説明

X線撮影装置

【課題】X線透視下カテーテル術において、術者が精細なX線透視画像を必要としない場合に、術者に負担をかけることなく、被検体の被曝量を低く抑えることができるX線撮影装置を提供する。
【解決手段】被検体にX線発生手段からX線を照射し、被検体を透過したX線をX線検出手段で検出して、X線画像を撮影するX線撮影装置において、作業状態検出手段は、X線画像の撮影における術者の作業状態を検出する。X線量制御手段は、作業状態検出手段の検出結果に基づいて、X線発生手段から照射するX線量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、被検体にX線発生手段からX線を照射し、前記被検体を透過したX線をX線検出手段で検出して、X線画像を形成するX線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被検体に対する低侵襲性などの利点により体内に細い索状部材で構成された索状の挿入器具を挿入して行う技術の普及が著しい。挿入器具としては、カテーテル及びカテーテルとともに導入されるガイドワイヤなどがある。なお、この明細書においては、これらを含む索状の挿入器具のことを、以下、「ワイヤ」と言うことにする。一般に、ワイヤは人体に比べてX線を吸収しやすいため、X線画像中において比較的明瞭な黒い細線として観察される。
【0003】
ワイヤが用いられる手術の一例としてX線透視下カテーテル術がある。X線透視下カテーテル術は、大腿部の動脈などから体内にカテーテルを挿入し、リアルタイムで表示されるX線透視画像(動画像)を参照しながらカテーテルを患部まで導いて治療を行うものである。
【0004】
X線透視下カテーテル術において用いられるX線撮影装置は、カテーテルが挿入された状態の被検体に向けて透視用のX線を照射し、被検体を透過したX線を検出し、検出結果を基に被検体内を描写するX線透視画像を形成して表示する。また、X線撮影装置は、入力操作による情報に基づいて、被検体を透視するときのX線の線量を含む透視条件を変更可能に構成され、X線の線量を上げていくと、その結果として、より精細なX線透視画像を表示される。より精細なX線透視画像中において、血管を含む被検体内の組織を視認しやすくすることができる(例えば、特許文献1)。
【0005】
X線透視下カテーテル術において、術者は、あたかも迷路のように張り巡らされた血管内を適切な経路を介して患部までカテーテルを導かなければならない。そのための操作は、体外に出ているカテーテルの部分を操ることにより行われる。このため、X線透視カテーテル術には熟練した手技が必要とされる。
【0006】
血管の分岐点における所望の分枝にカテーテルを進入させる場合や狭窄部位を通過させる場合には、まずカテーテルの先端部を進路に挿入する。そのために術者は、カテーテルを前進、後退、ねじりなどの操作を適切に組み合わせるなど、極めて微妙な操作を行っている。なお、先端部が進路に適切に挿入されていない状態でカテーテルを進めると、血管を突き破るなどの合併症を招きかねない。
【0007】
また、カテーテルの先端部を進路に適切に挿入させるときに、血管の分枝や狭窄部位を視認しやすくするために、より精細なX線透視画像を表示させることで、ガイドワイヤを進入させるべき位置を確認することができる。より精細なX線透視画像を表示させるために、時折カテーテルから造影剤を流出させて、ほんの数秒間現れる造影剤の像を観察することでガイドワイヤを進入させるべき位置を確認することができる。しかし、造影剤は患者の腎臓機能に負荷を与えるため使用量が限られており、カテーテルの先端部の挿入作業中、造影剤を使用し続けることはできない。また、被検体を透視するときのX線の線量を上げることで、より精細なX線透視画像を表示させることができる。しかし、X線透視下カテーテル術において、大きな線量のX線を被検体に対し照射し続けることは、被検体の被曝量をなるべく低く抑えるという要請に反する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−149354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
X線透視下カテーテル術において、術者は、カテーテルの先端部の挿入作業を常時行っている訳ではなく、他の作業を行っている場合がある。この場合、術者は精細なX線透視画像を必要としないので、被検体の被曝量をなるべく低く抑えるために、被検体に対し照射されるX線の線量を減らしても、他の作業に支障を来さない。
【0010】
X線撮影装置は、入力操作による情報に基づいて、被検体を透視するときのX線の線量を変更可能に構成されているため、X線透視下カテーテル術において、精細なX線透視画像の必要性に応じて、入力操作によりX線量を増したり、減らしたりすることが可能である。
【0011】
しかし、X線透視下カテーテル術において、術者が精細なX線透視画像を必要としない状況になる度に、X線量を減らすための入力操作を術者が常に行うことは極めて煩わしく、精神的、肉体的に術者に負担がかかり、極めて精密な作業が術者に要求されるカテーテルの先端部の挿入作業に悪影響を及ぼすという問題点がある。
【0012】
この実施形態は、上記の問題を解決するものであり、その目的は、X線透視下カテーテル術において、術者が精細なX線透視画像を必要としない場合に、術者に負担をかけることなく、被検体の被曝量を低く抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、一つの実施形態は、被検体にX線発生手段からX線を照射し、被検体を透過したX線をX線検出手段で検出する。一方、X線画像を撮影するX線撮影装置において、作業状態検出手段が、X線画像の撮影における術者の作業状態を検出する。そして、X線量制御手段が、作業状態検出手段の検出結果に基づいて、X線発生手段から照射するX線量を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態に係るX線撮影装置の全体構成を表す図である。
【図2】図1に示すX線撮影装置の制御系の構成を表すブロック図である。
【図3】図1に示すX線撮影装置が表示する、体内に挿入されたワイヤを描写したフレームを表す図である。
【図4】図3に示すフレームの概要を表す図である。
【図5】図3に示すフレームから抽出されたワイヤの像を表す図である。
【図6】図5に示すワイヤの像に基づく2次元曲線を表す図である。
【図7】図1に示すX線撮影装置により時系列に沿って得られる複数のワイヤの像に基づく2次元曲線を表す図である。
【図8】図1に示すX線撮影装置により時系列に沿って得られる複数のワイヤの像に基づく2次元曲線を表す図である。
【図9A】図7に示す隣接する二つのフレームの一方におけるワイヤの像に基づく2次元曲線を表す図である。
【図9B】図7に示す隣接する二つのフレームの他方におけるワイヤの像に基づく2次元曲線を表す図である。
【図10】図9A及び図9Bに示す2つの2次元曲線の重ね合わせ状態を表す図である。
【図11】X線量決定部による判断の一例を示すフローチャートである。
【図12】第2の実施形態に係る術者センサーとして、アダプターに取り付けられた固体マイクを用いた例を示す図である。
【図13】図12に示すアダプターの部分を拡大して表した図である。
【図14】第4の実施形態に係る術者センサーとして、ディスプレイに取り付けられたカメラを用いた例を示す図である。
【図15】術者がディスプレイに正対した場合の露出領域を示す図である。
【図16】術者がディスプレイに正対しない場合の露出領域を示す図である。
【図17】第5の実施形態において、術者がディスプレイに正対した場合の目の画像を表す図である。
【図18】術者がディスプレイに正対しない場合の目の画像を表す図である。
【図19】第6の実施形態において、術者に装着された反射マーカを表す図である。
【図20】術者センサーおよび反射マーカを表す図である。
【図21】反射マーカについて角度θと相対反射率との関係を描いたグラフである。
【図22】第6の実施形態の変形例において、術者がディスプレイに正対した場合の反射マーカの画像を示す図である。
【図23】術者が液晶ディスプレイに正対しない場合の反射マーカの画像を示す図である。
【図24】第7の実施形態に係る術者センサーを表す図である。
【図25】圧力センサーマット上の重心位置を示す図である。
【図26】第8の実施形態において、ワイヤを操作していないときの術者の心拍数を示す図である。
【図27】ワイヤを操作しているときの術者の心拍数を示す図である。
【図28】第10の実施形態において、項目毎に求められた度合の一例を表す図である。
【図29】ワイヤ形状変化率の変化量、管電流の変化量、フレームレートの変化量、及び、X線量の変化量のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
X線撮影装置の実施の形態の一例について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
この実施形態に係るX線撮影装置は、被検体の体内にワイヤを挿入して実施される手術において使用される。以下、X線透視下カテーテル術に適用した場合について特に詳しく説明する。このX線撮影装置は、X線透視下カテーテル術において、術者が精細なX線透視画像を必要としない場合、術者に負担をかけることなく、被検体の被曝量を低く抑えるものである。そのために、このX線撮影装置は、X線透視下カテーテル術において、現状のX線量を減らすか否か判断し、X線量を減らすと判断した場合、X線量を自動的に減らすものである。
【0017】
X線透視下カテーテル術において、術者が精細なX線透視画像を必要とするか否かを判断する際の判断材料として、次のような術者の作業状態を挙げることができる。第1の作業状態は、例えば術者により器具(ワイヤ)が操作された状態のような術者による器具の操作状態である。第2の作業状態は、例えばX線透視画像を表示するためのディスプレイを術者が見ているときの術者の姿勢である。第3の作業状態は、極めて精密な作業が術者に要求されるワイヤの先端部の挿入作業において、術者の呼吸が抑制されたとき、又は、術者が緊張状態になったときの術者の生体情報である。第4の作業状態は、術者が会話したときのような術者の行動である。第5の作業状態は、術者又はX線技師等が装置に対して線量の低減もしくは増加あるいは照射の中止や再開を指示する操作を行うことである。
【0018】
上記の第1から第5の術者の作業状態のうちのいずれか一つ又はいずれか二つ以上を組み合わせたものが、術者が精細なX線透視画像を必要とするか否かを判断する際の判断材料となる。したがって、このX線撮影装置は、この判断材料を基に、現状のX線量を減らすか否かを判断する。
【0019】
このX線撮影装置が現状のX線量を減らすか否かを判断する際の判断材料として、上記の第1から第5の術者の作業状態のいずれを検出するかについて、及び、検出する方法について、並びに、その検出した結果を比べるときによりどころとなる判断基準、及び、その判断内容について、各種の実施形態を挙げて詳細に説明する。
【0020】
〈第1の実施形態〉
第1の実施形態について説明する。先ず、X線透視下カテーテル術を行うためのX線撮影装置の構成について説明する。次に、X線透視下カテーテル術において、術者によるワイヤの操作状態を検出した結果として、ワイヤの形状の変化量を検出する例について説明する。
【0021】
[装置構成]
この実施形態に係るX線撮影装置の構成について説明する。このX線撮影装置の構成例を図1に示す。このX線撮影装置は、従来と同様の機械構成を有する。
【0022】
被検体1はX線透視下カテーテル術が施される患者を示す。被検体1は天板2の上に載置される。天板2は図示しない寝台装置の一部である。寝台装置には天板2を移動させるための駆動機構が設けられている。この実施形態では被検体1は天板2に横たわるようにして載置される。X線撮影装置によっては被検体を立位状態で支持する立位載置台が設けられたものもあるが、X線透視下カテーテル術においては、通常、天板上に仰臥状態で支持された被検体に対して処置が施される。
【0023】
Cアーム3は略「C」字形状に形成された支持部材である。Cアーム3の一端側にはX線管4とX線絞り5が支持され、他端側にはX線検出器6が支持されている。それにより、X線管4及びX線絞り5と、X線検出器6とが、被検体1を挟んで対向する位置に配置される。X線管4は、この発明の「X線発生手段」の一例である。また、X線検出器6は、この発明の「X線検出手段」の一例である。
【0024】
Cアーム3は駆動機構8により移動可能に保持されている。駆動機構8は、演算制御装置20の制御の下にCアーム3を移動させることで、X線管4、X線絞り5及びX線検出器6の位置や傾斜角度を変更させる。
【0025】
X線管4は、高電圧発生装置9から高電圧を印加されてX線7を発生する。X線絞り5は、X線管4から発生されたX線7の照射範囲(立体角や断面形状)を規制する絞り羽根を有する。絞り制御部10は、絞り羽根の位置を移動させてX線7の照射範囲を変更させる。高電圧発生装置9及び絞り制御部10の動作は演算制御装置20により制御される。
【0026】
X線絞り5により照射範囲が規制されたX線7は被検体1に照射される。被検体1を透過したX線7はX線検出器6に投射される。X線検出器6はX線7を検出し、その検出結果を電気信号に変換して検出制御部11に送信する。検出制御部11はこの電気信号を演算制御装置20に送信する。また、検出制御部11はX線検出器6の動作を制御する。
【0027】
X線検出器6は、たとえば平面検出器(Flat Panel Detector;FPD)や、イメージインテンシファイア(Image Intensifier;I.I.)を用いて構成できる。
【0028】
この実施形態では、所定の時間間隔でパルスX線7を照射するようにX線管4を制御する。この時間間隔はたとえば(1/30)秒〜(1/5)秒(毎秒の照射回数5〜30回)程度に設定される。なお、X線撮影装置ではたとえば最大数十回/秒の照射が可能であるが、被検体1や術者へのX線被曝を低減させるためにこの程度の時間間隔が選択される。それにより、5〜30フレーム/秒程度のフレームレートの動画像が得られる。このように反復的にパルスX線を照射する代わりに、連続的にX線を照射することも可能である。
【0029】
演算制御装置20は、このX線撮影装置の各部の制御を行うとともに、各種の演算処理を実行する。演算制御装置20は、たとえば一般的なコンピュータと同様の構成を有する。その一例として、演算制御装置20は、マイクロプロセッサ、記憶装置(RAM、ROM、ハードディスクドライブ等)、通信インターフェイスなどを含んで構成される。演算制御装置20には、操作デバイスや入力デバイスや表示デバイスが接続されている。
【0030】
演算制御装置20中のシステム制御部21は、このX線撮影装置の各部を制御する。その一例として次のようなものがある:駆動機構8を制御してCアーム3を移動させる;高電圧発生装置9を制御してX線条件(X線7の線量、フレームレート等)を変更させて、例えば、後述するX線量の増減調整をする;絞り制御部10を制御してX線7の照射範囲を変更させる;検出制御部11を制御してX線検出器6の動作制御を行わせる。また、システム制御部21は演算制御装置20の各部を制御する。演算制御装置20は、この発明の「X線量制御手段」の一例である。
【0031】
画像処理部23は、X線検出器6から検出制御部11を介して送信された電気信号に基づいて被検体1の画像(デジタル画像データ)を形成する。また、画像処理部23は、この画像に対して各種の画像処理を施す。画像処理部23の詳細については後述する。
【0032】
表示制御部24は、システム制御部21の制御を受けて表示部31に情報を表示させる。表示部31は、液晶デスプレイ(Liquid Crystal Display;LCD)や、CRT(Cathode Ray Tube)等の表示デバイスを用いて構成される。
【0033】
X線量決定部25は、術者センサー33から出力された検出結果を基に、現状のX線量を減らすか否かを判断し、現状のX線量を減らすと判断した場合、X線量を減らすように制御信号を出力する。X線量決定部25の詳細については後述する。
【0034】
操作部32は、このX線撮影装置の操作や情報入力などに用いられる。操作部32は、キーボード、マウス、コントロールパネル、ペダル操作部などの操作デバイスや入力デバイスを含んで構成される。ペダル操作部は、X線照射開始や停止の指示信号を出力し、及び、X線量を増やしたり減らしたりする指示信号を出力する。
【0035】
術者センサー33は、動画像に含まれる複数のフレームのうちのいずれか一つのフレームにおけるワイヤの像とこれより過去のフレームにおけるワイヤの像との差から、ワイヤの形状の変化量を検出して、検出結果を出力する。術者センサー33は、この発明の「作業状態検出手段」の一例である。術者センサー33の詳細については後述する。
【0036】
〔画像処理部〕
画像処理部23の構成例について、図2を更に参照しながら説明する。画像処理部23には、ワイヤ特定部41と位置合わせ処理部43が設けられている。
【0037】
画像処理部23は、以下に説明する処理をリアルタイムで実行する。この実施形態におけるリアルタイム処理は、X線検出器6からの電気信号(一フレームに相当する)が演算制御装置20に入力されたことに対応して、当該フレームに対する処理を即座に実行して結果を出力(表示)することである。それにより、実用上遅滞ないとみなされる遅延時間のうちに、ワイヤの状況を動画像として表示することが可能となる。
【0038】
(ワイヤ特定部)
上記のように、この実施形態では5〜30フレーム/秒程度のフレームレートの動画像が得られる。ワイヤ特定部41は、この動画像を構成する複数のフレームのそれぞれにおけるガイドワイヤの像を特定する。
【0039】
ここで、フレームとは、動画像を構成する一連の静止画像のそれぞれを指す。また、上記複数のフレームは、動画像を構成する全てのフレームである必要はない。たとえば、この実施形態の特徴的な機能(後述)の開始タイミングと終了タイミングに応じて決定される複数のフレームであってもよい。なお、手術中には長時間(たとえば数時間)に亘って毎秒数フレームから30フレーム程度の動画像が生成され続けるが、この実施形態に係る機能を使用するのはこのうちの例えば数分程度である。画像処理部23は、この実施形態に係る機能の使用開始の指示とともに動作を開始し、以下のような処理を実行する。画像処理部23による処理対象となるフレームは、当該使用開始の指示以降に取得される一連のフレームである。
【0040】
ワイヤ特定部41の動作についてより詳しく説明する。フレームの一例を図3に示す。フレームFは、大腿動脈から挿入されたカテーテル及びガイドワイヤを大動脈経由で冠状動脈に挿入したところを表している。一般にX線画像では、X線の透過量が少ないところを黒く描写させ、多いところを白く描写させるように表示することが多い。図3もこの表示方式に従っている。図3に示す画像の模式図を図4に示す。
【0041】
フレームFにおいて薄暗い帯状に見える像C´は、カテーテルの影である。また、カテーテルの像C´の先端部分に位置して、やや黒く見える像Cは、ガイドワイヤの影である。カテーテルの先端は開口している。ガイドワイヤの先端側はこの開口から突出している。また、ガイドワイヤの中央付近の大きな屈曲は、大動脈から冠状動脈への分岐部にカテーテルが嵌り込んでいるために生じている。ガイドワイヤの像Cの先端部位を詳細に見ると、僅かだが大きく屈曲している。これは、血管の分岐部等にガイドワイヤを挿入しやすくするために予めガイドワイヤに付けてある曲がり癖である。フレームFはこのような状態を描写している。
【0042】
なお、図4においては、見やすさのために、血管や臓器や骨などの体内組織を描写した像を省略してある(以下の他の模式図においても同様)。実際のフレームでは、図3に示すように、体内組織に相当する複雑な濃淡模様も描写される。また、この実施形態では、特に言及しない限り、像とその実体(カテーテル、ガイドワイヤ、体内組織等)とを区別しないことにする。
【0043】
この実施形態では図3に示すようなフレームを処理する。ワイヤの像Cをより容易にかつ高精度に特定するために、まず、ワイヤ特定部41が強調処理を行って像Cをより明瞭にする。この強調処理の例として、非線形明度変換を行ってワイヤの像Cの濃度ムラを低減させてから、更に、画像の様々な空間周波数成分のうち空間周波数の高い成分を抽出する画像フィルタ処理を施す方法がある。この画像フィルタ処理は、大域的で滑らかなグラデーションを除去し、局所的で細かな変動成分のみを残すものである。
【0044】
強調処理は、上記の例に限定されるものではない。たとえば、使用されるX線撮影装置や被検体の特性に応じて、強調処理の内容を適宜に決定することができる。また、公知の画像処理技術を適宜に組み合わせるなどして強調処理を実現することが可能である。
【0045】
ワイヤ特定部41は、フレームFに対して適切なパターン抽出処理を施してワイヤの像Cを特定する。このパターン抽出処理としては、画素値に関する閾値処理や空間フィルタ処理などの任意の画像処理技術を適宜に用いることが可能である。また、ワイヤの像Cの特定には、像Cの全体を特定する代わりに、その輪郭を特定するように構成してもよい。
【0046】
数学的には、ワイヤは実空間(3次元空間)に埋め込まれた滑らかな曲線(3次元曲線)である。一方、X線撮影装置で得られる画像は、この3次元曲線を平面に投影した2次元曲線となる。この投影は、X線管4の位置(つまりX線7の発生位置)を視点とし、X線検出器6の検出面を投影平面としたものである。よって、特定したワイヤの像Cを2次元曲線として捉えることができる(これも同じ符号Cで表す)。
【0047】
ワイヤ特定部41は、フレームFから特定されたワイヤの像Cを抽出する。位置合わせ処理部43は、抽出された像Cを2次元曲線として表す(後述)。抽出されたワイヤの像Cの例を図5に示す。また、ワイヤの像Cに基づく2次元曲線Cの例を図6に示す。
【0048】
前述の時間間隔でX線検出器6から順次に送られてくる電気信号に基づく各フレームに対し、ワイヤ特定部41は上記処理をリアルタイムで実行する。それにより時系列の複数のワイヤの像が得られる。
【0049】
図7は、術者のワイヤ操作によりワイヤを軸回転させた場合において、時間的に連続するフレーム群のそれぞれから抽出されたワイヤの像に基づく2次元曲線Cを表している。また、図8は、術者のワイヤ操作によりワイヤを前進させた場合において、時間的に連続するフレーム群のそれぞれから抽出されたワイヤの像に基づく2次元曲線Cを表している。2次元曲線Cの位置や形状が少しずつ変化しているのは、被検体1の呼吸や心拍等によって生じる運動による移動と、血管内におけるワイヤの移動によるワイヤ自体の変形の結果である。
【0050】
体内のワイヤを観察する場合、ワイヤに対してできるだけ直交する方向からX線を照射することが望ましい。それにより、ワイヤの動きが映像上(動画像上)で最も分かりやすくなるからである。時間的に隣接する二つのフレーム間でワイヤの像Cを比較すると、両者の違いは形状や長さの僅かな変化であり、被検体1の運動による平行移動や回転移動によりワイヤの変形や位置の変化が生じてはいるものの、互いに似通った形態となる。
【0051】
なお、ワイヤの先端部位は、ワイヤを捻る操作や血管壁との衝突によって急激に形状を変えることがある。しかし、それ以外の部位は、ワイヤが現に通っている位置の血管の形状を反映しており、急激に変形することはほとんどない。この実施形態では、この事実を利用して次のような処理を実行する。
【0052】
(位置合わせ処理部)
位置合わせ処理部43は、この実施形態に係る機能の適用対象となる一連のフレームのうち、最初のフレーム以外の各フレームに対して次のような処理を実行する。このとき、最初のフレームは、以降のフレームに対する処理において位置の基準として参照される。位置合わせ処理部43は、当該フレームにおけるワイヤの像Cとこれより過去のフレームにおけるワイヤの像Cとが最もうまく重なるように、当該フレームと過去のフレームとを位置合わせする。以下、フレームの位置合わせ処理について詳しく説明する。
【0053】
まず、位置合わせ処理部43は、各フレームにおけるワイヤの像Cの形状を表す2次元曲線Cを求める(図6を参照)。このとき、必要に応じて細線化処理などの画像処理が行われる。
【0054】
まず、隣接する二つのフレームを位置合わせする処理の概要を説明する。図7に示す隣接するフレームf、gにおけるワイヤの像Cに基づく2次元曲線を図9A及び図9Bにそれぞれ示す。図9Aはフレームfに対応する2次元曲線Cfを示し、図9Bはフレームgに対応する2次元曲線Cgを示している。なお、後述の重ね合わせを考慮して、2次元曲線Cfは実線で、2次元曲線Cgは破線でそれぞれ示してある。各図の座標軸についても同様である。
【0055】
次に、位置合わせ処理部43は、双方の2次元曲線Cf、Cgが最も良く一致するような座標変換を求める。この座標変換は平行移動と回転移動を含む。このような座標変換はアフィン変換(Affine Transformation)として表現可能である。ただし、ここで用いるアフィン変換は拡大/縮小と鏡映を含まない。
【0056】
得られたアフィン変換は、フレームfのワイヤの像Cに合わせてフレームgのワイヤの像Cを相対的に平行移動及び/又は回転移動させるものである。このアフィン変換をT(g、f)と記すことにする。
【0057】
アフィン変換T(g、f)を決定する際には、体内をワイヤが移動することによる変形の影響を考慮する必要がある。そのために、2次元曲線Cf、Cgの全体を合わせ込むのではなく、両端部位に生じるずれを許容する。特に、先端部位については前述のように急激な変形が発生することがあるので、比較的大きなずれまで許容する。たとえば図10に示すように、2次元曲線Cf、Cgの先端部位については、他の部位ほど正確に重ね合わせる必要はない。
【0058】
位置合わせ処理部43は、各2次元曲線Cf、Cgの各位置に対応する重み関数W、Wを生成する。
【0059】
一般に、重ね合わせを厳密に行いたい部分については重みを大きく設定し、ずれを許容する部位については重みを小さく設定する。ワイヤの先端部位の近傍については、前述のように変形しやすいので、重みを小さくする。また、ワイヤの各点における屈曲の度合いに応じて重みを付与することが可能である。たとえば、ワイヤの屈曲が大きい位置ほど重みを大きくすることが望ましい。重み関数W、Wは、これら事項に鑑みて各位置における重みを適当に設定することによって生成される。
【0060】
重ね合わせは、フレームgに対して式(1)に示すアフィン変換T(g、f)を適用することによって行うので、そのパラメータθ、u、vを適切に決定する必要がある。ここで、パラメータθは回転移動量を表し、パラメータu、vは平行移動量を表す。
【0061】
【数1】

【0062】
フレームgの2次元曲線(x,y)にアフィン変換T(g、f)を適用して得られる2次元曲線を(x´,y´)とする。フレームfの2次元曲線(x,y)と2次元曲線(x´,y´)との不一致の度合いを適当な尺度で評価したものをEとすると、このEの値が概ね最小になるようなパラメータθ、u、vを算出する。
【0063】
より具体的な構成としては、たとえば次のようにできる。2次元曲線(x,y)上の各点pと、2次元曲線(x´,y´)上の点であって点pに最寄りである点qとの距離をDとするとき、不一致の度合いの評価尺度Eとして次式で示すものを考慮する。
【0064】
【数2】

【0065】
式(2)に示す総和は、2次元曲線(x,y)上の全ての点について取るものとする。θ、u、vの値を変化させるとEの値も変化するので、Eが概ね最小になるθ、u、vを探索する。この探索は、公知の非線形最小二乗法等の技法で実行できる。
【0066】
以上のようにして適切なアフィン変換T(g、f)が決定される。これをフレームgに適用すると、フレームfとフレームgの相互のワイヤの像Cがほぼ重ね合わせられ、したがって、これらフレームf、gが位置合わせされたことになる。なお、上記の例では不一致の度合いが概ね最小になるようにアフィン変換のパラメータを算出したが、これとは逆に一致の度合いを適当な尺度で評価し、この一致の度合いが概ね最大になるようにアフィン変換のパラメータを求めるように構成してもよいことは言うまでもない。
【0067】
以上の演算では、隣接する二つのフレームの位置合わせを実行している。この実施形態では、時系列に沿って順次にフレームが形成されていくので、動画像におけるワイヤの像Cの動きを抑制するためには、上記のアフィン変換を順次に累積していく必要がある。そのために、位置合わせ処理部43は次のような処理を実行する。
【0068】
動きを抑制する処理が施される最初のフレームの直前のフレームをフレームF0とし、これ以降のフレームを順にフレームF1、F2、F3、・・・・とする(図示せず)。このとき、フレームFn(n=1、2、3、・・・・)に適用されるアフィン変換をTとすると、位置合わせ処理部43は、次式のようにして各アフィン変換Tを求める。
【0069】
【数3】

【0070】
位置合わせ処理部43は、このようにして順次に得られるアフィン変換Tを、対応するフレームFnに順次に適用していくことにより、順次に取得される複数のフレームの位置合わせをリアルタイムで実行する。
【0071】
このようにすると、最初のフレームfに対して次のフレームgが位置合わせされた後、フレームgに続くフレームhは、「最初のフレームfに対して位置合わせされたg」に対して位置合わせされることになる。したがって、フレームhは、フレームfに対しても概ね正しく位置合わせされていることになる。以下同様である。このようにしてワイヤの像Cがほとんど静止した動画像を生成することができる。それにより、X線透視下カテーテル術でリアルタイムで観察されるX線透視画像において、被検体の運動に起因するワイヤの像の動きを抑制することが可能となる。
【0072】
以上に説明した位置合わせ処理において、フレームfとフレームgの相互のワイヤの像Cをほぼ重ね合わせる際に、不一致の度合いの評価尺度Eが概ね最小になるパラメータθ、u、vを探索した。このパラメータθ、u、vは、術者がワイヤを操作(軸回転、前進及び後退)した場合のワイヤの形状の変化量に対応するものである。したがって、パラメータθ、u、vを基に、ワイヤの形状の変化量を検出することができる。
【0073】
次に、術者センサー33が、パラメータθ、u、vを基に、ワイヤの形状の変化量を検出する動作の一例を示す。
【0074】
ここでは、所定のフレームレートで得られる動画像において、最新に得られたフレームとこれより一つ前に得られたフレームの相互のワイヤの像を重ね合わせる際に探索されたパラメータθ、u、v、及び、一つ前に得られたフレームとこれよりさらに一つ前に得られたフレームの相互のワイヤの像を重ね合わせる際に探索されたパラメータθ’、u’、v’を用いる。これらのパラメータθ、u、v、θ’、u’、v’を基に、術者センサー33は、例えば、次のようにして平均平方の残差を求める。
【0075】
先ず、術者センサー33は、次の演算により、パラメータの平均値θ、u、vを求める。
【0076】
【数4】

【0077】
次に、以下の演算により、平均値θ、u、vに対するパラメータθ、u、v、θ’、u’、v’の平方和Sを求める。
【0078】
【数5】

【0079】
次に、術者センサー33は、以下の演算により、平均平方の残差Rを求める。
【0080】
【数6】

なお、Dは変数のうち独立に選べるものの数である自由度を表し、Nは観測データが一つの演算で結合しているときの集合の数である群数を表し、nは一つの群内に含まれる観測データの数である観測値を表す。ここでは、N=3、n=2となる。
【0081】
X線量決定部25は、予め定められた閾値を判断基準とし、残差Rが閾値を超えるかどうかを判断し、残差Rが閾値を超えないとの判断結果が得られたときに、現状のX線量を減らす余地があるかどうかを判断する。なおX線量決定部25が、現状のX線量を減らす余地があるかどうかを判断するとき、管電流及びフレームレートを判断材料とする。管電流及びフレームレートがともに最低値である場合、X線透視画像の画質が落ちる上に、動画が滑らかに動作しなくなるため、現状のX線量を減らす余地がないと判断する。他方、管電流又はフレームレートの少なくとも一方が最低値でない場合、現状のX線量を減らす余地があると判断する。
【0082】
以下、図11に示すフローチャートを参照して、上記したX線量決定部25による判断処理について、さらに詳細に説明する。
【0083】
上述した式(4)〜式(6)を用いた演算を基に、術者センサー33が残差Rを求めると(S101)、X線量決定部25は、残差Rが閾値を超えないかどうかを判断する(S102)。残差Rが閾値を超えると術者センサー33が判断した場合(S102:No)、システム制御部21は、現状のX線量を維持する。一方、残差Rが閾値を超えないと術者センサー33が判断した場合(S102:Yes)、X線量決定部25は、現状のX線量を減らす余地があるかどうかを例えば次のように判断する。
【0084】
X線量決定部25は、管電流が最低値(min)であるかどうかを判断する(S103)、管電流が最低値でない(現状のX線量を減らす余地がある)と判断した場合(S103:No)、システム制御部21は、管電流を減らすための制御信号を高電圧発生装置9に出力し、管電流を減らす(S106)。X線量決定部25は、管電流が最低値でないと判断した場合(S103:Yes)、フレームレートが最低値(min)であるかどうかを判断する(S104)。フレームレートが最低値でない(現状のX線量を減らす余地がある)と判断した場合(S104:No)、システム制御部21は、フレームレートを下げるための制御信号を高電圧発生装置9に出力し、フレームレートを下げる(ステップS107)。
【0085】
一方、X線量決定部25は、管電流が最低値であると判断した場合(S103;Yes)、及び、フレームレートが最低値であると判断した場合(S104:Yes)、現状のX線量を減らす余地がないため、システム制御部21は、管電流を減らすための制御信号及びフレームレートを下げるための制御信号を高電圧発生装置9に出力せず、現状のX線量を維持する。
【0086】
以下の実施形態の説明においても同様に、X線量決定部25が現状のX線量を減らす余地があると判断した場合、管電流を減らす(S106)又はフレームレートを下げる(S107)。また、X線量の調節の詳細については、X線撮影装置の動作例の中で後述する。
【0087】
この実施形態では、位置合わせ処理において、探索されるパラメータθ、u、vを基に、所定の演算をすることにより、ワイヤの形状の変化量を検出しているので、術者センサー33を主にソフトウェアにより構成することができる。
【0088】
〈第2の実施形態〉
第1の実施形態では、術者がワイヤを操作しているか否かの判断材料として、ワイヤの形状の変化を検出した結果を用いた例を示したが、ワイヤの操作状態を判断する際の判断材料として、ワイヤを操作したときに生じる音・振動を検出した結果を用いても良く、また、ワイヤを操作する術者の手の動きを検出した結果を用いても良い。
【0089】
ここでは、ワイヤの操作状態を判断する際の判断材料として、ワイヤを操作したときに生じる音・振動を検出した結果を用いた例を示す。ワイヤを操作すると、アダプター内に設けられた弁(図示せず)とワイヤが擦れて、特定の周波数帯域に渡る音・振動が発生する。この音・振動の発生が頻繁な場合、術者がワイヤを操作していると推定することができる。
【0090】
図12及び図13を参照して、この実施形態の詳細について説明する。図12は、アダプターに取り付けられた固体マイクを用いた例を示す図であり、ワイヤの操作方向を矢印で表す。図13は、アダプターの部分を拡大して表した図である。ワイヤ51が弁と擦れる音・振動をアダプター52に取り付けられた固体マイク53により検出し、ワイヤ操作の頻度を検出する。X線量決定部25は、この頻度が予め定められた閾値(たとえば、10秒間にN回)を超えるか否かを判断し、閾値を超えないと判断した場合、現状のX線量を減らす余地があるかどうかを判断する。これは術者がワイヤを操作しておらず、精細なX線透視画像を必要としていないと推定されるからである。
【0091】
次に、ワイヤの操作状態を判断する際の判断材料として、ワイヤを操作する術者の手の動きを検出した結果を用いた例を示す。たとえば、アダプターに取り付けた赤外線反射型モーションセンサーで、アダプターの近くで術者の手の動きを検出し、1秒毎に術者の手の動き量の平均値を求め、平均値が一定量以上となった回数を検出する。X線量決定部25は、予め定められた閾値(たとえば、10秒間にN回)を判断基準として、検出された回数が閾値を超えるか否かを判断し、閾値を超えないと判断した場合、現状のX線量を減らす余地があるかどうかを判断する。これは術者がワイヤを操作しておらず、精細なX線透視画像を必要としていないと推定されるからである。ここで、赤外線反射型モーションセンサーの一例としては、赤外線集光レンズの焦点距離に設けられた検知範囲内に複数の焦電素子を配列し、検出対象(術者の手)の動きを焦電素子にて電気量の変化として検出するものがある。
【0092】
なお、ワイヤを操作する術者の手の動きを検出する術者センサー33として、赤外線反射型モーションセンサーの代わりに、加速度センサーを術者の手に装着しても良い。この場合、加速度センサーは、加速度が一定量以上となった回数を検出し、X線量決定部25は、予め定められた閾値(たとえば、10秒間にN回)を判断基準とする。ここで、加速度センサーの一例としては、加速度によって生じる位置の変化をダイヤフラムの位置変化としてピエゾ抵抗素子によって検出するものなどがある。
【0093】
〈第3の実施形態〉
第2の実施形態に係るX線撮影装置は、術者による器具(ワイヤ)の操作状態を検出し、その検出結果を判断材料として、現状のX線量を減らす余地があるかどうかを判断するものである。これに対し、他の判断材料として、術者の姿勢を検出した結果を用いても良い。なお、器具の操作状態の検出結果及び術者の姿勢の検出結果を総合して判断材料とし、現状のX線量を減らす余地があるかどうかを判断しても良い。それにより、術者が精細なX線透視画像を必要とするか否かの推定をさらに確実に行うことが可能となる。
【0094】
術者の姿勢の検出結果の一例として、X線透視画像を表示するためのディスプレイ(表示部31)を術者が見ているか否かを検出した結果を使用しても良い。一般的に、術者がX線透視画像を表示しているディスプレイに近づいたとき、又は、術者がX線透視画像を表示しているディスプレイの方を向いたとき、従者がX線透視画像をよく見ようとしていると推定でき、術者が精細なX線透視画像を必要としているときであると推定できる。術者がX線透視画像を表示しているディスプレイに近づいたか否かの判断材料の一例として、ディスプレイに取り付けたカメラ等のセンサを用いて測定できる。ディスプレイ側から見た術者の位置の検出結果がある。また、術者がX線透視画像を表示しているディスプレイの方を向いたか否かの判断材料の例として、ディスプレイに対する術者の顔の面積の検出結果、及び、ディスプレイに対する術者の顔の向きの検出結果がある。なお、これらの検出結果のいずれか二つ以上を総合して判断材料とし、X線透視画像を表示するためのディスプレイを術者が見ているか否かを判断しても良い。
【0095】
ここでは、術者がX線透視画像を表示しているディスプレイに近づいたか否かを判断材料として、ディスプレイに対する術者の位置の検出結果を用いた例を示す。ディスプレイに対する術者の位置を、ディスプレイに取り付けられた超音波センサーで検出する。ディスプレイと術者との距離を検出することができれば、超音波センサーを取り付ける場所はディスプレイに限定されず、ディスプレイと術者との相対位置を把握可能な場所であれば良い。なお、超音波センサーの一例としては、センサヘッドから超音波を発信し、対象物(術者の顔)で反射してくる超音波を再度センサヘッドで受信し、この音波の発信から受信までの時間を計測することで対象物の位置を検出するものがある。
【0096】
また、ディスプレイに対する術者の位置を検出するデバイスは、超音波センサーに限定されず、例えば、顔認識機能を持つカメラであっても良い。この顔認識機能を持つカメラから術者の顔への方向を検出し、検出結果を基に、ディスプレイの画面から術者の顔の位置までの距離を計算する。画像認識機能として、例えば、特開平8−275195号公報に記載された、色差画像を用いて顔の特徴である肌色領域を検出することにより顔候補領域を検出する画像処理機能を利用する。なお、この顔認識機能を持つカメラは、単に術者の皮膚の色を識別して、術者の顔の位置(術者の顔が存在する場所の位置)を画像上で検出するものでも良い。
【0097】
一般的に、術者の顔がディスプレイに近づいたとき、術者が精細なX線透視画像を必要としていると推定できる。また、術者の顔がディスプレイから離れたとき(ディスプレイの画面に直交する方向に沿って離れたとき、又は、ディスプレイの画面に直交する方向に対し斜め方向に離れたとき)、術者が精細なX線透視画像を必要としていないと推定できる。したがって、X線量決定部25は、ディスプレイの画面から術者の顔の位置までの距離を求めた結果を判断材料とし、予め定められた閾値(たとえば、1.5m)を判断基準とし、前記求めた結果が閾値を超えるか否かを判断し、閾値を超えると判断した場合、現状のX線量を減らす余地があるかどうかを判断する。これは術者の顔がディスプレイから離れており、精細なX線透視画像を必要としていないと推定されるからである。
【0098】
〈第4の実施形態〉
第3の実施形態では、ディスプレイに対する術者の位置を判断材料として、X線量を減らす余地があるかどうかを判断していた。しかし、術者がX線透視画像をよく見るためでなく、単に、術者がディスプレイに近づくような場合がある。この場合、被検体の曝射量を低減する目的を達せられない。そこで、判断材料として、術者がX線透視画像を表示しているディスプレイの方を向いたか否かの検出結果を用いることで、術者が単にディスプレイに近づいただけなのか、それともX線透視画像を必要としているのかを判別する例について以下に説明する。
【0099】
この発明の他の実施形態について説明する。術者がX線透視画像を表示しているディスプレイの方を向いたか否かの検出結果として、ディスプレイに対する術者の顔の面積の検出結果を用いた例を示す。ディスプレイに対する術者の顔の向きを、ディスプレイ又はその付近に取り付けられたカメラで検出する。カメラは前述した画像認識機構を備えている。術者は、皮膚の色とは異なる術衣やマスクを着けているので、カメラは、術者の皮膚の色を識別し、画像上で皮膚の色の位置を特定して、顔の面積を検出することができる。顔の面積が小さいほど、術者はディスプレイの方に正対していないと推定される。ディスプレイに取り付けられたカメラ、並びに、術衣及びマスクを着けた術者を図14に示す。術者の顔は、術衣及びマスクにより、その目や鼻の周辺のみが露出して、それ以外の部分が覆われている。以下、露出された目や鼻の周辺領域を「露出領域」という。カメラから見たときの露出領域の面積を検出する。
【0100】
カメラから見たときの露出領域を図15及び図16を参照して説明する。図15は、術者がディスプレイの方に正対していると推定される場合の露出領域を示す図であり、実線で囲んで表した露出領域の外形形状は顔の幅方向に長い略矩形状となる。図16は、術者がディスプレイの方に正対していないと推定される場合の露出領域を示す図であり、実線で囲んで表した露出領域の外形形状は、略矩形状となるが、図15の場合と比較して顔の幅方向が短くなる。カメラから見たときの露出領域の面積は、術者がディスプレイの方に正対しなくなるほど小さくなる。したがって、X線量決定部25は、露出領域の面積を検出した結果を判断材料とし、予め定められた閾値(例えば、50%)を判断基準とし、露出領域の面積の最大値(術者がディスプレイの方に正対していると推定される露出領域の面積の値)に対する現状の露出領域の面積の値の割合が予め定められた閾値未満であるか否かを判断し、閾値未満であると判断した場合、現状のX線量を減らす余地があるかどうかを判断する。これは術者がディスプレイの方を向いてなく、精細なX線透視画像を必要としていないと推定されるからである。
【0101】
なお、露出領域の面積に代えて、露出領域を検出し、この露出領域の輪郭を抽出し、この輪郭を判断材料としても良い。露出領域の輪郭において、術者がディスプレイに対して近づくと、露出領域の画像が大きくなり、ディスプレイに対して離れると、露出領域の画像が小さくなる。そこで、輪郭の中で、たとえば、帽子の下縁とマスクの上縁との間の長さ(略矩形状の輪郭の縦の長さ)を基準とし、その長さが、画像間で等しくなるように、比較対象の画像を拡大/縮小し、このサイズ調整後の輪郭を判断材料とする。この画像の調整は、露出領域の面積を判断材料とする上においても有効である。
【0102】
〈第5の実施形態〉
第4の実施形態では、術者がX線透視画像を表示しているディスプレイの方を向いたか否かの検出結果として、ディスプレイに対する術者の顔の面積(カメラから見たときの露出領域の面積)の検出結果を用いた例を示した。しかし、露出領域の面積は、顔の大きさや形によって術者毎にばらつきがあり、同じ術者であっても、術衣やマスクの着け方によってもばらつきがでる。特に、手術中にマスクの位置をずらしたときにばらつきがでる。そのばらつきは、術者が精細なX線透視画像を必要とするか否かを確実に判断する際の支障となることがある。そこで、術者が精細なX線透視画像を必要とするか否かをより確実に判断するために、ディスプレイに対する術者の顔の向きの検出結果を判断材料とする。
【0103】
この発明の他の実施形態について説明する。術者がX線透視画像を表示しているディスプレイの方を向いたか否かの検出結果を判断材料とする他の例として、ディスプレイに対する術者の顔の向きの検出結果を用いることができる。ディスプレイ又はその付近に取り付けられた特徴検出機構を備えたカメラで術者の目(黒目と白目)の領域を抽出する。特徴検出機構としては、例えば、特開平2004−91917号公報に記載された、画像から瞳位置及び虹彩領域の輪郭を抽出する特徴検出機構を用いる。たとえば、図17及び図18に特徴検出機構により抽出された黒目(瞳及び虹彩)と白目の各領域を示す。図17に示すように、術者がディスプレイの方を向いていると推定される目の領域では、白目領域61の幅方向(目頭から目尻への方向)の中心線上又は中心線近傍に黒目領域62の重心が位置する。また、図18に示すように、術者がディスプレイの方を向いていないと推定される目の領域では、白目領域61の幅方向の中心線から外れて黒目領域62の重心が位置にする。したがって、X線量決定部25は、白目領域の幅方向の中心線に対する黒目領域の重心の位置を検出した結果を判断材料とし、予め定められた閾値(例えば、5mm)を判断基準とし、黒目領域の重心の位置が白目領域の幅方向の中心線から外れた距離が予め定められた閾値を超えたか否かを判断し、閾値を超えたと判断した場合、現状のX線量を減らす余地があるかどうかを判断する。これは術者がディスプレイの方を向いてなく、精細なX線透視画像を必要としていないと推定されるからである。
【0104】
〈第6の実施形態〉
第5の実施形態では、術者がX線透視画像を表示しているディスプレイの方を向いたか否かの検出結果として、白目領域の幅方向の中心線に対する黒目領域の重心の位置を検出した結果を用いた例を示した。しかし、術者の目(白目領域及び黒目領域)の大きさや形には個人差がある。また、術者が使用する眼鏡からの反射光等により、術者の目の画像を取得するときの条件が良くない場合がある。これらの術者の個人差や画像の取得時の悪条件は、検出結果の誤差を大きくする一因となり、術者が精細なX線透視画像を必要とするか否かを判断する際の正確性を低下させる場合がある。術者がディスプレイの方を向いたか否かをより確実に検出するために、術者に装着された対象物を検出するように構成しても良い。
【0105】
ディスプレイに対する術者の顔の向きの検出結果を判断材料とする他の例として、術者に装着される対象物を検出したときの検出結果を挙げて説明する。
【0106】
術者に装着される対象物として、術者の帽子やマスクなどの正中線上に取り付けられる反射マーカを用いた例を示す。反射マーカは、例えば、可撓性を有するシートを矩形状に形成したものであり、シートの表面に例えばスパッタリング法や蒸着法等によってアルミニウム等の金属薄膜からなる反射層を形成されたものである。反射マーカに赤外線を照射する赤外線光源が、ディスプレイ又はその付近に取り付けられ、さらに、ディスプレイの画面の正面領域(画面が向けられている領域であって、画面から一定距離範囲内にある領域)を撮影野とするカメラが、同じく、ディスプレイ又はその付近に取り付けられている。
【0107】
たとえば、図19に示すように、術者の帽子の正中線上に反射マーカ71が取り付けられる。そして、図20に示すように、術者の帽子(図示せず)に取り付けられた反射マーカ71を、ディスプレイに取り付けられた赤外線光源72及びカメラ73により検出する。θは、赤外線の反射光が入射光に対してなす角度(入射角及び反射角の和)である。
【0108】
一般的に、反射マーカによる赤外線の反射光の検出量(カメラ73による)が大きいほど反射マーカはディスプレイに正対しているので、この検出量が大きいほど、術者がディスプレイに正対しているものと推定することができる。したがって、X線量決定部25は、反射マーカからの反射光の強さを検出し、検出結果から相対反射率(正対したときの反射光の強さに対する現状の反射光の強さの割合)を検出した結果を判断材料とし、予め定められた閾値(例えば、30%)を判断基準にして、相対反射率が閾値未満であるか否かを判断し、閾値未満であると判断した場合、現状のX線量を減らす余地があるかどうかを判断する。これは術者がディスプレイの方を向いておらず、精細なX線透視画像を必要としていないと推定されるからである。図21は、角度θと相対反射率との関係を描いたグラフである。図21では、角度θが0°(術者がディスプレイに正対しているときの角度)から角度θが90°(術者がディスプレイに対し真横を向いているときの角度)に向かって、相対反射率が減少していることを表している。
【0109】
(変形例)
以上に、判断材料として相対反射率を用いた例を示したが、これに限定されない。カメラにより撮影された反射マーカの画像に相当する画素の輝度の総和が大きいほど、術者がディスプレイに正対しているものと推定することができる。したがって、X線量決定部25は、反射マーカの輝度の総和を検出し、検出結果から輝度の総和の割合(正対したときの輝度の総和に対する現状の輝度の総和の割合)を検出した結果を判断材料とし、予め定められた閾値(例えば、30%)を判断基準にして、輝度の総和の割合がた閾値未満であるか否かを判断し、閾値未満であると判断した場合、現状のX線量を減らす余地があるかどうかを判断する。これは術者がディスプレイの方を向いてなく、精細なX線透視画像を必要としていないと推定されるからである。
【0110】
図22は、術者がディスプレイに正対していると推定する場合の反射マーカの画像を示し、その画素を高い輝度で表した反射マーカの画像81の形状は、反射マーカの外形形状をほぼ写した形をしている。図23は、術者がディスプレイに正対していないと推定する場合の反射マーカの画像を示し、反射マーカの画像81の形状は、反射マーカの外形形状に対し水平方向に狭まった形をしていて、画像81を形成する画素の輝度は、図22に示す画像81を形成する輝度より低い。したがって、術者がディスプレイに正対していると推定する場合の反射マーカの画像の方が、正対していないと推定する場合の反射マーカの画像より大きく、画像を形成する画素の輝度も高い。
【0111】
上記の第3から第6の実施形態に係る術者センサー33は、術者の姿勢として、ディスプレイを見ているか否かを検出するものであった。しかし、術者の姿勢を検出する術者センサー33は、これに限らない。
【0112】
〈第7の実施形態〉
X線透視下カテーテル術において、極めて精密な作業が要求されるワイヤ操作をするとき、通常、術者は姿勢を大きく変化させずに行うため、術者の体動の頻度が小さい。したがって、X線透視下カテーテル術において、術者の体動が頻繁である場合、ワイヤ操作をしていないから、術者が精細なX線透視画像を必要としていないと推定することができる。この点に着目して、術者の体動が頻繁か否かを検出するための術者センサー33を設ける。
【0113】
術者の体動が頻繁か否かを検出した結果を判断材料とする例として、術者の足の下に敷いた圧力センサーマットによって術者の重心を検出する検出結果を挙げて説明する。ここでの「体動」とは、たとえば、術者が上体を前や横に倒したり、起こしたり、術者が方向転換したり、立ち位置を移動するときの動きを含み、ワイヤ操作時のように上体を一定に保ちながら、方向転換もせず、手や腕だけを主に動かすような動きを含まない。圧力センサーマットは、術者の足からの圧力を、2次元の圧力分布パターンとして検出する。X線量決定部25は、一定時間(例えば0.1秒)間隔で2次元の圧力分布パターンを収集し、これまでの予め定められた時間(例えば過去3秒間)に収集された枚数(例えば30枚)の圧力分布パターン画像を作成し、圧力分布パターン画像を基に、術者の重心を求める。ここで、圧力センサーマットの一例としては、圧力がかかる範囲に半導体圧力センサの受圧面を配列し、そこにかかった圧力を電気量の変化として検出するものがある。
【0114】
次に、図24及び図25を参照してさらに詳細に説明する。図24は、両足全体についての圧力分布パターン画像を示す。図24に示す圧力分布パターン画像を形成する画素は圧力値を有している。左足の圧力分布パターンは、同じ圧力値の画素を繋いだ線である等圧線が3つあり、これに対し、右足の圧力分布パターンは、等圧線が2つあることから、術者は左足側に体重をかけていることがわかる。左足の圧力分布パターンにおける画素の圧力値を基に求めた左足に係る圧力値の重心と、右足の圧力分布パターンにおける画素の圧力値を基に求めた右足に係る圧力値の重心とから、両足全体についての圧力分布パターンにおける画素の圧力値の重心(術者の重心)を求める。図25は、求められた圧力値の重心(術者の重心)の位置を黒丸で示す。
【0115】
例えば、過去3秒間に収集された複数の重心位置について、統計処理を行い、ばらつき(標準偏差)を求める。標準偏差が大きいほど、大きな体動を行ったと推定することができる。したがって、X線量決定部25は、予め定められた閾値(例えば、標準偏差20)を判断基準として、術者の重心位置の標準偏差が閾値を超えたか否かを判断する。X線量決定部25は、術者の中心位置の標準偏差が閾値を超えたと判断した場合、現状のX線量を減らす余地があるかどうかを判断する。これは術者が大きな体動(たとえば、術者が上体を前や横に倒したりする動き)を行ったので、精細なX線透視画像を必要としていないと推定されるからである。
【0116】
〈第8の実施形態〉
上記した第3から第7の実施形態にかかる術者センサー33は、術者の作業状態として、術者の姿勢を検出するものであった。それは、X線透視下カテーテル術における術者の作業状態が、ディスプレイを見ながらワイヤを操作する術者の姿勢として現れるためである。X線透視下カテーテル術における術者の作業状態は、ワイヤを操作するときの呼吸の抑制など、緊張状態を示す生体情報としても現れる。したがって、術者の作業状態としての生体情報を検出する術者センサー33であっても良い。ここで、生体情報とは、生体において、刺激に基づいて起こる運動等に関する情報をいう。
【0117】
術者の作業状態として、術者の生体情報を検出する術者センサー33を用いた例を示す。X線透視下カテーテル術において、術者が呼吸を抑制した場合、術者がワイヤの精密な操作をしていて、精細なX線透視画像を必要としていると推定される。そこで、生体情報として術者の呼吸の抑制状態を用いる。
【0118】
術者センサー33の一例として、聴診器マイク(接触型マイクロフォン(skin−contact microphone))を術者に装着し、心拍音データを収集して記録する。また、術者センサー33の他の例として、ECGテレメータを術者に装着し、心電図を無線で収集して記録するように構成しても良い。
【0119】
呼吸と心拍数との関係について、縦軸を心拍周期、横軸を時間軸とした図26及び図27を参照してさらに説明する。図26は通常の呼吸時の心拍周期を示しており、どの時間帯においても心拍周期が変化し、心拍周期がほぼ一定になる時間帯がない。図27は、呼吸を抑制したときの心拍周期を示しており、心拍数がほぼ一定になる時間帯(アンダーラインを付した部分)と、心拍周期がほぼ一定にならない時間帯とがある。
【0120】
呼吸によって心拍数が変化することは良く知られている。どのような術者であっても、精密な操作をするときは呼吸を浅くしたり止めたり(呼吸を抑制)せざるを得ないと思われる。すなわち、呼吸を抑制した状態(図27でアンダーラインで示す状態)が長時間続く時間帯であれば、それは、精密な作業が行われていることの徴候と考えられる。呼吸を抑制すると心拍数がほぼ一定になる。
【0121】
そこで、術者センサー33は、これまでの予め定められた時間(例えば、過去10秒間)の術者の心拍数のばらつき(標準偏差)を検出する。X線量決定部25は、予め定められた閾値(例えば、標準偏差20)を判断基準として、心拍数の標準偏差が閾値を超えたか否かを判断する。X線量決定部25は、心拍数の標準偏差が閾値を超えていると判断した場合、現状のX線量を減らす余地があるかどうかを判断する。これは術者がワイヤの緻密な操作をしておらず、表示部31を注視する必要がないため、精細なX線透視画像を必要としていないと推定されるからである。
【0122】
(変形例)
第8の実施形態では、術者の生体情報として、術者が呼吸を抑制したか否かを検出した結果を用いた例を示した。しかし、X線透視下カテーテル術において、術者がワイヤを操作するとき、精密な精度操作が術者に要求されることから、術者が緊張状態となって、その影響が術者の生体情報に現れる。術者の緊張状態と精細なX線透視画像の必要性とが関係している。したがって、緊張状態の影響が現れる術者の生体情報を検出した結果を、術者センサー33により検出される術者の生体情報とすることができる。緊張状態の影響が現れる術者の生体情報の一例として、術者の脳波、瞳孔径、まばたきの頻度、手のひらあるいは足底部の皮膚の発汗の程度、又は、皮膚温度を検出して、術者が緊張状態にあるか否かを検出した結果がある。なお、手のひらあるいは足底部の皮膚の発汗の程度を検出するのは、手のひら及び足底部には緊張状態になると、発汗する汗腺が多いことに拠る。
【0123】
上記第8の実施形態の変形例について説明する。この変形例では、術者の生体情報として、術者の脳波を用いた例を示す。主な脳波の種類にはα波、β波及びθ波があり、脳波は緊張しているときに周波数が13Hz以上のβ波となり、リラックスしていくに応じて周波数が13Hzから下がったα波となる。したがって、術者の脳波を術者センサー33で検出し、検出した結果を、術者が緊張状態にあるか否かを判断する際の判断材料とすることができる。
【0124】
術者センサー33を術者に装着して、術者の脳波を検出し、X線量決定部25は、術者の脳波を検出した結果を判断材料とし、予め定められた閾値(例えば、10Hz)を判断基準として、術者の脳波を検出した結果が閾値を超えなるか否かを判断し、閾値を超えたいと判断した場合、現状のX線量を減らす余地があるかどうかを判断する。これは術者が緊張状態になく、ワイヤを操作していないと推定されるからである。
【0125】
次に、術者の手のひらあるいは足底部の皮膚の発汗の程度を用いた他の変形例を示す。前述したように、術者が緊張状態にあるとき、術者の手のひらあるいは足底部の皮膚から発生する汗の量が多くなる。そこで、この発汗を検出する術者センサー33を術者に装着し、手のひら等から発生する発汗の程度を湿度又は電位として所定時間間隔で検出する。発汗の程度を検出する術者センサー33としては、例えば、特開平7−143968号公報に開示されたものを用いる。
【0126】
したがって、X線量決定部25は、術者センサー33が検出した結果を判断材料とし、予め定められた閾値(例えば、電位又は湿度)を判断基準として、発汗の程度が閾値を超えたか否かを判断し、発汗の程度が閾値を超えないと判断した場合、現状のX線量を減らす余地があるかどうかを判断する。これは術者が緊張状態になく、ワイヤを操作していなく、精細なX線透視画像を必要としていない推定されるからである。
【0127】
以上の変形例では、術者の生体情報を検出する際に、術者に装着する術者センサー33を用いたが、術者に装着しない術者センサー33を用いた変形例を示す。この変形例では、術者の生体情報として、術者の瞳孔径を用いる。瞳孔径は、緊張状態にあるときの方がリラックスをしているときよりも大きいことが知られている。したがって、リラックスしているときの瞳孔径の最大値を閾値とし、術者の瞳孔径を術者センサー33で検出し、瞳孔径が閾値を超えないと判断した場合、現状のX線量を減らす余地があるかどうかを判断する。これは術者が緊張状態になく、ワイヤを操作していなく、精細なX線透視画像を必要としていない推定されるからである。
【0128】
術者の瞳孔径を検出する術者センサー33としては、例えば、特開平10−262953号公報に開示されたものを用いる。術者センサー33は、例えば、ディスプレイ又はディスプレイの近傍に取り付けられたカメラを含む。そのカメラにより術者の顔画像を所定時間間隔で取得し、取得した術者の顔画像を画像処理して瞳孔の形を抽出する。抽出した瞳孔の形から瞳孔径を検出することができる。ここで、予め定められた閾値を検出して記憶しておき、術者センサー33により術者の瞳孔径を検出した結果を閾値と比較し、比較した結果を判断材料とする。
【0129】
X線量決定部25は、この比較した結果を判断材料とし、予め定められた閾値(例えば、90%)を超えるか否かを判断基準として、比較した結果が閾値を超えないと判断した場合、現状のX線量を減らす余地があるかどうかを判断する。これは術者が緊張状態になく、ワイヤを操作しておらず、精細なX線透視画像を必要としていないと推定されるからである。
【0130】
次に、術者に装着しない術者センサー33を用いた他の変形例を示す。この変形例では、術者の生体情報として、術者のまばたきを用いる。一般的に、まばたきの頻度は、通常、1分間に15から20回(まばたきの周期としては3秒〜4秒)である。まばたきの周期は、何かを集中して見る時に低下する。術者は、精密な作業が要求されるワイヤ操作においてディスプレイを注視するはずであるから、まばたきの周期が長くなると考えられる。
【0131】
術者のまばたきを検出する術者センサー33としては、例えば、特開2003−338952号公報に開示されたものを用いる。術者センサー33は、例えば、ディスプレイ又はディスプレイの近傍に取り付けられたカメラを含む。術者センサー33により術者の目の領域を監視し続け、瞳の部分が小さくなったか否かにより、まばたきを検出する。術者センサー33は、まばたきの検出時から次のまばたきの検出時までの時間(まばたきの周期)を検出する。
【0132】
したがって、X線量決定部25は、まばたきの周期を判断材料とし、予め定められた閾値(例えば、まばたきの周期3秒)を判断基準として、まばたきの周期が閾値を超えないと判断した場合、現状のX線量を減らす余地があるかどうかを判断する。これは術者がディスプレイを注視しておらず、精細なX線透視画像を必要としていなと推定されるからである。
【0133】
〈第9の実施形態〉
この発明の他の実施形態について説明する。術者の作業状態として、術者の行動を検出する術者センサー33を用いた例を示す。ここで、術者の行動としては、医療現場における術者がスタッフと会話する頻度及び術者の動き量を含む。X線透視下カテーテル術において、術者がスタッフと会話する頻度が高い場合、又は、術者の動き量が多い場合、ワイヤの緻密な操作をしておらず、精細なX線透視画像を必要としていないと推定される。
【0134】
先ず、会話の頻度を検出する術者センサー33としては、例えば、特開2010−5326号公報に記載された接触型マイクロフォンを利用する。術者に装着したこのマイクロフォンを使って、音声としてではなく音の大きさ(デシベル(dB))を検出する。X線量決定部25は、例えば過去3秒間の音の大きさの平均値が閾値を超えたら会話が行われたとみなし、過去20秒間中で会話が行われた時間の割合を求め、求めた会話の割合を判断材料とし、予め定められた閾値(例えば、50%)を判断基準として、求めた会話の割合が閾値を超えたか否かを判断し、閾値を超えたと判断した場合、現状のX線量を減らす余地があるかどうかを判断する。これは会話の頻度が高く、ワイヤ操作をしておらず、精細なX線透視画像を必要としていないと推定されるためである。なお、単に、例えば過去3秒間の音の大きさの平均値を判断材料とし、予め定められた閾値(例えば、50dB)を判断基準とし、過去3秒間の音の大きさの平均値が閾値を超えるか否かを判断し、閾値を超えたと判断した場合、現状のX線量を減らす余地があるかどうかを判断するようにしても良い。また、会話の頻度を検出する術者センサー33としては、接触型マイクロフォンに限らず、術者及びその周囲の音を収集するマイクロフォンでも良い。指向性を有するマイクロフォンを術者に向けて複数配置し、複数のマイクロフォンがともに音を収集した場合に、その収集された音が術者及びその周囲の音であるとし、術者が会話をしていると推定される。
【0135】
さらに、会話の頻度を検出する術者センサー33としては、これらのマイクロフォンでなく、ECGテレメータであっても良い。すなわち、術者に装着されたECGテレメータを使って、心拍数の変動を検出し、心拍が非周期的となったら、不規則な呼吸が行われていて、会話が行われているとみなす。術者センサー33は、これまでの予め定められた時間(例えば、過去20秒間)の術者の心拍周期の経時変化の周波数スペクトルを検出する。X線量決定部25は、予め定められた閾値を判断基準として、通常の呼吸によって生じるスペクトル成分が閾値を超えるか否かを判断し、閾値を超えないと判断した場合、現状のX線量を減らす余地があるかどうかを判断する。これは会話の頻度が高く、術者がワイヤ操作をしておらず、精細なX線透視画像を必要としていないと推定されるからである。
【0136】
次に、術者の動きを検出する術者センサー33として、前記した特開2010−5326号公報に記載された医療現場表示システムを用いた例を示す。このシステムを簡単に説明すると、医用現場内に撮影装置が設置され、医療現場をビデオ撮影する。また、術者を含むスタッフにはRFタグが装着され、スタッフの識別情報を発信する。医用現場内には受信装置が設けられている。それにより、医療現場を映像として記録するとともに、スタッフがだれであるかをその存在位置と共に識別し、記録した映像上で医用現場内のスタッフを識別表示することができる。このシステムを使うことで、術者がワイヤ操作を行うために、ディスプレイの画面の正面領域(画面が向けられている領域であって、画面から一定距離範囲内にある領域)内に入ったか否か、及び、その正面領域内で術者がどのように動いているかを時系列に沿って容易に検出することができる。
【0137】
正面領域内における術者の動きの頻度を検出した結果を判断材料として、検出結果(術者の動き)が予め定められた閾値を超えるか否かを判断する。術者の動きの頻度が閾値を超えたと判断した場合、X線量決定部25は、現状のX線量を減らす余地があるかどうかを判断する。これは術者の動きの頻度が多いので、ワイヤ操作をしておらず、よって、X線透視画像を必要としていないと推定されるからである。
【0138】
なお、術者が正面領域に入らない場合、及び、術者が正面領域から出た場合、X線量決定部25は、現状のX線量を減らす余地があるかどうかを判断する。これは術者がディスプレイから大きく離れるため、X線透視画像を必要としていないと推定されるからである。
【0139】
次に、術者の動きを検出する術者センサー33として、例えば、寝台又はX線架台の位置エンコーダを用いても良い。術者が寝台やX線架台(Cアームの角度など)を操作している場合、現状のX線量を減らす余地があるかどうかを判断する。これは術者がワイヤの操作を行っておらず、精細なX線透視画像を必要としてないと推定されるからである。
【0140】
以上に、術者により操作されるワイヤの操作状態、術者の姿勢、術者の生体情報、又は、術者の行動のいずれか一つを検出し、術者の作業状態の検出結果として出力する術者センサー33、並びに、その検出結果を判断材料とし、予め定められた閾値を判断基準として、現状のX線量を減らす余地があるかどうかを判断するX線量決定部25について説明した。
【0141】
〈第10の実施形態〉
次に、複数の術者センサー33を装備したシステムについて説明する。この場合、複数の術者センサー33の出力を総合して、適切なX線量を算出する必要がある。たとえば、術者による直接操作(X線照射の停止やX線量増減の指示操作)は最優先であり、他の術者センサー33による検出結果がどうであろうと直ちに術者により指示された通りにX線量を調整しなくてはならない。一方、たとえば、術者の呼吸から推定される適切なX線量については、あまり高い精度は期待できない。
【0142】
このように、信用度の異なる多様なセンサーを組み合わせる技術は公知で、たとえば、あいまい論理(fuzzy logic)を用いることができる。すなわち「術者の画像への依存度」あるいは「画質の重要度」を表現する尺度をあいまい論理の論理値(membership function)として算出し、これに基づいて適正なX線量を決定する。
【0143】
次に、あいまい論理の構成例を説明する。複数の術者センサー33からの出力を総合して、X線量決定部25がX線量を減らす余地があるかどうかを判断する際の判断材料として画質重要度Mを用いる。画質重要度Mの計算方法の一例を以下の式で示す。
【0144】
【数7】

【0145】
ここで、AからFで示す項目は次の通りである。
A:術者体動に対するfuzzy真偽値であり、例えば、上記第7の実施形態で説明した圧力センサーマットによって検出された術者の重心位置の標準偏差に対するfuzzy真偽値である。
B:術者呼吸の抑制に対するfuzzy真偽値であり、上記第8の実施形態で示す聴診器マイクで検出された術者の心拍数の標準偏差に対するfuzzy真偽値である。
C:術者ディスプレイ注視に対するfuzzy真偽値であり、例えば、上記第3から第6の実施形態で示すカメラで検出される術者がディスプレイを見ているか否かの検出結果に対するfuzzy真偽値である。
D:ワイヤ形状変化に対するfuzzy真偽値であり、例えば、上記第1の実施形態で説明したワイヤの形状の変化量(パラメータθ、u、vを基に求める平均平方の残差)に対するfuzzy真偽値である。
E:アダプターセンサ−に対するfuzzy真偽値であり、例えば、前記第2の実施形態で説明した術者のワイヤ操作の頻度に対するfuzzy真偽値である。
F:寝台・架台移動に対するfuzzy真偽値であり、例えば、上記第9の実施形態で説明した寝台・X線架台の位置エンコーダを用いて検出される寝台等の移動に対するfuzzy真偽値である。
【0146】
図28は、項目毎に求められたfuzzy真偽値を表している。fuzzy真偽値は、0〜1までの値であって、術者センサー33により出力された各項目の検出結果に対応して求められる。
【0147】
以上に複数の術者センサー33を装備したシステムにおいて、あいまい論理を用いて、複数の術者センサー33からの出力を統合させた例を示したが、各術者センサー33からの出力結果に対し、予め定められた重み付けをして集計し、その集計結果を判断材料としても良い。
【0148】
また、複数の術者センサー33の検出結果に対する重みの組合せを術者毎に記憶する重み付け用データベースを設けても良い。システム制御部21は、複数の術者センサー33の検出結果に、術者に対応する重みの組合せを反映させて、その反映結果を基にX線量を制御する。
【0149】
以下に、重み付け用データベースを作成する方法の一例を説明する。術者に模擬的にカテーテル術を行わせつつ、複数の術者センサー33で作業状態を検出し、所定の重みを各項目A〜Fに乗じて、画質重要度Mを算出する。このとき、術者等はX線量の減少を許容するタイミングを入力する。この許容タイミングに対して画質重要度Mが閾値以下となるタイミングが一致するように重みの値を調整する。両方のタイミングが一致(タイミングのずれが許容範囲内たとえば1秒以内)になるまで、重みの値の調整を繰り返すことにより、当該術者に合致した重みの組合せが得られる。
【0150】
〈その他の事項〉
X線量決定部25が現状のX線量を減らすと判断した場合、どのようにX線量を減らすかについて説明する。X線量を減らして良いかどうかがあまりはっきりしない場合に、急激にX線量を減らすと、術者の作業を妨げるおそれがある。このため、X線量を減らす際には、直接指示された場合を除いて、漸減させるのが適切である。また、X線量決定部25が現状のX線量を減らすと判断した場合に、即座に、X線量を漸減させるのではなく、X線量決定部25のその判断がしばらく続いたとき、X線量の漸減を開始させるのが好ましい。
【0151】
照射領域の広さ、及び、X線管から患者までの距離が一定であるとき、被曝X線量はX線管に入力する電源で決まる。電圧を低くするとX線量は減少するが、電力をX線に変換する効率も低下する。このため同じX線量を出すのに必要な電力が大きくなり、X線管が過熱しやすくなる。また、急激に電圧を変えられるように構成することはコスト上難しい。電圧が一定の時、X線量は、電流とパルス幅とフレームレートとの積に比例する。ただし、パルス幅を非常に狭くすることは技術的・コスト的に難しい。従って、経済的に合理的な構成のひとつは、X線量を電流とフレームレートによって調節することである。
【0152】
X線管に入力する電流(管電流)を減らすと、X線量が低減し、X線の量子ノイズ及びX線検出器のもつバックグランドノイズが相対的に目立つようになり、画質が低下する。このため、ある閾値以下の管電流でX線を照射することは臨床上意味がない。フレームレートを下げる場合、1つのフレームを撮影するのに使われるX線量は変化しないので、画質の劣化は起こらない。ただし、時間的に連続した動きが観察しにくくなる。このため、フレームレートを極端に低くすることは望ましくない。たとえば、寝台やX線架台を操作している際には、適切な照射範囲が得られるように位置を調節するためにX線像を見ながら行うので、最低でも3fps程度のフレームレートが必要である。
【0153】
次に、X線撮影装置の動作例について図29を参照して説明する。なお、以下の説明においては、X線量を増減させる要因として、術者によるペダル操作、寝台・X線架台の移動、及び、ワイヤ形状の変化の例を示すが、上記第3から第9の実施形態で説明したように、術者の姿勢、術者の生体情報、術者の行動を検出した結果が各閾値を超えたか否かを判断し、その判断結果をX線量を増減させる要因としても良い。また、上述したように、X線量を電流とフレームレートによって調節している。
【0154】
図29は、ペダルによるON動作、寝台・架台動作、ワイヤ形状変化率、管電流、フレームレート、X線量のタイミングチャートの例である。ここでは、判断材料として、ワイヤ形状の変化量の検出結果、及び、寝台・X線架台の移動量の検出結果を用いた例を示す。以下、横軸上に表したa〜lは、X線量を増減させる要因が生じた時点(その要因が発生するまでの経過時間を検出する起算点を含む)を示す。
【0155】
以下、図29を参照して、横軸上に表したa時点からl時点まで順番に説明する。
a:術者がペダルを踏んだので、X線照射を開始する。
b:ワイヤ形状の変化が小さい時間がしばらく続いたので、自動的にX線量(管電流)の漸減を開始する。
c:術者がペダルを踏んだので、X線量を大きくする。
d:ワイヤ形状の変化が大きいので、X線量が大きい状態が維持される。
e:ワイヤ形状の変化が小さい時間がしばらく続いたので、自動的にX線量(管電流)の漸減を開始する。
f:管電流が所定の最低値に到達したので、フレームレートを下げることによってさらにX線量の漸減を開始する。
g:管電流・フレームレートとも所定の最低値に到達したので、X線照射を中止する。
h:術者がペダルを踏んだので、X線照射を開始する。
i:寝台・X線架台の動きを検出したので、管電流とフレームレートを下げてX線量を低減する。
j:寝台・X線架台の動きが止まったので、管電流を増加させて位置の確認をし易くする。
k:術者がペダルを踏んだので、X線量を大きくする。
l:ワイヤ形状の変化が小さい時間がしばらく続いたので、自動的にX線量(管電流)の漸減を開始する。
【0156】
以上のX線撮影装置の動作例では、作業状態検出手段として、ペダル操作を検出するもの、ワイヤ(挿入器具)の形状の変化量を検出するもの、及び、寝台・X線架台の動きを検出するものを用い、それぞれの検出結果に基づいてX線量を制御した。しかしながら、本実施形態に係るX線撮影装置としては、種類の異なる複数の作業状態検出手段の検出結果に基づいてX線量を制御すれば良く、上記X線撮影装置の動作例に示す作業状態検出手段は、一例に過ぎない。
【符号の説明】
【0157】
1 被検体
2 天板
4 X線管
6 X線検出器
20 演算制御装置
21 システム制御部
22 記憶部
23 画像処理部
24 表示制御部
25 X線量決定部
31 表示部
32 操作部
33 術者センサー
41 ワイヤ特定部
43 位置合わせ処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体にX線発生手段からX線を照射し、前記被検体を透過したX線をX線検出手段で検出して、X線画像を撮影するX線撮影装置において、
前記X線画像の撮影における術者の作業状態を検出する作業状態検出手段と、
前記作業状態検出手段の検出結果に基づいて、前記X線発生手段から照射するX線量を制御するX線量制御手段と、
を備えることを特徴とするX線撮影装置。
【請求項2】
前記作業状態検出手段は、前記術者による器具の操作状態、前記術者の姿勢、前記術者の生体情報、及び、前記術者の行動の少なくとも一つを検出するものであることを特徴とする請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項3】
前記作業状態検出手段は、前記被検体内に挿入された索状の挿入器具の形状の変化量に基づいて、前記作業状態を検出することを特徴とする請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項4】
前記作業状態検出手段は、前記X線画像における前記挿入器具の像と、それより過去に撮影された前記X線画像における前記挿入器具の像との差に基づいて前記変化量を検出することを特徴とする請求項3に記載のX線撮影装置。
【請求項5】
前記作業状態検出手段は、前記被検体内に挿入された索状の挿入器具に対する前記術者の操作の頻度を、前記作業状態として検出することを特徴とする請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項6】
前記作業状態検出手段は、前記挿入器具を通すアダプターに設けられたマイクで検出された音に基づいて、前記術者の操作の頻度を検出することを特徴とする請求項5に記載のX線撮影装置。
【請求項7】
前記作業状態検出手段は、前記術者の手に装着された加速度センサーによる検出結果に基づいて、前記術者の操作の頻度を検出することを特徴とする請求項5に記載のX線撮影装置。
【請求項8】
前記作業状態検出手段は、前記被検体を載置する天板、前記X線発生手段、及び、X線検出手段の少なくとも一つの移動量に基づいて、前記作業状態を検出することを特徴とする請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項9】
前記作業状態検出手段は、前記X線画像を表示するためのディスプレイを前記術者が見ているか否かを、前記作業状態として検出することを特徴とする請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項10】
前記作業状態検出手段は、カメラにより取得された画像を処理して前記術者の顔の向きを算出することにより、前記ディスプレイを前記術者が見ているか否かを検出することを特徴とする請求項9に記載のX線撮影装置。
【請求項11】
前記作業状態検出手段は、前記術者の体動の頻度または前記術者の会話の頻度の少なくとも一つを、前記作業状態として検出することを特徴とする請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項12】
前記作業状態検出手段は、前記術者の呼吸が抑制されたか否かを、前記作業状態として検出することを特徴とする請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項13】
前記作業状態検出手段は、前記術者の心拍数のばらつきに基づいて、前記術者の呼吸が抑制されたか否かを検出することを特徴とする請求項12に記載のX線撮影装置。
【請求項14】
前記作業状態検出手段は、前記術者の脳波、瞳孔の大きさ、まばたきの頻度、皮膚の発汗量、皮膚温度の少なくとも一つに基づいて、前記作業状態を検出することを特徴とする請求項2に記載のX線撮影装置。
【請求項15】
前記X線量制御手段は、前記作業状態検出手段の検出結果に基づいて、現状のX線量を下げるか否かを判断して、前記X線発生手段から照射されるX線量を制御することを特徴とする請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項16】
前記X線量制御手段は、種類の異なる複数の前記作業状態検出手段の検出結果に基づいて前記X線量を制御することを特徴とする請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項17】
被検体にX線発生手段からX線を照射し、前記被検体を透過したX線をX線検出手段で検出して、X線画像を撮影するX線撮影装置において、
前記X線画像の撮影時における、前記術者による器具の操作状態、前記術者の姿勢、前記術者の生体情報、及び、前記術者の行動の少なくとも一つを検出する作業状態検出手段と、
前記作業状態検出手段の検出結果に基づいて、前記X線発生手段から照射するX線量を制御するX線量制御手段と、
を備えることを特徴とするX線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図3】
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【図5】
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【図17】
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【図18】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−254847(P2011−254847A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129047(P2010−129047)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】