X線分析装置および発光分析装置
【課題】装置の動作異常の原因究明を短時間で簡単に行え、その異常部分を短時間で正常にすることができるX線分析装置および発光分析装置を提供する。
【解決手段】X線分析装置は、試料Sに1次X線2を照射し発生する2次X線6の強度をX線検出器7で測定する装置であって、分析室10の真空度と温度、X線検出器7の高電圧、X線検出器7のフローガス流量のうちの少なくとも1つの計測値を求める計測手段13と、当該装置の動作の異常を検出する異常検出手段21と、現時点以前の所定の時間内の計測値の時系列を記憶しながら現時点以前の所定の時間内から外れた計測値の時系列を順に消去する記憶手段22と、異常検出手段21が異常を検出すると、記憶手段22から記憶されている計測値の時系列を読出して記憶し、警告情報または異常情報、および記憶した時系列を表示手段23に表示させる管理手段25とを備える。
【解決手段】X線分析装置は、試料Sに1次X線2を照射し発生する2次X線6の強度をX線検出器7で測定する装置であって、分析室10の真空度と温度、X線検出器7の高電圧、X線検出器7のフローガス流量のうちの少なくとも1つの計測値を求める計測手段13と、当該装置の動作の異常を検出する異常検出手段21と、現時点以前の所定の時間内の計測値の時系列を記憶しながら現時点以前の所定の時間内から外れた計測値の時系列を順に消去する記憶手段22と、異常検出手段21が異常を検出すると、記憶手段22から記憶されている計測値の時系列を読出して記憶し、警告情報または異常情報、および記憶した時系列を表示手段23に表示させる管理手段25とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置の動作異常を管理するX線分析装置および発光分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分析装置において装置の動作異常をできるだけ早く検出し、その異常をできるだけ容易に解除することが望まれ、この要望に応えるための装置が考えられてきた。蛍光X線分析装置において、分析中の装置各部の動作の異常、例えば、ゴニオメータが可動範囲を逸脱した、分光素子が交換できない等を検出する異常検出手段および検出器の高電圧、真空排気系における到達真空度と真空度の安定性などを診断する故障診断手段を有する装置がある(特許文献1)。この蛍光X線分析装置は、異常検出手段が検出した異常の内容とその異常検出時の装置各部の状態、故障診断手段による故障診断結果を記憶する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−168812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この装置は特定部分の動作異常を検出したり、故障を診断したりすることはできるが、異常発生時点の数分前の真空排気系の真空度、検出器の印加電圧などの物理量の計測値の時系列が記憶されておらず、これらの物理量の時系列を異常発生時に異常表示とリンクして表示することができない。さらに、装置の動作異常を解消した処置内容を履歴情報として異常発生時に表示することができない。したがって、この装置では、真空度や印加電圧などの変動に基づいて、装置の動作異常の原因究明を短時間で簡単に行うことが難しい。
【0005】
本発明は、前記従来の問題に鑑みてなされたもので、装置の動作異常の原因究明を短時間で簡単に行え、その異常部分を短時間で正常にすることができるX線分析装置および発光分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の第1構成のX線分析装置は、分析室に配置された試料にX線源から1次X線を照射し発生する2次X線の強度をX線検出器で測定するX線分析装置において、前記分析室の真空度、前記分析室の温度、前記X線検出器に印加する高電圧、および、前記X線検出器に流されるフローガス流量のうちの少なくとも1つの計測値を求める計測手段と、分析中の当該装置の動作の異常を検出する異常検出手段と、現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を記憶しながら現時点以前の所定の時間内から外れた前記計測値の時系列を順に消去する記憶手段と、前記異常検出手段によって異常が検出されると、前記記憶手段から記憶されている現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を読出して記憶するとともに、前記異常検出手段によって検出された異常に基づく警告情報または異常情報、および現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を表示手段に表示させる管理手段とを備える。
【0007】
本発明の第1構成のX線分析装置によれば、異常検出手段によって検出された異常に基づく警告情報または異常情報、および現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列が表示手段に表示されるので、装置の動作異常の原因究明を短時間で簡単に行え、その異常部分を短時間で正常にすることができる。
【0008】
第1構成のX線分析装置は、前記警告情報または異常情報と現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列とに基づいて処置された内容を示す処置内容を、選択または入力するための選択・入力手段を備え、前記管理手段が、前記選択・入力手段によって選択または入力された処置内容を前記警告情報または異常情報に対応させて記憶し、前記異常検出手段によって異常が検出されると、前記警告情報または異常情報に対応した処置内容を前記表示手段に表示させるのが好ましい。この場合には、再度、異常検出手段によって異常が検出されると、管理手段が記憶している、警告情報または異常情報に対応した処置内容を表示手段に表示することができるので、装置の動作異常の原因究明をより短時間で簡単に行え、その異常部分をより短時間で正常にすることができる。
【0009】
第1構成のX線分析装置は、前記管理手段が発生日時毎の前記警告情報、異常情報および処置内容の履歴を履歴情報として記憶し、前記管理手段から記憶された前記履歴情報を読み出して前記表示手段に表示させるための履歴情報読出手段を備えるのが好ましい。この場合には、装置動作の異常が発生した場合、測定者が履歴情報読出手段によって履歴情報を読み出して、現在発生している装置異常の現象と過去に発生したときの現象とを比較することによって異常の原因究明を短時間で簡単に行え、その異常部分を短時間で正常にすることができる。
【0010】
本発明の第2構成の発光分析装置は、分光室に配置された試料を放電手段で放電させ試料からの発光を分光し、その発光強度を測定する発光分析装置において、前記分光室の真空度、前記分光室の温度、前記光検出器に印加する高電圧、および、前記放電手段に流される放電ガス流量のうちの少なくとも1つの計測値を求める計測手段と、分析中の当該装置の動作の異常を検出する異常検出手段と、現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を記憶しながら現時点以前の所定の時間内から外れた前記計測値の時系列を順に消去する記憶手段と、前記異常検出手段によって異常が検出されると、前記記憶手段から記憶されている現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を読出して記憶するとともに、前記異常検出手段によって検出された異常に基づく警告情報または異常情報、および現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を表示手段に表示させる管理手段とを備える。
【0011】
第2構成の発光分析装置によれば、異常検出手段によって検出された異常に基づく警告情報または異常情報、および現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列が表示手段に表示されるので、装置の動作異常の原因究明を短時間で簡単に行え、その異常部分を短時間で正常にすることができる。
【0012】
第2構成の発光分析装置は、前記警告情報または異常情報と現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列とに基づいて処置された内容を示す処置内容を、選択または入力するための選択・入力手段を備え、前記管理手段が、前記選択・入力手段によって選択または入力された処置内容を前記警告情報または異常情報に対応させて記憶し、前記異常検出手段によって異常が検出されると、前記警告情報または異常情報に対応した処置内容を前記表示手段に表示させるのが好ましい。この場合には、再度、異常検出手段によって異常が検出されると、管理手段が記憶している、警告情報または異常情報に対応した処置内容を表示手段に表示することができるので、装置の動作異常の原因究明をより短時間で簡単に行え、その異常部分をより短時間で正常にすることができる。
【0013】
第2構成の発光分析装置は、前記管理手段が発生日時毎の前記警告情報、異常情報および処置内容の履歴を履歴情報として記憶し、前記管理手段から記憶された前記履歴情報を読み出して前記表示手段に表示させるための履歴情報読出手段を備えるのが好ましい。この場合には、装置動作の異常が発生した場合、測定者が履歴情報読出手段によって履歴情報を読み出して、現在発生している装置異常の現象と過去に発生したときの現象とを比較することによって異常の原因究明を短時間で簡単に行え、その異常部分を短時間で正常にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態のX線分析装置を示す概略図である。
【図2】同装置の表示手段に表示された真空排気系の異常情報を示す図である。
【図3】同表示手段に表示された真空度の計測値の時系列を示す図である。
【図4】同表示手段に表示された処置内容のリストを示す図である。
【図5】同表示手段に表示された処置内容の入力の一例を示す図である。
【図6】同表示手段に表示された前回発生時の情報の一例を示す図である。
【図7】同表示手段に表示された警告情報を示す図である。
【図8】同表示手段に表示された恒温化温度およびフローガス(PRガス)流量の計測値の時系列を示す図である。
【図9】同表示手段に表示された測定系の異常情報を示す図である。
【図10】同表示手段に表示された高電圧の計測値の時系列を示す図である。
【図11】同表示手段に表示された履歴情報を示す図である。
【図12】同表示手段に表示された履歴詳細情報を示す図である。
【図13】同表示手段に表示された履歴詳細情報の真空度の計測値の時系列を示す図である。
【図14】本発明の第2実施形態の発光分析装置を示す概略図である。
【図15】同装置の表示手段に表示された警告情報を示す図である。
【図16】同表示手段に表示された恒温化温度、放電ガス流量の計測値の時系列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の第1実施形態のX線分析装置について図1にしたがって説明する。この装置は、分析室10に配置された試料SにX線管などのX線源1から1次X線2を照射し、発生する2次X線4の強度をX線検出器7で測定し、データ処理手段15でデータ処理する蛍光X線分析装置などのX線分析装置である。分析室10は、試料Sを配置する試料台8を有する試料室11、ならびに試料Sから発生した2次X線4が入射されて測定対象の2次X線6を回折する分光素子5およびその回折された2次X線6の強度を測定するX線検出器7を有する分光室12からなる。分光素子5とX線検出器7とは、図示しないゴニオメータにより、分光素子5で分光される2次X線6の波長を変えながらその2次X線6が検出器7に入射するように、一定の角度関係を保って回動される。
【0016】
分析室10は真空ポンプなどの真空制御部(図示なし)によって排気、制御され所定の真空度Pに保持されており、その真空度Pは計測手段13の1つである真空計31によって計測されている。試料室11と分光室12の真空度Pを計測する真空計は、それぞれ別個に備えられていてもよい。分析室10、特に分光室12は恒温化機構(図示なし)によって所定の温度Tに保持されており、その温度Tは計測手段13の1つである温度計32によって計測されている。検出器ガスを流しながら使用するガスフロー型比例計数管などのX線検出器7は、高圧電源36によって高電圧(H.V.電圧)Vが印加され、所定の高電圧Vに保持されており、その高電圧Vは計測手段13の1つである電圧計33によって計測されている。さらに、ガスフロー型比例計数管7に流される検出器ガスは、マスフローコントローラなどのガス流量制御器34によってガス流量Fが制御されるとともに、計測手段13の1つであるガス流量制御器34によってガス流量Fが計測されている。
【0017】
第1実施形態のX線分析装置は異常検出手段21、記憶手段22、表示手段23、選択・入力手段24、管理手段25および履歴情報読出手段26を備える。分析中の装置に動作異常、例えば測定値の異常や真空度Pの異常などが発生すると、異常検出手段21がデータ処理手段15または計測手段13を通じて、その異常を検出してその信号を管理手段25に送る。記憶手段22は、例えば、キャシュメモリであり、現時点以前の所定の時間内の分析室10の真空度P、分光室12の温度T、X線検出器7に印加する高電圧V、およびX線検出器7に流されるフローガス流量Fの計測値の時系列を記憶しながら現時点以前の所定の時間内から外れた計測値の時系列を順に消去する。
【0018】
表示手段23は、異常検出手段21によって検出された異常に基づく警告情報または異常情報、および現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を表示する。異常情報とは、測定が実質上不可能で処置が必要な装置状態の情報をいう。異常情報が表示されると、処置者によって処置されないと測定を再開始することができない。警告情報とは、測定が可能ではあるが、正常な動作管理値の範囲を超えている装置状態であり、異常情報より軽度の情報をいう。選択・入力手段24は、表示手段23に表示された警告情報または異常情報と現時点以前の所定の時間内の計測値の時系列とに基づいて処置した内容を、表示手段23に表示された処置内容から選択したり、処置した内容を入力したりするための手段である。
【0019】
管理手段25は、ハードディスクなどの記憶媒体を有しており、異常検出手段21によって送られた異常信号を受け取ると、記憶手段22に記憶されている現時点以前の所定の時間内の計測値P、T、V、Fなどの時系列を読出して、記憶媒体に記憶するとともに、異常検出手段21によって検出された異常に基づく警告情報または異常情報、および現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を表示手段23に表示させる。さらに、管理手段25が、選択・入力手段24によって選択または入力された処置内容を警告情報または異常情報に対応させて記憶し、異常検出手段21によって異常が検出されると、警告情報または異常情報に対応した処置内容を表示手段23に表示させるとともに、発生日時毎の警告情報、異常情報および処置内容の履歴を履歴情報として記憶する。
【0020】
測定者は履歴情報読出手段26によって、発生日時毎の警告情報、異常情報および処置内容の履歴を履歴情報として記憶する管理手段25から記憶された履歴情報を読み出して表示手段23に表示させる。
【0021】
次に、この装置の動作について説明する。測定者が測定中に装置の動作に異常が発生すると、例えば、図2に示す異常情報が表示手段23に表示される。この異常画面の例では、異常情報として上欄の赤色帯体に、「真空排気系で異常が発生しました」、アラーム内容として「真空制御ができません」、動作内容として「大気→真空」と表示され、発生日時も表示される。このとき、同時に「監視データ」と表示されるボタンがハイライト表示され、画面の下欄に「アラーム解除」のボタンが表示されている。この場合、真空制御系に異常が発生していることが分かる。
【0022】
次に、ハイライト表示されている「監視データ」ボタンを選択・入力手段24のマウスなどの指示装置(図示なし)でクリックすると、図3に示す真空度Pの計測値の時系列が表示手段23に表示される。この真空度Pの計測値の時系列は、異常検出手段21が異常を検出した時の数分前から異常発生時までの各真空度Pおよび計測された各時刻として表示され、試料室11と分光室12のそれぞれの真空度Pが表示されている。処置者は、表示された真空度Pの変動状態から真空制御系の異常部分の原因究明を行い、その原因究明の結果に基づいて装置動作を正常にするための処置を行う。例えば、真空ポンプの交換によって装置が正常動作に復帰した場合、図2の異常画面の「アラーム解除」ボタンをクリックすると、図4に示す処置内容の入力画面が表示される。処置者が選択・入力手段24によって「処置内容」右側の「▼」をクリックすると図4の処置内容のリストが表示されるので、「装置ハード調整」を選択し、図5のように処置詳細に「真空ポンプ交換」を入力する。
【0023】
このように、この装置では、装置の真空制御系の異常が発生すると、真空制御系に関連する警告情報または異常情報、異常が発生した時の数分前からの真空度の計測値の時系列が表示手段23に表示されるので、真空制御系の異常の原因究明を短時間で簡単に行え、その異常部分を短時間で正常にすることができる。
【0024】
次に、同様の異常が再度発生した場合の装置の動作について説明する。測定者が測定中に装置の真空制御系に異常が発生すると、図6に示す異常情報が表示手段23に表示される。この異常画面では、図2の異常画面と異なり、「前回発生時の情報」に前回発生したときの「発生日時」、「処置内容」、「処置詳細」が表示される。この前回発生時の情報に基づいて測定者は真空制御系の異常の原因究明をより短時間で簡単に行え、その異常部分をより短時間で正常にすることができる。
【0025】
次に、分光室12の温度、X線検出器7に印加する高電圧V、および、X線検出器7に流されるフローガス流量Fに関連する装置動作の異常の場合について説明する。図7に示す異常画面の例では、警告情報として上欄の黄色帯体に「測定系で警告が発生しました」、アラーム内容として「測定値が上下限範囲に入りませんでした」、と表示され、発生日時も表示されている。このように、装置の正常な動作管理値の範囲を超えると警告情報が表示手段23に表示される。このとき、同時に「監視データ」と表示されたボタンがハイライト表示され、画面の下欄に「アラーム解除」のボタンが表示されている。
【0026】
次に、ハイライト表示されている「監視データ」ボタンをクリックすると、図8に示すように、分光室12の恒温化温度Tを温度計32で計測した計測値の時系列と、X線検出器7に流されるフローガス流量Fをガス流量制御器34で計測した計測値の時系列が、表示手段23に表示される。この恒温化温度Tおよびフローガス流量Fの計測値の時系列は、異常検出手段21が異常を検出した時の数分前から異常発生時までの各計測値および計測された各時刻として表示されている。処置者は、表示された恒温化温度Tおよびフローガス流量Fの変動状態から恒温化機構またはガス流量制御器34の異常部分の原因究明を行い、その原因究明の結果に基づいて装置動作を正常にするための処置を行う。そして、処置者は選択・入力手段24によって処置内容の入力画面に名前、処置内容、処置詳細を選択または入力する。
【0027】
このように、この装置では、装置の恒温化機構やガス流量制御器34の異常が発生すると、恒温化機構やガス流量制御器34に関連する警告情報または異常情報、異常が発生した時の数分前からの恒温化温度Tやフローガス流量Fの計測値の時系列が表示手段23に表示されるので、恒温化機構やガス流量制御器34の異常の原因究明を短時間で簡単に行え、その異常部分を短時間で正常にすることができる。
【0028】
また、同様の異常が再度発生した場合、真空制御系の動作異常と同様に「前回発生時の情報」に前回発生したときの発生日時、処置内容、処置詳細が表示手段23に表示される。この前回発生時の情報に基づいて測定者は恒温化機構やガス流量制御器34の異常の原因究明をより短時間で簡単に行え、その異常部分をより短時間で正常にすることができる。
【0029】
図9に示す異常画面の例では、異常情報として「測定系で異常が発生しました」、アラーム内容として「微分カーブのピークが左端すぎます」、アラーム詳細と要因として「PHAイニシャライズの仮測定または、スペクトル測定後、スペクトルのピークサーチをしましたが、スペクトルのピークが低エネルギー側に寄り過ぎているため調整できませんでした。」と表示され、発生日時も表示されている。このとき、同時に「監視データ」と表示されたボタンがハイライト表示され、画面の下欄に「アラーム解除」のボタンが表示されている。
【0030】
次に、ハイライト表示されている「監視データ」ボタンをクリックすると、図10に示すように検出器7の高電圧(H.V.電圧)Vを電圧計33で計測した計測値の時系列が表示手段23に表示される。この高電圧Vの計測値の時系列は、異常検出手段21が異常を検出した時の数分前から異常発生時までの各計測値および計測された各時刻として表示されている。処置者は、表示された高電圧Vの変動状態から高圧電源36の異常部分の原因究明を行い、その原因究明の結果に基づいて装置動作を正常にするための処置を行う。そして、処置者は選択・入力手段24によって処置内容の入力画面に名前、処置内容、処置詳細を選択または入力する。
【0031】
このように、この装置では、装置の高圧電源36の異常が発生すると、高圧電源36に関連する異常情報、異常が発生した時の数分前からの高電圧Vの計測値の時系列が表示手段23に表示されるので、高圧電源36の異常の原因究明を短時間で簡単に行え、その異常部分を短時間で正常にすることができる。
【0032】
また、同様の異常が再度発生した場合、真空制御系の動作異常と同様に「前回発生時の情報」に前回発生したときの発生日時、処置内容、処置詳細が表示手段23に表示される。この前回発生時の情報に基づいて測定者は高圧電源36の異常の原因究明をより短時間で簡単に行え、その異常部分をより短時間で正常にすることができる。
【0033】
第1実施形態の装置は、さらに、過去に発生した装置動作の異常を示す発生日時毎の警告情報、異常情報および処置内容を履歴情報として表示手段23に表示させるための履歴情報読出手段26を備える。図11に示すように、本装置の測定画面では画面の下欄および右欄に操作を案内するナビゲーションボタンが表示され、測定者が履歴情報読出手段26である右下欄のアラームボタンをクリックすると、図11の上欄に発生日時毎の警告情報、異常情報、処置内容、処置詳細などを示す履歴情報が表示される。例えば、表示されている履歴情報の最上欄(発生日時 2010年6月6日 警告情報)をダブルクリックすると、図12に示すように、選択された履歴情報に関連する部分の装置構成図を含む履歴情報詳細画面が履歴情報画面の前面に表示される。表示された詳細な履歴情報によって、2010年6月6日に発生した警告情報およびその処置内容、処置詳細を把握することができる。さらに、履歴情報詳細画面の右中欄に表示された監視データボタンをクリックすると、図13に示すように、例えば履歴情報詳細の真空度Pの計測値の時系列画面が履歴情報詳細画面の前面、すなわち最前面に表示される。
【0034】
装置動作の異常が発生した場合、測定者が履歴情報読出手段26によって履歴情報を読み出して、現在発生している装置異常の現象と過去に発生したときの現象とを比較することによって異常の原因究明を短時間で簡単に行え、その異常部分を短時間で正常にすることができる。特に、分析室10の真空度P、分析室10の温度T、X線検出器7に印加する高電圧V、および、X線検出器7に流されるフローガス流量Fの、異常発生時点以前の所定の時間内の計測値の時系列と、過去の異常発生時の計測値の時系列とを比較することによって、類似した異常を容易に見出すことができる。
【0035】
第1実施形態の装置は、分析室10の真空度P、分析室10の温度T、X線検出器7に印加する高電圧V、X線検出器7に流されるフローガス流量Fのそれぞれの計測値を求める計測手段13を有していたが、これらのうちの少なくとも1つを有していればよい。
【0036】
本実施形態の装置では、ゴニオメータを走査(スキャン)する走査型の波長分散型蛍光X線分析装置について説明したが、測定元素毎に固定ゴニオメータを配して同時に多元素を分析する多元素同時型の波長分散型蛍光X線分析装置であってもよく、さらには、エネルギー分散型の蛍光X線分析装置であってもよい。また、上面照射型の蛍光X線分析装置であってもよく、下面照射型の蛍光X線分析装置であってもよい。
【0037】
以下、本発明の第2実施形態の発光分析装置について図14にしたがって説明する。この装置は、放電手段51であるグロー放電管の陰極ブロック55に試料Sを押付けて陽極ブロック56と試料Sの分析対象面との間でグロー放電させ、放電ガスである、例えばアルゴンガスのアルゴンイオンで試料Sの分析対象面をスパッタリングし、試料Sからの発光52の強度を光電子増倍管などの光検出器57で測定し、データ処理手段65によってデータ処理する。試料放電室61内にて試料Sを放電手段51によって放電させる。分光室、例えば多色分光室62は、放電によって試料S中の元素から発生した発光52が入射されて測定対象元素の特定波長光54に分光する凹面分光素子58と、その分光された特定波長光54の強度を測定する光検出器57とを有する。
【0038】
分光室62は真空ポンプなどの真空制御部(図示なし)によって排気、制御され所定の真空度Pに保持されており、その真空度Pは計測手段13の1つである真空計31によって計測されている。また、多色分光室62は恒温化機構(図示なし)によって所定の温度Tに保持されており、その温度Tは計測手段63の1つである温度計32によって計測されている。光検出器57は、高圧電源36によって高電圧Vが印加され、所定の高電圧Vに保持されおり、その高電圧Vは計測手段13の1つである電圧計33によって計測されている。さらに、放電手段51に流される放電ガスは、マスフローコントローラなどのガス流量制御器34によって放電ガス流量Lが制御されるとともに、計測手段13の1つであるガス流量制御器34によって放電ガス流量Lが計測されている。
【0039】
第2実施形態の発光分析装置は異常検出手段21、記憶手段22、表示手段23、選択・入力手段24、管理手段25および履歴情報読出手段26を備える。分析中の装置に動作異常、例えば測定値の異常や真空度Pの異常などが発生すると、異常検出手段21がデータ処理手段65または計測手段13を通じて、その異常を検出してその信号を管理手段25に送る。記憶手段22は、例えば、キャシュメモリであり、現時点以前の所定の時間内の多色分光室62の真空度P、多色分光室62の温度T、光検出器57に印加する高電圧V、および放電手段51に流される放電ガス流量Lの計測値の時系列を記憶しながら現時点以前の所定の時間内から外れた計測値の時系列を順に消去する。
【0040】
表示手段23は、異常検出手段21によって検出された異常に基づく警告情報または異常情報、および現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を表示する。選択・入力手段24は、表示手段23に表示された警告情報または異常情報と現時点以前の所定の時間内の計測値の時系列とに基づいて処置した内容を、表示手段23に表示された処置内容から選択したり、処置した内容を入力したりするための手段である。
【0041】
管理手段25は、ハードディスクなどの記憶媒体を有しており、異常検出手段21によって送られた異常信号を受け取ると、記憶手段22に記憶されている現時点以前の所定の時間内の計測値P、T、V、Lなどの時系列を読出して、記憶媒体に記憶するとともに、異常検出手段21によって検出された異常に基づく警告情報または異常情報、および現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を表示手段23に表示させる。さらに、管理手段65が、選択・入力手段24によって選択または入力された処置内容を警告情報または異常情報に対応させて記憶し、異常検出手段21によって異常が検出されると、警告情報または異常情報に対応した処置内容を表示手段23に表示させるとともに、発生日時毎の警告情報、異常情報および処置内容の履歴を履歴情報として記憶する。
【0042】
次に、この装置の動作について説明する。多色分光室62の真空度Pにおいて異常が発生した場合の警告情報または異常情報に基づく処置は前記の第1実施形態の装置と同様であるので、説明は省略する。
【0043】
次に、多色分光室62の温度、光検出器57に印加する高電圧V、および、放電手段51に流される放電ガス流量Lに関連する装置動作の異常の場合について説明する。図15に示すように、警告情報として「測定系で警告が発生しました」、アラーム内容として「測定値が上下限範囲に入りませんでした」、と表示されている。このとき、同時に「監視データ」と表示されたボタンがハイライト表示され、画面の下欄に「アラーム解除」のボタンが表示されている。
【0044】
次に、ハイライト表示されている「監視データ」ボタンをクリックすると、多色分光室62の恒温化温度Tを温度計32で計測した計測値の時系列、光検出器57に印加される高電圧を電圧計33で計測した計測値の時系列、放電手段51に流される放電ガス流量Lをガス流量制御器34で計測した計測値の時系列が表示手段23に表示されるが、図16に示す例では、恒温化温度Tおよび放電ガス流量Lの時系列が表示されている。この恒温化温度T、高電圧Vおよび放電ガス流量Lの計測値の時系列は、異常検出手段21が異常を検出した時の数分前から異常発生時までの各計測値および計測された各時刻として表示されている。処置者は、表示された恒温化温度T、高電圧Vおよび放電ガス流量Lの変動状態から恒温化機構、高圧電源36およびガス流量制御器34の異常部分の原因究明を行い、その原因究明の結果に基づいて装置動作を正常にするための処置を行う。そして、処置者は選択・入力手段24によって処置内容の入力画面に名前、処置内容、処置詳細を選択または入力する。
【0045】
このように、この装置では、装置の恒温化機構、高圧電源36、ガス流量制御器34に異常が発生すると、恒温化機構、高圧電源36、ガス流量制御器34に関連する警告情報または異常情報、異常が発生した時の数分前からの恒温化温度T、高電圧V、放電ガス流量Lの計測値の時系列が表示手段23に表示されるので、恒温化機構、高圧電源36、ガス流量制御器34の異常の原因究明を短時間で簡単に行え、その異常部分を短時間で正常にすることができる。
【0046】
また、同様の異常が再度発生した場合、第1実施形態の真空制御系の動作異常と同様に「前回発生時の情報」に前回発生したときの発生日時、処置内容、処置詳細が表示される。この前回発生時の情報に基づいて測定者は恒温化機構、高圧電源36、ガス流量制御器34の異常の原因究明をより短時間で簡単に行え、その異常部分をより短時間で正常にすることができる。
【0047】
さらに、第2実施形態の発光分析装置は、第1実施形態のX線分析装置と同様に、履歴情報読出手段26を備えているので、装置動作の異常が発生した場合、測定者が履歴情報読出手段26によって管理手段25から履歴情報、履歴詳細情報、計測値の時系列を読み出して、現在発生している装置異常の現象と過去に発生したときの現象とを比較することによって異常の原因究明を短時間で簡単に行え、その異常部分を短時間で正常にすることができる。特に、分光室62の真空度P、分光室62の温度T、光検出器57に印加する高電圧V、および、放電手段51に流される放電ガス流量Lの、異常発生時点以前の所定の時間内の計測値の時系列と、過去の異常発生時の計測値の時系列とを比較することによって、類似した異常を容易に見出すことができる。
【0048】
第2実施形態の装置は、多色分光室62の真空度P、恒温化温度T、光検出器57に印加する高電圧V、放電手段51に流される放電ガス流量Lのそれぞれの計測値を求める計測手段13を有していたが、これらのうちの少なくとも1つを有していればよい。
【0049】
第2実施形態の装置では、同時に多元素を分析する多元素同時型の発光分析装置について説明したが、モノクロメータを走査する走査型の発光分析装置であってもよく、また、ICP発光分析装置やアーク・スパーク型の発光分析装置であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 X線源
2 1次X線
4、6 2次X線
7 X線検出器
10 分析室
13 計測手段
21 異常検出手段
22 記憶手段
23 表示手段
24 選択・入力手段
25 管理手段
26 履歴情報読出手段
51 放電手段
52 発光
57 光検出器
F フローガス流量
L 放電ガス流量
P 真空度
S 試料
T 恒温化温度
V 高電圧
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置の動作異常を管理するX線分析装置および発光分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分析装置において装置の動作異常をできるだけ早く検出し、その異常をできるだけ容易に解除することが望まれ、この要望に応えるための装置が考えられてきた。蛍光X線分析装置において、分析中の装置各部の動作の異常、例えば、ゴニオメータが可動範囲を逸脱した、分光素子が交換できない等を検出する異常検出手段および検出器の高電圧、真空排気系における到達真空度と真空度の安定性などを診断する故障診断手段を有する装置がある(特許文献1)。この蛍光X線分析装置は、異常検出手段が検出した異常の内容とその異常検出時の装置各部の状態、故障診断手段による故障診断結果を記憶する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−168812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この装置は特定部分の動作異常を検出したり、故障を診断したりすることはできるが、異常発生時点の数分前の真空排気系の真空度、検出器の印加電圧などの物理量の計測値の時系列が記憶されておらず、これらの物理量の時系列を異常発生時に異常表示とリンクして表示することができない。さらに、装置の動作異常を解消した処置内容を履歴情報として異常発生時に表示することができない。したがって、この装置では、真空度や印加電圧などの変動に基づいて、装置の動作異常の原因究明を短時間で簡単に行うことが難しい。
【0005】
本発明は、前記従来の問題に鑑みてなされたもので、装置の動作異常の原因究明を短時間で簡単に行え、その異常部分を短時間で正常にすることができるX線分析装置および発光分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の第1構成のX線分析装置は、分析室に配置された試料にX線源から1次X線を照射し発生する2次X線の強度をX線検出器で測定するX線分析装置において、前記分析室の真空度、前記分析室の温度、前記X線検出器に印加する高電圧、および、前記X線検出器に流されるフローガス流量のうちの少なくとも1つの計測値を求める計測手段と、分析中の当該装置の動作の異常を検出する異常検出手段と、現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を記憶しながら現時点以前の所定の時間内から外れた前記計測値の時系列を順に消去する記憶手段と、前記異常検出手段によって異常が検出されると、前記記憶手段から記憶されている現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を読出して記憶するとともに、前記異常検出手段によって検出された異常に基づく警告情報または異常情報、および現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を表示手段に表示させる管理手段とを備える。
【0007】
本発明の第1構成のX線分析装置によれば、異常検出手段によって検出された異常に基づく警告情報または異常情報、および現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列が表示手段に表示されるので、装置の動作異常の原因究明を短時間で簡単に行え、その異常部分を短時間で正常にすることができる。
【0008】
第1構成のX線分析装置は、前記警告情報または異常情報と現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列とに基づいて処置された内容を示す処置内容を、選択または入力するための選択・入力手段を備え、前記管理手段が、前記選択・入力手段によって選択または入力された処置内容を前記警告情報または異常情報に対応させて記憶し、前記異常検出手段によって異常が検出されると、前記警告情報または異常情報に対応した処置内容を前記表示手段に表示させるのが好ましい。この場合には、再度、異常検出手段によって異常が検出されると、管理手段が記憶している、警告情報または異常情報に対応した処置内容を表示手段に表示することができるので、装置の動作異常の原因究明をより短時間で簡単に行え、その異常部分をより短時間で正常にすることができる。
【0009】
第1構成のX線分析装置は、前記管理手段が発生日時毎の前記警告情報、異常情報および処置内容の履歴を履歴情報として記憶し、前記管理手段から記憶された前記履歴情報を読み出して前記表示手段に表示させるための履歴情報読出手段を備えるのが好ましい。この場合には、装置動作の異常が発生した場合、測定者が履歴情報読出手段によって履歴情報を読み出して、現在発生している装置異常の現象と過去に発生したときの現象とを比較することによって異常の原因究明を短時間で簡単に行え、その異常部分を短時間で正常にすることができる。
【0010】
本発明の第2構成の発光分析装置は、分光室に配置された試料を放電手段で放電させ試料からの発光を分光し、その発光強度を測定する発光分析装置において、前記分光室の真空度、前記分光室の温度、前記光検出器に印加する高電圧、および、前記放電手段に流される放電ガス流量のうちの少なくとも1つの計測値を求める計測手段と、分析中の当該装置の動作の異常を検出する異常検出手段と、現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を記憶しながら現時点以前の所定の時間内から外れた前記計測値の時系列を順に消去する記憶手段と、前記異常検出手段によって異常が検出されると、前記記憶手段から記憶されている現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を読出して記憶するとともに、前記異常検出手段によって検出された異常に基づく警告情報または異常情報、および現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を表示手段に表示させる管理手段とを備える。
【0011】
第2構成の発光分析装置によれば、異常検出手段によって検出された異常に基づく警告情報または異常情報、および現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列が表示手段に表示されるので、装置の動作異常の原因究明を短時間で簡単に行え、その異常部分を短時間で正常にすることができる。
【0012】
第2構成の発光分析装置は、前記警告情報または異常情報と現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列とに基づいて処置された内容を示す処置内容を、選択または入力するための選択・入力手段を備え、前記管理手段が、前記選択・入力手段によって選択または入力された処置内容を前記警告情報または異常情報に対応させて記憶し、前記異常検出手段によって異常が検出されると、前記警告情報または異常情報に対応した処置内容を前記表示手段に表示させるのが好ましい。この場合には、再度、異常検出手段によって異常が検出されると、管理手段が記憶している、警告情報または異常情報に対応した処置内容を表示手段に表示することができるので、装置の動作異常の原因究明をより短時間で簡単に行え、その異常部分をより短時間で正常にすることができる。
【0013】
第2構成の発光分析装置は、前記管理手段が発生日時毎の前記警告情報、異常情報および処置内容の履歴を履歴情報として記憶し、前記管理手段から記憶された前記履歴情報を読み出して前記表示手段に表示させるための履歴情報読出手段を備えるのが好ましい。この場合には、装置動作の異常が発生した場合、測定者が履歴情報読出手段によって履歴情報を読み出して、現在発生している装置異常の現象と過去に発生したときの現象とを比較することによって異常の原因究明を短時間で簡単に行え、その異常部分を短時間で正常にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態のX線分析装置を示す概略図である。
【図2】同装置の表示手段に表示された真空排気系の異常情報を示す図である。
【図3】同表示手段に表示された真空度の計測値の時系列を示す図である。
【図4】同表示手段に表示された処置内容のリストを示す図である。
【図5】同表示手段に表示された処置内容の入力の一例を示す図である。
【図6】同表示手段に表示された前回発生時の情報の一例を示す図である。
【図7】同表示手段に表示された警告情報を示す図である。
【図8】同表示手段に表示された恒温化温度およびフローガス(PRガス)流量の計測値の時系列を示す図である。
【図9】同表示手段に表示された測定系の異常情報を示す図である。
【図10】同表示手段に表示された高電圧の計測値の時系列を示す図である。
【図11】同表示手段に表示された履歴情報を示す図である。
【図12】同表示手段に表示された履歴詳細情報を示す図である。
【図13】同表示手段に表示された履歴詳細情報の真空度の計測値の時系列を示す図である。
【図14】本発明の第2実施形態の発光分析装置を示す概略図である。
【図15】同装置の表示手段に表示された警告情報を示す図である。
【図16】同表示手段に表示された恒温化温度、放電ガス流量の計測値の時系列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の第1実施形態のX線分析装置について図1にしたがって説明する。この装置は、分析室10に配置された試料SにX線管などのX線源1から1次X線2を照射し、発生する2次X線4の強度をX線検出器7で測定し、データ処理手段15でデータ処理する蛍光X線分析装置などのX線分析装置である。分析室10は、試料Sを配置する試料台8を有する試料室11、ならびに試料Sから発生した2次X線4が入射されて測定対象の2次X線6を回折する分光素子5およびその回折された2次X線6の強度を測定するX線検出器7を有する分光室12からなる。分光素子5とX線検出器7とは、図示しないゴニオメータにより、分光素子5で分光される2次X線6の波長を変えながらその2次X線6が検出器7に入射するように、一定の角度関係を保って回動される。
【0016】
分析室10は真空ポンプなどの真空制御部(図示なし)によって排気、制御され所定の真空度Pに保持されており、その真空度Pは計測手段13の1つである真空計31によって計測されている。試料室11と分光室12の真空度Pを計測する真空計は、それぞれ別個に備えられていてもよい。分析室10、特に分光室12は恒温化機構(図示なし)によって所定の温度Tに保持されており、その温度Tは計測手段13の1つである温度計32によって計測されている。検出器ガスを流しながら使用するガスフロー型比例計数管などのX線検出器7は、高圧電源36によって高電圧(H.V.電圧)Vが印加され、所定の高電圧Vに保持されており、その高電圧Vは計測手段13の1つである電圧計33によって計測されている。さらに、ガスフロー型比例計数管7に流される検出器ガスは、マスフローコントローラなどのガス流量制御器34によってガス流量Fが制御されるとともに、計測手段13の1つであるガス流量制御器34によってガス流量Fが計測されている。
【0017】
第1実施形態のX線分析装置は異常検出手段21、記憶手段22、表示手段23、選択・入力手段24、管理手段25および履歴情報読出手段26を備える。分析中の装置に動作異常、例えば測定値の異常や真空度Pの異常などが発生すると、異常検出手段21がデータ処理手段15または計測手段13を通じて、その異常を検出してその信号を管理手段25に送る。記憶手段22は、例えば、キャシュメモリであり、現時点以前の所定の時間内の分析室10の真空度P、分光室12の温度T、X線検出器7に印加する高電圧V、およびX線検出器7に流されるフローガス流量Fの計測値の時系列を記憶しながら現時点以前の所定の時間内から外れた計測値の時系列を順に消去する。
【0018】
表示手段23は、異常検出手段21によって検出された異常に基づく警告情報または異常情報、および現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を表示する。異常情報とは、測定が実質上不可能で処置が必要な装置状態の情報をいう。異常情報が表示されると、処置者によって処置されないと測定を再開始することができない。警告情報とは、測定が可能ではあるが、正常な動作管理値の範囲を超えている装置状態であり、異常情報より軽度の情報をいう。選択・入力手段24は、表示手段23に表示された警告情報または異常情報と現時点以前の所定の時間内の計測値の時系列とに基づいて処置した内容を、表示手段23に表示された処置内容から選択したり、処置した内容を入力したりするための手段である。
【0019】
管理手段25は、ハードディスクなどの記憶媒体を有しており、異常検出手段21によって送られた異常信号を受け取ると、記憶手段22に記憶されている現時点以前の所定の時間内の計測値P、T、V、Fなどの時系列を読出して、記憶媒体に記憶するとともに、異常検出手段21によって検出された異常に基づく警告情報または異常情報、および現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を表示手段23に表示させる。さらに、管理手段25が、選択・入力手段24によって選択または入力された処置内容を警告情報または異常情報に対応させて記憶し、異常検出手段21によって異常が検出されると、警告情報または異常情報に対応した処置内容を表示手段23に表示させるとともに、発生日時毎の警告情報、異常情報および処置内容の履歴を履歴情報として記憶する。
【0020】
測定者は履歴情報読出手段26によって、発生日時毎の警告情報、異常情報および処置内容の履歴を履歴情報として記憶する管理手段25から記憶された履歴情報を読み出して表示手段23に表示させる。
【0021】
次に、この装置の動作について説明する。測定者が測定中に装置の動作に異常が発生すると、例えば、図2に示す異常情報が表示手段23に表示される。この異常画面の例では、異常情報として上欄の赤色帯体に、「真空排気系で異常が発生しました」、アラーム内容として「真空制御ができません」、動作内容として「大気→真空」と表示され、発生日時も表示される。このとき、同時に「監視データ」と表示されるボタンがハイライト表示され、画面の下欄に「アラーム解除」のボタンが表示されている。この場合、真空制御系に異常が発生していることが分かる。
【0022】
次に、ハイライト表示されている「監視データ」ボタンを選択・入力手段24のマウスなどの指示装置(図示なし)でクリックすると、図3に示す真空度Pの計測値の時系列が表示手段23に表示される。この真空度Pの計測値の時系列は、異常検出手段21が異常を検出した時の数分前から異常発生時までの各真空度Pおよび計測された各時刻として表示され、試料室11と分光室12のそれぞれの真空度Pが表示されている。処置者は、表示された真空度Pの変動状態から真空制御系の異常部分の原因究明を行い、その原因究明の結果に基づいて装置動作を正常にするための処置を行う。例えば、真空ポンプの交換によって装置が正常動作に復帰した場合、図2の異常画面の「アラーム解除」ボタンをクリックすると、図4に示す処置内容の入力画面が表示される。処置者が選択・入力手段24によって「処置内容」右側の「▼」をクリックすると図4の処置内容のリストが表示されるので、「装置ハード調整」を選択し、図5のように処置詳細に「真空ポンプ交換」を入力する。
【0023】
このように、この装置では、装置の真空制御系の異常が発生すると、真空制御系に関連する警告情報または異常情報、異常が発生した時の数分前からの真空度の計測値の時系列が表示手段23に表示されるので、真空制御系の異常の原因究明を短時間で簡単に行え、その異常部分を短時間で正常にすることができる。
【0024】
次に、同様の異常が再度発生した場合の装置の動作について説明する。測定者が測定中に装置の真空制御系に異常が発生すると、図6に示す異常情報が表示手段23に表示される。この異常画面では、図2の異常画面と異なり、「前回発生時の情報」に前回発生したときの「発生日時」、「処置内容」、「処置詳細」が表示される。この前回発生時の情報に基づいて測定者は真空制御系の異常の原因究明をより短時間で簡単に行え、その異常部分をより短時間で正常にすることができる。
【0025】
次に、分光室12の温度、X線検出器7に印加する高電圧V、および、X線検出器7に流されるフローガス流量Fに関連する装置動作の異常の場合について説明する。図7に示す異常画面の例では、警告情報として上欄の黄色帯体に「測定系で警告が発生しました」、アラーム内容として「測定値が上下限範囲に入りませんでした」、と表示され、発生日時も表示されている。このように、装置の正常な動作管理値の範囲を超えると警告情報が表示手段23に表示される。このとき、同時に「監視データ」と表示されたボタンがハイライト表示され、画面の下欄に「アラーム解除」のボタンが表示されている。
【0026】
次に、ハイライト表示されている「監視データ」ボタンをクリックすると、図8に示すように、分光室12の恒温化温度Tを温度計32で計測した計測値の時系列と、X線検出器7に流されるフローガス流量Fをガス流量制御器34で計測した計測値の時系列が、表示手段23に表示される。この恒温化温度Tおよびフローガス流量Fの計測値の時系列は、異常検出手段21が異常を検出した時の数分前から異常発生時までの各計測値および計測された各時刻として表示されている。処置者は、表示された恒温化温度Tおよびフローガス流量Fの変動状態から恒温化機構またはガス流量制御器34の異常部分の原因究明を行い、その原因究明の結果に基づいて装置動作を正常にするための処置を行う。そして、処置者は選択・入力手段24によって処置内容の入力画面に名前、処置内容、処置詳細を選択または入力する。
【0027】
このように、この装置では、装置の恒温化機構やガス流量制御器34の異常が発生すると、恒温化機構やガス流量制御器34に関連する警告情報または異常情報、異常が発生した時の数分前からの恒温化温度Tやフローガス流量Fの計測値の時系列が表示手段23に表示されるので、恒温化機構やガス流量制御器34の異常の原因究明を短時間で簡単に行え、その異常部分を短時間で正常にすることができる。
【0028】
また、同様の異常が再度発生した場合、真空制御系の動作異常と同様に「前回発生時の情報」に前回発生したときの発生日時、処置内容、処置詳細が表示手段23に表示される。この前回発生時の情報に基づいて測定者は恒温化機構やガス流量制御器34の異常の原因究明をより短時間で簡単に行え、その異常部分をより短時間で正常にすることができる。
【0029】
図9に示す異常画面の例では、異常情報として「測定系で異常が発生しました」、アラーム内容として「微分カーブのピークが左端すぎます」、アラーム詳細と要因として「PHAイニシャライズの仮測定または、スペクトル測定後、スペクトルのピークサーチをしましたが、スペクトルのピークが低エネルギー側に寄り過ぎているため調整できませんでした。」と表示され、発生日時も表示されている。このとき、同時に「監視データ」と表示されたボタンがハイライト表示され、画面の下欄に「アラーム解除」のボタンが表示されている。
【0030】
次に、ハイライト表示されている「監視データ」ボタンをクリックすると、図10に示すように検出器7の高電圧(H.V.電圧)Vを電圧計33で計測した計測値の時系列が表示手段23に表示される。この高電圧Vの計測値の時系列は、異常検出手段21が異常を検出した時の数分前から異常発生時までの各計測値および計測された各時刻として表示されている。処置者は、表示された高電圧Vの変動状態から高圧電源36の異常部分の原因究明を行い、その原因究明の結果に基づいて装置動作を正常にするための処置を行う。そして、処置者は選択・入力手段24によって処置内容の入力画面に名前、処置内容、処置詳細を選択または入力する。
【0031】
このように、この装置では、装置の高圧電源36の異常が発生すると、高圧電源36に関連する異常情報、異常が発生した時の数分前からの高電圧Vの計測値の時系列が表示手段23に表示されるので、高圧電源36の異常の原因究明を短時間で簡単に行え、その異常部分を短時間で正常にすることができる。
【0032】
また、同様の異常が再度発生した場合、真空制御系の動作異常と同様に「前回発生時の情報」に前回発生したときの発生日時、処置内容、処置詳細が表示手段23に表示される。この前回発生時の情報に基づいて測定者は高圧電源36の異常の原因究明をより短時間で簡単に行え、その異常部分をより短時間で正常にすることができる。
【0033】
第1実施形態の装置は、さらに、過去に発生した装置動作の異常を示す発生日時毎の警告情報、異常情報および処置内容を履歴情報として表示手段23に表示させるための履歴情報読出手段26を備える。図11に示すように、本装置の測定画面では画面の下欄および右欄に操作を案内するナビゲーションボタンが表示され、測定者が履歴情報読出手段26である右下欄のアラームボタンをクリックすると、図11の上欄に発生日時毎の警告情報、異常情報、処置内容、処置詳細などを示す履歴情報が表示される。例えば、表示されている履歴情報の最上欄(発生日時 2010年6月6日 警告情報)をダブルクリックすると、図12に示すように、選択された履歴情報に関連する部分の装置構成図を含む履歴情報詳細画面が履歴情報画面の前面に表示される。表示された詳細な履歴情報によって、2010年6月6日に発生した警告情報およびその処置内容、処置詳細を把握することができる。さらに、履歴情報詳細画面の右中欄に表示された監視データボタンをクリックすると、図13に示すように、例えば履歴情報詳細の真空度Pの計測値の時系列画面が履歴情報詳細画面の前面、すなわち最前面に表示される。
【0034】
装置動作の異常が発生した場合、測定者が履歴情報読出手段26によって履歴情報を読み出して、現在発生している装置異常の現象と過去に発生したときの現象とを比較することによって異常の原因究明を短時間で簡単に行え、その異常部分を短時間で正常にすることができる。特に、分析室10の真空度P、分析室10の温度T、X線検出器7に印加する高電圧V、および、X線検出器7に流されるフローガス流量Fの、異常発生時点以前の所定の時間内の計測値の時系列と、過去の異常発生時の計測値の時系列とを比較することによって、類似した異常を容易に見出すことができる。
【0035】
第1実施形態の装置は、分析室10の真空度P、分析室10の温度T、X線検出器7に印加する高電圧V、X線検出器7に流されるフローガス流量Fのそれぞれの計測値を求める計測手段13を有していたが、これらのうちの少なくとも1つを有していればよい。
【0036】
本実施形態の装置では、ゴニオメータを走査(スキャン)する走査型の波長分散型蛍光X線分析装置について説明したが、測定元素毎に固定ゴニオメータを配して同時に多元素を分析する多元素同時型の波長分散型蛍光X線分析装置であってもよく、さらには、エネルギー分散型の蛍光X線分析装置であってもよい。また、上面照射型の蛍光X線分析装置であってもよく、下面照射型の蛍光X線分析装置であってもよい。
【0037】
以下、本発明の第2実施形態の発光分析装置について図14にしたがって説明する。この装置は、放電手段51であるグロー放電管の陰極ブロック55に試料Sを押付けて陽極ブロック56と試料Sの分析対象面との間でグロー放電させ、放電ガスである、例えばアルゴンガスのアルゴンイオンで試料Sの分析対象面をスパッタリングし、試料Sからの発光52の強度を光電子増倍管などの光検出器57で測定し、データ処理手段65によってデータ処理する。試料放電室61内にて試料Sを放電手段51によって放電させる。分光室、例えば多色分光室62は、放電によって試料S中の元素から発生した発光52が入射されて測定対象元素の特定波長光54に分光する凹面分光素子58と、その分光された特定波長光54の強度を測定する光検出器57とを有する。
【0038】
分光室62は真空ポンプなどの真空制御部(図示なし)によって排気、制御され所定の真空度Pに保持されており、その真空度Pは計測手段13の1つである真空計31によって計測されている。また、多色分光室62は恒温化機構(図示なし)によって所定の温度Tに保持されており、その温度Tは計測手段63の1つである温度計32によって計測されている。光検出器57は、高圧電源36によって高電圧Vが印加され、所定の高電圧Vに保持されおり、その高電圧Vは計測手段13の1つである電圧計33によって計測されている。さらに、放電手段51に流される放電ガスは、マスフローコントローラなどのガス流量制御器34によって放電ガス流量Lが制御されるとともに、計測手段13の1つであるガス流量制御器34によって放電ガス流量Lが計測されている。
【0039】
第2実施形態の発光分析装置は異常検出手段21、記憶手段22、表示手段23、選択・入力手段24、管理手段25および履歴情報読出手段26を備える。分析中の装置に動作異常、例えば測定値の異常や真空度Pの異常などが発生すると、異常検出手段21がデータ処理手段65または計測手段13を通じて、その異常を検出してその信号を管理手段25に送る。記憶手段22は、例えば、キャシュメモリであり、現時点以前の所定の時間内の多色分光室62の真空度P、多色分光室62の温度T、光検出器57に印加する高電圧V、および放電手段51に流される放電ガス流量Lの計測値の時系列を記憶しながら現時点以前の所定の時間内から外れた計測値の時系列を順に消去する。
【0040】
表示手段23は、異常検出手段21によって検出された異常に基づく警告情報または異常情報、および現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を表示する。選択・入力手段24は、表示手段23に表示された警告情報または異常情報と現時点以前の所定の時間内の計測値の時系列とに基づいて処置した内容を、表示手段23に表示された処置内容から選択したり、処置した内容を入力したりするための手段である。
【0041】
管理手段25は、ハードディスクなどの記憶媒体を有しており、異常検出手段21によって送られた異常信号を受け取ると、記憶手段22に記憶されている現時点以前の所定の時間内の計測値P、T、V、Lなどの時系列を読出して、記憶媒体に記憶するとともに、異常検出手段21によって検出された異常に基づく警告情報または異常情報、および現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を表示手段23に表示させる。さらに、管理手段65が、選択・入力手段24によって選択または入力された処置内容を警告情報または異常情報に対応させて記憶し、異常検出手段21によって異常が検出されると、警告情報または異常情報に対応した処置内容を表示手段23に表示させるとともに、発生日時毎の警告情報、異常情報および処置内容の履歴を履歴情報として記憶する。
【0042】
次に、この装置の動作について説明する。多色分光室62の真空度Pにおいて異常が発生した場合の警告情報または異常情報に基づく処置は前記の第1実施形態の装置と同様であるので、説明は省略する。
【0043】
次に、多色分光室62の温度、光検出器57に印加する高電圧V、および、放電手段51に流される放電ガス流量Lに関連する装置動作の異常の場合について説明する。図15に示すように、警告情報として「測定系で警告が発生しました」、アラーム内容として「測定値が上下限範囲に入りませんでした」、と表示されている。このとき、同時に「監視データ」と表示されたボタンがハイライト表示され、画面の下欄に「アラーム解除」のボタンが表示されている。
【0044】
次に、ハイライト表示されている「監視データ」ボタンをクリックすると、多色分光室62の恒温化温度Tを温度計32で計測した計測値の時系列、光検出器57に印加される高電圧を電圧計33で計測した計測値の時系列、放電手段51に流される放電ガス流量Lをガス流量制御器34で計測した計測値の時系列が表示手段23に表示されるが、図16に示す例では、恒温化温度Tおよび放電ガス流量Lの時系列が表示されている。この恒温化温度T、高電圧Vおよび放電ガス流量Lの計測値の時系列は、異常検出手段21が異常を検出した時の数分前から異常発生時までの各計測値および計測された各時刻として表示されている。処置者は、表示された恒温化温度T、高電圧Vおよび放電ガス流量Lの変動状態から恒温化機構、高圧電源36およびガス流量制御器34の異常部分の原因究明を行い、その原因究明の結果に基づいて装置動作を正常にするための処置を行う。そして、処置者は選択・入力手段24によって処置内容の入力画面に名前、処置内容、処置詳細を選択または入力する。
【0045】
このように、この装置では、装置の恒温化機構、高圧電源36、ガス流量制御器34に異常が発生すると、恒温化機構、高圧電源36、ガス流量制御器34に関連する警告情報または異常情報、異常が発生した時の数分前からの恒温化温度T、高電圧V、放電ガス流量Lの計測値の時系列が表示手段23に表示されるので、恒温化機構、高圧電源36、ガス流量制御器34の異常の原因究明を短時間で簡単に行え、その異常部分を短時間で正常にすることができる。
【0046】
また、同様の異常が再度発生した場合、第1実施形態の真空制御系の動作異常と同様に「前回発生時の情報」に前回発生したときの発生日時、処置内容、処置詳細が表示される。この前回発生時の情報に基づいて測定者は恒温化機構、高圧電源36、ガス流量制御器34の異常の原因究明をより短時間で簡単に行え、その異常部分をより短時間で正常にすることができる。
【0047】
さらに、第2実施形態の発光分析装置は、第1実施形態のX線分析装置と同様に、履歴情報読出手段26を備えているので、装置動作の異常が発生した場合、測定者が履歴情報読出手段26によって管理手段25から履歴情報、履歴詳細情報、計測値の時系列を読み出して、現在発生している装置異常の現象と過去に発生したときの現象とを比較することによって異常の原因究明を短時間で簡単に行え、その異常部分を短時間で正常にすることができる。特に、分光室62の真空度P、分光室62の温度T、光検出器57に印加する高電圧V、および、放電手段51に流される放電ガス流量Lの、異常発生時点以前の所定の時間内の計測値の時系列と、過去の異常発生時の計測値の時系列とを比較することによって、類似した異常を容易に見出すことができる。
【0048】
第2実施形態の装置は、多色分光室62の真空度P、恒温化温度T、光検出器57に印加する高電圧V、放電手段51に流される放電ガス流量Lのそれぞれの計測値を求める計測手段13を有していたが、これらのうちの少なくとも1つを有していればよい。
【0049】
第2実施形態の装置では、同時に多元素を分析する多元素同時型の発光分析装置について説明したが、モノクロメータを走査する走査型の発光分析装置であってもよく、また、ICP発光分析装置やアーク・スパーク型の発光分析装置であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 X線源
2 1次X線
4、6 2次X線
7 X線検出器
10 分析室
13 計測手段
21 異常検出手段
22 記憶手段
23 表示手段
24 選択・入力手段
25 管理手段
26 履歴情報読出手段
51 放電手段
52 発光
57 光検出器
F フローガス流量
L 放電ガス流量
P 真空度
S 試料
T 恒温化温度
V 高電圧
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析室に配置された試料にX線源から1次X線を照射し発生する2次X線の強度をX線検出器で測定するX線分析装置において、
前記分析室の真空度、前記分析室の温度、前記X線検出器に印加する高電圧、および、前記X線検出器に流されるフローガス流量のうちの少なくとも1つの計測値を求める計測手段と、
分析中の当該装置の動作の異常を検出する異常検出手段と、
現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を記憶しながら現時点以前の所定の時間内から外れた前記計測値の時系列を順に消去する記憶手段と、
前記異常検出手段によって異常が検出されると、前記記憶手段から記憶されている現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を読出して記憶するとともに、前記異常検出手段によって検出された異常に基づく警告情報または異常情報、および現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を表示手段に表示させる管理手段と、
を備えるX線分析装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記警告情報または異常情報と現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列とに基づいて処置された内容を示す処置内容を、選択または入力するための選択・入力手段を備え、
前記管理手段が、前記選択・入力手段によって選択または入力された処置内容を前記警告情報または異常情報に対応させて記憶し、前記異常検出手段によって異常が検出されると、前記警告情報または異常情報に対応した処置内容を前記表示手段に表示させるX線分析装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記管理手段が発生日時毎の前記警告情報、異常情報および処置内容の履歴を履歴情報として記憶し、
前記管理手段から記憶された前記履歴情報を読み出して前記表示手段に表示させるための履歴情報読出手段を備えるX線分析装置。
【請求項4】
分光室に配置された試料を放電手段で放電させ試料からの発光を分光し、その発光強度を測定する発光分析装置において、
前記分光室の真空度、前記分光室の温度、前記光検出器に印加する高電圧、および、前記放電手段に流される放電ガス流量のうちの少なくとも1つの計測値を求める計測手段と、
分析中の当該装置の動作の異常を検出する異常検出手段と、
現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を記憶しながら現時点以前の所定の時間内から外れた前記計測値の時系列を順に消去する記憶手段と、
前記異常検出手段によって異常が検出されると、前記記憶手段から記憶されている現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を読出して記憶するとともに、前記異常検出手段によって検出された異常に基づく警告情報または異常情報、および現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を表示手段に表示させる管理手段と、
を備える発光分析装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記警告情報または異常情報と現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列とに基づいて処置された内容を示す処置内容を、選択または入力するための選択・入力手段を備え、
前記管理手段が、前記選択・入力手段によって選択または入力された処置内容を前記警告情報または異常情報に対応させて記憶し、前記異常検出手段によって異常が検出されると、前記警告情報または異常情報に対応した処置内容を前記表示手段に表示させる発光分析装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記管理手段が発生日時毎の前記警告情報、異常情報および処置内容の履歴を履歴情報として記憶し、
前記管理手段から記憶された前記履歴情報を読み出して前記表示手段に表示させるための履歴情報読出手段を備える発光分析装置。
【請求項1】
分析室に配置された試料にX線源から1次X線を照射し発生する2次X線の強度をX線検出器で測定するX線分析装置において、
前記分析室の真空度、前記分析室の温度、前記X線検出器に印加する高電圧、および、前記X線検出器に流されるフローガス流量のうちの少なくとも1つの計測値を求める計測手段と、
分析中の当該装置の動作の異常を検出する異常検出手段と、
現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を記憶しながら現時点以前の所定の時間内から外れた前記計測値の時系列を順に消去する記憶手段と、
前記異常検出手段によって異常が検出されると、前記記憶手段から記憶されている現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を読出して記憶するとともに、前記異常検出手段によって検出された異常に基づく警告情報または異常情報、および現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を表示手段に表示させる管理手段と、
を備えるX線分析装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記警告情報または異常情報と現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列とに基づいて処置された内容を示す処置内容を、選択または入力するための選択・入力手段を備え、
前記管理手段が、前記選択・入力手段によって選択または入力された処置内容を前記警告情報または異常情報に対応させて記憶し、前記異常検出手段によって異常が検出されると、前記警告情報または異常情報に対応した処置内容を前記表示手段に表示させるX線分析装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記管理手段が発生日時毎の前記警告情報、異常情報および処置内容の履歴を履歴情報として記憶し、
前記管理手段から記憶された前記履歴情報を読み出して前記表示手段に表示させるための履歴情報読出手段を備えるX線分析装置。
【請求項4】
分光室に配置された試料を放電手段で放電させ試料からの発光を分光し、その発光強度を測定する発光分析装置において、
前記分光室の真空度、前記分光室の温度、前記光検出器に印加する高電圧、および、前記放電手段に流される放電ガス流量のうちの少なくとも1つの計測値を求める計測手段と、
分析中の当該装置の動作の異常を検出する異常検出手段と、
現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を記憶しながら現時点以前の所定の時間内から外れた前記計測値の時系列を順に消去する記憶手段と、
前記異常検出手段によって異常が検出されると、前記記憶手段から記憶されている現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を読出して記憶するとともに、前記異常検出手段によって検出された異常に基づく警告情報または異常情報、および現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列を表示手段に表示させる管理手段と、
を備える発光分析装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記警告情報または異常情報と現時点以前の所定の時間内の前記計測値の時系列とに基づいて処置された内容を示す処置内容を、選択または入力するための選択・入力手段を備え、
前記管理手段が、前記選択・入力手段によって選択または入力された処置内容を前記警告情報または異常情報に対応させて記憶し、前記異常検出手段によって異常が検出されると、前記警告情報または異常情報に対応した処置内容を前記表示手段に表示させる発光分析装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記管理手段が発生日時毎の前記警告情報、異常情報および処置内容の履歴を履歴情報として記憶し、
前記管理手段から記憶された前記履歴情報を読み出して前記表示手段に表示させるための履歴情報読出手段を備える発光分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−7928(P2012−7928A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142404(P2010−142404)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【Fターム(参考)】
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