説明

X線異物検出装置

【課題】被検査物から検出された異物に関する各種情報を容易に把握できる。
【解決手段】X線異物検出装置1は、搬送される被検査物WにX線を照射し、被検査物Wを透過したX線の透過量に基づく被検査物WのX線透過画像から異物を抽出するための画像処理を行って異物抽出処理画像を作成し、異物抽出処理画像から被検査物W中に異物が含まれているか否かによって良品又は不良品であるかを判定部33で判定する。そして、異物が存在すると判定(不良品判定)されると、異物情報特定手段32bにおいて不良品判定された異物抽出処理画像から異物に関する異物情報を特定し、この特定された異物情報を表示部40に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば生肉、魚、加工食品、医薬などの各品種の被検査物に対し、X線を照射したときのX線の透過量から被検査物中の異物を検出するX線異物検出装置に係り、特に検出された異物に関する各種情報を特定して表示するX線異物検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、搬送ライン上を順次搬送されてくる例えば生肉、魚、加工食品、医薬などの各品種の被検査物にX線を照射し、この照射したX線の透過量から金属、ガラス、骨などの異物が混入しているか否かを検出するために、X線異物検出装置が用いられている。そして、この種のX線異物検出装置では、例えば下記特許文献1に記載されるようなX線照射時の被検査物の内部状態を示す透過画像や良否判定結果などを表示する表示部を備えるものが公知である。
【0003】
図8は、下記特許文献1に記載されたX線異物検出装置の表示内容の一例を示している。図示のように、A1は搬送部で搬送された被検査物にX線を照射し、被検査物を透過したX線のX線透過レベルの度合い(段階)に応じて表示されるものであり、オペレータがこの領域A1を見ることによって被検査物の平面で見た外形の状態と、この被検査物内でのX線の透過具合を確認することができる。また、異物G部分の表示濃度が他と異なるように表示され(例えば濃淡、あるいは周囲と他の色)、異物Gの混入位置を把握できるようになっている。そして、「OK」,「NG」の良否判定表示は、領域B1に画像表示する。併せて総検査数、良品数、NG総数の検査結果表示を領域C1に表示し、この被検査物のX線透過レベルが基準値とともにグラフ化して領域D1に表示している。
【特許文献1】特開2002−139458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のX線異物検出装置では、NG判定された被検査物のどの位置に異物があるかは確認できるものの、その異物がどのような種類の異物であるかまでは確認することができなかった。そのため、異物の種類を特定するには、実際に不良品として排除された被検査物からその都度異物を取り出して確認しなければならなかった。
【0005】
また、表示画面から異物の形状と被検査物全体に対する異物の対比から、おおよその異物の大きさを推測することはできたが、正確な大きさを知るためには、やはり被検査物からその都度異物を取り出して確認しなければならなかった。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、被検査物から検出された異物の種類や大きさなどの情報を表示して、異物の確認作業を容易に行うことができるX線異物検出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、請求項1記載のX線異物検出装置は、搬送される被検査物WにX線を照射し、前記被検査物を透過したX線の透過量を検出する検出部20と、
前記被検査物を透過したX線の透過量に基づく前記被検査物のX線透過画像を記憶する記憶部31と、
該記憶部に記憶された前記X線透過画像から異物を抽出するための画像処理を行い、前記X線透過画像に基づく異物抽出処理画像を作成する画像処理部32と、
該画像処理部からの前記異物抽出処理画像から、前記被検査物中に前記異物が含まれているか否かによって良品又は不良品であるかを示す良否判定をする判定部33と、
該判定部によって判定された良否判定の結果を表示する表示部40とを備えたX線異物検出装置1において、
前記画像処理部は、前記異物抽出処理画像から抽出した前記異物に関する異物情報を特定する異物情報特定手段32bを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載のX線異物検出装置は、請求項1記載のX線異物検出装置において、前記異物情報特定手段32bは、前記異物抽出処理画像から異物に対応する高濃度部分の画素数を計数し、この計数した画素数を予め設定された1画素当たりの面積に換算して、前記異物情報として前記異物の面積を特定すること特徴とする。
【0009】
請求項3記載のX線異物検出装置は、請求項1記載のX線異物検出装置において、前記異物情報特定手段32bは、前記判定部33にて不良品判定された異物抽出処理画像から良品判定された異物抽出処理画像を差し引いて異物部分のみの異物画像に画像処理し、当該異物画像のX線透過量に応じた濃度に基づき、前記異物情報として前記異物の種類を特定することを特徴とする。
【0010】
請求項4記載のX線異物検出装置は、請求項1記載のX線異物検出装置において、前記異物情報特定手段32bは、前記不良品判定された異物抽出処理画像を、前記異物の種類によって予め設定された異物特定用フィルタを用いてフィルタ処理を施し、前記使用した異物特定用フィルタの種類から前記異物情報として前記異物の種類を特定することを特徴とする。
【0011】
請求項5記載のX線異物検出装置は、請求項1記載のX線異物検出装置において、前記表示部40は、前記判定部からの前記異物抽出処理画像と、当該異物抽出処理画像中の異物の異物情報とをウィンドウ表示することを特徴とする。
【0012】
請求項6記載のX線異物検出装置は、請求項1記載のX線異物検出装置において、前記表示部40は、前記異物抽出処理画像中で選択された前記異物の異物情報をウィンドウ表示することを特徴とする。
【0013】
請求項7記載のX線異物検出装置は、請求項1記載のX線異物検出装置において、前記表示部40は、前記異物情報と併せて、前記異物のスケールを表す目盛り表示若しくは前記異物の実寸情報を表示することを特徴とする。
【0014】
請求項8記載のX線異物検出装置は、請求項1記載のX線異物検出装置において、前記表示部40は、前記被検査物W内に前記異物が複数存在する場合に、前記複数の異物とそれぞれ対応するように前記異物の異物情報を一覧表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のX線異物検出装置によれば、異物の混入が確認された被検査物の異物抽出処理画像を画像処理し、この異物抽出処理画像から異物の種類や大きさ(面積)といった異物に関する異物情報を特定して表示することにより、検出した異物の混入箇所や発生原因を速やかに調査することができるようになるとともに、生産工程(生産ライン)での適切、且つ迅速な管理を行うことができる。
【0016】
また、異物抽出処理画像から異物に対応する高濃度部分の画素数を計数して予め設定された1画素当たりの面積に換算することで、検出した異物の大きさを比較可能な数値として直感的に把握できるだけでなく、生産管理上の管理値として有効に活用することができる。
【0017】
さらに、異物抽出処理画像における異物部分のX線透過量の濃度から異物の種類の特定が可能となり、異物抽出処理画像上では判別することが困難である異物の種類を容易に把握することができる。
【0018】
また、異物特定用フィルタを用いて異物抽出処理画像から被検査物内に混入された異物の種類を特定することにより、異物の種類をより具体的に、且つ確実に把握することができる。
【0019】
さらに、表示部に表示される異物抽出処理画像上の異物部分を選択した際に、その選択された異物の異物情報を表示することができるので、異物抽出処理画像上における所望の異物の種類や大きさ(面積)を容易に把握することができる。
【0020】
また、表示部に表示される異物抽出処理画像上の複数の異物にそれぞれ対応した異物情報を一覧表示することにより、複数の異物が検出された場合であっても異物の位置と各異物の種類や大きさ(面積)とを同時に把握することができる。
【0021】
さらに、異物情報として異物の外形を表す寸法情報やスケールを表す目盛りを表示することで、異物の抽出画像を任意に拡大/縮小表示した場合や異物の形状が不定形な場合であっても、その異物の大きさを正確に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明に係るX線異物検出装置の概略構成を説明するための概略ブロック図であり、図2、図3は本発明に係るX線異物検出装置で用いる画像処理用フィルタの原理を説明するための説明図であり、図4〜図7は本発明に係るX線異物検出装置の表示部に表示される表示例を示した図である。
【0023】
本発明に係るX線異物検出装置は、例えば生肉、魚、加工食品、医薬などの各品種の被検査物が所定間隔をおいて順次搬送又は連続的に搬送される製造ラインの一部として組み込まれ、被検査物中に混入された異物を検出するものである。
【0024】
そして、本例のX線異物検出装置は、被検査物のX線透過画像から異物と抽出した異物抽出処理画像に基づき被検査物Wの良否判定を行うとともに、異物が検出された場合に、この異物が検出された異物抽出処理画像から異物の種類、大きさ(面積)などの異物に関する異物情報を特定して表示する機能を備えている。
【0025】
図1に示すように、本例のX線異物検出装置1は、被検査物Wを搬送する搬送部10、搬送部10中において異物を検出する検出部20、検出部20からのX線透過量に基づく検出信号に応じて各種処理を行う信号処理部30、信号処理部30で処理された各種信号に基づく表示内容を表示する表示部40を備えて構成される。以下、各構成について詳細に説明する。
【0026】
搬送部10は、例えば生肉、魚、加工食品、医薬などの各品種の被検査物Wを、所定間隔をおいて順次搬送している。図1の例では、例えば装置本体に対して水平に配置されたベルトコンベアで構成しており、駆動モータ(不図示)の駆動により予め設定された搬送速度で図1の矢印方向に搬入口から搬入された検査物Wを搬出口へ搬出している。
【0027】
なお、搬送部10は、図1に示すベルトコンベアに限定されるものではなく、例えばアサリなどの貝類の剥き身、魚のすり身、レトルト食品の具材、具材入りスープなどの被検査物Wを搬送ポンプによりパイプ内に順次流動搬送する構成としてもよい。
【0028】
検出部20は、搬送される被検査物Wを搬送路途中において異物を検出するもので、ベルトコンベアの上方に所定高さ離れて設けられるX線発生器21と、ベルトコンベア内にX線発生器21と対向して設けられるX線検出器22を備えて構成される。
【0029】
X線発生器21は、金属製の箱体内部に設けられる円筒状のX線管を不図示の絶縁油により浸漬した構成であり、X線管の陰極からの電子ビームを陽極ターゲットに照射させてX線を生成している。X線管は、その長手方向が被検査物の搬送方向と直交するように設けられている。X線管により生成されたX線は、下方のX線検出器22に向けて、長手方向に沿った不図示のスリットにより略三角形状のスクリーン状にして照射するようになっている。
【0030】
X線検出器22は、被検査物Wに対してX線が照射されたときに、被検査物を透過してくるX線を検出し、この検出したX線の透過量に応じた検出信号として信号処理部30に出力している。X線検出器22には、例えばベルトコンベア上を搬送される被検査物の搬送方向と直交する方向にライン状に配列された複数のフォトダイオードと、フォトダイオード上に設けられたシンチレータとを備えたアレイ状のラインセンサが用いられる。
【0031】
そして、この検出部20では、被検査物Wに対してX線発生器21からX線が照射されたときに、被検査物を透過してくるX線をシンチレータで受けて光に変換する。さらにシンチレータで変換された光は、その下部に配置されるフォトダイオードによって受光される。そして、各フォトダイオードは、受光した光を電気信号である検出信号に変換して信号処理部30に出力している。
【0032】
また、搬送部10の搬入口側には、被検査物Wの通過を検出するための位置検出部23が設けられている。この位置検出部23は、搬送部10としてベルトコンベアの入口側に設けられる、例えば一対の投受光器からなるフォトセンサで構成される。これにより、被検査物Wがフォトセンサの前を通過している間では位置検出部23からオン信号が出力され、このオン信号の立ち上がりがタイミング信号として利用される。
【0033】
そして、位置検出部23からのタイミング信号によってX線検出器22からの検出信号に基づくX線透過画像を信号処理部30に逐次取り込み、各種処理が実行されるようになっている。
【0034】
信号処理部30は、例えばCPUやROM、RAMなどで構成されるマイクロコンピュータで構成され、X線検出器22から入力される検出信号に基づく1個の被検査物Wを単位としたX線透過画像を格納し、この被検査物W毎のX線透過画像に基づいて異物検出や異物情報の特定に係る各種処理を行う。信号処理部30は、記憶部31、画像処理部32、判定部33を備えて構成される。
【0035】
記憶部31は、例えばROM、RAMなどの半導体メモリからなる記憶メモリで構成され、X線検出器22の検出出力に基づく各被検査物W毎のX線透過画像(被検査物WへのX線の照射に伴ってX線検出器22が検出するX線検出量のデータ)が格納される。このX線透過画像は、X線検出器22からの検出信号を不図示のA/D変換器によりA/D変換して得られる。さらに説明すると、この記憶部31には、1つの被検査物Wの検査を行う毎に、搬送される被検査物Wの搬送方向の長さ(前端から後端までの検出期間に相当)に対応した所定ライン数分(例えば480ライン)格納される。
【0036】
また、記憶部31は、被検査物Wに混入した異物の有無を検出するために予め設定された被検査物W毎の基準値データ(所謂、被検査物Wの良否判定用閾値)、被検査物Wに混入する虞のある異物の種類によって予め設定された異物の種類を特定するための異物特定用フィルタ、各異物のX線透過量に基づく濃度差によって異物の種類を特定するための異物特定用濃度データの他、X線異物検出装置1を構成する各部を駆動するための駆動データなどを記憶している。
【0037】
画像処理部32は、記憶部31に格納された被検査物WのX線透過画像に基づく各種画像処理を行っている。画像処理部32は、異物抽出手段32aと、異物情報特定手段32bとを備えて構成される。
【0038】
異物抽出手段32aは、記憶部31に格納された1つの被検査物WのX線透過画像のX線透過レベルの度合い(段階)に基づき画像処理を行っている。この異物抽出に係る画像処理として、X線透過画像中に異物が存在しない場合は、画像処理を行わずにそのままのX線透過画像を異物抽出処理画像とし、X線透過画像中に異物が存在する場合は、その異物の外形や大きさ(面積)、混入位置が明確となるような画像処理を行った異物抽出処理画像としてそれぞれ作成している。そして、異物抽出手段32aは、この画像処理して作成された異物抽出処理画像を判定部33に出力している。
【0039】
異物情報特定手段32bは、記憶部31に記憶された異物特定用フィルタを用いて、判定部33からの異物が検出された異物抽出処理画像にフィルタ処理を施すことで、被検査物W内に混入された異物の種類を特定している。
【0040】
ここで、異物の種類を特定するための異物特定用フィルタについて説明する。異物情報特定手段32bでは、被検査物W内に混入された異物の種類を特定するため、異物の種類によって予め設定された異物特定用フィルタを用いて、異物抽出処理画像にフィルタ処理を施し、使用した異物特定用フィルタの種類から異物の種類を特定している。
【0041】
まず、X線異物検出装置1で使用される異物特定用フィルタを含む画像処理用フィルタの原理について説明すると、通常、これらのフィルタは、X線透過画像における限定したエリア内での輝度の変化度合いに基づいて異物の有無を算出している。
例えば、図2に示すように、ある透過画像において図中矢印(A)、(B)の各方向から見た透過画像をイメージA、Bとすると、イメージAはエリア中心点が検査エリア内におけるそれ以外の周囲に比べて濃度変化量が大きくなっているのに対し、イメージBではエリア中心点と検査エリア内におけるそれ以外の周囲との濃度変化量が少なくなっている。そして、検査エリア内のエリア中心点とそれ以外の周囲との濃度差を比較し、濃度変化量が予め設定されたリミット値を越えた場合に、その高濃度部分を異物として検出している。
【0042】
また、図3に示すように、図中矢印方向から見た検査エリアのサイズを変化させると、イメージCでは検査エリアが小さいため、エリア中心点と検査エリア内におけるそれ以外の周囲の濃度変化量が大きくなり、イメージDのように検査エリアが大きくなると、エリア中心点とそれ以外の周囲の濃度変化量が検査エリアの面積に対して相対的に小さくなる。従って、小さい異物を検出するにはイメージCのように検査エリアを小さくし、大きい異物を検出するにはイメージDのように検査エリアを大きくする。
【0043】
そして、本例の異物特定用フィルタは、上記のようなフィルタの原理を利用し、検出対象となる異物の種類によって予め設定された異物特定用フィルタを用いることで、異物の種類を特定している。なお、下記に示す異物特定用フィルタは一例であり、これに限定されるものではない。
【0044】
(微小異物検出用フィルタ)
例えば微小な金属球のような、少ない面積で大きな濃度差を発生する異物を検出するフィルタであり、エリアサイズを例えば5×5(画素換算)とし、その中での濃度変化量を基準よりも大きめに設定することで、面積が小さく濃度変化量の大きい金属球のような異物であると特定することができる。
【0045】
(プラスチック・骨用フィルタ)
例えばプラスチックや骨のような、微小の金属球よりも面積を有し、濃度差の小さい異物を検出するフィルタであり、エリアサイズを例えば20×20(画素換算)とし、その中での濃度変化量を基準よりも小さめに設定することで、ある程度面積の有する濃度変化量の小さいプラスチックや骨などの異物であると特定することができる。
【0046】
(線状異物用フィルタ)
例えば上記微小異物検出用フィルタではエリアサイズをまたがってしまうような針金などの線状異物を検出するフィルタであり、エリアサイズを例えば5×5(画素換算)とし、その中での濃度変化量を基準よりも大きめに設定することで、濃度変化量が小さい同じ濃度が連続してなる線状異物であると特定することができる。
【0047】
異物情報特定手段32bは、判定部33で不良品と判定された異物抽出処理画像に上記各異物特定用フィルタを用いてフィルタ処理を施し、異物抽出処理画像中の異物を検出するのに使用した異物特定用フィルタの種類から異物の種類を特定している。そして、異物情報特定手段32bは、この特定された異物の種類を異物情報として表示部40に出力している。
【0048】
なお、異物情報特定手段32bでは、異物の種類を特定する際に、通常、上述した各異物特定用フィルタを順次切り替えながらフィルタ処理を施して異物の種類を特定しているが、例えば混入する異物の種類がある程度把握できている場合は、操作入力部50からの入力操作によって、その異物に対応する異物特定用フィルタを予め設定しておくことで、異物の種類の特定をスムーズに行うことができる。
【0049】
また、異物情報特定手段32bは、予め1画素当たりの面積(mm2 /pixl)を設定しておき、異物に対応する高濃度部分の画素数を計数して面積に換算して異物の部分の面積を算出し、この面積情報を異物情報として表示部40に出力している。さらに、微小異物検出用フィルタでの検査結果を用いて、高濃度部分の面積から直径を算出し、例えば「φ○○の金属球」と特定することもできる。
【0050】
そして、異物情報特定手段32bは、上述した異物情報特定用フィルタを用いた異物の種類の特定方法とは別の方法として、異物抽出処理画像における異物のX線透過量の濃度差に基づいて異物の種類を特定する方法がある。
【0051】
異物抽出処理画像における異物のX線透過量の濃度差に基づいて異物の種類を特定する方法としては、まず判定部33から不良品判定された異物抽出処理画像が出力されると、不良品判定された異物抽出処理画像(すなわち、異物が存在する異物抽出処理画像)から良品判定された異物抽出処理画像(すなわち、異物が存在しない異物抽出処理画像)を差し引いて、異物部分のみの異物画像に画像処理をする。そして、この異物画像のX線透過量に応じた濃度と記憶部31に記憶された異物特定用濃度データとに基づいて、異物の種類(例えば金属、ガラス、プラスチック、骨など)を特定する方法である。
【0052】
なお、異物抽出処理画像における異物のX線透過量の濃度差に基づく異物の種類の特定方法は、上述した異物特定用フィルタを用いた異物情報の特定方法と組み合わせることで、より正確に異物の種類を特定することができる。
【0053】
判定部33は、異物抽出手段32aからの異物抽出処理画像と、記憶部31に記憶された被検査物Wの基準値データとに基づいて被検査物W内の異物の有無を判別して被検査物Wの良否を判断し、被検査物Wが良品又は不良品であるかを示す良否判定結果と異物抽出手段32aからの異物抽出処理画像とを表示部40に出力している。すなわち、記憶部31に記憶された被検査物Wの基準値データよりX線透過レベルが低い場合(異物によりX線が透過しない場合)にNGであると判断し、基準値データよりX線透過レベルが高い場合にOKであると判断している。
【0054】
また、判定部33は、異物抽出手段32aからの異物抽出処理画像に異物がある判定した場合に、この検出された異物の種類を特定するため、不良品判定された異物抽出処理画像(すなわち、異物が存在する異物抽出処理画像)を異物情報特定手段32bに出力している。さらに、判定部33は、良否判定結果の他、総検査数、良品数、NG総数などの検査結果を表示部40に表示出力している。
【0055】
表示部40は、例えば液晶ディスプレイなどの表示機器で構成され、判定部33や画像処理部32からの表示に関する各種データに基づく表示を行っている。
【0056】
ここで、図4〜図7を参照しながら、表示部40に表示される表示画面例について説明する。なお、以下に説明する表示画面例は一例であり、またオペレータの所望の表示内容に切り替えを行う場合は、後述する操作入力部50からの入力操作によって表示内容の切り替えを行うことができる。
【0057】
図4に示すように、判定部33から出力された異物抽出処理画像を異物抽出処理画像表示エリアEaに表示する。この際、異物抽出処理画像は、被検査物W内の異物部分の表示濃度を背景や他の部分と異なるように濃く表示されるよう処理したり、異物部分以外と異なる色で処理して強調表示して、被検査物W内における異物の混入位置を容易に把握できるようにしている。
【0058】
また、図4に示すように、異物抽出処理画像表示エリアEaに表示された異物の近傍に、図示のような選択された異物の種類(金属、ガラス)、面積(例えば□□、○○、△△)などの異物情報が異物毎に識別可能にウィンドウ表示される。さらに、判定部33から出力された良否判定結果、総検査数、良品数、NG総数などの検査結果を検査内容表示エリアEbに表示している。
【0059】
なお、異物毎に識別可能にウィンドウ表示される異物情報は、図5に示すように例えば操作入力部50からの所定操作によって、異物抽出処理画像表示エリアEaにデフォルト表示されたカーソルCで異物抽出処理画像中の異物を選択したときに、その選択された異物の異物情報がウィンドウ表示される構成でもよい。
【0060】
また、図示の例では、異物抽出処理画像表示エリアEaに表示された異物と、各異物と対応する異物情報のウィンドウ表示とを線で結合表示しているが、これに限定されるものではない。すなわち、異物情報のウィンドウ表示が異物抽出処理画像表示エリアEaに表示されたどの異物と対応するものかが判れば良く、例えば異物抽出処理画像表示エリアEaに表示された異物の位置から異物情報のウィンドウ表示を吹き出し表示しても良い。
【0061】
図5、図6は、異物抽出処理画像表示エリアEaに表示された異物の詳細な異物情報を表示した表示例である。図5に示すように、異物抽出処理画像表示エリアEaには判定部33から出力された異物抽出処理画像を表示し、検査内容表示エリアEbに良否判定結果、総検査数、良品数、NG総数などの検査結果を表示する。
そして、操作入力部50からの所定操作によって、異物抽出処理画像表示エリアEaにデフォルト表示されたカーソルCで異物抽出処理画像中の異物を選択すると、図示のように選択した異物の外形、種類、面積、異物のスケールを表す目盛りなど、より正確な異物情報が異物情報表示エリアEcにウィンドウ表示される。
また、図6に示すように、目盛り表示を行わず、図示のようにウィンドウ表示された異物情報表示エリアEcに直接異物の実寸データ(例えばXXmm、YYmm)である寸法情報を表示することもできる。
【0062】
なお、図5、図6では、選択された異物の異物情報が異物抽出処理画像エリアEaに表示された異物近傍と異物情報表示エリアEcの両方にそれぞれ異物表情がウィンドウ表示される例で説明したが、異物情報表示エリアEcにより正確な異物情報が表示されるため、異物抽出処理画像表示エリアEaの異物情報は表示しない構成としてもよい。
【0063】
さらに、図7は、被検査物W内に複数の異物が混入しているときの一覧表示を表示した表示例である。図7に示すように、異物抽出処理画像表示エリアEaには判定部33から出力された異物抽出処理画像を表示し、検査内容表示エリアEbに良否判定結果、総検査数、良品数、NG総数などの検査結果を表示する。そして、図示のように異物抽出処理画像表示エリアEaに表示された複数の異物(異物1〜3)とそれぞれ対応するように、各異物の異物情報を異物情報一覧表示エリアEdに一覧表示する。
【0064】
なお、異物抽出処理画像表示エリアEaに表示されている異物の数が多数のときは、異物情報一覧表示エリアEdの表示スペース内にその個数分の異物情報が表示しきれない場合があるため、例えばスクロール表示や別画面表示して異物情報の一覧表示を行う構成としてもよい。
【0065】
上記表示例の説明では、表示部40の異物抽出処理画像表示エリアEaにカーソルCがデフォルト表示されているとしたが、これに限定されることはなく、操作入力部50からの入力操作により必要に応じて任意に表示させることもできる。また、表示部40の構成を例えばカラーLCDタッチパネル方式とすることで、オペレータが直接画面上の異物表示箇所に触れることで同様の表示を行うこともできる。
【0066】
操作入力部50は、搬送部10によって搬送させる被検査物Wを特定する品種の設定、使用する異物特定用フィルタの切り替え操作、表示部40に表示される表示内容(例えば表示形態の変更、異物部分の表示の拡大/縮小、表示領域の大きさの切り替えなど)の各種切り替え操作(カーソルCの操作などを含む)を含め、被検査物Wの異物検出に関する各種設定や指示を与えるための各種キー(キースイッチ、カーソルキー、ファンクションキー、矢印キー、テンキーなど)やスイッチ等で構成される。
【0067】
そして、上記構成によるX線異物検出装置1を用いて被検査物W内の異物検出とその異物の特定を行う場合は、まず、搬送部10上を搬送される被検査物WにX線が照射されると、このX線の照射に伴うX線透過画像が記憶部31に格納される。次に、被検査物WのX線透過画像から異物を抽出するため、異物抽出手段32aにおいて被検査物W全体のX線透過画像から混入した異物の画像を抽出処理し、この画像処理された異物抽出処理画像を判定部33に出力する。
【0068】
判定部33は、異物抽出手段32aからの異物抽出処理画像と、記憶部31に記憶された被検査物Wの基準値データとに基づいて被検査物W内の異物の有無を判別して被検査物Wの良否を判断する。そして、判定部33は、被検査物Wが良品又は不良品であるかを示す良否判定結果と異物抽出手段32aからの異物抽出処理画像とを表示部40に出力する。また、異物抽出処理画像から異物があると判断した場合は、この検出された異物の種類を特定するため、不良品判定された異物抽出処理画像を異物情報特定手段32bに出力する。
【0069】
異物情報特定手段32bは、記憶部31に記憶された異物特定用フィルタを用いて、判定部33からの異物が検出された異物抽出処理画像にフィルタ処理を施して、被検査物W内に混入された異物の種類(例えば金属、ガラス、プラスチック、骨など)を特定し、この特定された異物の種類を異物情報として表示部40に出力する。
【0070】
また、異物情報特定手段32bは、判定部33から不良品判定された異物抽出処理画像が出力されると、この不良品判定された異物抽出処理画像から良品判定された異物抽出処理画像を差し引いて異物部分のみの異物画像に画像処理をし、この異物画像のX線透過量に応じた濃度と記憶部31に記憶された異物特定用濃度データとに基づいて異物の種類を特定し、この特定された異物の種類を異物情報として表示部40に出力する。
【0071】
そして、表示部40は、異物情報特定手段32bで特定された各種異物情報、判定部33からの良否判定結果、異物抽出処理画像とに基づき、図4〜図7に示すような表示内容を表示をしている。
【0072】
このように、上述したX線異物検出装置1は、異物の混入が確認された被検査物Wの異物抽出処理画像を画像処理し、この異物抽出処理画像から異物の種類や大きさ(面積)といった異物に関する異物情報を特定して表示することにより、検出した異物の混入箇所や発生原因を速やかに調査することができるようになるとともに、生産工程(生産ライン)での適切、且つ迅速な管理を行うことができる。
【0073】
また、予め1画素当たりの面積を設定しておき、異物抽出処理画像から異物に対応する高濃度部分の画素数を計数して面積に換算することで、異物の部分の面積が算出できるため、検出した異物の大きさを比較可能な数値として直感的に把握できるだけでなく、生産管理上の管理値として有効に活用することができる。
【0074】
さらに、不良品判定された異物抽出処理画像から良品判定された異物抽出処理画像を差し引いて異物部分のみの異物画像に画像処理をし、この異物画像のX線透過量に応じた濃度と記憶部31に記憶された異物特定用濃度データとに基づいて異物の種類を特定することにより、異物抽出処理画像上では判別することが困難である異物の種類を容易に把握することができる。
【0075】
また、異物特定用フィルタを用いて異物抽出処理画像にフィルタ処理を施して、被検査物W内に混入された異物の種類を特定することができるので、異物の種類をより具体的に、且つ確実に把握することができる。
【0076】
さらに、表示部40に表示される異物抽出処理画像上の異物部分を選択した際に、その選択された異物の異物情報を異物抽出処理画像表示エリアEa又は異物情報表示エリアEcに表示することができるので、異物抽出処理画像上における所望の異物の種類や大きさ(面積)を容易に把握することができる。
【0077】
また、表示部40に表示される異物抽出処理画像上の複数の異物にそれぞれ対応した異物情報を一覧表示することにより、複数の異物が検出された場合であっても異物の位置と各異物の種類や大きさ(面積)とを同時に把握することができる。
【0078】
さらに、表示部40に表示される異物情報表示エリアEcに異物の外形を表す寸法情報を表示することで、異物の抽出画像をオペレータの操作により任意に拡大/縮小表示したとしても、その異物の大きさを正確に把握することができる。
【0079】
また、表示部40に表示される異物情報表示エリアEcにスケールを表す目盛りを表示することで、異物の形状が不定形であっても、その異物の大きさを正確に把握することができる。
【0080】
以上、本願発明における最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者などによりなされる他の形態、実施例及び運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に係るX線異物検出装置の概略構成を説明するための概略ブロック図である。
【図2】本発明に係るX線異物検出装置で用いる画像処理用フィルタの原理を説明するための説明図である。
【図3】同画像処理用フィルタの原理を説明するための説明図である。
【図4】本発明に係るX線異物検出装置の表示部に表示される表示例を示した図である。
【図5】同表示部に表示される他の表示例を示した図である。
【図6】同表示部に表示される他の表示例を示した図である。
【図7】同表示部に表示される他の表示例を示した図である。
【図8】従来のX線異物検出装置の表示器の表示画面の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0082】
1 X線異物検出装置
10 搬送部
20 検出部
21 X線発生器
22 X線検出器
23 位置検出部
30 信号処理部
31 記憶部
32 画像処理部
32a 異物抽出手段
32b 異物情報特定手段
33 判定部
40 表示部
50 操作入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される被検査物(W)にX線を照射し、前記被検査物を透過したX線の透過量を検出する検出部(20)と、
前記被検査物を透過したX線の透過量に基づく前記被検査物のX線透過画像を記憶する記憶部(31)と、
該記憶部に記憶された前記X線透過画像から異物を抽出するための画像処理を行い、前記X線透過画像に基づく異物抽出処理画像を作成する画像処理部(32)と、
該画像処理部からの前記異物抽出処理画像から、前記被検査物中に前記異物が含まれているか否かによって良品又は不良品であるかを示す良否判定をする判定部(33)と、
該判定部によって判定された良否判定の結果を表示する表示部(40)とを備えたX線異物検出装置(1)において、
前記画像処理部は、前記異物抽出処理画像から抽出した前記異物に関する異物情報を特定する異物情報特定手段(32b)を備えたことを特徴とするX線異物検出装置。
【請求項2】
前記異物情報特定手段(32b)は、前記異物抽出処理画像から異物に対応する高濃度部分の画素数を計数し、この計数した画素数を予め設定された1画素当たりの面積に換算して、前記異物情報として前記異物の面積を特定すること特徴とする請求項1記載のX線異物検出装置。
【請求項3】
前記異物情報特定手段(32b)は、前記判定部(33)にて不良品判定された異物抽出処理画像から良品判定された異物抽出処理画像を差し引いて異物部分のみの異物画像に画像処理し、当該異物画像のX線透過量に応じた濃度に基づき、前記異物情報として前記異物の種類を特定することを特徴とする請求項1記載のX線異物検出装置。
【請求項4】
前記異物情報特定手段(32b)は、前記不良品判定された異物抽出処理画像を、前記異物の種類によって予め設定された異物特定用フィルタを用いてフィルタ処理を施し、前記使用した異物特定用フィルタの種類から前記異物情報として前記異物の種類を特定することを特徴とする請求項1に記載のX線異物検出装置。
【請求項5】
前記表示部(40)は、前記判定部からの前記異物抽出処理画像と、当該異物抽出処理画像中の異物の異物情報とをウィンドウ表示することを特徴とする請求項1記載のX線異物検出装置。
【請求項6】
前記表示部(40)は、前記異物抽出処理画像中で選択された前記異物の異物情報をウィンドウ表示することを特徴とする請求項1記載のX線異物検出装置。
【請求項7】
前記表示部(40)は、前記異物情報と併せて、前記異物のスケールを表す目盛り表示若しくは前記異物の実寸情報を表示することを特徴とする請求項1記載のX線異物検出装置。
【請求項8】
前記表示部(40)は、前記被検査物(W)内に前記異物が複数存在する場合に、前記複数の異物とそれぞれ対応するように前記異物の異物情報を一覧表示することを特徴とする請求項1記載のX線異物検出装置。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−139230(P2009−139230A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316066(P2007−316066)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】