説明

Stat3経路阻害剤および癌幹細胞経路阻害剤の新規のグループ

本発明は、新規クラスの癌幹細胞経路(CSCP)阻害剤の使用;治療抵抗性、再発性または転移性の癌を治療するためにそのような化合物の使用方法;そのような化合物を特定の投薬計画で用いて癌細胞を選択的に死滅させる方法;Stat3経路を阻害することによって癌幹細胞を標的にする方法;異常なStat3経路活性に関連する哺乳動物の状態または障害の治療で新規化合物の使用方法;ならびにそのような化合物およびそれらの中間体の調製方法、ならびに関連化合物の医薬組成物、ならびにこれらの化合物の具体的な投与方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、それぞれ2007年9月10日および2007年12月13日に出願された米国仮特許出願第60/971,144号、61/013,372号の利益を主張し、これらの米国仮特許出願の全体の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、状態を治療するための、Stat3経路阻害剤の使用に一般に関する。より具体的には、本発明は、癌幹細胞を標的にし、他の障害を治療するための、Stat3経路阻害剤の使用に関する。さらにより具体的には、本発明は、癌幹細胞を標的にし、悪性疾患を治療するための、Stat3を阻害するナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオンおよび関連化合物の使用に関する。本発明は、治療抵抗性、再発性または転移性の癌の治療、ならびに関連化合物およびその中間体の調製方法、ならびに関連化合物の医薬組成物にも関する。
【背景技術】
【0003】
癌幹細胞(CSC)
近年では、腫瘍形成のニューモデルが広く受け入れられ、そこでは、腫瘤全体の小さな画分だけが腫瘍内の腫瘍形成活性を担うと仮定されているが、古いモデルまたはクローン遺伝モデルは、すべての変異腫瘍細胞がそのような腫瘍形成活性に等しく寄与すると仮定している。ニューモデルに従うと、腫瘍形成性細胞のこの小さな画分は、幹細胞様特性を有する形質転換細胞であり、「癌幹細胞」(CSC)と呼ばれる。BonnetおよびDickは、1990年代に、急性骨髄性白血病(AML)におけるCSCの存在をインビボで最初に証明した。彼らのデータは、免疫不全マウスに移植すると、ヒトAML細胞の小さな亜集団だけがAMLを転移させる能力を有し、他のAML細胞は白血病を誘発することができないことを示した。後に、これらのCSCは、原始造血幹細胞と同じ細胞マーカー、CD34/CD38を有することが判明した[1]。それ以来、研究者は、脳、乳房、皮膚、前立腺その他の腫瘍を含む各種の腫瘍で、CSCを確定的に認めた。
【0004】
腫瘍形成のCSCモデルは、腫瘍移植を確立するために、数万または数十万の腫瘍細胞を実験動物に注入する必要がある理由を説明するであろう。ヒトAMLでは、これらの細胞の頻度は、10,000分の1未満である[2]。所与の腫瘍細胞集団内で稀であるとしても、そのような細胞がほとんどすべての腫瘍型に存在するという証拠が増えている。しかし、癌細胞系は、組織培養で成長するように特に適応させた癌細胞の亜集団から選択されるので、癌細胞系の生物学的特性および機能的特性は、劇的な変化を経る可能性がある。したがって、すべての癌細胞系が、CSCを含むというわけではない。
【0005】
癌幹細胞は、多くの類似した形質を正常幹細胞と共有する。例えば、CSCは、限られた分裂数とは対照的に、自己再生能力、すなわち、さらなる腫瘍形成性癌幹細胞を、一般的に他の分裂腫瘍細胞よりも遅い速度で生成する能力を有する。CSCは、複数の細胞型に分化する能力を有するが、そのことは、多くの腫瘍が宿主器官に固有の複数の細胞型を含むだけでなく、不均一性が腫瘍転移で通常保持されもするという、組織学的証拠を説明するであろう。CSCは、基本的に腫瘍形成、癌転移および癌再発を担うことが証明されている。CSCは、腫瘍開始細胞、癌幹様細胞、幹様癌細胞、高度腫瘍形成性細胞、腫瘍幹細胞、固形腫瘍幹細胞または超悪性細胞とも呼ばれる。
【0006】
癌幹細胞の存在は、将来の癌治療および療法に、基本的な関連性を有する。これらの関連性は、疾患同定、選択的薬剤ターゲティング、癌の転移および再発の予防、および癌との闘いにおける新しい戦略の開発で現れる。
【0007】
現在の癌治療の効力は、試験の初期の段階では、腫瘍縮みのサイズ、すなわち死滅する腫瘤の量でしばしば測定される。CSCは腫瘍の非常に小さな割合を形成し、それらのより分化した後代よりも著しく異なる生物特性を有するので、腫瘤の測定は、幹細胞に特異的に作用する薬剤を必ずしも選択できるわけではない。実際、癌幹細胞は、放射線療法(XRT)に耐性であるようで、化学療法薬および対標的薬剤にも治療抵抗性である[3〜5]。正常な体細胞性幹細胞は本来化学療法剤に耐性である−それらは、薬剤を送り出す様々なポンプ(MDRなど)を有し、DNA修復タンパク質を備える。さらに、それらは遅い速度の細胞ターンオーバーも有するが、化学療法剤は複製速度の速い細胞を標的にする。正常幹細胞の突然変異した対応物である癌幹細胞は、それらが薬剤療法および放射線治療を生き延びることを可能にする、類似した機構を有することもできる。言い換えると、従来の化学療法および放射線療法は、新規の高度に腫瘍形成性の癌幹細胞を再生することができない腫瘍の大部分を形成する、分化した細胞または分化中の細胞を死滅させる。他方、分化した細胞および分化中の細胞をもたらす癌幹細胞の集団は、手付かずの状態であることができ、疾患の再発を引き起こすことができよう。従来の抗癌療法のさらなる危険は、化学療法が、化学療法に耐性の癌幹細胞だけを残し、続いて起こる再発性の腫瘍も化学療法におそらく耐性であろうという可能性である。
【0008】
生存癌幹細胞は腫瘍を再生息させ、再発を引き起こすことができるので、抗癌療法はCSCに対する戦略を含むことが不可避である(図1を参照)。これは、タンポポの再成長を防止するためには、たとえその地上部を切断したとしても根部を除去することと同類である[6]。癌幹細胞を選択的に標的にすることによって、攻撃的で切除不能な腫瘍、および治療抵抗性もしくは再発性の癌を有する患者を治療すること、ならびに、腫瘍転移および再発を予防することが可能になる。癌幹細胞を標的にする特異的療法の開発は、癌患者(特に転移癌を有する患者)の生存および生活の質を改善し得る。この未開拓の可能性の錠を開ける鍵は、癌幹細胞の自己再生および生存にとって選択的に重要である経路の特定および検証である。残念ながら、癌または胚性もしくは成体幹細胞における自己再生での腫瘍形成の基礎をなす複数の経路が過去に解明されているものの、癌幹細胞の自己再生および生存についてはいかなる経路も特定、検証されていない。
【0009】
癌幹細胞の特定および単離について、多くの研究がなされてきた。用いられる方法は、薬剤を排出するCSCの能力を主に活用するか、癌幹細胞に関連する表面マーカーの発現に基づく。
【0010】
例えば、CSCは多くの化学療法剤に耐性であるので、CSCが、ABCG2(BCRP−1)などの薬剤流出ポンプ[7〜11]、および他のATP結合カセット(ABC)スーパーファミリー構成員[12、13]をほとんど遍在的に過剰発現することは、驚くべきことでない。したがって、当初、造血幹細胞および白血病幹細胞を富化するために用いられたサイドポピュレーション(SP)技術も、CSCの特定および単離のために採用された[14]。最初にGoodellらによって記載されたこの技術は、CSCを濃縮した細胞集団を定義および単離するために、Hoechst 33342などの蛍光色素の識別的ABC輸送体依存性流出を利用する[10、15]。具体的には、SPはベラパミルで薬剤流出をブロックすることによって明らかにされ、その時点では、もはや色素をSPから排出することができない。
【0011】
研究者は、癌幹細胞と大部分の腫瘍とを区別する特異的マーカーの発見にも集中した。癌幹細胞による最も一般的に発現される表面マーカーには、CD44、CD133およびCD166が含まれる[16〜22]。これらの表面マーカー(複数可)の差次的発現に主に基づく腫瘍細胞の選別は、今日まで記載されている大部分の高度に腫瘍形成性のCSCを説明してきた。したがって、これらの表面マーカーは、癌細胞系、および大半の腫瘍組織からの癌幹細胞の特定および単離のためによく検証される。
【0012】
Stat3経路。
【0013】
多くの異なる遺伝子欠損が哺乳動物またはヒトの癌細胞にあり、多くのものが、癌の治癒に向けた探求で研究されてきた。例えば、p53腫瘍サプレッサーは、半分を超えるヒト癌で欠陥があるか、全く欠けていることがわかっている。STAT(シグナルトランスデューサおよび転写アクチベータ(Signal Transducers and Activator of Transcription))タンパク質ファミリーは、増殖、生存および他の生物学的過程を促進するために、サイトカイン/成長因子に応じて活性化される潜在性の転写因子である。それらの中で、Stat3は、成長因子受容体チロシンキナーゼ、JanusキナーゼまたはSrcファミリーキナーゼなどによって媒介される、重要なチロシン残基のリン酸化によって活性化される。これらのキナーゼには、それらに限定されないが、EGFR、JAK、Abl、KDR、c−Met、Src、およびHer2が含まれる[23]。チロシンリン酸化後、Stat3はホモ二量体を形成し、核に移行し、標的遺伝子のプロモーター領域内の特異的DNA応答エレメントに結合し、遺伝子発現を誘導する[24]。
【0014】
正常な細胞では、Stat3活性化は一時的で、厳しく制御されており、30分〜数時間持続する。しかし、Stat3は、すべての主要な癌腫ならびに一部の血液系腫瘍を含む、広範なヒト癌で異常に活動的であることがわかっている。Stat3は、癌の進行において複数の役割を演ずる。強力な転写調節因子として、それは多くの重要な細胞機能に関与する遺伝子、例えばBcl−xl、c−myc、サイクリンD1、Vegf、MMP−2、およびサバイビン(survivin)を標的にする[25〜30]。それは、腫瘍免疫監視機構および免疫細胞動員の重要な負の調節因子でもある[31〜33]。
【0015】
アンチセンス、siRNA、Stat3のドミナントネガティブ型、および/またはチロシンキナーゼの遮断によってStat3シグナル伝達を切断することは、インビトロおよび/またはインビボである癌細胞系または腫瘍を阻害する[24、26、34、35]。しかし、これまで、Stat3と癌幹細胞機能の間に、実験的にいかなる明白な関連付けもされていない。また、研究者は、癌幹細胞を含むことが見いだされている癌に関して潜在的治療用途を探究するための、有効なStat3経路阻害剤を見いだしていない。前に記載のように、癌幹細胞(CSC)は、基本的に腫瘍形成、転移および再発の役割を担うことが最近証明されており、それらが腫瘤のどんなに小さい部分を構成しようとも、これらの細胞を有することが公知である腫瘍を標的にするいかなる治癒治療の設計においても考慮するべきである。
【0016】
癌以外の疾患では、インターロイキン6(IL6)によるStat3の過度の活性化が、いくつかの自己免疫疾患および炎症性疾患で証明されている[36]。近年では、Stat3経路は、TH17 T細胞応答の生成におけるその必要不可欠な役割を通して、病的免疫応答を促進することも明らかにされている[37]。さらに、IL6−Stat3経路媒介性の炎症が、アテローム硬化、末梢血管疾患、冠状動脈疾患、高血圧症、骨粗鬆症、2型糖尿病および認知症の共通の原因であることがわかっている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、Stat3が、広範囲の癌にわたって癌幹細胞(CSC)の生存能力および自己再生能力の両方で重要な役割を演ずるとの本明細書で提供される実験的証拠において一部示される。したがって、本発明の第1の態様は、癌幹細胞を阻害する方法であって、Stat3経路阻害剤を通して、癌幹細胞内のStat3経路活性の少なくとも一部、大部分、または実質的にすべて(例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%)を阻害するステップを含む方法を対象とする。本方法は、CSCの自己再生を阻害するか、CSCを死滅させる。本方法は、癌、特にCSCを有し、異常な、例えば過活動のStat3経路活性を有する癌を治療するために、インビトロまたはインビボで実施することができる。これらの2つの基準は、慣習的知識によって満たすことができ、すなわち、患者の癌はCSCおよび異常なStat3経路活性を有することが知られているタイプであるか、または、個々の患者から、例えば生検材料の検査を通して確認することができる。好ましい実施形態では、CSCは、異常なStat3経路活性を有することが知られているか、そうでなければ確認される。
【0018】
CSCおよび異常なStat3経路活性の両方を有することが現在知られている癌には、それらに限定されないが、以下のものが含まれる:乳癌、頭頸部癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、結腸直腸癌、前立腺癌、黒色腫、肉腫、肝癌、脳腫瘍、多発性骨髄腫および白血病。転移性乳癌など、これらの癌の転移性形態の多くも、CSCおよび異常なStat3経路活性の両方を有することがわかっている。1つの特徴では、本発明の方法は、この群から選択される癌を治療するために実施することができる。一実施形態では、本発明の方法は、以下から選択される癌を治療するために実施することができる:肺癌、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、肝癌、頭頸部癌、膵臓癌、胃癌および前立腺癌。
【0019】
さらに、CSCは、腫瘍形成、癌転移および癌再発の役割を基本的に担うことが証明されているので、本発明の方法は、転移性であるか、化学療法もしくは放射線療法に治療抵抗性であるか、化学療法に本質的に耐性であるか、または、最初の治療の後に対象で再発した癌を治療するために実施することができる。一実施形態では、Stat3経路阻害剤を単離、精製し、または合成し、それは、小分子Stat3阻害剤、Stat3に対するRNAi剤、Stat3に対するアンチセンス剤、ペプチド模倣物Stat3阻害剤およびG−カルテットオリゴデオキシヌクレオチドStat3阻害剤からなる群から選択することができる。阻害の機構は、Stat3タンパク質のリン酸化を実質的に阻害すること、Stat3タンパク質の二量体化を実質的に阻害すること、Stat3タンパク質の核移行を実質的に阻害すること、Stat3タンパク質のDNA結合活性を実質的に阻害すること、およびStat3タンパク質の転写活性を実質的に阻害することからなる群から選択することができる。
【0020】
一実施形態では、阻害剤は、2−(1−ヒドロキシエチル)−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−クロロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−フルオロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチルナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−エチル−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、リン酸モノ−[1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニル]エステル、リン酸1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニルエステルジメチルエステル、その鏡像異性体、ジアステレオマー、互変異性体およびその塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される化合物である(以下「本発明の化合物」と称す)。
【0021】
第2の態様では、本発明は、細胞において細胞Stat3経路活性を阻害する方法を提供する。本方法は、細胞の少なくとも望ましくないStat3経路活性が、例えば、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%低減されるように、細胞に、本発明の化合物の有効量を投与するステップを含む。一実施形態では、細胞はCSCであるか、そうでなければ癌性である。本方法は、細胞死を誘導すること、または細胞の自己再生を阻害することができる。本方法は、インビトロまたはインビボで実施することができる。
【0022】
第3の態様では、本発明は、対象の異常なStat3経路活性に関連する障害を治療または予防する方法であって、少なくとも異常なStat3経路活性が低減されるように、本発明の化合物を含む医薬組成物の治療的有効量を対象に投与するステップを含む方法を提供する。1つの特徴では、異常なStat3経路活性は、リン酸化Stat3、またはStat3リン酸化の代用の上流もしくは下流側の調節因子の発現により確認することができる。障害は、癌であってよい。一実施形態では、癌は、異常なStat3経路活性を有することが知られており、癌の例には、それらに限定されないが以下のものが含まれる:乳癌、頭頸部癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、結腸直腸癌、前立腺癌、腎細胞癌、黒色腫、肝細胞癌、子宮頸癌、肉腫、脳腫瘍、胃癌、多発性骨髄腫、白血病およびリンパ腫。障害は、異常なStat3経路活性に関連することが知られている非癌性の状態であってもよく、一実施形態では、自己免疫疾患、炎症性疾患、炎症性腸疾患、関節炎、自己免疫脱髄障害、アルツハイマー病、脳卒中、虚血再灌流傷害および多発性硬化症からなる群から選択される。
【0023】
第4の態様では、本発明は、患者を治療する方法であって、異常なStat3経路活性によって患者を特定するステップと、患者に本発明の化合物の治療的有効量を投与するステップとを含む方法を提供する。一実施形態では、異常なStat3経路活性によって患者を特定するステップは、リン酸化Stat3、またはStat3リン酸化の代用の上流もしくは下流側の調節因子の発現の検査を含む。異常なStat3経路活性によって患者を特定するステップは、患者から採取される、腫瘍の一部であってよい罹患組織または流体の検査を含むことができる。
【0024】
第5の態様では、本発明は、患者を治療する方法であって、異常なStat3経路活性に関連する障害と診断される患者を特定するステップと、患者に本発明の化合物の治療的有効量を投与するステップとを含む方法を提供する。一実施形態では、患者を特定するステップは、患者の障害を示す少なくとも1つのバイオマーカーについて検査することを含む。
【0025】
第6の態様では、本発明は、障害の存在を示すバイオマーカーについて検査することができる、異常なStat3経路活性に関連する障害を診断するための少なくとも1つの作用物質、および本発明の化合物の治療的有効量を含むキットを提供する。
【0026】
第7の態様では、本発明は、異常なStat3経路活性を診断するための少なくとも1つの作用物質、および本発明の化合物の治療的有効量を含むキットを提供する。一実施形態では、作用物質は、リン酸化Stat3、またはStat3リン酸化の代用の上流もしくは下流側の調節因子の発現を検査する。
【0027】
第8の態様では、本発明は、1つまたは複数の癌幹細胞を阻害する方法を提供する。本方法は、癌幹細胞に本発明の化合物の有効量を投与するステップを含む。本方法は、対象の癌を治療するために、インビトロまたはインビボで実施することができる。一実施形態では、癌は、CSCを有することが知られており、癌の例には、それらに限定されないが以下のものが含まれる:乳癌、頭頸部癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、結腸直腸癌、前立腺癌、肝癌、黒色腫、多発性骨髄腫、脳腫瘍、肉腫、髄芽細胞腫および白血病。一実施形態では、癌は転移性である。別の実施形態では、癌は、化学療法または放射線療法に治療抵抗性である。例えば、癌は、化学療法に本質的に耐性であってよい。さらに別の実施形態では、癌は、最初の治療の後に対象で再発している。
【0028】
第9の態様では、本発明は、癌幹細胞を阻害することができる薬剤候補を特定する方法であって、Stat3経路活性を阻害する薬剤候補についてスクリーニングするステップを含む方法を提供する。一実施形態では、薬剤候補は、癌幹細胞で細胞死を誘導することができ、別の実施形態では、CSCの自己再生を阻害することができる。様々な実施形態では、薬剤候補は、小分子Stat3阻害剤、Stat3に対するRNAi剤、Stat3に対するアンチセンス剤、ペプチド模倣物Stat3阻害剤、またはGカルテットオリゴデオキシヌクレオチドStat3阻害剤である。薬剤候補は、以下から選択される能力を有することができる:Stat3タンパク質のリン酸化を実質的に阻害すること、Stat3タンパク質の二量体化を実質的に阻害すること、Stat3タンパク質の核移行を実質的に阻害すること、Stat3タンパク質のDNA結合活性を実質的に阻害すること、およびStat3タンパク質の転写活性を実質的に阻害すること。
【0029】
第10の態様では、本発明は、標準の治療に治療抵抗性の癌について対象を治療する方法であって、本発明の化合物を含む医薬組成物の治療的有効量を対象に投与するステップを含む方法を提供する。標準の治療は、例えば、化学療法、放射線療法および/または手術であってよい。一実施形態では、癌は、化学療法に本質的に耐性である。
【0030】
第11の態様では、本発明は、対象の癌再発を治療または予防する方法であって、本発明の化合物を含む医薬組成物の治療的有効量を対象に投与するステップを含む方法を提供する。一実施形態では、医薬組成物は、手術後の補助療法として投与される。
【0031】
第12の態様では、本発明は、対象の癌転移を治療または予防する方法であって、本発明の化合物を含む医薬組成物の治療的有効量を対象に投与するステップを含む方法を提供する。一実施形態では、医薬組成物は、手術後の補助療法として投与される。
【0032】
第13の態様では、本発明は、例えば、悪性疾患を治療するために、対象の癌細胞を選択的に標的にする方法であって、対象の血漿中の化合物の濃度が各投薬の後の24時間を超える間重要な濃度を超えて維持されず、それによって、正常な細胞を実質的に残しながら癌細胞を選択的に死滅させるように、本発明の化合物を含む医薬組成物を対象に投与するステップを含む方法を提供する。あるいは、本発明の方法に従い、化合物の血漿中濃度は、各投薬の後のある時点、例えば、12、16、20または24時間後に、重要な濃度を超えない。一実施形態では、医薬組成物は、対象の血漿中の化合物濃度が、例えば、連続的に、各投薬の後の12、16および20時間からなる群から選択される持続時間を超える間重要な濃度を超えて維持されないように投与される。様々な実施形態では、重要な濃度は、約100μM、約50μM、約30μMまたは約20μMである。一実施形態では、癌細胞は、肝癌、頭頸部癌、膵臓癌、胃癌、腎臓癌、肉腫、多発性骨髄腫、転移性乳癌、白血病、リンパ腫、食道癌、脳腫瘍、神経膠腫、膀胱癌、子宮内膜癌、甲状腺癌、胆管癌、骨癌、眼癌(網膜芽細胞腫)、胆嚢癌、下垂体癌、直腸癌、唾液腺癌、鼻咽頭癌、乳癌、肺癌、結腸癌、前立腺癌、卵巣癌、神経芽細胞腫、子宮頸癌、白血病、黒色腫、口のエピサーモイド(epithermoid)、ケラチノサイトおよび皮膚癌からなる群、またはそのサブグループのいずれかから選択される癌の一部である。別の実施形態では、癌細胞は、肺癌、乳癌(転移型を含む)、子宮頸癌、結腸直腸癌腫、肝癌、頭頸部癌、膵臓癌、胃癌および前立腺癌からなる群から選択される癌の一部である。
【0033】
第14の態様では、本発明は、対象の癌を治療する方法であって、本発明の化合物を含む医薬組成物の治療的有効量を対象に投与するステップを含む方法を提供する。本発明のこの態様による方法は、本発明の前の態様に関して記載される癌に類似する癌を治療するために適用することができる。1つの特徴では、治療の対象は、哺乳動物、例えばヒトである。
【0034】
第15の態様では、本発明は、本発明の化合物、すなわち、2−(1−ヒドロキシエチル)−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−クロロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−フルオロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチルナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−エチル−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、リン酸モノ−[1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニル]エステル、リン酸1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニルエステルジメチルエステル、および薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される化合物、ならびに薬学的に許容される賦形剤、担体または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。1つの特徴では、組成物は、経口、鼻、局所、直腸、膣または非経口の投与、または静脈内、皮下もしくは筋肉内の注射に適する。
【0035】
第16の態様では、本発明は、本発明の化合物のいくつかを調製する方法も提供する。
本方法により、式4−6
【0036】
【化1】

の化合物(式中、RはH、ClまたはFである)は、式4−4
【0037】
【化2】

の化合物を、塩基および酸化剤の存在下の溶媒中で、ケトンと反応させるステップにより調製する。酸化剤は、例えば、O、BrまたはCBrClであってよい。一実施形態では、反応は、開放空気容器内で実施される。1つの特徴では、本方法のすべてのステップが、1つのポット内で、すなわち同じ容器内で行われる。様々な例示的な実施形態では、溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンまたはトルエンであってよく、塩基は、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンであってよい。
【0038】
上記の方法の一実施形態では、ケトンは、式4−3
【0039】
【化3】

の化合物である。
【0040】
上記の方法は、
式4−1
【0041】
【化4】

の化合物を、溶媒と一緒にまたは溶媒無しで臭化物と反応させて、式4−2
【0042】
【化5】

の化合物を生成するステップと、
その後、塩基の存在下の溶媒中で式4−2の化合物を反応させて、式4−3
【0043】
【化6】

の化合物を生成するステップとをさらに含むことができる。
【0044】
第17の態様では、本発明は、リン酸モノ−[1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニル]エステルという式の化合物を提供する。
【0045】
第18の態様では、本発明は、リン酸1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニルエステルジメチルエステルという式の化合物を提供する。
【0046】
第19の態様では、本発明は、化合物であるリン酸モノ−[1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニル]エステルを調製する方法であって、化合物である2−アセチルナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオンを、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドおよびカリウムビス(トリメチルシリル)アミドからなる群から選択される溶液と反応させ、続いて、ジメチルクロロホスフェートの溶液を加えるステップを含む方法を提供する。本方法は、生成物をCHClに溶解させ、飽和NHCLおよび水でそれを洗浄し、MgSOでそれを乾燥させ、その後生成物をカラムクロマトグラフィーに通すことによって、反応物から得られる粗生成物を精製するステップをさらに含むことができる。
【0047】
第20の態様では、本発明は、化合物であるリン酸1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニルエステルジメチルエステルを調製する方法であって、化合物であるリン酸モノ−[1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニル]エステルをトリメチルシリルブロミドと反応させるステップを含む方法を提供する。本方法は、半プレップHPLCによって、反応物から得られる粗生成物を精製するステップをさらに含むことができる。
【0048】
本発明の他の態様および実施形態は、示されるか、本発明の以下の詳細な説明から容易に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】癌幹細胞特異的療法および従来の癌療法の違いを示す図である。
【図2】癌におけるStat3経路を示す図である。
【図3】図3Aは、Stat3が、Hoechstサイドポピュレーション細胞において構成的に活性であることを示す図である。図3Bは、Stat3が、CD133細胞において構成的に活性であることを示す図である。
【図4】癌幹細胞において、Stat3のノックダウンがアポトーシスを誘導することを示す図である。
【図5】癌幹細胞において、Stat3のノックダウンが、癌幹細胞の球体形成性を阻害することを示す図である。
【図6】化合物401が、Stat3の転写活性化活性を阻害することを示す図である。
【図7】図7Aは、化合物401が、核抽出物においてStat3のDNA結合活性を阻害することを示す図である。図7Bは、化合物401、416および418が、核抽出物においてStat3のDNA結合活性を阻害することを示す図である。
【図8】図8Aは、化合物401が、異種移植腫瘍組織においてStat3のDNA結合活性を阻害することを示す図である。図8Bは、化合物401が、異種移植腫瘍組織において、Stat3下流エフェクターの発現レベルを阻害することを示す図である。
【図9A】Hoechstサイドポピュレーションのソーティングおよび分析を示す図である。
【図9B】Hoechstサイドポピュレーションが、非サイドポピュレーションと同じ程度に化合物401に対して感受性であることを示す図である。
【図10】図10Aは、化合物401が、Hoechstサイドポピュレーション細胞に対してアポトーシス性であることを示す図である。図10Bは、化合物401が、CD133細胞に対してアポトーシス性であることを示す図である。
【図11】化合物401が、CD44の球体形成を遮断することを示す図である。
【図12】インビボの化合物401による処置が、異種移植された腫瘍細胞の球体形成性を減少させることを示す図である。
【図13】化合物401が、癌細胞においてアポトーシスを誘導することを示す図である。
【図14】化合物401が、ヒト膵臓癌異種移植モデルにおいて抗腫瘍活性を表し、腫瘍のリバウンドをなくす点で標準的化学療法とは異なった挙動を示すことを示す図である。
【図15】化合物401が、ヒト頭頸部癌異種移植モデルにおいて抗腫瘍活性を表すことを示す図である。
【図16】化合物401が、ヒト乳癌異種移植モデルにおいて抗腫瘍活性を表すことを示す図である。
【図17】化合物401が、ヒト前立腺癌異種移植モデルにおいて抗腫瘍活性を表すことを示す図である。
【図18】化合物401が、ヒト胃癌異種移植モデルにおいて抗腫瘍活性を表すことを示す図である。
【図19】化合物401が、ヒト肝癌異種移植モデルにおいて抗腫瘍活性を表すことを示す図である。
【図20】化合物401が、ISMSモデルにおいて転移を阻害することを示す図である。
【図21】化合物401の、ラットにおける薬物動態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本明細書で用いるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかにそうでないことが示されない限り、複数形を含む。例えば、用語「細胞(a cell)」は、その混合物を含む複数の細胞を含む。
【0051】
本明細書で用いるように、用語「単離された」または「精製された」は、その天然の状態で通常それに付随する成分を、実質的にまたは基本的に含まない物質を指す。純度および均一性は、一般的に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーなどの分析化学技術を用いて決定される。
【0052】
本明細書で用いるように、用語「癌幹細胞」および「CSC」は、互換性である。CSCは哺乳動物性であり、好ましい実施形態では、これらのCSCはヒト起源であるが、それらはそれに限定されるものではない。癌幹細胞は、(1)多大な増殖能力を有し、(2)増殖能力または発達能力が低下した1種類または複数種類の分化した後代を生成する非対称性の細胞分裂が可能であり、そして(3)自己再生または自己維持のための対称性の細胞分裂が可能である、固形腫瘍由来の細胞の集団と定義され、機能的に特徴づけられる。CSCを特徴づけるための他の一般的な手法は、形態学ならびに、細胞表面マーカー、転写プロフィールおよび薬剤応答の調査を含む。CSCは、研究文献において、腫瘍/癌開始細胞、癌幹様細胞、幹様癌細胞、高度腫瘍形成性細胞、腫瘍幹細胞、固形腫瘍幹細胞、薬剤耐久細胞(drug survival cell)(DSC)、薬剤抵抗性細胞(DRC)または超悪性細胞とも呼ばれる。
【0053】
本明細書で用いるように、用語「自己再生」は、それらの数を補充または増加させるために、新しい腫瘍形成性の癌幹細胞を生成する、癌幹細胞の能力を指す。
【0054】
本明細書で用いるように、用語「癌」および「癌性」は、細胞集団が無秩序な細胞増殖を特徴とする哺乳動物の生理的状態を指すか、記載する。本明細書で用いるように、「癌細胞」および「腫瘍細胞」は、腫瘍細胞集団の大部分を含む非腫瘍形成性細胞と、腫瘍形成性幹細胞(癌幹細胞)の両方を含む、腫瘍に由来する細胞の全集団を指す。癌の例には、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫および白血病を含むが、これらに限定されない。そのような癌のより特定の例には、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃腸癌、膵臓癌、グリア芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌もしくは子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌および各種の頭頸部癌が含まれる。
【0055】
「腫瘍」は、本明細書で用いるように、良性(非癌性)または、前癌性病変を含む悪性(癌性)の、過剰の細胞成長もしくは増殖から生じる任意の組織塊を指す。
【0056】
「転移」は、本明細書で用いるように、癌が体の原発部位から他の領域に広がるか移って新しい場所に類似した癌性の病巣が発達する過程を指す。「転移性」または「転移する」細胞は、隣接細胞との接着性接触を失い、血流またはリンパを通して疾患の原発部位から移動して、近隣の体構造に侵入する細胞である。
【0057】
本明細書で用いるように、用語「対象」は、それらに限定されないが、ヒト、ヒト以外の霊長類、齧歯動物などを含む、特定の治療のレシピエントとなる任意の動物(例えば、哺乳動物)を指す。一般に、用語「対象」および「患者」は、ヒト対象に関して、本明細書で互換的に用いられる。
【0058】
本明細書で用いる、「治療する」または「治療」または「治療すること」または「軽減する」または「軽減すること」などの用語は、1)診断された病的状態または障害の症状を治癒させ、遅くし、軽くし、および/または診断された病的状態または障害の進行を停止させる治療措置、ならびに、2)標的の病的状態または障害の発達を予防するか遅くする、予防的または防止的措置の両方を指す。したがって、治療が必要な者には、障害をすでに有する者、障害を起こしやすい者、および、障害が予防されるべき者が含まれる。患者が以下の1つまたは複数を示す場合、対象は本発明の方法によって首尾よく「治療される」:癌細胞の数の減少またはその完全な非存在;腫瘍サイズの縮小;軟組織および骨への癌の広がりを含む周辺器官への癌細胞の浸入の阻害または癌細胞の浸入の非存在;腫瘍転移の阻害または非存在;腫瘍増殖の阻害または非存在;特定の癌に関連する1つまたは複数の症状の軽減;罹患率および死亡率の低下;ならびに、生活の質の向上。
【0059】
本明細書で用いるように、用語「阻害する」、「阻害すること」およびそれらの文法上の同等物は、生物活性との関連で用いられる場合、生物活性の下方制御を指し、それは、タンパク質の生成または分子のリン酸化などの標的にした機能を低下または除去することができる。特定の実施形態では、阻害は、標的にした活性の約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%の低下を指すことができる。障害または疾患との関連で用いられる場合、本用語は、症状の発生の予防、症状の軽減、または、疾患、状態もしくは障害の緩和の成功を指す。
【0060】
本明細書で用いるように、用語「薬学的に許容される賦形剤、担体または希釈剤」は、1つの器官または体の一部から別の器官または体の一部への、対象の医薬用薬剤の運搬または輸送に関与する、液体もしくは固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル化材などの、薬学的に許容される物質、組成物または媒体を意味する。各担体は、その製剤の他の成分と適合するという意味において「許容される」ものでなければならず、患者に有害であってはならない。薬学的に許容される担体の役目を果たすことができる物質の一部の例には、以下のものが含まれる:乳糖、グルコースおよびショ糖などの糖;トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;トラガント末;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオバターおよび坐薬ワックスなどの賦形剤;落花生油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張性の食塩水;リンガー液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;ならびに、医薬製剤で使用される他の無毒性適合物質。湿潤剤、乳化剤および滑沢剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウムおよびポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド共重合体、ならびに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、香味料および香料、防腐剤および抗酸化剤が、組成物に存在してもよい。
【0061】
本発明の化合物は塩を形成することができ、それらも本発明の範囲内である。本明細書で本発明の化合物への言及は、特に明記しない限り、その塩への言及を含むものと理解される。本明細書で使用されるように、用語「塩(複数可)」は、無機および/または有機の酸および塩基と形成される、酸性および/または塩基性の塩を表す。さらに、本発明の化合物が、それらに限定されないがピリジンまたはイミダゾールなどの塩基性の部分、および、それらに限定されないがカルボン酸などの酸性部分の両方を含む場合、双性イオン(「内塩」)を形成することができ、それらは本明細書で用いる用語「塩(複数可)」の範囲に含まれる。薬学的に許容される(すなわち、無毒性で、生理的に許容される)塩が好ましいが、他の塩も、例えば、調製中に使用することができる単離または精製ステップで有用である。本発明の化合物の塩は、例えば、化合物I、IIまたはIIIを、酸または塩基のある量(例えば同等量)と、塩がその中で沈殿するような媒体中で反応させて形成するかまたは水性媒体中で反応させ、その後凍結乾燥することによって形成させることができる。
【0062】
本発明の化合物の溶媒和物も、本明細書で企図される。本発明の化合物の溶媒和物には、例えば水和物が含まれる。
【0063】
最近の研究により、腫瘍を再生する独占的な能力を有する、癌幹細胞(CSC)の存在が発見された。これらのCSCは、ほとんどすべての腫瘍型に存在し、連続的悪性増殖、癌転移、再発および癌薬剤耐性と機能的に関連する。CSCおよびそれらのより分化した後代は、著しく異なる生物特性を有するようである。従来の癌薬剤スクリーニングは腫瘤の量の測定に依存し、したがって、それらは、CSCに特異的に作用する薬剤を必ずしも選択することができるわけではない。実際、CSCは、標準の化学療法および放射線療法に耐性であること、標準の抗癌治療の後に増殖し、結果として癌の治療抵抗性および再発をもたらすことが証明された。これらの細胞を単離する方法には、Hoechst 33342を流出させるそれらの能力の特定、CD133、CD44、CD166、その他などのこれらの細胞が発現する表面マーカーによる特定、およびそれらの腫瘍形成特性による富化が含まれるが、これらに限定されない。癌幹細胞を腫瘍形成に関連付ける、増えつつある証拠は、癌幹細胞を標的にする膨大な治療の機会を告げている。
【0064】
この未開拓の可能性の錠を開ける鍵は、CSCの自己再生および生存にとって選択的に重要である経路の特定および検証である。癌および胚性幹細胞もしくは成体幹細胞での腫瘍形成の基礎をなす複数の経路が過去に解明されているが、CSCの自己再生および生存についてはいかなる経路も特定、検証されていない。
【0065】
本発明は、Stat3経路活性がCSCの生存および自己再生の両方に重要であるという証拠を提供する(実施例1)。本発明は、Stat3経路活性の有効な阻害剤である化合物をさらに提供する(実施例2)。本発明は、これらのStat3阻害剤がCSC自己再生を阻害し、CSCにアポトーシス性であることを示す、インビトロおよびインビボの両方のデータも提供する(実施例3)。本発明は、これらの化合物が広範囲の癌細胞をインビトロで選択的に死滅させることができ(実施例4)、同様に広範囲の癌をインビボで阻害することができること(実施例5)も示す。さらに、本発明は転移癌に対するStat3阻害剤の効力を実験的に確認する(実施例6)。さらに、本発明は、これらの化合物が、インビボにおける癌細胞の選択的殺滅のための所望のPK曝露を達成することができることを、実験的に確認する(実施例7)。
【0066】
本明細書で提供されるデータは、CSC研究の最近の進展と組み合わせて、本発明が、CSCを阻害すること、または、具体的にはCSCを有する癌、もしくは一般には癌を治療することを目的とする、一群の方法を提供することを可能にする。また、細胞のStat3経路活性を阻害すること、または、異常なStat3経路活性に関連する癌性および非癌性の障害を治療することを対象とする方法も、本明細書で提供される。本発明は、関連する方法(例えば、製造および薬剤候補スクリーニング)、材料、組成物およびキットも提供する。
【0067】
Stat3経路を下方制御するかブロックすることがCSCの自己再生および生存の両方を阻害する(実施例1)との知見により、本発明は、CSC内の少なくとも一部のStat3経路活性がStat3経路阻害剤によって阻害される、癌幹細胞を阻害する方法を提供する。一実施形態では、Stat3経路活性のほとんど、すなわち50%超が阻害される。別の実施形態では、実質的にすべてのStat3経路活性が阻害される。本方法は、CSCが腫瘍形成性のCSC細胞に分裂することによってその数を補充することができないように、CSCの自己再生を防止することができる。または、本方法は、CSCで細胞死を誘導することができる。
【0068】
この方法は、対象の癌を治療するために用いることができる。CSCおよび異常な(例えば、過活動のもしくは構成的に活性な)Stat3経路活性を有することが公知である癌は、そのような治療にふさわしい候補であり、例には、それらに限定されないが以下のものが含まれる:乳癌、頭頸部癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、結腸直腸癌、前立腺癌、腎細胞癌、黒色腫、肝細胞癌、子宮頸癌、肉腫、脳腫瘍、胃癌、多発性骨髄腫、白血病およびリンパ腫。一実施形態では、本方法は、肝癌、頭頸部癌、膵臓癌および/または胃癌を治療するために用いられる。別の実施形態では、本方法は、多発性骨髄腫、脳腫瘍および肉腫を治療するために用いられる。
【0069】
さらに、CSCは、腫瘍形成、癌転移および癌再発の役割を基本的に担うことが証明されているので、CSCの阻害を目的とする本発明の任意の方法を、転移性であるか、化学療法もしくは放射線療法に治療抵抗性であるか、または、最初の治療の後に対象で再発した癌を治療するために実施することができる。
【0070】
一実施形態では、阻害剤は、単離、精製または合成され、また、小分子Stat3阻害剤、Stat3に対するRNAi剤、Stat3に対するアンチセンス剤、ペプチド模倣物Stat3阻害剤およびG−カルテットオリゴデオキシヌクレオチドStat3阻害剤からなる群から選択することができる。阻害剤は、天然生成物からも単離または精製することができる。
【0071】
阻害機構は、Stat3経路の任意のステップを標的にするように選択することができる。例えば、阻害剤は、Stat3タンパク質のリン酸化を実質的に阻害すること、Stat3タンパク質の二量体化を実質的に阻害すること、Stat3タンパク質の核移行を実質的に阻害すること、Stat3タンパク質のDNA結合活性を実質的に阻害すること、および/またはStat3タンパク質の転写活性を実質的に阻害することができる。あるいは、Stat3経路阻害剤は、Stat3経路の1つまたは複数の上流または下流側成分を阻害することができる。
【0072】
Stat3経路は、IL−6などのサイトカインに反応して、または、EGFR、JAK、Abl、KDR、c−Met、SrcおよびHer2などの一連のチロシンキナーゼによって活性化することができる。Stat3の下流側エフェクターには、それらに限定されないが、Bcl−xl、c−Myc、サイクリンD1、Vegf、MMP−2およびサバイビン(survivin)が含まれる(図2)。表1に示すように、Stat3経路は、多種多様のヒト疾患で異常に活動的であることがわかっている。調べた既存の臨床試料から、乳癌および肺癌、肝細胞癌、多発性骨髄腫の半数超で、および頭頸部癌の95%超で、Stat3経路が持続的活性で存在することが示された。活性化Stat3は、いくつかの自己免疫疾患および炎症性疾患でも証明されている。さらに、インターロイキン6などのサイトカイン媒介性の炎症は、アテローム硬化[38]、末梢血管疾患[39、40]、冠状動脈疾患[39、40]、高血圧症[41]、骨粗鬆症[42]、2型糖尿病[39]および認知症[43]の一般的な原因であり、gp130−Jak−StatはIL−6によって活性化される主な経路であるので、Stat3経路の阻害は、これらの疾患も予防し得る。
【0073】
【表1】

一実施形態では、本発明によるStat3阻害剤は、以下の通りである:2−(1−ヒドロキシエチル)−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−クロロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−フルオロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチルナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−エチル−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、リン酸モノ−[1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニル]エステル、リン酸1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニルエステルジメチルエステル、その鏡像異性体、ジアステレオマー、互変異性体およびその塩もしくは溶媒和物(「本発明の化合物」)(実施例2)。本発明は、本発明の化合物がCSC自己再生を阻害し、CSCでアポトーシスを誘導することを示す、インビトロおよびインビボデータの両方も提供する(実施例3)。
【0074】
Stat3経路の下方制御がCSCを阻害する証拠を提供し、本発明は、癌幹細胞を阻害することができる薬剤候補を特定する方法を提供する。本方法は、Stat3経路活性を阻害する薬剤候補についてスクリーニングするステップを含む。様々な実施形態では、薬剤候補は、小分子Stat3阻害剤、Stat3に対するRNAi剤、Stat3に対するアンチセンス剤、ペプチド模倣物Stat3阻害剤、またはGカルテットオリゴデオキシヌクレオチドStat3阻害剤である。
【0075】
一実施形態では、薬剤候補は、CSCで細胞死を誘導すること、または少なくともその自己再生を阻害することができる。経路の様々なフェーズを、薬剤候補のスクリーニングについての標的にすることができる。例えば、本方法の様々な実施形態は、Stat3タンパク質のリン酸化を実質的に阻害するか、Stat3タンパク質の二量体化を実質的に阻害するか、Stat3タンパク質の核移行を実質的に阻害するか、Stat3タンパク質のDNA結合活性を実質的に阻害するか、またはStat3タンパク質の転写活性を実質的に阻害する薬剤候補についてスクリーニングすることができる。
【0076】
下の実施例2が示すように、本発明の化合物は、インビトロでStat3転写活性およびStat3のDNA結合活性を阻害する。実施例2は、本発明の化合物が、Stat3の下流側エフェクター(例えば、サイクリンD1およびサバイビン)の発現およびStat3のDNA結合活性の両方をインビボで阻害することをさらに示す。
【0077】
したがって、別の態様では、本発明は、本発明の化合物の有効量が投与される、細胞Stat3経路活性を阻害する方法を提供する。別の態様では、本発明の化合物は、異常なStat3経路活性に関連する障害または状態を治療または予防するための医薬組成物を製剤化するために用いることができる。1種の障害の中のサブタイプであってよい障害に罹患している患者が、患者の細胞の少なくとも一部に、必ずしもそうではないが障害の病状に寄与することができる、異常なStat3経路活性を一般に有する場合、本明細書で、障害は異常なStat3経路活性に「関連する」とみなされる。異常なStat3経路活性に関連することが公知である障害の一部には、それらに限定されないが以下のものが含まれる:自己免疫疾患、炎症性疾患、炎症性腸疾患、関節炎、自己免疫脱髄障害、アルツハイマー病、脳卒中、虚血再灌流傷害および多発性硬化症。異常なStat3経路活性に関連することが公知である障害の一部は癌であり、例には、それらに限定されないが以下のものが含まれる:様々な種類の乳癌、頭頸部癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、結腸直腸癌、前立腺癌、腎細胞癌、黒色腫、肝細胞癌、子宮頸癌、肉腫、脳腫瘍、胃癌、多発性骨髄腫、白血病およびリンパ腫。
【0078】
本発明のこの態様に関係し、異常なStat3経路活性に関連する障害を診断するための1つまたは複数の作用物質、および、本発明の化合物または別の有効なStat3経路阻害剤の治療的有効量を含むキットが提供される。診断剤は、疑われる障害によって任意の適する試薬であってよく、例には、血液試料を引き抜き、生検材料をとり、生体分子(例えば、抗原もしくは抗体)についてスクリーニングし、または、試料から遺伝情報を抽出するために必要な作用物質を含めることができる。作用物質には、溶媒、洗浄剤、抗凝血物質、抗原、抗体、酵素、PCRプライマー、その他を含めることができる。
【0079】
異常なStat3活性に関連することが公知である障害と患者が診断されるにせよされないにせよ、医師は、患者からとられる生検試料中に異常なStat3活性があるかどうか見分けるために、検査を常に命令することができる。したがって、異常なStat3経路活性を診断するための1つまたは複数の作用物質、および、本発明の化合物または別の有効なStat3経路阻害剤の治療的有効量を含むキットが提供される。1つの特徴では、異常なStat3経路活性は、そのような活性の任意の証拠、例えば、リン酸化Stat3の発現(レベル、持続時間など)または代わりのStat3リン酸化の上流もしくは下流側の調節因子の発現(レベル、持続時間など)を調べるための、任意の適する分析的手段を通して特定することができる。前に記載したキットに類似して、診断剤は、検査が診る異常なStat3経路活性の証拠によって、任意の適する試薬であってよい。
【0080】
下の実施例3が示すように、少なくともStat3経路阻害剤である本発明の化合物は、癌幹細胞を死滅させる。また、実施例3は、本発明の化合物が、CSC自己再生の良好な阻害の指標であるCSC球体形成を、インビトロおよびインビボの両方で阻害することも証明する。
【0081】
したがって、一態様では、本発明は、本発明の化合物の有効量が細胞に投与される、癌幹細胞を阻害する方法を提供する。CSCを有することが公知である癌はそのような治療の良好な候補であり、例には、それらに限定されないが以下のものが含まれる:様々な種類の乳癌、頭頸部癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、結腸直腸癌、前立腺癌、肝癌、黒色腫、多発性骨髄腫、脳腫瘍、肉腫、髄芽細胞腫および白血病。
【0082】
さらに、CSCは、腫瘍形成、癌転移および癌再発の役割を基本的に担うことが証明されているので、CSCの阻害を目的とする本発明の任意の方法を、転移性であるか、化学療法もしくは放射線療法に治療抵抗性であるか、または、最初の治療の後に対象で再発した癌を治療するために実施することができる。下の実施例6は、本発明の化合物の抗転移効力をインビボで具体的に試験し、データは、原発腫瘍病巣の数および自然発生肝転移のかなりの減少を示す。
【0083】
下の実施例4では、本発明の化合物は、広範囲の癌細胞でアポトーシスを引き起こすだけでなく、低毒性治療薬の開発に重要であるその細胞傷害性における選択性を示すことが示される。本明細書で用いる選択的な細胞傷害性は、時にはある条件下で、正常な細胞を実質的に残しながら癌細胞を死滅させる化合物の能力を指す。通常、正常な細胞は、健康な、非腫瘍形成性の細胞を指す。薬剤候補のための選択的細胞傷害性をもたらす条件は、細胞傷害性の根底にある機構についての知識を必要とするので、予測するのが困難である。例えば、有糸分裂中の微小管形成を標的にする抗癌剤の毒性を低下させることは、細胞の代謝過程をブロックする薬剤と非常に異なる、研究すべき因子を提示する。選択的な細胞傷害性を生むための適する条件は、薬剤が、正常な細胞に十分に許容されつつも、癌細胞を効果的に死滅させるのに十分毒性がある必要性のバランスをとる必要がある。例えば、より低い濃度を用いる場合、それは、しばしば、癌細胞を死滅させるために長期注入が必要であることを意味する。
【0084】
実施例4に示すデータを含む本発明の実施例で生成されるデータから、罹患細胞がある期間を超えて連続的に化合物の重要な濃度に曝露されない場合に、本発明の化合物の選択的細胞傷害性を達成することができることは明らかである。対象の癌細胞を選択的に死滅させることを目的とする方法においては、対象の血漿中の化合物の濃度が各投薬の後の24時間を超える間重要な濃度を超えて維持されないように、本発明の化合物を有する医薬組成物を対象に投与する。この方法は、本明細書で記載される癌の群のいずれかを含むすべての癌を治療するために、および、Stat3関連の障害を治療するために用いることができるが、その例示的なリストはすでに上で提供されており、ここで繰り返さない。あるいは、持続時間は、各投薬の後12、16および20時間にさらに制限されてもよい。各化合物の重要な濃度は、異なることができる。本発明の様々な実施形態では、重要な濃度は、約100μM、約50μM、約30μMまたは約20μMである。
【0085】
本方法の一実施形態では、治療される癌は、以下の群から選択される:肝癌、頭頸部癌、膵臓癌、胃癌、腎臓癌、肉腫、多発性骨髄腫、転移性乳癌、転移性前立腺癌、白血病、リンパ腫、食道癌、脳腫瘍、神経膠腫、膀胱癌、子宮内膜癌、甲状腺癌、胆管癌、骨癌、眼癌(網膜芽細胞腫)、胆嚢癌、下垂体癌、直腸癌、唾液腺癌および鼻咽頭癌。
【0086】
一態様では、本発明は、対象の癌を治療する方法であって、本発明の化合物を含む医薬組成物の治療的有効量を対象に投与する方法を提供する。癌は転移性であってよい。対象は、哺乳動物、例えばヒトであってよい。
【0087】
本明細書に記載される対象を治療する方法のいずれについても、本発明は、化合物の有効な投薬量範囲、投薬頻度および血漿中濃度を提供する。様々な実施形態では、医薬組成物は、以下の投薬量で投与される:(a)約1mg/m〜約5,000mg/m(I.V.)または約1mg/m〜約50,000mg/m(PO);(b)約2mg/m〜約3,000mg/m(I.V.)または約10mg/m〜約50,000mg/m(PO)。様々な実施形態では、本発明の化合物は、隔日(Q2D)、毎日(QD)または1日に2回(BID)投与することができる。一実施形態では、医薬組成物は、経口的に、1日に4回(QID)以下で投与される。
【0088】
一特徴では、医薬組成物は、対象の血漿中の化合物濃度が、各投薬の後の24時間(または12、16および20時間)を超えて、重要な濃度を超えて維持されないように対象に投与される。本発明の代替実施形態によると、非選択的毒性を回避する投薬計画として、化合物の血漿中濃度は、各投薬の後のある時点、例えば、12、16、20または24時間後に、重要な濃度を超えない。本発明の様々な実施形態では、重要な濃度は、約100μM、約50μM、約30μMまたは約20μMである。組成物は、ある場合には、単離、精製または合成される。
【0089】
別の態様では、本発明は、本発明の化合物、および薬学的に許容される賦形剤、担体または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。1つの特徴では、組成物は、経口、鼻、局所、直腸、膣または非経口の投与、または静脈内、皮下もしくは筋肉内の注射に適する。
【0090】
本発明の製剤には、経口、鼻、局所(口内および舌下を含む)、直腸、膣および/または非経口投与に適するものが含まれる。製剤は単位剤形で都合よく提供することができ、また薬剤学の分野で周知である任意の方法で調製することができる。単一の剤形を生成するために担体物質と組み合わせることができる有効成分の量は、治療される哺乳動物および特定の投与様式によって異なる。単一の剤形を生成するために担体物質と組み合わせることができる有効成分の量は、一般に、治療効果を生成する化合物の量である。一般に、この量は、100%のうち、例えば、有効成分約1%〜約99%、約5%〜約70%、約10%〜約30%の範囲である。
【0091】
経口投与に適する本発明の治療用の組成物または製剤は、カプセル、カシェ剤、ピル、錠剤、ロゼンジ(風味をつけた基剤、通常ショ糖およびアラビアゴムまたはトラガカントゴムを用いる)、粉末、粒剤の形態、または、水性もしくは非水性の液体中の溶液もしくは懸濁液として、または水中油もしくは油中水の液体乳剤として、またはエリキシルもしくはシロップとして、または香剤(不活性の基剤、例えばゼラチンおよびグリセリン、またはショ糖およびアラビアゴムを用いる)として、および/または洗口剤などとしての形態であってよく、それぞれは有効成分として本発明の化合物の所定量を含む。本発明の化合物は、ボーラス、舐剤またはペーストとして投与することもできる。
【0092】
経口投与のための本発明の固体剤形(カプセル、錠剤、ピル、糖剤、粉末、粒剤など)では、本発明の化合物は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの1つまたは複数の薬学的に許容される担体、および/または以下のいずれかと混合される:デンプン、乳糖、ショ糖、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸などの充填剤または増量剤;例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖および/またはアラビアゴムなどの結合剤;グリセロールなどの湿潤剤;寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩、炭酸ナトリウムおよびデンプングリコール酸ナトリウムなどの崩壊剤;パラフィンなどの溶解遅延剤;第四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤;例えばセチルアルコール、グリセロールモノステアレートおよびポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド共重合体などの湿潤剤;カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収材;タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびそれらの混合物などの滑沢剤;ならびに着色剤。カプセル、錠剤およびピルの場合、医薬組成物は、緩衝剤を含むこともできる。類似した種類の固体組成物を、ラクトースまたは乳糖、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いて、軟質および硬質充填ゼラチンカプセル内の充填剤として使用することもできる。
【0093】
本発明の化合物の経口投与のための液体剤形には、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ剤およびエリキシルが含まれる。有効成分に加えて、液体剤形は、当技術分野で通常用いられる不活性の希釈剤、例えば水もしくは他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(より詳細には、綿実、落花生、トウモロコシ、胚芽、オリーブ、キャスターおよびゴマの油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、およびそれらの混合物を含むことができる。さらに、シクロデキストリン、例えば、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを、化合物を可溶化するために用いることができる。
【0094】
不活性希釈剤のほかに、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、香味料、着色剤、香料および防腐剤などのアジュバントを含むこともできる。懸濁液は、本発明の1つまたは複数の化合物に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステルなどの懸濁剤、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天およびトラガカントゴム、およびそれらの混合物を含むことができる。
【0095】
直腸投与または膣投与のための本発明の医薬組成物の製剤は、坐薬として提供することができ、それは、本発明の1つまたは複数の化合物を、例えばカカオバター、ポリエチレングリコール、坐薬ワックスまたはサリチル酸塩を含む、1つまたは複数の適する非刺激性の賦形剤または担体と混合することによって調製することができ、それは、室温で固体であるが体温では液体であり、したがって、直腸または膣腔内で融解し、本発明の活性薬剤を放出する。膣投与に適する本発明の製剤には、適当であることが当技術分野で公知である担体などを含む、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡またはスプレー製剤も含まれる。
【0096】
本発明による組成物の局所投与または経皮投与のための剤形には、粉末、噴霧剤、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチおよび吸入剤が含まれる。活性化合物は、薬学的に許容される担体、および、任意の防腐剤、緩衝剤、または必要とされるかもしれない噴射剤と、無菌条件下で混合することができる。
【0097】
軟膏、ペースト、クリームおよびゲルは、本発明の化合物に加えて、賦形剤を、例えば動物および植物の脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカントゴム、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはそれらの混合物を含むことができる。
【0098】
粉末および噴霧剤は、本発明の化合物に加えて、賦形剤を、例えば乳糖、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物を含むことができる。噴霧剤は、通常の噴射剤、例えばクロロフルオロハイドロカーボンおよび揮発性の非置換の炭化水素、例えばブタンおよびプロパンをさらに含むことができる。
【0099】
眼用製剤、眼軟膏、粉末、溶液なども、本発明の適用範囲内であることが企図される。
【0100】
非経口投与に適する本発明の医薬組成物は、本発明による1つまたは複数の化合物を、1つまたは複数の薬学的に許容される無菌の等張性の水溶液もしくは非水性の溶液、分散物、懸濁液または乳剤、または、使用直前に無菌の注射可能な溶液もしくは分散物に再構成することができる無菌粉末と一緒に含み、それらは、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、製剤を予定のレシピエントの血液で等張性にする溶質または懸濁剤もしくは増粘剤を含むことができる。
【0101】
場合によっては、本発明による組成物の効果を長くするために、皮下注射または筋肉内注射からの体によるその吸収を遅くすることが望ましい。これは、水溶性の劣る結晶性または非晶質の物質の液体懸濁液を用いて達成することができる。次に、薬剤の吸収速度はその溶解速度に依存し、次に、溶解速度は結晶サイズおよび結晶形態に依存することができる。あるいは、非経口的に投与される組成物の遅延型吸収は、化合物を油媒体に溶解または懸濁することによって達成される。デポ注入のための1つの戦略は、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド共重合体の使用を含み、そこでは、媒体は室温で流体であり、体温で固化する。
【0102】
本発明の医薬化合物は、単独で、または他の薬剤と組み合せて、または、本明細書で記載される他の抗癌療法と組み合せて、および、薬学的に許容される賦形剤、担体または希釈剤と一緒に投与することができる。
【0103】
一実施形態では、薬学的に許容される賦形剤、担体または希釈剤は、静脈内送達のための脂質を含む。脂質は、リン脂質、合成ホファチジルコリン(phophatidylcholine)、天然のホファチジルコリン(phophatidylcholine)、スフィンゴミエリン、セラミド、ホファチジルエタノールアミン(phophatidylethanolamine)、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、コレステロール、コレステロール硫酸、ならびにハプテンおよびPEGを結合させた脂質であってよい。脂質は、ナノエマルジョン、ミセル、乳剤、懸濁液、ナノ懸濁液、ニオソーム(niosome)またはリポソームの形であってよい。一実施形態では、薬学的に許容される賦形剤、担体または希釈剤は、ミセル乳剤、懸濁液またはナノ粒子懸濁液の形であり、それは、静脈内送達のために、静脈内で許容されるタンパク質、例えばヒトアルブミンまたはその誘導体をさらに含む。
【0104】
一実施形態では、薬学的に許容される賦形剤、担体または希釈剤は、経口送達のためにワックス状物質を含む。ワックス状物質は、モノグリセリド、ジグリセリドもしくはトリグリセリド、PEGのモノ脂肪酸エステル、ジ脂肪酸エステル、PEG結合ビタミンE(ビタミンE TPG)および/またはGelucireであってよい。Gelucireは、Gelucire 44/14、Gelucire 43/01、Gelucire 50/02、Gelucire 50/13、Gelucire 37/02、Gelucire 33/01、Gelucire 46/07およびGelucire 35/10から選択することができる。一実施形態では、薬学的に許容される賦形剤、担体または希釈剤は、Capryol、Transcutol hp、Labrafil M、Labrasol、トリアセチン、Pharmasolv、エタノール、ポリビニルピロリジン、カルボキシメチルセルロース、Tween 20およびTween 80から選択される。一実施形態では、薬学的に許容される賦形剤、例えば、Gelucire 44/14は、Tween 80またはTween 20であってよい界面活性剤と混合される。医薬組成物のこれらの実施形態は、経口投与のためにさらに製剤化することができる。
【0105】
本発明の化合物は、市販の出発物質および、有機化学分野の技術者に周知である方法を用いて合成することができる。実施例8〜10で、本発明は、請求されるいくつかの化合物の生産方法を提供する。
【0106】
本発明の1つまたは複数の実施形態によると、小分子Stat3阻害剤は、Stat3に対して阻害活性を示す、任意の低分子量薬剤を指す。タンパク質、ペプチドおよび炭水化物などのより大きな分子量の医薬と比較して、小分子は、細胞膜および脳血液関門をより容易に透過することができる。これらの分子は、より安価な方法開発コストおよび製造コストをもたらす傾向がある。
【0107】
本発明の1つまたは複数の実施形態によると、RNAi療法は、悪いタンパク質、したがって疾患をもたらす遺伝子をサイレンシングすることによる、疾患の治療におけるRNA干渉(RNAi)の直接使用である。RNAiは、生細胞中のある遺伝子活性を抑制する天然に存在する過程である。それは、低分子干渉RNA(siRNA)などの短いRNA二重鎖中間体を通して二本鎖RNAが細胞内で誘発する、広く保存された真核生物の機能である。一連のプロセシングステップを通して、siRNAの2つの鎖のうちの1つはタンパク質と複合体を形成して、RISC(RNA誘導性のサイレンシング複合体)を形成する。RISCは、ワトソン−クリックの塩基対合によって相補的RNA配列を認識し、その後、それを切断する。RNAiには、shRNA、miRNAその他も含まれる。
【0108】
本発明の1つまたは複数の実施形態によると、アンチセンス療法は、遺伝的障害または感染症に対する治療形態である。特定の遺伝子の遺伝子配列が特定の疾患を引き起こすことが公知である場合、その遺伝子によって生成されるメッセンジャーRNA(mRNA)に結合し、それを不活性化して、効果的にその遺伝子を「オフ」にする核酸(DNA、RNAまたは化学類似体)の鎖を合成することが可能である。これは、mRNA翻訳されるためにはmRNAが一本鎖でなければならないからである。この合成された核酸は「アンチセンス」オリゴヌクレオチドと呼ばれるが、その理由は、その塩基配列が、「センス」配列と呼ばれる遺伝子のメッセンジャーRNA(mRNA)に相補的であるからである(したがって、mRNAのセンスセグメント「5’−AAGGUC−3’」は、アンチセンスmRNAセグメント「3’−UUCCAG−5’」によってブロックされるであろう)。
【0109】
本発明の1つまたは複数の実施形態によると、ペプチド模倣物物質は、ペプチドを模倣するように設計される小タンパク質様鎖である。一般的に、それらは、分子の特性を変化させるために、既存のペプチドの修飾から生じる。例えば、それらは、分子の安定性または生物活性を変えるための修飾から生成することができる。これは、既存のペプチドからの薬剤様化合物の開発で、役割を果たすことができる。これらの修飾は、天然に存在しないペプチドの変化(例えば変化させられた骨格および非天然アミノ酸の組込み)を含む。
【0110】
本発明の1つまたは複数の実施形態によると、G−カルテットオリゴデオキシヌクレオチド阻害剤は、細胞中のそれらのRNA切断活性とは無関係にタンパク質を阻害するように設計された、触媒性のDNA分子(DNAザイム)である。
【0111】
材料および方法
生物検定
本発明の化合物は、上記のプロトコルに従って試験することができる。表2は、プロトコルに記載される化合物のリストを示す。
【0112】
【表2】

細胞培養:Hela、DU145、H1299、DLD1、SW480、A549、MCF7、LN18、HCT116、HepG2、Paca2、Panc1、LNcap、FaDu、HT29およびPC3細胞(ATCC、Manassas、VA)を、10%ウシ胎児血清(FBS)(Gemini Bio−Products、West Sacramento、CA)および5%ペニシリン/ストレプトマイシン/アンホテルシン(amphotercin) B(Invitrogen)を添加したダルベッコの修正イーグル培地(DMEM)(Invitrogen、Carlsbad、CA)で維持した。
【0113】
Hoechstサイドポピュレーション:サイドポピュレーション(SP)および非SP画分を特定、単離するために、トリプシンおよびEDTAを含む培養皿からSW480細胞を取り出し、遠心分離によってペレットにし、リン酸緩衝化食塩水(PBS)で洗浄し、2%FBSおよび1mM HEPESを含むダルベッコの修正イーグル培地(DMEM)に37℃で再懸濁した。次に、細胞を、5μg/mLの濃度のHoechst 33342(Invitrogen)で標識した。標識細胞を、単独で、または50μMベラパミル(Sigma−Aldrich、St.Louis)と一緒に、37℃で120分間インキュベートした。染色の後、細胞を、2%FBSおよび1mM HEPESを含むHanksの平衡化食塩溶液(HBSS;Invitrogen)に懸濁し、40μmメッシュフィルターに通し、フローサイトメトリー分析まで4℃に維持した。Hoechst色素を350nmで励起させ、その蛍光を、450DF10(450/20nmバンドパスフィルター)および675LP(675nmロングパスエッジフィルター)の光学フィルターを用いて、2波長で測定した。前方散乱光および側方散乱光のゲーティングはストリンジェントではなく、デブリだけが除外された[15]。
【0114】
表面マーカーによるCSC単離:表面マーカー(複数可)、例えばCD44またはCD133の差次的発現に主に基づく腫瘍細胞の選別は、今日まで記載されている大部分の高度の腫瘍形成性のCSCを説明してきた。CD133の単離は、わずかな修正を加えたRicci−Vitianiら[20]の方法に基づく。CD133細胞は、蛍光標示式細胞分取(FACS)または磁気ナノ粒子に基づく分離によって単離した。簡潔には、10個の細胞/mLを、FACSに基づく細胞選別のためにCD133/1(AC133)−PEで標識、または、磁場に基づく分離のためにCD133/1(AC133)−ビオチン(Miltenyi Biotec、Auburn、CA)で標識したが、標識のためには、製造業者の推奨に従ってEasySep(登録商標)ビオチン選択キット(Miltenyi Biotec)を用いた。非特異的標識を、供給されたFcRブロッキング試薬でブロックし、抗体インキュベーション(1:11)を、氷上の2%FBSおよび1mM EDTAを含むPBS中で15分間実行した。5回の洗浄をEasySep(登録商標)単離のために行い、細胞を5分間の400×gでペレットにし、2×10/mLに再懸濁した後、FACSによって選別した。
【0115】
CD44細胞を、わずかな修正を加えたPontiらに記載の方法に従ってFACSによって単離した[85]。簡潔には、増殖培地での37℃で30分間の細胞のトリプシン処理および回収の後、細胞を400×gでペレットにし、2%FBSおよび1mM EDTAを含むPBSに、1×10細胞/mLで再懸濁した。次に、細胞を、氷上でCD44−FITC(BD Biosicences、San Diego、CA)の1:100の希釈溶液と15分間インキュベートした。あるいは、陰性選択のために、CD24−PE(BD Bioscences、San Diego、CA)(1:100)を利用した。3回洗浄の後、細胞を2×10個/mLに再懸濁し、40μMメッシュに通した後に選別した。
【0116】
スフィアアッセイ:細胞集団の自己再生能力を測定する信頼できる方法は、血清または接着物が存在しない場合に球体として培養される能力である。球体形成を可能にするために、CD44 FaDuまたはHoechstサイドポピュレーション癌幹細胞を、癌幹細胞培地(DMEM/F12、B27 Neurobasal補助剤、20ng/ml EGF、10ng/ml FGF、4μg/mlインスリンおよび0.4%BSA)が入った超低接着プレート中で培養した。一般的に、培養の10〜14日後に球体形成を鏡検によって評価し、細胞数>50の球体を記録した。
【0117】
ルシフェラーゼレポーターアッセイ:製造業者(Invitrogen)によって記載される通りにリポフェクタミン(Lipofectamine)2000を用いて、HeLa細胞をStat3−ルシフェラーゼ(Stat3−Luc)レポーターベクター(Panomics、Fremont、CA州)およびRenillaルシフェラーゼ(Promega、Madison、WI)でコトランスフェクトした。トランスフェクションの後、0.5%FBSを含む培地で細胞を24時間維持した。次に、細胞を指示された化合物で30分間処理し、その後、培地に25ng/mlオンコスタチンM(OSM)(R&D Systems、Minneapolis、MN)を加えた。OSMの添加の6時間後、細胞を収集し、製造業者(Promega)によって記載されるように、Dual−Gloルシフェラーゼアッセイ系を用いて、ホタルおよびrenillaルシフェラーゼのレベルを測定した。
【0118】
アポトーシスの分析:化合物によって処理した細胞または処理しなかった細胞を、アネキシンV染色のための処理の5時間後に収集した。収集した細胞をPBSで洗浄し、アネキシンV−FITC含有緩衝剤に再懸濁し、製造業者(Roche)の指示に従って染色した。アネキシンV陽性の細胞を、フローサイトメトリーによって判定した。
【0119】
STAT3 DNA結合アッセイ:電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)を、製造業者(Li−Cor Biosciences、Lincoln、NE)によって記載される通りに実施した。簡潔には、製造業者(EMD Biosciences、San Diego、CA)によって記載される通りにNucBusterタンパク質抽出キットを用いて、核抽出物をHeLa細胞から作製した。5μgの核抽出物を、指示された化合物の指示された用量と30分間プレインキュベートし、その後、IR700標識コンセンサスStat3オリゴヌクレオチドと15分間インキュベートした。次に、試料をポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、Odyssey赤外線画像システム(Li−Cor Biosciences)を用いて直ちに走査した。酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)のために、5μgの核抽出物を、指示された化合物の指示された濃度と30分間プレインキュベートし、その後、ビオチン化オリゴ(5’−ビオチン−GATCCTTCTGGGAATTCCTAGATC−3’配列番号1)を加えた。次に、Stat3−DNA複合体を、ストレプトアビジンコート96ウェルプレート(Pierce、Rockford、IL)で捕捉した。次に、結合した複合体をStat3ポリクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology、Santa Cruz、CA)と、続いて抗ウサギHRP標識二次抗体(GE Healthcare、Pittsburgh、PA)とインキュベートした。次に、TMB基質(Pierce)の添加によって結合抗体を可視化し、吸光度を450nmで測定した。
【0120】
細胞生存度判定:3−(4,5ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム(MTT)(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)分析のために、ウェルにつき10,000個の細胞で、細胞を96ウェルプレートにまいた。プレートにまいてから24時間後、化合物を指示された用量で細胞に加えた。化合物添加から22時間後、MTTを各ウェルに加え(0.5mg/ml、最終濃度)、プレートを37℃でさらに2時間インキュベートした。次に、培地を吸引し、ホルマザン生成物を100μlのイソプロピルアルコールに可溶化した。マイクロプレートリーダーを用いて、各ウェルの吸光度を570nmで測定した。
【0121】
免疫蛍光:指示された時間指示された化合物で処理した細胞は、それぞれアネキシンV、切断されたカスパーゼ3またはstat3の検出のために、4%ホルムアルデヒドまたは冷メタノールのいずれかで固定した。カバーガラスを空気乾燥させ、室温で10分間、PBS中に再水和させた。次に、湿気のあるチャンバ内で、室温で10分間、試料をブロック緩衝剤(PBS、5%FBS)中でインキュベートした。4℃で一晩、細胞を一次抗体とインキュベートした。洗浄の後、室温で1時間、細胞をFITC標識抗ウサギ抗体の1:500の希釈溶液とインキュベートした。落射蛍光(epifluorescence)およびSPOTモザイクCCDカメラを備えたニコンTE200顕微鏡で、画像を取得した。ポリクローナル抗切断カスパーゼ3抗体(1:100)は、Cell Signaling Technology、Danvers、MAから得た。アネキシンV−FITCは、Roche、Penzberg、Germanyから得た。ポリクローナル抗Stat3抗体は、Santa Cruzから得た。
【0122】
TPIV(登録商標)技術による遺伝子ノックダウン:TPIV(登録商標)(Therapeutic Pathway Identification and Validation)技術(Boston Biochemical Inc.、Norwood、MA、USA)は、細菌を先ずトランスフェクトし、次にその細菌を哺乳動物の対象に取り込ませるために用いることができるプラスミドを提供する。細菌溶解の後、TPIV(登録商標)プラスミドによってコードされ、細菌によってプロセシングされるdsRNAは、哺乳動物の細胞の細胞質に放出されて標的とする遺伝子ノックダウンをもたらす。TPIV(登録商標)技術は、共同所有される2008年6月30日に出願のPCT特許出願番号PCT/US08/68866に記載され、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。具体的には、以下のプライマーを用いて、Stat3に対して有効なsiRNA配列をコードするTPIV(登録商標)プラスミドを、Origene Technologies(Rockville、MD、USA)から購入したStat3プラスミドのPCRクローニングによって構築した:
TPIV−Stat3(300bp挿入断片)
【0123】
【化7】

対照プラスミドは、Promega(Madison、WI、USA)から購入したpGL2プラスミドを用いて構築する。
【0124】
TPIV−GL2(300bp挿入断片)
【0125】
【化8】

化学的にコンピテントなE.coli BL21(DE3)pLYSe細菌(50〜100μl)を、製造業者の説明書(Stratagene)に従って、対照プラスミドまたは100ngのStat3標的TPIV(登録商標)のプラスミドで形質転換した。次に、単一のコロニーを、100μg/mlアンピシリン含有BHI培地に接種し、37℃で一晩増殖させた。翌日、一晩培養物のそれぞれの5mlを、100μg/mlアンピシリンを含む新しいBHI培地で1:40に希釈し、さらなる2〜4時間(OD600=0.5まで)増殖させた。次に、各培養物をIPTG(1mMの最終濃度)で2〜4時間処理して、細菌によってカクテルsiRNAにプロセシングされるであろう長い二本鎖RNAの転写を誘導した。IPTG誘導の後、各培養物中の細菌総数を、OD600値(1ml培養物につき8×10個の細菌数は、OD600=1を有する)を測ることによって計算した。次に、細胞処理のための細菌数を、細胞集密度および適当な反応容量で必要とされた感染多重度(MOI;細菌数対細胞数が20:1〜2000:1の試行範囲)に従って計算した。経験則として、1000:1のMOIについて3×10/mlになるように反応容量を選択するべきである。次に、必要とされた細菌培養物の容量を、4℃で10分間、2500gで遠心分離し、細菌感染させる細胞のために用いた無血清培地と、100μg/mlアンピシリンおよび1mMのIPTGとでペレットを1回洗浄し、細菌感染(バクトフェクション(bactofection))に必要とされた密度で同じ培地に再懸濁した。
【0126】
同時に、癌細胞または癌幹細胞を単離した。バクトフェクションの30分前に、細胞培地を、100μg/mlのアンピシリンおよび1mMのIPTGを含む2mlの新しい無血清培地で置換した。次に、上で調製した細菌を、37℃で2時間、所望のMOIで細胞に加えた。
【0127】
感染期間の後、無血清細胞培地を用いて細胞を3回洗浄した。次に、細胞を、100μg/mlのアンピシリンおよび150μg/mlのゲンタマイシンを含む2mlの新しい完全細胞培地で2時間インキュベートして、あらゆる残存細胞外細菌を死滅させた。アンピシリンおよびゲンタマイシンによる処理の後、細胞を、10μg/mlのオフロキサシンを含む3mlの新しい完全RPMI 1640培地でインキュベートして、あらゆる細胞内細菌を死滅させた。次に、標的遺伝子のサイレンシングの程度および生じた表現型を調査するために、細胞を様々な時間に収集または分析した。
【0128】
生前評価:各動物の健康状態の検査も、毎日行った。体重は、3日ごとに検査した。食べ物および水は、施設の動物飼育手順に従って、毎日供給した。20%を超える死亡率をもたらす処理、および、または、20%を超える体重の減少は、有毒とみなした。結果を、平均腫瘍容積(mm)±SEで表す。0.05未満のP値は、統計学的に関連があるとみなす。
【0129】
動物飼育:4〜5週齢の雄または雌の胸腺欠損ヌードマウス(Charles River Laboratories、Wilmington、MA)を、試験開始前の少なくとも1週間、動物飼育施設に順応させた。利用した実験手順のすべては、American Physiology SocietyおよびGuide for the Care and Use of Laboratory Animalsによって概説され、Boston Biomedical Inc.のInstitutional Animal Care and Use Committeeに承認されてもいるガイドラインに一致していた。動物は、制御された温度(68°F〜72°F)、光(12時間明暗周期)および湿度(45〜55%)の部屋内の、床が木材チップのケージに、4匹の群で収容した。実験の間、動物には、水および食物を自由摂取させた。
【0130】
脾臓内ヌードマウスモデル系(ISMSモデル):雌のヌードマウスに麻酔をかけ、無菌条件の下で、左側腹部を切開して脾臓を露出させた。0.1ml PBS中の100万個のヒト結腸癌HT29細胞を、27ゲージ針を用いて脾被膜下に注入した。脾臓を腹膜腔に戻して、切開を閉じた。処置は、移植の翌日に開始され、試験日までであった。処置計画は、腹腔内を介する5qd/週である。死にかけているとき、または注射の30日後に、マウスを犠牲にした。脾臓および肝臓を取り出して検査し、腫瘍病巣数を記録した。
【実施例】
【0131】
(実施例1)
抗癌幹細胞標的としてのStat3の同定
CSCにおいて、Stat3のノックダウンはアポトーシスを誘導する。癌幹細胞がStat3を発現するかどうか、そしてStat3が構成的に活性であるかどうかを決定するために、本発明者らは免疫蛍光顕微鏡法を実施し、免疫蛍光顕微鏡法は稀有な細胞集団の分析を可能にするだけでなく、タンパク質の局在についての、そして染色と表現型(すなわちアポトーシス)とを関連付ける能力についてのさらなる情報もまた提供する。SW480結腸癌細胞からFACSにより単離されたNSP細胞およびSP細胞中のp−Stat3およびStat3の免疫蛍光検出の後に、本発明者らは、Stat3が実際にSP細胞中に存在し、核において適度に富化されていると判定した(図3A)。さらに、本発明者らは、p−Stat3の染色がNSP細胞よりもSP細胞中で増加していることを観察し、SP細胞が、生存のためにStat3により強く頼ることができることが示唆された。
【0132】
Stat3の状態を、FaDuヒト頭頸部癌細胞およびLN18ヒトグリア芽腫細胞から単離されたCD133細胞においてさらに評価した。図3Bに示すように、Stat3は、これらの細胞においてもまた構成的に活性である。総合的に、これらのデータは、標的としてのStat3が癌幹細胞にとって特に重要であることを示唆する。
【0133】
次に本発明者らは、TPIV(登録商標)を使用して、CSCにおけるStat3のノックダウンの効果を試験した。免疫蛍光分析により、新鮮に単離されたCSC(SP)において感染から24時間以内にStat3の有意な減少が達成され得たことが明らかになり(図4A)、Stat3標的化TPIV(登録商標)プラスミドにより処理された細胞の大部分が感染24時間以内にアポトーシスとなり、一方、対照TPIV(登録商標)プラスミドは、対照の未感染の細胞を上回るレベルまでアポトーシスを誘導しなかったことが見出された(図4B)。これらのデータは、癌幹細胞が生存のためにStat3に依存していることを実証する。
【0134】
CSCにおけるStat3のノックダウンは、CSCの球体形成性を阻害する。CD44/CD24FaDuまたはHoeschstのサイドポピュレーション癌幹細胞をFACSにより単離し、超低接着プレートにおいて、癌幹細胞培地(DMEM/F12、B27 Neurobasal添加物、20ng/mLのEGF、10ng/mLのFGF、4μg/mLのインスリンおよび0.4%のBSA)中で培養し、球体を形成させた。一次球体を回収し、トリプシンで分散させ、96ウェルの超低接着プレートに分注し、その後TPIV(登録商標)処理した。細菌を、MOIが1000で投与し、2時間後抗生物質カクテル(penstrep、ゲンタマイシン、オフロキサシン(oflaxacin))を加えた。球体形成を、培養10〜14日後に評価した。代表的な球体の画像を、トリパンブルーの添加前(図5、左上のパネル)または後に記録し、死細胞を同定した(図5、左下のパネル)。相対的球体形成性を、図5の右のパネルに示した。データは、癌幹細胞におけるStat3のノックダウンが、球体形成性を阻害したことを明らかに示し、Stat3が、癌幹細胞のカギとなる自己再生因子であることを実証している。
【0135】
(実施例2)
Stat3経路の活性を阻害する化合物の同定
Stat3の転写活性の阻害。化合物を、細胞においてStat3の転写活性化活性を阻害するそれらの能力に関して、Stat3−ルシフェラーゼ(Stat3−luc)レポーター構築体を使用して試験した。Stat3−lucを形質移入した細胞を、血清低減培地で培養し、その後表示の化合物を30分間加えた。その後、細胞を、25ng/mlのオンコスタチンM(OSM)を用いて6時間刺激し、続いてStat3−lucレポーター活性を検出した。細胞を化合物401と共にインキュベートすると、OSM刺激性Stat3レポーターの活性が阻害された(図6、左のパネル)。Jak−Stat経路の阻害剤として公知であるAG490は、Stat3の阻害に関する陽性対照に挙げられる。遺伝毒性作用の対照として挙げられるエトポシドは、Stat3をほとんど、または全く阻害しないことが示された。本発明の化合物としてのナフトキノンの代わりにナフタレンである化合物1001は、非常に高い濃度であってもOSM刺激性Stat3レポーターの活性を阻害しなかった(図6、右のパネル)。
【0136】
さらなる化合物を、Stat3ルシフェラーゼレポーターアッセイにおいて試験し、結果を表3に要約する。
【0137】
【表3】

Stat3 DNA結合活性の阻害。チロシン705残基のリン酸化により検出されるような、構成的に活性化されたStat3を含有する、HeLa細胞由来の核抽出物を、Stat3 EMSAの実施に使用し、Stat3のDNA結合活性をモニターした。核抽出物を、表示の化合物と共にインキュベートし、その後IR700標識Stat3コンセンサスオリゴヌクレオチドと共にインキュベートした。Stat3とオリゴヌクレオチドの結合を、ゲル電気泳動およびLiCor Odyssey赤外線走査装置を使用した検出によりモニターした。Stat3の低下したバンドを、抗Stat3抗体によるスーパーシフト(図7A、左のパネル)およびStat3ペプチドによる用量依存性阻害(図7A、中央のパネル)によって同定し確認した。Stat3のDNA結合の用量依存性阻害を、標識プローブと化合物401とのインキュベーションの後で観察した(図7A、右のパネル)。
【0138】
EMSAアッセイにおいてさらなる化合物を試験した。図7Bに示すように、化合物401、416および418は、Stat3のDNA結合活性を阻害できる。
【0139】
異種移植腫瘍組織におけるStat3下流エフェクターの阻害。化合物401またはビヒクルの対照により処理し、4時間後に収穫した異種移植されたPaca2腫瘍から、抽出物を調製した。サンプルを、ウェスタンブロットおよびEMSAにより分析し、Stat3下流エフェクターの発現レベルおよびStat3のDNA結合活性を評価した。化合物401により処理したサンプル(T)は、対照(V)よりもStat3のDNA結合活性が減少することが示された(図8A)。さらに、化合物401による処理は、Stat3の下流エフェクターである、サイクリンD1およびサバイビン(図8B)の発現レベルの減少をもたらした。
【0140】
(実施例3)
癌幹細胞を標的とする化合物の同定
癌幹細胞に対してアポトーシス性である化合物の同定。癌幹細胞は、Hoechstを活発に排出させることが実証されているので、SW480細胞を、Hoechstを用いて染色し、サイドポピュレーション(図9Aに示した、左のパネルのゲートエリア)を識別し、癌幹細胞を富化した。このサイドポピュレーションは、癌幹細胞が富化されていることを確認するために、一連の対照SW480細胞を、まずABC輸送体の阻害剤であるベラパミルを用いて処理し、その後Hoechstを用いて染色した。図9Aの右のパネルに示すように、ベラパミル処理により、サイドポピュレーションの欠損がもたらされる。
【0141】
Hoechstのサイドポピュレーションに対する化合物401のIC50をMTTアッセイにおいて評価し、非サイドポピュレーションに対するIC50と比較した。結果は、サイドポピュレーションは非サイドポピュレーションと同程度に、化合物401に対して感受性であることを示す(図9B、右のパネル)。しかしサイドポピュレーションは非サイドポピュレーションより、ドキソルビシンに対して非常に抵抗性であり(図9B、左のパネル)、さきの出版物と一致する[7、86]。これらのデータは、化合物401が癌幹細胞を死滅させることを示唆する。
【0142】
Hoechstのサイドポピュレーション細胞を、化合物401を用いて処理し、細胞死の様式をアネキシンV(アポトーシスの早期マーカー)染色により評価した。結果は、死にかけている細胞がアネキシンV陽性であり(図10A)、化合物401が癌幹細胞に対してアポトーシス性であることを実証している。
【0143】
または、本発明者らは、CD133(共通の癌幹細胞表面マーカーの1つ)抗体磁気ビーズプルダウンを実施し、癌幹細胞を富化した。その後、CD133細胞を、化合物401を用いて処理し、続いて切断カスパーゼ3(アポトーシスの顕著な特徴)に対する抗体を用いて染色した。図10Bに示すように、化合物401による処理後、CD133細胞の多くは切断カスパーゼ3陽性になり、化合物401が癌幹細胞に対してアポトーシス性であることを裏付ける。
【0144】
さらに、本発明者らは、癌幹細胞に対するいくつかの他の化合物の活性を試験した。簡潔に言うと、新鮮に単離したCSC(SW480 Hoechst SP細胞またはCD44FaDu細胞)を、化合物の用量範囲(30〜0.117μM)に48時間曝露し、その後細胞の生存をMTTアッセイにより調べた。IC50を、生存細胞のパーセントをプロットすることによって推定した。表4および表5に示すように、本発明の化合物は、癌幹細胞を標的にできる。
【0145】
【表4】

【0146】
【表5】

インビトロでCSCの球体形成性を阻害する化合物の特定。癌幹細胞の顕著な特徴の1つは、それらの自己再生能力である[87]。細胞集団の自己再生能力を測定する信頼性のある方法は、血清および接着物が存在しない状態で、球体として培養される能力である[88]。他の対標的薬および化学療法剤に対する化合物401の能力を比較するために、FACSにより単離されたCD44CSCを球体として72時間成長させ、その後一連の治療薬にチャレンジした。被験薬剤の中で、化合物401のみが球体の増殖の防止に有効であった(図11)。球体は、同様のアッセイにおいて細胞死に関するそれらのIC50濃度のおよそ10倍で用いてもドキソルビシンおよびドセタキセルに抵抗性であることは留意されたい。Tarceva、SutentおよびGleevecを、報告されたそれらの治療濃度のおよそ3倍で加えた。このことは、癌幹細胞は、従来の化学療法薬および対標的薬に対して抵抗性であるが、化合物401はそれらの成長の阻害に非常に有効であることを実証する。
【0147】
インビボでCSCの球体形成性を阻害する化合物の特定。6週齢の雌の無胸腺nu/nuマウスを、Charles River Labs(Wilmington、MA)より入手した。マウスに、0.2mLの無血清DMEM中の6×10のFaDuまたはPaca2癌細胞を、脇に皮下注入した。異種移植片が約200mmのサイズに達した後で、Paca2異種移植片腫瘍を担持する動物に、ビヒクル、ゲムシタビン(120mg/kg、週に2回)または化合物401(20mg/kg)のいずれかを、犠牲にする前の1週間、ipにより投与し、FaDu異種移植片腫瘍を担持する動物に、ビヒクル、カルボプラチン(30mg/kg)または化合物401(20mg/kg)のいずれかを犠牲にする前の2週間ipを介して毎日投与した。その後Paca2およびFaDu細胞それぞれに関して腫瘍を回収した。動物を犠牲にし、腫瘍を無菌除去した後で、単一細胞懸濁液を得た。簡潔に言うと、腫瘍を滅菌の外科用メスを用いて0.1mmの断片に刻み、その後1mg/mLのコラゲナーゼ/HBSSにおいて15〜30分、一定の撹拌を行いながら消化した。40μmのメッシュのフィルターを通した後で、細胞懸濁液を1mLのHistopaque上に層にし、1440×gで30分間遠心分離した後で界面層を回収することによって、RBC、死細胞および細胞のデブリを除去した。その後、生細胞を数え、球体形成のそれらの能力を測定するために使用した。細胞を、超低接着性96ウェルプレートに、癌幹細胞培地(DMEM/F12、B27 Neurobasal補充物、20ng/mLのEGF、10ng/mLのFGF、4μg/mLのインスリンおよび0.4%のBSA)中に100細胞/ウェルの密度で分配した。新鮮な培地を3日ごとに加え、球体の形成を培養10〜14日後に決定した。>50細胞の球体を数えた。実験の終わりにトリパンブルーを加え、死細胞を特定した。図12に示すように、標準的化学療法剤のゲムシタビン(上のパネル)およびカルボプラチン(下のパネル)は癌幹細胞を増加させたことが、球体形成性の増加から明らかである。対照的に、球体形成性の減少により明らかなように、化合物401による処理は、癌幹細胞を減少させた。
【0148】
(実施例4)
広範囲の癌細胞を選択的に死滅させる化合物の特定
インビトロで広範囲の癌細胞に対してアポトーシス誘導性である化合物の特定。96ウェルプレートに播種し、表示の化合物で処理した細胞を、化合物処理の後でMTT分析に24時間の時点で供し、細胞生存率を決定した。複数の細胞系にわたって計算したIC50値を、下記の表6に要約する。データは、これらの化合物が広範囲な癌細胞に対して強力な活性を有することを実証している。
【0149】
【表6】

さらに、DU145細胞をまずDMSOまたは表示濃度の化合物401を用いて処理し、続いてアネキシンVを用いて染色し、その後処理後5時間でフローサイトメトリにより分析した。結果は、401による処理がアネキシンV染色の用量依存的増加をもたらし(図13)、化合物401がこれらの癌細胞に対してアポトーシス誘導性であることを実証している。
【0150】
化合物の選択性の例。事実上すべての癌細胞に死をもたらすアッセイ条件のもとで、正常な細胞は、実質的に生存し続ける。末梢血単核細胞(PBMC)は、化合物401に対して比較的抵抗性であり、化合物401と共に24時間インキュベートした後の、MTTアッセイによるIC50は14μMであった。このIC50は、さまざまな癌細胞系においてみられるIC50より6〜116倍高く、癌細胞と比較して妥当な治療域(therapeutic window)を示す。
【0151】
PMBCと類似の方式で、化合物401を用いて処理した場合、CD34骨髄造血幹細胞は残った。表7に示すように、CD34骨髄単核細胞を化合物401と共に6時間インキュベートすると、骨髄赤血球系列および骨髄細胞系列の双方に関してIC50は30μMを超え、一方DU145前立腺癌細胞およびHT29結腸癌細胞は、同様の条件下でIC50が0.5μM未満であった。これらのデータは、インビトロのデータによれば化合物401の広い治療域(50倍を超える)を示唆する。
【0152】
【表7】


(実施例5)
インビボの抗腫瘍効力
膵臓癌異種移植モデル。Paca−2細胞を、雌の無胸腺ヌードマウスの皮下に接種した(4×10細胞/マウス)。腫瘍がおよそ450mmに達した場合に、動物を、5マウス/群の2群にランダムに分けた。マウスを、20mg/kgの化合物401またはビヒクル対照のいずれかを用いて腹腔内に毎日処置した。化合物401は、1.5%の脂質およびHO中に5mg/mlで調合した。動物に、計14用量を与え、処置後観察にした。腫瘍を、処置期間中を通して測定し、処置後さらに22日間モニターした。図14の左のパネルに示すように、化合物401は、腫瘍の成長を強力に阻害した。腫瘍の成長阻害は、60日目において64%であると計算され、統計的に有意であった(p<0.001)。より重要なことには、腫瘍体積は、処置後22日の期間静止していた。
【0153】
同様の実験において、panc−1ヒト膵臓癌細胞を、雌の無胸腺ヌードマウスの皮下に接種し(2×10細胞/マウス)、触知可能な腫瘍を形成させた。腫瘍がおよそ60mmに達した場合に、動物を、5マウス/群の2群にランダムに分けた。マウスを、標準投与計画でゲムシタビン(120mg/kg、3日に一度)またはビヒクル対照で、計6用量のゲムシタビンまたはビヒクル対照を腹腔内(ip)処置した。腫瘍を、処置期間中を通して測定し、処置後さらに19日間モニターした。図14の右のパネルに示すように、単剤療法としてのゲムシタビンを用いた処置は、腫瘍成長を阻害し、腫瘍の成長阻害は、41日目において47.5%であった。処置を停止した後で、ゲムシタビン処置群における腫瘍は、すぐに対照群における腫瘍より大きくなった。
【0154】
異種移植されたPaca−2ヒト膵臓癌モデルにおいて、化合物401処置期間または処置後の期間に腫瘍のリバウンドは観察されず、このことは、化合物401の癌幹細胞標的化の作用機序と一致する。対照的に、現在の標準的化学療法のゲムシタビンを用いて処置したヒト膵臓異種移植腫瘍は、初めは応答したが、継続治療中にリバウンドするか、または投薬を停止後対照腫瘍よりも大きくなった。腫瘍のリバウンドが起こらなかったことが、化合物401が標準的化学療法に対して差違をなすものであり、劇的にかつ根本的に癌治療を改善する可能性を提示する。
【0155】
頭頸部癌異種移植モデル。FaDuヒト頭頸部癌細胞を、雌の無胸腺ヌードマウスの皮下に接種し(6×10細胞/マウス)、触知可能な腫瘍を形成させた。腫瘍がおよそ100mmに達した場合に、動物を、20mg/kgの化合物401またはビヒクル対照を用いて毎日(連続5日、その後2日は投与休み)腹腔内(ip)処置した。化合物401は、2%の脂質、0.1%のコレステロールおよびHO中に5mg/mlで調合した。動物に、計15用量の化合物401またはビヒクル対照を与えた。腫瘍を、処置期間中を通して測定した。図15に示すように、この非常に侵襲性の頭頸部異種移植モデルにおいて、単剤療法として化合物401を腹腔内に投薬された動物は、腫瘍の成長を強力に阻害した。化合物401の腫瘍の成長阻害は75%であると計算され、p値は0.007であった。ビヒクルまたは20mg/kgの化合物401の腹腔内投与による、体重の有意な変化はなかった。
【0156】
乳癌異種移植モデル。MDA−MB−231ヒト乳癌細胞を、雌の無胸腺ヌードマウスの皮下に接種し(8×10細胞/マウス)、触知可能な腫瘍を形成させた。腫瘍がおよそ200mmに達した場合に、動物を、200mg/kgの化合物401またはビヒクル対照を用いて毎日(連続5日、その後2日は投与休み)経口(po)処置した。化合物401は、8%のgelucireおよび20%ビタミンE中に20mg/mlで調合した。動物に、計15用量の化合物401またはビヒクル対照を与えた。腫瘍を、処置期間中を通して測定した。表16に示すように、単剤療法としての200mg/kgの化合物401の経口投薬は、腫瘍の成長を強力に阻害した。化合物401の最適な腫瘍の成長阻害は66%であると計算され、p値は0.0068であった。ビヒクルまたは200mg/kgの化合物401のpo投与による、体重の有意な変化はなかった。これらのデータは、化合物401をヒト乳癌のこのモデルにおいて有効である投与計画において、安全に投薬できることを示唆する。
【0157】
前立腺癌異種移植モデル。PC3ヒト前立腺癌細胞を、雌の無胸腺ヌードマウスの皮下に接種し(8×10細胞/マウス)、触知可能な腫瘍を形成させた。腫瘍がおよそ100mmに達した場合に、動物を、20mg/kgの化合物401またはビヒクル対照を用いて、毎日腹腔内(ip)処置した。化合物401は、2%の脂質、0.1%コレステロールおよびHO中に5mg/mlで調合した。動物に、計30用量の化合物401またはビヒクル対照を与えた。腫瘍を、処理期間中を通して測定した。表17に示すように、単剤療法としての20mg/kgの化合物401のip投薬は、腫瘍の成長を阻害した。化合物401の最適な腫瘍の成長阻害は55%であると計算され、p値は0.015であった。ビヒクルまたは20mg/kgの化合物401のip投与による、体重の有意な変化はなかった。これらのデータは、化合物401を、ヒト前立腺癌のこのモデルにおいて有効である投与計画において、安全に投薬できることを示唆する。
【0158】
胃癌異種移植モデル。MKN−45ヒト胃癌細胞を、雌の無胸腺ヌードマウスの皮下に接種し(8×10細胞/マウス)、触知可能な腫瘍を形成させた。腫瘍がおよそ180mmに達した場合に、動物に、200mg/kgの化合物401またはビヒクル対照を毎日経口(po)投与した。化合物401は、8%のgelucireおよび20%ビタミンE中に20mg/mlで調合した。動物に、計20用量の化合物401またはビヒクル対照を与えた。腫瘍を、処置期間中を通して測定した。表18に示すように、単剤療法として200mg/kgの化合物401を用いた経口投薬は、腫瘍の成長を阻害した。化合物401の最適な腫瘍の成長阻害は70%であると計算され、p値は0.01であった。ビヒクルまたは200mg/kgの化合物401の経口投与による、体重の有意な変化はなかった。これらのデータは、化合物401を、ヒト胃癌のこのモデルにおいて有効である投与計画において、安全に投薬できることを示唆する。
【0159】
肝癌異種移植モデル。HepG2ヒト肝癌細胞を、雌の無胸腺ヌードマウスの皮下に接種し(8×10細胞/マウス)、触知可能な腫瘍を形成させた。この研究において、腫瘍がおよそ700mmに達した場合に投薬を始めた。動物を、10mg/kgの化合物401またはビヒクル対照を用いて毎日静脈内(iv)処置した。化合物401は、1.5%のアルブミン中に2mg/mlで調合した。動物に、計10用量の化合物401またはビヒクル対照を与えた。腫瘍を、処置期間中を通して測定した。表19に示すように、腫瘍成長の非常に後期のステージにおいて処置を開始しても、単剤療法として10mg/kgの化合物401を用いたiv処置は、腫瘍の成長をさらに強力に阻害した。化合物401の最適な腫瘍の成長阻害は52.3%であると計算され、p値は0.05であった。ビヒクルまたは10mg/kgの化合物401のiv投与による、体重の有意な変化はなかった。これらのデータは、化合物401をヒト肝癌のこのモデルにおいて有効である投与計画において、安全に投薬できることを示唆する。
【0160】
(実施例6)
抗転移効力
化合物401を、ISMSモデルにおいて転移を阻害するその能力に関して、さらに試験した。脾臓内ヌードマウスモデル系(ISMSモデル)は、この技術により肝臓に実験的転移を起こすことができるので、結腸直腸癌の悪性挙動の研究に適している。このモデルにおいて、0.1mlのPBS中の100万個のHT29細胞を、ヌードマウスの脾被膜下に注入した。脾臓を、腹膜腔内に元に戻し、切開部を閉じた。瀕死の場合または注入30日後にマウスを犠牲にした。脾臓および肝臓を取り出し、試験し、腫瘍病巣の数を記録した。マウスを、2つの群に分け、対照群(n=4)にビヒクルを与え、他の群には20mg/kgの化合物401を与えた(n=4)。薬剤を、i.s.注入の2日目から始めて30日目まで、ip.を介して5日/週投与した。一次腫瘍および転移肝腫瘍の数を顕微鏡によって評価した。代表的写真を、図20に示す。ビヒクルを用いた対照群において、脾臓に一次腫瘍の重大な負荷があった(図20、左上のパネル)。重度の自然発生の肝転移を観察した(図20、右上のパネル)。化合物401による処置は、一次腫瘍病巣の数および自然発生肝転移をかなり減少させた(図20、下のパネル)。
【0161】
(実施例7)
薬物動態および毒性プロファイル
ラットにおいて、化合物401の薬物動態分析を実施した。薬物動態評価のために、雌のSprague Dawleyラット(9ラット/群)に、強制経口投与を介して投薬した。投与容量は、対照品(無菌水中の9%のGelucire44/14および18%のビタミンE TPGS)、あるいは対照品中の10または30mg/kg/日の化合物401を含有する調製物を与えた群それぞれに対して10ml/kgであった。血液サンプルを、3動物/性別/予備投与ならびに初回投薬後およそ2、4、6、8、10および24時間の時点から採取した。血漿を、遠心分離することにより収穫し、−75°C±15°Cを維持するように設定された冷凍庫において、分析まで保存した。この研究の生物分析部分は、バリデートされたLC/MS/MS法を使用して実施した。定量の下限(LLOQ)は10.0ng/mLであった。図21に示すように、薬物動態データは、化合物401が、8時間まで7μMの限界濃度を達成し、維持したことを示す。
【0162】
これらの用量において、28日間連続投薬したラットに毒性作用は観察されなかった。このことは、臨床観察、実験室試験、肉眼的および組織学的所見を含んだ。総合的に、これらのデータは、化合物401が、選択的抗癌活性に関して所望のPK曝露を達成できることを実証した。
【0163】
(実施例8)
スキーム1
【0164】
【化9】

DBU:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン
THF:テトラヒドロフラン
RT:室温
2−アセチル−4H,9H−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン(式4−6の化合物であり、式中、R1=R7=HおよびR3=−CHである)の調製
アイスバスにおいて激しく撹拌している、18.8g(22ml、0.268mol)の3−ブテン−2−オン(スキーム1の式4−1)の200mlのペンタン溶液に、50mlのペンタン中の39.0gの(12.54ml、0.244モル)の臭素を、30分以内にゆっくりと加えた。アイスバスにおいてさらに5分撹拌後、混合物を蒸発させ、大部分のペンタンを除去した。ステップ1の少量の3,4−ジブロモ−2−ブタノン残留物(4−2)を400mlのTHFに溶解し、その後アイスバスにおいて冷却した。アイスバスにおいて激しく撹拌している溶液に、50mlのTHF中の37.2g(36.5ml、0.244mol)のDBUを、30分以内にゆっくりと加えた。大量の塩の沈殿が発生した。混合物を直接次のステップの反応に使用した。3−ブロモ−3−ブテン−2−オン(4−3)の反応混合物に、38.5g(0.220mol)の2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン(4−4)を加えた。得られた混合物を、室温のウォーターバスにおいて激しく撹拌した。その後、44.6g(43.8ml、0.293mol)のDBUを、混合物に30分以内にゆっくりと加えた。反応混合物の温度は反応から発生する熱によって上昇し、ウォーターバスに氷を加えることによって35℃より低く調節した。空気下、室温下で、さらに3時間激しく撹拌した後で、1,800mlの水を混合物に加えた。得られた混合物を0℃に冷却し、その後ろ過した。ろ過した固体を、500mlの水、500mlの5%水性重炭酸ナトリウム、500mlの1%酢酸および250mlの氷冷アセトンで連続して洗浄した。洗浄した固体を、200mlのギ酸中で再結晶させ、12gの生成物を得、化合物4−6または3−2(R1=H、R3=CH、R7=H)の全収率は22.8%であった。H NMR(CDCl中)δ 2.67(s,3H),7.61(s,1H−3),7.79−7.84(m,2H),8.22−8.28(m,2H)。
【0165】
(実施例9)
スキーム2
化合物のリン酸モノ−[1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニル]エステルの調製
【0166】
【化10】

BBI6002(240mg、1mmol)の50THF溶液に、−78℃において、リチウムbis(トリメチルシリル)アミド溶液(THF中1.0M、1.2mL)を加えた。この温度で1時間撹拌後、反応混合物を0℃で30分間撹拌した。ジメチルクロロホスフェート(217mg、1.5mmol)の、5mLTHF溶液を、その後この混合物に−78℃において加えた。得られた混合物を撹拌し、室温にゆっくりと温めた。周囲温度で1時間撹拌後、溶媒を蒸発させ、残留物をCHClに溶解し、飽和NHClおよび水で洗浄し、MgSOで乾燥させた。溶媒の蒸発により、粗反応混合物が得られ、これをカラムクロマトグラフィーにより精製して、黄色い固体としてリン酸1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニルエステルジメチルエステルを得た。H NMR(400MHz, CDCl)δ8.20−8.28(m,2H),7,78−7.82(m,2H),7.07(s,1H),5.78(t,1H,J=2.8Hz),5.50(t,1H,J=2.8Hz),3.96(s,3H),3.94(s,3H);MSm/z347.20(M−H)。
【0167】
(実施例10)
スキーム3
化合物のリン酸1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニルエステルジメチルエステルの調製
【0168】
【化11】

リン酸1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニルエステルジメチルエステル(40mg、0.114mmol)の、CHCl(2mL)溶液に、室温においてトリメチルシリルブロミド(71mg、0.46mmol)を加えた。反応混合物を、室温において3時間撹拌し、その後真空下で濃縮した。残留物を、半分取HPLCにより精製し、黄色い固体としての生成物、リン酸モノ−[1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニル]エステルを得た。H NMR(400MHz, CDCl)δHNMR(400MHz,CDCl)δ7.98−8.02(m,2H),7,57−7.62(m,2H),6.92(s,1H),5.54(t,1H,J=2.8Hz),5.36(t,1H,J=2.8Hz);MSm/z319.20(M−H)。
【0169】
本明細書に引用されているすべての参考文献は、各個々の出版物または特許または特許出願が、あたかもすべての目的のためにその全体が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのような同じ程度で、適用法により認められる範囲で、そしてすべての目的のためにそれらの全体を参照により本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれた出版物および特許または特許出願が、本明細書に含まれる開示と矛盾する範囲内において、本明細書は、このような矛盾材料のいずれにも優先する、そして/または勝るよう意図されている。
【0170】
本明細書および特許請求の範囲に使用される成分、反応条件、分析結果などの量を表すすべての数字は、「約」という用語によりすべての場合に修飾されていると理解するべきである。したがって、反することを特に明記しない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲において記載される数値パラメーターは、本発明により得られることを追求される所望の特性に依存して変動可能な近似値である。少なくとも、特許請求の範囲と同等の原理の適用を限定するつもりはないが、各数値パラメーターは、有効数字および普通の丸め法の数字を考慮して解釈されるべきである。
【0171】
当業者には明らかなように、本発明の改良および変形は、本発明の精神および範囲を逸脱することなく実行可能である。本明細書に記載の特定の実施形態は単に例の目的で提示しており、決して限定することを意味するものではない。本明細書および実施例は単なる例示として考えるべきであり、本発明の真の範囲および精神は下記の特許請求の範囲により示されることを意味する。
【0172】
【数1】

【0173】
【数2】

【0174】
【数3】

【0175】
【数4】

【0176】
【数5】

【図3A】

【図3B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌幹細胞を阻害する方法であって、Stat3経路阻害剤を通して、癌幹細胞の少なくとも一部のStat3経路活性を阻害するステップを含む方法。
【請求項2】
前記癌幹細胞の自己再生を阻害する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記癌幹細胞を死滅させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
インビトロで実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
対象の癌を治療するためにインビボで実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記癌が癌幹細胞を有し、異常なStat3経路活性を有することが知られている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記癌幹細胞が異常なStat3経路活性を有することが知られている、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記癌が、乳癌、頭頸部癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、結腸直腸癌、前立腺癌、黒色腫、肉腫、肝癌、脳腫瘍、多発性骨髄腫および白血病からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記癌が、肺癌、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、肝癌、頭頸部癌、膵臓癌、胃癌および前立腺癌からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記癌が転移性である、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記癌が、化学療法または放射線療法に治療抵抗性である、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記癌が化学療法に本質的に耐性である、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記癌が、最初の治療の後に前記対象で再発している、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
前記Stat3経路阻害剤が単離、精製または合成される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記Stat3経路阻害剤が、小分子Stat3阻害剤、Stat3に対するRNAi剤、Stat3に対するアンチセンス剤、ペプチド模倣物Stat3阻害剤およびG−カルテットオリゴデオキシヌクレオチドStat3阻害剤からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記Stat3経路阻害剤の阻害機構が、Stat3タンパク質のリン酸化を実質的に阻害すること、Stat3タンパク質の二量体化を実質的に阻害すること、Stat3タンパク質の核移行を実質的に阻害すること、Stat3タンパク質のDNA結合活性を実質的に阻害すること、およびStat3タンパク質の転写活性を実質的に阻害することからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記Stat3経路阻害剤が、2−(1−ヒドロキシエチル)−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−クロロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−フルオロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチルナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−エチル−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、リン酸モノ−[1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニル]エステル、リン酸1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニルエステルジメチルエステル、およびその塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
細胞において細胞Stat3経路活性を阻害する方法であって、前記細胞内の少なくとも望ましくないStat3経路活性が低減されるように、前記細胞に、2−(1−ヒドロキシエチル)−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−クロロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−フルオロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチルナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−エチル−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、リン酸モノ−[1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニル]エステル、リン酸1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニルエステルジメチルエステル、およびその塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される化合物の有効量を投与するステップを含む方法。
【請求項19】
前記細胞が癌幹細胞である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞が癌細胞である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
細胞死が前記細胞で誘導される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
インビトロで実施される、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
インビボで実施される、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
対象の異常なStat3経路活性に関連する障害を治療または予防する方法であって、少なくとも異常なStat3経路活性が低減されるように、前記対象に、2−(1−ヒドロキシエチル)−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−クロロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−フルオロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチルナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−エチル−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、リン酸モノ−[1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニル]エステル、リン酸1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニルエステルジメチルエステル、および薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される化合物を含む医薬組成物の治療的有効量を投与するステップを含む方法。
【請求項25】
異常なStat3経路活性は、リン酸化Stat3の発現、またはStat3リン酸化の代用の上流もしくは下流側の調節因子の発現により確認することができる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記障害が癌である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記癌が、乳癌、頭頸部癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、結腸直腸癌、前立腺癌、腎細胞癌、黒色腫、肝細胞癌、子宮頸癌、肉腫、脳腫瘍、胃癌、多発性骨髄腫、白血病およびリンパ腫からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記障害が、自己免疫疾患、炎症性疾患、炎症性腸疾患、関節炎、自己免疫脱髄障害、アルツハイマー病、脳卒中、虚血再灌流傷害および多発性硬化症からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
患者を治療する方法であって、
異常なStat3経路活性によって患者を特定するステップと、
前記患者に、2−(1−ヒドロキシエチル)−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−クロロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−フルオロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチルナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−エチル−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、リン酸モノ−[1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニル]エステル、リン酸1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニルエステルジメチルエステル、および薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される化合物の治療的有効量を投与するステップとを含む方法。
【請求項30】
異常なStat3経路活性によって前記患者を特定する前記ステップが、リン酸化Stat3の発現、またはStat3リン酸化の代用の上流もしくは下流側の調節因子の発現を検査するステップを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
異常なStat3経路活性によって前記患者を特定する前記ステップが、前記患者から採取される罹患組織または流体を検査するステップを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記罹患組織または流体が腫瘍の一部である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
患者を治療する方法であって、
異常なStat3経路活性に関連する障害と診断される患者を特定するステップと、
前記患者に、2−(1−ヒドロキシエチル)−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−クロロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−フルオロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチルナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−エチル−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、リン酸モノ−[1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニル]エステル、リン酸1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニルエステルジメチルエステル、および薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される化合物の治療的有効量を投与するステップとを含む方法。
【請求項34】
前記患者を特定するステップが、前記患者の障害を示す少なくとも1つのバイオマーカーについて検査するステップを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
異常なStat3経路活性に関連する障害を診断するための少なくとも1つの作用物質、および
2−(1−ヒドロキシエチル)−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−クロロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−フルオロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチルナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−エチル−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、リン酸モノ−[1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニル]エステル、リン酸1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニルエステルジメチルエステル、および薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される化合物の治療的有効量
を含むキット。
【請求項36】
前記少なくとも1つの作用物質が、前記障害の存在を示す少なくとも1つのバイオマーカーについて検査する、請求項35に記載のキット。
【請求項37】
異常なStat3経路活性を診断するための少なくとも1つの作用物質、および
2−(1−ヒドロキシエチル)−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−クロロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−フルオロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチルナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−エチル−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、リン酸モノ−[1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニル]エステル、リン酸1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニルエステルジメチルエステル、および薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される化合物の治療的有効量
を含むキット。
【請求項38】
前記少なくとも1つの作用物質が、リン酸化Stat3の発現、またはStat3リン酸化の代用の上流もしくは下流側の調節因子の発現を検査する、請求項37に記載のキット。
【請求項39】
癌幹細胞を阻害する方法であって、癌幹細胞に、2−(1−ヒドロキシエチル)−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−クロロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−フルオロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチルナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−エチル−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、リン酸モノ−[1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニル]エステル、リン酸1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニルエステルジメチルエステル、およびその塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される化合物の有効量を投与するステップを含む方法。
【請求項40】
インビトロで実施される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
対象の癌を治療するためにインビボで実施される、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記癌が、乳癌、頭頸部癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、結腸直腸癌、前立腺癌、肝癌、胃癌、黒色腫、多発性骨髄腫、脳腫瘍、肉腫、髄芽細胞腫および白血病からなる群から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記癌が転移性である、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記癌が、化学療法または放射線療法に治療抵抗性である、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記癌が化学療法に本質的に耐性である、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記癌が、最初の治療の後に前記対象で再発している、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
癌幹細胞を阻害することができる薬剤候補を特定する方法であって、Stat3経路活性を阻害する薬剤候補についてスクリーニングするステップを含む方法。
【請求項48】
前記薬剤候補が前記癌幹細胞で細胞死を誘導することができる、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記薬剤候補が前記癌幹細胞の自己再生を阻害することができる、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記薬剤候補が、小分子Stat3阻害剤、Stat3に対するRNAi剤、Stat3に対するアンチセンス剤、ペプチド模倣物Stat3阻害剤およびG−カルテットオリゴデオキシヌクレオチドStat3阻害剤からなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記薬剤候補がStat3タンパク質のリン酸化を実質的に阻害する、請求項47に記載の方法。
【請求項52】
前記薬剤候補がStat3タンパク質の二量体化を実質的に阻害する、請求項47に記載の方法。
【請求項53】
前記薬剤候補がStat3タンパク質の核移行を実質的に阻害する、請求項47に記載の方法。
【請求項54】
前記薬剤候補がStat3タンパク質のDNA結合活性を実質的に阻害する、請求項47に記載の方法。
【請求項55】
前記薬剤候補がStat3タンパク質の転写活性を実質的に阻害する、請求項47に記載の方法。
【請求項56】
標準の治療に治療抵抗性である対象の癌を治療する方法であって、前記対象に、2−(1−ヒドロキシエチル)−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−クロロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−フルオロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチルナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−エチル−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、リン酸モノ−[1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニル]エステル、リン酸1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニルエステルジメチルエステル、および薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される化合物を含む医薬組成物の治療的有効量を投与するステップを含む方法。
【請求項57】
前記標準の治療が、化学療法、放射線療法および手術からなる群から選択される治療を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記癌が化学療法に本質的に耐性である、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
対象の癌再発を治療または予防する方法であって、前記対象に、2−(1−ヒドロキシエチル)−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−クロロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−フルオロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチルナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−エチル−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、リン酸モノ−[1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニル]エステル、リン酸1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニルエステルジメチルエステル、および薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される化合物を含む医薬組成物の治療的有効量を投与するステップを含む方法。
【請求項60】
前記医薬組成物が、手術後の補助療法として投与される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
対象の癌転移を治療または予防する方法であって、前記対象に、2−(1−ヒドロキシエチル)−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−クロロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−フルオロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチルナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−エチル−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、リン酸モノ−[1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニル]エステル、リン酸1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニルエステルジメチルエステル、および薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される化合物を含む医薬組成物の治療的有効量を投与するステップを含む方法。
【請求項62】
前記医薬組成物が、手術後の補助療法として投与される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
対象の癌細胞を選択的に標的にする方法であって、対象に、2−(1−ヒドロキシエチル)−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−クロロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−フルオロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチルナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−エチル−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、リン酸モノ−[1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニル]エステル、リン酸1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニルエステルジメチルエステル、および薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される化合物を含む医薬組成物を、前記対象の血漿中の前記化合物の濃度が各投薬の後の24時間を超える間重要な濃度を超えて維持されず、それによって、正常な細胞を実質的に残しながら癌細胞を選択的に死滅させるように投与するステップを含む方法。
【請求項64】
前記医薬組成物が、前記対象の血漿中の前記化合物濃度が、各投薬の後の12、16および20時間からなる群から選択される持続時間を超える間重要な濃度を超えて維持されないように投与される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記重要な濃度が約100μMである、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記重要な濃度が約50μMである、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
前記重要な濃度が約30μMである、請求項63に記載の方法。
【請求項68】
前記重要な濃度が約20μMである、請求項63に記載の方法。
【請求項69】
前記癌細胞が、肝癌、頭頸部癌、膵臓癌、胃癌、腎臓癌、肉腫、多発性骨髄腫、転移性乳癌、白血病、リンパ腫、食道癌、脳腫瘍、神経膠腫、膀胱癌、子宮内膜癌、甲状腺癌、胆管癌、骨癌、眼癌(網膜芽細胞腫)、胆嚢癌、下垂体癌、直腸癌、唾液腺癌および鼻咽頭癌からなる群から選択される癌の一部である、請求項63に記載の方法。
【請求項70】
前記癌細胞が、肺癌、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、肝癌、頭頸部癌、膵臓癌、胃癌および前立腺癌からなる群から選択される癌の一部である、請求項63に記載の方法。
【請求項71】
前記癌細胞が、肝癌、頭頸部癌、膵臓癌、胃癌、腎臓癌、肉腫、多発性骨髄腫、転移性乳癌、白血病、リンパ腫、食道癌、脳腫瘍、神経膠腫、膀胱癌、子宮内膜癌、甲状腺癌、胆管癌、骨癌、眼癌(網膜芽細胞腫)、胆嚢癌、下垂体癌、直腸癌、唾液腺癌、鼻咽頭癌、乳癌、肺癌、結腸癌、前立腺癌、卵巣癌、神経芽細胞腫、子宮頸癌、白血病、黒色腫、口のエピサーモイド、ケラチノサイトおよび皮膚癌からなる群から選択される癌の一部である、請求項63に記載の方法。
【請求項72】
対象の癌を治療する方法であって、前記対象に、2−(1−ヒドロキシエチル)−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−クロロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−フルオロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチルナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−エチル−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、リン酸モノ−[1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニル]エステル、リン酸1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニルエステルジメチルエステル、および薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される化合物を含む医薬組成物の治療的有効量を投与するステップを含む方法。
【請求項73】
前記癌が、肝癌、頭頸部癌、膵臓癌、胃癌、腎臓癌、肉腫、多発性骨髄腫、転移性乳癌、白血病、リンパ腫、食道癌、脳腫瘍、神経膠腫、膀胱癌、子宮内膜癌、甲状腺癌、胆管癌、骨癌、眼癌(網膜芽細胞腫)、胆嚢癌、下垂体癌、直腸癌、唾液腺癌および鼻咽頭癌からなる群から選択される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記癌が、肺癌、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、肝癌、頭頸部癌、膵臓癌、胃癌および前立腺癌からなる群から選択される、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
前記癌が、肝癌、頭頸部癌、膵臓癌、胃癌および転移性乳癌からなる群から選択される、請求項72に記載の方法。
【請求項76】
前記癌が転移性である、請求項72に記載の方法。
【請求項77】
前記対象が哺乳動物である、請求項72に記載の方法。
【請求項78】
前記医薬組成物が、約1mg/m〜約5,000mg/m(I.V.)または約1mg/m〜約50,000mg/m(PO)の薬量で投与される、請求項56〜77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記医薬組成物が、約2mg/m〜約3,000mg/m(I.V.)または約10mg/m〜約50,000mg/m(PO)の薬量で投与される、請求項56〜77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記医薬組成物が、経口的に、1日に4回(QID)以下で投与される、請求項56〜77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記医薬組成物が、前記対象の血漿中の前記化合物濃度が、各投薬の後の24時間を超える間重要な濃度を超えて維持されないように投与される、請求項56〜62、および72〜77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記医薬組成物が、前記対象の血漿中の前記化合物濃度が、各投薬の後の12、16および20時間からなる群から選択される持続時間を超える間重要な濃度を超えて維持されないように投与される、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記重要な濃度が約100μMである、請求項81に記載の方法。
【請求項84】
前記重要な濃度が約50μMである、請求項81に記載の方法。
【請求項85】
前記重要な濃度が約30μMである、請求項81に記載の方法。
【請求項86】
前記重要な濃度が約20μMである、請求項81に記載の方法。
【請求項87】
前記組成物が、単離、精製または合成される、請求項56〜77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
2−(1−ヒドロキシエチル)−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−クロロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチル−7−フルオロ−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−アセチルナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、2−エチル−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン、リン酸モノ−[1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニル]エステル、リン酸1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニルエステルジメチルエステル、および薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される化合物、ならびに
薬学的に許容される賦形剤、担体または希釈剤
を含む医薬組成物。
【請求項89】
経口、鼻、局所、直腸、膣または非経口の投与、または静脈内、皮下もしくは筋肉内の注射に適する、請求項88に記載の医薬組成物。
【請求項90】
前記薬学的に許容される賦形剤、担体または希釈剤が、静脈内送達のための脂質を含む、請求項88に記載の医薬組成物。
【請求項91】
前記脂質が、リン脂質、合成ホファチジルコリン(phophatidylcholine)、天然のホファチジルコリン、スフィンゴミエリン、セラミド、ホファチジルエタノールアミン(phophatidylethanolamine)、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、コレステロール、コレステロール硫酸、ならびにハプテンおよびPEGを結合させた脂質からなる群から選択される、請求項90に記載の医薬組成物。
【請求項92】
前記脂質が、ナノエマルジョン、ミセル、乳剤、懸濁液、ナノ懸濁液、ニオソームまたはリポソームからなる群から選択される形態である、請求項90に記載の医薬組成物。
【請求項93】
前記薬学的に許容される賦形剤、担体または希釈剤が、ミセル乳剤、懸濁液およびナノ粒子懸濁液からなる群から選択される形であり、静脈内送達のために静脈内で許容されるタンパク質をさらに含む、請求項88に記載の医薬組成物。
【請求項94】
前記静脈内で許容されるタンパク質がヒトアルブミンまたはその誘導体である、請求項93に記載の医薬組成物。
【請求項95】
前記薬学的に許容される賦形剤、担体または希釈剤が、経口送達のためのワックス状物質を含む、請求項88に記載の医薬組成物。
【請求項96】
前記ワックス状物質が、モノグリセリド、ジグリセリドもしくはトリグリセリド、PEGのモノ脂肪酸、ジ脂肪酸エステル、PEG結合ビタミンE(ビタミンE TPG)およびGelucireからなる群から選択される、請求項95に記載の医薬組成物。
【請求項97】
前記Gelucireが、Gelucire 44/14、Gelucire 43/01、Gelucire 50/02、Gelucire 50/13、Gelucire 37/02、Gelucire 33/01、Gelucire 46/07およびGelucire 35/10からなる群から選択される、請求項96に記載の医薬組成物。
【請求項98】
前記薬学的に許容される賦形剤、担体または希釈剤が、Capryol、Transcutol hp、Labrafil M、Labrasol、トリアセチン、Pharmasolv、エタノール、ポリビニルピロリジン、カルボキシメチルセルロース、Tween 20およびTween 80からなる群から選択される、請求項88に記載の医薬組成物。
【請求項99】
前記薬学的に許容される賦形剤が界面活性剤と混合される、請求項88に記載の医薬組成物。
【請求項100】
前記界面活性剤がTween 80またはTween 20である、請求項99に記載の医薬組成物。
【請求項101】
経口投与のために製剤化される、請求項99〜100に記載の医薬組成物。
【請求項102】
式4−6
【化12】

(式中、RはH、ClまたはFである)の化合物を調製する方法であって、
式4−4
【化13】

の化合物を、塩基および酸化剤の存在下の溶媒中で、ケトンと反応させるステップを含む方法。
【請求項103】
前記酸化剤が、O、BrおよびCBrClからなる群から選択される、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
前記反応が開放空気容器内で実施される、請求項102に記載の方法。
【請求項105】
前記ケトンが式4−3
【化14】

の化合物である、請求項102に記載の方法。
【請求項106】
式4−1
【化15】

の化合物を、溶媒と一緒にまたは溶媒無しで臭化物と反応させて、式4−2
【化16】

の化合物を生成するステップと、
その後、塩基の存在下の溶媒中で式4−2の化合物を反応させて、式4−3
【化17】

の化合物を生成するステップとをさらに含む、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
すべてのステップが同じ容器内で起こる、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記溶媒が、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンおよびトルエンからなる群から選択され、前記塩基が、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、トリエチルアミンおよびジイソプロピルエチルアミンからなる群から選択される、請求項102に記載の方法。
【請求項109】
リン酸モノ−[1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニル]エステルの式の化合物。
【請求項110】
リン酸1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニルエステルジメチルエステルの式の化合物。
【請求項111】
化合物のリン酸モノ−[1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニル]エステルを調製する方法であって、化合物の2−アセチルナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオンを、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドおよびカリウムビス(トリメチルシリル)アミドからなる群から選択される溶液と反応させ、続いて、ジメチルクロロホスフェートの溶液を加えるステップを含む方法。
【請求項112】
前記反応から得られる粗生成物をCHClに溶解させ、飽和NHCLおよび水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、その後前記生成物をカラムクロマトグラフィーに通すことによって、前記粗生成物を精製するステップをさらに含む、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
化合物のリン酸1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニルエステルジメチルエステルを調製する方法であって、化合物のリン酸モノ−[1−(4,9−ジオキソ−3a,4,9,9a−テトラヒドロ−ナフト[2,3−b]フラン−2−イル)−ビニル]エステルをトリメチルシリルブロミドと反応させるステップを含む方法。
【請求項114】
セミプレップHPLCによって、前記反応から得られる粗生成物を精製するステップをさらに含む、請求項113に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2010−539097(P2010−539097A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524249(P2010−524249)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/075903
【国際公開番号】WO2009/036099
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(510055334)ボストン バイオメディカル, インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】