X線測定装置の管理方法
【課題】 X線測定装置の管理方法に関し、測定系の変動やサンプルの変化を早期に且つ的確に発見する。
【解決手段】 X線源4からの直接X線5を検出する点検用検出器1と、X線源4から試料を介した測定対象X線6を検出する測定用検出器2との2つのX線強度検出器のそれぞれの特性を測定し、測定結果に基づき測定用検出器2の安定性を確認する。
【解決手段】 X線源4からの直接X線5を検出する点検用検出器1と、X線源4から試料を介した測定対象X線6を検出する測定用検出器2との2つのX線強度検出器のそれぞれの特性を測定し、測定結果に基づき測定用検出器2の安定性を確認する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はX線測定装置の管理方法に関するものであり、特に、X線検出器を2つ備えたX線測定装置おける装置変動を的確に見極めるための構成に特徴のあるX線測定装置の管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より各種の試料の結晶配向性、膜厚検出、或いは、組成分析のために各種のX線測定装置が用いられているが、例えば、強誘電体半導体装置の特性は強誘電体として用いるPZT等の結晶性に強く依存するため、PZT等の結晶配向性を測定する必要がある。
【0003】
このような、結晶の配向性を評価するためにはX線回折法を用いているが、X線回折装置は測定時やセッティング時の機械的振動・衝撃により光軸がずれたりして装置変動が発生する場合があり、安定した測定を行うためには、装置変動が発生しているか否かを測定前に確認する必要がある。
【0004】
このようなX線回折装置の点検は一般的に同一のウェーハをサンプルとして用いて定期的に異常が無いかどうかを確認する。
しかし、X線回折装置の場合、X線管球が時間とともに劣化してX線強度が低下し続けるので、単一の検出器だけであると、X線回折強度が下がった場合、X線管球が劣化しているのか、検出器の傾き等の他の原因で強度が低下しているのかが判断できない。
【0005】
また、同一のウェーハをサンプルとして用いていても、定期的点検作業において、X線がウェーハ面に照射されるため、ウェーハ面の結晶状態が経時的に変化するため、点検作業においてX線回折強度が下がった場合、X線管球が劣化しているのか、ウェーハが変化しているのかが判断できない。
【0006】
そこで、この様な問題を回避するために、X線管球自体の劣化を確認するためにもう一つの検出器を設け、ダイレクトにX線強度の低下具合を確認する方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)ので、この様子を図10及び図11を参照して説明する。
【0007】
図10参照
図10は、第1の検出器で得られるX線の回折強度と第2の検出器で得られるダイレクト強度の説明図であり、第1の検出器で得られるX線の回折強度と第2の検出器で得られるダイレクト強度を比較したときに、測定系及びサンプルに変化が無ければ経時的に同じ下降傾向を示す。
【0008】
図11参照
図11は、第1の検出器と第2の検出器のX線強度比の説明図であり、第1の検出器と第2の検出器のX線強度比で確認すると、測定系及びサンプルの異常が無ければ強度の低下具合が同じで、グラフは図11に示すように時間が経過しても一定となるはずであるため、第2の検出器が傾く等の測定系に何らかの変動があれば、グラフが上昇または下降するため異常を早期に発見することができる。
【0009】
このように、X線回折測定器の管理においては、定期的にサンプルを測定することで、測定器が変動しているか否かを認識している。
【特許文献1】特表2002−529699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、二つの検出器の型格が異なる場合は感度が異なり、両方の検出器で得られるX線強度の低下具合が違ってくるため、測定した強度比がずれたからといって一概に測定器の変動とは言えないという問題がある。
【0011】
また、同じ型格の検出器である場合にも、検出器の個体差及び劣化具合が異なるためズレが生じてしまう可能性は高く、強度比が変動しても測定系が変動しているのか、単にX線管球の劣化なのかが判断できないという問題がある。
【0012】
したがって、本発明は、測定系の変動やサンプルの変化を早期に且つ的確に発見することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
図1は本発明の原理的構成図であり、ここで図1を参照して、本発明における課題を解決するための手段を説明する。
図1参照
上記の課題を解決するために、本発明は、X線測定装置の管理方法において、X線源4からの直接X線5を検出する点検用検出器1と、X線源4から試料を介した測定対象X線6を検出する測定用検出器2との2つのX線強度検出器のそれぞれの特性を測定し、測定結果に基づき測定用検出器2の安定性を確認することを特徴とする。
【0014】
このように、実際の測定に使用する測定用検出器2とは別に、X線源4からの直接X線5を検出する点検用検出器1を用い、両者の特性を測定し、測定結果を用いることによって、測定用検出器2の特性の安定性を確認することができるとともに、測定結果の変動によって、X線源4を含めた測定系変動やサンプル3の変化を早期に且つ的確に発見することができる。
【0015】
この場合、点検用検出器1で測定したX線強度と測定用検出器2で検出した調整用試料を介したX線強度の比を求めることによって、その比の変動から装置変動を見い出すことができる。
【0016】
また、点検用検出器1と測定用検出器2とが互いに異なった仕様のX線強度検出器である場合には、点検用検出器1で測定したX線強度と測定用検出器2で検出した調整用試料を介したX線強度の比が一定になるように強度補正を行えば良く、それによって、一定になるように補正したX線強度の比の変動から装置変動を見い出すことができる。
【0017】
この場合、各X線強度をX線源4の出力を例えば、X線のパワーをMaxからMinに変化させ、パワーの変化毎のX線強度を測定し、X線強度の比が一定になるように補正すれば良い。
【0018】
なお、点検用検出器1は、測定用検出器2を搭載したX線測定装置に備えられていることが望ましく、それによって、点検作業に伴って測定用検出器2の設定を変動する必要がないので、点検作業を効率的に行うことが可能になるとともに、その後の実際の測定作業をスムーズに行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、装置の点検作業に際して二つの検出器を用いているので、それぞれの検出器でX線強度を測定することで測定用検出器の状態が把握でき、サンプルの変動なのか測定系の異常なのかを的確に判断することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、X線源からの直接X線を検出する点検用検出器と、X線源から試料を介した測定対象X線を検出する測定用検出器との2つのX線強度検出器のそれぞれの特性を測定し、特に、点検用検出器と測定用検出器とが互いに異なった仕様のX線強度検出器である場合には、X線源の出力を例えば、X線のパワーをMaxからMinに変化させ、パワーの変化毎のX線強度を測定し、点検用検出器で測定したX線強度と測定用検出器で検出したX線強度の比が一定になるように強度補正を行い、比が一定になるように補正した結果を利用して点検作業を行い、測定用検出器の状態を把握し、サンプルの変動や測定系の異常の発生を的確に把握するものである。
【実施例1】
【0021】
ここで、図2乃至図6を参照して、本発明の実施例1のX線回折装置の点検方法を説明する。
図2参照
図2は、本発明の実施例1に用いるX線回折装置の概念的構成図であり、X線管球11、測定用試料を載置するステージ12、試料からの回折X線を検出するための測定用検出器13、X線管球11からの直接X線14を検出する点検用検出器15、及び、点検時に用いるサンプルウェーハ16から構成される。
なお、この装置の基本的構成自体は従来のX線回折装置と同じであるが、測定用検出器13と点検用検出器15の型格が同じであり、したがって、感度等のX線検出特性は基本的に同じである。
【0022】
図3参照
図3は、本発明の実施例1に用いるX線回折装置に備えられたX線管球11のX線強度の経時特性図であり、この場合も従来と全く同様に、X線管球11が時間とともに劣化してくるので、X線強度が低下し続ける。
【0023】
従来のX線回折装置の点検においては、上述のように、同一のサンプルウェーハ16を用いて定期的にサンプルウェーハ16からの回折X線17を検出して異常が無いかどうかを確認している。
【0024】
しかし、測定用検出器13により検出したX線回折強度が以前の測定結果よりも低下した場合、X線管球11の劣化による強度低下であるのか、X線管球11及び測定用検出器13を含めた測定系における機械的設定のズレ等の他の原因で強度が低下しているのか、或いは、サンプルウェーハ16の表面状態が度重なる点検時におけるX線照射により変化しているためであるのかが判断できない。
【0025】
そこで、これを回避するために、本発明の実施例1においては、X線回折装置に備えられている点検用検出器11により、X線管球11からの直接X線14を測定してX線管球11自体の劣化を確認する。
【0026】
次いで、測定用検出器13によりサンプルウェーハ16からの回折X線17を検出し、直接X線強度と回折X線強度との強度比が、以前に測定した強度比と同じであれば、測定系及びサンプルウェーハ16に変化がないと判断する。
【0027】
図4参照
即ち、図3に示したように、X線管球11が劣化して経時的にX線強度が低下した場合、測定系及びサンプルウェーハ16に変化がない場合、図4に示すように回折X線強度は直接X線強度と同じ下降傾向を示す。
【0028】
図5参照
そこで、直接X線強度と回折X線強度との強度比をとると、測定系及びサンプルウェーハ16に変化がない場合には、図5に示すように経時的に一定になる。
したがって、定期的な点検において強度比が従来と同じ場合には、そのまま実際の測定を行う。
【0029】
図6参照
このような状態から、図6に示すようにグラフが上昇または下降した場合には、測定系或いはサンプルウェーハ16の少なくとも一方に変化が生じたことになるので、サンプルウェーハ16の交換や測定系の調整を行って正常状態に復帰させてから、実際の測定を開始する。
【0030】
このように、本発明の実施例1においては、X線回折装置に、点検用と測定用との2つの検出器を備え、直接X線強度と回折X線強度との強度比により測定系の安定を確認するとともに、測定系及びサンプルウェーハの変化を点検しているので、常に正常な状態でX線回折測定を行うことができる。
【実施例2】
【0031】
次に、図7乃至図9を参照して、本発明の実施例2のX線回折装置の点検方法を説明するが、この実施例2においては、点検用検出器と測定用検出器の型格が互いに異なる場合のを前提としている。
【0032】
この場合、点検用検出器と測定用検出器の型格の違いにより各X線パワーに対する感度特性が異なるため、X線管球の劣化に伴ってX線パワーが低下した場合、点検用検出器と測定用検出器とで検出したX線強度の低下率が異なることになる。
したがって、そのまま実際の測定を行った場合には、測定用検出器による回折X線強度が以前の測定と同じ状態における測定値を反映していないことになる。
【0033】
そこで、定期的に行う点検作業に先立って、X線管球11を交換した最初の段階で、まず、X線管球11に印加するパワーを例えば、MaxからMinに変化させ、パワーの変化毎の直接X線強度を点検用検出器15で検出する。
次いで、X線管球11に印加するパワーを全く同様にMaxからMinに変化させ、パワーの変化毎の回折X線線強度を測定用検出器13で検出する。
【0034】
図7参照
図7は、点検用検出器と測定用検出器の感度特性の説明図であり、上述のように、点検用検出器と測定用検出器の型格の違いにより各X線パワーに対する感度特性が異なるため、グラフにおける勾配が互いに異なることになる。
【0035】
図8参照
この直接X線強度を回折X線強度との強度比を取ると、図8に示すように一定ではなくなるので、この強度比が一定になるように補正値を求め、その求めた補正値を用いてX線回折装置の点検を行う。
【0036】
図9参照
次いで、定期点検においては、上述の補正値を用いて補正した直接X線強度と回折X線強度との強度比が図9に示すように一定にならない場合には、計測系或いはサンプルウェーハに何らかの異常があると判断することができる。
【0037】
このように、本発明の実施例2においては、装置設定初期にX線管球に印加するパワーを変化させ、パワーの変化毎の直接X線強度と回折X線強度を測定しているので、点検用検出器と測定用検出器の型格が異なっている場合にも、的確に計測系或いはサンプルウェーハの異常を発見することができる。
【0038】
以上、本発明の各実施例を説明してきたが、本発明は各実施例に記載された構成・条件等に限られるものではなく各種の変更が可能であり、例えば、上記の実施例1のように点検用検出器と測定用検出器の型格が同じ場合にも、個体差や劣化具合でも生じるケースがあるので、上記の実施例2と同様の構成を採用しても良いものである。
【0039】
即ち、点検用検出器と測定用検出器の型格が同じ場合にも、予めX線管球に印加するパワーを変化させ、パワーの変化毎の直接X線強度と回折X線強度を測定して強度比が一定になるように、補正値を決定すれば良い。
【0040】
また、上記の各実施例においては、点検用検出器と測定用検出器の2つのX線検出器が備わっていることを前提としているが、測定用検出器のみが備わっているX線回折装置にも適用されるものである。
【0041】
その場合には、ゴニオメータに設置している測定用検出器を移動させてサンプルに対する入射角が0°になるように設置して、直接X線を測定するようにすれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の活用例としては、X線回折装置の管理方法が典型的なものであるが、X線回折装置に限られるものではなく、反射X線測定装置或いは蛍光X線測定装置等の他のX線測定装置にも適用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の原理的構成の説明図である。
【図2】本発明の実施例1に用いるX線回折装置の概念的構成図である。
【図3】本発明の実施例1に用いるX線回折装置に備えられたX線管球のX線強度の経時特性図である。
【図4】回折X線強度の経時変化の説明図である。
【図5】直接X線強度と回折X線強度との強度比の経時変化の説明図である。
【図6】異常が発生した場合の直接X線強度と回折X線強度との強度比の経時変化の説明図である。
【図7】本発明の実施例2における点検用検出器と測定用検出器の感度特性の説明図である。
【図8】本発明の実施例2における直接X線強度を回折X線強度との強度比の説明図である。
【図9】本発明の実施例2における異常が発生した場合の直接X線強度と回折X線強度との強度比の経時変化の説明図である。
【図10】第1の検出器で得られるX線の回折強度と第2の検出器で得られるダイレクト強度の経時変化の説明図である。
【図11】第1の検出器と第2の検出器のX線強度比の経時変化の説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1 点検用検出器
2 測定用検出器
3 サンプル
4 X線源
5 直接X線
6 測定対象X線
11 X線管球
12 ステージ
13 測定用検出器
14 直接X線
15 点検用検出器
16 サンプルウェーハ
17 回折X線
【技術分野】
【0001】
本発明はX線測定装置の管理方法に関するものであり、特に、X線検出器を2つ備えたX線測定装置おける装置変動を的確に見極めるための構成に特徴のあるX線測定装置の管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より各種の試料の結晶配向性、膜厚検出、或いは、組成分析のために各種のX線測定装置が用いられているが、例えば、強誘電体半導体装置の特性は強誘電体として用いるPZT等の結晶性に強く依存するため、PZT等の結晶配向性を測定する必要がある。
【0003】
このような、結晶の配向性を評価するためにはX線回折法を用いているが、X線回折装置は測定時やセッティング時の機械的振動・衝撃により光軸がずれたりして装置変動が発生する場合があり、安定した測定を行うためには、装置変動が発生しているか否かを測定前に確認する必要がある。
【0004】
このようなX線回折装置の点検は一般的に同一のウェーハをサンプルとして用いて定期的に異常が無いかどうかを確認する。
しかし、X線回折装置の場合、X線管球が時間とともに劣化してX線強度が低下し続けるので、単一の検出器だけであると、X線回折強度が下がった場合、X線管球が劣化しているのか、検出器の傾き等の他の原因で強度が低下しているのかが判断できない。
【0005】
また、同一のウェーハをサンプルとして用いていても、定期的点検作業において、X線がウェーハ面に照射されるため、ウェーハ面の結晶状態が経時的に変化するため、点検作業においてX線回折強度が下がった場合、X線管球が劣化しているのか、ウェーハが変化しているのかが判断できない。
【0006】
そこで、この様な問題を回避するために、X線管球自体の劣化を確認するためにもう一つの検出器を設け、ダイレクトにX線強度の低下具合を確認する方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)ので、この様子を図10及び図11を参照して説明する。
【0007】
図10参照
図10は、第1の検出器で得られるX線の回折強度と第2の検出器で得られるダイレクト強度の説明図であり、第1の検出器で得られるX線の回折強度と第2の検出器で得られるダイレクト強度を比較したときに、測定系及びサンプルに変化が無ければ経時的に同じ下降傾向を示す。
【0008】
図11参照
図11は、第1の検出器と第2の検出器のX線強度比の説明図であり、第1の検出器と第2の検出器のX線強度比で確認すると、測定系及びサンプルの異常が無ければ強度の低下具合が同じで、グラフは図11に示すように時間が経過しても一定となるはずであるため、第2の検出器が傾く等の測定系に何らかの変動があれば、グラフが上昇または下降するため異常を早期に発見することができる。
【0009】
このように、X線回折測定器の管理においては、定期的にサンプルを測定することで、測定器が変動しているか否かを認識している。
【特許文献1】特表2002−529699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、二つの検出器の型格が異なる場合は感度が異なり、両方の検出器で得られるX線強度の低下具合が違ってくるため、測定した強度比がずれたからといって一概に測定器の変動とは言えないという問題がある。
【0011】
また、同じ型格の検出器である場合にも、検出器の個体差及び劣化具合が異なるためズレが生じてしまう可能性は高く、強度比が変動しても測定系が変動しているのか、単にX線管球の劣化なのかが判断できないという問題がある。
【0012】
したがって、本発明は、測定系の変動やサンプルの変化を早期に且つ的確に発見することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
図1は本発明の原理的構成図であり、ここで図1を参照して、本発明における課題を解決するための手段を説明する。
図1参照
上記の課題を解決するために、本発明は、X線測定装置の管理方法において、X線源4からの直接X線5を検出する点検用検出器1と、X線源4から試料を介した測定対象X線6を検出する測定用検出器2との2つのX線強度検出器のそれぞれの特性を測定し、測定結果に基づき測定用検出器2の安定性を確認することを特徴とする。
【0014】
このように、実際の測定に使用する測定用検出器2とは別に、X線源4からの直接X線5を検出する点検用検出器1を用い、両者の特性を測定し、測定結果を用いることによって、測定用検出器2の特性の安定性を確認することができるとともに、測定結果の変動によって、X線源4を含めた測定系変動やサンプル3の変化を早期に且つ的確に発見することができる。
【0015】
この場合、点検用検出器1で測定したX線強度と測定用検出器2で検出した調整用試料を介したX線強度の比を求めることによって、その比の変動から装置変動を見い出すことができる。
【0016】
また、点検用検出器1と測定用検出器2とが互いに異なった仕様のX線強度検出器である場合には、点検用検出器1で測定したX線強度と測定用検出器2で検出した調整用試料を介したX線強度の比が一定になるように強度補正を行えば良く、それによって、一定になるように補正したX線強度の比の変動から装置変動を見い出すことができる。
【0017】
この場合、各X線強度をX線源4の出力を例えば、X線のパワーをMaxからMinに変化させ、パワーの変化毎のX線強度を測定し、X線強度の比が一定になるように補正すれば良い。
【0018】
なお、点検用検出器1は、測定用検出器2を搭載したX線測定装置に備えられていることが望ましく、それによって、点検作業に伴って測定用検出器2の設定を変動する必要がないので、点検作業を効率的に行うことが可能になるとともに、その後の実際の測定作業をスムーズに行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、装置の点検作業に際して二つの検出器を用いているので、それぞれの検出器でX線強度を測定することで測定用検出器の状態が把握でき、サンプルの変動なのか測定系の異常なのかを的確に判断することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、X線源からの直接X線を検出する点検用検出器と、X線源から試料を介した測定対象X線を検出する測定用検出器との2つのX線強度検出器のそれぞれの特性を測定し、特に、点検用検出器と測定用検出器とが互いに異なった仕様のX線強度検出器である場合には、X線源の出力を例えば、X線のパワーをMaxからMinに変化させ、パワーの変化毎のX線強度を測定し、点検用検出器で測定したX線強度と測定用検出器で検出したX線強度の比が一定になるように強度補正を行い、比が一定になるように補正した結果を利用して点検作業を行い、測定用検出器の状態を把握し、サンプルの変動や測定系の異常の発生を的確に把握するものである。
【実施例1】
【0021】
ここで、図2乃至図6を参照して、本発明の実施例1のX線回折装置の点検方法を説明する。
図2参照
図2は、本発明の実施例1に用いるX線回折装置の概念的構成図であり、X線管球11、測定用試料を載置するステージ12、試料からの回折X線を検出するための測定用検出器13、X線管球11からの直接X線14を検出する点検用検出器15、及び、点検時に用いるサンプルウェーハ16から構成される。
なお、この装置の基本的構成自体は従来のX線回折装置と同じであるが、測定用検出器13と点検用検出器15の型格が同じであり、したがって、感度等のX線検出特性は基本的に同じである。
【0022】
図3参照
図3は、本発明の実施例1に用いるX線回折装置に備えられたX線管球11のX線強度の経時特性図であり、この場合も従来と全く同様に、X線管球11が時間とともに劣化してくるので、X線強度が低下し続ける。
【0023】
従来のX線回折装置の点検においては、上述のように、同一のサンプルウェーハ16を用いて定期的にサンプルウェーハ16からの回折X線17を検出して異常が無いかどうかを確認している。
【0024】
しかし、測定用検出器13により検出したX線回折強度が以前の測定結果よりも低下した場合、X線管球11の劣化による強度低下であるのか、X線管球11及び測定用検出器13を含めた測定系における機械的設定のズレ等の他の原因で強度が低下しているのか、或いは、サンプルウェーハ16の表面状態が度重なる点検時におけるX線照射により変化しているためであるのかが判断できない。
【0025】
そこで、これを回避するために、本発明の実施例1においては、X線回折装置に備えられている点検用検出器11により、X線管球11からの直接X線14を測定してX線管球11自体の劣化を確認する。
【0026】
次いで、測定用検出器13によりサンプルウェーハ16からの回折X線17を検出し、直接X線強度と回折X線強度との強度比が、以前に測定した強度比と同じであれば、測定系及びサンプルウェーハ16に変化がないと判断する。
【0027】
図4参照
即ち、図3に示したように、X線管球11が劣化して経時的にX線強度が低下した場合、測定系及びサンプルウェーハ16に変化がない場合、図4に示すように回折X線強度は直接X線強度と同じ下降傾向を示す。
【0028】
図5参照
そこで、直接X線強度と回折X線強度との強度比をとると、測定系及びサンプルウェーハ16に変化がない場合には、図5に示すように経時的に一定になる。
したがって、定期的な点検において強度比が従来と同じ場合には、そのまま実際の測定を行う。
【0029】
図6参照
このような状態から、図6に示すようにグラフが上昇または下降した場合には、測定系或いはサンプルウェーハ16の少なくとも一方に変化が生じたことになるので、サンプルウェーハ16の交換や測定系の調整を行って正常状態に復帰させてから、実際の測定を開始する。
【0030】
このように、本発明の実施例1においては、X線回折装置に、点検用と測定用との2つの検出器を備え、直接X線強度と回折X線強度との強度比により測定系の安定を確認するとともに、測定系及びサンプルウェーハの変化を点検しているので、常に正常な状態でX線回折測定を行うことができる。
【実施例2】
【0031】
次に、図7乃至図9を参照して、本発明の実施例2のX線回折装置の点検方法を説明するが、この実施例2においては、点検用検出器と測定用検出器の型格が互いに異なる場合のを前提としている。
【0032】
この場合、点検用検出器と測定用検出器の型格の違いにより各X線パワーに対する感度特性が異なるため、X線管球の劣化に伴ってX線パワーが低下した場合、点検用検出器と測定用検出器とで検出したX線強度の低下率が異なることになる。
したがって、そのまま実際の測定を行った場合には、測定用検出器による回折X線強度が以前の測定と同じ状態における測定値を反映していないことになる。
【0033】
そこで、定期的に行う点検作業に先立って、X線管球11を交換した最初の段階で、まず、X線管球11に印加するパワーを例えば、MaxからMinに変化させ、パワーの変化毎の直接X線強度を点検用検出器15で検出する。
次いで、X線管球11に印加するパワーを全く同様にMaxからMinに変化させ、パワーの変化毎の回折X線線強度を測定用検出器13で検出する。
【0034】
図7参照
図7は、点検用検出器と測定用検出器の感度特性の説明図であり、上述のように、点検用検出器と測定用検出器の型格の違いにより各X線パワーに対する感度特性が異なるため、グラフにおける勾配が互いに異なることになる。
【0035】
図8参照
この直接X線強度を回折X線強度との強度比を取ると、図8に示すように一定ではなくなるので、この強度比が一定になるように補正値を求め、その求めた補正値を用いてX線回折装置の点検を行う。
【0036】
図9参照
次いで、定期点検においては、上述の補正値を用いて補正した直接X線強度と回折X線強度との強度比が図9に示すように一定にならない場合には、計測系或いはサンプルウェーハに何らかの異常があると判断することができる。
【0037】
このように、本発明の実施例2においては、装置設定初期にX線管球に印加するパワーを変化させ、パワーの変化毎の直接X線強度と回折X線強度を測定しているので、点検用検出器と測定用検出器の型格が異なっている場合にも、的確に計測系或いはサンプルウェーハの異常を発見することができる。
【0038】
以上、本発明の各実施例を説明してきたが、本発明は各実施例に記載された構成・条件等に限られるものではなく各種の変更が可能であり、例えば、上記の実施例1のように点検用検出器と測定用検出器の型格が同じ場合にも、個体差や劣化具合でも生じるケースがあるので、上記の実施例2と同様の構成を採用しても良いものである。
【0039】
即ち、点検用検出器と測定用検出器の型格が同じ場合にも、予めX線管球に印加するパワーを変化させ、パワーの変化毎の直接X線強度と回折X線強度を測定して強度比が一定になるように、補正値を決定すれば良い。
【0040】
また、上記の各実施例においては、点検用検出器と測定用検出器の2つのX線検出器が備わっていることを前提としているが、測定用検出器のみが備わっているX線回折装置にも適用されるものである。
【0041】
その場合には、ゴニオメータに設置している測定用検出器を移動させてサンプルに対する入射角が0°になるように設置して、直接X線を測定するようにすれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の活用例としては、X線回折装置の管理方法が典型的なものであるが、X線回折装置に限られるものではなく、反射X線測定装置或いは蛍光X線測定装置等の他のX線測定装置にも適用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の原理的構成の説明図である。
【図2】本発明の実施例1に用いるX線回折装置の概念的構成図である。
【図3】本発明の実施例1に用いるX線回折装置に備えられたX線管球のX線強度の経時特性図である。
【図4】回折X線強度の経時変化の説明図である。
【図5】直接X線強度と回折X線強度との強度比の経時変化の説明図である。
【図6】異常が発生した場合の直接X線強度と回折X線強度との強度比の経時変化の説明図である。
【図7】本発明の実施例2における点検用検出器と測定用検出器の感度特性の説明図である。
【図8】本発明の実施例2における直接X線強度を回折X線強度との強度比の説明図である。
【図9】本発明の実施例2における異常が発生した場合の直接X線強度と回折X線強度との強度比の経時変化の説明図である。
【図10】第1の検出器で得られるX線の回折強度と第2の検出器で得られるダイレクト強度の経時変化の説明図である。
【図11】第1の検出器と第2の検出器のX線強度比の経時変化の説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1 点検用検出器
2 測定用検出器
3 サンプル
4 X線源
5 直接X線
6 測定対象X線
11 X線管球
12 ステージ
13 測定用検出器
14 直接X線
15 点検用検出器
16 サンプルウェーハ
17 回折X線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源からの直接X線を検出する点検用検出器と、前記X線源から試料を介した測定対象X線を検出する測定用検出器との2つのX線強度検出器のそれぞれの特性を測定し、測定結果に基づき測定用検出器の安定性を確認することを特徴とするX線測定装置の管理方法。
【請求項2】
上記点検用検出器で測定したX線強度と上記測定用検出器で検出した調整用試料を介したX線強度の比を求め、前記比の変動から装置変動を見い出すことを特徴とする請求項1記載のX線測定装置の管理方法。
【請求項3】
上記点検用検出器と上記測定用検出器とが互いに異なった仕様のX線強度検出器であり、前記点検用検出器で測定したX線強度と前記測定用検出器で検出した調整用試料を介したX線強度の比が一定になるように強度補正を行い、前記比が一定になるように補正した比の変動から装置変動を見い出すことを特徴とする請求項1記載のX線測定装置の管理方法。
【請求項4】
上記各X線強度を上記X線源の出力を変動させて予め測定して、上記X線強度の比が一定になるように補正することを特徴とする請求項3記載のX線測定装置の管理方法。
【請求項5】
上記点検用検出器が、上記測定用検出器を搭載したX線測定装置に備えられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のX線測定装置の管理方法。
【請求項1】
X線源からの直接X線を検出する点検用検出器と、前記X線源から試料を介した測定対象X線を検出する測定用検出器との2つのX線強度検出器のそれぞれの特性を測定し、測定結果に基づき測定用検出器の安定性を確認することを特徴とするX線測定装置の管理方法。
【請求項2】
上記点検用検出器で測定したX線強度と上記測定用検出器で検出した調整用試料を介したX線強度の比を求め、前記比の変動から装置変動を見い出すことを特徴とする請求項1記載のX線測定装置の管理方法。
【請求項3】
上記点検用検出器と上記測定用検出器とが互いに異なった仕様のX線強度検出器であり、前記点検用検出器で測定したX線強度と前記測定用検出器で検出した調整用試料を介したX線強度の比が一定になるように強度補正を行い、前記比が一定になるように補正した比の変動から装置変動を見い出すことを特徴とする請求項1記載のX線測定装置の管理方法。
【請求項4】
上記各X線強度を上記X線源の出力を変動させて予め測定して、上記X線強度の比が一定になるように補正することを特徴とする請求項3記載のX線測定装置の管理方法。
【請求項5】
上記点検用検出器が、上記測定用検出器を搭載したX線測定装置に備えられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のX線測定装置の管理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−76201(P2008−76201A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255228(P2006−255228)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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