説明

X−Y移動テーブルおよびそれを備えた電子部品接合装置

【課題】
テーブルの重量を増大させることなく、低摩擦で滑らかな直線運動が得られると共に、剛性および位置決め精度を向上させたX−Y移動テーブルを提供する。
【解決手段】
転がり案内部33を有するX−Y移動テーブル8において、Yステージ29の下面29aに、一対のレール24、24に沿ってそれぞれの長手方向に少なくとも一対の永久磁石35が垂下され、この永久磁石35を基台28に所定のエアギャップを介して対峙させ、基台28の方向に所定の磁気吸引力を作用させたので、Xテーブル14およびYテーブル15の重量を増大させることなく、浮き上がりを防止し、低摩擦で滑らかな直線運動が得られると共に、剛性および位置決め精度を向上させたX−Y移動テーブル8を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、集積回路のベアチップのバンプを直接プリント基板のランド部に加圧させ、超音波振動等で接合する電子部品接合装置、詳しくは、そのプリント基板を位置決めするステージにおける案内部の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイル情報通信関連商品等においては、回路実装基板のより一層の小型・軽量、高周波化による高性能化とコストダウンとが切望されている。そのため、半導体チップと回路基板の直接実装が可能なフリップチップ実装が有効となる。中でも超音波振動を利用した金属間接合は、低接続抵抗、高接合強度、短時間接合等の特徴があり、ますます注目を集めている。
【0003】
従来、電子部品接合装置としてクリーンで高生産性を有する電子部品接合装置が知られている。この電子部品接合装置の超音波ホーンとしては、縦振動方式、横振動方式、捻じり振動方式等のものがある。例えば、回路基板のランド部にチップ部品のバンプを超音波接合する超音波ホーンとして、横振動方式の超音波ホーンが使用されている。
【0004】
この横振動方式の超音波ホーンは、ホーンの軸長手方向に超音波振動が発生することを利用し、超音波ホーンを水平向きの姿勢にしてチップ部品を加圧した状態でバンプに横振動を与えることにより、回路基板のランド部との間に発生する摩擦熱で溶融させて超音波接合が行われる。
【0005】
こうした電子部品接合装置の代表的なものとして、図5に示すようにものが知られている。この電子部品接合装置において、横振動方式の超音波ホーン51は、先端側に二股状に傾斜する上下対称形状のチップ部品71の吸着支持面52、52を備えている。超音波ホーン51の中心軸上に超音波振動発生器53が接続され、この超音波振動発生器53で発生する所定の周波数により超音波ホーン51に横振動が発生するようにされている。
【0006】
超音波振動発生器53はブラケット54により保持され、超音波ホーン51が斜め上方に傾斜するように固定ブロック55に支持されている。超音波ホーン51の傾斜角度は、下向きの吸着支持面52が垂線に対して直交する水平向きになるように設定されている。
【0007】
超音波ホーン51および超音波振動発生器53を保持している固定ブロック55は、回転角調整ブロック56に固定されている。この回転角調整ブロック56は、軸受ブロック57に垂直向きに回転自在に支承されたモータ軸58の下端部に設けられている。また、モータ軸58の上端部はステッピングモータ等の回転角調整用モータ59の出力軸に直結している。
【0008】
軸受ブロック57は、垂直なガイドレール60に沿って上下動する可動枠61に支持され、この可動枠61によってガイドレール60の上方部分に加圧ブロック62が支持されている。そして、加圧ブロック62に一体に設けられたねじブロック63に圧力調整用モータ64の出力軸となるねじ軸65がねじ結合されている。
【0009】
また、可動枠61と加圧ブロック62との間には圧力検出器(ロードセル)66が配置されている。この圧力検出器66により検出された出力信号はパソコン67から指令データが入力されている荷重制御ユニット68にて読み込まれて荷重制御される。この荷重制御ユニット68から指令データに基いた荷重信号として圧力調整用モータ64が駆動され、圧力検出器66への加圧力を調整する、所謂クローズドフィードバック制御が行われる。
【0010】
すなわち、X−Y移動テーブル69上に位置決めされた回路基板70に対し、超音波ホーン51に吸着された状態でチップ部品71が押し付けられて振動される圧力値は、圧力調整用モータ64と圧力検出器66と荷重制御ユニット68とのクローズドフィードバック制御によって一定にできるようになっている。
【0011】
X−Y移動テーブル69は、図6に示すように、Xテーブル72と、このXテーブル72上に載置されたYテーブル73とからなる。Xテーブル72あるいはYテーブル73は、長手方向に並設された一対のレール74に直動軸受75を介してスライド自在に載置され、レール74間に設けられたボールねじ機構76によって駆動されている。ボールねじ機構76は、駆動モータ77にカップリング78を介して連結されたねじ軸76aと、このねじ軸76aに図示しないボールを介して外挿されたナット76bとからなる。このナット76bがXテーブル72あるいはYテーブル73に回転不可に固定され、駆動モータ77の回転がナット76b、すなわち、Xテーブル72あるいはYテーブル73の直線方向の駆動に変換される。
【0012】
また、X−Y移動テーブル69は、回路基板70の精密な位置決め精度を確保するため、その案内部79には有限形針状ころ軸受からなる直動軸受75が一般的に使用されている。この直動軸受75は、断面がV字状に形成されたレール74と、長手方向に延びてこのレール74に嵌合され、Yテーブル73と一体または一体化された鞍部80間に介装されている。
【特許文献1】特開2002−190500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
こうした従来のX−Y移動テーブル69において、レール74、鞍部80および直動軸受75からなる案内部79は、転がり案内のため低摩擦で滑らかな直線運動が得られるという特徴を有している反面、位置決め精度は、案内部79の剛性および直動軸受75に負荷される重量に依存している。すなわち、テーブルの浮き上がり等を抑制するために、Xテーブル72あるいはYテーブル73に所定量以上の余分な重量を加える必要がある。
【0014】
Xテーブル72あるいはYテーブル73の余分な自重を負荷荷重として加えた場合、Xテーブル72あるいはYテーブル73のイナーシャが大きくなるばかりでなく、これに伴い、駆動モータ77の容量を大きくしなければならない。これでは装置が大型化すると共に、コストが高騰するといった問題がある。
【0015】
本発明は、こうした従来の問題に鑑みこれを解決するためになされたもので、テーブルの重量を増大させることなく、低摩擦で滑らかな直線運動が得られると共に、剛性および位置決め精度を向上させたX−Y移動テーブルを提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、位置決め制御が容易となるばかりでなく、確実で精度の高い電子部品の接合作業ができ、生産性を向上させことができる電子部品接合装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
係る目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、Xテーブルと、このXテーブル上に載置されたYテーブルとからなり、前記XテーブルおよびYテーブルは、基台の長手方向に並設された一対のレールと、このレール間に配設され、基台の両端部に回転自在に支承されたねじ軸、およびこのねじ軸に多数のボールを介して外挿されたナットからなるボールねじ機構と、前記ねじ軸の一端に連結された駆動モータと、前記基台の上部に載置され、前記ナットが回転不可に固定されたステージとをそれぞれ備え、前記レールに断面がV字型の凹溝が長手方向に沿って形成され、この凹溝に嵌合する鞍部が前記ステージの下面に突設され、前記凹溝と鞍部間に転がり軸受からなる直動軸受が介装されたX−Y移動テーブルにおいて、前記ステージの下面に永久磁石が垂下され、この永久磁石を前記基台に所定のエアギャップを介して対峙させて前記基台の方向に所定の磁気吸引力を作用させた構成を採用した。
【0017】
このように、転がり案内部を有するX−Y移動テーブルにおいて、ステージの下面に永久磁石が垂下され、この永久磁石を基台に所定のエアギャップを介して対峙させて基台の方向に所定の磁気吸引力を作用させたので、テーブルの重量を増大させることなく、テーブルの浮き上がりを防止し、低摩擦で滑らかな直線運動が得られると共に、剛性および位置決め精度を向上させたX−Y移動テーブルを提供することができる。
【0018】
また、請求項2に記載の発明は、前記永久磁石が、前記一対のレールに沿ってそれぞれの長手方向に少なくとも一対固定されているので、安定した磁気吸引力が作用し、一層剛性および位置決め精度を向上させることができる。
【0019】
好ましくは、請求項3に記載の発明のように、前記基台に、長手方向に沿って磁気透磁率の大きな鋼板からなる磁極が固着されていれば、一層磁気吸引力を増大させることができ、テーブルを軽量・コンパクト化することができる。
【0020】
また、本発明のうち請求項4に記載の発明は、電子部品のバンプを基板のランド部に加圧、接合し実装する電子部品接合装置において、前記電子部品を吸着する吸着支持面を有する接合ヘッドと、前記吸着支持面に保持された電子部品と共に、前記接合ヘッドを回転自在に支持し、当該接合ヘッドを回転駆動する角度調整用モータを保持する軸受ブロックと、この軸受ブロックの上部に配設され、一対のガイドレールに沿って上下動自在に支持された可動コラムと、この可動コラムに配設された送り機構と、この送り機構によって前記可動コラムを直線駆動させる加圧用モータと、前記接合ヘッドに対向し、回路基板が位置決め載置されたX−Y移動テーブルとを備えた電子部品接合装置において、前記X−Y移動テーブルを、この発明の前記いずれかのX−Y移動テーブルとしたので、位置決め制御が容易となるばかりでなく、確実で精度の高い電子部品の接合作業ができ、生産性を向上させことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のX−Y移動テーブルは、Xテーブルと、このXテーブル上に載置されたYテーブルとからなり、前記XテーブルおよびYテーブルは、基台の長手方向に並設された一対のレールと、このレール間に配設され、基台の両端部に回転自在に支承されたねじ軸、およびこのねじ軸に多数のボールを介して外挿されたナットからなるボールねじ機構と、前記ねじ軸の一端に連結された駆動モータと、前記基台の上部に載置され、前記ナットが回転不可に固定されたステージとをそれぞれ備え、前記レールに断面がV字型の凹溝が長手方向に沿って形成され、この凹溝に嵌合する鞍部が前記ステージの下面に突設され、前記凹溝と鞍部間に転がり軸受からなる直動軸受が介装されたX−Y移動テーブルにおいて、前記ステージの下面に永久磁石が垂下され、この永久磁石を前記基台に所定のエアギャップを介して対峙させて前記基台の方向に所定の磁気吸引力を作用させたので、テーブルの重量を増大させることなく、テーブルの浮き上がりを防止し、低摩擦で滑らかな直線運動が得られると共に、剛性および位置決め精度を向上させたX−Y移動テーブルを提供することができる。
【0022】
また、本発明の電子部品接合装置は、電子部品のバンプを基板のランド部に加圧、接合し実装する電子部品接合装置において、前記電子部品を吸着する吸着支持面を有する接合ヘッドと、前記吸着支持面に保持された電子部品と共に、前記接合ヘッドを回転自在に支持し、当該接合ヘッドを回転駆動する角度調整用モータを保持する軸受ブロックと、この軸受ブロックの上部に配設され、一対のガイドレールに沿って上下動自在に支持された可動コラムと、この可動コラムに配設されたボールねじ機構と、このボールねじ機構によって前記可動コラムを直線駆動させる加圧用モータと、前記接合ヘッドに対向し、回路基板が位置決め載置されたX−Y移動テーブルとを備えた電子部品接合装置において、前記X−Y移動テーブルを、この発明の前記いずれかのX−Y移動テーブルとしたので、位置決め制御が容易となるばかりでなく、確実で精度の高い電子部品の接合作業ができ、生産性を向上させことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
電子部品のバンプを基板のランド部に加圧、接合し実装する電子部品接合装置において、前記電子部品を吸着する吸着支持面を有する接合ヘッドと、前記吸着支持面に保持された電子部品と共に、前記接合ヘッドを回転自在に支持し、当該接合ヘッドを回転駆動する角度調整用モータを保持する軸受ブロックと、この軸受ブロックの上部に配設され、一対のガイドレールに沿って上下動自在に支持された可動コラムと、この可動コラムに配設された送り機構と、この送り機構によって前記可動コラムを直線駆動させる加圧用モータと、前記接合ヘッドに対向し、回路基板が位置決め載置されたX−Y移動テーブルとを備えた電子部品接合装置において、前記X−Y移動テーブルが、Xテーブルと、このXテーブル上に載置されたYテーブルとからなり、前記XテーブルおよびYテーブルは、基台の長手方向に並設された一対のレールと、このレール間に配設され、基台の両端部に回転自在に支承されたねじ軸、およびこのねじ軸に多数のボールを介して外挿されたナットからなるボールねじ機構と、前記ねじ軸の一端に連結された駆動モータと、前記基台の上部に載置され、前記ナットが回転不可に固定されたステージとをそれぞれ備え、前記レールに断面がV字型の凹溝が長手方向に沿って形成され、この凹溝に嵌合する鞍部が前記ステージの下面に突設され、前記凹溝と鞍部間に転がり軸受からなる直動軸受が介装されると共に、前記ステージの下面に、前記一対のレールに沿ってそれぞれの長手方向に少なくとも一対の永久磁石が垂下され、この永久磁石を前記基台に所定のエアギャップを介して対峙させて前記基台の方向に所定の磁気吸引力を作用させた。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基いて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る電子部品接合装置の一実施形態を示す斜視図、図2は、図1のX−Y移動テーブルを示す平面図、図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。なお、本実施形態では、横振動方式の超音波ホーンを利用して電子部品に水平方向の超音波振動を付与することで溶融接合し実装する電子部品接合装置を例に挙げて説明する。
【0025】
図1において、電子部品接合装置は、先端側に二股状に傾斜する横振動方式の超音波ホーン1を備えている。超音波ホーン1の中心軸上には超音波振動発生器2が接続され、この超音波振動発生器2で発生する所定の周波数により超音波ホーン1に横振動が発生するようになっている。超音波振動発生器2はブラケット3により保持され、超音波ホーン1が斜め上方に傾斜するように固定ブロック4に支持されている。超音波ホーン1の傾斜角度は、下向きの吸着支持面1aが垂線に対して直交する水平向きになるよう10〜15°に設定されている。
【0026】
超音波ホーン1および超音波振動発生器2を保持している固定ブロック4は、回転角調整ブロック5に固定されている。この回転角調整ブロック5は、軸受ブロック6を介して垂直向きに配設されたステッピングモータ等の角度調整用モータ7に連結されている。
【0027】
駆動機構は、X−Y移動テーブル8上に垂下された一対のガイドレール9、9と、このガイドレール9、9に沿ってスライド自在に支持された可動コラム10と、この可動コラム10に連結され、一対のガイドレール9、9間に配設されたボールねじ機構11と、このボールねじ機構11のねじ軸11aに連結され、回路基板13に可動コラム10を接近移動させる接近移動用モータ12aと、回路基板13にチップ部品(図示せず)を接触させて加圧するリニアモータからなる加圧用モータ12bとを備えている。ボールねじ機構11を構成するナット(図示せず)は、回転自在に支承されたねじ軸11aに外挿され、可動コラム10に回転不可に固定されている。このボールねじ機構11によって接近移動用モータ12aの回転は直線運動に変換され、可動コラム10が上下動する。
【0028】
X−Y移動テーブル8上には回路基板13が位置決め載置され、可動コラム10の下降に伴い、角度調整用モータ7、軸受ブロック6、回転角調整ブロック5、固定ブロック4および超音波ホーン1等が回路基板13に最接近する。そして、超音波ホーン1に吸着された状態でベアチップ等のチップ部品が加圧用モータ12bによって回路基板13に押し付けられて振動が付与される。圧力検出器(図示せず)により検出された出力信号はパソコン(図示せず)から指令データが入力されている荷重制御ユニットにて読み込まれて荷重制御される。この荷重制御ユニットから指令データに基いた荷重信号として加圧用モータ12bが駆動され、圧力検出器への加圧力を調整する。この時加圧される圧力値は、加圧用モータ12bと圧力検出器と荷重制御ユニット(図示せず)とのクローズドフィードバック制御によって正確かつ一定になるように設定することができ、接合部の接合強度等の信頼性を高めることができる。なお、ここでは、可動コラム10を接近移動させる接近移動用モータ12aと、回路基板13にチップ部品を接触させて加圧する加圧用モータ12bとからなる2つの駆動モータを例示したが、無論、接近移動用モータ12aをさらに加圧用として使用しても良い。
【0029】
ベアチップ用カメラ(図示せず)は、例えばCCDカメラ等の上下2視野小型カメラからなり、X−Y移動テーブル8の上方で進退自在に配設されている。荷重制御ユニットはCRTを備えた制御用コンピュータを備え、CRTの表示画面を見ながらキーボードから入力されるチップ部品の種類等の情報パラメータと、その制御用コンピュータに内蔵されたプログラムにしたがって、電子部品接合装置の各部の動作を制御する。また、ベアチップ用カメラの撮影画像を画像処理し、その結果から超音波ホーン1で移送中のチップ部品と回路基板13との相対位置を確認する。
【0030】
X−Y移動テーブル8は、図2および図3に示すように、Xテーブル14と、このXテーブル14上に載置されたYテーブル15とからなる。なお、図2において、構造を明確に示すため、一部の部品(Yステージ)を削除した状態で表示している。Xテーブル14は、X基台20上に、長手方向に沿って並設された一対のレール16、16と、このレール16、16間に配設されたボールねじ機構17と、このボールねじ機構17を構成するねじ軸17aの一端にカップリング18を介して連結された駆動モータ19と、X基台20の上部に配設され、ボールねじ機構17を構成するナット17bが連結されたXステージ21とを備えている。そして、ねじ軸17aは、X基台20の両端部に装着された転がり軸受22、22を介して回転自在に支承されていると共に、ナット17bはXステージ21に回転不可に固定されている。したがって、駆動モータ19の回転が、ナット17bを介してXステージ21の直線方向の駆動に変換される。
【0031】
Xテーブル14と同様に、Yテーブル15は、Y基台28上に、長手方向に沿って並設された一対のレール24と、このレール24間に配設されたボールねじ機構25と、このボールねじ機構25を構成するねじ軸25aの一端にカップリング26を介して連結された駆動モータ27と、Y基台28の上部に配設され、ボールねじ機構25を構成するナット25bが連結されたYステージ29とを備えている。そして、ねじ軸25aは、Y基台28の両端部に装着された転がり軸受30、30を介して回転自在に支承されていると共に、ナット25bはYステージ29に回転不可に固定されている。したがって、駆動モータ27の回転が、ナット25bを介してYステージ29の直線方向の駆動に変換される。
【0032】
図3に示すように、Y基台28上に並設されたレール24、24には断面がV字型の凹溝24aが長手方向に沿って形成され、この凹溝24aに嵌合し、先端部の断面がV字型に形成された鞍部31がYステージ29の下面に突設されている。なお、鞍部31はYステージ29に一体に形成されていても、また別体のものを接合させて一体化されていても良い。そして、凹溝24aと鞍部31間に有限形針状ころ軸受からなる直動軸受32が介装されている。これらレール24、鞍部31および直動軸受32からなる案内部33は転がり案内されているため、低摩擦で滑らかな直線運動が得られる。図示はしないが、Xテーブル14においてもこのYテーブル15と同様の案内部を備えている。
【0033】
なお、ここでは、直動軸受32として、断面がV字型の凹溝24aと、これに嵌合される鞍部31間に介装された有限形針状ころ軸受を例示したが、これに限らず、転がり案内であれば良く、有限形玉軸受をはじめクロスローラ軸受のようなものであっても良い。
【0034】
本実施形態では、Xステージ21の下面21aに、一対のレール16、16のそれぞれの長手方向に沿って少なくとも一対のネオジム磁石等からなる永久磁石23、23が固定され、X基台20に所定のエアギャップを介して対峙している。これにより、Xステージ21にはX基台20の方向に常に所定の磁気吸引力が作用し、図示しない案内部には上下方向の予圧が安定して付与される。
【0035】
また、X基台20には、その長手方向に沿って磁気透磁率の大きな電磁材料鋼板等からなる磁極34が固着されている(図2参照)。これにより、一層磁気吸引力を増大させることができ、Xテーブル14の軽量・コンパクト化ができる。なお、Xステージ21には、後述するYステージ29の重量が加算されるため、Yステージ29が軽量なアルミ合金やセラミックス等で構成されていない限り、この種の磁気吸引力による予圧は必ずしも必要ではない。
【0036】
一方、Yステージ29の下面29aには永久磁石35が固定され、Y基台28に所定のエアギャップを介して対峙している。これにより、Yステージ29にはY基台28の方向に常に所定の磁気吸引力が作用し、案内部33は上下方向の予圧が付与された状態となっている。なお、Y基台28には、その長手方向に沿って磁気透磁率の大きな電磁材料鋼板等からなる磁極36が固着されている。これにより、一層磁気吸引力を増大させることができ、Yテーブル15の軽量・コンパクト化ができる。したがって、Xステージ21およびYステージ29に所定量以上の余分な重量を加えなくとも浮き上がりを防止することができ、剛性および位置決め精度を向上させることができる。
【0037】
本出願人が実施した磁気吸引力とエアギャップとの関係を検証した結果を図4に示す。ここで、永久磁石にネオジム磁石(39mm、磁束密度0.49T)を4個、磁極には冷間圧延鋼板(JIS規格のSPCC系)を使用した。図4からも判るようにエアギャップ0.5mmで304Nの磁気吸引力を得ることができた。このように、エアギャップを調整することにより、磁気吸引力の調整、すなわち、テーブルの仕様に応じてその案内部の予圧を所望の値に調整することができる。
【0038】
これらの試験結果からも判るように、本実施形態では、案内部に転がり案内方式を採用すると共に、ステージと基台間に永久磁石を配し、その磁気吸引力により予圧を付与するようにしたので、テーブルの重量を増大させることなく、テーブルの浮き上がりを防止し、低摩擦で滑らかな直線運動が得られると共に、剛性および位置決め精度を向上させたX−Y移動テーブルを提供することができる。
【0039】
また、このX−Y移動テーブル8を備えた電子部品接合装置にあっては、位置決め制御が容易となるばかりでなく、確実で精度の高い電子部品の接合作業ができ、生産性を向上させことができる。
【0040】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る電子部品接合装置は、フリップチップ等のチップ部品接合に限らず、例えばギャングボンダーやその他端子接合等、半導体部品一般の電子部品接合装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る電子部品接合装置の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の要部を断面した平面図である。
【図3】同上、III−III線に沿った断面図である。
【図4】磁気吸引力とエアギャップとの関係を検証した結果を示したグラフである。
【図5】従来の電子部品接合装置の全体の構成図である。
【図6】同上、X−Y移動テーブルを示す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1・・・・・・・・・・・・・・・・・超音波ホーン
1a・・・・・・・・・・・・・・・・吸着支持面
2・・・・・・・・・・・・・・・・・超音波振動発生器
3・・・・・・・・・・・・・・・・・ブラケット
4・・・・・・・・・・・・・・・・・固定ブロック
5・・・・・・・・・・・・・・・・・回転角調整ブロック
6・・・・・・・・・・・・・・・・・軸受ブロック
7・・・・・・・・・・・・・・・・・角度調整用モータ
8・・・・・・・・・・・・・・・・・X−Y移動テーブル
9・・・・・・・・・・・・・・・・・ガイドレール
10・・・・・・・・・・・・・・・・可動コラム
11、17、25・・・・・・・・・・ボールねじ機構
11a、17a、25a・・・・・・・ねじ軸
12a・・・・・・・・・・・・・・・接近移動用モータ
12b・・・・・・・・・・・・・・・加圧用モータ
13・・・・・・・・・・・・・・・・回路基板
14・・・・・・・・・・・・・・・・Xテーブル
15・・・・・・・・・・・・・・・・Yテーブル
16、24・・・・・・・・・・・・・レール
17b、25b・・・・・・・・・・・ナット
18、26・・・・・・・・・・・・・カップリング
19、27・・・・・・・・・・・・・駆動モータ
20・・・・・・・・・・・・・・・・X基台
21・・・・・・・・・・・・・・・・Xステージ
21a、29a・・・・・・・・・・・下面
22、30・・・・・・・・・・・・・転がり軸受
23、35・・・・・・・・・・・・・永久磁石
24a・・・・・・・・・・・・・・・凹溝
28・・・・・・・・・・・・・・・・Y基台
29・・・・・・・・・・・・・・・・Yステージ
31・・・・・・・・・・・・・・・・鞍部
32・・・・・・・・・・・・・・・・直動軸受
33・・・・・・・・・・・・・・・・案内部
34、36・・・・・・・・・・・・・磁極
51・・・・・・・・・・・・・・・・超音波ホーン
52・・・・・・・・・・・・・・・・吸着支持面
53・・・・・・・・・・・・・・・・超音波振動発生器
54・・・・・・・・・・・・・・・・ブラケット
55・・・・・・・・・・・・・・・・固定ブロック
56・・・・・・・・・・・・・・・・回転角調整ブロック
57・・・・・・・・・・・・・・・・軸受ブロック
58・・・・・・・・・・・・・・・・モータ軸
59・・・・・・・・・・・・・・・・回転角調整用モータ
60・・・・・・・・・・・・・・・・ガイドレール
61・・・・・・・・・・・・・・・・可動枠
62・・・・・・・・・・・・・・・・加圧ブロック
63・・・・・・・・・・・・・・・・ねじブロック
64・・・・・・・・・・・・・・・・圧力調整用モータ
65・・・・・・・・・・・・・・・・ねじ軸
66・・・・・・・・・・・・・・・・圧力検出器
67・・・・・・・・・・・・・・・・パソコン
68・・・・・・・・・・・・・・・・荷重制御ユニット
69・・・・・・・・・・・・・・・・X−Y移動テーブル
70・・・・・・・・・・・・・・・・回路基板
71・・・・・・・・・・・・・・・・チップ部品
72・・・・・・・・・・・・・・・・Xテーブル
73・・・・・・・・・・・・・・・・Yテーブル
74・・・・・・・・・・・・・・・・レール
75・・・・・・・・・・・・・・・・直動軸受
76・・・・・・・・・・・・・・・・ボールねじ機構
76a・・・・・・・・・・・・・・・ねじ軸
76b・・・・・・・・・・・・・・・ナット
77・・・・・・・・・・・・・・・・駆動モータ
78・・・・・・・・・・・・・・・・カップリング
79・・・・・・・・・・・・・・・・案内部
80・・・・・・・・・・・・・・・・鞍部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Xテーブルと、このXテーブル上に載置されたYテーブルとからなり、前記XテーブルおよびYテーブルは、基台の長手方向に並設された一対のレールと、このレール間に配設され、基台の両端部に回転自在に支承されたねじ軸、およびこのねじ軸に多数のボールを介して外挿されたナットからなるボールねじ機構と、前記ねじ軸の一端に連結された駆動モータと、前記基台の上部に載置され、前記ナットが回転不可に固定されたステージとをそれぞれ備え、前記レールに断面がV字型の凹溝が長手方向に沿って形成され、この凹溝に嵌合する鞍部が前記ステージの下面に突設され、前記凹溝と鞍部間に転がり軸受からなる直動軸受が介装されたX−Y移動テーブルにおいて、
少なくとも前記Yテーブルのステージの下面に永久磁石が垂下され、この永久磁石を前記基台に所定のエアギャップを介して対峙させて前記基台の方向に所定の磁気吸引力を作用させたことを特徴とするX−Y移動テーブル。
【請求項2】
前記永久磁石が、前記一対のレールに沿ってそれぞれの長手方向に少なくとも一対固定されている請求項1に記載のX−Y移動テーブル。
【請求項3】
前記基台に、その長手方向に沿って磁気透磁率の大きな鋼板からなる磁極が固着されている請求項1または2に記載のX−Y移動テーブル。
【請求項4】
電子部品のバンプを基板のランド部に加圧、接合し実装する電子部品接合装置において、前記電子部品を吸着する吸着支持面を有する接合ヘッドと、前記吸着支持面に保持された電子部品と共に、前記接合ヘッドを回転自在に支持し、当該接合ヘッドを回転駆動する角度調整用モータを保持する軸受ブロックと、この軸受ブロックの上部に配設され、一対のガイドレールに沿って上下動自在に支持された可動コラムと、この可動コラムに配設された送り機構と、この送り機構によって前記可動コラムを直線駆動させる加圧用モータと、前記接合ヘッドに対向し、回路基板が位置決め載置されたX−Y移動テーブルとを備えた電子部品接合装置において、
前記X−Y移動テーブルを、前記請求項1乃至3いずれかに記載のX−Y移動テーブルとしたことを特徴とする電子部品接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−114557(P2006−114557A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−297804(P2004−297804)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(392032605)榎本工業株式会社 (6)
【出願人】(590002389)静岡県 (173)
【Fターム(参考)】