X線検査装置、X線検査装置の制御方法、X線検査装置を制御するためのプログラム、および、当該プログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記録媒体
【課題】検査精度および検査速度の低下が防止できるX線検査装置を提供する。
【解決手段】X線検査装置がアーチファクトを認識するために実行する処理は、撮像条件1の再構成画像から断層画像S1を取得するステップ(S510)と、撮像条件2の再構成画像から断層画像S2を取得するステップ(S520)と、断層画像の差分(S1−S2)を計算するステップ(S530)と、差分の絶対値が閾値以上であればアーチファクトと判断するステップ(S540)とを含む。
【解決手段】X線検査装置がアーチファクトを認識するために実行する処理は、撮像条件1の再構成画像から断層画像S1を取得するステップ(S510)と、撮像条件2の再構成画像から断層画像S2を取得するステップ(S520)と、断層画像の差分(S1−S2)を計算するステップ(S530)と、差分の絶対値が閾値以上であればアーチファクトと判断するステップ(S540)とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検査装置の制御に関し、より特定的には、X線検査の精度を向上させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
X線により撮像した画像(透視画像)では、X線が吸収された度合い(吸収係数)を画像として得ることができる。複数枚の透視画像を用いた再構成処理により対象の吸収係数の分布を2次元もしくは3次元データ(以下、単に「再構成画像」という。)として得ることができ、2次元空間の吸収係数分布を求めた画像を特に「断層画像」と呼ぶ。再構成画像特有のノイズとして、アーチファクトが発生する。アーチファクトとは、実際に物体が存在していない位置に物体が存在するかのように見える現象で、検査において良否判定や断層位置の算出の妨げとなる。インラインでの自動検査に必要な検査速度を達成するためには、撮像枚数を減らして撮像時間を短くする必要がある。しかし、撮像枚数を減らすと、アーチファクトが画像に混入し、検査精度が低下する場合がある。
【0003】
アーチファクトを低減するために、たとえば、特開2010−99303号公報(特許文献1)は、金属の正確な形状を抽出して金属アーチファクトを低減する技術を開示している([要約]の[課題]参照)。具体的には、「X線CT装置は、被検体の周囲を回動しながら被検体にX線を照射するX線照射装置1と、被検体の周囲を回動しながら被検体を透過したX線を検出するX線撮像装置2と、X線撮像装置2から得られた画像を処理して被検体の3次元ボクセルデータを得る画像処理装置4とを有する。画像処理装置4は、X線照射装置1およびX線撮像装置2の回動角度毎にX線撮像装置2から2次元の投影画像を取得し、投影画像を2値化し、2値化後の投影画像を回動角度毎に計算上で3次元空間に単純逆投影して3次元の逆投影ボクセルデータを生成し、逆投影ボクセルデータを2値化する。」というものである([要約]の[解決手段]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−99303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術によると、逆投影処理と投影処理とを行ない、投影処理後の画像に画像処理を加えて、再度逆投影を行ない、逆投影によって得られた画像と、元の再構成画像とが合成される。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術によると、逆投影処理が行なわれることにより、通常の再構成処理に要する時間よりも長い時間が必要になるため、検査速度が低下する。そのため、たとえばインライン検査のようにスピードが要求される検査には、そのような技術を用いたX線検査を適用できない場合がある。
【0007】
したがって、アーチファクトを速やかに認識することが必要とされている。本発明は、上述のような問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、検査速度を低下させることなく検査精度が向上するX線検査装置を提供することである。他の局面に従う目的は、検査速度を低下させることなく検査精度が向上するようにX線検査装置の制御方法を提供することである。他の局面に従う目的は、検査速度を低下させることなく検査精度が向上するようにX線検査装置を制御するためのプログラムを提供することである。さらに他の局面に従う目的は、検査速度を低下させることなく検査精度が向上するようにX線検査装置を制御するためのプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施の形態に従うと、対象物の検査対象領域を透過したX線を複数の検出面で受光することにより、検査対象領域の像の再構成処理を実行するためのX線検査装置が提供される。このX線検査装置は、X線検査装置における対象物の位置を移動するための対象物移動機構と、対象物にX線を照射するためのX線源と、検査対象領域を透過したX線を撮像するためのX線検出器と、X線検出器を移動するための検出器移動機構と、X線検査装置の動作を制御するための制御手段とを備える。制御手段は、X線を用いる複数の撮像条件の各々に従って対象物を撮像することにより得られる各投影画像に基づいて、各検出面で受光されるX線画像を再構成することにより得られる対象物の再構成画像から、アーチファクトを認識するためのアーチファクト認識手段と、アーチファクト認識手段によって認識されたアーチファクトを特定するための情報を取得するための特定情報取得手段とを含む。
【0009】
好ましくは、制御手段は、特定するための情報に基づいて、対象物と同じ種類の対象物をX線撮像することにより得られる投影画像から、認識されたアーチファクトが除去された検査用画像を取得するための検査画像取得手段を含む。
【0010】
好ましくは、アーチファクト認識手段は、複数の撮像条件のうちの第1の撮像条件に従って対象物を複数回撮像することにより得られる複数の画像から、対象物の第1の画像を再構成するための第1の再構成手段と、複数の撮像条件のうちの第2の撮像条件に従って対象物を複数回撮像することにより得られる複数の画像から、対象物の第2の画像を再構成するための第2の再構成手段と、第1の画像と第2の画像とに基づいてアーチファクトを抽出するための抽出手段とを含む。
【0011】
好ましくは、X線検査装置は、認識されたアーチファクトを含む再構成画像を表示するための表示手段をさらに備える。
【0012】
好ましくは、X線検査装置は、認識されたアーチファクトを含む再構成画像が得られた撮像条件と異なる撮像条件の入力を受け付けるための入力手段と、入力された異なる撮像条件を格納するための記憶手段とをさらに備える。制御手段は、異なる撮像条件を用いて、対象物を撮像するように、X線源とX線検出器と対象物移動機構と検出器移動機構とを制御するための検査手段を含む。
【0013】
好ましくは、表示手段は、認識されたアーチファクトと、対象物を構成する部品に対応する正常画像とを識別可能に表示する。
【0014】
好ましくは、特定するための情報は、認識されたアーチファクトの再構成画像における位置情報と、対象物の良否を判定するための輝度の閾値と、アーチファクトが認識されない撮像条件とのいずれかを含む。
【0015】
他の実施の形態に従うと、対象物の検査対象領域を透過したX線を複数の検出面で受光することにより、検査対象領域の像の再構成処理を実行するためのX線検査装置の制御方法が提供される。X線検査装置は、X線検査装置における対象物の位置を移動するための対象物移動機構と、対象物にX線を照射するためのX線源と、検査対象領域を透過したX線を撮像するためのX線検出器と、X線検出器を移動するための検出器移動機構とを備えている。制御方法は、X線検査装置が、X線を用いる複数の撮像条件の各々に従って対象物を撮像することにより得られる各投影画像に基づいて、各検出面で受光されるX線画像を再構成することにより得られる対象物の再構成画像から、アーチファクトを認識するステップと、X線検査装置が、認識されたアーチファクトを特定するための情報を取得するステップとを含む。
【0016】
好ましくは、制御方法は、X線検査装置が、特定するための情報に基づいて、対象物と同じ種類の対象物をX線撮像することにより得られる投影画像から、認識されたアーチファクトが除去された検査用画像を取得するステップをさらに含む。
【0017】
好ましくは、アーチファクトを認識するステップは、複数の撮像条件のうちの第1の撮像条件に従って対象物を複数回撮像することにより得られる複数の画像から、対象物の第1の画像を再構成するステップと、複数の撮像条件のうちの第2の撮像条件に従って対象物を複数回撮像することにより得られる複数の画像から、対象物の第2の画像を再構成するステップと、第1の画像と第2の画像とに基づいてアーチファクトを抽出するステップとを含む。
【0018】
好ましくは、X線検査装置の制御方法は、認識されたアーチファクトを含む再構成画像を表示するステップをさらに含む。
【0019】
好ましくは、制御方法は、X線検査装置が、認識されたアーチファクトを含む再構成画像が得られた撮像条件と異なる撮像条件の入力を受け付けるステップと、X線検査装置が、入力された異なる撮像条件を記憶するステップと、X線検査装置が、異なる撮像条件を用いて、対象物を撮像するように、X線源とX線検出器と対象物移動機構と検出器移動機構とを制御するステップとをさらに含む。
【0020】
好ましくは、表示するステップは、認識されたアーチファクトと、対象物を構成する部品に対応する正常画像とを識別可能に表示するステップとを含む。
【0021】
好ましくは、特定するための情報は、認識されたアーチファクトの再構成画像における位置情報と、対象物の良否を判定するための輝度の閾値と、アーチファクトが認識されない撮像条件とのいずれかを含む。
【0022】
他の実施の形態に従うと、対象物の検査対象領域を透過したX線を複数の検出面で受光することにより、検査対象領域の像の再構成処理を実行するためのX線検査装置を制御するためのプログラムが提供される。X線検査装置は、X線検査装置における対象物の位置を移動するための対象物移動機構と、対象物にX線を照射するためのX線源と、検査対象領域を透過したX線を撮像するためのX線検出器と、X線検出器を移動するための検出器移動機構とを備えている。プログラムは、X線検査装置に、X線を用いる複数の撮像条件の各々に従って対象物を撮像することにより得られる各投影画像に基づいて、各検出面で受光されるX線画像を再構成することにより得られる対象物の再構成画像から、アーチファクトを認識するステップと、認識されたアーチファクトを特定するための情報を取得するステップとを実行させる。
【0023】
好ましくは、プログラムは、X線検査装置に、特定するための情報に基づいて、対象物と同じ種類の対象物をX線撮像することにより得られる投影画像から、認識されたアーチファクトが除去された検査用画像を取得するステップをさらに実行させる。
【0024】
好ましくは、アーチファクトを認識するステップは、複数の撮像条件のうちの第1の撮像条件に従って対象物を複数回撮像することにより得られる複数の画像から、対象物の第1の画像を再構成するステップと、複数の撮像条件のうちの第2の撮像条件に従って対象物を複数回撮像することにより得られる複数の画像から、対象物の第2の画像を再構成するステップと、第1の画像と第2の画像とに基づいてアーチファクトを抽出するステップとを含む。
【0025】
好ましくは、プログラムは、X線検査装置に、認識されたアーチファクトを含む再構成画像を表示するステップをさらに実行させる。
【0026】
好ましくは、プログラムは、X線検査装置に、認識されたアーチファクトを含む再構成画像が得られた撮像条件と異なる撮像条件の入力を受け付けるステップと、入力された異なる撮像条件を記憶するステップと、異なる撮像条件を用いて、対象物を撮像するように、X線源とX線検出器と対象物移動機構と検出器移動機構とを制御するステップとをさらに実行させる。
【0027】
好ましくは、表示するステップは、認識されたアーチファクトと、対象物を構成する部品に対応する正常画像とを識別可能に表示するステップとを含む。
【0028】
好ましくは、特定するための情報は、認識されたアーチファクトの再構成画像における位置情報と、対象物の良否を判定するための輝度の閾値と、アーチファクトが認識されない撮像条件とのいずれかを含む。
【0029】
さらに他の実施の形態に従うと、上記のいずれかに記載のプログラムを格納した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【発明の効果】
【0030】
ある局面に従うX線検査において、検査の前の教示の段階で、検査対象の画像からアーチファクトが予め認識される。検査の段階では、より高速な撮像条件で撮像して、アーチファクトを認識した上で対象物の検査が行なわれる。これにより、検査速度を低下させることなく検査精度が向上し得る。
【0031】
この発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】X線検査装置100のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【図2】ワーク20をX線検査する場合においてアーチファクトが発生する原理を表わす図である。
【図3】本実施の形態に係るX線検査装置100が2条件でワーク20を撮像する場合にアーチファクトを認識するための処理を表わすフローチャートである。
【図4】アーチファクトを認識するためにN個の撮像条件に従ってワーク20を予め撮像する場合に実行される処理を表わすフローチャートである。
【図5】アーチファクトを認識する処理の詳細を表わすフローチャートである。
【図6】異なる枚数のプロジェクション(投影)画像から再構成することによって得られた画像を比較することによりアーチファクトを認識する場合を表わす図である。
【図7】アーチファクトを認識するために、断層画像の差分を導出した状態を表わす図である。
【図8】アーチファクトを認識するために、エッジ強度を比較する態様を表わす図である。
【図9】X線撮像により得られた画像の中に、検査対象物の構成に対応する正規のパターンの画像と、アーチファクトとが混在している状態を表わす図である。
【図10】X線撮像によって得られた画像がアーチファクトを含む場合および含まない場合について設定される2値化閾値の設定を表わす図である。
【図11】アーチファクトの有無のそれぞれに応じて設定される閾値を表わす図である。
【図12】アーチファクトの有無に応じて付加される撮像条件情報を表わす図である。
【図13】撮像枚数を変更する場合の処理を表わすフローチャートである。
【図14】照射角を変更して撮像する場合にX線検査装置100が実行する処理を表わすフローチャートである。
【図15】照射角が45度である場合に発生するアーチファクトと検査対象との位置関係を表わす図である。
【図16】照射角が30度である場合に発生するアーチファクトと検査対象との位置関係を表わす図である。
【図17】X線検査装置100が撮像位置(方位角)を変更する場合に実行する処理の一部を表わすフローチャートである。
【図18】X線検査装置100における方位角の考え方を表わす図である。
【図19】方位角0度が起点である場合に得られた画像を表わす図である。
【図20】方位角45度が起点である場合に得られた画像を表わす図である。
【図21】ウインドウの表示機能を有するX線検査装置100が実行する一連の処理の一部を表わすフローチャートである。
【図22】X線検査装置100によって表示されるウインドウの確認および修正の態様を表わす図である。
【図23】X線検査装置100がウインドウを表示する場合におけるその表示の態様を表わす図である。
【図24】X線検査装置100がウインドウを表示した初期状態を表わす図である。
【図25】ウインドウの貼付けが修正された状態を表わす図である。
【図26】コンピュータシステム2600のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0034】
[ハードウェア構成]
図1を参照して、本発明の実施の形態に係るX線検査装置100の構成について説明する。図1は、X線検査装置100のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【0035】
X線検査装置100は、制御装置110と、X線源10と、ステージ18と、変位計19と、X線検出器23と、直交タイプの2軸のロボットアーム22.1と、検出器支持部22.2と、検出器制御機構60と、画像取得機構61と、変位計制御機構62と、ステージ制御機構63と、X線源制御機構64とを備える。
【0036】
制御装置110は、演算部70と、主記憶部80と、補助記憶部81と、入力部40と、出力部50とを含む。ステージ18には、検査対象であるワーク20が配置される。
【0037】
X線源10は、走査型のX線源として、X線焦点を通る軸を中心軸としてX線を出力する。X線源10は、X線源制御機構64によって制御される。X線源制御機構64は、電子ビームの出力を制御する。具体的には、X線源制御機構64は、演算部70から、X線焦点位置、X線エネルギー(管電圧、管電流)の指定を受ける。X線エネルギーは、ワーク20の構成によって異なる。
【0038】
ステージ18には、ワーク20が搬入される。ステージ18は、たとえば、X−Y−Zステージとして構成され、任意の位置に移動することができる。ステージ18の移動は、たとえば、円軌道や線形軌道に従って移動する。他の局面において、ステージ18は、ベルトコンベアのように一方向に移動することにより検査のための位置にワーク20を配置するように構成され得る。
【0039】
変位計19は、ワーク20の上面までの距離を測定する。測定された距離データは、変位計制御機構62に入力される。
【0040】
ロボットアーム22.1と検出器支持部22.2とは、X線検出器駆動部として、検出器制御機構60からの信号に基づき、X線検出器23を指定された位置に移動する。たとえば、ロボットアーム22.1と検出器支持部22.2とは、XYθの自由度でX線検出器23を駆動可能できるXYθ動作機構として構成される。
【0041】
なお、X線検出器23を駆動するための構成は、上記の構成に限られず、X−Y方向の移動またはX−Y平面内でのθ回転を可能とする構成であり、X線検出器23の移動に対して同様の機能を持つものであればよい。
【0042】
さらに、検出器制御機構60は、その時点でのX線検出器23の位置情報を演算部70に送る。
【0043】
X線検出器23は、X線源10によって出力されてワーク20を透過したX線を検出して画像化する2次元X線検出器である。たとえば、X線検出器23は、CCD(Charge Coupled Device)カメラ、I.I(Image Intensifier)管、スペース効率のよいFPD(Flat Panel Detector)である。また、X線検出器23は、インライン検査で使うことができるように高感度であることが望ましく、CdTeを使った直接変換方式のFPDであってもよい。
【0044】
入力部40は、X線検査装置100のユーザからの指示入力等を受け付ける。入力部40は、たとえば、周知のコンピュータシステムに用いられるキーボード、マウス、タッチパネル、無線通信インターフェイス等によって実現される。
【0045】
出力部50は、入力されている検査条件、検査結果等を外部に出力する。出力部50は、たとえば、演算部70で構成されたX線画像等を表示するモニタ装置として実現される。他の局面において、出力部50は、画像信号を出力するインターフェイスとして実現される。
【0046】
検出器制御機構60は、演算部70からの命令にしたがって、X線検出器23の位置および動作を制御する。具体的には、検出器制御機構60は、X線検出器23を指定された位置に移動させるための信号を、ロボットアーム22.1と、検出器支持部22.2とにそれぞれ送信する。
【0047】
画像取得機構61は、X線検出器23からの画像データの取得を制御する。具体的には、画像取得機構61は、演算部70による命令にしたがって、X線の検出を行ない、プロジェクション画像を取得する。
【0048】
変位計制御機構62は、変位計19からの出力に基づいて、X線透視撮影の際に、ワーク20の基準平面の高さを調整する。
【0049】
ステージ制御機構63は、演算部70からの命令に基づいて、X線撮影のために指定された位置までステージ18を移動する。
【0050】
X線源制御機構64は、X線源10によるX線の照射方向、照射角、および強度を制御する。
【0051】
演算部70は、主記憶部80に格納されたプログラム(図示しない)および撮影条件その他の制御データに基づいて各部の動作を制御し、また、所定の演算処理を実行する。
【0052】
主記憶部80は、データやプログラムを不揮発的に保持できる記録媒体であって、たとえば、ハードディスク装置、フラッシュメモリ等によって実現される。
【0053】
補助記憶部81は、データやプログラムを一時的に保持できる記録媒体であって、たとえば、RAM(Random Access Memory)等によって実現される。
【0054】
ある局面において、演算部70は、X線を用いる複数の撮像条件の各々に従って対象物を撮像することにより得られる各投影画像に基づいて、各検出面で受光されるX線画像を再構成することにより得られる対象物の再構成画像から、アーチファクトを認識する。演算部は、認識されたアーチファクトを特定するための情報を取得する。
【0055】
他の局面において、画像取得機構61は、特定するための情報に基づいて、対象物と同じ種類の対象物をX線撮像することにより得られる投影画像から、認識されたアーチファクトが除去された検査用画像を取得する。
【0056】
他の局面において、演算部は、第1の再構成部として、複数の撮像条件のうちの第1の撮像条件に従って対象物を複数回撮像することにより得られる複数の画像から、対象物の第1の画像を再構成し、第2の再構成部として、複数の撮像条件のうちの第2の撮像条件に従って対象物を複数回撮像することにより得られる複数の画像から、対象物の第2の画像を再構成し、第1の画像と第2の画像とに基づいてアーチファクトを抽出する。
【0057】
他の局面において、出力部50は、モニタ装置として実現され、認識されたアーチファクトを含む再構成画像を表示する。
【0058】
ある局面において、当該モニタ装置は、認識されたアーチファクトと、対象物を構成する部品に対応する正常画像とを識別可能に表示する。
【0059】
ここで、特定するための情報は、たとえば、認識されたアーチファクトの再構成画像における位置情報と、対象物の良否を判定するための輝度の閾値と、アーチファクトが認識されない撮像条件とのいずれか、または、2つ以上の組み合わせであってもよい。
【0060】
[アーチファクトの発生原理]
図2を参照して、X線検査におけるアーチファクトの発生原理について説明する。図2は、ワーク20をX線検査する場合においてアーチファクトが発生する原理を表わす図である。
【0061】
本実施の形態に係るX線検査装置100は、複数のX線撮像画像を用いてワーク20の再構成画像を得るため、X線検出器23と、ワーク20と、X線源10との相対的な位置が逐次変わる。図2においては、アーチファクトの発生原理の説明のために、ワーク20の位置を中心に、X線検出器23およびX線源10の相対的な位置が変わるものとして説明する。
【0062】
ある局面において、X線源10と、ワーク20と、X線検出器23との位置関係は、たとえば、X線焦点位置220と、ワーク20と、X線検出器23の位置250として規定される。このとき、X線源10から照射されるX線は、X線焦点位置220から出力され、再構成範囲240にあるワーク20を透過し、位置250にあるX線検出器23によって検出される。このとき、ワーク20に含まれる検査対象230,231,232に対応する画像に加えて、たとえば、アーチファクト210,211,212,213,214,215がX線検出器23によって検出され得る。
【0063】
また、他の局面において、X線源10がX線焦点位置221の場所にあるとき、X線源10から照射されるX線は、ワーク20を透過して、位置251にあるX線検出器23によって受光される。この場合も、基板161,260の存在などにより、検査対象230,231,232に加えて、アーチファクト210,211,212,213,214,215がX線検出器23によって認識され得る。
【0064】
[技術思想]
本実施の形態における技術思想は、以下のとおりである。まず、教示(いわゆるティーチング)の段階で、アーチファクトを認識するために複数の撮像条件でX線撮像が行なわれる。ここで、撮像条件は、撮像枚数、X線の露光時間、撮像角度(投射角、方位角)、管電流、および管電圧を含む。アーチファクトの認識は、たとえば、画像の差分、エッジ強度の比較、画像に含まれる領域や模様の形状の比較などにより実現される。
【0065】
その後、アーチファクトが認識された撮像条件を変更することにより、実際の検査段階で用いられる検査条件が変更される。撮像条件の変更とは、たとえば、撮像枚数の変更、X線の露光時間の変更、撮像角度(投射角、方位角)の変更、管電流値の変更、管電圧値の変更などを含む。検査条件の変更とは、検査範囲または断層の選択、検査対象物の良否判定の閾値の変更、良否判定時の画像処理の内容の変更、X線透視画像から3次元画像を得るための再構成アルゴリズムの変更、再構成における分解能の変更、撮像条件の変更などを含む。
【0066】
より具体的には、半導体基板のようなワーク20では、基板の裏面の状況、ヒートシンクの有無により、アーチファクトが発生する。そこで、インライン検査が実行される前に、X線検査装置100は、予めアーチファクトを認識し、認識されたアーチファクトの位置情報、輝度、アーチファクトが認識されたときの再構成画像が得られた撮像条件を特定する。その後、ワーク20の量産品をインライン検査する場合に、予め特定された位置情報、輝度、撮像条件を考慮して、プロジェクション画像から再構成画像を取得し、X線検査を実行する。
【0067】
このようにすると、アーチファクト(ノイズ画像)が含まれないプロジェクション画像が取得しやすくなるので、検査精度が向上するとともに、改めてアーチファクトを除去する処理が不要になるため、検査速度の低下が防止される。
【0068】
また、検査に必要十分で、検査時間の短い(撮像枚数の少ない)撮像条件を設定することは、一般には困難であるが、予め認識されたアーチファクトを有するプロジェクション画像が得られた撮像条件を参考にして撮像条件を設定することにより、アーチファクトが含まれないプロジェクション画像を得るために必要十分な撮像条件を決定することが可能になる。これにより、検査時間の長期化が防止され、X線検査装置100のユーザの手間が低減される。
【0069】
[アーチファクトの認識]
次に、図3〜図5を参照して、アーチファクトの認識処理について説明する。図3は、本実施の形態に係るX線検査装置100が2条件でワーク20を撮像する場合にアーチファクトを認識するための処理を表わすフローチャートである。
【0070】
ステップS310にて、X線検査装置100は、ステージ制御機構63を駆動して、ワーク20が含まれる基板を所定の位置に搬入する。
【0071】
ステップS320にて、X線検査装置100は、主記憶部80に格納されている予め設定された第1の撮像条件に従って画像取得機構61および検出器制御機構60を制御しながらX線による撮像を実行する。
【0072】
ステップS330にて、X線検査装置100は、主記憶部80に格納されている予め設定された第2の撮像条件に従って、ワーク20のX線による撮像を実行する。
【0073】
ステップS340にて、演算部70は、画像取得機構61から送られて補助記憶部81に一時的に保持されているデータに基づいて、第1の撮像条件に従って撮像することにより得られた画像から、ワーク20の画像を再構成する。
【0074】
ステップS350にて、演算部70は、同様に、画像取得機構61を介してX線検出器23から送られた第2の撮像条件に従って得られたデータを用いて、ワーク20の画像を再構成する。
【0075】
ステップS500にて、演算部70は、後述するアーチファクト認識処理を実行する。この処理が実行されると、ワーク20をX線検査する場合において生じ得るアーチファクトが予め認識される。
【0076】
図4は、アーチファクトを認識するためにN個の撮像条件に従ってワーク20を予め撮像する場合に実行される処理を表わすフローチャートである。なお、前述の処理と同一の処理には同一のステップ番号を付してある。したがってそれらの説明は、繰り返さない。
【0077】
ステップS410にて、X線検査装置100は、第N番目の撮像条件に従って、ワーク20のX線による撮像を実行する。
【0078】
ステップS420にて、演算部70は、第N番目の撮像条件に従って、撮像することにより得られたデータを用いて、ワーク20の画像を再構成する。その後、演算部70は、アーチファクト認識処理(ステップS500)を実行する。
【0079】
[アーチファクト認識]
図5は、アーチファクトを認識する処理の詳細を表わすフローチャートである。アーチファクトは、たとえば、複数の画像を比較することにより、正常な画像(たとえば、部品や形成されたパターンの画像)およびアーチファクトを判別した結果として認識される。画像を比較するための方法としては、一般的な画像処理手法が用いられる。画像処理手法としては、たとえば、差分(輝度差)、輝度の分散、エッジ抽出、エッジ強度、パターンマッチングなどが用いられるが、これらに限られない。
【0080】
ステップS510にて、演算部70は、主記憶部80に格納されている、第1の撮像条件に従って再構成することにより得られた画像から、断層画像(S1)を取得する。
【0081】
ステップS520にて、演算部70は、主記憶部80に格納されている、第2の撮像条件に従って撮像することにより再構成された画像から、断層画像(S2)を取得する。
【0082】
ステップS530にて、演算部70は、断層画像の差分(S1−S2)を計算する。
ステップS540にて、演算部70は、計算によって得られた差分の絶対値と予め規定された閾値とを比較し、当該絶対値が当該閾値以上であれば、その画像に含まれる部分をアーチファクトとして、認識する。その後、処理は、メイン処理に戻される。
【0083】
図6から図8を参照して、X線検査装置100においてアーチファクトを認識する方法について説明する。図6は、異なる枚数のプロジェクション(投影)画像から再構成することによって得られた画像を比較することによりアーチファクトを認識する場合を表わす図である。具体的には、ワーク20において断層画像を取得し、その取得した各断層画像を比較することにより、アーチファクトが認識される。なお、アーチファクトを認識するための撮像条件は、再構成に用いられる枚数に限られず、たとえば、X線の照射角、X線が照射される方位角(位置)、生基板(部品搭載前の基板)であってもよい。
【0084】
たとえば、画像(A)は、第1の撮像条件(撮像枚数16枚)に従ってワーク20を撮影することにより得られた断層画像(S1)を表わす図である。画像(B)は、第2の撮像条件(たとえば、撮像枚数32枚)に従って撮像することにより再構成された断層画像(S2)を表わす図である。この場合、断層画像(S1)の輝度値と断層画像(S2)の輝度値との差分を計算することにより、アーチファクトが認識される。
【0085】
なお、撮像枚数については、第1の撮像条件として多い枚数(上記の例では32枚)を撮影しておき、第2の撮像条件として少ない枚数(上記の例では16枚)については、32枚のプロジェクション画像から16枚のプロジェクション画像を選択してもよい。たとえば、複数のプロジェクション画像から1枚おきに選択すればよい。このようにすると、第2の撮像条件として16枚のX線撮像画像を取得するための撮像が不要になる。
【0086】
図7は、アーチファクトを認識するために、断層画像の差分を導出した状態を表わす図である。具体的には、図7に示される画像は、断層画像(S1)と断層画像(S2)との差分を計算することにより得られる。たとえば、領域710は、その輝度値が予め設定された閾値よりも大きいため、X線検査装置100の演算部70は、領域710にアーチファクトがあると認識する。
【0087】
なお、断層画像の差分を計算する場合において、図7に示される例では、(白い画素に相当する)輝度の高い位置がアーチファクトの位置(画素)に相当する。ここで、画素値の差分ΔIは、たとえば次式のように規定される。
【0088】
ΔI=|I1−I2|
I1:第1の撮像条件の画素値
I2:第2の撮像条件の画素値
図8は、アーチファクトを認識するために、エッジ強度を比較する態様を表わす図である。
【0089】
たとえばある局面において、32枚のCT(Computed Tomography)断層画像でもアーチファクトが残る場合、目視でもその判定は困難となる。しかしながら、たとえば、16枚のCT断層画像と32枚のCT断層画像の各エッジ強度を比較することにより、アーチファクトであるか否かを判別することができる。すなわち、アーチファクトは、ワーク20において実際には存在しないものであり、したがって、画像を再構成するために用いられる枚数(プロジェクション画像の枚数)が増加するとその部分は「薄くなり」、エッジ強度が小さくなる傾向にある。
【0090】
画像800は、ワーク20をX線撮像することにより得られた画像である。画像800は、アーチファクトであるか否かの判別が求められる領域840を含むとする。たとえば、断層位置(Z)の値が5ピクセルの場合、画像811に示されるように、領域840に対応する画像は、アーチファクトを含んでいるように見える。一方、その領域において断層位置(Z)が40ピクセルのときの画像821は、エッジ強度が予め設定された閾値よりも大きいため、ワーク20に含まれる正規のパターン面として判別できる。すなわち、断層位置とエッジ強度との関係を表わすグラフにおいて、画像811に対応する領域810の16枚のCT断層画像と32枚のCT断層画像の各エッジ強度の差は、予め設定された閾値よりも大きく算出される。一方、領域820に示されるように、断層位置(Z=40ピクセル)付近におけるCT断層画像のエッジ強度の差は、領域810におけるエッジ強度の差よりも小さくなる。したがって、画像821に示されるように、演算部70は、領域840が正常なパターン面であると判別する。
【0091】
[位置情報の付加]
図9を参照して、本実施の形態に係るX線検査装置100におけるアーチファクトの認識に関する位置情報の付加について説明する。図9は、X線撮像により得られた画像の中に、検査対象物の構成に対応する正規のパターンの画像と、アーチファクトとが混在している状態を表わす図である。
【0092】
図9(A)に示されるように、ある局面において、画像961は、正規のパターンに加えて、アーチファクト900を含み得る。このとき、ウインドウ910,911には、アーチファクト900が含まれるため、これらのウインドウ910,911は、画像検査の対象として採用されない。一方、ウインドウ912は、アーチファクトを含まないため、ウインドウ912は、画像検査の対象として採用される。
【0093】
図9(B)を参照して、他の局面において、画像962は、部品920のパターンと、アーチファクト901とを含み得る。ここで、ウインドウ921とウインドウ922とは、アーチファクトを含まないため、これらのウインドウ921,922は、画像検査の対象として採用される。一方、ウインドウ930は、アーチファクト901を含むため、ウインドウ930は、画像検査の対象として採用されない。
【0094】
図9(C)を参照して、画像963は、部品のパターン画像に加えて、アーチファクト902を含み得る。このとき、画像963に表示されるウインドウ940,941は、アーチファクトを含まないため、検査対象として採用される。一方、ウインドウ950,951は、アーチファクト902を含むため、検査対象として採用されない。
【0095】
すなわち、ある局面において、検査対象のウインドウ(位置)を採用するか否かは、たとえば、以下のようにして実現される。
(1)パターンの位置を設定
(2)部品の輪郭を設定
(3)輝度の低い電極部のはんだを設定
このような位置情報を付加することにより、たとえば、輝度の低い検査対象(配線パターン、部品の輪郭、薄い電極など)をアーチファクトとして誤って認識することが防止され得る。
【0096】
また、アーチファクトを含まないウインドウのみが検査対象として採用されるため、画像検査における処理の高速化が実現される。
【0097】
[輝度情報の付加]
図10を参照して、本実施の形態に係るX線検査装置100における輝度情報の付加について説明する。図10は、X線撮像によって得られた画像がアーチファクトを含む場合および含まない場合について設定される2値化閾値の設定を表わす図である。
【0098】
ある局面において、ワーク20の領域の判定に用いる2値化閾値、判定値の輝度を修正することができる。たとえば、(1)はんだボールの2値化閾値のリファレンス、位置を修正することができる。また(2)リードのバックフィルタの良否判定のための閾値の輝度を修正することができる。
【0099】
図10(A)を参照して、画像1001は、パターンに対応する画像1010を含む。また、画像1001には、予め規定されたルールに従って割当てられたウインドウ1011,1012,1013,1014が表示される。各画像は、輝度(Ia、Ib、Ic、Id)を有する。このとき、2値化の閾値は、たとえば、式1030のように規定される。
【0100】
図10(B)を参照して、画像1002がアーチファクト1015を含む場合もあり得る。アーチファクト1015は、たとえば、輝度Ifを有する。この場合、2値化閾値は、式1040のように規定される。
【0101】
図11を参照して、本実施の形態に係るX線検査装置100における輝度情報の付加についてさらに説明する。図11は、アーチファクトの有無のそれぞれに応じて設定される閾値を表わす図である。状態(A)は、アーチファクトが存在しない場合におけるワーク20の一部の断面を表わす。状態(B)は、アーチファクトが存在する場合におけるワーク20の一部における断面を表わす。
【0102】
状態(A)に示されるように、ある局面において、基板に付着されたはんだ1110と、リード1111との各画像が認識される。このとき、輝度の分布は、ラインプロファイルとしては、たとえば、グラフ1130として示される。この場合、たとえば、はんだが存在しない場所(x=0)における輝度値(Ia)の2倍が良否判定のための閾値Ithとして用いられる。
【0103】
状態(B)に示されるように、他の局面において、X線撮像画像にアーチファクト1120が含まれる場合がある。この場合、アーチファクト1120の存在によって撮像画像の輝度値が上昇し得る。輝度の分布は、たとえば、グラフ1140として表わされる。この場合、たとえば良否判定のための閾値(Ith)は、2(Ia′−If)として表わされ得る。
【0104】
[撮影条件情報の付加]
図12を参照して、本実施の形態に係るX線検査装置100においてアーチファクトの認識のために撮像条件情報を付加する態様について説明する。図12は、アーチファクトの有無に応じて付加される撮像条件情報を表わす図である。
【0105】
具体的には、ある局面において、アーチファクトの影響を受けない撮像条件が算出される。たとえば、(1)検査対象に対し、アーチファクトが含まれない(少ない)撮像のためのX線の照射角、方位角が選択される。(2)アーチファクトが影響しない枚数が撮像枚数として選択される。
【0106】
これにより、撮像枚数を増やすことなく、アーチファクトを減らせる撮像条件が設定できる。また、撮像枚数を増やす場合でも、検査に必要な最小限の枚数が撮像枚数として設定できる。なお、付加される撮像条件情報は「撮像枚数」のみに限られず、撮像枚数、照射角、方位角の2つ以上の組み合せが用いられてもよい。
【0107】
より具体的には、状態(A)は、検査が必要な部品においてアーチファクトが認識された状態を表わす。具体的には、ウインドウ1220,1210は、アーチファクト1230を含む。この場合、撮像条件については、撮像枚数は予め規定された枚数よりも少ない枚数が規定され、照射角(φ1)が規定され、方位角(θ1)が規定される。
【0108】
状態(B)は、アーチファクトが別の断層に移動しているため、アーチファクトが表示されていない態様を表わす図である。このとき、撮像条件として、撮像枚数は、状態(A)と同様に予め規定された枚数よりも少ない枚数が設定され、照射角(φ2)が規定され、方位角(θ1)が規定されている。
【0109】
状態(C)は、アーチファクトの位置がずれてウインドウに含まれない状態を表わす。このとき、撮像枚数と照射角は、状態(A)についての撮像枚数および照射角と同じ値が用いられてる。しかしながら、照射角については、方位角(θ1)に代えて方位角(θ2)が用いられている。
【0110】
状態(D)は、アーチファクト1250の輝度が状態(A)に示されるアーチファクト1230の輝度よりも減少した状態を表わす。このとき、照射角および方位角は、状態(A)において用いられる照射角および方位角と同じである。しかしながら、撮像枚数は、状態(A)の場合に用いられる撮像枚数よりも多い枚数が、撮像条件として規定されている。
【0111】
[制御構造]
図13を参照して、X線検査装置100におけるアーチファクトを認識するための他の処理について説明する。図13は、撮像枚数を変更する場合の処理を表わすフローチャートである。なお、前述の処理と同一の処理には同一のステップ番号を付してある。したがってそれらの説明は、繰り返さない。
【0112】
ステップS1310にて、制御装置110は、検出器制御機構60と画像取得機構61とステージ制御機構63とX線源制御機構64とを制御することにより、32枚のプロジェクション画像(投影画像)を得るために32回の撮像処理を実行する。
【0113】
ステップS1320にて、演算部70は、撮像によって得られた32枚の画像を用いて、ワーク20の画像を再構成する。
【0114】
ステップS1330にて、演算部70は、ステップS1310において得られた32枚の画像から16枚の画像を選択し、その選択した画像を用いてワーク20の画像を再構成する。ここで、16枚の画像の選択は、たとえば、32枚の画像のうちの偶数番目あるいは奇数番目の画像を選択することにより行なわれる。その後、演算部70は、アーチファクト認識処理(ステップS500)を実行する。
【0115】
図14は、照射角を変更して撮像する場合にX線検査装置100が実行する処理を表わすフローチャートである。
【0116】
ステップS1410にて、制御装置110は、X線源制御機構64とステージ制御機構63とを制御して、X線源10から照射される角度が45度になるように位置を調整した上で、ワーク20のX線撮像を実行する。
【0117】
ステップS1420にて、制御装置110は、検出器制御機構60と画像取得機構61とステージ制御機構63とX線源制御機構64とを制御して、X線源10からワーク20への照射角を30度に変更し、変更後の条件に従ってワーク20の撮像を実行する。
【0118】
ステップS1430にて、演算部70は、照射角45度の条件の下で得られた画像を用いてワーク20の画像を再構成する。
【0119】
ステップS1440にて、演算部70は、照射角30度の条件の下で得られた画像を用いてワーク20の画像を再構成する。その後、演算部70は、アーチファクト認識処理(ステップS500)を実行する。
【0120】
[アーチファクトの発生]
ここで、図15および図16を参照して、照射角に応じたアーチファクトの発生について説明する。図15は、照射角が45度である場合に発生するアーチファクトと検査対象との位置関係を表わす図である。図16は、照射角が30度である場合に発生するアーチファクトと検査対象との位置関係を表わす図である。
【0121】
図15を参照して、ある局面において、ワーク20に含まれる検査対象230,231,232は、基板261と基板260との間に配置されている。このとき、照射角45度で照射されたX線は、検査対象230,231,232を透過するとともに、アーチファクト210,211,212,213,214,215がX線検出器23において検出される。
【0122】
図16を参照して、照射角が30度であるとき、検査対象230,231,232を透過したX線は、X線検出器23によって受光されるとともに、アーチファクト1610,1611,1612,1613,1614,1615が、X線検出器23によって検出され得る。
【0123】
すなわち、図15および図16から明らかなように、X線の照射角を変えることによりアーチファクトが生じ得る位置が変わるため、照射角を変えることによって得られたプロジェクション画像から再構成された画像を比較することにより、アーチファクトの認識が可能になる。
【0124】
[撮像位置の変更]
図17から図20を参照して、撮像位置(方位角)を変更する態様について説明する。図17は、X線検査装置100が撮像位置(方位角)を変更する場合に実行する処理の一部を表わすフローチャートである。なお、前述の処理と同一の処理には同一のステップ番号を付してある。したがって、それらの説明は繰り返さない。
【0125】
ステップS1710にて、制御装置110は、予め設定された撮像位置(方位角A)において、16枚のX線撮像を実行する。
【0126】
ステップS1720にて、制御装置110は、異なる方位角として予め設定された撮像方位角(B)の条件において16枚のX線撮像を実行する。
【0127】
ステップS1730にて、演算部70は、ステップS1710において得られた16枚の投影画像を用いてワーク20の画像を再構成する。
【0128】
ステップS1740にて、演算部70は、ステップS1720において得られた16枚の投影画像を用いて撮像位置(B)にあるワーク20の画像を再構成する。その後、演算部70は、アーチファクト認識処理(ステップS500)を実行する。
【0129】
図18は、X線検査装置100における方位角の考え方を表わす図である。図18(A)は、X線検査装置100において方位角0度を起点として予め設定された枚数だけ撮像する場合において、X線検出器23の位置と撮像視野1810の位置とを表わす図である。具体的には、X線検出器23は、X線検出器軌道1830上を移動する。このとき、撮像視野1810は、X線源10を同心円とする撮像視野軌道1820の上を同じ方向に回転移動する。図18(A)に示される例は、撮像のための4箇所の位置が特定されるが、X線検出器23および撮像視野1810の場所は図18(A)から特定される数に限られない。
【0130】
図18(B)は、X線検査装置100において方位角45度が起点とされる場合のX線検出器23と撮像視野1810との位置を表わす図である。
【0131】
同様に、X線検出器23と撮像視野1810とはそれぞれの円周軌道上を移動し、各位置においてX線撮像が行なわれる。図18(A)と図18(B)とから明らかなように、異なる角度が起点として用いられるため、方位角に応じてアーチファクトが認識される場合には、その差分を求めることにより、当該アーチファクトの有無を認識することができる。
【0132】
図19および図20を参照して、アーチファクトの発生位置について説明する。図19は、方位角0度が起点である場合に得られた画像を表わす図である。図20は、方位角45度が起点である場合に得られた画像を表わす図である。
【0133】
図19(A)を参照して、ワーク20を上から見ると、ワーク20に含まれるボールはんだのような検査対象1900,1903,1902,1901とアーチファクト1910,1911,1912,1913が認識される。
【0134】
図19(B)を参照して、検査対象1920,1921を横から見ると、アーチファクト1930,1931がそれぞれ演算部70によって検出され得る。
【0135】
図20を参照して、方位角45度が起点として用いられた場合、ワーク20を上から見ると、ワーク20に含まれる検査対象1901,1902,1903,1900は、さらに、アーチファクト2010を伴う画像として、演算部70によって認識される。このとき、図20(B)に示されるように、ワーク20を横から見ると、検査対象1920,1921が認識され、アーチファクトは認識されない。一方、図20(C)に示されるように、横から見る位置を変えると、アーチファクト2020,2021が認識され得る。
【0136】
図21を参照して、ユーザへのウインドウの表示について説明する。図21は、ウインドウの表示機能を有するX線検査装置100が実行する一連の処理の一部を表わすフローチャートである。なお、前述の処理と同一の処理には同一のステップ番号を付してある。したがって、それらの説明は繰り返さない。
【0137】
ステップS2110にて、演算部70は、出力部50に対してウインドウを表示する。
ステップS2120にて、演算部70は、入力部40を介して与えられる入力に基づいて、表示されたウインドウに対する確認の結果あるいは修正の指示の入力を受け付ける。その後、演算部70は、修正後の情報を主記憶部80に格納する。
【0138】
そこで、図22を参照して、ウインドウの確認および修正について説明する。図22は、X線検査装置100によって表示されるウインドウの確認および修正の態様を表わす図である。
【0139】
図22(A)に示されるように、ある局面において、ワーク20は、基板2210と2240との間に、はんだボールその他の検査対象2220,2221,2222と、パターン2230とを含む。
【0140】
図22(B)に示されるように、たとえばある局面において投影画像として16枚の画像が撮像される。その結果、画像2250は、正規の画像2251,2252,2253,2254,2255,2256,2257,2258,2259,2261に加えて、アーチファクト2260を含む。
【0141】
また、撮像枚数として32枚の投影画像が用いられると、図22(C)に示されるように、正規の画像2271,2272,2273,2274,2275,2276,2277,2278,2279,2281に加えて、輝度が小さくなったアーチファクト2270が表示される。
【0142】
[ウィンドウの表示]
図23を参照して、ウインドウの表示について説明する。図23は、X線検査装置100がウインドウを表示する場合におけるその表示の態様を表わす図である。
【0143】
図23(A)を参照して、画像2310は、正規のパターンを表わす画像2311,2312,2313,2314,2315,2316,2317,2318,2319,2321に加えて、アーチファクト2320,2322を含む。各画像には、ウインドウ2311,2312,2313,2314,2315,2316,2317,2318,2319,2340,2341,2342が表示される。このとき、ウインドウ2340,2342は、他のウインドウと異なる態様でたとえば点線で表示される。このようにすると、アーチファクトを含むウインドウと正常な画像を含むウインドウとの判別が容易になる。
【0144】
図23(B)を参照して、画像2350は、ウインドウ2361,2362,2363,2364,2365,2366,2367,2368,2369,2370,2371,2372を含む。ここで、ウインドウ2361,2362,2363,2364,2365,2366,2367,2368,2369は、正規なパターンを表わす画像を含むウインドウとして表示され、他のウインドウとは、区別される。たとえば、ウインドウ2372は、アーチファクト2360を含むため、点線で表示される。なお、表示の態様は、実践と点線に限られない。たとえば、同じ種類の線であっても、線の太さを変更することにより、あるいは、線の色を変えることにより、正規な画像を含むウィンドウと、アーチファクトを含むウィンドウとを区別してもよい。
【0145】
[ウィンドウの確認と修正]
次に、図24および図25を参照して、ウインドウの確認と修正とについて説明する。図24は、X線検査装置100がウインドウを表示した初期状態を表わす図である。図25は、ウインドウの貼付けが修正された状態を表わす図である。
【0146】
図24を参照して、ある局面において、X線検査装置100は、ウインドウを誤って表示する場合があり得る。すなわち、ウインドウを表示すべきでない場合にウインドウを表示し、逆に、表示する必要がある画像に対してウインドウを表示しない場合があり得る。図24に示される例では、正常なボールに対応する画像のウインドウが表示されない場合がある。たとえば、画像2460,2461は、正規なパターン(たとえばボール)を表わす画像であるが、これらの画像には、ウインドウは表示されていない。したがって、ウインドウを表示する必要がある。一方、ウインドウ2111,2121は、それぞれアーチファクト2410,2420を含むウインドウとして、正規な画像を含むウインドウ2451の線種とは異なる線種によって表わされる。ウインドウ2431は、正規なパターン2430を含むウインドウとして表示される。
【0147】
図25を参照して、ウインドウ2511,2521は、正規な部品の画像2460,2461に対応するウインドウとしてX線検査装置100のユーザが手動で追加することができる。X線検査装置100は、その追加後のウインドウを主記憶部80に情報として保持することにより、その後の検査においてそのウインドウの設定状態をX線画像検査に用いることができる。
【0148】
[実施の形態の効果]
以上のようにして、本実施の形態に係るX線検査装置100は、同一種類の複数の検査対象物をインライン検査する前に、サンプル品を用いて予めアーチファクトを認識し、アーチファクトを特定するための情報を予め保持する。当該情報は、たとえば、アーチファクトの位置を特定するための情報(たとえば、座標値、形状データ)、アーチファクトの輝度、アーチファクトが認識された撮像条件(たとえば、撮像が行なわれた方位角など)などを含む。その後、X線検査装置100は、当該サンプル品と同じ種類の検査対象物をインライン検査する際に、アーチファクトを特定するための情報を考慮して、X線撮像によって得られた画像を用いて、アーチファクトが除去された検査用画像を取得する。このようにすると、アーチファクトが含まれない撮像条件を用いてインライン検査を行なっても検査精度の低下が防止される。また、必要最小限の撮影枚数で検査用画像を取得できるので、検査速度の低下も防止され得る。
【0149】
[コンピュータシステムの構成]
なお、上述の実施の形態に係るX線検査装置100の制御機構は、周知の構成を有するコンピュータシステムを用いて実現することができる。
【0150】
そこで、図26を参照して、X線検査装置1000の制御機構を実現するコンピュータシステム2600について説明する。図26は、コンピュータシステム2600のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【0151】
コンピュータシステム2600は、主たる構成要素として、プログラムを実行するCPU1と、コンピュータシステム2600の使用者による指示の入力を受けるマウス2およびキーボード3と、CPU1によるプログラムの実行により生成されたデータ、又はマウス2若しくはキーボード3を介して入力されたデータを揮発的に格納するRAM4と、データを不揮発的に格納するハードディスク5と、光ディスク駆動装置6と、モニタ8と、通信IF(Interface)9とを備える。各構成要素は、相互にバスによって接続されている。光ディスク駆動装置6には、CD−ROM9その他の光ディスクが装着される。
【0152】
コンピュータシステム2600における処理は、各ハードウェアおよびCPU1により実行されるソフトウェアによって実現される。このようなソフトウェアは、ハードディスク5に予め格納されている場合がある。また、ソフトウェアは、CD−ROM9その他のコンピュータ読み取り可能な情報記録媒体に格納されて、プログラム製品として流通している場合もある。あるいは、当該ソフトウェアは、インターネットその他のネットワークに接続されている情報提供事業者によってダウンロード可能なプログラム製品として提供される場合もある。このようなソフトウェアは、光ディスク駆動装置6その他のデータ読取装置によって情報記録媒体から読み取られて、あるいは、通信IF7を介してダウンロードされた後、ハードディスク5に一旦格納される。そのソフトウェアは、CPU1によってハードディスク5から読み出され、RAM4に実行可能なプログラムの形式で格納される。CPU1は、そのプログラムを実行する。
【0153】
図26に示されるコンピュータシステム2600を構成する各構成要素は、一般的なものである。したがって、本発明の本質的な部分は、RAM4、ハードディスク5、CD−ROM9その他の情報記録媒体に格納されたソフトウェア、あるいはネットワークを介してダウンロード可能なソフトウェアであるともいえる。なお、コンピュータシステム1200の各ハードウェアの動作は周知であるので、詳細な説明は繰り返さない。
【0154】
なお、情報記録媒体としては、CD−ROM、FD(Flexible Disk)、ハードディスクに限られず、磁気テープ、カセットテープ、光ディスク(MO(Magnetic Optical Disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc))、IC(Integrated Circuit)カード(メモリカードを含む)、光カード、マスクROM、EPROM(Electronically Programmable Read-Only Memory)、EEPROM(Electronically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュROMなどの半導体メモリ等の固定的にプログラムを担持する媒体でもよい。
【0155】
ここでいうプログラムとは、CPU1により直接実行可能なプログラムだけでなく、ソースプログラム形式のプログラム、圧縮処理されたプログラム、暗号化されたプログラム等を含み得る。
【0156】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0157】
1 CPU、2 マウス、3 キーボード、4 RAM、5 ハードディスク、6 光ディスク駆動装置、8 モニタ、9 ROM、18 ステージ、19 変位計、20 ワーク、22.1 ロボットアーム、22.2 検出器支持部、23 X線検出器、40 入力部、50 出力部、60 検出器制御機構、61 画像取得機構、62 変位計制御機構、63 ステージ制御機構、64 X線源制御機構、70 演算部、80 主記憶部、81 補助記憶部、100,1000 X線検査装置、110 制御装置、1810 撮像視野、1820 撮像視野軌道、1830 X線検出器軌道。
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検査装置の制御に関し、より特定的には、X線検査の精度を向上させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
X線により撮像した画像(透視画像)では、X線が吸収された度合い(吸収係数)を画像として得ることができる。複数枚の透視画像を用いた再構成処理により対象の吸収係数の分布を2次元もしくは3次元データ(以下、単に「再構成画像」という。)として得ることができ、2次元空間の吸収係数分布を求めた画像を特に「断層画像」と呼ぶ。再構成画像特有のノイズとして、アーチファクトが発生する。アーチファクトとは、実際に物体が存在していない位置に物体が存在するかのように見える現象で、検査において良否判定や断層位置の算出の妨げとなる。インラインでの自動検査に必要な検査速度を達成するためには、撮像枚数を減らして撮像時間を短くする必要がある。しかし、撮像枚数を減らすと、アーチファクトが画像に混入し、検査精度が低下する場合がある。
【0003】
アーチファクトを低減するために、たとえば、特開2010−99303号公報(特許文献1)は、金属の正確な形状を抽出して金属アーチファクトを低減する技術を開示している([要約]の[課題]参照)。具体的には、「X線CT装置は、被検体の周囲を回動しながら被検体にX線を照射するX線照射装置1と、被検体の周囲を回動しながら被検体を透過したX線を検出するX線撮像装置2と、X線撮像装置2から得られた画像を処理して被検体の3次元ボクセルデータを得る画像処理装置4とを有する。画像処理装置4は、X線照射装置1およびX線撮像装置2の回動角度毎にX線撮像装置2から2次元の投影画像を取得し、投影画像を2値化し、2値化後の投影画像を回動角度毎に計算上で3次元空間に単純逆投影して3次元の逆投影ボクセルデータを生成し、逆投影ボクセルデータを2値化する。」というものである([要約]の[解決手段]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−99303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術によると、逆投影処理と投影処理とを行ない、投影処理後の画像に画像処理を加えて、再度逆投影を行ない、逆投影によって得られた画像と、元の再構成画像とが合成される。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術によると、逆投影処理が行なわれることにより、通常の再構成処理に要する時間よりも長い時間が必要になるため、検査速度が低下する。そのため、たとえばインライン検査のようにスピードが要求される検査には、そのような技術を用いたX線検査を適用できない場合がある。
【0007】
したがって、アーチファクトを速やかに認識することが必要とされている。本発明は、上述のような問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、検査速度を低下させることなく検査精度が向上するX線検査装置を提供することである。他の局面に従う目的は、検査速度を低下させることなく検査精度が向上するようにX線検査装置の制御方法を提供することである。他の局面に従う目的は、検査速度を低下させることなく検査精度が向上するようにX線検査装置を制御するためのプログラムを提供することである。さらに他の局面に従う目的は、検査速度を低下させることなく検査精度が向上するようにX線検査装置を制御するためのプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施の形態に従うと、対象物の検査対象領域を透過したX線を複数の検出面で受光することにより、検査対象領域の像の再構成処理を実行するためのX線検査装置が提供される。このX線検査装置は、X線検査装置における対象物の位置を移動するための対象物移動機構と、対象物にX線を照射するためのX線源と、検査対象領域を透過したX線を撮像するためのX線検出器と、X線検出器を移動するための検出器移動機構と、X線検査装置の動作を制御するための制御手段とを備える。制御手段は、X線を用いる複数の撮像条件の各々に従って対象物を撮像することにより得られる各投影画像に基づいて、各検出面で受光されるX線画像を再構成することにより得られる対象物の再構成画像から、アーチファクトを認識するためのアーチファクト認識手段と、アーチファクト認識手段によって認識されたアーチファクトを特定するための情報を取得するための特定情報取得手段とを含む。
【0009】
好ましくは、制御手段は、特定するための情報に基づいて、対象物と同じ種類の対象物をX線撮像することにより得られる投影画像から、認識されたアーチファクトが除去された検査用画像を取得するための検査画像取得手段を含む。
【0010】
好ましくは、アーチファクト認識手段は、複数の撮像条件のうちの第1の撮像条件に従って対象物を複数回撮像することにより得られる複数の画像から、対象物の第1の画像を再構成するための第1の再構成手段と、複数の撮像条件のうちの第2の撮像条件に従って対象物を複数回撮像することにより得られる複数の画像から、対象物の第2の画像を再構成するための第2の再構成手段と、第1の画像と第2の画像とに基づいてアーチファクトを抽出するための抽出手段とを含む。
【0011】
好ましくは、X線検査装置は、認識されたアーチファクトを含む再構成画像を表示するための表示手段をさらに備える。
【0012】
好ましくは、X線検査装置は、認識されたアーチファクトを含む再構成画像が得られた撮像条件と異なる撮像条件の入力を受け付けるための入力手段と、入力された異なる撮像条件を格納するための記憶手段とをさらに備える。制御手段は、異なる撮像条件を用いて、対象物を撮像するように、X線源とX線検出器と対象物移動機構と検出器移動機構とを制御するための検査手段を含む。
【0013】
好ましくは、表示手段は、認識されたアーチファクトと、対象物を構成する部品に対応する正常画像とを識別可能に表示する。
【0014】
好ましくは、特定するための情報は、認識されたアーチファクトの再構成画像における位置情報と、対象物の良否を判定するための輝度の閾値と、アーチファクトが認識されない撮像条件とのいずれかを含む。
【0015】
他の実施の形態に従うと、対象物の検査対象領域を透過したX線を複数の検出面で受光することにより、検査対象領域の像の再構成処理を実行するためのX線検査装置の制御方法が提供される。X線検査装置は、X線検査装置における対象物の位置を移動するための対象物移動機構と、対象物にX線を照射するためのX線源と、検査対象領域を透過したX線を撮像するためのX線検出器と、X線検出器を移動するための検出器移動機構とを備えている。制御方法は、X線検査装置が、X線を用いる複数の撮像条件の各々に従って対象物を撮像することにより得られる各投影画像に基づいて、各検出面で受光されるX線画像を再構成することにより得られる対象物の再構成画像から、アーチファクトを認識するステップと、X線検査装置が、認識されたアーチファクトを特定するための情報を取得するステップとを含む。
【0016】
好ましくは、制御方法は、X線検査装置が、特定するための情報に基づいて、対象物と同じ種類の対象物をX線撮像することにより得られる投影画像から、認識されたアーチファクトが除去された検査用画像を取得するステップをさらに含む。
【0017】
好ましくは、アーチファクトを認識するステップは、複数の撮像条件のうちの第1の撮像条件に従って対象物を複数回撮像することにより得られる複数の画像から、対象物の第1の画像を再構成するステップと、複数の撮像条件のうちの第2の撮像条件に従って対象物を複数回撮像することにより得られる複数の画像から、対象物の第2の画像を再構成するステップと、第1の画像と第2の画像とに基づいてアーチファクトを抽出するステップとを含む。
【0018】
好ましくは、X線検査装置の制御方法は、認識されたアーチファクトを含む再構成画像を表示するステップをさらに含む。
【0019】
好ましくは、制御方法は、X線検査装置が、認識されたアーチファクトを含む再構成画像が得られた撮像条件と異なる撮像条件の入力を受け付けるステップと、X線検査装置が、入力された異なる撮像条件を記憶するステップと、X線検査装置が、異なる撮像条件を用いて、対象物を撮像するように、X線源とX線検出器と対象物移動機構と検出器移動機構とを制御するステップとをさらに含む。
【0020】
好ましくは、表示するステップは、認識されたアーチファクトと、対象物を構成する部品に対応する正常画像とを識別可能に表示するステップとを含む。
【0021】
好ましくは、特定するための情報は、認識されたアーチファクトの再構成画像における位置情報と、対象物の良否を判定するための輝度の閾値と、アーチファクトが認識されない撮像条件とのいずれかを含む。
【0022】
他の実施の形態に従うと、対象物の検査対象領域を透過したX線を複数の検出面で受光することにより、検査対象領域の像の再構成処理を実行するためのX線検査装置を制御するためのプログラムが提供される。X線検査装置は、X線検査装置における対象物の位置を移動するための対象物移動機構と、対象物にX線を照射するためのX線源と、検査対象領域を透過したX線を撮像するためのX線検出器と、X線検出器を移動するための検出器移動機構とを備えている。プログラムは、X線検査装置に、X線を用いる複数の撮像条件の各々に従って対象物を撮像することにより得られる各投影画像に基づいて、各検出面で受光されるX線画像を再構成することにより得られる対象物の再構成画像から、アーチファクトを認識するステップと、認識されたアーチファクトを特定するための情報を取得するステップとを実行させる。
【0023】
好ましくは、プログラムは、X線検査装置に、特定するための情報に基づいて、対象物と同じ種類の対象物をX線撮像することにより得られる投影画像から、認識されたアーチファクトが除去された検査用画像を取得するステップをさらに実行させる。
【0024】
好ましくは、アーチファクトを認識するステップは、複数の撮像条件のうちの第1の撮像条件に従って対象物を複数回撮像することにより得られる複数の画像から、対象物の第1の画像を再構成するステップと、複数の撮像条件のうちの第2の撮像条件に従って対象物を複数回撮像することにより得られる複数の画像から、対象物の第2の画像を再構成するステップと、第1の画像と第2の画像とに基づいてアーチファクトを抽出するステップとを含む。
【0025】
好ましくは、プログラムは、X線検査装置に、認識されたアーチファクトを含む再構成画像を表示するステップをさらに実行させる。
【0026】
好ましくは、プログラムは、X線検査装置に、認識されたアーチファクトを含む再構成画像が得られた撮像条件と異なる撮像条件の入力を受け付けるステップと、入力された異なる撮像条件を記憶するステップと、異なる撮像条件を用いて、対象物を撮像するように、X線源とX線検出器と対象物移動機構と検出器移動機構とを制御するステップとをさらに実行させる。
【0027】
好ましくは、表示するステップは、認識されたアーチファクトと、対象物を構成する部品に対応する正常画像とを識別可能に表示するステップとを含む。
【0028】
好ましくは、特定するための情報は、認識されたアーチファクトの再構成画像における位置情報と、対象物の良否を判定するための輝度の閾値と、アーチファクトが認識されない撮像条件とのいずれかを含む。
【0029】
さらに他の実施の形態に従うと、上記のいずれかに記載のプログラムを格納した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【発明の効果】
【0030】
ある局面に従うX線検査において、検査の前の教示の段階で、検査対象の画像からアーチファクトが予め認識される。検査の段階では、より高速な撮像条件で撮像して、アーチファクトを認識した上で対象物の検査が行なわれる。これにより、検査速度を低下させることなく検査精度が向上し得る。
【0031】
この発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】X線検査装置100のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【図2】ワーク20をX線検査する場合においてアーチファクトが発生する原理を表わす図である。
【図3】本実施の形態に係るX線検査装置100が2条件でワーク20を撮像する場合にアーチファクトを認識するための処理を表わすフローチャートである。
【図4】アーチファクトを認識するためにN個の撮像条件に従ってワーク20を予め撮像する場合に実行される処理を表わすフローチャートである。
【図5】アーチファクトを認識する処理の詳細を表わすフローチャートである。
【図6】異なる枚数のプロジェクション(投影)画像から再構成することによって得られた画像を比較することによりアーチファクトを認識する場合を表わす図である。
【図7】アーチファクトを認識するために、断層画像の差分を導出した状態を表わす図である。
【図8】アーチファクトを認識するために、エッジ強度を比較する態様を表わす図である。
【図9】X線撮像により得られた画像の中に、検査対象物の構成に対応する正規のパターンの画像と、アーチファクトとが混在している状態を表わす図である。
【図10】X線撮像によって得られた画像がアーチファクトを含む場合および含まない場合について設定される2値化閾値の設定を表わす図である。
【図11】アーチファクトの有無のそれぞれに応じて設定される閾値を表わす図である。
【図12】アーチファクトの有無に応じて付加される撮像条件情報を表わす図である。
【図13】撮像枚数を変更する場合の処理を表わすフローチャートである。
【図14】照射角を変更して撮像する場合にX線検査装置100が実行する処理を表わすフローチャートである。
【図15】照射角が45度である場合に発生するアーチファクトと検査対象との位置関係を表わす図である。
【図16】照射角が30度である場合に発生するアーチファクトと検査対象との位置関係を表わす図である。
【図17】X線検査装置100が撮像位置(方位角)を変更する場合に実行する処理の一部を表わすフローチャートである。
【図18】X線検査装置100における方位角の考え方を表わす図である。
【図19】方位角0度が起点である場合に得られた画像を表わす図である。
【図20】方位角45度が起点である場合に得られた画像を表わす図である。
【図21】ウインドウの表示機能を有するX線検査装置100が実行する一連の処理の一部を表わすフローチャートである。
【図22】X線検査装置100によって表示されるウインドウの確認および修正の態様を表わす図である。
【図23】X線検査装置100がウインドウを表示する場合におけるその表示の態様を表わす図である。
【図24】X線検査装置100がウインドウを表示した初期状態を表わす図である。
【図25】ウインドウの貼付けが修正された状態を表わす図である。
【図26】コンピュータシステム2600のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0034】
[ハードウェア構成]
図1を参照して、本発明の実施の形態に係るX線検査装置100の構成について説明する。図1は、X線検査装置100のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【0035】
X線検査装置100は、制御装置110と、X線源10と、ステージ18と、変位計19と、X線検出器23と、直交タイプの2軸のロボットアーム22.1と、検出器支持部22.2と、検出器制御機構60と、画像取得機構61と、変位計制御機構62と、ステージ制御機構63と、X線源制御機構64とを備える。
【0036】
制御装置110は、演算部70と、主記憶部80と、補助記憶部81と、入力部40と、出力部50とを含む。ステージ18には、検査対象であるワーク20が配置される。
【0037】
X線源10は、走査型のX線源として、X線焦点を通る軸を中心軸としてX線を出力する。X線源10は、X線源制御機構64によって制御される。X線源制御機構64は、電子ビームの出力を制御する。具体的には、X線源制御機構64は、演算部70から、X線焦点位置、X線エネルギー(管電圧、管電流)の指定を受ける。X線エネルギーは、ワーク20の構成によって異なる。
【0038】
ステージ18には、ワーク20が搬入される。ステージ18は、たとえば、X−Y−Zステージとして構成され、任意の位置に移動することができる。ステージ18の移動は、たとえば、円軌道や線形軌道に従って移動する。他の局面において、ステージ18は、ベルトコンベアのように一方向に移動することにより検査のための位置にワーク20を配置するように構成され得る。
【0039】
変位計19は、ワーク20の上面までの距離を測定する。測定された距離データは、変位計制御機構62に入力される。
【0040】
ロボットアーム22.1と検出器支持部22.2とは、X線検出器駆動部として、検出器制御機構60からの信号に基づき、X線検出器23を指定された位置に移動する。たとえば、ロボットアーム22.1と検出器支持部22.2とは、XYθの自由度でX線検出器23を駆動可能できるXYθ動作機構として構成される。
【0041】
なお、X線検出器23を駆動するための構成は、上記の構成に限られず、X−Y方向の移動またはX−Y平面内でのθ回転を可能とする構成であり、X線検出器23の移動に対して同様の機能を持つものであればよい。
【0042】
さらに、検出器制御機構60は、その時点でのX線検出器23の位置情報を演算部70に送る。
【0043】
X線検出器23は、X線源10によって出力されてワーク20を透過したX線を検出して画像化する2次元X線検出器である。たとえば、X線検出器23は、CCD(Charge Coupled Device)カメラ、I.I(Image Intensifier)管、スペース効率のよいFPD(Flat Panel Detector)である。また、X線検出器23は、インライン検査で使うことができるように高感度であることが望ましく、CdTeを使った直接変換方式のFPDであってもよい。
【0044】
入力部40は、X線検査装置100のユーザからの指示入力等を受け付ける。入力部40は、たとえば、周知のコンピュータシステムに用いられるキーボード、マウス、タッチパネル、無線通信インターフェイス等によって実現される。
【0045】
出力部50は、入力されている検査条件、検査結果等を外部に出力する。出力部50は、たとえば、演算部70で構成されたX線画像等を表示するモニタ装置として実現される。他の局面において、出力部50は、画像信号を出力するインターフェイスとして実現される。
【0046】
検出器制御機構60は、演算部70からの命令にしたがって、X線検出器23の位置および動作を制御する。具体的には、検出器制御機構60は、X線検出器23を指定された位置に移動させるための信号を、ロボットアーム22.1と、検出器支持部22.2とにそれぞれ送信する。
【0047】
画像取得機構61は、X線検出器23からの画像データの取得を制御する。具体的には、画像取得機構61は、演算部70による命令にしたがって、X線の検出を行ない、プロジェクション画像を取得する。
【0048】
変位計制御機構62は、変位計19からの出力に基づいて、X線透視撮影の際に、ワーク20の基準平面の高さを調整する。
【0049】
ステージ制御機構63は、演算部70からの命令に基づいて、X線撮影のために指定された位置までステージ18を移動する。
【0050】
X線源制御機構64は、X線源10によるX線の照射方向、照射角、および強度を制御する。
【0051】
演算部70は、主記憶部80に格納されたプログラム(図示しない)および撮影条件その他の制御データに基づいて各部の動作を制御し、また、所定の演算処理を実行する。
【0052】
主記憶部80は、データやプログラムを不揮発的に保持できる記録媒体であって、たとえば、ハードディスク装置、フラッシュメモリ等によって実現される。
【0053】
補助記憶部81は、データやプログラムを一時的に保持できる記録媒体であって、たとえば、RAM(Random Access Memory)等によって実現される。
【0054】
ある局面において、演算部70は、X線を用いる複数の撮像条件の各々に従って対象物を撮像することにより得られる各投影画像に基づいて、各検出面で受光されるX線画像を再構成することにより得られる対象物の再構成画像から、アーチファクトを認識する。演算部は、認識されたアーチファクトを特定するための情報を取得する。
【0055】
他の局面において、画像取得機構61は、特定するための情報に基づいて、対象物と同じ種類の対象物をX線撮像することにより得られる投影画像から、認識されたアーチファクトが除去された検査用画像を取得する。
【0056】
他の局面において、演算部は、第1の再構成部として、複数の撮像条件のうちの第1の撮像条件に従って対象物を複数回撮像することにより得られる複数の画像から、対象物の第1の画像を再構成し、第2の再構成部として、複数の撮像条件のうちの第2の撮像条件に従って対象物を複数回撮像することにより得られる複数の画像から、対象物の第2の画像を再構成し、第1の画像と第2の画像とに基づいてアーチファクトを抽出する。
【0057】
他の局面において、出力部50は、モニタ装置として実現され、認識されたアーチファクトを含む再構成画像を表示する。
【0058】
ある局面において、当該モニタ装置は、認識されたアーチファクトと、対象物を構成する部品に対応する正常画像とを識別可能に表示する。
【0059】
ここで、特定するための情報は、たとえば、認識されたアーチファクトの再構成画像における位置情報と、対象物の良否を判定するための輝度の閾値と、アーチファクトが認識されない撮像条件とのいずれか、または、2つ以上の組み合わせであってもよい。
【0060】
[アーチファクトの発生原理]
図2を参照して、X線検査におけるアーチファクトの発生原理について説明する。図2は、ワーク20をX線検査する場合においてアーチファクトが発生する原理を表わす図である。
【0061】
本実施の形態に係るX線検査装置100は、複数のX線撮像画像を用いてワーク20の再構成画像を得るため、X線検出器23と、ワーク20と、X線源10との相対的な位置が逐次変わる。図2においては、アーチファクトの発生原理の説明のために、ワーク20の位置を中心に、X線検出器23およびX線源10の相対的な位置が変わるものとして説明する。
【0062】
ある局面において、X線源10と、ワーク20と、X線検出器23との位置関係は、たとえば、X線焦点位置220と、ワーク20と、X線検出器23の位置250として規定される。このとき、X線源10から照射されるX線は、X線焦点位置220から出力され、再構成範囲240にあるワーク20を透過し、位置250にあるX線検出器23によって検出される。このとき、ワーク20に含まれる検査対象230,231,232に対応する画像に加えて、たとえば、アーチファクト210,211,212,213,214,215がX線検出器23によって検出され得る。
【0063】
また、他の局面において、X線源10がX線焦点位置221の場所にあるとき、X線源10から照射されるX線は、ワーク20を透過して、位置251にあるX線検出器23によって受光される。この場合も、基板161,260の存在などにより、検査対象230,231,232に加えて、アーチファクト210,211,212,213,214,215がX線検出器23によって認識され得る。
【0064】
[技術思想]
本実施の形態における技術思想は、以下のとおりである。まず、教示(いわゆるティーチング)の段階で、アーチファクトを認識するために複数の撮像条件でX線撮像が行なわれる。ここで、撮像条件は、撮像枚数、X線の露光時間、撮像角度(投射角、方位角)、管電流、および管電圧を含む。アーチファクトの認識は、たとえば、画像の差分、エッジ強度の比較、画像に含まれる領域や模様の形状の比較などにより実現される。
【0065】
その後、アーチファクトが認識された撮像条件を変更することにより、実際の検査段階で用いられる検査条件が変更される。撮像条件の変更とは、たとえば、撮像枚数の変更、X線の露光時間の変更、撮像角度(投射角、方位角)の変更、管電流値の変更、管電圧値の変更などを含む。検査条件の変更とは、検査範囲または断層の選択、検査対象物の良否判定の閾値の変更、良否判定時の画像処理の内容の変更、X線透視画像から3次元画像を得るための再構成アルゴリズムの変更、再構成における分解能の変更、撮像条件の変更などを含む。
【0066】
より具体的には、半導体基板のようなワーク20では、基板の裏面の状況、ヒートシンクの有無により、アーチファクトが発生する。そこで、インライン検査が実行される前に、X線検査装置100は、予めアーチファクトを認識し、認識されたアーチファクトの位置情報、輝度、アーチファクトが認識されたときの再構成画像が得られた撮像条件を特定する。その後、ワーク20の量産品をインライン検査する場合に、予め特定された位置情報、輝度、撮像条件を考慮して、プロジェクション画像から再構成画像を取得し、X線検査を実行する。
【0067】
このようにすると、アーチファクト(ノイズ画像)が含まれないプロジェクション画像が取得しやすくなるので、検査精度が向上するとともに、改めてアーチファクトを除去する処理が不要になるため、検査速度の低下が防止される。
【0068】
また、検査に必要十分で、検査時間の短い(撮像枚数の少ない)撮像条件を設定することは、一般には困難であるが、予め認識されたアーチファクトを有するプロジェクション画像が得られた撮像条件を参考にして撮像条件を設定することにより、アーチファクトが含まれないプロジェクション画像を得るために必要十分な撮像条件を決定することが可能になる。これにより、検査時間の長期化が防止され、X線検査装置100のユーザの手間が低減される。
【0069】
[アーチファクトの認識]
次に、図3〜図5を参照して、アーチファクトの認識処理について説明する。図3は、本実施の形態に係るX線検査装置100が2条件でワーク20を撮像する場合にアーチファクトを認識するための処理を表わすフローチャートである。
【0070】
ステップS310にて、X線検査装置100は、ステージ制御機構63を駆動して、ワーク20が含まれる基板を所定の位置に搬入する。
【0071】
ステップS320にて、X線検査装置100は、主記憶部80に格納されている予め設定された第1の撮像条件に従って画像取得機構61および検出器制御機構60を制御しながらX線による撮像を実行する。
【0072】
ステップS330にて、X線検査装置100は、主記憶部80に格納されている予め設定された第2の撮像条件に従って、ワーク20のX線による撮像を実行する。
【0073】
ステップS340にて、演算部70は、画像取得機構61から送られて補助記憶部81に一時的に保持されているデータに基づいて、第1の撮像条件に従って撮像することにより得られた画像から、ワーク20の画像を再構成する。
【0074】
ステップS350にて、演算部70は、同様に、画像取得機構61を介してX線検出器23から送られた第2の撮像条件に従って得られたデータを用いて、ワーク20の画像を再構成する。
【0075】
ステップS500にて、演算部70は、後述するアーチファクト認識処理を実行する。この処理が実行されると、ワーク20をX線検査する場合において生じ得るアーチファクトが予め認識される。
【0076】
図4は、アーチファクトを認識するためにN個の撮像条件に従ってワーク20を予め撮像する場合に実行される処理を表わすフローチャートである。なお、前述の処理と同一の処理には同一のステップ番号を付してある。したがってそれらの説明は、繰り返さない。
【0077】
ステップS410にて、X線検査装置100は、第N番目の撮像条件に従って、ワーク20のX線による撮像を実行する。
【0078】
ステップS420にて、演算部70は、第N番目の撮像条件に従って、撮像することにより得られたデータを用いて、ワーク20の画像を再構成する。その後、演算部70は、アーチファクト認識処理(ステップS500)を実行する。
【0079】
[アーチファクト認識]
図5は、アーチファクトを認識する処理の詳細を表わすフローチャートである。アーチファクトは、たとえば、複数の画像を比較することにより、正常な画像(たとえば、部品や形成されたパターンの画像)およびアーチファクトを判別した結果として認識される。画像を比較するための方法としては、一般的な画像処理手法が用いられる。画像処理手法としては、たとえば、差分(輝度差)、輝度の分散、エッジ抽出、エッジ強度、パターンマッチングなどが用いられるが、これらに限られない。
【0080】
ステップS510にて、演算部70は、主記憶部80に格納されている、第1の撮像条件に従って再構成することにより得られた画像から、断層画像(S1)を取得する。
【0081】
ステップS520にて、演算部70は、主記憶部80に格納されている、第2の撮像条件に従って撮像することにより再構成された画像から、断層画像(S2)を取得する。
【0082】
ステップS530にて、演算部70は、断層画像の差分(S1−S2)を計算する。
ステップS540にて、演算部70は、計算によって得られた差分の絶対値と予め規定された閾値とを比較し、当該絶対値が当該閾値以上であれば、その画像に含まれる部分をアーチファクトとして、認識する。その後、処理は、メイン処理に戻される。
【0083】
図6から図8を参照して、X線検査装置100においてアーチファクトを認識する方法について説明する。図6は、異なる枚数のプロジェクション(投影)画像から再構成することによって得られた画像を比較することによりアーチファクトを認識する場合を表わす図である。具体的には、ワーク20において断層画像を取得し、その取得した各断層画像を比較することにより、アーチファクトが認識される。なお、アーチファクトを認識するための撮像条件は、再構成に用いられる枚数に限られず、たとえば、X線の照射角、X線が照射される方位角(位置)、生基板(部品搭載前の基板)であってもよい。
【0084】
たとえば、画像(A)は、第1の撮像条件(撮像枚数16枚)に従ってワーク20を撮影することにより得られた断層画像(S1)を表わす図である。画像(B)は、第2の撮像条件(たとえば、撮像枚数32枚)に従って撮像することにより再構成された断層画像(S2)を表わす図である。この場合、断層画像(S1)の輝度値と断層画像(S2)の輝度値との差分を計算することにより、アーチファクトが認識される。
【0085】
なお、撮像枚数については、第1の撮像条件として多い枚数(上記の例では32枚)を撮影しておき、第2の撮像条件として少ない枚数(上記の例では16枚)については、32枚のプロジェクション画像から16枚のプロジェクション画像を選択してもよい。たとえば、複数のプロジェクション画像から1枚おきに選択すればよい。このようにすると、第2の撮像条件として16枚のX線撮像画像を取得するための撮像が不要になる。
【0086】
図7は、アーチファクトを認識するために、断層画像の差分を導出した状態を表わす図である。具体的には、図7に示される画像は、断層画像(S1)と断層画像(S2)との差分を計算することにより得られる。たとえば、領域710は、その輝度値が予め設定された閾値よりも大きいため、X線検査装置100の演算部70は、領域710にアーチファクトがあると認識する。
【0087】
なお、断層画像の差分を計算する場合において、図7に示される例では、(白い画素に相当する)輝度の高い位置がアーチファクトの位置(画素)に相当する。ここで、画素値の差分ΔIは、たとえば次式のように規定される。
【0088】
ΔI=|I1−I2|
I1:第1の撮像条件の画素値
I2:第2の撮像条件の画素値
図8は、アーチファクトを認識するために、エッジ強度を比較する態様を表わす図である。
【0089】
たとえばある局面において、32枚のCT(Computed Tomography)断層画像でもアーチファクトが残る場合、目視でもその判定は困難となる。しかしながら、たとえば、16枚のCT断層画像と32枚のCT断層画像の各エッジ強度を比較することにより、アーチファクトであるか否かを判別することができる。すなわち、アーチファクトは、ワーク20において実際には存在しないものであり、したがって、画像を再構成するために用いられる枚数(プロジェクション画像の枚数)が増加するとその部分は「薄くなり」、エッジ強度が小さくなる傾向にある。
【0090】
画像800は、ワーク20をX線撮像することにより得られた画像である。画像800は、アーチファクトであるか否かの判別が求められる領域840を含むとする。たとえば、断層位置(Z)の値が5ピクセルの場合、画像811に示されるように、領域840に対応する画像は、アーチファクトを含んでいるように見える。一方、その領域において断層位置(Z)が40ピクセルのときの画像821は、エッジ強度が予め設定された閾値よりも大きいため、ワーク20に含まれる正規のパターン面として判別できる。すなわち、断層位置とエッジ強度との関係を表わすグラフにおいて、画像811に対応する領域810の16枚のCT断層画像と32枚のCT断層画像の各エッジ強度の差は、予め設定された閾値よりも大きく算出される。一方、領域820に示されるように、断層位置(Z=40ピクセル)付近におけるCT断層画像のエッジ強度の差は、領域810におけるエッジ強度の差よりも小さくなる。したがって、画像821に示されるように、演算部70は、領域840が正常なパターン面であると判別する。
【0091】
[位置情報の付加]
図9を参照して、本実施の形態に係るX線検査装置100におけるアーチファクトの認識に関する位置情報の付加について説明する。図9は、X線撮像により得られた画像の中に、検査対象物の構成に対応する正規のパターンの画像と、アーチファクトとが混在している状態を表わす図である。
【0092】
図9(A)に示されるように、ある局面において、画像961は、正規のパターンに加えて、アーチファクト900を含み得る。このとき、ウインドウ910,911には、アーチファクト900が含まれるため、これらのウインドウ910,911は、画像検査の対象として採用されない。一方、ウインドウ912は、アーチファクトを含まないため、ウインドウ912は、画像検査の対象として採用される。
【0093】
図9(B)を参照して、他の局面において、画像962は、部品920のパターンと、アーチファクト901とを含み得る。ここで、ウインドウ921とウインドウ922とは、アーチファクトを含まないため、これらのウインドウ921,922は、画像検査の対象として採用される。一方、ウインドウ930は、アーチファクト901を含むため、ウインドウ930は、画像検査の対象として採用されない。
【0094】
図9(C)を参照して、画像963は、部品のパターン画像に加えて、アーチファクト902を含み得る。このとき、画像963に表示されるウインドウ940,941は、アーチファクトを含まないため、検査対象として採用される。一方、ウインドウ950,951は、アーチファクト902を含むため、検査対象として採用されない。
【0095】
すなわち、ある局面において、検査対象のウインドウ(位置)を採用するか否かは、たとえば、以下のようにして実現される。
(1)パターンの位置を設定
(2)部品の輪郭を設定
(3)輝度の低い電極部のはんだを設定
このような位置情報を付加することにより、たとえば、輝度の低い検査対象(配線パターン、部品の輪郭、薄い電極など)をアーチファクトとして誤って認識することが防止され得る。
【0096】
また、アーチファクトを含まないウインドウのみが検査対象として採用されるため、画像検査における処理の高速化が実現される。
【0097】
[輝度情報の付加]
図10を参照して、本実施の形態に係るX線検査装置100における輝度情報の付加について説明する。図10は、X線撮像によって得られた画像がアーチファクトを含む場合および含まない場合について設定される2値化閾値の設定を表わす図である。
【0098】
ある局面において、ワーク20の領域の判定に用いる2値化閾値、判定値の輝度を修正することができる。たとえば、(1)はんだボールの2値化閾値のリファレンス、位置を修正することができる。また(2)リードのバックフィルタの良否判定のための閾値の輝度を修正することができる。
【0099】
図10(A)を参照して、画像1001は、パターンに対応する画像1010を含む。また、画像1001には、予め規定されたルールに従って割当てられたウインドウ1011,1012,1013,1014が表示される。各画像は、輝度(Ia、Ib、Ic、Id)を有する。このとき、2値化の閾値は、たとえば、式1030のように規定される。
【0100】
図10(B)を参照して、画像1002がアーチファクト1015を含む場合もあり得る。アーチファクト1015は、たとえば、輝度Ifを有する。この場合、2値化閾値は、式1040のように規定される。
【0101】
図11を参照して、本実施の形態に係るX線検査装置100における輝度情報の付加についてさらに説明する。図11は、アーチファクトの有無のそれぞれに応じて設定される閾値を表わす図である。状態(A)は、アーチファクトが存在しない場合におけるワーク20の一部の断面を表わす。状態(B)は、アーチファクトが存在する場合におけるワーク20の一部における断面を表わす。
【0102】
状態(A)に示されるように、ある局面において、基板に付着されたはんだ1110と、リード1111との各画像が認識される。このとき、輝度の分布は、ラインプロファイルとしては、たとえば、グラフ1130として示される。この場合、たとえば、はんだが存在しない場所(x=0)における輝度値(Ia)の2倍が良否判定のための閾値Ithとして用いられる。
【0103】
状態(B)に示されるように、他の局面において、X線撮像画像にアーチファクト1120が含まれる場合がある。この場合、アーチファクト1120の存在によって撮像画像の輝度値が上昇し得る。輝度の分布は、たとえば、グラフ1140として表わされる。この場合、たとえば良否判定のための閾値(Ith)は、2(Ia′−If)として表わされ得る。
【0104】
[撮影条件情報の付加]
図12を参照して、本実施の形態に係るX線検査装置100においてアーチファクトの認識のために撮像条件情報を付加する態様について説明する。図12は、アーチファクトの有無に応じて付加される撮像条件情報を表わす図である。
【0105】
具体的には、ある局面において、アーチファクトの影響を受けない撮像条件が算出される。たとえば、(1)検査対象に対し、アーチファクトが含まれない(少ない)撮像のためのX線の照射角、方位角が選択される。(2)アーチファクトが影響しない枚数が撮像枚数として選択される。
【0106】
これにより、撮像枚数を増やすことなく、アーチファクトを減らせる撮像条件が設定できる。また、撮像枚数を増やす場合でも、検査に必要な最小限の枚数が撮像枚数として設定できる。なお、付加される撮像条件情報は「撮像枚数」のみに限られず、撮像枚数、照射角、方位角の2つ以上の組み合せが用いられてもよい。
【0107】
より具体的には、状態(A)は、検査が必要な部品においてアーチファクトが認識された状態を表わす。具体的には、ウインドウ1220,1210は、アーチファクト1230を含む。この場合、撮像条件については、撮像枚数は予め規定された枚数よりも少ない枚数が規定され、照射角(φ1)が規定され、方位角(θ1)が規定される。
【0108】
状態(B)は、アーチファクトが別の断層に移動しているため、アーチファクトが表示されていない態様を表わす図である。このとき、撮像条件として、撮像枚数は、状態(A)と同様に予め規定された枚数よりも少ない枚数が設定され、照射角(φ2)が規定され、方位角(θ1)が規定されている。
【0109】
状態(C)は、アーチファクトの位置がずれてウインドウに含まれない状態を表わす。このとき、撮像枚数と照射角は、状態(A)についての撮像枚数および照射角と同じ値が用いられてる。しかしながら、照射角については、方位角(θ1)に代えて方位角(θ2)が用いられている。
【0110】
状態(D)は、アーチファクト1250の輝度が状態(A)に示されるアーチファクト1230の輝度よりも減少した状態を表わす。このとき、照射角および方位角は、状態(A)において用いられる照射角および方位角と同じである。しかしながら、撮像枚数は、状態(A)の場合に用いられる撮像枚数よりも多い枚数が、撮像条件として規定されている。
【0111】
[制御構造]
図13を参照して、X線検査装置100におけるアーチファクトを認識するための他の処理について説明する。図13は、撮像枚数を変更する場合の処理を表わすフローチャートである。なお、前述の処理と同一の処理には同一のステップ番号を付してある。したがってそれらの説明は、繰り返さない。
【0112】
ステップS1310にて、制御装置110は、検出器制御機構60と画像取得機構61とステージ制御機構63とX線源制御機構64とを制御することにより、32枚のプロジェクション画像(投影画像)を得るために32回の撮像処理を実行する。
【0113】
ステップS1320にて、演算部70は、撮像によって得られた32枚の画像を用いて、ワーク20の画像を再構成する。
【0114】
ステップS1330にて、演算部70は、ステップS1310において得られた32枚の画像から16枚の画像を選択し、その選択した画像を用いてワーク20の画像を再構成する。ここで、16枚の画像の選択は、たとえば、32枚の画像のうちの偶数番目あるいは奇数番目の画像を選択することにより行なわれる。その後、演算部70は、アーチファクト認識処理(ステップS500)を実行する。
【0115】
図14は、照射角を変更して撮像する場合にX線検査装置100が実行する処理を表わすフローチャートである。
【0116】
ステップS1410にて、制御装置110は、X線源制御機構64とステージ制御機構63とを制御して、X線源10から照射される角度が45度になるように位置を調整した上で、ワーク20のX線撮像を実行する。
【0117】
ステップS1420にて、制御装置110は、検出器制御機構60と画像取得機構61とステージ制御機構63とX線源制御機構64とを制御して、X線源10からワーク20への照射角を30度に変更し、変更後の条件に従ってワーク20の撮像を実行する。
【0118】
ステップS1430にて、演算部70は、照射角45度の条件の下で得られた画像を用いてワーク20の画像を再構成する。
【0119】
ステップS1440にて、演算部70は、照射角30度の条件の下で得られた画像を用いてワーク20の画像を再構成する。その後、演算部70は、アーチファクト認識処理(ステップS500)を実行する。
【0120】
[アーチファクトの発生]
ここで、図15および図16を参照して、照射角に応じたアーチファクトの発生について説明する。図15は、照射角が45度である場合に発生するアーチファクトと検査対象との位置関係を表わす図である。図16は、照射角が30度である場合に発生するアーチファクトと検査対象との位置関係を表わす図である。
【0121】
図15を参照して、ある局面において、ワーク20に含まれる検査対象230,231,232は、基板261と基板260との間に配置されている。このとき、照射角45度で照射されたX線は、検査対象230,231,232を透過するとともに、アーチファクト210,211,212,213,214,215がX線検出器23において検出される。
【0122】
図16を参照して、照射角が30度であるとき、検査対象230,231,232を透過したX線は、X線検出器23によって受光されるとともに、アーチファクト1610,1611,1612,1613,1614,1615が、X線検出器23によって検出され得る。
【0123】
すなわち、図15および図16から明らかなように、X線の照射角を変えることによりアーチファクトが生じ得る位置が変わるため、照射角を変えることによって得られたプロジェクション画像から再構成された画像を比較することにより、アーチファクトの認識が可能になる。
【0124】
[撮像位置の変更]
図17から図20を参照して、撮像位置(方位角)を変更する態様について説明する。図17は、X線検査装置100が撮像位置(方位角)を変更する場合に実行する処理の一部を表わすフローチャートである。なお、前述の処理と同一の処理には同一のステップ番号を付してある。したがって、それらの説明は繰り返さない。
【0125】
ステップS1710にて、制御装置110は、予め設定された撮像位置(方位角A)において、16枚のX線撮像を実行する。
【0126】
ステップS1720にて、制御装置110は、異なる方位角として予め設定された撮像方位角(B)の条件において16枚のX線撮像を実行する。
【0127】
ステップS1730にて、演算部70は、ステップS1710において得られた16枚の投影画像を用いてワーク20の画像を再構成する。
【0128】
ステップS1740にて、演算部70は、ステップS1720において得られた16枚の投影画像を用いて撮像位置(B)にあるワーク20の画像を再構成する。その後、演算部70は、アーチファクト認識処理(ステップS500)を実行する。
【0129】
図18は、X線検査装置100における方位角の考え方を表わす図である。図18(A)は、X線検査装置100において方位角0度を起点として予め設定された枚数だけ撮像する場合において、X線検出器23の位置と撮像視野1810の位置とを表わす図である。具体的には、X線検出器23は、X線検出器軌道1830上を移動する。このとき、撮像視野1810は、X線源10を同心円とする撮像視野軌道1820の上を同じ方向に回転移動する。図18(A)に示される例は、撮像のための4箇所の位置が特定されるが、X線検出器23および撮像視野1810の場所は図18(A)から特定される数に限られない。
【0130】
図18(B)は、X線検査装置100において方位角45度が起点とされる場合のX線検出器23と撮像視野1810との位置を表わす図である。
【0131】
同様に、X線検出器23と撮像視野1810とはそれぞれの円周軌道上を移動し、各位置においてX線撮像が行なわれる。図18(A)と図18(B)とから明らかなように、異なる角度が起点として用いられるため、方位角に応じてアーチファクトが認識される場合には、その差分を求めることにより、当該アーチファクトの有無を認識することができる。
【0132】
図19および図20を参照して、アーチファクトの発生位置について説明する。図19は、方位角0度が起点である場合に得られた画像を表わす図である。図20は、方位角45度が起点である場合に得られた画像を表わす図である。
【0133】
図19(A)を参照して、ワーク20を上から見ると、ワーク20に含まれるボールはんだのような検査対象1900,1903,1902,1901とアーチファクト1910,1911,1912,1913が認識される。
【0134】
図19(B)を参照して、検査対象1920,1921を横から見ると、アーチファクト1930,1931がそれぞれ演算部70によって検出され得る。
【0135】
図20を参照して、方位角45度が起点として用いられた場合、ワーク20を上から見ると、ワーク20に含まれる検査対象1901,1902,1903,1900は、さらに、アーチファクト2010を伴う画像として、演算部70によって認識される。このとき、図20(B)に示されるように、ワーク20を横から見ると、検査対象1920,1921が認識され、アーチファクトは認識されない。一方、図20(C)に示されるように、横から見る位置を変えると、アーチファクト2020,2021が認識され得る。
【0136】
図21を参照して、ユーザへのウインドウの表示について説明する。図21は、ウインドウの表示機能を有するX線検査装置100が実行する一連の処理の一部を表わすフローチャートである。なお、前述の処理と同一の処理には同一のステップ番号を付してある。したがって、それらの説明は繰り返さない。
【0137】
ステップS2110にて、演算部70は、出力部50に対してウインドウを表示する。
ステップS2120にて、演算部70は、入力部40を介して与えられる入力に基づいて、表示されたウインドウに対する確認の結果あるいは修正の指示の入力を受け付ける。その後、演算部70は、修正後の情報を主記憶部80に格納する。
【0138】
そこで、図22を参照して、ウインドウの確認および修正について説明する。図22は、X線検査装置100によって表示されるウインドウの確認および修正の態様を表わす図である。
【0139】
図22(A)に示されるように、ある局面において、ワーク20は、基板2210と2240との間に、はんだボールその他の検査対象2220,2221,2222と、パターン2230とを含む。
【0140】
図22(B)に示されるように、たとえばある局面において投影画像として16枚の画像が撮像される。その結果、画像2250は、正規の画像2251,2252,2253,2254,2255,2256,2257,2258,2259,2261に加えて、アーチファクト2260を含む。
【0141】
また、撮像枚数として32枚の投影画像が用いられると、図22(C)に示されるように、正規の画像2271,2272,2273,2274,2275,2276,2277,2278,2279,2281に加えて、輝度が小さくなったアーチファクト2270が表示される。
【0142】
[ウィンドウの表示]
図23を参照して、ウインドウの表示について説明する。図23は、X線検査装置100がウインドウを表示する場合におけるその表示の態様を表わす図である。
【0143】
図23(A)を参照して、画像2310は、正規のパターンを表わす画像2311,2312,2313,2314,2315,2316,2317,2318,2319,2321に加えて、アーチファクト2320,2322を含む。各画像には、ウインドウ2311,2312,2313,2314,2315,2316,2317,2318,2319,2340,2341,2342が表示される。このとき、ウインドウ2340,2342は、他のウインドウと異なる態様でたとえば点線で表示される。このようにすると、アーチファクトを含むウインドウと正常な画像を含むウインドウとの判別が容易になる。
【0144】
図23(B)を参照して、画像2350は、ウインドウ2361,2362,2363,2364,2365,2366,2367,2368,2369,2370,2371,2372を含む。ここで、ウインドウ2361,2362,2363,2364,2365,2366,2367,2368,2369は、正規なパターンを表わす画像を含むウインドウとして表示され、他のウインドウとは、区別される。たとえば、ウインドウ2372は、アーチファクト2360を含むため、点線で表示される。なお、表示の態様は、実践と点線に限られない。たとえば、同じ種類の線であっても、線の太さを変更することにより、あるいは、線の色を変えることにより、正規な画像を含むウィンドウと、アーチファクトを含むウィンドウとを区別してもよい。
【0145】
[ウィンドウの確認と修正]
次に、図24および図25を参照して、ウインドウの確認と修正とについて説明する。図24は、X線検査装置100がウインドウを表示した初期状態を表わす図である。図25は、ウインドウの貼付けが修正された状態を表わす図である。
【0146】
図24を参照して、ある局面において、X線検査装置100は、ウインドウを誤って表示する場合があり得る。すなわち、ウインドウを表示すべきでない場合にウインドウを表示し、逆に、表示する必要がある画像に対してウインドウを表示しない場合があり得る。図24に示される例では、正常なボールに対応する画像のウインドウが表示されない場合がある。たとえば、画像2460,2461は、正規なパターン(たとえばボール)を表わす画像であるが、これらの画像には、ウインドウは表示されていない。したがって、ウインドウを表示する必要がある。一方、ウインドウ2111,2121は、それぞれアーチファクト2410,2420を含むウインドウとして、正規な画像を含むウインドウ2451の線種とは異なる線種によって表わされる。ウインドウ2431は、正規なパターン2430を含むウインドウとして表示される。
【0147】
図25を参照して、ウインドウ2511,2521は、正規な部品の画像2460,2461に対応するウインドウとしてX線検査装置100のユーザが手動で追加することができる。X線検査装置100は、その追加後のウインドウを主記憶部80に情報として保持することにより、その後の検査においてそのウインドウの設定状態をX線画像検査に用いることができる。
【0148】
[実施の形態の効果]
以上のようにして、本実施の形態に係るX線検査装置100は、同一種類の複数の検査対象物をインライン検査する前に、サンプル品を用いて予めアーチファクトを認識し、アーチファクトを特定するための情報を予め保持する。当該情報は、たとえば、アーチファクトの位置を特定するための情報(たとえば、座標値、形状データ)、アーチファクトの輝度、アーチファクトが認識された撮像条件(たとえば、撮像が行なわれた方位角など)などを含む。その後、X線検査装置100は、当該サンプル品と同じ種類の検査対象物をインライン検査する際に、アーチファクトを特定するための情報を考慮して、X線撮像によって得られた画像を用いて、アーチファクトが除去された検査用画像を取得する。このようにすると、アーチファクトが含まれない撮像条件を用いてインライン検査を行なっても検査精度の低下が防止される。また、必要最小限の撮影枚数で検査用画像を取得できるので、検査速度の低下も防止され得る。
【0149】
[コンピュータシステムの構成]
なお、上述の実施の形態に係るX線検査装置100の制御機構は、周知の構成を有するコンピュータシステムを用いて実現することができる。
【0150】
そこで、図26を参照して、X線検査装置1000の制御機構を実現するコンピュータシステム2600について説明する。図26は、コンピュータシステム2600のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【0151】
コンピュータシステム2600は、主たる構成要素として、プログラムを実行するCPU1と、コンピュータシステム2600の使用者による指示の入力を受けるマウス2およびキーボード3と、CPU1によるプログラムの実行により生成されたデータ、又はマウス2若しくはキーボード3を介して入力されたデータを揮発的に格納するRAM4と、データを不揮発的に格納するハードディスク5と、光ディスク駆動装置6と、モニタ8と、通信IF(Interface)9とを備える。各構成要素は、相互にバスによって接続されている。光ディスク駆動装置6には、CD−ROM9その他の光ディスクが装着される。
【0152】
コンピュータシステム2600における処理は、各ハードウェアおよびCPU1により実行されるソフトウェアによって実現される。このようなソフトウェアは、ハードディスク5に予め格納されている場合がある。また、ソフトウェアは、CD−ROM9その他のコンピュータ読み取り可能な情報記録媒体に格納されて、プログラム製品として流通している場合もある。あるいは、当該ソフトウェアは、インターネットその他のネットワークに接続されている情報提供事業者によってダウンロード可能なプログラム製品として提供される場合もある。このようなソフトウェアは、光ディスク駆動装置6その他のデータ読取装置によって情報記録媒体から読み取られて、あるいは、通信IF7を介してダウンロードされた後、ハードディスク5に一旦格納される。そのソフトウェアは、CPU1によってハードディスク5から読み出され、RAM4に実行可能なプログラムの形式で格納される。CPU1は、そのプログラムを実行する。
【0153】
図26に示されるコンピュータシステム2600を構成する各構成要素は、一般的なものである。したがって、本発明の本質的な部分は、RAM4、ハードディスク5、CD−ROM9その他の情報記録媒体に格納されたソフトウェア、あるいはネットワークを介してダウンロード可能なソフトウェアであるともいえる。なお、コンピュータシステム1200の各ハードウェアの動作は周知であるので、詳細な説明は繰り返さない。
【0154】
なお、情報記録媒体としては、CD−ROM、FD(Flexible Disk)、ハードディスクに限られず、磁気テープ、カセットテープ、光ディスク(MO(Magnetic Optical Disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc))、IC(Integrated Circuit)カード(メモリカードを含む)、光カード、マスクROM、EPROM(Electronically Programmable Read-Only Memory)、EEPROM(Electronically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュROMなどの半導体メモリ等の固定的にプログラムを担持する媒体でもよい。
【0155】
ここでいうプログラムとは、CPU1により直接実行可能なプログラムだけでなく、ソースプログラム形式のプログラム、圧縮処理されたプログラム、暗号化されたプログラム等を含み得る。
【0156】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0157】
1 CPU、2 マウス、3 キーボード、4 RAM、5 ハードディスク、6 光ディスク駆動装置、8 モニタ、9 ROM、18 ステージ、19 変位計、20 ワーク、22.1 ロボットアーム、22.2 検出器支持部、23 X線検出器、40 入力部、50 出力部、60 検出器制御機構、61 画像取得機構、62 変位計制御機構、63 ステージ制御機構、64 X線源制御機構、70 演算部、80 主記憶部、81 補助記憶部、100,1000 X線検査装置、110 制御装置、1810 撮像視野、1820 撮像視野軌道、1830 X線検出器軌道。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の検査対象領域を透過したX線を複数の検出面で受光することにより、前記検査対象領域の像の再構成処理を実行するためのX線検査装置であって、
前記X線検査装置における前記対象物の位置を移動するための対象物移動機構と、
前記対象物にX線を照射するためのX線源と、
前記検査対象領域を透過したX線を撮像するためのX線検出器と、
前記X線検出器を移動するための検出器移動機構と、
前記X線検査装置の動作を制御するための制御手段とを備え、
前記制御手段は、
X線を用いる複数の撮像条件の各々に従って対象物を撮像することにより得られる各投影画像に基づいて、各前記検出面で受光されるX線画像を再構成することにより得られる前記対象物の再構成画像から、アーチファクトを認識するためのアーチファクト認識手段と、
前記アーチファクト認識手段によって認識されたアーチファクトを特定するための情報を取得するための特定情報取得手段とを含む、X線検査装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記特定するための情報に基づいて、前記対象物と同じ種類の対象物をX線撮像することにより得られる投影画像から、前記認識されたアーチファクトが除去された検査用画像を取得するための検査画像取得手段をさらに含む、請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記アーチファクト認識手段は、
前記複数の撮像条件のうちの第1の撮像条件に従って前記対象物を複数回撮像することにより得られる複数の画像から、前記対象物の第1の画像を再構成するための第1の再構成手段と、
前記複数の撮像条件のうちの第2の撮像条件に従って前記対象物を複数回撮像することにより得られる複数の画像から、前記対象物の第2の画像を再構成するための第2の再構成手段と、
前記第1の画像と前記第2の画像とに基づいて前記アーチファクトを抽出するための抽出手段とを含む、請求項1または2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記認識されたアーチファクトを含む再構成画像を表示するための表示手段をさらに備える、請求項1〜3のいずれかに記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記認識されたアーチファクトを含む再構成画像が得られた撮像条件と異なる撮像条件の入力を受け付けるための入力手段と、
入力された異なる撮像条件を格納するための記憶手段とをさらに備え、
前記制御手段は、
前記異なる撮像条件を用いて、前記対象物を撮像するように、前記X線源と前記X線検出器と前記対象物移動機構と前記検出器移動機構とを制御するための検査手段を含む、請求項1〜4のいずれかに記載のX線検査装置。
【請求項6】
前記表示手段は、前記認識されたアーチファクトと、前記対象物を構成する部品に対応する正常画像とを識別可能に表示する、請求項1〜5のいずれかに記載のX線検査装置。
【請求項7】
前記特定するための情報は、
前記認識されたアーチファクトの前記再構成画像における位置情報と、
前記対象物の良否を判定するための輝度の閾値と、
アーチファクトが認識されない撮像条件とのいずれかを含む、請求項1〜6のいずれかに記載のX線検査装置。
【請求項8】
対象物の検査対象領域を透過したX線を複数の検出面で受光することにより、前記検査対象領域の像の再構成処理を実行するためのX線検査装置の制御方法であって、
前記X線検査装置は、
前記X線検査装置における前記対象物の位置を移動するための対象物移動機構と、
前記対象物にX線を照射するためのX線源と、
前記検査対象領域を透過したX線を撮像するためのX線検出器と、
前記X線検出器を移動するための検出器移動機構とを備えており、
前記制御方法は、
前記X線検査装置が、X線を用いる複数の撮像条件の各々に従って対象物を撮像することにより得られる各投影画像に基づいて、各前記検出面で受光されるX線画像を再構成することにより得られる前記対象物の再構成画像から、アーチファクトを認識するステップと、
前記X線検査装置が、前記認識されたアーチファクトを特定するための情報を取得するステップとを含む、X線検査装置の制御方法。
【請求項9】
前記X線検査装置が、前記特定するための情報に基づいて、前記対象物と同じ種類の対象物をX線撮像することにより得られる投影画像から、前記認識されたアーチファクトが除去された検査用画像を取得するステップをさらに含む、請求項8に記載のX線検査装置の制御方法。
【請求項10】
前記アーチファクトを認識するステップは、
前記複数の撮像条件のうちの第1の撮像条件に従って前記対象物を複数回撮像することにより得られる複数の画像から、前記対象物の第1の画像を再構成するステップと、
前記複数の撮像条件のうちの第2の撮像条件に従って前記対象物を複数回撮像することにより得られる複数の画像から、前記対象物の第2の画像を再構成するステップと、
前記第1の画像と前記第2の画像とに基づいて前記アーチファクトを抽出するステップとを含む、請求項8または9に記載のX線検査装置の制御方法。
【請求項11】
前記認識されたアーチファクトを含む再構成画像を表示するステップをさらに含む、請求項8〜10のいずれかに記載のX線検査装置の制御方法。
【請求項12】
前記X線検査装置が、前記認識されたアーチファクトを含む再構成画像が得られた撮像条件と異なる撮像条件の入力を受け付けるステップと、
前記X線検査装置が、入力された異なる撮像条件を記憶するステップと、
前記X線検査装置が、前記異なる撮像条件を用いて、前記対象物を撮像するように、前記X線源と前記X線検出器と前記対象物移動機構と前記検出器移動機構とを制御するステップとをさらに含む、請求項8〜11のいずれかに記載のX線検査装置の制御方法。
【請求項13】
前記表示するステップは、前記認識されたアーチファクトと、前記対象物を構成する部品に対応する正常画像とを識別可能に表示するステップとを含む、請求項8〜12のいずれかに記載のX線検査装置の制御方法。
【請求項14】
前記特定するための情報は、
前記認識されたアーチファクトの前記再構成画像における位置情報と、
前記対象物の良否を判定するための輝度の閾値と、
アーチファクトが認識されない撮像条件とのいずれかを含む、請求項8〜13のいずれかに記載のX線検査装置の制御方法。
【請求項15】
対象物の検査対象領域を透過したX線を複数の検出面で受光することにより、前記検査対象領域の像の再構成処理を実行するためのX線検査装置を制御するためのプログラムであって、
前記X線検査装置は、
前記X線検査装置における前記対象物の位置を移動するための対象物移動機構と、
前記対象物にX線を照射するためのX線源と、
前記検査対象領域を透過したX線を撮像するためのX線検出器と、
前記X線検出器を移動するための検出器移動機構とを備えており、
前記プログラムは、前記X線検査装置に、
X線を用いる複数の撮像条件の各々に従って対象物を撮像することにより得られる各投影画像に基づいて、各前記検出面で受光されるX線画像を再構成することにより得られる前記対象物の再構成画像から、アーチファクトを認識するステップと、
前記認識されたアーチファクトを特定するための情報を取得するステップとを実行させる、プログラム。
【請求項16】
前記プログラムは、前記X線検査装置に、
前記特定するための情報に基づいて、前記対象物と同じ種類の対象物をX線撮像することにより得られる投影画像から、前記認識されたアーチファクトが除去された検査用画像を取得するステップをさらに実行させる、請求項15に記載のプログラム。
【請求項17】
前記アーチファクトを認識するステップは、
前記複数の撮像条件のうちの第1の撮像条件に従って前記対象物を複数回撮像することにより得られる複数の画像から、前記対象物の第1の画像を再構成するステップと、
前記複数の撮像条件のうちの第2の撮像条件に従って前記対象物を複数回撮像することにより得られる複数の画像から、前記対象物の第2の画像を再構成するステップと、
前記第1の画像と前記第2の画像とに基づいて前記アーチファクトを抽出するステップとを含む、請求項15または16に記載のプログラム。
【請求項18】
前記プログラムは、前記X線検査装置に、前記認識されたアーチファクトを含む再構成画像を表示するステップをさらに実行させる、請求項15〜17のいずれかに記載のプログラム。
【請求項19】
前記プログラムは、前記X線検査装置に、
前記認識されたアーチファクトを含む再構成画像が得られた撮像条件と異なる撮像条件の入力を受け付けるステップと、
入力された異なる撮像条件を記憶するステップと、
前記異なる撮像条件を用いて、前記対象物を撮像するように、前記X線源と前記X線検出器と前記対象物移動機構と前記検出器移動機構とを制御するステップとをさらに実行させる、請求項15〜18のいずれかに記載のプログラム。
【請求項20】
前記表示するステップは、前記認識されたアーチファクトと、前記対象物を構成する部品に対応する正常画像とを識別可能に表示するステップとを含む、請求項15〜18のいずれかに記載のプログラム。
【請求項21】
前記特定するための情報は、
前記認識されたアーチファクトの前記再構成画像における位置情報と、
前記対象物の良否を判定するための輝度の閾値と、
アーチファクトが認識されない撮像条件とのいずれかを含む、請求項15〜20のいずれかに記載のプログラム。
【請求項22】
請求項15〜21のいずれかに記載のプログラムを格納した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項1】
対象物の検査対象領域を透過したX線を複数の検出面で受光することにより、前記検査対象領域の像の再構成処理を実行するためのX線検査装置であって、
前記X線検査装置における前記対象物の位置を移動するための対象物移動機構と、
前記対象物にX線を照射するためのX線源と、
前記検査対象領域を透過したX線を撮像するためのX線検出器と、
前記X線検出器を移動するための検出器移動機構と、
前記X線検査装置の動作を制御するための制御手段とを備え、
前記制御手段は、
X線を用いる複数の撮像条件の各々に従って対象物を撮像することにより得られる各投影画像に基づいて、各前記検出面で受光されるX線画像を再構成することにより得られる前記対象物の再構成画像から、アーチファクトを認識するためのアーチファクト認識手段と、
前記アーチファクト認識手段によって認識されたアーチファクトを特定するための情報を取得するための特定情報取得手段とを含む、X線検査装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記特定するための情報に基づいて、前記対象物と同じ種類の対象物をX線撮像することにより得られる投影画像から、前記認識されたアーチファクトが除去された検査用画像を取得するための検査画像取得手段をさらに含む、請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記アーチファクト認識手段は、
前記複数の撮像条件のうちの第1の撮像条件に従って前記対象物を複数回撮像することにより得られる複数の画像から、前記対象物の第1の画像を再構成するための第1の再構成手段と、
前記複数の撮像条件のうちの第2の撮像条件に従って前記対象物を複数回撮像することにより得られる複数の画像から、前記対象物の第2の画像を再構成するための第2の再構成手段と、
前記第1の画像と前記第2の画像とに基づいて前記アーチファクトを抽出するための抽出手段とを含む、請求項1または2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記認識されたアーチファクトを含む再構成画像を表示するための表示手段をさらに備える、請求項1〜3のいずれかに記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記認識されたアーチファクトを含む再構成画像が得られた撮像条件と異なる撮像条件の入力を受け付けるための入力手段と、
入力された異なる撮像条件を格納するための記憶手段とをさらに備え、
前記制御手段は、
前記異なる撮像条件を用いて、前記対象物を撮像するように、前記X線源と前記X線検出器と前記対象物移動機構と前記検出器移動機構とを制御するための検査手段を含む、請求項1〜4のいずれかに記載のX線検査装置。
【請求項6】
前記表示手段は、前記認識されたアーチファクトと、前記対象物を構成する部品に対応する正常画像とを識別可能に表示する、請求項1〜5のいずれかに記載のX線検査装置。
【請求項7】
前記特定するための情報は、
前記認識されたアーチファクトの前記再構成画像における位置情報と、
前記対象物の良否を判定するための輝度の閾値と、
アーチファクトが認識されない撮像条件とのいずれかを含む、請求項1〜6のいずれかに記載のX線検査装置。
【請求項8】
対象物の検査対象領域を透過したX線を複数の検出面で受光することにより、前記検査対象領域の像の再構成処理を実行するためのX線検査装置の制御方法であって、
前記X線検査装置は、
前記X線検査装置における前記対象物の位置を移動するための対象物移動機構と、
前記対象物にX線を照射するためのX線源と、
前記検査対象領域を透過したX線を撮像するためのX線検出器と、
前記X線検出器を移動するための検出器移動機構とを備えており、
前記制御方法は、
前記X線検査装置が、X線を用いる複数の撮像条件の各々に従って対象物を撮像することにより得られる各投影画像に基づいて、各前記検出面で受光されるX線画像を再構成することにより得られる前記対象物の再構成画像から、アーチファクトを認識するステップと、
前記X線検査装置が、前記認識されたアーチファクトを特定するための情報を取得するステップとを含む、X線検査装置の制御方法。
【請求項9】
前記X線検査装置が、前記特定するための情報に基づいて、前記対象物と同じ種類の対象物をX線撮像することにより得られる投影画像から、前記認識されたアーチファクトが除去された検査用画像を取得するステップをさらに含む、請求項8に記載のX線検査装置の制御方法。
【請求項10】
前記アーチファクトを認識するステップは、
前記複数の撮像条件のうちの第1の撮像条件に従って前記対象物を複数回撮像することにより得られる複数の画像から、前記対象物の第1の画像を再構成するステップと、
前記複数の撮像条件のうちの第2の撮像条件に従って前記対象物を複数回撮像することにより得られる複数の画像から、前記対象物の第2の画像を再構成するステップと、
前記第1の画像と前記第2の画像とに基づいて前記アーチファクトを抽出するステップとを含む、請求項8または9に記載のX線検査装置の制御方法。
【請求項11】
前記認識されたアーチファクトを含む再構成画像を表示するステップをさらに含む、請求項8〜10のいずれかに記載のX線検査装置の制御方法。
【請求項12】
前記X線検査装置が、前記認識されたアーチファクトを含む再構成画像が得られた撮像条件と異なる撮像条件の入力を受け付けるステップと、
前記X線検査装置が、入力された異なる撮像条件を記憶するステップと、
前記X線検査装置が、前記異なる撮像条件を用いて、前記対象物を撮像するように、前記X線源と前記X線検出器と前記対象物移動機構と前記検出器移動機構とを制御するステップとをさらに含む、請求項8〜11のいずれかに記載のX線検査装置の制御方法。
【請求項13】
前記表示するステップは、前記認識されたアーチファクトと、前記対象物を構成する部品に対応する正常画像とを識別可能に表示するステップとを含む、請求項8〜12のいずれかに記載のX線検査装置の制御方法。
【請求項14】
前記特定するための情報は、
前記認識されたアーチファクトの前記再構成画像における位置情報と、
前記対象物の良否を判定するための輝度の閾値と、
アーチファクトが認識されない撮像条件とのいずれかを含む、請求項8〜13のいずれかに記載のX線検査装置の制御方法。
【請求項15】
対象物の検査対象領域を透過したX線を複数の検出面で受光することにより、前記検査対象領域の像の再構成処理を実行するためのX線検査装置を制御するためのプログラムであって、
前記X線検査装置は、
前記X線検査装置における前記対象物の位置を移動するための対象物移動機構と、
前記対象物にX線を照射するためのX線源と、
前記検査対象領域を透過したX線を撮像するためのX線検出器と、
前記X線検出器を移動するための検出器移動機構とを備えており、
前記プログラムは、前記X線検査装置に、
X線を用いる複数の撮像条件の各々に従って対象物を撮像することにより得られる各投影画像に基づいて、各前記検出面で受光されるX線画像を再構成することにより得られる前記対象物の再構成画像から、アーチファクトを認識するステップと、
前記認識されたアーチファクトを特定するための情報を取得するステップとを実行させる、プログラム。
【請求項16】
前記プログラムは、前記X線検査装置に、
前記特定するための情報に基づいて、前記対象物と同じ種類の対象物をX線撮像することにより得られる投影画像から、前記認識されたアーチファクトが除去された検査用画像を取得するステップをさらに実行させる、請求項15に記載のプログラム。
【請求項17】
前記アーチファクトを認識するステップは、
前記複数の撮像条件のうちの第1の撮像条件に従って前記対象物を複数回撮像することにより得られる複数の画像から、前記対象物の第1の画像を再構成するステップと、
前記複数の撮像条件のうちの第2の撮像条件に従って前記対象物を複数回撮像することにより得られる複数の画像から、前記対象物の第2の画像を再構成するステップと、
前記第1の画像と前記第2の画像とに基づいて前記アーチファクトを抽出するステップとを含む、請求項15または16に記載のプログラム。
【請求項18】
前記プログラムは、前記X線検査装置に、前記認識されたアーチファクトを含む再構成画像を表示するステップをさらに実行させる、請求項15〜17のいずれかに記載のプログラム。
【請求項19】
前記プログラムは、前記X線検査装置に、
前記認識されたアーチファクトを含む再構成画像が得られた撮像条件と異なる撮像条件の入力を受け付けるステップと、
入力された異なる撮像条件を記憶するステップと、
前記異なる撮像条件を用いて、前記対象物を撮像するように、前記X線源と前記X線検出器と前記対象物移動機構と前記検出器移動機構とを制御するステップとをさらに実行させる、請求項15〜18のいずれかに記載のプログラム。
【請求項20】
前記表示するステップは、前記認識されたアーチファクトと、前記対象物を構成する部品に対応する正常画像とを識別可能に表示するステップとを含む、請求項15〜18のいずれかに記載のプログラム。
【請求項21】
前記特定するための情報は、
前記認識されたアーチファクトの前記再構成画像における位置情報と、
前記対象物の良否を判定するための輝度の閾値と、
アーチファクトが認識されない撮像条件とのいずれかを含む、請求項15〜20のいずれかに記載のプログラム。
【請求項22】
請求項15〜21のいずれかに記載のプログラムを格納した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図26】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図26】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2013−61280(P2013−61280A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200768(P2011−200768)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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