説明

TFT銅ゲートプロセスのための無電解NiWP接着及びキャッピング層

無電解NiWP層がTFT銅ゲートプロセスのために使用される。NiWP堆積プロセスは、(a)例えば紫外線、オゾン溶液及び/又はアルカリ混合物溶液を使用するベース表面の浄化、(b)例えば希釈酸を使用するベース表面のミクロエッチング、(c)例えばSnCl及びPdCl溶液を使用するベース表面の触媒活性化、(d)還元剤溶液を使用するベース表面のコンディショニング及び(e)NiWP層堆積のステップを含む。ある条件下で堆積されたNiWP層は、ガラス基板へのまた、良好なCuバリアー能力をもつCu層への、良好な接着性を提供することができることが見出された。NiWP層は、接着、キャッピング及び/又はTFTCuゲートプロセスのためのバリアー層に有益である。(例えば、フラットスクリーンディスプレイパネル)

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
ガラス基板のサイズは、より大きなTFT-LCD若しくはプラズマパネルを効率的に製造するために段々と大きくなっている。しかしながら、面積が増加すると、ゲートラインでの信号遅延が臨界的となることから、均一な画像表示を達成することがより困難となる。これは現行のゲート材料(アルミニウム)の高い固有抵抗に基づくものであり、銅のようなより低い固有抵抗材料が、この遅延の減少のために将来的に使用されることが期待されている。しかしながら、金属銅は、アルミニウムほど安定ではない。銅は酸化されやすく、他の材料に拡散しやすい。US-B-6,413.84により、ガラス基板と銅ゲート層との間にNi及びAuの積み重ね層を使用するTFT Cuゲートのための湿式堆積プロセスが知られている。
【0002】
本発明者は、層はCu層とガラス基板との間の「接着層」として作用することが要請されること、前記接着層が、いかなるCu拡散をも妨げる拡散バイアー層でもあることを立証した。上記層中へのCu拡散を妨げるためには、Cu層上部に「キャッピング層」を設けることも必要である。
【0003】
「銅相互接続技術における拡散バリアー層への適用のためのSiO上への無電解ニッケル3元合金堆積」(Journal of the Electronical Society - 149 (11-2002))という表題のOsakaその他の論文により、Cuバリアーとして無電解NiWPを使用することが知られているが、この文献に開示されたフィルムは、この文献に開示されたようなプロセス条件では、ガラス基板への接着不足と貧弱な厚み均質性を示す。
【0004】
US-B-6,413,845は、積み重ね層(Ni及びAuの層)を開示するが、このプロセスは、TFTディスプレイパネル最終製品の製造コストを増加する、対応するレジストプロセスを伴なう多段階堆積を必要とする。
【0005】
接着及び/又はキャッピング層の堆積は、PVD及びCVDのような乾式プロセスを使用して提案されてきた。しかしながら、これらの乾式プロセスは、設備、特にパネルサイズと共に劇的に増加する工具コストに関して高価である。これは、ガラス基板面積を増加する主な理由の一つが製造コストを減少することであることから、パネル製造者にとっては非常に重要となっている。
【0006】
したがって、拡散バリアー層を堆積するコストを増加せず、ガラス基板への良好な接着を提供し、銅層のキャッピング層堆積プロセスに好ましくは適用可能であるプロセスを規定することは、未だ今日でも当業者が解決すべき課題である。
【0007】
本発明によれば、ある条件下で堆積された無電解NiWP層は、良好なCuバリアー能力をもつ接着及びキャッピング層両方を作製するために適していることが見出された。これら層の粗さ及び厚さ均一性が満足できるものであることも見出された。
【0008】
本発明者は、NiWPメッキ条件は、銅層特性を含むフィルム特性にとって重要な結果を持つ、NiWPフィルムでのNi、W及び/又はP元素の種々の含有量を導くことができることを見出した。
【0009】
NiWPフィルム中のタングステン原子は、熱的及びバリアー性質を改善するが、他のモリブデン及びレニウムのような耐火金属もWに代えて使用することができる。
【0010】
本発明による無電解プロセスは、同様の目的のために今日使用される現行の乾式プロセスと比べると、製造コストを下げ、堆積プロセスを簡単にもする。
【0011】
本発明による好ましいNiWP堆積プロセスは、以下のステップの組み合わせを含む;
(a)ベース表面の浄化:
好ましくは、紫外線、オゾン溶液及び/又はNaOH、NaCO、NaPOの混合物のような脱脂溶液が、ガラス表面を浄化するために使用される。(表面の有機汚染物の除去)
表面が充分に清浄である時か、これら処理が損傷や不測の化学反応を引き起こすならば、このステップは省くことができる。
【0012】
このステップは、ある継続時間、典型的には、UV及びオゾン処理に対して10秒〜10分間、より好ましくは、夫々に対して30秒〜3分間実行される。脱脂溶液を使う時には、継続時間は、温度30℃〜100℃で30秒〜10分間、より好ましくは、温度50℃〜90℃で1分〜5分間続けられてもよい。
【0013】
(b)ベース表面のミクロエッチング:
HFのような希釈酸溶液が使用される。このステップは、接着層の堆積のためのガラス基板上のミクロな粗さを作り、このステップは、基板へのNiWP層の接着を最後には向上させる。しかしながら、表面がすでにある粗さを有する時か、これら処理が表面の不測で有害な反応を引き起こすならば、このステップは省くことができる。
【0014】
典型的には、このステップは、脱イオン水中の0.1〜5%HF若しくはHNO希釈溶液で10秒〜5分間、より好ましくは、0.3〜3体積%のHF溶液で30秒〜3分間実行される。
【0015】
(c)触媒活性化:
SnCl及び/又はPdCl溶液が通常使用される。このステップは、表面に極薄のパラジウム層を設けるためになされる。基板は、先ずSnCl溶液(若しくは類似物)に浸漬され、その後すすいだ後PdCl溶液(若しくは類似物)に浸漬される。このステップは、表面上のPd層の所望の厚さが1ステップで達成できないならば、数度繰り返すことができる。しかしながら、この処理が表面の不測な反応を引き起こす時には、このステップは省くことができる。
【0016】
典型的には、0.1%〜10体積%のHCl中の0.1g/L〜50g/LのSnCl及0.01%〜1体積%HCl中の0.01g/L〜5g/LのPdClが、より好ましくは、0.5%〜5%のHCl中の1g/L〜20g/LのSnCl及び0.05%〜0.5%HCl中の0.1g/L〜2g/LのPdClが使用される。
【0017】
このステップを実行することにより、表面で、次の化学反応を得ることが期待される:Sn2++Pd2+=>Sn4++Pd
(d)コンディショニング:
還元剤を含む水溶液が使用される。このステップは、触媒活性化ステップ(c)の後にNiWP堆積を得るために重要であることが見出された。溶液のpHは、好ましくはステップ(c)で使用されるNiWPメッキ溶液のpH値と同じpH値に調整される。このステップは、表面上のSn4+を減少させ、還元性NiWP堆積化学を促進することができる。好ましくは、ステップ(d)の溶液がNi及びWを全く含まないことで、ステップ(d)の溶液は、ステップ(e)の溶液と同じである。代替として、NaHPO溶液のみを使用することができる。このコンディショニングステップは、好ましくは、10秒〜3分間続けられてもよい。
【0018】
(e)ガラス基板上及び/又はCu上への無電解NiWP堆積:
好ましくは、NiSO、NaWO及び/又はNaHPOを含む溶液が、Ni、W及びPの供給源として、夫々使用される。NaHPOは、還元剤である。クエン酸三ナトリウム及び(NHSOも溶液に添加され、夫々錯形成剤及びpH緩衝剤として使用されてもよい。HSO、NaOH及び/又はNHOHも、必要ならば溶液のpHを調整するために使用することもできる。浴溶液の温度及びpHは、夫々50〜100℃及び5〜11の範囲であり、より好ましくは、夫々60〜90℃及び7〜10の範囲である。メッキ時間は、層の堆積速度と厚さにより決定することができ、50nmの層厚のNiWPに対して、典型的には、15秒〜5分間である。
【0019】
本発明は、以下の実施例と比較例により、直ちによりよく理解されるであろう。
【0020】
実施例1
素ガラス基板が、有機汚染物を除去するために、NaOH、NaCO、NaPO(上記定義された夫々の割合内で)を含む脱脂溶液に80℃で3分間浸漬された。脱イオン水(DIW)ですすがれた後、表面にミクロな粗さを生み出すために、希釈HF溶液(2.5%)に1分間浸漬された。すすがれた後、SnCl溶液(1%HCl中の10g/LSnCl)に浸漬され、その後PdCl溶液(0.1%HCl中の0.3g/LPdCl)に、夫々2時間浸漬された。すすがれた後、還元剤を含み、以下の組成を有するコンディショニング溶液に、室温でpH=7以内で30秒間浸された。
【0021】
NaHPOO:20g/L、(NHSO:30g/L、クエン酸三ナトリウム二水和物:70g/L
その後、以下の組成を有するNiWPメッキ溶液に、60℃、pH7で浸された。
【0022】
NiSO6HO:20g/L、NaWO2HO:30g/L、NaHPOO:20g/L、(NHSO:30g/L、クエン酸三ナトリウム二水和物:70g/L、
堆積されたフィルムは、ガラス基板に良好な接着性を示した。層の粗さ(Ra)と厚さ均一性は、満足すべきものであった(夫々、5nmより少なく、5%以内。)堆積速度は、典型的には約3nm/minであった。
【0023】
NiWPフィルムは、85重量%Ni、5重量%W及び10重量%Pからなる。
【0024】
X線分析は、NiWP層は、無定形材料からできていることを明らかにした。前記層を400℃で1時間加熱後でさえも、これらの特性の変化は、ほんの僅かであった。
【0025】
NiWP層はガラス基板上で使用されたのと同様の方法でCu上に堆積された。堆積されたNiWPフィルムは、満足できる粗さと厚さ均一性を有し、Cuに良好な接着性を示した。
【0026】
無電解Cu層が、(ガラス基板上に既に堆積された)上記無電解層NiWP層上に堆積された。その後、層は400℃で1時間加熱された。X線分析は、NiWP中へのCuの拡散は、加熱後でさえもほんの僅かであり、良好な接着が、ガラス基板とともに存在することを示し、この層が、Cu層、Cu層キャッピング接着に適当であり、いずれの場合にも有効なバリアー効果を有することを確認した。(もちろん、それは、1つの目的(接着若しくはキャッピング若しくはバリアー)のみに使用してもよい。)
比較例:全てのこれらの例は、後に記すことを除いて、実施例1と同様にして作成された。
【0027】
比較例1:
Cu層は、NiWP層を介さずにガラス基板上に堆積された。層は、貧弱な接着性を示し、簡単に剥がれた。
【0028】
比較例2:
NiWP層は、浄化ステップ(a)を行わないことを除いて、実施例1のようにガラス基板に堆積された。堆積されたフィルムは、貧弱な均質性と再現性を示した。
【0029】
比較例3:
NiWP層は、ミクロエッチングステップ(b)を行わないことを除いて、実施例1のようにガラス基板に堆積された。堆積されたフィルムは、ガラス基板上への貧弱な接着性を示した。
【0030】
比較例4:
NiWP層は、触媒活性化ステップ(c)を行わないことを除いて、実施例1のようにガラス基板に堆積された。如何なる堆積も、ガラス基板上に観察されなかった。
【0031】
比較例5:
NiWP層は、コンディショニングステップ(d)を行わないことを除いて、実施例1のようにガラス基板に堆積された。堆積されたフィルムは、貧弱な均一性と再現性を示した。
【0032】
比較例6:
NiWP層は、NiWP堆積浴の温度が50℃未満に固定したことを除いて、実施例1のようにガラス基板に堆積された。堆積されたフィルムは、全ての条件がそれ以外同じで、浴温度が50℃超での同じ操業と比べて、より貧弱な均質性と再現性を示した。
【0033】
比較例7:
NiWP層は、NiWP堆積浴のpHが11より高い値に調整されたことを除いて、実施例1のようにガラス基板に堆積された。堆積されたフィルムは、他の全ての条件が同じで、pHが5〜11の場合より、ガラス基板上へのより貧弱な接着性を示した。
【0034】
比較例8:
NiWP層は、ステップ(d)及びステップ(e)の溶液のpHが別の値に調整されたことを除いて、実施例1のようにガラス基板に堆積された。堆積されたフィルムは、より貧弱な均一性を示した。
実施例2:
NiWP層は、ガラス基板に堆積され、その後今度は、Cu層が、ステップ(e)で使用された溶液の組成が、NiSO6HOを20g/Lに代えて10g/Lの量で含むことを除いて、実施例1で開示されたようなNiWP層のように堆積された。堆積されたフィルムは、ガラス基板上への良好な接着性を示し、Cu層は、満足できる粗さと厚さ均一性を有した。NiWPフィルムは、81重量%Ni、7重量%W及び12重量%Pを含んでいた。
【0035】
X線分析は、NiWP層は、無定形材料からできていることを明らかにした。これらの特性の変化は、前記層を400℃で1時間加熱後でさえもほんの僅かであり、一方NiWPへの無視できるCu拡散が観察された。
【0036】
実施例3:
NiWP層は、ステップ(e)実行時、クエン酸三ナトリウム二水和物の量が30g/Lで、浴温度が90℃であることを除いて、ガラス基板に堆積され、その後今度は、実施例1のように,Cu層が、NiWP層のように堆積された。堆積されたフィルムは、ガラス基板上への良好な接着性を示し、Cu層は、実施例1より良好な満足できる粗さと厚さ均一性を有した。NiWPフィルムは、94重量%Ni、2重量%W及び4重量%Pを含んでいた。
【0037】
X線分析は、NiWP層は、部分結晶化材料からできていることを明らかにした。これらの特性の変化は、前記層を400℃で1時間加熱後でさえもほんの僅かであり、NiWPへの無視できるCu拡散が観察された。
【0038】
実施例4:
NiMoP及びCu層は、NaMoOがNaWOに代えて使用されたことを除いて、実施例1のようにガラス基板に堆積された。コンディショニング溶液の組成は以下のとおりであった。
【0039】
NaHPOO:20g/L、NHCl:50g/L、クエン酸三ナトリウム二水和物:85g/L
この溶液は、pH9で、室温で維持された。
【0040】
使用されたNiMoPメッキ浴は以下の組成を有していた。
【0041】
NiSO6HO:35g/L、NaMoO:0.15g/L、NaHPOO:20g/L、NHCl:50g/L、クエン酸三ナトリウム二水和物:85g/L。
【0042】
溶液は62℃に維持され、溶液のpHは9であった。堆積されたフィルムは、ガラス基板及びCu層への良好な接着性を示した。層の粗さと厚さ均質性は満足すべきものであった。堆積速度は、典型的には2nm/minであった。NiMoPフィルムは、本質的に81重量%Ni、2重量%Mo及び17重量%Pを含んでいた。
【0043】
X線分析は、NiMoP層は、無定形材料からできていることを明らかにした。これらの特性の変化は、前記層を400℃で1時間加熱後でさえもほんの僅かであった。X線分析は、加熱後のNiMoPへのCu拡散は、ほんの僅かであることを明らかにした。
【0044】
実施例5:
(NHReOがNaWOに代えて使用されたことを除いて、実施例1のように、NiRePが、ガラス基板上及びCu層上に堆積された。コンディショニング溶液は、以下の組成を有していた。
【0045】
NaHPOO:20g/L、(NHSO:30g/L、クエン酸三ナトリウム二水和物:85g/L
溶液のpHは9であり、溶液は、室温で維持された。
【0046】
使用されたNiRePメッキ浴は以下の組成を有した。
【0047】
NiSO6HO:35g/L、:(NHReO:0.5g/L、NaHPOO:20g/L、:(NHSO:30g/L、クエン酸三ナトリウム二水和物:85g/L
溶液のpHは9であり、一方溶液の温度は70℃に維持された。
【0048】
堆積されたフィルムは、ガラス及びCuへの良好な接着性を示した。層の粗さと厚さ均一性は満足すべきものであった。NiRePフィルムは、本質的に71重量%Ni、23重量%Re及び6重量%Pを含んでいた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)随意に基板を浄化すること、
b)随意に基板をミクロエッチングすること、
c)基板に触媒活性化層を堆積すること、
d)コンディショニング溶液で基板をコンディショニングすること、
e)Ni55〜96重量%、P3〜20重量%及びM1〜25重量%を含む層を得ることを目的として、Ni、M及び/又はPの前駆体を含む浴混合物に、前記基板若しくはその一部を接触させることにより、基板上にNiMP層を堆積すること、
のステップを含む、ガラス及び/又は銅のような基板にNiMP層(Mは、W、Mo、Reを含む群から選択される有機金属分子である)を堆積する方法。
【請求項2】
コンディショニング溶液のpH値が、5〜11である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
浴混合物のpH値が、5〜11である、請求項1又は2項記載の方法。
【請求項4】
コンディショニング溶液及び浴混合物のpH値が、実質的に同一である、請求項2又は3記載の方法。
【請求項5】
コンディショニング溶液の温度が、室温に近いか室温と等しい、請求項1乃至4何れか1項記載の方法。
【請求項6】
浴混合物の温度が、50℃より高い、請求項1乃至5何れか1項記載の方法。
【請求項7】
請求項1乃至6何れか1項記載の方法により、NiMP層が、ガラス基板上及び/又は銅接続上に堆積される、ガラス基板上へ堆積された銅接続を使用する相互接続素子。
【請求項8】
請求項7の相互接続素子を含むTFT-LCD若しくはプラズマディスプレイパネル。

【公表番号】特表2009−501274(P2009−501274A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520721(P2008−520721)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【国際出願番号】PCT/EP2005/009175
【国際公開番号】WO2007/006338
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(591036572)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (438)
【出願人】(508013515)インダストリアル テクノロジー リサーチ インスティテュート(アイティーアールアイ) (1)
【Fターム(参考)】