説明

X線シアリング干渉計

【課題】X線光学素子の位置決め精度を緩和でき、可干渉性の低いX線源でもX線干渉を実現でき、一般用途への実用化が図られるX線シアリング干渉計を提供する。
【解決手段】X線シアリング干渉計は、X線を分割するX線分割光学系10と、X線分割光学系10によって分割されたX線を干渉させるX線干渉光学系20などで構成され、X線分割光学系10とX線干渉光学系20との間には物体Wが配置され、X線分割光学系10は、間隔D1で配置された一対の人工格子11,12と、人工格子12からの回折X線のうち所望の回折X線だけをブラッグ回折によって選択する結晶格子13を含み、X線干渉光学系20は、間隔D2で配置された一対の人工格子21,22と、人工格子22からの回折X線のうち所望の回折X線だけをブラッグ回折によって選択する結晶格子23を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体のX線位相分布を計測するためのX線シアリング干渉計に関する。
【背景技術】
【0002】
X線を用いた非破壊検査や医療診断の分野において、一般には、物体のX線吸収による強度分布をX線フィルムやX線センサを用いて計測している。これに対してX線が物体を通過する際にX線の位相が変化することから、X線干渉を利用して位相情報を計測することによって物体のX線透過画像を得る手法が提案されている。
【0003】
X線干渉計は、2つのタイプに大別される。第1のタイプは、物体を通過したX線と、物体外を通過したX線とを干渉させる参照光型干渉計である。第2のタイプは、物体を通過した2つのX線を干渉させるシアリング型干渉計であり、物体内において少し位置ずれした二光線を干渉させる。この位置ずれをシア(Shear)と称する。
【0004】
シアリング干渉計の内、単結晶ブレードを用いるもの(特許文献1、非特許文献1参照)では、シリコンからなる単結晶ブレードを2枚1組で用い、結晶格子によるブラッグ回折を利用している。このブレードをX線分割系とX線干渉系の2組を用いて可干渉性のよくないX線光源でも用いることができる。しかし、ブラッグ回折を利用しているため、シア量が大きくなり空間的分解能を向上することができない。また、シリコン結晶の大きさに限りがあるため、大きな物体に対して用いることができない。
【0005】
シアリング干渉計の内、人工格子を用いるもの(非特許文献2参照)は、分割光学系を用いず、干渉光学系のみの1組を用いている。そのため、シンクロ可干渉性のよい光源を使用する必要がある。
【0006】
【特許文献1】特許第3502182号公報
【非特許文献1】K. Iwata, A. Kawasaki and H. Kikuta, "Phase Imaging with a Phase-Shifting X-Ray Shearing Interferometer Using an X-Ray Line Source", Optical Review, 7(6), pp. 561-565, 2000
【非特許文献2】C. David, B. Noehammer, H. H. Solak and E. Ziegler, "Differential x-ray phase contrast imaging using a shearing interferometer", Applied Physics Letters, Vol. 81(17), pp. 3287-3289, October 21, 2002
【非特許文献3】Momose,A., Takeda, T., Itai, Y., Hirano, K., 1996, Phase-contrast X-ray computed tomography for observing biological soft tissues, Nature Medicine,2, 473.
【非特許文献4】Momose, A., Kawamoto, S., Koyama, I., Hamaishi, Y., Takai, K., Suzuki, Y., 2003, Demonstration of X-ray Talbot interferometry, Jpn. J. Appl. Phys., 42, L866.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
X線シアリング干渉計では、シア量の大きい干渉計で小さい物体に用いるか、可干渉性のよいX線源としてシンクロトロン放射光(たとえば、スプリング8)を使用する必要がある。そのため、研究用途に限定され、非破壊検査や医療診断など一般用途への実用化が困難となる。そのため、高圧電源X線管など、普通のX線源を用いて、しかも、分解能よく大きな物体に利用可能なX線シアリング干渉計が要望されている。
【0008】
従来のシアリング干渉計(特許文献1参照)では、X線分割用に2枚1組の単結晶ブレードと、X線干渉用に2枚1組の単結晶ブレードと、計2組のブレード対を用いているため、可干渉性の良くないX線源であっても比較的良好な干渉縞が得られている。また、人工格子干渉計(非特許文献2参照)では、2枚1組の結晶格子と人工格子を用いて物体のX線干渉像が得られているが、可干渉性の良いX線源が不可欠である。
【0009】
回折に関与する格子ピッチは結晶の格子定数(一般には、数Åのオーダー)で規定されるため、X線回折角が必然的に大きくなり、2組のブレード対の間の相対位置調整が極めて困難となる。また、物体での空間分解能を高めるため、シア量を小さくするには、1組内でのブレード間隔を1mm以下に設定する必要がある。こうしたブレード対を単結晶の加工によって製造することも極めて困難である。
【0010】
本発明の目的は、X線光学素子の位置決め精度を緩和でき、可干渉性の低いX線源でもX線干渉を実現でき、一般用途への実用化が図られるX線シアリング干渉計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るX線シアリング干渉計は、X線を分割するためのX線分割光学系と、
X線分割光学系によって分割されたX線を干渉させるためのX線干渉光学系とを備え、
X線分割光学系とX線干渉光学系との間に配置された物体のX線位相差情報が得られ、
X線分割光学系は、所定間隔で配置された第1人工格子および第2人工格子と、第2人工格子からの回折X線のうち所望の回折X線だけをブラッグ回折によって選択するための第1結晶格子とを含み、
X線干渉光学系は、所定間隔で配置された第3人工格子および第4人工格子と、第4人工格子からの回折X線のうち所望の回折X線だけをブラッグ回折によって選択するための第2結晶格子とを含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るX線シアリング干渉計は、X線を発生するためのX線源と、
X線源からのX線を分割するためのX線分割光学系と、
X線分割光学系によって分割されたX線を干渉させるためのX線干渉光学系と、
X線干渉光学系によって干渉したX線を撮像して、X線分割光学系とX線干渉光学系との間に配置された物体のX線位相差情報を得るためのX線撮像素子とを備え、
X線分割光学系は、所定間隔で配置された第1人工格子および第2人工格子と、第2人工格子からの回折X線のうち所望の回折X線だけをブラッグ回折によって選択するための第1結晶格子とを含み、
X線干渉光学系は、所定間隔で配置された第3人工格子および第4人工格子と、第4人工格子からの回折X線のうち所望の回折X線だけをブラッグ回折によって選択するための第2結晶格子とを含み、
X線源のX線軸に対して垂直な第1直線、第1結晶格子の回折中心を通過する第2直線、および物体を通過する第3直線が第1点で交差し、第1直線と第2直線のなす角および第2直線と第3直線のなす角が互いに等しく、かつ、物体を通過する第4直線、第2結晶格子の回折中心を通過する第5直線、およびX線撮像素子の光軸に対して垂直な第6直線が第2点で交差し、第4直線と第5直線のなす角および第5直線と第6直線のなす角が互いに等しくなるように、X線源、第1結晶格子、第2結晶格子およびX線撮像素子が配置されていることを特徴とする。
【0013】
本発明において、X線源は、X線シア方向に延びる線状のX線を発生し、X線撮像素子は、エリアセンサで構成されることが好ましい。
【0014】
また本発明において、第1結晶格子および第2結晶格子は、透過ブラッグ回折または反射ブラッグ回折を行うことが好ましい。
【0015】
また、本発明に係るX線シアリング干渉計は、X線を発生するためのX線源と、
X線源からのX線を分割するためのX線分割光学系と、
X線分割光学系によって分割されたX線を干渉させるためのX線干渉光学系と、
X線干渉光学系によって干渉したX線を撮像して、X線分割光学系とX線干渉光学系との間に配置された物体のX線位相差情報を得るためのX線撮像素子と、
X線撮像素子からの撮像信号に基づいて、物体のX線位相画像を算出するための信号処理回路とを備え、
X線分割光学系は、所定間隔で配置された第1人工格子および第2人工格子と、第2人工格子からの回折X線のうち所望の回折X線だけをブラッグ回折によって選択するための第1結晶格子とを含み、
X線干渉光学系は、所定間隔で配置された第3人工格子および第4人工格子と、第4人工格子からの回折X線のうち所望の回折X線だけをブラッグ回折によって選択するための第2結晶格子とを含み、
X線源、X線分割光学系、X線干渉光学系およびX線撮像素子が物体の周りを相対的に旋回することにより、信号処理回路が物体のCT画像を算出することを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係るX線シアリング干渉計は、
X線を分割するための第1格子と、
第1格子によって分割されたX線を干渉させるための第2格子とを備え、
第1格子の格子ピッチをp1、第2格子の格子ピッチをp2(但し、p1≠p2)、第1格子と第2格子の間の距離L1、第2格子と観測面との間の距離をL2として、
L1/L2=(p1−p2)/p2
を満たすことを特徴とする。
【0017】
本発明において、各人工格子は、0.1μm〜100μmの格子ピッチを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、X線分割光学系およびX線干渉光学系において、従来の結晶格子の代わりに、人工格子を採用している。人工格子は、結晶格子定数より大きな格子ピッチを有する周期的構造をエッチングなどで高精度に製作したものである。そのため、回折に関与する格子ピッチが従来より大きくなり、逆にX線回折角は小さくなることから、X線分割光学系とX線干渉光学系との間の相対位置決め精度を緩和することができる。
【0019】
また、人工格子によるX線回折角が小さいことから、人工格子対の間隔を大きく設定してもシア量を小さく維持できるため、物体での高い空間分解能を達成できる。さらに、人工格子対の間隔が従来よりも大きくなると、人工格子の製作、X線光学系の組立て、アライメントなどが極めて容易になり、コスト低減化が図られる。
【0020】
また、人工格子による回折は、従来のようなブラッグ回折ではないため、複数の回折X線が発生する。そのため、人工格子対の後段に結晶格子を配置し、結晶格子のブラッグ回折を利用することにより、特定の回折X線(典型的には、+1次および−1次の回折X線)だけを選択し、不必要な回折X線(典型的には、+2次以上および−2次以下の回折X線)を除去することができる。
【0021】
従来の人工格子を用いたシアリング干渉計(非特許文献2参照)では、2枚1組の結晶格子と人工格子しかを用いていないが、本発明では、X線分割光学系およびX線干渉光学系のそれぞれに2枚1組の結晶格子および人工格子を用いている。その結果、可干渉性の低いX線源であっても、シアリング干渉を実現できるようになり、非破壊検査や医療診断など一般用途への実用化が容易になる。
【0022】
さらに、X線分割光学系およびX線干渉光学系を物体の周りに同期旋回させて、物体に関して多方向のX線透過像を取得し、所定の信号処理を施すことによって、物体のCT(Computed Tomography)画像を得ることができる。こうしたCT画像は、物体のX線屈折率分布に対応するものであり、従来のX線吸収画像と相違するため、新たな解析手法を提供することができる。
【0023】
また、異なる格子ピッチを有する2枚の格子を用いたシアリング干渉計では、第1格子に入射するX線のうち、第1格子で+1次回折X線となり、第2格子で−1次回折X線となるX線と、第1格子で−1次回折X線となり、第2格子で+1次回折X線となるX線は、第2格子から距離L2にある観測面で合致するようになる。そのため、物体を第2格子の前方または後方に配置した場合、物体中の僅かに離れた位置をそれぞれ通過するX線の干渉縞が観測面で得られるようになる。その結果、可干渉性の低いX線源であっても、シアリング干渉を実現できるようになり、非破壊検査や医療診断など一般用途への実用化が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
実施の形態1.
図1(a)は本発明の第1実施形態を示す構成図であり、図1(b)は人工格子の一例を示す斜視図である。X線シアリング干渉計は、X線分割光学系10と、X線干渉光学系20などを備える。計測対象である物体Wは、X線分割光学系10とX線干渉光学系20の間に配置される。
【0025】
X線分割光学系10は、前段に設けられたX線源(不図示)からのX線をシア分割する機能を有し、一対の人工格子11,12と、結晶格子13などで構成される。人工格子11,12は、X線軸に沿った間隔D1を隔てて、互い平行に配置される。
【0026】
X線干渉光学系20は、X線分割光学系10によって分割されたX線を干渉させる機能を有し、一対の人工格子21,22と、結晶格子23などで構成される。人工格子21,22は、X線軸に沿った間隔D2を隔てて、互い平行に配置される。間隔D1,D2は、X線分割光学系10でのシア量とX線干渉光学系20でのシア量が同じになるように、設定される。
【0027】
人工格子11,12,21,22は、図1(b)に示すように、板材の表面にエッチングなどで周期的構造を高精度に形成したものであり、結晶格子定数より大きな格子ピッチpを有する。波長1pm〜1nm程度のX線を回折させる場合、例えば、0.1μm〜100μmの格子ピッチpに設定することが好ましい。
【0028】
また、周期的構造の高さhは、5μm〜100μm程度が好ましく、一般に、アスペクト比(=高さh/幅k)が大きいほど、高い回折効率が得られる。また、板材のX線屈折率は高いほど、高い回折効率が得られるため、例えば、シリコンなどの半導体結晶板、金属板、ガラス板を用いて周期的構造を形成することが好ましい。
【0029】
また、人工格子11,12,21,22において、0次回折X線を低減するには、アスペクト比(=h/k)の大きい周期的構造が必要となる。空気と人工格子のX線屈折率の差をΔnとして、人工格子の高さhは、下記の式(1)となるように設定することが好ましい。
【0030】
【数1】

【0031】
例えば、屈折率差Δn=10−6、λ=0.1nmの場合、高さh=50μmとなる。人工格子の材料としてシリコン単結晶を使用した場合、異方性エッチングを適用することによって、高いアスペクト比の人工格子が得られる。さらに、入射X線軸に対して壁面に沿って人工格子を傾斜させることによって、X線に作用する見かけのアスペクト比を高くすることができる。
【0032】
結晶格子13,23は、シリコンなどの半導体や金属からなる単結晶で構成される。結晶格子のブラッグ回折を利用することにより、前段に配置された人工格子が発生する複数の回折X線のうち、特定の回折X線、例えば、+1次および−1次の回折X線だけを選択し、不必要な回折X線、例えば、+2次以上および−2次以下の回折X線を除去するX線フィルタとして機能する。なお、本実施形態では、結晶格子13,23を透過ブラッグ回折となるように配置した例を示している。
【0033】
次に、X線シアリング干渉計の動作について説明する。X線源からのX線がX線分割光学系10の人工格子11に入射すると、X線軸および格子配列方向を含む面内で複数方向の回折X線が発生する。なお、図1(a)では、理解容易のため、+1次および−1次の回折X線だけを図示している。
【0034】
人工格子12は、人工格子11と平行に間隔D1で配置され、人工格子11からの複数の回折X線をさらに回折して、複数の回折X線を発生する。例えば、人工格子11からの+1次回折X線は、人工格子12による−1次の回折によって、X線軸と平行なX線に変換される。また、人工格子11からの−1次回折X線は、人工格子12による+1次の回折によって、X線軸と平行なX線に変換される。こうして一定間隔で互いに平行な2つのX線が得られる。
【0035】
一般に、人工格子11からの+N次回折X線は、人工格子12による−N次の回折によって、X線軸と平行なX線に変換され、人工格子11からの−N次回折X線は、人工格子12による−N次の回折によって、X線軸と平行なX線に変換される。しかしながら、高いアスペクト比を有する人工格子11,12を使用した場合、+2次以上および−2次以下の回折X線の強度は格段に小さくなることから、以下の説明では無視することにする。
【0036】
一方、人工格子11での回折次数と人工格子12での回折次数が、正負を逆にして一致しない回折X線は、X線軸に対して斜めに進行する。
【0037】
結晶格子13は、入射X線軸に対して、固有の結晶格子定数に対応した特定のブラッグ回折角となるように配置される。従って、入射X線軸に対して平行なX線は特定の方向に回折されるが、入射X線軸に対して非平行なX線はブラッグ回折が生じないため、ブラッグ回折方向に進行するX線だけを選択的に利用することができる。
【0038】
図1(a)において、X線の波長λ、格子ピッチpを用いて、人工格子11での+1次回折X線と−1次回折X線のなす角度αは、下記の式(2)で表される。また、人工格子12でのシア量Sは、間隔D1を用いて下記の式(3)で表される。
【0039】
【数2】

【0040】
例えば、格子ピッチp=1μm、間隔D1=100mm、波長λ=0.1nmの場合、角度α=2×10−4(rad)、シア量S=20μmとなる。
【0041】
物体Wには、シア量Sを持つ2つのX線が通過する。このとき物体WのX線屈折率およびX線通過長に応じて2つのX線の間に位相差が生じ、X線干渉光学系20に入射する。
【0042】
X線干渉光学系20では、物体Wによって位相差が生じた2つのX線同士を干渉させる。シア量Sを持つ2つのX線が人工格子21に入射すると、X線軸および格子配列方向を含む面内で複数方向の回折X線が発生する。なお、図1(a)では、理解容易のため、+1次および−1次の回折X線だけを図示している。
【0043】
人工格子22は、人工格子21と平行に間隔D2で配置され、人工格子21からの複数の回折X線をさらに回折して、複数の回折X線を発生する。例えば、人工格子21からの+1次回折X線は、人工格子22による−1次の回折によって、X線軸と平行なX線に変換される。また、人工格子21からの−1次回折X線は、人工格子22による+1次の回折によって、X線軸と平行なX線に変換される。X線干渉光学系20でのシア量は、上記式(3)でのD1を間隔D2で置換すれば、同様に算出できる。間隔D1,D2は、X線分割光学系10でのシア量とX線干渉光学系20でのシア量が同じになるように設定され、人工格子11,12の格子ピッチp1と人工格子21,22の格子ピッチp2が互いに異なる場合、間隔D1,D2を調整することによって、各光学系でのシア量を一致させることができる。
【0044】
そのうち、物体Wを通過した2つのX線のうち、一方についての−1次回折X線と、他方についての+1次回折X線とが、人工格子22の格子面で交差し、さらに人工格子22によってX線軸と平行なX線に変換され、互いに干渉する。
【0045】
結晶格子23は、結晶格子13と同様に、入射X線軸に対して、固有の結晶格子定数に対応した特定のブラッグ回折角となるように配置される。従って、入射X線軸に対して平行なX線は特定の方向に回折されるが、入射X線軸に対して非平行なX線はブラッグ回折が生じないため、ブラッグ回折方向に進行するX線だけを選択することができる。
【0046】
こうしてX線源で発生した1つのX線は、X線分割光学系10によって時間的かつ空間的コヒーレンスを保持する2つのX線に分割された後、2つのX線はシア量Sでもって物体Wを通過して、再びX線干渉光学系20において干渉する配置が存在する。こうした配置によって、物体Wの位相差に応答するX線シアリング干渉計を実現できる。
【0047】
実施の形態2.
図2は、本発明の第2実施形態を示す構成図である。X線シアリング干渉計は、X線分割光学系10と、X線干渉光学系20などを備え、結晶格子13,14,23を反射ブラッグ回折となるように配置している。
【0048】
X線分割光学系10は、前段に設けられたX線源(不図示)からのX線をシア分割する機能を有し、図1(b)に示す一対の人工格子11,12と、結晶格子13などで構成される。人工格子11,12は、X線軸に沿った間隔D1を隔てて、互い平行に配置される。
【0049】
X線干渉光学系20は、X線分割光学系10によって分割されたX線を干渉させる機能を有し、図1(b)に示す一対の人工格子21,22と、結晶格子23などで構成される。人工格子21,22は、X線軸に沿った間隔D2を隔てて、互い平行に配置される。
【0050】
結晶格子14は、結晶格子13,23と同様に、シリコンなどの半導体や金属からなる単結晶で構成され、結晶格子のブラッグ回折を利用することにより、特定の回折X線だけを選択し、不必要な回折X線を除去するX線フィルタとして機能する。
【0051】
本実施形態では、結晶格子13,14,23として、いわゆる非対称反射X線結晶を採用し、反射ブラッグ回折となるように配置した例を示している。図2に示すように、結晶格子13,14,23の結晶方位を適切に設定することによって、結晶方位に関するブラッグ角が等しく、かつ、結晶表面に関してX線入射角よりX線回折角が大きくなり、2つのX線のシア量を拡大することができる。
【0052】
X線シアリング干渉計の動作は、図1の透過型のものと同様であり、X線源で発生した1つのX線は、X線分割光学系10によって時間的かつ空間的コヒーレンスを保持する2つのX線に分割された後、2つのX線はシア量Sでもって物体Wを通過して、再びX線干渉光学系20において干渉する配置が存在する。こうした配置によって、物体Wの位相差に応答するX線シアリング干渉計を実現できる。
【0053】
実施の形態3.
図3は、本発明の第3実施形態を示す構成図である。X線シアリング干渉計は、X線源1と、X線分割光学系10と、X線干渉光学系20と、X線撮像素子30と、信号処理回路32などで構成される。
【0054】
X線源1は、X線シア方向に延びる線状X線を発生する。
【0055】
X線分割光学系10は、前段に設けられたX線源(不図示)からのX線をシア分割する機能を有し、図1(b)に示す一対の人工格子11,12と、結晶格子13などで構成される。人工格子11,12は、X線軸に沿った間隔D1を隔てて、互い平行に配置される。
【0056】
X線干渉光学系20は、X線分割光学系10によって分割されたX線を干渉させる機能を有し、図1(b)に示す一対の人工格子21,22と、結晶格子23などで構成される。人工格子21,22は、X線軸に沿った間隔D2を隔てて、互い平行に配置される。
【0057】
結晶格子13,23は、シリコンなどの半導体や金属からなる単結晶で構成され、結晶格子のブラッグ回折を利用することにより、特定の回折X線だけを選択し、不必要な回折X線を除去するX線フィルタとして機能する。なお、本実施形態では、結晶格子13,23を透過ブラッグ回折となるように配置した例を示している。
【0058】
X線撮像素子30は、X線シア方向およびこれに垂直な方向に沿って多数の受光画素が配列したエリアセンサで構成され、受光したX線の強度分布に応じた画像信号を出力する。図3に示すシア面内おいて、X線源1からのX線はX線軸とほぼ平行に進行するため、X線撮像素子30では物体Wとほぼ等倍のX線像が撮像される。一方、シア面内と垂直な面内では、X線源1からのX線はX線軸に沿って拡がって進行するため、X線撮像素子30では(X線源1からX線撮像素子30までの光学長)/(X線源1から物体Wまでの光学長)という倍率で拡大した物体WのX線像が撮像される。
【0059】
信号処理回路32は、X線撮像素子30からの画像信号に所定の信号処理を施して、物体Wに関するX線位相画像を算出する。
【0060】
X線シアリング干渉計の動作は、図1のものと同様であり、X線源で発生した1つのX線は、X線分割光学系10によって時間的かつ空間的コヒーレンスを保持する2つのX線に分割された後、2つのX線はシア量Sでもって物体Wを通過して、再びX線干渉光学系20において干渉する配置が存在する。こうした配置によって、物体Wの位相差に応答するX線シアリング干渉計を実現できる。
【0061】
本実施形態では、線状X線を発生するX線源1を使用しているため、人体などの比較的大きな形状を有する物体Wの位相画像を得ることができる。従って、X線源1、X線分割光学系10、X線干渉光学系20およびX線撮像素子30が物体Wの周りを相対的に旋回することにより、物体Wを中心として複数方向から撮像した位相画像が得られる。信号処理回路32は、複数方向から撮像した位相画像に所定の断層画像アルゴリズムを適用することによって、物体WのCT(Computed Tomography)画像を算出することができる。
【0062】
なお、相対的な旋回とは、a)物体Wを固定して、X線シアリング干渉計が回転する場合、b)X線シアリング干渉計を固定して、物体Wが回転する場合、c)物体WおよびX線シアリング干渉計が互いに異なる速度で回転する場合、などを意味する。
【0063】
ここでは、結晶格子13,23を透過ブラッグ回折となるように配置した例を示したが、図2のように反射ブラッグ回折となる配置でも構わない。
【0064】
実施の形態4.
図4は、本発明の第4実施形態を示す構成図である。X線シアリング干渉計は、図3のものと同様に、X線源1と、X線分割光学系10と、X線干渉光学系20と、X線撮像素子30と、信号処理回路32などで構成される。
【0065】
本実施形態では、X線源1、結晶格子13,23およびX線撮像素子30を適切な配置に設定することによって、X線スペクトルの広がりによる影響を低減している。
【0066】
図4に示すように、X線分割光学系10に関して、X線軸およびX線シア方向を含む面内において、X線源1のX線軸に対して垂直で、X線焦点の長手方向と同じ方向に延びる直線をL1、結晶格子13の回折中心を通過する直線をL2、物体Wを通過する直線をL3とする。このとき直線L1、直線L2および直線L3は同一の点Oaで交差し、直線L1と直線L2のなす角βおよび直線L2と直線L3のなす角βが互いに等しくなるように、X線源1および結晶格子13の位置および姿勢を決定している。
【0067】
さらにX線干渉光学系20に関して、X線シア面内において、物体Wを通過する直線をL4、結晶格子23の回折中心を通過する直線をL5、X線撮像素子30の光軸に対して垂直で、撮像面30aの長手方向と同じ方向に延びる直線をL6とする。このとき直線L4、直線L5および直線L6は、同一の点Obで交差し、直線L4と直線L5のなす角βおよび直線L5と直線L6のなす角βが互いに等しくなるように、結晶格子23およびX線撮像素子30の位置および姿勢を決定している。
【0068】
こうした配置において、X線源1のある一点から発したX線に着目する。なお、他の点から発したX線についてはそのまま平行移動すれば、同様な議論を適用できる。結晶格子13を中心にしてX線源1および物体Wが配置されているため、結晶格子13によって異なる波長に対して異なる角度で回折したX線は、物体W上で同じ位置を通過するようになる。同様に、結晶格子23を中心にして物体WおよびX線撮像素子30が配置されているため、結晶格子23によって異なる波長に対して異なる角度で回折したX線は、X線撮像素子30上で同じ位置を通過するようになる。従って、X線スペクトルが広がっていても、シアリング干渉に関与するX線は、X線源1、物体WおよびX線撮像素子30で同じ位置を通過するようになるため、広いX線スペクトルに渡って干渉縞を観測することができる。
【0069】
シア量Sは、上記の式(3)で表されることから、物体WによるX線光路差Φはシア量Sに比例すると考えて、下記の式(4)で表される。なお、cは光速である。
【0070】
【数3】

【0071】
従って、X線位相差は波長に依存しない。すなわち、上述のような配置を採用することによって、X線スペクトルに依存せず、同じ干渉縞が現れる。その結果、X線スペクトルの広がりによる干渉縞のコントラスト低下を低減することができる。
【0072】
実施の形態5.
図5は本発明の第5実施形態を示す構成図であり、図5(a)は平面図、図5(b)は側面図である。X線シアリング干渉計は、図3のものと同様に、X線源1と、X線分割光学系10と、X線干渉光学系20と、X線撮像素子(不図示)と、信号処理回路(不図示)などで構成される。なお、理解容易のため、構成要素の図示を一部省略している。
【0073】
本実施形態では、人工格子11,12,21,22を入射X線軸に対して壁面に沿って角度ψで傾斜させることによって、X線に作用する見かけのアスペクト比を高くし、回折効率を向上させている。
【0074】
次に、図5(a)を用いて、格子間隔D1,D2と可干渉性について検討する。格子間隔の差をΔD(=D1−D2)とし、格子を通過したX線の角度をαとすると、人工格子12でのX線と人工格子22でのX線とは、ΔD×αだけずれることになり、空間的コヒーレンス条件を満足しない可能性が懸念される。空間的コヒーレンス条件は、コヒーレンスの広がりをt、スリットからの距離をr、スリット幅をw、波長をλとして、t=r×λ/wで表される。
【0075】
そこで、結晶格子13による回折角度の半値全幅をΔθ、X線源1から人工格子11までの距離をLAとして、人工格子11と結晶格子13はほほ同じ位置にあると考えると、人工格子11での有効なX線の広がりDwは、下記の式(5)で表される。
【0076】
【数4】

【0077】
例えば、Δθ=10−5、LA=1mとすると、Dw=10μmとなる。
【0078】
そこで、上記の空間的コヒーレンス条件を用いて、コヒーレンスの広がりtは下記の式(6)で表される。
【0079】
【数5】

【0080】
例えば、Δθ=10−5とすると、コヒーレンスの広がりt=40μmとなる。これが、格子間隔の差によるX線ずれΔD×αとほぼ一致すると考えた場合、α=2×10−4とすると、ΔD=200mmと計算される。即ち、格子間隔D1,D2の差が200mm以下であれば、空間的コヒーレンス条件を満足することになり、現実には、格子間隔誤差はほとんど影響しないことが判る。
【0081】
実施の形態6.
図6(a)、図6(b)は、本発明の第6実施形態を示す構成図である。図6(a)は、X線源1が平行なX線を発生する場合を示し、図6(b)は、X線源1が発散するX線を発生する場合を示す。
【0082】
X線シアリング干渉計は、X線源1と、第1格子41と、第2格子42と、X線撮像素子30と、信号処理回路32などで構成される。計測対象である物体Wは、第2格子42の前方または後方に配置される。
【0083】
第1格子41は、前方に設けられたX線源1からのX線をシア分割する機能を有する。第2格子42は、第1格子41によって分割されたX線を干渉させる機能を有する。第1格子41の格子ピッチと第2格子42の格子ピッチは互いに異なっているため、第1格子41の回折角度と第2格子42の回折角度も互いに異なることになる。
【0084】
異なる格子ピッチを有する2枚の格子を用いたシアリング干渉計では、第1格子41に入射するX線のうち、第1格子41で+1次回折X線となり、第2格子42で−1次回折X線となるX線と、第1格子41で−1次回折X線となり、第2格子42で+1次回折X線となるX線は、第2格子42から距離L2にある観測面で合致するようになる。そのため、物体Wを第2格子42の前方または後方に配置した場合、物体中の僅かに離れた位置をそれぞれ通過するX線の干渉縞が観測面で得られるようになる。
【0085】
第1格子41および第2格子42は、位相格子として形成され、各格子の谷の深さは、0次回折X線が消えるような深さに加工する。各格子41,42をシリコンや石英で作成した場合、格子の谷の深さは10〜20μm程度に設定される。このとき±1次回折X線が強く生ずるため、これらの干渉縞を得ることができる。
【0086】
まず図6(a)において、第2格子42のすぐ後に物体Wを配置し、物体Wが第2格子42と同じ位置にあると考える。第1格子41の格子ピッチをp1、第2格子42の格子ピッチをp2(但し、p1≠p2)、第1格子41と第2格子42の間の距離L1、第2格子42と観測面である撮像面30aとの間の距離をL2とし、第1格子41の回折角度をθ1、第2格子42の回折角度をθ2とする。第1格子41によるシア量sは、次のようになる。
【0087】
s=2×θ1×L1 …(7)
【0088】
観測面において、分割されたX線が一致することから、次の式が成立する。但し、λはX線の波長である。
【0089】
s=2×Δθ×L2 …(8)
Δθ=θ2−θ1=λ(1/p2−1/p1) …(9)
【0090】
これらの2つのシア量sが等しいとする。
L1/p1=(1/p2−1/p1)L2
書き換えると、
L1/L2=(p1−p2)/p2 …(10)
【0091】
従って、式(10)を満たすように、p1,p2,L1,L2を選択することによって、観測面において物体WのX線位相差に基づくX線干渉縞を得ることができる。また、式(10)では、波長λが現れていないことから、波長λによらず観測面が同じであることが判る。
【0092】
このとき干渉縞のピッチpiは、2Δθで決まる。
pi=λ/(2Δθ)=p1×p2/{2(p1−p2)} …(11)
【0093】
このピッチpiは、X線撮像素子30の分解能より充分に大きい必要がある。例えば、シア量をs=5μm、波長λ=0.1nmとし、第1格子41の格子ピッチp1=10μm、第2格子42の格子ピッチp2=10μmとし、L1=0.25m、L2=1mとする。このとき観測面における干渉縞のピッチpiは、20μmと計算される。
【0094】
第1格子41および第2格子42は、上述した各実施形態と同様に、図1(b)に示すように、板材の表面にエッチングなどで周期的構造を高精度に形成した人工格子であることが好ましく、結晶格子定数より大きな格子ピッチpを有する。波長1pm〜1nm程度のX線を回折させる場合、例えば、0.1μm〜100μmの格子ピッチpに設定することが好ましい。
【0095】
また、周期的構造の高さhは、5μm〜100μm程度が好ましく、一般に、アスペクト比(=高さh/幅k)が大きいほど、高い回折効率が得られる。また、板材のX線屈折率は高いほど、高い回折効率が得られるため、例えば、シリコンなどの半導体結晶板、金属板、ガラス板を用いて周期的構造を形成することが好ましい。
【0096】
次に、X線源1の点光源としての大きさについて検討する。図7に示すように、光源の半径をa、観測位置からそれを見込む角をγ、光源と観測位置の距離をLとすると、次の式が成立する。
γ=a/L …(12)
【0097】
このとき、観測位置での可干渉距離ρは、次の式で表される。
ρ=0.61×λ/γ …(13)
【0098】
これから、観測位置でX線が一致していると、干渉することが分かる。観測位置がΔLだけずれていると、X線のずれは次のようになる。
Δ=2×ΔL×sinΔθ …(14)
【0099】
光源の半径aは、次のように表される。
a=γL<<0.61Lλ/ρ=0.3Lλ/ΔL/Δθ=0.6Lp/ΔL …(15)
【0100】
例えば、L=L1+L2+2(m)とし、ΔLを10mmとすると、光源の大きさは3mm以上になる。即ち、光源の大きさはほとんど考えなくともよい。
【0101】
ところで、観測位置には、図7に示すように、干渉に関係ない回折X線も入射する。この回折X線は、干渉して欲しくない。回折X線の距離は、2θ×L2であることから、これが干渉しないように、次の式を満たせばよい。
a=γL>>0.61Lλ/(2θ×L2)=0.3L×p2/L2 …(16)
【0102】
これから、光源の大きさは8μm以上であればよいことが判る。
光源の大きさは、像の分解能に影響する。このとき、観測面上での広がりrは、次のように表される。
r=a×L2/(L−L2) …(17)
【0103】
この大きさは、光源の大きさとほぼ同じである。特に、人体などの計測では、50μmの分解能で充分であると考えられ、光源の大きさも50μm程度に設定すればよいことが判る。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、X線を用いた非破壊検査や医療診断の分野において、物体のX線透過画像が得られる点で有用な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】図1(a)は本発明の第1実施形態を示す構成図であり、図1(b)は人工格子の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示す構成図である。
【図3】本発明の第3実施形態を示す構成図である。
【図4】本発明の第4実施形態を示す構成図である。
【図5】本発明の第5実施形態を示す構成図であり、図5(a)は平面図、図5(b)は側面図である。
【図6】本発明の第6実施形態を示す構成図であり、図6(a)は平行X線を発生する場合、図6(b)は発散X線を発生する場合を示す。
【図7】X線源の大きさについての説明図である。
【符号の説明】
【0106】
1 X線源
10 X線分割光学系
11,12 人工格子
13,14 結晶格子
20 X線干渉光学系
21,22 人工格子
23 結晶格子
30 X線撮像素子
32 信号処理回路
41 第1格子
42 第2格子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を分割するためのX線分割光学系と、
X線分割光学系によって分割されたX線を干渉させるためのX線干渉光学系とを備え、
X線分割光学系とX線干渉光学系との間に配置された物体のX線位相差情報が得られるX線シアリング干渉計において、
X線分割光学系は、所定間隔で配置された第1人工格子および第2人工格子と、第2人工格子からの回折X線のうち所望の回折X線だけをブラッグ回折によって選択するための第1結晶格子とを含み、
X線干渉光学系は、所定間隔で配置された第3人工格子および第4人工格子と、第4人工格子からの回折X線のうち所望の回折X線だけをブラッグ回折によって選択するための第2結晶格子とを含むことを特徴とするX線シアリング干渉計。
【請求項2】
X線を発生するためのX線源と、
X線源からのX線を分割するためのX線分割光学系と、
X線分割光学系によって分割されたX線を干渉させるためのX線干渉光学系と、
X線干渉光学系によって干渉したX線を撮像して、X線分割光学系とX線干渉光学系との間に配置された物体のX線位相差情報を得るためのX線撮像素子とを備え、
X線分割光学系は、所定間隔で配置された第1人工格子および第2人工格子と、第2人工格子からの回折X線のうち所望の回折X線だけをブラッグ回折によって選択するための第1結晶格子とを含み、
X線干渉光学系は、所定間隔で配置された第3人工格子および第4人工格子と、第4人工格子からの回折X線のうち所望の回折X線だけをブラッグ回折によって選択するための第2結晶格子とを含み、
X線源のX線軸に対して垂直な第1直線、第1結晶格子の回折中心を通過する第2直線、および物体を通過する第3直線が第1点で交差し、第1直線と第2直線のなす角および第2直線と第3直線のなす角が互いに等しく、かつ、物体を通過する第4直線、第2結晶格子の回折中心を通過する第5直線、およびX線撮像素子の光軸に対して垂直な第6直線が第2点で交差し、第4直線と第5直線のなす角および第5直線と第6直線のなす角が互いに等しくなるように、X線源、第1結晶格子、第2結晶格子およびX線撮像素子が配置されていることを特徴とするX線シアリング干渉計。
【請求項3】
X線源は、X線シア方向に延びる線状のX線を発生し、
X線撮像素子は、エリアセンサで構成されることを特徴とする請求項2記載のX線シアリング干渉計。
【請求項4】
第1結晶格子および第2結晶格子は、透過ブラッグ回折または反射ブラッグ回折を行うことを特徴とする請求項1または2記載のX線シアリング干渉計。
【請求項5】
X線を発生するためのX線源と、
X線源からのX線を分割するためのX線分割光学系と、
X線分割光学系によって分割されたX線を干渉させるためのX線干渉光学系と、
X線干渉光学系によって干渉したX線を撮像して、X線分割光学系とX線干渉光学系との間に配置された物体のX線位相差情報を得るためのX線撮像素子と、
X線撮像素子からの撮像信号に基づいて、物体のX線位相画像を算出するための信号処理回路とを備え、
X線分割光学系は、所定間隔で配置された第1人工格子および第2人工格子と、第2人工格子からの回折X線のうち所望の回折X線だけをブラッグ回折によって選択するための第1結晶格子とを含み、
X線干渉光学系は、所定間隔で配置された第3人工格子および第4人工格子と、第4人工格子からの回折X線のうち所望の回折X線だけをブラッグ回折によって選択するための第2結晶格子とを含み、
X線源、X線分割光学系、X線干渉光学系およびX線撮像素子が物体の周りを相対的に旋回することにより、信号処理回路が物体のCT画像を算出することを特徴とするX線シアリング干渉計。
【請求項6】
X線を分割するための第1格子と、
第1格子によって分割されたX線を干渉させるための第2格子とを備え、
第1格子の格子ピッチをp1、第2格子の格子ピッチをp2(但し、p1≠p2)、第1格子と第2格子の間の距離L1、第2格子と観測面との間の距離をL2として、
L1/L2=(p1−p2)/p2
を満たすことを特徴とするX線シアリング干渉計。
【請求項7】
各人工格子は、0.1μm〜100μmの格子ピッチを有することを特徴とする請求項1、2、5または6記載のX線シアリング干渉計。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−58279(P2006−58279A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−62614(P2005−62614)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(801000061)財団法人大阪産業振興機構 (168)
【Fターム(参考)】