Toll様受容体機能を調節するための化合物及び方法
【課題】TLR4の機能を調節できる、また、特にエンドトキシン(例えばリポ多糖類(LPS))に反応したTLR4活性化及びシグナル伝達を抑制する化合物及び薬剤を同定すること。
【解決手段】Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達の抑制方法。当該方法は、配列番号1のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質の発現又は生物学的機能を阻害する、治療上有効量の化合物を準備するステップと、かかる処置を必要とする被験者にそれを投与するステップとを有してなる。
【解決手段】Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達の抑制方法。当該方法は、配列番号1のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質の発現又は生物学的機能を阻害する、治療上有効量の化合物を準備するステップと、かかる処置を必要とする被験者にそれを投与するステップとを有してなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はToll様受容体4機能を調節する化合物に関する。本発明は更に、Toll様受容体機能を調節する化合物、特にToll様受容体4とToll様受容体14とを含んでなる共受容体複合体により媒介されるシグナル伝達を調節する化合物を同定するのに有用なアッセイ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Toll様受容体(TLR)スーパーファミリーは、侵入した病原体の認識及び免疫反応の開始において中心的な役割を果たす。各TLRは、異なる病原体関連分子パターン(PAMP)を認識し、シグナル伝達カスケードの活性化を生じさせ、次に、転写制御因子NF−kB、更には有糸分裂活性化プロテインキナーゼ(MAPKs)、p38、c−jun、N末端キナーゼ(JNK)及びp42/44を活性化する。Toll様受容体4(TLR−4、TLR4)はまた、転写制御因子IFNで制御される因子−3(IRF3)(インターフェロン感受性応答エレメント(ISRE)と結合し、インターフェロンβなどの遺伝子のサブセットを誘導する)の活性化を最終的に引き起こす、更なる経路を活性化する。TLRは、大きなスーパーファミリーのメンバーであり、インターロイキン1受容体(IL−1R)/TLRスーパーファミリーと呼ばれ、またIL−1R1サブグループ及びTIRドメイン含有アダプターサブグループも含まれる。全ての3つのサブグループは、細胞質のToll/IL−1受容体(TIR)領域を有し、それはシグナル伝達にとって必須である。TLRは細胞外のロイシンリッチリピートを有し、一方IL−1R1サブグループは細胞外免疫グロブリンドメインを有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発明者らは、驚くべきことに、上記のToll様受容体14(配列番号1のヒト型のアミノ酸配列、又は、配列番号3のマウス型のアミノ酸配列を含んでなることを特徴とするタンパク質)が、Toll様受容体であるToll様受容体4(TLR4)の共受容体として作用することを見出した。発明者らは、例えばsiRNAにより媒介されるTLR14ノックダウンの結果としてのTLR14発現の阻害が行われる場合には、エンドトキシンによるTLR4の活性化に続く、TLR4により媒介されるシグナル伝達(TLR4の定義された病原体関連分子パターン(PAMP))が、細胞において抑制されることを明らかにしている。
【0004】
TLR4がエンドトキシンにより媒介されるシグナル伝達にとり重要であることは認知されている。エンドトキシンにより媒介される、TLR4を介したシグナル伝達は、例えば敗血症(septicamia)及びセプシス(sepsis)などの症状を生じさせうる。したがって、TLR4の機能を調節できる、また、特にエンドトキシン(例えばリポ多糖類(LPS))に反応したTLR4活性化及びシグナル伝達を抑制する化合物及び薬剤を同定することは望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達の抑制方法の提供に関し、当該方法は、
−配列番号1のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質の発現又は生物学的機能を阻害する、治療上有効量の化合物を準備するステップと、
−かかる処置を必要とする被験者にそれを投与するステップとを有してなる。
【0006】
特定の実施形態では、配列番号1のアミノ酸配列を含む上記タンパク質は、Toll様受容体14である。
【0007】
ヒト型のToll様受容体14のアミノ酸配列は過去に同定されている。これは、本願明細書において配列番号1として示される。
【0008】
本願明細書において定義される「Toll様受容体4(TLR4)の活性化」とは、TLR4が、少なくとも1つの更なる分子と結合するか又は会合して、TLR4のTIRドメインにより媒介されるシグナル伝達が生じることを意味する。更に、本明細書で定義される用語「Toll様受容体4のシグナル伝達」とは、Toll様受容体4の活性化から生じた、少なくとも1つの下流側のシグナル伝達経路の活性化を意味する。典型的には、上記シグナル伝達は、TLR4のTIRドメインにより開始される細胞内シグナル伝達カスケードである。TLR4により誘発されるシグナル伝達カスケードにより、NF−kB、又はインターフェロン調節因子3などの転写制御因子の活性化が生じうる。TLR4により媒介されたシグナルは更に、分裂促進因子活性化プロテインキナーゼ(MAPKs)、p38、c−jun、N末端キナーゼ(JNK)及びp42/44を活性化しうる。
【0009】
Toll様受容体4は、エンドトキシン(例えばグラム陰性細菌に由来するリポ多糖類(LPS))に応答して活性化されることが公知である。しかしながら、Toll様受容体4はLPSと直接会合しない。むしろTLR4は、アダプタ分子として分子MD−2を使用することにより、LPSの結合を促進する。発明者らは、Toll様受容体14がLPSと結合すると理論づけている。結合されたLPSは次に、TLR14から、予め形成されたTLR4とMD−2との複合体へ移される。この定義されたTLR14の作用機構は、CD14に起因するそれと類似している。
【0010】
したがって、本発明の方法では、TLR4により媒介されるシグナル伝達及び免疫系の活性化の抑制が、Toll様受容体4とToll様受容体14との会合を防止することにより媒介され、それにより、Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達は、生じることができない。
【0011】
特定の実施形態では、配列番号1のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質(Toll様受容体14)の発現又は生物学的機能を阻害する化合物は、限定されないが、タンパク質、ペプチド、ペプチド擬態物、核酸、ポリヌクレオチド、多糖類、オリゴペプチド、炭水化物、脂質、小分子化合物及び天然の化合物からなる群から少なくとも1つ選択されるものである。
【0012】
特定の実施形態では、Toll様受容体14の発現又は生物学的機能を阻害する化合物は、抑制性(inhibitory)核酸である。かかる核酸は、Toll様受容体14タンパク質の発現を防止する機能を発揮する。適切な抑制性核酸の例としては、限定されないが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスDNA、アンチセンスRNA、リボザイム、iRNA、miRNA、siRNA及びshRNAなどが挙げられる。
【0013】
本願明細書に定義されるように、「生物学的機能の阻害」という用語は、TLR4活性化及びシグナル伝達を生じさせる、少なくとも1つのTLR14の活性(例えばTLR14がLPSと結合する能力、又はTLR14が共受容体としてTLR4と共に複合体を形成する能力)を防止することを意味する。
【0014】
特定の更なる実施形態では、Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達は、共受容体としてのTLR14の、TLR4との複合体の形成を阻害し、それによりTLR4活性化を抑制する、抗体又は同様の結合化合物により阻害される。
【0015】
特定の実施形態では、上記抗体はTLR14、TLR4、又はその両方に結合しうる。TLR4及び/又はTLR14に存在するエピトープに対する抗体の結合は、TLR4の活性化及びシグナル伝達阻害を生じさせる。
【0016】
特定の実施形態では、Toll様受容体14の生物学的機能を阻害する化合物は、可溶化型のToll様受容体14である。前記可溶化型のToll様受容体14は膜結合型ではなく、また、例えば、配列番号1に記載のToll様受容体14タンパク質の細胞外領域を含んでなるアミノ酸残基の全部又は相当数を欠失していてもよい。
【0017】
特定の実施形態では、この態様の本発明の方法は更に、CD14の発現又は生物学的機能を阻害する、治療上有効量の組成物を、被験者に投与するステップを有してなる。
【0018】
本発明の第2の態様は、Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達を抑制するのに用いられる医薬組成物の提供に関し、上記医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容できる希釈剤、賦形剤又は担体と共に、Toll様受容体14の発現又は生物学的機能を阻害する化合物を含んでなる。
【0019】
特定の実施形態では、Toll様受容体14の発現又は生物学的機能を阻害する上記化合物は、限定されないが、タンパク質、ペプチド、ペプチド擬態物、核酸、ポリヌクレオチド、多糖類、オリゴペプチド、炭水化物、脂質、小分子化合物及び天然の化合物からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0020】
特定の実施形態では、上記医薬組成物は複合薬剤を含んでなってもよく、その第1成分は、Toll様受容体14の発現又は生物学的機能を阻害する化合物であり、前記複合薬剤は、第2成分として、CD14の発現又は生物学的機能を阻害する化合物を含んでなる。かかる複合薬剤は、LPSにより媒介されるTLR4活性化の全体的な抑制をなしうる。
【0021】
更なる本発明の態様は、Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達により媒介される症状の治療用薬剤の調製への、Toll様受容体14の発現又は生物学的機能を阻害する化合物の使用の提供に関する。
【0022】
特定の実施形態では、Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達により媒介される症状は、敗血症又は感染性ショックである。
【0023】
本発明の更に他の態様では、Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達によって生じる症状の治療用薬剤に用いられる、Toll様受容体14の発現又は生物学的機能を阻害する化合物を含んでなる組成物の提供に関する。
【0024】
特定の実施形態では、Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達により媒介される症状は、敗血症又は感染性ショックである。
【0025】
更なる様々な態様において、本発明には、TLR14の発現又は生物学的機能を阻害する化合物を同定するためのアッセイ方法も包含される。更に、本発明の更なる態様には、前記アッセイ方法により同定される化合物を含んでなる組成物も包含され、また、TLR4活性化及びシグナル伝達の抑制における、前記化合物及び組成物の使用も包含される。
【0026】
したがって、更に他の本発明の態様は、Toll様受容体4と、共受容体としてのToll様受容体14との会合を阻害する化合物を同定するためのアッセイ方法の提供に関し、当該方法は、
−Toll様受容体4とToll様受容体14とを含んでなる第1及び第2の細胞サンプルを準備するステップと、
−上記第1及び第2のサンプルと、上記Toll様受容体14と結合するエンドトキシンとを、上記Toll様受容体14が、エンドトキシンと結合するときにToll様受容体4と会合できる条件下で、接触させるステップと、
−前記第1のサンプルと、候補調節化合物とを、前記化合物の結合が可能な条件下で接触させるステップと、
−Toll様受容体4受容体の複合体の活性化状態を、前記第1と第2のサンプル間での、下流の活性化レベルの比較によってモニタするステップを有してなり、
前記第1のサンプルと前記第2のサンプルとの間での、Toll様受容体4のシグナル伝達の減少により、Toll様受容体4とToll様受容体14との会合の阻害剤としての調節化合物が同定される。
【0027】
特定の実施形態では、上記調節化合物は、限定されないが、タンパク質、ペプチド、ペプチド擬態物、核酸、ポリヌクレオチド、多糖類、オリゴペプチド、炭水化物、脂質、小分子化合物及び天然の化合物からなる群から選択される、少なくとも1つである。
【0028】
特定の実施形態では、上記候補化合物は、TLR14受容体の、TLR4との複合体結合(complex binding)及び会合を抑制する。特定の実施形態では、上記調節化合物は、TLR14発現を抑制する。
【0029】
特定の実施形態では、TLR14と結合し、TLR4受容体を活性化する分子は、リポ多糖(LPS)である。
【0030】
一実施形態では、TLR4受容体の下流の活性化は、Toll様受容体活性を表すモニタリング標識に基づいてモニタされる。かかる標識の例としては、NF−κBの活性化及びIRF3タンパク質の活性化が挙げられる。
【0031】
更なる様々な態様において、本発明には、上記の本発明の態様に係るアッセイ方法により同定される、TLR14を阻害する化合物を含んでなる組成物が包含される。
【0032】
更なる様々な態様において、本発明には、TLR4活性化及びシグナル伝達の抑制方法における、上記のアッセイ方法により同定される化合物の使用が包含される。
【0033】
更なる様々な態様において、本発明には、TLR4との共受容体として複合体を形成するTLR14の能力を阻害する化合物を同定するための、アッセイ方法が包含される。
【0034】
更なる態様において、本発明には、共受容体としてのToll様受容体14とToll様受容体4との会合をモニタすることに基づく、TLR4の調節化合物を同定するアッセイ方法が包含される。かかるアッセイは、例えばFRET(蛍光共鳴エネルギー転移)に基づく。その方法は、タンパク質間相互作用における分子動態の定量化において用いられる。
【0035】
2つの分子の間の会合及び複合体形成をモニタするため、当該分子のうちの1つをフルオロフォアドナー分子で標識し、一方、もう1つをフルオロフォアアクセプタ分子で標識する。2つの分子が相互作用するときに、ドナーの放出がアクセプタ分子へ転移する。これにより、アクセプタ分子から、モニタできる発光が生じる。上記ドナーとアクセプタが近接して存在する(例えば1〜10nm)とき、2つの分子は相互作用して、それにより生じる発光がモニタされる。アクセプタ分子からの放出は、ドナーからアクセプタ分子への分子間蛍光共鳴エネルギー転移に起因する。かかるアッセイにおいて使用するフルオロフォア分子の例は、青色蛍光タンパク質(CFP)及び黄色蛍光タンパク質(YFP)である。
【0036】
したがって、本発明の更なる態様は、Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達の調節化合物として機能する化合物の同定方法の提供に関し、前記方法は、
−Toll様受容体4とToll様受容体14とを含んでなる第1及び第2の細胞サンプルを準備するステップと、
−第1のフルオロフォア分子でToll様受容体4を標識し、第2のフルオロフォア分子でToll様受容体14を標識するステップと、
−前記第1のサンプルと、Toll様受容体4受容体の活性化を生じさせる分子とを接触させるステップと、
−Toll様受容体4及び/又はToll様受容体14の結合が可能な条件下で、前記第1及び第2のサンプルと候補調節化合物とを接触させるステップと、
−フルオロフォアの蛍光をモニタすることによって、Toll様受容体4受容体の結合状態及び/又は活性化をモニタするステップとを有してなり、蛍光の変化により、上記候補調節化合物が、Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達の調節化合物として同定される。
【0037】
特定の実施形態では、Toll様受容体4の活性化を生じさせる分子は、エンドトキシン(例えばLPS)であり、それはToll様受容体14と結合し、その結果、Toll様受容体14が共受容体としてToll様受容体4と複合体を形成して複合体が形成される。
【0038】
特定の実施形態では、本発明のアッセイ方法は、in vitroでのアッセイ方法である。
【0039】
特定の実施形態では、本発明の本態様のアッセイ方法により同定される調節化合物は、Toll様受容体4の活性化及び/又は下流シグナル伝達を抑制する化合物である。特定の実施形態では、本発明の本態様のアッセイ方法により同定される調節化合物は、Toll様受容体4の活性化及び/又は下流シグナル伝達を増強する化合物である。
【0040】
フルオロフォアからの光放出の減少は、TLR4受容体活性を阻害又は抑制する候補調節化合物の存在を表す。
【0041】
特定の実施形態では、上記調節化合物は、Toll様受容体14又はToll様受容体4のいずれかと結合する、抗体、ペプチド擬態物、ポリペプチド又は小分子であり、この結合により、TLR4とTLR14との間の複合体形成が防止される。
【0042】
特定の実施形態では、上記アッセイは、Ullmanら、PNAS,vol91,pp5426−5430,June1994にて説明したように、ビーズベースのALPHASCREEN技術(Perkin Elmer社)を使用して実施できる。AlphaScreenアッセイは、2つのビーズタイプ(ドナービーズ及びアクセプタビーズ)を含んでなる。ビーズは標的分子と共役でき、ビーズに捕捉された分子との間の相互作用により、1つのビーズから他のビーズへのエネルギー転移がなされ、それにより蛍光/発光シグナルが生じる。好適には、AlphaScreenアッセイシステムによりハイスループットスクリーニングが可能となり、それにより、FRETを応用する本発明のアッセイ方法は、このフォーマットにおいて使用することが可能である。
【0043】
好適には、AlphaScreenアッセイシステムによりハイスループットスクリーニングが可能となり、それにより、FRETを応用する本発明のアッセイ方法を、HTSスクリーニング方法で用いることにより、調節化合物の同定を促進させることが可能となる。
【0044】
FRETベースのアッセイの原理を、TLR4とTLR14との間で形成される共受容体複合体を崩壊させる候補調節化合物の同定にまで応用することが可能である。
【0045】
更なる様々な態様において、本発明には、上記の本発明の態様に係るアッセイ方法を使用して同定される調節化合物を含んでなる組成物が包含される。本発明には更に、前記組成物及び前記調節化合物の、Toll様受容体4と、共受容体としてのToll様受容体14との会合を防止するための方法及び組成物への使用が包含される。
【0046】
更なる特定の態様において、TLR4活性化を測定し、及び/又は、TLR4活性化の調節化合物を同定するための様々なアッセイが使用できる。例えば、TLR4刺激に関するスクリーニングアッセイが報告されており、そこでは、培養細胞を、2つのプラスミド(1つは、ヒトTLR4の遺伝子を担持し、もう1つは、ルシフェラーゼ遺伝子の上流側にNFκBと結合するプロモータを担持する検出用プラスミド)でトランスフェクションしている(Vogel,S.J.Biol.Chem.2003 278:222506)。あるいは、酵母ツーハイブリッドシステムを用いて、TLR4活性化をスクリーニングすることもできる。
【0047】
したがって、本発明の更に別の態様は、Toll様受容体4とToll様受容体14との会合を崩壊させる調節化合物の同定方法の提供に関し、当該方法は、
−TLR4及びTLR14を含んでなる第1及び第2の細胞サンプルを準備するステップと、
−第1のフルオロフォア分子でTLR4を標識し、第2のフルオロフォア分子でTLR14を標識するステップと、
−TLR14と結合してTLR4を活性化し、それによりTLR4とTLR14との会合を生じさせる分子と、前記第1のサンプルと、を接触させるステップと、
−前記第1のサンプルと、候補調節化合物とを、TLR14及び/又はTLR4への当該調節化合物の結合を可能にする条件下で接触させるステップと、
−フルオロフォアの蛍光をモニタすることによって、TLR4受容体の結合状態及び/又は活性化をモニタするステップとを含んでなり、
前記蛍光の変化により、上記候補調節化合物が、TLR4とTLR14との間に形成される共受容体複合体を崩壊させる機能を発揮するとして同定され、それによりTLR4受容体の調節化合物としての調節化合物が同定される。
【0048】
特定の実施形態では、TLR4の活性化を生じさせる分子は、エンドトキシン(例えばLPS)である。典型的には、前記エンドトキシンはTLR14と結合し、それにより共受容体複合体としてTLR14がTLR4と会合できる。
【0049】
フルオロフォアからの光放出の減少は、TLR4受容体活性を阻害するか又は抑制する候補調節化合物の存在を示す。
【0050】
更なる様々な態様において、本発明には、上記の本発明の態様に係るアッセイ方法により同定される調節化合物を含んでなる組成物が包含される。本発明には更に、エンドトキシンにより媒介されるTLR4のシグナル伝達を防止するための方法への、前記組成物及び調節化合物の使用が包含される。
【0051】
更なる態様において、本発明には、リポ多糖(LPS、エンドトキシン)とTLR14との間の結合が、FRETシステムを使用してモニタされる、アッセイ方法が包含される。LPS及びTLR14の各々は、それぞれ別々であるが相補的な、フルオロフォアのドナー又はアクセプタ分子で標識される。TLR14受容体とLPSとの結合により、ドナーからアクセプタ分子への、分子間蛍光共鳴エネルギー転移に起因するアクセプタ分子からの光の放出がなされる。上記アッセイを用いることにより、FRETシグナル放出が変化するとき、LPS/TLR14複合体を崩壊させる調節化合物を同定することができる。本発明の発明者は驚くべきことに、TLR14が機能的に遮断され、又はその発現が抑制されるときに、TLR4受容体複合体からの下流シグナルが実質的に抑制されることを観察し、それはすなわち、調節化合物によるTLR14発現又は機能の抑制は、リガンドによるTLR4への結合に続く下流シグナルの減少を生じさせることを示すものである。
【0052】
更に、選択されたLPSアンタゴニストを用いた第2のレポーター遺伝子アッセイを実施することにより、TLR4へのLPSの結合に続くシグナル伝達から生じるシグナルを観察することができる。
【0053】
セプシス(sepsis)、感染性ショック及び敗血症(septicaemia)として公知の症状は、LPSにより誘発されたToll様受容体4の活性化から生じる、潜在的に致死性の症状である。したがって発明者らは、例えばセプシス、感染性ショック及び敗血症症状などの治療及び予防のための化合物及び方法への、本発明の有用性を見出した。
【0054】
したがって、本発明の更なる態様は、敗血症又は感染性ショックの治療及び/又は予防方法の提供に関し、当該方法は、
−Toll様受容体14の発現又は生物学的機能を阻害する、治療上有効量の化合物を準備するステップと、
−かかる処置を必要とする被験者にそれを投与するステップを有してなる。
【0055】
特定の実施形態では、上記方法は、CD14の発現又は生物学的機能を阻害する、治療上有効量の組成物を被験者に投与する更なるステップを有してなる。
【0056】
更なる本発明の態様は、敗血症又は感染性ショックの治療用薬剤の調製への、Toll様受容体14の発現又は生物学的機能を阻害する化合物の使用の提供に関する。
【0057】
本発明の更に他の態様は、敗血症又は感染性ショックの治療用薬剤に用いられる、Toll様受容体14の発現又は生物学的機能を阻害する化合物を含んでなる組成物の提供に関する。
【0058】
敗血症又は感染性ショックの症状は、グラム陰性細菌に由来するエンドトキシン(例えばLPS)によって生じる。特定の実施形態では、グラム陰性細菌は、限定されないが、ナイセリア メニンジチデス、エシェリチア コリ、シュードモナス アエルジノサ、ハエモフィラ インフルエンザエ、サルモネラ チフィムリウム及びフランシセラ ツラレンシスからなるリストから選択される。
【0059】
特定の実施形態では、Toll様受容体14の発現又は生物学的機能を阻害する化合物は、限定されないが、タンパク質、ペプチド、ペプチド擬態物、核酸、ポリヌクレオチド、多糖類、オリゴペプチド、炭水化物、脂質、小分子化合物及び天然の化合物からなる群から選択される、少なくとも1つである。
【0060】
更なる様々な態様において、本発明には、TLR14の発現又は生物学的活性を阻害し、それにより、敗血症の治療及び/又は予防への有用性を有する、化合物を同定するためのアッセイ方法が包含される。
【0061】
更なる特定の態様において、本発明には、敗血症及び感染性ショックの治療に用いられる、上記の本発明の態様に係るアッセイで同定される抑制性化合物を含んでなる組成物が包含される。
【0062】
エンドトキシン関連の敗血症及び感染性ショックにおいて、活性化されたTLR4は重要な役割を果たしうることから、本発明の上記方法において、TLR4活性化の阻害剤として同定された試験物質は、エンドトキシン関連の敗血症及び/又は感染性ショックを予防又は治療する際に有用であると考えられる。
【0063】
すなわち、本発明はまた、本発明のアッセイ方法によって同定される、Toll様受容体4活性の活性化を阻害する物質を被験者に投与することによって、被験者の敗血症及び/又は感染性ショックを治療する用途に用いられる、組成物の提供に関する。かかる方法及び組成物を、敗血症及び/又は感染性ショックの徴候を示す被験者に用いてもよい。かかる組成物及び方法はまた、敗血症又は感染性ショックを発症する危険性が高い被験者に対して、予防的に用いることもでき、かかる被験者としては、限定されないが大手術(特に腸領域)を受けている患者、並びに外科的手技を受けている、免疫を抑制された患者が挙げられる。
【0064】
本発明には更に、かかるアッセイにより同定される、敗血症の治療用化合物の使用が包含される。
【0065】
エンドトキシンは、リピドAと多糖類とを含むリポ多糖(LPS)複合体を含んでなる。グラム陰性細菌のリポ多糖(エンドトキシン、LPS)は、グラム陰性菌による敗血症の際に観察されるような、細胞内及び生理的反応を誘発する。免疫/炎症性系の細胞は、血漿及び膜タンパク質の両方が関与する経路によって、LPSに反応する。
【0066】
したがって、TLR4により媒介される免疫反応経路を下方制御又は阻害する方法は、LPSにより媒介される症状(例えば敗血症)の治療方法として、望ましい。本発明は、LPSにより媒介される症状の治療に用いることができる。
【0067】
本発明のアッセイ及びそれにより同定される調節化合物は、多くの医療的症状、最も具体的にはエンドトキシン及びLPSにより媒介される症状(例えば敗血症)の治療において、具体的な有用性を発揮する。
【0068】
したがって、本発明の他の更なる態様は、エンドトキシンによる媒介される症状の治療への使用に適する化合物を同定するためのアッセイ方法の提供に関し、前記アッセイ方法は、−候補化合物を準備するステップと、−上記候補化合物をTLR4受容体複合体と接触させるステップであって、前記複合体がエンドトキシンと結合したTLR14を含んでなるステップと、−受容体複合体のTLR4及びTLR14構成要素と結合したフルオロフォア部分からの光放出をモニタするステップとを有してなり、フルオロフォアからの光放出レベルが調節されることにより、TLR4受容体複合体を介したシグナル伝達を抑制する際の、当該化合物の有用性が示される。
【0069】
一実施形態では、エンドトキシンにより媒介される症状は、敗血症又は感染性ショックである。
【0070】
他の更なる本発明の態様として、本発明の上記のアッセイ方法によって同定されたTLR14抑制性化合物を含んでなる、敗血症の治療又は予防用の組成物が包含される。
【0071】
発明者らは更に、Toll様受容体14が脳において発現することを観察している。実験用の自己免疫脳脊髄炎(EAE)モデルマウスの皮質及び海馬において、TLR14の発現が示されている。TLR14の発現は、同じモデルの小脳においても観察されている。本明細書で発明者により定義される、TLR14の作用のメカニズムを基礎として、発明者は更に、Toll様受容体14は、脳におけるTLR4媒介性の炎症性シグナルにおいて、役割を果たすと予想している。したがってTLR14は、脳において、エンドトキシン媒介されたToll様受容体4のシグナル伝達との関係があると考えられる。したがって、更なる様々な態様において、本発明には、脳のTLR14の発現又は生物学的機能活性を阻害することによって、かかるTLR4により媒介されるシグナル伝達を阻害する方法が包含される。したがって、本発明の更なる様々な態様において、エンドトキシンにより媒介される脳におけるTLR4による炎症性シグナル伝達を抑制するための化合物、組成物、更にはかかる方法における当該化合物及び組成物の使用が包含される。
【0072】
本発明の他の更なる態様は、Toll様受容体4活性化及びシグナル伝達により媒介される、異常な免疫反応を治療する方法の提供に関し、当該方法は、−Toll様受容体4とToll様受容体14との会合を阻害する化合物を準備するステップと、−治療的有効量の当該化合物を、かかる治療を必要とする被験者に投与するステップとを有してなる。
【0073】
上記異常な免疫反応とは、あらゆる、免疫により媒介される望ましくない反応であってもよい。特定の実施形態では、上記の異常な免疫反応は、例えば敗血症又は感染性ショックなどの症状を生じさせるものである。特定の実施形態では、上記敗血症は、Toll様受容体4への、エンドトキシン(例えばグラム陰性細菌に由来するリポ多糖)の結合に起因するグラム陰性敗血症である。
【0074】
アッセイ:
本発明には、TLR14タンパク質を活性化する調節化合物を同定するためのアッセイシステム及びスクリーニング方法、更には、TLR14活性化をモニタする方法が包含される。本願明細書の「アッセイシステム」とは、1つ以上の特定の事象を検出及び/又は測定するアッセイを実施し、その結果を分析するために必要な全ての構成要素を含むシステムである。
【0075】
必須ではないが好ましくは、本発明において使用するスクリーニングアッセイは、ハイスループット又はウルトラスループットのアッセイであって、それにより自動化された費用効果的なスクリーニング手段が提供される。
【0076】
特に明記しない限り、本願明細書において用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明の技術分野の当業者に一般に理解されているとおりの意味で用いられる。
【0077】
本願明細書全体にわたり、文脈により特定されない限り、用語「含んでなる」若しくは「含有する」、又はその活用形である「含んでなり」若しくは「含んでなること」、「含有し」若しくは「含有すること」などの用語は、記載された整数又は整数の群を包含することを意味し、他のいかなる整数又は整数の群をも除外するものではないものと理解すべきである。
【0078】
以下の具体的実施形態更には図面を参照しながら本発明を記載するが、それらは説明のためにのみ提供されるものであり、本発明を限定するためのものとして解釈すべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】TLR14がLPSシグナル伝達を増強することを示す。ヒト星状細胞腫細胞(U373)を、NF−kBレポーター構築物と共に、50ngの空のコントロールベクター又はTLR14発現プラスミドでトランスフェクションした。24時間後、細胞を回収する前に、LPS(100ng/ml)により6時間刺激し、レポーター遺伝子活性を分析した。U373を回収する前に、過度に発現したTLR14の有無において、LPS(100ng/ml)により刺激し、レポーター遺伝子活性を分析した。非形質導入細胞と比較した結果、TLR14は、LPS誘導性のNF−kBレポーター遺伝子の発現を増強することが示された。
【図2】TLR14のノックダウンにより、U373星状細胞腫細胞におけるLPS誘導性のIkB分解が打ち消されることを示す。U373を、TLR14(Dharmacon社)に特異的なsiRNAでトランスフェクションした。48時間後に、TLR14のノックダウンを、ウエスタンブロッティングにより確認した(図2A)。非ターゲティングsiRNAをネガティブコントロールとして用いて、TLR14に対するsiRNAが特異的であることを確認した。示される時間にわたり、LPS(100ng/ml)で細胞を処理し、IkB分解をウエスタンブロッティング(図2B)で測定した。TLR14のsiRNAノックダウンにより、LPS誘導性のIkB分解が顕著に減少した。図2(A)及び2(B)は、2つの別々の実験を表す。
【図3】U373星状細胞腫細胞における、LPS誘導性のp38リン酸化に対する、TLR14のsiRNAの効果を示す。ネガティブコントロールとして、TLR14(Qiagen社)に特異的なsiRNA、又は非ターゲティングsiRNAのいずれかで、U373をトランスフェクションし、TLR14に対するsiRNAが特異的であることを確認した。示される時間にわたり、LPS(100ng/ml)で細胞を処理し、p38リン酸化をウエスタンブロッティングで測定した。TLR14のsiRNAノックダウンにより、p38のリン酸化が減少した。
【図4】TLR14をトランスフェクションしたHEK293細胞における、TLR14とLPSとの結合を示す。HEK293細胞を、TLR14によってトランスフェクションした。24時間後に細胞を溶解させ、室温で1時間、ビオチン化LPS(1μg/ml)単独、又は非標識LPSとの組み合わせによりインキュベートした。溶解物を次に、洗浄前に更に1時間、ストレプトアビジンアガロースと共にインキュベートし、ウエスタンブロッティングにより分析した。図4(a)においては、5倍過剰の非標識のLPSを含有させた。図4(b)においては、25倍及び50倍過剰の非標識のLPSを、コントロールサンプル中に含有させた。
【図5】TLR14のノックダウンにより、LPSに応答してわずかにIkB分解が阻害されることを示す。
【図6】TLR14のノックダウンにより、THP1細胞からのIL−6産生及びTNF−αサイトカイン産生の減少が生じることを示す。
【図7】サイトゾル及び膜画分のウエスタンブロッティングを示す。Tはトランスフェクション細胞を示し、一方NTは非トランスフェクション細胞を意味する。
【図8】マウスの脳におけるTLR14発現を示すウエスタンブロット分析である。
【図9】THP1細胞における内因性TLR14の局在化を示す。膜、サイトゾル及び全細胞抽出物を、Dounce型ホモジナイザーで破砕し、超遠心分離することにより調製した。サンプルを次に、SDS−PAGE及びウエスタンブロッティングを使用した、TLR14発現の解析に供した。
【図10】配列番号1として定義されるヒトToll様受容体14のアミノ酸配列を示す。
【図11】可溶化型のToll様受容体14の予測アミノ酸配列を示す(配列番号2として定義)。
【図12】マウス型のToll様受容体14のアミノ酸配列を示す(配列番号3と定義)。
【図13】ヒト型のToll様受容体4のアミノ酸配列を示す(配列番号4として定義)。
【発明を実施するための形態】
【0080】
Toll様受容体14(TLR14)は、ロイシンリッチリピートを含んでなるタンパク質であり、ヒト型の場合、以下に示すように配列番号1のアミノ酸配列を含む。
【0081】
【化1】
可溶化型のToll様受容体14の予測アミノ酸配列を、配列番号2として示す。
【0082】
【化2】
マウス型のToll様受容体14のアミノ酸配列も定義されている。以下に配列番号3として示す。
【化3】
本発明の特定の実施形態では、配列番号1において定義されるヒト型のToll様受容体14を、配列番号3において定義されるマウス型のToll様受容体14で置換するのが適当であると考えられる。
【0083】
TLR14は、配列番号1において定義するように、12のロイシンリッチリピート、シグナル配列及び推定上の膜貫通領域を含む。TLR14の発現は、脳、肺及び卵巣において観察される。TLR14の発現は、微生物由来の生成物(例えばLPS)により増強される。
【0084】
発明者らは、TLR14の過剰発現により、LPS誘導性のシグナル伝達が増強され、それにより、転写制御因子NF−kBの転写及びIFN制御因子−3(IRF3)の活性化が上方制御されることを見出した。またLPSシグナル伝達(TLR4媒介)により、分裂促進因子活性化プロテインキナーゼ(MAPKs)、p38、c−jun、N末端キナーゼ(JNK)及びp42/44が活性化する。
【0085】
驚くべきことに、発明者らは、Toll様受容体14が、TLR4との共受容体として機能することを見出した。理論に拘束されないが、発明者らは、この予想されたTLR14の機能として、以下のとおりを考えている:
(i)TLR14の一過性の発現により、LPSシグナル伝達が増強され、
(ii)siRNAによるTLR14のノックダウンにより、LPSシグナル伝達が阻害され、
(iii)LPSがTLR14と結合し、
(iv)TLR14が膜画分、更には脳において発現し、EAEモデルマウスにおける炎症において、TLR14の発現レベルの強化が観察され、すなわちTLR14が特定の疾患及び炎症症状において上方制御されうることを示唆する。
【0086】
また、理論に拘束されないが、発明者らは、エンドトキシンにより媒介されるシグナル伝達におけるTLR14の関与は、TLR14のエンドトキシン(例えばLPS)との複合体形成に起因すると予測する。TLR14は、共受容体としてTLR4と会合する。TLR4は、エンドトキシンと直接結合しない。むしろ、MD−2がエンドトキシンと相互作用し、これがTLR4/MD−2複合体を形成し、それによりTLR4依存性の細胞刺激が生じる。この役割において、TLR14はCD14と同様の方法で機能し、またそれは膜結合型及び可溶化型として存在することも知られている。すなわち、TLR14から、TLR4とMD−2で予め形成された複合体へとLPSが移される。TLR4/MD−2複合体に対するLPSの結合により、PAMP LPSによるTLR4の活性化、更にTLR4のTIRドメインから生じる下流シグナル伝達を生じさせる。発明者らは、TLR14とCD14との配列相同性が極めて低いにもかかわらず、それらが構造的な相同性を示すことを見出している。例えば、CD14は一連のロイシンリッチリピートを有し、またこの一連のロイシンリッチリピートはTLR14の構造中に明らかに存在する。更に、CD14は、Toll様受容体の外部領域に存在するのと同じソレノイド構造を有する。CD14は、TIRシグナル伝達ドメインを有しないという点で、Toll様受容体とは異なる。
【0087】
ヒトToll様受容体4(TLR4)タンパク質のアミノ配列は過去に同定されており、配列番号4として以下に示す。
【0088】
【化4】
TLR4と、共受容体としてのTLR14の会合を阻害する調節化合物の同定を可能にする、様々なアッセイ方法を提供するにあたり、本発明では、異常な免疫反応において生じうる、TLR4により媒介されるシグナル伝達を阻害、抑制又は下方制御する手段を提供する。かかるTLR4により媒介されるシグナル伝達は、LPSのTLR4への結合に続く敗血症の原因となる。
【0089】
本発明は更に、TLR4により媒介される、及び特にLPS応答により媒介される、免疫反応を抑制する際に有用性を有する調節化合物の提供に関する。
【0090】
抗体及び関連する結合化合物:
特定の実施形態では、本発明は、例えばTLR14に対するエンドトキシン(例えばLPS)の結合を防止することによるか、又は、TLR14とTLR4とが複合体を形成して共受容体複合体を形成することを抗体により防止することによる、TLR14の生物学的機能的な活性の阻害への、抗体及び関連する結合化合物の使用に関する。
【0091】
特定の実施形態では、TLR14の生物学的機能を阻害する化合物は、抗体、又は抗体に由来する結合化合物である。
【0092】
「抗体」とは免疫グロブリンであり、天然由来であるか、又は部分的若しくは全部が合成されたものであってもよい。上記の用語はまた、抗体の結合ドメイン、又は抗体の結合ドメインと機能的に相同性を有するいかなるポリペプチド、タンパク質又はペプチドをも包含する。前記ポリペプチド又はタンパク質は天然の給源に由来してもよく、又はそれらは部分的若しくは全体的に合成されたものであってもよい。抗体の例としては、免疫グロブリンアイソタイプ(例えばIgG、IgA、IgM、IgEなど)、並びにそれらのアイソタイプサブクラス(例えばIgG1、IgG2及びIgG3)が挙げられる。上記の用語は更に、抗原結合ドメインを含んでなる抗体断片も包含し、ゆえに、結合特性を示す(Fab、F(ab’)2、scFv、Fv、dAb、Fd、断片及び二重特異性抗体。
【0093】
様々な実施形態では、本発明に使用する抗体はポリクローナル抗体、キメラ抗体又は合成された若しくは合成的な抗体であってもよい。特定の実施形態では、上記抗体はラクダ抗体(特にラクダ重鎖抗体)であってもよい。更に、上記抗体断片は、ラクダ重鎖抗体に由来するドメイン抗体又はナノボディでもよい。特定の実施形態では、上記抗体はサメ抗体又はサメ由来の抗体であってもよい。
【0094】
特定の実施形態では、上記抗体は「単離された抗体」であり、その意味は、上記抗体が、
(1)通常それとともに存在する少なくとも幾つかのタンパク質を含まず、
(2)同じ給源(例えば同じ種)からの他のタンパク質を実質的に含まず、
(3)異なる種に由来する細胞により発現され、又は、
(4)天然には生じない、ということである。
【0095】
抗体は多くの方法で修飾できるため、用語「抗体」とは、必要な特異性を有する結合ドメインを有する、あらゆる結合メンバー又は物質を包含するものとして解釈すべきである。本発明の抗体は、モノクローナル抗体、又はその断片、派生物、機能等価物又は相同物であってもよい。上記の用語には、免疫グロブリン結合ドメインを含んでなるあらゆるポリペプチドも包含され、天然由来、又は完全若しくは部分的合成由来であってもよい。したがって、もう1つのポリペプチドと融合した免疫グロブリン結合ドメイン(又は等価物)を含んでなるキメラ分子も包含される。キメラ抗体のクローニング及び発現は、欧州特許出願公開第0120694号及び欧州特許出願公開第0125023号の明細書に記載されている。
【0096】
抗体の定常領域は、いかなる適切な免疫グロブリンサブタイプでもよいが、抗体サブタイプがIgG1であることが好ましい。しかしながら、別の実施形態では、ヒト免疫グロブリン分子を用いる場合、抗体のサブタイプはクラスIgA、IgM、IgD及びIgEであってもよい。かかる抗体は更に、いかなるサブクラス(例えばIgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3及びIgG4)に属するものであってもよい。
【0097】
全長抗体の断片は、抗原と結合する機能を発揮できる。かかる結合断片の例としては、VL、VH、CL及びCH1抗体ドメインを含むFab断片、単一の抗体のVL及びVHドメインからなるFv断片、F(ab’)2断片(2つのFab断片の結合を含んでなる二価断片)、単鎖Fv分子(scFv)(VH領域とVL領域がペプチドリンカーにより連結され、それにより2つのドメインが会合し、抗原結合部位を形成する)、又は二重特異的抗体(遺伝子融合によって構築された、多価若しくは多重特異的断片でもよい)が挙げられる。
【0098】
本発明に用いられる抗体断片又はポリペプチド(例えばTLR14又はTLR4特異的な抗体断片)(後者は、エピトープの位置でTLR4と結合して、共受容体としてのTLR14とTLR4との複合体の形成を防止する、TLR14の生物学的機能を阻害する抗体の場合である)は全体的には、連続するアミノ酸残基であって、少なくとも5〜7の連続するアミノ酸、通常少なくとも約7〜9の連続するアミノ酸、典型的に少なくとも約9〜13の連続するアミノ酸、好ましくは少なくとも約20〜30若しくはそれ以上の連続するアミノ酸、最も好ましくは少なくとも30〜40若しくはそれ以上の連続するアミノ酸である。
【0099】
かかる抗体若しくはポリペプチドの、又はTLR14若しくはTLR4特異的な抗体断片の「誘導体」とは、タンパク質のアミノ酸配列を変化させることにより修飾される抗体又はポリペプチドを意味し、それらは例えば、タンパク質をコードする核酸の操作、又はタンパク質自体を変化させることによって得られる。天然のアミノ酸配列のかかる派生物は、1つ以上のアミノ酸の挿入、付加、欠失及び/又は置換を含んでもよく、好ましくは、TLR14及び/又はTLR4の結合活性を有するペプチドが提供される態様である。好ましくは、かかる誘導体は25個以下、より好ましくは15個以下、より更に好ましくは10個以下、より更に好ましくは4個以下、最も好ましくは1又は2個のアミノ酸のみのアミノ酸の挿入、付加、欠失及び/又は置換を含む。
【0100】
本発明の結合アッセイに用いられる抗体は、多くの技術により調製できる。例えば、ファージディスプレイベースのバイオパニングアッセイなどのコンビナトリアルスクリーニング技術を用いて、TLR14又はTLR4に存在する結合エピトープに対する結合特性を有するアミノ酸配列を同定できる。かかるファージディスプレイのバイオパニング技術は、ファージディスプレイライブラリを応用するものであり、糸状の微生物の表面における抗体結合断片のディスプレイを介した、免疫選抜を模倣する手順において、適切なエピトープ結合リガンドを同定する方法である。特異的な結合活性を有するファージが選抜される。選抜されたファージはその後、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体の産生において使用できる。
【0101】
特定の実施形態では、上記の抗体はモノクローナル抗体であり、それらは、細胞を連続培養して抗体分子を産生させるためのいかなる適切な方法を使用して調製してもよい。適切な方法は当業者に周知であり、例えばケーラー及びミルシテインの方法(Kohlerら、Nature,256,495−497.1975)が挙げられる。更に、キメラ抗体又はCDR移植抗体も本発明の範囲内に包含される。特定の実施形態では、本発明の抗体は、宿主細胞における組み換えDNAの発現によって調製してもよい。
【0102】
特定の実施形態では、上記のモノクローナル抗体はヒト抗体であってもよく、トランスジェニック動物(例えばトランスジェニックマウス)を使用して調製される。それは、ヒト重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子座が選択的に発現され、内在性マウス免疫グロブリン遺伝子の発現を欠失又は抑制されるように遺伝子組み換えがなされ、それにより完全なヒト抗体の産生が行われる。
【0103】
特定の実施形態では、上記の抗体はヒト化抗体であってもよい。ヒト化抗体は、例えば、米国特許第5585089号にて説明されるWinterの方法によって調製できる。ヒト化抗体は、モノクローナル抗体(例えばTLR14又はTLR4特異的な抗体)の超可変領域と、ヒト抗体の定常領域と有する修飾された抗体であってもよい。すなわち、上記結合メンバーはヒト定常領域を含んでなってもよい。超可変領域以外の可変領域は、ヒト抗体の可変領域に由来してもよく、及び/又は、モノクローナル抗体(例えばTLR14又はTLR4特異的な抗体)に由来してもよい。このような場合、全ての可変領域はマウスモノクローナル抗体に由来してもよく、かかる抗体はキメラ化されていると称される。キメラ抗体を調製する方法は公知である。かかる方法としては、例えば米国特許第4816397号及び第4816567号(それぞれBoss及びCabilly)に記載の方法が挙げられる。
【0104】
モノクローナル抗体及び他の抗体を取得し、また組み換えDNA技術を使用して、元の抗体の特性が維持された他の抗体又はキメラ分子を産生することが可能である。かかる技術では、抗体の免疫グロブリン可変領域又は相補性決定領域(CDRs)をコードするDNAを、異なる免疫グロブリンの定常領域、又は定常領域+フレームワーク領域に導入する操作を行う。例えば、欧州特許出願公開第0184187号、英国特許出願公開第2188638A号、又は欧州特許出願公開第0239400号を参照のこと。ハイブリドーマ又は抗体を産生する他の細胞を、遺伝子突然変異又は他の改変のために使用してもよく、その際、産生される抗体の結合特異性が変化してもよく、又は変化しなくてもよい。
【0105】
特定の実施形態では、TLR14抑制性化合物が抗体である場合、当該抗体は治療上有効量で被験者に投与される。特定の実施形態では、上記治療上有効量は、1μg/kg〜20mg/kg、1μg/kg〜10mg/kg、1μg/kg〜1mg/kg、10μg/kg〜1mg/kg、10μg/kg〜100pg/kg及び500pg/kg〜1mg/kgから選択される範囲で抗体を含有する。
【0106】
抗体の産生:
TLR14又はTLR4に存在するエピトープとの親和性及び結合特性を有する、TLR14の機能的活性を制限する抗体を産生するための具体的方法は、上記のとおりである。
【0107】
また本発明の、及び本発明に用いられる抗体又は抗体断片は、化学合成によって、完全に、又は部分的に調製してもよい。抗体は、確立された、標準的な液体、又は好ましくは固相ペプチド合成方法に従い容易に調製でき、それらの一般的説明は一般に利用可能であり、当業者に周知である。更に、それらは溶液中で調製してもよく、又は固相、液相及び溶液中での化学合成の任意の組合せによって調製してもよい。
【0108】
本発明への使用に適する抗体又は抗体断片を調製するための他の簡便な方法は、それらをコードする核酸を、発現システム中にて核酸を用いて発現させることである。
【0109】
本発明で使用される核酸は、DNA又はRNAを含んでなってもよく、完全に、又は部分的に化学合成されたものであってもよい。好適な態様では、本発明で用いられる核酸は、上記した抗体又は抗体断片をコードする。当業者であれば、本発明の抗体又は抗体断片を十分に提供できる態様で、かかる核酸へ置換、欠失及び/又は付加を決定できる。
【0110】
本発明に用いられる抗体又は抗体断片をコードする核酸配列は、利用可能な核酸配列及びクローンが存在する場合には、本願明細書に記載された技術情報及び引用文献、並びに従来技術において公知の技術(例えば、Sambrookら、(1989)及びAusubelら、(1992)を参照)を使用して、当業者によって容易に調製できる。これらの技術には、
(i)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、かかる核酸(例えばゲノム給源由来)の試料を増幅すること、
(ii)化学合成、又は
(iii)cDNA配列の調製。抗体断片をコードするDNAは、当業者に公知のあらゆる適切な方法で調製し、使用できる。その方法は、コードDNAを採取し、発現される部分の両側の適切な制限酵素認識部位を同定し、上記DNAから上記部分を切り出すことにより行われる。上記の部分を更に、市販の標準的な発現システムの適切なプロモータに、作動可能に連結させることができる。他の組換え方法は、適切なPCRプライマーを用いてDNAの関連部分を増幅することである。上記配列への修飾を行うことが可能であり、例えば、部位特異的突然変異導入を用いて、修飾されたペプチドを発現させるか、又は上記核酸の発現に用いる宿主細胞のコドン使用頻度に適合させることができる。
【0111】
上記の核酸は、プラスミド、ベクター、上記のような少なくとも1つの核酸を含む転写又は発現カセットの形の構築物として構成させることができる。上記の1つ以上の構築物を導入することにより、上記の構築物を組換え宿主細胞内に含有させてもよい。遺伝子発現は、適当な条件下で核酸を含む組換え宿主細胞を培養することによって、簡便に実施できる。抗体又は抗体断片を発現させて産生させた後、それらを、任意の適切な技術を、適切に使用して、単離及び/又は精製することができる。
【0112】
様々な異なる宿主細胞におけるクローニング及びポリペプチドの発現システムは、周知である。好適な宿主細胞としては、細菌、哺乳動物細胞、酵母、昆虫及びバキュロウイルスの細胞系が挙げられる。異種ポリペプチドの発現技術に利用可能な哺乳動物の細胞系としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒーラ細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、NS0マウス骨髄腫細胞などが挙げられる。一般的に好適な細菌宿主は、大腸菌である原核生物(例えば大腸菌)細胞における抗体及び抗体断片の発現は、当該技術において確立されている。培養液中の真核生物細胞における発現技術も、結合メンバーの産生用のオプションとして当業者が利用できる。
【0113】
例えば、一般的な抗体産生方法は当該技術分野の当業者に周知であり、例えばKohler及びMilstein(1975)Nature 256:495−497、米国特許第4376110号、Harlow及びLane,Antibodies:a Laboratory Manual,(1988)Cold Spring Harborなどに記載されている(それらの開示内容を本願明細書に援用する)。
【0114】
例えば、組換え抗体分子の調製技術は上記の引用文献、更には欧州特許出願公開第0623679号及び第0368684号に記載されている(それらの開示内容を本願明細書に援用する)。
【0115】
本発明の特定の実施形態では、抗体の重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインをコードするインサートを含んでなる組換え核酸を使用する。定義としては、かかる核酸は、一本鎖のコーディング核酸、前記コーディング核酸及びそれに対して相補的な核酸を含む二本鎖核酸、又はこれらの相補的な(一本鎖)核酸自体を含んでなる。
【0116】
更に、抗体の重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインをコードする核酸は、酵素的に、又は化学的に合成された核酸であってもよく、それらは天然の重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメイン、又はそれらの変異体の確実なコーディング配列を有する。
【0117】
組み換えDNA技術を用いて、本発明の抗体を改良することができる。すなわち、キメラ抗体を構築することにより、診断若しくは治療用途において、その免疫原性を減少させることが可能となる。更に、抗体をヒト化するのと同様の技術でCDR移植を行い、抗体を改変することによって、例えばブタなどのトランスジェニック生物の体内での免疫原性を最小にすることができる。かかる技術の例は、Winterの欧州特許出願公開第0239400号に記載されている。
【0118】
レシピエントにおける免疫原性を減少させるため、本発明では、ヒト定常ドメインに融合させた形で、抗体の重鎖可変ドメインをコードするインサートを含んでなる組換え核酸を使用できる。同様に、本発明は、ヒト定常ドメインのκ又はλ領域に融合させた形で、抗体の軽鎖可変ドメインをコードするインサートを含んでなる組み換えDNAに関する。
【0119】
抗体遺伝子の突然変異導入によって抗体を産生させ、抗体の人工レパートリを生じさせてもよい。この技術により、抗体ライブラリの調製が可能となる。抗体ライブラリはまた、市販品を利用してもよい。ゆえに、本発明では、免疫グロブリン源として免疫グロブリンの人工レパートリ(好ましくは人工scFvレパートリ)を使用して、TLR14又はTLR4の特性を有する結合分子を同定するのが好適である。
【0120】
抗体選抜システム:
免疫グロブリン(TLR14又はTLR4と結合し、TLR14の生物学的機能を阻害することができ、ゆえに本発明の方法で使用できる)は、当業者に公知のあらゆる技術を使用して同定できる。かかる免疫グロブリンは、免疫グロブリンポリペプチドの人工レパートリを含んでなるライブラリから簡便に分離できる。「レパートリ」とは、核酸のレベルにおいて、1つ以上の鋳型分子のランダム、セミランダム又は誘導されたバリエーションから生じさせ、多数の結合特性を生じさせた、分子のセットのことを指す。レパートリを生じさせるための方法は、従来技術において周知である。
【0121】
あらゆるライブラリ選抜システムを、本発明と組み合わせて使用できる。大きいライブラリから所望のメンバーを単離するための選抜プロトコルは、従来技術において公知であり、ファージディスプレイ技術がその典型である。かかるシステム(多様なペプチド配列が糸状バクテリオファージの表面にディスプレイされる)は、抗体断片(及びそれらをコードするヌクレオチド配列)のライブラリの作製に有用であることが見出されており、それにより、標的抗原と結合する特異的な抗体断片のin vitro選抜及び増幅が可能となる。VH及びVL領域をコードするヌクレオチド配列を、それらを大腸菌のペリプラズム誘導するためのリーダー配列をコードする遺伝子断片と連結し、その結果、得られる抗体断片はバクテリオファージの表面に、典型的にはバクテリオファージのコーティングタンパク質(例えば,pIII又はpVIII)に融合された形でディスプレイされる。あるいは、抗体断片はλファージのカプシド(ファージ本体)に外部的にディスプレイされる。ファージベースのディスプレイシステムの効果としては、それらが生物学的なシステムであるため、選択されたライブラリのメンバーを、細菌細胞中で、選択されたライブラリのメンバーを含んでなるファージを単に増殖させることにより増幅できることである。更に、ポリペプチドのライブラリのメンバーをコードするヌクレオチド配列がファージ又はファージミドベクターに含まれるため、その塩基配列決定、発現及び更なる遺伝子操作が比較的容易である。
【0122】
バクテリオファージ抗体ディスプレイライブラリの構築方法、及びλファージ発現ライブラリの構築方法は周知技術である(例えばMcCaffertyら、(1990)Nature 348,552−554)。特に有利な1つの方法としては、scFvファージ−ライブラリの使用である(例えばHustonら、1988,Proc.Natl.Acad.Sci USAを参照のこと)。
【0123】
ファージ若しくは他のクローニングされたライブラリの使用の代替としては、選択された標的(例えば本発明においてはTLR2エピトープ)で免疫された動物のB細胞に由来する核酸(好ましくはRNA)を使用することである。
【0124】
V領域及びC領域のmRNAを単離することにより、抗体断片(例えばFab又はFv)を細胞内で発現させることができる。簡潔には、RNAを免疫された動物のB細胞(例えば免疫されたマウスの脾臓又はラマの循環B細胞に由来する)から分離し、PCRプライマーを用いてRNAプールから選択的にVH及びVLのcDNAを増幅させる。このようにして得られたVH及びVL配列を連結し、scFv抗体を構成させる。PCRプライマー配列は、公開されているVH及びVL配列に基づく配列でもよい。
【0125】
ペプチド擬態物:
ペプチドの類縁体(例えばペプチド擬態物)は、鋳型のペプチドの代表的な特性を有する、非ペプチド化合物である。かかるペプチドの類縁体は典型的には、コンピュータによる分子モデリングを使用して開発される。TLR14との親和性及び結合特性を有し、エンドトキシン(例えばLPS)と結合して、共受容体複合体としてTLR4と会合するTLR14の生物学的機能活性を阻害するペプチドと、構造的に類似するペプチド擬態物を使用して、かかるTLR14に対する抑制機能を有すると決定されたポリペプチド及びタンパク質に類似する、予防的及び治療的効果を発揮させてもよい。
【0126】
ペプチド擬態物は典型的には、鋳型ペプチドと構造的に類似するが、周知の代替的な結合で、1つ以上のペプチド結合が置換されている。例えば、TLR14エピトープに対する結合特性を有するペプチドを、アミド結合の置換、非ペプチド部分の導入、又は骨格の環化により修飾する。最適には、システインが存在する場合、この残基のチオールをキャッピングして、遊離スルフェート基の損傷を保護する。ペプチドは更に、天然の配列の修飾により、当該ペプチドのプロテアーゼによる攻撃から保護してもよい。
【0127】
最適には、本発明のTLR14抑制性化合物として使用されるペプチドを、少なくとも1つのC末端及び/又は、N末端のキャッピング、及び/又はシステイン残基のキャッピングを用いて、更に修飾してもよい。更に、本発明に用いられるペプチドを、アセチル基により、N末端残基のキャッピングを行ってもよい。最適には、本発明のペプチド、及び本発明で用いられるペプチドを、アミド基により、C末端のキャッピングを行ってもよい。最適には、システインのチオール基を、アセタミドメチレン基でキャッピングする。
【0128】
コンビナトリアルライブラリ:
コンビナトリアルライブラリ技術(Schultz,JS(1996)Biotechnol.Prog.12:729−743)により、ポリペプチドの活性(本発明ではTLR14の生物学的活性)を調節する能力に関して、非常に膨大な数の異なる物質を試験する効率的な方法が提供される。活性の調節、あるいはそれに関するスクリーニングの前に、試験化合物を、ポリペプチドと相互作用する能力に関して、例えば酵母ツーハイブリッドシステム(ポリペプチドと試験化合物の両方をコードする核酸が、酵母において発現できることが必要)により選抜してもよい。これは、試験物質が実際にポリペプチドの活性を調節する能力を有するかの試験を行う前の、大雑把なスクリーニングとして使用できる。
【0129】
本発明のアッセイに添加できる試験物質又は化合物の量は通常、使用する化合物のタイプに応じて、試行錯誤により決定される。典型的には、推定の阻害化合物を約0.01〜100nMの濃度、例えば0.1〜10nMで使用できる。ペプチドが試験物質である場合は、より高い濃度で使用できる。
【0130】
抑制性ポリペプチドの産生:
特定の更なる態様において、LPSと結合して、TLR4と複合体形成する、TLR14の生物学的機能を阻害する化合物は、ポリペプチドである。適切なポリペプチドの発現、単離及び精製は、あらゆる適切な技術によって実施できる。
【0131】
ポリペプチドを産生する方法は、ポリペプチドの発現を促進する条件下で、当該ポリペプチドをコードする組換え発現ベクターで形質転換した宿主細胞を培養するステップと、次に培養液から発現されたポリペプチドを回収するステップとを有してなる。当業者であれば、発現されたポリペプチドを精製する手順が、使用する宿主細胞のタイプ、及び、当該ポリペプチドが細胞内型か、膜結合型か又は宿主細胞から分泌される可溶化型であるか、などの要因に応じて変化しうることを認識するであろう。
【0132】
いかなる適切な発現システムを使用してもよい。当該ベクターは、本発明のポリペプチド又は断片をコードするDNAを、適切な転写若しくは翻訳調節ヌクレオチド配列(例えば哺乳動物、鳥類、微生物、ウィルス、細菌又は昆虫遺伝子由来)に作動可能に連結された形で含んでなる。制御配列が機能的にDNA配列と関連しているとき、当該ヌクレオチド配列は作動可能に連結されているという。すなわち、プロモータのヌクレオチド配列がDNA配列の転写を制御する場合、当該プロモータヌクレオチド配列は、DNA配列に作動可能に連結している。一般には、所望の宿主細胞(大腸菌)において複製する能力を付与する複製開始点、及び形質転換体を同定するための選抜遺伝子を、上記発現ベクターに組み込む。
【0133】
更に、適当なシグナルペプチド(天然若しくは非相同)をコードする配列を、発現ベクターに組み込んでもよい。シグナルペプチド(分泌リーダー)のDNA配列を、本発明の核酸配列にインフレームで融合させ、DNAを最初に転写させ、次にmRNAを翻訳させてシグナルペプチドを含んでなる融合タンパク質を産生させてもよい。目的の宿主細胞において機能的なシグナルペプチドは、ポリペプチドの細胞外への分泌を促進する。シグナルペプチドは、翻訳の間にポリペプチドから切断除去されるが、細胞からのポリペプチドの分泌を可能にする。
【0134】
好適なポリペプチドの発現に用いる宿主細胞としては、高等真核生物細胞及び酵母が挙げられる。原核細胞系も適切である。哺乳動物細胞、特にCHO細胞は、宿主細胞としての用途に特に好適である。哺乳動物、原核生物、酵母、菌類及び昆虫細胞を宿主として用いる際の、適切なクローニング及び発現ベクターは、例えばPouwelsら、Cloning Vectors:A Laboratory Manual,Elsevier,New York,(1986)(ISBN0444904018)に記載されている。
【0135】
小分子:
特定の更なる実施態様において、TLR14の生物学的機能を阻害する化合物は、小分子であってもよい。
【0136】
非ペプチド性の「小分子」は通常、多くのin vivoでの医薬用途において好適である。したがって、TLR14発現又は生物学的機能を阻害するものとして、本発明のアッセイ方法のいずれか1つに従い同定された擬態物、又は擬態化合物を、医薬用途に応じて適宜設計してもよい。周知の薬理学的活性化合物の擬態物を設計することは、「リード」化合物をベースとする医薬開発のための、周知のアプローチである。これは、上記活性化合物の合成が困難若しくは高価である場合、又は、それが特定の投与方法にとり不適当である場合(例えばペプチドは、消化管内のプロテアーゼにより急速に分解する傾向を有するため、経口投与用組成物の活性成分としては不適切である)に好適であると考えられる。擬態物の設計、合成及び試験を用いることにより、多数の分子を、特定の性質に関してランダムスクリーニングする煩雑さを回避できる。
【0137】
所定の目的の特性を有する化合物から擬態物を設計する際、幾つかのステップが一般的に採られる。第1に、目的の特性の決定にとり決定的及び/又は重要である化合物の特定部分を決定するステップである。ペプチドの場合、これはペプチドのアミノ酸残基を系統的に変異させること(例えば各残基を順次置換すること)によって実施できる。化合物の活性領域を構成するこれらの部分又は残基は、その「ファルマコフォア」として公知である。
【0138】
ファルマコフォアが決定された後、その構造を、その物理的性質に従って、例えばスペクトル解析、X線回折データ及びNMRなどの様々なソースから得た、例えば立体化学、結合、サイズ及び/又は荷電などのデータを使用してモデル化する。コンピュータ分析、類似性マッピング(原子間の結合よりも、むしろ荷電及び/又はファルマコフォアの量をモデル化する)、及び他の技術を、このモデリングプロセスで使用できる。
【0139】
この方法の変法において、リガンドの三次元構造及びその結合パートナーをモデル化する。リガンド及び/又は結合パートナーが結合形態を変化させる場合、これは特に有用であり、そのモデルは擬態物の設計に利用できる。
【0140】
次に、ファルマコフォアを模倣する化学基がグラフトされている鋳型分子を選抜する。鋳型分子及びそこにグラフトされた化学基は、当該擬態物が容易に合成でき、薬理学的に許容できると考えられ、in vivoで分解されず、一方、リード化合物の生物学的活性が維持されるものを、簡便に選択できる。この方法によって発見された1つ以上の擬態物を次に、それらが目的の特性を有するか否か、又はそれらがそれをどの程度示すかに関してスクリーニングできる。更なる最適化又は変形を実施して、in vivo又は臨床試験のための、1つ以上の最終的な擬態物を得ることができる。
【0141】
抑制性核酸分子:
本発明は、TLR14遺伝子産物の発現を抑制する化合物又は組成物を投与することによって、エンドトキシンにより媒介されるTLR4媒介性のシグナル伝達を抑制する方法を包含する。
【0142】
TLR14の発現抑制は、当業者に周知の多くの技術を使用して実施できる。例えば、限定されないが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスDNA、アンチセンスRNA、リボザイム、iRNA、miRNA、siRNA、shRNAからなる群から選択される抑制性の核酸により、抑制が媒介されうる。
【0143】
すなわち、特定の更なる態様では、本発明は、Toll様受容体14の発現を遮断する、治療上有効量の抑制性核酸を被験者に投与することによって、TLR4媒介性の炎症症状の予防及び/又は治療方法を包含する。
【0144】
本願明細書に定義され、TLR14遺伝子の発現に関して用いられる用語「遮断する」び「遮断」とは、Toll様受容体14タンパク質の発現に結びつく少なくとも1つの遺伝子の発現を停止させること(サイレンシング、silencing)を意味する。遺伝子サイレンシングとは、遺伝子組み換え以外の機構による、遺伝子発現のスイッチオフのことである。遺伝子サイレンシングは、転写レベルで、又は転写後のレベルで媒介されうる。転写レベルでの遺伝子サイレンシングにより、転写機構が遺伝子に到達できなくなり、それは例えばヒストンの修飾により媒介されうる。転写後の遺伝子サイレンシングにより、遺伝子に由来するmRNAの破壊が行われ、それにより、活性を有する遺伝子産物、例えばタンパク質(本発明ではTLR−14タンパク質)の生成が抑制される。
【0145】
したがって、本発明は更に、有効量の、RNAi(RNA干渉)剤などの抑制性核酸分子を被験者に投与して(例えばリボ核酸(例えばsiRNA又はshRNA)、又はその転写鋳型(例えばshRNAをコードするDNA)を被験者に存在する少なくとも1つの細胞種、組織又は器官に投与して)、TLR14タンパク質の発現を遮断する方法を包含する。
【0146】
特定の更なる実施態様において、上記の抑制性核酸分子は、アンチセンスRNA分子でもよい。アンチセンスとは、遺伝子発現の抑制を行う方法であり、物理的にmRNAと結合し、mRNAからの翻訳を遮断する一本鎖RNA断片が用いられる。
【0147】
抑制性の核酸として使用するための、適当な核酸を調製する技術は、当業者に周知であり、以下に詳細に記載する。
【0148】
本発明の更に別の態様は、TLR4媒介性の炎症症状の治療及び/又は予防用の、Toll様受容体14タンパク質の発現を遮断する薬剤の調製への、抑制性核酸の使用の提供に関する。特定の実施形態では、上記TLR4媒介性の炎症症状は、敗血症である。
【0149】
様々な本発明の態様は、TLR14遺伝子発現のサイレンシングのための抑制性核酸の使用の提供に関する。
【0150】
二本鎖RNAは、RNA干渉(RNAi)又は転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)と称されるプロセスを介して、強力かつ特異的な遺伝子サイレンシングを誘導する。RNAiは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と称される、配列特異的な、マルチコンポーネントのヌクレアーゼにより媒介され、それは、サイレンシングトリガーに相同なメッセンジャーRNAを破壊する。RISCは、二本鎖RNAトリガーに由来する短鎖RNA(約22ヌクレオチド)を含むとして公知である。
【0151】
RNAiは、哺乳動物細胞系をはじめとする多数の系において、機能損失を解析するための方法の1つの選択肢となっている。大部分の哺乳動物細胞系における遺伝子の特異的なサイレンシングには、低分子干渉RNA(siRNA)が用いられる。その理由は、大きいdsRNAs(>30塩基対)では、インターフェロン応答が誘発され、非特異的な遺伝子サイレンシングが生じるからである。
【0152】
使用されるRNAi剤は、小分子のリボ核酸分子(また本明細書では干渉リボ核酸と称す)、すなわちオリゴリボヌクレオチドであり、それらはデュプレックス構造(例えば各々ハイブリダイズした、2つの異なるオリゴリボヌクレオチドか又は単一のリボオリゴヌクレオチド)で存在し、小さいヘアピンを形成してデュプレックス構造を生じさせると考えられる。「オリゴヌクレオチド」とは、約100ヌクレオチド(nt)長を超えないリボ核酸を意味し、典型的には、約75のヌクレオチド長を超えず、特定の実施形態では約70未満のヌクレオチド長である。本願明細書に記載されているように、本発明に用いられるデュプレックス構造の長さは、典型的には約15〜30塩基対であり、好ましくは約15〜29塩基対である。
【0153】
本願明細書の「核酸」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)などのポリヌクレオチド、及び、必要に応じてリボ核酸(RNA)を指すこともある。上記の用語はまた、記載されている実施態様に適用できる場合は、一本鎖(センス又はアンチセンス)及び二本鎖ポリヌクレオチドを包含するものと理解すべきである。
【0154】
核酸又は遺伝子配列に関する「発現」という用語は、遺伝子の転写、及び(適当な場合は)得られるmRNAのタンパク質への翻訳を意味する。すなわち、前後関係から自明のように、タンパク質をコードする配列の発現は、コード配列の転写及び翻訳の結果である。
【0155】
「遺伝子発現の阻害」とは、標的遺伝子に由来するタンパク質のレベル及び/又はmRNA生成物の不存在(又は観察可能な減少)を指す。「特異性」とは、細胞内の他の遺伝子に対して顕著に影響を与えることなく、標的遺伝子を阻害する能力のことを指す。阻害の有無の確認は、例えば当業者に周知の技術を用いて実施することができ、例えば、ノーザンブロット、逆転写、マイクロアレイによる遺伝子発現モニタリング、抗体結合、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウエスタンブロット、標識免疫アッセイ(RIA)、他のイムノアッセイ、及び蛍光活性化細胞分取法(FACS)などが挙げられる。細胞系又は生物体全体における、RNA媒介性の阻害の際、タンパク質産生物が容易にアッセイされるレポーター遺伝子又は薬剤耐性遺伝子を用いることにより、遺伝子発現を容易にアッセイできる。
【0156】
上記のアッセイによってTLR14遺伝子の発現量を定量することにより、本発明の処理を受けない細胞と比較し、10%超、33%超、50%超、90%超、95%超又は99%超の程度の阻害が測定できる。活性薬剤の低い投与量、及び活性薬剤の投与後の長時間の経過により、より少ない割合の細胞において阻害が行われる(例えば少なくとも10%、20%、50%、75%、90%又は95%の標的細胞)。細胞内の遺伝子発現の定量により、標的mRNAの蓄積又は標的タンパク質の翻訳レベルにおける、同様の阻害の程度が示されうる。例えば、阻害効率は、細胞内の遺伝子産物の量を評価することにより測定できる(すなわち、mRNAは抑制性二本鎖RNAのために使用される領域外のヌクレオチド配列を有するハイブリダイゼーションプローブにより検出でき、又は、翻訳されたポリペプチドは、その領域のポリペプチド配列を抗原として作製した抗体により検出できる)。
【0157】
RNAi:
したがって、上記のように、本発明の一態様は、適切なタイプの細胞において、TLR14の発現を阻害又は抑制するための、RNAiの使用方法の提供に関する。「発現の阻害」という用語は、TLR14遺伝子又はコード配列の発現レベルが、コントロールと比較し、少なくとも約2倍、通常少なくとも約5倍(例えば10倍、15倍、20倍、50倍、100倍以上)低下又は阻害されることを意味する。特定の実施形態では、標的TLR14遺伝子/コード配列の発現が効果的に阻害される程度まで、TLR14標的遺伝子の発現が低下する。この場合、標的遺伝子の発現の阻害とは、コード配列(例えばゲノムDNA、mRNAなど)のタンパク質などのポリペプチド産生物(本発明ではTLR14)への転写又は翻訳が阻害されることを意味する。
【0158】
特定の実施形態では、干渉リボ核酸(例えば上記のsiRNA又はshRNA)であるRNAi剤の代わりに、当該RNAi剤は、上記の干渉リボ核酸(例えばshRNA)をコードするものであってもよい。換言すれば、RNAi剤は、干渉リボ核酸の転写鋳型であってもよい。これらの実施形態では、上記転写鋳型は典型的には干渉リボ核酸をコードするDNAである。DNAはベクターに存在してもよく、またプラスミドベクター、ウィルスベクターなどの様々なベクターが公知である。
【0159】
TLR14を発現する細胞へのRNAi剤の投与は、ウィルスベクターによって、又は当業者に公知の他のプロトコルにより実施できる。例えば、上記の核酸をマイクロインジェクション、又はリポソーム融合によって細胞に導入してもよい。例えば、RNAi剤は、標的細胞に直接注入できる。上記RNAi剤は、細胞あたり少なくとも1コピーで送達される量で導入してもよい。上記RNAi剤を高濃度(例えば少なくとも5、10、100、500又は1000コピー/細胞)で投与することにより、より有効な阻害をなしうる。また、特殊な用途においては低用量が有用である。
【0160】
アンチセンス:
また、本発明は、TLR14の発現サイレンシングに用いられるアンチセンス核酸の提供に関する。アンチセンス試薬は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ODN)、特に天然の核酸を化学的に修飾した合成ODNであってもよく、又はRNAとしてのかかるアンチセンス分子を発現する核酸構築物であってもよい。アンチセンス配列は、標的のTLR14遺伝子のmRNAと相補的で、標的のTLR14遺伝子産物の発現を阻害する。
【0161】
アンチセンス分子は様々なメカニズム、例えば、RNAseHの活性化又は立体障害を通じて、翻訳に利用されるmRNAの量を減少させることによりにより遺伝子発現を阻害する。1つのアンチセンス分子又はその組合せを投与してもよく、その組合せは複数の異なる配列を含んでなってもよい。アンチセンス分子は、アンチセンス鎖がRNA分子として生じるように転写方向が調整された適切なベクター中で、標的TLR14遺伝子配列の全て又は一部を発現させることにより、生じさせることができる。あるいは、上記アンチセンス分子は、合成オリゴヌクレオチドである。アンチセンスオリゴヌクレオチドは一般に、少なくとも約7、通常少なくとも約12、好適には少なくとも約16ヌクレオチド長であり、約500以下、通常約50以下、好適には約35ヌクレオチド長以下であり、そのヌクレオチド長は、阻害効率、特異性、交差反応性の欠如などの要因に依存する。短いオリゴヌクレオチド(7〜8塩基長)が、遺伝子発現を強力かつ選択的に阻害しうることが解明されている(Wagnerら、(1996),Nature Biotechnol.14:840−844を参照)。
【0162】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、公知の方法によって化学的に合成できる(Wagnerら、(1993)上記、及びMilliganら、上記、を参照)。それらの細胞内安定性及び結合親和性を改善するために、好適なオリゴヌクレオチドを基に、天然のリン酸ジエステル構造を化学的に修飾する。多くのかかる修飾が文献に記載され、それらは骨格、糖又は複素環状塩基の化学構造を変化させるものである。
【0163】
可溶性タンパク質:
特定の更なる実施態様において、Toll様受容体14の生物学的機能を阻害する化合物は、可溶性タンパク質(典型的には可溶化型のTLR14)である。
【0164】
可溶性ポリペプチドは、それらが発現された細胞から分泌されうる。一般に、可溶性ポリペプチドは、所望のポリペプチドを発現する完全な細胞を、培地から、例えば遠心分離により分離して、所望のポリペプチドの存在に関して培地(上清)をアッセイすることにより同定できる(また、非可溶性の膜結合型の相対物と区別できる)。培地中のポリペプチドの存在は、ポリペプチドが細胞から分泌され、すなわち可溶化型のタンパク質であることを示す。
【0165】
本願明細書に定義される配列番号2のアミノ酸配列は、配列番号1に定義されるTLR14の配列の、可溶化型のアミノ酸配列を示し、すなわち、予測された膜内外領域及びC末端が除去されている。この可溶化型のToll様受容体14は、競争的にLPSと結合することによって、膜結合型Toll様受容体14の生物学的機能を抑制する機能を発揮でき、これにより、膜結合型TLR14とLPSとの会合が減少し、その結果、LPSにより媒介されたToll様受容体4の活性化が減少する。発明者らは、この場合、エンドトキシン(例えばLPS)と会合した可溶化型のTLR14は、共受容体としてTLR4と複合体を形成しないと予想している。
【0166】
特定の実施形態では、可溶化型のTLR14は、融合タンパク質として提供してもよい。特定の実施形態では、前記融合タンパク質は、TLR14受容体の可溶性部分、典型的にはその細胞外領域若しくは一部分(例えば配列番号2のアミノ酸配列を有する)と、それに結合する第2のペプチドを含んでなる。特定の実施形態では、上記の第2のペプチドは免疫グロブリンに由来し、典型的には免疫グロブリン(典型的にヒト免疫グロブリン)の重鎖に由来するFc受容体結合タンパク質である。融合タンパク質中にFc領域を含ませることにより、治療用タンパク質の循環半減期が延長される。
【0167】
可溶性TLR14アミノ酸配列及び免疫グロブリンFc受容体結合部分は、あらゆる適切な方法により結合させてもよく、典型的には共有結合により連結させる。しかしながら、非共有結合を用いてもよい。あるいは、ポリペプチド配列を直接結合してもよく、又は結合部分又はスペーサにより結合してもよい。免疫グロブリンに由来するヒンジ領域などのリンカー部分を用いてもよい。上記のヒンジ領域は、抗原性ポリペプチドを定めるアミノ酸と、免疫複合体のFcR結合ポリペプチドを定めるアミノ酸とを連結するのみならず、免疫複合体の柔軟性を増加させることにより結合特異性を改善する。典型的には、上記リンカーは主にスペーサとして機能する。典型的には、上記リンカーは、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸を含んでなる。上記のリンカーは、例えば1〜20個のアミノ酸を含んでなってもよい。最適には、上記のリンカーは、立体障害のないアミノ酸残基(グリシン及びアラニンなど)を含んでなってもよい。リンカー部分の適切な形態を、以下に記載する。
【0168】
免疫複合体中の抗原性断片を定めるアミノ酸を、そのN(アミノ)末端又はC(カルボキシル)末端のリンカー部分に連結させてもよい。適切なコンジュゲート及び結合方法は当業者に周知であり、例えばFcポリペプチドのシステイン残基を利用したチオエステル架橋によるコンジュゲーションなどが挙げられる。あるいは、コンジュゲーションは例えば、ヘテロ二官能性架橋剤(スクシンイミジルエステル(例えば、3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート又はスクシンイミジルアセチルチオアセテート、Molecular Probe社.Handbook、第5章、5.3節)などの化学的架橋分子)を使用して行ってもよい。
【0169】
Fc結合ポリペプチドへの抗原性断片のコンジュゲーションにおいて有用な更なる技術としては、国際公開第94/04690号パンフレット及び第96/27011号パンフレットに記載の技術が挙げられる。
【0170】
コンジュゲーションは更に、従来技術において周知の組み換えDNA技術を用いた、遺伝子的手段によって実施でき、かかる技術は、例えばSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2 ed.Vol.1,pp.1.101−104,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、及びF.M.Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology,Eds.J.Wiley Press(2006)などに開示されている(それらの関連する部分を本願明細書に援用する)。
【0171】
複合薬剤:
上記のように、本発明の特定の態様は、複合薬剤に関するものであり、その際の組成物又は方法は、TLR14の生物学的機能活性を阻害する化合物の投与に関連し、それらは、CD14活性を抑制するのに有用な、少なくとも1つの更なる治療用化合物と組み合わせて投与される。
【0172】
典型的には、第1の治療組成物と第2の治療組成物は、同時に投与される。特定の実施形態では、上記の第1の治療組成物(すなわちTLR14の機能活性をアンタゴナイズする化合物)と第2の治療化合物は、一度に投与される。特定の更なる実施態様において、それらは順次投与される。
【0173】
特定の実施形態では、上記複合薬剤は、TLR14の機能的阻害剤(例えば抗体、ペプチド、小分子又はペプチド擬態物)を含んでなってもよく、更に以下の少なくとも1つと共に被験者に共投与される:CD14阻害剤、サイトカイン阻害剤(限定されないが例えばIL−1、IL−6、IL−8及びIL−15の阻害剤)、及び腫瘍壊死因子阻害剤、成長因子阻害剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、酵素阻害剤、代謝阻害剤、細胞障害剤、又は細胞増殖抑制剤。
【0174】
当業者であれば、被験者に対する複合薬剤の投与は、治療薬の投与量を低くすることが可能となり、また関連する治療的効果を被験者に提供することが可能となるため、有利であることを認識するであろう。複合薬剤の投与量が少ないことにより、投与化合物に由来する毒性に対する被験者の曝露レベルも低いものとなる。更に、本発明に係る、複合薬剤の一部として投与される第2の治療化合物は、異なる経路を標的とするため、全体的な治療効果が相乗的に向上すると考えられる。治療効果の向上により、必要となる投与量を低くでき、またそれにより毒性を減少させることができる。
【0175】
CD14の生物学的機能的な活性を抑制するのに用いられる第2の化合物としては、限定されないが、可溶化型のCD14、ペプチド阻害剤、小分子、融合タンパク質若しくはリガンド、並びに抗体などが挙げられる。
【0176】
医薬組成物:
本発明は、TLR14の発現又は生物学的機能的な活性を阻害する化合物を含んでなる医薬組成物を包含する。本発明に係る、及び本発明に使用される医薬組成物は、活性成分(すなわちTLR14の発現又は生物学的活性の阻害剤)に加えて、当業者に周知の薬理学的に許容できる賦形剤、担体、緩衝剤又は他の物質を含んでなってもよい。適切な医薬用の担体としては、例えば水、グリセロール、エタノールなどが挙げられる。
【0177】
本発明のモノクローナル抗体又は融合タンパク質は、あらゆる適切な経路を経て、治療を必要とする患者に投与できる。本願明細書において詳述されるように、上記の組成物は、注射又は点滴によって、非経口的に投与されるのが好ましい。好適な非経口投与経路の例としては、限定されないが、静脈内、心臓内、動脈内、腹膜内、筋肉内、経粘膜、腔内、皮下、吸入又は経皮投与経路が挙げられる。
【0178】
更なる投与経路としては、局所及び腸内投与(例えば経粘膜(肺内を含む)、経口、鼻腔内、直腸内)が挙げられる。
【0179】
上記の製剤は、液体(例えば非リン酸緩衝生理食塩水(pH6.8−7.6)を含んでなる)であってもよく、又は凍結乾燥粉末であってもよい。
【0180】
特定の実施形態では、上記の組成物は、注射可能な組成物として送達することができる。静脈内、皮内、皮下投与の場合、上記の活性成分を、パイロジェンフリーの、適切なpH、等張性及び安定性を有する、非経口投与可能な水溶液の形態に調製する。当業者であれば、例えば塩化ナトリウム注射液、リンガー注射液又は乳酸リンガー注射液などの等張ビヒクルを使用して、適切な溶液を調製できる。
【0181】
必要に応じて、防腐剤、安定化剤、緩衝剤、酸化防止剤及び/又は他の添加を含有させてもよい。
【0182】
上記の組成物は、血液などの特定の組織に配置させた微小球体、リポソーム、他の微粒子送達システム、又は持続放出製剤を介して投与してもよい。
【0183】
本発明に使用できる上記の技術及びプロトコルの例、並びに他の技術及びプロトコルは、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th edition,Gennaro,A.R.,Lippincott Williams&Wilkins、 20th edition ISBN0−912734−04−3、及びPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、 Ansel,H.C.ら、7th Edition ISBN0−683305−72−7に記載されており、それらの全開示内容を本願明細書に援用する。
【0184】
投与計画において、本発明の組成物の単回投与、又は当該組成物の複数回投与を含めることができる。上記組成物は更に、本発明の融合タンパク質を投与して治療しようとする症状の治療に用いられる他の治療薬及び薬剤と共に、順次、又は別個に投与できる。
【0185】
実際の投与量、並びに投与の速度及び時間−経路は、治療対象の性質及び重篤度に依存する。治療の処方(例えば投与量の決定など)は、最終的には一般開業医及び他の医師の責任及び裁量の範囲内で行われ、また典型的には、治療しようとする障害、個々の患者の症状、送達部位、投与方法及び医療関係者公知の他の要因を考慮して行われる。
【0186】
特に明記しない限り、本願明細書において用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明の技術分野に属する当業者に一般的に理解されている意味で用いられる。
【0187】
明細書全体にわたり、文脈による限定がない限り、用語「含んでなる」又は「含有する」、又はその活用形(例えば「含んでなって」又は「含んでなること」、「含有して」又は「含有すること」)は、明記された整数又は整数の群を包含することを意味するが、他のいかなる整数又は整数の群を除外するものではないとして理解されるものとする。
【0188】
本明細書で用いられる用語「1つの」及び「上記」などは、文脈から特に限定されない限りは、それが示すものの単数形及び複数形を包含するものとする。すなわち、例えば「活性薬剤」又は「医薬活性薬剤」というときは、単一の活性薬剤、並びに2つ以上の異なる活性薬剤の組み合わせが包含され、一方、「担体」というときは、単一の担体、並びに2つ以上の担体の混合物が包含される。
【0189】
本発明の融合タンパク質のポリペプチド成分を記載するための命名法は、従来の慣習に従って行われ、アミノ基(N)が各アミノ酸残基の左に存在し、カルボキシル基が右側に存在する。
【0190】
本明細書で用いられる「アミノ酸」という表記には、天然及び合成アミノ酸、並びに、D型及びL型の、いずれのアミノ酸も包含されるものとする。合成アミノ酸にはまた、化学修飾されたアミノ酸(限定されないが塩、及びアミドなどのアミノ酸誘導体などを含む)が包含される。本発明のポリペプチドに含まれるアミノ酸は、他の化学基によるメチル化、アミド化、アセチル化又は置換により修飾されることができ、それにより、その生物学的活性に悪影響を与えることなく、循環半減期を改変することができる。
【0191】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、本願明細書において同義的に用いられ、ペプチド結合又は修飾ペプチド結合(例えばアイソスター)により共有結合した、少なくとも2つの一連のアミノ酸を表すものとする。ペプチド又はタンパク質中に含有させるができるアミノ酸の最大数は、特に限定されない。更に、用語「ポリペプチド」は、ペプチドの断片、類縁体及び誘導体を包含し、前記断片、類縁体又は誘導体は、当該断片、誘導体又は類縁体が由来するペプチドと同じ生物学的機能活性を保持している。
【0192】
本願明細書の用語「治療上有効量」とは、TLR4媒介性の炎症症状を抑制するのに必要となる、本発明の物質、結合化合物、小分子、融合タンパク質又はペプチド擬態物の量を意味する。
【0193】
本願明細書の用語「予防上有効量」とは、TLR4媒介性の炎症症状(例えば敗血症)の最初の発症、進行又は再発を防止するのに必要となる組成物の量のことを指す。
【0194】
本願明細書の用語「治療」、及び関連する用語「治療する」及び「治療すること」とは、TLR4又はTLR14媒介性の症状又はその少なくとも1つの徴候の、進行、重篤度及び/又は持続期間を減少させることを意味し、上記の減少(又は改善)は、TLR4と、共受容体としてのTLR14との会合を崩壊させるか又は防止する化合物の投与の結果として生じる。
【0195】
したがって、「治療」という用語は、被験者にとり有益なあらゆる療法計画のことを指す。上記の治療は、既存の症状に関するものであってもよく、又は予防的なもの(予防的治療)であってもよい。治療には、治癒的、軽減的又は予防効果が包含されうる。本願明細書における「治療的」及び「予防的」処置とは、それらの最も広義の意味において解釈されるものとする。「治療的」の用語は、必ずしも被験者が完全な回復を遂げるまで治療されることを意味するものではない。同様に、「予防的」とは、必ずしも被験者が最終的に疾患症状に至らないことを意味するものではない。
【0196】
本願明細書の用語「被験者」とは、動物(好ましくは哺乳糖物、特にヒト)を指す。特定の実施形態では、上記の被験者は哺乳動物、特にヒトである。用語「被験者」は、本明細書で用いられる用語「患者」と同義である。
【0197】
以下の実験技術及びプロトコルを、本発明の実施例において用いる。
【0198】
ルシフェラーゼレポーターアッセイ:
U373細胞を、96ウェルプレート(ウェルあたり2×104細胞)に播き、その翌日、空のベクター又はTLR14発現ベクター(50ng)、並びに、Renillaルシフェラーゼ内部コントロールプラスミド(Promega社)40ngと共にNF−kB−ルシフェラーゼレポーター遺伝子(Stratagene社)80ngを用いてトランスフェクションした。GENEJUICE(商標)(Novagen社)を用いて、製造業者の指示に従い、一過的にトランスフェクションした。24時間後に細胞を、100ng/mlの最終濃度で、LPS(Sigma社)で6時間刺激した。細胞を更に受動的な溶解緩衝液(Promega社)中に添加し、レポーター遺伝子活性をルミノメーターで測定した。データを、コントロールのレベルに対する平均誘導倍率±SDとして表し、代表的な実験の場合は3つの別々の実験(各々3回実験を行う)の最小値として表した。
【0199】
siRNAベースのTLR14ノックダウン:
TLR14に対する結合特性を有する市販のsiRNAは、Dharmacon社及びQiagen社から購入した。ヒト星状細胞腫U373細胞を、5×104細胞/mlの濃度で、10cmのシャーレにおいて準備した。次の日、細胞を、製造業者の指示に従い、OLIGOFECTAMINE(商標)(Invitrogen社)を使用して、siRNAでトランスフェクションした。48時間後に細胞から培地を除去し、SDS−PAGE用のサンプルバッファを直接プレートに添加した。サンプルを超音波破壊し、5分間ボイルし、13000回転/分で1分間遠心分離した。サンプルを次にSDS−PAGE及びウエスタンブロッティングにより解析した。IkBα及びホスホp38に対する抗体はCell Signalling社から購入した。TLR4抗体はSanta Cruz社から購入した。
【0200】
THP1を用いる実験において、Amaxaベースのトランスフェクションシステム(プログラムS−019)を使用して、TLR14(Qiagen)に特異的なsiRNAにより細胞をトランスフェクションした。72時間後に、TLR14のノックダウンをウエスタンブロッティングにより確認した。スクランブルしたQiagen siRNAをネガティブコントロールとして使用して、siRNAがTLR14に特異的であったことを確認した。細胞を、示された時間にわたり、100ng/mlのLPSで処理し、IkB分解をウエスタンブロッティングで測定した。サイトカイン測定が関係する実験の場合、72時間後に、細胞を24時間にわたり100ng/mlのLPSで刺激した。上清を除去し、IL−6及びTNF−αELISAsを実施した。
【0201】
LPS結合アッセイ:
HEK293細胞を、1×105細胞/mlで、10cmのプレートに播いた。翌日、細胞をTLR14発現プラスミド3μgによってトランスフェクションした。24時間後に、1%のNP40を含んでなる800μlのHepesバッファ中で細胞を溶解させた。細胞可溶化物を、非標識のLPSの有無において、1μg/mlの最終濃度のビオチン−LPS(Invivogen社)で、室温で1時間インキュベートした。ストレプトアビジン−アガロースビーズ(Pierce社)をPBSで2回洗浄し、サンプルに添加した(40μl/ポイント)。1時間後に、ビーズを溶解緩衝液で3回洗浄し、SDS−PAGEサンプルバッファ20μl中に再懸濁した。タンパク質のサンプルを、10%SDS−PAGEゲルで泳動し、ニトロセルロース膜へ転写し、ウエスタンブロッティングを行った。得られるブロットを、抗TLR14抗体をプローブとして解析した。
【実施例】
【0202】
実施例1:LPSシグナル伝達へのTLR14の関与:
LPSに反応する星状細胞腫細胞系(U373)において、レポーター遺伝子アッセイを実施した。50ngの空のコントロールベクター又はTLR14プラスミドで、24時間にわたりトランスフェクションした。細胞を回収する前に、過度に発現されたTLR14の有無において、LPS(100ng/ml)により6時間刺激し、レポーター遺伝子活性を分析した。
【0203】
図1に示されるように、空のベクターでトランスフェクションした細胞の場合(図1でEVと記す)と比較し、TLR14の存在により、LPS誘導性のNF−kBレポーター遺伝子発現(刺激の増加(倍)として示す)が増強された。LPSシグナル伝達を増強するTLR14の能力は、TLR14がTLR4の共受容体として機能しうることを示唆する。
【0204】
実施例2:TLR14のsiRNAノックダウンによる、LPSで媒介されるシグナル伝達に対する効果
TLR14がTLR4のための共受容体として機能するか否かを更に確認するため、TLR14ノックダウンに特異的なsiRNAsを、Qiagen社から購入した。これらのTLR14特異的なsiRNAsを用いて、LPS誘導性のIkB分解及びp38リン酸化の効果を評価した。
【0205】
TLR14及び非ターゲティングネガティブコントロールsiRNAの両方に対するsiRNAを、U373s細胞にトランスフェクションし、TLR14のノックダウンを、ウエスタンブロッティングにより確認した。得られた、このノックダウンを確認するウエスタンブロッティングを、図2(B)及び図3に示す。
【0206】
LPS誘導性のIkB分解及びp38リン酸化を、TLR14の細胞レベルを低下させる効果を評価するための読み出し(readout)として用いた。β−アクチンの発現を、ローディングコントロールとして用いた(それぞれ図2(A)及び図3)。図2(A)は、LPS誘導性のIkB分解がTLR14の非存在下で観察されなかったことを示す。同様に、LPS誘導性のp38リン酸化は、図3に示すように、TLR14に対するsiRNAで処理された細胞において、大きく損なわれた。
【0207】
これらの効果が、TLR4の非特異的なノックダウンに起因するものではないことを確認するため、TLR4抗体をプローブとしてサンプルを解析した。その結果、TLR14に対するsiRNAで処理された細胞からのTLR4減少を示す証拠が得られなかった(結果は示さず)。
【0208】
実施例1及び2の結果はしたがって、TLR14がLPS誘導性の細胞シグナル伝達を増強し、その一方で、TLR14の不存在によりLPSへの通常の反応が損なわれることを明らかに示すものである。したがってTLR14は、PAMP(LPS)のTLR4への結合に応答したTLR4機能にとり必要である。
【0209】
実施例3:TLR14に対するLPSの結合の測定
LPS結合アッセイを実施し、TLR14へのLPSの結合を測定した。HEK293細胞を、TLR14でトランスフェクションした。24時間後に細胞を溶解させ、室温で、ビオチン化LPS(1μg/ml)又は非標識のLPSで1時間インキュベートした。次にストレプトアビジンアガロースビーズ上でプルダウンアッセイを実施した。
【0210】
上記溶解物のウエスタンブロッティングによる分析結果を図4に示す。ウエスタンブロットにより、ビオチン−LPSとの複合体としてTLR14が存在することが明らかとなった。非標識のLPSが含まれることにより、図4に示すように結合が減少し、すなわちこの相互作用が特異的であることを示すものである。図4(a)において、5倍過剰の非標識のLPSを含ませ、一方、図4(b)において、コントロールサンプル中に、25倍過剰及び50倍過剰の非標識LPSを含ませた。
【0211】
実施例4:IkB分解に対する、TLR14 siRNAノックダウンの効果
amaxaベースのトランスフェクションシステム(program S−019)を使用して、TLR14(Qiagen)に対して特異的なsiRNAにより、THP1細胞をトランスフェクションした。
【0212】
72時間後における、TLR14のノックダウンを、ウエスタンブロッティングにより確認した(図5(A))。スクランブルバージョンのQiagen siRNAを用いて、siRNAがTLR14に特異的であることを確認するためのネガティブコントロールとした。示された時間、100ng/mlのLPSで細胞を処理し、IkB分解をウエスタンブロットにより測定した(図5(B)及び図5(C))。
【0213】
siRNA媒介されたTLR14のノックダウンはゆえに、LPSによる刺激に応答したIkB分解をわずかに阻害することを示すものであった。
【0214】
実施例5:IL−6及びTNF−αサイトカインレベルに対する、TLR14ノックダウンの効果
amaxaベースのトランスフェクションシステム(program S−019)を使用して、TLR14(Qiagen)に対して特異的なsiRNAにより、THP1細胞をトランスフェクションした。スクランブルバージョンのQiagen siRNAを用いて、siRNAがTLR14に特異的であることを確認するためのネガティブコントロールとした。72時間後に、100ng/mlのLPSで細胞を24時間刺激した。上清を除去し、IL−6及びTNF−αELISAアッセイを実施した。
【0215】
結果を図6に示す。図6(A)はELISAの結果であり、TLR14のノックダウンによりTNF−α産生の減少が生じることを示す。図6(B)は、TLR14のノックダウンによりIL−6サイトカイン産生の減少が生じることを示す。
【0216】
実施例6:膜におけるTLR14の発現及び局在化
U373脳星状細胞腫細胞を、4μgのTLR14でトランスフェクションした。2時間後に、100ng/mlのLPSで細胞を2時間刺激した。細胞を、サイトゾル及び膜画分に分画した。ウエスタンブロット分析により、膜におけるTLR14の発現を確認した。
【0217】
図7は、ウエスタンブロッティングの結果を示す。サイトゾル画分を左側に示し、一方、膜画分を右側に示す。NTとは非トランスフェクション細胞を意味し、一方、Tはトランスフェクション細胞を意味する。その結果、過剰発現したTLR14が膜において局所化することが示された。
【0218】
実施例7:マウス脳におけるTLR14の発現
野生型(WTと表記)及び自己免疫脳脊髄炎(EAEと表記)モデル実験マウスから、脳を摘出し、皮質、海馬及び小脳に解剖した。これらの断片のウエスタンブロット分析により、タンパク質レベルでのTLR14の発現が確認された。
【0219】
図8は、皮質(ゲル左側のカラム1及び2)、海馬(中央のカラム3及び4)及び小脳(右側のカラム5及び6)におけるTLR14の発現を意味するバンドを示す、ウエスタンブロッティングを示す。
【0220】
特に皮質及び海馬から得たEAEサンプルに関しては、TLR14発現レベルが、EAEマウスのこれらの領域より高いことを観察することができた。
【0221】
実施例8:THP1細胞における内因性TLR14の局在化
THP1細胞を、1mlあたり1×105細胞で、10cmのプレート上に播き、一晩インキュベートした。24時間後に培地を除去し、細胞をPBSで洗浄し、かき取り、分画バッファ(10mMのトリス−HCl、10mM MgCl2、1mM EDTA、250mM スクロース、200mM PMSF、pH7.5)中に入れた。サンプルを、Dounceホモジナイザ中で20ストローク処理し、100,000×gで1時間遠心分離した。上清(サイトゾル画分)を新しい試験管へ移し、ペレット(膜画分)を、50μlのSDS−PAGEサンプルバッファ[50mMのTris−Cl、pH6.8/10%のグリセロール(体積/体積)/2%のSDS(重量/体積)/0.1%のブロモフェノールブルー(重量/体積)/5%の2−メルカプトエタノール]中に再懸濁させた。サンプルを、SDS−PAGE及びウエスタンブロッティングにより分析した。
【0222】
THP1細胞の膜及びサイトゾルの画分を調製し、内因性TLR14の局在化を測定した。図9に示すように、超遠心分離後、これらの細胞の膜画分のタンパク質を分離した。ゲル上の膜由来画分に関連するカラムでは、明瞭なバンドが示された。サイトゾルの画分には、同様のバンドは存在しなかった。したがってこの実験の結果は、TLR14が膜結合型受容体のファミリーに属するという説を支持するものである。
【0223】
本願明細書で引用される全ての文書は、参照により本願明細書に援用される。本発明に記載される実施形態に対する、本発明の範囲内における様々な修正変更は、当業者にとり自明である。本発明を、具体的な好適な実施形態を参照しながら記載したが、それらは、特許請求された本発明を、かかる具体的な実施形態に過度に限定するものと理解すべきでない。実際、記載された本発明の実施形態の、当業者にとり自明な様々な改変は、本発明の範囲内に包含されるものとする。本願明細書中のいかなる従来技術の引用も、この従来技術が、いかなる国においても一般的知識として認識されていることを、いかなる形でも承認又は示唆することを意味せず、またそのように認識すべきでない。
【技術分野】
【0001】
本発明はToll様受容体4機能を調節する化合物に関する。本発明は更に、Toll様受容体機能を調節する化合物、特にToll様受容体4とToll様受容体14とを含んでなる共受容体複合体により媒介されるシグナル伝達を調節する化合物を同定するのに有用なアッセイ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Toll様受容体(TLR)スーパーファミリーは、侵入した病原体の認識及び免疫反応の開始において中心的な役割を果たす。各TLRは、異なる病原体関連分子パターン(PAMP)を認識し、シグナル伝達カスケードの活性化を生じさせ、次に、転写制御因子NF−kB、更には有糸分裂活性化プロテインキナーゼ(MAPKs)、p38、c−jun、N末端キナーゼ(JNK)及びp42/44を活性化する。Toll様受容体4(TLR−4、TLR4)はまた、転写制御因子IFNで制御される因子−3(IRF3)(インターフェロン感受性応答エレメント(ISRE)と結合し、インターフェロンβなどの遺伝子のサブセットを誘導する)の活性化を最終的に引き起こす、更なる経路を活性化する。TLRは、大きなスーパーファミリーのメンバーであり、インターロイキン1受容体(IL−1R)/TLRスーパーファミリーと呼ばれ、またIL−1R1サブグループ及びTIRドメイン含有アダプターサブグループも含まれる。全ての3つのサブグループは、細胞質のToll/IL−1受容体(TIR)領域を有し、それはシグナル伝達にとって必須である。TLRは細胞外のロイシンリッチリピートを有し、一方IL−1R1サブグループは細胞外免疫グロブリンドメインを有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発明者らは、驚くべきことに、上記のToll様受容体14(配列番号1のヒト型のアミノ酸配列、又は、配列番号3のマウス型のアミノ酸配列を含んでなることを特徴とするタンパク質)が、Toll様受容体であるToll様受容体4(TLR4)の共受容体として作用することを見出した。発明者らは、例えばsiRNAにより媒介されるTLR14ノックダウンの結果としてのTLR14発現の阻害が行われる場合には、エンドトキシンによるTLR4の活性化に続く、TLR4により媒介されるシグナル伝達(TLR4の定義された病原体関連分子パターン(PAMP))が、細胞において抑制されることを明らかにしている。
【0004】
TLR4がエンドトキシンにより媒介されるシグナル伝達にとり重要であることは認知されている。エンドトキシンにより媒介される、TLR4を介したシグナル伝達は、例えば敗血症(septicamia)及びセプシス(sepsis)などの症状を生じさせうる。したがって、TLR4の機能を調節できる、また、特にエンドトキシン(例えばリポ多糖類(LPS))に反応したTLR4活性化及びシグナル伝達を抑制する化合物及び薬剤を同定することは望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達の抑制方法の提供に関し、当該方法は、
−配列番号1のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質の発現又は生物学的機能を阻害する、治療上有効量の化合物を準備するステップと、
−かかる処置を必要とする被験者にそれを投与するステップとを有してなる。
【0006】
特定の実施形態では、配列番号1のアミノ酸配列を含む上記タンパク質は、Toll様受容体14である。
【0007】
ヒト型のToll様受容体14のアミノ酸配列は過去に同定されている。これは、本願明細書において配列番号1として示される。
【0008】
本願明細書において定義される「Toll様受容体4(TLR4)の活性化」とは、TLR4が、少なくとも1つの更なる分子と結合するか又は会合して、TLR4のTIRドメインにより媒介されるシグナル伝達が生じることを意味する。更に、本明細書で定義される用語「Toll様受容体4のシグナル伝達」とは、Toll様受容体4の活性化から生じた、少なくとも1つの下流側のシグナル伝達経路の活性化を意味する。典型的には、上記シグナル伝達は、TLR4のTIRドメインにより開始される細胞内シグナル伝達カスケードである。TLR4により誘発されるシグナル伝達カスケードにより、NF−kB、又はインターフェロン調節因子3などの転写制御因子の活性化が生じうる。TLR4により媒介されたシグナルは更に、分裂促進因子活性化プロテインキナーゼ(MAPKs)、p38、c−jun、N末端キナーゼ(JNK)及びp42/44を活性化しうる。
【0009】
Toll様受容体4は、エンドトキシン(例えばグラム陰性細菌に由来するリポ多糖類(LPS))に応答して活性化されることが公知である。しかしながら、Toll様受容体4はLPSと直接会合しない。むしろTLR4は、アダプタ分子として分子MD−2を使用することにより、LPSの結合を促進する。発明者らは、Toll様受容体14がLPSと結合すると理論づけている。結合されたLPSは次に、TLR14から、予め形成されたTLR4とMD−2との複合体へ移される。この定義されたTLR14の作用機構は、CD14に起因するそれと類似している。
【0010】
したがって、本発明の方法では、TLR4により媒介されるシグナル伝達及び免疫系の活性化の抑制が、Toll様受容体4とToll様受容体14との会合を防止することにより媒介され、それにより、Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達は、生じることができない。
【0011】
特定の実施形態では、配列番号1のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質(Toll様受容体14)の発現又は生物学的機能を阻害する化合物は、限定されないが、タンパク質、ペプチド、ペプチド擬態物、核酸、ポリヌクレオチド、多糖類、オリゴペプチド、炭水化物、脂質、小分子化合物及び天然の化合物からなる群から少なくとも1つ選択されるものである。
【0012】
特定の実施形態では、Toll様受容体14の発現又は生物学的機能を阻害する化合物は、抑制性(inhibitory)核酸である。かかる核酸は、Toll様受容体14タンパク質の発現を防止する機能を発揮する。適切な抑制性核酸の例としては、限定されないが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスDNA、アンチセンスRNA、リボザイム、iRNA、miRNA、siRNA及びshRNAなどが挙げられる。
【0013】
本願明細書に定義されるように、「生物学的機能の阻害」という用語は、TLR4活性化及びシグナル伝達を生じさせる、少なくとも1つのTLR14の活性(例えばTLR14がLPSと結合する能力、又はTLR14が共受容体としてTLR4と共に複合体を形成する能力)を防止することを意味する。
【0014】
特定の更なる実施形態では、Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達は、共受容体としてのTLR14の、TLR4との複合体の形成を阻害し、それによりTLR4活性化を抑制する、抗体又は同様の結合化合物により阻害される。
【0015】
特定の実施形態では、上記抗体はTLR14、TLR4、又はその両方に結合しうる。TLR4及び/又はTLR14に存在するエピトープに対する抗体の結合は、TLR4の活性化及びシグナル伝達阻害を生じさせる。
【0016】
特定の実施形態では、Toll様受容体14の生物学的機能を阻害する化合物は、可溶化型のToll様受容体14である。前記可溶化型のToll様受容体14は膜結合型ではなく、また、例えば、配列番号1に記載のToll様受容体14タンパク質の細胞外領域を含んでなるアミノ酸残基の全部又は相当数を欠失していてもよい。
【0017】
特定の実施形態では、この態様の本発明の方法は更に、CD14の発現又は生物学的機能を阻害する、治療上有効量の組成物を、被験者に投与するステップを有してなる。
【0018】
本発明の第2の態様は、Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達を抑制するのに用いられる医薬組成物の提供に関し、上記医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容できる希釈剤、賦形剤又は担体と共に、Toll様受容体14の発現又は生物学的機能を阻害する化合物を含んでなる。
【0019】
特定の実施形態では、Toll様受容体14の発現又は生物学的機能を阻害する上記化合物は、限定されないが、タンパク質、ペプチド、ペプチド擬態物、核酸、ポリヌクレオチド、多糖類、オリゴペプチド、炭水化物、脂質、小分子化合物及び天然の化合物からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0020】
特定の実施形態では、上記医薬組成物は複合薬剤を含んでなってもよく、その第1成分は、Toll様受容体14の発現又は生物学的機能を阻害する化合物であり、前記複合薬剤は、第2成分として、CD14の発現又は生物学的機能を阻害する化合物を含んでなる。かかる複合薬剤は、LPSにより媒介されるTLR4活性化の全体的な抑制をなしうる。
【0021】
更なる本発明の態様は、Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達により媒介される症状の治療用薬剤の調製への、Toll様受容体14の発現又は生物学的機能を阻害する化合物の使用の提供に関する。
【0022】
特定の実施形態では、Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達により媒介される症状は、敗血症又は感染性ショックである。
【0023】
本発明の更に他の態様では、Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達によって生じる症状の治療用薬剤に用いられる、Toll様受容体14の発現又は生物学的機能を阻害する化合物を含んでなる組成物の提供に関する。
【0024】
特定の実施形態では、Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達により媒介される症状は、敗血症又は感染性ショックである。
【0025】
更なる様々な態様において、本発明には、TLR14の発現又は生物学的機能を阻害する化合物を同定するためのアッセイ方法も包含される。更に、本発明の更なる態様には、前記アッセイ方法により同定される化合物を含んでなる組成物も包含され、また、TLR4活性化及びシグナル伝達の抑制における、前記化合物及び組成物の使用も包含される。
【0026】
したがって、更に他の本発明の態様は、Toll様受容体4と、共受容体としてのToll様受容体14との会合を阻害する化合物を同定するためのアッセイ方法の提供に関し、当該方法は、
−Toll様受容体4とToll様受容体14とを含んでなる第1及び第2の細胞サンプルを準備するステップと、
−上記第1及び第2のサンプルと、上記Toll様受容体14と結合するエンドトキシンとを、上記Toll様受容体14が、エンドトキシンと結合するときにToll様受容体4と会合できる条件下で、接触させるステップと、
−前記第1のサンプルと、候補調節化合物とを、前記化合物の結合が可能な条件下で接触させるステップと、
−Toll様受容体4受容体の複合体の活性化状態を、前記第1と第2のサンプル間での、下流の活性化レベルの比較によってモニタするステップを有してなり、
前記第1のサンプルと前記第2のサンプルとの間での、Toll様受容体4のシグナル伝達の減少により、Toll様受容体4とToll様受容体14との会合の阻害剤としての調節化合物が同定される。
【0027】
特定の実施形態では、上記調節化合物は、限定されないが、タンパク質、ペプチド、ペプチド擬態物、核酸、ポリヌクレオチド、多糖類、オリゴペプチド、炭水化物、脂質、小分子化合物及び天然の化合物からなる群から選択される、少なくとも1つである。
【0028】
特定の実施形態では、上記候補化合物は、TLR14受容体の、TLR4との複合体結合(complex binding)及び会合を抑制する。特定の実施形態では、上記調節化合物は、TLR14発現を抑制する。
【0029】
特定の実施形態では、TLR14と結合し、TLR4受容体を活性化する分子は、リポ多糖(LPS)である。
【0030】
一実施形態では、TLR4受容体の下流の活性化は、Toll様受容体活性を表すモニタリング標識に基づいてモニタされる。かかる標識の例としては、NF−κBの活性化及びIRF3タンパク質の活性化が挙げられる。
【0031】
更なる様々な態様において、本発明には、上記の本発明の態様に係るアッセイ方法により同定される、TLR14を阻害する化合物を含んでなる組成物が包含される。
【0032】
更なる様々な態様において、本発明には、TLR4活性化及びシグナル伝達の抑制方法における、上記のアッセイ方法により同定される化合物の使用が包含される。
【0033】
更なる様々な態様において、本発明には、TLR4との共受容体として複合体を形成するTLR14の能力を阻害する化合物を同定するための、アッセイ方法が包含される。
【0034】
更なる態様において、本発明には、共受容体としてのToll様受容体14とToll様受容体4との会合をモニタすることに基づく、TLR4の調節化合物を同定するアッセイ方法が包含される。かかるアッセイは、例えばFRET(蛍光共鳴エネルギー転移)に基づく。その方法は、タンパク質間相互作用における分子動態の定量化において用いられる。
【0035】
2つの分子の間の会合及び複合体形成をモニタするため、当該分子のうちの1つをフルオロフォアドナー分子で標識し、一方、もう1つをフルオロフォアアクセプタ分子で標識する。2つの分子が相互作用するときに、ドナーの放出がアクセプタ分子へ転移する。これにより、アクセプタ分子から、モニタできる発光が生じる。上記ドナーとアクセプタが近接して存在する(例えば1〜10nm)とき、2つの分子は相互作用して、それにより生じる発光がモニタされる。アクセプタ分子からの放出は、ドナーからアクセプタ分子への分子間蛍光共鳴エネルギー転移に起因する。かかるアッセイにおいて使用するフルオロフォア分子の例は、青色蛍光タンパク質(CFP)及び黄色蛍光タンパク質(YFP)である。
【0036】
したがって、本発明の更なる態様は、Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達の調節化合物として機能する化合物の同定方法の提供に関し、前記方法は、
−Toll様受容体4とToll様受容体14とを含んでなる第1及び第2の細胞サンプルを準備するステップと、
−第1のフルオロフォア分子でToll様受容体4を標識し、第2のフルオロフォア分子でToll様受容体14を標識するステップと、
−前記第1のサンプルと、Toll様受容体4受容体の活性化を生じさせる分子とを接触させるステップと、
−Toll様受容体4及び/又はToll様受容体14の結合が可能な条件下で、前記第1及び第2のサンプルと候補調節化合物とを接触させるステップと、
−フルオロフォアの蛍光をモニタすることによって、Toll様受容体4受容体の結合状態及び/又は活性化をモニタするステップとを有してなり、蛍光の変化により、上記候補調節化合物が、Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達の調節化合物として同定される。
【0037】
特定の実施形態では、Toll様受容体4の活性化を生じさせる分子は、エンドトキシン(例えばLPS)であり、それはToll様受容体14と結合し、その結果、Toll様受容体14が共受容体としてToll様受容体4と複合体を形成して複合体が形成される。
【0038】
特定の実施形態では、本発明のアッセイ方法は、in vitroでのアッセイ方法である。
【0039】
特定の実施形態では、本発明の本態様のアッセイ方法により同定される調節化合物は、Toll様受容体4の活性化及び/又は下流シグナル伝達を抑制する化合物である。特定の実施形態では、本発明の本態様のアッセイ方法により同定される調節化合物は、Toll様受容体4の活性化及び/又は下流シグナル伝達を増強する化合物である。
【0040】
フルオロフォアからの光放出の減少は、TLR4受容体活性を阻害又は抑制する候補調節化合物の存在を表す。
【0041】
特定の実施形態では、上記調節化合物は、Toll様受容体14又はToll様受容体4のいずれかと結合する、抗体、ペプチド擬態物、ポリペプチド又は小分子であり、この結合により、TLR4とTLR14との間の複合体形成が防止される。
【0042】
特定の実施形態では、上記アッセイは、Ullmanら、PNAS,vol91,pp5426−5430,June1994にて説明したように、ビーズベースのALPHASCREEN技術(Perkin Elmer社)を使用して実施できる。AlphaScreenアッセイは、2つのビーズタイプ(ドナービーズ及びアクセプタビーズ)を含んでなる。ビーズは標的分子と共役でき、ビーズに捕捉された分子との間の相互作用により、1つのビーズから他のビーズへのエネルギー転移がなされ、それにより蛍光/発光シグナルが生じる。好適には、AlphaScreenアッセイシステムによりハイスループットスクリーニングが可能となり、それにより、FRETを応用する本発明のアッセイ方法は、このフォーマットにおいて使用することが可能である。
【0043】
好適には、AlphaScreenアッセイシステムによりハイスループットスクリーニングが可能となり、それにより、FRETを応用する本発明のアッセイ方法を、HTSスクリーニング方法で用いることにより、調節化合物の同定を促進させることが可能となる。
【0044】
FRETベースのアッセイの原理を、TLR4とTLR14との間で形成される共受容体複合体を崩壊させる候補調節化合物の同定にまで応用することが可能である。
【0045】
更なる様々な態様において、本発明には、上記の本発明の態様に係るアッセイ方法を使用して同定される調節化合物を含んでなる組成物が包含される。本発明には更に、前記組成物及び前記調節化合物の、Toll様受容体4と、共受容体としてのToll様受容体14との会合を防止するための方法及び組成物への使用が包含される。
【0046】
更なる特定の態様において、TLR4活性化を測定し、及び/又は、TLR4活性化の調節化合物を同定するための様々なアッセイが使用できる。例えば、TLR4刺激に関するスクリーニングアッセイが報告されており、そこでは、培養細胞を、2つのプラスミド(1つは、ヒトTLR4の遺伝子を担持し、もう1つは、ルシフェラーゼ遺伝子の上流側にNFκBと結合するプロモータを担持する検出用プラスミド)でトランスフェクションしている(Vogel,S.J.Biol.Chem.2003 278:222506)。あるいは、酵母ツーハイブリッドシステムを用いて、TLR4活性化をスクリーニングすることもできる。
【0047】
したがって、本発明の更に別の態様は、Toll様受容体4とToll様受容体14との会合を崩壊させる調節化合物の同定方法の提供に関し、当該方法は、
−TLR4及びTLR14を含んでなる第1及び第2の細胞サンプルを準備するステップと、
−第1のフルオロフォア分子でTLR4を標識し、第2のフルオロフォア分子でTLR14を標識するステップと、
−TLR14と結合してTLR4を活性化し、それによりTLR4とTLR14との会合を生じさせる分子と、前記第1のサンプルと、を接触させるステップと、
−前記第1のサンプルと、候補調節化合物とを、TLR14及び/又はTLR4への当該調節化合物の結合を可能にする条件下で接触させるステップと、
−フルオロフォアの蛍光をモニタすることによって、TLR4受容体の結合状態及び/又は活性化をモニタするステップとを含んでなり、
前記蛍光の変化により、上記候補調節化合物が、TLR4とTLR14との間に形成される共受容体複合体を崩壊させる機能を発揮するとして同定され、それによりTLR4受容体の調節化合物としての調節化合物が同定される。
【0048】
特定の実施形態では、TLR4の活性化を生じさせる分子は、エンドトキシン(例えばLPS)である。典型的には、前記エンドトキシンはTLR14と結合し、それにより共受容体複合体としてTLR14がTLR4と会合できる。
【0049】
フルオロフォアからの光放出の減少は、TLR4受容体活性を阻害するか又は抑制する候補調節化合物の存在を示す。
【0050】
更なる様々な態様において、本発明には、上記の本発明の態様に係るアッセイ方法により同定される調節化合物を含んでなる組成物が包含される。本発明には更に、エンドトキシンにより媒介されるTLR4のシグナル伝達を防止するための方法への、前記組成物及び調節化合物の使用が包含される。
【0051】
更なる態様において、本発明には、リポ多糖(LPS、エンドトキシン)とTLR14との間の結合が、FRETシステムを使用してモニタされる、アッセイ方法が包含される。LPS及びTLR14の各々は、それぞれ別々であるが相補的な、フルオロフォアのドナー又はアクセプタ分子で標識される。TLR14受容体とLPSとの結合により、ドナーからアクセプタ分子への、分子間蛍光共鳴エネルギー転移に起因するアクセプタ分子からの光の放出がなされる。上記アッセイを用いることにより、FRETシグナル放出が変化するとき、LPS/TLR14複合体を崩壊させる調節化合物を同定することができる。本発明の発明者は驚くべきことに、TLR14が機能的に遮断され、又はその発現が抑制されるときに、TLR4受容体複合体からの下流シグナルが実質的に抑制されることを観察し、それはすなわち、調節化合物によるTLR14発現又は機能の抑制は、リガンドによるTLR4への結合に続く下流シグナルの減少を生じさせることを示すものである。
【0052】
更に、選択されたLPSアンタゴニストを用いた第2のレポーター遺伝子アッセイを実施することにより、TLR4へのLPSの結合に続くシグナル伝達から生じるシグナルを観察することができる。
【0053】
セプシス(sepsis)、感染性ショック及び敗血症(septicaemia)として公知の症状は、LPSにより誘発されたToll様受容体4の活性化から生じる、潜在的に致死性の症状である。したがって発明者らは、例えばセプシス、感染性ショック及び敗血症症状などの治療及び予防のための化合物及び方法への、本発明の有用性を見出した。
【0054】
したがって、本発明の更なる態様は、敗血症又は感染性ショックの治療及び/又は予防方法の提供に関し、当該方法は、
−Toll様受容体14の発現又は生物学的機能を阻害する、治療上有効量の化合物を準備するステップと、
−かかる処置を必要とする被験者にそれを投与するステップを有してなる。
【0055】
特定の実施形態では、上記方法は、CD14の発現又は生物学的機能を阻害する、治療上有効量の組成物を被験者に投与する更なるステップを有してなる。
【0056】
更なる本発明の態様は、敗血症又は感染性ショックの治療用薬剤の調製への、Toll様受容体14の発現又は生物学的機能を阻害する化合物の使用の提供に関する。
【0057】
本発明の更に他の態様は、敗血症又は感染性ショックの治療用薬剤に用いられる、Toll様受容体14の発現又は生物学的機能を阻害する化合物を含んでなる組成物の提供に関する。
【0058】
敗血症又は感染性ショックの症状は、グラム陰性細菌に由来するエンドトキシン(例えばLPS)によって生じる。特定の実施形態では、グラム陰性細菌は、限定されないが、ナイセリア メニンジチデス、エシェリチア コリ、シュードモナス アエルジノサ、ハエモフィラ インフルエンザエ、サルモネラ チフィムリウム及びフランシセラ ツラレンシスからなるリストから選択される。
【0059】
特定の実施形態では、Toll様受容体14の発現又は生物学的機能を阻害する化合物は、限定されないが、タンパク質、ペプチド、ペプチド擬態物、核酸、ポリヌクレオチド、多糖類、オリゴペプチド、炭水化物、脂質、小分子化合物及び天然の化合物からなる群から選択される、少なくとも1つである。
【0060】
更なる様々な態様において、本発明には、TLR14の発現又は生物学的活性を阻害し、それにより、敗血症の治療及び/又は予防への有用性を有する、化合物を同定するためのアッセイ方法が包含される。
【0061】
更なる特定の態様において、本発明には、敗血症及び感染性ショックの治療に用いられる、上記の本発明の態様に係るアッセイで同定される抑制性化合物を含んでなる組成物が包含される。
【0062】
エンドトキシン関連の敗血症及び感染性ショックにおいて、活性化されたTLR4は重要な役割を果たしうることから、本発明の上記方法において、TLR4活性化の阻害剤として同定された試験物質は、エンドトキシン関連の敗血症及び/又は感染性ショックを予防又は治療する際に有用であると考えられる。
【0063】
すなわち、本発明はまた、本発明のアッセイ方法によって同定される、Toll様受容体4活性の活性化を阻害する物質を被験者に投与することによって、被験者の敗血症及び/又は感染性ショックを治療する用途に用いられる、組成物の提供に関する。かかる方法及び組成物を、敗血症及び/又は感染性ショックの徴候を示す被験者に用いてもよい。かかる組成物及び方法はまた、敗血症又は感染性ショックを発症する危険性が高い被験者に対して、予防的に用いることもでき、かかる被験者としては、限定されないが大手術(特に腸領域)を受けている患者、並びに外科的手技を受けている、免疫を抑制された患者が挙げられる。
【0064】
本発明には更に、かかるアッセイにより同定される、敗血症の治療用化合物の使用が包含される。
【0065】
エンドトキシンは、リピドAと多糖類とを含むリポ多糖(LPS)複合体を含んでなる。グラム陰性細菌のリポ多糖(エンドトキシン、LPS)は、グラム陰性菌による敗血症の際に観察されるような、細胞内及び生理的反応を誘発する。免疫/炎症性系の細胞は、血漿及び膜タンパク質の両方が関与する経路によって、LPSに反応する。
【0066】
したがって、TLR4により媒介される免疫反応経路を下方制御又は阻害する方法は、LPSにより媒介される症状(例えば敗血症)の治療方法として、望ましい。本発明は、LPSにより媒介される症状の治療に用いることができる。
【0067】
本発明のアッセイ及びそれにより同定される調節化合物は、多くの医療的症状、最も具体的にはエンドトキシン及びLPSにより媒介される症状(例えば敗血症)の治療において、具体的な有用性を発揮する。
【0068】
したがって、本発明の他の更なる態様は、エンドトキシンによる媒介される症状の治療への使用に適する化合物を同定するためのアッセイ方法の提供に関し、前記アッセイ方法は、−候補化合物を準備するステップと、−上記候補化合物をTLR4受容体複合体と接触させるステップであって、前記複合体がエンドトキシンと結合したTLR14を含んでなるステップと、−受容体複合体のTLR4及びTLR14構成要素と結合したフルオロフォア部分からの光放出をモニタするステップとを有してなり、フルオロフォアからの光放出レベルが調節されることにより、TLR4受容体複合体を介したシグナル伝達を抑制する際の、当該化合物の有用性が示される。
【0069】
一実施形態では、エンドトキシンにより媒介される症状は、敗血症又は感染性ショックである。
【0070】
他の更なる本発明の態様として、本発明の上記のアッセイ方法によって同定されたTLR14抑制性化合物を含んでなる、敗血症の治療又は予防用の組成物が包含される。
【0071】
発明者らは更に、Toll様受容体14が脳において発現することを観察している。実験用の自己免疫脳脊髄炎(EAE)モデルマウスの皮質及び海馬において、TLR14の発現が示されている。TLR14の発現は、同じモデルの小脳においても観察されている。本明細書で発明者により定義される、TLR14の作用のメカニズムを基礎として、発明者は更に、Toll様受容体14は、脳におけるTLR4媒介性の炎症性シグナルにおいて、役割を果たすと予想している。したがってTLR14は、脳において、エンドトキシン媒介されたToll様受容体4のシグナル伝達との関係があると考えられる。したがって、更なる様々な態様において、本発明には、脳のTLR14の発現又は生物学的機能活性を阻害することによって、かかるTLR4により媒介されるシグナル伝達を阻害する方法が包含される。したがって、本発明の更なる様々な態様において、エンドトキシンにより媒介される脳におけるTLR4による炎症性シグナル伝達を抑制するための化合物、組成物、更にはかかる方法における当該化合物及び組成物の使用が包含される。
【0072】
本発明の他の更なる態様は、Toll様受容体4活性化及びシグナル伝達により媒介される、異常な免疫反応を治療する方法の提供に関し、当該方法は、−Toll様受容体4とToll様受容体14との会合を阻害する化合物を準備するステップと、−治療的有効量の当該化合物を、かかる治療を必要とする被験者に投与するステップとを有してなる。
【0073】
上記異常な免疫反応とは、あらゆる、免疫により媒介される望ましくない反応であってもよい。特定の実施形態では、上記の異常な免疫反応は、例えば敗血症又は感染性ショックなどの症状を生じさせるものである。特定の実施形態では、上記敗血症は、Toll様受容体4への、エンドトキシン(例えばグラム陰性細菌に由来するリポ多糖)の結合に起因するグラム陰性敗血症である。
【0074】
アッセイ:
本発明には、TLR14タンパク質を活性化する調節化合物を同定するためのアッセイシステム及びスクリーニング方法、更には、TLR14活性化をモニタする方法が包含される。本願明細書の「アッセイシステム」とは、1つ以上の特定の事象を検出及び/又は測定するアッセイを実施し、その結果を分析するために必要な全ての構成要素を含むシステムである。
【0075】
必須ではないが好ましくは、本発明において使用するスクリーニングアッセイは、ハイスループット又はウルトラスループットのアッセイであって、それにより自動化された費用効果的なスクリーニング手段が提供される。
【0076】
特に明記しない限り、本願明細書において用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明の技術分野の当業者に一般に理解されているとおりの意味で用いられる。
【0077】
本願明細書全体にわたり、文脈により特定されない限り、用語「含んでなる」若しくは「含有する」、又はその活用形である「含んでなり」若しくは「含んでなること」、「含有し」若しくは「含有すること」などの用語は、記載された整数又は整数の群を包含することを意味し、他のいかなる整数又は整数の群をも除外するものではないものと理解すべきである。
【0078】
以下の具体的実施形態更には図面を参照しながら本発明を記載するが、それらは説明のためにのみ提供されるものであり、本発明を限定するためのものとして解釈すべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】TLR14がLPSシグナル伝達を増強することを示す。ヒト星状細胞腫細胞(U373)を、NF−kBレポーター構築物と共に、50ngの空のコントロールベクター又はTLR14発現プラスミドでトランスフェクションした。24時間後、細胞を回収する前に、LPS(100ng/ml)により6時間刺激し、レポーター遺伝子活性を分析した。U373を回収する前に、過度に発現したTLR14の有無において、LPS(100ng/ml)により刺激し、レポーター遺伝子活性を分析した。非形質導入細胞と比較した結果、TLR14は、LPS誘導性のNF−kBレポーター遺伝子の発現を増強することが示された。
【図2】TLR14のノックダウンにより、U373星状細胞腫細胞におけるLPS誘導性のIkB分解が打ち消されることを示す。U373を、TLR14(Dharmacon社)に特異的なsiRNAでトランスフェクションした。48時間後に、TLR14のノックダウンを、ウエスタンブロッティングにより確認した(図2A)。非ターゲティングsiRNAをネガティブコントロールとして用いて、TLR14に対するsiRNAが特異的であることを確認した。示される時間にわたり、LPS(100ng/ml)で細胞を処理し、IkB分解をウエスタンブロッティング(図2B)で測定した。TLR14のsiRNAノックダウンにより、LPS誘導性のIkB分解が顕著に減少した。図2(A)及び2(B)は、2つの別々の実験を表す。
【図3】U373星状細胞腫細胞における、LPS誘導性のp38リン酸化に対する、TLR14のsiRNAの効果を示す。ネガティブコントロールとして、TLR14(Qiagen社)に特異的なsiRNA、又は非ターゲティングsiRNAのいずれかで、U373をトランスフェクションし、TLR14に対するsiRNAが特異的であることを確認した。示される時間にわたり、LPS(100ng/ml)で細胞を処理し、p38リン酸化をウエスタンブロッティングで測定した。TLR14のsiRNAノックダウンにより、p38のリン酸化が減少した。
【図4】TLR14をトランスフェクションしたHEK293細胞における、TLR14とLPSとの結合を示す。HEK293細胞を、TLR14によってトランスフェクションした。24時間後に細胞を溶解させ、室温で1時間、ビオチン化LPS(1μg/ml)単独、又は非標識LPSとの組み合わせによりインキュベートした。溶解物を次に、洗浄前に更に1時間、ストレプトアビジンアガロースと共にインキュベートし、ウエスタンブロッティングにより分析した。図4(a)においては、5倍過剰の非標識のLPSを含有させた。図4(b)においては、25倍及び50倍過剰の非標識のLPSを、コントロールサンプル中に含有させた。
【図5】TLR14のノックダウンにより、LPSに応答してわずかにIkB分解が阻害されることを示す。
【図6】TLR14のノックダウンにより、THP1細胞からのIL−6産生及びTNF−αサイトカイン産生の減少が生じることを示す。
【図7】サイトゾル及び膜画分のウエスタンブロッティングを示す。Tはトランスフェクション細胞を示し、一方NTは非トランスフェクション細胞を意味する。
【図8】マウスの脳におけるTLR14発現を示すウエスタンブロット分析である。
【図9】THP1細胞における内因性TLR14の局在化を示す。膜、サイトゾル及び全細胞抽出物を、Dounce型ホモジナイザーで破砕し、超遠心分離することにより調製した。サンプルを次に、SDS−PAGE及びウエスタンブロッティングを使用した、TLR14発現の解析に供した。
【図10】配列番号1として定義されるヒトToll様受容体14のアミノ酸配列を示す。
【図11】可溶化型のToll様受容体14の予測アミノ酸配列を示す(配列番号2として定義)。
【図12】マウス型のToll様受容体14のアミノ酸配列を示す(配列番号3と定義)。
【図13】ヒト型のToll様受容体4のアミノ酸配列を示す(配列番号4として定義)。
【発明を実施するための形態】
【0080】
Toll様受容体14(TLR14)は、ロイシンリッチリピートを含んでなるタンパク質であり、ヒト型の場合、以下に示すように配列番号1のアミノ酸配列を含む。
【0081】
【化1】
可溶化型のToll様受容体14の予測アミノ酸配列を、配列番号2として示す。
【0082】
【化2】
マウス型のToll様受容体14のアミノ酸配列も定義されている。以下に配列番号3として示す。
【化3】
本発明の特定の実施形態では、配列番号1において定義されるヒト型のToll様受容体14を、配列番号3において定義されるマウス型のToll様受容体14で置換するのが適当であると考えられる。
【0083】
TLR14は、配列番号1において定義するように、12のロイシンリッチリピート、シグナル配列及び推定上の膜貫通領域を含む。TLR14の発現は、脳、肺及び卵巣において観察される。TLR14の発現は、微生物由来の生成物(例えばLPS)により増強される。
【0084】
発明者らは、TLR14の過剰発現により、LPS誘導性のシグナル伝達が増強され、それにより、転写制御因子NF−kBの転写及びIFN制御因子−3(IRF3)の活性化が上方制御されることを見出した。またLPSシグナル伝達(TLR4媒介)により、分裂促進因子活性化プロテインキナーゼ(MAPKs)、p38、c−jun、N末端キナーゼ(JNK)及びp42/44が活性化する。
【0085】
驚くべきことに、発明者らは、Toll様受容体14が、TLR4との共受容体として機能することを見出した。理論に拘束されないが、発明者らは、この予想されたTLR14の機能として、以下のとおりを考えている:
(i)TLR14の一過性の発現により、LPSシグナル伝達が増強され、
(ii)siRNAによるTLR14のノックダウンにより、LPSシグナル伝達が阻害され、
(iii)LPSがTLR14と結合し、
(iv)TLR14が膜画分、更には脳において発現し、EAEモデルマウスにおける炎症において、TLR14の発現レベルの強化が観察され、すなわちTLR14が特定の疾患及び炎症症状において上方制御されうることを示唆する。
【0086】
また、理論に拘束されないが、発明者らは、エンドトキシンにより媒介されるシグナル伝達におけるTLR14の関与は、TLR14のエンドトキシン(例えばLPS)との複合体形成に起因すると予測する。TLR14は、共受容体としてTLR4と会合する。TLR4は、エンドトキシンと直接結合しない。むしろ、MD−2がエンドトキシンと相互作用し、これがTLR4/MD−2複合体を形成し、それによりTLR4依存性の細胞刺激が生じる。この役割において、TLR14はCD14と同様の方法で機能し、またそれは膜結合型及び可溶化型として存在することも知られている。すなわち、TLR14から、TLR4とMD−2で予め形成された複合体へとLPSが移される。TLR4/MD−2複合体に対するLPSの結合により、PAMP LPSによるTLR4の活性化、更にTLR4のTIRドメインから生じる下流シグナル伝達を生じさせる。発明者らは、TLR14とCD14との配列相同性が極めて低いにもかかわらず、それらが構造的な相同性を示すことを見出している。例えば、CD14は一連のロイシンリッチリピートを有し、またこの一連のロイシンリッチリピートはTLR14の構造中に明らかに存在する。更に、CD14は、Toll様受容体の外部領域に存在するのと同じソレノイド構造を有する。CD14は、TIRシグナル伝達ドメインを有しないという点で、Toll様受容体とは異なる。
【0087】
ヒトToll様受容体4(TLR4)タンパク質のアミノ配列は過去に同定されており、配列番号4として以下に示す。
【0088】
【化4】
TLR4と、共受容体としてのTLR14の会合を阻害する調節化合物の同定を可能にする、様々なアッセイ方法を提供するにあたり、本発明では、異常な免疫反応において生じうる、TLR4により媒介されるシグナル伝達を阻害、抑制又は下方制御する手段を提供する。かかるTLR4により媒介されるシグナル伝達は、LPSのTLR4への結合に続く敗血症の原因となる。
【0089】
本発明は更に、TLR4により媒介される、及び特にLPS応答により媒介される、免疫反応を抑制する際に有用性を有する調節化合物の提供に関する。
【0090】
抗体及び関連する結合化合物:
特定の実施形態では、本発明は、例えばTLR14に対するエンドトキシン(例えばLPS)の結合を防止することによるか、又は、TLR14とTLR4とが複合体を形成して共受容体複合体を形成することを抗体により防止することによる、TLR14の生物学的機能的な活性の阻害への、抗体及び関連する結合化合物の使用に関する。
【0091】
特定の実施形態では、TLR14の生物学的機能を阻害する化合物は、抗体、又は抗体に由来する結合化合物である。
【0092】
「抗体」とは免疫グロブリンであり、天然由来であるか、又は部分的若しくは全部が合成されたものであってもよい。上記の用語はまた、抗体の結合ドメイン、又は抗体の結合ドメインと機能的に相同性を有するいかなるポリペプチド、タンパク質又はペプチドをも包含する。前記ポリペプチド又はタンパク質は天然の給源に由来してもよく、又はそれらは部分的若しくは全体的に合成されたものであってもよい。抗体の例としては、免疫グロブリンアイソタイプ(例えばIgG、IgA、IgM、IgEなど)、並びにそれらのアイソタイプサブクラス(例えばIgG1、IgG2及びIgG3)が挙げられる。上記の用語は更に、抗原結合ドメインを含んでなる抗体断片も包含し、ゆえに、結合特性を示す(Fab、F(ab’)2、scFv、Fv、dAb、Fd、断片及び二重特異性抗体。
【0093】
様々な実施形態では、本発明に使用する抗体はポリクローナル抗体、キメラ抗体又は合成された若しくは合成的な抗体であってもよい。特定の実施形態では、上記抗体はラクダ抗体(特にラクダ重鎖抗体)であってもよい。更に、上記抗体断片は、ラクダ重鎖抗体に由来するドメイン抗体又はナノボディでもよい。特定の実施形態では、上記抗体はサメ抗体又はサメ由来の抗体であってもよい。
【0094】
特定の実施形態では、上記抗体は「単離された抗体」であり、その意味は、上記抗体が、
(1)通常それとともに存在する少なくとも幾つかのタンパク質を含まず、
(2)同じ給源(例えば同じ種)からの他のタンパク質を実質的に含まず、
(3)異なる種に由来する細胞により発現され、又は、
(4)天然には生じない、ということである。
【0095】
抗体は多くの方法で修飾できるため、用語「抗体」とは、必要な特異性を有する結合ドメインを有する、あらゆる結合メンバー又は物質を包含するものとして解釈すべきである。本発明の抗体は、モノクローナル抗体、又はその断片、派生物、機能等価物又は相同物であってもよい。上記の用語には、免疫グロブリン結合ドメインを含んでなるあらゆるポリペプチドも包含され、天然由来、又は完全若しくは部分的合成由来であってもよい。したがって、もう1つのポリペプチドと融合した免疫グロブリン結合ドメイン(又は等価物)を含んでなるキメラ分子も包含される。キメラ抗体のクローニング及び発現は、欧州特許出願公開第0120694号及び欧州特許出願公開第0125023号の明細書に記載されている。
【0096】
抗体の定常領域は、いかなる適切な免疫グロブリンサブタイプでもよいが、抗体サブタイプがIgG1であることが好ましい。しかしながら、別の実施形態では、ヒト免疫グロブリン分子を用いる場合、抗体のサブタイプはクラスIgA、IgM、IgD及びIgEであってもよい。かかる抗体は更に、いかなるサブクラス(例えばIgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3及びIgG4)に属するものであってもよい。
【0097】
全長抗体の断片は、抗原と結合する機能を発揮できる。かかる結合断片の例としては、VL、VH、CL及びCH1抗体ドメインを含むFab断片、単一の抗体のVL及びVHドメインからなるFv断片、F(ab’)2断片(2つのFab断片の結合を含んでなる二価断片)、単鎖Fv分子(scFv)(VH領域とVL領域がペプチドリンカーにより連結され、それにより2つのドメインが会合し、抗原結合部位を形成する)、又は二重特異的抗体(遺伝子融合によって構築された、多価若しくは多重特異的断片でもよい)が挙げられる。
【0098】
本発明に用いられる抗体断片又はポリペプチド(例えばTLR14又はTLR4特異的な抗体断片)(後者は、エピトープの位置でTLR4と結合して、共受容体としてのTLR14とTLR4との複合体の形成を防止する、TLR14の生物学的機能を阻害する抗体の場合である)は全体的には、連続するアミノ酸残基であって、少なくとも5〜7の連続するアミノ酸、通常少なくとも約7〜9の連続するアミノ酸、典型的に少なくとも約9〜13の連続するアミノ酸、好ましくは少なくとも約20〜30若しくはそれ以上の連続するアミノ酸、最も好ましくは少なくとも30〜40若しくはそれ以上の連続するアミノ酸である。
【0099】
かかる抗体若しくはポリペプチドの、又はTLR14若しくはTLR4特異的な抗体断片の「誘導体」とは、タンパク質のアミノ酸配列を変化させることにより修飾される抗体又はポリペプチドを意味し、それらは例えば、タンパク質をコードする核酸の操作、又はタンパク質自体を変化させることによって得られる。天然のアミノ酸配列のかかる派生物は、1つ以上のアミノ酸の挿入、付加、欠失及び/又は置換を含んでもよく、好ましくは、TLR14及び/又はTLR4の結合活性を有するペプチドが提供される態様である。好ましくは、かかる誘導体は25個以下、より好ましくは15個以下、より更に好ましくは10個以下、より更に好ましくは4個以下、最も好ましくは1又は2個のアミノ酸のみのアミノ酸の挿入、付加、欠失及び/又は置換を含む。
【0100】
本発明の結合アッセイに用いられる抗体は、多くの技術により調製できる。例えば、ファージディスプレイベースのバイオパニングアッセイなどのコンビナトリアルスクリーニング技術を用いて、TLR14又はTLR4に存在する結合エピトープに対する結合特性を有するアミノ酸配列を同定できる。かかるファージディスプレイのバイオパニング技術は、ファージディスプレイライブラリを応用するものであり、糸状の微生物の表面における抗体結合断片のディスプレイを介した、免疫選抜を模倣する手順において、適切なエピトープ結合リガンドを同定する方法である。特異的な結合活性を有するファージが選抜される。選抜されたファージはその後、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体の産生において使用できる。
【0101】
特定の実施形態では、上記の抗体はモノクローナル抗体であり、それらは、細胞を連続培養して抗体分子を産生させるためのいかなる適切な方法を使用して調製してもよい。適切な方法は当業者に周知であり、例えばケーラー及びミルシテインの方法(Kohlerら、Nature,256,495−497.1975)が挙げられる。更に、キメラ抗体又はCDR移植抗体も本発明の範囲内に包含される。特定の実施形態では、本発明の抗体は、宿主細胞における組み換えDNAの発現によって調製してもよい。
【0102】
特定の実施形態では、上記のモノクローナル抗体はヒト抗体であってもよく、トランスジェニック動物(例えばトランスジェニックマウス)を使用して調製される。それは、ヒト重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子座が選択的に発現され、内在性マウス免疫グロブリン遺伝子の発現を欠失又は抑制されるように遺伝子組み換えがなされ、それにより完全なヒト抗体の産生が行われる。
【0103】
特定の実施形態では、上記の抗体はヒト化抗体であってもよい。ヒト化抗体は、例えば、米国特許第5585089号にて説明されるWinterの方法によって調製できる。ヒト化抗体は、モノクローナル抗体(例えばTLR14又はTLR4特異的な抗体)の超可変領域と、ヒト抗体の定常領域と有する修飾された抗体であってもよい。すなわち、上記結合メンバーはヒト定常領域を含んでなってもよい。超可変領域以外の可変領域は、ヒト抗体の可変領域に由来してもよく、及び/又は、モノクローナル抗体(例えばTLR14又はTLR4特異的な抗体)に由来してもよい。このような場合、全ての可変領域はマウスモノクローナル抗体に由来してもよく、かかる抗体はキメラ化されていると称される。キメラ抗体を調製する方法は公知である。かかる方法としては、例えば米国特許第4816397号及び第4816567号(それぞれBoss及びCabilly)に記載の方法が挙げられる。
【0104】
モノクローナル抗体及び他の抗体を取得し、また組み換えDNA技術を使用して、元の抗体の特性が維持された他の抗体又はキメラ分子を産生することが可能である。かかる技術では、抗体の免疫グロブリン可変領域又は相補性決定領域(CDRs)をコードするDNAを、異なる免疫グロブリンの定常領域、又は定常領域+フレームワーク領域に導入する操作を行う。例えば、欧州特許出願公開第0184187号、英国特許出願公開第2188638A号、又は欧州特許出願公開第0239400号を参照のこと。ハイブリドーマ又は抗体を産生する他の細胞を、遺伝子突然変異又は他の改変のために使用してもよく、その際、産生される抗体の結合特異性が変化してもよく、又は変化しなくてもよい。
【0105】
特定の実施形態では、TLR14抑制性化合物が抗体である場合、当該抗体は治療上有効量で被験者に投与される。特定の実施形態では、上記治療上有効量は、1μg/kg〜20mg/kg、1μg/kg〜10mg/kg、1μg/kg〜1mg/kg、10μg/kg〜1mg/kg、10μg/kg〜100pg/kg及び500pg/kg〜1mg/kgから選択される範囲で抗体を含有する。
【0106】
抗体の産生:
TLR14又はTLR4に存在するエピトープとの親和性及び結合特性を有する、TLR14の機能的活性を制限する抗体を産生するための具体的方法は、上記のとおりである。
【0107】
また本発明の、及び本発明に用いられる抗体又は抗体断片は、化学合成によって、完全に、又は部分的に調製してもよい。抗体は、確立された、標準的な液体、又は好ましくは固相ペプチド合成方法に従い容易に調製でき、それらの一般的説明は一般に利用可能であり、当業者に周知である。更に、それらは溶液中で調製してもよく、又は固相、液相及び溶液中での化学合成の任意の組合せによって調製してもよい。
【0108】
本発明への使用に適する抗体又は抗体断片を調製するための他の簡便な方法は、それらをコードする核酸を、発現システム中にて核酸を用いて発現させることである。
【0109】
本発明で使用される核酸は、DNA又はRNAを含んでなってもよく、完全に、又は部分的に化学合成されたものであってもよい。好適な態様では、本発明で用いられる核酸は、上記した抗体又は抗体断片をコードする。当業者であれば、本発明の抗体又は抗体断片を十分に提供できる態様で、かかる核酸へ置換、欠失及び/又は付加を決定できる。
【0110】
本発明に用いられる抗体又は抗体断片をコードする核酸配列は、利用可能な核酸配列及びクローンが存在する場合には、本願明細書に記載された技術情報及び引用文献、並びに従来技術において公知の技術(例えば、Sambrookら、(1989)及びAusubelら、(1992)を参照)を使用して、当業者によって容易に調製できる。これらの技術には、
(i)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、かかる核酸(例えばゲノム給源由来)の試料を増幅すること、
(ii)化学合成、又は
(iii)cDNA配列の調製。抗体断片をコードするDNAは、当業者に公知のあらゆる適切な方法で調製し、使用できる。その方法は、コードDNAを採取し、発現される部分の両側の適切な制限酵素認識部位を同定し、上記DNAから上記部分を切り出すことにより行われる。上記の部分を更に、市販の標準的な発現システムの適切なプロモータに、作動可能に連結させることができる。他の組換え方法は、適切なPCRプライマーを用いてDNAの関連部分を増幅することである。上記配列への修飾を行うことが可能であり、例えば、部位特異的突然変異導入を用いて、修飾されたペプチドを発現させるか、又は上記核酸の発現に用いる宿主細胞のコドン使用頻度に適合させることができる。
【0111】
上記の核酸は、プラスミド、ベクター、上記のような少なくとも1つの核酸を含む転写又は発現カセットの形の構築物として構成させることができる。上記の1つ以上の構築物を導入することにより、上記の構築物を組換え宿主細胞内に含有させてもよい。遺伝子発現は、適当な条件下で核酸を含む組換え宿主細胞を培養することによって、簡便に実施できる。抗体又は抗体断片を発現させて産生させた後、それらを、任意の適切な技術を、適切に使用して、単離及び/又は精製することができる。
【0112】
様々な異なる宿主細胞におけるクローニング及びポリペプチドの発現システムは、周知である。好適な宿主細胞としては、細菌、哺乳動物細胞、酵母、昆虫及びバキュロウイルスの細胞系が挙げられる。異種ポリペプチドの発現技術に利用可能な哺乳動物の細胞系としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒーラ細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、NS0マウス骨髄腫細胞などが挙げられる。一般的に好適な細菌宿主は、大腸菌である原核生物(例えば大腸菌)細胞における抗体及び抗体断片の発現は、当該技術において確立されている。培養液中の真核生物細胞における発現技術も、結合メンバーの産生用のオプションとして当業者が利用できる。
【0113】
例えば、一般的な抗体産生方法は当該技術分野の当業者に周知であり、例えばKohler及びMilstein(1975)Nature 256:495−497、米国特許第4376110号、Harlow及びLane,Antibodies:a Laboratory Manual,(1988)Cold Spring Harborなどに記載されている(それらの開示内容を本願明細書に援用する)。
【0114】
例えば、組換え抗体分子の調製技術は上記の引用文献、更には欧州特許出願公開第0623679号及び第0368684号に記載されている(それらの開示内容を本願明細書に援用する)。
【0115】
本発明の特定の実施形態では、抗体の重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインをコードするインサートを含んでなる組換え核酸を使用する。定義としては、かかる核酸は、一本鎖のコーディング核酸、前記コーディング核酸及びそれに対して相補的な核酸を含む二本鎖核酸、又はこれらの相補的な(一本鎖)核酸自体を含んでなる。
【0116】
更に、抗体の重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインをコードする核酸は、酵素的に、又は化学的に合成された核酸であってもよく、それらは天然の重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメイン、又はそれらの変異体の確実なコーディング配列を有する。
【0117】
組み換えDNA技術を用いて、本発明の抗体を改良することができる。すなわち、キメラ抗体を構築することにより、診断若しくは治療用途において、その免疫原性を減少させることが可能となる。更に、抗体をヒト化するのと同様の技術でCDR移植を行い、抗体を改変することによって、例えばブタなどのトランスジェニック生物の体内での免疫原性を最小にすることができる。かかる技術の例は、Winterの欧州特許出願公開第0239400号に記載されている。
【0118】
レシピエントにおける免疫原性を減少させるため、本発明では、ヒト定常ドメインに融合させた形で、抗体の重鎖可変ドメインをコードするインサートを含んでなる組換え核酸を使用できる。同様に、本発明は、ヒト定常ドメインのκ又はλ領域に融合させた形で、抗体の軽鎖可変ドメインをコードするインサートを含んでなる組み換えDNAに関する。
【0119】
抗体遺伝子の突然変異導入によって抗体を産生させ、抗体の人工レパートリを生じさせてもよい。この技術により、抗体ライブラリの調製が可能となる。抗体ライブラリはまた、市販品を利用してもよい。ゆえに、本発明では、免疫グロブリン源として免疫グロブリンの人工レパートリ(好ましくは人工scFvレパートリ)を使用して、TLR14又はTLR4の特性を有する結合分子を同定するのが好適である。
【0120】
抗体選抜システム:
免疫グロブリン(TLR14又はTLR4と結合し、TLR14の生物学的機能を阻害することができ、ゆえに本発明の方法で使用できる)は、当業者に公知のあらゆる技術を使用して同定できる。かかる免疫グロブリンは、免疫グロブリンポリペプチドの人工レパートリを含んでなるライブラリから簡便に分離できる。「レパートリ」とは、核酸のレベルにおいて、1つ以上の鋳型分子のランダム、セミランダム又は誘導されたバリエーションから生じさせ、多数の結合特性を生じさせた、分子のセットのことを指す。レパートリを生じさせるための方法は、従来技術において周知である。
【0121】
あらゆるライブラリ選抜システムを、本発明と組み合わせて使用できる。大きいライブラリから所望のメンバーを単離するための選抜プロトコルは、従来技術において公知であり、ファージディスプレイ技術がその典型である。かかるシステム(多様なペプチド配列が糸状バクテリオファージの表面にディスプレイされる)は、抗体断片(及びそれらをコードするヌクレオチド配列)のライブラリの作製に有用であることが見出されており、それにより、標的抗原と結合する特異的な抗体断片のin vitro選抜及び増幅が可能となる。VH及びVL領域をコードするヌクレオチド配列を、それらを大腸菌のペリプラズム誘導するためのリーダー配列をコードする遺伝子断片と連結し、その結果、得られる抗体断片はバクテリオファージの表面に、典型的にはバクテリオファージのコーティングタンパク質(例えば,pIII又はpVIII)に融合された形でディスプレイされる。あるいは、抗体断片はλファージのカプシド(ファージ本体)に外部的にディスプレイされる。ファージベースのディスプレイシステムの効果としては、それらが生物学的なシステムであるため、選択されたライブラリのメンバーを、細菌細胞中で、選択されたライブラリのメンバーを含んでなるファージを単に増殖させることにより増幅できることである。更に、ポリペプチドのライブラリのメンバーをコードするヌクレオチド配列がファージ又はファージミドベクターに含まれるため、その塩基配列決定、発現及び更なる遺伝子操作が比較的容易である。
【0122】
バクテリオファージ抗体ディスプレイライブラリの構築方法、及びλファージ発現ライブラリの構築方法は周知技術である(例えばMcCaffertyら、(1990)Nature 348,552−554)。特に有利な1つの方法としては、scFvファージ−ライブラリの使用である(例えばHustonら、1988,Proc.Natl.Acad.Sci USAを参照のこと)。
【0123】
ファージ若しくは他のクローニングされたライブラリの使用の代替としては、選択された標的(例えば本発明においてはTLR2エピトープ)で免疫された動物のB細胞に由来する核酸(好ましくはRNA)を使用することである。
【0124】
V領域及びC領域のmRNAを単離することにより、抗体断片(例えばFab又はFv)を細胞内で発現させることができる。簡潔には、RNAを免疫された動物のB細胞(例えば免疫されたマウスの脾臓又はラマの循環B細胞に由来する)から分離し、PCRプライマーを用いてRNAプールから選択的にVH及びVLのcDNAを増幅させる。このようにして得られたVH及びVL配列を連結し、scFv抗体を構成させる。PCRプライマー配列は、公開されているVH及びVL配列に基づく配列でもよい。
【0125】
ペプチド擬態物:
ペプチドの類縁体(例えばペプチド擬態物)は、鋳型のペプチドの代表的な特性を有する、非ペプチド化合物である。かかるペプチドの類縁体は典型的には、コンピュータによる分子モデリングを使用して開発される。TLR14との親和性及び結合特性を有し、エンドトキシン(例えばLPS)と結合して、共受容体複合体としてTLR4と会合するTLR14の生物学的機能活性を阻害するペプチドと、構造的に類似するペプチド擬態物を使用して、かかるTLR14に対する抑制機能を有すると決定されたポリペプチド及びタンパク質に類似する、予防的及び治療的効果を発揮させてもよい。
【0126】
ペプチド擬態物は典型的には、鋳型ペプチドと構造的に類似するが、周知の代替的な結合で、1つ以上のペプチド結合が置換されている。例えば、TLR14エピトープに対する結合特性を有するペプチドを、アミド結合の置換、非ペプチド部分の導入、又は骨格の環化により修飾する。最適には、システインが存在する場合、この残基のチオールをキャッピングして、遊離スルフェート基の損傷を保護する。ペプチドは更に、天然の配列の修飾により、当該ペプチドのプロテアーゼによる攻撃から保護してもよい。
【0127】
最適には、本発明のTLR14抑制性化合物として使用されるペプチドを、少なくとも1つのC末端及び/又は、N末端のキャッピング、及び/又はシステイン残基のキャッピングを用いて、更に修飾してもよい。更に、本発明に用いられるペプチドを、アセチル基により、N末端残基のキャッピングを行ってもよい。最適には、本発明のペプチド、及び本発明で用いられるペプチドを、アミド基により、C末端のキャッピングを行ってもよい。最適には、システインのチオール基を、アセタミドメチレン基でキャッピングする。
【0128】
コンビナトリアルライブラリ:
コンビナトリアルライブラリ技術(Schultz,JS(1996)Biotechnol.Prog.12:729−743)により、ポリペプチドの活性(本発明ではTLR14の生物学的活性)を調節する能力に関して、非常に膨大な数の異なる物質を試験する効率的な方法が提供される。活性の調節、あるいはそれに関するスクリーニングの前に、試験化合物を、ポリペプチドと相互作用する能力に関して、例えば酵母ツーハイブリッドシステム(ポリペプチドと試験化合物の両方をコードする核酸が、酵母において発現できることが必要)により選抜してもよい。これは、試験物質が実際にポリペプチドの活性を調節する能力を有するかの試験を行う前の、大雑把なスクリーニングとして使用できる。
【0129】
本発明のアッセイに添加できる試験物質又は化合物の量は通常、使用する化合物のタイプに応じて、試行錯誤により決定される。典型的には、推定の阻害化合物を約0.01〜100nMの濃度、例えば0.1〜10nMで使用できる。ペプチドが試験物質である場合は、より高い濃度で使用できる。
【0130】
抑制性ポリペプチドの産生:
特定の更なる態様において、LPSと結合して、TLR4と複合体形成する、TLR14の生物学的機能を阻害する化合物は、ポリペプチドである。適切なポリペプチドの発現、単離及び精製は、あらゆる適切な技術によって実施できる。
【0131】
ポリペプチドを産生する方法は、ポリペプチドの発現を促進する条件下で、当該ポリペプチドをコードする組換え発現ベクターで形質転換した宿主細胞を培養するステップと、次に培養液から発現されたポリペプチドを回収するステップとを有してなる。当業者であれば、発現されたポリペプチドを精製する手順が、使用する宿主細胞のタイプ、及び、当該ポリペプチドが細胞内型か、膜結合型か又は宿主細胞から分泌される可溶化型であるか、などの要因に応じて変化しうることを認識するであろう。
【0132】
いかなる適切な発現システムを使用してもよい。当該ベクターは、本発明のポリペプチド又は断片をコードするDNAを、適切な転写若しくは翻訳調節ヌクレオチド配列(例えば哺乳動物、鳥類、微生物、ウィルス、細菌又は昆虫遺伝子由来)に作動可能に連結された形で含んでなる。制御配列が機能的にDNA配列と関連しているとき、当該ヌクレオチド配列は作動可能に連結されているという。すなわち、プロモータのヌクレオチド配列がDNA配列の転写を制御する場合、当該プロモータヌクレオチド配列は、DNA配列に作動可能に連結している。一般には、所望の宿主細胞(大腸菌)において複製する能力を付与する複製開始点、及び形質転換体を同定するための選抜遺伝子を、上記発現ベクターに組み込む。
【0133】
更に、適当なシグナルペプチド(天然若しくは非相同)をコードする配列を、発現ベクターに組み込んでもよい。シグナルペプチド(分泌リーダー)のDNA配列を、本発明の核酸配列にインフレームで融合させ、DNAを最初に転写させ、次にmRNAを翻訳させてシグナルペプチドを含んでなる融合タンパク質を産生させてもよい。目的の宿主細胞において機能的なシグナルペプチドは、ポリペプチドの細胞外への分泌を促進する。シグナルペプチドは、翻訳の間にポリペプチドから切断除去されるが、細胞からのポリペプチドの分泌を可能にする。
【0134】
好適なポリペプチドの発現に用いる宿主細胞としては、高等真核生物細胞及び酵母が挙げられる。原核細胞系も適切である。哺乳動物細胞、特にCHO細胞は、宿主細胞としての用途に特に好適である。哺乳動物、原核生物、酵母、菌類及び昆虫細胞を宿主として用いる際の、適切なクローニング及び発現ベクターは、例えばPouwelsら、Cloning Vectors:A Laboratory Manual,Elsevier,New York,(1986)(ISBN0444904018)に記載されている。
【0135】
小分子:
特定の更なる実施態様において、TLR14の生物学的機能を阻害する化合物は、小分子であってもよい。
【0136】
非ペプチド性の「小分子」は通常、多くのin vivoでの医薬用途において好適である。したがって、TLR14発現又は生物学的機能を阻害するものとして、本発明のアッセイ方法のいずれか1つに従い同定された擬態物、又は擬態化合物を、医薬用途に応じて適宜設計してもよい。周知の薬理学的活性化合物の擬態物を設計することは、「リード」化合物をベースとする医薬開発のための、周知のアプローチである。これは、上記活性化合物の合成が困難若しくは高価である場合、又は、それが特定の投与方法にとり不適当である場合(例えばペプチドは、消化管内のプロテアーゼにより急速に分解する傾向を有するため、経口投与用組成物の活性成分としては不適切である)に好適であると考えられる。擬態物の設計、合成及び試験を用いることにより、多数の分子を、特定の性質に関してランダムスクリーニングする煩雑さを回避できる。
【0137】
所定の目的の特性を有する化合物から擬態物を設計する際、幾つかのステップが一般的に採られる。第1に、目的の特性の決定にとり決定的及び/又は重要である化合物の特定部分を決定するステップである。ペプチドの場合、これはペプチドのアミノ酸残基を系統的に変異させること(例えば各残基を順次置換すること)によって実施できる。化合物の活性領域を構成するこれらの部分又は残基は、その「ファルマコフォア」として公知である。
【0138】
ファルマコフォアが決定された後、その構造を、その物理的性質に従って、例えばスペクトル解析、X線回折データ及びNMRなどの様々なソースから得た、例えば立体化学、結合、サイズ及び/又は荷電などのデータを使用してモデル化する。コンピュータ分析、類似性マッピング(原子間の結合よりも、むしろ荷電及び/又はファルマコフォアの量をモデル化する)、及び他の技術を、このモデリングプロセスで使用できる。
【0139】
この方法の変法において、リガンドの三次元構造及びその結合パートナーをモデル化する。リガンド及び/又は結合パートナーが結合形態を変化させる場合、これは特に有用であり、そのモデルは擬態物の設計に利用できる。
【0140】
次に、ファルマコフォアを模倣する化学基がグラフトされている鋳型分子を選抜する。鋳型分子及びそこにグラフトされた化学基は、当該擬態物が容易に合成でき、薬理学的に許容できると考えられ、in vivoで分解されず、一方、リード化合物の生物学的活性が維持されるものを、簡便に選択できる。この方法によって発見された1つ以上の擬態物を次に、それらが目的の特性を有するか否か、又はそれらがそれをどの程度示すかに関してスクリーニングできる。更なる最適化又は変形を実施して、in vivo又は臨床試験のための、1つ以上の最終的な擬態物を得ることができる。
【0141】
抑制性核酸分子:
本発明は、TLR14遺伝子産物の発現を抑制する化合物又は組成物を投与することによって、エンドトキシンにより媒介されるTLR4媒介性のシグナル伝達を抑制する方法を包含する。
【0142】
TLR14の発現抑制は、当業者に周知の多くの技術を使用して実施できる。例えば、限定されないが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスDNA、アンチセンスRNA、リボザイム、iRNA、miRNA、siRNA、shRNAからなる群から選択される抑制性の核酸により、抑制が媒介されうる。
【0143】
すなわち、特定の更なる態様では、本発明は、Toll様受容体14の発現を遮断する、治療上有効量の抑制性核酸を被験者に投与することによって、TLR4媒介性の炎症症状の予防及び/又は治療方法を包含する。
【0144】
本願明細書に定義され、TLR14遺伝子の発現に関して用いられる用語「遮断する」び「遮断」とは、Toll様受容体14タンパク質の発現に結びつく少なくとも1つの遺伝子の発現を停止させること(サイレンシング、silencing)を意味する。遺伝子サイレンシングとは、遺伝子組み換え以外の機構による、遺伝子発現のスイッチオフのことである。遺伝子サイレンシングは、転写レベルで、又は転写後のレベルで媒介されうる。転写レベルでの遺伝子サイレンシングにより、転写機構が遺伝子に到達できなくなり、それは例えばヒストンの修飾により媒介されうる。転写後の遺伝子サイレンシングにより、遺伝子に由来するmRNAの破壊が行われ、それにより、活性を有する遺伝子産物、例えばタンパク質(本発明ではTLR−14タンパク質)の生成が抑制される。
【0145】
したがって、本発明は更に、有効量の、RNAi(RNA干渉)剤などの抑制性核酸分子を被験者に投与して(例えばリボ核酸(例えばsiRNA又はshRNA)、又はその転写鋳型(例えばshRNAをコードするDNA)を被験者に存在する少なくとも1つの細胞種、組織又は器官に投与して)、TLR14タンパク質の発現を遮断する方法を包含する。
【0146】
特定の更なる実施態様において、上記の抑制性核酸分子は、アンチセンスRNA分子でもよい。アンチセンスとは、遺伝子発現の抑制を行う方法であり、物理的にmRNAと結合し、mRNAからの翻訳を遮断する一本鎖RNA断片が用いられる。
【0147】
抑制性の核酸として使用するための、適当な核酸を調製する技術は、当業者に周知であり、以下に詳細に記載する。
【0148】
本発明の更に別の態様は、TLR4媒介性の炎症症状の治療及び/又は予防用の、Toll様受容体14タンパク質の発現を遮断する薬剤の調製への、抑制性核酸の使用の提供に関する。特定の実施形態では、上記TLR4媒介性の炎症症状は、敗血症である。
【0149】
様々な本発明の態様は、TLR14遺伝子発現のサイレンシングのための抑制性核酸の使用の提供に関する。
【0150】
二本鎖RNAは、RNA干渉(RNAi)又は転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)と称されるプロセスを介して、強力かつ特異的な遺伝子サイレンシングを誘導する。RNAiは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と称される、配列特異的な、マルチコンポーネントのヌクレアーゼにより媒介され、それは、サイレンシングトリガーに相同なメッセンジャーRNAを破壊する。RISCは、二本鎖RNAトリガーに由来する短鎖RNA(約22ヌクレオチド)を含むとして公知である。
【0151】
RNAiは、哺乳動物細胞系をはじめとする多数の系において、機能損失を解析するための方法の1つの選択肢となっている。大部分の哺乳動物細胞系における遺伝子の特異的なサイレンシングには、低分子干渉RNA(siRNA)が用いられる。その理由は、大きいdsRNAs(>30塩基対)では、インターフェロン応答が誘発され、非特異的な遺伝子サイレンシングが生じるからである。
【0152】
使用されるRNAi剤は、小分子のリボ核酸分子(また本明細書では干渉リボ核酸と称す)、すなわちオリゴリボヌクレオチドであり、それらはデュプレックス構造(例えば各々ハイブリダイズした、2つの異なるオリゴリボヌクレオチドか又は単一のリボオリゴヌクレオチド)で存在し、小さいヘアピンを形成してデュプレックス構造を生じさせると考えられる。「オリゴヌクレオチド」とは、約100ヌクレオチド(nt)長を超えないリボ核酸を意味し、典型的には、約75のヌクレオチド長を超えず、特定の実施形態では約70未満のヌクレオチド長である。本願明細書に記載されているように、本発明に用いられるデュプレックス構造の長さは、典型的には約15〜30塩基対であり、好ましくは約15〜29塩基対である。
【0153】
本願明細書の「核酸」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)などのポリヌクレオチド、及び、必要に応じてリボ核酸(RNA)を指すこともある。上記の用語はまた、記載されている実施態様に適用できる場合は、一本鎖(センス又はアンチセンス)及び二本鎖ポリヌクレオチドを包含するものと理解すべきである。
【0154】
核酸又は遺伝子配列に関する「発現」という用語は、遺伝子の転写、及び(適当な場合は)得られるmRNAのタンパク質への翻訳を意味する。すなわち、前後関係から自明のように、タンパク質をコードする配列の発現は、コード配列の転写及び翻訳の結果である。
【0155】
「遺伝子発現の阻害」とは、標的遺伝子に由来するタンパク質のレベル及び/又はmRNA生成物の不存在(又は観察可能な減少)を指す。「特異性」とは、細胞内の他の遺伝子に対して顕著に影響を与えることなく、標的遺伝子を阻害する能力のことを指す。阻害の有無の確認は、例えば当業者に周知の技術を用いて実施することができ、例えば、ノーザンブロット、逆転写、マイクロアレイによる遺伝子発現モニタリング、抗体結合、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウエスタンブロット、標識免疫アッセイ(RIA)、他のイムノアッセイ、及び蛍光活性化細胞分取法(FACS)などが挙げられる。細胞系又は生物体全体における、RNA媒介性の阻害の際、タンパク質産生物が容易にアッセイされるレポーター遺伝子又は薬剤耐性遺伝子を用いることにより、遺伝子発現を容易にアッセイできる。
【0156】
上記のアッセイによってTLR14遺伝子の発現量を定量することにより、本発明の処理を受けない細胞と比較し、10%超、33%超、50%超、90%超、95%超又は99%超の程度の阻害が測定できる。活性薬剤の低い投与量、及び活性薬剤の投与後の長時間の経過により、より少ない割合の細胞において阻害が行われる(例えば少なくとも10%、20%、50%、75%、90%又は95%の標的細胞)。細胞内の遺伝子発現の定量により、標的mRNAの蓄積又は標的タンパク質の翻訳レベルにおける、同様の阻害の程度が示されうる。例えば、阻害効率は、細胞内の遺伝子産物の量を評価することにより測定できる(すなわち、mRNAは抑制性二本鎖RNAのために使用される領域外のヌクレオチド配列を有するハイブリダイゼーションプローブにより検出でき、又は、翻訳されたポリペプチドは、その領域のポリペプチド配列を抗原として作製した抗体により検出できる)。
【0157】
RNAi:
したがって、上記のように、本発明の一態様は、適切なタイプの細胞において、TLR14の発現を阻害又は抑制するための、RNAiの使用方法の提供に関する。「発現の阻害」という用語は、TLR14遺伝子又はコード配列の発現レベルが、コントロールと比較し、少なくとも約2倍、通常少なくとも約5倍(例えば10倍、15倍、20倍、50倍、100倍以上)低下又は阻害されることを意味する。特定の実施形態では、標的TLR14遺伝子/コード配列の発現が効果的に阻害される程度まで、TLR14標的遺伝子の発現が低下する。この場合、標的遺伝子の発現の阻害とは、コード配列(例えばゲノムDNA、mRNAなど)のタンパク質などのポリペプチド産生物(本発明ではTLR14)への転写又は翻訳が阻害されることを意味する。
【0158】
特定の実施形態では、干渉リボ核酸(例えば上記のsiRNA又はshRNA)であるRNAi剤の代わりに、当該RNAi剤は、上記の干渉リボ核酸(例えばshRNA)をコードするものであってもよい。換言すれば、RNAi剤は、干渉リボ核酸の転写鋳型であってもよい。これらの実施形態では、上記転写鋳型は典型的には干渉リボ核酸をコードするDNAである。DNAはベクターに存在してもよく、またプラスミドベクター、ウィルスベクターなどの様々なベクターが公知である。
【0159】
TLR14を発現する細胞へのRNAi剤の投与は、ウィルスベクターによって、又は当業者に公知の他のプロトコルにより実施できる。例えば、上記の核酸をマイクロインジェクション、又はリポソーム融合によって細胞に導入してもよい。例えば、RNAi剤は、標的細胞に直接注入できる。上記RNAi剤は、細胞あたり少なくとも1コピーで送達される量で導入してもよい。上記RNAi剤を高濃度(例えば少なくとも5、10、100、500又は1000コピー/細胞)で投与することにより、より有効な阻害をなしうる。また、特殊な用途においては低用量が有用である。
【0160】
アンチセンス:
また、本発明は、TLR14の発現サイレンシングに用いられるアンチセンス核酸の提供に関する。アンチセンス試薬は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ODN)、特に天然の核酸を化学的に修飾した合成ODNであってもよく、又はRNAとしてのかかるアンチセンス分子を発現する核酸構築物であってもよい。アンチセンス配列は、標的のTLR14遺伝子のmRNAと相補的で、標的のTLR14遺伝子産物の発現を阻害する。
【0161】
アンチセンス分子は様々なメカニズム、例えば、RNAseHの活性化又は立体障害を通じて、翻訳に利用されるmRNAの量を減少させることによりにより遺伝子発現を阻害する。1つのアンチセンス分子又はその組合せを投与してもよく、その組合せは複数の異なる配列を含んでなってもよい。アンチセンス分子は、アンチセンス鎖がRNA分子として生じるように転写方向が調整された適切なベクター中で、標的TLR14遺伝子配列の全て又は一部を発現させることにより、生じさせることができる。あるいは、上記アンチセンス分子は、合成オリゴヌクレオチドである。アンチセンスオリゴヌクレオチドは一般に、少なくとも約7、通常少なくとも約12、好適には少なくとも約16ヌクレオチド長であり、約500以下、通常約50以下、好適には約35ヌクレオチド長以下であり、そのヌクレオチド長は、阻害効率、特異性、交差反応性の欠如などの要因に依存する。短いオリゴヌクレオチド(7〜8塩基長)が、遺伝子発現を強力かつ選択的に阻害しうることが解明されている(Wagnerら、(1996),Nature Biotechnol.14:840−844を参照)。
【0162】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、公知の方法によって化学的に合成できる(Wagnerら、(1993)上記、及びMilliganら、上記、を参照)。それらの細胞内安定性及び結合親和性を改善するために、好適なオリゴヌクレオチドを基に、天然のリン酸ジエステル構造を化学的に修飾する。多くのかかる修飾が文献に記載され、それらは骨格、糖又は複素環状塩基の化学構造を変化させるものである。
【0163】
可溶性タンパク質:
特定の更なる実施態様において、Toll様受容体14の生物学的機能を阻害する化合物は、可溶性タンパク質(典型的には可溶化型のTLR14)である。
【0164】
可溶性ポリペプチドは、それらが発現された細胞から分泌されうる。一般に、可溶性ポリペプチドは、所望のポリペプチドを発現する完全な細胞を、培地から、例えば遠心分離により分離して、所望のポリペプチドの存在に関して培地(上清)をアッセイすることにより同定できる(また、非可溶性の膜結合型の相対物と区別できる)。培地中のポリペプチドの存在は、ポリペプチドが細胞から分泌され、すなわち可溶化型のタンパク質であることを示す。
【0165】
本願明細書に定義される配列番号2のアミノ酸配列は、配列番号1に定義されるTLR14の配列の、可溶化型のアミノ酸配列を示し、すなわち、予測された膜内外領域及びC末端が除去されている。この可溶化型のToll様受容体14は、競争的にLPSと結合することによって、膜結合型Toll様受容体14の生物学的機能を抑制する機能を発揮でき、これにより、膜結合型TLR14とLPSとの会合が減少し、その結果、LPSにより媒介されたToll様受容体4の活性化が減少する。発明者らは、この場合、エンドトキシン(例えばLPS)と会合した可溶化型のTLR14は、共受容体としてTLR4と複合体を形成しないと予想している。
【0166】
特定の実施形態では、可溶化型のTLR14は、融合タンパク質として提供してもよい。特定の実施形態では、前記融合タンパク質は、TLR14受容体の可溶性部分、典型的にはその細胞外領域若しくは一部分(例えば配列番号2のアミノ酸配列を有する)と、それに結合する第2のペプチドを含んでなる。特定の実施形態では、上記の第2のペプチドは免疫グロブリンに由来し、典型的には免疫グロブリン(典型的にヒト免疫グロブリン)の重鎖に由来するFc受容体結合タンパク質である。融合タンパク質中にFc領域を含ませることにより、治療用タンパク質の循環半減期が延長される。
【0167】
可溶性TLR14アミノ酸配列及び免疫グロブリンFc受容体結合部分は、あらゆる適切な方法により結合させてもよく、典型的には共有結合により連結させる。しかしながら、非共有結合を用いてもよい。あるいは、ポリペプチド配列を直接結合してもよく、又は結合部分又はスペーサにより結合してもよい。免疫グロブリンに由来するヒンジ領域などのリンカー部分を用いてもよい。上記のヒンジ領域は、抗原性ポリペプチドを定めるアミノ酸と、免疫複合体のFcR結合ポリペプチドを定めるアミノ酸とを連結するのみならず、免疫複合体の柔軟性を増加させることにより結合特異性を改善する。典型的には、上記リンカーは主にスペーサとして機能する。典型的には、上記リンカーは、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸を含んでなる。上記のリンカーは、例えば1〜20個のアミノ酸を含んでなってもよい。最適には、上記のリンカーは、立体障害のないアミノ酸残基(グリシン及びアラニンなど)を含んでなってもよい。リンカー部分の適切な形態を、以下に記載する。
【0168】
免疫複合体中の抗原性断片を定めるアミノ酸を、そのN(アミノ)末端又はC(カルボキシル)末端のリンカー部分に連結させてもよい。適切なコンジュゲート及び結合方法は当業者に周知であり、例えばFcポリペプチドのシステイン残基を利用したチオエステル架橋によるコンジュゲーションなどが挙げられる。あるいは、コンジュゲーションは例えば、ヘテロ二官能性架橋剤(スクシンイミジルエステル(例えば、3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート又はスクシンイミジルアセチルチオアセテート、Molecular Probe社.Handbook、第5章、5.3節)などの化学的架橋分子)を使用して行ってもよい。
【0169】
Fc結合ポリペプチドへの抗原性断片のコンジュゲーションにおいて有用な更なる技術としては、国際公開第94/04690号パンフレット及び第96/27011号パンフレットに記載の技術が挙げられる。
【0170】
コンジュゲーションは更に、従来技術において周知の組み換えDNA技術を用いた、遺伝子的手段によって実施でき、かかる技術は、例えばSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2 ed.Vol.1,pp.1.101−104,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、及びF.M.Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology,Eds.J.Wiley Press(2006)などに開示されている(それらの関連する部分を本願明細書に援用する)。
【0171】
複合薬剤:
上記のように、本発明の特定の態様は、複合薬剤に関するものであり、その際の組成物又は方法は、TLR14の生物学的機能活性を阻害する化合物の投与に関連し、それらは、CD14活性を抑制するのに有用な、少なくとも1つの更なる治療用化合物と組み合わせて投与される。
【0172】
典型的には、第1の治療組成物と第2の治療組成物は、同時に投与される。特定の実施形態では、上記の第1の治療組成物(すなわちTLR14の機能活性をアンタゴナイズする化合物)と第2の治療化合物は、一度に投与される。特定の更なる実施態様において、それらは順次投与される。
【0173】
特定の実施形態では、上記複合薬剤は、TLR14の機能的阻害剤(例えば抗体、ペプチド、小分子又はペプチド擬態物)を含んでなってもよく、更に以下の少なくとも1つと共に被験者に共投与される:CD14阻害剤、サイトカイン阻害剤(限定されないが例えばIL−1、IL−6、IL−8及びIL−15の阻害剤)、及び腫瘍壊死因子阻害剤、成長因子阻害剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、酵素阻害剤、代謝阻害剤、細胞障害剤、又は細胞増殖抑制剤。
【0174】
当業者であれば、被験者に対する複合薬剤の投与は、治療薬の投与量を低くすることが可能となり、また関連する治療的効果を被験者に提供することが可能となるため、有利であることを認識するであろう。複合薬剤の投与量が少ないことにより、投与化合物に由来する毒性に対する被験者の曝露レベルも低いものとなる。更に、本発明に係る、複合薬剤の一部として投与される第2の治療化合物は、異なる経路を標的とするため、全体的な治療効果が相乗的に向上すると考えられる。治療効果の向上により、必要となる投与量を低くでき、またそれにより毒性を減少させることができる。
【0175】
CD14の生物学的機能的な活性を抑制するのに用いられる第2の化合物としては、限定されないが、可溶化型のCD14、ペプチド阻害剤、小分子、融合タンパク質若しくはリガンド、並びに抗体などが挙げられる。
【0176】
医薬組成物:
本発明は、TLR14の発現又は生物学的機能的な活性を阻害する化合物を含んでなる医薬組成物を包含する。本発明に係る、及び本発明に使用される医薬組成物は、活性成分(すなわちTLR14の発現又は生物学的活性の阻害剤)に加えて、当業者に周知の薬理学的に許容できる賦形剤、担体、緩衝剤又は他の物質を含んでなってもよい。適切な医薬用の担体としては、例えば水、グリセロール、エタノールなどが挙げられる。
【0177】
本発明のモノクローナル抗体又は融合タンパク質は、あらゆる適切な経路を経て、治療を必要とする患者に投与できる。本願明細書において詳述されるように、上記の組成物は、注射又は点滴によって、非経口的に投与されるのが好ましい。好適な非経口投与経路の例としては、限定されないが、静脈内、心臓内、動脈内、腹膜内、筋肉内、経粘膜、腔内、皮下、吸入又は経皮投与経路が挙げられる。
【0178】
更なる投与経路としては、局所及び腸内投与(例えば経粘膜(肺内を含む)、経口、鼻腔内、直腸内)が挙げられる。
【0179】
上記の製剤は、液体(例えば非リン酸緩衝生理食塩水(pH6.8−7.6)を含んでなる)であってもよく、又は凍結乾燥粉末であってもよい。
【0180】
特定の実施形態では、上記の組成物は、注射可能な組成物として送達することができる。静脈内、皮内、皮下投与の場合、上記の活性成分を、パイロジェンフリーの、適切なpH、等張性及び安定性を有する、非経口投与可能な水溶液の形態に調製する。当業者であれば、例えば塩化ナトリウム注射液、リンガー注射液又は乳酸リンガー注射液などの等張ビヒクルを使用して、適切な溶液を調製できる。
【0181】
必要に応じて、防腐剤、安定化剤、緩衝剤、酸化防止剤及び/又は他の添加を含有させてもよい。
【0182】
上記の組成物は、血液などの特定の組織に配置させた微小球体、リポソーム、他の微粒子送達システム、又は持続放出製剤を介して投与してもよい。
【0183】
本発明に使用できる上記の技術及びプロトコルの例、並びに他の技術及びプロトコルは、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th edition,Gennaro,A.R.,Lippincott Williams&Wilkins、 20th edition ISBN0−912734−04−3、及びPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、 Ansel,H.C.ら、7th Edition ISBN0−683305−72−7に記載されており、それらの全開示内容を本願明細書に援用する。
【0184】
投与計画において、本発明の組成物の単回投与、又は当該組成物の複数回投与を含めることができる。上記組成物は更に、本発明の融合タンパク質を投与して治療しようとする症状の治療に用いられる他の治療薬及び薬剤と共に、順次、又は別個に投与できる。
【0185】
実際の投与量、並びに投与の速度及び時間−経路は、治療対象の性質及び重篤度に依存する。治療の処方(例えば投与量の決定など)は、最終的には一般開業医及び他の医師の責任及び裁量の範囲内で行われ、また典型的には、治療しようとする障害、個々の患者の症状、送達部位、投与方法及び医療関係者公知の他の要因を考慮して行われる。
【0186】
特に明記しない限り、本願明細書において用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明の技術分野に属する当業者に一般的に理解されている意味で用いられる。
【0187】
明細書全体にわたり、文脈による限定がない限り、用語「含んでなる」又は「含有する」、又はその活用形(例えば「含んでなって」又は「含んでなること」、「含有して」又は「含有すること」)は、明記された整数又は整数の群を包含することを意味するが、他のいかなる整数又は整数の群を除外するものではないとして理解されるものとする。
【0188】
本明細書で用いられる用語「1つの」及び「上記」などは、文脈から特に限定されない限りは、それが示すものの単数形及び複数形を包含するものとする。すなわち、例えば「活性薬剤」又は「医薬活性薬剤」というときは、単一の活性薬剤、並びに2つ以上の異なる活性薬剤の組み合わせが包含され、一方、「担体」というときは、単一の担体、並びに2つ以上の担体の混合物が包含される。
【0189】
本発明の融合タンパク質のポリペプチド成分を記載するための命名法は、従来の慣習に従って行われ、アミノ基(N)が各アミノ酸残基の左に存在し、カルボキシル基が右側に存在する。
【0190】
本明細書で用いられる「アミノ酸」という表記には、天然及び合成アミノ酸、並びに、D型及びL型の、いずれのアミノ酸も包含されるものとする。合成アミノ酸にはまた、化学修飾されたアミノ酸(限定されないが塩、及びアミドなどのアミノ酸誘導体などを含む)が包含される。本発明のポリペプチドに含まれるアミノ酸は、他の化学基によるメチル化、アミド化、アセチル化又は置換により修飾されることができ、それにより、その生物学的活性に悪影響を与えることなく、循環半減期を改変することができる。
【0191】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、本願明細書において同義的に用いられ、ペプチド結合又は修飾ペプチド結合(例えばアイソスター)により共有結合した、少なくとも2つの一連のアミノ酸を表すものとする。ペプチド又はタンパク質中に含有させるができるアミノ酸の最大数は、特に限定されない。更に、用語「ポリペプチド」は、ペプチドの断片、類縁体及び誘導体を包含し、前記断片、類縁体又は誘導体は、当該断片、誘導体又は類縁体が由来するペプチドと同じ生物学的機能活性を保持している。
【0192】
本願明細書の用語「治療上有効量」とは、TLR4媒介性の炎症症状を抑制するのに必要となる、本発明の物質、結合化合物、小分子、融合タンパク質又はペプチド擬態物の量を意味する。
【0193】
本願明細書の用語「予防上有効量」とは、TLR4媒介性の炎症症状(例えば敗血症)の最初の発症、進行又は再発を防止するのに必要となる組成物の量のことを指す。
【0194】
本願明細書の用語「治療」、及び関連する用語「治療する」及び「治療すること」とは、TLR4又はTLR14媒介性の症状又はその少なくとも1つの徴候の、進行、重篤度及び/又は持続期間を減少させることを意味し、上記の減少(又は改善)は、TLR4と、共受容体としてのTLR14との会合を崩壊させるか又は防止する化合物の投与の結果として生じる。
【0195】
したがって、「治療」という用語は、被験者にとり有益なあらゆる療法計画のことを指す。上記の治療は、既存の症状に関するものであってもよく、又は予防的なもの(予防的治療)であってもよい。治療には、治癒的、軽減的又は予防効果が包含されうる。本願明細書における「治療的」及び「予防的」処置とは、それらの最も広義の意味において解釈されるものとする。「治療的」の用語は、必ずしも被験者が完全な回復を遂げるまで治療されることを意味するものではない。同様に、「予防的」とは、必ずしも被験者が最終的に疾患症状に至らないことを意味するものではない。
【0196】
本願明細書の用語「被験者」とは、動物(好ましくは哺乳糖物、特にヒト)を指す。特定の実施形態では、上記の被験者は哺乳動物、特にヒトである。用語「被験者」は、本明細書で用いられる用語「患者」と同義である。
【0197】
以下の実験技術及びプロトコルを、本発明の実施例において用いる。
【0198】
ルシフェラーゼレポーターアッセイ:
U373細胞を、96ウェルプレート(ウェルあたり2×104細胞)に播き、その翌日、空のベクター又はTLR14発現ベクター(50ng)、並びに、Renillaルシフェラーゼ内部コントロールプラスミド(Promega社)40ngと共にNF−kB−ルシフェラーゼレポーター遺伝子(Stratagene社)80ngを用いてトランスフェクションした。GENEJUICE(商標)(Novagen社)を用いて、製造業者の指示に従い、一過的にトランスフェクションした。24時間後に細胞を、100ng/mlの最終濃度で、LPS(Sigma社)で6時間刺激した。細胞を更に受動的な溶解緩衝液(Promega社)中に添加し、レポーター遺伝子活性をルミノメーターで測定した。データを、コントロールのレベルに対する平均誘導倍率±SDとして表し、代表的な実験の場合は3つの別々の実験(各々3回実験を行う)の最小値として表した。
【0199】
siRNAベースのTLR14ノックダウン:
TLR14に対する結合特性を有する市販のsiRNAは、Dharmacon社及びQiagen社から購入した。ヒト星状細胞腫U373細胞を、5×104細胞/mlの濃度で、10cmのシャーレにおいて準備した。次の日、細胞を、製造業者の指示に従い、OLIGOFECTAMINE(商標)(Invitrogen社)を使用して、siRNAでトランスフェクションした。48時間後に細胞から培地を除去し、SDS−PAGE用のサンプルバッファを直接プレートに添加した。サンプルを超音波破壊し、5分間ボイルし、13000回転/分で1分間遠心分離した。サンプルを次にSDS−PAGE及びウエスタンブロッティングにより解析した。IkBα及びホスホp38に対する抗体はCell Signalling社から購入した。TLR4抗体はSanta Cruz社から購入した。
【0200】
THP1を用いる実験において、Amaxaベースのトランスフェクションシステム(プログラムS−019)を使用して、TLR14(Qiagen)に特異的なsiRNAにより細胞をトランスフェクションした。72時間後に、TLR14のノックダウンをウエスタンブロッティングにより確認した。スクランブルしたQiagen siRNAをネガティブコントロールとして使用して、siRNAがTLR14に特異的であったことを確認した。細胞を、示された時間にわたり、100ng/mlのLPSで処理し、IkB分解をウエスタンブロッティングで測定した。サイトカイン測定が関係する実験の場合、72時間後に、細胞を24時間にわたり100ng/mlのLPSで刺激した。上清を除去し、IL−6及びTNF−αELISAsを実施した。
【0201】
LPS結合アッセイ:
HEK293細胞を、1×105細胞/mlで、10cmのプレートに播いた。翌日、細胞をTLR14発現プラスミド3μgによってトランスフェクションした。24時間後に、1%のNP40を含んでなる800μlのHepesバッファ中で細胞を溶解させた。細胞可溶化物を、非標識のLPSの有無において、1μg/mlの最終濃度のビオチン−LPS(Invivogen社)で、室温で1時間インキュベートした。ストレプトアビジン−アガロースビーズ(Pierce社)をPBSで2回洗浄し、サンプルに添加した(40μl/ポイント)。1時間後に、ビーズを溶解緩衝液で3回洗浄し、SDS−PAGEサンプルバッファ20μl中に再懸濁した。タンパク質のサンプルを、10%SDS−PAGEゲルで泳動し、ニトロセルロース膜へ転写し、ウエスタンブロッティングを行った。得られるブロットを、抗TLR14抗体をプローブとして解析した。
【実施例】
【0202】
実施例1:LPSシグナル伝達へのTLR14の関与:
LPSに反応する星状細胞腫細胞系(U373)において、レポーター遺伝子アッセイを実施した。50ngの空のコントロールベクター又はTLR14プラスミドで、24時間にわたりトランスフェクションした。細胞を回収する前に、過度に発現されたTLR14の有無において、LPS(100ng/ml)により6時間刺激し、レポーター遺伝子活性を分析した。
【0203】
図1に示されるように、空のベクターでトランスフェクションした細胞の場合(図1でEVと記す)と比較し、TLR14の存在により、LPS誘導性のNF−kBレポーター遺伝子発現(刺激の増加(倍)として示す)が増強された。LPSシグナル伝達を増強するTLR14の能力は、TLR14がTLR4の共受容体として機能しうることを示唆する。
【0204】
実施例2:TLR14のsiRNAノックダウンによる、LPSで媒介されるシグナル伝達に対する効果
TLR14がTLR4のための共受容体として機能するか否かを更に確認するため、TLR14ノックダウンに特異的なsiRNAsを、Qiagen社から購入した。これらのTLR14特異的なsiRNAsを用いて、LPS誘導性のIkB分解及びp38リン酸化の効果を評価した。
【0205】
TLR14及び非ターゲティングネガティブコントロールsiRNAの両方に対するsiRNAを、U373s細胞にトランスフェクションし、TLR14のノックダウンを、ウエスタンブロッティングにより確認した。得られた、このノックダウンを確認するウエスタンブロッティングを、図2(B)及び図3に示す。
【0206】
LPS誘導性のIkB分解及びp38リン酸化を、TLR14の細胞レベルを低下させる効果を評価するための読み出し(readout)として用いた。β−アクチンの発現を、ローディングコントロールとして用いた(それぞれ図2(A)及び図3)。図2(A)は、LPS誘導性のIkB分解がTLR14の非存在下で観察されなかったことを示す。同様に、LPS誘導性のp38リン酸化は、図3に示すように、TLR14に対するsiRNAで処理された細胞において、大きく損なわれた。
【0207】
これらの効果が、TLR4の非特異的なノックダウンに起因するものではないことを確認するため、TLR4抗体をプローブとしてサンプルを解析した。その結果、TLR14に対するsiRNAで処理された細胞からのTLR4減少を示す証拠が得られなかった(結果は示さず)。
【0208】
実施例1及び2の結果はしたがって、TLR14がLPS誘導性の細胞シグナル伝達を増強し、その一方で、TLR14の不存在によりLPSへの通常の反応が損なわれることを明らかに示すものである。したがってTLR14は、PAMP(LPS)のTLR4への結合に応答したTLR4機能にとり必要である。
【0209】
実施例3:TLR14に対するLPSの結合の測定
LPS結合アッセイを実施し、TLR14へのLPSの結合を測定した。HEK293細胞を、TLR14でトランスフェクションした。24時間後に細胞を溶解させ、室温で、ビオチン化LPS(1μg/ml)又は非標識のLPSで1時間インキュベートした。次にストレプトアビジンアガロースビーズ上でプルダウンアッセイを実施した。
【0210】
上記溶解物のウエスタンブロッティングによる分析結果を図4に示す。ウエスタンブロットにより、ビオチン−LPSとの複合体としてTLR14が存在することが明らかとなった。非標識のLPSが含まれることにより、図4に示すように結合が減少し、すなわちこの相互作用が特異的であることを示すものである。図4(a)において、5倍過剰の非標識のLPSを含ませ、一方、図4(b)において、コントロールサンプル中に、25倍過剰及び50倍過剰の非標識LPSを含ませた。
【0211】
実施例4:IkB分解に対する、TLR14 siRNAノックダウンの効果
amaxaベースのトランスフェクションシステム(program S−019)を使用して、TLR14(Qiagen)に対して特異的なsiRNAにより、THP1細胞をトランスフェクションした。
【0212】
72時間後における、TLR14のノックダウンを、ウエスタンブロッティングにより確認した(図5(A))。スクランブルバージョンのQiagen siRNAを用いて、siRNAがTLR14に特異的であることを確認するためのネガティブコントロールとした。示された時間、100ng/mlのLPSで細胞を処理し、IkB分解をウエスタンブロットにより測定した(図5(B)及び図5(C))。
【0213】
siRNA媒介されたTLR14のノックダウンはゆえに、LPSによる刺激に応答したIkB分解をわずかに阻害することを示すものであった。
【0214】
実施例5:IL−6及びTNF−αサイトカインレベルに対する、TLR14ノックダウンの効果
amaxaベースのトランスフェクションシステム(program S−019)を使用して、TLR14(Qiagen)に対して特異的なsiRNAにより、THP1細胞をトランスフェクションした。スクランブルバージョンのQiagen siRNAを用いて、siRNAがTLR14に特異的であることを確認するためのネガティブコントロールとした。72時間後に、100ng/mlのLPSで細胞を24時間刺激した。上清を除去し、IL−6及びTNF−αELISAアッセイを実施した。
【0215】
結果を図6に示す。図6(A)はELISAの結果であり、TLR14のノックダウンによりTNF−α産生の減少が生じることを示す。図6(B)は、TLR14のノックダウンによりIL−6サイトカイン産生の減少が生じることを示す。
【0216】
実施例6:膜におけるTLR14の発現及び局在化
U373脳星状細胞腫細胞を、4μgのTLR14でトランスフェクションした。2時間後に、100ng/mlのLPSで細胞を2時間刺激した。細胞を、サイトゾル及び膜画分に分画した。ウエスタンブロット分析により、膜におけるTLR14の発現を確認した。
【0217】
図7は、ウエスタンブロッティングの結果を示す。サイトゾル画分を左側に示し、一方、膜画分を右側に示す。NTとは非トランスフェクション細胞を意味し、一方、Tはトランスフェクション細胞を意味する。その結果、過剰発現したTLR14が膜において局所化することが示された。
【0218】
実施例7:マウス脳におけるTLR14の発現
野生型(WTと表記)及び自己免疫脳脊髄炎(EAEと表記)モデル実験マウスから、脳を摘出し、皮質、海馬及び小脳に解剖した。これらの断片のウエスタンブロット分析により、タンパク質レベルでのTLR14の発現が確認された。
【0219】
図8は、皮質(ゲル左側のカラム1及び2)、海馬(中央のカラム3及び4)及び小脳(右側のカラム5及び6)におけるTLR14の発現を意味するバンドを示す、ウエスタンブロッティングを示す。
【0220】
特に皮質及び海馬から得たEAEサンプルに関しては、TLR14発現レベルが、EAEマウスのこれらの領域より高いことを観察することができた。
【0221】
実施例8:THP1細胞における内因性TLR14の局在化
THP1細胞を、1mlあたり1×105細胞で、10cmのプレート上に播き、一晩インキュベートした。24時間後に培地を除去し、細胞をPBSで洗浄し、かき取り、分画バッファ(10mMのトリス−HCl、10mM MgCl2、1mM EDTA、250mM スクロース、200mM PMSF、pH7.5)中に入れた。サンプルを、Dounceホモジナイザ中で20ストローク処理し、100,000×gで1時間遠心分離した。上清(サイトゾル画分)を新しい試験管へ移し、ペレット(膜画分)を、50μlのSDS−PAGEサンプルバッファ[50mMのTris−Cl、pH6.8/10%のグリセロール(体積/体積)/2%のSDS(重量/体積)/0.1%のブロモフェノールブルー(重量/体積)/5%の2−メルカプトエタノール]中に再懸濁させた。サンプルを、SDS−PAGE及びウエスタンブロッティングにより分析した。
【0222】
THP1細胞の膜及びサイトゾルの画分を調製し、内因性TLR14の局在化を測定した。図9に示すように、超遠心分離後、これらの細胞の膜画分のタンパク質を分離した。ゲル上の膜由来画分に関連するカラムでは、明瞭なバンドが示された。サイトゾルの画分には、同様のバンドは存在しなかった。したがってこの実験の結果は、TLR14が膜結合型受容体のファミリーに属するという説を支持するものである。
【0223】
本願明細書で引用される全ての文書は、参照により本願明細書に援用される。本発明に記載される実施形態に対する、本発明の範囲内における様々な修正変更は、当業者にとり自明である。本発明を、具体的な好適な実施形態を参照しながら記載したが、それらは、特許請求された本発明を、かかる具体的な実施形態に過度に限定するものと理解すべきでない。実際、記載された本発明の実施形態の、当業者にとり自明な様々な改変は、本発明の範囲内に包含されるものとする。本願明細書中のいかなる従来技術の引用も、この従来技術が、いかなる国においても一般的知識として認識されていることを、いかなる形でも承認又は示唆することを意味せず、またそのように認識すべきでない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達を抑制する方法であって、
−配列番号1のアミノ酸配列を有するToll様受容体14タンパク質の発現又は生物学的機能を阻害する、治療上有効量の化合物を準備するステップと、
−かかる処置を必要とする被験者にそれを投与するステップとを有してなる方法。
【請求項2】
Toll様受容体14の発現又は生物学的機能を阻害する前記化合物が、タンパク質、ペプチド、ペプチド擬態物、核酸、ポリヌクレオチド、多糖類、オリゴペプチド、炭水化物、脂質、小分子化合物及び天然の化合物からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
Toll様受容体14の発現又は生物学的機能を阻害する前記化合物が、抑制性核酸である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記抑制性核酸が、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスDNA、アンチセンスRNA、リボザイム、iRNA、miRNA、siRNA及びshRNAからなる群から選択される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記化合物が、Toll様受容体4と、共受容体としてのToll様受容体14との複合体化を阻害することによって、Toll様受容体14の生物学的機能を阻害する抗体である、請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記抗体が、Toll様受容体14への結合を阻害して、それによりToll様受容体4と、共受容体としてのToll様受容体14との複合体化を阻害する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記抗体が、Toll様受容体4への結合を阻害して、それによりToll様受容体4と、共受容体としてのToll様受容体14との複合体化を阻害する、請求項5記載の方法。
【請求項8】
CD14の発現又は生物学的機能を阻害する、治療上有効量の組成物を、被験者に投与するステップを更に有してなる、請求項1から7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達の抑制に用いられる医薬組成物であって、少なくとも1つの薬学的に許容できる希釈剤、賦形剤若しくは担体に加えて、Toll様受容体14の発現又は生物学的機能を阻害する化合物を含んでなる医薬組成物。
【請求項10】
Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達により媒介される症状の治療用薬剤の調製への、Toll様受容体14の発現又は生物学的機能を阻害する化合物の使用。
【請求項11】
Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達により媒介される前記症状が、敗血症又は感染性ショックである、請求項10記載の使用。
【請求項12】
Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達により生じる症状の治療用薬剤に用いられる、Toll様受容体14の発現又は生物学的機能を阻害する化合物を含んでなる組成物。
【請求項13】
Toll様受容体4と、共受容体としてのToll様受容体14との会合を阻害する化合物を同定するためのアッセイ方法であって、
−Toll様受容体4とToll様受容体14とを含んでなる、第1及び第2の細胞サンプルを準備するステップと、
−前記第1及び第2のサンプルと、上記Toll様受容体14と結合するエンドトキシンとを、上記Toll様受容体14が、エンドトキシンと結合するときにToll様受容体4と会合できる条件下で、接触させるステップと、
−前記第1のサンプルと、候補調節化合物とを、前記化合物の結合が可能な条件下で接触させるステップと、
−Toll様受容体4受容体の複合体の活性化状態を、前記第1と第2のサンプル間での、下流の活性化レベルの比較によってモニタするステップを有してなり、
前記第1のサンプルと前記第2のサンプルとの間での、Toll様受容体4のシグナル伝達の減少により、Toll様受容体4とToll様受容体14との会合の阻害剤としての調節化合物が同定される方法。
【請求項14】
Toll様受容体4により媒介されるシグナル伝達の阻害への、請求項13記載のアッセイ方法により同定される化合物の使用。
【請求項15】
Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達の阻害用の組成物であって、請求項13記載のアッセイ方法により同定される化合物を含んでなる組成物。
【請求項16】
敗血症又は感染性ショックの治療用薬剤の調製への、請求項13記載のアッセイ方法により同定される化合物の使用。
【請求項17】
敗血症又は感染性ショックの治療に用いられる組成物であって、請求項13記載のアッセイ方法により同定される化合物を含んでなる組成物。
【請求項18】
少なくとも1つの薬学的に許容できる希釈剤、賦形剤又は担体に加えて、請求項13記載のアッセイ方法により同定される化合物を含んでなる、敗血症又は感染性ショックの治療及び/又は予防用の医薬組成物。
【請求項19】
敗血症又は感染性ショックの治療及び/又は予防方法であって、
−請求項13記載のアッセイ方法により同定される、治療上有効量の化合物を準備するステップと、
−治療を必要とする被験者にそれを投与するステップとを含んでなる方法。
【請求項20】
CD14の発現又は生物学的機能を阻害する、治療上有効量の組成物を被験者に投与するステップを更に有してなる、請求項19記載の方法。
【請求項21】
Toll様受容体14の発現を阻害するか、又は、Toll様受容体4と共受容体複合体を形成する、Toll様受容体14の生物学的機能を阻害する化合物を同定するためのアッセイ方法であって、
−Toll様受容体4とToll様受容体14とを含んでなる第1及び第2の細胞サンプルを準備するステップと、
−第1のフルオロフォア分子でToll様受容体4を標識し、第2のフルオロフォア分子でToll様受容体14を標識するステップと、
−前記第1のサンプルと、Toll様受容体4を活性化する分子とを接触させるステップと、
−前記第1及び第2のサンプルと候補調節化合物とを、Toll様受容体4及び/又はToll様受容体14の結合を可能にする条件下で接触させるステップと、
−フルオロフォアの蛍光をモニタすることによって、Toll様受容体4受容体の結合状態及び/又は活性化をモニタするステップとを有してなり、蛍光の変化により、前記候補調節化合物が、Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達を調節する化合物として同定される方法。
【請求項22】
Toll様受容体4により媒介されるシグナル伝達の阻害への、請求項21記載のアッセイ方法により同定される化合物の使用。
【請求項23】
Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達の阻害用の組成物であって、請求項21記載のアッセイ方法により同定される化合物を含んでなる組成物。
【請求項24】
敗血症又は感染性ショックの治療用薬剤の調製への、請求項21記載のアッセイ方法により同定される化合物の使用。
【請求項25】
敗血症又は感染性ショックの治療に用いられる組成物であって、請求項21記載のアッセイ方法により同定される化合物を含んでなる組成物。
【請求項26】
少なくとも1つの薬学的に許容できる希釈剤、賦形剤又は担体に加えて、請求項21記載のアッセイ方法により同定される化合物を含んでなる、敗血症又は感染性ショックの治療及び/又は予防用の医薬組成物。
【請求項27】
敗血症又は感染性ショックの治療及び/又は予防方法であって、−請求項13記載のアッセイ方法により同定される、治療上有効量の化合物を準備するステップと、−治療を必要とする被験者にそれを投与するステップとを有してなる方法。
【請求項28】
CD14の発現又は生物学的機能を阻害する、治療上有効量の組成物を、被験者に投与するステップを更に有してなる、請求項19記載の方法。
【請求項1】
Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達を抑制する方法であって、
−配列番号1のアミノ酸配列を有するToll様受容体14タンパク質の発現又は生物学的機能を阻害する、治療上有効量の化合物を準備するステップと、
−かかる処置を必要とする被験者にそれを投与するステップとを有してなる方法。
【請求項2】
Toll様受容体14の発現又は生物学的機能を阻害する前記化合物が、タンパク質、ペプチド、ペプチド擬態物、核酸、ポリヌクレオチド、多糖類、オリゴペプチド、炭水化物、脂質、小分子化合物及び天然の化合物からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
Toll様受容体14の発現又は生物学的機能を阻害する前記化合物が、抑制性核酸である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記抑制性核酸が、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスDNA、アンチセンスRNA、リボザイム、iRNA、miRNA、siRNA及びshRNAからなる群から選択される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記化合物が、Toll様受容体4と、共受容体としてのToll様受容体14との複合体化を阻害することによって、Toll様受容体14の生物学的機能を阻害する抗体である、請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記抗体が、Toll様受容体14への結合を阻害して、それによりToll様受容体4と、共受容体としてのToll様受容体14との複合体化を阻害する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記抗体が、Toll様受容体4への結合を阻害して、それによりToll様受容体4と、共受容体としてのToll様受容体14との複合体化を阻害する、請求項5記載の方法。
【請求項8】
CD14の発現又は生物学的機能を阻害する、治療上有効量の組成物を、被験者に投与するステップを更に有してなる、請求項1から7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達の抑制に用いられる医薬組成物であって、少なくとも1つの薬学的に許容できる希釈剤、賦形剤若しくは担体に加えて、Toll様受容体14の発現又は生物学的機能を阻害する化合物を含んでなる医薬組成物。
【請求項10】
Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達により媒介される症状の治療用薬剤の調製への、Toll様受容体14の発現又は生物学的機能を阻害する化合物の使用。
【請求項11】
Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達により媒介される前記症状が、敗血症又は感染性ショックである、請求項10記載の使用。
【請求項12】
Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達により生じる症状の治療用薬剤に用いられる、Toll様受容体14の発現又は生物学的機能を阻害する化合物を含んでなる組成物。
【請求項13】
Toll様受容体4と、共受容体としてのToll様受容体14との会合を阻害する化合物を同定するためのアッセイ方法であって、
−Toll様受容体4とToll様受容体14とを含んでなる、第1及び第2の細胞サンプルを準備するステップと、
−前記第1及び第2のサンプルと、上記Toll様受容体14と結合するエンドトキシンとを、上記Toll様受容体14が、エンドトキシンと結合するときにToll様受容体4と会合できる条件下で、接触させるステップと、
−前記第1のサンプルと、候補調節化合物とを、前記化合物の結合が可能な条件下で接触させるステップと、
−Toll様受容体4受容体の複合体の活性化状態を、前記第1と第2のサンプル間での、下流の活性化レベルの比較によってモニタするステップを有してなり、
前記第1のサンプルと前記第2のサンプルとの間での、Toll様受容体4のシグナル伝達の減少により、Toll様受容体4とToll様受容体14との会合の阻害剤としての調節化合物が同定される方法。
【請求項14】
Toll様受容体4により媒介されるシグナル伝達の阻害への、請求項13記載のアッセイ方法により同定される化合物の使用。
【請求項15】
Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達の阻害用の組成物であって、請求項13記載のアッセイ方法により同定される化合物を含んでなる組成物。
【請求項16】
敗血症又は感染性ショックの治療用薬剤の調製への、請求項13記載のアッセイ方法により同定される化合物の使用。
【請求項17】
敗血症又は感染性ショックの治療に用いられる組成物であって、請求項13記載のアッセイ方法により同定される化合物を含んでなる組成物。
【請求項18】
少なくとも1つの薬学的に許容できる希釈剤、賦形剤又は担体に加えて、請求項13記載のアッセイ方法により同定される化合物を含んでなる、敗血症又は感染性ショックの治療及び/又は予防用の医薬組成物。
【請求項19】
敗血症又は感染性ショックの治療及び/又は予防方法であって、
−請求項13記載のアッセイ方法により同定される、治療上有効量の化合物を準備するステップと、
−治療を必要とする被験者にそれを投与するステップとを含んでなる方法。
【請求項20】
CD14の発現又は生物学的機能を阻害する、治療上有効量の組成物を被験者に投与するステップを更に有してなる、請求項19記載の方法。
【請求項21】
Toll様受容体14の発現を阻害するか、又は、Toll様受容体4と共受容体複合体を形成する、Toll様受容体14の生物学的機能を阻害する化合物を同定するためのアッセイ方法であって、
−Toll様受容体4とToll様受容体14とを含んでなる第1及び第2の細胞サンプルを準備するステップと、
−第1のフルオロフォア分子でToll様受容体4を標識し、第2のフルオロフォア分子でToll様受容体14を標識するステップと、
−前記第1のサンプルと、Toll様受容体4を活性化する分子とを接触させるステップと、
−前記第1及び第2のサンプルと候補調節化合物とを、Toll様受容体4及び/又はToll様受容体14の結合を可能にする条件下で接触させるステップと、
−フルオロフォアの蛍光をモニタすることによって、Toll様受容体4受容体の結合状態及び/又は活性化をモニタするステップとを有してなり、蛍光の変化により、前記候補調節化合物が、Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達を調節する化合物として同定される方法。
【請求項22】
Toll様受容体4により媒介されるシグナル伝達の阻害への、請求項21記載のアッセイ方法により同定される化合物の使用。
【請求項23】
Toll様受容体4の活性化及びシグナル伝達の阻害用の組成物であって、請求項21記載のアッセイ方法により同定される化合物を含んでなる組成物。
【請求項24】
敗血症又は感染性ショックの治療用薬剤の調製への、請求項21記載のアッセイ方法により同定される化合物の使用。
【請求項25】
敗血症又は感染性ショックの治療に用いられる組成物であって、請求項21記載のアッセイ方法により同定される化合物を含んでなる組成物。
【請求項26】
少なくとも1つの薬学的に許容できる希釈剤、賦形剤又は担体に加えて、請求項21記載のアッセイ方法により同定される化合物を含んでなる、敗血症又は感染性ショックの治療及び/又は予防用の医薬組成物。
【請求項27】
敗血症又は感染性ショックの治療及び/又は予防方法であって、−請求項13記載のアッセイ方法により同定される、治療上有効量の化合物を準備するステップと、−治療を必要とする被験者にそれを投与するステップとを有してなる方法。
【請求項28】
CD14の発現又は生物学的機能を阻害する、治療上有効量の組成物を、被験者に投与するステップを更に有してなる、請求項19記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2010−506885(P2010−506885A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532814(P2009−532814)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061182
【国際公開番号】WO2008/046902
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(599049945)ザ・プロウボウスト・フェロウズ・アンド・スカラーズ・オブ・ザ・カレッジ・オブ・ザ・ホリー・アンド・アンデバイデッド・トリニティ・オブ・クイーン・エリザベス・ニア・ダブリン (9)
【氏名又は名称原語表記】The Provost Fellows and Scholars of the College of the Holy and Undivided Trinity of Queen Elizabeth Near Dublin
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061182
【国際公開番号】WO2008/046902
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(599049945)ザ・プロウボウスト・フェロウズ・アンド・スカラーズ・オブ・ザ・カレッジ・オブ・ザ・ホリー・アンド・アンデバイデッド・トリニティ・オブ・クイーン・エリザベス・ニア・ダブリン (9)
【氏名又は名称原語表記】The Provost Fellows and Scholars of the College of the Holy and Undivided Trinity of Queen Elizabeth Near Dublin
【Fターム(参考)】
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