説明

X線照射装置及びその安全機構

【課題】 X線照射装置において、制御機構等に不具合を生じた場合にも、安全機構の各部品や回路の自己診断動作が阻害されない、信頼性の高いX線照射装置を提供する。
【解決手段】X線管球15に電力を供給するX線管球電源16、X線の照射対象を格納する試料室11を有するX線照射機構1と、X線照射機構1の動作を制御する制御機構2と、試料室11蓋12の開閉を検知する蓋センサ34、蓋センサ34からの出力信号に基づき、X線管球電源16への通電を禁止又は許可とするインターロック機構37を有する安全機構3とを備える。安全機構3は、制御機構2からの通信を受けることなく、制御機構2から独立して安全機構3の状態を自己診断する診断機構38を更に有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光X線分析装置、X線回折装置等のX線照射装置及びその安全機構に係り、特に安全機構を構成する部品や回路の自己診断に関する。
【背景技術】
【0002】
X線照射装置では、使用者のX線被爆を引き起こすX線漏洩を防止するために、X線照射エリアの蓋が開いている間はX線が照射されないようにする安全機構が必要である。このような安全機構には、万が一の故障時にも使用者を保護するために、
(a)単一の故障発生の際にも安全性が確保されること;
(b)単一の故障発生の段階で故障箇所を検知し、次の故障の発生前にシステムを停止すること、
の要件が望まれる。(a)の要件は、安全性のために設けられるセンサや回路等を二重化し、一方が故障しても、もう一方により安全性を確保できる設計とすることにより実現可能である。(b)の要件は、故障時には接点が切れてX線照射装置を停止するようにセンサ系の配線を行う方法、又は、マイコン等により故障診断を行い、故障を検出したらX線照射を停止するか、X線照射装置全体を停止し、X線照射操作を禁止するという方法で実現可能である。
【0003】
このため図5に示すように、従来のX線照射装置では、試料室11の蓋12を開けると、安全機構3の一部として設けられたインターロック機構37が作用して、X線Φの照射を禁止する。一方、X線管球電源16や蓋12の開閉動作を制御する制御マイコン21でも、蓋12の開閉を蓋センサ34によって監視する。もしも安全機構3の部品である蓋センサ34が故障した場合には、診断ソフトウェア351が異常を検知して、X線管球電源16への電力供給を停止する。
【0004】
このような安全機構3を構成する各部品や回路の自己診断を行う場合、制御マイコン21の制御ソフトウェア211によって蓋12の開閉を行い、診断ソフトウェア351が、蓋センサ34及びインターロック機構37の状態が正しく変化することを確認すればよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし図5に示す構成では、ソフトウェアに不具合があった場合などに、
(イ)制御ソフトウェア211が診断ソフトウェア351のメモリ領域を破壊することにより、誤った診断結果に到達する;
(ロ)制御ソフトウェア211の暴走により、診断ソフトウェア351が実行されない,
といった不具合が生じる危険性がある。特に制御ソフトウェアがパソコンと連携した場合、システムとしての状態数は非常に多くなるので、(イ)、(ロ)のような不具合が起こらないことをテストで証明することは極めて困難である。
【0006】
そこで本発明者は、図6に示すように、安全機構3の各部品や回路等の自己診断機能を、制御マイコン21とは別マイコンである診断マイコン35へ分け、制御機構2からの干渉による診断ソフトウェア351の動作阻害を回避する方法を検討した。図6に示す構造で自己診断動作を行う場合には、制御マイコン21により蓋12の開閉動作を行い、開状態・閉状態のそれぞれにおける蓋センサ34からの状態を示す信号と、安全機構を構成する各部品や回路の状態を示す信号とについて、診断マイコン35が診断を行う。もし何らかの不具合が検出されたら、安全機構3のいずれかの部品又は回路に異常があることになるので、診断マイコン35がX線Φの照射を停止すると同時に制御マイコン21へ通知することにより、X線照射装置のシステム全体の動作を停止する。
【0007】
しかし、図6の構成でも、
(i)制御マイコン21の、診断マイコン35へ蓋12の現在状態を伝達する機能に不具合がある場合、正しく自己診断を行うことができない;
(ii)制御マイコン21と診断マイコン35との間の通信に不具合がある場合、正しく自己診断を行うことができない;
(iii)インターロック機構37に不具合がある場合、自己診断で「蓋12が開いているときは、インターロック機構37によりX線管球電源16への電力供給を停止する」という処理を行うと、電力供給が停止されずX線漏洩の危険性がある、
ことが判明した。
【0008】
このような事情を鑑み、本発明は、制御機構等に不具合が生じた場合にも、安全機構の各部品や回路の自己診断動作が阻害されない、信頼性の高いX線照射装置及びその安全機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、X線管球に電力を供給するX線管球電源、X線の照射対象を格納する試料室を有するX線照射機構と、X線照射機構の動作を制御する制御機構と、試料室の蓋の開閉を検知する蓋センサ、蓋センサからの出力信号に基づき、X線管球電源への通電を禁止又は許可とするインターロック機構を有する安全機構とを備えるX線照射装置に関する。第1の態様に係るX線照射装置の安全機構は、制御機構からの通信を受けることなく、制御機構から独立して安全機構の状態を自己診断する診断機構を更に有する。
【0010】
本発明の第2の態様は、X線の照射対象を格納する試料室の蓋の開閉を検知する蓋センサ、蓋センサからの出力信号に基づいてX線管球に電力を供給するX線管球電源への通電を禁止又は許可とするインターロック機構を有するX線照射装置の安全機構に関する。第2の態様に係る安全機構は、制御機構からの通信を受けることなく、制御機構から独立して安全機構の状態を自己診断する診断機構を更に有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、制御機構等に不具合が生じた場合にも、安全機構の各部品や回路の自己診断動作が阻害されない、信頼性の高いX線照射装置及びその安全機構が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るX線照射装置の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る自己診断におけるチェックリストの一例を示す表である。
【図3】第1の実施の形態に係るX線照射装置の安全機構の自己診断動作の概略を表すフロー図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るX線照射装置の安全機構を示す模式図である。
【図5】従来のX線照射装置の構成を示す模式図であって、制御マイコンに実現した診断機構を備えるX線照射装置の構成を示す。
【図6】制御マイコンと診断マイコンとを備えるX線照射装置の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、縦横の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。又、図面相互間においても互いの比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0014】
又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想を、構成物品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【0015】
(第1の実施形態)
[X線照射装置]
本発明の第1の実施の形態に係るX線照射装置は、図1に示すように、X線照射機構1と、X線照射機構1の動作を制御する制御機構2と、X線漏洩を防止する安全機構3とを備える。
【0016】
X線照射機構1は試料(照射対象)14を格納し、X線を遮蔽する材料からなる試料室11と、試料室11の一部として設けられ、試料室11を密閉空間にする蓋12と、蓋12を開閉するための蓋開閉機構19と、蓋開閉機構19を駆動するモータ13と、試料14にX線Φを照射するX線管球15と、X線管球15に電力を供給するためのX線管球電源16と、試料14から放出されたX線Φを検出する検出器18等を備える。
【0017】
制御機構2は、制御ソフトウェア211によって制御される制御マイコン21を備える。制御マイコン21の詳細は、図示を省略しているが、演算処理装置(CPU)の他に、主記憶装置、補助記憶装置、プログラム記憶装置、入力装置、出力装置、表示装置及び入出力制御部等を備えて、ノイマン型コンピュータのハードウェア構成をなすことが可能である。制御ソフトウェア211は、例えば、図示を省略したプログラム記憶装置に格納されている。制御マイコン21は、診断機構38から出力された信号を入力し、この信号に基づいてX線管球電源16を制御するために必要な演算処理を行う診断結果入力手段212と、蓋開閉機構19を駆動するモータ13を制御するための蓋駆動信号Iの出力やそれに必要な演算処理を行う蓋制御手段213と、X線管球電源16によるX線管球15への通電を制御するための信号出力やそれに必要な演算処理を行うX線管球電源制御手段214とを備える。
【0018】
安全機構3は、蓋12の開閉を検出する蓋センサ34と、蓋センサ34の出力に基づいて蓋12が開いている間はX線管球電源16への通電を禁止する通電禁止命令IILOを出力し、蓋12が閉じている間はX線管球電源16への通電を許可する通電許可命令IILCを出力するインターロック回路31と、インターロック回路31が出力する通電禁止命令IILOに基づいてX線管球電源16を切断するインターロックリレー32と、診断機構38からの診断時禁止命令Idro及び供給許可命令Idrcを受信して、自己診断動作中はX線管球電源16へ電力供給を禁止し、自己診断動作を行っていない間は電力供給を許可する診断用リレー33と、安全機構3の各部品や回路等の動作状態を直接診断する診断機構38とを備える。インターロック回路31とインターロックリレー32とでインターロック機構37を形成している。
【0019】
診断機構38は、安全機構3を構成する各部品や回路等の状態を自己診断する診断マイコンの演算処理装置(CPU)35と、診断マイコンの演算処理装置35に接続され図2に示すような自己診断の診断項目のチェックリストを記憶する、チェックリスト記憶手段36を備える。診断機構38の詳細は、図示を省略しているが、演算処理装置(CPU)35の他に、主記憶装置、補助記憶装置、プログラム記憶装置、入力装置、出力装置、表示装置及び入出力制御部等を備えて、ノイマン型コンピュータのハードウェア構成をなしており、チェックリスト記憶手段36は、例えば補助記憶装置の一部を用いて構成可能である。診断マイコンの演算処理装置35は、診断ソフトウェア351によって制御される。診断ソフトウェア351は、例えば、図示を省略したプログラム記憶装置に格納されている。診断マイコンの演算処理装置35は、自己診断動作による診断結果を制御機構2に信号として出力する診断結果出力手段352と、自己診断動作開始時に診断用リレー33を切断させる診断時禁止命令Idro、及び自己診断動作終了時に再度接続させる供給許可命令Idrcの出力、及びこれら命令の出力に必要な演算処理を行う診断用リレー制御手段353と、蓋センサ34から出力された開検出信号SSO、及び閉検出信号SSCを入力するセンサ信号入力手段354と、インターロックリレー32が出力した切断・接続の状態を示す通電禁止信号SILO及び通電許可信号SILCを入力するインターロック状態入力手段355と、センサ信号入力手段354及びインターロック状態入力手段355から、開・閉検出信号SSO、SSC及び通電禁止・許可信号SILO、SILCの情報を得て、チェックリストに設定されたチェック項目毎の自己診断を実行する自己診断実行手段356とを備える。
【0020】
図1に示す構成では、インターロックリレー32と、X線管球電源16との間に、診断用リレー33を設けているため、診断マイコンの演算処理装置35内の診断用リレー制御手段353からの診断時禁止命令Idroにより、自己診断を開始する前にあらかじめ診断用リレー33を、X線照射を禁止する電源切断(OFF)状態にしておくことができる。この状態で、インターロックリレー32から出力される通電禁止・許可信号SILO、SILCと、蓋センサ34から出力される開・閉検出信号SSO、SSCとの論理関係を用いて安全機構3の部品や回路等の自己診断を実施する。自己診断の結果、安全機構3を構成する各部品や回路等の正常動作が確認された時点で、診断用リレー33を、X線照射を許可する電源接続(ON)状態にする。
【0021】
上記のように本発明の第1の実施の形態に係るX線照射装置においては、診断マイコンの演算処理装置35を制御マイコン21から独立した構成とし、診断マイコンの演算処理装置35が安全機構3を構成する各部品や回路等を自己診断する場合も、制御マイコン21の通信を受けずに、診断マイコンの演算処理装置35のみによって自己診断を完了する構成としているので、各々が自己診断機能を有しない通常のセンサやスイッチのみを用いても、信頼性の高い安全機構を比較的容易に実現可能である。
【0022】
診断マイコンのチェックリスト記憶手段36には、図2に例示するような安全機構3を構成する各部品や回路等の自己診断に必要なチェック項目のリストを保持しており、蓋の開状態及び閉状態に応じて、対応するチェックリスト中のチェック項目の確認を行う。全チェック項目が「OK」になれば、安全機構3を構成する各部品や回路等の正常動作が確認されたことになるので、X線照射を許可する。もしもいずれかのチェック項目で矛盾を検知したら、安全機構3を構成するいずれかの部品や回路等に異常があることになるので、X線照射を禁止する。
【0023】
自己診断実行手段356は、X線照射装置の稼働中も常時、安全機構3を構成する各部品や回路等の状態をモニタする。
【0024】
上記のような構成のX線照射装置における安全機構3の自己診断システム構築において、蓋センサ34等の検出手段を二重化する、又は上記に挙げた構成要素以外にもX線シャッタ等の他の部品及び回路を配備するといった場合には、安全機構3の自己診断においてチェックの必要な項目は、更に多数となりうる。
【0025】
[自己診断動作]
本発明の第1の実施の形態に係る安全機構の自己診断方法を、図3のフローチャートを参照して以下に示す。
【0026】
(a)X線照射装置のシステムを起動すると、先ず、ステップS10において、自己診断実行手段356は、チェックリスト記憶手段36に記憶されるチェックリストの、全チェック項目のチェック欄に、初期値の「NG」を入力する。そしてステップS11で、診断動作を開始する前に、診断用リレー制御手段353が診断用リレー33を切断し、X線照射禁止状態とする。
【0027】
(b)次にステップS12で、制御機構2の蓋制御手段213が蓋駆動信号Iをモータ13へ出力し、モータ13を駆動して蓋12を開け、ステップS13に進む(なお、手動装置であれば、手動で蓋12を開ける。)。蓋12が開くと、蓋センサ34が正常であれば、蓋センサ34から、開検出信号SSOがセンサ信号入力手段354へ入力される。インターロック機構37が正常に動作している場合には、インターロック回路31は蓋センサ34からの開検出信号SSOに基づき、インターロックリレー32へ通電禁止命令IILOを出力し、切断されたインターロックリレー32は、診断マイコンの演算処理装置35内のインターロック状態入力手段355へ、インターロックの状態を示す信号を出力する。
【0028】
(c)次にステップS13で、自己診断実行手段356は、蓋センサ34から開検出信号SSOが、インターロックリレー32から通電禁止信号SILOが、出力されているか否かを判定する。通電禁止信号SILOが出力されていれば、ステップS14へ進み、チェックリストの項目No.1のチェック欄に「OK」を入力する。通電禁止信号SILOが出力されていなければ、安全機構3を構成するいずれかの部品又は回路に異常があることになるので、ステップS21に進み、項目No.1のチェック欄の「NG」を維持したまま、ステップS23のX線照射禁止処理へ進む。ステップS23では、診断結果出力手段352が制御機構2へX線照射禁止信号を出力し、更にX線照射禁止信号を受けた制御機構2は、エラーメッセージの表示と、X線照射装置を待機状態へ移行する処理を実行し、自己診断動作を終了する。
【0029】
(d)ステップS13からステップS14に進んだ場合には、ステップS15に進み、制御マイコン21内の蓋制御手段213が、蓋駆動信号Iをモータ13へ出力し、モータ13を駆動して蓋12を閉じ、ステップS16に進む(なお、手動装置であれば、手動で蓋12を閉じる。)。蓋12を閉じると、蓋センサ34が正常であれば、インターロック回路31と演算処理装置35内のセンサ信号入力手段354へ、閉検出信号SSCを出力する。
【0030】
(e)ステップS16で、自己診断実行手段356は、蓋センサ34から閉検出信号SSCが、インターロックリレー32から通電許可信号SILCが、出力されているか否かを判定する。正しく通電許可信号SILCが出力されていれば、ステップS17へ進み、チェックリストの項目No.2のチェック欄に「OK」を入力する。通電許可信号SILCが出力されていなければ、安全機構3を構成するいずれかの部品又は回路に異常があることになるので、ステップS22に進み、項目No.2のチェック欄の「NG」を維持したまま、ステップS23のX線照射禁止処理へ進む。
【0031】
(f)ステップS17に進んだ場合には、次いでステップS18に進み、診断用リレー33を接続する。診断用リレー制御手段353は診断用リレー33へ供給許可命令Idrcを出力し、診断用リレー33を接続してX線管球電源16への電力供給を許可して、自己診断動作を終了する。
【0032】
なお、X線照射装置稼働中は、制御マイコン21によりシステムが制御されるが、蓋12の開動作が行われるたびに、制御マイコン21からの通信とは関係なく、診断機構38が動作し、ステップS13の自己診断動作を開始し、ステップS13でインターロックリレー32の「禁止」が確認されればステップS14を経てステップS15に進み、蓋12の閉動作が行われた後に、ステップS16の自己診断動作を実行する。即ち、X線照射装置稼働中は、蓋12の開閉動作が行われるたびに、自己診断動作が実行される。
【0033】
(第2の実施形態)
診断機構38の診断マイコンの演算処理装置35は、図4に示すように、インターロック回路31がリレー切断信号SCKO及びリレー接続信号SCKCを出力するように構成してもよい。
【0034】
第2の実施の形態に係るX線照射装置は、第1の実施の形態に係るX線照射装置と同様に、X線照射機構と、X線照射機構の動作を制御する制御機構と、X線漏洩を防止する安全機構3とを備えるが、図4では、X線照射機構と制御機構の図示を省略している。
【0035】
第2の実施の形態に係るX線照射装置の安全機構3は、図4に示すように、蓋12の開閉を検出する蓋センサ34と、蓋センサ34の出力に基づいて蓋12が開いている間はX線管球電源16への通電を禁止する通電禁止命令IILOを出力し、蓋12が閉じている間はX線管球電源16への通電を許可する通電許可命令IILCを出力するインターロック回路31と、インターロック回路31が出力する通電禁止命令IILOに基づいてX線管球電源16を切断するインターロックリレー32と、診断機構38からの診断時禁止命令Idro及び供給許可命令Idrcを受信して、自己診断動作中はX線管球電源16へ電力供給を禁止し、自己診断動作を行っていない間は電力供給を許可する診断用リレー33と、安全機構3の各部品や回路等の動作状態を直接診断する診断機構38とを備える点では、第1の実施の形態に係るX線照射装置と同様である。
【0036】
診断機構38は、図1に示した構成に加え、インターロック回路31から出力されたリレー切断信号SCKO及びリレー接続信号SCKCを入力し、自己診断実行手段356に入力するための演算処理を行う判断信号入力手段357を更に備える点が、第1の実施の形態に係るX線照射装置と異なる。第2の実施の形態に係るX線照射装置においては、リレー切断・接続信号SCKO、SCKCは、インターロック回路31からのインターロックリレー32への通電禁止命令IILO又は通電許可命令IILCと同じ信号を、自己診断での確認用に診断機構38にも出力する。
【0037】
このような第2の実施の形態に係るX線照射装置の構成の場合、第1の実施の形態で説明した自己診断動作の、フローチャートにおいてステップS13及びS16の判定では、蓋センサ34からの開・閉検出信号(SSO、SSC)と、インターロックリレー32からの通電禁止・許可信号(SILO、SILC)に加えて、インターロック回路31からのリレー切断・接続信号(SCKO、SCKC)についても、正しく出力されているか否かを判定する。3種類の信号の組み合わせが、ステップS13において開検出信号SSO、通電禁止信号SILO、リレー切断信号SCKOの組であり、ステップS16において閉検出信号SSC、通電許可信号SILC、リレー接続信号SCKCの組であれば、安全機構3を構成する各部品や回路等の正常動作が確認されたことになるので、それぞれステップS14及びS17へ進み、チェック項目のチェック欄に「OK」を入力する。
【0038】
もしこれら以外の組み合わせである場合には、安全機構3を構成するいずれかの部品又は回路等に異常があることになるので、それぞれステップS21及びS22に進み、チェック欄に「NG」を入力する。他は、第1の実施の形態に係るX線照射装置と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0039】
本発明の第2の実施の形態に係るX線照射装置においても、第1の実施の形態に係るX線照射装置と同様に、診断マイコンの演算処理装置35が制御マイコン21から独立し、診断マイコンの演算処理装置35が安全機構3を構成する各部品や回路等を自己診断する場合に、制御マイコン21の通信を受けずに、診断マイコンの演算処理装置35のみによって自己診断を完了するので、各々が自己診断機能を有しない通常のセンサやスイッチのみを用いても、信頼性の高い安全機構を比較的容易に実現可能である。
【0040】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は第1及び第2の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0041】
例えば、第2の実施の形態に係るX線照射装置において、自己診断実行手段356は、インターロックリレー32から出力される通電禁止・許可信号SILO、SILCを用いず、インターロック回路31からのリレー切断・接続信号SCKO、SCKCだけで、蓋センサ34から出力される信号との論理的矛盾を判断するように構成してもよい。
【0042】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0043】
1…X線照射機構
11…試料室
12…蓋
13…モータ
14…試料
15…X線管球
16…X線管球電源
18…検出器
19…蓋開閉機構
2…制御機構
21…制御マイコン
211…制御ソフトウェア
212…診断結果入力手段
213…蓋制御手段
214…X線管球電源制御手段
3…安全機構
31…インターロック回路
32…インターロックリレー
33…診断用リレー
34…蓋センサ
35…診断マイコンの演算処理装置(CPU)
351…診断ソフトウェア
352…診断結果出力手段
353…診断用リレー制御手段
354…センサ信号入力手段
355…インターロック状態入力手段
356…自己診断実行手段
357…判断信号入力手段
36…チェックリスト記憶手段
37…インターロック機構
38…診断機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管球に電力を供給するX線管球電源、X線の照射対象を格納する試料室を有するX線照射機構と、
前記X線照射機構の動作を制御する制御機構と、
前記試料室の蓋の開閉を検知する蓋センサ、前記蓋センサからの出力信号に基づき、前記X線管球電源への通電を禁止又は許可とするインターロック機構を有する安全機構
とを備え、前記安全機構が、前記制御機構からの通信を受けることなく、前記制御機構から独立して前記安全機構の状態を自己診断する診断機構を更に有することを特徴とするX線照射装置。
【請求項2】
前記インターロック機構が、前記蓋が開いている間は前記X線管球電源切断の信号を出力するインターロック回路と、前記インターロック回路からの信号で動作するインターロックリレーとを備えることを特徴とする請求項1に記載のX線照射装置。
【請求項3】
前記安全機構が、前記自己診断中には前記X線の照射を停止する診断用リレーを更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のX線照射装置。
【請求項4】
X線の照射対象を格納する試料室の蓋の開閉を検知する蓋センサ、前記蓋センサからの出力信号に基づいてX線管球に電力を供給するX線管球電源への通電を禁止又は許可とするインターロック機構を有するX線照射装置の安全機構であって、
前記安全機構が、前記制御機構からの通信を受けることなく、前記制御機構から独立して前記安全機構の状態を自己診断する診断機構を更に有することを特徴とする安全機構。
【請求項5】
前記インターロック機構が、前記蓋が開いている間は前記X線管球電源切断の信号を出力するインターロック回路と、前記インターロック回路からの信号で動作するインターロックリレーとを備えることを特徴とする請求項4に記載の安全機構。
【請求項6】
前記安全機構が、前記自己診断中には前記X線の照射を停止する診断用リレーを更に備えることを特徴とする請求項4又は5に記載の安全機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−217020(P2010−217020A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64706(P2009−64706)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】