a〜12dの座標を用いて、バックスキャッタ応答を返したRFIDタグ2の座標を算出する。ここで算出する座標は、RFIDタグ位置検出装置1からの相対的な座標である。
【0034】
上記のように制御部16は、各TDC23a〜23dへのStart入力を“H”にすることで、計測部22に時間計測を開始させる。各TDC23a〜23dへのStart入力を“H”にするタイミングは、受信アンテナ12aから制御部16に入力される信号に応じて決定されるが、その決定方法については後述する。
【0035】
[座標演算]
図5を用いてRFIDタグ2の座標演算について説明する。
受信アンテナ12aの座標は(xa,ya,za)、受信アンテナ12bの座標は(xb,yb,zb)、受信アンテナ12cの座標は(xc,yc,zc)、受信アンテナ12dの座標は(xd,yd,zd)で既知であり、演算部24が有する記憶部等に予め記憶されている。
【0036】
バックスキャッタ応答を返したRFIDタグ2の座標をP点(xP,yP,zP)とし、電波の伝達速度をCとすると、各受信アンテナ12a〜12dの座標と到達時間差tba,tca,tdaとを用いて下記式が成立する。
【数1】
【0037】
【数2】
【0038】
【数3】
【0039】
xP,yP,zP以外は既知の値であるため、上記3つの連立方程式を解くことにより、xP,yP,zPの値を求めることができる。この非線形連立方程式は、ニュートン法等の数値計算方法を使用することによって解を求めることができる。各受信アンテナ12a〜12dが同一平面に配置されている場合は、解が2つ存在する。送信アンテナ11がz=0となる面にあるなら、アンテナ利得の高い側にある解(正の解)を有効とすればよい。このようにすることにより、バックスキャッタ応答を返したRFIDタグ2の相対座標を取得することができる。
【0040】
ここで、RFIDタグ位置検出装置1とRFIDタグ2との通信について、図6を用いて説明する。
本実施形態におけるRFIDタグ位置検出装置1とRFIDタグ2とは、近年広く普及しつつあるEPCglobalのClass1Generation2規格(以下、C1G2規格)に従って通信するものとする。
【0041】
図6の上段は、RFIDタグ位置検出装置1の送信データであり、斜線を付した部分は搬送波のみが送信されている状態を示している。図6の下段は、RFIDタグ2の送信データである。C1G2規格の通信においては、先ずRFIDタグ位置検出装置1が搬送波を送信する。RFIDタグ2は、この搬送波を受信することによって起動する。
【0042】
RFIDタグ位置検出装置1は、プリアンブル(P)に引き続き、読取り開始を知らせるQuery(Q)を送信する。RFIDタグ2は、プフアンブル(P)を受信すると、受信速度を決定して、引き続くデータを受信できるように同期を取り、Query(Q)を受信すると、そのQuery(Q)の内容に従った設定を行う。その後、C1G2規格では、RFIDタグ2はランダムに選択したスロットで応答を送信するが、本実施形態では、RFIDタグ2が直ちに応答を送信するとして説明する。
【0043】
RFIDタグ2は、Query(Q)を受信した後、プリアンブル(P)に引き続き、16ビットの擬似乱数であるRN16を送信する。RN16は、以後の通信の間、保持されており、暗号文字列として使用される。RFIDタグ位置検出装置1は、プリアンブル(P)とRN16とを受信すると、フレーム同期を取るためのFrame−Sync(F)に引き続き、正しく受信できたことを知らせるACKを送信する。RFIDタグ2は、ACKを受信すると、プリアンブル(P)とデータ(Data)とCRC(Cyclic Redundancy Check)を送信する。このデータ(Data)の中に、RFIDタグ2毎に固有の識別情報、すなわちC1G2規格のEPC(Electronic Product Code)が含まれている。CRCは、データ伝送の誤りを検出するために付加する符号である。
【0044】
RFIDタグ位置検出装置1は、プリアンブル(P)、データ(Data)、CRCを受信すると、そのCRCを用いて伝送エラーの有無を検出する。その結果、正しく受信したと判断したときは、Frame−sync(F)に引き続き、QueryRep(QR)を送信する。一方、正常に受信できなかったと判断した場合は、QueryRep(QR)に代えて、正常に受信できなかったことを通知するNAKを送信し、RFIDタグ2に再送を要求する。RFIDタグ位置検出装置1の交信領域内にあるRFIDタグ2が1つだけのときは、ここまでの処理で通信が完了する。
【0045】
RFIDタグ位置検出装置1の交信領域内にRFIDタグ2が複数ある場合は、QueryRep(QR)の後に、別のRFIDタグ2がプリアンブル(P)とRN16とを送信する。RFIDタグ位置検出装置1は、RN16を受信すると、Frame−Sync(F)とACKとを送信し、これを受信したRFIDタグ2がプリアンブル(P)、データ(Data)およびCRCを送信する。RFIDタグ位置検出装置1は、データ(Data)を正常に受信すると、Frame−Sync(F)を送信する。
このような処理を繰り返すことによって、RFIDタグ位置検出装置1は、交信領域内にある複数のRFIDタグ2の識別情報を検出する。
【0046】
図7にRFIDタグ2がRFIDタグ位置検出装置1へ送信するプリアンブルの波形を示している。なお、図7は、C1G2規格でFM0符合を使用するときのプリアンブルである。FM0符合においては、“0”を表すときは1ビットの中心でレベルを“H”から“L”または“L”から“H”に反転させ、“1”を表すときは1ビットの中でレベルを一定に保ち、変化させない。また、あるビットから次のビットに切り替わるときにレベルを反転させる。“V”は、FM0符合のルールに従わないビットであり、プリアンブルの中だけに表れるものである。
【0047】
通常、プリアンブルの先頭においては、ビット同期をとるために、同じパターンが繰り返される。その後、別の決められたパターンを使用して、プリアンブルの後に続く情報との境目がわかるようにしている。図7では、“0”が5つ連続で現れている箇所がビット同期に使用され、その後の“1010V1”より後がデータとなる。
【0048】
このように、RFIDタグ位置検出装置1は、ACKを送信した後に識別情報を含むデータを受信するとの手順で通信する。したがって制御部16は、ACK送信後のプリアンブルを受信し、ビット同期をとった後においては、受信信号のレベルが変化するタイミングを予想できる。制御部16は、ビット同期をとって“V”を検出した直後、受信信号レベルが“L”から“H”に最初に変化する前に各TDC23a〜23dのStart入力を一斉に“H”にすることで、各受信アンテナ12a〜12dの受信信号のレベルが次に“H”に変化するまでの時間ta,tb,tc,tdを測定することができる。
【0049】
なお、図2のブロック図では、増幅部21aの出力を制御部16に入力して、RFIDタグ2からの受信データの取得を行っている。RFIDタグ2から受信アンテナ12aまでの距離が最短ではなく、RFIDタグ2から他の受信アンテナ12b〜12dまでの距離の方が短いこともある。各受信アンテナ12a〜12dが図5のように配置されているとき、受信アンテナ12aから最も遠くにある受信アンテナが受信アンテナ12dであるとすると、受信アンテナ12aと受信アンテナ12dの最大到達時間差tmは、下記の式で表すことができる。
【数4】
【0050】
他の受信アンテナ12aの最も遠くにある受信アンテナが他のアンテナである場合でも、同様の計算式にて受信アンテナ12aとそのアンテナとの最大到達時間差tmを求めることができる。
【0051】
これらを考慮し、“V”が検出された直後において受信信号のレベルが“L”から“H”に変化すると予想されるタイミングからtmより前の時間に、各TDC23a〜23dへのStart入力を“H”にすればよい。言い換えると、時間測定を開始するタイミングは、最大受信アンテナ間距離を電波が伝達する時間より後に各受信アンテナ12a〜12dの受信信号レベルが変化するように設定すればよい。
【0052】
また、測定時間が長すぎると、次の受信信号レベルの変化点が現れてしまうので、次の変化点が現れる前に測定を終了することが好ましい。伝送速度と符号化方式により、信号レベルの変化点が現れる時間間隔が決まるので、これから測定終了時間を決めればよい。このようにすることによって、各受信アンテナ12a〜12dとRFIDタグ2の配置に関係無く、全ての受信アンテナ12a〜12dに到達する信号のレベル変化タイミングを捉えることができる。そして、測定した時間差からRFIDタグ2の位置を特定することができる。
【0053】
このように、RFIDタグ位置検出装置1は、識別情報を含むデータのプリアンブルを利用してRFIDタグ2の位置を検出するため、RFIDタグ2の識別情報と位置を一度に検出することができる。複数のRFIDタグ2の識別情報を検出した場合は、それぞれの識別情報に対応する位置も検出することができる。
【0054】
なお、本実施形態では“V”の位置で各TDC12a〜12dのStart入力を“H”にするが、ビット同期が取れた後であれば、任意の受信信号レベルの変化点付近で同様に時間を測定することができる。
【0055】
[表示部への情報表示]
さて、RFIDタグ位置検出装置1は、RFIDタグ2の相対座標を算出し、その相対座標と、同座標の算出時にRFIDタグ2から受信した識別情報あるいはそれに基づいて特定される情報を関連付けて表示部15に表示する機能を有している(出力手段)。
図8は、RFIDタグ位置検出装置1の表示部15に表示される画像を説明するための模式図である。表示部15は、図示したようにRFIDタグ位置検出装置1の背面(カメラ部13のレンズ等が設けられた面と反対側の面)に設けられている。
【0056】
図中の30は、それぞれRFIDタグ2が取り付けられた物品であり、各RFIDタグ2はいずれもRFIDタグ位置検出装置1の交信領域内にあるものとする。表示部15には、カメラ部13で撮影された画像が表示され、各RFIDタグ2との通信によって検出した各RFIDタグ2の相対座標に対応する画像上には、各RFIDタグ2から検出した識別情報に基づく情報31が重ね合わせて(関連付けて)表示される。各情報31は、各RFIDタグ2から検出した識別情報そのままでもよいが、その識別情報に紐付けられた物品情報としてもよい。この場合、例えば制御部16の記憶部に識別情報と物品情報との対応を示すテーブルを予め記憶しておき、そのテーブルを参照して識別情報に紐付けられた物品情報を特定すればよい。このように情報31を物品情報とすれば、表示部15に映し出された物品の種別を認識し易くなる。
【0057】
情報31の表示に関する各部の動作を、図9のフローチャートに沿って説明する。
上位機器からコマンドを受信するなどして処理開始が指示されると、カメラ部13により画像が撮影され、それが表示部15に表示される。その後、図9に示す処理が開始される。
【0058】
開始当初においては、先ず前述した方法により交信領域内にあるRFIDタグ2の位置が検出される(ステップ:ST1〜ST11)。すなわち、送信アンテナ11からの搬送波の送信が開始されて(ST1)、交信領域内にあるRFIDタグ2が起動される。次に、送信アンテナ11からQuery(Q)が送信され(ST2)、これに対するRN16が受信アンテナ12aにより受信される(ST3)。その後、送信アンテナ11からACKが送信され(ST4)、応答を返したRFIDタグ2の識別情報を含むデータの受信が開始される(ST5)。そして、そのRFIDタグ2から送信されるプリアンブル(P)に含まれる“1010V”の受信中に、制御部16が前述したタイミングで各TDC23a〜23dのStart入力を“H”にする(ST6)。その結果、Start入力が“H”になってから各Stop入力が“H”になるまでの時間ta,tb,tc,tdが各TDC23a〜23dから演算部24に出力される(ST7)。演算部24は入力された計測時間ta,tb,tc,tdに基づいて受信アンテナ12a〜12d毎の到達時間差tba,tca,tdaを算出し(ST8)、それらに基づいて応答を返したRFIDタグ2の相対座標を算出する(ST9)。相対座標の算出が行われた後に応答を返したRFIDタグ2からの識別情報を含むデータの受信が完了し(ST10)、送信アンテナ11からQueryRep(QR)が送信される(ST11)。
【0059】
なお、ST8とST9における演算がST10におけるデータの受信完了前に行われるとしたが、ST8とST9における演算がST10におけるデータの受信完了後に行われてもよい。
【0060】
ST11の後、制御部16により、ST9で算出された相対座標が画面への表示座標に変換され、変換後の座標にRFIDタグ2から受信した識別情報に基づく情報が表示される(ST12)。その後、図示したフローチャートに沿う処理を開始してからQueryRep(QR)を所定回数送信したかを判断し、所定回数送信していない場合は(ST13の“N”)、交信領域内にある他のRFIDタグ2を対象としてST3〜ST12の処理が行われる。一方、QueryRep(QR)を所定回数送信し終えた場合は(ST13の“Y”)、一連の処理が終了する。
【0061】
ST12にて行う座標変換を説明するための図を図10に示している。x−z面を上段に、y−z面を下段右に、表示部15への画面表示座標を下段左に示す。相対座標を検出したRFIDタグ2の座標をP点(xP,yP,zP)とし、カメラ部13の撮像点の座標をe点(xe,ye,ze)とし、ze=0としている。カメラ部13の画像の取得範囲は、x−z面では±θの範囲であり、y−z面では±φの範囲である。
【0062】
カメラ部13によって撮像される画像はx−y面で表されるため、RFIDタグ2の位置を表示するためには、三次元座標を画像座標に変換する必要がある。
【0063】
カメラ部13の撮像点からRFIDタグ2までのz軸上の距離はzPである。カメラ部13で撮像される画像の距離zPにおけるx軸の範囲は、−zP/cosθ〜zP/cosθとなる。xw=zP/cosθとすると、−xw≦(距離zPにおけるx軸の取得範囲)≦xwとなる。カメラ部13の撮像画像におけるRFIDタグ2のx座標は、xP−xeとして表される。
【0064】
カメラ部13で取得する距離zPにおけるy軸の範囲は、−zP/sinφ〜zP/sinφとなる。yw=zP/sinφとすると、−yw≦(距離zPにおけるy軸の取得範囲)≦ywとなる。カメラ部13の撮像画像におけるRFIDタグ2のy座標は、yP−yeとして表される。
【0065】
表示部15に画像を表示するときは、(xw,yw)を表示画像の右上隅とし、(−xw,yw)を表示画像の左上隅とし、(xw,−yw)を表示画像の右下隅とし、(−xw,−yw)を表示画像の左下隅として、上記のように算出したRFIDタグ2の表示座標(xP−xe,yP−ye)に相当する位置に、当該RFIDタグ2に対応する情報31を表示する。
【0066】
このようにすることで、複数のRFIDタグ2の識別情報と相対位置を取得し、取得した複数のRFIDタグ2の場所を人に分かり易く報知することができ、入出荷の物品管理や棚卸を効率良く行うことができる。
【0067】
また、表示画像中のRFIDタグ2があるはずの場所に、識別情報等の情報31が表示されないときは、その場所にあるはずのRFIDタグ2が読み取れなかったと判断できる。そして、直ちに読み取れなかったRFIDタグ2の位置を知ることができる。
【0068】
[タグ位置へのレーザ照射]
RFIDタグ位置検出装置1は、RFIDタグ2の位置を検出し、その位置を照射部14からのレーザ照射で示す機能を有している。
図11は、照射部14によりレーザ光(光線)が照射される様子を示す模式図である。この機能は、既に各RFIDタグ2の識別情報が判明しており、複数のRFIDタグ2の中から特定のRFIDタグ2を探し出すときなどに使用する。すなわち、RFIDタグ位置検出装置1が、特定の識別情報を記憶しているRFIDタグ2dのみが応答するコマンドを送信し、応答したRFIDタグ2dの相対座標を取得し、取得した相対座標に向けて照射部14からレーザ光42を照射して、RFIDタグ2dの位置を知らせる。
【0069】
レーザ光の照射に関する各部の動作を、図12のフローチャートに沿って説明する。
上位機器からコマンドを受信するなどして処理開始が指示されると、そのコマンドで示されるRFIDタグ2を処理対象として図12に示す処理が開始される。
【0070】
開始当初においては、先ず処理対象であるRFIDタグ2の位置が検出される(ステップ:ST21〜ST32)。すなわち、送信アンテナ11からの搬送波の送信が開始されて(ST21)、交信領域内にあるRFIDタグ2が起動される。次に、送信アンテナ11から処理対象であるRFIDタグ2を指定したSelectコマンドが送信される(ST22)。このSelectコマンドを受信したRFIDタグ2は、同コマンドにて自身が指定されている場合に限り、以降のQuery(Q)等に応答する。
【0071】
続いて、送信アンテナ11からQuery(Q)が送信され(ST23)、これに対して処理対象のRFIDタグ2が返すRN16が、受信アンテナ12aにより受信される(ST24)。その後、送信アンテナ11からACKが送信され(ST25)、処理対象のRFIDタグ2の識別情報を含むデータの受信が開始される(ST26)。そして、そのRFIDタグ2から送信されるプリアンブル(P)に含まれる“1010V”の受信中に、制御部16が前述したタイミングで各TDC23a〜23dのStart入力を“H”にする(ST27)。その結果、Start入力が“H”になってから各Stop入力が“H”になるまでの時間ta,tb,tc,tdが各TDC23a〜23dから演算部24に出力される(ST28)。演算部24は、入力された計測時間ta,tb,tc,tdに基づいて受信アンテナ12a〜12d毎の到達時間差tba,tca,tdaを算出し(ST29)、それらに基づいて処理対象のRFIDタグ2の相対座標を算出する(ST30)。相対座標の算出が行われた後に処理対象のRFIDタグ2からの識別情報を含むデータの受信が完了し(ST31)、送信アンテナ11からQueryRep(QR)が送信される(ST32)。
【0072】
なお、ST29とST30における演算がST31におけるデータの受信完了前に行われるとしたが、ST29とST30における演算がST31におけるデータの受信完了後に行われてもよい。
【0073】
ST32の後、制御部16により、ST9で算出された相対座標がレーザ光の照射座標に変換され、変換後の座標に照射部14からレーザ光が照射される(ST33)。以上で一連の処理が終了する。
【0074】
ここで、照射部14の構造および照射座標の算出方法について説明する。
図13は、照射部14の概略構造を示す模式図である。照射部14は、レーザ光を出力する光源40と、レーザ光の照射角度を調整するミラー41とを備えている。光源40は、ミラー41に向かってレーザ光を出力し、ミラー41でレーザ光の進行方向を変える。図示した矢印42は、RFIDタグ位置検出装置1から照射されるレーザ光の進行方向を示している。ミラー41は、x軸方向の回転軸43とy軸方向の回転軸44で回転可能となるように支持されている。各回転軸43,44における回転角度を調整してミラー41の向きを変えることにより、ミラー41で反射されるレーザ光を所望の方向に向けることができる。
【0075】
ST33にて行う座標変換とミラー41の角度との関係を説明するための図を、図14に示している。x−z面を上段に、y−z面を下段右に、x,y,z軸からなる三次元座標系を下段左に示す。相対座標を取得した処理対象のRFIDタグ2の座標をP点(xP,yP,zP)とし、レーザ光を向ける座標をf点(xf,yf,zf)とし、zf=0としている。
【0076】
ミラー41の角度を調整する前の初期照射方向は、f点からx−y面に垂直なz方向であるとする。そうすると、x−z面においてはf点からθ1=arctan{zP/(xP−xf)}方向にP点が所在し、y−z面ではf点からφ1=arctan{zP/(yP−xf)}方向にP点が所在することになる。したがって、ミラー41をy軸方向の回転軸43を軸としてθ1回転させ、x軸方向の回転軸44を軸としてφ1回転させることにより、処理対象のRFIDタグ2の座標P点に向けてレーザ光を照射することができる。
【0077】
このように特定のRFIDタグ2に向けてレーザ光が照射されれば、探しているRFIDタグ2の場所を容易に知ることができる。なお、算出した相対座標には計測や演算による誤差が含まれるため、RFIDタグ2の実際の座標と算出した座標とが若干異なることがある。そのため、レーザ光を拡散させて、照射範囲を広げるようにしてもよい。
【0078】
[タグ不在の報知]
RFIDタグ位置検出装置1は、予め定められた設定範囲外にそれまで同範囲内に在ったRFIDタグ2が出たことに応じて、その旨を報知する機能(報知手段)を有している。
図15は、当該機能を説明するための模式図である。送信アンテナ11および受信アンテナ12a〜12dによる交信領域51の内部に、設定範囲52を定める。設定範囲52の相対座標は、制御部16の記憶部等に予め記憶しておく。先ず、設定範囲52の内側にRFIDタグ2eがあり、その後、RFIDタグ2eが設定範囲52の外側に移動したとする。当該機能において、RFIDタグ位置検出装置1は、RFIDタグ2eが設定範囲52内から設定範囲52外に出たか否かを検出し、設定範囲52外に出たことを検出したときに、その旨を報知する。
【0079】
当該機能に関する各部の動作を、図16のフローチャートに沿って説明する。
上位機器からコマンドを受信するなどして処理開始が指示されると、図16に示す処理が開始される。
【0080】
開始当初においては、先ず前述した方法により交信領域51内に在るRFIDタグ2の位置が検出される(ステップ:ST41〜ST51)。すなわち、送信アンテナ11からの搬送波の送信が開始されて(ST41)、交信領域内に在るRFIDタグ2が起動される。次に、送信アンテナ11からQuery(Q)が送信され(ST42)、これに対するRN16が受信アンテナ12aにより受信される(ST43)。その後、送信アンテナ11からACKが送信され(ST44)、応答を返したRFIDタグ2の識別情報を含むデータの受信が開始される(ST45)。そして、そのRFIDタグ2から送信されるプリアンブル(P)に含まれる“1010V”の受信中に、制御部16が前述したタイミングで各TDC23a〜23dのStart入力を“H”にする(ST46)。その結果、Start入力が“H”になってから各Stop入力が“H”になるまでの時間ta,tb,tc,tdが各TDC23a〜23dから演算部24に出力される(ST47)。演算部24は入力された計測時間ta,tb,tc,tdに基づいて受信アンテナ12a〜12d毎の到達時間差tba,tca,tdaを算出し(ST48)、それらに基づいて応答を返したRFIDタグ2の相対座標を算出する(ST49)。相対座標の算出が行われた後に応答を返したRFIDタグ2からの識別情報を含むデータの受信が完了し(ST50)、送信アンテナ11からQueryRep(QR)が送信される(ST51)。
【0081】
なお、ST48とST49における演算がST50におけるデータの受信完了前に行われるとしたが、ST48とST49における演算がST50におけるデータの受信完了後に行われてもよい。
【0082】
ST51の後、制御部16により、ST49で算出された相対座標と上記記憶部に記憶された設定範囲52の座標とに基づいて、当該RFIDタグ2が設定範囲52内に在るか否かが判定される(ST52)。その結果、設定範囲52内に在ると判定されたならば(ST52の「Y」)、交信領域51内にある他のRFIDタグ2を対象としてST42〜ST52の処理が行われる。一方、設定範囲52内に無いと判定されたならば(ST52の「N」)、そのRFIDタグ2が設定範囲52外に出たことが報知されて(ST53)、一連の処理が終了する。
【0083】
ST53における報知は、表示部15にメッセージ等を表示することで行ってもよいし、RFIDタグ位置検出装置1にスピーカ等をつなげて音声を出力することで行ってもよい。このような報知により、RFIDタグ2が決められたエリアの外に出されたことを知らせることができる。
【0084】
なお、RFIDタグ2が設定範囲52内から設定範囲52外に出たときの説明をしたが、設定範囲52外から設定範囲52内に移動してきたことを検出したときに、その旨を報知するようにしてもよい。
【0085】
以上説明したように、本実施形態におけるRFIDタグ位置検出装置1は、RFIDタグ2からの応答電波が4つの受信アンテナ12a〜12dに到達する時間差を用いてRFIDタグ2の位置を検出する。このような構成であれば、RFIDタグ2の位置検出に際し、RFIDタグ位置検出装置1を複数の位置に移動させる必要がない。したがって、RFIDタグ2の位置を迅速に検出できる。さらに、RFIDタグ位置検出装置1にRFIDタグ2との通信を複数回行わせる必要がないので、電波使用効率が悪くなることもない。
【0086】
また、RFIDタグ位置検出装置1は、位置を検出したRFIDタグ2に関する情報を、表示部15の表示画像上の対応する位置に重ね合わせて表示する機能や、検出された位置に向けてレーザ光を照射する機能を有する。このような機能を用いれば、特定のRFIDタグ2の所在を極めて容易に確認できる。
【0087】
また、RFIDタグ位置検出装置1は、所定範囲に在るRFIDタグ2が同範囲から出たことを検出し、報知する機能を有する。このような機能を用いれば、所定範囲内におけるRFIDタグ2の入出を極めて容易に管理できる。
【0088】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0089】
各受信アンテナ12a〜12dから計測部22までの間の回路で、回路遅延のばらつきや配線長のばらつき等が生じることがある。例えば、受信信号が、受信アンテナ12aから入力されてTDC23aに入力される時間と、受信アンテナ12bから入力されてTDC23bに入力される時間には、若干の差が生じ得る。この若干の差を補正すると、演算した相対座標と実際の座標のずれを小さくすることができる。
【0090】
そこで、本実施形態においては、上記ずれを最小減に止めるべく、到達時間差tba,tca,tdaの補正値を取得する機能(取得手段)を演算部24に設け、取得した補正値にて補正した後の到達時間差tba,tca,tdaを用いてRFIDタグ2の相対座標を演算する。
【0091】
各受信アンテナ12a〜12dの間で生じる到達時間差のずれを補正する一例について説明する。
補正値の取得は、例えば補正モードなるモードでRFIDタグ位置検出装置1を起動した際に実行される。その際、予め受信アンテナ12aと受信アンテナ12bから等距離となる場所にRFIDタグ2を配置しておく。この状態で、第1の実施形態にて説明した方法にて相対座標の取得を行う。
【0092】
このとき、受信アンテナ12aと受信アンテナ12bへの電波の到達時間は同じであるため、回路における伝達遅延差がTDC23aとTDC23bの入力時間差Δtbaとして現れる。この時間差Δtbaは、補正値として例えば演算部24の記憶部に記憶される。回路における伝達遅延差が無い場合は、Δtba=0である。さらに、受信アンテナ12aと受信アンテナ12c、受信アンテナ12aと受信アンテナ12dとの間でも同様に補正値である時間差Δtca,Δtdaを取得する。
【0093】
補正値を取得した後、通常の動作モードにおいてRFIDタグ2の相対座標を算出する際には、演算部24で取得した到達時間差tba,tca,tdaからそれぞれ上記時間差Δtba,Δtca,Δtdaが差し引かれて補正され、補正後の値を用いてRFIDタグ2の相対座標が演算される。
【0094】
次に、到達時間差のずれを補正する他の例について説明する。
この例では、先ずRFIDタグ2を予めその相対座標が判明している位置に配置しておく。そうすると、このRFIDタグ2と各受信アンテナ12a〜12dとの距離が決まる。このとき、このRFIDタグ2と各受信アンテナ12a〜12dまでの距離と電波の伝達速度から、各受信アンテナ12a〜12d間の理論的な受信到達時間差を算出することができる。この時間差は、算出後の値をRFIDタグ位置検出装置1に外部から入力するようにしてもよいし、制御部16にて算出してもよい。
【0095】
次に、補正モードにおいて上記RFIDタグ2の相対座標の取得を行い、そのときの受信到達時間差と理論的な受信到達時間差とを比較して、それぞれの差分を算出する。算出した差分は、例えば演算部24の記憶部に補正値として記憶する。
【0096】
以後、通常の動作モードにおいてRFIDタグ2の相対座標を演算する際には、上記記憶部に記憶したそれぞれの補正値を用いて、最初の例と同様に到達時間差tba,tca,tdaを補正する。
【0097】
以上説明したように、本実施形態においては、算出した到達時間差tba,tca,tdaを補正する機能を設け、補正後の到達時間差を用いてRFIDタグ2の相対位置を検出するようにした。このようにしたことにより、回路遅延のばらつきや配線長のばらつきによる誤差が吸収され、RFIDタグ2の位置検出の精度が大幅に向上する。
【0098】
なお、第1の実施形態と同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0099】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
第1,第2の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0100】
本実施形態においては、RFIDタグ2の絶対座標を算出する機能を、第1,第2の実施形態におけるRFIDタグ位置検出装置1の演算部24に設ける。
絶対座標を算出するために、予め当該RFIDタグ位置検出装置1を使用する建物内の柱等の固定された物体にRFIDタグ2を取り付けておき、このRFIDタグ2の絶対座標(xh,yh,zh)を取得して、演算部24の記憶部等に予め記憶しておく。但し、当該固定的な物体に取り付けられたRFIDタグ2に絶対座標を記憶させておき、これを任意のタイミングでRFIDタグ位置検出装置1により読み取ることにより、同RFIDタグ2の絶対座標を取得してもよい。
【0101】
RFIDタグ位置検出装置1は移動せずに、絶対座標の知られているRFIDタグ2と絶対座標の知られていないRFIDタグ2との通信を行い、それぞれの相対座標を取得する。取得した絶対座標の知られているRFIDタグ2の相対座標は(xg,yg,zg)であり、絶対座標の知られていないRFIDタグ2の相対座標は(xP,yP,zP)であるとする。
【0102】
ここまでに取得した座標から、演算部24は、絶対座標の知られていないRFIDタグ2の絶対座標を(xh+xP−xg,yh+yP−yg,zh+zP−zg)と算出することができる。
【0103】
このように算出した絶対座標は、例えば表示部15への表示やスピーカからの音声出力によって報知する。このようにすることにより、RFIDタグ位置検出装置1を基準としたRFIDタグ2の相対座標だけでなく、建物等を基準としたRFIDタグ2の絶対座標をも知ることができる。
【0104】
なお、第1,第2の実施形態と同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0105】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。
第1〜第3の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0106】
本実施形態は、前記各実施形態における計測部の構成が異なるだけで、それ以外の構成は同じである。そのため、計測部についてのみ詳述する。
【0107】
図17に本実施形態における計測部の概略ブロック図を示している。このブロック図は、図3で示した計測部22を計測部122に置き換えたものであり、TDCのStart入力に制御部16からの信号を使用しない構成を実現するものである。
【0108】
計測部122は、TDC125〜130と演算部124とで構成されている。TDC125は、増幅部21aの出力をStart入力とし、増幅部21bの出力をStop入力とし、Start入力が“H”になってからStop入力が“H”になるまでの時間tba+を演算部124に出力する。TDC126は、増幅部21bの出力をStart入力とし、増幅部21aの出力をStop入力とし、Start入力が“H”になってからStop入力が“H”になるまでの時間tba−を演算部124に出力する。
【0109】
TDC127は、増幅部21aの出力をStart入力とし、増幅部21cの出力をStop入力とし、Start入力が“H”になってからStop入力が“H”になるまでの時間tca+を演算部124に出力する。TDC128は、増幅部21cの出力をStart入力とし、増幅部21aの出力をStop入力とし、Start入力が“H”になってからStop入力が“H”になるまでの時間tca−を演算部124に出力する。
【0110】
TDC129は、増幅部21aの出力をStart入力とし、増幅部21dの出力をStop入力とし、Start入力が“H”になってからStop入力が“H”になるまでの時間tda+を演算部124に出力する。TDC130は、増幅部21dの出力をStart入力とし、増幅部21aの出力をStop入力とし、Start入力が“H”になってからStop入力が“H”になるまでの時間tda−を演算部124に出力する。
【0111】
RFIDタグ2とRFIDタグ位置検出装置1の配置によって、増幅部21aと増幅部21bの出力が“H”になる順番が異なる。増幅部21aの出力が先に“H”になった場合、TDC125で受信アンテナ12a,12bの到達時間差が計測されることになり、TDC126では増幅部21bの出力が“H”になった後、次に増幅部21aの出力が“H”になるまでの時間が計測されるので、時間tba−は時間tba+よりも長くなる。逆に増幅部21bの出力が先に“H”になった場合、TDC126で受信アンテナ12a,12bの到達時間差が計測されることになり、TDC125では増幅部21aの出力が“H”になった後、次に増幅部21bの出力が“H”になるまでの時間が計測されるので、時間tba+は時間tba−よりも長くなる。これに鑑み、演算部124は、入力された時間tba+,tba−のうち、短い一方を演算に使用する時間として採用する。
【0112】
同様に、時間tca+,tca−の短い一方を演算に使用する時間として採用し、時間tda+,tda−の短い一方を演算に使用する時間として採用する。
【0113】
計測部の動作を説明すべく、各TDC125〜130の入出力波形の一例を図18に示す。図中のa〜dは、それぞれ増幅部21a〜21dの出力信号である。増幅部21aの出力が“H”になると、TDC125とTDC127とTDC129のStart入力が“H”になり、時間の計測を開始する。
【0114】
その後、増幅部21cの出力が“H”になると、TDC127のStop入力が“H”になり、TDC128のStart入力が“H”になる。TDC127は、Stop入力が“H”になったので、時間tca+を出力する。
【0115】
次に、増幅部21dの出力が“H”になると、TDC129のStop入力が“H”になり、TDC130のStart入力が“H”になる。TDC129は、Stop入力が“H”になったので、時間tda+を出力する。
【0116】
次に、増幅部21bの出力が“H”になると、TDC125のStop入力が“H”になり、TDC126のStart入力が“H”になる。TDC125は、Stop入力が“H”になったので、時間tba+を出力する。
【0117】
図18の例では、TDC126とTDC128とTDC130は、時間測定が終了していない。時間測定可能な最大時間内に終了しない場合は、TDC126,128,130による測定終了時までの時間(上記最大時間)をそれぞれtba−,tca−,tda−とする。
【0118】
演算部124は、上記した通り、tba+とtba−、tca+とtca−、tda+とtda−を比較し、短い一方を座標演算用に採用する。採用した3つの時間は、各受信アンテナ12a〜12dへのRFIDタグ2からの応答の到達時間差である。演算部124は、これら到達時間差を用いて、応答したRFIDタグ2の相対座標を演算する。このような構成は、第1〜第3の実施形態いずれにも適用可能である。
【0119】
なお、第1〜第3の実施形態と同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0120】
(変形例)
上記各実施形態にて開示した構成は、種々変形実施可能である。具体的な変形例としては、例えば次のようなものがある。
【0121】
(1)上記各実施形態においては、受信アンテナ、復調部、および増幅部を4つずつ使用する場合を例示した。しかしながら、受信アンテナ、復調部、および増幅部の数は、5つ以上であってもよい。
受信アンテナ等が5つ以上ある場合は、例えばニュートン法に最小二乗法を組み合わせた演算方法を使用することにより、RFIDタグ2の相対座標を求めることができる。受信到達時間差を計測する数が多くなると、算出した相対座標が実際の座標に近づく傾向があるので、受信アンテナ、復調部、および増幅部を5つ以上使用することで、RFIDタグ位置検出装置の位置検出性能を高めることができる。
【0122】
(2)上記各実施形態では、制御部16や演算部24,124の記憶部に各処理用のプログラムが予め記憶されているものとして説明した。しかしながら、これに限らず各プログラムをネットワークからRFIDタグ位置検出装置にダウンロードしても良いし、同様の機能を記録媒体に記憶させたものをRFIDタグ位置検出装置にインストールしてもよい。記録媒体としては、CD−ROM等を利用でき、かつRFIDタグ位置検出装置が読み取り可能な記録媒体であれば、その形態は何れの形態であってもよい。またこのように予めインストールやダウンロードにより得る機能はRFIDタグ位置検出装置内部のOS(Operating System)等と協働してその機能を実現させるものであってもよい。
【0123】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0124】
1…RFIDタグ位置検出装置、2…RFIDタグ、11…送信アンテナ、12…受信アンテナ、13…カメラ部、14…照射部、15…表示部、16…制御部、17…発振部、18…変調部、19…電力増幅部、20…復調部、21…増幅部、22…計測部、23…TDC、24…演算部
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、RFID(Radio Frequency Identification)タグと無線通信を行いRFIDタグの位置を検出する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RFIDタグ(無線タグや応答器等とも称される)は、アンテナと無線通信部と記憶部を備えており、それぞれのRFIDタグにおける記憶部には各タグで重複しない識別情報が記憶されている。質問器(リーダライタとも称される)がRFIDタグに問合わせ信号を送信すると、RFIDタグは当該問合わせ信号に応じた処理を行う。例えば、RFIDタグが記憶している識別情報と、リーダライタからの問合わせ信号に含まれる識別情報とが一致した場合にだけ応答を返すRFIDタグが知られている。
【0003】
このような機能を有するRFIDタグは、物流業における物品管理を始めとし、様々な分野で使用されている。近年では、各種商品を販売する店舗において、RFIDタグを用いて商品の販売や在庫管理を行うシステムを導入した例もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−114003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大量の物品を扱う業種においては、物品の種類や個数の管理だけでなく、各物品がどの位置に所在するのかを容易に認識できるようにしたいとの要望がある。RFIDタグの位置を検出するには、リーダライタがRFIDタグと通信を行った絶対位置とそのときのRFIDタグの位置までの距離を取得する動作を少なくとも3箇所で行い、RFIDタグの絶対位置を算出する方法を採用し得る。
【0006】
しかしながら、上記の方法を採用した場合、リーダライタは少なくとも3箇所でリーダライタ自身の位置とRFIDタグまでの距離とを取得する必要があるため、RFIDタグの位置を求めるまでに比較的長い時間が必要となる。また、リーダライタが同じRFIDタグと少なくとも3回の通信を行う必要があるため、電波使用効率も悪くなる。
【0007】
このような事情から、迅速にRFIDタグの位置を検出するための手段を講じる必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態におけるRFIDタグ位置検出装置は、RFIDタグへ信号を送信する送信アンテナと、RFIDタグからの応答信号を受信する4つ以上の受信アンテナと、前記各受信アンテナが受信した応答信号に応じて出力する信号の時間差を計測し、計測した各時間差に基づいてRFIDタグが応答信号を送信した相対座標を演算する計測部とを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態におけるRFIDタグ位置検出装置とRFIDタグを説明するための概略斜視図。
【図2】同実施形態におけるRFIDタグ位置検出装置の概略ブロック図。
【図3】同実施形態における計測部の概略ブロック図。
【図4】同実施形態におけるTDCの動作を説明するための信号波形図。
【図5】同実施形態におけるRFIDタグの座標演算を説明するための図。
【図6】同実施形態におけるRFIDタグ位置検出装置とRFIDタグとの通信を説明するための図。
【図7】同実施形態におけるプリアンブルの波形を示す図。
【図8】同実施形態における表示部に表示される画像を説明するための模式図。
【図9】同実施形態における情報表示に関する各部の動作を示すフローチャート。
【図10】同実施形態における表示座標への座標変換を説明するための図。
【図11】同実施形態においてレーザ光が照射される様子を示す模式図。
【図12】同実施形態におけるレーザ光の照射に関する各部の動作を示すフローチャート。
【図13】同実施形態における照射部の概略構造を示す模式図。
【図14】同実施形態における座標変換とミラー角度の関係を説明するための図。
【図15】同実施形態におけるタグ不在の報知機能を説明するための模式図。
【図16】同実施形態におけるタグ不在の報知に関する各部の動作を示すフローチャート。
【図17】第4の実施形態における計測部の概略ブロック図。
【図18】同実施形態におけるTDCの動作を説明するための信号波形図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(第1の実施の形態)
[要部構成]
先ず、本実施形態におけるRFIDタグ位置検出装置1の要部構成について説明する。
図1は、RFIDタグ位置検出装置1とRFIDタグ2を説明するための概略斜視図であり、図2は、RFIDタグ位置検出装置1の概略ブロック図である。
【0011】
RFIDタグ位置検出装置1は、例えば図1に示したように直方体形状の筐体を有しており、その一面には、カメラ部13のレンズと照射部14の照射孔とが設けられている。このレンズおよび照射孔が設けられた面から電波が放射され、RFIDタグ2(2a,2b,2c・・・)との無線通信が行われる。
【0012】
RFIDタグ位置検出装置1の内部には、図2に示したように、送信アンテナ11、4つの受信アンテナ12(12a,12b,12c,12d)、カメラ部13、照射部14、表示部15、制御部16、発振部17、変調部18、電力増幅部19、復調部20(20a,20b,20c,20d)、増幅部21(21a,21b,21c,21d)、および計測部22が配置されている。
【0013】
制御部16は、図示しないCPU(Central Processing Unit)や記憶部を備えており、この記憶部に記憶されたプログラムに従って動作し、各部の制御を行う。すなわち制御部16は、カメラ部13、照射部14、表示部15、および計測部22の制御や、送信処理、受信処理およびパソコン等の上位機器との通信を行う。
【0014】
発振部17は、高周波信号を発生し、これを変調部18や各復調部20a〜20dに出力する。発振部17の発振周波数は、RFIDタグ2へ送信する搬送波の周波数と同値である。この発信周波数は、制御部16からの信号に応じて変更することができる。
【0015】
変調部18は、制御部16から出力された送信情報を発振部17の出力と合成して高周波信号を生成し、これを電力増幅部19に出力する。変調部18は、送信情報が無い場合には搬送波のみを出力することもある。
【0016】
電力増幅部19は、変調部18から入力された高周波信号を増幅して送信アンテナ11に出力する。
【0017】
送信アンテナ11は、電力増幅部19から出力された高周波信号を電波として空間に放射する。送信アンテナ11は、電波を特定の方向へ強く放射する特性を備えた指向性アンテナであり、例えば平面パッチアンテナを使用すればよい。
【0018】
各受信アンテナ12a〜12dは、受信した電波を高周波信号に変換し、それぞれ復調部20a〜20dに出力する。各受信アンテナ12a〜12dは、位置検出の精度の観点からは、点であることが理想であるが、現実的には受信電波の波長に依存する大きさが必要である。なお、利得の高い指向性アンテナを使用する必要は無い。そのため、誘電率の高い材質を用いて波長短縮し、小型化したアンテナを使用することが好ましい。
【0019】
また、各受信アンテナ12a〜12dは、送信アンテナ11の放射利得の低い方向に配置することが好ましい。RFIDタグ2は、空間から届く搬送波を電力として使用し、バックスキャッタ変調をして応答を返す。そのため、RFIDタグ位置検出装置1は、搬送波を送信しながらバックスキャッタ信号を受信する動作を行うことになる。送信アンテナ11から空間を経て各受信アンテナ12a〜12dへ回り込む電波の電力を抑えることにより、受信回路における送信回り込みをキャンセルする処理の負担を軽減することができる。
【0020】
RFIDタグ2から放射された電波は、空間を通過して各受信アンテナ12a〜12dに到達する。このとき、RFIDタグ2と各受信アンテナ12a〜12dとの距離が異なるため、各受信アンテナ12a〜12dへの到達時間差が発生する。自由空間中を伝播する電波の速度は、約3×108m/sある。例えば、RFIDタグ2および受信アンテナ12a間の距離と、RFIDタグ2および受信アンテナ12b間の距離との差が1mのときは、約3.3nsの到達時間差が生じ、同距離の差が10cmの場合は約330psの到達時間差が生じる。
【0021】
各受信アンテナ12a〜12dを同一平面上に配置する場合は、各受信アンテナ12a〜12dを頂点とする四角形としたときに、向かい合った角の和が180度にならないで、かつ、2つの対角線の中心が同じ点とならないように、各受信アンテナ12a〜12dを配置する。
【0022】
各受信アンテナ12a〜12dを同一平面状に配置しない場合は、各受信アンテナ12a〜12dを頂点が正四面体の頂点とならないように配置する。
【0023】
復調部20aは、受信アンテナ12aから出力される高周波信号と発振部17の出力を合成してベースバンド信号に変換し、これを増幅部21aに出力する。出力された信号は、一般的にはRSSI(Received Signal Strength Indication)と呼ばれる受信信号強度を測定するための振幅情報を含んでいる。各復調部20b〜20dも同様に、それぞれ受信アンテナ12b〜12dから出力される高周波信号と発振部17の出力を合成してベースバンド信号に変換し、これをそれぞれ増幅部21b〜21dに出力する。
【0024】
増幅部21aは、復調部20aから出力される信号を増幅して飽和させ、“H(High)”または“L(Low)”で表される2値情報として出力する。RFIDタグ2が返すバックスキャッタ信号は2値情報であるため、このようにしてもRFIDタグ2が返す応答情報を再生することができる。各増幅部21b〜21dも同様に、それぞれ復調部20b〜20dから出力されるベースバンド信号を増幅して出力する。なお、各増幅部21a〜21dに代えてコンパレータを用いてもよい。
【0025】
増幅部21aから出力された信号は、制御部16と計測部22に入力される。制御部16は、増幅部21aから出力された信号を受信データ(応答信号)に再生して、そのデータに応じた処理を行う。各増幅部21b〜21dから出力された信号も同様に、計測部22に入力されるが、制御部16には入力されない。なお、増幅部21aの出力のみ制御部16へ入力するとしたが、増幅部21b〜21dから出力された信号を制御部16に入力する構成としてもよい。
【0026】
各増幅部21a〜21dの出力が“L”から“H”に変化するタイミングは、RFIDタグ2からの電波が各受信アンテナ12a〜12dに到達した時間によって決まる。計測部22は、各増幅部21a〜21dから入力された信号の時間差を検出し、それぞれの時間差と受信アンテナ12a〜12dの座標とに基づいてバックスキャッタ信号を返したRFIDタグ2の座標を算出する。ここで算出される座標は、RFIDタグ位置検出装置1を基準とした相対的な座標である。計測部22は、算出した相対座標値を制御部16へ出力する。
【0027】
[時間計測]
図3に計測部22の概略ブロック図を示している。計測部22は、4つのTDC(Time to Digital Converter)23(23a,23b,23c,23d)および演算部24を備えている。
【0028】
各TDC23a〜23dは、Start入力用の端子と、Stop入力用の端子と、出力端子とを有している。各TDC23a〜23dは、Start入力が“L”から“H”に変化した後に、Stop入力が“L”から“H”に変化するまでの時間に応じたデジタル値を出力する。近年は、180nmプロセスのCMOS(Complementary Metal Oxide semiconductor)技術を使用して、10ps程度の測定分解能が得られている。製造プロセスが微細化すれば、さらに短い時間を測定する分解能を得ることができる。
【0029】
各TDC23a〜23dのStart入力用の端子は、制御部16と接続されている。TDC23aのStop入力用の端子は、増幅部21aと接続されている。TDC23b〜23dのStop入力用の端子も同様に、それぞれ増幅部21b〜21dと接続されている。各TDC23a〜23dの出力端子は、演算部24に接続されている。
【0030】
各TDC23a〜23dの動作を図4に示す信号波形を参照して説明する。
【0031】
先ず、各TDC23a〜23dへのStart入力およびStop入力は、全て“L”になっている。制御部16からのStart入力が“H”になると、各TDC23a〜23dがそれぞれ時間測定を開始する。TDC23aへのStop入力が“H”になると、TDC23aは、計測時間としてtaを出力する。次に、TDC23cへのStop入力が“H”になると、TDC23cは、計測時間としてtcを出力する。TDC23dへのStop入力が“H”になると、TDC23dは、計測時間としてtdを出力する。TDC23bへのStop入力が“H”になると、TDC23bは、計測時間としてtbを出力する。
【0032】
演算部24は、図示しない記憶部を備えており、この記憶部に記憶されたプログラムに従って動作し、入力された各計測時間ta,tb,tc,tdから、各信号の到達時間差を算出する。受信アンテナ12aと受信アンテナ12bの到達時間差tbaは、tb−taから求まり、受信アンテナ12aと受信アンテナ12cの到達時間差tcaは、tc−taから求まり、受信アンテナ12aと受信アンテナ12dの到達時間差tdaは、td−taから求まる。
【0033】
このように各到達時間差tba,tca,tdaを求めた後、受信アンテナ12a〜12dの座標を用いて、バックスキャッタ応答を返したRFIDタグ2の座標を算出する。ここで算出する座標は、RFIDタグ位置検出装置1からの相対的な座標である。
【0034】
上記のように制御部16は、各TDC23a〜23dへのStart入力を“H”にすることで、計測部22に時間計測を開始させる。各TDC23a〜23dへのStart入力を“H”にするタイミングは、受信アンテナ12aから制御部16に入力される信号に応じて決定されるが、その決定方法については後述する。
【0035】
[座標演算]
図5を用いてRFIDタグ2の座標演算について説明する。
受信アンテナ12aの座標は(xa,ya,za)、受信アンテナ12bの座標は(xb,yb,zb)、受信アンテナ12cの座標は(xc,yc,zc)、受信アンテナ12dの座標は(xd,yd,zd)で既知であり、演算部24が有する記憶部等に予め記憶されている。
【0036】
バックスキャッタ応答を返したRFIDタグ2の座標をP点(xP,yP,zP)とし、電波の伝達速度をCとすると、各受信アンテナ12a〜12dの座標と到達時間差tba,tca,tdaとを用いて下記式が成立する。
【数1】
【0037】
【数2】
【0038】
【数3】
【0039】
xP,yP,zP以外は既知の値であるため、上記3つの連立方程式を解くことにより、xP,yP,zPの値を求めることができる。この非線形連立方程式は、ニュートン法等の数値計算方法を使用することによって解を求めることができる。各受信アンテナ12a〜12dが同一平面に配置されている場合は、解が2つ存在する。送信アンテナ11がz=0となる面にあるなら、アンテナ利得の高い側にある解(正の解)を有効とすればよい。このようにすることにより、バックスキャッタ応答を返したRFIDタグ2の相対座標を取得することができる。
【0040】
ここで、RFIDタグ位置検出装置1とRFIDタグ2との通信について、図6を用いて説明する。
本実施形態におけるRFIDタグ位置検出装置1とRFIDタグ2とは、近年広く普及しつつあるEPCglobalのClass1Generation2規格(以下、C1G2規格)に従って通信するものとする。
【0041】
図6の上段は、RFIDタグ位置検出装置1の送信データであり、斜線を付した部分は搬送波のみが送信されている状態を示している。図6の下段は、RFIDタグ2の送信データである。C1G2規格の通信においては、先ずRFIDタグ位置検出装置1が搬送波を送信する。RFIDタグ2は、この搬送波を受信することによって起動する。
【0042】
RFIDタグ位置検出装置1は、プリアンブル(P)に引き続き、読取り開始を知らせるQuery(Q)を送信する。RFIDタグ2は、プフアンブル(P)を受信すると、受信速度を決定して、引き続くデータを受信できるように同期を取り、Query(Q)を受信すると、そのQuery(Q)の内容に従った設定を行う。その後、C1G2規格では、RFIDタグ2はランダムに選択したスロットで応答を送信するが、本実施形態では、RFIDタグ2が直ちに応答を送信するとして説明する。
【0043】
RFIDタグ2は、Query(Q)を受信した後、プリアンブル(P)に引き続き、16ビットの擬似乱数であるRN16を送信する。RN16は、以後の通信の間、保持されており、暗号文字列として使用される。RFIDタグ位置検出装置1は、プリアンブル(P)とRN16とを受信すると、フレーム同期を取るためのFrame−Sync(F)に引き続き、正しく受信できたことを知らせるACKを送信する。RFIDタグ2は、ACKを受信すると、プリアンブル(P)とデータ(Data)とCRC(Cyclic Redundancy Check)を送信する。このデータ(Data)の中に、RFIDタグ2毎に固有の識別情報、すなわちC1G2規格のEPC(Electronic Product Code)が含まれている。CRCは、データ伝送の誤りを検出するために付加する符号である。
【0044】
RFIDタグ位置検出装置1は、プリアンブル(P)、データ(Data)、CRCを受信すると、そのCRCを用いて伝送エラーの有無を検出する。その結果、正しく受信したと判断したときは、Frame−sync(F)に引き続き、QueryRep(QR)を送信する。一方、正常に受信できなかったと判断した場合は、QueryRep(QR)に代えて、正常に受信できなかったことを通知するNAKを送信し、RFIDタグ2に再送を要求する。RFIDタグ位置検出装置1の交信領域内にあるRFIDタグ2が1つだけのときは、ここまでの処理で通信が完了する。
【0045】
RFIDタグ位置検出装置1の交信領域内にRFIDタグ2が複数ある場合は、QueryRep(QR)の後に、別のRFIDタグ2がプリアンブル(P)とRN16とを送信する。RFIDタグ位置検出装置1は、RN16を受信すると、Frame−Sync(F)とACKとを送信し、これを受信したRFIDタグ2がプリアンブル(P)、データ(Data)およびCRCを送信する。RFIDタグ位置検出装置1は、データ(Data)を正常に受信すると、Frame−Sync(F)を送信する。
このような処理を繰り返すことによって、RFIDタグ位置検出装置1は、交信領域内にある複数のRFIDタグ2の識別情報を検出する。
【0046】
図7にRFIDタグ2がRFIDタグ位置検出装置1へ送信するプリアンブルの波形を示している。なお、図7は、C1G2規格でFM0符合を使用するときのプリアンブルである。FM0符合においては、“0”を表すときは1ビットの中心でレベルを“H”から“L”または“L”から“H”に反転させ、“1”を表すときは1ビットの中でレベルを一定に保ち、変化させない。また、あるビットから次のビットに切り替わるときにレベルを反転させる。“V”は、FM0符合のルールに従わないビットであり、プリアンブルの中だけに表れるものである。
【0047】
通常、プリアンブルの先頭においては、ビット同期をとるために、同じパターンが繰り返される。その後、別の決められたパターンを使用して、プリアンブルの後に続く情報との境目がわかるようにしている。図7では、“0”が5つ連続で現れている箇所がビット同期に使用され、その後の“1010V1”より後がデータとなる。
【0048】
このように、RFIDタグ位置検出装置1は、ACKを送信した後に識別情報を含むデータを受信するとの手順で通信する。したがって制御部16は、ACK送信後のプリアンブルを受信し、ビット同期をとった後においては、受信信号のレベルが変化するタイミングを予想できる。制御部16は、ビット同期をとって“V”を検出した直後、受信信号レベルが“L”から“H”に最初に変化する前に各TDC23a〜23dのStart入力を一斉に“H”にすることで、各受信アンテナ12a〜12dの受信信号のレベルが次に“H”に変化するまでの時間ta,tb,tc,tdを測定することができる。
【0049】
なお、図2のブロック図では、増幅部21aの出力を制御部16に入力して、RFIDタグ2からの受信データの取得を行っている。RFIDタグ2から受信アンテナ12aまでの距離が最短ではなく、RFIDタグ2から他の受信アンテナ12b〜12dまでの距離の方が短いこともある。各受信アンテナ12a〜12dが図5のように配置されているとき、受信アンテナ12aから最も遠くにある受信アンテナが受信アンテナ12dであるとすると、受信アンテナ12aと受信アンテナ12dの最大到達時間差tmは、下記の式で表すことができる。
【数4】
【0050】
他の受信アンテナ12aの最も遠くにある受信アンテナが他のアンテナである場合でも、同様の計算式にて受信アンテナ12aとそのアンテナとの最大到達時間差tmを求めることができる。
【0051】
これらを考慮し、“V”が検出された直後において受信信号のレベルが“L”から“H”に変化すると予想されるタイミングからtmより前の時間に、各TDC23a〜23dへのStart入力を“H”にすればよい。言い換えると、時間測定を開始するタイミングは、最大受信アンテナ間距離を電波が伝達する時間より後に各受信アンテナ12a〜12dの受信信号レベルが変化するように設定すればよい。
【0052】
また、測定時間が長すぎると、次の受信信号レベルの変化点が現れてしまうので、次の変化点が現れる前に測定を終了することが好ましい。伝送速度と符号化方式により、信号レベルの変化点が現れる時間間隔が決まるので、これから測定終了時間を決めればよい。このようにすることによって、各受信アンテナ12a〜12dとRFIDタグ2の配置に関係無く、全ての受信アンテナ12a〜12dに到達する信号のレベル変化タイミングを捉えることができる。そして、測定した時間差からRFIDタグ2の位置を特定することができる。
【0053】
このように、RFIDタグ位置検出装置1は、識別情報を含むデータのプリアンブルを利用してRFIDタグ2の位置を検出するため、RFIDタグ2の識別情報と位置を一度に検出することができる。複数のRFIDタグ2の識別情報を検出した場合は、それぞれの識別情報に対応する位置も検出することができる。
【0054】
なお、本実施形態では“V”の位置で各TDC12a〜12dのStart入力を“H”にするが、ビット同期が取れた後であれば、任意の受信信号レベルの変化点付近で同様に時間を測定することができる。
【0055】
[表示部への情報表示]
さて、RFIDタグ位置検出装置1は、RFIDタグ2の相対座標を算出し、その相対座標と、同座標の算出時にRFIDタグ2から受信した識別情報あるいはそれに基づいて特定される情報を関連付けて表示部15に表示する機能を有している(出力手段)。
図8は、RFIDタグ位置検出装置1の表示部15に表示される画像を説明するための模式図である。表示部15は、図示したようにRFIDタグ位置検出装置1の背面(カメラ部13のレンズ等が設けられた面と反対側の面)に設けられている。
【0056】
図中の30は、それぞれRFIDタグ2が取り付けられた物品であり、各RFIDタグ2はいずれもRFIDタグ位置検出装置1の交信領域内にあるものとする。表示部15には、カメラ部13で撮影された画像が表示され、各RFIDタグ2との通信によって検出した各RFIDタグ2の相対座標に対応する画像上には、各RFIDタグ2から検出した識別情報に基づく情報31が重ね合わせて(関連付けて)表示される。各情報31は、各RFIDタグ2から検出した識別情報そのままでもよいが、その識別情報に紐付けられた物品情報としてもよい。この場合、例えば制御部16の記憶部に識別情報と物品情報との対応を示すテーブルを予め記憶しておき、そのテーブルを参照して識別情報に紐付けられた物品情報を特定すればよい。このように情報31を物品情報とすれば、表示部15に映し出された物品の種別を認識し易くなる。
【0057】
情報31の表示に関する各部の動作を、図9のフローチャートに沿って説明する。
上位機器からコマンドを受信するなどして処理開始が指示されると、カメラ部13により画像が撮影され、それが表示部15に表示される。その後、図9に示す処理が開始される。
【0058】
開始当初においては、先ず前述した方法により交信領域内にあるRFIDタグ2の位置が検出される(ステップ:ST1〜ST11)。すなわち、送信アンテナ11からの搬送波の送信が開始されて(ST1)、交信領域内にあるRFIDタグ2が起動される。次に、送信アンテナ11からQuery(Q)が送信され(ST2)、これに対するRN16が受信アンテナ12aにより受信される(ST3)。その後、送信アンテナ11からACKが送信され(ST4)、応答を返したRFIDタグ2の識別情報を含むデータの受信が開始される(ST5)。そして、そのRFIDタグ2から送信されるプリアンブル(P)に含まれる“1010V”の受信中に、制御部16が前述したタイミングで各TDC23a〜23dのStart入力を“H”にする(ST6)。その結果、Start入力が“H”になってから各Stop入力が“H”になるまでの時間ta,tb,tc,tdが各TDC23a〜23dから演算部24に出力される(ST7)。演算部24は入力された計測時間ta,tb,tc,tdに基づいて受信アンテナ12a〜12d毎の到達時間差tba,tca,tdaを算出し(ST8)、それらに基づいて応答を返したRFIDタグ2の相対座標を算出する(ST9)。相対座標の算出が行われた後に応答を返したRFIDタグ2からの識別情報を含むデータの受信が完了し(ST10)、送信アンテナ11からQueryRep(QR)が送信される(ST11)。
【0059】
なお、ST8とST9における演算がST10におけるデータの受信完了前に行われるとしたが、ST8とST9における演算がST10におけるデータの受信完了後に行われてもよい。
【0060】
ST11の後、制御部16により、ST9で算出された相対座標が画面への表示座標に変換され、変換後の座標にRFIDタグ2から受信した識別情報に基づく情報が表示される(ST12)。その後、図示したフローチャートに沿う処理を開始してからQueryRep(QR)を所定回数送信したかを判断し、所定回数送信していない場合は(ST13の“N”)、交信領域内にある他のRFIDタグ2を対象としてST3〜ST12の処理が行われる。一方、QueryRep(QR)を所定回数送信し終えた場合は(ST13の“Y”)、一連の処理が終了する。
【0061】
ST12にて行う座標変換を説明するための図を図10に示している。x−z面を上段に、y−z面を下段右に、表示部15への画面表示座標を下段左に示す。相対座標を検出したRFIDタグ2の座標をP点(xP,yP,zP)とし、カメラ部13の撮像点の座標をe点(xe,ye,ze)とし、ze=0としている。カメラ部13の画像の取得範囲は、x−z面では±θの範囲であり、y−z面では±φの範囲である。
【0062】
カメラ部13によって撮像される画像はx−y面で表されるため、RFIDタグ2の位置を表示するためには、三次元座標を画像座標に変換する必要がある。
【0063】
カメラ部13の撮像点からRFIDタグ2までのz軸上の距離はzPである。カメラ部13で撮像される画像の距離zPにおけるx軸の範囲は、−zP/cosθ〜zP/cosθとなる。xw=zP/cosθとすると、−xw≦(距離zPにおけるx軸の取得範囲)≦xwとなる。カメラ部13の撮像画像におけるRFIDタグ2のx座標は、xP−xeとして表される。
【0064】
カメラ部13で取得する距離zPにおけるy軸の範囲は、−zP/sinφ〜zP/sinφとなる。yw=zP/sinφとすると、−yw≦(距離zPにおけるy軸の取得範囲)≦ywとなる。カメラ部13の撮像画像におけるRFIDタグ2のy座標は、yP−yeとして表される。
【0065】
表示部15に画像を表示するときは、(xw,yw)を表示画像の右上隅とし、(−xw,yw)を表示画像の左上隅とし、(xw,−yw)を表示画像の右下隅とし、(−xw,−yw)を表示画像の左下隅として、上記のように算出したRFIDタグ2の表示座標(xP−xe,yP−ye)に相当する位置に、当該RFIDタグ2に対応する情報31を表示する。
【0066】
このようにすることで、複数のRFIDタグ2の識別情報と相対位置を取得し、取得した複数のRFIDタグ2の場所を人に分かり易く報知することができ、入出荷の物品管理や棚卸を効率良く行うことができる。
【0067】
また、表示画像中のRFIDタグ2があるはずの場所に、識別情報等の情報31が表示されないときは、その場所にあるはずのRFIDタグ2が読み取れなかったと判断できる。そして、直ちに読み取れなかったRFIDタグ2の位置を知ることができる。
【0068】
[タグ位置へのレーザ照射]
RFIDタグ位置検出装置1は、RFIDタグ2の位置を検出し、その位置を照射部14からのレーザ照射で示す機能を有している。
図11は、照射部14によりレーザ光(光線)が照射される様子を示す模式図である。この機能は、既に各RFIDタグ2の識別情報が判明しており、複数のRFIDタグ2の中から特定のRFIDタグ2を探し出すときなどに使用する。すなわち、RFIDタグ位置検出装置1が、特定の識別情報を記憶しているRFIDタグ2dのみが応答するコマンドを送信し、応答したRFIDタグ2dの相対座標を取得し、取得した相対座標に向けて照射部14からレーザ光42を照射して、RFIDタグ2dの位置を知らせる。
【0069】
レーザ光の照射に関する各部の動作を、図12のフローチャートに沿って説明する。
上位機器からコマンドを受信するなどして処理開始が指示されると、そのコマンドで示されるRFIDタグ2を処理対象として図12に示す処理が開始される。
【0070】
開始当初においては、先ず処理対象であるRFIDタグ2の位置が検出される(ステップ:ST21〜ST32)。すなわち、送信アンテナ11からの搬送波の送信が開始されて(ST21)、交信領域内にあるRFIDタグ2が起動される。次に、送信アンテナ11から処理対象であるRFIDタグ2を指定したSelectコマンドが送信される(ST22)。このSelectコマンドを受信したRFIDタグ2は、同コマンドにて自身が指定されている場合に限り、以降のQuery(Q)等に応答する。
【0071】
続いて、送信アンテナ11からQuery(Q)が送信され(ST23)、これに対して処理対象のRFIDタグ2が返すRN16が、受信アンテナ12aにより受信される(ST24)。その後、送信アンテナ11からACKが送信され(ST25)、処理対象のRFIDタグ2の識別情報を含むデータの受信が開始される(ST26)。そして、そのRFIDタグ2から送信されるプリアンブル(P)に含まれる“1010V”の受信中に、制御部16が前述したタイミングで各TDC23a〜23dのStart入力を“H”にする(ST27)。その結果、Start入力が“H”になってから各Stop入力が“H”になるまでの時間ta,tb,tc,tdが各TDC23a〜23dから演算部24に出力される(ST28)。演算部24は、入力された計測時間ta,tb,tc,tdに基づいて受信アンテナ12a〜12d毎の到達時間差tba,tca,tdaを算出し(ST29)、それらに基づいて処理対象のRFIDタグ2の相対座標を算出する(ST30)。相対座標の算出が行われた後に処理対象のRFIDタグ2からの識別情報を含むデータの受信が完了し(ST31)、送信アンテナ11からQueryRep(QR)が送信される(ST32)。
【0072】
なお、ST29とST30における演算がST31におけるデータの受信完了前に行われるとしたが、ST29とST30における演算がST31におけるデータの受信完了後に行われてもよい。
【0073】
ST32の後、制御部16により、ST9で算出された相対座標がレーザ光の照射座標に変換され、変換後の座標に照射部14からレーザ光が照射される(ST33)。以上で一連の処理が終了する。
【0074】
ここで、照射部14の構造および照射座標の算出方法について説明する。
図13は、照射部14の概略構造を示す模式図である。照射部14は、レーザ光を出力する光源40と、レーザ光の照射角度を調整するミラー41とを備えている。光源40は、ミラー41に向かってレーザ光を出力し、ミラー41でレーザ光の進行方向を変える。図示した矢印42は、RFIDタグ位置検出装置1から照射されるレーザ光の進行方向を示している。ミラー41は、x軸方向の回転軸43とy軸方向の回転軸44で回転可能となるように支持されている。各回転軸43,44における回転角度を調整してミラー41の向きを変えることにより、ミラー41で反射されるレーザ光を所望の方向に向けることができる。
【0075】
ST33にて行う座標変換とミラー41の角度との関係を説明するための図を、図14に示している。x−z面を上段に、y−z面を下段右に、x,y,z軸からなる三次元座標系を下段左に示す。相対座標を取得した処理対象のRFIDタグ2の座標をP点(xP,yP,zP)とし、レーザ光を向ける座標をf点(xf,yf,zf)とし、zf=0としている。
【0076】
ミラー41の角度を調整する前の初期照射方向は、f点からx−y面に垂直なz方向であるとする。そうすると、x−z面においてはf点からθ1=arctan{zP/(xP−xf)}方向にP点が所在し、y−z面ではf点からφ1=arctan{zP/(yP−xf)}方向にP点が所在することになる。したがって、ミラー41をy軸方向の回転軸43を軸としてθ1回転させ、x軸方向の回転軸44を軸としてφ1回転させることにより、処理対象のRFIDタグ2の座標P点に向けてレーザ光を照射することができる。
【0077】
このように特定のRFIDタグ2に向けてレーザ光が照射されれば、探しているRFIDタグ2の場所を容易に知ることができる。なお、算出した相対座標には計測や演算による誤差が含まれるため、RFIDタグ2の実際の座標と算出した座標とが若干異なることがある。そのため、レーザ光を拡散させて、照射範囲を広げるようにしてもよい。
【0078】
[タグ不在の報知]
RFIDタグ位置検出装置1は、予め定められた設定範囲外にそれまで同範囲内に在ったRFIDタグ2が出たことに応じて、その旨を報知する機能(報知手段)を有している。
図15は、当該機能を説明するための模式図である。送信アンテナ11および受信アンテナ12a〜12dによる交信領域51の内部に、設定範囲52を定める。設定範囲52の相対座標は、制御部16の記憶部等に予め記憶しておく。先ず、設定範囲52の内側にRFIDタグ2eがあり、その後、RFIDタグ2eが設定範囲52の外側に移動したとする。当該機能において、RFIDタグ位置検出装置1は、RFIDタグ2eが設定範囲52内から設定範囲52外に出たか否かを検出し、設定範囲52外に出たことを検出したときに、その旨を報知する。
【0079】
当該機能に関する各部の動作を、図16のフローチャートに沿って説明する。
上位機器からコマンドを受信するなどして処理開始が指示されると、図16に示す処理が開始される。
【0080】
開始当初においては、先ず前述した方法により交信領域51内に在るRFIDタグ2の位置が検出される(ステップ:ST41〜ST51)。すなわち、送信アンテナ11からの搬送波の送信が開始されて(ST41)、交信領域内に在るRFIDタグ2が起動される。次に、送信アンテナ11からQuery(Q)が送信され(ST42)、これに対するRN16が受信アンテナ12aにより受信される(ST43)。その後、送信アンテナ11からACKが送信され(ST44)、応答を返したRFIDタグ2の識別情報を含むデータの受信が開始される(ST45)。そして、そのRFIDタグ2から送信されるプリアンブル(P)に含まれる“1010V”の受信中に、制御部16が前述したタイミングで各TDC23a〜23dのStart入力を“H”にする(ST46)。その結果、Start入力が“H”になってから各Stop入力が“H”になるまでの時間ta,tb,tc,tdが各TDC23a〜23dから演算部24に出力される(ST47)。演算部24は入力された計測時間ta,tb,tc,tdに基づいて受信アンテナ12a〜12d毎の到達時間差tba,tca,tdaを算出し(ST48)、それらに基づいて応答を返したRFIDタグ2の相対座標を算出する(ST49)。相対座標の算出が行われた後に応答を返したRFIDタグ2からの識別情報を含むデータの受信が完了し(ST50)、送信アンテナ11からQueryRep(QR)が送信される(ST51)。
【0081】
なお、ST48とST49における演算がST50におけるデータの受信完了前に行われるとしたが、ST48とST49における演算がST50におけるデータの受信完了後に行われてもよい。
【0082】
ST51の後、制御部16により、ST49で算出された相対座標と上記記憶部に記憶された設定範囲52の座標とに基づいて、当該RFIDタグ2が設定範囲52内に在るか否かが判定される(ST52)。その結果、設定範囲52内に在ると判定されたならば(ST52の「Y」)、交信領域51内にある他のRFIDタグ2を対象としてST42〜ST52の処理が行われる。一方、設定範囲52内に無いと判定されたならば(ST52の「N」)、そのRFIDタグ2が設定範囲52外に出たことが報知されて(ST53)、一連の処理が終了する。
【0083】
ST53における報知は、表示部15にメッセージ等を表示することで行ってもよいし、RFIDタグ位置検出装置1にスピーカ等をつなげて音声を出力することで行ってもよい。このような報知により、RFIDタグ2が決められたエリアの外に出されたことを知らせることができる。
【0084】
なお、RFIDタグ2が設定範囲52内から設定範囲52外に出たときの説明をしたが、設定範囲52外から設定範囲52内に移動してきたことを検出したときに、その旨を報知するようにしてもよい。
【0085】
以上説明したように、本実施形態におけるRFIDタグ位置検出装置1は、RFIDタグ2からの応答電波が4つの受信アンテナ12a〜12dに到達する時間差を用いてRFIDタグ2の位置を検出する。このような構成であれば、RFIDタグ2の位置検出に際し、RFIDタグ位置検出装置1を複数の位置に移動させる必要がない。したがって、RFIDタグ2の位置を迅速に検出できる。さらに、RFIDタグ位置検出装置1にRFIDタグ2との通信を複数回行わせる必要がないので、電波使用効率が悪くなることもない。
【0086】
また、RFIDタグ位置検出装置1は、位置を検出したRFIDタグ2に関する情報を、表示部15の表示画像上の対応する位置に重ね合わせて表示する機能や、検出された位置に向けてレーザ光を照射する機能を有する。このような機能を用いれば、特定のRFIDタグ2の所在を極めて容易に確認できる。
【0087】
また、RFIDタグ位置検出装置1は、所定範囲に在るRFIDタグ2が同範囲から出たことを検出し、報知する機能を有する。このような機能を用いれば、所定範囲内におけるRFIDタグ2の入出を極めて容易に管理できる。
【0088】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0089】
各受信アンテナ12a〜12dから計測部22までの間の回路で、回路遅延のばらつきや配線長のばらつき等が生じることがある。例えば、受信信号が、受信アンテナ12aから入力されてTDC23aに入力される時間と、受信アンテナ12bから入力されてTDC23bに入力される時間には、若干の差が生じ得る。この若干の差を補正すると、演算した相対座標と実際の座標のずれを小さくすることができる。
【0090】
そこで、本実施形態においては、上記ずれを最小減に止めるべく、到達時間差tba,tca,tdaの補正値を取得する機能(取得手段)を演算部24に設け、取得した補正値にて補正した後の到達時間差tba,tca,tdaを用いてRFIDタグ2の相対座標を演算する。
【0091】
各受信アンテナ12a〜12dの間で生じる到達時間差のずれを補正する一例について説明する。
補正値の取得は、例えば補正モードなるモードでRFIDタグ位置検出装置1を起動した際に実行される。その際、予め受信アンテナ12aと受信アンテナ12bから等距離となる場所にRFIDタグ2を配置しておく。この状態で、第1の実施形態にて説明した方法にて相対座標の取得を行う。
【0092】
このとき、受信アンテナ12aと受信アンテナ12bへの電波の到達時間は同じであるため、回路における伝達遅延差がTDC23aとTDC23bの入力時間差Δtbaとして現れる。この時間差Δtbaは、補正値として例えば演算部24の記憶部に記憶される。回路における伝達遅延差が無い場合は、Δtba=0である。さらに、受信アンテナ12aと受信アンテナ12c、受信アンテナ12aと受信アンテナ12dとの間でも同様に補正値である時間差Δtca,Δtdaを取得する。
【0093】
補正値を取得した後、通常の動作モードにおいてRFIDタグ2の相対座標を算出する際には、演算部24で取得した到達時間差tba,tca,tdaからそれぞれ上記時間差Δtba,Δtca,Δtdaが差し引かれて補正され、補正後の値を用いてRFIDタグ2の相対座標が演算される。
【0094】
次に、到達時間差のずれを補正する他の例について説明する。
この例では、先ずRFIDタグ2を予めその相対座標が判明している位置に配置しておく。そうすると、このRFIDタグ2と各受信アンテナ12a〜12dとの距離が決まる。このとき、このRFIDタグ2と各受信アンテナ12a〜12dまでの距離と電波の伝達速度から、各受信アンテナ12a〜12d間の理論的な受信到達時間差を算出することができる。この時間差は、算出後の値をRFIDタグ位置検出装置1に外部から入力するようにしてもよいし、制御部16にて算出してもよい。
【0095】
次に、補正モードにおいて上記RFIDタグ2の相対座標の取得を行い、そのときの受信到達時間差と理論的な受信到達時間差とを比較して、それぞれの差分を算出する。算出した差分は、例えば演算部24の記憶部に補正値として記憶する。
【0096】
以後、通常の動作モードにおいてRFIDタグ2の相対座標を演算する際には、上記記憶部に記憶したそれぞれの補正値を用いて、最初の例と同様に到達時間差tba,tca,tdaを補正する。
【0097】
以上説明したように、本実施形態においては、算出した到達時間差tba,tca,tdaを補正する機能を設け、補正後の到達時間差を用いてRFIDタグ2の相対位置を検出するようにした。このようにしたことにより、回路遅延のばらつきや配線長のばらつきによる誤差が吸収され、RFIDタグ2の位置検出の精度が大幅に向上する。
【0098】
なお、第1の実施形態と同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0099】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
第1,第2の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0100】
本実施形態においては、RFIDタグ2の絶対座標を算出する機能を、第1,第2の実施形態におけるRFIDタグ位置検出装置1の演算部24に設ける。
絶対座標を算出するために、予め当該RFIDタグ位置検出装置1を使用する建物内の柱等の固定された物体にRFIDタグ2を取り付けておき、このRFIDタグ2の絶対座標(xh,yh,zh)を取得して、演算部24の記憶部等に予め記憶しておく。但し、当該固定的な物体に取り付けられたRFIDタグ2に絶対座標を記憶させておき、これを任意のタイミングでRFIDタグ位置検出装置1により読み取ることにより、同RFIDタグ2の絶対座標を取得してもよい。
【0101】
RFIDタグ位置検出装置1は移動せずに、絶対座標の知られているRFIDタグ2と絶対座標の知られていないRFIDタグ2との通信を行い、それぞれの相対座標を取得する。取得した絶対座標の知られているRFIDタグ2の相対座標は(xg,yg,zg)であり、絶対座標の知られていないRFIDタグ2の相対座標は(xP,yP,zP)であるとする。
【0102】
ここまでに取得した座標から、演算部24は、絶対座標の知られていないRFIDタグ2の絶対座標を(xh+xP−xg,yh+yP−yg,zh+zP−zg)と算出することができる。
【0103】
このように算出した絶対座標は、例えば表示部15への表示やスピーカからの音声出力によって報知する。このようにすることにより、RFIDタグ位置検出装置1を基準としたRFIDタグ2の相対座標だけでなく、建物等を基準としたRFIDタグ2の絶対座標をも知ることができる。
【0104】
なお、第1,第2の実施形態と同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0105】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。
第1〜第3の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0106】
本実施形態は、前記各実施形態における計測部の構成が異なるだけで、それ以外の構成は同じである。そのため、計測部についてのみ詳述する。
【0107】
図17に本実施形態における計測部の概略ブロック図を示している。このブロック図は、図3で示した計測部22を計測部122に置き換えたものであり、TDCのStart入力に制御部16からの信号を使用しない構成を実現するものである。
【0108】
計測部122は、TDC125〜130と演算部124とで構成されている。TDC125は、増幅部21aの出力をStart入力とし、増幅部21bの出力をStop入力とし、Start入力が“H”になってからStop入力が“H”になるまでの時間tba+を演算部124に出力する。TDC126は、増幅部21bの出力をStart入力とし、増幅部21aの出力をStop入力とし、Start入力が“H”になってからStop入力が“H”になるまでの時間tba−を演算部124に出力する。
【0109】
TDC127は、増幅部21aの出力をStart入力とし、増幅部21cの出力をStop入力とし、Start入力が“H”になってからStop入力が“H”になるまでの時間tca+を演算部124に出力する。TDC128は、増幅部21cの出力をStart入力とし、増幅部21aの出力をStop入力とし、Start入力が“H”になってからStop入力が“H”になるまでの時間tca−を演算部124に出力する。
【0110】
TDC129は、増幅部21aの出力をStart入力とし、増幅部21dの出力をStop入力とし、Start入力が“H”になってからStop入力が“H”になるまでの時間tda+を演算部124に出力する。TDC130は、増幅部21dの出力をStart入力とし、増幅部21aの出力をStop入力とし、Start入力が“H”になってからStop入力が“H”になるまでの時間tda−を演算部124に出力する。
【0111】
RFIDタグ2とRFIDタグ位置検出装置1の配置によって、増幅部21aと増幅部21bの出力が“H”になる順番が異なる。増幅部21aの出力が先に“H”になった場合、TDC125で受信アンテナ12a,12bの到達時間差が計測されることになり、TDC126では増幅部21bの出力が“H”になった後、次に増幅部21aの出力が“H”になるまでの時間が計測されるので、時間tba−は時間tba+よりも長くなる。逆に増幅部21bの出力が先に“H”になった場合、TDC126で受信アンテナ12a,12bの到達時間差が計測されることになり、TDC125では増幅部21aの出力が“H”になった後、次に増幅部21bの出力が“H”になるまでの時間が計測されるので、時間tba+は時間tba−よりも長くなる。これに鑑み、演算部124は、入力された時間tba+,tba−のうち、短い一方を演算に使用する時間として採用する。
【0112】
同様に、時間tca+,tca−の短い一方を演算に使用する時間として採用し、時間tda+,tda−の短い一方を演算に使用する時間として採用する。
【0113】
計測部の動作を説明すべく、各TDC125〜130の入出力波形の一例を図18に示す。図中のa〜dは、それぞれ増幅部21a〜21dの出力信号である。増幅部21aの出力が“H”になると、TDC125とTDC127とTDC129のStart入力が“H”になり、時間の計測を開始する。
【0114】
その後、増幅部21cの出力が“H”になると、TDC127のStop入力が“H”になり、TDC128のStart入力が“H”になる。TDC127は、Stop入力が“H”になったので、時間tca+を出力する。
【0115】
次に、増幅部21dの出力が“H”になると、TDC129のStop入力が“H”になり、TDC130のStart入力が“H”になる。TDC129は、Stop入力が“H”になったので、時間tda+を出力する。
【0116】
次に、増幅部21bの出力が“H”になると、TDC125のStop入力が“H”になり、TDC126のStart入力が“H”になる。TDC125は、Stop入力が“H”になったので、時間tba+を出力する。
【0117】
図18の例では、TDC126とTDC128とTDC130は、時間測定が終了していない。時間測定可能な最大時間内に終了しない場合は、TDC126,128,130による測定終了時までの時間(上記最大時間)をそれぞれtba−,tca−,tda−とする。
【0118】
演算部124は、上記した通り、tba+とtba−、tca+とtca−、tda+とtda−を比較し、短い一方を座標演算用に採用する。採用した3つの時間は、各受信アンテナ12a〜12dへのRFIDタグ2からの応答の到達時間差である。演算部124は、これら到達時間差を用いて、応答したRFIDタグ2の相対座標を演算する。このような構成は、第1〜第3の実施形態いずれにも適用可能である。
【0119】
なお、第1〜第3の実施形態と同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0120】
(変形例)
上記各実施形態にて開示した構成は、種々変形実施可能である。具体的な変形例としては、例えば次のようなものがある。
【0121】
(1)上記各実施形態においては、受信アンテナ、復調部、および増幅部を4つずつ使用する場合を例示した。しかしながら、受信アンテナ、復調部、および増幅部の数は、5つ以上であってもよい。
受信アンテナ等が5つ以上ある場合は、例えばニュートン法に最小二乗法を組み合わせた演算方法を使用することにより、RFIDタグ2の相対座標を求めることができる。受信到達時間差を計測する数が多くなると、算出した相対座標が実際の座標に近づく傾向があるので、受信アンテナ、復調部、および増幅部を5つ以上使用することで、RFIDタグ位置検出装置の位置検出性能を高めることができる。
【0122】
(2)上記各実施形態では、制御部16や演算部24,124の記憶部に各処理用のプログラムが予め記憶されているものとして説明した。しかしながら、これに限らず各プログラムをネットワークからRFIDタグ位置検出装置にダウンロードしても良いし、同様の機能を記録媒体に記憶させたものをRFIDタグ位置検出装置にインストールしてもよい。記録媒体としては、CD−ROM等を利用でき、かつRFIDタグ位置検出装置が読み取り可能な記録媒体であれば、その形態は何れの形態であってもよい。またこのように予めインストールやダウンロードにより得る機能はRFIDタグ位置検出装置内部のOS(Operating System)等と協働してその機能を実現させるものであってもよい。
【0123】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0124】
1…RFIDタグ位置検出装置、2…RFIDタグ、11…送信アンテナ、12…受信アンテナ、13…カメラ部、14…照射部、15…表示部、16…制御部、17…発振部、18…変調部、19…電力増幅部、20…復調部、21…増幅部、22…計測部、23…TDC、24…演算部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDタグへ信号を送信する送信アンテナと、
前記RFIDタグからの応答信号を受信する4つ以上の受信アンテナと、
前記各受信アンテナが受信した応答信号に応じて出力する信号の時間差を計測し、計測した各時間差に基づいて前記RFIDタグの相対座標を演算する計測部と、
を備えたことを特徴とするRFIDタグ位置検出装置。
【請求項2】
前記受信アンテナから出力される信号を応答信号に再生して、その応答信号に応じた処理を行う制御部をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載のRFIDタグ位置検出装置。
【請求項3】
前記各受信アンテナは、前記送信アンテナの放射利得が低い方向に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のRFIDタグ位置検出装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記受信アンテナから入力される信号に応じて決定される所定のタイミングで前記計測部に時間計測を開始させ、
前記計測部は、時間計測開始の後、前記各受信アンテナから入力される信号が変化するまでの時間をそれぞれ計測し、計測した各時間を用いて前記各時間差を算出することを特徴とする請求項2に記載のRFIDタグ位置検出装置。
【請求項5】
前記計測部は、前記各受信アンテナから入力される信号の変化に応じて時間計測の開始及び停止を行い、前記各時間差を計測することを特徴とする請求項2に記載のRFIDタグ位置検出装置。
【請求項6】
前記計測部による各時間差の計測は、前記RFIDタグに固有の識別情報を含む応答信号の受信時に行われ、
前記各時間差から演算された相対座標と、その演算に用いられた各時間差の計測時に受信された識別情報又はその識別情報に基づいて特定される情報とを関連付けて出力する出力手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1に記載のRFIDタグ位置検出装置。
【請求項7】
表示部と、
画像を撮影するカメラ部と、
を備え、
前記出力手段は、前記カメラ部で撮影した画像を前記表示部に表示させると共に、その表示画像上における前記計測部が演算した相対座標に相当する位置に、その演算に用いられた各時間差の計測時に受信された識別情報又はその識別情報に基づいて特定される情報を表示することを特微とする請求項6に記載のRFIDタグ位置検出装置。
【請求項8】
前記送信アンテナは、指定した一つのRFIDタグが応答する信号を送信し、
当該指定したRFIDタグの前記計測部によって演算された相対座標に相当する方向に向けて光線を出力する照射部をさらに備えていることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1に記載のRFIDタグ位置検出装置。
【請求項9】
前記計測部で演算された相対座標が予め定められた設定範囲外である場合にその旨を報知する報知手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1に記載のRFIDタグ位置検出装置。
【請求項10】
前記計測部で計測される各時間差の補正値を取得する取得手段をさらに備え、
前記計測部は、計測した各時間差を前記取得手段によって取得された補正値にて補正し、補正後の各時間差を用いてRFIDタグの相対座標を演算することを特徴とする請求項1乃至9のうちいずれか1に記載のRFIDタグ位置検出装置。
【請求項11】
前記計測部は、絶対座標が未知のRFIDタグ及び配置位置が固定されている絶対座標が既知のRFIDタグの相対座標をそれぞれ演算し、演算した各相対座標と前記既知の絶対座標とを用いて前記絶対座標が未知のRFIDタグの絶対座標を算出することを特徴とする請求項6に記載のRFIDタグ位置検出装置。
【請求項12】
送信アンテナからRFIDタグへ信号を送信するステップと、
前記RFIDタグからの応答信号を4つ以上の受信アンテナにて受信し、各受信アンテナが受信した応答信号に応じて出力する信号の時間差を計測するステップと、
計測した各時間差に基づいて前記RFIDタグの相対座標を演算するステップと、
を備えたことを特徴とするRFIDタグの位置検出方法。
【請求項1】
RFIDタグへ信号を送信する送信アンテナと、
前記RFIDタグからの応答信号を受信する4つ以上の受信アンテナと、
前記各受信アンテナが受信した応答信号に応じて出力する信号の時間差を計測し、計測した各時間差に基づいて前記RFIDタグの相対座標を演算する計測部と、
を備えたことを特徴とするRFIDタグ位置検出装置。
【請求項2】
前記受信アンテナから出力される信号を応答信号に再生して、その応答信号に応じた処理を行う制御部をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載のRFIDタグ位置検出装置。
【請求項3】
前記各受信アンテナは、前記送信アンテナの放射利得が低い方向に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のRFIDタグ位置検出装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記受信アンテナから入力される信号に応じて決定される所定のタイミングで前記計測部に時間計測を開始させ、
前記計測部は、時間計測開始の後、前記各受信アンテナから入力される信号が変化するまでの時間をそれぞれ計測し、計測した各時間を用いて前記各時間差を算出することを特徴とする請求項2に記載のRFIDタグ位置検出装置。
【請求項5】
前記計測部は、前記各受信アンテナから入力される信号の変化に応じて時間計測の開始及び停止を行い、前記各時間差を計測することを特徴とする請求項2に記載のRFIDタグ位置検出装置。
【請求項6】
前記計測部による各時間差の計測は、前記RFIDタグに固有の識別情報を含む応答信号の受信時に行われ、
前記各時間差から演算された相対座標と、その演算に用いられた各時間差の計測時に受信された識別情報又はその識別情報に基づいて特定される情報とを関連付けて出力する出力手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1に記載のRFIDタグ位置検出装置。
【請求項7】
表示部と、
画像を撮影するカメラ部と、
を備え、
前記出力手段は、前記カメラ部で撮影した画像を前記表示部に表示させると共に、その表示画像上における前記計測部が演算した相対座標に相当する位置に、その演算に用いられた各時間差の計測時に受信された識別情報又はその識別情報に基づいて特定される情報を表示することを特微とする請求項6に記載のRFIDタグ位置検出装置。
【請求項8】
前記送信アンテナは、指定した一つのRFIDタグが応答する信号を送信し、
当該指定したRFIDタグの前記計測部によって演算された相対座標に相当する方向に向けて光線を出力する照射部をさらに備えていることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1に記載のRFIDタグ位置検出装置。
【請求項9】
前記計測部で演算された相対座標が予め定められた設定範囲外である場合にその旨を報知する報知手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1に記載のRFIDタグ位置検出装置。
【請求項10】
前記計測部で計測される各時間差の補正値を取得する取得手段をさらに備え、
前記計測部は、計測した各時間差を前記取得手段によって取得された補正値にて補正し、補正後の各時間差を用いてRFIDタグの相対座標を演算することを特徴とする請求項1乃至9のうちいずれか1に記載のRFIDタグ位置検出装置。
【請求項11】
前記計測部は、絶対座標が未知のRFIDタグ及び配置位置が固定されている絶対座標が既知のRFIDタグの相対座標をそれぞれ演算し、演算した各相対座標と前記既知の絶対座標とを用いて前記絶対座標が未知のRFIDタグの絶対座標を算出することを特徴とする請求項6に記載のRFIDタグ位置検出装置。
【請求項12】
送信アンテナからRFIDタグへ信号を送信するステップと、
前記RFIDタグからの応答信号を4つ以上の受信アンテナにて受信し、各受信アンテナが受信した応答信号に応じて出力する信号の時間差を計測するステップと、
計測した各時間差に基づいて前記RFIDタグの相対座標を演算するステップと、
を備えたことを特徴とするRFIDタグの位置検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−117905(P2012−117905A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267619(P2010−267619)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
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