説明

TMD機構

【課題】慣性質量を付加質量として利用するTMD機構に対して、地震時における過大な負担力の発生を防止するためのフェールセーフ機能を持たせ、大地震時にも安定かつ有効に作動し得る有効適切なTMD機構を実現する。
【解決手段】構造体1とそれを支持する支持体との間に、構造体を支持体に対して弾性支持する付加バネ4と、回転体の回転により慣性質量を生じる慣性質量ダンパー3とを直列に接続し、慣性質量ダンパーによる慣性質量と付加バネのバネ剛性とにより定まる固有振動数を構造体の固有振動数に同調させ、かつ地震時における慣性質量ダンパーへの過大入力を制限するべく前記付加バネの耐力を所定の降伏耐力で降伏するように設定する。TMD機構を建物の架構フレーム内に設置し、付加バネをブレースダンパーや枠組架構により構成したり、ブレースや枠組架構と摩擦ダンパーとの組み合わせにより構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は構造体の振動を低減するためのTMD(Tuned Mass Damper)機構に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されているように、構造体に対して慣性質量ダンパーと付加バネとを直列に接続した付加振動系を設置することにより、その付加振動系がTMD機構として構造体の振動を低減可能であることが知られている。
慣性質量ダンパーは実際の錘質量の数百〜数千倍の慣性質量が容易に得られることから、これをTMD機構に組み込むことで構造体質量の1割以上もの大きな慣性質量を付加質量として利用することが可能であり、したがって中小地震や風による振動のみならず大地震に対しても優れた振動低減効果が得られる有効なTMD機構を実現できるものであるので、今後の普及が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−101769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような慣性質量ダンパーによるTMD機構では、慣性質量比(=慣性質量/構造体質量)が大きくなるほど応答低減される振動数範囲が広帯域となり、質量や剛性が変動しても応答低減効果が持続する(ロバスト性が向上する)ものであり、そのためには慣性質量を可及的に大きくする方が有利である。
しかし、慣性質量を単に大きくすることでは、地震時に過大な入力が作用して付加振動系のダンパーや本体接合部に過大な応力が生じてしまうことが想定され、付加振動系の負担力がダンパーや接合部の耐力を上回ってそれらが破損を生じる懸念もある。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は慣性質量を付加質量として利用するTMD機構に対して地震時における過大な負担力の発生を防止するためのフェールセーフ機能を持たせることにより、大地震時にも安定かつ有効に作動し得る有効適切なTMD機構を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のTMD機構は、請求項1記載のように、構造体とそれを支持する支持体との間に、構造体を支持体に対して弾性支持する付加バネと、回転体の回転により慣性質量を生じる慣性質量ダンパーとを直列に接続し、慣性質量ダンパーによる慣性質量と付加バネのバネ剛性とにより定まる固有振動数を構造体の固有振動数に同調させ、かつ地震時における慣性質量ダンパーへの過大入力を制限するように前記付加バネの耐力を設定してなることを特徴とする。
【0007】
本発明においては、請求項2記載のように、前記付加バネをそれ自体が地震時に所定の降伏耐力で降伏するか所定摩擦力で滑りを生じるバネ部材により構成するか、あるいは、請求項3記載のように、前記付加バネを地震時においても弾性変形を維持するバネ部材と該バネ部材に直列に接続されて地震時に所定の降伏耐力で塑性化して降伏する塑性化部材または所定の摩擦力で滑りを生じる摩擦抵抗部材により構成することが考えられる。
【0008】
本発明のTMD機構は建物の架構フレーム内に設置することも可能であり、その場合には架構フレームの下層部が上記の支持体として機能し、架構フレームの上層部が上記の構造体として機能することになる。
【0009】
そして、そのように本発明のTMD機構を建物の架構フレーム内に設置する場合において、請求項2記載のように付加バネをバネ部材のみで構成する場合には、請求項4記載のようにバネ部材としてブレースダンパーを利用してそのブレースダンパーのバネ剛性に基づいて同調を行い、かつそのブレースダンパー自体を所定耐力で降伏させるか所定摩擦力で滑りを生じる構成とすることが考えられる。
その場合、ブレースダンパーを請求項5記載のようにV型配置するか、もしくは請求項6記載のようにΛ型配置とし、いずれにしてもそのブレースダンパーの一端部を架構フレームに対して固定するとともに他端部を架構フレームに対して面内相対変位可能に連結したうえでそこに慣性質量ダンパーを介装すれば良い。
【0010】
あるいは、請求項7記載のようにバネ部材として枠組架構を利用してその枠組架構の水平剛性に基づいて同調を行い、かつその枠組架構自体を所定耐力で水平方向に降伏させる構成とすることも考えられる。
その場合、請求項8記載のように枠組架構を構成する柱部にせん断パネルダンパーを組み込むことが考えられる。
また、請求項9記載のように枠組架構を柱部と上梁部のみで構成して柱部の下端部を架構フレームを構成している下梁に対して接合するとともに、上梁部を上梁に対して面内相対変位可能に連結したうえでそこに慣性質量ダンパーを介装すると良い。
【0011】
さらに、本発明のTMD機構を建物の架構フレーム内に設置する場合において、請求項3記載のように付加バネをバネ部材と摩擦抵抗部材により構成する場合には、請求項10記載のようにバネ部材としてのブレースと摩擦抵抗部材としての摩擦ダンパーを組み合わせて、ブレースのバネ剛性に基づいて同調を行い、かつ摩擦ダンパーを所定の摩擦力で滑らせる構成とすることが考えられる。
あるいは、請求項11記載のように、付加バネをバネ部材としての枠組架構と摩擦抵抗部材としての摩擦ダンパーとを組み合わせた構成とし、枠組架構の水平方向のバネ剛性に基づいて同調を行い、かつ摩擦ダンパーを所定の摩擦力で滑らせる構成とすることも考えられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、慣性質量を利用するTMD機構において付加バネに非線形特性を付与することにより、TMD機構のない場合に比べて構造体の変位や加速度を2〜3割程度も低減できるばかりでなく、TMD機構の負担力を頭打ちするように低減できてこのTMD機構自体や構造体との接合部の破損を防止でき、付加バネを非線形化するだけで大地震にも有効にかつ安定に作動するTMD機構をローコストに実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のTMD機構の概要図である。
【図2】同、付加バネの非線形特性図である
【図3】同、慣性質量ダンパーの非線形特性図である。
【図4】同、付加減衰の非線形特性図である。
【図5】同、一設計例についての解析結果を示す図である。
【図6】同、解析結果を示す図である。
【図7】同、解析結果を示す図である。
【図8】同、他の設計例についての解析結果を示す図である。
【図9】同、解析結果を示す図である。
【図10】同、解析結果を示す図である。
【図11】本発明のTMD機構を建物の架構フレーム内に設置する場合の具体的な構成例を示す図である。
【図12】同、他の構成例を示す図である。
【図13】同、他の構成例を示す図である。
【図14】同、他の構成例を示す図である。
【図15】同、他の構成例を示す図である。
【図16】同、他の構成例を示す図である。
【図17】同、他の構成例を示す図である。
【図18】同、他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態を図1に示す。これは地盤(支持体)に対して構造体バネおよび構造体減衰を介して水平振動可能に支持された建物等の構造体1を対象として、構造体バネと並列にTMD機構2を設置したものである。
【0015】
本実施形態のTMD機構2は、基本的には特許文献1に示される振動低減機構と同様に、慣性質量ダンパー3と付加バネ4とを直列に接続し、(a)あるいは(b)に示すように付加バネ4あるいは慣性質量ダンパー3と並列にオイルダンパー等の付加減衰5を接続したものであるが、従来の振動低減機構における付加バネは単なる線形特性のものであるのに対し、本実施形態では付加バネ4に(c)に示すような非線形特性を付与したものである。
【0016】
すなわち、本実施形態においては、図1(c)に示すように所定の降伏荷重(頭打ち荷重)で降伏するような弾塑性履歴特性を有する鋼材からなる板バネを付加バネ4として用いており、これにより本実施形態のTMD機構2は付加バネ4の降伏荷重に達する変位よりも大きい変位が作用した際には負担力が頭打ちになるようなフェールセーフ機能を有するものとなり、それにより地震時におけるTMD機構2の過大な負担力の発生が防止されてダンパーの損傷や主系との衝突が防止されるようになっている。
【0017】
この場合、頭打ち荷重が小さいほど負担力は小さくなるが、過度に小さくした場合には応答低減効果が低下して変位が増大してしまうから、それら相反条件の双方を可及的に満足するためには、頭打ち荷重は線形としたときの最大応答荷重の0.2〜0.7倍程度の範囲に設定することが現実的である。
【0018】
なお、負担力が頭打ちされるとは、頭打ちした以降はその頭打ち荷重が一定に保持されることを意味するのではなく、図1(c)のように頭打ちした以降の負担力増分が頭打ちするまでよりも充分に小さくなれば良い。
また、付加バネ4に非線形特性を付与するためには、その付加バネ4自体が降伏するような設計とすることでも良いが、線形特性の適宜のバネ部材と非線形特性をもつ適宜の塑性化部材とを直列に接続して付加バネ4を構成し、地震時にバネ部材が線形を維持しても塑性化部材が所定の降伏耐力で塑性化して降伏するような設定とすることによっても同様の非線形特性を付与することができるし、塑性化部材の代わりに適宜の摩擦荷重で滑りを生じる摩擦ダンパーを用いることによっても同様の非線形特性を付与できる(その場合の具体的な構成例については後述する)。
【0019】
本発明のTMD機構の効果を以下に列挙する。
(1)ダンパーの負担力を頭打ちできるので、想定外の過大な地震動が作用した場合でもダンパーや接合部材の破損を防止できる。従来の付加振動系では付加バネが線形要素なのでどこまでも入力に比例した反力を負担し続け、過大な外乱に対してダンパーの反力により破損してしまう問題があったが、本発明によれはダンパー本体だけでなく構造体への負荷も減少することから、接合部や構造躯体を含めた総コストを縮減できる。
【0020】
(2)付加振動系が非線形にならない小さな外乱(中小地震)の範囲では従来の線形タイプと同じなので従来のTMD機構と同様に機能する。また、非線形になった後の小さな外乱(大地震の後揺れ等)では再び線形に復帰するのでやはり従来のTMD機構として機能することができる。このように、本発明のTMD機構は常時(線形時)にチューニングした機構が大地震時に構造体に悪影響を及ぼさない安全な機構となり、安定した応答低減効果を発揮できる。
【0021】
(3)大地震時に非線形として挙動するのは僅かな時間に過ぎず、継続時間中の殆どの時間は線形を保持する。そのため、非線形時には同調条件から外れるが、線形時の応答低減効果と概ね同様の効果を発揮する(同調型制振機構が弱非線形時にも有効である)。
【0022】
(4)線形時に付加振動系の部材に生じる最大応答応力(荷重)の0.2〜0.7倍程度に頭打ち荷重を設定することにより、応答低減効果を維持しつつ負担力を頭打ちすることができる。また、付加バネの頭打ち荷重が小さいほど残留変形が大きくなるが、0.4倍程度以上あれば実用上問題ないレベルに納まり、大地震後も継続使用が可能となる。
【0023】
(5)図1(b)に示すように、付加減衰5を慣性質量ダンパー3と並列に接続してそれらの直列に付加バネ4を接続した場合には、付加バネ4を非線形として負担力を頭打ちすることで慣性質量ダンパー3や付加減衰5(オイルダンパー)に作用する力も頭打ちされるので、これらのダンパーに生じる変位(ストローク)も低減される。そのため、それらダンパーに要求される最大荷重およびストロークを小さくできるのでローコストに製造できる。
【0024】
(6)本発明のTMD機構は、構造体とそれを支持する支持体との間に設置するのみならず、構造体の層間あるいは層を跨いで設置して制振対象の構造体の固有振動数に同調させることにより、過大な負担力を生じずに大きな応答低減効果が得られる(この場合の具体例については後述する)。
また、2つ以上の構造体を連結する部分に適用すれば、同様の効果が得られる連結制振構造となる。
【0025】
(7)付加バネに非線形特性を付与するためには、上述したように付加バネとしてそれ自体が降伏することで非線形特性を有する板バネ等のバネ部材を用いるか、あるいは線形特性のバネ部材と非線形特性の塑性化部材との組み合わせによる他、様々な手法が採用可能である。いずれにしても、何ら複雑かつ高度の機構や装置を必要とすることなく付加バネを非線形化して頭打ち荷重の設定を任意にかつ容易に行うことができ、ローコストに製造できる。
【0026】
以下、具体的な設計例とその性能を振動解析により確認する。
「設計例1」
図1(a)に示したように、付加減衰5を付加バネ4に並列に接続してそれらに直列に慣性質量ダンパー3を接続した場合において、構造体質量M=100ton、構造体剛性K=39.5kN/cm、構造体減衰C=0.25kN/kine、構造体(主系)の固有振動数f=1.0Hz、構造体の減衰係数h=0.02とする。
TMD機構2による付加質量を構造体質量の0.1倍として最適設計し、慣性質量ψ=0.1M=10ton、付加バネ4の初期剛性k0=3.36kN/cm、付加減衰5(オイルダンパー)の減衰係数c0=0.25kN/kine、TMD機構(付加振動系)の固有振動数f=0.92Hz(線形時)とする。
付加バネ4の非線形特性は図2とする。すなわち、降伏荷重(反力)F0=5.2kNで降伏し、それ以降の二次剛性k1が初期剛性k0=3.36kN/cmに対し1/50(k1=0.02k0)となるようなバイリニアー型の非線形特性を有するものとする。降伏後は図2に示す反力−変位関係図に示されるような履歴曲線ループを描く履歴ダンパーとして機能するものとなる。
【0027】
「比較例」
比較のために、付加バネ4を非線形とすることに代えて、慣性質量ダンパー3を非線形とする場合、および付加減衰5を非線形化する場合についても検討し、その効果を比較する。
慣性質量ダンパー3はトルク制限機構を付加することにより図3に示す非線形特性を付与する。すなわち、回転錘が締結部において抵抗トルク一定で回転(相対滑り=スリップ)するものとし、ダンパー両端の相対加速度1m/s2(100gal)で滑りを開始し、頭打ち荷重F0=10kN、滑り後の慣性質量ψ1は初期の慣性質量ψに対し1/10(ψ1=0.1ψ)とする。
付加減衰5はオイルダンパーにリリーフ機構を付加して図4に示す非線形特性を付与する。すなわち、ダンパー両端の相対速度0.18m/s(18kine)でリリーフ開始し、頭打ち荷重F0=4.5kN、リリーフ後の減衰係数c1は初期減衰係数coに対し1/100(c1=0.01c0)とする。
【0028】
「解析ケース」
比較例を含めて以下の5ケースとする。
Case0(比較例):TMD機構なし。
Case1(比較例):TMD機構あり。各要素が線形。
Case2(比較例):TMD機構あり。慣性質量ダンパーのみ非線形。
Case3(本発明):TMD機構あり。付加バネのみ非線形。
Case4(本発明):TMD機構あり。付加バネと付加減衰が非線形。
「解析条件」
解析用の観測波としてTAFT(EW)最大加速度176galを地盤面から一方向入力し、各ケースについて応答解析し、(1)質点変位(構造体の地面に対する変位)、(2)質点加速度(構造体の絶対加速度)、(3)慣性質量ダンパー変位、(4)付加バネ変位、(5)慣性質量ダンパー反力(負担力)、(6)付加バネ反力(負担力)、の比較を行う。
【0029】
「解析結果」
本発明によるCase3(付加バネのみを非線形化した場合)の応答解析結果を図5〜図6に示す。細線は比較例のCase1(各層要素が線形)の場合、太線が本発明のCase3(付加バネのみ非線形)の場合であり、これらの図から付加バネを非線形化することで各応答が低減することが分かる。
また、各ケースの最大応答値を図7に示す。(a)における( )内の値はCase1を基準とする指数であり、それを(b)にまとめてグラフ化している。
【0030】
Case0とCase1との比較により明らかなように、TMD機構がない場合(Case0)には、TMD機構(線形)がある場合(Case1)に比べて変位で38%、加速度で37%と最大応答値が増大しており、慣性質量ダンパーを用いたTMD機構によれば線形システムであっても加速度と変位の双方を同時に応答低減することが分かる。なお、応答解析は省略するが、後揺れについてもTMD機構により大幅に応答低減している。
【0031】
また、図7に示される各ケースの最大応答値の比較により、次のことが分かる。
(1)最大応答変位
慣性質量ダンパー、付加バネ、付加減衰のいずれに非線形特性を付与しても、構造体の最大応答変位は殆ど変わらない(1〜2%程度の増加)。
【0032】
(2)最大応答加速度
慣性質量ダンパー、付加バネ、付加減衰のいずれに非線形特性を付与しても、構造体の最大応答変加速度は殆ど変わらない。
【0033】
(3)慣性質量ダンパー変位
慣性質量ダンパーに非線形特性を付与した場合(Case2)には、慣性質量ダンパーの最大応答変位はやや増加する。また、付加バネに非線形特性を付与した場合(Case3)には、慣性質量ダンパーの最大応答変位は大幅に低減される。一方、付加バネと付加減衰に非線形特性を付与した場合(Case4)には、慣性質量ダンパーの最大応答変位は低減されるものの残留変形が大きくなる傾向にある。
【0034】
(4)付加バネ変位
慣性質量ダンパーに非線形特性を付与した場合(Case2)には、付加バネの最大応答変位は大幅に低減される。また、付加バネに非線形特性を付与した場合(Case3)には、付加バネの最大応答変位はかなり低減される。一方、付加バネと付加減衰に非線形特性を付与した場合(Case4)には、付加バネの最大応答変位はやや低減されるものの残留変形が大きくなる傾向にある。
【0035】
(5)慣性質量ダンパー反力
慣性質量ダンパーに非線形特性を付与した場合(Case2)、付加バネに非線形特性を付与した場合(Case3)には、慣性質量ダンパーの最大応答反力(負担力)を大幅に低減できる。なお、付加バネと付加減衰に非線形特性を付与した場合(Case4)には、慣性質量ダンパーの最大応答反力の低減効果は最大となるが、残留変形が問題になる場合もあるので、頭打ち荷重を過小にしないように留意すべきである。
【0036】
(6)付加バネ反力
慣性質量ダンパーに非線形特性を付与した場合(Case2)、付加バネに非線形特性を付与した場合(Case3)には、付加バネの最大応答反力(負担力)を大幅に低減できる。なお、付加バネに非線形特性を付与した場合(Case3)には、付加減衰に非線形特性を付与するか否かに関わらず。付加バネの最大応答反力の低減効果は大きくできるものの、残留変形が問題になる場合もあるので、頭打ち荷重を過小にしないように留意すべきである。
【0037】
「設計例2」
図1(b)に示したように、付加減衰5を慣性質量ダンパー3に並列に接続してそれらに直列に付加バネ4を接続した場合について、設計例1と同様の検討を行う。
設計例1との変更点は、付加バネ4の初期剛性k0=4.66kN/cm、降伏荷重(反力)F0=7.22kN(非線形特性は設計例1と同じ)、付加減衰5(オイルダンパー)の減衰係数c0=0.30kN/kine、頭打ち荷重F0=5.4kN(非線形特性は設計例1と同じ)、TMD機構2の固有振動数f=1.09Hz(線形時)であり、他の諸元は設計例1と同じとする。
【0038】
「解析ケース」
比較例を含めて以下の5ケースとする。解析条件は設計例1と同じとする。
Case0(比較例):TMD機構なし。
Case1(比較例):TMD機構あり。各要素が線形。
Case2(比較例):TMD機構あり。慣性質量ダンパーのみ非線形。
Case3(本発明):TMD機構あり。付加バネのみ非線形。
Case4(比較例):TMD機構あり。慣性質量ダンパーと付加減衰が非線形。
【0039】
「解析結果」
本発明によるCase3(付加バネのみを非線形化した場合)の応答解析結果を図8〜図9に示す。細線は比較例のCase1(付加バネが線形)の場合、太線が本発明のCase3(付加バネが非線形)の場合である。また、各ケースの最大応答値を図10に示す。
【0040】
Case0とCase1との比較により明らかなように、TMD機構がない場合(Case0)には、TMD機構(線形)がある場合(Case1)に比べて変位で36%、加速度で19%と最大応答値が増大しており、慣性質量ダンパーを用いたTMD機構によれば線形システムであっても加速度と変位の双方を同時に応答低減することが分かる。なお、応答解析は省略するが、後揺れについてもTMD機構により大幅に応答低減している。
【0041】
また、図8〜図9から付加バネを非線形化することで設計例1の場合と同様に各応答が低減することが分かる。さらに図10に示される各ケースの最大応答値の比較により、次のことが分かる。
(1)最大応答変位
慣性質量ダンパー、付加バネ、付加減衰のいずれに非線形特性を付与しても、構造体の最大応答変位は殆ど変わらない(1〜3%程度の減少)。
【0042】
(2)最大応答加速度
慣性質量ダンパー、付加バネ、付加減衰のいずれに非線形特性を付与しても、構造体の最大応答変加速度は8〜10%程度減少する程度であまり変わらない。
【0043】
(3)慣性質量ダンパー変位
慣性質量ダンパーに非線形特性を付与した場合(Case2)には、慣性質量ダンパーの最大応答変位は低減する。また、付加バネに非線形特性を付与した場合(Case3)には、慣性質量ダンパーの最大応答変位は大幅に低減されるもののやや残留変形を生じる。一方、慣性質量ダンパーと付加減衰に非線形特性を付与した場合(Case4)には、慣性質量ダンパーの最大応答変位は低減されるが、慣性質量ダンパーのみに非線形特性を付与した場合よりやや大きくなる。
【0044】
(4)付加バネ変位
慣性質量ダンパーに非線形特性を付与した場合(Case2)には、付加バネの最大応答変位は大幅に低減される。また、付加バネに非線形特性を付与した場合(Case3)には、付加バネの最大応答変位はかなり低減される。一方、慣性質量ダンパーと付加減衰に非線形特性を付与した場合(Case4)には、付加バネの最大応答変位は大幅に低減される。
【0045】
(5)慣性質量ダンパー反力
慣性質量ダンパーに非線形特性を付与した場合(Case2)、付加バネに非線形特性を付与した場合(Case3)には、慣性質量ダンパーの最大応答反力(負担力)を大幅に低減できる。なお、付加バネに非線形特性を付与した場合(Case3)には、慣性質量ダンパーの最大応答反力の低減効果は最大となるが、残留変形が問題になる場合もあるので、頭打ち荷重を過小にしないように留意すべきである。
【0046】
(6)付加バネ反力
慣性質量ダンパーに非線形特性を付与した場合(Case2)、付加バネに非線形特性を付与した場合(Case3)には、付加バネの最大応答反力(負担力)を大幅に低減できる。なお、付加バネに非線形特性を付与した場合(Case3)には、付加バネの最大応答反力の低減効果は大きくできるものの、残留変形が問題になる場合もあるので、頭打ち荷重を過小にしないように留意すべきである。
【0047】
「付加バネに非線形特性を付与するための構成例」
以下、本発明のTMD機構における付加バネの具体的な構成例について図11〜図18を参照して説明する。
なお、以下の具体例はいずれも本発明のTMD機構を柱11と梁12(下梁12aおよび上梁12b)とにより構成されている架構フレーム10内(構面内)に設置する場合の適用例であって、この場合は架構フレーム10の下層部が上記の「支持体」に相当し上層部が「構造体1」に相当するものである。
【0048】
図11は非線形特性を有するブレースダンパー13自体を上記の付加バネ4として機能させるものである。すなわち、地震時に所定の軸力耐力で軸方向に降伏する周知のブレースダンパー13(特にダンパー本体としての帯鋼板の要所に降伏部としての幅狭部を形成し、かつその座屈を防止するように構成したものが好適に採用可能である)、あるいは地震時に所定摩擦力で軸方向に滑りを生じる周知のブレースダンパーを二本一組として架構フレーム10内にV型に配置し、各ブレースダンパー13の上端部を上層部(上梁12bの端部ないし上梁12bと柱11との接合部)に対して接合するとともに、ブレースダンパー13の下端部に接合治具14を連結し、その接合治具14をリニアガイド15を介して下層部の下梁12bに対して面内相対変位可能に連結する。
【0049】
また、下梁12bの両端部にそれぞれ固定治具16a、16bを設置し、一方(図示例では左側)の固定治具16aと上記の接合治具14との間に慣性質量ダンパー3を介装し、他方(同、右側)の固定治具16bと接合治具14との間には付加減衰5としてのオイルダンパーを介装する。
なお、慣性質量ダンパー3が減衰機能を有しているような場合には付加減衰(オイルダンパー)5は省略することも可能である。また、付加減衰5を省略して接合治具14の両側にそれぞれ慣性質量ダンパー3を介装しても良いし、必要であれば慣性質量ダンパー3を上下2段に設置しても良い。
さらに、必要であれば残留変形を抑制するため、慣性質量ダンパー3や付加減衰5と並列に復元バネ(線形)を追加しても良い。
【0050】
そして、付加バネ4としてのブレースダンパー13の水平剛性と慣性質量ダンパー3の慣性質量からなる固有振動数を上層部の固有振動数に同調させる。同調というのは、このTMD機構2を設置する対象階の伝達関数(地動に対する対象階の加速度や変位の応答倍率を加振振動数毎に求めたもの)のピーク(最大値)を最小化するように調整することであり、その際の慣性質量、付加バネ、減衰係数の組合せを最適値と称する。
【0051】
これにより、地震時における架構フレーム10の層間変形によってTMD機構2が作動して建物全体に対する優れた制振効果が得られることはもとより、慣性質量ダンパー3の負担力が大きくなってもブレースダンパー13自体が降伏または滑りが生じて荷重が頭打ちとなり、過大な反力が生じない。
この場合も、上述したようにブレースダンパー13の降伏またはすべり耐力による「頭打ち荷重」が小さいほど反力が低下するが、過度に小さくした場合には応答低減効果が低減して応答変位が増大してしまう問題があるので、「頭打ち荷重」は付加バネ4としてのブレースダンパー13を線形と仮定したときの最大反力の0.2〜0.7倍程度に設定することが現実的であり、それによりTMD機構2としての応答低減効果(制振効果)を発揮しつつ過大な反力(付加バネ4としてのブレースダンパー13や慣性質量ダンパー3の負担力)を回避することが可能となる。
【0052】
図12は図11に示したものの天地を反転させたもの、すなわち上記のブレースダンパー13をV型に配置することに代えてΛ型(逆V型)に配置して、その下端部を下層部に対して接合して上端部を上層部に対して接合治具14,リニアガイド15を介して面内相対変位可能に連結してそこに慣性質量ダンパー3を設置したものであり、これによっても上記と全く同様に作動して同様の効果が得られる。
【0053】
図13は上記のブレースダンパー13に代えて非線形特性を有する枠組架構20を付加バネとして機能させるものである。すなわち、架構フレーム10内に柱部21および梁部22(下梁部22aおよび上梁部22b)とによる簡易なラーメン架構としての枠組架構20を配置し、その枠組架構20を地震時に水平方向に降伏させることで頭打ち荷重を設定するようにしたものであり、図示例では各柱部21の高さ方向ほぼ中央位置にせん断パネルダンパー23を組み込むことによって地震時にはこの枠組架構20自体が所定の降伏耐力で水平方向に降伏するものとしている。
なお、枠組架構20の降伏とは、ラーメン架構を構成するどこかの部位で非線形化し、架構の水平剛性が非線形になり低下することを意味する。具体的には、枠組架構20を構成している柱部21のせん断降伏(図示例のように柱部21の一部を降伏点の小さいせん断パネルに置換して早期に降伏させる等)や曲げ降伏(柱頭または柱脚で降伏)、梁部22のせん断降伏や曲げ降伏をこのラーメン架構内の他の部分や本体構造の降伏より先行するように設計すれば良い。
【0054】
そして、枠組架構20の下梁部22aを架構フレーム10の下層部である下梁11aに対して固定するとともに、枠組架構20の上梁部22bを上層部である上梁12bに対して図11や図12に示したものと同様に接合治具14、リニアガイド15を介して面内相対変位可能に連結し、その接合治具14の両側に慣性質量ダンパー3と付加減衰(オイルダンパー)5を設置すれば良い。
この場合も、枠組架構20の水平剛性に基づいてそれが付加バネ4として機能するような同調を行うことにより上記と同様に優れた制振効果が得られ、かつせん断パネルダンパー23の降伏耐力の設定により適正な頭打ち荷重を設定することができる。
勿論、全体の天地を逆にして、上梁部22bを上梁12bに対して固定し、下梁部22aを下梁11aに対して面内相対変位可能に連結してそこに慣性質量ダンパー3を設置しても同様に機能する。
【0055】
このように枠組架構20を付加バネ4として機能させる場合には、上記のようにブレースダンパー13を付加バネ4とする場合に比べて架構フレーム10内に開口部を確保し易くなる利点がある。
また、枠組架構20は部材断面を調整することで水平剛性を任意に設定することができるし、上記のブレースダンパー13による場合より水平剛性を小さくできるので、建物の固有振動数に同調させる際の慣性質量を小さくでき、よりローコストなTMD機構とすることができる
【0056】
図14は図13に示したものを基本とするが、枠組架構20における下梁部22aを省略して各柱部21の下端部を下層部の下梁12aに対して直接的に剛接合あるいはピン接合することにより床面での段差を解消させたものである。
また、図示例では接合治具14も省略して枠組架構20の中央部の柱部21を上方にそのまま延長してその上端部をリニアガイド15を介して上層部の上梁12bに対して連結するようにしている。
【0057】
以上は付加バネ4として機能するブレースダンパー13自体や枠組架構20自体に非線形特性を付与した場合の構成例であるが、以下に付加バネ4をバネ部材と摩擦抵抗部材との組み合わせにより構成する場合の例を示す。
【0058】
図15は付加バネ4をバネ部材としてのブレース30と摩擦抵抗部材としての摩擦ダンパー31を組み合わせて構成したものである。
すなわち、非線形特性を有していない単なる線形特性の(つまり地震時においても弾性変形を維持するような)ブレース30をV型配置としてその上端部を上層部に対して接合するとともに、下端部を摩擦ダンパー31およびリニアガイド15を介して下層部に対して面内相対変位可能に連結し、摩擦ダンパー31の両側にそれぞれ慣性質量ダンパー3と付加減衰5(オイルダンパー)を設置したものである。
【0059】
摩擦ダンパー31としては、たとえば(b)〜(d)に示すように、ブレース30に対して接合される1枚の接合板32と、慣性質量ダンパー3および付加減衰5が接続される2枚の接合板33とからなり、接合板32の両側に摩擦材34を介して接合板33を積層してそれらの全体を皿バネ35を介してボルト36により所定の締め付け力で締結するとともに、接合板32には長孔32aを形成しておくことにより、所定の摩擦力で接合板32と接合板33とが滑り始めて面内相対変位を生じるように構成したものが好適に採用可能である。
これによれば、図示例のように接合板32をリニアガイド15を介して下梁12aに対して接続することにより、架構フレーム10の層間変形がブレース30および摩擦ダンパー31を介して慣性質量ダンパー3および付加減衰5に伝達されてそれらが作動するとともに、過大な荷重が作用した際には摩擦ダンパー31が作動して接合板32と接合板33との間で滑りが生じることにより荷重が頭打ちとなる。
【0060】
この場合はブレース30を単にバネ部材として機能せしめてその水平剛性に基づいてTMD機構2としての同調を行い、摩擦抵抗部材としての摩擦ダンパー31により所望の非線形特性を付与することによって頭打ち荷重を適切に設定すれば良い。
【0061】
なお、図15に示したものの全体の天地を逆にしてブレース30をΛ型配置とし、その下端部を下層部に対して固定し、上端部を摩擦ダンパー31およびリニアガイド15を介して上層部に対して連結してそこに慣性質量ダンパー3と付加減衰5を設置することでも同様である。
【0062】
図16は付加バネ4をバネ部材としての枠組架構40と摩擦抵抗部材としての上記の摩擦ダンパー31とを組み合わせて構成し、枠組架構40の上梁部22bを摩擦ダンパー31およびリニアガイド15を介して架構フレーム10の上梁12bに対して接続したものである。
この場合の枠組架構40には非線形特性を付与することなく(つまり、図13〜図14に示した枠組架構20のように柱部21にせん断パネルダンパー23を組み込む必要はない)、単にその枠組架構40の水平剛性によりTMD機構2としての同調を行い、所望の非線形特性を摩擦ダンパー31により付与することにより上記のものと同様に機能し同様の効果が得られる。
【0063】
なお、上記の具体例はいずれも図1(b)に示したように慣性質量ダンパー3と付加減衰5とを並列に接続する場合(付加減衰5を付加バネ4に対して直列に接続する場合)の例であるが、図1(a)に示したように慣性質量ダンパー3と付加減衰5とを直列に接続する場合(付加減衰5を付加バネ4に対して並列に接続する場合)には、たとえば図13に示したものを基本として付加減衰(オイルダンパー)5の設置位置を図17に示すように枠組架構20内に変更すれば良い。
【0064】
また、本発明のTMD機構は新設建物に適用するばかりでなく既存建物に対する制震化手法としても適用可能であり、その場合においては既存建物の架構フレーム10内に上記各実施形態のTMD機構2を設置すれば良く、その場合において必要であればたとえば図18に示すように既存の架構フレーム10内に鉄骨枠組50を一体に固定したうえで、その鉄骨枠組50の内側に上記各TMD機構(図18では図11に示したもの)を設置すれば良い。
【符号の説明】
【0065】
1 構造体
2 TMD機構
3 慣性質量ダンパー
4 付加バネ
5 付加減衰(オイルダンパー)
10 架構フレーム
11 柱
12 梁
12a 下梁
12b 上梁
13 ブレースダンパー(付加バネ)
14 接合治具
15 リニアガイド
16a、16b 固定治具
20 枠組架構(付加バネ)
21 柱部
22 梁部
22a 下梁部
22b 上梁部
23 せん断パネルダンパー
30 ブレース(バネ部材)
31 摩擦ダンパー(摩擦抵抗部材)
32 接合板
32a 長孔
33 接合板
34 摩擦材
35 皿バネ
36 ボルト
40 枠組架構(バネ部材)
50 鉄骨枠組

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体の振動を低減するためのTMD機構であって、
構造体とそれを支持する支持体との間に、構造体を支持体に対して弾性支持する付加バネと、回転体の回転により慣性質量を生じる慣性質量ダンパーとを直列に接続し、慣性質量ダンパーによる慣性質量と付加バネのバネ剛性とにより定まる固有振動数を構造体の固有振動数に同調させ、かつ地震時における慣性質量ダンパーへの過大入力を制限するように前記付加バネの耐力を設定してなることを特徴とするTMD機構。
【請求項2】
請求項1記載のTMD機構であって、
前記付加バネを、それ自体が地震時に所定の降伏耐力で降伏するか所定摩擦力で滑りを生じるバネ部材により構成したことを特徴とするTMD機構。
【請求項3】
請求項1記載のTMD機構であって、
前記付加バネを、地震時においても弾性変形を維持するバネ部材と、該バネ部材に直列に接続されて地震時に所定の降伏耐力で塑性化して降伏する塑性化部材または所定の摩擦力で滑りを生じる摩擦抵抗部材とにより構成したことを特徴とするTMD機構。
【請求項4】
請求項2記載のTMD機構であって、
当該TMD機構を建物の柱と梁とにより構成される架構フレームの内側に設置して、該架構フレームの下層部を前記支持体として機能せしめるとともに該架構フレームの上層部を前記構造体として機能せしめ、
前記構造体としての上層部を前記支持体としての下層部に対して弾性支持するための前記付加バネとしてのバネ部材を、地震時に所定耐力で軸方向に降伏するか所定摩擦力で軸方向に滑りを生じるブレースダンパーとして設置したことを特徴とするTMD機構。
【請求項5】
請求項4記載のTMD機構であって、
前記ブレースダンパーをV型をなすように設置して、該ブレースダンパーの上端部を前記架構フレームを構成している上梁に対して接合するとともに、該ブレースダンパーの下端部を前記架構フレームを構成している下梁に対して面内相対変位可能に連結して、該ブレースダンパーの下端部と前記下梁との間に前記慣性質量ダンパーを介装したことを特徴とするTMD機構。
【請求項6】
請求項4記載のTMD機構であって、
前記ブレースダンパーをΛ型をなすように設置して、該ブレースダンパーの下端部を前記架構フレームを構成している下梁に対して接合するとともに、該ブレースダンパーの上端部を前記架構フレームを構成している上梁に対して面内相対変位可能に連結して、該ブレースダンパーの上端部と前記上梁との間に前記慣性質量ダンパーを介装したことを特徴とするTMD機構。
【請求項7】
請求項2記載のTMD機構であって、
当該TMD機構を建物の柱と梁とにより構成される架構フレームの内側に設置して、該架構フレームの下層部を前記支持体として機能せしめるとともに該架構フレームの上層部を前記構造体として機能せしめ、
前記構造体としての上層部を前記支持体としての下層部に対して弾性支持するための前記付加バネとしてのバネ部材を、柱部と梁部とによる構成されているとともに地震時に所定の降伏耐力で水平方向に降伏する枠組架構として設置したことを特徴とするTMD機構。
【請求項8】
請求項7記載のTMD機構であって、
前記枠組架構における前記柱部に、地震時に所定の降伏耐力で水平方向に降伏するせん断パネルダンパーを組み込んだことを特徴とするTMD機構。
【請求項9】
請求項7または8記載のTMD機構であって、
前記枠組架構を柱部と該柱部の上端間に架設された上梁部とにより構成し、前記柱部の下端部を前記架構フレームを構成している下梁に対して接合するとともに、前記上梁部を前記架構フレームを構成している上梁に対して面内相対変位可能に連結して、該上梁部と前記上梁との間に前記慣性質量ダンパーを介装したことを特徴とするTMD機構。
【請求項10】
請求項3記載のTMD機構であって、
当該TMD機構を建物の柱と梁とにより構成される架構フレームの内側に設置して、該架構フレームの下層部を前記支持体として機能せしめるとともに該架構フレームの上層部を前記構造体として機能せしめ、
前記構造体としての上層部を前記支持体としての下層部に対して弾性支持するための前記付加バネを、前記バネ部材としてのブレースと、前記摩擦抵抗部材としての摩擦ダンパーとにより構成したことを特徴とするTMD機構。
【請求項11】
請求項3記載のTMD機構であって、
当該TMD機構を建物の柱と梁とにより構成される架構フレームの内側に設置して、該架構フレームの下層部を前記支持体として機能せしめるとともに該架構フレームの上層部を前記構造体として機能せしめ、
前記構造体としての上層部を前記支持体としての下層部に対して弾性支持するための前記付加バネを、前記バネ部材としての枠組架構と、前記摩擦抵抗部材としての摩擦ダンパーとにより構成したことを特徴とするTMD機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−141026(P2011−141026A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273742(P2010−273742)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】