説明

USB振動データの取得

【課題】従来の大型で嵩張る試験装置と同等の性能を有する、コンパクト且つ少なくとも6−8時間のバッテリ稼動が可能な機械診断装置を提供する。
【解決手段】振動データを収集及び分析するシステム10を開示する。このシステムは、振動を検出し、検出された振動に対応する電気信号を生成するための少なくとも1つのセンサ12と、検出された振動に対応する電気信号を少なくとも1つのセンサ12から受信し、調整信号を生成するために電気信号を調整及び抽出するためのユニバーサルシリアルバス(USB)通信装置14と、調整信号を受信し、調整信号をデータ記憶装置32に格納するためのデータ収集装置16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械を診断するための携帯型データ収集装置及び分析装置に関し、特に、データを高速転送するユニバーサルシリアルバス(USB)インターフェースを備える携帯型データ収集装置及び分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、回転機械の診断には、機械振動に関する問題を適切に診断するために、大量のデータに加えて、大型で嵩張る試験装置が必要である。また、過酷な環境下、電源の近くでこの嵩張る試験装置を操作しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,317,994号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、従来の大型で嵩張る試験装置と同等の性能を有する、コンパクト且つ少なくとも6〜8時間のバッテリ稼働が可能な機械診断装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態において、振動データを収集及び分析するシステムを開示する。このシステムは、振動を検出して、検出された振動に対応する電気信号を生成するための少なくとも1つのセンサと、検出された振動に対応する電気信号を少なくとも1つのセンサから受信し、電気信号を調整及び抽出して調整信号を生成するためのユニバーサルシリアルバス(USB)通信装置と、調整信号を受信して、調整信号をデータ記憶装置に格納するためのデータ収集装置とを備える。
【0006】
本発明の別の実施形態において、振動データ取得システムを開示する。このシステムは、振動を検出して、検出された振動に対応する電気信号を生成するための少なくとも1つのセンサと、検出された振動に対応する電気信号を少なくとも1つのセンサから受信し、電気信号を調整及び抽出して調整信号を生成するためのユニバーサルシリアルバス(USB)通信装置と、調整信号を受信して、調整信号をデータ記憶装置に格納するためのデータ収集装置であって、USB通信装置に電力を供給するよう構成された電源を含むデータ収集装置とを備える。
【0007】
本発明の更に別の実施形態において、携帯型振動データ取得システムを開示する。この携帯型システムは、振動を検出して、検出された振動に対応する電気信号を生成するための少なくとも1つのセンサと、検出された振動に対応する電気信号を少なくとも1つのセンサから受信し、電気信号を調整及び抽出して調整信号を生成するためのユニバーサルシリアルバス(USB)通信装置と、調整信号を受信して、調整信号をデータ記憶装置に格納するためのデータ収集装置であって、USB通信装置に電力を供給するよう構成された電源を含むデータ収集装置と、調整信号をデータ記憶装置に格納する前に一時保存するための少なくとも1組のバッファとを備える。
【0008】
添付図面と関連した以下の説明により、本発明のこれら及びその他の利点及び特徴がより明確に理解できよう。
【0009】
本発明の企図は、添付の特許請求の範囲に明記されている。これより、本発明の以上の及びその他の利点及び特徴を添付図面と共に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る、消費電力が少なくデータ処理能力が高いUSB通信装置を備える振動データ取得システムの例示的実施形態の概略図である。
【図2】本発明に係る、振動データをデータ記憶装置に格納する前に一時保存するための1組のバッファを有する振動データ取得システムの例示的実施形態の概略図である。
【図3】本発明に係る、多重センサから生のアナログ振動信号を転送し、データ記憶装置に格納するために信号を自己記述データオブジェクトに変換する方法の例示的実施形態を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を、その利点及び特徴と共に、例示的に詳説する。
【0012】
本発明の例示的実施形態において、振動データを収集及び分析するシステムを開示する。このシステムのセンサとコンピュータインターフェースとの間には、一次通信リンクとしてUSBインターフェースが実装される。かかる実施形態において、このシステムは更に、データを高速転送しながら、多重センサから生のアナログ振動信号を連続的に取得し、データ記憶装置(例えば不揮発性固体素子)に格納するために信号を自己記述データオブジェクト(例えばデジタルデータ)に変換する。このUSBインターフェースにより、効果的に消費電力を抑えつつ、高速でデータを処理することができる。
【0013】
本発明とその動作の理解を助けるため、図面を参照されたい。図1に、本発明に係る携帯型振動データ取得システム10の例示的実施形態を示す。このシステムは、1つ以上のセンサ12、USB通信装置14、及びデータ収集装置16を含む。説明の便宜上、ここでは1つ以上のセンサ12を複数のセンサ12として記述する。しかし、本発明の例示的実施形態においても、使用するセンサの数は1つであっても良いということを理解されたい。
【0014】
複数のセンサ12は、作業機械(図示せず)により発生した、線18で示す振動又は生のアナログ振動信号を継続的に検出するよう構成されている。複数のセンサ12は、生のアナログ振動信号又は検出された振動に対応する電気信号を生成する。複数のセンサ12のそれぞれの一端は、振動を検出するために機械に接続されている。多くの場合、振動から機械の状態がわかる。一方、複数のセンサ12の他端は、対応する信号線20を介してUSB通信装置14に接続されている。なお、図示においては、信号線20はそれぞれ単線であるが、ツイストペア線であっても無線通信であっても良い。明らかなように、いずれの例示的実施形態においても、検出された振動信号を送信するための通信手段として別の適宜の手段を使用しても良く、また、その構成は本明細書の記載内容に限定されない。
【0015】
例示的実施形態において、複数のセンサ12はそれぞれ、振動変換器を備える。別の実施形態において、複数のセンサ12はそれぞれ、接近センサ、速度計、加速時計、又は振動を検出可能な任意の検出装置を更に備えていても良い。図1に、振動検出用の4つのセンサを示す。しかし、振動検出用に使用するセンサの数は、用途に応じて、4つよりも多くても少なくても良く、また、その構成は図示のものに限定されないことを理解されたい。
【0016】
一実施形態において、USB通信装置14は、USBインターフェース22と、デジタル信号処理装置(DSP)24又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)とを実装している。USB通信装置14の一端は複数のセンサ12に接続され、USB通信装置14の他端はUSBコネクタ26を介してデータ収集装置16に接続されている。USB通信装置14は、電気信号をセンサから受信し、USBコネクタ26を介してデータ収集装置16に振動データを転送するよう操作可能に構成されている。具体的には、DSP24は、電気信号を調整及び抽出して調整信号を生成するためにセンサ12から電気信号を受信し、USBインターフェース22は、USBコネクタ26を介してデータ収集装置16に調整信号を転送する。例示的実施形態において、DSP24は、異なる抽出率で生のアナログ振動信号を抽出するよう構成されている。
【0017】
USBインターフェース22は、従来型のインターフェース(例えば、イーサネット(登録商標)、RS−232等)と同程度の消費電力で、データ収集装置16にデータを高速転送するのに適したものであれば、いかなる従来のUSBインターフェースであっても良い。しかし、USBインターフェース22は、使用していない時にもデータ収集装置16との接続を維持することができるので、時として利用が難しい、動作に必要な個別の電源やインターネットサービスを必要としない。連続的なデジタル振動データフローはこのように、USBインターフェース22とデータ収集装置16の間で、矢印28で示すように構成されても良い。
【0018】
DSP24は、アナログ振動データを自己記述データオブジェクト又はデジタル振動データに変換するための、1つ以上のアナログデジタル変換器(図示せず)を備える。一実施形態おいて、DSP24は、デジタル振動データから振動データパケットを調整信号として作成し、この信号はUSBインターフェース22によってデータ収集装置16に送信され、格納されるか、又は更に処理される。
【0019】
データ収集装置16は、振動データの収集に適したものであれば、従来のいかなるデータ収集装置であっても良い。一実施形態において、データ収集装置16は、ハウジング30と、振動データを格納するためのデータ記憶装置32とを含む。例示的実施形態において、データ収集装置16は携帯型である。明らかなように、データ収集装置16は、その他の例示的実施形態において、固定式装置であっても良い。例示的実施形態において、データ記憶装置32は、ハウジング30内に配置された固体素子である。明らかなように、本発明の例示的実施形態には、いかなる適宜のデータ記憶方式も適用可能である。データ収集装置16は、データ収集装置16の動作を制御するための中央演算処理装置(CPU)34を実装している。例えば、CPU34は、振動データパケットを解析し、データ収集装置16のデータ記憶装置32の適切なディレクトリに振動データを格納する。他の例では、CPU34は、様々な測定(例えば、調整信号のデシメーション、デジタルフィルタリング等)を実行し、その結果をデータ記憶装置32に格納する。CPU34は、本明細書に記載の方法及び/又は機能を実行するよう構成されたものであれば、従来のいかなる処理装置であっても良い。一実施形態において、CPU34は、ロードして実行される際に、CPU34が動作し本明細書に記載の方法を実行するコンピュータプログラムを実装した、ハードウェア及び/又はソフトウェア/ファームウェアの組み合わせから成る。
【0020】
データ収集装置16は更に、システム10の構成要素に電力を供給するための電源36を有する。一実施形態において、電源36は、ユーザーが電源36を再充電することなく試験完了まで十分な電力を保持できる小型の充電式電池である。電源36は、例えば約6〜8時間の電池寿命を有する充電式電池であるが、別の実施形態においては、約6〜8時間の電池寿命を有する非充電式電池であっても良い。なお、電源36の大きさ及び最大電力量は、用途に応じて適宜の大きさであって良く、上記の例に限定されない。
【0021】
一実施形態において、電力は、データ収集装置16の電源36から、USBコネクタ26を介してUSB通信装置14及びその構成要素に供給される。従って、USB通信装置14がデータ収集装置16のハウジング30に接続されると、データ収集装置16が起動し、USB通信装置14も起動する。データ収集装置16の電源を切ったり休止状態にしたりすることで、USB通信装置14も同様に動作するので、電源36の消費電力を更に抑えることができる。一実施形態において、電源36から複数のセンサ12に好適に電力を供給することができる。別の実施形態において、センサ12は、独立電源から電力供給される。
【0022】
図2に示すように、データ収集装置16は例示的実施形態において、データ記憶装置32に格納する前に、振動データパケットを一時保存するための第1のバッファセット38と、解析された振動データパケットを一時保存するための第2のバッファセット40とを更に備える。この実施形態において、USBインターフェース22からの調整信号はそれぞれ、第1のバッファセット38の中の1つのバッファに順次格納される。例えば、1つの調整信号が第1のバッファに格納され、次の調整信号が第2のバッファに格納される。第1のバッファセット38のバッファが満杯に近付くか、又は実際に満杯になると、CPU34は第1のバッファセット38から一度に1つずつ調整信号を取り出し、信号を解析して、解析された信号を順次第2のバッファセット40に一時保存する。第2のバッファセット40のバッファが満杯に近付くか、又は実際に満杯になると、CPU34は第2のバッファセット40から解析された信号を取り出し、解析された信号をデータ記憶装置32に順次格納する。この処理は、全てのデータがデータ記憶装置32に格納されるまで継続される。解析された信号の一時保存に使用するバッファは、1セットだけで良い。明らかなように、バッファセットの数は用途によって異なり、本明細書に記載の内容に限定されない。別の例示的実施形態において、USBインターフェース14からの調整信号を解析せずに、直接データ記憶装置32に格納しても良い。
【0023】
次に、図3を参照しながら、多重センサから生のアナログ振動信号を転送し、データ記憶装置に格納するために信号を自己記述データオブジェクトに変換する方法の一実施形態を説明する。
【0024】
ステップ100において、複数のセンサ12が、作業機械から発生する振動を検出する。複数のセンサ12は、生のアナログ振動信号に対応する電気信号を生成する。
【0025】
ステップ102において、DSP24が、生のアナログ振動を受信し、デジタル振動データを生成するために信号を調整及び抽出する。DSP24は、アナログデジタル変換器を利用して、アナログ振動データをデジタル振動データに変換する。
【0026】
ステップ104において、DSP24が、デジタル振動データから振動データパケットを調整信号として作成する。
【0027】
ステップ106において、USBインターフェース22が、調整信号(振動データパケット)をデータ収集装置16に送信する。
【0028】
ステップ108において、データ収集装置16が振動データパケットを解析し、解析された振動データパケットがデータ記憶装置32に格納される。
【0029】
以上、本発明を一部の実施形態に関してのみ詳細に説明してきたが、明らかなように、本発明の実施形態は本明細書に記載の形態に限定されない。むしろ、本発明の本質及び範疇において、本発明を修正し、本明細書に記載されていない様々な変形、変更、置換または等価の措置を加えることができる。更に、本発明の様々な実施形態を説明してきたが、本発明の態様として、上記の実施形態の一部を含むだけでも良いことを理解されたい。従って、本発明は以上の説明に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に記載の内容に基づいてのみ解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0030】
10 携帯型振動データ取得システム
12 センサ
14 USB通信装置
16 データ収集装置
18 アナログ振動信号
20 信号線
22 USBインターフェース
24 デジタル信号処理装置(DSP)
26 USBコネクタ
28 連続的なデジタル振動データフロー
30 ハウジング
32 データ記憶装置
34 中央演算処理装置(CPU)
36 電源
38 第1のバッファセット
40 第2のバッファセット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動データを収集及び分析するシステム(10)であって、
振動を検出し、検出された振動に対応する電気信号を生成するための少なくとも1つのセンサ(12)と、
検出された振動に対応する前記電気信号を前記少なくとも1つのセンサ(12)から受信し、調整信号を生成するために前記電気信号を調整及び抽出するためのユニバーサルシリアルバス(USB)通信装置(14)と、
前記調整信号を受信し、前記調整信号をデータ記憶装置(32)に格納するためのデータ収集装置(16)とを備えるシステム。
【請求項2】
前記システムの動作を制御するための中央演算処理装置(34)を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記調整信号を前記データ記憶装置(32)に格納する前に一時保存するための、少なくとも1組のバッファ(38)を更に備える、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記USB通信装置(14)が、前記電気信号を調整及び抽出するためのデジタル信号処理装置(24)を含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記デジタル信号処理装置(24)が、異なる抽出率で前記電気信号を抽出するよう構成されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記USB通信装置(14)が、前記調整信号を前記データ収集装置(16)に転送するためのUSBインターフェース(22)を含む、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記データ収集装置(16)が、前記USB通信装置(14)に電力を供給するよう構成された電源(36)を含む、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記複数のセンサ(12)が、振動に反応して電気信号を生成する振動変換器を備える、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記データ記憶装置(32)が固体素子である、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−79903(P2010−79903A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218352(P2009−218352)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】